(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】移動昇降式足場
(51)【国際特許分類】
E04G 1/20 20060101AFI20220404BHJP
E04G 21/16 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
E04G1/20 A
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2018158914
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2020-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592123923
【氏名又は名称】株式会社タカミヤ
(73)【特許権者】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】高宮 一雅
(72)【発明者】
【氏名】青木 哲也
(72)【発明者】
【氏名】松村 誠
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕明
(72)【発明者】
【氏名】串田 敏彦
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05159993(US,A)
【文献】特開2013-083128(JP,A)
【文献】特開平09-078842(JP,A)
【文献】特開2007-247301(JP,A)
【文献】特開2002-339570(JP,A)
【文献】特開平07-026728(JP,A)
【文献】特開2017-031657(JP,A)
【文献】特開平08-312144(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0259669(US,A1)
【文献】中国実用新案第207749812(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/20
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドマストと、該ガイドマストに着脱されて装着状態で昇降移動する駆動部と、該駆動部に略水平状態で設置される作業用デッキとを有する移動昇降式足場であって、
2つの前記ガイドマストにそれぞれ前記駆動部が装着されており、
2つの前記駆動部同士に掛け渡されるように
左右方向に前記作業用デッキが設置されており、
前記作業用デッキの上方で略水平方向に設置され、かつ、前記作業用デッキと共に昇降移動する長細形状の掛渡部が設けられており、
前記掛渡部が平行に設けられた2本の部材で構成されており、
該2本の部材からなる前記掛渡部の長手方向
である前記左右方向と直交する略水平方向
である前後方向が長手方向となるように前記掛渡部から突出するように取り付けられ、前記
左右方向
のみに沿って移動可能
で前記前後方向には移動しない前後用レール部を備えており、
前記前後用レール部は、前記作業用デッキの前記前後方向の幅より前方及び後方に突出するように構成されており、
前記前後用レール部に、該前後用レール部に沿って前記作業用デッキの上方を
前記前後方向に移動する横移動用クレーン装置が
直接設置
されており、
前記横移動用クレーン装置が設置された前記前後用レール部が前記掛渡部に沿って前記作業用デッキの上方を
前記左右方向に移動すると共に、前記横移動用クレーン装置が前記前後用レール部に沿って
前記前後方向
における前記作業用デッキの前記前後方向の幅より前方に突出した位置から後方に突出した位置までに移動することで、前記横移動用クレーン装置が略前後左右方向に移動可能となっていることを特徴とする移動昇降式足場。
【請求項2】
前記作業用デッキ上の2つの前記ガイドマストそれぞれに着脱されて装着状態で前記作業用デッキと共に昇降移動する補助部と、
2つの前記補助部同士が前記作業用デッキの上方で略水平方向に繋がれた繋合せ部と、を有しており、
前記補助部の一部と前記繋合せ部とで前記掛渡部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の移動昇降式足場。
【請求項3】
ガイドマストと、該ガイドマストに着脱されて装着状態で昇降移動する駆動部と、該駆動部に略水平状態で設置される作業用デッキとを有する移動昇降式足場であって、
2つの前記ガイドマストにそれぞれ前記駆動部が装着されており、
