(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20220404BHJP
F21V 21/34 20060101ALI20220404BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20220404BHJP
F16F 1/373 20060101ALI20220404BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220404BHJP
【FI】
F21S2/00 370
F21V21/34
F16F15/08 K
F16F1/373
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018024668
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】301061908
【氏名又は名称】株式会社ティーネットジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100106220
【氏名又は名称】大竹 正悟
(72)【発明者】
【氏名】城島 寛行
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-104184(JP,U)
【文献】実開昭56-158371(JP,U)
【文献】特開2014-003006(JP,A)
【文献】特開2016-153305(JP,A)
【文献】特開2009-087976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 21/34
F16F 15/08
F16F 1/373
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と、
前記発光部を支持する発光部支持体と、
前記発光部支持体と取付対象物との間に設置され、前記取付対象物と前記発光部支持体との間に伝わる振動を減衰するゴム状弾性体でなる防振部材と、
前記防振部材を押圧して前記取付対象物に対して押圧接触させつつ固定する固定部材とを備える照明装置において、
前記防振部材は、
前記固定部材を挿通する挿通孔を有し、前記固定部材が押圧接触することによって前記取付対象物に当接する筒部と、
前記筒部の外周面から外向きに突出する環状突出部と、
前記環状突出部の外周面に沿って形成されており前記発光部支持体を装着する保持溝と、
前記環状突出部から突出して前記取付対象物と押圧接触する第1の弾性突起と、
前記環状突出部から前記第1の弾性突起とは反対側に突出して前記固定部材と押圧接触する第2の弾性突起とを有し、
前記環状突出部は、前記筒部と前記第1の弾性突起との間および前記筒部と前記第2の弾性突起との間に、前記環状突出部の厚み方向に沿って撓み変形することで、前記筒部に対して、前記第1の弾性突起および前記第2の弾性突起を変位させる薄厚で溝状の可動部を有し、
前記環状突出部の前記外周面から前記筒部に向かう前記保持溝の深さは、前記環状突出部の厚み方向で前記第1の弾性突起と前記第2の弾性突起との間に位置することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1の弾性突起または前記第2の弾性突起の少なくとも何れかは、前記環状突出部から突出し前記環状突出部の周方向に沿って配置した複数の柱状突起である請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1の弾性突起または前記第2の弾性突起の少なくとも何れかは、前記環状突出部から突出し前記筒部と同心状に配置された少なくとも1つの環状壁である請求項1記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1の弾性突起および前記第2の弾性突起は、前記環状突出部からの突出高さが、前記取付対象物または前記固定部材と押圧接触する接触面の面幅における接触長さよりも短く形成されている請求項1~請求項3何れか1項記載の照明装置。
【請求項5】
前記第1の弾性突起と前記第2の弾性突起は、前記環状突出部に繋がる基端側よりも突出端側が細い先細り形状である請求項1~請求項4何れか1項記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内や屋外の施設や設備に用いる照明装置に関し、特にそれらの施設や設備の可動機器に設置する照明装置(可動体用照明装置)に関する。
【背景技術】
【0002】
屋内や屋外の施設や設備には、夜間や暗所での視認性を向上するため照明装置が設置されている。その一例として、港湾でコンテナ荷役を行うガントリークレーンや、工場内に設置するホイスト式天井クレーンがある。こうしたガントリークレーンやホイスト式天井クレーンは何れも移動可能な可動機器であり、その移動の開始時および停止時等には振動や衝撃が発生することから、そうした可動機器用の照明装置(可動体用照明装置)には防振ゴムが備わっている。
