(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】冷媒検査方法
(51)【国際特許分類】
F25B 49/02 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
F25B49/02 Z
F25B49/02 550
(21)【出願番号】P 2018030821
(22)【出願日】2018-02-23
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】396003216
【氏名又は名称】株式会社イチネンTASCO
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】大西 正之
(72)【発明者】
【氏名】木村 耕太郎
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-008670(JP,A)
【文献】特開平11-132607(JP,A)
【文献】米国特許第05371019(US,A)
【文献】特開昭63-255658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00 ~ 45/00
F25B 49/00 ~ 49/02
G01N 1/00
G01N 31/00
G01N 31/22
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒管のサービスポートと冷媒ガスの収集容器とを接続する準備工程と、
前記サービスポートを開放して所定量の前記冷媒ガスを排出し、当該冷媒ガスを前記収集容器に収集した後、前記サービスポートを閉じる収集工程と、
前記収集工程で収集した前記冷媒ガス中の炭化水素を検知する検知工程と、
を備え、
前記収集容器はシリンジであり、
前記準備工程は、
側面に孔が形成され、プランジャが挿入された前記シリンジの先端に連通管の一端を接続するとともに、当該連通管の他端を流体の流量を調節可能なコントロールバルブを介して前記サービスポートに接続する工程であり、
前記収集工程は、
前記コントロールバルブを開放して、前記シリンジ内に前記孔の位置まで前記冷媒ガスを導入した後、前記コントロールバルブを閉じる工程であり、
前記検知工程は、
管内を通過する気体の炭化水素の存在を検知可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴とする冷媒検査方法。
【請求項2】
前記収集工程で収集した前記冷媒ガスの変質を検知する変質検知工程を更に備えることを特徴とする
請求項1に記載の冷媒検査方法。
【請求項3】
前記変質検知工程は、前記冷媒ガスの酸化度を測定することを特徴とする
請求項2に記載の冷媒検査方法。
【請求項4】
前記変質検知工程は、前記冷媒ガスに含有するフッ化カルボニル濃度を測定することを特徴とする
請求項2に記載の冷媒検査方法。
【請求項5】
前記変質検知工程は、管内を通過する前記冷媒ガスの変質を表示可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴とする
請求項2から請求項4のいずれに記載の冷媒検査方法。
【請求項6】
冷媒管のサービスポートと冷媒ガスの収集容器とを接続する準備工程と、
前記サービスポートを開放して所定量の前記冷媒ガスを排出し、当該冷媒ガスを前記収集容器に収集した後、前記サービスポートを閉じる収集工程と、
前記収集工程で収集した前記冷媒ガス中の炭化水素を検知する検知工程と、
前記収集工程で収集した前記冷媒ガスの変質を検知する変質検知工程と、
を備え、
前記変質検知工程は、前記冷媒ガスに含有するフッ化カルボニル濃度を測定することを特徴とする冷媒検査方法。
【請求項7】
前記収集容器はシリンジであり、
前記準備工程は、
側面に孔が形成され、プランジャが挿入された前記シリンジの先端に連通管の一端を接続するとともに、当該連通管の他端を流体の流量を調節可能なコントロールバルブを介して前記サービスポートに接続する工程であり、
前記収集工程は、
前記コントロールバルブを開放して、前記シリンジ内に前記孔の位置まで前記冷媒ガスを導入した後、前記コントロールバルブを閉じる工程であり、
前記検知工程は、