2つの前記駆動部同士に掛け渡されるように前記作業用デッキが設置されており、
前記作業用デッキの上方で略水平方向に設置され、かつ、前記作業用デッキと共に昇降移動する長細形状の掛渡部が設けられており、
前記掛渡部が平行に設けられた2本の部材で構成されており、
該2本の部材からなる前記掛渡部の長手方向と直交する略水平方向が長手方向となるように前記掛渡部から突出するように取り付けられ、前記掛渡部の長手方向に沿って移動可能な前後用レール部を備えており、
前記前後用レール部に、該前後用レール部に沿って前記作業用デッキの上方を略水平方向の前後方向に移動する横移動用クレーン装置が設置可能となっており、
前記横移動用クレーン装置が設置された前記前後用レール部が前記掛渡部に沿って前記作業用デッキの上方を略水平方向の左右方向に移動すると共に、前記横移動用クレーン装置が前記前後用レール部に沿って略水平方向の前後方向に移動することで、前記横移動用クレーン装置が略前後左右方向に移動可能となっており、
前記作業用デッキ上の2つの前記ガイドマストそれぞれに着脱されて装着状態で前記作業用デッキと共に昇降移動する補助部と、
2つの前記補助部同士が前記作業用デッキの上方で略水平方向に繋がれた繋合せ部と、を有しており、
前記補助部は、前記ガイドマストに取り付けられる本体部と、該本体部から横方向に延びる延長部とを有しており、
前記延長部と前記繋合せ部とで前記掛渡部を形成しており、
前記本体部と前記延長部の間には、前記延長部から斜め前方に突出して前記本体部の前方と繋がる前方補強部が形成されており、
前記前方補強部は、前記延長部に対する配設位置が前記延長部の上側よりとなって下側に間隙が設けられるようになっていることを特徴とする
移動昇降式足場。
【請求項4】
ガイドマストと、該ガイドマストに着脱されて装着状態で昇降移動する駆動部と、該駆動部に略水平状態で設置される作業用デッキとを有する移動昇降式足場であって、
2つの前記ガイドマストにそれぞれ前記駆動部が装着されており、
2つの前記駆動部同士に掛け渡されるように前記作業用デッキが設置されており、
前記作業用デッキの上方で略水平方向に設置され、かつ、前記作業用デッキと共に昇降移動する長細形状の掛渡部が設けられており、
前記掛渡部が平行に設けられた2本の部材で構成されており、
該2本の部材からなる前記掛渡部の長手方向と直交する略水平方向が長手方向となるように前記掛渡部から突出するように取り付けられ、前記掛渡部の長手方向に沿って移動可能な前後用レール部を備えており、
前記前後用レール部に、該前後用レール部に沿って前記作業用デッキの上方を略水平方向の前後方向に移動する横移動用クレーン装置が設置可能となっており、
前記横移動用クレーン装置が設置された前記前後用レール部が前記掛渡部に沿って前記作業用デッキの上方を略水平方向の左右方向に移動すると共に、前記横移動用クレーン装置が前記前後用レール部に沿って略水平方向の前後方向に移動することで、前記横移動用クレーン装置が略前後左右方向に移動可能となっており、
前記作業用デッキ上の2つの前記ガイドマストそれぞれに着脱されて装着状態で前記作業用デッキと共に昇降移動する補助部と、
2つの前記補助部同士が前記作業用デッキの上方で略水平方向に繋がれた繋合せ部と、を有しており、
前記補助部は、前記ガイドマストに取り付けられる本体部と、該本体部から横方向に延びる延長部とを有しており、
前記延長部と前記繋合せ部とで前記掛渡部を形成しており、
前記本体部と前記延長部の間には、前記延長部から斜め上方に突出して前記本体部の上方と繋がる上方補強部が形成されていることを特徴とする
移動昇降式足場。
【請求項5】
前記繋合せ部は、両端に繋がっている前記補助部同士の上下位置の差を調整して繋ぎ合わせ状態を維持する調整機構を有していることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の移動昇降式足場。
【請求項6】
前記掛渡部は、H鋼材を用いて形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の移動昇降式足場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構造物の施工や補修、解体等に用いる移動昇降式足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば倉庫やビル、煙突等の所定の高さを有する構造物の外壁を施工したり、既存の外壁の補修を行ったり、構造物を解体したりする場合に、作業を行う外壁に沿うように足場を設置し、その足場を用いて作業することが行われている。
