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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】温風暖房装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/345 20220101AFI20220404BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20220404BHJP
【FI】
F24H3/04 305B
F24H3/04 305D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018149033
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020024070
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若月 慶介
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勲
(72)【発明者】
【氏名】松木 航平
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-125469(JP,A)
【文献】実開平06-002057(JP,U)
【文献】特開平06-117697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/10
F24H 15/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を発生する熱発生手段と、
温風を吹き出す吹出口と、
前記吹出口に設けられた回動可能な複数の羽根と、
前記羽根を回動させるモータと、
運転モードを設定するモード設定手段と、
前記モード設定手段からの指示に基づき、前記モータを駆動して前記羽根を設定された角度範囲内で上下に回動させる可動モードと、前記羽根を設定された角度に固定する固定モードと、を実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記可動モードと前記固定モードのいずれにおいても前記モータを駆動して前記羽根を全開角度まで開く全開動作を実行し、前記全開動作が確認できない時には運転を停止する温風暖房装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記可動モードにおいて前記羽根の回動周期よりも長い間隔で前記全開動作を実行する請求項1記載の温風暖房装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記固定モードにおいて前記全開動作を所定間隔で実行し、
前記固定モードにおける全開動作を実行する間隔は、前記可動モードにおいて前記全開動作を実行する間隔より長い請求項2記載の温風暖房装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記可動モードにおいて前記羽根が設定された最大角度および最小角度に到達すると、前記羽根をその角度で所定時間保持する停止保持動作を実行し、前記全開動作を前記停止保持動作の終了後に実行する請求項2または3記載の温風暖房装置。
【請求項5】
前記羽根の角度を検知する角度検知手段を備え、
前記全開動作は、前記羽根が所定角度まで上方に回動したことを前記角度検知手段が検知した後、さらに前記羽根を機械的に回動可能な最大角度まで開く動作である請求項1から4のいずれかに記載の温風暖房装置。
【請求項6】
前記吹出口に、水平方向に延びる少なくとも一つの回動しない固定羽根を備える請求項1から5のいずれかに記載の温風暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温風を発生させて室内を暖房する温風暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の暖房装置としては、例えば、本体内にバーナ等の熱発生手段を備え、バーナで発生した燃焼ガスと本体に取り込んだ室内の空気とを混合して温風とし、この温風を本体前面に設けた吹出口から吹き出して室内を暖房するものが知られている。そして、この吹出口には、上下に回動可能な羽根を設けて、吹出される温風の風量に応じて羽根を上下に回動(スイング)させることにより、室内の温度分布を均一にして、暖房効果を高めるようにしたものがある。
【0003】
