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特許7051680遺伝子検査チップ、その検査方法、製造方法およびマイクロフルイディクスチップシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】遺伝子検査チップ、その検査方法、製造方法およびマイクロフルイディクスチップシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220404BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20220404BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20220404BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20220404BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20220404BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6837 Z
C01B32/198
C12N15/115 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018524215
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2017102514
(87)【国際公開番号】W WO2018196265
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】201710289072.6
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】507134301
【氏名又は名称】北京京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Xihuanzhonglu, BDA, Beijing, 100176, P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】古 ▲楽▼
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031596(JP,A)
【文献】特開2009-178146(JP,A)
【文献】特開2013-076591(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102643916(CN,A)
【文献】特開2007-285777(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105200119(CN,A)
【文献】特表2006-509201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された上基板及び下基板を含む遺伝子検査チップであって、
前記上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられており、前記試料入口及び前記試料出口はそれぞれ前記上基板の対向する両端に位置し、
前記下基板の前記上基板に向かう面には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられており、前記反応セルは、前記マイクロ通路を介して前記試料入口および前記試料出口にそれぞれ接続されており、前記反応セルの表面にはアプタマーを有し、前記アプタマーは蛍光標識で修飾されており、
前記アプタマーは、前記反応セルの表面に結合されており、
前記アプタマーは、酸化グラフェンとの複合物を形成しており、
前記蛍光標識の蛍光が消光状態にあることを特徴とする遺伝子検査チップ。
【請求項2】
前記試料入口に接続された第1のプラスチック製ホースと、前記試料出口に接続された第2のプラスチック製ホースとを更に含み、
前記第1のプラスチック製ホースは、前記試料入口を通して溶液を導入するために用いられ、
前記第2のプラスチック製ホースは、前記試料出口を通して溶液を導出するために用いられる請求項1に記載の遺伝子検査チップ。
【請求項3】
前記反応セルの形状は円形である、請求項1又は2に記載の遺伝子検査チップ。
【請求項4】
前記下基板の材料はガラスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の遺伝子検査チップ。
【請求項5】
前記上基板は透明基板である、請求項1~4のいずれか1項に記載の遺伝子検査チップ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の遺伝子検査チップ及びパワーモジュールを含むマイクロフルイディクスチップシステムであって、
