(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】水中探知装置及び水中探知方法
(51)【国際特許分類】
G01S 15/96 20060101AFI20220404BHJP
G01S 7/62 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G01S15/96
G01S7/62 A
(21)【出願番号】P 2018132328
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】永井 早苗
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-215242(JP,A)
【文献】特開平09-043350(JP,A)
【文献】特開2009-085915(JP,A)
【文献】特開平05-019050(JP,A)
【文献】特開2006-105700(JP,A)
【文献】特開昭63-075582(JP,A)
【文献】特開2004-073850(JP,A)
【文献】特表2007-507248(JP,A)
【文献】特開2002-330968(JP,A)
【文献】特開2002-306480(JP,A)
【文献】米国特許第05889524(US,A)
【文献】米国特許第06373486(US,B1)
【文献】松尾 行雄 ほか,超音波による魚群探知システム,計測と制御,日本,社団法人計測自動制御学会,2010年01月10日,第49巻、 第1号,51-55頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52- 7/64
G01S15/00-15/96
A61B 8/00- 8/15
G06T 1/00- 1/60
G06T17/00-17/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の送信空間に送信波を送信する送信トランスデューサと、
水中のターゲットでの前記送信波の反射を含む反射波に基づいて受信信号を生成する複数の受信素子を有する受信トランスデューサと、
前記受信信号に基づいて複数の受信空間のそれぞれについてビームフォーミング処理を行うビーム形成部と、
各前記受信空間について行われた前記ビームフォーミング処理の結果に基づいて、前記ターゲットを表示部に表示させるための前記ターゲットの3次元映像データを生成する3次元映像データ生成部と、
少なくとも1つの前記受信空間でエコー信号が検出された前記ターゲットの輪郭線
であって、前記受信空間に対応する前記ターゲットの切断面における前記輪郭線を、前記エコー信号に基づいて抽出し、前記輪郭線を前記表示部に表示させるための輪郭線映像データを生成する輪郭線映像データ生成部と、
を備えていることを特徴とする、水中探知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水中探知装置であって、
前記3次元映像データ及び前記輪郭線映像データは、前記表示部に表示される際の表示色の情報を含み、
前記輪郭線映像データ生成部は、前記輪郭線映像データの表示色の情報を前記3次元映像データの表示色の情報と異なる表示色の情報に設定することを特徴とする、水中探知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の水中探知装置であって、
前記輪郭線映像データ生成部は、
複数の前記受信空間のうちの1つである第1の受信空間において前記ターゲットの前記輪郭線を第1の輪郭線として抽出し、且つ、複数の前記受信空間のうちの1つであって前記第1の受信空間に隣接する第2の受信空間においても前記ターゲットの前記エコー信号が検出されている場合に、
前記第2の受信空間で前記エコー信号が検出された前記ターゲットの前記輪郭線を第2の輪郭線として抽出し、前記第1の輪郭線及び前記第2の輪郭線を前記表示部に表示させるための前記輪郭線映像データを生成することを特徴とする、水中探知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水中探知装置であって、
前記輪郭線映像データ生成部は、前記輪郭線が抽出された前記第1の受信空間に隣接する前記第2の受信空間において前記ターゲットの前記エコー信号が検出されない状態となるまで、前記第1の輪郭線に続いて前記第2の輪郭線を抽出する処理を繰り返し行うことを特徴とする、水中探知装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の水中探知装置であって、
複数の前記受信空間において、任意の1つの受信空間と、前記1つの受信空間とは異なる他の受信空間とは、鉛直面に対する前記1つの受信空間及び前記他の受信空間のそれぞれの方位角、水平面に対する前記1つの受信空間及び前記他の受信空間のそれぞれの傾斜角、及び、前記受信トランスデューサからの前記1つの受信空間及び前記他の受信空間のそれぞれの距離、のうちのいずれかが異なることを特徴とする、水中探知装置。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の水中探知装置であって、
前記ターゲットの体積を算出するターゲット体積算出部、を更に備え、
前記ターゲット体積算出部は、前記第1の受信空間における前記第1の輪郭線で区切られた領域と、前記第2の受信空間における前記第2の輪郭線で区切られた領域とに基づいて、前記ターゲットの体積を算出することを特徴とする、水中探知装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の水中探知装置であって、
前記水中探知装置のユーザによって前記ターゲットが選択される操作による入力に基づいて、選択された前記ターゲットの位置を示す情報であるターゲット位置情報を取得する位置情報取得部、を更に備え、
前記輪郭線映像データ生成部は、前記ターゲット位置情報に対応する位置を含む前記ターゲットの前記輪郭線を抽出し、前記輪郭線映像データを生成することを特徴とする、水中探知装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の水中探知装置であって、
複数の前記受信空間のそれぞれは、前記送信空間の部分空間であることを特徴とする、水中探知装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の水中探知装置であって、
前記輪郭線映像データ生成部は、複数の前記受信空間で前記エコー信号が検出された全ての前記ターゲットの前記輪郭線を抽出して前記輪郭線映像データを生成し、
当該水中探知装置は、
複数の前記受信空間で検出された前記ターゲットの前記エコー信号に基づいて、全ての前記ターゲットの体積を算出するターゲット体積算出部と、
前記輪郭線映像データ生成部によって生成された全ての前記輪郭線映像データのうちの一部を前記表示部に表示させる表示対象として選択する表示対象選択部と、
を更に備え、
前記表示対象選択部は、前記ターゲット体積算出部で算出された前記ターゲットの体積の大きさに基づいて、表示対象としての前記輪郭線映像データを選択することを特徴とする、水中探知装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の水中探知装置であって、
前記輪郭線映像データ生成部は、
前記ターゲットの前記輪郭線映像データから抽出した特徴が存在する位置を示す情報である特徴位置情報を取得し、
前記輪郭線映像データの生成後に前記ビーム形成部によって前記ビームフォーミング処理が行われた際には、前記特徴位置情報に対応する位置を含む前記ターゲットの前記輪郭線を抽出し、前記輪郭線映像データを新たに生成することを特徴とする、水中探知装置。
【請求項11】
水中の送信空間に送信波を送信し、
複数の受信素子が、水中のターゲットでの前記送信波の反射を含む反射波に基づいて受信信号を生成し、
前記受信信号に基づいて複数の受信空間のそれぞれについてビームフォーミング処理を行い、
各前記受信空間について行われた前記ビームフォーミング処理の結果に基づいて、前記ターゲットを表示部に表示させるための前記ターゲットの3次元映像データを生成し、
少なくとも1つの前記受信空間
でエコー信号が検出された前記ターゲットの輪郭線
であって、前記受信空間に対応する前記ターゲットの切断面における前記輪郭線を、前記エコー信号に基づいて抽出し、前記輪郭線を前記表示部に表示させるための輪郭線映像データを生成することを特徴とする、水中探知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中のターゲットを探知するための水中探知装置及び水中探知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、超音波ビームを送信波として水中に送信して3次元領域をスキャンし、受信した反射波に基づいてスキャン領域内の水中情報を3次元映像として表示するためのデータを生成する水中探知装置(ソナー)が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された水中探知装置においては、水中情報として、魚群等の水中のターゲットの3次元映像のデータが生成され、このデータに基づいて、ディスプレイ等の表示部に魚群等のターゲットが3次元映像で表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたような水中探知装置によると、水中の魚群等のターゲットが、3次元映像で表示部に表示される。しかしながら、表示部にターゲットが3次元映像で表示される際、表示部における2次元の画面において、ターゲットの3次元映像が投影された状態で表示されることになる。このため、ユーザが、表示部の画面において、3次元映像で表示された魚群等のターゲットを個別に区別しにくい場合が生じ易く、ターゲットを見分けにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、ユーザが、3次元映像で表示されたターゲットを個別に区別し易く、ターゲットを容易に見分けることができる、水中探知装置及び水中探知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る水中探知装置は、水中の送信空間に送信波を送信する送信トランスデューサと、水中のターゲットでの前記送信波の反射を含む反射波に基づいて受信信号を生成する複数の受信素子を有する受信トランスデューサと、前記受信信号に基づいて複数の受信空間のそれぞれについてビームフォーミング処理を行うビーム形成部と、各前記受信空間について行われた前記ビームフォーミング処理の結果に基づいて、前記ターゲットを表示部に表示させるための前記ターゲットの3次元映像データを生成する3次元映像データ生成部と、少なくとも1つの前記受信空間でエコー信号が検出された前記ターゲットの輪郭線を抽出し、前記輪郭線を前記表示部に表示させるための輪郭線映像データを生成する輪郭線映像データ生成部と、を備えている。
【0008】
(2)前記3次元映像データ及び前記輪郭線映像データは、前記表示部に表示される際の表示色の情報を含み、前記輪郭線映像データ生成部は、前記輪郭線映像データの表示色の情報を前記3次元映像データの表示色の情報と異なる表示色の情報に設定する場合がある。
【0009】
(3)前記輪郭線映像データ生成部は、複数の前記受信空間のうちの1つである第1の受信空間において前記ターゲットの前記輪郭線を第1の輪郭線として抽出し、且つ、複数の前記受信空間のうちの1つであって前記第1の受信空間に隣接する第2の受信空間においても前記ターゲットの前記エコー信号が検出されている場合に、前記第2の受信空間で前記エコー信号が検出された前記ターゲットの前記輪郭線を第2の輪郭線として抽出し、前記第1の輪郭線及び前記第2の輪郭線を前記表示部に表示させるための前記輪郭線映像データを生成する場合がある。
【0010】
(4)前記輪郭線映像データ生成部は、前記輪郭線が抽出された前記第1の受信空間に隣接する前記第2の受信空間において前記ターゲットの前記エコー信号が検出されない状態となるまで、前記第1の輪郭線に続いて前記第2の輪郭線を抽出する処理を繰り返し行う場合がある。
【0011】
(5)複数の前記受信空間において、任意の1つの受信空間と、前記1つの受信空間とは異なる他の受信空間とは、鉛直面に対する前記1つの受信空間及び前記他の受信空間のそれぞれの方位角、水平面に対する前記1つの受信空間及び前記他の受信空間のそれぞれの傾斜角、及び、前記受信トランスデューサからの前記1つの受信空間及び前記他の受信空間のそれぞれの距離、のうちのいずれかが異なる場合がある。
