(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】多段変換器の制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/49 20070101AFI20220404BHJP
H02M 7/497 20070101ALI20220404BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220404BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/497
H02M7/48 U
(21)【出願番号】P 2018111381
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】玉田 俊介
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-63687(JP,A)
【文献】特開2006-320103(JP,A)
【文献】特開2002-233180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/497
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、前記直流電源と並列に接続した正レグおよび負レグと、をそれぞれ備えた複数の単位変換器を直列に接続した多段変換器を制御する制御装置であって、
前記多段変換器の出力電圧指令と、前記直流電源の電圧とを用いて変調率を演算する変調率演算部と、
前記変調率に基づいて、複数の前記単位変換器の前記正レグの上アームと前記負レグの上アームとを駆動するゲート信号の位相シフト量を生成する位相シフト量生成部と、
出力電圧基本波周波数で複数の前記単位変換器を駆動する信号であって、オンパルス幅とオフパルス幅とが同一であり、オンパルス幅の中心が前記出力電圧指令の位相に対して前記位相シフト量進んだ第1ゲート信号と、オフパルス幅の中心が前記出力電圧指令の位相に対して前記位相シフト量遅れた第2ゲート信号とを生成し、前記第1ゲート信号を複数の前記単位変換器の前記正レグの前記上アームの前記ゲート信号とし、前記第2ゲート信号を複数の前記単位変換器の前記負レグの前記上アームの前記ゲート信号とするゲート信号生成部と、を備え、
前記位相シフト量はゼロより大きく180°未満である、多段変換器の制御装置。
【請求項2】
直流電源と、前記直流電源と並列に接続した正レグおよび負レグと、をそれぞれ備えた複数の単位変換器を直列に接続した多段変換器を制御する制御装置であって、
前記多段変換器の出力電圧指令と、前記直流電源の電圧とを用いて変調率を演算する変調率演算部と、
前記変調率に基づいて、複数の前記単位変換器の前記正レグの上アームと前記負レグの上アームとを駆動するゲート信号の位相シフト量を生成する位相シフト量生成部と、
出力電圧基本波周波数で複数の前記単位変換器を駆動する信号であって、オンパルス幅とオフパルス幅とが同一であり、オンパルス幅の中心が前記出力電圧指令の位相に対して前記位相シフト量遅れた第3ゲート信号と、オフパルス幅の中心が前記出力電圧指令の位相に対して前記位相シフト量進んだ第4ゲート信号とを生成し、前記第3ゲート信号を複数の前記単位変換器の前記正レグの前記上アームの前記ゲート信号とし、前記第4ゲート信号を複数の前記単位変換器の前記負レグの前記ゲート信号とするゲート信号生成部と、を備え、
前記位相シフト量はゼロより大きく180°未満である、多段変換器の制御装置。
【請求項3】
前記ゲート信号生成部は、所定の前記位相シフト量を適用したときの前記正レグの前記上アームを駆動する前記ゲート信号と、前記負レグの前記上アームを駆動する前記ゲート信号との点弧角度を用いて、前記単位変換器が出力する基本波電圧振幅の推定値を演算し、前記多段変換器の出力電流位相と前記基本波電圧振幅の推定値とから前記単位変換器の出力有効電力の推定値を演算し、複数の前記単位変換器の前記直流電源電圧と、前記出力有効電力の推定値とに基づいて、複数の前記単位変換器へ供給するゲート信号を入れ替える電圧調整部を備える請求項1又は請求項2記載の多段変換器の制御装置。
【請求項4】
複数の前記単位変換器それぞれにおいて、前記正レグの前記上アームを駆動するゲート信号と前記負レグの前記上アームを駆動するゲート信号との前記位相シフト量の絶対値が等しい、請求項1又は請求項2記載の多段変換器の制御装置。
【請求項5】
複数の前記単位変換器それぞれにおいて、前記正レグの前記上アームを駆動するゲート信号と前記負レグの前記上アームを駆動するゲート信号との前記位相ソフト量は、前記段数分の前記位相シフト量を昇順に並べたとき同じ順番となるもの同士である、請求項1又は請求項2記載の多段変換器の制御装置。
【請求項6】
前記ゲート信号生成部は、前記多段変換器の出力電圧がゼロとなるタイミングにおいて、複数の前記単位変換器のゲート信号を切替える、請求項4又は請求項5記載の多段変換器の制御装置。
【請求項7】
前記ゲート信号生成部は、一周期前の前記直流電源電圧の変化量に応じて、複数の前記単位変換器へ割り当てるゲート信号を切替える電圧調整部を備えている請求項6記載の多段変換器の制御装置。
【請求項8】
前記ゲート信号生成部は、所定の前記位相シフト量を適用したときの前記正レグの前記上アームを駆動するゲート信号と、前記負レグの前記上アームを駆動するゲート信号との点弧角度を用いて、前記単位変換器が出力する基本波電圧振幅の推定値を演算し、前記多段変換器の出力電流位相と前記基本波電圧振幅の推定値とから前記単位変換器の出力有効電力の推定値を演算し、複数の前記単位変換器の前記直流電源電圧と、前記出力有効電力の推定値とに基づいて、複数の前記単位変換器へ供給するゲート信号を切替える電圧調整部を備える請求項4又は請求項5記載の多段変換器の制御装置。
【請求項9】
前記ゲート信号生成部は、複数の前記単位変換器に割り当てるゲート信号を所定の周期毎に所定の順で順次入れ替えて、前記段数分の周期において複数の前記単位変換器に割り当てられるゲート信号の組み合わせを等しくする電圧調整部を備える請求項4又は請求項5記載の多段変換器の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多段変換器の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータに代表される半導体電力変換器の大容量手法として、複数台の電力変換器出力を直列接続し高電圧を得る手法がある。これは多段変換器やMMC(Modular Multilevel Converter)と呼ばれ系統連系変換器や電動機駆動用変換器等の主に大容量変換器に応用されている。
【0003】
多段変換器は、それぞれキャパシタや整流器等の直流電源を有した単位変換器の出力を多直列接続する回路構成により複数レベルの電圧出力が得られるという特徴を持つ。このような特徴から複数ステップの電圧出力が得られ正弦波に近い出力を直接得ることができる。変換器段数が増えるほどにそのステップ数は増加することから変換器段数が多い場合は各スイッチング素子をPWMのような高速スイッチングせずに出力電圧基本波周波数で駆動するワンパルス駆動で歪の少ない出力電圧が得られる。ワンパルス駆動ではPWMと比較しスイッチング周波数を抑制できるため毎スイッチング発生するスイッチング損失を低減でき、変換器損失の低減、冷却器の削減効果が期待することができる。