このように、可動する羽根を備える暖房装置においては、例えば本体の前面に障害物があって羽根の動きが制限されたり、羽根を駆動するモータの故障などにより、羽根が正しく動作しないような場合には、温風の吹き出しが阻害されて本体や床面が加熱してしまうという問題が発生する。そこで、羽根が正しく動作しているかをチェックして、その動作が確認できない時には運転を停止することで、機器の安全性を確保するようになっている。
【0004】
そして、羽根の動作チェック方法としては、一旦羽根を基準点、例えば全開の状態まで回動させた後、元の位置まで復帰させることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2890996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の暖房装置には、複数の運転モードを切替可能に備えることが可能である。そして、運転モードによって可動羽根の動作方法も異なる場合があり、上述のチェックだけでは、羽根が正しく動作しているかを確認することができないおそれがある。
【0007】
本発明は、可動羽根の動作の異なる運転モードを切替可能とした場合に、いずれの運転モードを選択したときにおいても、安全に使用することのできる温風暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱を発生する熱発生手段と、
温風を吹き出す吹出口と、
前記吹出口に設けられた回動可能な複数の羽根と、
前記羽根を回動させるモータと、
運転モードを設定するモード設定手段と、
前記モード設定手段からの指示に基づき、前記モータを駆動して前記羽根を設定された角度範囲内で上下に回動させる可動モードと、前記羽根を設定された角度に固定する固定モードと、を実行可能な制御部と、を備え、
前記制御部は、前記可動モードと前記固定モードのいずれにおいても前記モータを駆動して前記羽根を全開角度まで開く全開動作を実行し、前記全開動作が確認できない時には運転を停止する温風暖房装置である。

【発明の効果】
【0009】
上述のように構成することにより、羽根を上下に回動させない運転モードにおいても、羽根の位置のズレを修正することができるため、より安全性の高い温風暖房装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における温風暖房装置の内部構成図である。
図2】本実施形態における温風暖房装置の断面構成図である。
図3】吹出口の拡大断面図である。(A)は羽根を閉じた状態を示し、(B)は羽根を開いた状態を示す。
図4】本実施形態における温風暖房装置の、羽根を駆動する機構の斜視図である。
図5】同機構の正面図である。
図6】本実施形態における温風暖房装置の構成を示すブロック図である。
図7】本実施形態における全開動作の制御の一例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態の可動モードにおける可動羽根の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好適と考える本発明の実施形態を、本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0012】
本発明は、温風を吹き出す吹出口に、モータの駆動により回動する複数の羽根を備え、この羽根を設定された角度範囲内で上下に回動させる可動モードと、羽根を設定された角度に固定する固定モードとを切替可能とした温風暖房装置であって、可動モードと固定モードのいずれにおいても羽根を全開角度まで開く全開動作を実行する。これにより、羽根が正しく動作しているかをチェックするだけでなく、羽根の角度の誤差を修正したり、手などで操作されてしまった羽根を正しい位置に戻したりすることができるため、暖房装置をより安全に使用することができる。
【0013】
また、可動モードでは、羽根が上下に往復するのに要する時間を回動周期とした場合に、回動周期よりも長い間隔で全開動作を実行することで、羽根が全開位置に到達する回数を抑える。これにより、温風の吹き上がりが抑制され、室内の温度分布を均一にして暖房効果を向上させることができる。
【0014】
また、固定モードにおける全開動作の実行間隔を、可動モードにおける全開動作の実行間隔よりも長く設定することで、固定モードであるにも係わらず、羽根が動作して煩わしく感じられてしまうことを回避し、使用感を向上させることができる。
【0015】
また、可動モードでは、羽根が動作範囲内での最大角度または最小角度に到達したときに、羽根をその角度で所定時間停止し保持する停止保持動作を実行することができ、停止保持動作を実行する場合、全開動作は停止保持動作が終了した後で実行する。これにより羽根の動きがせわしなく感じられてしまうことを回避しつつ、全開動作を実行することができる。