【0012】
(6)前記ターゲットの体積を算出するターゲット体積算出部、を更に備え、前記ターゲット体積算出部は、前記第1の受信空間における前記第1の輪郭線で区切られた領域と、前記第2の受信空間における前記第2の輪郭線で区切られた領域とに基づいて、前記ターゲットの体積を算出する場合がある。
【0013】
(7)前記水中探知装置は、当該水中探知装置のユーザによって前記ターゲットが選択される操作による入力に基づいて、選択された前記ターゲットの位置を示す情報であるターゲット位置情報を取得する位置情報取得部、を更に備え、前記輪郭線映像データ生成部は、前記ターゲット位置情報に対応する位置を含む前記ターゲットの前記輪郭線を抽出し、前記輪郭線映像データを生成する場合がある。
【0014】
(8)複数の前記受信空間のそれぞれは、前記送信空間の部分空間である場合がある。
【0015】
(9)前記輪郭線映像データ生成部は、複数の前記受信空間で前記エコー信号が検出された全ての前記ターゲットの前記輪郭線を抽出して前記輪郭線映像データを生成し、前記水中探知装置は、複数の前記受信空間で検出された前記ターゲットの前記エコー信号に基づいて、全ての前記ターゲットの体積を算出するターゲット体積算出部と、前記輪郭線映像データ生成部によって生成された全ての前記輪郭線映像データのうちの一部を前記表示部に表示させる表示対象として選択する表示対象選択部と、を更に備え、前記表示対象選択部は、前記ターゲット体積算出部で算出された前記ターゲットの体積の大きさに基づいて、表示対象としての前記輪郭線映像データを選択する場合がある。
【0016】
(10)前記輪郭線映像データ生成部は、前記ターゲットの前記輪郭線映像データから抽出した特徴が存在する位置を示す情報である特徴位置情報を取得し、前記輪郭線映像データの生成後に前記ビーム形成部によって前記ビームフォーミング処理が行われた際には、前記特徴位置情報に対応する位置を含む前記ターゲットの前記輪郭線を抽出し、前記輪郭線映像データを新たに生成する場合がある。
【0017】
(11)また、上記課題を解決するため、本発明のある局面に係る水中探知方法は、水中の送信空間に送信波を送信し、複数の受信素子が、水中のターゲットでの前記送信波の反射を含む反射波に基づいて受信信号を生成し、前記受信信号に基づいて複数の受信空間のそれぞれについてビームフォーミング処理を行い、各前記受信空間について行われた前記ビームフォーミング処理の結果に基づいて、前記ターゲットを表示部に表示させるための前記ターゲットの3次元映像データを生成し、少なくとも1つの前記受信空間で前記エコー信号が検出された前記ターゲットの輪郭線を抽出し、前記輪郭線を前記表示部に表示させるための輪郭線映像データを生成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ユーザが、3次元映像で表示されたターゲットを個別に区別し易く、ターゲットを容易に見分けることができる、水中探知装置及び水中探知方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る水中探知装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】送受波器によって送信波が送信される送信空間及び送受波器によって反射波が受信される複数の受信空間を模式的に示す図である。
【
図3】水中探知装置の信号処理部の構成を示すブロック図である。
【
図4】表示部の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。
【
図5】表示部の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。
【
図6】受信空間に対応して設定されるスライス面及びスライス面上でエコー信号が検出されたターゲットを模式的に示す図である。
【
図7】信号処理部の輪郭線映像データ生成部の処理を説明するための図である。
【
図8】信号処理部の輪郭線映像データ生成部の処理を説明するための図である。
【
図9】表示部の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。
【
図10】
図9に示す映像の一部を拡大して示す図である。
【
図11】表示部の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。
【
図12】信号処理部のターゲット体積算出部の処理を説明するための図である。
【
図13】表示部の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。
【
図14】水中探知装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図15】変形例に係る水中探知装置の信号処理部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る水中探知装置1について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
[水中探知装置の全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る水中探知装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の水中探知装置1は、例えば、漁船などの船舶に設けられている。以下では、水中探知装置1を備えている船舶を「自船」という。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る水中探知装置1は、スキャニングソナー10と、信号処理部4とを備えている。水中探知装置1は、一般的に知られているスキャニングソナー10に、例えば、信号処理部4が外付けされた構成となっている。尚、水中探知装置1は、信号処理機4がスキャニングソナー10に対して外付けではなくスキャニングソナー10に搭載された構成であってもよい。また、水中探知装置1には、ディスプレイ等の表示装置として構成される表示部5が外付けされている。表示部5は、信号処理部4に接続されている。
【0023】
スキャニングソナー10は、送受波器2と、送受信部3とを備えている。
【0024】
[送受波器の構成]
送受波器2は、超音波を送受信する機能を有し、自船の船底に取り付けられている。例えば一例として、送受波器2は、略球形の形状に形成されている。
【0025】
詳細には、送受波器2は、略球形形状の筐体と、この筐体の外周面に取り付けられた複数の送受波素子としての超音波振動子(図示省略)とを有している。超音波振動子は、超音波を水中の送信空間に送信波として送信するとともに、水中の魚群等のターゲットでの送信波の反射を含む反射波(エコー)を受信し、この反射波を電気信号に変換して受信信号を生成して送受信部3へ出力する。即ち、送受波器2は、水中の送信空間に送信波を送信する送信トランスデューサとして構成されているとともに、水中のターゲットでの送信波の反射を含む反射波に基づいて受信信号を生成する複数の受信素子を有する受信トランスデューサとして構成されている。なお、本実施形態においては、送受波器2として、筐体が球形の場合を例示したが、形状は特に限定されるものではなく、例えば、略円筒形状等のように他の形状であってもよい。送受波器2の筐体が略円筒形状である場合は、送受波器2は、その軸方向が鉛直方向に沿い、半径方向が水平方向に沿うように配置される。
【0026】
図2は、送受波器2によって送信波が送信される送信空間TS及び送受波器2によって反射波が受信される複数の受信空間RSを模式的に示す図である。自船Sに搭載された送受波器2から送信される送信波は、送受波器2から自船Sを中心とする水中の全方位へ向けて一斉に送信され、例えば、半球状の送信ビームが形成される。半球状の送信ビームが形成された場合は、送信波が送信される送信空間TSは、半球状の空間として構成される。尚、送信ビームの形状は、半球状に限らず、送受波器2の形状、或いは、送受波器2の各送受波素子に入力する電気信号の振幅及び位相によって、種々の異なる形状に形成される。
【0027】
また、送受波器2は、送信ビーム送信後、送信空間TS内において、周方向に(
図2にて矢印で示す方位角θの方向に)スキャンする複数の受信ビームを一斉に形成する。即ち、送受波器2による一度の受信タイミングで、全ての受信ビームが形成される。そして、水中の魚群等のターゲットで反射した反射波が受信される複数の受信空間RSのそれぞれ(即ち、受信ビームが形成される各空間)は、送信空間TSの部分空間として構成され、送受波器2から離れるにつれて、上下方向において扇状に広がるとともに、且つ、水平方向において幅も膨らんで広がるように構成されている。また、送信空間TSの部分空間として構成される複数の受信空間RSのそれぞれは、送信空間TSの周方向に沿って(即ち、方位角θの方向に沿って)並んで配置される。従って、本実施形態では、複数の受信空間RSにおいて、任意の1つの受信空間RSと、その1つの受信空間RSとは異なる他の受信空間RSとは、鉛直面に対する上記の1つの受信空間RS及び上記の他の受信空間RSのそれぞれの方位角が異なるように構成されている。
【0028】
[送受信部の構成]
送受信部3は、送受切替部3aと、送信回路部6と、受信回路部7とを備えている。
【0029】
送受切替部3aは、送受波器2に対する信号の送信と受信とを切り替えるためのものである。具体的には、送受切替部3aは、送受波器2を駆動させるための駆動信号を送受波器2へ送信するときは、送信回路部6が出力する駆動信号を送受波器2へ出力する。一方、送受切替部3aは、受信信号を送受波器2から受信したときは、送受波器2から受信した受信信号を受信回路部7へ出力する。
【0030】
送信回路部6は、送受波器2から送信される送信波の基となる駆動信号を生成する。より具体的には、送信回路部6は、各超音波振動子に対応して設けられている送信回路(図示省略)を有し、各送信回路が駆動信号を生成する。
【0031】
受信回路部7は、アナログ部7aと、A/D変換部7bと、を有している。アナログ部7a及びA/D変換部7bは、各超音波振動子に対応して設けられている受信回路であって、送信波の反射波に基づいて生成された受信信号を処理する受信回路(図示省略)を備えて構成されている。そして、アナログ部7aは、送受波器2が送信波の反射波に基づいて生成して出力する電気信号としての受信信号を増幅するとともに、その帯域を制限することで不要な周波数成分を除去する。A/D変換部7bは、アナログ部7aで増幅された受信信号を、デジタル信号としての受信信号に変換する。そして、受信回路部7は、A/D変換部7bにてデジタル信号に変換した受信信号を信号処理部4へ出力する。
【0032】
[表示部の構成]
表示部5は、ディスプレイ等の表示装置として構成されている。そして、表示部5は、信号処理部4から出力された映像データに応じた映像を表示画面に表示する。本実施形態では、表示部5は、自船下方における海中の状態を3次元的に、俯瞰図として表示する。これにより、水中探知装置1のユーザは、当該表示画面を見て、自船下方における海中の状態(例えば、魚群、海底の起伏、人工漁礁のような構造物の有無および位置)を推測することができる。
【0033】
[信号処理部の全体構成]
図3は、信号処理部4の構成を示すブロック図である。
図1及び
図3を参照して、信号処理部4は、受信回路部7から出力される受信信号を処理し、ビームフォーミング処理を行うとともに、ターゲット及びターゲットの輪郭線の映像データを生成する処理等を行う。
【0034】
信号処理部4は、ビーム形成部9、3次元映像データ生成部10、輪郭線映像データ生成部11、位置情報取得部12、ターゲット体積算出部13、等を備えている。
【0035】
信号処理部4は、スキャニングソナー10の送受信部3とケーブル等により接続された機器であって、例えば一例としてPC(パーソナルコンピュータ)で構成されている。そして、信号処理部4は、ハードウェア・プロセッサ8(例えば、CPU、FPGA等)及び不揮発性メモリ等のデバイスで構成されている。ハードウェア・プロセッサ8は、以下で詳しく説明するビーム形成部9、3次元映像データ生成部10、輪郭線映像データ生成部11、位置情報取得部12、及びターゲット体積算出部13として機能する。例えば、CPUが不揮発性メモリからプログラムを読み出して実行することにより、ハードウェア・プロセッサ8が、ビーム形成部9、3次元映像データ生成部10、輪郭線映像データ生成部11、位置情報取得部12、及びターゲット体積算出部13として機能する。
【0036】
[ビーム形成部の構成]
