IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスペック株式会社の特許一覧

特許7051665環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法
<>
  • 特許-環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法 図1
  • 特許-環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法 図2
  • 特許-環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法 図3
  • 特許-環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法 図4
  • 特許-環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法 図5
  • 特許-環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法 図6
  • 特許-環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】環境試験装置の試験室及び環境試験装置の試験室の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
G01N17/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018218107
(22)【出願日】2018-11-21
(65)【公開番号】P2020085580
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孔一
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151021(JP,A)
【文献】特開2013-108712(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0195593(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0166379(US,A1)
【文献】特開2001-295379(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104847033(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、
前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、
前記試験室は扉を有し、前記上体部の一部又は全部と前記底体部と前記扉とで囲われて前記空間が構成され、前記空間内で試験を行うものであり、
前記上部体は他の部材によってその重量を支持可能であり、前記上部体を中空に支持した状態で前記底体部を除去することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室。
【請求項2】
環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、
前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、
前記試験室は扉を有し、前記上体部の一部又は全部と前記底体部と前記扉とで囲われて前記空間が構成され、前記空間内で試験を行うものであり、
前記上部体は他の部材によってその重量を支持可能であり、前記上部体を中空に支持した状態で前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室。
【請求項3】
環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、
前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され
前記試験室は扉を有し、前記上体部の一部又は全部と前記底体部と前記扉とで囲われて前記空間が構成され、前記空間内で試験を行うものであり、
前記上部体の形状を概ね維持した状態で前記上部体と前記底体部を上下に分離可能であり、
前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室。
【請求項4】
前記底体部は、側方から着脱されるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の環境試験装置の試験室。
【請求項5】
前記底体部は、複数のパネルから構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の環境試験装置の試験室。
【請求項6】
前記底体部と前記上部体の間に中間部材が介在されて前記空間が構成されており、
前記中間部材を除去して前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置の試験室。
【請求項7】
前記上部体が、他の部材から吊り下げられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置の試験室。
【請求項8】
前記試験室の近傍に荷重支持部材があり、当該荷重支持部材は、前記試験室を覆う枠体であって、前記試験室が設置されている床に設置されており、
前記上部体が前記荷重支持部材によって支持されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置の試験室。
【請求項9】
前記上部体を上昇させる上部体上昇手段を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置の試験室。
