(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】結節性硬化症の処置のためのアンチセンスオリゴマー
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220404BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20220404BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220404BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220404BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220404BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C12N15/113 ZNA
C12N15/33
A61K48/00
A61K31/7105
A61P35/00
A61P25/00
(21)【出願番号】P 2018529258
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(86)【国際出願番号】 US2016066705
(87)【国際公開番号】W WO2017106375
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-13
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504278156
【氏名又は名称】コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
(73)【特許権者】
【識別番号】518195690
【氏名又は名称】ストーク セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】アズナレズ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ,ヒュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】クライナー,エイドリアン
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0252877(US,A1)
【文献】CANCER RES.,2002年,Vol.62,p.1503-1509
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,2000年,Vol.1502,p.495-507
【文献】Genomics,1995年,Vol.27,p.475-480
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 48/00
A61P 1/00-43/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツベリンをコードする保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)であって、
SEQ ID NO:21~23、25~27、250~252、254~256、395~401、460~462、464~467から選択される配列を含み、
RIC mRNA前駆体は保持されたイントロンを含み、
RIC mRNA前駆体を発現する細胞においてASOがRIC mRNA前駆体の標的部分に結合することにより、保持されたイントロンはRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、ツベリンをコードする成熟mRNAのレベルを増加させ、RIC mRNA前駆体の標的部分は保持されたイントロン内にある、前記ASO。
【請求項2】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16の領域内にある、請求項1に記載のASO。
【請求項3】
RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:2~8から選択される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を備えた配列を含む、請求項1又は2に記載のASO。
【請求項4】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、SEQ ID NO:5097~5105から選択される配列内にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のASO。
【請求項5】
ASOが、
18~50の核酸塩基から成る、請求項1~
4のいずれか1項に記載のASO。
【請求項6】
ASOが、SEQ ID NO:21~23、25~27、250~252、254~256、395~401、460~462、464~467から選択される配列から成る、請求項1~4のいずれか1項に記載のASO。
【請求項7】
ツベリンが、同等の野生型タンパク質と比較して:
i) 機能が低下した形態;又は
ii) 十分に機能的な形態、
で生成される、請求項1~6のいずれか1項に記載のASO。
【請求項8】
ASOが、ホスホロチオエート結合若しくはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾;又は修飾された糖部若しくは糖アナログを含み、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル部分、2’-フルオロ部分、又は2’-O-メトキシエチル部分を含んでいてもよい、請求項1~7のいずれか1項に記載のASO。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のASOを含むポリヌクレオチドを
連結させたウイルスベクター。
【請求項10】
被験体においてツベリンタンパク質の量又は機能の不足を特徴とする疾患又は疾病を処置するための医薬組成物であって、請求項1~
8のいずれか1項に記載のASO又は請求項
9に記載のウイルスベクターを含む、前記医薬組成物。
【請求項11】
疾患又は疾病が結節性硬化症である、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ツベリンの量の不足は、ツベリンのハプロ不全によって引き起こされ、ここで、被験体は、機能的なツベリンをコードする第1の対立遺伝子、及びツベリンが生成されない第2の対立遺伝子又は非機能的なツベリンをコードする第2の対立遺伝子を有し、ASOは、第1の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合する、請求項
10又は
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
被験体は、第1の変異対立遺伝子及び第2の変異対立遺伝子を有し、ツベリンは、
a. 第1の変異対立遺伝子から:
i. 野生型対立遺伝子からの生成と比較して減少したレベルで生成される;
ii. 同等の野生型ツベリンと比較して機能が低下した形態で生成される;又は
iii. 生成されない、及び
b. 第2の変異対立遺伝子から:
i. 野生型対立遺伝子からの生成と比較して減少したレベル生成される;
ii. 同等の野生型ツベリンと比較して機能が低下した形態で生成される;又は
iii. 生成されない、
ここで、被験体が第1の変異対立遺伝子a.iii.を有する場合、第2の変異対立遺伝子はb.i.又はb.ii.であり、被験体が第2の変異対立遺伝子b.iii.を有する場合、第1の変異対立遺伝子はa.i.又はa.ii.であり、RIC mRNA前駆体は、a.i.若しくはa.ii.である第1の変異対立遺伝子又はb.i.若しくはb.ii.である第2の変異対立遺伝子から転写される、請求項
10~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内注射による投与用である、請求項
10~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/267,212号の利益を主張し、該仮出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<配列表>