前記パワーモジュールは、サンプル溶液を前記遺伝子検査チップに導入または前記遺伝子検査チップから導出するためにパワーを提供することに用いられることを特徴とするマイクロフルイディクスチップシステム。
【請求項7】
前記パワーモジュールはインゼクターポンプである、請求項6に記載のマイクロフルイディクスチップシステム。
【請求項8】
上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられており、且つ、前記試料入口及び前記試料出口はそれぞれ上基板の対向する両端に位置し、
下基板には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられ、前記反応セルの内面に、蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合し、および
前記上基板と前記下基板を接着することにより、前記上基板が前記下基板上の反応セルとマイクロ通路を覆い、且つ前記反応セルが前記マイクロ通路を通してそれぞれ前記試料入口と前記試料出口に接続していることを含み、
酸化グラフェン溶液を前記反応セルに導入して、前記蛍光標識の蛍光を完全に消光させることを特徴とする遺伝子検査チップの製造方法。
【請求項9】
前記反応セルの内面に蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合することは具体的に、
前記反応セルの内面にシラン処理を行い、前記下基板の材料はガラスであり、
アプリケーターを用いて蛍光標識で修飾されている前記アプタマーを前記反応セルの内面に結合することを含む請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
蛍光標識で修飾されている前記アプタマーを前記反応セルの内面に結合した後に、更に、前記反応セルを洗浄することを含む請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年4月27日に中国特許庁に出願された発明の名称が「遺伝子検査チップ、その検査方法、製造方法およびマイクロフルイディクスチップシステム」である中国特許出願第201710289072.6号の優先権を要求する。ここで、本願が前記中国特許出願の公開内容の全文を引用する。
【0002】
本発明は、遺伝子検査技術分野に係り、特に遺伝子検査チップ、その検査方法、製造方法およびマイクロフルイディクスチップシステムに係る。
【背景技術】
【0003】
現有技術において、遺伝子検査の主な方法として、例えば直接配列決定法、蛍光ポリメラーゼ連鎖反応法及び遺伝子チップ法が挙げられる。その中で、遺伝子チップは体積が小さく、迅速且つ便利に多種類の遺伝子を同時に検査することができるため、遺伝子検査において広く使用されている。遺伝子検査チップの検査原理はハイブリダイゼーション配列決定であり、サンプルの遺伝子標的配列と遺伝子プローブが固定されている遺伝子検査チップをハイブリダイゼーションすることにより検査を行う。しかし、遺伝子チップ検査には標的遺伝子に対して標識を行うことが必要であるので、技術が複雑であり、且つハイブリダイゼーションしていない遺伝子分子の蛍光シグナルも検査結果に干渉と影響を与えることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、当業者にとっていかに遺伝子検査技術を簡単化し、かつ検査結果中の、ハイブリダイゼーションしていない遺伝子の蛍光シグナルがハイブリダイゼーションした遺伝子への影響を改善するかは解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施様態は
対向して配置された上基板及び下基板を含む遺伝子検査チップであって、
前記上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられており、前記試料入口及び前記試料出口はそれぞれ前記上基板の対向する両端に位置し、
前記下基板の前記上基板に向かう面には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられており、前記反応セルは、前記マイクロ通路を介して前記試料入口および前記試料出口にそれぞれ接続されており、前記反応セルの表面にはアプタマーを有し、前記アプタマーは蛍光標識で修飾されている、遺伝子検査チップを提供する。
【0006】
本実施様態に提供された前記遺伝子検査チップでは、
前記試料入口に接続された第1のプラスチック製ホースと、前記試料出口に接続された第2のプラスチック製ホースとを更に含み、
前記第1のプラスチック製ホースは、前記試料入口を通して溶液を導入するために用いられ、
前記第2のプラスチック製ホースは、前記試料出口を通して溶液を導出するために用いられる。
【0007】
本実施様態に提供された前記遺伝子検査チップでは、前記反応セルの形状は円形である。
【0008】
本実施様態に提供された前記遺伝子検査チップでは、前記下基板の材料はガラスである。
【0009】
本実施様態に提供された前記遺伝子検査チップでは、前記上基板は透明基板である。
【0010】
本実施様態は、
