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特許7051609回転機械の異常処置装置及び回転機械システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】回転機械の異常処置装置及び回転機械システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20220404BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220404BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F04B49/06 331Z
G01M99/00 A
F04B49/10 331D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018121141
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020002823
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】栗岡 義紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英二
(72)【発明者】
【氏名】荒木 要
【審査官】田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-091033(JP,A)
【文献】特開平08-151992(JP,A)
【文献】特開2016-057246(JP,A)
【文献】特開昭61-031685(JP,A)
【文献】特開2003-271241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
G01M 99/00
F04B 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、
前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記回転数制御及び前記注液制御を行う制御部と、を備え
前記制御部は、前記回転数制御及び前記注液制御を同時に行うように、又は、前記回転数制御を行った後に前記注液制御を行うように構成されている回転機械の異常処置装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧力制御をも行うように構成されており、前記回転数制御及び前記注液制御を行った後に前記圧力制御を行うように構成されている請求項に記載の回転機械の異常処置装置。
【請求項3】
回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、
前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記回転数制御を行う制御部と、を備え、
前記回転数制御では、前記吐出圧力又は前記回転機械の吐出温度を監視しており、前記回転体の回転数を所定回転数下げた後、前記吐出圧力又は前記吐出温度が安定しても前記検知器から前記信号が出力されているときに再度前記回転体の回転数を所定回転数さげることにより、前記前記回転体の回転数を段階的に下げる回転機械の異常処置装置。
【請求項4】
回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、
前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記注液制御を行う制御部と、を備え、
前記注液制御では、前記回転機械の吐出温度を監視しており、前記収容室内に注液した後、前記吐出温度が安定しても前記検知器から前記信号が出力されているときに再度注液を行うことにより、前記収容室内に注液を段階的に行う回転機械の異常処置装置。
【請求項5】
回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、
前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記圧力制御を行う制御部と、を備え、
前記圧力制御では、前記吐出圧力又は前記回転機械の吐出温度を監視しており、前記吐出圧力を下げる制御を行った後、前記吐出圧力又は前記吐出温度が安定しても前記検知器から前記信号が出力されているときに再度前記吐出圧力を下げる制御を行うことにより、前記吐出圧力を段階的に下げる回転機械の異常処置装置。
【請求項6】
回転体と前記回転体の収容室とを有するケーシングを備えた回転機械と、
請求項1からの何れか1項に記載の回転機械の異常処置装置と、を備え、
前記異常処置装置の前記検知器は、前記ケーシングに取り付けられている回転機械システム。
【請求項7】
回転体と前記回転体の収容室とを有するケーシングを備えた回転機械と、
前記回転機械の異常処置装置と、を備え、
前記異常処置装置は、前記回転機械の前記回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の収容室内に注液を行うための注液制御を行う制御部と、を備え、