本出願は配列表を包含しており、これは、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出され、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。2016年12月12日に作成されたASCIIのコピーは、47991-706_601_SL.txtのファイル名であり、1,663,708バイトのサイズである。前述のファイルは2016年12月12日に作成され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
結節性硬化症(TSC)は、複数の臓器系における良性腫瘍の成長を特徴とする障害である(Au,K.,etal.,J.Child Neurol.,2004,19:699-709)。中枢神経系(CNS)の腫瘍は、罹患率と死亡率、続いて腎疾患の主因である。患者は、皮膚、肺、腎臓、および心臓の異常と同様に、発作、知的障害、および発育上の遅延を含み得る脳の異常に苦しむことがある。障害は米国で25,000人から40,000人もの個体、および世界でも約100万人~200万人で発症しており、6,000人の新生児に1人のの評価された罹患率と推定される。
【0004】
TSCは、2つの遺伝子TSC1およびTSC2上で生じる遺伝性の欠損またはデノボの突然変異によって引き起こされる、常染色体優性遺伝パターンを備えた遺伝病である。遺伝子の1つだけが罹患すればTSCが存在する。染色体9上のTSC1遺伝子は、ハマルチンと呼ばれるタンパク質を産生する。1993年に発見されたTSC2遺伝子は、染色体16上にあり、タンパク質ツベリンを産生する。科学者らは、これらのタンパク質がmTORと呼ばれる支配的な進化上で保存されたキナーゼの活性化を阻害することにより、成長抑制因子として複合体中で作用すると信じている。mTORの調節の喪失がハマルチンまたはツベリンのいずれかを欠く細胞で生じ、これにより、TSC脳病変で見られるような異常な分化と発達、および拡大した細胞の生成が引き起こされる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、結節性硬化症を処置するための組成物および方法を提供し、組成物は、TSC2の保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)のイントロンスプライス部位での構成的スプライシングを促進するアンチセンスオリゴマー(ASO)を含む。本発明はさらに、必要としている被験体、例えば、TSC2タンパク質の産生の増加から恩恵を得ることができる被験体の細胞において、成熟TSC2 mRNAおよび順にTSC2タンパク質の産生を増加させるための組成物および方法を提供する。上記方法は、結果としてツベリンタンパク質産生の不足につながる、ミスセンス、スプライシング、フレームシフトおよびナンセンスの変異を含む、TSC2遺伝子内の変異に加えて、全遺伝子欠失によっても引き起こされる結節性硬化症を有する被験体を処置するために使用されてもよい。
【0006】
本明細書には、特定の実施形態において、被験体の細胞により標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させることによって必要としている被験体の結節性硬化症を処置する方法が開示され、ここで、該細胞は、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここでRIC mRNA前駆体は、標的タンパク質または機能的RNAをコードし、該方法は、被験体の細胞を、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させる。いくつかの実施形態において、本明細書にはまた、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有している細胞によって、ツベリンである標的タンパク質の発現を増加させる方法が開示され、該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここで、RIC mRNA前駆体はツベリンタンパク質をコードし、該方法は、細胞を、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、ツベリンタンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、ツベリンタンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態では、標的タンパク質はツベリンである。いくつかの実施形態において、標的タンパク質または機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足している標的タンパク質あるいは機能的RNAを機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質あるいは補償機能的RNAである。いくつかの実施形態では、細胞は、ツベリンタンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体内にあるか又は被験体に由来する。いくつかの実施形態では、標的タンパク質の量の不足は、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされ、ここで被験体は、機能的な標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、標的タンパク質が産生されない第2の対立遺伝子、または非機能的な標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合する。いくつかの実施形態において、被験体は、標的タンパク質の量または機能の不足に起因する障害により引き起こされた疾病を抱えており、ここで、被験体は、(a)(i)標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの生成と比較して、減少したレベルで生成され、(ii)標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で生成され、あるいは、(iii)標的タンパク質が生成されない、第1の変異対立遺伝子と、(b)(i)標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの生成と比較して、減少したレベルで生成され、(ii)標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で生成され、あるいは、(iii)標的タンパク質が生成されない、第2の変異対立遺伝子とを有し、ここで、被験体が第1の変異対立遺伝子a.iii.を有するとき、第2の変異対立遺伝子はb.i.あるいはb.ii.であり、ここで、被験体が第2の変異対立遺伝子b.iii.を有するとき、第1の変異対立遺伝子はa.i.あるいはa.ii.であり、ここで、RIC mRNA前駆体は、a.i.あるいはa.ii.である第1の変異対立遺伝子、および/または、b.i.あるいはb.ii.である第2の変異対立遺伝子から転写される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、同等の野性型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で生成される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、同等な野性型タンパク質と比較して、十分に機能的な形態で生成される。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-500までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、以下の内部の保持されたイントロンにある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して、+6から+500、+6から+495、または+6から+100の領域;または、(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して、-16から-500、-16から-400、または-16から-100の領域。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、以下の内部にある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域;あるいは(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域。