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特許7051516紙葉類処理システムの処理方法および紙葉類処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】紙葉類処理システムの処理方法および紙葉類処理システム
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/235 20190101AFI20220404BHJP
【FI】
G07D11/235
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018054406
(22)【出願日】2018-03-22
(65)【公開番号】P2019168790
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 淳
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-104266(JP,A)
【文献】特開2008-305173(JP,A)
【文献】特開2005-222336(JP,A)
【文献】特開平08-249383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を処理する紙葉類処理装置を含む紙葉類処理システムの処理方法であって、
前記紙葉類処理装置内を搬送される前記紙葉類の搬送状態を検出する複数のセンサの出力情報を取得するときに、当該取得する出力情報が示す値と、予め設定され、前記複数のセンサに対する対処の緊急度に応じて複数段階に区分された閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて前記複数のセンサの異常の有無、および異常が有る場合は対処の緊急度およびセンサの出力情報を含む状態情報を表示し、
前記紙葉類処理装置内の紙葉類を処理する複数の機構部の処理情報を取得するときに、当該取得する処理情報が示す値と、予め設定され、前記機構部に対する対処の緊急度に応じて複数段階に区分された閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて前記複数の機構部の異常の有無、および異常が有る場合は対処の緊急度および各機構部のリジェクト枚数を含む状態情報を表示し、
前記複数のセンサについては、前記状態情報に表示されたセンサの出力情報に基づいて対処の緊急度を判定し、
前記表示された前記状態情報から対処するセンサあるいは機構部を選択し、
前記選択された前記センサあるいは機構部について、調整、部品交換、定期点検を含む対処項目を選択可能に表示し、
前記表示された対処項目から前記緊急度に対応する対処項目を選択し、
前記選択された対処項目と異常判定結果とを前記出力情報に関連付けて記憶すると共に、前記対処項目のリストに前記出力情報に関する情報を追加する、
紙葉類処理システムの処理方法。
【請求項2】
前記対処項目から定期点検が選択されたときは、前記紙葉類処理装置の動作を継続した状態で、定期点検時に必要となる情報を入力可能な入力画面を表示し、入力された情報を前記出力情報に関連付けて記憶する、請求項1に記載の紙葉類処理システムの処理方法。
【請求項3】
前記定期点検時に必要となる情報は、異常の発生日、対象となるセンサあるいは機構部、測定値、対応期限を含んでいる、請求項2に記載の紙葉類処理システムの処理方法。
【請求項4】
紙葉類を処理する複数の機構部と、紙葉類の搬送状態を検出する複数のセンサとを有する紙葉類処理装置と、
前記複数のセンサの出力情報を取得するときに、当該取得する出力情報が示す値と、予め設定され、前記複数のセンサに対する対処の緊急度に応じて複数段階に区分された閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて前記複数のセンサの異常の有無、および異常が有る場合は対処の緊急度およびセンサの出力情報を含む状態情報を表示し、前記複数の機構部の処理情報を取得するときに、当該取得する処理情報が示す値と、予め設定され、前記機構部に対する対処の緊急度に応じて複数段階に区分された閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて前記複数の機構部の異常の有無、および異常が有る場合は対処の緊急度および各機構部のリジェクト枚数を含む状態情報を表示し、前記複数のセンサについては、前記状態情報に表示されたセンサの出力情報に基づいて対処の緊急度を判定し、前記表示された前記状態情報から対処するセンサあるいは機構部を選択し、前記選択された前記センサあるいは機構部について、調整、部品交換、清掃、機能確認、縮退運転化、定期点検を含む対処項目を選択可能に表示し、前記表示された対処項目から前記緊急度に対応する項目を選択し、前記選択された対処項目と異常判定結果とを前記出力情報に関連付けて記憶すると共に、前記対処項目のリストに前記出力情報に関する情報を追加する制御部と、
を備える紙葉類処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、紙葉類処理システムの処理方法および紙葉類処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類区分装置において、各センサの出力値により警告あるいは異常か否かを判定し、警告あるいは異常と判断した場合に、センサの番号とセンサの位置情報とをオペレータに報知する技術が知られている。
また、プラント等の設備において、作業履歴や交換部品情報などの過去の事例からなる保守履歴情報を、キーワードベースで相互に関連付けておき、設備に付加した多次元センサの出力信号を対象とした異常検知に基づき、異常を検知し、検知した異常と関連付けられた保守履歴情報とを結びつけることにより、発生した異常に対しなすべき診断・処置を明らかにする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-11411号公報
【文献】特開2011-227706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紙葉類を処理する紙葉類処理システムは、種々の券種を取り扱うと共に多量の紙幣を整列、集積、および施封等を実行する工程を有している。このように多数の工程を実現するために紙葉類処理システムは、複数のモジュールが組み合わされて構成されることが多い。このように構成される紙葉類処理システムの保守を行うために、紙葉類処理システム内の各装置やセンサ等の異常を確認する必要がある。このような異常の確認を正確に行うためには、既述のようにセンサからの情報を得るだけでは不十分である。また、紙葉類処理システムは、多量の紙幣を処理するため処理効率を向上させることが望まれている。しかしながら、紙葉類処理システムに異常が発生する毎に保守員が異常に対する処置を行う場合、業務時間中にシステムを停止することになり、紙葉類処理システムの処理効率が低下する。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、処理効率を向上させた紙葉類処理システムの処理方法および紙葉類処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る、紙葉類を処理する紙葉類処理装置を含む紙葉類処理システムの処理方法は、以下の処理を実行する。