前記検知器は、前記ケーシングに取り付けられ、
前記回転機械の運転中において、前記検知器から前記信号の出力が無いときでも前記回転体の収容室内へ注液を行う注液ラインを備え、
前記制御部は、前記検知器から出力された前記信号を受信すると、前記注液制御において、前記検知器から前記信号の出力が無いときの液量よりも大きな液量で注液を行う回転機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械の異常処置装置及び回転機械システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されているように、回転機械の回転体の接触を検知する異常検知装置が知られている。特許文献1に開示された異常検知装置は、回転体が回転中に何らかに接触したことによって発生する弾性波をセンサで検出して、回転体の接触位置を特定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-57246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された異常検知装置は、回転体の回転中における接触位置を特定するものであり、回転体の接触が検知された場合の処置まで考慮したものではない。異常を検知するとともに速やかに回転機械を停止させれば重大な故障を回避できる可能性は高い。一方で、故障を回避する方策をとることによって回転機械の停止を回避することができるのであれば、操業面からは、異常が検知されたときに直ぐに停止させるよりも、回転機械の運転を継続した方が好ましい。これにより、操業効率を向上させることができる。
【0005】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、回転体の接触が発生した場合でもできるだけ回転機械の運転を継続できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る回転機械の異常処置装置は、回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記回転数制御及び前記注液制御を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記回転数制御及び前記注液制御を同時に行うように、又は、前記回転数制御を行った後に前記注液制御を行うように構成されている。
【0007】
本発明では、検知器が前記事象を検知すると信号を出力する。制御部は、この信号を受信すると、回転数制御、前記注液制御及び前記圧力制御の少なくとも1つの制御を行う。回転数制御が行われると、回転体の回転数が下がるため、回転体の接触を回避できる場合がある。接触した状態が継続したとしても、回転体の回転数を段階的下げることにより、回転体の接触が回避された状態又は接触の程度が低い状態にすることができる。また、回転体の回転数が段階的に下げられるため、回転数が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。したがって、回転機械が故障することを回避しつつ運転の継続が可能になる。また、注液制御が行われると、回転体の収容室内に液が導入されるため、回転体の温度が下がる。これにより、回転体の接触が回避された状態にできる場合がある。接触した状態が続いたとしても、注液を段階的に行うことにより、回転体の接触が回避された状態又は接触の程度が低い状態にすることができる。また、注液が段階的に行われるため、回転体の収容室内の温度が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。したがって、回転機械が故障することを回避しつつ運転の継続が可能になる。また、圧力制御が行われると、吐出温度が下がるため、回転体の熱収縮によって回転体の接触が回避された状態にできる場合がある。接触した状態が続いたとしても、吐出圧力を段階的に下げるため、回転体の接触が回避された状態又は接触の程度が低い状態にすることができる。また、吐出圧力が段階的に下げられるため、吐出圧力が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。したがって、回転機械が故障することを回避しつつ運転の継続が可能になる。
【0009】
また、回転数制御及び注液制御を同時に行う場合、回転体の接触の原因が判明しなくても、当該接触が起こらないようにするために複数のアプローチを行うため、接触が起こらない状態又は接触の程度が低い状態に早く移行することができる。一方、回転数制御を行った後、注液制御を行う場合、回転数制御を行っても前記接触が解消しない場合又は接触の程度が低くならない場合にのみ注液制御を行うため、回転体の収容室内の温度が最適な状態からなるべく下がらない状態を維持しながら接触を解消させることができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記圧力制御をも行うように構成されて、前記回転数制御及び前記注液制御を行った後に前記圧力制御を行うように構成されていてもよい。
【0011】
