(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】階段の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04F 11/02 20060101AFI20220404BHJP
E04G 21/18 20060101ALI20220404BHJP
E04F 11/025 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
E04F11/02 100
E04G21/18 A
E04F11/025
(21)【出願番号】P 2018080703
(22)【出願日】2018-04-19
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518138332
【氏名又は名称】築澤 幹三
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】築澤 幹三
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-320149(JP,A)
【文献】特開2006-301051(JP,A)
【文献】特開2005-076249(JP,A)
【文献】特開2014-227653(JP,A)
【文献】特開2017-115433(JP,A)
【文献】特開2005-030083(JP,A)
【文献】特開2005-256300(JP,A)
【文献】特開2014-129704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/02
E04G 21/18
E04F 11/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付ける上金具と、床に取り付ける下金具と、桁材とを備え、
下記の工程を有する階段の製造方法
(1)伸縮棒に上金具及び下金具を取り付ける工程
(2)伸縮棒の長さを桁材の長さに合わせる工程
(3)壁面に上金具を取り付ける工程
(4)床に下金具を取り付ける工程
(5)上金具及び下金具から伸縮棒を外して、上金具及び下金具に桁材を取り付ける工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、墨出しした壁面と床に夫々、上金具と下金具を取り付け、上金具と下金具とに桁材を取り付けていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、現場によっては壁や床が傾いているため、桁材のボルト孔と上下金具のボルト孔の位置が合わず、桁材の施工が難しいという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、桁材の施工性が良い階段の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、壁面に取り付ける上金具と、床に取り付ける下金具と、桁材とを備え、下記の工程を有する階段の製造方法である。
(1)伸縮棒に上金具及び下金具を取り付ける工程
(2)伸縮棒の長さを桁材の長さに合わせる工程
(3)壁面に上金具を取り付ける工程
(4)床に下金具を取り付ける工程
(5)上金具及び下金具から伸縮棒を外して、上金具及び下金具に桁材を取り付ける工程
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、上金具の位置を基準に、桁材の寸法に合わせた伸縮棒を用いて下金具の位置決めをして下金具を床に固定するため、下金具の位置決めが容易であり、桁材の施工性が良いと共に施工誤差が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる階段の製造方法を工程毎に示した側面図であり、(a)は壁面に上金具を取り付ける工程、(b)は壁面の上金具に桁材の長さに合わせた伸縮棒の上端を取り付ける工程、(c)は下金具を伸縮棒の下端に取り付け、下金具を床に位置決め固定する工程、(d)は上金具及び下金具から伸縮棒を取り外す工程、(e)は上金具及び下金具に桁材を取り付ける工程である。
【
図3】上端及び下端に伸縮棒取り付け治具を取り付けた伸縮棒の斜視図である。
【
図4】伸縮棒の長さを桁材の長さに合わせる工程を示す側面図である。
【