管内を通過する気体の炭化水素の存在を検知可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴とする
請求項6に記載の冷媒検査方法。
【請求項8】
前記変質検知工程は、管内を通過する前記冷媒ガスの変質を表示可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴とする
請求項7に記載の冷媒検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として空気調和機・冷凍機の冷媒を検査する冷媒検査方法に関し、特に、機器の指定以外の冷媒の存在を検知する冷媒検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプ方式の空気調和機及び冷凍装置といった冷凍空調機器における冷媒には冷凍機油が相互溶解しており、冷凍機油の酸化により有害物質が分解生成され、機器の故障の原因となる問題が知られている。そして、上述のような冷媒の劣化を検知するために、冷媒の酸化を判断可能な色素が塗布された簡易判断部を冷媒管の経路上に配置した冷媒酸化判断装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、様々な事情から冷媒管内に機器メーカー指定ではない冷媒ガスが使用されている場合がある。指定外の冷媒ガスが使用されている場合、機器の性能が保証されず予期せぬ不具合が発生するおそれがある。また、不燃性のガスが冷媒ガスとして指定されている機器に、燃焼性の冷媒ガスが使用されている場合には不測の事故のおそれもある。
【0005】
しかし、これまで点検・修理・メンテナンスの前に冷媒ガスが指定されているものであるか否かを簡易的に確認する作業は行われていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、冷媒ガスの一部を取り出して、当該冷媒ガスが指定のものであるかを簡易的に確認することができる冷媒検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷媒検査方法は、冷媒管のサービスポートと冷媒ガスの収集容器とを接続する準備工程と、前記サービスポートを開放して所定量の前記冷媒ガスを排出し、当該冷媒ガスを前記収集容器に収集した後、前記サービスポートを閉じる収集工程と、前記収集工程で収集した前記冷媒ガス中の炭化水素を検知する検知工程と、を備え、前記収集容器はシリンジであり、前記準備工程は、側面に孔が形成され、プランジャが挿入された前記シリンジの先端に連通管の一端を接続するとともに、当該連通管の他端を流体の流量を調節可能なコントロールバルブを介して前記サービスポートに接続する工程であり、前記収集工程は、前記コントロールバルブを開放して、前記シリンジ内に前記孔の位置まで前記冷媒ガスを導入した後、前記コントロールバルブを閉じる工程であり、前記検知工程は、管内を通過する気体の炭化水素の存在を検知可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴としている。
【0008】
本発明の冷媒検査方法は、前記収集工程は、側面に孔が形成され、プランジャが挿入されたシリンジの先端に連通管の一端を接続するとともに、当該連通管の他端を流体の流量を調節可能なコントロールバルブを介して前記サービスポートに接続し、前記コントロールバルブを開放して、前記プランジャが前記孔を越える位置まで前記シリンジ内に前記冷媒ガスを導入した後、前記コントロールバルブを閉じる工程であり、前記検知工程は、管内を通過する気体の炭化水素の存在を検知可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴としている。
【0009】
本発明の冷媒検査方法は、前記収集工程で収集した前記冷媒ガスの変質を検知する変質検知工程を更に備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の冷媒検査方法は、前記変質検知工程は、前記冷媒ガスの酸化度を測定することを特徴としている。
【0011】
本発明の冷媒検査方法は、前記変質検知工程は、前記冷媒ガスに含有するフッ化カルボニル濃度を測定することを特徴としている。
【0012】