この態様では、回転数制御及び注液制御でも前記接触が解消しない場合又は接触の程度が低くならない場合でも、圧力制御によってその状態が解消する場合があるため、その場合に有効である。すなわち、接触が生じた場合に複数の制御を行うことにより、接触の原因が判明しない場合であっても、回転体の接触を解消することができる場合があるため、その場合に有効である。
【0012】
本発明に係る回転機械の異常処置装置は、回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記回転数制御を行う制御部と、を備え、前記回転数制御では、前記吐出圧力又は前記回転機械の吐出温度を監視しており、前記回転体の回転数を所定回転数下げた後、前記吐出圧力又は前記吐出温度が安定しても前記検知器から前記信号が出力されているときに再度前記回転体の回転数を所定回転数さげることにより、前記前記回転体の回転数を段階的に下げ
【0013】
この態様では、回転数制御において、回転体の回転数を所定回転数下げた後、吐出圧力又は吐出温度が安定するまで待ち、吐出圧力又は吐出温度が安定しても前記検知器から前記信号が出力されていれば再度回転体の回転数を下げる。したがって、回転数を下げたことによる効果をより正確に判断することができ、しかも、必要な分だけ回転数を下げることができる。このため、回転数が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。
【0014】
本発明に係る回転機械の異常処置装置は、回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記注液制御を行う制御部と、を備え、前記注液制御では、前記回転機械の吐出温度を監視しており、前記収容室内に注液した後、前記吐出温度が安定しても前記検知器から前記信号が出力されているときに再度注液を行うことにより、前記収容室内に注液を段階的に行
【0015】
この態様では、注液制御において、注液した後、吐出温度が安定するまで待ち、吐出温度が安定しても検知器から前記信号が出力されていれば再度注液する。したがって、注液したことによる効果をより正確に判断することができ、しかも、必要な分だけ注液することができるので、過剰な注液を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る回転機械の異常処置装置は、回転機械の回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の回転数を段階的に下げる回転数制御、前記回転体の収容室内に注液を段階的に行うための注液制御及び前記回転機械の吐出圧力を段階的に下げるための圧力制御のうちの少なくとも前記圧力制御を行う制御部と、を備え、前記圧力制御では、前記吐出圧力又は前記回転機械の吐出温度を監視しており、前記吐出圧力を下げる制御を行った後、前記吐出圧力又は前記吐出温度が安定しても前記検知器から前記信号が出力されているときに再度前記吐出圧力を下げる制御を行うことにより、前記吐出圧力を段階的に下げ
【0017】
この態様では、圧力制御において、吐出圧力を下げた後、吐出圧力又は吐出温度が安定するまで待ち、吐出圧力又は吐出温度が安定しても検知器から前記信号が出力されていれば再度吐出圧力を下げる。したがって、吐出圧力を下げたことによる効果をより正確に判断することができ、しかも、必要な分だけ吐出圧力を下げることができる。このため、吐出圧力が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。
【0018】
本発明に係る回転機械システムは、回転体と前記回転体の収容室とを有するケーシングを備えた回転機械と、前記回転機械の異常処置装置と、を備え、前記異常処置装置の前記検知器は、前記ケーシングに取り付けられている。
【0019】
本発明に係る回転機械システムは、回転体と前記回転体の収容室とを有するケーシングを備えた回転機械と、前記回転機械の異常処置装置と、を備える。前記異常処置装置は、前記回転機械の前記回転体の回転中における接触によって生ずる事象を検知すると信号を出力する検知器と、前記検知器から出力された前記信号の受信に基づいて、前記回転体の収容室内に注液を行うための注液制御を行う制御部と、を備える。前記検知器は、前記ケーシングに取り付けられる。前記回転機械システムは、前記回転機械の運転中において、前記検知器から前記信号の出力が無いときでも前記回転体の収容室内へ注液を行う注液ラインを備える。前記制御部は、前記検知器から出力された前記信号を受信すると、前記注液制御において、前記検知器から前記信号の出力が無いときの液量よりも大きな液量で注液を行
【0020】
この態様では、検知器からの前記信号の出力の有無によらず、注液ラインは回転機械の収容室に注液を行う。これにより、回転体の回転中における接触を生じさせ難くすることができる。そして、回転体が収容室等に接触したことが検知されたとき等、接触によって生ずる事象が検知された時に出力される信号が出力されて注液制御を行うときには、注液量が増大するため、回転体の接触が回避された状態又は接触の程度が低い状態にすることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、回転体の接触が発生した場合でもできるだけ回転機械の運転を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る回転機械システムの概略構成を示す図である。