【0004】
多段変換器を動作させるには、単位電力変換器を単体の変換器と同じように三角波キャリア比較等でPWM変調を行い動作させることが可能だが、ワンパルス変調を行う場合は従来のキャリア比較で動作させることが困難である。そこで単位変換器としてHブリッジを用いた多直列変換器のワンパルス変調法が非特許文献1で提案されている。
【0005】
この方式では多段変換器の出力電圧指令と、正と負とに変換器段数と同一個数の電圧ステップを持つ閾値と比較し、指令と閾値が交差する点で各変換器をスイッチングすることでワンパルス変調を実現する方式である。指令と閾値とを比較するシンプルな構成のため容易にワンパルス制御が実装できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】児山 裕史, 長谷川 隆太, 新井 卓郎「デルタ結線モジュラー・マルチレベルSTATCOMの1パルス制御」,電学論D,Vol.137 No.3 pp.246-255(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、出力電圧指令の大きさに応じて電圧出力する変換器段数が変化するため、出力電圧が小さいときには電圧出力する変換器の段数が少なくなり、変換器利用率が低下する。また、電圧を出力しない変換器は、スイッチングを行わずバイパス状態となるため、出力電圧が小さい領域では出力段数低下に伴い低次高調波が増加し、電圧歪が増加することがあった。
【0008】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、高調波の発生を抑制し、電圧歪を低減するワンパルス駆動を実現可能な多段変換器の制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態による多段変換器の制御装置は、直流電源と、前記直流電源と並列に接続した正レグおよび負レグと、をそれぞれ備えた複数の単位変換器を直列に接続した多段変換器を制御する制御装置であって、前記多段変換器の出力電圧指令と、前記直流電源の電圧とを用いて変調率を演算する変調率演算部と、前記変調率に基づいて、複数の前記単位変換器の前記正レグの上アームと前記負レグの上アームとを駆動するゲート信号の位相シフト量を生成する位相シフト量生成部と、出力電圧基本波周波数で複数の前記単位変換器を駆動する信号であって、オンパルス幅とオフパルス幅とが同一であり、オンパルス幅の中心が前記出力電圧指令の位相に対して前記位相シフト量進んだ第1ゲート信号と、オフパルス幅の中心が前記出力電圧指令の位相に対して前記位相シフト量遅れた第2ゲート信号とを生成し、前記第1ゲート信号を複数の前記単位変換器の前記正レグの前記上アームの前記ゲート信号とし、前記第2ゲート信号を複数の前記単位変換器の前記負レグの前記上アームの前記ゲート信号とするゲート信号生成部と、を備え、前記位相シフト量はゼロより大きく180°未満である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の多段変換器の制御装置を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、変調率と位相シフト量との関係の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、変調率が1のときと変調率が0.2のときとにおける、上アームのゲート信号と多段変換器の出力電圧との一例を示す図である。
【
図4】
図4は、変調率が1のときと変調率が0.2のときとにおける、上アームのゲート信号と多段変換器の出力電圧との他の例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の多段変換器の制御装置を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、制御装置から出力されるゲート信号と、単位変換器それぞれの出力電圧と、多段変換器の出力電圧および出力電流との一例を示す図である。
【
図7】
図7は、正レグ上アームをα
P位相をシフトさせたゲート信号により駆動し、負レグ上アームをα
N位相をシフトさせたゲート信号により駆動したときの単位変換器の出力電圧の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、単位変換器出力電圧と推定した基本波成分との一例を示す図である。
【
図9】
図9は、単位変換器出力電圧と推定した基本波成分との一例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図5に示す制御装置の電圧調整部の動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図11】
図11は、第3実施形態の多段変換器の制御装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態の多段変換器の制御装置の動作の一例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態の多段変換器の制御装置の動作の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の多段変換器の制御装置について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の多段変換器の制御装置を概略的に示す図である。
本実施形態の制御装置は、例えば4つのアームから構成されるHブリッジを単位変換器とした多段変換器1の動作を制御する制御装置である。
【0012】
多段変換器1は、2つの出力端子を備えている。以下の説明において、多段変換器1の一方の出力端子を正側出力端子TPとし、他方の出力端子を負側出力端子TNとする。
【0013】
多段変換器1は、複数の単位変換器11~14を備える。単位変換器11~14のそれぞれは、上アームS1と下アームS2とを備えた正レグLPと、上アームS3と下アームS4とを備えた負レグLNと、を並列に接続したHブリッジ回路である。
多段変換器1は、単位変換器11~14の正レグLPの上アームS1と下アームS2との間に位置する出力端子と、負レグLNの上アームS3と下アームS4との間に位置する出力端子とを、単位変換器11~14間で直列接続した構成を備える。なお、多段変換器1は、少なくとも2段の単位変換器を直列接続した構成であればよく、段数の上限を特に設ける必要はない。
【0014】
以下の説明おいて、N個の単位変換器を直列接続した多段変換器において、正側出力端子と接続した単位変換器を1段目の単位変換器とし、負側出力端子と接続した単位変換器をN段目の単位変換器とし、直列に接続したN個の単位変換器が並んだ順に1段目、2段目、…N段目と称する。
図1に示す例では、多段変換器は4つの単位変換器11~14を備え、正側出力端子TPと接続した単位変換器11が1段目であり、負側出力端子TNと接続した単位変換器14が4段目であり、直列に接続した4つの単位変換器11~14が並んだ順に単位変換器12が2段目であり、単位変換器13が3段目である。
