(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】掘削撹拌ヘッド
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2018089252
(22)【出願日】2018-05-07
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000133881
【氏名又は名称】株式会社テノックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】堀切 節
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅博
(72)【発明者】
【氏名】村山 篤史
(72)【発明者】
【氏名】山路 耕寛
(72)【発明者】
【氏名】日下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】加藤 篤史
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-188856(JP,A)
【文献】特開平05-141168(JP,A)
【文献】特開2002-327431(JP,A)
【文献】特開平11-061800(JP,A)
【文献】特開平11-029923(JP,A)
【文献】特開平07-042159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ロッドに接続され、掘削翼と、撹拌翼と、共回り防止翼とを備え、先端部からセメントミルクを吐出し地盤と撹拌混合してソイルセメント柱を築造し、かつ前記ソイルセメント柱内に鋼管を埋設するために用いられる掘削撹拌ヘッドにおいて、前記共回り防止翼は、共回り防止翼基部と共回り防止翼先端部とから構成され、前記共回り防止翼先端部は前記共回り防止翼基部に対し、前記共回り防止翼の長手方向と直交する方向の支点ピンと前記共回り防止翼の長手方向と直交する方向のシャーピンを介して接続されており、前記共回り防止翼先端部が地盤から受ける抵抗力によって前記シャーピンに所定以上のせん断力が作用すると前記シャーピンが破断することで、前記共回り防止翼先端部が前記支点ピンを軸として回転可能になっており、前記共回り防止翼基部と前記共回り防止翼先端部には、前記共回り防止翼先端部が前記支点ピンを軸として所定角度以上回転したときに相互に当接する当接部が形成されており、かつ前記当接部における摩擦抵抗により前記共回り防止翼先端部の回動が拘束
されるようになっていることを特徴とする掘削撹拌ヘッド。
【請求項2】
掘削ロッドに接続され、掘削翼と、撹拌翼と、共回り防止翼とを備え、先端部からセメントミルクを吐出し地盤と混合撹拌してソイルセメント柱を築造するとともに、前記ソイルセメント柱内に鋼管を埋設するために用いられる掘削撹拌ヘッドにおいて、前記共回り防止翼は、共回り防止翼基部と共回り防止翼先端部とからなり、前記共回り防止翼先端部は前記共回り防止翼基部に対し、共回り防止翼の長手方向と直交する方向のシャーピンを介して接続されており、前記共回り防止翼先端部が地盤から受ける抵抗力によって前記シャーピンに所定以上のせん断力が作用すると前記シャーピンが破断することで、前記共回り防止翼先端部が前記共回り防止翼基部から外れるようになっていることを特徴とする掘削撹拌ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント柱と鋼管とからなる鋼管ソイルセメント杭を築造する際に用いられる鋼管ソイルセメント杭施工用の掘削撹拌ヘッドに関し、特に硬質地盤に到達後も硬質地盤による掘進抵抗を低減して鋼管ソイルセメント杭の継続施工を可能にすると共に、施工終了後は地表まで速やかに引き上げられるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管ソイルセメント杭は、地盤内に掘削土と固化材(例えば、セメントミルク)とからなるソイルセメント柱を築造し、その中に外面突起付き鋼管などの鋼管を沈設することにより築造される。また、ソイルセメント柱は、例えば、特許文献1に開示されているような、掘削軸(1)に掘削翼(2)、撹拌翼(3)および共回り防止翼(4)を備えた混合撹拌装置を用い、掘削翼(2)によって地盤を掘削しながら掘削軸(1)の先端から固化材を吐出し、撹拌翼(2)と共回り防止翼(4)とによって掘削土と固化材とを混合撹拌することにより築造される。
【0003】
