(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】鋼片搬送用天井クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 17/04 20060101AFI20220404BHJP
B66C 13/22 20060101ALI20220404BHJP
B66C 13/48 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B66C17/04
B66C13/22 Y
B66C13/48 B
(21)【出願番号】P 2018083998
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】松本 広樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 久之
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝義
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-138702(JP,A)
【文献】特開平01-242392(JP,A)
【文献】特開平08-081015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 17/00-17/26
B66C 9/00-11/26
B66C 13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼片搬送用天井クレーンのクレーン上に鋼片の寸法測定用の広域レーザー距離センサーを複数個装備し、クレーンを取り扱い対象の鋼片の置き場上面に移動し、鋼片の上面より広域レーザー距離センサーにより鋼片スラブの寸法測定を行うようにした鋼片搬送用天井クレーンであって、
鋼片の短尺方向
については、2個の
短尺方向検出用の広域レーザー距離センサーで2つのラインの短尺方向の両端辺
までの寸法を測定
し、測定したそれぞれの寸法と2個の短尺方向検出用の広域レーザー距離センサー間の距離より、鋼片の短尺方向の中心
線と
、該鋼片
の短尺方向の中心線のクレーン平行線に対する傾きを算出し、
鋼片の長尺方向については、鋼片の長尺方向のある端辺の上方付近と、それと反対側の長尺方向の
端辺の上方付近の2箇所のクレーン上に長尺方向検出用の広域レーザー距離センサーを設け、この2個の長尺方向
検出用の広域レーザー距離センサー
を、クレーンの平行線の同一ライン上に配置することで、長尺方向検出用の広域レーザー距離センサーが検出したそれぞれの長尺方向端辺の位置
から長尺方向端辺距離を測定し、測定したそれぞれの長尺方向端辺距離と2個の長尺方向検出用の広域レーザー距離センサー間の距離より、長尺方向
の中心を算出し、
算出した鋼片の短尺方向
の中心線と長尺方向
の中心
とから導かれる鋼片の寸法中心位置を鋼片の重心位置と
みなし、
該鋼片の
重心位置
とみなした鋼片の寸法中心位置に鋼片搬送用トングの中心位置を合わせるように鋼片搬送用天井クレーンを移動させ、鋼片を掴む一連のシステムを装備した
ことを特徴とする鋼片搬送用天井クレーン。
【請求項2】
前記鋼片の短尺方向中心線と、長尺方向検出用広域レーザー距離センサー取り付け位置との短尺方向平面距離が大きく、且つ、鋼片がクレーン平行線に対する傾き角度が大きい場合は、鋼片の短尺方向中心線
と長尺方向検出用広域レーザー距離センサー取り付け位置との短尺方向平面距離と、鋼片
の短尺方向中心線のクレーン平行線に対する傾き角度の三角関数から、長尺方向検出用
の広域レーザー距離センサーで検出した長尺方向中心位置を補正する補正
手段と、鋼片がクレーン平行線に対する傾き角度が大き過ぎた場合は、警報を発報する鋼片の傾き角度の処理
手段とを装備したことを特徴とする請求項1に記載の鋼片搬送用天井クレーン。
【請求項3】
段積みされた鋼片を上方クレーンから広域レーザー距離センサーにより測定する場合に、最上段の鋼片高さから、測定対象の鋼片の厚み未満の寸法より下の位置は測定しないようにすることにより、最上段の鋼片のみを測定するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼片搬送用天井クレーン。
【請求項4】
前記広域レーザー距離センサーを