ビーム形成部9は、受信回路部7から受信した受信信号に基づいて複数の受信空間RSのそれぞれについてビームフォーミング処理(具体的には、整相加算)を行う。尚、ビーム形成部9は、ビームフォーミング処理においては、特定の方向に鋭い指向性を有する単一の超音波振動子によって得られるものと等価な信号である受信ビーム信号を生成する。そして、ビーム形成部9は、ビームフォーミング処理を行う対象となる超音波振動子の組合せを変えながらこの処理を繰り返し行うことによって、各受信空間RSに対応する各方位に指向性を有する多数の受信ビーム信号を生成する。更に、ビーム形成部9は、各受信空間RSに対応して形成した各受信ビームに、帯域制限フィルタ、或いはパルス圧縮フィルタ等のフィルタ処理を施すことにより、信号強度レベルが所定の閾値を超えたエコー信号としてのターゲットのエコー信号を検出する。
【0037】
[3次元映像データ生成部の構成]
3次元映像データ生成部10は、各受信空間RSについて行われたビームフォーミング処理及びフィルタ処理の結果に基づいて、ターゲットを表示部5に表示させるためのターゲットの3次元映像データを生成する。尚、3次元映像データ生成部10は、ビームフォーミング処理及びフィルタ処理の結果に基づいて、等値面処理(即ち、サーフェスレンダリング処理)或いはボリュームレンダリング処理を行うことにより、ターゲットの3次元映像データを生成する。3次元映像データ生成部10で生成された3次元映像データは、表示部5へ出力され、表示部5の表示画面に表示される。
図4は、表示部5の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。尚、
図4では、3次元映像データ生成部10で生成された3次元映像データに基づいて表示部5の表示画面に表示された3次元映像IM1が例示されている。
【0038】
図4に例示するように、表示部5で表示される3次元映像IM1においては、送信空間TSに対応する水中の探知領域DR内でエコー信号が検出されたターゲット(T1、T2、T3)の3次元映像が表示される。尚、表示部5において表示される3次元映像IM1は、表示部5における2次元の表示画面において、投影された状態で表示される。また、3次元映像IM1において表示されるターゲット(T1、T2、T3)の3次元映像は、ターゲット(T1、T2、T3)のエコー像として表示される。尚、
図4では、表示部5において、魚群としてのターゲット(T1、T2、T3)が表示された例が図示されている。また、3次元映像IM1の表示には、水面上において自船Sから等距離の位置を示す等距離線HL1、HL2、及び水中の深さ方向における同じ深さ位置を示す等深度線VL1、VL2の表示も含まれている。尚、
図4では、3次元映像IM1において探知領域DRを示す線も表示された形態を例示しているが、探知領域DRを示す線については、表示されていなくてもよい。
【0039】
尚、
図4にて例示する3次元映像IM1においては、信号強度レベルが高い受信信号が得られたエリアが高密度のドットハッチングが付されたエリアで示され、信号強度レベルが中程度の受信信号が得られたエリアが斜線のハッチングが付されたエリアで示され、信号強度レベルが低い受信信号が得られたエリアが低密度のドットハッチングが付されたエリアで示されている。以下では、高密度のドットハッチングが付されたエリアを高エコー強度エリアと称し、斜線のハッチングが付されたエリアを中エコー強度エリアと称し、低密度のドットハッチングが付されたエリアを低エコー強度エリアと称する。3次元映像データ生成部10にて生成されるターゲットの3次元映像データには、表示部5に表示される際の表示色の情報が含まれている。そして、表示部5では、高エコー強度エリア、中エコー強度エリア、及び低エコー強度エリアのそれぞれは、ターゲットの3次元映像データに含まれる表示色の情報に基づく色で表示される。例えば、表示部5では、高エコー強度エリアは赤色で示され、中エコー強度エリアは緑色で示され、低エコー強度エリアは青色で示される。
【0040】
図5は、表示部5の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図であって、
図4とは異なる表示例を示す図である。
図5では、3次元映像データ生成部10で生成された3次元映像データに基づいて表示部5の表示画面に表示された3次元映像IM1、3次元映像IM2、及び3次元映像IM3が例示されている。即ち、
図5では、表示部5の同じ表示画面において、3つの3次元映像(IM1、IM2、IM3)が並んで表示された状態が例示されている。
【0041】
図5に示す表示例では、
図4に示す表示例と同様の第1の視点からターゲット(T1、T2、T3)を視た3次元映像IM1と、上記の第1の視点とは異なる第2の視点からターゲット(T1、T2、T3)を視た3次元映像(IM2、IM3)とが、表示部5の表示画面に表示されている。尚、上記の第1の視点は、例えば、自船Sの上方の斜めから探知領域DRを視る視点(以下、この視点を「斜め上方視点」とも称する)として設定される。また、上記の第2の視点は、例えば、自船Sの上方から鉛直方向に探知領域DRを視る視点(以下、この視点を「鉛直視点」とも称する)として、或いは、探知領域DRの側方から水平方向に探知領域DRを視る視点(以下、この視点を「水平視点」とも称する)として、設定される。
【0042】
尚、
図4では、1つの3次元映像IM1が表示部5に表示され、
図5では、3つの3次元映像(IM1、IM2、IM3)が表示部5に表示された形態を例示している。表示部5に表示される3次元映像(IM1、IM2、IM3)等の3次元映像は、ユーザの操作に基づいて、適宜切り替えられる。例えば一例として、水中探知装置1が有するキーボード或いはポインティングデバイス等の操作機器(図示省略)をユーザが適宜操作することにより、表示部5に、3次元映像(IM1、IM2、IM3)の全てが表示され、或いは、3次元映像(IM1、IM2、IM3)のうちの任意の1つ或いは2つの3次元映像が表示される。
【0043】
尚、上記の例では、表示部5が、第1の視点として斜め上方視点を設定し、第2の視点として鉛直視点及び水平視点を設定し、3次元映像を表示する形態を例示したが、この通りでなくてもよい。表示部5は、第1の視点として、斜め上方視点以外の他の任意の視点を設定し、第2の視点として、探知領域DRの外部からの視点だけでなく探知領域DRの任意の断面における視点も含む他の任意の視点を設定し、3次元映像を表示してもよい。
【0044】
[位置情報取得部の構成]
位置情報取得部12は、水中探知装置1のユーザによってターゲットが選択される操作による入力に基づいて、選択されたターゲットの位置を示す情報であるターゲット位置情報を取得する。より具体的には、ユーザは、例えば、水中探知装置1が有するマウス等のポインティングデバイスを操作し、表示部5の表示画面上に表示されたカーソルの位置を、表示部5の表示画面上に表示された任意のターゲットの位置まで移動する。そして、ユーザは、カーソルを移動させたターゲット上で、ポインティングデバイスのクリック操作を行い、ターゲットを選択する操作を行う。この操作により、信号処理部4に対して、ターゲットが選択される操作による入力がなされる。例えば、
図4に示すように、表示部5の表示画面上に3次元映像IM1が表示されている状態において、ユーザは、ポインティングデバイスのカーソルをターゲットT1の位置まで移動させ、ターゲットT1を選択する操作として、ターゲットT1上でクリック操作を行う。これにより、信号処理部4において、ユーザによってターゲットT1が選択された操作による入力がなされる。
【0045】
信号処理部4の位置情報取得部12は、例えば、ターゲットT1が選択された操作による入力がなされると、その入力に基づいて、ユーザによるクリック操作が行われた探知領域DR内の位置を、選択されたターゲットT1の位置を示す情報であるターゲット位置情報として取得する。このとき、位置情報取得部12は、ターゲット位置情報として、探知領域DR内における上記のクリック操作が行われた位置の3次元座標であって、表示部5の表示画面上に3次元映像を表示している際の視点の方向における最も手前側のエコー信号のデータの位置の座標を取得する。
【0046】
[輪郭線映像データ生成部の構成]
輪郭線映像データ生成部11は、少なくとも1つの受信空間RSでエコー信号が検出されたターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成するように構成されている。また、輪郭線映像データ生成部11は、位置情報取得部12で取得されたターゲット位置情報に対応する位置を含むターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線映像データを生成するように構成されている。以下、輪郭線映像データ生成部11の構成について、更に詳しく説明する。
【0047】
輪郭線映像データ生成部11は、複数の受信空間RSのそれぞれに対応して設定される各スライス面SSごとに、ターゲットの輪郭線の抽出を行う。
図6は、任意の1つの受信空間RSに対応して設定される1つのスライス面SS及びそのスライス面SS上でエコー信号が検出されたターゲットTXを模式的に示す図である。各受信空間RSに対応して設定される各スライス面SSは、自船Sの位置を基準とした距離rの方向と、自船Sの位置を基準とした水平面に対する傾斜角の方向であるティルト角φの方向(即ち、俯角方向)とに広がる扇状の面として設定される。ビーム形成部9では、各受信空間RSにおけるビームフォーミング処理及びフィルタ処理を行う際、各受信空間RSに対応する各スライス面SSにおける距離rの方向及びティルト角φの方向において等距離間隔及び等角度間隔で離散したサンプリング点において、ターゲットのエコー信号を検出している。尚、
図6においては、各スライス面SSにおける距離rの方向及びティルト角φの方向に等距離間隔及び等角度間隔で離散したサンプリング点に対応する各領域が、距離rの方向及びティルト角φの方向に並んで配置されたセル状の各領域として模式的に示されている。また、
図6では、スライス面SSにおける距離rの方向及びティルト角φの方向に等距離間隔及び等角度間隔で離散したサンプリング点が、実際よりもかなり粗い間隔で離散した状態を模式的に示している。
【0048】
輪郭線映像データ生成部11は、位置情報取得部12がターゲット位置情報を取得すると、そのターゲット位置情報が特定する探知領域DR内の座標に最も近いスライス面SSを特定する。そして、輪郭線映像データ生成部11は、特定したスライス面SS上でターゲット位置情報が特定する座標に最も近いサンプリング点を特定し、そのサンプリング点の座標を取得する。
【0049】
更に、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲット位置情報の座標に最も近いスライス面SSにおける全てのエコー信号のデータについて、2値化処理及び膨張収縮処理を行う。2値化処理及び膨張収縮処理は、特開2008-268183号公報に開示された公知の手法に基づいて行われる。
【0050】
具体的には、2値化処理では、各エコー信号の信号強度レベルが、予め設定された閾値と比較され、エコー信号の信号強度レベルが閾値以上であれば「1」が割り当てられ、エコー信号の信号強度レベルが閾値未満であれば「0」が割り当てられる処理が行われる。これにより、2値化処理の対象のスライス面SSにおける全てのエコー信号のデータが2値化される処理が行われる。尚、予め設定される上記の閾値は、例えば、ユーザによる入力操作に基づいて設定される。
【0051】
また、膨張収縮処理における膨張処理では、膨張収縮処理の対象のスライス面SSにおけるある注目画素データについて、その画素データ自身或いはその画素データの近傍の画素データに1つでも「1」があれば、その注目画素データを「1」とする処理が行われる。そして、膨張収縮処理における収縮処理では、膨張収縮処理の対象のスライス面SSにおけるある注目画素データについて、その画素データ自身或いはその画素データの近傍の画素データに1つでも「0」があれば、その注目画素データを「0」とする処理が行われる。膨張処理と収縮処理とを組み合わせて実行する膨張収縮処理が行われることで、2値化処理が行われた映像の中における穴の部分(即ち、周りを「1」の画素データで囲まれた「0」の画素データの部分)が消滅した状態となる。
【0052】
処理対象のスライス面SSにおいて上記の2値化処理及び膨張収縮処理が行われると、そのスライス面SSにおいてターゲットのエコー信号が検出されていれば、ターゲットのエコー信号としてのひとかたまりのエコー信号のデータがそのスライス面SSにおいて得られることになる。
