(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】相対位置検出手段
(51)【国際特許分類】
G01D 5/26 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
G01D5/26 C
(21)【出願番号】P 2018025747
(22)【出願日】2018-02-16
【審査請求日】2021-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2017149766
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017153710
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017184103
(32)【優先日】2017-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100200001
【氏名又は名称】北原 明彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】奥山 隼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光騎
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-194586(JP,A)
【文献】特開2012-053065(JP,A)
【文献】特開平02-251707(JP,A)
【文献】特開2009-097988(JP,A)
【文献】特開平07-167676(JP,A)
【文献】特開2007-309884(JP,A)
【文献】特開2007-172786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26 - 5/40
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の計測方向の変位の相対位置を光学的に検出する相対位置検出手段であって、
前記被測定物に載置され、光源から光が照射されるターゲットと、
前記光に対する前記ターゲットでの反射光の偏光状態を変化させて受光する相対位置検出用受光部と、
前記相対位置検出用受光部で受光した前記反射光の偏光状態の変化に基づいて前記ターゲットの前記計測方向の変位に基づく相対位置情報を出力する相対位置情報出力部と、を備え、
前記ターゲットには、
前記被測定物に載置される反射物と、
前記反射物の上に設けられ、前記計測方向に沿って先端から基端への厚さが変化する複屈折部材が設けられ、
前記複屈折部材は、底面の基端側を中心として該底面の先端側が前記反射物に対して回動可能に構成されていることを特徴とする相対位置検出手段。
【請求項2】
前記相対位置検出用受光部は、前記ターゲットの前記計測方向への移動に伴い前記反射光の偏光状態の変化を検出し、
前記相対位置情報出力部は、前記反射光の偏光状態の変化を光電変換して得らえた信号に基づいて前記ターゲットの前記相対位置情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の相対位置検出手段。
【請求項3】
前記相対位置検出用受光部は、
前記反射光を2つに分岐するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタで分岐された一方の反射光のS成分を反射させてP成分を透過させる第1の偏光ビームスプリッタと、
前記第1の偏光ビームスプリッタの透過光を受光する第1の受光素子と、
前記第1の偏光ビームスプリッタの反射光を受光する第2の受光素子と、
前記ビームスプリッタで分岐された他方の反射光のS成分を反射させてP成分を透過させる第2の偏光ビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタと前記第2の偏光ビームスプリッタとの間に介在される1/4波長板と、
前記第2の偏光ビームスプリッタの反射光を受光する第3の受光素子と、
前記第2の偏光ビームスプリッタの透過光を受光する第4の受光素子と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の相対位置検出手段。
【請求項4】
前記複屈折部材は、前記計測方向に沿って複数の異なる部材が並列して構成されるか、又は前記光の入射方向に沿って複数の異なる部材が積層されて構成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の相対位置検出手段。
【請求項5】
前記複屈折部材は、結晶軸の方向が異なる複数の部材が前記光の入射方向に沿って積層されて構成されることを特徴とする請求項4に記載の相対位置検出手段。
【請求項6】
前記光源に対する前記複屈折部材の前段側又は後段側の何れかに補正プリズムが設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の相対位置検出手段。
【請求項7】
前記相対位置検出用受光部が前記計測方向に沿って2つ設けられており、それぞれの相対位置検出用受光部で検出した前記反射光の偏光状態の位相変動量の差分に基づいて波長変動量を推定して補正することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の相対位置検出手段。
【請求項8】
前記光源と前記複屈折部材との間に偏光板が更に設けられることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の相対位置検出手段。
【請求項9】
前記相対位置検出用受光部には、前記反射光に対してアジマス補正を行うアジマス補正部が更に設けられることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の相対位置検出手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や半導体製造装置等の可動部分の変位を検出する変位検出装置に備わる相対位置検出手段に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被測定物の変位を非接触で測定する装置として光を用いた変位検出装置が広く利用されている。変位検出装置は、可動部分となる被測定物の変位に基づいて、光源からの光の位相を変化させ、その光の位相の変化状態を検出することで被測定物の変位量を検出する。近年では、工作機械や半導体製造装置を中心として、1nm以下の変位の計測が行える高分解能化された変位検出装置が求められている。
【0003】
このように高分解能化された変位検出装置として、例えば、特許文献1及び2に記載されているものがある。特許文献1では、波長の異なる2種類の光波の光軸のずれに基づく測定誤差を防止することによって、高精度な測定を実現可能とするレーザ干渉計について開示されている。一方、特許文献2では、光源の発振特性に合わせ偏波保持ファイバを任意の長さで構成することによって、安定した精度の高い変位量の検出ができる変位検出装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-300263号公報