、クレーン上から地上に置かれた鋼片を見下ろすかたちで取り付け
、該広域レーザー距離センサー
は、冷却装置が設けられた防熱カバーで覆ってあり、該防熱カバーには、広域レーザー距離センサーのレーザー照射用覗き穴が設けてあり、該覗き穴には防熱シャッターが設けてあり、該防熱シャッターは、広域レーザー距離センサーが測定を行う瞬時のみ防熱シャッターを開き、覗き穴からのレーザー通光を可能とし、常時は防熱シャッターを閉じた状態とし、一旦シャッターを開いた後は、一定時間経過後でないとシャッターが開かないようにしたことを特徴とする
請求項1、2又は3に記載の鋼片搬送用天井クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼製品の製造過程で、例えば、高温状態の鋼片スラブを天井クレーンにより運搬する際に適用する鋼片搬送用天井クレーンに関し、特に、鋼片掴み位置を自動的に検出するようにした鋼片搬送用天井クレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼所で鋳造された鋼片スラブは、次の熱延工程に流す前に、高温の鋼片スラブを適温に下げたり、次の熱延の工程に合わせて鋼片スラブをストックするために、ヤードで保管管理される。
このヤード内での高温の鋼片スラブの運搬は、鋼片スラブを掴むための専用の鋼片スラブトングを装備した鋼片運搬用の専用天井クレーンを有人操作で動かして運搬するようにしているが、クレーンの自動運転化、効率化が求められている。
【0003】
ところで、鋼片スラブを、鋼片スラブトングで掴み、クレーンで吊り上げる場合、鋼片スラブの重心位置で掴まないと吊り荷の傾きやずり落ちの原因になる。このため、有人操作では、目測での重心位置で掴み上げるが、自動運転では、重心位置を検出するためのセンサーが必要になる。
【0004】
スラブヤードに保管されている鋼片スラブは、何段にも段積みされて保管されており、最上段の1枚毎に掴むが、最上段の鋼片スラブと下段の鋼片スラブは、綺麗に整列された状態では積まれていないので最上段にある鋼片スラブの重心を計測する時に、その下段の鋼片スラブの位置を計測してしまうと重心位置が誤って算出される課題がある。
【0005】
ところで、このような問題に対処するために、従来、鋼片の運搬を天井クレーンで行う場合に、鋼片の形状及びその重心位置を検出するために、鋼片の斜め上方からカメラによって撮像し、撮像した画像を鋼片の平面と側面画像とに別けてそれぞれ抽出する画像処理を行い、カメラと鋼片との間の平面距離及びカメラの光軸と鋼片の底面との間の角度を算出し、平面画像から鋼片の中心点を及び側面画像から鋼片の高さをそれぞれ演算して求め、これらの中心点及び高さから鋼片の重心位置を求め、この重心位置に従って鋼片の位置を位置決め制御する鋼片の自動吊り上げ方法が提案されている(必要があれば、例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のカメラを用いる方法は、画像処理に時間を要する等の問題があった。
【0008】
また、スラブヤードに運ばれてくる鋼片スラブは、鋳造ラインで鋳造されたばかりの高温の鋼片スラブが運び込まれる。高温の鋼片スラブからは強い輻射熱が発せられ、この輻射熱によりセンサーが損傷しないための措置が必要であった。
【0009】
本発明は、上記従来の鋼片搬送用天井クレーンの有する問題点に鑑み、距離センサーを使用し、簡易な機構で、迅速且つ正確に、何段にも段積みされた鋼片のうちの最上段の1枚を掴むことができるようにした鋼片搬送用天井クレーンを提供することを第1の目的とする。
【0010】
また、本発明は、高温の鋼片が発する強い輻射熱によりセンサーが損傷しないようにすることができるようにした鋼片搬送用天井クレーンを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記第1の目的を達成するため、本発明の鋼片搬送用天井クレーンは、鋼片搬送用天井クレーンのクレーン上に鋼片の寸法測定用の広域レーザー距離センサーを複数個装備し、クレーンを取り扱い対象の鋼片の置き場上面に移動し、鋼片の上面より広域レーザー距離センサーにより鋼片スラブの寸法測定を行うようにした鋼片搬送用天井クレーンであって、鋼片の短尺方向については、2個の短尺方向検出用の広域レーザー距離センサーで2つのラインの短尺方向の両端辺までの寸法を測定し、測定したそれぞれの寸法と2