(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】鋼橋直結軌道用レール締結装置
(51)【国際特許分類】
E01B 9/60 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
E01B9/60
(21)【出願番号】P 2018129596
(22)【出願日】2018-07-09
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000162995
【氏名又は名称】興和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 泰典
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 幹大
(72)【発明者】
【氏名】関野 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】小佐野 浩一
(72)【発明者】
【氏名】江藤 仁
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033286(JP,A)
【文献】特開2004-162368(JP,A)
【文献】実開昭60-070603(JP,U)
【文献】実開昭55-098501(JP,U)
【文献】特開2000-265403(JP,A)
【文献】実開昭56-138901(JP,U)
【文献】特開2006-299624(JP,A)
【文献】特開2003-074002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの左右の下部フランジを直接または継目板を介して下方へ押圧してレールを鋼橋の橋桁に固定するための一対の押さえ具と、鋼橋の橋桁に結合されて前記一対の押さえ具を保持する受け金具とを備えた鋼橋直結軌道用レール締結装置であって、
前記受け金具は、当該受け金具および前記橋桁を貫通するように配設される固定用ボルトが挿通される2以上のボルト挿通穴を有し、
前記押さえ具は、当該押さえ具を貫通し頭部が前記受け金具の係合部に係止されるように配設される締結用ボルトが挿通されるボルト挿通穴を有し、
前記受け金具および前記押さえ具のボルト挿通穴は、それぞれレール延設方向に長い長穴として形成されていることを特徴とする鋼橋直結軌道用レール締結装置。
【請求項2】
前記受け金具には、前記固定用ボルトが挿通されるボルト挿通穴が、その長径がレールと平行な方向を向くようにして3個以上形成され、
前記3個以上のボルト挿通穴のうち隣り合う2個のボルト挿通穴にそれぞれ固定用ボルトが挿通され、端部の雄ネジ部に固定用ナットが螺合されることで前記橋桁に固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鋼橋直結軌道用レール締結装置。
【請求項3】
前記押さえ具の上面の高さが前記継目板をレールに固定するためのボルトおよびナットの下端よりも低い位置になるように設定され、前記押さえ具の下端が前記レールの下部フランジを直接押圧して固定するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼橋直結軌道用レール締結装置。
【請求項4】
前記受け金具は、底面がサンドブラスト処理されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の鋼橋直結軌道用レール締結装置。
【請求項5】
前記押さえ具の上面と前記締結用ボルトに螺合される締結用ナットとの間に介挿される板バネを備え、
前記押さえ具の上面には、前記板バネの縁部に沿って設けられたリブもしくは凹部を形成する段差が設けられていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の鋼橋直結軌道用レール締結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の軌道におけるレール締結装置に関し、特に鋼橋の橋桁に直接固定される鋼橋直結軌道用レール締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の軌道におけるレール締結装置には、鋼橋の橋桁にレール締結装置が直接固定される鋼橋直結軌道用レール締結装置がある。鋼橋直結軌道用レール締結装置は、橋桁に形成した穴にボルトを挿通して締結装置のベース部材を固定し、該ベース部材の上に、レールの下部フランジ部を押える押さえ具もしくは板ばねを装着する構造を有している。かかる構造を有する鋼橋直結軌道用レール締結装置としては、例えば、特許文献1に開示されているものがある。
【0003】