【0003】
ここで従来の照明装置10の構造例を説明すると、照明装置10は、先ず、レンズと、LEDでなる照光源と、LEDの発光を電気制御する電気制御部と、それらを収容する筐体とを有する発光部11を備えている。発光部11は、金属製の薄板を屈曲して形成したブラケット12に回動軸を介して取付けられており、照明装置10の設置場所と照光領域に応じて、ブラケット12に対して発光部11を回動させることで、必要な照光角度を確保できるようにしている。
【0004】
そのブラケットには複数の防振ゴム13が装着されている。防振ゴム13は、天然ゴム、クロロプレンゴム等の合成ゴムでなる柱形状のゴム状弾性体で形成されている。防振ゴム13の一端にはブラケットに固定する取付ボルト13aが、また他端にはガントリークレーンやホイスト式天井クレーン等の振動発生源となる可動機器の照明設置部14(取付対象物)に固定する取付ボルト13bが接着されている。したがって、従来の照明装置10は、可動機器が生じる振動や衝撃を柱形状の防振ゴム13の弾性変形により減衰させて、できるだけ発光部11に振動が伝達されないようにしている。これにより照光源であるLEDを配置した基板の破損や電気制御部の断線等を故障の発生を防止して、製品寿命ができるだけ長くなるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の照明装置は、設置箇所に応じて様々な姿勢で設置される。
図13で示す一従来例による照明装置10は、防振ゴム13の軸方向が上下方向Zに沿う「縦型配置」とされており、防振ゴム13には照明装置10の荷重が鉛直方向Zに常時作用する。発光部11は、上下方向Zのみならず、左右方向X、前後方向Yを複合した三次元方向に加振される。
【0006】
しかしながら、このような配置形態だけでなく、照明装置10は、防振ゴム13の軸方向が横方向(左右方向Xまたは前後方向Y)に沿う「横型配置」となるように、照明設置部14(取付対象物)に固定される場合がある。さらには、防振ゴム13の軸方向が斜め方向となる「傾斜配置」となる場合もある。そして、可動機器の動きによって「縦型配置」と「横型配置」と「傾斜配置」とに変化する場合もある。そのため照明装置10の荷重を支持しつつ、このような多様な設置姿勢に対応するには、防振ゴム13のゴム状弾性体のばね定数を高くして、照明装置10の設置姿勢と重心位置の変化に適応して、重量物である照明装置10を安定して支持できるように、支持力を高める必要がある。しかしながら、ばね定数を高くすると、可動機器の振動や衝撃を受けた際に、振動や衝撃をほぼそのままブラケット12や発光部11に伝えてしまうことから、振動減衰効果を高めるのに限界がある。
【0007】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。本発明は、可動機器に設置する照明装置(可動体用照明装置)について、多様な設置姿勢での防振に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく本発明は以下の特徴を有するものとして構成される。
【0009】
本発明は、発光部と、前記発光部を支持する発光部支持体と、前記発光部支持体と取付対象物との間に設置され、前記取付対象物と前記発光部支持体との間に伝わる振動を減衰するゴム状弾性体でなる防振部材と、前記防振部材を押圧して前記取付対象物に対して押圧接触させつつ固定する固定部材とを備える照明装置について、前記防振部材は、前記固定部材を挿通する挿通孔を有する筒部と、前記筒部の外周面から外向きに突出する環状突出部と、前記環状突出部の外周面に沿って形成されており前記発光部支持体を装着する保持溝と、前記環状突出部から突出して前記取付対象物と押圧接触する第1の弾性突起と、前記環状突出部から前記第1の弾性突起とは反対側に突出して前記固定部材と押圧接触する第2の弾性突起とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、固定部材と取付対象物との間に、挿通孔に固定部材を挿通したゴム状弾性体でなる防振部材が与圧をかけた状態で固定される。これにより筒部は、固定部材と取付対象物との間に介在する防振部材の固定軸として機能し、筒部の外周面から突出する環状突出部と、環状突出部から突出する第1の弾性突起および第2の弾性突起とにおける、筒部の筒軸方向への弾性変形を確実に支持することができる。
【0011】