いくつかの実施形態では、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2-8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、機能的RNAまたは標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより、標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体の部分的なスプライシング、または野生型のmRNA前駆体の部分的なスプライシングによって生成された。いくつかの実施形態において、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである。いくつかの実施形態において、生成された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞において生成された標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAの総量は、対照細胞において生成された標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAの総量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍増加する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞によって生成された標的タンパク質の総量は、対照細胞によって生成された標的タンパク質の総量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍増加する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む。いくつかの実施形態において、それぞれの糖部は修飾された糖部である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基からなる。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である。いくつかの実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:5097-5105から選択される配列内にある。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9-5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9-5096から選択されたヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、細胞は、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、および、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で最も豊富な保持されたイントロンに結合する。いくつかの実施形態において、最も豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質または機能的RNAを
コードするmRNAを生成するRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。いくつかの実施形態において、細胞は、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、および、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で2番目に豊富な保持されたイントロンに結合する。いくつかの実施形態において、2番目に豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAを生成するRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。いくつかの実施形態では、疾病は疾患または障害である。いくつかの実施形態において、疾患または障害は結節性硬化症である。いくつかの実施形態において、標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はTSC2遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、当該方法はTSC2タンパク質発現を評価する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはツベリンRIC mRNA前駆体の標的部分へ結合し、ここで、標的部分はSEQ ID NOS:49、50、51、52、53、54、55、56、および57から選択された配列内にある。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態では、被験体はヒト以外の動物である。いくつかの実施形態において、被験体は胎児、胚、あるいは子供である。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、被験体の皮膚への局所投与、肺への肺送達、くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射によって投与される。いくつかの実施形態において、5’スプライス部位に隣接するエクソンの-3e~-1eと、保持されたイントロンの+1~+6にある9つのヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンの-15~-1と3’スプライス部位に隣接するエクソンの+1eにある16のヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である。
【0007】
本明細書には、特定の実施形態において、上記の方法に使用されるアンチセンスオリゴマーが開示される。
【0008】
ある実施形態では、SEQ ID NO:9-5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含むアンチセンスオリゴマーが本明細書で開示される。
【0009】
本明細書には、特定の実施形態において、上記のアンチセンスオリゴマーおよび賦形剤を含む医薬組成物が開示される。いくつかの実施形態において、本明細書にはまた、皮膚への局所投与、肺への肺送達、くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射により医薬組成物を投与することによって、必要としている被験体を処置する方法が記載される。
【0010】
本明細書には、特定の実施形態において、不足しているタンパク質または不足している機能的RNAに関係する被験体の結節性硬化症を処置するために細胞によって標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させる方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物が開示され、ここで、不足しているタンパク質または機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足しており、ここで、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の構成的スプライシングを増強し、ここで、標的タンパク質は:(a)不足しているタンパク質;あるいは(b)被験体において不足しているタンパク質を機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質であり、ここで、機能的RNAは:(a)不足しているRNA;または(b)被験体において不足している機能的RNAを機能的に増強または交換する、補償する機能的RNAであり、ここでRIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体からスプライシングされ、それによって、被験体において標的タンパク質または機能的RNAの産生または活性を増加させる。いくつかの実施形態において、本明細書にはまた、被験体においてツベリンタンパク質に関係する疾病を処置する方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物が開示され、該方法は、被験体の細胞によってツベリンタンパク質の発現を増加させる工程であって、細胞が保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含む、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前駆体はツベリンタンパク質をコードし、該方法は細胞をアンチセンスオリゴマーと接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、ツベリンタンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、ツベリンタンパク質の発現を増加させる、工程を含む。