【0003】
また、このような足場の中には、ガイドマストに沿って作業用デッキが上下動する移動昇降式足場(例えば、特許文献1参照)があり、この移動昇降式足場を用いて作業を行うことも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した特許文献1のような従来の移動昇降式足場では、作業用デッキ上で重量のある物や大きな物を運んで作業するときに、作業員の人力では困難な物があり、作業範囲が限られるという問題があった。このような問題に対する対策として、現状では、移動昇降式足場の外側に、別途、クレーン等の揚重機を併用して作業を行うことが考えられていた。しかし、移動昇降式足場の外側に揚重機併用すると、場所を取り、かつ、作業性も良くないため、問題であった。
【0006】
そこで、この発明は、作業用デッキで重量のある物や大きさのある物を楽に運んで作業することができ、別途、クレーン等の揚重機を併用することがなくて場所を取らず、作業員が安全に効率良く作業を行うことができる移動昇降式足場を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、この発明は、ガイドマストと、該ガイドマストに着脱されて装着状態で昇降移動する駆動部と、該駆動部に略水平状態で設置される作業用デッキとを有する移動昇降式足場であって、2つの前記ガイドマストにそれぞれ前記駆動部が装着されており、2つの前記駆動部同士に掛け渡されるように前記作業用デッキが設置されており、前記作業用デッキの上方で略水平方向に設置され、かつ、前記作業用デッキと共に昇降移動する長細形状の掛渡部が設けられており、前記掛渡部に、該掛渡部に沿って前記作業用デッキの上方を略水平方向に移動する横移動用クレーン装置が設置可能となっている移動昇降式足場としたことを特徴とする。
【0008】
また、この発明は、前記記載の構成に加え、前記作業用デッキ上の2つの前記ガイドマストそれぞれに着脱されて装着状態で前記作業用デッキと共に昇降移動する補助部と、2つの前記補助部同士が前記作業用デッキの上方で略水平方向に繋がれた繋合せ部と、を有しており、前記補助部の一部と前記繋合せ部とで前記掛渡部を形成している移動昇降式足場としたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明は、前記記載の構成に加え、設置された前記横移動用クレーン装置の荷重が前記繋合せ部と前記補助部に掛かるように設けられており、前記繋合せ部の荷重が前記補助部に掛かるように設けられており、前記補助部の荷重が前記ガイドマストに掛かるように設けられている移動昇降式足場としたことを特徴とする。
【0010】
また、この発明は、前記記載の構成に加え、前記繋合せ部は、両端に繋がっている前記補助部同士の上下位置の差を調整して繋ぎ合わせ状態を維持する調整機構を有している移動昇降式足場としたことを特徴とする。
【0011】
また、この発明は、前記記載の構成に加え、前記掛渡部は、H鋼材を用いて形成されている移動昇降式足場としたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明は、前記記載の構成に加え、前記掛渡部の長手方向と直交する略水平方向が長手方向となるように前記掛渡部に取り付けられ、前記掛渡部の長手方向に沿って移動可能な前後用レール部を備えており、前記前後レール部に、該前後レール部に沿って前記作業用デッキの上方を略水平方向の前後方向に移動する横移動用クレーン装置が設置可能となっており、前記横移動用クレーン装置が設置された前記前後用レール部が前記掛渡部に沿って前記作業用デッキの上方を略水平方向の左右方向に移動することで、前記横移動用クレーン装置が略水平方向の前後左右方向に移動可能となっている移動昇降式足場としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、作業用デッキの上方に、当該作業用デッキと共に昇降移動して略水平方向の長細形状に形成された掛渡部が設けられており、この掛渡部に横移動用クレーン装置が設置可能となっていて、当該横移動用クレーン装置が掛渡部に沿って略水平方向に移動するようになっているため、作業用デッキで重量のある物や大きさのある物を横移動用クレーン装置で吊りながら楽に運んで作業することができ、別途、クレーン等の揚重機を併用することがなくて場所を取らず、作業員が安全に効率良く作業を行うことができる。
【0014】