個の短尺方向検出用の広域レーザー距離センサー間の距離より、鋼片の短尺方向の中心線と、該鋼片の短尺方向の中心線のクレーン平行線に対する傾きを算出し、鋼片の長尺方向については、鋼片の長尺方向のある端辺の上方付近と、それと反対側の長尺方向の端辺の上方付近の2箇所のクレーン上に長尺方向検出用の広域レーザー距離センサーを設け、この2個の長尺方向検出用の広域レーザー距離センサーを、クレーンの平行線の同一ライン上に配置することで、長尺方向検出用の広域レーザー距離センサーが検出したそれぞれの長尺方向端辺の位置から長尺方向端辺距離を測定し、測定したそれぞれの長尺方向端辺距離と2個の長尺方向検出用の広域レーザー距離センサー間の距離より、長尺方向の中心を算出し、算出した鋼片の短尺方向の中心線と長尺方向の中心とから導かれる鋼片の寸法中心位置を鋼片の重心位置とみなし、該鋼片の重心位置とみなした鋼片の寸法中心位置に鋼片搬送用トングの中心位置を合わせるように鋼片搬送用天井クレーンを移動させ、鋼片を掴む一連のシステムを装備したことを特徴とする。
【0012】
この場合において、前記鋼片の短尺方向中心線と、長尺方向検出用広域レーザー距離センサー取り付け位置との短尺方向平面距離が大きく、且つ、鋼片がクレーン平行線に対する傾き角度が大きい場合は、鋼片の短尺方向中心線と長尺方向検出用広域レーザー距離センサー取り付け位置との短尺方向平面距離と、鋼片の短尺方向中心線のクレーン平行線に対する傾き角度の三角関数から、長尺方向検出用の広域レーザー距離センサーで検出した長尺方向中心位置を補正する補正手段と、鋼片がクレーン平行線に対する傾き角度が大き過ぎた場合は、警報を発報する鋼片の傾き角度の処理手段とを装備することができる。
【0013】
また、段積みされた鋼片を上方クレーンから広域レーザー距離センサーにより測定する場合に、最上段の鋼片高さから、測定対象の鋼片の厚み未満の寸法より下の位置は測定しないようにすることにより、最上段の鋼片のみを測定するようにすることができる。
【0014】
また、上記第2の目的を達成するため、本発明の鋼片搬送用天井クレーンは、天井クレーンに取り付ける鋼片計測用の広域レーザー距離センサーを備えた鋼片搬送用天井クレーンであって、クレーン上から地上に置かれた鋼片を見下ろすかたちで取り付けられ、広域レーザー距離センサーには、冷却装置が設けられた防熱カバーで覆ってあり、該防熱カバーには、広域レーザー距離センサーのレーザー照射用覗き穴が設けてあり、該覗き穴には防熱シャッターが設けてあり、該防熱シャッターは、広域レーザー距離センサーが測定を行う瞬時のみ防熱シャッターを開き、覗き穴からのレーザー通光を可能とし、常時は防熱シャッターを閉じた状態とし、一旦シャッターを開いた後は、一定時間経過後でないとシャッターが開かないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
先ず、本発明の鋼片搬送用天井クレーンは、掴みたい鋼片の位置情報に基づき、クレーンを鋼片の上に移動させる。
クレーンには、鋼片のある一辺X軸方向の幅を計測するための広域レーザー距離センサーと、それと直行する方向Y軸方向の幅を計測するための広域レーザー距離センサーを取り付けておく。
鋼片の重心位置は、上面から見た平面の寸法上の中心位置に近似している形状であることから、前記のX軸、Y軸の広域レーザー距離センサーで測定した寸法中心位置の真上に、クレーンの巻上げ装置の中心位置が来るように、クレーンの横行、走行を動かし位置決め停止し、この位置で巻下げ、掴み動作をすることで、鋼片重心位置で掴むことができる。
【0016】
この場合、ヤードで取り扱われる鋼片の厚みは予め分かっているので、段積みされた鋼片の最上段の形状、寸法、位置のみを確実に測定するために、最上段の板の高さより鋼片の厚み分だけ低い高さより、若干高い位置より下の検出物は検出しないようにすることで、上から2段目以下の鋼片は検出しないようにする。
【0017】
前記の広域レーザー距離センサーは、鋼片の見通しのよい位置に付けるために、鋼片から受ける輻射熱から広域レーザー距離センサーには、輻射熱遮蔽用の収納箱に収納し、この収納箱の下部には、通光用の小窓を設け、この小窓は防熱可動シャッターにより通常は塞がれており、広域レーザー距離センサーの測定を行う瞬時のみ、防熱可動シャッターを開き、測定を実施する。
この収納箱には、収納箱内側と広域レーザー距離センサー及び防熱稼働シャッターを冷却するための通風ファンを設けている。