【文献】特開2016-142552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された変位検出装置では、装置に備わる部品の性能や形状によって、計測方向に移動する被測定物に設けられる被測定対象となるターゲットの相対位置情報を示すインクリメンタル信号の周期が決まってしまう。すなわち、特許文献1に記載されたレーザ干渉計では、使用する光源の波長によって信号周期が決まってしまい、特許文献2に記載された変位検出装置では、被測定面に設けられる回折格子の格子間隔によって信号周期が決まってしまう。このため、装置に備わる部品を取り替えることなく幅広い信号周期に対応することが困難なものとなっていた。安定した精度の高い変位量の検出をするためには、ターゲットの相対位置情報を検出する際に、幅広いインクリメンタル信号の周期に対応出来ることが望まれる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で幅広い信号周期に対応することの可能な、新規かつ改良された相対位置検出手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、被測定物の計測方向の変位の相対位置を光学的に検出する相対位置検出手段であって、前記被測定物に載置され、光源から光が照射されるターゲットと、前記光に対する前記ターゲットでの反射光の偏光状態を変化させて受光する相対位置検出用受光部と、前記相対位置検出用受光部で受光した前記反射光の偏光状態の変化に基づいて前記ターゲットの前記計測方向の変位に基づく相対位置情報を出力する相対位置情報出力部と、を備え、前記ターゲットには、前記被測定物に載置される板状の反射物と、前記反射物の上に設けられ、前記計測方向に沿って先端から基端への厚さが変化する複屈折部材が設けられ、前記複屈折部材は、底面の基端側を中心として該底面の先端側が前記反射物に対して回動可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様によれば、複屈折部材の傾きと配置によってターゲットの相対位置情報を示すインクリメンタル信号の周期が定められるので、簡素な構成で幅広い信号周期に対応できる。
【0009】
このとき、本発明の一態様では、前記相対位置検出用受光部は、前記ターゲットの前記計測方向への移動に伴い前記反射光の偏光状態の変化を検出し、前記相対位置情報出力部は、前記反射光の偏光状態の変化を光電変換して得らえた信号に基づいて前記ターゲットの前記相対位置情報を出力することとしてもよい。
【0010】
このようにすれば、簡素な構成で幅広い信号周期に対応可能とした上でターゲットの相対位置情報を確実に精度よく出力できるので、安定した高精度の変位検出が可能になる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記相対位置検出用受光部は、前記反射光を2つに分岐するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで分岐された一方の反射光のS成分を反射させてP成分を透過させる第1の偏光ビームスプリッタと、前記第1の偏光ビームスプリッタの透過光を受光する第1の受光素子と、前記第1の偏光ビームスプリッタの反射光を受光する第2の受光素子と、前記ビームスプリッタで分岐された他方の反射光のS成分を反射させてP成分を透過させる第2の偏光ビームスプリッタと、前記ビームスプリッタと前記第2の偏光ビームスプリッタとの間に介在される1/4波長板と、前記第2の偏光ビームスプリッタの反射光を受光する第3の受光素子と、前記第2の偏光ビームスプリッタの透過光を受光する第4の受光素子と、を備えることとしてもよい。
【0012】
このようにすれば、簡素な構成でターゲットの計測方向への移動に伴い反射光の偏光状態の変化を確実に検出できる。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記複屈折部材は、前記計測方向に沿って複数の異なる部材が並列して構成されるか、又は前記光の入射方向に沿って複数の異なる部材が積層されて構成されることとしてもよい。
【0014】
このようにすれば、簡素な構成でターゲットの計測方向への移動に伴い反射光の偏光状態の変化を示す信号出力の感度や周期を容易に変えることができる。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記複屈折部材は、結晶軸の方向が異なる複数の部材が前記光の入射方向に沿って積層されて構成されることとしてもよい。
【0016】
このようにすれば、複屈折部材を構成する各部材の結晶軸方向が直交している場合等に熱変動や光源の波長変動による影響を抑制することができる。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記光源に対する前記複屈折部材の前段側又は後段側の何れかに補正プリズムが設けられていることとしてもよい。
【0018】
このようにすれば、複屈折部材を透過したビーム分布内の偏光状態が均一となるので、後段側の絶対位置検出手段による安定した高精度な変位検出が可能となる。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記相対位置検出用受光部が前記計測方向に沿って2つ設けられており、それぞれの相対位置検出用受光部で検出した前記反射光の偏光状態の位相変動量の差分に基づいて波長変動量を推定して補正することとしてもよい。
【0020】
このようにすれば、各相対位置検出用受光部で検出した反射光の偏光状態の位相変動量の差分に基づいて波長変動量を容易に推定できるので、かかる推定に基づいて波長変動量を補正することによって、より高精度な変位検出が可能になる。
【0021】
また、本発明の一態様では、前記光源と前記複屈折部材との間に偏光板が更に設けられることとしてもよい。
【0022】
このようにすれば、変位検出に用いるビームをより高消光比とすることができるので、より高精度な変位検出が可能となる。
【0023】
また、本発明の一態様では、前記相対位置検出用受光部には、前記反射光に対してアジマス補正を行うアジマス補正部が更に設けられることとしてもよい。
【0024】
このようにすれば、偏光板を透過した反射光の角度差による差分が修正されるので、より高精度な変位検出が可能になる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明によれば、複屈折部材の傾きと配置によってターゲットの相対位置情報を示すインクリメンタル信号の周期が定められるので、簡素な構成で幅広い信号周期に対応できる。また、簡素な構成で幅広い信号周期に対応可能とした上でターゲットの相対位置情報を確実に精度よく出力できるので、安定した高精度の変位検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の構成の概略を示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の構成の概略を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る変位検出装置に備わる相対位置検出手段の構成の概略を示す側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段に備わる相対位置情報出力部の構成を示すブロック図である。
【
図5】(A)は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の複屈折部材による測定原理を示す説明図であり、(B)は、当該複屈折部材の結晶軸に関する説明図である。
【
図6】(A)は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置に備わる絶対位置検出手段の構成の概略を示す側面図であり、(B)は、当該絶対位置検出手段に備わる可変反射膜の構成を示す平面図であり、(C)は、当該絶対位置検出手段に備わる絶対位置情報出力部の構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る変位検出装置による信号出力の概要を示すブロック図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段に備わるインクリメンタル信号発生器のリサージュ信号の角度を示す説明図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の各構成要素の信号出力を示すグラフである。
【
図10】(A)は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の複屈折部材の変形例の一例を示す説明図であり、(B)は、当該複屈折部材の移動量と位置情報との関係を示すグラフである。
【
図11】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の複屈折部材の他の変形例の一例を示す説明図である。
【