【0015】
単位変換器11~14は同じ構成である。単位変換器11~14のそれぞれは、正レグLPと、負レグLNと、直流電源PSと、電圧センサSVと、を備えている。
電圧センサSVは、直流電源PSの電圧を検出し、検出値を制御装置2へ出力する。
【0016】
複数の単位変換器11~14それぞれにおいて、多段変換器1の正側出力端子TP若しくは自身よりも正側の単位変換器と接続したレグを正レグLPとし、負側出力端子TN若しくは自身よりも負側の単位変換器と接続したレグを負レグLNとする。正レグLPと負レグLNとは直流電源PSであるキャパシタと並列に接続している。
【0017】
複数の単位変換器11~14それぞれにおいて、4つのアーム(2つの上アームS1、S3および2つの下アームS2、S4)それぞれは、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(半導体電界効果トランジスタ:metal-oxide semiconductor field-effect transistor)などの半導体素子にダイオードを逆並列接続した半導体スイッチング素子、若しくは、MOSFET(半導体電界効果トランジスタ:metal-oxide semiconductor field-effect transistor)を備える。
【0018】
単位変換器11~14それぞれの正レグLPおよび負レグLNのそれぞれにおいて、上アームS1、S3と下アームS2、S4との半導体スイッチング素子はそれぞれ反転動作をし、上アームS1、S3の半導体スイッチング素子がオンしているときに下アームS2、S4の半導体スイッチング素子はオフ動作となる。ただし、上アームS1、S3と下アームS2、S4との短絡を防止するため、上アームS1、S3と下アームS2、S4との両方の半導体スイッチング素子をオフにするデットタイム期間を設けるときには、上アームS1、S3と下アームS2、S4との半導体スイッチング素子を同時にオフとなるようにデットタイム期間が設けられる。
【0019】
多段変換器1の構成は
図1に示したものに限定されるものではない。例えば、単位変換器の直流部には、キャパシタに替えて蓄電池等のエネルギー蓄積要素を接続してもよい。また単位変換器11~14の直流部を、整流器を介して交流電源および変圧器と接続してもよい。また、三組の多段変換器出力をスター結線、デルタ結線、又は、V結線とすることで三相出力とすることも可能である。
【0020】
制御装置2は、変調率演算部21と、位相シフト量生成部22と、ゲート信号生成部23と、を備えている。
本実施形態では、制御装置2は多段変換器1をワンパルス駆動にて動作させる。ワンパルス駆動では、単位変換器11~14の半導体スイッチング素子を出力電圧基本波周波数にて駆動する。ワンパルス駆動ではPWM駆動と比較しスイッチング周波数を抑制できるためスイッチングするときに発生する損失を低減することができ、変換器損失の低減、冷却器の削減効果が期待できる。
【0021】
制御装置2は、単位変換器11~14のレグLP、LNを、オンとオフとの時間幅が同一(Duty50%)であるスイッチングパルス(ゲート信号)で駆動し、そのゲート信号の位相を各レグで調整することにより出力電圧を調整する。このとき位相調整量(位相シフト量)は、それぞれ、正側レグLPの上アームS1のゲート信号のオンパルス幅の中心と、負側レグLNの上アームS3のゲート信号のオフパルス幅の中心とが、出力電圧に対して進み遅れ同一位相量になるよう位相操作を行う。
【0022】
変調率演算部21は、単位変換器11~14の直流電源PSの電圧VDCと、電圧指令値V*とを用いて、変調率Mを演算する。変調率演算部21にて演算された変調率Mは、位相シフト量生成部22に入力される。変調率演算部21は、例えば後述の(4)式を用いて変調率Mを演算する。
【0023】
位相シフト量生成部22は、入力された変調率Mに対応する、単位変換器11~14の各レグLP、LNの位相シフト量を出力する。正レグLP、負レグLNは単位変換器11~14の段数分存在するため、進み遅れ位相操作量(位相シフト量)は変換器段数分必要となる。
図1に示す例では単位変換器の段数が4段であるため、位相シフト量生成部22は4つの位相シフト量α
1~α
4を出力する。
【0024】
進み遅れ均等シフトした場合の位相シフト量α
nと多段変換器の出力電圧の基本波振幅の関係を次式に示す。ただし、V
DCは単位変換器11~14それぞれの直流電源PSの電圧値とし、各段の直流電源電圧は一定で全ての段で等しいと仮定する。なお、Nは多段変換器を構成する単位変換器の段数である。
【数1】
【0025】
また基本波v
1は次式により定義される。下記(2)式において、ωは出力電圧角周波数である。
v
1=V
1cosωt (2)
上記(1)式から、
図1に示す4段構成の場合の基本波振幅量は下記(3)式で表される。
【数2】
【0026】
ここで、各段の直流電源電圧V
DCの和と出力基本波振幅V
1との比を変調率Mとして下記(4)式の通り定義する。
【数3】
【0027】
図2は、変調率と位相シフト量との関係の一例を示す図である。なお、ここでは、位相シフト量α
1~α
4はα
1<α
2<α
3<α
4であるものとしている。
上記(3)式および(4)式より、所望の変調率M(又は出力電圧)を得るための位相シフト量α
1~α
4の組み合わせは無数にあることが分かる。例えば、
図2の変調率Mと位相シフト量α
1~α
4との関係は、変調率Mを制約条件として、それを満たす位相シフト量α
1~α
4の複数の組み合わせの中から高調波量が最小になる位相シフト量α
1~α
4を最適化アルゴリズムで抽出した値である。また、非線形連立方程式の解から位相シフト量α
1~α
4を算出することも可能である。なお、本実施形態では、位相シフト量α
1~α
4はゼロより大きく180°未満の範囲とする。
【0028】
位相シフト量生成部22は、上記(3)式および(4)式を用いて予め演算された位相シフト量α1~α4を利用して、例えば、変調率Mに対応する位相シフト量α1~α4のテーブルを備えていてもよい。
【0029】
ゲート信号生成部23は、位相シフト量生成部22から位相シフト量α1~α4を受信し、4つの単位変換器11~14に供給される、正レグLPの上アームS1のゲート信号(第1ゲート信号)Spα1~Spα4と、負レグLNの上アームS3のゲート信号(第2ゲート信号)Snα1~Snα4とを生成する。本実施形態では、ゲート信号のオン時間とオフ時間とは等しく(Duty50%であり)、それぞれ位相が180°の期間とする。
【0030】
図3は、変調率が1のときと変調率が0.2のときとにおける、上アームのゲート信号と多段変換器の出力電圧との一例を示す図である。
ゲート信号生成部23は、例えば負レグLNの上アームS3のゲート信号(第2ゲート信号)S
nα1~S
nα4の時間軸方向におけるオフパルス幅の中心を電圧指令の位相(0°の位置)よりも位相シフト量α
1~α
4の位相を遅らせて、正レグLPの上アームS1のゲート信号(第1ゲート信号)S
pα1~S
pα4の時間軸方向におけるオンパルス幅の中心を電圧指令の位相(0°の位置)よりも位相シフト量α
1~α
4の位相を進ませる。