本実施様態に提供された前記遺伝子検査チップ及びパワーモジュールを含むマイクロフルイディクスチップシステムであって、
前記パワーモジュールは、前記サンプル溶液を前記遺伝子検出チップに導入または前記遺伝子検出チップから導出するためにパワーを提供することに用いられる、マイクロフルイディクスチップシステムを提供する。
【0011】
本実施様態に提供された前記マイクロフルイディクスチップシステムでは、前記パワーモジュールはインゼクターポンプである。
【0012】
本実施様態は、
酸化グラフェン溶液を前記反応セルに導入して、前記蛍光標識の蛍光を完全に消光させ、
前記蛍光標識の蛍光を完全に消光させた後、検査すべきサンプル溶液を前記試料入口を通して前記反応セルに導入し、
前記サンプル溶液が前記反応セルの表面の前記アプタマーとハイブリダイゼーション反応を起こした後、蛍光が回復するかどうかを確定して、回復する場合、前記サンプル溶液には標的遺伝子が存在し、一方、回復しない場合、前記サンプル溶液には標的遺伝子が存在しないことを含む、遺伝子検査チップの検査方法を提供する。
【0013】
本実施様態に提供された前記検査方法では、
前記サンプル溶液が前記反応セルの表面の前記アプタマーとハイブリダイゼーション反応を起こした後、蛍光が回復するかどうかを確定する前に、前記反応セルを洗浄することを含む。
【0014】
本実施様態に提供された前記検査方法では、
前記反応セルを洗浄することは、具体的に、
洗浄液を前記試料入口を通して前記反応セルに導入し、且つ前記試料出口を通して前記洗浄液を導出することを含む。
【0015】
本実施様態は、
上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられており、且つ、前記試料入口及び前記試料出口はそれぞれ上基板の対向する両端に位置し、
下基板には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられており、前記反応セルの内面に、蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合し、および
前記上基板と前記下基板を接着することにより、前記上基板が前記下基板にある反応セルとマイクロ通路を覆い、且つ前記反応セルが前記マイクロ通路を通してそれぞれ前記試料入口と前記試料出口に接続していることを含む、遺伝子検査チップの製造方法を提供する。
【0016】
本実施様態に提供された前記遺伝子検査チップの製造方法では、
前記反応セルの内面に蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合することは具体的に、
前記反応セルの内面にシラン処理を行い、前記下基板の材料はガラスであり、
アプリケーターを用いて蛍光標識で修飾されている前記アプタマーを前記反応セルの内面に結合することを含む。
【0017】
本実施様態に提供された前記製造方法では、
蛍光標識で修飾されている前記アプタマーを前記反応セルの内面に結合した後に、
酸化グラフェン溶液を前記反応セルに導入して、前記蛍光標識の蛍光を完全に消光させ、
前記反応セルを洗浄することを含む。
【0018】
本実施様態は、
対向して配置された上基板及び下基板を含む遺伝子検査チップであって、
前記上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられており、前記試料入口及び前記試料出口はそれぞれ上基板の対向する両端に位置し、
前記下基板の前記上基板に向かう面には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられており、前記反応セルは、前記マイクロ通路を介して前記試料入口および前記試料出口にそれぞれ接続されており、前記反応セルの表面にはアプタマーと酸化グラフェンとの複合物を有し、前記アプタマーは蛍光標識で修飾されており、且つ前記蛍光標識の蛍光が完全に消光される状態にある、遺伝子検査チップを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施態様が提供する遺伝子検査チップの構造の模式図である。
図2】本発明の実施態様が提供する遺伝子検査方法のフローチャートである。
図3】本発明の実施態様が提供する遺伝子検査方法のプロセスの模式図である。
図4】本発明の実施態様が提供する遺伝子検査チップの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下は図面を参照にして、本発明の実施態様が提供する遺伝子検査チップ、その検査方法、製造方法およびマイクロフルイディクスチップシステムの具体的な実施方法について詳しく説明する。
【0021】
図1で示されるように、本発明の実施態様は、