いくつかの実施形態では、疾病は疾患または障害である。いくつかの実施形態において、疾患または障害は結節性硬化症である。いくつかの実施形態において、標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はTSC2遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはRIC mRNA前駆体の一部を標的とし、これは、以下の内部の保持されたイントロンにある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から+100の領域;(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16から-100の領域。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの保持されたイントロンの5’スプライス部位の約500、400、300、200、または100ヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイントロンの3’スプライス部位の約100、200、300、400、または500ヌクレオチド上流までの領域内にあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、以下の内部にある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域;あるいは(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域。いくつかの実施形態では、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2-8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、機能的RNAまたは機能的タンパク質の量を増加させない。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体、または野生型のmRNA前駆体からの部分的なスプライシングによって生成された。いくつかの実施形態において、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである。いくつかの実施形態において、生成された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンは律速イントロンである。いくつかの実施形態において、前記保持されたイントロンは前記RIC mRNA前駆体で最も豊富な保持されたイントロンである。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンは前記RIC mRNA前駆体で2番目に豊富な保持されたイントロンである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。いくつかの実施形態では、前記アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む。いくつかの実施形態において、それぞれの糖部は修飾された糖部である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基からなる。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、ツベリン RIC mRNA前駆体の標的部分に結合し、ここで標的部分は、SEQ ID NO:5097-5105から選択される配列内にある。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9-5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9-5096から選択されたヌクレオチド配列を含む。
【0011】
本明細書には、特定の実施形態において、上記のアンチセンスオリゴマーおよび賦形剤を含む医薬組成物が開示される。いくつかの実施形態において、本明細書にはまた、皮膚への局所投与、肺への肺送達、くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射により医薬組成物を投与することによって、必要としている被験体を処置する方法が記載される。
【0012】
ある実施形態において、医薬組成物が本明細書に開示され、該組成物は、不足しているTSC2 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズするアンチセンスオリゴマー、および薬学的に許容可能な賦形剤を含み、ここで不足しているTSC2 mRNAの転写産物は保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーは、不足しているTSC2 mRNAの転写産物からの保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。いくつかの実施形態では、不足しているTSC2 mRNAの転写産物は、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物である。いくつかの実施形態において、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-500までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態では、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、TSC2 RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2-8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である。いくつかの実施形態では、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:5097-5105から選択される配列内にある。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9-5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9-5096から選択されたヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射のために製剤される。
【0013】
ある実施形態では、ツベリンタンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたTSC2 mRNA転写産物を生成するべく、保持されたイントロンの除去を促すために不足しているTSC2 mRNA転写産物の処理を誘発する方法が本明細書で開示され、該方法は:(a)被験体の標的細胞へアンチセンスオリゴマーを接触させる工程と、(b)アンチセンスオリゴマーを不足しているTSC2 mRNAの転写産物にハイブリダイズする工程であって、不足しているTSC2 mRNAの転写産物が、ツベリンタンパク質の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工程と、(c)ツベリンタンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたTSC2 mRNA転写産物を生成するために不足しているTSC2 mRNA転写産物から少なくとも1つの保持されたイントロンを除去する工程と、および(d)十分に処理されたTSC2 mRNAの転写産物からツベリンタンパク質の機能形態を翻訳する工程を含む。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンは保持されたイントロン全体である。いくつかの実施形態では、不足しているTSC2 mRNAの転写産物は、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物である。
【0014】
本明細書には、特定の実施形態において、ツベリンタンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体を処置する方法が開示され、該方法は、SEQ ID NO:9-5096のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に投与する工程を含む。