図12】(A)乃至(C)は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の複屈折部材の更に他の変形例の一例を示す説明図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の複屈折部材の更に他の変形例の一例を示す説明図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の変形例の構成の概略を示す斜視図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の変形例の他の態様の構成及び動作の概略を示す説明図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の変形例に備わる反射膜付きプリズムの更に他の変形例の構成の概略を示す側面図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の他の変形例の構成の概略を示す正面図である。
【
図18】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の変形例の一変形例の構成の概略を示す斜視図である。
【
図19】(A)及び(B)は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の他の変形例に設けられる補正プリズムの他の設置態様の一例を示す説明図である。
【
図20】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の変形例の他の変形例の構成の概略を示す斜視図である。
【
図21】本発明の一実施形態に係る変位検出装置の更に他の変形例の構成の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また、以下の説明において記載される各種レンズは、所定の結像性能を持っていれば、その形態は、どのようなものでもよく、球面や非球面の単レンズ、レンズ群、あるいは結像機能を持った回折格子でもよい。
【0036】
まず、本発明の一実施形態に係る変位検出装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置の構成の概略を示す正面図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置の構成の概略を示す平面図である。
【0037】
本発明の一実施形態に係る変位検出装置100は、被測定物10の計測方向(X方向)の変位の絶対位置及び相対位置を光学的に検出する装置である。ここで言及する絶対位置とは、被測定物10の基準点から計測方向(X方向)の変位を受光した光量の変化を電圧等の絶対値に変換した位置情報を示し、相対位置とは、偏光の変化を受光し電圧等の周期的な信号を位相変換した位置情報を示す。
【0038】
本実施形態の変位検出装置100は、
図1及び
図2に示すように、光源102と、光源側ビームスプリッタ108と、相対位置検出手段110と、絶対位置検出手段140と、を備える。そして、本実施形態の変位検出装置100は、絶対位置検出手段140と相対位置検出手段110が被測定物10の計測方向(X方向)に対してインライン上に設けられることを特徴とする。
【0039】
光源102は、可干渉距離の制限された可干渉光を出射してもよい。本実施形態では、光源102として、マルチモードの半導体レーザ、スーパールミネッセントダイオード等の可干渉光源であるが、可干渉距離の比較的短い光源が使用される。ただし、光源102は、これら特定の種類の光源に限定されるわけではない。
【0040】
また、本実施形態では、光源102から出た光として偏光を使うので、光源102の出力段側には、コリメートレンズからなる第1のレンズ104と偏光子106が設けられている。このように、光源102から出た光は、第1のレンズ104を介してコリメート光にされてから偏光子106を使ってある一定の直線偏光に変換される。
【0041】
なお、光源102の位置としては、
図1に示された光源102の位置に置いてもよいし、光源102の発熱の影響を避けるため、光源102を離れた場所に設置し、光ファイバを用いて光を伝搬させて、光ファイバの出射端を
図1に示された光源102の位置に置くようにしてもよい。このときも、光ファイバを出射した発散する光ビームは、コリメートレンズによってコリメートビームに変換される。また、光源からのビームが直線偏光の場合は、光ファイバには、偏波保持ファイバ等の偏波面を保持できるものを用いる。
【0042】
光源側ビームスプリッタ108は、光源102からの可干渉光を2つに分岐する偏光依存のない無偏向型のビームスプリッタである。本実施形態では、光源側ビームスプリッタ108は、
図1及び
図2に示すように、光源102からの光b1を絶対位置検出手段140に行く方向と、そのまま相対位置検出手段110に備わるターゲット112に入射する方向に分けられる。
【0043】
相対位置検出手段110は、光源側ビームスプリッタ108で分岐された一方の光b1に対する反射光b2の偏光状態の変化に基づいて被測定物10の計測方向の変位の相対位置を検出する機能を有する。本実施形態では、相対位置検出手段110は、ターゲット112と、相対位置検出用受光部120と、及び相対位置情報出力部130(
図4参照)と、を備える。
【0044】
ターゲット112は、被測定物10に載置され、光源102からの光b1が照射される。ターゲット112には、被測定物10に載置される板状の反射物114と、当該反射物114の上に設けられ、計測方向に沿って先端116aから基端116a´への厚さが増加ように変化する複屈折部材116が設けられる。そして、複屈折部材116は、底面116bの基端側を中心として当該底面116bの先端側が反射物114に対して回動可能に構成されている。すなわち、複屈折部材116は、先端116aが角度θ1である複屈折部材116の底面116bと反射物114との角度θ2を調整可能にしてもよい。
【0045】
相対位置検出用受光部120は、可干渉光b1に対するターゲット112での反射光b2の偏光状態を変化させて受光する。本実施形態では、相対位置検出用受光部120は、ビームスプリッタ121、第1の偏光ビームスプリッタ122、第1の受光素子123、第2の受光素子124、1/4波長板125(
図3参照)、第2の偏光ビームスプリッタ126、第3の受光素子127、及び第4の受光素子128を備える。相対位置検出用受光部120で受光した反射光b2の偏光状態の変化を表す信号は、相対位置情報出力部130(
図4参照)に送られて、相対位置情報出力部130は、当該信号に基づいてターゲット112の計測方向の変位に基づく相対位置情報を出力する。なお、相対位置検出手段110に備わるターゲット112、相対位置検出用受光部120、及び相対位置情報出力部130の詳細については、後述する。
【0046】
絶対位置検出手段140は、光源側ビームスプリッタ108で分岐された他方の光b3、b4に対する反射光b5、b6の光量の変化に基づいて被測定物10の計測方向の変位の絶対位置を検出する機能を有する。本実施形態では、絶対位置検出手段140は、頂面側に可変反射膜146が設けられたプリズム144と、光源側ビームスプリッタ108で分岐された他方の光b3をプリズム144に導入するミラー142と、絶対位置検出用受光部150と、及び絶対位置情報出力部160(
図6(C)参照)と、を備える。
【0047】
絶対位置検出用受光部150は、ミラー142での反射光b4に対するプリズム144及び被測定物10の反射光b5、b6の光量を変化させて受光する。本実施形態では、絶対位置検出用受光部150は、第5の受光素子152、及び第6の受光素子154を備える。絶対位置検出用受光部150で受光した反射光b5、b6の光量の変化を表す信号は、絶対位置情報出力部160(
図6(C)参照)に送られて、絶対位置情報出力部160は、当該信号に基づいてプリズム144の計測方向の変位に基づく絶対位置情報を出力する。なお、絶対位置検出手段140に備わるプリズム144、絶対位置検出用受光部150、及び絶対位置情報出力部160の詳細については、後述する。
【0048】
次に、本発明の一実施形態に係る変位検出装置に備わる相対位置検出手段の構成について、図面を使用しながら説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置に備わる相対位置検出手段の構成の概略を示す側面図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段に備わる相対位置情報出力部の構成を示すブロック図である。
【0049】