また、この発明によれば、掛渡部が、ガイドマストに着脱自在の補助部の一部と補助部同士を略水平方向に繋げる繋合せ部とで構成されているため、移動昇降式足場の設置、解体時に簡単に横移動用クレーン装置に関わる部材を取り付け、取り外しすることができ、作業効率をより向上させることができる。
【0015】
また、この発明によれば、設置された横移動用クレーン装置と繋合せ部の荷重を補助部で支え、補助部の荷重をガイドマストで支えるように構成されているため、構造物に対して複数の固定箇所を有していなくても、横移動用クレーン装置と当該横移動用クレーン装置で吊り上げている物の荷重を支持することができ、移動昇降式足場を移動させた後の設置作業と、作業後に再度移動させる際の取外し作業をより効率良く行うことができる。
【0016】
また、この発明によれば、繋合せ部がその両端に繋がっている補助部同士の上下位置の差を調整して繋ぎ合わせ状態を維持する調整機構を有していることで、2つの補助部同士の上下方向の位置の誤差を吸収して掛渡部と横移動用クレーン装置の状態を維持することができ、作業を支障なく行えるようにすることができる。
【0017】
また、この発明によれば、掛渡部がH鋼材を用いて形成されているため、そのH鋼材の形状を利用して、横移動用クレーン装置を簡単に設置することができる。
【0018】
また、この発明によれば、掛渡部に略水平方向で直交して前記掛渡部に沿って移動する前後用レール部を有していて、掛渡部に対して前後用レール部が略水平方向の左右方向に移動すると共に、前後用レール部に対して横移動用クレーン装置が略水平方向の前後方向に移動することで、横移動用クレーン装置を作業用デッキの上方で前後左右に自在に移動させることができ、より自由度の高い状態で横移動用クレーン装置を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この実施の形態に係る移動昇降式足場に横移動用クレーン装置を取り付けた状態を示す正面図である。
【
図2】同実施の形態に係る移動昇降式足場を示す斜視図である。
【
図3】同実施の形態に係る移動昇降式足場を他の角度から見た斜視図である。
【
図4】同実施の形態に係る移動昇降式足場に取り付ける横移動用クレーン装置を示す斜視図である。
【
図5】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部を示す単品斜視図である。
【
図6】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部を他の角度から見た単品斜視図である。
【
図7】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部の一部を示す単品平面図である。
【
図8】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部の一部を示す単品正面図である。
【
図9】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部の一部を示す単品側面図である。
【
図10】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態を示す斜視図である。
【
図11】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態を示す拡大斜視図である。
【
図12】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態を他の角度から見た拡大斜視図である。
【
図13】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態をさらに他の角度から見た拡大斜視図である。
【
図14】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態をまたさらに他の角度から見た拡大斜視図である。
【
図15】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態を示す拡大正面図である。
【
図16】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態を示す拡大平面図である。
【
図17】同実施の形態に係る移動昇降式足場の補助部とマストの係合状態を示す拡大側面図である。
【
図18】同実施の形態に係る移動昇降式足場の調整機構を示す拡大斜視図である。
【
図19】同実施の形態に係る移動昇降式足場の使用例を示す斜視図である。
【
図20】同実施の形態に係る移動昇降式足場の別例を示す斜視図である。
【