筒部には、外周面に発光部支持体を装着する保持溝を有する環状突出部が形成されている。環状突出部の一方面には取付対象物と押圧接触する第1の弾性突起が形成されており、他方面には固定部材と押圧接触する第2の弾性突起が形成されている。このように、第1の弾性突起と第2の弾性突起とを、固定軸として機能する筒部の周囲に配置することで、照明装置の荷重が筒部の筒軸方向に作用する設置姿勢のみならず、照明装置の荷重が当該筒軸方向の交差方向に作用する設置姿勢となっても、第1の弾性突起と第2の弾性突起は、筒部とともに照明装置の荷重を分散して支持する支持機能を発揮する。これとともに、従来技術の防振ゴム13のような単一のゴム状弾性体でなる柱状物と比べると、第1の弾性突起と第2の弾性突起を設けることで、形状変形が自由となる防振部材全体の表面積を増やすことができ、それによって防振部材全体としてのばね定数を構造的に下げることができる。したがって、従来の防振ゴム13よりも、低ばね定数の内部減衰性により振動や衝撃をより効果的に減衰させることができる。
【0012】
前記第1の弾性突起または前記第2の弾性突起の少なくとも何れかは、前記環状突出部から突出し前記環状突出部の周方向に沿って配置した複数の柱状突起として構成できる。
【0013】
本発明によれば、第1の弾性突起または第2の弾性突起の少なくとも何れかが、環状突出部の周方向に沿って配置した複数の柱状突起であるため、それぞれの柱状突起が独立して弾性変形可能である。したがって照明装置の設置姿勢や重心位置の変化に応じて、複数の柱状突起が照明装置の荷重を分散して支持し、また弾性変形により振動を減衰することができる。
【0014】
前記第1の弾性突起または前記第2の弾性突起の少なくとも何れかは、前記環状突出部から突出し前記筒部と同心状に配置された少なくとも1つの環状壁として構成できる。
【0015】
本発明によれば、第1の弾性突起または第2の弾性突起の少なくとも何れかが、筒部と同心状に配置された少なくとも1つの環状壁である。したがって照明装置の設置姿勢や重心位置の変化に応じて、取付対象物と固定部材に対して環状に接触する環状壁が、照明装置の荷重を支持し、また弾性変形により振動を減衰することができる。
【0016】
前記第1の弾性突起および前記第2の弾性突起は、前記環状突出部からの突出高さが、前記取付対象物または前記固定部材と押圧接触する接触面の面幅における接触長さよりも短く形成されているように構成できる。
【0017】
本発明によれば、振動や衝撃を受けた際に、第1の弾性突起および前記第2の弾性突起が座屈することなく圧縮変形することができる。したがって、耐荷重を大きくとることができる。なお、「接触面の面幅における接触長さ」とは、第1の弾性突起および前記第2の弾性突起が「柱状突起」であり、さらにそれが円柱形状(正円柱、楕円柱)である場合には最短の直径の長さを指し、またそれが角柱形状である場合には最短の短辺の長さを指すものとすることができる。また、第1の弾性突起および前記第2の弾性突起が「環状壁」である場合には、壁の厚み方向に沿う接触面における長さを指すものとすることができる。
【0018】
前記第1の弾性突起と前記第2の弾性突起は、前記環状突出部に繋がる基端側よりも突出端側が細い先細り形状であるように構成できる。
【0019】
本発明によれば、第1の弾性突起と第2の弾性突起が前記先細り形状であるため、第1の弾性突起については前記固定部材との押圧接触側が、また第2の弾性突起については前記取付対象物との押圧接触側が、それぞれ圧縮変形しやすくなる。これにより第1の弾性突起と第2の弾性突起の弾性変形による振動と衝撃に対する減衰効果を高めることができる。また、隣り合う第1の弾性突起どうし、隣り合う第2の弾性突起どうしが、圧縮変形時に潰れて膨出することで互いに接触し、それにより自由な膨出と同時に圧縮変形も制限されてしまうと、減衰性能が低下するおそれがある。これに対して本発明では、第1の弾性突起と第2の弾性突起が前記先細り形状であるため、先細り形状にしない場合と比べて圧縮変形時の膨出量を抑制することができるため、隣り合う第1の弾性突起どうし、第2の弾性突起どうしが接触することによる上記不具合の発生を回避することができる。
【0020】
前記環状突出部は、前記筒部と前記第1の弾性突起との間および前記筒部と前記第2の弾性突起との間に、前記環状突出部の厚み方向に沿って撓み変形することで前記弾性突出部を変位させる可動部を有するように構成できる。
【0021】
本発明によれば、第1の弾性突起と第2の弾性突起が形成されていない環状突出部の可動部が、環状突出部の厚み方向に沿って撓み変形する。これにより第1の弾性突起の全体と第2の弾性突起の全体を変位させることができるので、発光部支持体を介して伝わる振動や衝撃を、第1の弾性突起のみの弾性変形や第2の弾性突起のみの弾性変形によって減衰させる場合と比べて、より効果的に減衰させることが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の照明装置によれば、多様な設置姿勢や取付対象物への固定箇所に対する重心位置の変化に応じて適切に発光部を防振支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図4】