【請求項10】
環境試験装置の試験室の底部を補修して試験室を再生産する環境試験装置の試験室の製造方法において、
請求項1乃至のいずれかに記載の環境試験装置の試験室を既設の試験室とし
設の前記試験室から前記底体部を除去し、新たな底体部を挿入することを特徴とする環境試験装置の試験室の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験装置の試験室に関するものである。また本発明は、当該試験室を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品や部品等の性能や耐久性を調べる方策として、環境試験が知られている。環境試験は、環境試験装置と称される設備を使用して実施される。環境試験装置は、被試験物を収容する試験室を有し、当該試験室の内部に所定の環境を人工的に創出し、被試験物をその環境に晒すものである。
【0003】
試験室の大きさはまちまちであり、卓上に設置することができる程度の小型のものから、自動車や航空機の部品等の様な大型の装置をそのまま収容することができる大型のものもある。
試験室の構造の一形態として、組立パネル式の試験室がある。組立パネル式の試験室は、天井部や側壁が断熱パネルによって構成されている。
組立パネル式の試験室の構成部品たる断熱パネルは、一般に、環境試験装置の製造工場で製造される。そして当該断熱パネルを施工現場に搬入し、施工現場で断熱パネルを箱状に組み立て、試験室を完成させる。
組立パネル式の試験室は、大型の装置を被試験物とする様な、大型の試験室を構築する際に採用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-108712号公報
【文献】特開2014-66593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経験則上、組立パネル式の試験室は、床面(底部)が傷むことがあり、取り替えを要請される場合がある。
前記した様に組立パネル式の試験室は、大型の装置を被試験物とする大型の試験室として活用されることがある。
大型の被試験物は、一般的に重量が重い。さらに大型の被試験物が試験室内の同じ場所に置かれて試験される場合がある。
そのため大型の装置を被試験物とする試験室は、床面の同じ場所に常に重い被試験物が置かれ、特定の箇所が比較的早期に痛み易いという傾向がある。
また試験室の床面は、複数の床パネルが敷き詰められて構成される場合が多く、床パネル同士の間に目地シールが設けられる場合があるが、被試験物の荷重によって目地シールに亀裂が生じる場合もある。
【0006】
しかし、従来技術の組立パネル式の試験室は、床面を構成する床パネル材を個別に外し難い構造となっている。そのため従来技術の組立パネル式の試験室は、底部だけを取り替えることが困難であり、床面を補修するには、天井部や側壁についても解体しなければならなかった。
【0007】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、天井部や側壁等を解体せずに、試験室の床面(底部)を取り替えることができる環境試験装置の試験室を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための態様は、環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、前記上部体は他の部材によってその重量を支持可能であり、前記上部体を中空に支持した状態で前記底体部を除去することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、前記試験室は扉を有し、前記上体部の一部又は全部と前記底体部と前記扉とで囲われて前記空間が構成され、前記空間内で試験を行うものであり、前記上部体は他の部材によってその重量を支持可能であり、前記上部体を中空に支持した状態で前記底体部を除去することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室である。
【0009】
前記した上部体は、天井部と、側壁の少なくとも一部を含む。扉部分については、上部体に含まれていても良いし、上部体とは区別されてもよい。
本態様の環境試験装置の試験室では、上部体の重量が、他の部材によって支持可能であり、底体部側に掛からない状態とすることができる。そのため底体部を上部体から切り離して、取り外すことができる。即ち底体部を解体したり、元の位置から引き出して除去することができる。
【0010】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、前記上部体は他の部材によってその重量を支持可能であり、前記上部体を中空に支持した状態で前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、前記試験室は扉を有し、前記上体部の一部又は全部と前記底体部と前記扉とで囲われて前記空間が構成され、前記空間内で試験を行うものであり、前記上部体は他の部材によってその重量を支持可能であり、前記上部体を中空に支持した状態で前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室である。
【0011】
本態様の試験室では、上部体を中空に支持した状態で底体部と上部体との間に隙間を形成することができる。そのため底体部を上部体から切り離して、取り外すことができる。
【0012】
同様の課題を解決するためのさらにもう一つの態様は、環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、前記上部体の形状を概ね維持した状態で前記上部体と底体部を上下に分離可能であり、前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室である。