【0016】
また、全開動作では、羽根が所定角度に到達したことを角度検知手段が検知した後、さらに駆動用モータを回転させて可動羽根を機械的に回動可能な最大角度である上限角度まで開く動作を行う。これにより、機械的な上限角度をモータ駆動の基点とすることができるため、角度検知手段の検知角度に誤差があったとしても、誤差の影響を受けることなく可動羽根の角度を修正することができる。
【0017】
また、水平方向に延びる回動しない固定羽根を備えることができる。固定羽根に沿って、前方に向けて温風が吹き出されるため、意図する方向へ効率よく温風を排出することができる。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面により説明する。
【0019】
図1は、温風暖房装置の内部構成図であり、図2は、温風暖房装置の断面構成図である。なお、本実施形態では、温風暖房装置の一例として燃料を燃焼させて暖房を行うファンヒーターを例に説明する。
【0020】
本体1内には、灯油を加熱して気化ガスとする気化器2と、気化器2で発生した気化ガスを燃焼して熱を発生させる熱発生手段としてのバーナ3と、バーナ3の上方に設けられた燃焼室4と、図示しない給油タンクから供給された灯油を貯留する油受皿5と、油受皿5上に載置され気化器2へ灯油を汲み上げる電磁ポンプ6を備えている。
【0021】
そして本体1の背面には、室内の空気を本体1内部に取り入れる送風機7が取り付けられる。また、本体1の正面には、暖房装置の動作を指示するための多数のスイッチが設けられた操作部15と、温風を吹出す吹出口8が取り付けられており、この吹出口8は複数の羽根9を備えている。
【0022】
燃焼室4は、その上部に、バーナ3で発生した燃焼排ガスが排出される開口4aを有し、さらに燃焼室4を覆うように遮熱板10が設けられている。燃焼室4と遮熱板10の間は、燃焼排ガスと送風機7からの空気とを混合して温風とする温風通路11として構成されている。
【0023】
このように構成される温風暖房装置では、バーナ3の燃焼により発生した燃焼排ガスと、送風機7によって本体1内に取り込まれた空気とを温風通路11を通過する間に混合させて温風とし、吹出口8の羽根9の間から室内に排出することで室内を暖房するようになっている。
【0024】
図3は、吹出口の拡大断面図であり、図3(A)は可動羽根を閉じた状態を示し、図3(B)は可動羽根を所定角度開いた状態を示す断面図である。本実施形態の温風暖房装置においては、吹出口8は上下に回動可能な3枚の可動羽根12と、この可動羽根12の間に配置されて水平方向に延びる回動しない2枚の固定羽根13を備えている。運転が停止しているときは、図3(A)のように可動羽根12は閉じられており、運転を開始(バーナ3での燃焼を開始)すると、後述する羽根駆動モータ23が回転して可動羽根12を駆動して、図3(B)のように可動羽根12が開いた状態となる。なお、以降の説明において、可動羽根12の角度とは、図中のθで示す角度を指すものとする。
【0025】
可動羽根12はバーナ3での燃焼量に応じて上下方向に回動させることができ、温風の吹き出す角度を調節する。一方、固定羽根13は、温風通路11を通過した温風を前方に誘導する役割を有する。可動羽根12の縦方向の長さ(図3(A)における上下方向の長さ)が長い場合には、羽根と羽根の間隔が広くなるため、温風通路11を通過した温風が羽根の間から下方に向かって流れやすくなってしまうが、固定羽根13を設けることで、本体1の前方に向けて温風を吹き出すことができるため、意図する方向へ効率よく温風を排出することができる。とくに、本実施形態のように、温風通路11が下方に向かっていて、温風が吹き下ろされる構造である場合には、固定羽根13がより効果を発揮する。なお、固定羽根13を設けない構造であってもかまわない。
【0026】
図4は、可動羽根を駆動する機構の斜視図であり、図5は、同機構の正面図である。可動羽根12を備えた吹出口8は、支持金具20によって本体1に取り付けられるようになっている。
【0027】
支持金具20には、回動軸21を介して可動羽根12と連結された連携カム22と、可動羽根12を駆動するための羽根駆動モータ23と、羽根駆動モータ23と連結された駆動用カム24と、可動羽根12の角度を検知する角度検知手段25が取り付けられており、さらに、回動軸21を中心とした連携カム22の回転動作を案内するガイド孔26が設けられている。
【0028】