図21】同実施の形態に係る移動昇降式足場の別例に横移動用クレーン装置を取り付けた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0021】
【0022】
この実施の形態の移動昇降式足場10は、
図1~
図3に示すように、ガイドマスト20と、駆動部30と、作業用デッキ40と、補助部50と、繋合せ部60とを有して構成されている。また、この実施の形態では、2つのガイドマスト20にそれぞれ駆動部30が取り付けられ、この駆動部30同士に掛け渡すように作業用デッキ40が形成されている。また、2つのガイドマスト20における作業用デッキ40上の箇所には、それぞれ補助部50が取り付けられている。この補助部50同士は、繋合せ部60で繋がれており、補助部50の一部と繋合せ部60とで、作業用デッキ40の上方に設置される掛渡部70を構成している。そして、この掛渡部70に横移動用クレーン装置90を設置するようになっている。
【0023】
このうち、この実施の形態のガイドマスト20は、建物等の構造物に沿って略垂直方向に設置されるようになっており、ここでは所定の間隔を空けて2本以上設置されている。また、
図10~
図17に示すように、ガイドマスト20は、複数の棒状部材25を組んで略三角柱形状に形成されており、
図1~
図3に示すように、構造物の外壁に接続する壁つなぎ部21を有している。この壁つなぎ部21は、複数本のステー22を有しており、これらを介して外壁に固定されている。なお、外壁の形状が複雑な場合には、油圧等で伸び縮みするバックル式壁つなぎ材等を使用してガイドマスト20を外壁に取り付けるようになっていても良い。
【0024】
また、この実施の形態では、
図1~
図3に示すように、2つのガイドマスト20のそれぞれに駆動部30が取り付けられている。この駆動部30は、フレーム31と、モータ(図示省略)と、ガイドマスト20の上下方向に沿って設けられたラック23に歯合するピニオンギア32(
図11,
図14,
図15参照)とを有しており、モータの駆動力でピニオンギア32を回転させ、このピニオンギア32とラック23とが歯合することでガイドマスト20に対して駆動部30を上下動させるように構成されている。また、フレーム31には、後述する補助部40と同様のガイドローラ(図示省略)が設けられており、このガイドローラによって、ガイドマスト20に対してスムーズに上下動可能となっている。
【0025】
また、駆動部30のフレーム30の上部には、作業用デッキ40が設けられている。この実施の形態では、作業用デッキ40は2つのガイドマスト20にそれぞれ取り付けられた駆動部30に掛け渡すように配置されている。また、この実施の形態では、ガイドマスト20同士の外側にも、作業用デッキ40が所定長さ延設されるように構成されている。この作業用デッキ40は、2つの駆動部30の上下動によってガイドマスト20に沿って上下動するようになっている。
【0026】
また、この実施の形態では、2つのガイドマスト20における作業用デッキ40上の位置にそれぞれ、
図5~
図9に示すような補助部50が取り付けられている。また、この補助部50は、本体部53と当該本体部53の上部位置から細長形状に横方向に延びる延長部52とを有しており、
図13に示すように、本体部53が作業用デッキ40にボルト等で固定されている。また、この実施の形態では、延長部52が本体部53の左右方向にそれぞれ形成されており、駆動部30同士を結ぶ内側方向の延長部52同士は、長細形状の繋合せ部60を介して繋がれており、作業用デッキ40の上に、補助部50の一部である延長部52と繋合せ部60とで、本発明における掛渡部70を構成するように形成されている。
【0027】
また、補助部50の本体部53と延長部52との間には、延長部52を支持するための補強部54が設けられている。この実施の形態では、延長部52から斜め前方に突出して本体部53の前方と繋がる前方補強部54aと、延長部52から斜め上方に突出して本体部53の上方と繋がる上方補強部54bとが形成されている。なお、補強部54は、それぞれ後述する横移動用クレーン装置90が掛渡部70に沿って移動してきたときに、その横移動用クレーン装置90の動きを妨げないように構成されている。例えば、前方補強部54aは、延長部52に対する配設位置が延長部52の中のより上側となって下側に横移動用クレーン装置90の後述する横移動装置91が通過可能な間隙が設けられるようになっており、これにより、横移動装置91が補助部50の本体部53のぎりぎり近くまで到達できるようになっている。また、上方補強部54bは、下方でなく上方に突出するように設けられることで、延長部52に対して、横移動用クレーン装置90の横移動装置91が補助部50の本体部53のぎりぎり近くまで到達できるようになっている。