上記した課題を解決するための具体的態様は、環境試験装置の一部を構成し、内部に被試験物を収容する空間を有する環境試験装置の試験室において、前記試験室は、前記試験室の底部の近傍を構成する底体部と、その上部側を構成する上部体に区分され、前記試験室は扉を有し、前記上体部の一部又は全部と前記底体部と前記扉とで囲われて前記空間が構成され、前記空間内で試験を行うものであり、前記上部体の形状を概ね維持した状態で前記上部体と前記底体部を上下に分離可能であり、前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることを特徴とする環境試験装置の試験室である。
【0013】
本態様の試験室では、底体部と上部体を、上部体の形状を概ね維持した状態で上下に分離可能であり、両者の間に隙間を形成することが可能であるから、底体部を上部体から切り離して、取り外すことができる。
また上部体の形状が維持されているから、底体部を修理したり、新規の底体部と入れ替え、上部体と再接続することによって、試験室を完成させることができる。
上記した各態様において、前記底体部は、側方から着脱されるものであることが望ましい。
上記した各態様において、前記底体部は、複数のパネルから構成されることが望ましい。
【0014】
上記した各態様において、前記底体部と前記上部体の間に中間部材が介在されて前記空間が構成されており、前記中間部材を除去して前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成することが可能であることが望ましい。
【0015】
本態様によると、中間部材を除去して底体部と上部体との間に隙間を形成することができ、その隙間を利用して底体部を入れ替えたり補修したりすることができる。
【0016】
上記した各態様において、前記上部体が、他の部材から吊り下げられていることが望ましい。
【0017】
本実施形態によると、上部体が、他の部材から吊り下げられているので、上部体の重量が底体部に掛からない。
【0018】
上記した各態様において、前記試験室の近傍に荷重支持部材があり、当該荷重支持部材は、前記試験室を覆う枠体であって、前記試験室が設置されている床に設置されており、前記上部体が前記荷重支持部材によって支持されることが望ましい。
【0019】
本実施形態によると、上部体が床に設置された荷重支持部材に支持されているので、上部体の荷重(重量)が底体部に掛からない。
【0020】
上記した各態様において、前記上部体を上昇させる上部体上昇手段を有することが望ましい。
【0021】
環境試験装置の試験室の底部を補修して試験室を再生産する環境試験装置の試験室の製造方法に関する態様は、上記した環境試験装置の試験室を既設の試験室とし、既設の前記試験室の前記底体部と前記上部体との間に隙間を形成し、既設の前記試験室から前記底体部を除去し、新たな底体部を挿入することを特徴とする環境試験装置の試験室の製造方法である。
【0022】
本態様によると、試験室の天井部等を解体せずに、試験室を再製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の環境試験装置の試験室は、天井部や側壁等を解体せずに、試験室の床面(底部)を取り替えたり修理することができる。
そのため本発明の環境試験装置の試験室は、試験室の床面(底部)を取り替える等の作業を容易に行うなうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の試験室の斜視図である。
図2図1の環境試験装置の試験室の分解斜視図である。
図3図1の環境試験装置の試験室の断面図である。
図4】(a)、(b)は、図1の環境試験装置の試験室において、その底部を入れ替える際の作業手順を示す断面図である。
図5】(a)、(b)は、図1の環境試験装置の試験室において、その底部を入れ替える際の図4に続く作業手順を示す断面図である。
図6】(a)、(b)は、本発明の他の実施形態の環境試験装置の試験室において、その底部を入れ替える際の作業手順を示す断面図である。
図7】本発明のさらに他の実施形態の環境試験装置の試験室の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、大型の被試験物を試験する用途に設計されたものである。
環境試験装置1は、試験室(環境試験装置の試験室)2と、架台(荷重支持部材)3によって構成されている。また環境試験装置1には図示しない空調手段がある。
【0026】
試験室2は、公知のそれと同様に、断熱壁8によって覆われている。試験室2は、被試験物を収容する空間である。
環境試験装置1は、図示しない空調手段を別途有しており、図示しないダクトで空調手段と試験室2が連結されており、試験室2内に所望の環境を人工的に創出することができる。
【0027】
空調手段は、公知のそれと同様、加湿装置、冷却装置及び加熱ヒータ(加熱装置)等を有している(いずれも図示せず)。また試験室2と空調手段との間で空気を循環させるための送風機(図示せず)を備えている。
試験室2内には図示しない温度センサーと湿度センサーが設けられており、温度センサーと湿度センサーの検出値が、空調手段を構成する機器にフィードバックされ、試験室2内の温度や湿度が所望の値に調節される。
空調手段は試験室2と一体であってもよい。
【0028】
試験室2は、図2の様に、本体部5と、扉6を有している。また試験室2の一部は、後記する中間部材33で覆われている。
試験室2は、本体部5、扉6及び中間部材33によって、天面と、底面と、4側面が覆われている。
扉6は、本体部5の前面に形成された開口13に設けられている。扉6は、本実施形態では、2枚の扉片7によって構成される観音開き形式の扉6である。扉6の形式は、任意であり、一枚扉でもよく、引き戸や昇降扉であってもよい。
【0029】