対向して配置された上基板01及び下基板02を含んでよい遺伝子検査チップであって、上基板01に少なくとも一対の試料入口03と試料出口04が設けられ、試料入口03と試料出口04はそれぞれ上基板01の対向する両端に位置し、下基板02の上基板01に向かう面には、少なくとも一つの反応セル05と少なくとも一つのマイクロ通路06が設けられており、反応セル05は、マイクロ通路06を介して前記試料入口03および前記試料出口04にそれぞれ接続されており、前記反応セル05の表面にはアプタマーを有し、アプタマーは蛍光標識で修飾されている、遺伝子検査チップを提供する。
【0022】
本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップでは、試料入口、マイクロ通路、反応セル、試料出口が遺伝子検査通路を構成しており、反応セルの表面に蛍光標識で修飾されているアプタマーがある。したがって、遺伝子検査を行う場合、まず、蛍光標識の蛍光を消光させて、次にサンプル溶液を試料入口を通して反応セルに導入することができる。サンプル溶液に標的遺伝子が存在する場合、標的遺伝子が反応セル表面のアプタマーとハイブリダイゼーション反応を起こし結合し、蛍光が回復する。一方、サンプル溶液に標的遺伝子が存在しない場合、蛍光が依然として消光された状態にある。よって、該遺伝子検査チップが標的遺伝子に対して蛍光標識を行わなくても、標的遺伝子の検査を実現することができ、遺伝子検査プロセスを簡単化し、かつ遺伝子の検査結果における、ハイブリダイゼーションしていない標的遺伝子分子の蛍光シグナルのハイブリダイゼーションした遺伝子への影響を防ぐことができる。また、本実施態様の遺伝子検査チップは構造が簡単であり、操作が便利で、アプタマーの特異性が高く、検査結果が精確である。
【0023】
また、本実施態様の遺伝子検査チップには複数の検査通路を設けることができ、同時に多種類の異なる遺伝子を検査することができ、検査効率が比較的に高い。
【0024】
具体的に、本実施態様に提供された前記遺伝子検査チップでは、酸化グラフェンにより蛍光標識の蛍光を消光させることができる。また、酸化グラフェンはグラフェンの誘導体であり、酸化グラフェンはグラフェンにヒドロキシル基とカルボキシル基を導入したものであり、グラフェンと比べて、より強い親水性と生体適合性を有することになり、消光剤として、ほとんどの有機色素、量子ドットの蛍光を消光させることができる。従って、反応セルに酸化グラフェン溶液を通して、反応セルの表面にアプタマーと酸化グラフェンとの複合物が形成される。アプタマーと酸化グラフェンとの複合物において、酸化グラフェンは一本鎖核酸のアプタマーを吸着し、その標識物の蛍光を消光させることができる。これにより、標的遺伝子がサンプル溶液に存在する場合、アプタマーと標的遺伝子の相補DNAとが結合して二本鎖DNA分子が形成され、立体障害が大きくなるため、酸化グラフェンの吸着能力が弱まり、蛍光が回復する。
【0025】
具体的な実施において、本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップでは、図1で示されるように、試料入口03に接続された第1のプラスチック製ホース031と、試料出口04に接続された第2のプラスチック製ホース041を更に含んでよく、第1のプラスチック製ホース031は、試料入口03を通して溶液を導入するために用いられ、第2のプラスチック製ホース041は、試料出口04を通して溶液を導入するために用いられる。具体的に、遺伝子検査チップはそれぞれ試料入口と試料出口に接続されたプラスチック製ホースを介して、遺伝子検査チップ内に液体を導入し、且つ遺伝子検査チップ内の溶液を導出することにより、溶液の導入と導出を容易にする。また、プラスチック製ホースにより、試料入口、マイクロ通路、反応セル、試料出口からなる遺伝子検査通路を洗浄することができる。すなわち、ハイブリダイゼーション反応の後、標的遺伝子の存在を確認する前に、プラスチック製ホースを通して試料入口と試料出口から洗浄液を導入又は導出することにより、遺伝子検査通路を洗浄し、ハイブリダイゼーションしていない遺伝子を除去し、ハイブリダイゼーションした後の遺伝子の観察を容易にし、検査精度を向上させる。
【0026】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップでは、反応セルの観察を実現するために、上基板が透明基板である。
【0027】
具体的な実施において、本発明の実施態様に提供された遺伝子検査チップでは、反応セルの形状は円形であってもよいし、要求を満たすほかの形状であってもよい。特に制限がない。顕微鏡で容易に観察しやすいので、反応セルの形状は円形が好ましい。
【0028】