【0031】
上記のように、ゲート信号生成部23は、電圧指令の位相を基準として位相シフト量α1~α4の位相を調整して、正レグLPの上アームS1のゲート信号を4つ、負レグLNの上アームS3のゲート信号を4つ生成する。ゲート信号生成部23は、正レグLPの上アームS1のゲート信号を反転して下アームS2のゲート信号を生成し、負レグLNの上アームS3のゲート信号を反転して下アームS4のゲート信号を生成する。
【0032】
なお、本実施形態では、ゲート信号Spα1は、正レグLPの上アームS1に供給するゲート信号のオンパルス幅の中心を位相シフト量α1の位相をシフトした(進ませた)信号であり、ゲート信号Spα2は、正レグLPの上アームS1に供給するゲート信号のオンパルス幅の中心を位相シフト量α2の位相をシフトした(進ませた)信号であり、ゲート信号Spα3は、正レグLPの上アームS1に供給するゲート信号のオンパルス幅の中心を位相シフト量α3の位相をシフトした(進ませた)信号であり、ゲート信号Spα4は、正レグLPの上アームS1に供給するゲート信号のオンパルス幅の中心を位相シフト量α4の位相をシフトした(進ませた)信号である。
【0033】
また、ゲート信号Snα1は、負レグLNの上アームS3に供給するゲート信号のオフパルス幅の中心を位相シフト量α1の位相をシフトした(遅らせた)信号であり、ゲート信号Snα2は、負レグLNの上アームS3に供給するゲート信号のオフパルス幅の中心を位相シフト量α2の位相をシフトした(遅らせた)信号であり、ゲート信号Snα3は、負レグLNの上アームS3に供給するゲート信号のオフパルス幅の中心を位相シフト量α3の位相をシフトした(遅らせた)信号であり、ゲート信号Snα4は、負レグLNの上アームS3に供給するゲート信号のオフパルス幅の中心を位相シフト量α4の位相をシフトした(遅らせた)信号である。
【0034】
ゲート信号生成部23は、正レグLPと負レグLNとのそれぞれにおいて、上アームS1、S3と下アームS2、S4とに互いに反転した関係のゲート信号が供給されるように、複数の単位変換器11~14へ生成したゲート信号を出力する。
【0035】
なお、本実施形態では、ゲート信号生成部23は、ゲート信号Spα1~Spα4を、単位変換器11~14のいずれの正レグLPに割り当ててもよく、負レグLNの上アームS3のゲート信号Snα1~Snα4を、単位変換器11~14のいずれの負レグLNに割り当ててもよい。
【0036】
図3に示すように、変調率が1のときも変調率が0.2のときも、全ての単位変換器11~14のレグLP、LNがスイッチングしていることがわかる。また各段の単位変換器11~14をワンパルス駆動にて動作させても、多段変換器1の出力電圧の総和は疑似的にPWM変調のような波形となり、低次高調波の発生が抑制できる。
【0037】
また、ゲート信号の位相シフト量を上記のように規定することで、
図3に示すように、出力電圧ゼロのタイミングおよびその前後の時間領域にて、すべての単位変換器11~14のレグLP、LNの上アームS1、S3がオン、もしくは、すべての上アームS1、S3がオフ状態となる。
【0038】
例えば、ワンパルス駆動を行う際に、デューティ比50%のゲート信号のオフパルス幅中心およびオンパルス幅中心が電圧指令から遅れも進みもない場合(位相シフト量がゼロの場合)には、ゲート信号は電圧指令の位相が90°および-90°のタイミングにて切り替わることとなる。
【0039】
これに対し、本実施形態では、負レグLNの上アームS3のゲート信号のオフパルス幅の中心を電圧指令より遅らせ、正レグLPの上アームS1のゲート信号のオンパルス幅の中心を電圧指令より進ませている。これにより、負レグLNの上アームS3のゲート信号の消弧タイミングは、オフ幅中心より-90°の地点となり、電圧指令の位相が-90°に至る前にすべての負レグLNの上アームS3はターンオフする。また、負レグLNの上アームS3のゲート信号の点弧タイミングは、オフパルス幅中心より+90°の地点となり、電圧指令の位相が90°に至る前にすべての負レグLNの上アームS3はターンオンする。
【0040】
一方、位相シフト量がゼロの場合には、正レグLPの上アームS1のゲート信号の点弧タイミングは、オンパルス幅の中心より-90°地点となる。これに対し、本実施形態では、正レグLPの上アームS1のゲート信号のオンパルス幅中心を電圧指令の0°の位置よりも進めるため、正レグLPの上アームS1のゲート信号は、電圧指令の位相が-90°以降の地点ですべての正レグLPの上アームS1がターンオンする。また、正レグLPの上アームS1のゲート信号の消弧タイミングは、オンパルス幅中心より+90°の地点となり、電圧指令の位相が90°以降の地点ですべての正レグLPの上アームS1がターンオフする。
【0041】
以上のことから電圧指令の位相が-90°であるタイミングではすべての上アームS1、S3がターンオフした状態であり、電圧指令の位相が+90°であるタイミングではすべての上アームS、S3がターンオンした状態であり、多段変換器1の出力電圧がゼロとなるタイミングでは、すべての単位変換器11~14の出力電圧もゼロとなる。
【0042】
出力電圧がゼロになるタイミングは、出力電圧の毎周期において-90°と+90°との2回存在する。このタイミングにて、すべての単位変換器11~14のすべてのレグLP、LNのスイッチング状態が同一となるため、例えば、変調率が変化に応じてゲート信号を切替えたり、複数の単位変換器11~14間の正レグLP内又は負レグLN内でゲート信号を入れ替えたりすることが可能となる。すなわち、出力電圧がゼロとなるタイミングでは、全てのレグにてスイッチング状態が同一のため、ゲート信号が切り替わったとしても、前後でスイッチング状態が変化せず、出力電圧に影響なくゲート信号の入れ替えが可能となる。また、毎周期2回の入れ替えが可能となる。
【0043】
図4は、変調率が1のときと変調率が0.2のときとにおける、上アームのゲート信号と多段変換器の出力電圧との他の例を示す図である。
この例では、ゲート信号生成部23は、例えば負レグLNの上アームS3のゲート信号(第4ゲート信号)の時間軸方向におけるオフパルス幅の中心を電圧指令の位相(0°の位置)よりも位相シフト量α
1~α
4の位相を進ませて、正レグLPの上アームS1のゲート信号(第3ゲート信号)の時間軸方向におけるオンパルス幅の中心を電圧指令の位相(0°の位置)よりも位相シフト量α
1~α
4の位相を遅らせている。
【0044】
この場合も、ゲート信号生成部23は、上記のように電圧指令の位相を基準として位相シフト量α1~α4の位相を調整して、4つの正レグLPの上アームS1のそれぞれのゲート信号(第3ゲート信号)Spα1~Spα4、および、4つの負レグLNの上アームS3それぞれのゲート信号(第4ゲート信号)Snα1~Snα4を生成する。ゲート信号生成部23は、正レグLPの上アームS1のゲート信号を反転して下アームS2のゲート信号を生成し、負レグLNの上アームS3のゲート信号を反転して下アームS4のゲート信号を生成する。
【0045】
ゲート信号生成部23は、正レグLPと負レグLNとのそれぞれにおいて、上アームS1、S3と下アームS2、S4とに互いに反転した関係のゲート信号が供給されるように、複数の単位変換器11~14へ生成したゲート信号を出力する。なお、位相シフト量α