特に、共回り防止翼(4)は、掘削翼(2)と撹拌翼(3)との間に回転フリーな状態で設置され、かつ掘削翼(2)および撹拌翼(3)より長く、先端が周囲地盤内に食い込むことで、掘削翼(2)および撹拌翼(3)が掘削軸(1)と共に地盤内を回転掘進しても回転することなく、周囲地盤を切削しながら掘削孔内を掘削翼(2)および撹拌翼(3)と共に掘進する。
【0004】
このため、硬質地盤に到達した時点においては、共回り防止翼(4)に大きな掘進抵抗が作用して施工能率が大きく低下するか、ソイルセメント柱の施工すら不可能になるおそれがある。
【0005】
これらの課題を解決する装置として、例えば、特許文献2には、掘削ロッド(1)の先端とこれより上方位置にそれぞれ取り付けられ、掘削ロッド(1)と共に回転する掘削翼(2)および撹拌翼(4)、掘削翼(2)と撹拌翼(4)間に回転フリーな状態に設置された共回り防止翼(3)とを備えた地盤改良用掘削ロッドの発明が開示されている。
【0006】
特に、共回り防止翼(3)は、掘削ロッド(1)に回転フリーな状態に外接するボス(5)に固設されたブラケット(7)に水平状態から上方に回転自在に軸支され、かつ水平時は掘削翼(2)および撹拌翼(4)の前方まで伸びている。
【0007】
また、共回り防止翼(3)が上方に回転して傾斜状態になったときに、共回り防止翼(3)をもとの水平状態に復帰させる付勢手段(9)と共回り防止翼(3)の水平状態を保持し、かつ一定量以上の回転力によって破断して共回り防止翼(3)の上方向への回転を許容するシャーピン(10)を備え、付勢手段(9)にはばね行数の小さいバネが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭58-29374号公報
【文献】特開2012-188856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献2に開示された地盤改良用掘削ロッドは、施工中、付勢手段(9)がソイルセメント内にあるため、ソイルセメントのコンシステンシーの変化やばらつきによって、付勢手段(9)の性能(ばね定数)が変化する恐れがあり、共回り防止翼(3)が適切に作動しないおそれがあった。
【0010】
また、施工後に、ソイルセメントが付着したまま硬化して付勢手段(9)が作動不能に陥るおそれがあった。かといって再使用時に硬化したソイルセメントを除去することは大変である。従って、施工後に、付着したソイルセメントを丁寧に除去しなければならず、多くの手間暇を必要とした。
【0011】
さらに、
図9,10に図示するように、付勢手段(9)が中空の円筒軸(15)内に内蔵された構成では、構造が複雑になりコストが嵩む等の課題が懸念される。
【0012】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、掘削土の共回り現象を防止することはもとより、硬質地盤に突き当たった後も共回り防止翼の掘進抵抗を低減してソイルセメント鋼管杭の築造を効率的に継続できるようにした掘削撹拌ヘッドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、掘削ロッドに接続され、掘削翼と、撹拌翼と、共回り防止翼とを備え、先端部からセメントミルク等の固化材を吐出しつつ、地盤と撹拌混合してソイルセメント柱を築造し、前記ソイルセメント柱内に鋼管を埋設するために用いられる掘削撹拌ヘッドの発明であり、前記共回り防止翼は、共回り防止翼基部と共回り防止翼先端部とからなり、前記共回り防止翼先端部は前記共回り防止翼基部に対し、共回り防止翼の長手方向と直交する方向の支点ピンと共回り防止翼の長手方向と直交する方向のシャーピンを介して接続されており、前記共回り防止翼先端部が地盤から受ける抵抗力によって前記シャーピンに所定以上のせん断力が作用すると前記シャーピンが破断することで、前記共回り防止翼先端部が前記支点ピンを軸にして回転可能となっていることを特徴とするものである。
【0014】
特に、シャーピンが所定以上のせん断力を受けると破断して、共回り防止翼先端部が支点ピンを軸に水平状態から上方(
図1において反時計回り方向(矢印方向))に回転するように構成されていることで、鋼管ソイルセメント杭の施工中に硬質地盤に突き当たったとしても、共回り防止翼先端部が支点ピンを軸に回転して上向きになることで硬質地盤による抵抗力が低減されるため、鋼管ソイルセメント杭の施工を中断することなく継続して実施することができる。
【0015】