防熱可動シャッターが頻繁に開くことにより、広域レーザー距離センサーの温度が上昇することを防止するために、一旦防熱可動シャッターを開閉すると、広域レーザー距離センサーの表面温度を一定温度まで下げる時間が経過するまでは、防熱可動シャッターが開かないようにしている。
【0018】
自動化が進む製鉄ラインの中で、鋼片用クレーンは、重心位置を掴まないと吊り荷の落下などの事故に繋がるため、人手で操作をするクレーンで取り扱われてきた。
本発明は、重心位置を自動で測定することのできる技術で、クレーンの自動運転による搬送を行う上で有効である。
また、人手で操作するクレーンにおいても、本発明を活用することにより、荷の重心位置を的確に検出できるので、吊り荷の重心位置アンバランスによる吊り荷の落下事故を防止でき、安全性の向上になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】鋼片スラブヤードの鋼片搬送用天井クレーンの概略説明図である。
【
図2】鋼片スラブの寸法中心位置の想定方法の説明図である。
【
図3】鋼片スラブの端辺を検出する方法の説明図である。
【
図4】広域レーザー距離センサーの防熱カバーの断面構造図で、防熱シャッターが閉じている状態の説明図である。
【
図5】防熱カバーの防熱シャッターが開いた状態の断面構造説明図である。
【
図6】防熱カバーの防熱シャッターの開閉のタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の鋼片搬送用天井クレーンの実施の形態を、鋼片スラブを取り扱う鋼片スラブヤードの鋼片搬送用天井クレーンを例に、図面に基づいて説明する。
【0021】
製鋼工程で、連速鋳造設備で製造される厚板は、ある一定寸法で切断され長尺の厚い平板形状で、鋼片スラブヤードに、高温状態で運び込まれ、次工程の圧延工程に流す前に、鋼片スラブヤードで一旦ストックされる。
【0022】
鋼片スラブヤードでは、
図1に示すとおり、鋼片スラブ搬送用の専用のクレーンCRが配置されている。クレーンCRには、鋼片スラブを掴むための専用のトングTGが吊下げされている。
このトングTGは、鋼片スラブSBの短尺方向の側面を把握し、通常は1枚ずつ搬送する。
上流から流れてきた鋼片スラブSBは、クレーンCRにより、スラブ置き場パレットPL上に段積みされて保管され、下流工程に鋼片スラブを供給する時は、スラブ置き場パレットPLの最上段に積まれた鋼片スラブSBを掴み、下流工程の払い出し場にクレーンCRで運搬する。
【0023】
上記の作業工程で、鋼片スラブSBをトングTGにより掴む際、鋼片スラブSBの重心位置で掴まないと、クレーンCRで鋼片スラブSBを吊り上げた際に鋼片スラブSBが傾き、鋼片スラブSBを落としてしまう危険性がある。このため、クレーンCRを自動運転にしたり、クレーンCRを手動で動かす場合の安全性を向上するためには、搬送対象の鋼片スラブSBの重心位置を把握することが重要になる。
【0024】
このため、クレーンCRのクラブの両端には、鋼片スラブSBの短尺方向の寸法を測定するために2個の広域レーザー距離センサーPX1、PX2を取り付け、
図2に示す、2ラインの短尺ラインPX1L、PX2Lを測定することができるようにしている。
また、鋼片スラブSBの長尺方向を測定するためにクラブの両端の長尺方向の同一ライン上に2個の広域レーザー距離センサーPY1、PY2を取り付け、長尺方向の片方ずつの端辺を検出できるようにしている。
ここで、広域レーザー距離センサーPX1、PX2及び広域レーザー距離センサーPY1、PY2には、広画角の広域走査可能な汎用の広域レーザー距離センサー(例えば、北陽電機社製の測域センサUXM-30LX。)を使用することができる。
【0025】
クレーンCRを自動運行する場合は、鋼片スラブSBがスラブヤードに持ち込まれるコンベア上の鋼片スラブの掴み定位置と、パレットPLの位置は、クレーンCRの自動運行用コンピュータが記憶している。
その記憶された位置にクレーンCRを移動することで、4個の広域レーザー距離センサーPX1、PX2、PY1、PY2のすべてが、搬送対象の鋼片スラブSBの測定可能範囲に入る。
この時、4個の広域レーザー距離センサーPX1、PX2、PY1、PY2が鋼片スラブの寸法中心位置を測定し、この寸法中心位置が重心位置とみなして、トングTGの中心位置と鋼片スラブSBの中心位置を合わせるようにクレーンCRを移動し、最上段の鋼片スラブSBを掴むようにする。