図1で示す防振部材の縦型配置での使用状態を示す
図3相当の説明図。
【
図5】
図4の縦型配置で下向きに振動または衝撃が加わった状態を示す説明図。
【
図6】
図4の縦型配置で上向きに振動または衝撃が加わった状態を示す説明図。
【
図7】
図4の防振部材の縦型配置で左向きに振動または衝撃が加わった状態を示す説明図。
【
図8】
図1で示す防振部材の横型配置での使用状態を示す
図3相当の説明図。
【
図9】
図8の横型配置で下向きに振動または衝撃が加わった状態を示す説明図。
【
図10】
図8の横型配置で左向きに振動または衝撃が加わった状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による照明装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態で示す照明装置1は、ガントリークレーンやホイスト式天井クレーン等の可動機器用の照明装置(可動体用照明装置)である。
【0025】
本明細書、特許請求の範囲に記載されている「第1」「第2」という用語は、発明の異なる構成要素を区別するために用いるものであり、特定の順序や優劣を示すために用いるものではない。また本明細書、特許請求の範囲では、説明の便宜上、左右方向(幅方向)をX方向、前後方向(奥行方向)をY方向、上下方向(高さ方向)をZ方向として説明する。
【0026】
【0027】
照明装置1は、発光部2と、「発光部支持体」としてのブラケット3と、2つの防振部材4と、固定部材5とを備えている。
【0028】
発光部2は、金属製の筐体2aを有し、筐体2aには合成樹脂の成形体でなるレンズ2bが装着され、その内側には多数のLED発光素子でなる照光源2cが配置されており、ここが照光面部2dを構成している。筐体2aの内側空間には、照光源の2c発光を電気制御する電気制御部が配置されている(図示略)。電気制御部は、照光源2cのLEDや電気素子を実装するプリント配線基板や電気配線を接続する電気コネクタ等の各種の電気部品にて構成されている。筐体2aから外部に延出するのは電源コード2eであり、図外の電源供給部に接続される。このように発光部2は、振動や衝撃を繰り返し受けてしまうと、破損したり断線したりするおそれがあるレンズ2b、照光源2c、電気制御部を有するものである。したがって、振動や衝撃ができるだけ発光部2aに伝達しないようにして、製品寿命を延命するための振動対策が必要となる。
【0029】
なお、本実施形態の照明装置1の発光部2dは家庭用の照明装置とは異なる可動体用大型照明装置である。その大きさはφ120mm~φ350mmである。なお、本実施形態の発光部2dは照光面部2dが円形のものを例示するが、全体形状がボックス形状で照光面部2dが角形の発光部として実施することもできる。その場合には最大幅が□650mmのものもある。
【0030】
ブラケット3は、ステンレス板等の金属薄板を屈曲した枠体により構成されている。ブラケット3は、照明装置1の荷重を十分に支持可能な剛体として形成されている。ブラケット3は、発光部2に繋がる左右の第1の取付片部3aと、左右の第1の取付片部3aどうしを連結する第2の取付片部3bとを有している。左右の第1の取付片部3aには、発光部2をブラケット3に対して回動可能に支持する取付軸3cが装着されている。したがって、発光部2はブラケット3に対して回動可能な範囲で回動させることができ、発光面部2dを任意の方向に向くように調整できるようにされている。第2の取付片部3bには、長手方向に沿う2箇所に防振部材4を取付ける取付孔3dが貫通して形成されている。
【0031】
防振部材4は、ゴム状弾性体の成形体として形成されている。防振部材4には、円筒形状の筒部4aが形成され、その内側の挿通孔4bには後述する固定部材5の締結部材5bとスリーブ5aが挿通される。
【0032】
筒部4aの外周には、外向きに突出する環状突出部4cが形成されている。環状突出部4cは円環形状に形成されており、その外周面には筒部4aに向かう深さを有する保持溝4dが形成されている。
【0033】
保持溝4dには、前述したブラケット3の取付孔3dを形成する孔縁が嵌合され、これによりブラケット3と発光部2が防振部材4に連結される。したがって保持溝4dの内径は取付孔3dの孔径とほぼ同じであり、保持溝4dの溝幅は第2の取付片3bの板厚とほぼ同じとされており、第2の取付片3bは隙間無く保持溝4dで確実に保持されている。
【0034】