図2】前記回転機械システムの異常処置装置が行う異常処置方法の流れを示すフロー図である。
図3】前記異常処置方法中の回転数制御の流れを示すフロー図である。
図4】前記異常処置方法中の注液制御の流れを示すフロー図である。
図5】前記異常処置方法中の圧力制御の流れを示すフロー図である。
図6】その他の実施形態に係る回転機械システムの異常処置装置が行う異常処置方法の流れを示すフロー図である。
図7図6の異常処置方法中の回転数制御及び注液制御の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る回転機械システム10は、回転機械12と、該回転機械12の異常処置装置14と、を備えている。回転機械12は、回転体(ロータ)12bと回転体12bを収容する収容室12cと、が設けられたケーシング12aを有している。回転体12bは、回転体12bを回転させる駆動力を発生するモータ等の駆動源21と減速機23を介して接続されている。回転機械12は、圧縮機、ブロワ、ポンプ、タービン等、回転体12bが回転することによって、空気等のガス状の流体が加圧されたり、減圧されるものであればよい。本実施形態では、回転機械12が圧縮機によって構成されているものとする。したがって、回転機械12は、吸込ライン25中の空気を吸入ポートを通して吸い込み、吸い込んだ空気を圧縮する。回転体12bが収容された収容室12c(圧縮室)内で圧縮された空気は、吐出ポートから吐出ライン27に吐出される。圧縮室は、収容室12cの内面と回転体12bとによって区画される空間である。なお、回転体12bは、減速機23に代えて、増速機を介して駆動源21に接続されていてもよい。
【0025】
回転機械12には、注液ライン29が接続されている。注液ライン29は、水や有機溶媒等の冷却流体を収容室12c内に送り込むためのラインであり、収容室12c内に連通するようにケーシング12aに接続されている。注液ライン29には、開度調整可能な電動弁からなる注液弁31が設けられている。注液弁31が開放されると、開度に応じた流量で冷却流体が注液ライン29を流れて、収容室12c内に供給される。なお、注液弁31は、回転機械12の運転中において常時開放されてもよく、あるいは、通常運転時は閉じられた状態に維持される一方で、後述する注液制御が行われるときだけ開放されてもよい。すなわち、本実施形態の注液ライン29は、異常が検知されていない通常時においては注液を行わず、後述の検知器14aから異常を示す信号が出力されたことに基づいて収容室12cへ注液を行うが、これに限られない。注液ライン29は、後述の検知器14aから異常を示す信号の出力の無いときでも回転体12bの収容室12c内へ注液を行う構成であってもよい。
【0026】
吐出ライン27には、圧力検出器33と温度検出器35とが設けられている。圧力検出器33は、回転機械12から吐出された空気、プロセスガス、フレアガス等のガス流体の圧力を検出し、検出値に応じた信号を出力する。温度検出器35は、回転機械12から吐出された空気等のガス流体の温度を検出し、検出値に応じた信号を出力する。
【0027】
吐出ライン27には、戻しライン37が接続されている。戻しライン37の先端は、吸込ライン25に接続されている。戻しライン37には、開度調整可能な電動弁からなる戻し弁39が設けられている。戻し弁39が開放されると、吐出ライン27を流れるガス流体の一部が吸込ライン35に戻される。吐出ライン27から吸込ライン35に戻されるガス流体の流量は、戻し弁39の開度に応じて変わるため、戻し弁39の開度が大きくなるほど、吐出ライン27内のガス流体圧力が低減される。
【0028】
異常処置装置14は、回転体12bの異常を検知する検知器14aと、検知器14aの検知結果に応じて所定の制御を行う制御部14bと、を備えている。
【0029】
検知器14aは、回転機械12のケーシング12aに取り付けられている。検知器14aは、回転体12bがケーシング12a(収容室12cの内面)に接触することによって生ずる事象を検知すると異常を示す信号(以下、異常信号と称する。)を出力するように構成されている。具体的には、回転体12bの回転中に回転体12bがケーシング12aに接触すると、例えば、超音波、振動等が発生する。したがって、検知器14aは、AE(Acoustic Emission)センサ、振動センサ等によって構成することができ、接触による事象としての超音波、振動等を検知することができる。検知器14aから出力された異常信号は、制御部14bに入力される。なお、検知器14aは、前記事象が検知されている間、異常信号を出力し続ける。
【0030】