本発明の冷媒検査方法は、前記変質検知工程は、管内を通過する冷媒ガスの変質を表示可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴としている。
本発明の冷媒検査方法は、冷媒管のサービスポートと冷媒ガスの収集容器とを接続する準備工程と、前記サービスポートを開放して所定量の前記冷媒ガスを排出し、当該冷媒ガスを前記収集容器に収集した後、前記サービスポートを閉じる収集工程と、前記収集工程で収集した前記冷媒ガス中の炭化水素を検知する検知工程と、前記収集工程で収集した前記冷媒ガスの変質を検知する変質検知工程と、を備え、前記変質検知工程は、前記冷媒ガスに含有するフッ化カルボニル濃度を測定することを特徴としている。
本発明の冷媒検査方法は、前記収集容器はシリンジであり、前記準備工程は、側面に孔が形成され、プランジャが挿入された前記シリンジの先端に連通管の一端を接続するとともに、当該連通管の他端を流体の流量を調節可能なコントロールバルブを介して前記サービスポートに接続する工程であり、前記収集工程は、前記コントロールバルブを開放して、前記シリンジ内に前記孔の位置まで前記冷媒ガスを導入した後、前記コントロールバルブを閉じる工程であり、前記検知工程は、管内を通過する気体の炭化水素の存在を検知可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴としている。
本発明の冷媒検査方法は、前記変質検知工程は、管内を通過する前記冷媒ガスの変質を表示可能な検知管の一端を前記孔に挿入し、前記検知管の他端を吸引することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷媒検査方法によると、所定量の冷媒ガスのみを排出させることで、不要な冷媒ガスの排出を抑制し、環境負荷を最小限に抑えることができる。また、収集工程で収集した冷媒ガス中の炭化水素を検知するので、炭化水素が検知されれば炭化水素系冷媒が使用されていると判断することができるとともに、炭化水素が検知されなければフルオロカーボン系冷媒が使用されていると判断することができ、簡易的に冷媒がいずれの系統のものであるかを確認することができる。
【0014】
本発明の冷媒検査方法によると、冷媒ガスを一旦シリンジ内に導入するので、冷媒管から排出される冷媒ガスの量を管理することができ、必要最小限の冷媒ガスのみを冷媒管から排出させることができる。また、シリンジの側面に孔を設けることで、シリンジ内が高圧になることを抑制でき、安全に冷媒ガスを収集できる。さらにコントロールバルブを設けることで冷媒ガスが排出される流量を調節し、不要な冷媒ガスの排出を抑制できる。そして、検知工程は、管内を通過する気体の炭化水素の存在を検知可能な検知管の一端を孔に挿入して他端を吸引するものであるので、大掛かりな装置を必要とせず、現場で簡易的に炭化水素を検知することができる。
【0015】
本発明の冷媒検査方法によると、炭化水素のみならず冷媒ガスの変質をも検知することができるので、冷媒ガスの収集の準備工程を一度で済ますことができ、作業効率を高めることができる。
【0016】
本発明の冷媒検査方法によると、変質検知工程が冷媒ガスの酸化度を測定するものであるので、冷媒ガスに含まれる冷凍機油の酸化によって生じる有害な分解生成物の量を推測することができ、冷媒ガスの変質を検知して冷媒ガスの交換時期を適切に判断することができる。
【0017】
本発明の冷媒検査方法によると、変質検知工程が冷媒ガスに含有する有害なフッ化カルボニル濃度を測定するものであるので、冷媒ガスの変質をも検知して冷媒ガスの交換時期を適切に判断することができる。
【0018】
本発明の冷媒検査方法によると、変質検知工程が管内を通過する冷媒の変質を表示可能な検知管の一端を孔に挿入し、検知管の他端を吸引するものであるので、大掛かりな装置を必要とせず、現場で簡易的に冷媒の変質を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】(A)はシリンジ及びプランジャの外観構成を示す斜視図、(B)はシリンジの先端に連通管及び気密継手を介してコントロールバルブを接続した状態を示す図。
【
図3】(A)はコントロールバルブをサービスポートに接続する前の状態であり、(B)はコントロールバルブをサービスポートに接続した後の状態を示す図。