相対位置検出手段110は、前述したように、光源側ビームスプリッタ108で分岐された一方の光b1に対する反射光b2の偏光状態の変化に基づいて被測定物10の計測方向の変位の相対位置を検出する機能を有する。本実施形態では、相対位置検出手段110は、ターゲット112と、相対位置検出用受光部120と、及び相対位置情報出力部130と、を備える。
【0050】
本実施形態では、相対位置検出手段110は、相対位置検出用受光部120がターゲット112の計測方向への移動に伴い反射光の偏光状態の変化を検出し、相対位置情報出力部130が反射光の偏光状態の変化を光電変換して得らえた信号に基づいてターゲット112の相対位置情報を出力することを特徴とする。
【0051】
ターゲット112は、被測定物10に載置され、被測定物10の変位の検出対象として機能する。ターゲット112には、光源102からの可干渉光b1が第1のレンズ104と偏光子106を介して一定の直線偏光に変換されてから光源側ビームスプリッタ108を経由して照射される。
【0052】
本実施形態では、ターゲット112は、被測定物10に載置される板状の反射物114と、当該反射物114の上に設けられ、計測方向に沿って先端116aから基端116a´への厚さが増加する略三角柱形状の複屈折部材116を備える。そして、複屈折部材116は、底面116bの基端側を中心として当該底面116bの先端側が反射物114に対して回動可能に構成されている。すなわち、複屈折部材116は、先端116aが角度θ1である複屈折部材116の底面116bと反射物114との角度θ2を調整可能にしてもよい。
【0053】
相対位置検出用受光部120は、光b1に対するターゲット112での反射光b2の偏光状態を変化させて受光する機能を有する。本実施形態では、相対位置検出用受光部120は、ビームスプリッタ121、第1の偏光ビームスプリッタ122、第1の受光素子123、第2の受光素子124、1/4波長板125、第2の偏光ビームスプリッタ126、第3の受光素子127、及び第4の受光素子128を備える。
【0054】
ビームスプリッタ121は、反射物114での反射光b2を2つに分岐する偏光依存のない無偏光型ビームスプリッタである。第1の偏光ビームスプリッタ122は、ビームスプリッタ121で分岐された一方の反射光b7のS成分を反射させてP成分を透過させる偏光型ビームスプリッタである。第1の受光素子123は、第1の偏光ビームスプリッタ122の透過光を受光して光電変換をするフォトダイオード等からなる受光素子である。第2の受光素子124は、第1の偏光ビームスプリッタ122の反射光b10を受光して光電変換をするフォトダイオード等からなる受光素子である。第2の偏光ビームスプリッタ126は、ビームスプリッタ121で分岐された他方の反射光b8のS成分を反射させてP成分を透過させる偏光型ビームスプリッタである。1/4波長板125は、ビームスプリッタ121と第2の偏光ビームスプリッタ126との間に介在され、反射光b8の位相を1/4波長分ずらす機能を有する。第3の受光素子127は、第2の偏光ビームスプリッタ126の反射光b11を受光して光電変換をするフォトダイオード等からなる受光素子である。第4の受光素子128は、第2の偏光ビームスプリッタ126の透過光b12を受光して光電変換をするフォトダイオード等からなる受光素子である。
【0055】
相対位置検出用受光部120で受光した反射光b2の偏光状態の変化を表す信号は、相対位置情報出力部130に送られ、当該相対位置情報出力部130は、当該信号に基づいてターゲット112の計測方向の変位に基づく相対位置情報を出力する。相対位置情報出力部130は、
図4に示すように、第1の差動増幅器131と、第2の差動増幅器132と、第1のA/D変換器133と、第2のA/D変換器134と、波形補正処理部135と、インクリメンタル信号発生器136とを備える。
【0056】
第1の差動増幅器131は、相対位置検出用受光部120の第1の受光素子123及び第2の受光素子124が入力端に接続され、出力端に第1のA/D変換器133が接続されている。また、第2の差動増幅器132は、相対位置検出用受光部120の第3の受光素子127及び第4の受光素子128が入力端に接続され、出力端に第2のA/D変換器134が接続されている。そして、第1のA/D変換器133及び第2のA/D変換器134は、波形補正処理部135に接続されている。波形補正処理部135は、インクリメンタル信号発生器136に接続されている。
【0057】
相対位置情報出力部130は、相対位置検出用受光部120で受光した光の強度に基づいてターゲット112の変位情報を出力する機能を有する。具体的には、相対位置情報出力部130では、まず、フォトダイオードからなる第1の受光素子123、第2の受光素子124からの信号を第1の差動増幅器131によって、第3の受光素子127、第4の受光素子128からの信号を第2の差動増幅器132によって、それぞれ所定の増幅率α、βで差動増幅する。増倍率α、βは、増幅後の2つの信号の振幅が等しくなるように、かつ、後段のA/D変換器133、134の入力可能レンジに合わせて設定する。
【0058】
差動増幅器131、132で差動増幅されて得られた2つの信号は、A/D変換器133、134でアナログのsin、cos信号からデジタル信号へと数値化され、波形補正処理部135で演算処理が行われる。波形補正処理部135、インクリメンタル信号発生器136では、DSPが組み込まれたプログラマブルロジックデバイス等で演算を行い、アナログ信号の乱れに起因するsinθ信号、cosθ信号の振幅変動、オフセット変動、及び位相変動の補正を行う。補正された信号からθ=Atanθを求めることにより、より正確なスケールの位置情報を生成し、必要な形式のインクリメンタル信号を発生させることができる。
【0059】
本実施形態では、計測方向に沿って厚みが変化した複屈折部材116を備えたターゲット112に偏光されたビームを照射し、ターゲット112が計測方向に移動することによって、ターゲット112から反射するビームの偏光状態を変化させられる。そして、相対位置情報出力部130は、その偏光状態の変化を4つの受光素子123、124、127、128によって検出して、その4つの受光素子123、124、127、128から光電変換された信号に基づいてインクリメンタル信号の位相を求めて、測定方向に移動するターゲット112の相対位置情報をインクリメンタル信号発生器136より出力する。
【0060】
その際に、複屈折部材116の先端116aの角度θ1と複屈折部材116の底面116bと反射物114との角度θ2を調整することによって、自由にインクリメンタル信号の信号周期を所定の大きさに決めることができる。このため、簡素な構成で幅広い信号周期に対応可能とした上でターゲット112の相対位置情報を確実に精度よく出力できるので、安定した高精度の被測定物10の変位検出が可能になる。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の動作にについて、図面を使用しながら説明する。
図5(A)は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段の複屈折部材による測定原理を示す説明図であり、
図5(B)は、当該複屈折部材の結晶軸に関する説明図である。
【0062】
本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段120では、光線の偏光状態を観測することで、ターゲット112の移動量Lを検出する。具体的には、
図5(A)に示すように、透過する箇所によって厚みの異なる複屈折部材116に光を透過させ、P偏光とS偏光に位相差を付ける。その位相差を不図示の偏光子によって光量変動に変換し、移動量Lを検出する。
【0063】
このとき、P偏光とS偏光の光路差をd、P偏光とS偏光の屈折率差をΔn、光源の波長をλで表すと、位相差Δφは、下記の式(1)で表せる。
Δφ=2π×d×Δn/λ・・・・・(1)
【0064】
図5(A)に示すように、複屈折部材116の先端116aの角度θ
1、複屈折部材116の底面116bと反射物114との角度θ
2と、移動量Lだけ動いた場合のP偏光とS偏光の光路差dは、下記の式(2)で表せる。
d=L(tanθ
1-tan(θ
1-θ
2))・・・・・(2)
【0065】
移動量Lを移動するとΔφ=2πとなるので、前述した式(1)を整理すると、下記の式(3)の関係式が成立する。
d =λ/Δn・・・・・(3)
【0066】
前述した式(1)、式(2)、及び式(3)から下記の式(4)の関係式が成立する。