【0015】
<引用による組み込み>
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれるように具体的かつ個々に指示される程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] 被験体の細胞により標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させることによって被験体の結節性硬化症を処置する方法であって、
ここで、前記細胞は、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、RIC mRNA前駆体は、標的タンパク質または機能的RNAをコードし、
前記方法は、
被験体の細胞を、標的タンパク質又は機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、標的タンパク質又は機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質又は機能的RNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質又は機能的RNAの発現を増加させる、方法。
[項目2] 保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有している細胞によって、ツベリンである標的タンパク質の発現を増加させる方法であって、
RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、RIC mRNA前駆体はツベリンタンパク質をコードし、
前記方法は、
細胞を、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、ツベリンタンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、ツベリンタンパク質の発現を増加させる、方法。
[項目3] 標的タンパク質はツベリンである、項目1に記載の方法。
[項目4] 標的タンパク質又は機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足している標的タンパク質あるいは機能的RNAを機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質あるいは補償機能的RNAである、項目1に記載の方法。
[項目5] 細胞は、ツベリンタンパク質の量又は活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体内にあるか又は被験体に由来する、項目2に記載の方法。
[項目6] 標的タンパク質の量の不足は、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされ、ここで、被験体は、機能的な標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、標的タンパク質が生成されない第2の対立遺伝子、又は非機能的な標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合する、項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
[項目7] 被験体は、標的タンパク質の量又は機能の不足に起因する障害により引き起こされた疾病を抱えており、
ここで、被験体は、
a.
i.標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの生成と比較して、減少したレベルで生成され、
ii.標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で生成され、あるいは、
iii.標的タンパク質が生成されない、
第1の変異対立遺伝子と、
b.
i.標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの生成と比較して、減少したレベルで生成され、
ii.標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で生成され、あるいは、
iii.標的タンパク質が生成されない、
第2の変異対立遺伝子とを有し、
ここで、被験体が第1の変異対立遺伝子a.iii.を有するとき、第2の変異対立遺伝子はb.i.あるいはb.ii.であり、ここで、被験体が第2の変異対立遺伝子b.iii.を有するとき、第1の変異対立遺伝子はa.i.あるいはa.ii.であり、ここで、RIC mRNA前駆体は、a.i.あるいはa.ii.である第1の変異対立遺伝子、及び/又は、b.i.あるいはb.ii.である第2の変異対立遺伝子から転写される、項目1~5のいずれか1つに記載の方法。
[項目8] 標的タンパク質は、同等の野性型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で生成される、項目7に記載の方法。
[項目9] 標的タンパク質は、同等の野性型タンパク質と比較して、十分に機能的な形態で生成される、項目7に記載の方法。
[項目10] RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにある、項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
[項目11] RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-500までの領域内の保持されたイントロンにある、項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
[項目12] RIC mRNA前駆体の標的部分は、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して、+6から+500、+6から+495、又は+6から+100の領域、又は、
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して、-16から-500、-16から-400、又は-16から-100の領域、
の内部の保持されたイントロンにある、項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
[項目13] RIC mRNA前駆体の標的部分は、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域、あるいは、
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域、
の内部にある、項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
[項目14] RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
[項目15] RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2~8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
[項目16] アンチセンスオリゴマーは、機能的RNA又は標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより、標的タンパク質又は機能的RNAの量を増加させない、項目1~15のいずれか1つに記載の方法。
[項目17] アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質又は機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、標的タンパク質又は機能的RNAの量を増加させない、項目1~15のいずれか1つに記載の方法。
[項目18] RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体の部分的なスプライシング、又は野生型のmRNA前駆体の部分的なスプライシングによって生成された、項目1~17のいずれか1つに記載の方法。
[項目19] 標的タンパク質又は機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである、項目1~18のいずれか1つに記載の方法。
[項目20] 生成された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である、請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