【0028】
また、延長部52と繋合せ部60は、
図2,
図3,
図5に示すように、それぞれ所謂H鋼材で構成されており、このH鋼材が断面視で「H」を90°回転させた状態に配置されている。
【0029】
そして、この延長部52と繋合せ部60とで構成される掛渡部70に横移動用クレーン装置90が配置されている。この横移動用クレーン装置90は、所謂テルハクレーンと呼ばれるものであり、
図4に示すように、横移動装置91とクレーン装置92とを有している。横移動装置91は、掛渡部70のH鋼材の両側から車輪を引っ掛けて掛渡部70に保持し、モータ(図示省略)の動力で当該掛渡部70に沿って横方向に横移動用クレーン装置90を移動させるものである。また、クレーン装置92は、吊上げ部材93に所定の物品を引っ掛けてモータ(図示省略)の動力で上下動させると共に、所定の物品を吊り上げた状態でキープして前記した横移動装置91で横移動させる間吊り上げた状態をキープするものである。
【0030】
また、この実施の形態では、
図1に示すように、横移動用クレーン装置90を中央の掛渡部70と補助部50の外側の延長部52のそれぞれの計3箇所に配置している。これは、横移動用クレーン装置90が補助部50の本体部53を超えて反対側の延長部52まで移動することができないためであり、これにより、作業用デッキ40が設けられた左右全ての箇所で横移動用クレーン装置90を用いて物品を左右方向に移動させることが可能となっている。
【0031】
また、横移動用クレーン装置90は掛渡部70の延長部52と繋合せ部60のみに支持されており、その結果、横移動用クレーン装置90の荷重は補助部50で受けるように構成されている。そして、駆動部30の上下動によって、作業用デッキ40と掛渡部70と掛渡部70に設置された横移動用クレーン装置90とが一体となって上下動するようになっている。
【0032】
また、補助部50には、
図5~
図17に示すように、複数のガイドローラ51が設けられており、このガイドローラ51が、ガイドマスト20の縦方向に延びる棒状部材25に対して係合するようになっており、これにより補助部50がスムーズに上下動可能に構成されると共に補助部50の荷重をガイドマスト20で受けるように構成されている。
【0033】
詳述すると、
図11,
図12,
図15~
図17に示すように、2つのガイドローラ51aで棒状部材25を前後方向から挟持していることで、補助部50の前後方向の動きを規制している。この実施の形態では、このような2つのガイドローラ51aでの挟持箇所を、1つの棒状部材25に対して2箇所有しており、2本の棒状部材25に対して、このような挟持箇所を有している。また、ガイドローラ51aが滑らかな凹形状となっているため、2つのガイドローラ51aで棒状部材25を挟持すると、棒状部材25を包み込むように挟持することができる。これにより、左右方向の動きも規制することができるようになっている。これらにより、補助部50をガイドマスト20に保持しつつ、スムーズな上下動が可能となっている。
【0034】
さらに、補助部50には、棒状部材25に対して外側から当接するガイドローラ51bを複数有しており、この実施の形態では、1本の棒状部材25に対して2つのガイドローラ51bが当接する箇所が2箇所設けられている。このガイドローラ51bは1つの板状部材51cに取り付けられており、その板状部材51cが軸51dを中心として所定範囲回動するように構成されている。これにより、ガイドローラ51bがより棒状部材25に追随し易くなっている。このようなガイドローラ51bを左右の外側に設置していることで左右方向の動きをより確実に規制するようになっている。また、補助部50が上下動する際によりスムーズに移動できるようになっている。
【0035】
また、繋合せ部60とその両端に繋がっている補助部50の延長部52との間の繋ぎ目には、ヒンジ機構等で構成される調整機構80を有している。この実施の形態では、
図18に示すように、延長部52と繋合せ部60とが軸81で回動するように構成されている。このような調整機構80によって、上下方向の角度を変えて補助部50同士の上下位置の差を調整することで、繋合せ部60と延長部52の繋ぎ合わせ状態に無理が生じないようにして接続を維持するようになっている。
【0036】
なお、作業用デッキ40は、塗装やブラスト等の作業を行う際には、側面及び天面をビニルやメッシュ素材等の飛散防止養生部材(図示省略)で覆うようになっていても良い。この飛散防止養生部材により、作業用デッキ40を覆ってブラスト作業や塗装作業を行うことで、作業を行っても塗料等が飛散せず、環境に配慮しながら効率良く作業を行うことができるものである。