鋼橋直結軌道用レール締結装置は、橋桁に直接固定される構成であるため、枕木に固定される通常のレール締結装置に比べて作業性が良いという利点がある。しかし、鋼橋直結軌道用レール締結装置は、橋桁に形成したボルト挿通穴の位置とベース部材に設けられているボルト挿通穴の位置とが合致しないと取付けが行なえないという課題がある。
そこで、特許文献1のレール締結装置においては、レール敷設方向と直交する方向に長いボルト挿通用の長穴をベースプレートに形成することで、橋桁との間でボルト挿通穴同士の位置ずれを吸収できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道の軌道においては通常数10メートルの長さのレールを順次継ぎ足すことで敷設され、前後のレール間は継ぎ目板と呼ばれる部材が結合されている。鋼橋上においては、設置当初においては、
図5(A)に示すようにレール同士の継ぎ目Bがレール締結装置の中心線C-C上に来るように設定されるが、鉄道用レールにはふく進と呼ばれる現象があり、継ぎ目がレール締結装置の中心から次第にレールの長手方向へずれて、
図5(B)に示すように継ぎ目板21をレールに固定するナット23とレール締結装置の押さえ具14とが干渉してしまうことがある。
【0006】
一方、レール締結装置には、左右のレール間の電気的な導通を防止するために絶縁部材が設けられており、この絶縁部材は数年ごとに交換する必要があり、その作業の際には固定用ボルトを外すことが必須である。しかし、レールのふく進で継目ボルトまたはナットとレール締結装置の押さえ具や固定用ボルトとが干渉している箇所では、絶縁部材を交換した後に固定用ボルトの再度取り付けることができないことがあるという課題があった。
【0007】
なお、特許文献1のレール締結装置において採用されている、レール敷設方向と直交する方向に長いボルト挿通用の長穴を形成するという考え方を応用して、レール敷設方向と平行な方向に長い長穴を形成することで、レールのふく進によるボルト挿通穴同士の位置ずれを吸収することも考えられる。しかし、そのような単独の位置ずれ吸収構造では、レールのふく進により位置ずれを充分に吸収することができないことが分かった。
また、後述のレール締結装置のように、レールの下部フランジ部を押える押さえ具を、矩形状の板ばねで押圧する構造を有するものにおいては、板ばねが回転して継目ボルトの頭に接触してしまい、レールと枕木との間が電気的に導通状態になってしまうおそれがあるという課題があることが明らかになった。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目したなされたもので、その目的とするところは、レールのふく進による締結装置と鋼橋の橋桁のボルト挿通穴同士の位置ずれを充分に吸収することができる鋼橋直結軌道用レール締結装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、押さえ具を押圧する板ばねが回転して継目ボルトの頭に接触してレールと枕木との間が電気的に導通状態になってしまうおそれのない鋼橋直結軌道用レール締結装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、この発明は、
レールの左右の下部フランジを直接または継目板を介して下方へ押圧してレールを鋼橋の橋桁に固定するための一対の押さえ具と、鋼橋の橋桁に結合されて前記一対の押さえ具を保持する受け金具とを備えた鋼橋直結軌道用レール締結装置であって、
前記受け金具は、当該受け金具および前記橋桁を貫通するように配設される固定用ボルトが挿通される2以上のボルト挿通穴を有し、
前記押さえ具は、当該押さえ具を貫通し頭部が前記受け金具の係合部に係止されるように配設される締結用ボルトが挿通されるボルト挿通穴を有し、
前記受け金具および前記押さえ具のボルト挿通穴は、それぞれレール延設方向に長い長穴として形成されているように構成した。
【0010】
上記した手段によれば、受け金具および押さえ具のボルト挿通穴はそれぞれレール延設方向に長い長穴として形成されているので、レール締結装置の取付け位置を、長穴の長径の範囲内でレール延設方向へ調節することができ、それによってレールのふく進による締結装置と鋼橋の橋桁のボルト挿通穴同士の位置ずれを充分に吸収することができる。また、レールのふく進で押さえ具と継目板固定用ナットとが干渉してしまい、押さえ具や他の部品の交換作業が困難になるのを回避することができる。
【0011】
ここで、望ましくは、前記受け金具には、前記固定用ボルトが挿通されるボルト挿通穴が、その長径がレールと平行な方向を向くようにして3個以上形成され、
前記3個以上のボルト挿通穴のうち隣り合う2個のボルト挿通穴にそれぞれ固定用ボルトが挿通され、端部の雄ネジ部に固定用ナットが螺合されることで前記橋桁に固定されるように構成する。