図6では、処理対象のスライス面SSにおいてひとかたまりのエコー信号のデータがターゲットTXのエコー像として得られた形態を模式的に示している。
【0053】
処理対象のスライス面SSにおいて上記の2値化処理及び膨張収縮処理が終了すると、輪郭線映像データ生成部11は、ひとかたまりのエコー信号のデータとして得られたターゲットのエコー像に対してラベリング処理を行う。ラベリング処理では、ターゲットのエコー像に対してID番号を付す処理が行われる。例えば、
図6に示す例では、ターゲットTXのエコー像が、最初にラベリング処理が行われたエコー像であれば、「No.1」のID番号が、ターゲットTXのエコー像に対して紐付けて設定される。
【0054】
処理対象のスライス面SSにおいて、2値化処理、膨張収縮処理、及びラベリング処理が終了すると、輪郭線映像データ生成部11は、ラベリング処理によってID番号を付したターゲットの輪郭線抽出処理を行う。輪郭線抽出処理では、ラベリング処理によってID番号を付したターゲット(以下、「ラベリングしたターゲット」とも称する)のエコー像について、スライス面SS上におけるそのエコー像の外形の縁に沿った外形線のデータをターゲットの輪郭線のデータとして抽出する。
図6では、ラベリングしたターゲットTXのエコー像の輪郭線PLXが抽出された形態を模式的に示している。尚、
図6では、スライス面SS上のサンプリング点が実際よりもかなり粗い間隔で並んだ状態が模式的に示されているため、輪郭線PLXについても、凹凸形状が実際よりも大きく目立つ状態で模式的に示されている。
【0055】
輪郭線映像データ生成部11は、ターゲットの輪郭線を抽出すると、その抽出したターゲットの輪郭線のデータを、ターゲットの輪郭線として表示部5に表示させるための輪郭線映像データとして生成する。尚、輪郭線映像データ生成部11にて生成される輪郭線映像データには、表示部5に表示される際の表示色の情報が含まれている。そして、輪郭線映像データ生成部11は、輪郭線映像データの表示色の情報をターゲットの3次元映像データの表示色の情報と異なる表示色の情報に設定する。これにより、輪郭線映像データ生成部11は、3次元映像データ生成部10にて生成されるターゲットの3次元映像データによって特定されるターゲットの表示色とは異なるように、輪郭線映像データに基づいて表示部5に表示させる輪郭線の表示色を設定する。例えば、表示部5で表示されるターゲットの表示色が、赤色、緑色、青色である場合に、ターゲットの輪郭線の表示色は、白色に設定される。
【0056】
また、輪郭線映像データ生成部11は、位置情報取得部12で取得されたターゲット位置情報の座標に最も近いスライス面SSにおいて、輪郭線映像データを生成する処理を行うと、次いで、輪郭線映像データを生成する処理を行ったスライス面SSに隣接するスライス面SSにおいても、輪郭線映像データを生成する処理を続けて行う。そして、輪郭線映像データ生成部11は、隣接するスライス面SSにおいて輪郭線映像データを生成する処理を、隣接するスライス面SSにおいてターゲットのエコー信号が検出されない状態となるまで、繰り返し行う。
【0057】
即ち、輪郭線映像データ生成部11は、まず、複数の受信空間RSのうちの1つである第1の受信空間RS1においてターゲットの輪郭線を第1の輪郭線として抽出する。そして、上記の第1の輪郭線を抽出し、且つ、複数の受信空間RSのうちの1つであって上記の第1の受信空間RS1に隣接する第2の受信空間RS2においてもターゲットのエコー信号が検出されている場合には、第2の受信空間RS2でエコー信号が検出されたターゲットの輪郭線を第2の輪郭線として抽出する。そして、上記の第1の輪郭線及び上記の第2の輪郭線を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成する。更に、輪郭線映像データ生成部11は、輪郭線が抽出された第1の受信空間RS1に隣接する第2の受信空間RS2においてターゲットのエコー信号が検出されない状態となるまで、第1の輪郭線に続いて第2の輪郭線を抽出する処理を繰り返し行う。即ち、輪郭線映像データ生成部11は、一旦、第1の輪郭線及び第2の輪郭線を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成すると、続いて、第2の輪郭線を抽出した第2の受信空間RS2を新たな第1の受信空間RS1として設定し、上記と同様の処理を繰り返し行う。繰り返し行われる上記と同様の処理は、新たな第1の受信空間RS1に隣接する新たな第2の受信空間RS2においてターゲットのエコー信号が検出されない状態となるまで、繰り返し行われる。
【0058】
隣接するスライス面SSにおいて輪郭線映像データを生成する上述の処理について、輪郭線映像データ生成部11における輪郭線映像データの生成処理を説明するための図である
図7及び
図8を参照しつつ、更に詳しく説明する。
図7は、方位角θの方向に沿って並ぶ複数の受信空間RSに亘って存在するターゲットTYのエコー信号がビーム形成部9にて検出された場合を模式的に示している。ターゲットTYのエコー信号は、複数の受信空間RSに亘って検出されるため、複数の受信空間RSのそれぞれに対応する複数のスライス面SSにおいても、ターゲットTYのエコー信号が検出される。また、
図7においては、各スライス面SSを特定するスライス面SSの番号であるスライス番号(以下、スライス番号SNと称する)が、n-2、n-1、n、n+1、n+2、n+3、n+4、n+5、n+6の場合を例示している。スライス番号SNがn-2~n+6のスライス面SSは、方位角θの方向に沿って順番に隣接して並んでいる。以下、隣接するスライス面SSにおいて輪郭線映像データを生成する処理について、
図7及び
図8を参照しつつ、位置情報取得部12で取得されたターゲット位置情報の座標に最も近いスライス面SSのスライス番号SNがnである場合を例にとって説明する。
【0059】
図7に示す例では、輪郭線映像データ生成部11により、ターゲット位置情報の座標に最も近いスライス面SSのスライス番号SNがnに特定される。即ち、輪郭線映像データ生成部11は、最初にターゲットTYの輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成する処理の対象のスライス面SSとして、スライス番号SN=nのスライス面SSを選択する。そして、輪郭線映像データ生成部11は、スライス番号SN=nのスライス面SSについて、前述の2値化処理、膨張収縮処理、ラベリング処理、及び輪郭線抽出処理を行う。これにより、輪郭線映像データ生成部11は、スライス番号SN=nのスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線を抽出し、その輪郭線映像データを生成する。
【0060】
図8は、スライス番号SNがn-1~n+5の各スライス面SSにおいて抽出されたターゲットTYの輪郭線(PL01、PL00、PL10、PL20、PL30、PL40、PL50)を並んだ状態で模式的に示す図である。輪郭線映像データ生成部11において、スライス番号SN=nのスライス面SSについて、2値化処理、膨張収縮処理、ラベリング処理、及び輪郭線抽出処理が行われると、スライス番号SN=nのスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線PL00が抽出される。そして、その輪郭線PL00を表示部5に表示させるための輪郭線映像データが生成される。
【0061】
スライス番号SN=nのスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が終了すると、次いで、輪郭線映像データ生成部11は、スライス番号SN=nのスライス面SSに隣接するスライス面SSについて、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理を行う。即ち、輪郭線映像データ生成部11は、スライス番号SN=n-1のスライス面SS、及び、スライス番号SN=n+1のスライス面SSについて、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理を行う。
【0062】
スライス番号SN=nのスライス面SSに隣接するスライス番号SN=n-1のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理においては、まず、スライス番号SN=n-1のスライス面SSにおいてターゲットTYのエコー信号が検出されているか否かが判定される。この判定では、例えば、スライス番号SN=n-1のスライス面SSにおいて、スライス番号SN=nのスライス面SSにおいてターゲットTYが存在している領域内のサンプリング点の座標の少なくとも何れかに対応する座標においてターゲットのエコー信号が検出されているか否かが判定される。尚、上記の対応する座標は、スライス番号SN=n-1のスライス面SSにおいて、スライス番号SN=nのスライス面SSにおいてターゲットTYが存在している領域内のサンプリング点の少なくとも何れかの座標と同じ深さ位置であって距離rの方向における距離が同じ座標として特定される。上記の対応する座標においてターゲットのエコー信号が検出されている場合は、スライス番号SN=n-1のスライス面SSにおいて、ターゲットTYのエコー信号が検出されていると判定される。スライス番号SN=n-1のスライス面SSにてターゲットTYのエコー信号が検出されていると判定されると、スライス番号SN=n-1のスライス面SSについて、2値化処理、膨張収縮処理、ラベリング処理、及び輪郭線抽出処理が行われる。これにより、スライス番号SN=n-1のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線PL01が抽出され、その輪郭線映像データが生成される。尚、スライス番号SN=n-1のスライス面SSでのラベリング処理においては、スライス番号SN=nのスライス面SSにおけるターゲットTYに付されたID番号と同じID番号が、スライス番号SN=n-1のスライス面SSにおけるターゲットTYに対しても付される。
【0063】
尚、上記のように、輪郭線映像データ生成部11は、複数の受信空間RSのうちの1つであってスライス番号SN=nのスライス面SSが対応する第1の受信空間RS1においてターゲットTYの輪郭線PL00を第1の輪郭線として抽出する。そして、その第1の輪郭線を抽出し、且つ、複数の受信空間RSのうちの1つであって上記の第1の受信空間RS1に隣接してスライス番号SN=n-1のスライス面SSが対応する第2の受信空間RS2においてもターゲットTYのエコー信号が検出されている場合には、第2の受信空間RS2でエコー信号が検出されたターゲットTYの輪郭線PL01を第2の輪郭線として抽出する。そして、上記の第1の輪郭線としての輪郭線PL00及び上記の第2の輪郭線としての輪郭線PL01を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成する。
【0064】
スライス番号SN=nのスライス面SSに隣接するスライス番号SN=n+1のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理においては、上述したスライス番号SN=n-1のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理と同様の処理が行われる。これにより、スライス番号SN=n+1のスライス面SSにおいてもターゲットTYのエコー信号が検出されていると判定され、スライス番号SN=n+1のスライス面SSについて、2値化処理、膨張収縮処理、ラベリング処理、及び輪郭線抽出処理が行われる。これにより、スライス番号SN=n+1のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線PL10が抽出され、その輪郭線映像データが生成される。尚、スライス番号SN=n+1のスライス面SSでのラベリング処理においては、スライス番号SN=nのスライス面SSにおけるターゲットTYに付されたID番号と同じID番号が、スライス番号SN=n+1のスライス面SSにおけるターゲットTYに対しても付される。
【0065】