【0037】
次に、前記した移動昇降式足場10を用いた構造物の外壁の施工方法について、
図1~
図19を用いて説明する。ここでは、施工作業として外壁パネルを運搬して取り付ける作業について説明する。
【0038】
まず、構造物に対して、必要な高さのガイドマスト20を所定間隔を空けて少なくとも2つ設置し、構造物に固定する。次に、2つのガイドマスト20にそれぞれ駆動部30を設置し、2つの駆動部30に掛け渡すように作業用デッキ40を取り付ける。その後、ガイドマスト20の作業用デッキ40上に、補助部50を設置し、作業用デッキ40と補助部50を全て固定する。
【0039】
ここで、補助部50の延長部52同士は繋合せ部60で連結されて掛渡部70を形成しており、ここに横移動用クレーン装置90を設置して、横移動用クレーン装置90を備えた移動昇降式足場10が完成する。このとき、横移動用クレーン装置90は掛渡部70である繋合せ部60と補助部50の一部である延長部52の間を横方向に移動するようになっており、その荷重は補助部50のみで受けるようになっており、さらに、補助部50はガイドローラ51を介してガイドマスト20のみに設置されており、その荷重はガイドマスト20のみで受けるようになっており、ガイドマスト20が壁つなぎ部21で構造物に設置されている。そのため、構造物に固定されているのはガイドマスト20のみであり、安定した作業を行うことができると共に、作業用デッキ40の上下方向への移動時にいちいち構造物から作業用デッキ40との固定部を取り外すような場合と比べて、簡単に移動させることができる。その結果、作業効率を向上させることができる。
【0040】
その後、例えば、構造物に対して、一番下側又は一番上側から作業を行っていき、
図19に示すように、横移動用クレーン装置90のクレーン装置92に外壁パネルPを吊り下げて、横移動用クレーン装置90の横移動装置91で掛渡部70の左右の所定位置まで安全かつ作業員の負担が少ない状態で移動させ、所定位置で構造物への外壁パネルPの取付作業を行う。これを繰り返して当該上下位置の作業が終了したら、駆動部30を駆動させてガイドマスト20に沿って上方又は下方に2つの駆動部30と作業用デッキ40と掛渡部70と横移動用クレーン装置90とを一体に移動させ、次の上下位置で同様の作業を行う。これを繰り返して、構造物の上端から下端まで作業を行う。
【0041】
以上のように、この実施の形態の移動昇降式足場10によれば、作業用デッキ40の上方に、当該作業用デッキ40と共に昇降移動して略水平方向の長細形状に形成された掛渡部70が設けられており、この掛渡部70に横移動用クレーン装置90が設置可能となっていて、当該横移動用クレーン装置90が掛渡部70に沿って略水平方向に移動するようになっているため、作業用デッキ40で重量のある物や大きさのある物を横移動用クレーン装置90で吊りながら楽に運んで作業することができ、別途、クレーン等の揚重機を併用することがなくて場所を取らず、作業員が安全に効率良く作業を行うことができる。
【0042】
また、この実施の形態の移動昇降式足場10によれば、掛渡部70が、ガイドマスト20に着脱自在の補助部50の一部と補助部50同士を略水平方向に繋げる繋合せ部60とで構成されているため、移動昇降式足場10の設置、解体時に簡単に横移動用クレーン装置90に関わる部材を取り付け、取り外しすることができ、作業効率をより向上させることができる。
【0043】
また、この実施の形態の移動昇降式足場10によれば、設置された横移動用クレーン装置90と繋合せ部60の荷重を補助部50で支え、補助部50の荷重をガイドマスト20で支えるように構成されているため、構造物に対して複数の固定箇所を有していなくても、横移動用クレーン装置90と当該横移動用クレーン装置90で吊り上げている物の荷重を支持することができ、移動昇降式足場10を移動させた後の設置作業と、作業後に再度移動させる際の取外し作業をより効率良く行うことができる。
【0044】
また、この実施の形態の移動昇降式足場10によれば、繋合せ部60がその両端に繋がっている補助部50同士の上下位置の差を調整して繋ぎ合わせ状態を維持する調整機構80を有していることで、2つの補助部50同士の上下方向の位置の誤差を吸収して掛渡部70と横移動用クレーン装置90の状態を維持することができ、作業を支障なく行えるようにすることができる。
【0045】