図5】壁面に上金具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】左右の上金具の間隔を確認する工程を示す正面図である。
【
図7】上金具に伸縮棒の上端を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図8】伸縮棒の下端に下金具を取り付け状態で、下金具を床に当接させた斜視図である。
【
図9】壁面に上金具、床に下金具を夫々取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図10】床と壁面間に桁材が設置された状態を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施の形態にかかる階段の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態に係る階段の施工方法を説明する。
(0)準備工程
はじめに、施工現場に桁材15及び伸縮棒9を搬入し、以下に示す作業を行う。
(0-1)桁材15からの上金具3及び下金具13の取り外し
図2に示すように、施工前の桁材15には、上金具3及び下金具13が桁材15の中空内に収めて取り付けてある。上金具3はそのボルト孔3bの位置と桁材15の上側ボルト孔15bの位置を合わせ、専用ボルト51を上側ボルト孔15bに螺合し、上金具3のボルト孔3bに挿通して、上金具3がバネ座金53と共に桁材15に取り付けてある。また、下金具13はそのボルト孔13bの位置と桁材15の下側ボルト孔15cの位置とを合わせ、専用ボルト51を下側ボルト孔15cに螺合し、下金具13のボルト孔13bに挿通して、下金具13がバネ座金53及び平座金55と共に桁材15に取り付けてある。
よって、専用ボルト51を取り外すことで、上金具3及び下金具13を桁材15の中空から取り外す。
【0009】
ここで、上金具3及び下金具について説明する。
図2及び
図5に示すように、上金具3は、壁面5に取り付ける際に壁面5に当接する壁当接部3eと、壁当接部3eの両端から垂直に立ち上がる立上部3fとを有し、壁当接部3eと立上部3f、3fとでコ字を形成している。壁当接部3eには直列に3つのネジ孔3aが形成され、各立上部3fにはボルト孔3bが形成されている。
【0010】
図2及び
図9に示すように、下金具13は、床7に取り付ける際に床7に当接する床当接部13eと、床当接部13eの両端から垂直に立ち上がる立上部13fとを有し、床当接部13eと、立上部13f、13fとでコ字を形成している。床当接部13eには直列に3つのネジ孔13aが形成され、各立上部13fにはボルト孔13bが形成されている。
【0011】
(0-2)伸縮棒9への治具11の取り付け
図3に示すように、伸縮棒9の上端9a及び下端9bに伸縮棒取り付け治具11をネジ等の締結具59で取り付ける。
伸縮棒9は、筒状の第1棒部材9cと、筒状の第2棒部材9dと、第3棒部材9eと、第1調整つまみ9f、第2調整つまみ9gとを有する。
第2棒部材9dは第1棒部材9cにスライド可能に収まっており、第3棒部材9eは第2棒部材9dにスライド可能に収まっている。
第1調整つまみ9fは、第1棒部材9cに対する第2棒部材9dの位置を固定するための部品であり、第2調整つまみ9gは、第2棒部材9dに対する第3棒部材9eの位置を固定するための部品である。
したがって、伸縮棒9は伸縮して長さを調整可能な構成である。
伸縮棒取り付け治具11は、伸縮棒9に固定する棒固定部11cと、上金具3又は下金具13に取り付ける金具取付部11bとを有し、棒固定部11cと金具取付部11bとでL字を形成する。金具取付部11bにはボルト孔11aが形成されている。
【0012】
(1)壁面5に上金具3、3を取り付ける工程(
図1(a)参照)
(1-1)上金具3の取り付け位置の墨出し
図5に示すように、床7に対する垂直墨出し線33と、床7に対する水平墨出し線35とを墨出しする。またコーチネジ61用の取り付け孔の位置を墨出しする。垂直墨出し線33の墨出しの際には、例えばガムテープ等の貼付材37を壁面5に貼り付け、その貼付材37に垂直墨出し線33を引く。
(1-2)上金具3、3の取り付け
墨出しした取り付け孔位置にコーチネジ61の取り付け孔をあけ、上金具3を壁面5にコーチネジ61で取り付ける(
図5参照)。このとき、
図5に示すように、水平墨出し線35に上金具3の上端を合わせ、上金具3の立上部3fが垂直墨出し線33に対して平行になるように取り付ける。