L=λ/(Δn×(tanθ1-tan(θ1-θ2)))・・・・・(4)
【0067】
前述した式(4)より、ターゲット112の移動量Lを複屈折部材116の先端116aの角度θ1と、複屈折部材116の底面116bと反射物114との角度θ2で任意の大きさに変更できることが分かる。また、dead pathが0であることから、ターゲット112の移動による位相差のみが検出可能となる。
【0068】
例えば、複屈折部材116の材質を水晶として、光源の波長λを790nm、移動量Lを100μmの場合に、θ1を20度としたとき、θ2が35.895・・・≒35.9度となる。すなわち、ターゲット112の移動量Lに応じて複屈折部材116の角度θ1、θ2を調整できるので、ターゲット112の移動量Lのピッチを所望の大きさに自由に変えられるようになる。このため、ターゲット112の相対位置情報を示すインクリメンタル信号の周期を自由に定められる。
【0069】
また、複屈折部材116は、結晶軸(光学軸)によって屈折率が異なる材質である。このため、
図5(B)に示すように、結晶軸A1に対して入射光の偏光方向が傾くと、屈折率は、その傾き角度θ
3によって変化する。具体的には、P偏光の屈折率n
p、S偏光の屈折率n
s、複屈折部材のX方向の屈折率n
x、複屈折部材のY方向の屈折率n
yは、それぞれ下記の式(5)及び式(6)の関係式が成立する。
n
s=n
y・・・・・(5)
【0070】
【0071】
θ3=0°であれば、入射光のP偏光は、結晶のX軸と揃うため、np=nxとなり、同様にS偏光もns=nyとなる。つまり、屈折率差Δnは、結晶軸A1への入射光によって変化させることができるため、下記の式(7)の関係式が成立する。
【0072】
【0073】
上記の式(7)で示される屈折率差Δnを前述したターゲット112の移動量Lと角度θ1、θ2との関係を示す式(4)に代入すると、下記の式(8)の関係式が成立する。
【0074】
【0075】
上記の式(8)に示すように、複屈折部材116の先端116aの角度θ1、複屈折部材116の底面116bと反射物114との角度θ2、及び結晶軸A1に対する入射光の傾き角度θ3によって、ターゲット112の移動量Lを変化できる。すなわち、ターゲット112の移動量Lに応じて複屈折部材116の角度θ1、θ2及び結晶軸A1に対する入射光の傾き角度θ3を調整できるので、ターゲット112の移動量Lのピッチを所望の大きさに自由に変えられるようになる。
【0076】
次に、本発明の一実施形態に係る変位検出装置に備わる絶対位置検出手段の構成について、図面を使用しながら説明する。
図6(A)は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置に備わる絶対位置検出手段の構成の概略を示す側面図であり、
図6(B)は、当該絶対位置検出手段に備わる可変反射膜の構成を示す平面図であり、
図6(C)は、当該絶対位置検出手段に備わる絶対位置情報出力部の構成を示すブロック図である。
【0077】
絶対位置検出手段140は、光源側ビームスプリッタ108(
図1参照)で分岐された光に対する反射光の光量の変化に基づいて被測定物10の計測方向(
図6(A)及び
図6(B)に示すX方向)の変位の絶対位置を検出する機能を有する。本実施形態では、絶対位置検出手段140は、被測定物10に載置され、光源102からの光b4がミラー142を介して照射されるプリズム144と、光b4に対するプリズム144での反射光b5、b6の光量を変化させて受光する絶対位置検出用受光部150と、絶対位置検出用受光部150で受光した反射光b5、b6の光量の変化に基づいてプリズム144の計測方向の変位に基づく絶対位置情報を出力する絶対位置情報出力部160(
図6(C)参照)と、を備える。
【0078】
本実施形態では、被測定物10の計測方向の変位の絶対位置情報を光学的に検出するために、
図6(A)に示すように、被測定物10に載置される光b4の照射対象が所定の厚さを有するプリズム144である。そして、プリズム144の頂面側には、
図6(B)に示すように、計測方向(
図6(B)に示すX方向)に沿って反射特性が変化する可変反射膜146が設けられる。
【0079】
絶対位置検出用受光部150は、
図6(A)に示すように、光b4の可変反射膜146での反射光b5を集光する第2のレンズ151を介して受光して光電交換をするフォトダイオード等からなる第5の受光素子152と、可干渉光b4の被測定物10での反射光b6を集光する第3のレンズ153を介して受光して光電交換をするフォトダイオード等からなる第6の受光素子154を備える。そして、第5の受光素子152と第6の受光素子154で光電して得られた信号は、
図6(C)に示す絶対位置情報出力部160へ送られる。
【0080】
絶対位置情報出力部160は、
図6(C)に示すように、第1の絶対位置情報演算器161、第2の絶対位置情報演算器162、比較器163、加算器164、及び絶対位置変換器165を備える。第1の絶対位置情報演算器161は、第5の受光素子152で光電変換した信号を電圧値に変換する。第2の絶対位置情報演算器162は、第6の受光素子154で光電変換した信号を電圧値に変換する。比較器163は、第1の絶対位置情報演算器161と第2の絶対位置情報演算器162の位置情報の差を演算する。加算器164は、第1の絶対位置情報演算器161と第2の絶対位置情報演算器162の出力信号を加算する。絶対位置変換器165は、比較器163と加算器164の情報を元に可変反射板146が付いたプリズム144の測定方向Xの変位及び絶対位置情報を出力する。
【0081】
このように、本実施形態の絶対位置検出手段140では、ミラー142を介して入射した可干渉光b4が可変反射膜146を通って、一方は、可変反射膜146で反射して、もう一方は、可変反射膜146を透過する。そして、可変反射膜146で反射した反射光b5と可変反射膜146を透過してから被測定物10で反射した反射光b6との光量差を第5の受光素子152と第6の受光素子154で拾って、差動を取って減算をすることによって、DCキャンセルをする。例えば、光量の変動やノイズがあったとしても、差動を取ることによって消すことができる。このため、より効率よく透過率と反射率の変化を読み取ることによって、ターゲットの絶対位置情報を確実に精度よく出力できるので、安定した高精度の変位検出が可能になる。
【0082】
次に、本発明の一実施形態に係る変位検出装置による変位検出の動作について、図面を使用しながら説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置による信号出力の概要を示すブロック図であり、
図8は、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段に備わるインクリメンタル信号発生器のリサージュ信号の角度を示す説明図であり、
図9は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置の各構成要素の信号出力を示すグラフである。
【0083】
本発明の一実施形態に係る変位検出装置100では、
図7に示すように、インクリメンタル信号発生器136から出力される相対位置情報を示すインクリメンタル信号と、絶対位置変換器165から出力されるプリズム144の測定方向Xの変位及び絶対位置情報に基づいて、絶対位置信号発生器170が絶対位置信号を出力する。
【0084】
相対位置情報出力部130(
図4参照)のインクリメンタル信号発生器136では、前段側に有する第1の差動増幅器131及び第2の差動増幅器132から供給された信号に基づき、ターゲット112の変位方向及び変位量を求め、インクリメンタル信号を発生する。その際に、第1の差動増幅器131(
図4参照)及び第2の差動増幅器132(
図4参照)から供給される信号に基づいて、
図8に示すリサージュ信号の角度θを求める。
【0085】
本実施形態では、第1の受光素子123と第2の受光素子124のDCキャンセルをすることによって得られるSINと、第3の受光素子127と第4の受光素子128のDCキャンセルをすることによって得られるCOSをそれぞれA/D変換後に角度演算をして
図8に示すリサージュ信号を作成する。具体的には、それぞれのxにSIN、yにCOSを書くと、円状のリサージュ曲線が描けて、インクリメンタル信号発生器136は、ターゲット112を横に測定方向に動かすと、出力が