保持溝4dを境とする環状突出部4cの一方面側には、「取付対象物」である可動機器の照明設置部14と押圧当接する複数の第1の弾性突起4eが形成されており、他方面側には固定部材5と押圧接触する複数の第2の弾性突起4fが形成されている。従来技術で説明した防振ゴム13は柱状物であり、振動や衝撃を受けた際に、その外周面が自由に外方に膨出することで弾性変形し、その内部減衰性により振動および衝撃を減衰させる。こうしたゴム状弾性体の弾性変形による内部減衰性で振動や衝撃を減衰させる点は同じであるが、防振部材4では、自由に形状変形できる表面積を増やすこと、即ち複数の第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fを設けている。これによって防振部材4は、従来の防振ゴム13よりもばね定数を構造的に下げることができ、発光部2を柔らかく支持するとともに振動や衝撃の減衰性が高められている。
【0035】
第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fは、本実施形態ではいずれも円柱状(断面正円形状)の柱状突起として形成されており、環状突出部4cに繋がる基端4e1、4f1よりも、突出端となる正円形の当接部4e2、4f2の方が細い先細り形状となっている。このため当接部4e2、4f2を含む突出端側においてばね定数を低くすることができ、それぞれ圧縮変形しやすい。これにより第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fの弾性変形による振動と衝撃に対する減衰効果を高めている。また、隣り合う第1の弾性突起4eどうし、隣り合う第2の弾性突起4fどうしが、圧縮変形時に潰れて膨出することで互いに接触し、それにより自由な圧縮変形が制限されてしまうと、ばね定数が高くなり、減衰性能が低下するおそれがある。しかしながら、第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fは先細り形状であるため、先細り形状にしない場合と比べて圧縮変形時の膨出量を抑制することができるため、隣り合う第1の弾性突起4eどうし、第2の弾性突起4fどうしが接触することによる前述のような不具合は発生しない。
【0036】
第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fは、いずれも柱状突起ではあるものの、環状突出部4cから突出する高さ方向Zに沿う突出高さは、その径方向の長さ(直径)よりも短く形成されている。このため、振動や衝撃を受けて高さ方向Zに沿って照明装置1の静荷重を超える荷重を受けても座屈しないように、その耐荷重性が高められている。
【0037】
第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fは、環状突出部4cの周方向に沿って配置されている。そのため、個々の第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fは、それぞれ独立して弾性変形することができる。したがって照明装置1の多様な設置姿勢と重心位置の変化と振動や衝撃の作用とに応じて、個々の第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fが照明装置1の荷重を分散して支持し、また弾性変形により振動を減衰することができる。
【0038】
第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fは、環状突出部4cの一方面と他方面の同じ位置に配置されている。これらの第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fの間には、ブラケット3の第2の取付片部3bを固定する保持溝4dが配置されている。このため第1の弾性突起4eの基端4e1と第2の弾性突起4fの基端4f1は、環状突出部4cの厚み方向で剛体である第2の取付片部3bと対向して配置される。したがって、剛体である第2の取付片部3bは、圧縮変形している第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fをそれらの基端4e1,4f1側において確実に支持することができる。
【0039】
第1の弾性突起4eの基端4e1と第2の弾性突起4fの基端4f1を、環状突出部4cの厚み方向で保持溝4dに取付けた第2の取付片部3bに投影した際の投影面積の割合は、50%~100%とすることができる。50%より少ないと第2の取付片部3bで第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fの圧縮変形を受け止めることができず、それらによる支持力が低下してしまう。100%は第1の弾性突起4eの基端4e1と第2の弾性突起4fの基端4f1を第2の取付片部3bに投影すると完全に重なる状態であり、最も確実に第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fの弾性変形を受けることができる。なお、本実施形態では50%のものを例示している。