(1-3)上金具3、3の間隔を確認する
図6に示すように、透明な治具である間隔確認治具19には、下端を切り欠いた切欠部19a、19aが、所定の間隔Lをあけて形成されている。各切欠部19aに壁面5に取り付けられた上金具3、3をはめ込むように間隔確認治具19を壁面5に当接し、例えば、上金具3の立上部3fの左側を切欠部19aの左端に合わせて、上金具3、3の間隔を確認する。
【0013】
(2)下金具13を位置決めし、固定する工程(
図1(b)(c)参照)
(2-1)下金具13の取り付け位置の墨出し
図9に示すように、壁面5の上金具3に対して左右方向Xの下金具13の取り付け位置を合わせるために、上金具3を取り付ける際に墨出しした垂直墨出し線33に対してまっすぐな床墨出し線39を墨出しする。このとき、例えばガムテープ等の貼付材37を床7に貼り付け、その貼付材37に床墨出し線39を引く。
【0014】
(2-2)上金具3への伸縮棒9の取り付け
上金具3に伸縮棒9を取り付ける前に、伸縮棒9の長さを桁材15の長さに合わせておく。
具体的には、
図4に示すように、伸縮棒9の上端9a側の伸縮棒取り付け治具11のボルト孔11aの位置を、桁材15のステップ受け15aに近い上側ボルト孔15bの位置に合わせ、専用ボルト51をボルト孔11aに挿通し、上側ボルト孔15bに螺合して取り付ける。
次に、伸縮棒9の下端9bの伸縮棒取り付け治具11のボルト孔11aの位置を、桁材15のステップ受け15aに近い下側ボルト孔15cの位置に合わせ、専用ボルト51をボルト孔11aに挿通し、下側ボルト孔15cに螺合して取り付ける。このとき、第2棒部材9d材及び第3棒部材9eをスライドさせて、伸縮棒9を適切な長さに調整する。
その後、第1調整つまみ9f及び第2調整つまみ9gを締めて、第1棒部材9cと第2棒部材9dと第3棒部材9eとの相対的な位置を固定することで、伸縮棒9の長さを固定する。
次に、伸縮棒9の上端9a及び下端9b側の各伸縮棒取り付け治具11を桁材15に取り付けた専用ボルト51を取り外す。
【0015】
続いて、
図1(b)に示すように、壁面5に取り付けられた上金具3に伸縮棒9の上端9aを取り付ける。具体的には、
図7に示すように、壁面5に取り付けた上金具3の上側のボルト孔3bの位置と伸縮棒9の上端9aの伸縮棒取り付け治具11のボルト孔11aの位置とを合わせ、これらのボルト孔3b、11aに専用ボルト51を挿通して上金具3の一方の立上部3fに伸縮棒取り付け治具11を回動可能に取り付ける。
(2-3)伸縮棒9への下金具13の取り付け
図1(c)に示すように、伸縮棒9の下端9bに下金具13を取り付ける。具体的には、
図1(c)及び
図8に示すように、下金具13を床7に固定する際において、伸縮棒9の下端9bの伸縮棒取り付け治具11のボルト孔11aの位置に、下金具13の壁面5から遠い方のボルト孔13bの位置を合わせて、これらのボルト孔13b、11aに専用ボルト51を挿通して伸縮棒取り付け治具11に下金具13の一方の立上部13fを回動可能に取り付ける。そして、下金具13を床7に当接する。
これにより、床7に対する前後方向Y(
図9参照)の下金具13の取り付け位置が決まる(位置出しが完了する)。
(2-4)下金具13を床7に固定する
下金具13の中心を床墨出し線39に合わせ、床7に下金具13のコーチネジ61用の取り付け孔の位置を墨出しし、墨出しした取り付け孔の位置に取り付け孔をあけ、下金具13をコーチネジ61で床7に固定する(
図9参照)。このとき、伸縮棒9の取り付けに使用している下金具13のボルト孔13bが、壁面5から遠い側(
図1(c)参照)になるように下金具13を固定する。また、立上部13fが床墨出し線39に対して平行になるように固定する。
(2-5)床7に取り付けた下金具13、13の間隔を確認する
上述した上金具3、3の間隔の確認と同様に、間隔確認治具19を用いて、下金具13、13の間隔を確認する。
【0016】
(3)上金具3及び下金具13に桁材15を取り付ける工程(
図1(d)(e)参照)
(3-1)上金具3及び下金具13からの伸縮棒9の取り外し
図1(d)及び
図9に示すように、伸縮棒9の上端9aの伸縮棒取り付け治具11を上金具3に取り付けている専用ボルト51を外し、伸縮棒9の下端9bの伸縮棒取り付け治具11を下金具13に取り付けている専用ボルト51を外して、伸縮棒9を上金具3及び下金具13から取り外す。
【0017】