なお、所定以上のせん断力とは、シャーピンが有するせん断強度を超える地盤の硬さによる掘進抵抗力のことであり、したがって、施工機(掘削機)の押込み能力に応じて最適なせん断強度を有するシャーピンを選択して使用することにより、鋼管ソイルセメント杭の施工をきわめて経済的かつ効率的に行うことができる。
【0016】
また、前記共回り防止翼基部と前記共回り防止翼先端部に、前記共回り防止翼先端部が前記支点ピンを軸として上方に所定角度以上回転したときに相互に当接する当接部を形成し、前記当接部における摩擦抵抗により前記共回り防止翼先端部の回動を拘束するように構成することで、共回り防止翼先端部を上向きの状態に確実かつ強固に固定することができる。
【0017】
これにより、特に鋼管ソイルセメント杭の掘削工程終了後、掘削撹拌ヘッドを引き上げる際に、共回り防止翼先端部が水平状態に復帰して掘削撹拌ヘッドの引き上げが困難になることはない。なお、上向きになった共回り防止翼先端部は、ワイヤー等を玉掛けして強く引っ張って当接部を引き離すことにより水平状態に復帰させることができる。
【0018】
また、相互に当接する当接部は、共回り防止翼基部と共回り防止翼先端部との対向面に、それぞれ支点ピンを中心に支点ピンの相反する周方向に徐々に隆起してテーパ状に形成してあれば、当接部どうしが強く当接し合うことにより共回り防止翼先端部の上方(
図1において反時計回り方向(矢印方向))および下方(時計回り方向)の両方向への回転を強固に拘束することができる。
【0019】
また、前記共回り防止翼先端部を前記共回り防止翼基部に対し、前記共回り防止翼の長手方向と直交する方向のシャーピンを介して接続し、前記共回り防止翼先端部が地盤から受ける抵抗力によって前記シャーピンに所定以上のせん断力が作用すると前記シャーピンが破断することで、前記共回り防止翼先端部が前記共回り防止翼基部から外れるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、特に共回り防止翼先端部が共回り防止翼基部に対し、共回り防止翼の長手方向と直交する方向の支点ピンと共回り防止翼の長手方向と直交する方向のシャーピンを介して接続され、かつ前記共回り防止翼先端部が地盤から受ける抵抗力によって前記シャーピンに所定以上のせん断力が作用すると前記シャーピンが破断することで、前記共回り防止翼先端部が前記支点ピンを軸として上方に回転するように構成されていることで、鋼管ソイルセメント杭の施工中に硬質地盤に突き当たったとしても、共回り防止翼先端部が支点ピンを軸に上方に回転して硬質地盤による掘進抵抗が低減されるため、鋼管ソイルセメント杭の施工を中断することなく、継続して実施することができる。
【0021】
また、共回り防止翼先端部は、硬質地盤の掘進抵抗により回転して上向きになった後、共回り防止翼基部と共回り防止翼先端部双方の当接部が強く当接し合うことにより回転後の上向き状態に強固に固定することができる。これにより鋼管ソイルセメント杭の掘削工程終了後、掘削撹拌ヘッドを引き上げる際に共回り防止翼先端部が水平状態に復帰するようなことはなく、掘削撹拌ヘッドを地表までスムーズに引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の掘削撹拌ヘッドの一実施形態を図示したものであり、
図1(a)は正面図、
図1(b)は
図1(a)におけるイ-イ線断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に図示する掘削撹拌ヘッドの要部拡大図であり、
図2(a)は、
図1(b)におけるロ部拡大図、
図2(b)は
図2(a)におけるハ部拡大断面図である。
【
図3】
図3(a),(b),(c),(d)は、共回り防止翼の共回り防止翼先端部の動作を示す説明図である。
【
図4】本発明の掘削撹拌ヘッドの他の実施形態を図示したものであり、掘削撹拌ヘッドの正面図である。
【
図5】
図5(a),(b)は、
図4の実施形態における共回り防止翼の共回り防止翼先端部の動作を示す説明図である。
【
図6】
図6(a),(b) ,(c)は、
図4の実施形態における共回り防止翼の共回り防止翼先端部の動作を示す説明図である。
【
図7】回転軸の先端部に取り付けられている掘削翼の変形例を図示したものであり、
図7(a)は正面図、
図7(b)は底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1~
図3は、本発明の一実施形態を図示したものである。図において、掘削撹拌ヘッド1は、回転軸2の先端部に掘削翼3、当該掘削翼3より上方に複数の撹拌翼4および共回り防止翼5をそれぞれ備えている。