具体的な実施において、本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップでは、下基板の材料はガラスである。具体的に、本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップでは、下基板の材料はガラスであり、シラン処理を行って、前記反応セルの内面に蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合させ、その後、酸化グラフェンにより蛍光を消光させる。これにより、標的遺伝子が存在するサンプル溶液が反応セルの表面のアプタマーとハイブリダイゼーション反応を起こして、反応セルの表面に結合する。洗浄を行う場合、ハイブリダイゼーションしていない遺伝子とハイブリダイゼーションした遺伝子を分離して、検査結果における、ハイブリダイゼーションしていない遺伝子のハイブリダイゼーションした遺伝子への影響を防ぐことができ、遺伝子検査の精度を向上するには有利である。また、遺伝子検査チップにおける上基板の材料はガラス或いは例えばポリジメチルシロキサンなどのポリマーであってよい。上基板にはスルーホールを作ることにより、試料入口と試料出口が形成され、下基板にリソグラフィー技術によりマイクロ通路や反応セルをエッチングすることができ、反応セルでサンプル溶液が反応セルの表面のアプタマーとハイブリダイゼーションを起こすことができる。上、下基板は低温接着剤で接着することができる。
【0029】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップでは、遺伝子検査を行う場合、蛍光標識の蛍光を消光させる。具体的な実施において、遺伝子検査チップが使用される前に、蛍光標識の蛍光を消光状態にさせることもできる。
【0030】
よって、同じ発明思想に基づき、本発明の実施態様は
対向して配置された上側及び下基板を含み、
上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられており、試料入口及び試料出口はそれぞれ上基板の対向する両端に位置し、
下基板の上基板に向かう面には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられており、反応セルは、マイクロ通路を介して試料入口および試料出口にそれぞれ接続されており、反応セルの表面にはアプタマーと酸化グラフェンとの複合物を有し、前記アプタマーは蛍光標識で修飾されており、且つ蛍光標識の蛍光が消光状態にある遺伝子検査チップを更に提供する。
【0031】
本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップは、前記遺伝子検査チップと比べて、前者の反応セルの表面に蛍光標識で修飾されているアプタマーを有し、しかも、本発明の実施態様において、反応セルの表面はアプタマーと酸化グラフェンとの複合物であり、且つ、アプタマーが蛍光標識で修飾されており、蛍光標識の蛍光が消光状態にある。これにより、使用する場合、蛍光がすでに消光状態にあるため、事前に、蛍光を消光させる必要がなく、直接にサンプル溶液を試料入口を通して反応セルに導入することができる。サンプル溶液に標的遺伝子が存在する場合、標的遺伝子が反応セル表面のアプタマーとハイブリダイゼーション反応を起こし結合し、蛍光が回復する。一方、サンプル溶液に標的遺伝子が存在しない場合、蛍光が依然として消光状態にある。よって、該遺伝子検査チップが標的遺伝子に対して蛍光標識を行わなくても標的遺伝子の検査を実現することができ、遺伝子検査プロセスを簡単化し、かつ遺伝子の検査結果においてのハイブリダイゼーションしていない遺伝子分子の蛍光シグナルがハイブリダイゼーションした遺伝子への影響を防ぐことができる。また、本実施態様の遺伝子検査チップは構造が簡単であり、操作が便利で、アプタマーの特異性が高く、検査結果が精確である。
【0032】
同じ発明思想に基づき、本発明の実施態様は、本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップ及びパワーモジュールを含むマイクロフルイディクスチップシステムであって、パワーモジュールが、サンプル溶液を遺伝子検査チップに導入するまたは遺伝子検査チップから導出するためにパワーを提供することに用いられるマイクロフルイディクスチップシステムを提供する。該マイクロフルイディクスチップシステムが課題を解決するメカニズムは遺伝子検査チップと類似である。よって、該マイクロフルイディクスチップシステムの実施様態は前記遺伝子検査チップの実施様態を参照することができ、重複の内容を省略した。
【0033】
具体的な実施において、本発明の実施態様に提供された前記マイクロフルイディクスチップシステムでは、パワーモジュールはインゼクターポンプであってもいい。具体的に、本発明の実施態様が提供するマイクロフルイディクスチップシステムにおいて、インゼクターポンプを通じて、遺伝子検査チップに液体を導入または導出するためにパワーを提供することができる。当然ほかのパワーを採用することができ、特に制限がない。
【0034】
同じ発明思想に基づき、図面2で示されているように本発明の実施態様は、
S101、酸化グラフェン溶液を反応セルに通して、蛍光標識の蛍光を完全に消光させること;
S102、蛍光標識の蛍光を完全に消光させた後、検査すべきサンプル溶液を試料入口を通して反応セルに導入すること;
S103、サンプル溶液が反応セルの表面のアプタマーとハイブリダイゼーション反応を起こした後、蛍光が回復するかどうかを確定すること;
回復する場合、サンプル溶液には標的遺伝子が存在し、一方、回復しない場合、サンプル溶液には標的遺伝子が存在しないことを含む遺伝子検査チップの検査方法を提供する。