前記紙葉類処理装置内を搬送される前記紙葉類の搬送状態を検出する複数のセンサの出力情報を取得するときに、当該取得する出力情報が示す値と、予め設定され、前記複数のセンサに対する対処の緊急度に応じて複数段階に区分された閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて前記複数のセンサの異常の有無、および異常が有る場合は対処の緊急度およびセンサの出力情報を含む状態情報を表示し、前記紙葉類処理装置内の紙葉類を処理する複数の機構部の処理情報を取得するときに、当該取得する処理情報が示す値と、予め設定され、前記機構部に対する対処の緊急度に応じて複数段階に区分された閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて前記複数の機構部の異常の有無、および異常が有る場合は対処の緊急度および各機構部のリジェクト枚数を含む状態情報を表示し、前記複数のセンサについては、前記状態情報に表示されたセンサの出力情報に基づいて対処の緊急度を判定し、前記表示された前記状態情報から対処するセンサあるいは機構部を選択し、前記選択された前記センサあるいは機構部について、調整、部品交換、清掃、機能確認、縮退運転化、定期点検を含む対処項目を選択可能に表示し、前記表示された対処項目から前記緊急度に対応する項目を選択し、前記選択された対処項目と異常判定結果とを前記出力情報に関連付けて記憶すると共に、前記対処項目のリストに前記状態情報に関する情報を追加する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態の紙葉類処理システムの構成を概略的に示す斜視図。
図2】同実施形態の紙幣処理装置の外観を示す斜視図。
図3】同実施形態の紙幣処理装置の構成例を示す断面図。
図4】同実施形態の紙幣処理装置の概略的な構成を示すブロック図。
図5】同実施形態のPCの概略的な構成を示すブロック図。
図6】同実施形態のPCの概略的な構成を示すブロック図。
図7】同実施形態の機体情報の一例を示す図。
図8】同実施形態の一定時間の処理数情報の一例を示す図。
図9】同実施形態の自己診断情報の一例を示す図。
図10】同実施形態の搬送路のセンサ出力情報の一例を示す図。
図11】同実施形態の制御情報の一例を示す図。
図12】同実施形態の振動音情報の一例を示す図。
図13】同実施形態の判定テーブルの一例を示す図。
図14】同実施形態の対処管理リストの一例を示す図。
図15】同実施形態の紙葉類処理システムで実行される処理の一例を示すフローチャート。
図16】同実施形態の状態情報の内容が表示装置に表示されるときの一例を示す図。
図17】同実施形態の対処管理リストが表示装置に表示されるときの一例を示す図。
図18】同実施形態のプール化リストの一例を示す図。
図19】同実施形態の部品交換リストの一例を示す図。
図20】第2の実施形態の処理結果を表示する処理の一例を示すフローチャート。
図21】同実施形態の表示装置に表示される解析結果の一例を示す図。
図22】同実施形態の表示装置に表示されるエラー履歴の一例を示す図。
図23】同実施形態の検索結果の一例を示す図。
図24】変形例の紙葉類処理システムの構成を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る紙葉類処理システムの構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る紙葉類処理システムは、例えば、紙葉類としての紙幣を処理する紙幣処理装置(紙葉類処理装置)100、PC(Personal Computer)200、およびPC300を備えている。ここで、PC200は、紙幣処理装置100に付随し、紙幣処理装置100を管理するPCであり、PC300は紙幣処理装置100及びこれに付随するPC200全体を管理するPCである。なお、図1においては、1組の紙幣処理装置100及びPC200を図示しているが、PC300は、1組の紙幣処理装置100及びPC200以外の他の複数の紙幣処理装置及びこれに付随するPCを管理するように構成してもよい。紙幣処理装置100とPC200とLAN(Local Area Network)1を介して接続されており、PC200とPC300とはLAN2を介して接続されている。LAN2は、セキュリティ機能を有するLANである。
【0009】
図2は、紙幣処理装置100の外観を示す斜視図である。
図2に示すように、紙幣処理装置100は、メインモジュール10、整列モジュール30、および集積施封モジュール40を備えている。これらのモジュール10、30、40は、一列に並んで配置され、互いに電気的かつ機械的に連結されている。本実施形態において、紙幣処理装置100は、テーブルTB上に設置されている。なお、本実施形態では、紙幣処理装置100は、メインモジュール10、整列モジュール30、および集積施封モジュール40を備えている場合で説明するが、他のモジュールを含めて構成してもよい。
【0010】
メインモジュール10、整列モジュール30、および集積施封モジュール40は、それぞれハウジング10A、ハウジング30A、ハウジング40Aを有している。これらのハウジング10A、30A、40Aは、一列に並んで配置されている。
メインモジュール10において、ハウジング10Aの側壁下部には、集積紙幣を取り出すための複数の取出し口111aが設けられている。側壁の中央部には、損券あるいは排除券の積層紙幣を取出すための複数の取出し口111bが設けられている。更に、側壁の中央部に窓113が形成されている。この窓113は、メインモジュール10の操作パネルDPと対向する位置に設けられている。窓113を通して操作パネルDPを操作することができるとともに、窓113を通して操作パネルDPの表示を視認することができる。
【0011】
ハウジング10Aの一部、ここでは、側壁の一部およびこの側壁に続く天井壁の一部は、開閉可能な扉115を構成している。扉115は、天井壁に設けられた複数のヒンジH1により回動可能に支持されている。また、扉115の下端縁には、指掛け用の凹所116が形成されている。
【0012】
整列モジュール30において、ハウジング30Aの側壁下部には、集積紙幣を取り出すための複数の取出し口311aが設けられている。ハウジング30Aの一部、ここでは、側壁の一部およびこの側壁に続く天井壁の一部は、開閉可能な扉315を構成している。扉315は、天井壁に設けられた複数のヒンジH2により回動可能に支持されている。また、扉315の下端縁には、指掛け用の凹所316が形成されている。
【0013】
集積施封モジュール40において、ハウジング40Aの側壁下部には、施封された紙幣束を取り出すための取出し口411aが設けられている。ハウジング40Aの一部、ここでは、側壁の一部およびこの側壁に続く天井壁の一部は、開閉可能な扉415を構成している。扉415は、天井壁に設けられた複数のヒンジH3により回動可能に支持されている。また、扉415の下端縁には、指掛け用の凹所416が形成されている。
【0014】