制御部14bは、検知器14a、駆動源21、注液弁31及び戻し弁39と電気的に接続されている。制御部14bは、検知器14aから出力された異常信号を受信すると、アラーム(図示省略)の鳴動、警告ランプ(図示省略)の点灯等の報知制御を行うとともに、回転体12bの回転数を段階的に下げる回転数制御を行うように構成されている。また、制御部14bは、回転数制御を行っても依然として報知制御が継続されている場合に、収容室12c内への注液を行う注液制御を行うように構成されている。また、制御部14bは、注液制御を行っても依然として報知制御が継続されている場合には、回転機械12の吐出圧力を下げる圧力制御を行うように構成されている。また、制御部14bは、圧力制御を行っても依然として報知制御が継続されている場合に、回転機械12の運転を停止させるように構成されている。
【0031】
ここで、制御部14bの行う異常処方法について、図2を参照しながら説明する。図2は、検知器14aによって接触による事象が検知されたときに制御部14bが実行する制御の流れを示している。
【0032】
まず、回転機械12の運転中、すなわち回転体12bが駆動源21の駆動力を受けて回転しているとき(ステップST1)には、報知制御が実行されるか否か監視をしている(ステップST2)。制御部14bが検知器14aから異常信号を受信して報知制御が実行されるとステップST3に移行する。なお、制御部14bは、異常信号を受信している間は、報知制御を実行し続ける。
【0033】
ステップST3において、制御部14bは回転数制御を実行する。これにより、回転体12bの回転数は予め定められた下限値まで段階的に下げられる。回転数制御の実行中も報知制御が依然として実行されているか確認しており、回転体12bの回転数が下限値まで下げられて回転数制御を終えたときでも、制御部14bは、報知制御が依然として実行されているかどうか確認する(ステップST4)。
【0034】
回転数制御が行われた後でも依然として報知制御が行われている場合(ステップST4においてYES)、制御部14bは、注液制御を実行する(ステップST5)。これにより、注液弁31が開放される(又は注液弁31の開度が、異常が検知されない通常時の開度よりも大きくなるように、注液弁31が制御される)。注液弁31の開放(又は開度の増大)は、回転機械12の吐出温度を監視しつつ、段階的に開度を大きくするように行われる。注液弁31を最大開度まで開放した結果、吐出温度が予め定められた下限値まで下がると、注液制御を終了する。制御部14bは、注液制御の実行中も、報知制御が依然として実行されているか確認している。
【0035】
注液制御を終えても報知制御が依然として実行されている場合(ステップST6においてYES)、制御部14bは、圧力制御を実行する(ステップST7)。これにより、戻し弁39が所定開度開放される。戻し弁39の開放は回転機械12の吐出圧力を監視しつつ、段階的に開度が大きくなるように開放される。戻し弁39が全開されると圧力制御を終了する。制御部14bは、圧力制御の実行中も、報知制御が依然として実行されているか確認している。圧力制御を終えてもなお報知制御が実行されている場合(ステップST8においてYES)、制御部14bは、回転機械12の運転を停止する(ステップST9)。一方、ステップST4,ST6,ST8において、報知制御が終えられていると判断されたときには、回転機械12の運転を継続する(ステップST10)。
【0036】
次に、回転数制御について、図3を参照しつつより具体的に説明する。回転数制御においては、制御部14bは、まず、予め設定された回転数だけ回転体12bの回転数を下げる(ステップST21)。すなわち、回転機械12は所定の吐出流量(又は吐出圧力)が得られるように設定された回転数で運転しているが、報知制御が実行されると(図2のステップST2においてYES)、制御部14bは、当該回転数から所定回転数だけ減じられた回転数まで、回転数を下げる。
【0037】
そして、回転数が下げられた後、制御部14bは、圧力検出器33の検出圧力を参照し、吐出圧力が安定したか判定する(ステップST22)。すなわち、回転機械12の回転数が下がることにより吐出圧力が下がるため、吐出圧力が下がった後、所定時間内の圧力変化が所定範囲内に収まったか否かによって、吐出圧力が安定したか否かが判断される。圧力変化が所定範囲内に収まっていれば、制御部14bは、吐出圧力が安定しているものとしてステップST23に移行する。
【0038】
なお、ステップST22において、吐出圧力が安定したか否かを判断するのに代え、温度検出器35の検出温度を参照し、吐出温度が安定したか否かを判定するようにしてもよい。
【0039】
ステップST23において、報知制御が依然として行われているかを判定し、報知制御が終了して入れば、当該回転数で運転を継続する(ステップST24)。一方、回転数が下げられた後において吐出圧力が安定した後も報知制御が依然として行われていれば、ステップST25に移行し、吐出圧力が下限値まで下げられているかどうかを確認する(ステップST25)。吐出圧力が下限値まで下がっていなければ、ステップST21に戻り、制御部14bは、予め設定された回転数だけ回転体12bの回転数を下げる。吐出圧力が予め設定された下限値に到達するまで回転数の段階的低減が繰り返され、下限値に到達すると回転数制御は終了する(ステップST26)。
【0040】
次に、注液制御について、図4を参照しつつより具体的に説明する。回転数制御を終えても報知制御が依然として実行されている場合(図2のステップST4においてYES)、注液制御が実行される。