かかる構成によれば、ボルト挿通穴が長穴として形成されている上、3個以上設けられ、そのうち隣接する2個を用いて固定する構成であるため、長穴の長径を超えてレール締結装置の取付け位置を調節することができ、それによってレールのふく進による締結装置と鋼橋の橋桁のボルト挿通穴同士のより大きな位置ずれを吸収し、押さえ具と継目板固定用ナットとの干渉を回避することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記押さえ具の上面の高さが前記継目板をレールに固定するためのボルトおよびナットの下端よりも低い位置になるように設定され、前記押さえ具の下端が前記レールの下部フランジを直接押圧して固定するように構成する。
かかる構成によれば、押さえ具の上面の高さが継目板固定用のボルトおよびナットの下端よりも低い位置になるように設定されるため、押さえ具と継目板固定用ナットとの干渉を回避することができる。また、この場合、レールのふく進がさらに進むと継目板固定用ナットとレール締結用のナットとが干渉するおそれが生じるが、レール締結用のナットに絶縁性キャップを被せることで、両者間が電気的導通状態になるのを回避することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記受け金具は、底面がサンドブラスト処理されているように構成する。
かかる構成によれば、ボルト挿通穴が長穴として形成されることで受け金具が回転したりずれたりし易くなったとしても、受け金具の底面の抵抗が増加して回転や横ずれを抑制することができ、それによってレールの締結状態が緩むのを防止することができる。
【0014】
また、望ましくは、前記押さえ具の上面と前記締結用ボルトに螺合される締結用ナットとの間に介挿される板バネを備え、
前記押さえ具の上面には、前記板バネの縁部に沿って設けられたリブもしくは凹部を形成する段差が設けられているように構成する。
かかる構成によれば、押さえ具を押圧する板ばねが回転して継目ボルトの頭に接触してレールと枕木との間が電気的に導通状態になってしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レールのふく進による締結装置と鋼橋の橋桁のボルト挿通穴同士の位置ずれを充分に吸収することができる鋼橋直結軌道用レール締結装置を実現することができる。また、押さえ具を押圧する板ばねが回転して継目ボルトの頭に接触してレールと枕木との間が電気的に導通状態になってしまうおそれのない鋼橋直結軌道用レール締結装置を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は一部断面正面図である。
【
図2】第1実施形態の鋼橋直結軌道用レール締結装置を構成するレール押さえ部材としての押さえ具の詳細を示すもので、(A)は平面図、(B)は断面正面図である。
【
図3】第2の実施形態に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は一部断面正面図である。
【
図4】第3の実施形態に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は一部断面正面図である。
【
図5】第3実施形態に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置を構成する押さえ具の詳細を示すもので、(A)は平面図、(B)は正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置の実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は第1の実施形態に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置100の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は一部断面正面図で鋼橋の橋桁200上に固定した状態を示している。また、
図2はレール締結装置100を構成するレール押さえ部材としての押さえ具の詳細を示すもので、(A)は平面図、(B)は断面正面図である。
【0018】
本実施形態の鋼橋直結軌道用レール締結装置100は、
図1(B)に示すように、レールRを挟んで一対の横圧受け金具11A,11Bが橋桁200上に載置され、それぞれ固定用ボルト12A,12Bと固定用ナット13A,13Bによって固定されている。符号を付していないが、レールRの下面と橋桁200上面との間には、軌道パッド、絶縁板、可変パッドが介挿されている。