また、この実施の形態の移動昇降式足場10によれば、掛渡部70がH鋼材を用いて形成されているため、そのH鋼材の形状を利用して、横移動用クレーン装置90を簡単に設置することができる。
【0046】
なお、本発明は、前記した実施の形態のようなものに限らず、他の構成、他の使用状況にも適用できる。
【0047】
例えば、本発明は、種々の建物についての外壁周りの補修作業に用いることができ、さらに補修作業としては外壁塗替え作業に限らず他の補修作業を行う際に用いることもでき、またさらに補修作業のみならず建物の外壁周りの施工作業や解体作業に用いることもできる。
【0048】
また、前記した実施の形態では、2つのガイドマスト20にそれぞれ駆動部30を設置し、当該2つの駆動部30に1つの作業用デッキ40を設置し、その上方に補助部50を介して繋合せ部60を設けて掛渡部70とする構成となっていたが、これに限らず、3つ以上のガイドマストにそれぞれ駆動部を設置して当該3つ以上の駆動部に1つの作業用デッキを設置してその上方に補助部を介して繋合せ部を設ける構成となっていても良い。
【0049】
また、作業用デッキは、前記したように作業用デッキが固定デッキのみであるものに限らず、駆動部に設置された固定デッキと当該固定デッキに対してスライド移動するスライドデッキを有する構成となっていても良い。また、駆動部に設置された固定デッキと当該固定デッキに対してスライド移動するスライドデッキと固定デッキに対して垂直方向を軸として回動する回動デッキとを有する構成となっていても良い。さらに、スライドデッキに回動デッキが設置されていたり、回動デッキにスライドデッキが設置されていたり、スライドデッキにスライドデッキが設置されていたり、回動デッキに回動デッキが設置されていたりしても良い。
【0050】
このようになっていれば、スライド移動するスライドデッキや、回動する回動デッキと等により、種々のデッキ状態を形成することができる。
【0051】
また、作業手順としては、所定の高さのガイドマストを予め設置する以外に、徐々に繋いで上方に延ばしていき、それに応じて作業用デッキと足場部を上方に移動させるような手順で行っても良い。
【0052】
また、
図20,
図21に示すように、掛渡部70に略水平方向で直交して掛渡部70に沿って移動する前後用レール部75を有していても良い。このような構成であれば、掛渡部70に対して前後用レール部75が略水平方向の左右方向に移動すると共に、前後用レール部75に対して横移動用クレーン装置90が略水平方向の前後方向に移動することができる。ここでは、掛渡部70が前後方向に2本設置されており、この2つの掛渡部70の下方に、2つの掛渡部70にぶら下がり、かつ、ローラ等で掛渡部70の長手方向である左右方向に移動可能な移動部76を備えた前後用レール部75を備えている。この前後用レール部75の下方に横移動用クレーン装置90を設置して、前後用レール部75の長手方向である前後方向に沿って横移動装置91で横移動用クレーン装置90を移動させることで、掛渡部70に設置された前後用レール部75と、前後用レール部75に設置された横移動用クレーン装置90により、外壁パネルP等を簡単かつ安全に前後左右に移動させることができる。
【0053】
これにより、横移動用クレーン装置90を作業用デッキ40の上方で前後左右に自在に移動させることができ、より自由度の高い状態で横移動用クレーン装置90を移動させることができる。また、前後方向に横移動用クレーン装置90を移動させることができるため、前後用レール部75の長さによっては、外壁パネルP等の物体を作業用デッキ40の前方から作業用デッキ40内に移動させた上で、作業用デッキ40内で左右方向に移動させることも可能となる。なお、ここでは、2本の掛渡部70に前後用レール部75を取り付けることでより安定した状態で前後用レール部75を設置することができるようになっている。また、他の構成については前記した実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【符号の説明】
【0054】
10 移動昇降式足場
20 ガイドマスト
21 壁つなぎ部
22 ステー
23 ラック
25 棒状部材
30 駆動部
31 フレーム
32 ピニオンギア
40 作業用デッキ
50 補助部
51,51a,51b ガイドローラ
51c 板状部材
51d 軸
52 延長部
53 本体部
54 補強部
54a 前方補強部
54b 上方補強部
60 繋合せ部
70 掛渡部
75 前後用レール部
76 移動部
80 調整機構
81 軸
90 横移動用クレーン装置
91 横移動装置
92 クレーン装置
93 吊上げ部材
P 外壁パネル