【0024】
回転軸2は、先端部に地上より回転軸2内を通して注入される固化材(例えば、セメントミルク)の吐出口(図省略)を備え、また上端部に動力によって回転する掘削ロッド6に脱着自在に接続される接続部7を備えている。
【0025】
撹拌翼4は、回転軸2の軸方向に等間隔かつ回転軸2の軸直角方向に水平に設置され、回転軸2の両側に回転軸2の軸直角方向に対称に設置され、かつ回転軸2の周方向に平面視放射状に設置されており、これら回転軸2、掘削翼3および撹拌翼4は掘削ロッド6に接続され、掘削ロッド6と共に一体的に同時回転するように構成されている。
【0026】
共回り防止翼5は、一組の上下撹拌翼4,4間に回転軸2の軸直角方向に水平に設置され、かつ回転軸2の両側に対称に設置されている。また、共回り防止翼5は、共回り防止翼基部8とその先端側に位置する共回り防止翼先端部9とから構成され、かつ掘削翼3および撹拌翼4より長く構成されている。
【0027】
共回り防止翼基部8は、回転軸2に回転フリーな状態に外接する回転スリーブ10と当該回転スリーブ10の側部に回転軸2の軸直角方向に水平に設置されたブラケット11とから構成され、かつブラケット11の先端部に遊嵌溝12が形成されている。遊嵌溝12は共回り防止翼基部8の先端方向に開口しかつ鉛直方向に連続して形成されている。
【0028】
共回り防止翼先端部9は、回転支持部9aと当該回転支持部9aの先端側に位置するカッター部9bとから回転軸2の軸方向に薄い板状に形成され、かつ回転軸2の軸直角方向に長い板状に形成され、さらに、カッター部9bの先端部に上端側から下端側にかけて円弧状をなす刃形9cが形成されている。
【0029】
また、回転支持部9aは、ブラケット11の遊嵌溝12に遊嵌され、かつブラケット11に共回り防止翼5の長手方向と直交する方向の支点ピン13によってカッター部9bと共に上下方向に回転フリーな状態に軸支されている。また、回転支持部9aは、共回り防止翼5の長手方向と直交する方向のシャーピン14によって、カッター部9bが共回り防止翼基部8の先端方向に水平に延在された状態に固定され、かつ掘削翼3および撹拌翼4の先端より前方に延在された状態に固定されている。
【0030】
シャーピン14には、支点ピン13よりせん断強度が小さく、かつ所定以上のせん断力が作用することで破断する素材からなる支持ピンが使用されている。所定以上のせん断力とは、シャーピン14が有するせん断強度を超える地盤の硬さによる掘進抵抗力のことであり、したがって、施工機(掘削機)の押込み能力に応じて最適なせん断強度を有するシャーピン14を選択して使用することにより、鋼管ソイルセメント杭の施工をきわめて経済的かつ効率的に行うことができる。
【0031】
また、遊嵌溝12の内側面と回転支持部9aの側面には、共回り防止翼先端部9が支点ピン13を軸として上下方向(
図1において反時計回り方向(矢印方向))に所定角度以上回転したときに相互に当接する当接部12aと9dが形成され、当該当接部12aと9c間の摩擦抵抗により共回り防止翼先端部9の回動が上方向(
図1の矢印方向)の所定角度で、上方向および下方向の両方向への回転が拘束されるようになっている。
【0032】
当接部9dと12aは、それぞれ支点ピン13を中心に支点ピン13の相反する周方向に徐々に隆起してテーパ状に形成されている。例えば、当接部9dは支点ピン13を中心に共回り防止翼先端部9の上方向(
図1の矢印方向)に徐々に隆起するテーパ状に形成され、当接部12aは下方向に徐々に隆起するテーパ状に形成されている。なお、当接部9dと12aは、共回り防止翼先端部9の両側の対称な位置に形成されていてもよい。
【0033】
このような構成において、掘削翼3および撹拌翼4が回転軸2と共に地盤内を回転掘進しても、共回り防止翼5は、共回り防止翼先端部9のカッター部9bが周囲地盤内に食い込むことにより回転せず、掘削孔内を掘削翼3および撹拌翼4と共に地盤内を掘進する。これにより回転軸2先端の固化材吐出口より吐出された固化材と掘削土が撹拌翼4と共回り防止翼5によって撹拌混合されてソイルセメント柱が築造される。
【0034】
また、共回り防止翼先端部9のカッター部9bが硬質地盤に突き当たり、シャーピン14に所定以上のせん断力が作用することによりシャーピン14が破断すると、共回り防止翼先端部9は支持ピン13を軸に上方向に回転し、かつ上方向に所定角度以上回転した時点で回転支持部9aの当接部9dとブラケット11の当接部12aが強く当接し合い、その摩擦抵抗によって共回り防止翼先端部9の回動が拘束される。これにより、共回り防止翼5の周囲地盤への貫入抵抗が低減もしくは無くなるため、硬質地盤内をさらに掘進してソイルセメント柱が形成される。また、ソイルセメント柱の施工と同時にソイルセメント内に鋼管を沈設する施工方法においては、鋼管の沈設完了後、鋼管内をスムーズに掘削撹拌用ヘッド1を地上まで引き上げることができる。