一方、レールRの両側には継目板21A,21Bが接合され、これらを貫通するボルト22とナット23によって結合されている。上記固定用ボルト12A,12Bと固定用ナット13A,13Bは、
図1(A)に示すように、レールの延設方向に沿ってそれぞれ2組設けられており、橋桁200上で回転しないように構成されている。
【0019】
また、
図1(B)に示すように、横圧受け金具11A,11Bの内側縁部には、上方へ向って突出するレールと平行な方向に長いショルダー部11a,11bがそれぞれ形成されている。そして、これらのショルダー部11a,11bを跨ぐようにして、一対の絶縁性を有する押さえ具14A,14Bが載置され、鉛直方向上向きの締結用ボルト15A,15Bと締結用ナット16A,16Bによってそれぞれ横圧受け金具11A,11Bに結合されている。
さらに、本実施形態では、継目板21A,21Bの下部が外側に膨らむように形成されるとともに、横圧受け金具11A,11Bは、断面がほぼコの字状をなし、下向きに設置されており、押さえ具14A,14BのレールRに近い側の端部の下面が継目板21A,21Bの下部の膨らんでいる部位を下方へ押圧することでレールを橋桁に締結するように構成されている。
【0020】
上記横圧受け金具11Aの外側縁部には、2個の固定用ボルト12Aが挿通される2個の長穴12a,12bが、レールの延設方向に沿ってレールと平行に形成されている。横圧受け金具11Bも同様である。このように、固定用ボルト12A,12Bが挿通される穴を長穴とすることで、横圧受け金具11A,11Bを、長穴の長さ分だけ橋桁200に対してレール延設方向にずらして設置することができ、それによって押さえ具14A,14Bが継目板21A,21Bをレール腹部に固定するためのボルト22やナット23と干渉しないようにすることができる。
【0021】
さらに、横圧受け金具11A,11Bのショルダー部11a,11bには、
図2(A)に示すように、側方視で逆T字形の切欠き17a,17bがそれぞれ形成され、この切欠き17a,17bに、頭部を下にした締結用ボルト15A,15Bの頭部が係合され、上方へ突出する雄ネジ部が押さえ具14A,14Bを貫通し、上端部に締結用ナット16A,16Bが螺合されることで、上記押さえ具14A,14Bがショルダー部11a,11bと一体に結合される。そして、押さえ具14A,14Bの上面と締結用ナット16A,16Bとの間に、上面視矩形状をなし中央が上方へ湾曲した皿状の板バネ18A,18Bと2重スプリングワッシャ19A,19Bが介挿されている。
【0022】
さらに、上記押さえ具14A,14Bの上面には、
図2に示すように、矩形状の板バネ18A,18Bの周囲を囲むようにリブ14a,14bがそれぞれ形成されており、板バネ18A,18Bはリブ14a,14bによってその内側に形成される凹部に係合するように配設されることで回転が阻止され、継目板21A,21Bを固定するボルト22の頭部やナット23に接触してレールと枕木との間が電気的に導通状態になってしまうのを防止できるようになっている。
【0023】
また、
図2(A)に示すように、押さえ具14A,14Bには、締結用ボルト15A,15Bが挿通される長穴41a,41bが、ほぼレールの延設方向であってレール側面に対して若干傾斜して形成されている。このように、締結用ボルト15A,15Bが挿通される穴を長穴とすることで、横圧受け金具11A,11Bの長穴12a,12bと相俟って、締結用ボルト15A,15Bを、継目板をレール側部に固定するためのナット23と干渉しない位置に取り付けることが容易となる。
つまり、押さえ具14A,14Bに設けられる締結用ボルト15A,15Bの挿通穴と横圧受け金具11A,11Bに設けられる固定用ボルト12A,12Bの挿通穴を、共に長穴とすることで、いずれか一方のみ長穴とする場合に比べて、レール延設方向への調整量が大きくなり、横圧受け金具11A,11Bと継目板をレール側部に固定するためのナット23との干渉を回避した取付けが可能となる。
【0024】
また、長穴41a,41bがレール側面に対して若干傾斜して形成されていることによって、レールと継目板との間に寸法バラツキがあったとしても、継目板をレールに密接させた状態で固定することができる。
さらに、固定用ボルト12A,12Bに螺合された固定用ナット13A,13Bと横圧受け金具11A,11Bの上面との間には、
図1に示すように、長穴12a,12bを覆うカバープレート20A,20Bが介挿されており、長穴12a,12b内に水が入らないように工夫されており、長穴12a,12b内に水が溜まってボルト12A,12Bがさび付き易くなるのを防止している。
【0025】
(第2実施形態)
図3は第2の実施形態に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置100の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は一部断面正面図である。