【0040】
環状突出部4cにおける保持溝4dと筒部4aとの間の部分は、それらの全周に亘って2つの円錐台の底面どうしを合わせたような双円錐台形状の内部支持部4c1として機能する。この内部支持部4c1は、例えば
図7で示すように筒部4aの筒軸交差方向に振動や衝撃を受けた場合に、弾性変形することで減衰効果を発揮することができる。前述した投影面積が100%の場合、筒部4aと第2の取付片部3bは近くなることから内部支持部4c1として機能する部位は小さくなる。他方、前述の投影面積が50%の場合には、それよりも筒部4aと第2の取付片部3bとは離れることから、内部支持部4c1として機能する部位は大きくなる。したがって保持溝4dの深さは、前述した筒軸交差方向での振動や衝撃の減衰性能に影響を与えることになる。
【0041】
筒部4aを中心とする周辺部分の三次元方向XYZへの弾性変形を容易にするという点では、環状突出部4cには、筒部4aと第1の弾性突起4eとの間および筒部4aと第2の弾性突起4fとの間に、環状突出部4cの厚み方向Zに沿って撓み変形することで、第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fとを変位させることのできる可動部4c2が形成されている。この可動部4c2は、筒部4aとの間だけでなく、本実施形態では隣り合う第1の弾性突起4eどうしの間、隣り合う第2の弾性突起4fどうしの間にも広がるように形成されており、その一部は前述した内部支持部4c1と重複している。したがって、そのような広がりを持つ薄厚の可動部4c2によって、さらに筒部4aと第1の弾性突起4e及び第2の弾性突起4fと間の相対変位による振動減衰効果が高められている。
【0042】
固定部材5は、防振部材4の挿通孔4bに通す金属製のスリーブ5aと、スリーブ5aに挿通する金属製の締結部材5bと、締結部材5bを挿通する金属製で環形状の押圧部材5cとを有している。
図4で防振部材4の取付状態を示すように、締結部材5bを「取付対象物」である可動機器の照明設置部14に締結すると、頭部5b1が押圧部材5cを押圧し、それにより押圧部材5cが防振部材4と押圧接触する。これにより防振部材4は、所定の与圧を作用させた状態で照明設置部14に当接し、保持溝4dも溝幅が狭くなり第2の取付片3bと密着するようにして固定される。
【0043】
【0044】
以上のような照明装置1は、防振部材4の筒部4aの筒軸方向(締結部材5bの締結方向)によって様々な設置姿勢を取ることができるが、前述のようにどのような設置姿勢としても、可動機器を発生源としてそこから照明装置1に伝達する振動および衝撃や、例えば屋外で風に煽られた場合のように照明装置1自身が発生源としてそこから可動機器に伝達する振動および衝撃を減衰することが可能である。
【0045】
図4は、防振部材4が縦型配置となる例である。照明装置1は上方に位置する照明設置部14に下から取付けられ、これが静止した常態の設置姿勢となる。この場合、防振部材4は、締結部材5bにより押圧部材5cを介して与圧をかけて固定されている。照明装置1の荷重は第2の取付片3bの下方に位置するすべての第2の弾性突起4fで分散支持しており(ハッチング部分)、そのため第2の弾性突起4fは僅かに圧縮変形している。
【0046】
図5は、
図4の縦型配置の状態で上から下に鉛直方向に振動または衝撃が加わった場合である。このときは、すべての第1の弾性突起4eが圧縮変形して(ハッチング部分)、ゴム状弾性体の内部減衰性により振動または衝撃が減衰される。
【0047】
図6は、
図5の際に下方に付勢されたブラケット3と発光部2が、下から上に戻るように変位する場合(即ち下から上に向かう振動や衝撃が生じる場合)である。このときは、すべての第2の弾性突起4fが圧縮変形して(ハッチング部分)、ゴム状弾性体の内部減衰性により振動または衝撃が減衰される。その後、すべての第1の弾性突起4eが圧縮変形して、ゴム状弾性体の内部減衰性により振動または衝撃が減衰される。防振部材4はこれらの上下方向への圧縮変形と復元の繰り返しにより振動または衝撃を減衰する。
【0048】
以上のように照明設置部14と第2の取付片3bとが上下方向で相対変位する際には、筒部4aと、第1の弾性突起4eおよび第2の弾性突起4fとの間の可動部4c2が上下方向Zで弾性変形することで振動または衝撃を減衰している。
【0049】
図7は、
図4の設置姿勢において右から左に向かう側方への振動または衝撃が加わった場合である。このときは筒部4aと、可動部4c2を含む筒部4aと保持溝4dとの間の内部支持部4c1が圧縮変形して、ゴム状弾性体の内部減衰性により振動または衝撃が減衰される。
【0050】