図9に示す円を描く。これを単位時間の角度で求めて変位情報にする。かかる変位情報がインクリメンタル信号発生器136の出力として出るので、1周360度の角度情報が出てきて、また、戻って0度から360度まで同じように延々と繰り返す。
【0086】
例えば、1周期360度で100μmの場合では、θが0度の場合では、0mm、θが90度の場合では、25μm、θが180度の場合では、50μmとなる。その際に、インクリメンタル信号発生器136は、16BitのA/Dコンバータで分割することによって、100μm/65536=1.53nmの分解能で相対位置を出力することが可能になる。一方、絶対位置変換器165は、インクリメンタルの1周期100μmの番地情報を出力して、絶対位置信号発生器170で上位の100μmの桁の絶対位置が確定させて、インクリメンタル信号と合成される。
【0087】
本実施形態の変位検出装置100は、前述したような相対位置検出手段110、及び絶対位置検出手段140を備えることによって、1周期100μmに設計した場合に、ターゲット112より反射したビームの偏光状態は、
図9に示すように、縦偏光だったものが反時計回りの円偏光に変わり、そこから更に進むと、横方向の直線偏光に変わって、更に進むと時計回りの円偏光に変わってから元に戻って一周期の信号が取れる。
【0088】
これに対して、第1の受光素子123と第2の受光素子124の信号出力に関しては、反射光b2、b7、b9がそのまま通過してくる第1の受光素子123の出力がMAXのときに、第1の偏光ビームスプリッタ122での反射光b10を受光する第2の受光素子124の出力がMINになる。すなわち、第1の受光素子123の出力信号がsin曲線の場合に、第2の受光素子124の出力信号が-sin曲線になる。
【0089】
一方、ビームスプリッタ121での反射光b8は、λ/4波長板125を通過するので、第3の受光素子127と第4の受光素子128の信号出力に関しては、それぞれcos曲線、-cos曲線になる。
【0090】
本実施形態では、第1の差動増幅器131が第1の受光素子123と第2の受光素子124の信号出力の差動をとり、第2の差動増幅器132が第3の受光素子127と第4の受光素子128の信号出力の差動をとるので、第1の差動増幅器131と第2の差動増幅器132の出力信号は、それぞれ倍の振幅になる。その際に、
図9の横の線が0Vを示し、DCキャンセルをする。これによっては、光量が変化しても0V中心に変化するので、位相検出の誤差とならない。これらの差動増幅信号は、それぞれsin曲線、cos曲線になって、これをインクリメンタル信号発生器136によって1週360度の角度情報になる。
【0091】
この角度情報は、前述したリサージュ信号で求める。例えば、絶対位置情報の単位を100μmとした場合に100μmの中で360度のアブソリュート情報になっている。100μmを超えるとまた元に戻ってしまうことから、周期的な信号が作成されず、絶対位置検出が出来なくなってしまう。そこで今度は、絶対位置検出手段140で単純にレーザから来た光を表面と透過したものの差動を取ると、一方は、反射して、一方は透過する。このため、これのバランスがリニアに変わっていくので、引き算すると電圧が少しずつ増えていくような信号になっていく。本実施形態では、これら差動増幅器131、132の出力信号をA/D変換器133、134でデジタル変換するが、電圧の変化をデジタル変換して、これを引き算することによって、DCキャンセルされた信号が得られる。このため、インクリメンタル信号発生器136で作成されるインクリメンタル信号のデジタル角度値は、1周期で緩やかな勾配の増加を繰り返すグラフが得られ、絶対位置変換器165のデジタル絶対値は、所定の間隔で段階的にデジタル絶対値を増加させるグラフが得られる。
【0092】
このように、本実施形態では、相対位置検出手段100のターゲット112の複屈折部材116が計測方向に厚さが変化する断面がくさび状の構成として、かつ、複屈折部材116の先端116aを基端116a´に対して回動可能にするので、複屈折部材116の傾きと配置によって、インクリメンタル信号の周期を所望の大きさに変更できる。すなわち、従来のように、インクリメンタル信号の信号周期によって部品を変えずに、所望の周期に変更できるので、簡素な構成で幅広い信号周期に対応可能とした上でターゲットの相対位置情報を確実に精度よく出力できるので、安定した高精度の変位検出が可能になる。
【0093】
また、本実施形態では、変位を検出するための2つの光波が空間的に同じ光路を通るので、外乱の影響を受けずに、安定した高精度の変位検出が可能になる。更に、本実施形態では、相対位置検出手段110と絶対位置検出手段140を被測定物10の計測方向に対してインライン上に設けられるので、簡素な構成で幅広いインクリメンタル信号の周期に対応可能とした上でターゲットの相対位置情報も踏まえた絶対位置情報を確実に精度よく出力できるので、安定した高精度の変位検出が可能になるので、極めて大きな工業的価値を有する。
【0094】
なお、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段100のターゲット112の複屈折部材116の構成は、計測方向に対して厚さが変化する形状であれば、その断面がくさび状となる略三角柱形状に限定されない。例えば、
図10(A)に示すように、上に凸状の曲面形状の複屈折部材116cや、上に凹状の曲面形状の複屈折部材116d、正弦曲線形状の複屈折部材116eとしてもよい。このように、複屈折部材を計測方向に対して厚さが変化する形状とすることによって、かかる形状の変化に伴って、
図10(B)に示すように、計測方向の移動量に対する位置情報が変化するようになるので、複屈折部材の傾きと配置によって、インクリメンタル信号の周期を所望の大きさに変更できる。
【0095】
また、複屈折部材116は、複数の異なる部材から構成されてもよい。例えば、
図11(A)に示すように、2つの複屈折部材116f、116gが計測方向に沿って並列して構成されることによって、計測箇所によって信号出力の感度を変えられるようにしてもよい。また、
図11(B)に示すように、2つの複屈折部材116h、116iが光の入射方向、すなわち、入射光線方向に沿って積層されて構成されることによって、信号周期を変えられるようにしてもよい。このように、複屈折部材116を複数の異なる部材から構成されることによって、簡素な構成でターゲットの計測方向への移動に伴い反射光の偏光状態の変化を示す信号出力の感度や周期を容易に変えることができる。
【0096】
更に、複屈折部材116は、熱変動や光源の波長変動による影響を抑制するために、結晶軸の方向が異なる複数の部材が光の入射方向に沿って積層されて構成されることとしてもよい。例えば、
図12(A)に示すように、複屈折部材116jに対して90°直交した結晶軸で同等の作用を持つ他の複屈折部材116kを重ね合わせても良い。これにより、各複屈折部材116j、116kの結晶軸方向が互いに直交しているので、熱変動や光源の波長変動による影響を抑えることができる。また、
図12(B)に示すように、複屈折部材116lの断面を二等辺三角形状にし、測定時のインラインをその二等辺三角形の角度中心の位置にすることによって、アッべ誤差を抑えることができるようになる。更に、
図12(C)に示すように、複屈折部材116oに対して90°直交した結晶軸で同等の作用を持ち、かつ、同形状の他の複屈折部材116nを重ね合わせることによって、出射光線の角度ズレを抑制して、複屈折部材116n、116oの厚みを小さくすることも可能である。なお、これらの作用・効果は、後述する補正プリズム129、229に対しても同様に行うことによって、同等の効果を得ることができる。
【0097】
また、複屈折部材116に対し、入射光線が入射する面は、斜面に限定されず、他の面としてもよい。例えば、
図13に示すように、複屈折部材116pが斜面116p2の他に平面116p1を有する場合、斜面116p2の頂点側を反射板114に設置して、上側に配置される平面116p1に対して垂直に入射光線が入射すると、入射光線の屈折角を抑えることができるので、高精度な計測に対して効果的である。
【0098】
なお、本発明の一実施形態に係る相対位置検出手段110を備える変位検出装置100は、絶対位置検出手段140と相対位置検出手段110が被測定物10の計測方向に対してインライン上に設けられる構成となっていれば良いので、他の構成としてもよい。
【0099】