本実施形態の試験室2は、組立パネル式の試験室2であり、図2の様に多数の断熱パネル10、11、12が組み合わされて、例えば自動車等が中に入る様な大きな箱体を構成したものである。
試験室2の本体部5は、公知のそれと同様に、天面部20と、底部21及びこれをつなぐ3面の側面部23、25、26を有している(図2図3)。
【0030】
天面部20は、図2の様に多数の断熱パネル10が組み合わされて作られている。底部21についても、多数の断熱パネル11が組み合わされて作られている。側面部23、25、26も同様に、断熱パネル12が組み合わされて作られている。
各断熱パネル10、11、12の側面には、図示しない凹凸形状があり、隣接する断熱パネル10、11、12は、その凹凸部分同士が嵌合している。また各断熱パネル10、11、12の境界部分には、図示しない目地シールが取り付けられている。各断熱パネル10、11、12は、図示しないネジによっても結合されている。
【0031】
本実施形態では、試験室2の本体部5は、大きく底部21の近傍を構成する底体部30と、その上部側を構成する上部体31に区分されている。
即ち底体部30は、図2の様に、多数の断熱パネル11が組み合わされて底部21となる平板を構成している部分であり、底体部30を構成する各部材は、図示しないネジ等で一体的に結合されている。
【0032】
上部体31は、試験室2の天面部20と、当該天面部20の3辺から垂下する側面部23、25、26が図示しないネジ等で一体的に結合されたものである。
上部体31は、天面と、3側面が断熱パネル10、12で覆われ、正面側の面(開口13)と下面(開口15)が開放された半箱状の形状をしている。
上部体31は、断熱パネル10、12が図示しないネジ等で結合されている。上部体31は、底体部30から取り外しても、図2の様な半箱形状が維持される。また扉6を外しても図2の様な半箱形状が維持される。
【0033】
試験室2は、底体部30の上に上部体31が載置されたものであるが、両者の間に中間部材33が介在されている。
中間部材33は、ブロック状の断熱材である。
【0034】
架台3は、荷重支持部材として機能する構造物であり、試験室2の周囲を覆う枠体である。
なお図1図2は、架台3を簡略化して図示している。架台3は、複数の柱40と、柱40の上部に設けられた梁41によって枠組みされたものである。
柱40は、試験室2の周囲にあって、それぞれ床に設置されている。梁41の高さは、試験室2の高さよりも高い。
架台3が囲む容積は、試験室2よりも大きく、架台3は、試験室2の周囲を覆う枠体である。
【0035】
次に、架台3と試験室2との関係について説明する。
本実施形態では、試験室2は、前記した様に底部21の近傍を構成する底体部30と、その上部側を構成する上部体31に区分されている。
本実施形態では、試験室2の底体部30は、試験室2が設置される床面に固定されている。
外見上、上部体31は、中間部材33を介して底体部30の上に載せられているが、上部体31は、実質的に架台3によって支持されている。
【0036】
本実施形態では、上部体31の各部に取り付けリブ45が設けられており、当該取り付けリブ45と、架台3の間が支線材46で結合されている。支線材46は、鋼材の丸棒であり、図示しないターンバックル等によって、ある程度の張力を有した状態で張り巡らされている。
そのため上部体31は、図1図3乃至図5の様に支線材46によって架台3の梁41から吊り下げられた状態となっている。支線材46と架台3との接合部分の位置が、図1図3乃至図5で異なっているが、この違いは、作図の関係上その様に図示されているに過ぎず、実質的に異なるものではない。
【0037】
底体部30と中間部材33の間、及び中間部材33と上部体31との間は、図示しないネジ等で接合されているが、上部体31の重量の多くは、中間部材33には掛かっておらず、外側の架台3に負荷されている。
【0038】
次に、本実施形態の試験室2の作用について説明する。
本実施形態の試験室2は、底部21が傷むことを見越して、底部21の取り替えを円滑に行うことを目的として設計されている。
【0039】
試験室2の底部21が傷んで、取り替える必要が生じた場合には、図4(a)の様に、中間部材33を取り除く。例えば、ハンマー等で中間部材33を破壊してもよい。
なお中間部材33を取り除く作業は、本体部5に扉6を取り付けたままで行ってもよい。
本実施形態の試験室2では、上部体31が見かけ上、中間部材33の上に乗っているが、上部体31の重量は、実質的に架台3に支持されているから、中間部材33を取り除いても、上部体31は図4(a)の様に、中空に浮いた状態となる。
また上部体31は、底体部30から取り外しても、型崩れせずに元の形状が維持される。
【0040】
中間部材33を取り除くことによって、上部体31が中空に浮いた状態となり、底体部30と上部体31の間に隙間50ができる。
また底体部30と上部体31とを結合する部材が総て無くなる。そのため、図4(b)の様に隙間50を利用して、底体部30を引き出すことができる。即ち底体部30を元の位置から除去することができる。
そして図5(a)の様に、新たな底体部30Aを上部体31の真下の位置に挿入する。その後、図5(b)の様に、底体部30Aと既設の上部体31の間に、新たな中間部材33Aを挿入し、両者の隙間50を埋めて結合する。
【0041】
こうして試験室2の底部21が入れ替えられ、試験室2が再生産されて底部21の補修が完了する。
本実施形態の試験室2によると、天面部20や側面部23、25、26を解体することなく、底部21だけを除去して入れ替えることができるので、従来に比べて手間が少なく、短い工期で工事を完了することができる。
【0042】
以上説明した実施形態では、上部体31の重量は実質的に架台3で支持されており、中間部材33には、実質的に垂直荷重が掛かっておらず、中間部材33を単に隙間50を塞ぐ断熱材として機能させている。そのため中間部材33を取り除いても、上部体31は元の高さを維持して中空に止まり、底体部30と上部体31の間に隙間50が出現する。