本実施形態の鋼橋直結軌道用レール締結装置100は、
図3(A)に示すように、横圧受け金具11A,11Bのレール延設方向の幅が第1実施形態のものよりも広く(約2倍)なるように形成され、横圧受け金具11Aの外側縁部には、4個の長穴12a,12b,12c,12dが、レールの延設方向に沿ってレールと平行に1列に並んで形成されている。なお、4個の長穴12a~12dのうち2個を使用して固定用ボルト12A,12Bが挿通され、上端の雄ネジ部に固定用ナット13A,13Bが螺合されることによって橋桁200に固定されている。横圧受け金具11Bも同様である。
【0026】
上記のように、横圧受け金具11A,11Bを橋桁に固定するための固定用ボルト12A,12Bが挿通される穴自体を長穴にした上で、さらに長穴の数を4個にしているため、固定用ボルト12A,12Bを挿通する長穴を選択することで大きく3段階に位置を変化させ、さらに長穴内でボルトを移動させて微調整することができるため、第1の実施形態のものよりも大幅にレール締結装置の取付け位置をちょうせいすることができるため、レールがふく進を起こしたとしても、継目板を固定するボルトと押さえ具との干渉を回避することが出来る。
【0027】
さらに、本実施形態では、固定用ボルト12A,12Bが挿通される長穴を4個にしたことで、第1の実施形態のものに比べて、レールのふく進で横圧受け金具11A,11Bがそれぞれ回転あるいは横滑りを起こし易くなるので、それを防止するため横圧受け金具11A,11Bの下面すなわち橋桁200上面との接合する面にサンドブラスト処理が施されており、これにより横圧受け金具11A,11Bが回転や横滑りをしないように構成されている。なお、その他の構成は、第1の実施形態のものとほぼ同じであるので、説明は省略する。
【0028】
(第3実施形態)
図4は第3の実施形態に係る鋼橋直結軌道用レール締結装置100の構成を示すもので、(A)は平面図、(B)は一部断面正面図である。
本実施形態の鋼橋直結軌道用レール締結装置100は、横圧受け金具11A,11Bの上面の高さが第1実施形態における横圧受け金具11A,11Bよりも低くなるように形成され、レールRに近い側の端部の下面がレールRの左右の下部フランジの上面に接触して、直接フランジを下方へ押圧することで橋桁200との間に挟み込んでレールを締結するように構成されている。
【0029】
上記のように、本実施形態では、横圧受け金具11A,11Bの上面の高さが低くされているため、
図4(B)に示されているように、押さえ具14A,14Bと継目板をレール側部に固定するためのナット23との干渉を回避することができる。
一方、押さえ具14A,14Bとナット23との干渉を回避できたとしても、ふく進がさらに進むと、締結用ボルト15A,15Bに螺合している締結用ナット16A,16Bとナット23とが干渉する事態が生じる。そこで、本実施形態では、締結用ボルト15A,15Bの先端と締結用ナット16A,16Bを覆う絶縁材料からなるキャップ24A,25Bを被着するように構成されている。これにより、締結用ナット16A,16Bとナット23との間が電気的に導通した状態になるのを防止することができる。
【0030】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記第2実施形態では、固定用ボルト12A,12Bが挿通される長穴を4個にしているが、3個あるいは5個以上であっても良い。また、第3実施形態のように押さえ具14A,14Bによりレールの下部フランジに直接接触して押さえ込む構成のものにおいても横圧受け金具11A,11Bに形成する長穴を3個以上形成するようにしても良い。
【0031】
さらに、前記実施形態では、押さえ具14A,14Bの上面に板バネの回り止め用に矩形状をなすリブ14a,14bを形成しているが、回り止め用のリブ14a,14bは4辺のうち少なくとも1辺に形成されていれば良い。また、リブ14a,14bの代わりに凹部を形成する段差を設けるようにしても良い。
また、前記実施形態では、横圧受け金具11A,11Bは、底面がサンドブラスト処理されていると説明したが、複数の溝を形成して横移動抵抗を増大させたものであっても良い。
【符号の説明】
【0032】
11A,11B 横圧受け金具
12a,12b,12c,12d 長穴
12A,12B 固定用ボルト
13A,13B 固定用ナット
14A,14B 押さえ具
14a,14b リブ
15A,15B 締結用ボルト
16A,16B 締結用ナット
21A,21B 継目板
22 継目板固定用ボルト
23 継目板固定用ナット
24A,24B 絶縁性キャップ
100 レール締結装置
200 橋桁