上記のように、スライス番号SN=nのスライス面SSに隣接するスライス面SS(スライス番号SN=n-1、n+1のスライス面SS)に対してターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が行われると、引き続き、各スライス面SS(スライス番号SN=n-1、n+1のスライス面SS)に隣接するスライス面SSに対しても、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が行われる。また、このとき、各スライス面SS(スライス番号SN=n-1、n+1のスライス面SS)に隣接するスライス面SSのうち、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理がまだ行われていないスライス面SSについて、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が行われる。
【0066】
スライス番号SN=n-1のスライス面SSに隣接するスライス面SSは、スライス番号SN=n、n-2のスライス面SSとなる。このうち、スライス番号SN=nのスライス面SSにおいて、輪郭線映像データを生成する処理を行っていないターゲットTYがなかった場合は、この処理は行われない。一方、スライス番号SN=n-2のスライス面SSは、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理がまだ行われていないため、スライス番号SN=n-2のスライス面SSについて、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が行われる。スライス番号SN=n-2のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理においては、上述したスライス番号SN=n-1のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理と同様の処理が行われる。しかし、
図7に示すように、スライス番号SN=n-2のスライス面SSにおいては、ターゲットTYのエコー信号が検出されていない。よって、スライス番号SN=n-2のスライス面SSについては、ターゲットTYの輪郭線が抽出されず、ターゲットTYの輪郭線映像データの生成も行われないことになる。そして、スライス番号SN=n-2のスライス面SSについては、ターゲットTYのエコー信号が検出されない状態となるため、スライス番号SN=n-2のスライス面SSに隣接するスライス面SSについては、それ以上、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が行われないことになる。
【0067】
また、スライス番号SN=n+1のスライス面SSに隣接するスライス面SSは、スライス番号SN=n、n+2のスライス面SSとなる。このうち、スライス番号SN=nのスライス面SSにおいて、輪郭線映像データを生成する処理を行っていないターゲットTYがなかった場合は、この処理は行われない。一方、スライス番号SN=n+2のスライス面SSは、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理がまだ行われていないため、スライス番号SN=n+2のスライス面SSについて、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が行われる。
【0068】
スライス番号SN=n+1のスライス面SSに隣接するスライス番号SN=n+2のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理においては、上述したスライス番号SN=n-1、n+1のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理と同様の処理が行われる。これにより、スライス番号SN=n+2のスライス面SSにおいてもターゲットTYのエコー信号が検出されていると判定され、スライス番号SN=n+2のスライス面SSについて、2値化処理、膨張収縮処理、ラベリング処理、及び輪郭線抽出処理が行われる。これにより、スライス番号SN=n+2のスライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線PL20が抽出され、その輪郭線映像データが生成される。
【0069】
上記のように、隣接するスライス面SSにおいてもターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理は、隣接するスライス面SSにおいてターゲットTYのエコー信号が検出されない状態となるまで、繰り返し行われる。これにより、スライス番号SN=n+2のスライス面SSにおいて行われたターゲットTYの輪郭線映像データの生成処理が、スライス番号SN=n+3、n+4、n+5の各スライス面SSについても行われる。そして、スライス番号SN=n-2のスライス面SSにおいて行われた処理と同様の処理が、スライス番号SN=n+6のスライス面SSについても行われる。これにより、スライス番号SN=n+3、n+4、n+5の各スライス面SSにおけるターゲットTYの輪郭線PL30、PL40、PL50が抽出され、その輪郭線映像データが生成される。そして、スライス番号SN=n+6のスライス面SSについては、ターゲットTYの輪郭線が抽出されず、ターゲットTYの輪郭線映像データの生成も行われない。また、スライス番号SN=n+6のスライス面SSについては、ターゲットTYのエコー信号が検出されない状態となるため、スライス番号SN=n+6のスライス面SSに隣接するスライス面SSについては、それ以上、ターゲットTYの輪郭線映像データを生成する処理が行われないことになる。尚、スライス番号SN=n+2、n+3、n+4、n+5の各スライス面SSでのラベリング処理においては、スライス番号SN=nのスライス面SSにおけるターゲットTYに付されたID番号と同じID番号が、スライス番号SN=n+2、n+3、n+4、n+5の各スライス面SSにおけるターゲットTYに対しても付される。
【0070】
上記のように、輪郭線映像データ生成部11は、輪郭線が抽出されたスライス面SSが対応する第1の受信空間RS1に隣接する第2の受信空間RS2においてターゲットのエコー信号が検出されない状態となるまで、第1の輪郭線に続いて第2の輪郭線を抽出する処理を繰り返し行う。例えば、スライス番号SN=n+1が対応する受信空間RSが第1の受信空間RS1であり、スライス番号SN=n+2が対応する受信空間RSが第2の受信空間RS2である場合、第1の輪郭線としての輪郭線PL10と第2の輪郭線としての輪郭線PL20とが抽出され、それらの輪郭線映像データが生成される。この場合、引き続き、第2の輪郭線としての輪郭線PL20を抽出した受信空間RS(スライス番号SN=n+2のスライス面SSが対応する受信空間RS)を新たな第1の受信空間RS1として設定する。そして、その新たな第1の受信空間RS1に隣接する第2の受信空間RS2(スライス番号SN=n+3のスライス面SSが対応する受信空間RS)において、ターゲットTYの輪郭線PL30の抽出が行われる。これにより、新たな第1の輪郭線としての輪郭線PL20と新たな第2の輪郭線としての輪郭線PL30とが抽出され、それらの輪郭線映像データが生成される。このような処理が、新たな第1の受信空間RS1に隣接する新たな第2の受信空間RS2においてターゲットのエコー信号が検出されない状態となるまで、繰り返し行われる。
【0071】
上記のように、ユーザによって選択されたターゲットの輪郭線映像データが輪郭線映像データ生成部11によって生成されると、生成された輪郭線映像データは、表示部5に出力される。そして、ユーザによって選択されたターゲットの輪郭線が、表示部5の表示画面に表示される。ターゲットの輪郭線が表示される前の状態では、表示部5においては、3次元映像データ生成部10で生成された3次元映像データに基づいて、ターゲットの3次元映像が表示されている。例えば、
図4に示すように、表示部5においては、ターゲット(T1、T2、T3)の3次元映像を含む3次元映像IM1が表示されている。この状態において、ユーザによって選択されたターゲットの輪郭線映像データが輪郭線映像データ生成部11によって生成されると、そのターゲットの輪郭線が、3次元映像IM1において重ねて表示される。
【0072】
図9は、表示部5の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。尚、
図9は、ユーザによって選択されたターゲットT1の輪郭線PLT1が、
図4に示す3次元映像IM1において重ねて表示された映像を、模式的に示している。また、
図10は、
図9に示す映像の一部を拡大して示す図である。尚、
図10は、3次元映像IM1において、ユーザによって選択されたターゲットT1の輪郭線PLT1が重ねて表示された部分を、拡大して示す図である。
【0073】
表示部5において、ターゲット(T1、T2、T3)の3次元映像を含む3次元映像IM1が表示されている
図4に示す状態を例にとり、ターゲットの輪郭線が表示される形態について説明する。表示部5において
図4に示すように3次元映像IM1が表示されている状態において、ユーザが、ポインティングデバイスを操作し、例えば、ターゲット(T1、T2、T3)のうちのターゲットT1を選択する操作を行う。即ち、ユーザが、表示部5の表示画面上に表示されたカーソルの位置をターゲットT1の位置まで移動させ、ポインティングデバイスをクリック操作し、ターゲットT1を選択する操作を行う。
【0074】
上記のようにターゲットT1を選択する操作が行われると、輪郭線映像データ生成部11が、前述のように動作し、複数の空間領域RSに対応した複数のスライス面SSにおいてターゲットT1の輪郭線PLT1の抽出を行い、ターゲットT1の輪郭線映像データを生成する。生成されたターゲットT1の輪郭線映像データは表示部5に出力される。そして、
図8及び
図9に示すように、ターゲットT1の輪郭線PLT1が、表示部5の表示画面において、3次元映像IM1におけるターゲットT1の3次元映像において重ねて表示される。尚、前述のように、表示部5においては、例えば、ターゲットT1は、赤色、緑色、青色で表示され、ターゲットT1の輪郭線PLT1は、白色で表示される。
【0075】
また、表示部5は、複数の視点での映像データを表示している場合に、ユーザによっていずれかの視点の映像におけるターゲットが選択されると、その視点において選択されたターゲットの輪郭線だけでなく、他の視点における対応するターゲットの輪郭線も、輪郭線映像データ生成部11で生成された輪郭線映像データに基づいて、表示する。この表示形態について、表示部5において、ターゲット(T1、T2、T3)の3次元映像をそれぞれ含む3次元映像(IM1,IM2,IM3)が表示されている
図5に示す状態を例にとり、更にターゲットT1の輪郭線PLT1が表示される場合について説明する。尚、
図11は、表示部5の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。そして、
図11は、ユーザによって選択されたターゲットT1の輪郭線PLT1が、
図5に示す3次元映像(IM1、IM2、IM3)において重ねて表示された映像を、模式的に示している。
【0076】
ターゲットT1の輪郭線PLT1が表示される前の状態においては、表示部5は、第1の視点としての斜め上方視点から視た3次元映像IM1と、2つの第2の視点としての鉛直視点及び水平視点から視た3次元映像(IM2、IM3)と、を表示している。
【0077】
上記の状態において、ユーザの操作によって、例えば、第1の視点に対応する3次元映像IM1におけるターゲットT1が選択されたとする。この場合、第1の視点で表示されたターゲットT1がユーザによって選択されることでターゲット位置情報が取得される。そして、このようにターゲット位置情報が取得された際には、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲット位置情報に基づいて、ターゲットT1の輪郭線PLT1を抽出し、その輪郭線PLT1を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成する。
【0078】
上記のように、ターゲットT1の輪郭線PLT1を表示部5に表示させる輪郭線映像データが生成されると、輪郭線映像データは、表示部5に出力される。そして、
図11に示すように、ターゲットT1の輪郭線PLT1が、表示部5の表示画面において、3次元映像(IM1、IM2、IM3)におけるターゲットT1の3次元映像において重ねて表示される。即ち、表示部5においては、輪郭線映像データに基づいて、ターゲットT1の輪郭線PLT1が、第1の視点(斜め上方視点)から視た3次元映像IM1におけるターゲットT1の3次元映像と、2つの第2の視点(鉛直視点、水平視点)から視た3次元映像(IM2、IM3)のそれぞれにおけるターゲットT1の3次元映像とに対して、重ねて表示される。