【0043】
この構成に代わって、上部体31を持ち上げることによって、底体部30と上部体31を切り離し、両者の間に隙間50を形成させてもよい。
【0044】
図6に示す試験室60は、前記した試験室2と同様に、底体部30と上部体31に区分されており、上部体31の重量は実質的に架台3で支持されている。
本実施形態では、中間部材33は無く、上部体31の下部が、直接的に底体部30に載置されている。
【0045】
本実施形態の試験室60では、架台3の柱に受け板61が一体的に取り付けられている。
本実施形態の試験室60では、架台3の受け板61にジャッキ62等の上部体上昇手段を設置し、ジャッキ62で、架台3を持ち上げて、上部体31を上昇させ、底体部30と上部体31を切り離し、両者の間に隙間50を形成させる。そして底体部30を引き出し底部21を入れ替えることができるため、補修作業が容易である。
【0046】
以上説明した実施形態では、試験室2、60の外側に荷重支持部材たる架台3を設け、当該架台3で上部体31の重量を支持したが、図7に示す試験室65の様に、上部体31に独立した脚部(荷重支持部材)63を設け、上部体31が脚部63によって自立する構造であってもよい。
本実施形態では、脚部63は底体部30と非接触であり、上部体31の荷重は底体部30に掛からない。
そのため中間部材33を取り除いても、上部体31は中空に浮いた状態となる。そして底体部30を引き出し底部21を入れ替えることができるため、補修作業が容易である。
【0047】
また建屋を荷重支持部材として利用し、建屋の梁等から、上部体31を吊り下げたり、建屋の柱等に上部体31の一部を支持させたりしてもよい。
【0048】
図6に示した試験室60では、上部体31をジャッキ62で持ち上げたが、天井クレーン(上部体上昇手段)等によって上部体31を上昇させてもよい。
また架台3を介さず、上部体31だけを天井クレーン等によって持ち上げてもよい。
【0049】
上記した実施形態では、中間部材33としてブロック状の断熱材を採用したが、上部体31の下部と底体部30との間の隙間50の内外に板を張って隙間50を封鎖し、この中にグラスウール等の断熱材を詰め込んでもよい。また隙間50に発泡樹脂液を充填し、隙間50内で発泡樹脂液を発泡、硬化させてもよい。
【0050】
中間部材33が剛性を有するものであるならば、上部体31を常に架台3等から吊り下げておく必要はなく、状況に応じて支線材46を外してもよい。また底部21を補修する場合に支線材46を取り付けてもよい。
図6に示す試験室60についても同様であり、上部体31が剛性を有するならば、上部体31を常に架台3等から吊り下げておく必要はない。
【0051】
上記した実施形態では、鋼材の丸棒で上部体31を吊り下げたが、上部体31を吊り下げるための部材は、丸棒に限定されるものではなく、ネジ材や、L型鋼や溝型鋼等の鋼材であってもよい。またこれらをトラス構造やラーメン構造に組み合わせた部材で吊り下げてもよい。
鋼材の丸棒は、直線形状を維持する部材であるが、丸棒に代わって、ワイヤーやスリング、ロープ等の一定の形態を維持しない線材で上部体31を吊り下げてもよい。
また上部体31の支持方法は、吊り下げ構造に限定されるものではなく、上部体31の側面を架台3から水平に張り出した片持ち梁で保持する構造であってもよい。
【0052】
上記した実施形態では、中間部材33を取り除いたり、上部体31を持ち上げることによって、底体部30と上部体31の間に隙間50を形成させた。この方法によると、底体部30を引き出し易いばかりでなく、新たな底体部30を上部体31の下に挿入し易いという利点がある。
しかしながら、本発明では、底体部30と上部体31の間に隙間50を形成させることは必須ではない。例えば上部体31の重量の大半が、他の部材によって支持されているが、実質上、底体部30と上部体31が接していてもよい。
工事の手順としては、底体部30の一部を壊したり、側面から叩き出す等によって底体部30を取り出す。
多くの場合、底体部30は上部体31と擦れながら取り出されることとなる。
底体部30を取り出した後は、上部体31は宙に浮いた状態となる。
【0053】
上記した実施形態の説明では、中間部材33を取り除く等によって上部体31を中空に浮いた状態としても、上部体31は型崩れせずに元の形状が維持されることとした。
上記した様に、上部体31を中空に浮かしても、上部体31が型崩れしないことが理想であるが、実際には、自己の重量によって歪んだり曲がる場合もある。
また断熱パネル10、11、12のいくつかが脱落して落下する場合もある。
しかしながら、上部体31を中空に浮かしても、例えば一つの側面部23、25、26が落下したり、天面部20と側面部23、25、26とがばらばらになったり、断熱パネル10、11、12の多くが脱落するという様な崩壊は起きず、上部体31の形状は、概ね維持される。
即ち上部体31を中空に浮かしても、上部体31の形状は半箱状と言える様な原型をとどめ、上部体31の形状を概ね維持した状態で上部体31と底体部30を上下に分離可能である。
そして多少の修復作業が必要である場合もあるが、底体部30と接合することによって、試験室2を完成させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 環境試験装置
2、60、65 試験室(環境試験装置の試験室)
3 架台(荷重支持部材)
5 本体部
6 扉
8 断熱壁
10、11、12 断熱パネル
20 天面部
21 底部
23、25、26 側面部
30 底体部
31 上部体
33 中間部材
46 支線材
50 隙間
62 ジャッキ(上部体上昇手段)
63 脚部(荷重支持部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7