次に、紙幣処理装置100の内部構造(ハウジング10A、30A、40A内に設けられた機構部)について説明する。図3は、紙幣処理装置100の構成例を示す断面図である。メインモジュール10は、このメインモジュールおよび装置全体の動作を制御する主制御部12と、主制御部12に接続された操作パネルDPとを備えている。操作パネルDPは、例えば、タッチパネルで構成され、種々の操作指令をタッチ入力することができるとともに、種々の情報を表示することができる。メインモジュール10は、多数枚の紙幣Pが積層状態で載置される供給部11と、この供給部11から紙幣Pを1枚ずつ取り出す取り出し機構14と、取り出し機構14によって取り出された紙幣Pを搬送する搬送路16とを有している。搬送路16には、搬送機構を構成する複数組の図示しない無端状の搬送ベルトが搬送路16を挟むように延設されている。取出された紙幣Pは、搬送ベルトに挟持されて搬送される。
【0015】
供給部11は、鉛直方向に対して任意の角度だけ傾斜して延びる支持面11aと、この支持面11aの下端から、支持面11aにほぼ直交方向に延びる載置面11bと、これら支持面11aおよび載置面11bの両側縁に沿って立設された一対のガイド壁11cと、を有している。支持面11aと載置面11bとの境界部には、紙幣Pを装置内に取込むための取出し口が形成されている。
供給部11には、複数枚、例えば、2000枚以上の紙幣Pを積層状態で載置することができる。積層紙幣Pは、その最下部の紙幣が載置面11b上に載置され、かつ、例えば、紙幣の長辺側の側縁が支持面11a上に載置された状態で、支持面に沿って傾斜して供給部11に搭載される。積層紙幣Pは、取出し機構14により、最下部の紙幣Pから順に、一枚ずつ、取出し口11eを通して装置内に取り込まれる。
供給部11は、積層紙幣Pを取出し側、つまり、載置面11bに向かって移動させるバックアッププレート21を備えている。バックアッププレート21は、支持面11aに収納可能にかつ支持面に沿って移動可能に設けられている。
【0016】
取り出し機構14は、載置面11b上の紙幣Pに当接可能に設けられた複数のピックアップローラ24と、取出し口側のピックアップローラ24に転接して設けられた分離ローラ25と、ピックアップローラ24を所定の速度で回転する駆動モータ26と、を備えている。
ピックアップローラ24が回転することにより、最下段の紙幣Pがピックアップローラ24によって取出され、取出し口11eから搬送路16へ送られる。この際、分離ローラ25により、2枚目以降の紙幣Pが取出し紙幣から分離される。これにより、紙幣Pが1枚ずつ、供給部11から取出され、搬送路16へ送られる。
【0017】
紙幣Pの搬送ピッチを補正する搬送ピッチ補正部13と、搬送ピッチが補正された紙幣Pを1枚ずつ鑑査する鑑査装置18と、バーコードリーダ19と、が搬送路16に沿って配置されている。鑑査装置18は、鉛直方向に関して、供給部11の取出し口よりも上方に配設されている。鑑査装置18は、送られて来た紙幣Pの金種、形状、厚さ、表裏、真偽、正損、2枚取り等を検出する。ここで、正損検出とは、再流通可能な正券と、汚れ、破損等があり再流通不可能な損券とを検出することを示している。バーコードリーダ19は、例えば、バッチカードを用いる場合に、鑑査装置18を通過したバッチカードに付されているバーコードを読取り、その読取り情報を主制御部12へ送る。
【0018】
搬送路16は、取出し機構14および取出し口から一端下方に延びた後、鑑査装置18まで、鉛直方向に対して斜め傾斜して、下から上に延びている。なお、搬送路16は、詳細は後述する整列モジュール30に繋がっている。搬送路16の最下部に排出口が形成され、更に、この排出口の下方に、異物回収箱27が設けられている。搬送路16に沿って落下する異物は、排出口から排出され、異物回収箱27に回収される。前述したように、異物回収箱27は、ハウジング10Aの第2扉120を開けることにより、ハウジング10Aの外部に引出し可能に設けられている。
【0019】
メインモジュール10において、搬送路16に沿って、2つのリジェクト部20a、20bが設けられ、また、それぞれ紙幣を集積する複数の集積庫22a、22b、22c、22dが並んで配置されている。鑑査装置18を通過した紙幣Pは、図示しないゲートにより、リジェクト券と、処理券とに振り分けられる。
リジェクト券とは、鑑査装置18により、偽券と判別された券、又は折れ、破れ、スキュー、2枚取りなどにより判別不能な券と判別された券をいう。リジェクト券は、リジェクト部20aあるいは20bに振り分けられて集積される。リジェクト部20a、20bは、それぞれ前述した取出し口111bと対向する位置に配置されている。リジェクト部20aあるいは20bに集積されたリジェクト券は、偽券を除き、供給部11にセットし直して再取り込みするか、手入力で計数データに算入する。鑑査装置18による処理金額、枚数等の鑑査結果は、主制御部12へ送られ、保存されるとともに、操作パネルDPに表示される。
処理券とは、鑑査装置18で判別された紙幣Pが真券で正券、又は真券で損券をいう。処理券は、集積庫22aないし22dに送られて集積される。例えば、処理券は、金種ごとに対応する集積庫22aないし22dのいずれかに振分けて集積され、また、損券はまとめて1つの集積庫に集積される。集積庫22aないし22dは、前述した取出し口111aと対向する位置にそれぞれ配置されている。
バッチカードを用いる場合、バッチカードは、鑑査装置18およびバーコードリーダ19を通過した後、リジェクト部20aあるいは20bに送られ、集積される。
【0020】
メインモジュール10は、取り出し機構14、鑑査装置18、搬送機構等を駆動する図示しない駆動機構および電源を備えている。更に、メインモジュール10は、搬送路16の複数個所に設けられた複数のセンサS1~S6、鑑査装置18内の搬送路に設けられたセンサS7を備えている。各センサは、発光部と、発光部から出射された検出光を受光する受光部とを有し、発光部と受光部との間を通過する紙幣を検知する。更に、メインモジュール10は、異物回収箱27内の異物の有無を検出するセンサSSを有している。
【0021】
整列モジュール30は、メインモジュール10から送られた紙幣Pを搬送する搬送路31と、搬送路31の上流側に設けられた整列機構32と、搬送路31に沿って整列機構32の下流側に設けられた反転装置34と、搬送路31に沿って、並んで配置された複数の集積庫36a、36b、36c、36dと、を備えている。集積庫36a、36b、36c、36dは、前述したハウジング30Aの取出し口311aとそれぞれ対向する位置に配置されている。更に、整列モジュール30は、搬送路31の複数個所に設けられた複数のセンサS8~S11を備えている。各センサは、発光部と、発光部から出射された検出光を受光する受光部とを有し、発光部と受光部との間を通過する紙幣を検知する。
【0022】
整列機構32から送り出された紙幣Pあるいは反転装置34から向きを揃えて送り出された紙幣Pは、搬送路31を通して集積施封モジュール40へ送られ、あるいは、集積庫36a~36dのいずれかに送られて集積される。整列モジュール30の集積庫36aないし36dは、紙幣を金種ごとに集積する集積庫として使用でき、あるいはメインモジュール10から取り出されたリジェクト券あるいは損券を集積するリジェクト庫あるいは損券庫としても使用することができる。
一方、紙幣の施封処理が設定されている場合、メインモジュール10から取り出された正券あるいは損券、あるいは、整列モジュール30から取出された正券あるいは損券は、整列モジュール30の搬送路31を通して集積施封モジュール40に送られ、所定枚数ずつ集積および施封される。