連携カム22は、二つのピン(第1ピン221、第2ピン222)を備えている。第1ピン221は前述の回動軸21と連結し、第2ピン222は、支持金具20に対して摺動自在に設けられる駆動板27と連結している。そしてこの駆動板27には、駆動用カム24から延びる駆動軸241が係止されるとともに、駆動軸241の先端に取り付けられたバネ部材28の一端が取り付けられている。また、駆動板27の下部には後述する角度検知手段25に対応する遮蔽片29が設けられている。
【0029】
羽根駆動モータ23は正逆回転可能なステッピングモータで構成され、後述する制御部30からの指示に基づいて回転が制御される。そして、羽根駆動モータ23の回転によって駆動用カム24が回動すると駆動板27が上下に移動し、この駆動板27の上下動が連携カム22を介して可動羽根12を上下に回動させる。つまり、駆動板27が下方に移動すると、連携カム22が矢印Aの方向に回転して可動羽根12は上向きに回動する。反対に、駆動板27が上方に移動すると、連携カム22が矢印Bの方向に回転して可動羽根12は下向きに回動することとなる。可動羽根12が上向きに回動して所定角度に到達したことは、角度検知手段25により検知される。
【0030】
角度検知手段25は、例えば発光部251と、発光部251に対向して配置された受光部252を備えるフォトインタラプタで構成される。羽根駆動モータ23を回転させて可動羽根12を上向きに回動させると、駆動板27が下方に移動する。そして、可動羽根12の角度が所定角度になると遮蔽片29が発光部251と受光部252の間に入り込んで発光部251からの光を遮断する。つまり、受光部252が光を検知できなくなると、可動羽根12が所定角度に到達したと判定される。なお、角度検知手段25の構成はこれに限らず、他の検知方式を用いてもよい。
【0031】
図6は、温風暖房装置の構成を示すブロック図である。マイクロコンピュータからなる制御部30は、室内の温度を検知する温度検知手段16、操作部15に設けられた各種設定手段(例えば、温度を設定する室温設定手段17、運転モードを設定する運転モード設定手段18)、可動羽根12の角度を検知する角度検知手段25、からの入力を受ける。そして、気化器2を加熱するヒータ14、電磁ポンプ6、送風機7、羽根駆動モータ23への制御信号を出力し、暖房運転を制御する。
【0032】
また、制御部30は、バーナ3での燃焼量を演算して決定する燃焼量制御手段31、送風機7の回転を制御する送風機制御手段32、羽根駆動モータ23の回転を制御する羽根駆動モータ制御手段33、とを含んで構成される。なお、図の構成は本実施形態にかかる温風暖房装置の一実施例であって、図示される以外のその他の構成要素を含んでいても構わない。
【0033】
上述の構成からなる暖房装置において、運転の開始を指示すると、まずヒータ14への通電を開始して気化器2が加熱される。気化器2が液体燃料を気化することができる温度に到達すると、電磁ポンプ6を駆動して気化器2に液体燃料を供給し、気化器2に供給された液体燃料は加熱気化されて気化ガスとなる。気化ガスは気化器2の先端からバーナ3に供給され、バーナ3で燃焼が行われる。燃焼により発生した燃焼排ガスは、送風機7からの空気と混合されて温風となり、吹出口8から排出される。
【0034】
また、本発明の温風暖房装置は、複数の運転モードを切替可能に備えており、運転モードは操作部15の運転モード設定手段18を操作することで選択される。そして、この運転モードには、可動羽根12を予め設定された角度範囲内で上下方向に回動させる可動モードと、可動羽根12を予め設定された角度に固定する固定モードを有しており、いずれのモードにおいても可動羽根12の角度は燃焼量制御手段31によって決定された燃焼量に応じて設定される。
【0035】
例えば、燃焼量が大火力のときの可動羽根12は、可動モードでは70~80度の間で上下動を繰り返し、固定モードでは75度に固定される。また、燃焼量が小火力のときの可動羽根12は、可動モードでは60~75度の間で上下動を繰り返し、固定モードでは65度に固定される。中間火力のときは、大火力と小火力の間の角度に設定される。なお、上述の角度は一例であって、適宜設定することができる。
【0036】
可動羽根12は、運転モードによらず、燃焼量が大きいときのほうが、燃焼量が小さいときよりも角度が大きくなるように設定される。つまり、燃焼量が大きい場合には、温風の吹出し角度を水平に近くして温風を遠くまで運ぶとともに、開口面積を大きくすることで本体1内に熱がこもってしまうことを有効に防止することができる。また、燃焼量が小さい場合に吹出開口を下に向けることで、足元を温めることができ、これにより暖房効率をあげることができる。
【0037】