【0026】
短尺方向に取り付けた2個の広域レーザー距離センサーPX1、PX2は、
図2に示すとおり、夫々PX1L及びPX2Lの夫々の短尺方向ラインを走査し、夫々の短尺方向の両端辺までの寸法a1、b1及び寸法a2、b2を測定する。この寸法a1、b1及び寸法a2、b2と、センサーPX1、PX2を取り付けた距離eより、鋼片スラブの短尺方向の中心線CTSを引くことができ、更に、クレーン平行線CTCと鋼片スラブ短尺方向中心線CTSとのなす角であるθ、つまり、クレーンから見た鋼片スラブの傾き角度θが算出される。
【0027】
長尺方向の端辺を測定するのに当たり、なるべく真上から測定する方が、端辺を精度よく測定できるので、取り扱う鋼片スラブの長尺方向寸法に合わせて、長尺方向検出用広域レーザー距離センサーPY1、PY2は合理的な位置に取り付け、位置間距離eを設定している。
本実施例では、短尺方向と、長尺方向の夫々の広域レーザー距離センサーの取り付け位置は、同じe寸法の同ライン上に設置しているが、短尺方向と長尺方向のe寸法は、異なる寸法位置でもよい。
なお、長尺方向検出用広域レーザー距離センサーPY1、PY2は、クレーン平行線CTCと平行の同一ライン上に設置している。
長尺方向検出用広域レーザー距離センサーPY1、PY2は、夫々PY1L或いはPY2Lライン上を走査し、d寸法及びc寸法を測定し、PY1L及びPY2Lライン上での長尺方向中心を算出する。
【0028】
短尺方向の測定の結果で鋼片スラブ傾き角度θが小さい時或いは長尺方向広域レーザー距離センサーPY1、PY2の取り付け位置から鋼片スラブ短尺方向中心線CTSまでの寸法fが小さい時は、d寸法、c寸法、e寸法の中心を長尺方向の中心とする。
f寸法が大きく、θ角度が大きい場合は、三角関数より長尺方向中心までの補正寸法g寸法を算出し、補正gを加えて長尺方向の中心とする。
【0029】
なお、測定された鋼片スラブの傾き角度θがあまりに大きい場合は、クレーンCRで鋼片スラブSBを吊り上げた際に、大きな回転力が生じて危険なため、鋼片スラブの傾き角度θがあまりに大きい場合は、鋼片スラブSBを吊り上げる前に自動運転を中止し、異常警報を発報する。
【0030】
鋼片スラブSBは、
図3のようにパレットPL上に不整列に積み重ねられている。
このため、クレーンCR上から広域レーザー距離センサーPS、すなわち、PX1、PX2、PY1、PY2で見下ろすと、最上段の鋼片スラブSBの端辺のほかに、その下段に積まれている鋼片スラブSBの端辺も見えてしまう。
鋼片スラブは、最上段に積まれた1枚毎に掴むので、最上段の鋼片スラブSBの端辺のみを測定する必要がある。
この時、鋼片スラブが積み上げられたパレット上で、広域レーザー距離センサーPSから測定される最も高い位置の物体は、鋼片スラブSBの最上段の上面高さTPが検出される。このため、上面高さTPから鋼片スラブ測定しきい値高さ寸法TKSより下がった位置から下方は測定しないようにすることで、最上段の鋼片スラブSBのみを測定することができる。
なお、スラブヤードに持ち込まれる鋼片スラブの厚み寸法TKは、決まっているので、鋼片スラブ測定しきい値高さ寸法TKSは、鋼片スラブの厚み寸法TKよりも小さい値で、検出誤差や非検出物の形状誤差等を考慮し、最上段の鋼片スラブの上面の全体が検出でき、且つ、その下段の鋼片スラブを検出しないように適切に設定されている。
【0031】
なお、広域レーザー距離センサーPS、すなわち、PX1、PX2、PY1、PY2は、鋼片スラブSBの見通しのよい位置に取り付ける必要があるが、スラブヤードに持ち込まれる鋼片スラブSBは、高温の状態で落ち込まれ、強い輻射熱が発せられている。この強い輻射熱から広域レーザー距離センサーPSを保護するために、
図4に示す防熱カバーに収納している。
この防熱カバーは、断熱材入りの輻射熱遮蔽用防熱カバーで広域レーザー距離センサーPSを覆っており、下面にはレーザー照射用覗き窓PHが設けてある。
覗き窓PHには、輻射熱遮蔽用防熱シャッターSHが設けられており、通常は、輻射熱が広域レーザー距離センサーPSに当たらないようになっている。
また、輻射熱遮蔽用防熱カバー箱BXの上面には、冷却風を取り込む穴が設けられ、冷却ファンFNにより、冷却通風FWが吹き込まれて、広域レーザー距離センサーPSの表面と輻射熱遮蔽用防熱カバー箱BXの内面と、輻射熱遮蔽用防熱シャッターSH及びシャッター駆動用アクチエーターACの表面に冷却風を当て、レーザー照射用覗き窓から吹き出すことで、各部の冷却を行っている。