例えば、
図14に示すように、被測定物に載置する反射物を絶対位置検出手段240と相対位置検出手段210で共通の反射膜付きプリズム244にしてもよい。本変形例に係る変位検出装置200に備わる反射膜付きプリズム244は、
図14に示すように、箱型形状であり、内側に断面が略V字型のプリズム面244a、244bが設けられている。そして、反射膜付きプリズム244の頂面側には、複屈折部材216と可変反射膜246が計測方向に沿ってインライン上(同軸上)に設けられている。複屈折部材216と可変反射膜246は、インライン上に設けなくてもよいが、この場合、被測定物の姿勢変化により絶対位置検出と相対位置検出にアッペ誤差が発生する虞があるので、インライン上に設けることが好ましい。なお、複屈折部材216と可変反射膜246の構成及び作用は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置100に備わるものと同様なので、その説明については、省略する。
【0100】
本変形例では、各受光素子223、224、227、228、252、254で光の垂直方向での入射が可能となるようにするために、相対位置検出手段210では、ビームスプリッタ221の入力段側に、光源202からの光b´1の反射膜付きプリズム244での反射光b´2の反射光b´3を集光するための第4のレンズ217が設けられ、第1の偏光ビームスプリッタ222の第1の受光素子223側の出力段にミラー218が設けられ、第2の偏光ビームスプリッタ226の第3の受光素子227側の出力段にミラー219が設けられている。一方、絶対位置検出手段240では、
図14に示すように、ミラー242と反射板付きプリズム244との間に、偏光子255、偏光ビームスプリッタ256、及び1/4波長板257が設けられ、かつ、偏光ビームスプリッタ256の第5の受光素子252側の出力段にミラー258が設けられている。
【0101】
このように、本変形例の変位検出装置200は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置100と同様に、相対位置検出手段200のターゲットの複屈折部材216が計測方向に厚さが変化する断面がくさび状の構成として、かつ、複屈折部材216の先端216aを基端216bに対して回動可能にするので、複屈折部材216の傾きと配置によって、インクリメンタル信号の周期を所望の大きさに変更できる。このため、簡素な構成で幅広い信号周期に対応可能とした上でターゲットの相対位置情報を確実に精度よく出力できるので、安定した高精度の被測定物の変位検出が可能になる。
【0102】
また、被測定物に載置する反射物を絶対位置検出手段240と相対位置検出手段210で共通の反射膜付きプリズム244として、かつ、各受光素子223、224、227、228、252、254で光の垂直方向での入射が可能となる構成となっているので、装置の省スペース化が図れるので、極めて大きな工業的価値を有する。
【0103】
なお、本実施形態では、
図14に示すように、光源202がファイバで導入される場合には、光源202の温度を測定することによって波長変動を推定し補正してもよい。一方、光源202がファイバでなく、LDがセンサヘッド部に含まれる形状の場合では、LDやセンサヘッド部付近に温度計を配置することによって同様の波長変動補正を行えるようになる。
【0104】
また、複屈折部材216の光学軸は、計測方向に対して必ずしも平行、直交である必要はない。例えば、
図14のx軸に平行に又は直角に光学軸をもつ複屈折部材216において、光学軸をx軸に対してz軸を回転軸として光学軸を45度回転させた場合、光源202が直線偏光であるときには,光源202、相対位置検出用受光部220をz軸を回転軸として45度傾ければよい。一方、光源202が円偏光の場合では、光源202を回転する必要はない。このようにして、光学軸の自由度を高めることによって、フレキシブルに高精度な変位検出が可能になる。
【0105】
更に、本実施形態では、光源ユニット(センサヘッド)からターゲットとなる複屈折部材216に入射される光において、偏光状態を円偏光にしておいてもよい。入射光の偏光状態が円偏光の場合では、センサヘッドのアジマスがずれても、複屈折媒質における常光、異常光の電界成分比を常に等量とすることができる。
【0106】
また、本実施形態では、
図14に示すように、ビームスプリッタ221と第2の偏光ビームスプリッタ226との間に1/4波長板225が設けられているが、これを取り除き、ビームスプリッタ221の直前に1/4波長板225を配置してもよい。このとき、1/4波長板225の光学軸は、複屈折部材の光学軸に対して斜め45度となるようにして、干渉信号検出部のPBSのP偏光軸、S偏光軸の方位角を調整することによって,+/-sin信号、+/-cos信号を得られるように調整することが好ましい。
【0107】
なお、
図14に示す変位検出装置200の相対位置検出手段210には、ターゲットの計測方向への移動に伴い反射光の偏光状態の変化を検出する相対位置検出用受光部220が1つ設けられているが、計測方向に沿って2つ設けてもよい。例えば、
図15に示すように、第1相対位置検出用受光部220aと第2相対位置検出用受光部220bを計測方向に沿って並べて配置して、2つの相対位置検出用受光部220a、220bを同一の光源202で動作させて複屈折部材216の2点における位相変動量を得ることによって、2点間の差分に基づいて波長変動量を推定し補正する。
【0108】
例えば、波長変動による常光、異常光の位相差Φは、光の波長をλ、波長λの時にΦの位相差を与える複屈折部材216の厚さd、常光と異常光の屈折率差をΔnとすると、下記の式(9)で表される。
Φ=Δn*d/λ・・・・・(9)
【0109】
波長λの時にΦの位相差を与える複屈折部材216の厚さdは、複屈折部材216の斜面の傾きをk、複屈折部材216の計測方向の移動量をxとすると、下記の式(10)で表される。
d=k*x・・・・・(10)
【0110】
このため、第1相対位置検出用受光部220aで検出される常光、異常光の位相差ΔΦ1は、光の波長をλ、λ´、波長λ、λ´の時にΔΦ1、ΔΦ´1の位相差を与える複屈折部材216の厚さd1、常光と異常光の屈折率差をΔnとすると、下記の式(11)乃至(13)で表される。
Φ1=Δn*d1/λ・・・・・(11)
Φ´1=Δn*d1/λ´・・・・(12)
ΔΦ1=Φ´1-Φ1・・・・・・(13)
【0111】
一方、第2相対位置検出用受光部220bで検出される常光、異常光の位相差ΔΦ2は、光の波長をλ、λ´、波長λ、λ´の時にΔΦ2、ΔΦ´2の位相差を与える複屈折部材216の厚さd2、常光と異常光の屈折率差をΔnとすると、下記の式(14)乃至(16)で表される。
Φ2=Δn*d2/λ・・・・・(14)
Φ´2=Δn*d2/λ´・・・・(15)
ΔΦ2=Φ´2-Φ2・・・・・・(16)
【0112】
上記の式(9)乃至(16)より、第1相対位置検出用受光部220aと第2相対位置検出用受光部220bで検出される常光、異常光の位相差ΔΦ12は、下記の式(17)で示される。
ΔΦ12=Δn*k*{(λ-λ‘)/λλ’ }*Δx・・・・・(17)
【0113】
このため、変調後の波長λ´は、下記の式(18)で示される。
λ´={Δn*k*λ*Δx}/{ΔΦ12*λ+Δn*k*Δx}・・・(18)
【0114】
このように、本実施形態では、波長変動による常光、異常光の位相差が複屈折部材216の厚さdに比例するため、Δxと複屈折部材216の傾きkが分かっていれば、波長変動量を見積もることが出来る。このため、各相対位置検出用受光部220a、220bで検出した反射光の偏光状態の位相変動量の差分に基づいて波長変動量を容易に推定できるので、かかる推定に基づいて波長変動量を補正することによって、より高精度な変位検出が可能になる。
【0115】
なお、本発明の一実施形態の変形例に係る変位検出装置200に備わる反射膜付きプリズム244の形状は、
図14に示す形状に限定されない。例えば、
図16に示すように、反射膜付きプリズム244´の断面が左右対称な六角形としてもよい。
【0116】
具体的には、反射膜付きプリズム244´は、
図16に示すように、プリズム面244´a、244´bが反射膜付きプリズム244´の底面側の近傍に設けられ、反射膜付きプリズム244´の頂面側の略中央に反射膜248が設けられている。なお、複屈折部材216と可変反射膜246の構成及び作用は、本発明の一実施形態に係る変位検出装置100に備わるものと同様なので、その説明については、省略する。