【
図4】(A)はコントロールバルブを開放しシリンジ内に冷媒ガスを収集する収集工程を行った状態を示す図、(B)は、検知管の両端をそれぞれ切断する状態を示す図、(C)は検知管の一端を吸引用の手動ポンプに接続する状態を示す図。
【
図5】(A)は検知管の手動ポンプが接続されている端部と反対側の端部をシリンジの孔に挿入する状態を示す図、(B)は手動ポンプのハンドル部を操作して検知管の他端からガスを吸引して、シリンジ内の冷媒ガスを検知管内に導入する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る冷媒検査方法の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本実施形態の冷媒検査方法は、例えば空気調和機や冷凍器といったヒートポンプ式の冷凍空調機器の冷媒管内に封入されている冷媒ガスが機器メーカー指定のガスであるか否かを機器が設置されている現場で簡易的に検査する方法である。この冷媒検査方法を用いた検査は、例えば、冷凍空調機器の点検・修理・メンテナンス作業の前に検査することで、予期しない冷媒ガスが封入されていることによって生じる危険を回避することができる。冷媒ガスとしては、CFC系、HCFC系、HFC系、HFO系のフルオロカーボン系冷媒と、プロパン、n-ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、n-ペンタン、シクロペンタンイソブタン、ノルマルブタン等の炭化水素系冷媒と、二酸化炭素冷媒と、アンモニア冷媒と、を含む。本実施形態においては、例えば機器メーカー指定の冷媒ガスがフルオロカーボン系冷媒であり、冷媒検査方法は、冷媒管内にフルオロカーボン系冷媒が封入されているか、炭化水素系冷媒が封入されているかを検査する。
【0021】
まず冷媒検査方法は、
図1に示すように、冷媒管のサービスポート1から冷媒ガスの一部を収集するために、サービスポート1と収集用のシリンジ2とを繋げる収集準備工程と、サービスポート1から所定量の冷媒ガスを収集する収集工程と、検知管3内に冷媒ガスを吸引する準備を行う検知準備工程と、検知管3内に収集工程で収集した冷媒ガスを吸引して、冷媒ガス中の炭化水素を検知する検知工程と、再びサービスポート1から所定量の冷媒ガスを収集する再収集工程と、収集工程で収集した冷媒ガス中の変質を検知する変質検知工程と、を備えている。本発明における「収集容器」は本実施形態においてはシリンジ2が相当する。なお、収集容器は、シリンジ2に限定されるものではなく、容積が可変であり、内部に冷媒ガスを閉じ込めることができる容器であればどのようなものであっても良い。また、サービスポート1は例えば空気調和機の室外機に高圧側と低圧側の2つが設けられている。本発明における「サービスポート」は低圧側のサービスポート1である。
【0022】
収集準備工程(S20)では、
図2の(A)及び(B)に示すように、シリンジ2にプランジャ4を挿入するとともに、シリンジ2の先端とコントロールバルブ5とを連通管6によって接続する。シリンジ2の側面には内部に繋がる孔7が形成されている。孔7は、例えば直径6mm程度の円形である。孔7は後述する検知管3を挿入することができる大きさが必要である。孔7の大きさは、冷媒ガスの大気への放出を可能な限り防ぐためには、必要最小限の大きさであることが好ましい。孔7は、シリンジ2の10mlの目盛りの位置に接するように配置されており、シリンジ2の内部の容積が10ml以上となった場合に孔7が徐々に開放されて外部とシリンジ2内部とが連通する。このようにシリンジ2が10mlの位置に孔7を有することで、後述のようにサービスポート1からシリンジ2内に冷媒ガスが導入される際に、サービスポート1から排出される冷媒ガスの単位時間当たりの流量が大きすぎた場合にもシリンジ2内の圧力が大きくなりすぎることを抑制することができ、安全に後述の収集工程を行うことができる。なお、孔7の位置は炭化水素を検知するために必要最低限の量の冷媒ガスをシリンジ2の収集することができる位置であればよい。
【0023】
シリンジ2の先端には連通管6の一端がホースクランプ8によって気密性を保持して接続されている。連通管6は可撓性を有する樹脂製の管である。連通管6の他端は気密継手9を介してコントロールバルブ5が接続されている。コントロールバルブ5は、