また、暖房運転中には、可動羽根12を全開角度まで開く全開動作を実行する。この全開動作は所定時間ごとに実行することができる。なお、ここでいう全開角度とは、可動羽根12の通常動作時の最大角度と同じか、若しくはそれ以上の角度のことであって、本実施形態では、通常動作時の可動羽根12の最大角度は80度(可動モード時における最大角度)に設定されているので、全開角度は80度以上の角度であればよい。そしてこの全開動作は、可動モード、固定モードのいずれの場合においても実行される。
【0038】
本体1の前面に障害物があって可動羽根12の動きが制限されたり、羽根駆動モータ23の故障などにより、可動羽根12が設定された角度で動作しない場合、温風の吹出しが阻害されてしまい、本体1内の温度が異常上昇するという問題が発生する。そこで、運転中には全開動作を実行し、可動羽根12が正しく動作しているかをチェックして、その動作が確認できない時には運転を停止する。これにより、暖房装置を安全に使用することができる。
【0039】
また、可動モードでは可動羽根12を上下に回動させる動作を繰り返すことにより、実際の可動羽根12の角度と、羽根駆動モータ制御手段33から出力する制御信号との間に誤差が発生する。その他にも、使用者が手などで可動羽根12の角度を変更してしまい、実際の角度との間にズレが発生することも考えられる。したがって、可動羽根12の動作に関わらず、暖房運転中に全開動作を実行することで、全開位置を羽根駆動モータ23の起点とし、可動羽根12の角度の誤差を修正したり、手などで操作されてしまった可動羽根12を正しい位置に戻したりすることができる。
【0040】
この全開動作において、可動羽根12が所定の第1角度に到達したことは、角度検知手段25によって検知される。本実施形態の全開動作では、可動羽根12が第1角度に到達したことを角度検知手段25が検知した後、さらに羽根駆動モータ23を回転させて可動羽根12を機械的に回動可能な最大角度である上限角度まで開く動作を行うようになっている。例えば、第1角度を80度とした場合、上限角度は85度であり、この上限角度が全開角度に相当する。このように、可動羽根12を上限角度まで開くように羽根駆動モータ23を制御することで、機械的な上限角度をモータの基点とし、これにより、角度検知手段25の検知角度に誤差があったとしても、誤差の影響を受けることなく可動羽根12の角度を修正することができる。
【0041】
図7は、全開動作の制御の一例を示すフローチャートである。運転が開始されると、運転モードに可動モードと固定モードのどちらが設定されているかを判定する(ステップ1)。なお、後述するフローの各ステップの実行中に、運転モード設定手段18の操作が行われた場合には、都度ステップ1に戻ることとする。
【0042】
可動モードが設定されている場合(ステップ1でYes)、そのときの燃焼量によって予め設定された角度範囲内で可動羽根12を上下方向に回動させる可動モードを開始し(ステップ2)、全開動作を実行するまでの時間の計測を開始する(ステップ3)。このとき、可動モードにおける全開動作の実行間隔を第1所定時間とする。
【0043】
そして、ステップ3で計時を開始してから第1所定時間が経過したかを判定し(ステップ4)、第1所定時間が経過した場合には、全開動作を開始する(ステップ5)。全開動作を開始すると、可動羽根12が全開位置となるまで羽根駆動モータ23を回転させ(ステップ6)、可動羽根12が第1角度まで到達したかを角度検知手段25の検知結果によって判定する(ステップ7)。可動羽根12が第1角度に到達したことが検知された場合(ステップ7でYes)、可動羽根12が正しく動作していると判断することができ、ここからさらに可動羽根12が機械的に駆動可能な上限角度になるまで羽根駆動モータ23を回転させる(ステップ8)。可動羽根12が上限角度に到達すると、計時をリセットして(ステップ9)、全開動作を終了する(ステップ10)。その後は、可動モードの動作に復帰する。
【0044】
ここで、可動羽根12が上下に往復するのに要する時間を回動周期とすると、可動モードにおける全開動作の実行間隔である第1所定時間は、回動周期よりも長い時間とすることができる。可動羽根12の回動周期が数十秒程度(燃焼量にもよるが、10~20秒)であったなら、全開動作は数分ごと(例えば3分ごと)に実行される。全開動作を回動周期よりも長い間隔で実行することで、可動羽根12が全開位置に到達する回数を抑え、温風の吹き上がりを抑制することができる。
【0045】
また、運転モードに固定モードが設定されていた場合(ステップ1でNo)は、可動羽根12をそのときの燃焼量によって予め設定された角度に移動させて固定モードを開始し(ステップ12)、全開動作を実行するまでの時間の計測を開始する(ステップ13)。固定モードにおける全開動作の実行間隔は第2所定時間とする。
【0046】