【0023】
集積施封モジュール40は、整列モジュール30の搬送路31に連通する搬送路42と、この搬送路42を通して送られて来た紙幣を所定枚数ずつ集積する第1集積装置44aおよび第2集積装置44bと、これらの集積装置により所定枚数、例えば100枚、集積された紙幣束を帯(結束帯)により施封する施封装置48と、第1集積装置44aにより集積された紙幣束および第2集積装置44bにより集積された紙幣束を施封装置48に搬送する搬送機構49と、を備えている。更に、施封装置48により施封された紙幣束を受取り集積する図示しない排出部が施封装置48の下方に設けられる。
【0024】
第1集積装置44aおよび第2集積装置44bは、上下および左右にずれて配置されている。第2集積装置44bは、第1集積装置44aに対して、例えば、約10~80度の角度θだけ、斜め下方向にずれて配置され、その一部は、鉛直方向において第1集積装置44aとオーバーラップして配置されている。施封装置48は、第2集積装置44の下方に配置されている。第1および第2集積装置44a、44bの各々は、一時集積部45a,45bと、送られて来た紙幣Pを1枚ずつ所定枚数だけ一時集積部45a,45bに集積する羽根車集積装置46a,46bと、を備えている。
【0025】
集積施封モジュール40は、搬送路42の複数個所に設けられた複数のセンサS13、S14を備えている。各センサは、発光部と、発光部から出射された検出光を受光する受光部とを有し、発光部と受光部との間を通過する紙幣を検知する。
【0026】
図4は、紙幣処理装置100の概略的な構成を示すブロック図である。図4に示すように、紙幣処理装置100のメインモジュール10は、このメインモジュールおよび他のモジュールを含む装置全体の動作を制御する主制御部12を備えている。主制御部12は、各モジュールの動作を制御するとともに後述する状態情報の送信制御をするCPU12a、種々のデータ、制御プログラム、および管理情報等を格納するメモリ12bを備えている。操作パネルDPは主制御部12に接続されている。複数のセンサS1~S7、SSは、それぞれ主制御部12に接続され、受光部の検出出力を主制御部12へ送る。メインモジュール10は、取出し機構14の駆動モータ26を駆動するドライバ28を更に備え、このドライバ28は主制御部12により制御される。鑑査装置18は、主制御部12に接続され、紙幣の鑑査結果を主制御部12に送る。
【0027】
整列モジュール30および集積施封モジュール40は、それぞれ各モジュールの動作を制御する副制御部31a、41aを有し、これらの副制御部31a,41aは、図示しないインターフェースおよびケーブルを介してメインモジュール10の主制御部12にそれぞれLAN1により接続されている。
整列モジュール30の複数のセンサS8~S12は、それぞれ副制御部31aに接続され、検出信号あるいは検出出力を副制御部31aに送る。モータ等を含む機構部は、副制御部31aに接続され、副制御部31aにより動作が制御される。
集積施封モジュール40は、結束帯の印刷するためのプリンタ、施封モジュール、前述の施封装置、駆動機構、およびセンサS13,S14を備えている。これらは副制御部41aにより制御される。また、各センサS13、S14は、検出信号あるいは検出出力を副制御部41aに送る。
【0028】
図5は、PC200の概略的な構成を示すブロック図である。図5に示すように、PC200は、装置全体の動作を制御する主制御部210を備えている。主制御部210は、各装置の動作を制御するとともに紙幣処理装置100内の複数の装置の状態をそれぞれ示す複数の状態情報を紙幣処理装置100から取得し、PC300に送信する処理等を実行するCPU211、種々のデータ、制御プログラム、管理情報等を格納するメモリ212を備えている。また、CPU211は、図示しないインターフェースおよびケーブルを介してメインモジュール10の主制御部12にLAN1により接続されている。さらに、CPU211は、図示しないインターフェースおよびケーブルを介して後述するPC300の主制御部310にLAN2により接続されている。CPU211は、LAN1を介して紙幣処理装置100の主制御部12とデータ通信を行い、LAN2を介してPC300の主制御部310とデータ通信を行う。記憶装置220は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)である。記憶装置220は、紙幣処理装置100から取得する状態情報を管理する状態情報記憶部221を含む。状態情報の詳細については、後述する。表示装置230は、保守員等の指示に基づいて、保守員に対して記憶装置220に記憶された情報等を表示する。入力装置240は、保守員等からPC200に対する指示を受け付ける。
【0029】
図6は、PC300の概略的な構成を示すブロック図である。図6に示すように、PC300は、装置全体の動作を制御する主制御部310を備えている。主制御部310は、各装置の動作を制御するとともにPC200から状態情報を取得し、記憶装置320に記憶する処理等を実行するCPU311、種々のデータ、制御プログラム、管理情報等を格納するメモリ312を備えている。また、CPU311は、図示しないインターフェースおよびケーブルを介してPC200の主制御部210にLAN2により接続されている。CPU311は、LAN2を介してPC200の主制御部210とデータ通信を行う。
【0030】
記憶装置320は、例えば、HDDやSSDである。記憶装置320は、PC200から送信される状態情報毎に異常な状態であることを規定する閾値が設定され、この閾値に基づいて状態情報が示す装置の修理・点検・交換等が必要な異常状態であるか否か、および異常状態に対する対処の緊急度を判定するための判定テーブル321、緊急度が高いときにどのように対処するかという対処方法を示す対処項目を管理する対処管理リスト322、状態情報を管理する状態情報管理部323を含んでいる。PC300で管理される状態情報は、PC200から送信される状態情報に緊急度の判定結果や対処項目等が追加されて管理される。さらに、状態情報管理部323には、状態異常に対して選択された対処項目に基づいて作成されるリストが管理される。このリストは、例えば、プール化リスト324や部品交換リスト325である。プール化リスト324には、対処項目の1つとして、後述する対処項目“定期点検へ”が選択された場合に所定の情報と共に情報が追加登録される。部品交換リスト325には、対処項目“部品交換”が選択された場合に交換した部品等の品名等の情報が追加登録される。プール化リスト324および部品交換リスト325に登録される具体的な内容については後述する。本実施形態では、プール化リスト324、部品交換リスト325を挙げて説明しているが、これらリストは対処項目毎に作成されることが望ましい。PC300においては、このように状態情報に追加された緊急度や対処項目を利用して、状態情報の検索等の処理を実行することが可能になる。表示装置330は、保守員等の指示に基づいて、保守員に対して記憶装置320に記憶された情報等を表示する。入力装置340は、保守員等からPC300に対する指示を受け付ける。
【0031】