【0079】
また、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲットの輪郭線映像データから抽出した特徴が存在する位置を示す情報である特徴位置情報を取得するように構成されている。輪郭線映像データ生成部11における特徴位置情報の取得は、ユーザによるターゲットの選択が行われて複数のスライス面SSにおいてターゲットの輪郭線の抽出が行われ、同じID番号でラベリング処理が施されたひとかたまりのターゲットの輪郭線映像データが生成された後に、行われる。
【0080】
輪郭線映像データ生成部11は、ターゲットの輪郭線映像データの生成後にターゲットの特徴位置情報を取得する際には、まず、複数のスライス面SSにおいてそれぞれ輪郭線が抽出されて輪郭線映像データが生成されたターゲットの輪郭線のうち、輪郭線映像データに基づいて表示される輪郭線で囲まれる面積が最も大きい輪郭線が含まれるスライス面SSを特定する。そして、輪郭線映像データ生成部11は、表示される輪郭線で囲まれる面積が最大となる輪郭線におけるその輪郭線で囲んだ領域の中心又は重心をターゲットの特徴として抽出する。そして、輪郭線映像データ生成部11は、最大の面積を囲む輪郭線で囲んだ領域の中心位置の座標又は重心位置の座標を算出し、算出した座標を特徴位置情報として取得する。即ち、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲットの輪郭線映像データから、ターゲットの特徴として、最大の面積を囲む輪郭線で囲んだ領域の中心又は重心を抽出する。そして、輪郭線映像データ生成部11は、その特徴(即ち、最大の面積を囲む輪郭線で囲んだ領域の中心又は重心)が存在する位置を示す情報である特徴位置情報として、最大の面積を囲む輪郭線で囲んだ領域の中心位置の座標又は重心位置の座標を取得する。尚、最大の面積を囲む輪郭線で囲んだ領域の中心位置の座標又は重心位置の座標を算出する際には、自船Sに搭載されたGNSS受信機(図示せず)にて検出された自船Sの位置に基づいて、補正が行われてもよい。
【0081】
輪郭線映像データ生成部11は、輪郭線映像データの生成後にビーム形成部9によってビームフォーミング処理が行われた際には、上記のように取得した特徴位置情報に対応する位置を含むターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線映像データを新たに生成する。即ち、輪郭線映像データ生成部11は、ユーザによるターゲットの選択が行われてターゲットの輪郭線映像データが生成された後は、ビーム形成部9によってビームフォーミング処理が行われて3次元映像データ生成部10によるターゲットの3次元映像データの更新が行われるごとに、上記の特徴位置情報を取得する。そして、その特徴位置情報に対応する位置を含むターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線映像データを更新して生成する。このため、輪郭線映像データ生成部11は、ユーザによってターゲットが一旦選択された以降は、ターゲットのエコー信号の検出及びターゲットの3次元映像データの更新の度に、特徴位置情報を取得してその特徴位置情報に基づいて、ターゲットの輪郭線を抽出してターゲットの輪郭線映像データの更新を行う。尚、輪郭線映像データ生成部11は、特徴位置情報に基づいてターゲットの輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成する際には、ユーザの操作に基づいて取得されたターゲット位置情報に基づいてターゲットの輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成する際と同様の処理を行う。
【0082】
[ターゲット体積算出部の構成]
ターゲット体積算出部13は、例えば、輪郭線映像データ生成部11で抽出されたターゲットの輪郭線に基づいて、ターゲットの体積を算出するように構成されている。ターゲット体積算出部13にてターゲットの体積が算出される際には、まず、輪郭線映像データ生成部11によって、複数の受信空間RSのうちの1つである第1の受信空間RS1においてターゲットの輪郭線が第1の輪郭線として抽出されている。即ち、第1の受信空間RS1に対応するスライス面SS上におけるターゲットの輪郭線としての第1の輪郭線が抽出されている。更に、輪郭線映像データ生成部11によって、複数の受信空間RSのうちの1つであって第1の受信空間RS1に隣接する第2の受信空間RS2においてもターゲットの輪郭線が第2の輪郭線として抽出されている。即ち、第2の受信空間RS2に対応するスライス面SS上におけるターゲットの輪郭線としての第2の輪郭線が抽出されている。そして、ターゲット体積算出部13は、上記の第1の輪郭線で区切られた領域と、上記の第2の輪郭線で区切られた領域とに基づいて、ターゲットの体積を算出する。ここで、上記の第1の輪郭線が抽出される上記の第1の受信空間RS1、及び、上記の第2の輪郭線が抽出される上記の第2の受信空間RS2としては、ラベリング処理で同一のID番号が付されたターゲットのエコー信号が検出されている全ての受信空間RSが対象となる。
【0083】
ターゲット体積算出部13が、上記の第1の輪郭線で区切られた領域と、上記の第2の輪郭線で区切られた領域とに基づいて、ターゲットの体積を算出する方法としては、例えば、次のような方法を用いることができる。
【0084】
まず、ターゲット体積算出部13は、体積を算出する対象となるターゲットであってラベリング処理で同一のID番号が付されたターゲットのエコー信号が検出されている全ての受信空間RSを特定する。そして、上記の全ての受信空間RSについて、第1の受信空間RS1及び第2の受信空間RS2を設定し、更に、第1の輪郭線で区切られた領域と第2の輪郭線で区切られた領域とを設定する。上記の全ての受信空間RSについて上記の輪郭線で区切られた領域を設定すると、ターゲット体積算出部13は、ターゲットにおいて第1の輪郭線によって区切られた領域と、ターゲットにおいて第2の輪郭線によって区切られた領域との間のターゲットの体積を算出する。このとき、具体的には、ターゲット体積算出部13は、第1の輪郭線が抽出されているスライス面SSと第2の輪郭線が抽出されているスライス面SSとの間の領域の体積であって、第1の輪郭線で区切られた領域と第2の輪郭線で区切られた領域との間に存在する領域の体積(以下、この体積を「輪郭線間体積」と称する)を算出する。
【0085】
上記の輪郭線間体積の算出は、同一のID番号が付されたターゲットのエコー信号が検出されている全ての受信空間RSに対して行われる。そして、そのターゲットのエコー信号が検出されている全ての受信空間RSに対して行われた上記の輪郭線間体積が全て積算される。こうして、ラベリング処理で同一のID番号が付されたターゲットのエコー信号が検出されている全てのサンプリング点に対応する領域の体積が積算されることになる。対象のターゲットのエコー信号が検出されている全ての受信空間RSに対して算出された輪郭線間体積が全て積算されることで、対象のターゲットの体積が算出されることになる。
【0086】
尚、輪郭線間体積の算出においては、第1の輪郭線で区切られた領域と第2の輪郭線で区切られた領域との間に存在する領域であって、対象のターゲットのエコー信号が検出されている全てのサンプリング点にそれぞれ対応する複数のセル状の体積領域VCが、設定される。例えば、各体積領域VCは、その体積領域VCが対応するサンプリング点を一つの頂点とする領域として設定される。
【0087】
図12は、ターゲット体積算出部13の処理を説明するための図であって、上記の体積領域VCを模式的に示す図である。
図12では、第1の受信空間RS1としてスライス番号SN=nのスライス面SSを含む受信空間RSが設定され、第2の受信空間RS2としてスライス番号SN=n+1のスライス面SSを含む受信空間RSが設定された場合を例示している。そして、
図12では、スライス番号SN=nのスライス面SSにて第1の輪郭線が抽出され、スライス番号SN=n+1のスライス面SSにて第2の輪郭線が抽出された場合を例示している。尚、
図12は体積領域VCを模式的に示す図であり、第1の輪郭線及び第2の輪郭線の図示は
図12では省略されている。対象のターゲットのエコー信号が検出されている各サンプリング点に対応するセル状の各体積領域VCは、隣接するスライス面SSの間であって第1の輪郭線で区切られた領域と第2の輪郭線で区切られた領域との間に存在している。そして、各体積領域VCは、方位角θの方向、距離rの方向、及びティルト角φのそれぞれの方向において、各方向にて互いに隣接するサンプリング点間の間隔に対応する幅を持つ領域として、設定される。
図12では、体積領域VCの方位角θの方向における幅寸法がΔθであり、体積領域VCの距離rの方向における幅寸法がΔrであり、体積領域VCのティルト角φの方向における幅寸法がΔφである形態が例示されている。
【0088】
ターゲット体積算出部13は、各輪郭線間体積の算出においては、まず、対象のターゲットのエコー信号が検出されているサンプリング点のそれぞれに対応するセル状の体積領域VCの体積をそれぞれ算出する。この算出の際には、各体積領域VCが対応するサンプリング点の位置から、方位角θの方向においては幅寸法Δθに亘って、距離rの方向においては幅寸法Δrに亘って、ティルト角φの方向においては幅寸法Δφに亘って積分を行うことで、体積領域VCの体積を算出する。そして、ターゲット体積算出部13は、第1の輪郭線で区切られた領域と第2の輪郭線で区切られた領域との間に存在して対象のターゲットのエコー信号が検出されている全てのサンプリング点にそれぞれ対応する体積領域VCの体積を積算する。これにより、輪郭線間体積が算出される。そして、ターゲット体積算出部13は、対象のターゲットのエコー信号が検出されている全ての受信空間RSに対して算出された輪郭線間体積を全て積算することで、対象のターゲットの体積を算出する。
【0089】
ターゲット体積算出部13は、算出したターゲットの体積を指標する値を表示部5に表示させるための体積表示用データを生成し、この体積表示用データを表示部5に対して出力する。表示部5は、体積表示用データに基づいて、ターゲットの体積の値を表示する。
図13は、表示部5の表示画面に表示される映像の一例を模式的に示す図である。尚、
図13は、ターゲット体積算出部13によって算出されたターゲットT1の体積の値が、
図9に示す3次元映像IM1において重ねて表示された映像を、模式的に示している。
【0090】
表示部5は、入力された上記の体積表示用データに基づいて、例えば、1000m
3を単位体積としての1ユニットとして定義し、ターゲットT1について体積を表示する。
図13では、ターゲットT1の体積が325ユニットとして表示された場合が例示されている。尚、
図13に例示するように、表示部5は、例えば、体積を表示する対象のターゲットT1の近傍に、体積表示対象であることを示す「V-1」の表記を表示し、3次元映像IM1とは離れた位置において、「V-1 325」の表記を表示する。このように、ターゲット体積算出部13によって算出されたターゲットT1の体積が表示部5において表示されることで、ユーザは、ターゲットT1が示す魚群の体積の概算値を把握することができる。
【0091】
尚、上記においては、ターゲット体積算出部13によるターゲットの体積の算出方法について説明したが、ターゲットの体積については、上記の方法によらず、他の方法によっても、算出することができる。
【0092】
上記の方法においては、ターゲットの輪郭線を抽出し、その抽出した輪郭線で区切られた領域に基づいてターゲットの体積を算出する形態を例示したが、ターゲットの輪郭線に基づかずにターゲットの体積を算出することもできる。例えば、体積を算出する対象となるターゲットであってラベリング処理で同一のID番号が付されたターゲットが検出されている全ての受信空間RSにおいて、対象のターゲットが検出されている全てのサンプリング点にそれぞれ対応する体積領域VCの体積を全て積算することで、ターゲットの体積を算出することもできる。
【0093】