1~α
4が共通している場合には、
図3に示す場合と
図4に示す場合とにおける多段変換器1の出力は同じになる。
【0046】
図3に示す例と同様に
図4に示す例においても、変調率が1のときも変調率が0.2のときも、全ての単位変換器11~14のレグLP、LNがスイッチングしていることがわかる。また各段の単位変換器11~14をワンパルス駆動にて動作させても、多段変換器1の出力電圧の総和は疑似的にPWM変調のような波形となり、低次高調波の発生が抑制できる。
【0047】
また、ゲート信号の位相シフト量を上記のように規定することで、
図4に示すように、出力電圧ゼロのタイミングおよびその前後の時間領域にて、すべての単位変換器11~14のレグLP、LNの上アームS1、S3がオン、もしくは、すべての上アームS1、S3がオフ状態となる。
【0048】
電圧指令の位相が-90°であるタイミングではすべての上アームS1、S3がターンオンした状態であり、電圧指令の位相が+90°であるタイミングではすべての上アームS、S3がターンオフした状態であり、多段変換器1の出力電圧がゼロとなるタイミングでは、すべての単位変換器11~14の出力電圧もゼロとなる。
【0049】
出力電圧がゼロになるタイミングは、出力電圧の毎周期において-90°と+90°との2回存在する。このタイミングにて、すべての単位変換器11~14のすべてのレグLP、LNのスイッチング状態が同一となるため、例えば、変調率が変化に応じてゲート信号を切替えたり、複数の単位変換器11~14間の正レグLP内又は負レグLN内でゲート信号を入れ替えたりすることが可能となる。すなわち、出力電圧がゼロとなるタイミングでは、全てのレグにてスイッチング状態が同一のため、ゲート信号が切り替わったとしても、前後でスイッチング状態が変化せず、損失の発生を回避するとともに出力電圧に影響なくゲート信号の入れ替えが可能となる。また、毎周期2回の入れ替えが可能となる。
【0050】
上記のように、本実施形態の多段変換器の制御装置によれば、出力電圧の大小にかかわらず全ての単位変換器を電圧出力に活用することができ、高調波の発生を抑制し、電圧歪を低減するワンパルス駆動を実現可能である。
【0051】
次に、第2実施形態の多段変換器の制御装置について図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の複数の実施形態の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
図5は、第2実施形態の多段変換器の制御装置を概略的に示す図である。
本実施形態の制御装置2は、ゲート信号生成部23が電圧調整部24を備えている点が上述の第1実施形態と異なっている。
【0053】
電圧調整部24は、位相シフト量α1~α4と、複数の単位変換器11~14それぞれの直流電源電圧値と、多段変換器1の出力電流値とを用いて、複数の単位変換器11~14の直流電源電圧のばらつきが抑制されるように、各単位変換器11~14にゲート信号を割り当てる。
【0054】
電圧調整部24は、例えば、位相シフト量α1~α4(α1<α2<α3<α4)に基づいたゲート信号のそれぞれを、複数の単位変換器11~14に順次供給されるように、周期的にゲート信号を入れ替えてもよい。
【0055】
なお、多段変換器1の出力電流値は複数の単位変換器11~14それぞれの出力電流値と等しいため、電流センサ(図示せず)は、多段変換器1の出力経路および単位変換器11~14それぞれの出力経路の少なくとも1ヶ所に設けられればよい。少なくとも1つの電流センサの出力値が、電圧調整部24に供給される。
【0056】
以下、電圧調整部24の動作の一例について説明する。
図6は、制御装置から出力されるゲート信号と、単位変換器それぞれの出力電圧と、多段変換器の出力電圧および出力電流との一例を示す図である。
【0057】
ここでは、位相シフト量α1~α4は、α1<α2<α3<α4(-α4<-α3<-α2<-α1)であって、1段目の単位変換器11の正レグLPの上アームS1をゲート信号Spα4、負レグLNの上アームS3をゲート信号Snα1により駆動し、2段目の単位変換器12の正レグLPの上アームS1をゲート信号Spα3、負レグLNの上アームS3をゲート信号Snα2により駆動し、3段目の単位変換器13の正レグLPの上アームS1をゲート信号Spα2、負レグLNの上アームS3をゲート信号Snα3により駆動し、4段目の単位変換器14の正レグLPの上アームS1をゲート信号Spα1、負レグLNの上アームS3をゲート信号Snα4により駆動したときの例を示している。
【0058】
複数の単位変換器11~14それぞれの出力電圧を比較すると、単位変換器11~14間で出力電圧の位相が異なっている。また、複数の単位変換器11~14それぞれが電圧を出力する時間幅を比較すると、単位変換器11~14間で電圧出力時間に差が生じている。
【0059】
多段変換器1は、複数の単位変換器11~14の出力端子を直列接続して構成されるため、多段変換器1の出力電流は、すべての単位変換器11~14を通過することとなり、単位変換器11~14に共通の電流が流れる。
【0060】
単位変換器11~14それぞれの出力有効電力は、単位変換器11~14それぞれの出力電圧と多段変換器1の出力電流との内積となる。そのため、単位変換器11~14それぞれの出力電圧位相および電圧出力時間幅が異なる場合、単位変換器11~14間で出力有効電力に差が生じることになる。その結果、単位変換器11~14間の直流電源PSの電圧にバラつきが生じると、多段変換器1の出力電圧が歪む可能性がある。
【0061】
そこで、本実施形態では、制御装置2の電圧調整部24にて、単位変換器11~14それぞれの出力有効電力の推定値を演算し、毎周期若しくは所定周期毎に、単位変換器11~14のそれぞれへ与えるゲート信号を入れ替えることで、直流電源PSの電圧バラつきを抑制している。
【0062】
電圧調整部24は、ゲート信号Spα1~Spα4、Snα1~Snα4の組み合わせに応じた、任意の単位変換器の出力有効電力の推定値を演算し、直流電源電圧が大きい単位変換器の出力有効電力が大きくなり、直流電源電圧が小さい単位変換器の出力有効電力が小さくなるように、ゲート信号Spα1~Spα4、Snα1~Snα4を割り当ててもよい。
【0063】
以下に、任意の単位変換器について、正レグLPの上アームS1と負レグLNの上アームS3とを任意のゲート信号により駆動したときの、単位変換器の出力電圧の推定値について説明する。
【0064】
図7は、正レグLPの上アームをα
Pの位相をシフトさせたゲート信号により駆動し、負レグ上アームをα
Nの位相をシフトさせたゲート信号により駆動したときの単位変換器の出力電圧の一例を示す図である。
【0065】
単位変換器は、正レグLPの上アームS1のみがオンしているときには正の電圧を出力し、負レグLNの上アームS3のみがオンしているときには負の電圧を出力する。また、正レグLPと負レグLNとのスイッチング状態が同一のときには、単位変換器の出力電圧はゼロとなる。
【0066】
ここで、多段変換器1の出力電圧指令V
*の位相(0°の位置)に対する、正レグLPの上アームS1のゲート信号がオンしている時間の中心位置をα
P、負レグLNの上アームS3のゲート信号がオフしている時間の中心位置を-α