次に、PC200が紙幣処理装置100から取得し、PC300に送信する状態情報の具体例について図7から図12を参照して説明する。状態情報として、機体情報、一定時間の処理数情報、自己診断情報、搬送路のセンサ出力情報、制御情報、および振動音情報を例に挙げ、図7から図12を用いてそれぞれ説明する。なお、本実施形態では、状態情報として、以下に説明する情報を挙げるが、状態情報はこれらに限るものではない。状態情報は、紙幣処理装置100に関する情報、および紙幣処理装置100内の装置に関する情報、例えば、機構、センサ、部品、およびこれらに対する所定のプログラムの処理結果に関する情報等から任意に設定した情報であればよい。また、これらの状態情報は所定のタイミングで紙幣処理装置100の主制御部12により取得され、取得されると直ちに主制御部12からPC200に送信される。
【0032】
図7は、機体情報の一例を示す図である。図7に示すように、機体情報T10は、紙幣処理装置100の使用サイト、機体番号、動作時間、モジュール構成が関連付けられて構成される。使用サイトは、紙幣処理装置100を管理するサイトのアドレスが登録される。機体番号は、紙幣処理装置100を特定する番号、いわゆるシリアルナンバーである。動作時間は、紙幣処理装置100の動作が最初に開始してから現在までの累積動作時間である。この累積動作時間は、例えば保守を行うタイミングを決定するために用いられる。モジュール構成は、紙幣処理装置100を構成するモジュールが登録されている。本実施形態では、紙幣処理装置100は、メインモジュール10、整列モジュール20、および集積施封モジュール40で構成されていることが機体情報T10に含まれている。
【0033】
図8は、一定時間の処理数情報の一例を示す図である。図8に示すように、処理数情報T20は、一定時間の処理枚数、およびリジェクト枚数が関連付けられて構成される。処理枚数は、紙幣処理装置100が一定時間以内に処理した紙幣Pの処理枚数である。リジェクト枚数は、紙幣の汚れ等により排除された既述のリジェクト券の枚数である。
【0034】
図9は、自己診断情報の一例を示す図である。図9に示すように、自己診断情報T30は、紙幣処理装置100内に設けられているファンアラーム、センサ電源、光源電源、基板温度、コネクタ外れ、およびセンサ信号に関する診断結果が関連付けられて構成される。自己診断は、紙幣処理装置100の主制御部12内のCPU12aが、例えばメモリ12bに格納されるプログラムを用いて所定のタイミングで実行される。これにより、ファンアラームからのセンサ情報により所定の冷却ファンが正常に動作しているか否か、センサ電源、および光源電源によりセンサおよび光源それぞれに電源が供給されているか否かが診断される。また、基板温度に関しては、所定の基板に設けられた温度センサからの出力に基づいて温度が計測される。コネクタ外れに関しては、各コネクタの接続の有無が診断される。センサ信号は、各センサ(例えば、センサS1~S14,SS)の信号が受信できているか否かが診断される。
【0035】
図10は、紙幣Pを搬送する搬送路16のセンサ出力情報の一例を示す図である。図10に示すように、センサ出力情報T40は、センサS1~S14,センサSSの出力情報が関連付けられて構成される。つまり、センサ出力情報T40には、センサS1~S14,センサSSの出力値が含まれる。
【0036】
図11は、制御情報の一例を示す図である。図11に示すように、制御情報T50は、紙幣処理装置100内に設けられた各モータ(例えば、駆動モータ26)の動作回数、および羽根車のヒストグラムデータが関連付けられて構成される。モータの動作回数は、所定時間内のモータの回転数である。ヒストグラムデータは所定時間毎の羽根車集積装置45a,46aの動作回数である。これらの動作回数は所定のセンサにより検出すればよい。
【0037】
図12は、振動音情報の一例を示す図である。図12に示すように、振動音情報T60は、紙幣処理装置100内の所定位置に設けられた集音装置が集音する振動音に対する周波数解析のデータ結果が含まれる。集音装置を設ける場所は、例えば、搬送路16である。この場合、データ結果に基づいて搬送路16で紙幣Pがスムーズに通過できているか、通過できていないかを予測することが可能になる。なお、紙幣処理装置100内に集音装置が複数設けるようにしてもよい。
【0038】
図13は、判定テーブル321の一例を示す図である。判定テーブル321は、センサ出力情報に含まれる電圧値に対して、A判定、B判定、およびC判定を判定するための電圧値(閾値)が設定されている。A判定にはセンサの修理・点検・交換等の対処がすぐに必要な緊急度が高い場合の閾値が設定される。B判定はセンサ出力が通常範囲値からは外れているが対処がすぐに必要な緊急度がそれほど高くない場合の閾値が設定される。C判定はセンサ出力が通常の状態にある場合であり、対処の必要がない場合の閾値が設定される。具体的には、センサ出力V0が0≦V0<V1,V4≦V0の場合はA判定であり、V1≦V0<V2,V3≦V0<V4の場合はB判定であり、V2≦V0<V3の場合はC判定となる。したがって、本実施形態では、A判定、又はB判定が異常判定結果になる。
【0039】
なお、各電圧値V1~V4はセンサの種別に応じて任意に設定可能である。また、既述の各センサS1~S14,SSを含む各センサに対して一律に各電圧値V1~V4を設定してもよいし、センサ毎に判定テーブル321の電圧値の設定を変更するように構成してもよい。判定の設定方法もA,B,Cの3種類に限らず、正常、異常の2つ、又は、4つ以上の種類を設けるようにしてもよい。
本実施形態では、図13に示すセンサS1~S14,SSに関する判定テーブル321について説明するが、紙幣処理装置100内の各装置から取得する複数の状態情報に対してそれぞれ判定テーブルが設けられている。例えば、メインモジュール10の紙幣Pを取り込む機構(以下、取込部という。)、集積施封モジュール40内の紙幣Pを集積する機構(以下、集積部という。)、施封する機構(以下、施封部という。)がそれぞれ1時間当たりに排除等したリジェクト枚数に対しても閾値が設けられており、所定時間のリジェクト枚数に基づいて緊急度A,B,Cを判定する。
【0040】
図14は、対処管理リスト322の一例を示す図である。対処管理リスト322は、紙幣処理装置100内の各装置等に異常が判定された場合に、保守員に対して対処方法を問い合わせる対処項目、および保守員のコメント欄を有する。図14に示すように、本実施形態では、対処項目として、“調整”,“部品交換”,“清掃”,“機能確認”,“縮退運転化”,“定期点検へ”が設けられている。なお、対処項目は、これらに限定されるものでない。紙幣処理装置100のモジュール構成等に応じて保守員により対処項目の追加や削除が可能である。
【0041】
図15は、紙葉類処理システムで実行される処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、主としてPC200と、PC300とにより実行される。PC200においては、CPU211がメモリ212に格納されるプログラムを実行することにより行われる。また、PC300においては、CPU311がメモリ312に格納されるプログラムを実行することにより行われる。ここで、メモリ212,312にそれぞれ格納されるプログラムは、例えば、PC300はLAN2や所定のネットワークに接続されているサーバ等の情報処理装置からプログラムをダウンロードされて格納され、PC200はPC300を介して当該情報処理装置からプログラムをダウンロードされて格納される。なお、プログラムは、ネットワーク上からダウンロードしなくても、例えば、プログラムを格納した携帯型のメモリ装置をPC200,300に接続し、当該携帯型のメモリ装置からプログラムをメモリ212,312にそれぞれ記憶させるようにしてもよい。