また、上記の方法においては、第1の輪郭線で区切られた領域と、第2の輪郭線で区切られた領域とに基づいて、輪郭線間体積を算出し、輪郭線間体積を全て積算することで、対象のターゲットの体積を算出する形態を例示したが、輪郭線間体積を算出せずに、ターゲットの体積を算出することもできる。例えば、輪郭線が抽出されている各スライス面SSごとに、各輪郭線で囲まれた領域の体積を算出し、対象のターゲットの輪郭線が抽出されている全てのスライス面SSに関して、輪郭線で囲まれた領域の体積を全て積算することで、ターゲットの体積を算出することもできる。この場合、各スライス面SSに対応する輪郭線で囲まれた領域が、各スライス面SSを中心として方位角θの方向の両側のそれぞれにΔθ/2分ずつの厚みをもつとして、各輪郭線で囲まれた領域の体積を算出する。そして、対象のターゲットの輪郭線が抽出されている全てのスライス面SSに関して、輪郭線で囲まれた領域の体積を全て積算することで、ターゲットの体積を算出することができる。
【0094】
[水中探知装置の動作]
図14は、水中探知装置1の動作を説明するためのフローチャートであり、水中探知装置1の動作の一例を例示したフローチャートである。尚、
図14は、送受波器2から水中に送信波が送信されて、その送信波の反射波が送受波器2で受信され、更に、水中探知装置1による前述の処理が行われ、表示部5にターゲットの3次元映像とターゲットの輪郭線の映像とが表示されるまでの動作を示している。尚、表示部5にターゲットの3次元映像等が表示された後、送受波器2から水中に送信波が送信されると、再び、
図14のフローチャートに示す動作が行われる。
【0095】
水中探知装置1の動作においては、まず、送受波器2から水中の送信空間TSに送信波が送信される。水中の送信空間TSに送信された送信波は、水中のターゲットで反射し、送受波器2にて受信される。送受波器2の複数の受信素子は、水中のターゲットでの送信波の反射を含む反射波に基づいて受信信号を生成し、送受信部3へ出力する。送受信部3では、受信回路部7にて、受信した受信信号を増幅して不要な周波数成分を除去するとともにデジタル信号に変換して信号処理部4へ出力する。
【0096】
信号処理部4は、送受信部3から受信信号が入力されると、ビーム形成部9において、受信信号に基づいて複数の受信空間RSのそれぞれについてビームフォーミング処理及びフィルタ処理を行い、各受信空間RSにおけるターゲットのエコー信号を検出する。ビーム形成部9での処理が行われると、次いで、3次元映像データ生成部10において、各受信空間RSについて行われたビームフォーミング処理の結果に基づいて、ターゲットを表示部5に表示させるためのターゲットの3次元映像データが生成される(ステップS101)。
【0097】
ターゲットの3次元映像データの生成が行われると、次いで、ターゲット位置情報が取得されているか否かが判定される(ステップS102)。即ち、ユーザによる操作によっていずれかのターゲットが選択され、位置情報取得部12がターゲット位置情報を取得しているか否かが、輪郭線映像データ生成部11によって判定される。
【0098】
尚、水中探知装置1が起動されて動作を開始し、最初に、
図14に示す水中探知装置1の動作が行われる際には、表示部5には、ターゲットの3次元映像は表示されていない。よって、この場合は、ユーザによる操作によるターゲットの選択は行われず、位置情報取得部12でのターゲット位置情報の取得も行われていない。このため、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲット位置情報が取得されていないと判定し(ステップS102、No)、更に、特徴位置情報が取得されている否かを判定する(ステップS103)。起動後最初に水中探知装置1の
図14に示す動作が行われる際には、輪郭線映像データ生成部11での輪郭線映像データの生成処理もまだ一度も行われておらず、特徴位置情報も取得されていない。このため、輪郭線映像データ生成部11は、特徴位置情報が取得されていないと判定する(ステップS103、No)。そして、3次元映像データ生成部9にて生成された3次元映像データが、表示部5に出力される(ステップS108)。表示部5では、入力された3次元映像データに基づいて、
図4或いは
図5に例示するように、ターゲットの3次元映像を表示する。これにより、起動後最初に行われる水中探知装置1の
図14に示す動作が一旦終了する。
【0099】
起動後2回目以降に行われる水中探知装置1の
図14に示す動作においても、ステップS102において、ターゲット位置情報が取得されているか否かが判定される。ターゲット位置情報が取得されていないと判定された場合は(ステップS102、No)、ステップS103の判定が行われる。一方、ターゲット位置情報が取得されていると判定された場合は(ステップS102、Yes)、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲットの輪郭線を抽出し、その輪郭線を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成する処理を行う(ステップS104)。尚、起動後2回目以降に行われる水中探知装置1の
図14に示す動作においては、ステップS102では、例えば、
図14に示す動作が前回行われた後にターゲット位置情報が取得されているか否かが判定される。
【0100】
ターゲット位置情報が取得されていないと判定され(ステップS102、No)、特徴位置情報も取得されていないと判定された場合は(ステップS103、No)、3次元映像データ生成部9にて生成された3次元映像データが、表示部5に出力される(ステップS108)。一方、ターゲット位置情報が取得されていないと判定され(ステップS102、No)、特徴位置情報は取得されていると判定された場合は(ステップS103、Yes)、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲットの輪郭線を抽出し、その輪郭線を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成する処理を行う(ステップS104)。尚、前述の通り、輪郭線映像データ生成部11は、ターゲット位置情報に基づいてターゲットの輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成して以降は、
図14に示す動作が行われる毎に、輪郭線映像データを生成するとともに特徴位置情報を取得する。よって、ユーザによるターゲットの選択が行われて以降は、ステップS103では、特徴位置情報が取得されていると判定される(ステップS103、Yes)。
【0101】
ステップS104では、少なくとも1つの受信空間RSでエコー信号が検出されたターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線を表示部5に表示させるための輪郭線映像データを生成する処理が行われる。即ち、ステップS104においては、前述の通り、輪郭線映像データ生成部11が、ターゲット位置情報或いは特徴位置情報に対応する位置を含むターゲットのエコー信号が検出されている複数の受信空間RSのそれぞれにおいて、輪郭線映像データを生成する処理を行う。このとき、輪郭線映像データ生成部11は、複数の受信空間RSのそれぞれにおいて、前述の2値化処理及び膨張収縮処理(ステップS105)、前述のラベリング処理(ステップS106)、前述の輪郭線抽出処理(ステップS107)を行う。これにより、輪郭線映像データ生成部11は、複数の受信空間RSにおいて、同じID番号でラベリング処理が施されたひとかたまりのターゲットの輪郭線映像データを生成する。
【0102】
ステップS104において、ひとかたまりのターゲットの輪郭線映像データが生成されると、その輪郭線映像データが、表示部5に出力される(ステップS108)。また、ステップS108では、3次元映像データ生成部9にて生成された3次元映像データも、表示部5に出力される。表示部5は、
図9或いは
図11に例示するように、ターゲットの3次元映像とともに、ターゲットの輪郭線の映像も表示する。これにより、水中探知装置1の
図14に示す動作が一旦終了する。水中探知装置1の
図14に示す動作が一旦終了すると、送受波器2から水中の送信空間TSに送信波が送信され、再び、
図14に示す動作が開始される。
【0103】
[効果]
本実施形態によると、3次元映像データ生成部10にて生成されたターゲットの3次元映像データに基づいて、ターゲットの3次元映像が表示部5に表示される。更に、本実施形態によると、輪郭線映像データ生成部11にて生成された輪郭線映像データに基づいて、ターゲットの輪郭線についても、ターゲットの3次元映像とともにターゲットに重ねて、表示部5に表示することができる。このため、ユーザは、表示部5における2次元の画面においても、3次元映像で表示された魚群等のターゲットを個別に区別し易く、魚群等のターゲットを容易に見分けることができる。
【0104】
従って、本実施形態によると、ユーザが、3次元映像で表示された魚群等のターゲットを個別に区別し易く、魚群等のターゲットを容易に見分けることができる、水中探知装置及び水中探知方法を提供することができる。
【0105】
また、本実施形態によると、輪郭線映像データ生成部11は、輪郭線映像データの表示色の情報をターゲットの3次元映像データの表示色の情報と異なる表示色の情報に設定する。このため、ユーザは、ターゲットの3次元映像とその輪郭線の映像とを容易に区別でき、魚群等のターゲットを更に容易に見分けることができる。
【0106】
また、本実施形態によると、第1の受信空間RS1においてターゲットの輪郭線を抽出し、且つ第1の受信空間RS1に隣接する第2の受信空間RS2においてもターゲットのエコー信号が検出されている場合に、第2の受信空間RS2においてもターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線映像データを生成する。このため、本実施形態によると、隣接する複数の受信空間RSに亘って存在するターゲットについても、複数の受信空間RSにおいて同じターゲットに対応させて輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成することができる。
【0107】
また、本実施形態によると、輪郭線が抽出された第1の受信空間RS1に隣接する第2の受信空間RS2においてターゲットのエコー信号が検出されない状態となるまで、各受信空間RSにおいて輪郭線を抽出する処理が繰り返し行われる。このため、本実施形態によると、連続して隣接しながら並ぶ複数の受信空間RSに亘って存在するターゲットについても、複数の受信空間RSにおいて同じターゲットに対応させて輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成することができる。
【0108】
また、本実施形態によると、任意の1つの受信空間RSとそれとは異なる他の受信空間RSとは、水平面内に形成されるそれぞれの方位角θが異なっている。このため、異なる方位角θの方向に広がる複数の受信空間RSにおいて、ターゲットの輪郭線を抽出することができる。
【0109】
また、本実施形態によると、ターゲット体積算出部13により、第1の受信空間RS1における第1の輪郭線で区切られた領域と、第2の受信空間RS2における第2の輪郭線で区切られた領域とに基づいて、ターゲットの体積を算出することができる。このため、輪郭線映像データ生成部にて抽出された輪郭線に基づいて、ターゲットの体積を容易に算出することができる。
【0110】
また、本実施形態によると、ユーザによってターゲットが選択される操作に基づいてターゲット位置情報が取得され、輪郭線映像データ生成部は、ターゲット位置情報に対応する位置を含むターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線映像データを生成する。このため、本実施形態によると、ユーザは、輪郭線を表示させたいターゲットを選択する操作を行うことで、容易に、所望するターゲットについて輪郭線を表示させることができる。
【0111】
また、本実施形態によると、輪郭線映像データ生成部11は、第1の視点(例えば、斜め上方視点)で表示されたターゲットがユーザによって選択されることでターゲット位置情報が取得された際に、ターゲットの輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成する。そして、表示部5は、輪郭線映像データに基づいて、ターゲットの輪郭線を、上記の第1の視点で表示されたターゲットと、第2の視点(例えば、鉛直視点、水平視点)で表示されたターゲットとに対して、重ねて表示する。このため、ユーザは、1つの視点で表示されたターゲットを選択する操作を行うだけで、複数の視点で表示された同じ対象のターゲットについて、同時に輪郭線が表示された状態で、ターゲットを確認することができる。
【0112】