【0041】
注液制御では、まず、注液弁31が予め設定された開度だけ開かれる(ステップST31)。そして、注液弁31を所定開度だけ開放した後、制御部14bは、温度検出器35の検出温度を参照し、吐出温度が安定したか判定する(ステップST32)。すなわち、収容室12c内に注液を行うことにより吐出温度が下がるため、吐出温度が下がった後、所定時間内の温度変化が所定範囲内に収まったか否かによって、吐出温度が安定したか否かが判断される。温度変化が所定範囲内に収まっていれば、制御部14bは、吐出温度が安定しているものとしてステップST33に移行する。
【0042】
ステップST33において、報知制御が依然として行われているか判定し、報知制御が終了して入れば、そのまま運転を継続する(ステップST34)。一方、注液が行われ後において吐出温度が安定した後でも報知制御が依然として行われていれば、ステップST35に移行し、注液弁31が最大開度まで開放されているかどうかを確認する。全開になっていなければ、ステップST31に戻り、制御部14bは、注液弁31を、現行の開度から予め設定された開度だけ開く。このように、注液弁31の開度が最大開度に到達するまで、吐出温度を監視しながら注液弁31の開度を段階的に大きくする制御が行われ、注液弁31が全開すると注液制御を終了する(ステップST36)。
【0043】
次に、圧力制御について、図5を参照しつつより具体的に説明する。注液制御を終えても報知制御が依然として実行されている場合(図2のステップST6においてYES)、圧力制御が実行される。
【0044】
圧力制御では、まず、戻し弁39が予め設定された開度だけ開かれる(ステップST41)。そして、戻し弁39を所定開度だけ開放した後、制御部14bは、圧力検出器33の検出圧力を参照し、吐出圧力が安定したかを判定する(ステップST42)。すなわち、戻し弁39を開放することにより吐出圧力が下がるため、吐出吐出が下がった後、所定時間内の圧力変化が所定範囲内に収まったか否かによって、吐出圧力が安定したか否かが判断される。吐出圧力の圧力変化が所定範囲内に収まっていれば、制御部14bは、吐出圧力が安定しているものとしてステップST43に移行する。
【0045】
ステップST43において、報知制御が依然として行われているか判定し、報知制御が終了して入れば、そのまま運転を継続する(ステップST44)。一方、戻し弁39の開度を大きくした後において吐出圧力が安定した後でも報知制御が依然として行われていれば、ステップST45に移行し、戻し弁39が最大開度まで開放されているかどうかを確認する(ステップST45)。戻し弁39が全開になっていなければ、ステップST41に戻り、制御部14bは、戻し弁39を現行の開度から予め設定された開度だけ開放する。このように、戻し弁39の開度が最大開度に到達するまで、吐出圧力を監視しつつ戻し弁39の開度を段階的に大きくする制御が行われ、戻し弁39が全開すると圧力制御を終了する(ステップST46)。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、検知器14aが回転体12bの接触によって生ずる事象を検知すると異常信号を出力する。制御部14bは、異常信号を受信すると、回転数制御を行う。回転数制御が行われると、回転体12bの回転数が下がるため、回転体12bの接触が解消する場合がある。接触した状態が続いたとしても、回転体12bの回転数を段階的下げることにより、回転体12bの接触が解消された状態又は接触の程度が低い状態にすることができる。また、回転体12bの回転数が段階的に下げられるため、回転数が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。したがって、回転機械12が故障することを回避しつつ運転の継続が可能になる。また、回転数制御の後に、注液制御が行われると、収容室12c内に液が導入されるため、回転体12bの温度が下がる。これにより、回転体12bの接触を解消できる場合がある。接触した状態が続いたとしても、注液を段階的に行うことにより、回転体12bの接触が解消された状態又は接触の程度が低い状態にすることができる。また、注液が段階的に行われるため、収容室12c内の温度が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。したがって、回転機械12が故障することを回避しつつ運転の継続が可能になる。また、注液制御の後に、圧力制御が行われると、吐出温度が下がるため、回転体12bの熱収縮によって回転体12bの接触が解消できる場合がある。接触した状態が続いたとしても、吐出圧力を段階的に下げるため、回転体12bの接触が解消した状態又は接触の程度が低い状態にすることができる。また、吐出圧力が段階的に下げられるため、吐出圧力が最適な状態から下げられることによって生ずる弊害を抑制することができる。したがって、回転機械12が故障することを回避しつつ運転の継続が可能になる。
【0047】