図15に示すように、PC200の主制御部210は、紙幣処理装置100から状態情報を収集し、その収集した状態情報をPC300に対してLAN2を介して送信する(ST101)。このときに、主制御部210は、収集した状態情報を状態情報記憶部221に記憶する処理も実行する。PC200は、例えば機体情報T10を紙幣処理装置100の起動時に紙幣処理装置100から取得し、処理数情報T20を一定時間毎に紙幣処理装置100から取得する。このように、状態情報の種別毎にPC200が状態情報を取得するタイミングは異なるが、取得したタイミングでPC300に送信される。
【0042】
PC300の主制御部310は、PC200から収集した状態情報を受信すると、受信した状態情報を状態情報管理部323に記憶すると共に、受信した状態情報を解析する(ST102)。この解析は、例えば、状態情報が示す値と、状態情報に対応する判定テーブル321とを用いて、当該状態情報に対する対処の緊急度を判定する処理である。言い換えると、受信した状態情報に対応する装置に異常が生じているか否か、およびその異常にすぐに対処することが必要か否かについて解析される。
次に、主制御部310は、解析結果から状態情報が異常を示しているか否かを判定する(ST103)。ステップST102で取得した状態情報と、当該状態情報に対応する判定テーブル321に設定された閾値とを比較し、当該比較結果に基づいて状態情報が示す装置に異常が生じているか否かが、既述の解析結果に基づいて判定される。本実施形態では、既述のように、判定がC判定であれば状態が異常でないと判定され、B判定およびA判定であれば、状態が異常であると判定される。主制御部310が状態情報の異常を判定しない場合(ST103:NO)、処理はステップST101へ戻る。
【0043】
なお、本実施形態では、PC200が紙幣処理装置100から送信される状態情報を収集し、収集した状態情報をPC300へ送信する場合で説明するが、PC200が状態情報を収集するタイミングはこれに限るものではない。例えば、PC200が任意のタイミングで状態情報を紙幣処理装置100から収集するようにしてもよい。また、PC200が所定のタイミングで状態情報を収集する構成の場合、PC200とPC300とはLAN2により接続する構成でなくもよい。このときは、保守員が既述の所定のタイミングが経過する毎に、例えばUSBメモリ等の携帯型の記憶装置をPC200に接続する。そして、保守員はPC200が紙幣処理装置100から収集した状態情報を携帯型の記憶装置に記憶した後、当該記憶装置をPC200から取り外す。そして、PC300に接続してから当該状態情報をPC300の状態情報管理部323に記憶させればよい。これにより、セキュリティ機能を保持することが可能になる。
【0044】
また、主制御部310が状態情報の異常を判定した場合(ST103:YES)、主制御部310は、状態情報の内容および対処項目を表示する(ST104)。内容および対処項目を同時に表示するように構成してもよい。しかし、本実施形態では、図16および図17を用いて後述するように、まず直近に取得した所定数の状態情報の内容を表示し、保守員の指示に基づいて対処項目を表示する場合で説明する。これにより、保守員は、異常が生じた内容や対処項目を確認し、異常を解消するための対処方法および対処のタイミングを選択することができる。また、必要がある場合は、保守員はコメント欄にコメントを入力装置340により入力する。
そして、主制御部310は、対処項目の選択を保守員から受け付け、選択された対処項目、異常判定結果およびコメント等を状態情報管理部323に状態情報に関連付けて記憶する(ST105)。このときに、保守員から受け付けた対処項目等の情報に基づいて既述のプール化リスト324、部品交換リスト345等の対処項目のリストに状態情報に関する情報が追加される。状態情報に関する情報の具体的な一例については、図18図19を参照して後述する。
【0045】
次に、主制御部310は、保守員がどのような対処項目を選択したかを判定する(ST106)。より詳細には、主制御部310は、“調整”,“部品交換”,“清掃”,“機能確認”,“縮退運転化”,“定期点検へ”のいずれの対処項目が選択されたかを判定し、選択された対処項目に応じて、以下の処理を実行する。
【0046】
“定期点検へ”の対処項目が選択された場合は、主制御部310はプール化リスト324に定期点検時に必要となる所定の情報を追加する(ST107)。“定期点検へ”の項目が選択される場合は、例えば、紙幣処理装置100が当面実行する予定がない処理に関係する装置の異常が検出された場合が想定される。“定期点検へ”の対処項目が選択されると、所定の入力画面が表示され、保守員は、日時、対象ユニット、測定値、対応期限、および予定工数等の定期点検時に必要となる情報を入力し、これらの情報がプール化リスト324に追加される。これにより、異常への対処が定期点検時となり、紙幣処理装置100の動作は停止せず、処理が継続される。そして、処理はリターンとなる。なお、定期点検時に必要となる情報はこれらに限るものではない。
【0047】
“縮退運転化”の対処項目が選択された場合は、主制御部310は縮退処理を実行し(ST108)、縮退処理を実行した内容が記入されたレポートを発行する(ST109)。“縮退運転化”の対処項目が選択される場合は、例えば、紙幣処理装置100が現在実行している処理に直接関係ない装置の異常が検出された場合が想定される。これにより、紙幣処理装置100の異常が生じた装置部分の動作は停止するものの紙幣処理装置100の動作は停止されず、処理を継続することが可能になる。レポートの一形態は保守員に対するメールであるが、これに限るものではない。そして、処理はリターンとなる。
【0048】
“調整”,“部品交換”,“清掃”,“機能確認”のいずれかの対処項目が選択された場合、主制御部310は、紙幣処理装置100の動作を停止させる処理を実行する(ST110)。そして、保守員により、“調整”,“部品交換”,“清掃”,“機能確認”のうちの選択された作業が異常と判定された装置等に対して行われる。作業終了後に、保守員は所定の操作又は指示を行い、作業完了をPC300に指示する。この指示があるまで、PC300は待機状態になる。
PC300の主制御部310は、動作停止を指示した後、作業完了の指示を受け付けたか否かを判定し(ST111)、当該指示を受け付けたと判定した場合(ST111:YES)、紙幣処理装置100の動作を開始させる処理を実行し(ST112)、処理を実行した内容が記入されたレポートを発行する(ST113)。レポートの一形態が保守員に対するメールであるのは、ステップST109の場合と同様である。そして、処理はリターンとなる。
【0049】
次に、既述のように状態情報が異常であると判定された場合に、PC300の表示装置330に表示される表示例について説明する。
図16は、異常が判定された状態情報の内容が表示装置330に表示されるときの一例を示す図である。例えば、状態情報の異常が判定された場合に、保守員に当該旨が報知され、その報知に基づいて保守員が所定の操作をすることにより、表示装置330に図16に示す表示例M10が表示される。これにより、保守員が異常の内容を視認することが可能になる。本実施形態では、このように表示される状態情報の内容は、例えば、状態情報を取得した時刻が新しい時刻から所定数だけ表示されることとする。表示例M10には、センサS1,S2,S3、取込部、施封部、および集積部の6つの状態情報の内容が表示されている。