図2及び
図3に示すように、一端が連通管6に接続されるとともに、他端が冷媒管のサービスポート1に接続されており、回転可能な円盤状に形成されたバルブハンドル10を回転させることにより、コントロールバルブ5内に形成されている虫押し部11がサービスポート1側に突出又は退入することによって、サービスポート1内に形成されているバルブコア12を移動させて、サービスポート1を開閉している。また、コントロールバルブはバルブハンドル10を回転させることにより、ガス流路を徐々に開放又は閉塞できる構造となっており、これによってコントロールバルブ5内を流れる冷媒ガスの流量を調節することができる。サービスポート1にコントロールバルブ5を接続する際には、コントロールバルブ5のバルブハンドル10を回転させてコントロールバルブ5を閉塞状態に保持してサービスポート1に接続し固定する。
【0024】
以上のように、シリンジ2にプランジャ4を挿入するとともに、シリンジ2の先端とサービスポート1とを連通管6、気密継手9、及びコントロールバルブ5を介して接続して収集準備工程を終了する。
【0025】
次に収集工程(S21)では、
図4(A)に示すように、コントロールバルブ5のバルブハンドル10を開放側に回転して、サービスポート1を開放する。サービスポート1を開放すると、冷媒管内の気圧と大気圧との差によって、サービスポート1から冷媒ガスが排出され、コントロールバルブ5、気密継手9、連通管6を通ってシリンジ2内に冷媒ガスが導入される。コントロールバルブ5は通過する冷媒ガスの単位時間当たりの流量が大きくならないように弁の開放量を少なく調節することで、シリンジ2内に冷媒ガスが一気に大量に流れ込むことを防止し、過剰な冷媒ガスの排出を抑制することができる。シリンジ2内のプランジャ4の先端の位置が10mlを超えると、コントロールバルブ5のバルブハンドル10を閉塞側に回転して、サービスポート1を閉塞し、冷媒ガスの排出を停止し、収集工程を終了する。
【0026】
検知準備工程(S22)では、
図4(B)及び(C)に示すように、管内を通過する気体中の炭化水素の存在を検知可能な検知管3の一端を吸引用の手動ポンプ13に接続する。検知管3は両端が閉じられた筒状のガラス管であり、内部に炭化水素が存在した場合に変色する検知剤が注入されている。検知管3を手動ポンプ13に接続する前に、
図4(B)に示すように、検知管3の両端をそれぞれ切断し、検知管3内に冷媒ガスを導入可能にする。検知剤としては、例えば管内部に保持されている酸化クロムが炭化水素の脱水素化に伴って還元することにより変色することで、炭化水素の存在を検知するものを用いることができる。なお、検知管3は上述の酸化クロムの還元を利用した検知管3でなくてもよいが、炭化水素の存在を現場で短時間で検知することができることが好ましい。また、検知準備工程は、説明の都合上、収集工程の後に記載しているが、収集工程よりも前に行うものであってもよい。
【0027】
手動ポンプ13は、
図4(C)に示すように、先端に検知管3の端部を気密性を確保しつつ保持可能な取り付け部15を有する筒状のシリンダ部14と、シリンダ部14の内部を摺動して、取り付け部15からガスを吸引するピストン部16と、ピストン部16の摺動を操作するハンドル部17とを有している。手動ポンプ13は、吸引するガスの体積を視認可能に構成されていることが好ましい。
【0028】
次に検知工程(S23)では、
図5(A)に示すように、検知管3の手動ポンプ13が接続されている端部と反対側の端部を、シリンジ2の孔7に挿入する。このとき収集工程でシリンジ2内には冷媒ガスが収集されており、プランジャ4をその先端が孔7を開放するように摺動させ、孔7に検知管3の一端を挿入する。そして、
図5(B)に示すように、手動ポンプ13のハンドル部17を操作して検知管3の他端からガスを吸引することで、シリンジ2内の冷媒ガスを検知管3内に導入する。手動ポンプ13は吸引したガスの体積が10mlとなるまで吸引する。そして所定時間経過後に検知管3の色の変化を確認し、炭化水素を検知したか否か判断する。本実施形態においては、機器メーカー指定の冷媒ガスがフルオロカーボン系冷媒であるので、炭化水素が検知されなかった場合に正常の可能性が高いと判断する。一方、炭化水素が検知された場合には、炭化水素系冷媒が封入されている可能性が高いと判断することができ、メーカーの保証がなされないことや冷媒ガスの燃焼性の高さから生じる危険を回避するために、点検・修理・メンテナンス作業を行わずに、作業を中断する。このように、大掛かりな装置を必要とせず、現場で簡易的に炭化水素を検知することができるので、簡単に長い時間を掛けることなく点検・修理・メンテナンス作業の安全性を確保することができる。