また、本実施形態によると、輪郭線映像データ生成部11は、一旦、ユーザによってターゲットが選択されてターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線映像データを生成して以降は、ターゲットの特徴位置情報を取得する。そして、輪郭線映像データ生成部11は、輪郭線映像データの生成後にビーム形成部9によってビームフォーミング処理が行われた際には、特徴位置情報に対応する位置を含むターゲットの輪郭線を抽出し、輪郭線映像データを新たに生成する。このため、本実施形態によると、ユーザが一旦ターゲットを選択する操作を行った後は、ユーザが追加の操作を行わなくも、ターゲットの3次元映像の更新ごとに、選択したターゲットの輪郭線の表示が自動で行われる。
【0113】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0114】
(1)前述の実施形態では、送信トランスデューサとして機能するとともに受信トランスデューサとしても機能する送受波器を備えた水中探知装置の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、送信トランスデューサと受信トランスデューサとを別体でそれぞれ備えた水中探知装置の形態が実施されてもよい。
【0115】
(2)前述の実施形態では、自船を中心とする水中の全方位へ向けて一斉に送信ビームを形成するスキャニングソナーを備えた水中探知装置の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、送信ビームと受信ビームとを回転させるサーチライトソナー(PPIソナー)を備えた水中探知装置の形態が実施されてもよい。
【0116】
(3)前述の実施形態では、複数の受信空間において、任意の1つの受信空間と、その1つの受信空間とは異なる他の受信空間とが、鉛直面に対する上記の1つの受信空間及び上記の他の受信空間のそれぞれの方位角が異なる水中探知装置の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。
【0117】
例えば、複数の受信空間において、任意の1つの受信空間とその1つの受信空間とは異なる他の受信空間とが、水平面に対する上記の1つの受信空間及び上記の他の受信空間のそれぞれの傾斜角(即ち、ティルト角)が異なる水中探知装置の形態が実施されてもよい。この場合、上記の1つの受信空間と上記の他の受信空間とは、自船の位置からそれぞれ異なる傾斜角で傘状に広がる受信空間として形成される。
【0118】
また、他の例として、複数の受信空間において、任意の1つの受信空間とその1つの受信空間とは異なる他の受信空間とが、受信トランスデューサからの上記の1つの受信空間及び上記の他の受信空間のそれぞれの距離が異なる水中探知装置の形態が実施されてもよい。この場合、上記の1つの受信空間と上記の他の受信空間とは、自船の位置からそれぞれ異なる距離において半球殻状に広がる受信空間として形成される。
【0119】
(4)前述の実施形態では、輪郭線映像データ生成部にて抽出された輪郭線に基づいて、ターゲットの体積を算出するターゲット体積算出部を備える水中探知装置の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。ターゲット体積算出部が備えられていない水中探知装置の形態が実施されてもよい。
【0120】
(5)前述の実施形態では、ユーザによって選択された魚群のターゲットの体積を算出する水中探知装置の形態を例にとって説明したが、魚群のターゲットに関して体積以外の情報も算出する水中探知装置の形態が実施されてもよい。この場合、例えば、ユーザによって選択された魚群のターゲットに含まれるエコー信号の信号強度レベルの平均値である平均強度が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットにおいて最も信号強度レベルが強いエコー信号が存在する受信空間の方位角が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットにおける重心の位置のティルト角が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットが存在するティルト角の範囲が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットにおける重心の位置の自船からの距離が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットが存在する自船からの距離の範囲が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットにおける重心の位置の水面からの深度が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットが存在する水面からの深度の範囲が算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットが存在する領域の表面積が簡易的に算出されてもよい。また、ユーザによって選択された魚群のターゲットについて、そのターゲットの体積と、そのターゲットが存在する領域の表面積との算出結果に基づいて、更に、魚群のターゲットを球形に近似した場合の近似度である球形度が算出されてもよい。
【0121】
(6)前述の実施形態では、位置情報取得部が備えられ、ターゲット体積算出部が、ユーザによって選択されたターゲットの体積を算出する水中探知装置の形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、
図15に示す変形例のように、エコー信号を検出した全てのターゲットに対して体積を算出し、算出したターゲットの体積の大きさに基づいて、輪郭線を表示させる対象を選択する形態の水中探知装置が実施されてもよい。以下、
図15を参照しつつ、変形例に係る水中探知装置について説明する。
【0122】
図15は、変形例に係る水中探知装置の信号処理部4aの構成を示すブロック図である。
図15に示す変形例に係る水中探知装置は、信号処理部4a以外の構成は、前述の実施形態の水中探知装置1と同様に構成されている。尚、以下の説明では、変形例に係る水中探知装置について、信号処理部4aにおける前述の実施形態の水中探知装置1の信号処理部4の構成と異なる点についてのみ説明する。また、
図15に示す変形例に係る水中探知装置における前述の実施形態と同様の構成については、図面において同一の符号を付すことで或いは説明において同一の符号を引用することで、重複する説明を省略する。
【0123】
信号処理部4aは、ビーム形成部9、3次元映像データ生成部10、輪郭線映像データ生成部11a、ターゲット体積算出部13a、表示対象選択部14を備えて構成されている。
【0124】
前述の実施形態の輪郭線映像データ生成部11は、ユーザによって選択されたターゲットの輪郭線映像データを生成するように構成されていた。これに対して、本変形例に係る信号処理部4aの輪郭線映像データ生成部11aは、前述の実施形態の輪郭線映像データ生成部11とは異なり、全てのターゲットの輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成するように構成さている。即ち、輪郭線映像データ生成部11aは、ビーム形成部9により複数の受信空間RSでエコー信号が検出された全てのターゲットの輪郭線を抽出して輪郭線映像データを生成するように構成されている。
【0125】
また、本変形例においては、ターゲット体積算出部13aは、複数の受信空間RSで検出されたターゲットのエコー信号に基づいて、全てのターゲットの体積を算出するように構成されている。尚、前述の実施形態のターゲット体積算出部13は、ユーザによって選択されて輪郭線映像データ生成部11によって輪郭線が抽出されたターゲットの体積を算出するように構成されていた。これに対して、本変形例に係る信号処理部4aのターゲット体積算出部13aは、輪郭線映像データ生成部11aによって輪郭線が抽出された全てのターゲットの体積を算出するように構成されている。即ち、ターゲット体積算出部13aは、複数の受信空間RSにおいてエコー信号が検出された全てのターゲットに対してそれらの体積を算出するように構成されている。
【0126】
尚、ターゲット体積算出部13aが個別のターゲットの体積を算出する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、ターゲット体積算出部13aは、前述の実施形態のターゲット体積算出部13がターゲットの体積を算出する方法と同じ方法によってターゲットの体積を算出してもよい。或いは、ターゲット体積算出部13aは、前述の実施形態において例示した他の方法、即ち、ターゲット体積算出部13によるターゲットの体積の算出方法によらない方法として前述の実施形態において例示した他の方法によって、ターゲットの体積を算出してもよい。例えば、ターゲット体積算出部13aは、全てのターゲットについて、ラベリング処理で同一のID番号が付されたターゲットごとに、体積をそれぞれ算出してもよい。この場合、同一のID番号が付された各ターゲットの体積については、そのターゲットが検出されている全てのサンプリング点にそれぞれ対応する体積領域VCの体積を全て積算することで、算出される。また、ターゲット体積算出部13aは、各ターゲットについて、輪郭線が抽出されている各スライス面SSごとに、各輪郭線で囲まれた領域の体積を算出し、各ターゲットの輪郭線が抽出されている全てのスライス面SSに関して、輪郭線で囲まれた領域の体積を全て積算することで、各ターゲットの体積を算出してもよい。
【0127】
表示対象選択部14は、輪郭線映像データ生成部11aによって生成された全ての輪郭線映像データのうちの一部を表示部5に表示させる表示対象として選択するように構成されている。そして、表示対象選択部14は、ターゲット体積算出部13aで算出されたターゲットの体積の大きさに基づいて、表示対象としての輪郭線映像データを選択するように構成されている。より具体的には、例えば、表示対象選択部14は、ビーム形成部9にてエコー信号が検出された全てのターゲットについてターゲット体積算出部13aで算出された体積を全て比較し、体積が最も大きいものから体積の大きさに応じて順番に並べて順位付けをするリストを作成する。そして、表示対象選択部14は、例えば、ユーザによる操作入力等によって予め設定された表示ターゲット数に基づいて、表示対象としての輪郭線映像データを選択する。即ち、表示対象選択部14は、上記のリストにおいて、体積が最も大きいターゲットから上記の表示ターゲット数に対応する順位のターゲットまでのターゲットの輪郭線が、表示部5に表示されるように、表示対象としての輪郭線映像データを選択する。
【0128】
3次元映像データ生成部10によって生成された3次元映像データ、輪郭線映像データ生成部11aによって生成された輪郭線映像データ、及び、表示対象選択部14によって選択された表示対象としての輪郭線映像データの選択結果は、表示部5に出力される。表示部5は、信号処理部4aからの上記の入力に基づいて、エコー信号が検出された全てのターゲットの3次元映像を表示するとともに、表示されたターゲットのうちの一部であって表示対象選択部14によって選択されたターゲットの輪郭線を対応するターゲットに重ねて表示する。これにより、表示部5においては、表示されたターゲットのうち、体積が最も大きいものから所定の表示ターゲット数に応じた順位のものまでのターゲットのみが、輪郭線が表示される。
【0129】
本変形例によると、ユーザによってターゲットを選択する操作が行われなくても、ターゲットの体積の大きさに基づいて、輪郭線が表示されるターゲットが自動的に選択され、ターゲットの輪郭線の表示が行われる。このため、ユーザは、体積の大きい魚群のターゲットの輪郭線を容易に把握することができ、体積の大きい魚群のターゲットを更に容易に見分けることができる。また、本変形例によると、体積の小さい魚群の輪郭線は表示されないため、ユーザは、資源管理等の観点から小さな魚群を捕獲しないようにすること等の理由に基づいて魚群を捕獲するか否かを判断する際に、容易に的確な判断をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、水中のターゲットを探知するための水中探知装置として広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0131】
1 水中探知システム
2 送受波器(送信トランスデューサ、受信トランスデューサ)
4 信号処理部
5 表示部
9 ビーム形成部
10 3次元映像データ生成部
11 輪郭線映像データ生成部