【0050】
状態情報として表示される内容は、1時間当たりの頻度(頻度/1H)、判定した緊急度、出力最小、出力最大、および出力平均である。図16に示すように、例えば、センサS1に関しては、出力を頻度/1Hで30回検出しており、緊急度はA、出力最小が34V、出力最大が119V、出力平均が80Vになっている。本実施形態では、80Vは既述の電圧値V4以上に相当するため、緊急度がAと判定されている。また、取込部に関しては、1時間当たりのリジェクト枚数が10枚である。この10枚は取込部に対応する判定テーブルを参照すると、B判定に相当するため、緊急度はBになっている。緊急度がA,Bと判定されている状態情報については、緊急度がCと判定されている状態情報から区別するために、内容や緊急度の表示色を変化させたり、太字のような装飾を施すことが望ましい。これにより、保守員に対して警告を発することが可能になり、保守員は対処の緊急度の高いユニット(装置)を視認しやすくなる。
保守員がユニットの項目、つまり、センサS1,S2,S3、取込部、施封部、集積部のいずれかをクリックすると、対処管理リスト322が読み込まれ、対処項目が選択可能に表示装置330に表示される。表示例M10においては、センサS1がA判定であり、緊急度が高いため、保守員は、センサS1に対処が急務であることを容易に視認できる。そして、保守員はセンサS1の状態異常に対処するためにセンサS1をクリックする。
【0051】
図17は、対処管理リスト322が表示装置330に表示されたときの一例を示す図である。図16に示すセンサS2が保守員によりクリックされた場合、図17に示す表示例M20が表示される。表示例M20には、対処項目として、“調整”,“部品交換”,“清掃”,“機能確認”,“縮退運転化”,“定期点検へ”が表示されると共に、保守員の選択を受け付けるための各チェックボックスが表示される。さらに、保守員のコメントを入力するコメント欄が表示されている。このように、図16に示す表示例M10においてユニットの欄がクリックされると、保守員は対応する装置の状態異常に対処する対処項目を選択することが可能になる。
そして、保守員は、センサS2の状態を検討したうえでセンサS2の状態に対して対処すべき項目をチェックする。このとき、保守員は必要な場合にコメントをコメント欄に入力する。そして、保守員は所定の操作をしてこの画面を閉じる。保守員が選択した対処項目によって処理が異なるため、以下に説明する。
【0052】
保守員が選択した対処項目が“定期点検へ”であれば、さらに、日時、対象ユニット、測定値、対応期限、および予定工数等の定期点検時に必要となる情報を入力する欄が表示される。このため、保守員は、これらの欄に情報を入力する。これにより、異常の発生日、対象ユニット、測定値、対応期限、予定工数、およびコメントが既述のプール化リスト324に登録される。このように、保守員が定期点検時に対処することを選択したため、紙幣処理装置100の処理は継続される。
また、その対処項目が“縮退運転化”であれば、その内容が状態情報管理部323に記憶されると共に、紙幣処理装置100内の対応する装置が縮退し、つまり、その装置の動作が停止され、レポートが発行される。この場合も、紙幣処理装置100の処理は継続される。
さらに、その対処項目が“調整”,“部品交換”,“清掃”,“機能確認”のいずれかであれば、その内容が状態情報管理部323に記憶される。そして、紙幣処理装置100の動作が停止される。保守員は、異常に対する装置に対して対処をし、対処がなされた後、保守員の作業完了の指示に基づいて、紙幣処理装置100の動作が開始され、レポートが発行される。
【0053】
このように状態情報管理部323には、状態情報の内容、状態異常が生じた場合に選択した対処項目、およびコメント等が管理されている。このため、保守員は、所定の操作を行うことにより、これらの情報を表示装置330に表示させることも可能である。例えば、プール化リスト324や部品交換リスト325を表示装置330に表示させることができる。
【0054】
図18は、表示装置330に表示されるプール化リスト324の一例を示す図である。図18に示すように、プール化リスト324の表示例M30には、発生日(2018/1/11)、ユニット(整列モジュール)、測定値(135)、対応期限(2018/2/E)、予定工数(0.5h)、コメント(空欄)が表示されている。保守員は、定期点検時にプール化リスト324を表示装置330に表示することにより、定期点検時に修理・点検・交換等の対処を行うべき作業情報を全て表示することができる。さらに、保守員は入力装置340プール化リスト324に表示されている作業情報をユニット毎にソートすることにより、同時に行える作業を抽出することができ、これらの抽出した保守作業を合わせて行うことが可能になる。その結果、定期点検時の保守作業の効率化を図ることができる。
【0055】
図19は、表示装置330に表示される部品交換リスト325の一例を示す図である。図19に示すように、部品交換リスト325の表示例M40には、指定された部品の部品番号(484xxxxx)、部品名称(LNS-XXXX)、交換日(2018/1/14)、ユニット(整列モジュール)、コメント(部品破損のため)が表示されている。保守員は、部品交換時に部品交換リスト325を表示することにより、過去に交換された部品を容易に検索することが可能になる。
【0056】
以上のように説明した紙葉類処理システムによると、紙幣処理装置100内の装置に異常が発生した場合に、当該装置の異常な状態に応じて適切なタイミングで保守員が対処を行うことにより処理効率を向上させることができる。より詳細には、業務時間中に部品故障や調整不足が生じて、これらの装置に異常が判定されても、異常の状態に応じて定期点検時に対処したり、縮退運転化を図ることにより紙幣処理装置100の処理を継続することが可能になる。このため、紙幣処理装置100が稼働する時間を長くすることができ、稼働率の低下の防止、言い換えれば、処理効率の向上を図ることができる。加えて、保守員は、紙幣処理装置100に対して最低限必要な保守作業を実施することができるため、定期点検時に実施する保守作業を削減することができ、保守作業の効率化を図ることができる。
【0057】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、状態情報管理部323に記憶される情報を利用して紙幣処理装置100の紙幣の処理結果を表示させるようにした点が第1の実施形態と異なっている。したがって、処理結果を表示させる構成に関して詳細に説明することとする。また、第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、これら構成については詳細な説明を省略する。
【0058】
図20は、PC300の主制御部310が実行する処理結果を表示する処理の一例を示すフローチャートである。