冷却ファンFNの上部にはファンカバーCVが設けられ、冷却ファン部の開口部から埃が入ったり雨水が入り込むことを防止している。
【0032】
広域レーザー距離センサーPSによる測定を行う時は、
図5に示すとおり、シャッター駆動用アクチエーター(ロータリーソレノイド)ACを駆動し、輻射熱遮蔽用防熱シャッターSHを開きレーザー照射用覗き窓PHの通光を行うようにしている。
【0033】
輻射熱遮蔽用防熱シャッターSHは、
図6に示すタイムチャートに従って開閉操作を行う。
先ず、広域レーザー距離センサーPSの測定指令CMが発せられると、輻射熱遮蔽用防熱シャッター動作SDのチャートに示すとおり、輻射熱遮蔽用防熱シャッター開き動作OPが開始され、約0.2秒で開き動作OPが完了する。そこから約0.3秒の待ち時間STを経て広域レーザー距離センサー計測MSを実施し、計測は約0.05秒で終了し、計測MSの終了を経て測定指令CMを立ち下げ、これを受けて、輻射熱遮蔽用防熱シャッター閉じ動作CLを約0.2秒で完了する。
この一連動作は、約0.75秒の瞬時に行うことで、鋼片スラブが発する輻射熱により広域レーザー距離センサーPSの表面温度が上昇することを防止している。
一旦、測定指令CMが発せられると、一定時間は再測定ができないように、再測定インターバル時間IVを設けることにより、短時間内に繰り返して輻射熱遮蔽用防熱シャッターが開くことにより広域レーザー距離センサーPSの表面温度が上昇することを防止する。
【0034】
以上、本発明の鋼片スラブ搬送用天井クレーンの鋼片スラブ掴み位置検出方法について、鋼片スラブを取り扱う鋼片スラブヤードの鋼片搬送用天井クレーンを例に説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の鋼片搬送用天井クレーンは、鋼片搬送用天井クレーンの自動化や、手動操作クレーンについても掴み位置の最適化による安全化が図れることから、自動化、安全化の産業上の課題に応えるもので、鋼片スラブを取り扱う鋼片スラブヤードの鋼片搬送用天井クレーンに好適に用いることができるほか、各種鋼片を対象とする鋼片搬送用天井クレーンの用途にも用いることができ、また、新設、既設或いは自動、手動の区別なく適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
CR 鋼片スラブ搬送用クレーン
TG 鋼片スラブ搬送用掴みトング
SB 鋼片スラブ(鋼片)
PL スラブ置き場パレット
PX1 短尺方向検出用広域レーザー距離センサー1
PX2 短尺方向検出用広域レーザー距離センサー2
PY1 長尺方向検出用広域レーザー距離センサー1
PY2 長尺方向検出用広域レーザー距離センサー2
PX1L 短尺方向検出用広域レーザー距離センサー1走査ライン
PX2L 短尺方向検出用広域レーザー距離センサー2走査ライン
PY1L 長尺方向検出用広域レーザー距離センサー1走査ライン
PY2L 長尺方向検出用広域レーザー距離センサー2走査ライン
a1 短尺方向1ライン左側端辺距離
b1 短尺方向1ライン右側端辺距離
a2 短尺方向2ライン左側端辺距離
b2 短尺方向2ライン右側端辺距離
c 長尺方向PY1側端辺距離
d 長尺方向PY2側端辺距離
e PX1、PX2或いはPY1、PY2取り付け位置間長尺方向距離
CTS 鋼片スラブ短尺方向中心線
CTC クレーン平行線
θ 鋼片スラブ傾き角度
f 長尺方向検出センサー取り付け位置から鋼片スラブ短尺方向中心線までの寸法
g 長尺方向中心までの補正寸法
CT 鋼片スラブ中心(重心検出位置)
PS 広域レーザー距離センサー
SL レーザー照射線
TP 最上段鋼片スラブ上面高さ
TK 鋼片スラブ厚み寸法
TKS 鋼片スラブ測定しきい高さ寸法
BX 輻射熱遮蔽用防熱カバー箱(断熱材入り)
PH レーザー照射用覗き窓
SH 輻射熱遮蔽用防熱シャッター
AC シャッター駆動用アクチエーター(ロータリーソレノイド)
FN 冷却ファン
CV ファンカバー
FW 冷却通風
CM 測定指令
SD 輻射熱遮蔽用防熱シャッター動作
MS 広域レーザー距離センサー計測
OP 輻射熱遮蔽用防熱シャッター開き動作
ST 待ち時間
CL 輻射熱遮蔽用防熱シャッター閉じ動作
IV 再測定インターバル時間