Nと定義したとき、この単位変換器の出力電圧v
ohをフーリエ級数展開すると次式で表すことができる。ただし、V
DCは単位変換器の直流電源電圧とする。なお、下記(5)式において、θは出力電圧指令V
*の角度(角度瞬時値)であって、時間経過とともに変化する値である。すなわち、出力電圧v
ohはθの関数である。
【数4】
【0067】
上記(5)式から基本波v
oh1を求めると次式となる。
【数5】
【0068】
更に、上記(6)式から基本波実行値V
oh1と、多段変換器1の出力電圧に対する単位変換器の出力電圧の位相差Φ
ohとを次のように表すことができる。
【数6】
【0069】
図8および
図9は、単位変換器出力電圧と推定した基本波成分との一例を示す図である。
図8および
図9では、単位変換器の出力電圧を実線で示し、単位変換器出力電圧の基本波成分相当を破線で示している。正レグLPおよび負レグLNに供給するゲート信号の位相シフト量を用いて、基本波成分の振幅と位相とを推定できることが確認できる。
【0070】
すなわち、
図8に示す例を上記(6)式に適用すると、単位変換器の出力電圧の基本波v
oh1は、下記のように表される。
【数7】
【0071】
また、
図9に示す例を上記(6)式に適用すると、単位変換器の出力電圧の基本波v
oh1は、下記のように表される。
【数8】
【0072】
ここで、多段変換器1の出力電流i
Oを下記(9)式にて定義する。ただし、(9)式において、Φ
iは出力電圧指令V
*と出力電流i
Oとの位相差とし、I
Oは多段変換器1の出力電流実行値とする。
【数9】
複数の単位変換器11~14それぞれには、共通して多段変換器1の出力電流i
Oが流れるため、単位変換器11~14の出力電圧基本波値と出力電流値との内積から、単位変換器11~14の出力有効電力P
ohは次式で表すことができる。
P
oh=V
oh1I
Ocos(Φ
oh-Φ
i) (10)
【0073】
以上のように、電圧調整部24は、出力電流iOと、正レグLPのゲート信号の位相シフト量と、負レグLNのゲート信号の位相シフト量と、を用いて、単位変換器11~14それぞれの出力有効電力Pohの推定値を演算することが可能である。
【0074】
次に、単位変換器11~14の出力有効電力の推定値を用いた単位変換器間での直流電圧不平衡抑制法について説明する。
図10は、
図5に示す制御装置の電圧調整部の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0075】
単位変換器11~14それぞれの直流電源電圧VDCは、各単位変換器11~14の出力有効電力Pohのバラつきにより不平衡となる可能性がある。そこで、本実施形態では、電圧調整部24は、多段変換器1を構成する単位変換器11~14それぞれの直流電源電圧VDCを検出する(ステップS1)。
続いて、電圧調整部24は、検出した直流電源電圧VDCの平均値を演算する(ステップS2)。
【0076】
次に、n=1とし(ステップS3)、電圧調整部24は、例えば、単位変換器11~14の直流電源電圧VDCの平均値と、単位変換器1nの直流電源電圧VDCとの差が所定の閾値よりも大きいか否かを判断する(ステップS4)。
【0077】
電圧調整部24は、単位変換器11~14の直流電源電圧VDCの平均値と直流電源電圧VDCとの差が所定の閾値よりも大きい単位変換器1nに対して、出力有効電力Pohが大きい正レグLPの上アームS1ゲート信号と負レグLNの上アームS3ゲート信号との組み合わせを割り当てる(ステップS5)。
【0078】
また、電圧調整部24は、単位変換器11~14の直流電源電圧VDCの平均値と直流電源電圧VDCとの差が所定の閾値よりも小さい単位変換器1nには、出力有効電力Pohが小さい正レグLPの上アームS1ゲート信号と負レグLNの上アームS3ゲート信号との組み合わせを割り当てる(ステップS6)。
【0079】
電圧調整部24は、nが多段変換器1の段数(=N)であるか判断し(ステップS7)、nがNよりも小さいときにはnに1を加算し(ステップS8)、n=Nとなるまで上記ステップS4~S6を繰り返す。
【0080】
上記のように、本実施形態では、出力有効電力Pohの推定値と、単位変換器11~14それぞれの直流電源電圧VDCとから、単位変換器11~14へ供給するゲート信号の割り当てを行う。
【0081】
以下に、電圧調整部24が単位変換器11~14間でゲート信号を入れ替えるタイミングについて説明する。
電圧調整部24は、すべての単位変換器11~14にて上アームS1、S3のゲート信号の状態が一致するタイミング、例えば、
図6に示す出力電圧の位相が-90°および+90°付近にて、単位変換器11~14間でゲート信号の入れ替えを実施する。このタイミングで、単位変換器11~14のゲート信号を入れ替えることにより、多段変換器1の出力電圧やすべてのアームのスイッチング状態に影響することなく、直流電源電圧V
DCの不平衡を抑制することが可能となる。
【0082】
上記のように、本実施形態の多段変換器の制御装置によれば、上述の第1実施形態と同様に、出力電圧の大小にかかわらず全ての単位変換器を電圧出力に活用することができ、高調波の発生を抑制し、電圧歪を低減するワンパルス駆動を実現可能である。
【0083】
次に、第3実施形態の多段変換器の制御装置について図面を参照して詳細に説明する。
上述の第1実施形態では、制御装置2が、正レグ上アームスイッチング信号のオン時間の中心を電圧指令に対して進ませ、負レグ上アームスイッチング信号のオフ時間の中心を電圧指令に対して遅らせる変調について説明した。また、制御装置2が、正レグ上アームスイッチング信号のオン時間の中心を電圧指令対して遅らせ、負レグ上アームスイッチング信号のオフ時間の中心を電圧指令に対して進ませる変調について説明した。
【0084】
図11および
図12は、第3実施形態の多段変換器の制御装置の動作の一例を説明するための図である。なお、
図11は、変調率が1のとき、
図12は変調率が0.2のときの多段変換器の出力電圧等を示している。
【0085】
図11に示す例では、多段変換器1は4つの単位変換器11~14から構成され、制御装置2は、正レグLPを4つの上アームS1のゲート信号S
pα1~S
pα4により駆動し、負レグLNを4つの上アームS3のゲート信号S
nα1~S
nα4により駆動し得る。そのため、単位変換器11~14へ与える上アームスゲート信号の組み合わせとしては、段数の2乗通り存在することとなる。
【0086】
本実施形態では、制御装置2は、同一単位変換器11~14において、正レグLPと負レグLNとに、位相シフト量α1~α4(α1<α2<α3<α4)が遅れ進み量ともに同一量となるゲート信号を割り当てる。
【0087】
図11に、各単位変換器11~14に正レグと負レグで位相シフト量α
1~α
4(α
1<α
2<α
3<α
4)が遅れ進みで同一のゲート信号を割り当てたときの、単位変換器11~14の出力電圧の一例を示している。
【0088】