【0029】
このように、収集工程で収集される冷媒ガスは10mlであり、検知工程で炭化水素の検知に使用される冷媒ガスも10mlであるので、ごく僅かな必要最低限の冷媒ガスのみで冷媒ガスの検査を行うことができ、環境負荷を低減し作業の安全性を高めることができる。なお、収集工程で収集し、検知工程で検知に使用する冷媒ガスの量は10mlに限定されるものではなく、炭化水素の検知に必要な最低限の量の冷媒ガスであればよい。
【0030】
検知工程を完了し、冷媒ガスがメーカー所定のものであると判断された場合には、そのまま点検・修理・メンテナンス作業を開始してもよいが、本実施形態の冷媒検査方法では、さらに、冷媒ガスの変質を検知する工程を行う。再収集工程(S24)は、前述の収集工程で収集した冷媒ガスを検知工程で使用したので、再度冷媒ガスを収集する工程である。検知工程で使用する冷媒ガスよりも多くの冷媒ガスを前述の収集工程で収集する場合は、改めて再収集工程を行う必要はないが、冷媒ガスの大気中への飛散を極力おさえるためには、変質度検知工程の直前に再収集工程を行ったほうがよい。再収集工程は、上述の収集工程と同じ作業を行う工程であるので、具体的な説明は省略する。
【0031】
再収集工程を完了し、シリンジ2内に10mlの冷媒を再度収集すると、次に変質度検知準備工程を行う。変質度検知準備工程(S25)では、管内を通過する気体の酸性度を検知可能な検知管18の一端を吸引用の手動ポンプ13に接続する。検知管18は、内部にpH指示薬等の色素が注入されており、通過する冷媒ガスの酸化の程度を示すことができるものである。酸性度を検知可能な検知管18の構成はこれに限定されるものではなく、種々の公知の検知管18を使用することができる。変質度検知準備工程は検知管18の内容以外の構成は、検知準備工程と同様の工程であるので
図4(C)に検知管18を括弧で記載して説明を省略する。
【0032】
なお、冷媒ガスの変質度を検知する検知管18は、冷媒ガスの酸化の程度を表示するものに替えて、冷媒ガスに含有されるフッ化カルボニル濃度を測定するものであっても良い。フッ化カルボニル濃度を検知する検知管18としては、例えば、検知管18内に水分を含有する保湿剤を収納し、フッ化カルボニルを加水分解させてフッ化水素を発生させ、保湿剤に溶解している水素イオン濃度によって変色する呈色指示薬と反応させることでフッ化カルボニル濃度を示すことができるものを用いることができる。
【0033】
変質度検知工程(S26)では、検知管18の手動ポンプ13が接続されている端部と反対側の端部を、シリンジ2の孔7に挿入する。そして、手動ポンプ13のハンドル部17を操作して再収集工程でシリンジ2内に収集された冷媒ガスを検知管18の他端から吸引し、シリンジ2内の冷媒ガスを検知管18内に導入する。そして所定時間経過後に検知管18の色の変化を確認し、冷媒ガスの酸化度又は冷媒ガス中のフッ化カルボニル濃度を検知する。冷媒ガスの酸化度やフッ化カルボニル濃度が高い場合には、冷媒ガス中に溶解している冷凍機油が劣化していると推定されるので、冷媒ガスを交換する必要があると判断することができる。
【0034】
以上のような冷媒検査方法を用いて冷媒ガスの検査を行った後、問題がなければ機器の点検・修理・メンテナンス等の作業(S27)を行う。以上のように、予め冷媒ガスがメーカー指定のものと変更がないかを確認することができ、特に、燃焼性の高い炭化水素系冷媒であるか否かを確認することができるので、点検・修理・メンテナンス等の作業を安全に行うことができる。
【0035】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係る冷媒検査方法は例えば空気調和機の冷媒を検査する方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 サービスポート
2 シリンジ
3 検知管
4 プランジャ
5 コントロールバルブ
6 連通管
7 孔