また、本実施形態では、制御部14bが回転数制御を行った後に注液制御を行うように構成されている。回転数制御を行っても前記接触が解消しない場合又は接触の程度が低くならない場合にのみ注液制御を行うため、収容室12c内の温度が最適な状態からなるべく下がらない状態を維持しながら接触を解消させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、制御部14bは、回転数制御及び注液制御を行った後に圧力制御を行うように構成されているので、回転数制御及び注液制御でも前記接触が解消しない場合又は接触の程度が低くならない場合でも、圧力制御によってその状態が解消する場合があり、その場合に有効である。すなわち、接触が生じた場合に複数の制御を行うことにより、接触の原因が判明しない場合であっても、回転体12bの接触を解消することができる場合があるため、その場合に有効である。
【0049】
また、本実施形態では、回転数制御において、回転体12bの回転数を所定回転数下げた後、吐出圧力又は吐出温度が安定するまで待ち、吐出圧力又は吐出温度が安定しても検知器14aから異常信号が出力されていれば再度回転体12bの回転数を下げる。したがって、回転体12b回転数を下げたことによる効果をより正確に判断することができ、しかも、必要な分だけ回転数を下げることができる。
【0050】
また、本実施形態では、注液制御において、注液した後、吐出温度が安定するまで待ち、吐出温度が安定しても検知器14aから異常信号が出力されていれば再度注液する。したがって、注液したことによる効果をより正確に判断することができ、しかも、必要な分だけ注液することができるので、過剰な注液を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、圧力制御において、吐出圧力を下げた後、吐出圧力又は吐出温度が安定するまで待ち、吐出圧力又は吐出温度が安定しても検知器14aから異常信号が出力されていれば再度吐出圧力を下げる。したがって、吐出圧力を下げたことによる効果をより正確に判断することができ、しかも、必要な分だけ吐出圧力を下げることができる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。前記実施形態では、回転数制御を終えても報知制御が依然として継続している場合に、注液制御を行う。これに代え、図6に示すように、回転数制御と注液制御を同時に実行してもよい。この場合、回転機械12の運転中に報知制御が実行されると(ステップST51においてYES)、制御部14bは、回転数制御と注液制御を同時に実行する(ステップST52)。
【0053】
この制御では、具体的には図7に示すように、まず、回転機械12の回転数を所定回転だけ落とすとともに、注液弁31を所定開度だけ開放する(ステップST61)。そして、吐出温度が低下した後、吐出温度又は吐出圧力が安定したか否かを確認した上で(ステップST62)、報知制御が継続しているかどうかを確認する(ステップST63)。報知制御が終了していれば、運転を継続する(ステップST64)。一方、報知制御が終了していなければ、注液弁31が全開しているかを確認するとともに、吐出圧力が予め設定された下限値に到達しているか否かを確認する(ステップST65)。何れの条件も満たされていなければ、ステップST61に戻る一方、何れかの条件が満たされると、回転数制御及び注液制御を終了する(ステップST66)。
【0054】
回転数制御及び注液制御が終了すると、図6に示すように、報知制御が継続しているかどうか確認し(ステップST53)、報知制御が終了してれば、そのまま運転を継続する(ステップST54)。一方、報知制御が終了していなければ、圧力制御を実行する(ステップST55)。そして、圧力制御が終了しても報知制御が依然として継続していれば(ステップST56においてYES)、運転を停止する(ステップST57)。
【0055】
この実施形態では、制御部14bは、回転数制御及び注液制御を同時に行うので、回転体12bの接触の原因が判明しなくても、当該接触が起こらないようにするために複数のアプローチを行うため、接触が起こらない状態又は接触の程度が低い状態に早く移行することができる。
【0056】
前記実施形態では、回転数制御を行った後に注液制御及び圧力制御を行っているが、これに限られるものではなく、回転数制御、注液制御及び圧力制御のうちの少なくとも1つの制御を実行するものであってもよい。例えば、制御部14bは、回転数制御のみを行う構成であってもよく、あるいは、圧力制御のみを行う構成であってもよい。また、制御部14bは、圧力制御を行った後で注液制御又は回転数制御を行う構成であってもよい。
【0057】
前記実施形態では、制御部14bが報知制御を行うように構成されているが、これに限られるものではなく、報知制御を省略してもよい。すなわち、制御部14bは、検知器14aから異常信号を受信すると、作業者に知らせるための制御を行うことなく、回転数制御、中液制御及び圧力制御のうちの少なくとも1つを実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 回転機械システム
12 回転機械
12b 回転体
12c 収容室
14 異常処置装置
14a 検知器
14b 制御部
31 注液弁
39 戻し弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7