【0035】
なお、共回り防止翼先端部9が支持ピン13を軸に上方向に回転した後の共回り防止翼5の長さLは、撹拌翼4の長さと同程度か、あるいは掘削孔の内壁面にほぼ到達する程度の長さに構成されている(
図1参照)。
【0036】
このような構成において、掘削撹拌ヘッド1を用いて鋼管ソイルセメント杭の施工を試験的に実施したところ、一定硬さ以上の硬質地盤では、共回り防止翼先端部9が支持ピン13を軸に上方に回転して折畳まれることで、共回り防止翼5の貫入抵抗が低減もしくは無くなり、これにより硬質地盤においても鋼管ソイルセメント杭を問題なく形成することができた。
【0037】
図4~
図6は、本発明の他の実施形態を図示したものであり、共回り防止翼先端部9の回転支持部9aがブラケット11の遊嵌溝12に遊嵌され、かつブラケット11に共回り防止翼5の長手方向と直交する方向のシャーピン14を介して接続されている。また、回転支持部9aの後端部が遊嵌溝12の底面に当接していることで、共回り防止翼先端部9のシャーピン14を軸とする上方向および下方向(時計回り方向および反時計回り方向(
図4において矢印方向))への回転が阻止されている。
【0038】
さらに、遊嵌溝12の底面部における、回転支持部9aの後端部上端のコーナ部9eと対向する位置に、支圧受け回転ピン15が共回り防止翼5の長手方向と直交する方向に取り付けられている。そして、当該支圧受け回転ピン15の側部に形成された嵌合溝15aに回転支持部9aの後端部上端のコーナ部9eが脱着可能に挿入されている。
【0039】
なお、支圧受け回転ピン15は、回転支持部9aより高強度の鋼材より形成され、また、滑らかに回転するように周囲に潤滑材(グリス)が充填されている。
【0040】
このような構成において、掘進時に共回り防止翼先端部9が地盤から上向きの掘進抵抗力を受け、シャーピン14に所定以上のせん断力が作用することにより、シャーピン14が破断して共回り防止翼先端部9が共回り防止翼基部8から外れるように構成されている。すなわち、掘進時に共回り防止翼先端部9が地盤から上向きの掘進抵抗力を受け、シャーピン14に所定以上のせん断力が作用するとシャーピン14は変形から破断に至り、これに伴い、共回り防止翼先端部9は、回転支持部9aの後端部上端のコーナ部9eを軸に支圧受け回転ピン15と共に上方向に回転しながら共回り防止翼基部8から離脱する(
図6(a),(b),(c)参照)。
【0041】
このように、高強度の鋼材からなる支圧受け回転ピン15が取り付けられていることで、繰り返し使用される共回り防止翼5の共回り防止翼基部8の損傷を軽減することができる。
【0042】
なお、共回り防止翼先端部9が共回り防止翼基部8から離脱した後の共回り防止翼5の長さLは、撹拌翼4の長さと同程度か、あるいは掘削孔の内壁面にほぼ到達する程度の長さに構成されている(図参4照)。
【0043】
図7(a),(b)は、回転軸2の先端部に取り付けられている掘削翼3の変形例を図示したものであり、掘削翼3として回転軸2の軸方向にスパイラル状に形成された掘削翼を用いることで、掘進力と撹拌混合力を高めることができる。
【0044】
このような構成において、鋼管ソイルセメント杭の施工を試験的に実施したところ、一定硬さ以上の硬質地盤では、シャーピン14が破断して、共回り防止翼先端部9が共回り防止翼基部8から離脱することで、共回り防止翼5の貫入抵抗が低減もしくは無くなり、これにより硬質地盤においても鋼管ソイルセメント杭を問題なく形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、特に硬質地盤に到達後も中断することなく連続して鋼管ソイルセメント杭の施工を継続して施工することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 掘削撹拌ヘッド
2 回転軸
3 掘削翼
4 撹拌翼
5 共回り防止翼
6 掘削ロッド
7 接続部
8 共回り防止翼基部
9 共回り防止翼先端部
9a 回転支持部
9b カッター部
9c 刃形
9d 当接部
9e コーナ部
10 回転スリーブ
11 ブラケット
12 遊嵌溝
12a 当接部
13 支点ピン
14 シャーピン
15 支圧受け回転ピン