なお、ここでは、制御装置2は、単位変換器11の正レグLPの上アームS1にゲート信号Spα1、負レグLNの上アームS3にゲート信号Snα1を割り当て、単位変換器12の正レグLPの上アームS1にゲート信号Spα2、負レグLNの上アームS3にゲート信号Snα2を割り当て、単位変換器13の正レグLPの上アームS1にゲート信号Spα3、負レグLNの上アームS3にゲート信号Snα3を割り当て、単位変換器14の正レグLPの上アームS1にゲート信号Spα4、負レグLNの上アームS3にゲート信号Snα4を割り当てている。
【0089】
この場合、正レグLPの上アームS1のゲート信号オン時間幅中心と出力電圧指令の位相差と、負レグLNの上アームS3のゲート信号オフ時間幅中心と出力電圧指令の位相差と、が正負対称となる。したがって、複数の単位変換器11~14それぞれの上アームS1、S3に同一の進み量および遅れ量のゲート信号を与えたとき、位相シフト量に応じて出力電圧幅が変化し出力電圧位相は変化しない。すなわち、単位変換器11~14の出力電圧位相は、多段変換器1の出力電圧位相と同一になる。このことにより、単位変換器11~14間で出力電圧位相に差が無いため、単位変換器の出力有効電力の推定値の演算を簡素にすることができる。
【0090】
上記のように、同一の単位変換器11~14の正レグLPと負レグLNを、位相シフト量が正負で対象となるゲート信号により駆動すると、単位変換器11~14の出力電圧位相が等しくなり、出力電圧幅すなわち出力電圧基本波振幅が異なる状態となる。したがって、この制御方法を採用すると、単位変換器11~14それぞれの出力有効電力に差が生じ、それぞれの単位変換器11~14の直流電源電圧が不平衡となる。
そこで、以下に本実施形態の制御装置2により、単位変換器11~14間での直流電源電圧の不平衡を抑制する方法について説明する。
【0091】
多段変換器1の出力電圧指令位相に対する、正レグLPの上アームS1を駆動するゲート信号のオンパルス幅の中心位置(αP)と、負レグLNの上アームS3を駆動するゲート信号のオフパルス幅の中心位置(-αN)と、単位変換器11~14出力電圧(基本波voh1)との関係式は前述のとおり、(6)式で示される。
【0092】
本実施形態では、正レグLPの上アームS1を駆動するゲート信号のオンパルス幅中心位置と、負レグLNの上アームS3を駆動するゲート信号のオフパルス幅中心位置とが出力電圧指令の位相(0°)に対して対象となるように、単位変換器11~14それぞれにゲート信号を割り当てるため、位相シフト量をαnとすると(6)式は次の(11)式ように変換することができる。
【0093】
【数10】
上記(11)式によれば、位相シフト量の大きさに関わらず、多段変換器1の出力電圧と単位変換器11~14の出力電圧とは同位相となり、単位変換器11~14同士の出力電圧位相差も無くなる。
【0094】
ここで、単位変換器11~14の出力有効電力について検討する。
単位変換器11~14の出力有効電力は上述の(10)式で得られるが、単位変換器11~14の出力電圧位相が多段変換器1の出力電圧と同位相であるため、有効電力は電流振幅、位相および単位変換器出力基本波電圧、単位変換器の直流電圧のみで決定される。ここで、出力電流は複数の単位変換器11~14に共通して流れるため、単位変換器11~14の出力有効電力の大きさは、出力電圧基本波振幅(=Voh1)の大きさに比例する。
【0095】
ここで、多段変換器1の出力電圧に対する出力電流位相差Φiが、-90<Φi<90のとき、多段変換器1の力率は常に正となる。単位変換器11~14の出力電圧位相は段間で同位相であるため、出力電圧力率は等しくなる。このため、単位変換器11~14の出力有効電力は単位変換器11~14の出力基本波振幅に比例して大きくなる。
【0096】
そこで、4段構成の多段変換器1を例に直流電圧不平衡抑制法について述べる。4段構成のため、位相シフト量は4つとなり、それぞれα1~α4とすると。ここでそれぞれの位相シフト量の余弦値の関係は次式とする。
cosα1>cosα2>cosα3>cosα4 (12)
【0097】
このときの各位相シフト量を与えた単位変換器11~14の出力有効電力は、それぞれ以下となる。
【数11】
【0098】
(13)~(16)式のように、出力有効電力Poh1~Poh4は、位相シフト量α1~α4により相対的な大きさが決定される。位相シフト量α1~α4それぞれの余弦値の大きさの関係が、例えば(12)式であるとすると、出力有効電力Poh1~Poh4の大きさの関係は以下となる。
Poh1>Poh2>Poh3>Poh4 (17)
【0099】
ここで、多段変換器1を構成する単位変換器11~14の個々の直流電源電圧が以下(18)式の通り不平衡状態であるとする。
VDCa>VDCb>VDCc>VDCd (18)
この直流電源電圧を平衡化するときには、制御装置2の電圧調整部24は、直流電源電圧が相対定期に大きい単位変換器11~14に出力有効電力が相対的に大きくなる位相シフト量を割り当て、直流電源電圧が相対的に小さい単位変換器には出力有効電力が相対的に小さい位相シフト量を割り当てる。
【0100】
すなわち、上記の例では、制御装置2の電圧調整部24は、位相シフト量α1を直流電源電圧がVDCaの単位変換器へ、位相シフト量α2を直流電源電圧がVDCbの単位変換器へ、位相シフト量α3を直流電源電圧がVDCcの単位変換器へ、位相シフト量α4を直流電源電圧がVDCdの単位変換器へ割り当てる。
【0101】
上記のように、直流電源電圧の相対的な大きさと、位相シフト量の余弦値とに基づいて、複数の単位変換器11~14へ与えるゲート信号を切り替えることで、出力電流検出値を用いずに直流電源電圧の不平衡を抑制することが可能となる。
【0102】
また、出力電流位相Φiが-180<Φi<-90、90<Φi<180のときについて検討すると、出力有効電力の極性が負となるため、直流電源電圧が相対的に大きい単位変換器11~14に対して出力有効電力の絶対値が小さくなる位相シフト量を割り当て、直流電源電圧が相対的に小さい単位変換器11~14に対して出力有効電力の絶対値が大きくなる位相シフト量を割り当てることで、同様に出力電流検出値を用いずに直流電源電圧の不平衡抑制が可能となる。
【0103】
上記のように、本実施形態の多段変換器の制御装置によれば、上述の第1実施形態と同様に、出力電圧の大小にかかわらず全ての単位変換器を電圧出力に活用することができ、高調波の発生を抑制し、電圧歪を低減するワンパルス駆動を実現可能である。
【0104】
次に、第4実施形態の多段変換器の制御装置について図面を参照して詳細に説明する。
上述の第3実施形態では、単位変換器11~14へ与える上アームS1、S3のゲート信号について、正レグLPのゲート信号の位相進め量と負レグLNのゲート信号の位相遅れ量との絶対値が等しくなるように、ゲート信号を割り当てることを説明した。この方法によれば、単位変換器11~14の出力電圧位相が同一になり単位変換器11~14の出力有効電力の推定が簡素化できる。一方で、単位変換器11~14の出力電圧基本波振幅の差が大きくなる可能性があった。
【0105】
そこで、本実施形態では、制御装置2は、単位変換器11~14間で出力電圧基本波振幅のバラつきを低減するように、単位変換器11~14にゲート信号を割り当てるものとした。
【0106】
本実施形態では、多段変換器の段数分の多段変換器出力電圧指令に対して、正レグLPの上アームS1のゲート信号のオンパルス幅中心のシフト量を昇順に並べ、また、負レグLNの上アームS3のゲート信号のオフパルス幅中心のシフト量を昇順に並べたとき、同じ順番になるシフト量を同一単位変換器に振り分ける。