保守員は、入力装置340を操作することにより、所定の画面を表示装置330に表示させた後、この画面上で検索条件を指定する(ST201)。検索条件は、例えば、“指定日の処理枚数”である。保守員は、条件を設定した後、例えば、開始ボタン(図示省略)を入力する。主制御部310は、開始ボタンの入力を受け付けると、指定された検索条件に基づいて状態情報管理部323から情報を収集する(ST202)。主制御部310は、状態情報管理部323内に記憶されている情報のうち、“指定日の処理枚数”に対応する情報を収集する。
【0059】
次に、主制御部310は、収集した情報に対する解析を行う(ST203)。ここで、解析方法は、指定された検索条件に対して予め設定されていることとする。解析方法の一例は、指定日において、既述した一定時間毎の処理枚数を加算して指定日の処理枚数を算出すると共に異常が発生した回数を算出し、これら算出した枚数に対する異常が発生した数を示すエラー率を算出する処理である。これらの処理は、券種毎に実行される。なお、検索条件および解析方法は、保守員が任意に設定可能に構成されている。主制御部310は、このように解析した解析結果を表示装置330に表示する(ST204)。
【0060】
このように解析結果を表示した後、主制御部310は、処理結果の表示を終了するか否かを判定する(ST205)。例えば、主制御部310は、終了ボタン(図示省略)の入力を検出した場合(ST205:YES)、この処理に関する表示を消去し、この処理を終了する。また、処理結果の表示がされているときは、主制御部310は、リンク先がクリックされたか否かを判定する(ST206)。リンク先がクリックされたと判定された場合(ST206:YES)、リンク先の情報を表示する(ST207)。そして、処理はステップST205に戻る。
【0061】
次に、表示装置330に表示される解析結果の表示例やリンク先の情報の表示例について説明する。
図21は、表示装置330に表示される解析結果の一例を示す図である。図21には、横軸を日付、縦軸を処理枚数(ヒストグラム)、およびエラー率(破線の折れ線グラフ)とする処理結果の表示例M50が示されている。表示例M50は、指定日として1月28日から1月31日の4日が指定された場合を示している。
【0062】
保守員は、表示例M50により、1月28日から1月31日までの各日の紙幣処理装置100の券種毎の処理枚数、およびエラー率という処理結果を容易に視認することができる。さらに、本実施形態では、保守員が所望する日付をヒストグラム上で指定(クリック)することにより、その日付のエラー履歴が表示されるようになっている。
【0063】
図22は、表示装置330に表示されるエラー履歴の一例を示す図である。図22には、1月28日のエラー履歴の表示例M60が表示されている。表示例M60には、エラー毎に、エラーの発生時刻、エラーコード、ユニット、券種、エラー出力、対処方法、部品交換の項目が関連付けて表示される。例えば、表示例M60の最上段の欄には、発生時刻(2018/01/28/14:30)、エラーコード(4078-8987)、ユニット(整列モジュール)、券種(券種K1)、エラー出力(119)、対処方法(部品交換)、部品交換(センサA1)が関連付けられて表示されている。保守員は、表示例M60を視認することにより、2018年1月18日14時30分に、整列モジュール30にて券種1に対する異常が発生し、その対処としてセンサA1に部品交換を行ったことを確認することができる。なお、エラー履歴の表示設定については、任意に設定することが可能である。
【0064】
(変形例)
また、既述の実施形態では、1つの紙葉類処理システムについて説明したが、各サイトで管理される複数の紙葉類処理システムをネットワークで接続し、複数の紙葉類処理システムからそれぞれ取得可能な複数の状態情報等を共有化することも可能である。このように構成すると、保守員は、各サイトで蓄積したデータに基づいて、対処項目の検索を行うことができる。
【0065】
図23は、データを共有化した場合に、「○○の対処方法」を検索した処理結果の一例を示す図である。図23には、所定の対処方法の処理結果の表示例M70が示されている。表示例M70は、所定の対処項目(○○の対処方法)が条件として設定されており、この条件に基づく状態情報が各サイトから収集され、この収集された状態情報に対して解析が行われた解析結果である。表示例M70に含まれる表示例M71,M72がそれぞれには、所定の対処方法が実行された各サイト(サイトXXXXX, サイトYYYY)での対処結果の内容が表示されている。また、このように検索される対処結果には、保守員により当該対処が有効であったか否か等評価がされるようになっている。例えば、表示例71であれば評価は4.8であり、表示例72であれば評価は4.6である。表示例M70においては、評価が高い対処方法が優先的に上段に表示される。このように検索結果において、評価順で対処方法を表示することにより、種々の問題に対して保守員は最適な対処方法を選択することが可能になる。
【0066】
このように紙葉類処理システムを構成すると、保守員は、表示例M70により、所定の対処方法が行われた他の事例を容易に視認することができる。このため、判定テーブル321の閾値の最適化、機体の現在の使用状況、および保守の対処方法の共有化を図ることができる。そして、保守員は、問題が発生した場合には、過去の対処方法を検索することにより、その検索結果を有効利用することができる。有効利用の方法としては、例えば保守タイミングの見極め、初心者の保守員などへの教育支援への活用である。
【0067】
既述の実施形態では、紙幣処理装置100の状態情報をPC200が取得し、取得した状態情報をPC300に送信する構成で説明したが、これに限るものではない。例えば、図24に示すように、紙幣処理装置100の状態情報等をクラウドCW上に記憶し、このクラウドCWからPC300が状態情報を取得するように構成してもよい。そして、保守員は、PC300が取得する状態情報等に基づいて、紙幣処理装置100の保守作業を行うようにする。このように紙葉類処理システムを構成しても既述の実施形態と同様な効果を奏することができる。
また、PC200、PC300がそれぞれ紙幣処理装置100と別装置の場合で説明したが、これに限るものではない。例えば、PC200が実現する機能、および/又は、PC300が実行する機能を紙幣処理装置100内の主制御部12が実行するように構成してもよい。
さらに、既述の実施形態で説明したPC200が実現する機能、および/又は、PC300が実現する機能は、PC200,PC300が実現しなくても、紙幣類処理システム内のいずれかの制御部、例えば、紙幣処理装置100の主制御部12、PC200の主制御部210、PC300の主制御部310のいずれかにより実現するように構成してもよい。
【0068】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
10…メインモジュール、30…整列モジュール、40…集積施封モジュール、100…紙幣処理装置、200,300…PC、12,210,310…主制御部、221…状態情報記憶部、321…判定テーブル、322…対処管理リスト、323…状態情報管理部、324…プール化リスト、325…部品交換リスト、T10…機体情報、T20…処理数情報、T30…自己診断情報、T40…センサ出力情報、T50…制御情報、T60…振動音情報、M10,M20,M30、M40,M50,M60,M70…表示例
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