(3-2)上金具3及び下金具13への桁材15の取り付け
図1(e)に示すように、上金具3のボルト孔3bの位置と桁材15の上側ボルト孔15bの位置とを合わせ、専用ボルト51を上側ボルト孔15bに螺合し、上金具3のボルト孔3bに挿通して上金具3に桁材15の上側を取り付ける。また、下金具13のボルト孔13bの位置と桁材15の下側ボルト孔15cの位置とを合わせ、専用ボルト51を下側ボルト孔15cに螺合し、下金具13のボルト孔13bに挿通して下金具13に桁材15の下側を取り付ける。
このようにして、床7と壁面5との間に桁材15を設置する(
図10参照)。
【0018】
(4)ステップ、支柱等を取り付ける工程
図11に示すように、桁材15に取り付けてある各ステップ受け15aにステップ21を取り付ける。次に、各支柱23を所定間隔でステップ21に取り付け、各支柱23、23間にパネル板25を取り付ける。そして、各支柱23に架設するように手すり受け27を取り付け、その手すり受け27に手すり29を取り付ける。
【0019】
実施の形態にかかる階段の製造方法の作用効果について説明する。
上金具3の取り付け位置を基準にして、桁材15の寸法に合わせた伸縮棒9を用いて下金具13の位置決めをして下金具13を床7に固定するため、壁や床7が傾いている場合であっても、下金具13の位置決めが容易であり、桁材15の施工性が良いと共に施工誤差が少ない。
さらに、上金具3の取り付け位置を基準にしているため、上金具3の高さは変わらないことから、階段の蹴上げ寸法が変わらない。
【0020】
図2に示すように、施工前の桁材15に上金具3及び下金具13が専用ボルト51で取り付けてあるため、桁材15を施工する際に、上金具3、下金具13及び専用ボルト51を別途準備する手間を省くことができる。また、準備忘れを防止できる。
さらに、上金具3及び下金具13は桁材15の中空に取り付けてあるため、桁材15を施工現場に搬入する際に嵩張らない。
図3に示すように、伸縮棒9は、全長がスライドにより調整可能な構成であるため、様々な寸法の桁材15の施工の際に使用することができる。
【0021】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、上金具3及び下金具13は必ずしも桁材15に取り付けていなくても良く、桁材15とは別に梱包しても良い。
桁材15からの上金具3及び下金具13の取り外しは、伸縮棒9の長さを桁材15の長さに合わせる前に行えば良く、伸縮棒9への伸縮棒取り付け治具11の取り付けよりも後に行っても良い。
桁材15を上金具3、下金具13、伸縮棒取り付け治具11に取り付ける際、専用ボルト51を螺合により取り付けることに限らず、挿通により取り付けても良い。この場合、専用ボルト51に代えてピン等の挿通部材を用いても良い。
伸縮棒9は伸縮棒取り付け治具11を別途取り付ける構成ではなく、伸縮棒取り付け治具11と一体の構成であっても良い。
また、桁材15のステップ受け15aから遠い上側ボルト孔15b及び下側ボルト孔15cに伸縮棒取り付け治具11のボルト孔11aを合わせることで、伸縮棒9の長さを桁材15の寸法に合わせても良い。その場合、壁面5に取り付けられた上金具3の下側のボルト孔3bと伸縮棒9の上端9a側の伸縮棒取り付け治具11のボルト孔11aとに専用ボルト51を挿通して伸縮棒9を上金具3に取り付ける。また、下金具13を床7に取り付ける際に壁面5に近い側となるボルト孔13bと伸縮棒取り付け治具11のボルト孔11aとに専用ボルト51を挿通して伸縮棒9を下金具13に取り付ける。
伸縮棒9の下端9bへの下金具13の取り付けは、伸縮棒9の長さを桁材15の長さに合わせた後、且つ下金具13を床7に固定する前に行えば良く、必ずしも上金具3に伸縮棒9の上端9aを取り付けた後に行わなくとも良い。
伸縮棒9を上金具3及び下金具13に取り付ける場合、上金具3に伸縮棒9の下端9bを取り付け、下金具13に伸縮棒9の上端9aを取り付けても良い。
伸縮棒9は、第1棒部材9cと、第2棒部材9dと、第3棒部材9eとの3つの棒部材で構成することに限らず、2つ又は4つの棒部材で長さを伸縮自在に構成しても良い。
間隔確認治具19を用いて壁面5に取り付けた上金具3、3の間隔の確認する際に、上金具3の立上部3fの右側を切欠部19aの右端に合わせて、上金具3、3の間隔を確認しても良い。
【符号の説明】
【0022】
3 上金具
5 壁面
7 床
9 伸縮棒
9a 上端
9b 下端
13 下金具
15 桁材