【0035】
本発明の実施態様に提供された前記検査方法では、標的遺伝子を標識する必要がなく、酸化グラフェン溶液を反応セルに通して蛍光標識の蛍光を完全に消光させ、蛍光標識の蛍光を完全に消光させた後、検査すべきサンプル溶液を反応セルに導入して、サンプル溶液に反応セルの表面に位置し且つ完全に消光された蛍光標識で修飾されているアプタマーを反応セルでハイブリダイゼーション反応をさせるだけにより、標的遺伝子の検査を実現することができる。該遺伝子検査方法は操作が便利であり、検査結果の精度も高い。
【0036】
具体的に、酸化グラフェンはグラフェンの誘導体であり、酸化グラフェンはグラフェンにヒドロキシル基とカルボキシル基を導入したものであり、グラフェンと比べて、より強い親水性と生体適合性を有することになり、ほとんどの有機色素および量子ドットの蛍光を消光するための消光剤として使用することができる。酸化グラフェンは一本鎖核酸のアプタマーを吸着し、標識物の蛍光を消光させることができる。よって、酸化グラフェンを反応セルに入れ、蛍光標識を有するアプタマーと混合して、消光を実現する。アプタマーが結合標的遺伝子の相補DNAと結合して二本鎖DNA分子が形成され、立体障害が大きくなるため、酸化グラフェンの吸着能力が弱まり、蛍光が回復する。これにより、標的遺伝子の検査を実現することができる。よって、検査時にサンプル溶液は試料入口から導入され、反応セルの表面のアプタマーと反応する。検査すべきサンプル溶液に標的遺伝子が存在する場合、遺伝子はアプタマーと結合して酸化グラフェンから脱落し、相応する蛍光シグナルが得られる。一方、標的遺伝子が存在しない場合、すべての蛍光が消光状態にあり、蛍光シグナルがない。総じて、本発明の実施態様の遺伝子検査方法は、標的遺伝子に対する複雑な標識を必要とせず、遺伝子検査技術を簡単化し、且つマイクロフルイディクスチップ技術と遺伝子検査を組み合わせて、マイクロフルイディクス技術における、ミクロンオーダーのチップに用いられる連続して操作できるマイクロ流体により遺伝子検査を実現し、試薬の消費量が少なく、小型で持ちやすく、反応が速く効率が高く、容易に集積しやすいという特徴を有する。
【0037】
具体的な実施において、 本発明の実施態様に提供された前記検査方法では、サンプル溶液が反応セルの表面のアプタマーとハイブリダイゼーションした後、蛍光が回復するかどうかを確定する前に、反応セルを洗浄することを含んでもよい。
【0038】
具体的に、洗浄によりハイブリダイゼーションしていない蛍光プローブを洗浄し、それによる干渉を防ぐことができる。具体的な洗浄過程は洗浄液を試料入口を通して反応セルに導入し、且つ試料出口を通して洗浄液を導出することである。
【0039】
同じ発明思想に基づき、図4で示されるように、本発明の実施態様は、
S201、上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられ、試料入口及び試料出口はそれぞれ上基板の対向する両端に位置すること、
S202、下基板には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられ、反応セルの内面に、蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合すること、および
S203、上基板と下基板を接着することにより、上基板が下基板にある反応セルとマイクロ通路を覆い、且つ反応セルがマイクロ通路を通してそれぞれ試料入口と試料出口に接続していることを含む遺伝子検査チップの製造方法を提供する。
【0040】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記製造方法では、ステップ201とステップ202には前後の順序がなく、ステップ201を実行してから、ステップ202を実行することもできるし、ステップ202を実行してから、ステップ201を実行することもできる。勿論、ステップ201とステップ202を同時に実行することもできる。特に制限がない。
【0041】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記製造方法では、
反応セルの内面に蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合することは具体的に、
反応セルの内面にシラン処理を行い、下基板の材料はガラスであり、
アプリケーターを用いて、蛍光標識で修飾されているアプタマーを反応セルの内面に結合する。
【0042】
具体的に、シラン処理を行うことにより、反応セルの内面に蛍光標識で修飾されているアプタマーを結合することにより、ハイブリダイゼーション反応を行った後に、標的遺伝子が存在するサンプル溶液がアプタマーとハイブリダイゼーション反応を起こして、反応セルの表面に結合する。こうすると、洗浄を行う場合、ハイブリダイゼーションしていない遺伝子とハイブリダイゼーションした遺伝子を分離して、検査結果においてのハイブリダイゼーションしていない遺伝子のハイブリダイゼーションした遺伝子への影響を防ぐことができ、遺伝子検査の精度を向上するには有利である。