なお、このように照明設置部14と第2の取付片3bとが左右方向Xまたは前後方向Yで相対変位する場合には、与圧により、第1の弾性突起4eが照明設置部14に押圧接触し、第2の弾性突起4fが押圧部材5cに押圧接触することで、それらの接触位置を維持する。このため筒部4aと、可動部4c2を含む筒部4aと保持溝4dとの間の内部支持部4c1との弾性変形による減衰効果をより効果的に発揮できるようになっている。
【0051】
図8は、防振部材4が横型配置となる例である。照明装置1は側方に位置する照明設置部14に横から取付けられ、これが静止した常態の設置姿勢となる。この場合、防振部材4は、締結部材5bにより押圧部材5cを介して与圧をかけて固定されている。照明装置1の荷重は、
図8中、第2の取付片3bの下方に位置する筒部4aと、可動部4c2を含む筒部4aと保持溝4dとの間の内部支持部4c1とで支持しており(ハッチング部分)、そのためそれらの部位は僅かに圧縮変形している。さらに照明装置1の重心位置が、
図8の左方へ防振部材4から離れるため、矢示方向へのこじりが働く。しかしながらこのこじりにより、
図8中、上側に位置する複数の第2の弾性突起4f(
図8中「*」部)が圧縮変形するとともに、
図8中、下側に位置する複数の第1の弾性突起4e(
図8中「*」部)が圧縮変形することで、照明装置1はバランスが保たれている。
【0052】
図9は、
図8の横型配置の状態で上から下に鉛直方向に振動または衝撃が加わった場合である。このときは、
図9中、筒部4aと、可動部4c2を含む筒部4aと保持溝4dとの間の内部支持部4c1が圧縮変形して(ハッチング部分)、ゴム状弾性体の内部減衰性により振動または衝撃が減衰される。また、前述したこじりの反力が働き、
図9中、上側に位置する複数の第1の弾性突起4e(
図9中「◎」部)が圧縮変形するとともに、
図9中、下側に位置する複数の第2の弾性突起4f(
図9中「◎」部)が圧縮変形することで、ゴム状弾性体の内部減衰性により振動または衝撃が減衰される。
【0053】
なお、このように照明設置部14と第2の取付片3bとが上下方向Zで相対変位する場合には、与圧により、第1の弾性突起4eが照明設置部14に押圧接触し、第2の弾性突起4fが押圧部材5cに押圧接触することで、それらの接触位置を維持する。このため筒部4aと、可動部4c2を含む筒部4aと保持溝4dとの間の内部支持部4c1との弾性変形による減衰効果をより効果的に発揮できるようになっている。
【0054】
図10は、
図8の設置姿勢において右から左に向かう振動または衝撃が加わった場合である。このときは筒部4aと、第1の弾性突起4eが圧縮変形して、ゴム状弾性体の内部減衰性により振動または衝撃が減衰される。
【0055】
【0056】
前記実施形態では、第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fを柱状突起とする例を示したが、環状壁4gとすることもできる。環状壁4gは、1つ以上あればよく、ここでは二重同心状の形態としている。これによれば、照明装置1の設置姿勢に応じて、照明設置部14と固定部材5に対して環状に接触する環状壁4gが、照明装置1の荷重を支持し、また弾性変形による内部減衰性により振動または衝撃を減衰することができる。なお、環状壁4gは、柱状突起とは形状が異なるため、その違いに基づく作用効果は異なる。
【0057】
実施形態の変形例
【0058】
前記実施形態では、発光部2がブラケット3に対して回動可能である例を示したが、回動しないものでもよい。前記実施形態では、第2の取付片3bに2つの防振部材4を設ける例を示したが、1つでも、3つ以上としてもよい。前記実施形態では、第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fをそれぞれ12個とする例を示したが、それより少なくても、多くしてもよい。前記実施形態では第1の弾性突起4eと第2の弾性突起4fを円柱形状とする例を示したが、多角柱状でもよい。前記実施形態では第1の弾性突起4eの基端4e1と第2の弾性突起4fの基端4f1とが環状突出部4cの厚み方向で重なる位置に設けたが、部分的に重なる位置にずらして設けてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 照明装置
2 発光部
2a 筐体
2b レンズ
2c 照光源
2d 照光面部
2e 電源コード
3 ブラケット(発光部支持体)
3a 第1の取付片
3b 第2の取付片
3c 取付軸
3d 取付孔
4 防振部材
4a 筒部
4b 挿通孔
4c 環状突出部
4c1 内部支持部
4c2 可動部
4d 保持溝
4e 第1の弾性突起
4e1 基端
4e2 当接部
4f 第2の弾性突起
4f1 基端
4f2 当接部
4g 環状壁
5 固定部材
5a スリーブ
5b 締結部材
5b1 頭部
5c 押圧部材
10 照明装置(従来例)
11 発光部
12 ブラケット
13 防振ゴム
13a 取付ボルト
13b 取付ボルト
14 照明設置部(取付対象物)