【0107】
たとえば、4段の多段変換器1において位相シフト量α1~α4であるとき、正レグLPの上アームS1のゲート信号のオンパルス幅中心のシフト量を昇順にならべるとα1<α2<α3<α4であり、負レグLNの上アームS3のゲート信号のオフパルス幅中心のシフト量を昇順に並べると-α4<-α3<-α2<-α1であったとき、1番目のα1と-α4、2番目のα2と-α3、3番目のα3と-α2、4番目のα4と-α1との4つの組み合わせを、それぞれ同一の単位変換器へ割り当てる。
【0108】
例えば
図6に、上記割り当てを行ったときの単位変換器11~14の出力電圧の一例を示している。すなわち、1段目の単位変換器11の正レグLPの上アームS1をゲート信号S
pα4、負レグLNの上アームS3をゲート信号S
nα1により駆動し、2段目の単位変換器12の正レグLPの上アームS1をゲート信号S
pα3、負レグLNの上アームS3をゲート信号S
nα2により駆動し、3段目の単位変換器13の正レグLPの上アームS1をゲート信号S
pα2、負レグLNの上アームS3をゲート信号S
nα3により駆動し、4段目の単位変換器14の正レグLPの上アームS1をゲート信号S
pα1、負レグLNの上アームS3をゲート信号S
nα4により駆動したときの例を示している。
【0109】
図13は、多段変換器の出力電圧の大きさを変えた場合の単位変換器出力電圧を示す図である。
図6および
図13に示す例は、いずれも、単位変換器11~14の出力電圧幅のバラつきが抑えられていることが確認できる。上記のように位相シフト量を割り当てることで、正レグLPで最もシフト量が小さいパルスと、負レグLNで最もシフト量が大きいパルス、正レグで2番目にシフト量が小さいパルスと、負レグで2番目にシフト量が大きいパルスというように、正側と負側とのシフト量を単位変換器11~14間で均一化することができる。
【0110】
上記のように、本実施形態の多段変換器の制御装置によれば、上述の第1実施形態と同様に、出力電圧の大小にかかわらず全ての単位変換器を電圧出力に活用することができ、高調波の発生を抑制し、電圧歪を低減するワンパルス駆動を実現可能である。
【0111】
なお、単位変換器11~14へのゲート信号の割り当ては、上記第2実施形態乃至第4実施形態の方法に限定されるものではない。
例えば上述の第2実施形態では、電圧調整部24が、任意のゲート信号により駆動したときの任意の単位変換器の出力有効電力の推定値を演算し、複数の単位変換器11~14の直流電源電圧の不平衡を抑制するように適切に分配する方法について説明した。
【0112】
例えば、電圧調整部24は、単位変換器11~14それぞれについて、一周期前に供給した任意のゲート信号による直流電源電圧の変化を演算し、例えば直流電源電圧の変化量が大きかった単位変換器と、直流電源電圧の変化量が小さかった単位変換器との間で、ゲート信号を入れ替えてもよい。このようにゲート信号を割り当てることにより、電圧調整部24は、単位変換器11~14の出力有効電力を推定せずに直流電源電圧のバラツキを抑制することが可能である。
【0113】
また、上述の複数の実施形態は組み合わせても構わない。例えば、上述の第2実施形態にて説明したゲート信号の割り当てを、第3実施形態および第4実施形態に適用しても構わない。例えば、電圧調整部24にて、演算した出力有効電力の推定値が大きい順に正レグLPと負レグLNとのそれぞれの位相シフト量を並べて、この順に直流電源電圧が高い単位変換器から順次ゲート信号を割り当ててもよい。このことにより、直流電源電圧のバラツキを抑制することが可能であり、上述の複数の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0114】
また、例えば上述の第3実施形態および第4実施形態では、正レグLPおよび負レグLNに与えるゲート信号の組み合わせは、多段変換器1の段数個の種類があり、4段の多段変換器1においては4パターンとなる。そこで、すべての単位変換器11~14に段数分のゲート信号の組合せを経験させるよう、毎周期にゲート信号を入れ替えるように割り当てを行ってもよい。
【0115】
例えば、電圧調整部24は、単位変換器11の正レグLPの上アームS1に、ゲート信号Spα1、ゲート信号Spα2、ゲート信号Spα3、ゲート信号Spα4、ゲート信号Spα1…の順ゲート信号を供給し、単位変換器12の正レグLPの上アームS1に、ゲート信号Spα2、ゲート信号Spα3、ゲート信号Spα4、ゲート信号Spα1、ゲート信号Spα2…の順ゲート信号を供給し、単位変換器13の正レグLPの上アームS1に、ゲート信号Spα3、ゲート信号Spα4、ゲート信号Spα1、ゲート信号Spα2、ゲート信号Spα3…の順ゲート信号を供給し、単位変換器14の正レグLPの上アームS1に、ゲート信号Spα4、ゲート信号Spα1、ゲート信号Spα2、ゲート信号Spα3、ゲート信号Spα4…の順ゲート信号を供給し、周期的にゲート信号を入れ替えてもよい。
【0116】
また、電圧調整部24は、単位変換器11の負レグLNの上アームS3に、ゲート信号Snα4、ゲート信号Snα3、ゲート信号Snα2、ゲート信号Snα1、ゲート信号Snα4…の順ゲート信号を供給し、単位変換器12の負レグLNの上アームS3に、ゲート信号Snα3、ゲート信号Snα2、ゲート信号Snα1、ゲート信号Snα4、ゲート信号Snα3…の順ゲート信号を供給し、単位変換器13の負レグLNの上アームS3に、ゲート信号Snα2、ゲート信号Snα1、ゲート信号Snα4、ゲート信号Snα3、ゲート信号Snα2…の順ゲート信号を供給し、単位変換器14の負レグLNの上アームS3に、ゲート信号Snα1、ゲート信号Snα4、ゲート信号Snα3、ゲート信号Snα2、ゲート信号Snα1…の順ゲート信号を供給し、周期的にゲート信号を入れ替えてもよい。
【0117】
上記のようにゲート信号を所定の周期毎に所定の順で順次入れ替えることで、N段の多段変換器1を駆動するとき、N周期において、単位変換器11~1Nに供給されるゲート信号の組み合わせが等しくなる(供給される順番が異なる)。そのため、段数分の周期経過後は単位変換器11~1Nの直流電源電圧バラつきが抑制される。なお、この方式では、単位変換器11~1Nに共通のゲート信号の組み合わせを経験させればよいため、直流電源電圧や出力電流の情報を必要とせず、直流電源電圧のバラツキを抑制することができる。
なお、いずれの場合にも、ゲート信号生成部23は、多段変換器1の出力電圧がゼロとなるタイミングにおいて、複数の単位変換器11~14のゲート信号を切替えることにより、出力電圧に影響なくゲート信号の入れ替えが可能となる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1…多段変換器、2…制御装置、11~14…単位変換器、21…変調率演算部、22…位相シフト量生成部、23…ゲート信号生成部、24…電圧調整部、100…変圧器、200…整流器、LP…正レグ、LN…負レグ、S1、S3…上アーム、S2、S4…下アーム、Snα1~Snα4、Spα1~Spα4…ゲート信号、α1~α4…位相シフト量、PS…直流電源、SV…電圧センサ、TP…正側出力端子、TN…負側出力端子。