【0043】
具体的に、遺伝子検査を行う場合、蛍光標識の蛍光を完全的に消光させることを回避するために、本発明の実施態様が提供した前記製造方法において、ステップ202において、蛍光標識で修飾されているアプタマーを前記反応セルの内面に結合した後に、酸化グラフェン溶液を前記反応セルに通して、蛍光標識の蛍光を完全に消光させること、反応セルを洗浄することを含む。
【0044】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記製造方法において、酸化グラフェン溶液を反応セルに通してから、上基板と下基板を接着することもできるし、上基板と下基板を接着した後に、試料入口を通じて酸化グラフェン溶液を前記反応セルに通すこともできる。特に制限がない。
【0045】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記製造方法では、一般的に、上基板と下基板を低温接着剤により接着する。
【0046】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記製造方法では、スルーホールを作ることにより、上基板に試料入口と試料出口を形成することができる。
【0047】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記製造方法では、リソグラフィー技術により下基板上にマイクロ通路と反応セルをエッチングすることができる。
【0048】
具体的に、下記の具体的な実施例に基づき本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップの検査のメカニズムを詳しく説明し、具体的には下記のようである。
【0049】
図3で示されるように、遺伝子検査チップの反応セル内に化学表面処理により蛍光色素で修飾されているアプタマーを結合してから、反応セルに1mg/mlの酸化グラフェン溶液を導入して、完全に消光するまで蛍光共焦点顕微鏡で蛍光消光の状況を観察することができる。チップの反応セルに検査すべきサンプルを添加する際に、標的遺伝子が存在する場合、標的遺伝子がガラス表面のアプタマーと結合して、これにより、蛍光が回復する。一方、標的遺伝子が存在しない場合、アプタマーと結合することができないため、消光状態が維持される。
【0050】
具体的に、本発明の実施態様に提供された前記遺伝子検査チップは、遺伝子検査の目的を達成することができ、且つアプタマーの特異性が高く、検査結果が精確である。また、本発明の実施態様の遺伝子検査チップが複数の平行通路を有することができる。例えば、図1に示されるように、四つの平行通路を有して同時に四種類の異なる遺伝子を検査することができ、検査効率が速くて効率になる。
【0051】
本発明の実施態様は遺伝子検査チップ、その検査方法、製造方法およびマイクロフルイディクスチップシステムを提供する。該遺伝子検査チップは、対向して配置された上基板及び下基板を含む遺伝子検査チップであって、上基板には、少なくとも一対の試料入口及び試料出口が設けられており、試料入口及び試料出口はそれぞれ上基板の対向する両端に位置し、下基板の上側基板に向かう面には、少なくとも一つの反応セルと少なくとも一つのマイクロ通路が設けられており、反応セルは、マイクロ通路を介して試料入口および試料出口にそれぞれ接続されており、試料入口、マイクロ通路、反応セル、試料出口は遺伝子検査通路を構成し、反応セルの表面にはアプタマーを有し、アプタマーは蛍光標識で修飾されている。したがって、遺伝子検査を行う場合、まず、蛍光標識の蛍光を消光させて、次に、サンプル溶液を試料入口を通じて反応セルに導入し、サンプル溶液に標的遺伝子が存在する場合、標的遺伝子が反応セル表面のアプタマーとハイブリダイゼーションを行い、結合することにより、蛍光が回復し、一方、サンプル溶液に標的遺伝子が存在しない場合、蛍光が依然として消光状態にある。従って、該遺伝子検査チップは標的遺伝子に対し蛍光標識を行う必要がなくても、標的遺伝子検査を実現することができる。遺伝子検査の過程を簡単化して、遺伝子検査結果においてのハイブリダイゼーションしていない標的遺伝子の蛍光シグナルのハイブリダイゼーション遺伝子への影響を防ぐことができる。また、本願の実施態様の遺伝子検査チップは構造が簡単であり、操作が便利で、アプタマーの特異性が高く、検査結果が精確である。
【0052】
明らかに、当業者は本願の実施例の要旨と範囲から離脱せずに本願の実施例に対してさまざまな変更と変形を行うことができる。本願の実施例の前記変更と変形が本願の請求項とその実質的に同様な範囲内に属する場合、本願も前記変更と変形を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0053】
01 上基板
02 下基板
03 試料入口
031 第1のプラスチック製ホース
04 試料出口
041 第2のプラスチック製ホース
05 反応セル
06 マイクロ通路
図1
図2
図3
図4