【0117】
反射膜付きプリズム244´をこのような構成とすることによって、反射膜付きプリズム244´への入射光b´1、b´10のプリズム面244´aでの反射光b´2a、b´11aが反射膜248で反射されて、当該反射膜248での反射光b´2b、b´11bがプリズム面244´bで反射される。このため、反射膜付きプリズム244´が計測方向Xに対して垂直方向となるY方向に移動したとしても、入射光b´1、b´10と当該プリズム面244´bでの反射光b´3、b´12の間隔I1が一定になるので、絶対位置検出手段240と相対位置検出手段210に備わる各受光素子223、224、227、228、252、254(
図14参照)による受光が安定するようになる。このため、絶対位置検出手段240(
図14参照)と相対位置検出手段210(
図14参照)による安定した高精度の変位検出が可能になる。
【0118】
また、変位検出装置100、200において、絶対位置検出手段140、240の絶対位置信号1周期の長さに対して測定に用いるビームの径が十分に小さいと言えない場合に、
図17及び
図18に示すように、ビームが複屈折部材116、216へ入射する前に補正プリズム129、229を透過させても良い。その際に、補正プリズム129、229は、複屈折部材116、216と同等の作用を持つ部材、例えば、同材質・同形状の部材を使用する。ただし、補正プリズム129、229の結晶の光学軸は、複屈折材料116、216に対して90°直交している。また、設置箇所は、複屈折部材116、216に入射前後のどちらでも良いが、何れか一方にのみに設置する。
【0119】
このような構成の補正プリズム129、229を複屈折部材116、216に入射前後の何れかに設けることによって、複屈折部材116、216を透過したビーム分布内の偏光状態が均一となる。これにより、絶対位置検出手段140、240による安定した高精度の変位検出が可能となる。なお、
図19(A)に示すように、補正プリズム129a、229aは、複屈折部材116、216と同等の作用を持つ部材、例えば、同材質・同形状の部材を使用して、向かい合わせて配置しても良い。また、
図19(B)に示すように、補正プリズム129b、229bは、複屈折部材116、216に対して左右対称に配置しても、同等の効果を得ることができる。
【0120】
また、変位検出装置200に対して、
図20に示すように、第1のレンズ204と光源側ビームスプリッタ208の間に偏光板230を搭載しても良い。偏光板230をこのように設けることによって、変位検出に用いるビームをより高消光比とすることができる。これによって、偏光を利用した変位検出装置200では、より高精度の変位検出が可能となる。なお、このとき、絶対位置検出手段240では、
図20に示すように、ミラー242と偏光ビームスプリッタ256との間の偏光子255(
図14及び
図18を参照)の設置を省略してもよい。なお、偏光板230は、光源202から複屈折部材216の間であれば、何処に配置しても良いが、複屈折部材216の直前に偏光板230の結晶軸を複屈折部材216の結晶軸に対して45°ずらして配置することが最も効果的である。その場合、測定物がZ軸方向に回転しても、その影響を抑えることができるので好ましい。また、偏光板230を複屈折部材216に貼り付けた場合、測定物がZ軸方向に回転しても偏光板230も共に回転するため、その影響を抑えることができる。
【0121】
さらに、
図21に示すように、本実施形態の変位検出装置300の相対位置検出手段310に備わる相対位置検出用受光部320に、反射光に対してアジマス補正を行うアジマス補正部380を更に設けてもよい。本実施形態では、アジマス補正部380は、
図21に示すように、入射光用ビームスプリッタ381、入射光用反射プリズム382、アジマス補正用偏光板383、アジマス回転検出用レンズ384、アジマス回転検出用ビームスプリッタ385、アジマス回転検出用偏光板386、パワーモニター用反射プリズム387、パワーモニター用受光素子388、及び角度測定用受光素子389を備える。なお、本実施形態では、アジマスの検出角感度を高めるために、アジマス回転検出用ビームスプリッタ385の直前、又は角度測定用受光素子389の直前に、1/2波長板やダブプリズム等のような偏光方位角の変化を大きくするような光学素子を設けてもよい。
【0122】
このように、アジマス補正部380を設けることによって、光源302からの入射光b″1が入射光用ビームスプリッタ381で分岐されて、その分岐光b″15が入射光用反射プリズム382で反射する。そして、その反射光b″16が反射膜付きプリズム344の略V字型のプリズム面344a、344bで反射して、その反射光b″18がアジマス補正用偏光板383とアジマス回転検出用レンズ384を経て、アジマス回転検出用ビームスプリッタ385に入射する。
【0123】
アジマス回転検出用ビームスプリッタ385に入射した反射光b″18は、分岐光b″19がパワーモニター用反射プリズム387で反射して、その反射光b″20がパワーモニター用受光素子388に入射する。一方、アジマス回転検出用ビームスプリッタ385に入射した反射光b″18の透過光b″21は、アジマス回転検出用偏光板386を透過してから角度測定用受光素子389に入射する。
【0124】
角度測定用受光素子389は、アジマス補正用偏光板383とアジマス回転検出用偏光板386の角度差を読み取り、アジマス角度を測定する。アジマスが回転するとリサージュが歪み、当該歪みが計測誤差の要因となるため、その補正をする必要がある。その際に、アジマスの角度ズレ量が事前に分かっていれば補正が行えるため、アジマス角度の検出機能が必要となる。そこで、本実施形態では、相対位置検出用受光部320に反射光に対してアジマス補正を行うアジマス補正部380を設けている。このため、偏光板383、386を透過した反射光の角度差による差分が修正されて、より高精度な変位検出が可能になる。なお、本実施形態における変位検出装置300の相対位置検出手段310の他の構成要素、及び絶対位置検出手段340の構成、及び動作は、本発明の一実施形態の変形例に係る変位検出装置200と同様であるので、その説明は、省略する。
【0125】
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0126】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、変位検出装置及び相対位置検出手段の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0127】
10 被測定物、100、200、300 変位検出装置、102、202、302 光源、104、204 第1のレンズ、106、255 偏光子、108、208 光源側ビームスプリッタ、110、210、310 相対位置検出手段、112 ターゲット、114、244、344 反射物、116、216、316 複屈折部材、116a 先端、116a´ 基端、116b 底面、120、220、320 相対位置検出用受光部、121、221、321 ビームスプリッタ、122、222、322 第1の偏光ビームスプリッタ、123、223、323 第1の受光素子、124、224、324 第2の受光素子、125、225、325 1/4波長板、126、226、326 第2の偏光ビームスプリッタ、127、227、327 第3の受光素子、128、228、328 第4の受光素子、129、229 補正プリズム、130 相対位置情報出力部、131 第1の差動増幅器、132 第2の差動増幅器、133 第1のA/D変換器、134 第2のA/D変換器、135 波形補正処理部、136 インクリメンタル信号発生器、140、240、340 絶対位置検出手段、142、242、342 ミラー、144 プリズム、146、246、346 可変反射膜、150 絶対位置検出用受光部、151、251、351 第2のレンズ、152、252、352 第5の受光素子、153、253、353 第3のレンズ、154、254、354 第6の受光素子、160 絶対位置情報出力部、161 第1の絶対位置情報演算器、162 第2の絶対位置情報演算器、163 比較器、164 加算器、165 絶対位置変換器、170 絶対位置信号発生器、230 偏光板、380 アジマス補正部