そして、ステップ13で計時を開始してから第2所定時間が経過したかを判定し(ステップ14)、第2所定時間が経過した場合には全開動作を開始する(ステップ15)。全開動作を開始すると、可動羽根12が全開位置となるまで羽根駆動モータ23を回転させ(ステップ16)、可動羽根12が第1角度まで到達したかを角度検知手段25の検知結果によって判定する(ステップ17)。可動羽根12が第1角度に到達したことが検知された場合(ステップ17でYes)、可動羽根12が正しく動作していると判断することができ、ここからさらに可動羽根12が機械的に駆動可能な上限角度になるまで羽根駆動モータ23を回転させる(ステップ18)。可動羽根12が上限角度に到達すると、計時をリセットして(ステップ19)、全開動作を終了する(ステップ20)。その後は、可動羽根12を所定の角度に戻して固定モードの動作に復帰する。
【0047】
なお、固定モードでは、可動モードのように可動羽根12が上下動しないため、可動羽根12の角度に誤差が発生することは少ない。よって、固定モードにおける全開動作の実行間隔である第2所定時間は、可動モードにおける全開動作の実行間隔である第1所定時間よりも長く設定することができる。例えば、可動モードでの全開動作が3分間隔である場合、固定モードでの全開動作は10分間隔に設定することができる。これにより、固定モードであるにも係わらず、羽根が動作して煩わしく感じられてしまうことを回避することができる。
【0048】
また、ステップ7およびステップ17において、可動羽根12が第1角度まで到達したかを判定しているが、所定時間経過しても角度検知手段25が可動羽根12を検知しなかった場合(ステップ7、ステップ17でNoが継続する場合)には異常が発生していると判断して、暖房装置の運転を停止することができる。
【0049】
このように、本実施形態の暖房装置は、可動モード、固定モードのいずれのモードが設定されていた場合であっても、所定時間ごとに可動羽根12を全開角度まで開く全開動作を実行するので、可動羽根12が正しく動作しているかをチェックするだけでなく、可動羽根12の角度の誤差を修正したり、手で操作されてしまった可動羽根12を正しい位置に戻したりすることができる。これにより、暖房装置をより安全に使用することができる。
【0050】
加えて、角度検知手段25の検知後、さらに羽根駆動モータ23を回転させて可動羽根12を機械的に回動可能な最大角度である上限角度まで開く動作を行うことで、角度検知手段25の誤差の影響を受けることなく可動羽根12の角度を修正することができる。
【0051】
ところで、可動羽根12が常に動いていると、その動きがせわしなく感じられてしまい、使用感を損なうおそれがある。そのため、可動モードにおいては、可動羽根12が設定された動作範囲内での最大角度または最小角度に到達した場合には、可動羽根12をその角度で所定時間停止し保持する停止保持動作を実行することができる。これにより、使用感を損なうことなく、可動モードを実行することができる。
【0052】
停止保持動作における可動羽根12の停止時間は、任意に設定することができる。本実施形態では、例えば、最大角度到達時は3秒、最小角度到達時には6秒の停止時間を設けることとしている。暖かい空気は上に上がるため、上方向に温風を吹き出すと、足元が暖まりにくくなるおそれがある。そこで、上限角度での停止時間を短くすることで、温風の吹き上がりを抑制して暖房効率を向上させることができる。なお、可動モードにおいて停止保持動作を実行する場合、全開動作は停止保持動作が終了した後で実行する。
【0053】
図8は、可動モードにおける可動羽根の動作を示すタイミングチャートである。ここでは、可動羽根12が65度~75度の間で回動する場合を例に説明する。図中のT1は、前回の全開動作の終了後、第1所定時間である3分が経過した時点を示している。しかし、T1では停止保持動作の実行中であるため、停止保持動作が完了するまで全開動作は実行されない。そして、T2で停止保持動作が終了したため、T2において全開動作が開始される。全開動作では、T3で角度検知手段25が第1角度である80度を検知し、その後、さらに羽根駆動モータ23を回転させて機械的に回動可能な上限角度である85度まで可動羽根12を開く動作が実行される。そして、T4で上限角度まで可動羽根12が到達すると全開動作が終了となり、その後は可動モードの動作に復帰する。なお、可動モードにおいて全開動作を実行した後は、可動羽根12は回動範囲の最小角度である65度に向けて下方に回動する。
【符号の説明】
【0054】
3 バーナ(熱発生手段)
8 吹出口
12 可動羽根(羽根)
13 固定羽根
18 運転モード設定手段
23 モータ(羽根駆動モータ)
25 角度検知手段
30 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8