[項目21] アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞において生成された標的タンパク質又は機能的RNAをコードするmRNAの総量は、対照細胞において生成された標的タンパク質又は機能的RNAをコードするmRNAの総量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍増加する、項目1~20のいずれか1つに記載の方法。
[項目22] アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞によって生成された標的タンパク質の総量は、対照細胞によって生成された標的タンパク質の総量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍増加する、項目1~21のいずれか1つに記載の方法。
[項目23] アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合又はホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、項目1~22のいずれか1つに記載の方法。
[項目24] アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、項目1~23のいずれか1つに記載の方法。
[項目25] アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む、項目1~24のいずれか1つに記載の方法。
[項目26] それぞれの糖部は修飾された糖部である、項目25に記載の方法。
[項目27] アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基からなる、項目1~26のいずれか1つに記載の方法。
[項目28] アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である、項目1~27のいずれか1つに記載の方法。
[項目29] RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:5097~5105から選択される配列内にある、項目1~28のいずれか1つに記載の方法。
[項目30] アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9~5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、請求項1~29のいずれか1つに記載の方法。
[項目31] アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9~5096から選択されたヌクレオチド配列を含む、項目1~29のいずれか1つに記載の方法。
[項目32] 細胞は、標的タンパク質又は機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、及び、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で最も豊富な保持されたイントロンに結合する、項目1~31のいずれか1つに記載の方法。
[項目33] 最も豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質又は機能的RNAをコードするmRNAを生成するRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、項目32に記載の方法。
[項目34] 細胞は、標的タンパク質又は機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、及び、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で2番目に豊富な保持されたイントロンに結合する、項目1~31のいずれか1つに記載の方法。
[項目35] 2番目に豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質又は機能的RNAをコードするmRNAを生成するRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、請求項34に記載の方法。
[項目36] 疾病は疾患又は障害である、項目5~35のいずれか1つに記載の方法。
[項目37] 疾患又は障害は結節性硬化症である、項目36に記載の方法。
[項目38] 標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はTSC2遺伝子によってコードされる、請求項37に記載の方法。
[項目39] 前記方法はTSC2タンパク質発現を評価する工程をさらに含む、項目1~38のいずれか1つに記載の方法。
[項目40] アンチセンスオリゴマーはツベリンRIC mRNA前駆体の標的部分へ結合し、ここで、標的部分はSEQ ID NO:49、50、51、52、53、54、55、56、及び57から選択された配列内にある、項目1~39のいずれか1つに記載の方法。
[項目41] 被験体はヒトである、項目1~40のいずれか1つに記載の方法。
[項目42] 被験体はヒト以外の動物である、項目1~40のいずれか1つに記載の方法。
[項目43] 被験体は胎児、胚、あるいは子供である、項目1~41のいずれか1つに記載の方法。
[項目44] 細胞はエクスビボである、項目1~42のいずれか1つに記載の方法。
[項目45] アンチセンスオリゴマーは、被験体の皮膚への局所投与、肺への肺送達、くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射によって投与される、項目1~42のいずれか1つに記載の方法。
[項目46] 5’スプライス部位に隣接するエクソンの-3e~-1eと、保持されたイントロンの+1~+6にある9つのヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である、項目1~45のいずれか1つに記載の方法。
[項目47] 保持されたイントロンの-15~-1と3’スプライス部位に隣接するエクソンの+1eにある16のヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である、項目1~46のいずれか1つに記載の方法。
[項目48] 項目1~39のいずれか1つの方法に使用されるアンチセンスオリゴマー。
[項目49] SEQ ID NO:9~5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含むアンチセンスオリゴマー。
[項目50] 項目48又は49のアンチセンスオリゴマーと賦形剤を含む医薬組成物。
[項目51] 皮膚への局所投与、肺への肺送達、くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内注射により、項目50に記載の医薬組成物を投与することによって、被験体を処置する方法。
[項目52] 不足しているタンパク質又は不足している機能的RNAに関係する被験体の結節性硬化症を処置するために細胞によって標的タンパク質又は機能的RNAの発現を増加させる方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、
ここで、不足しているタンパク質又は機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足しており、ここで、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質又は機能的RNAをコードする、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の構成的スプライシングを増強し、
ここで、標的タンパク質は、
(a)不足しているタンパク質、あるいは、
(b)被験体において不足しているタンパク質を機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質であり、
ここで、機能的RNAは、
(a)不足しているRNA、あるいは、
(b)被験体において不足している機能的RNAを機能的に増強又は交換する、補償する機能的RNAであり、
ここで、RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、及び3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、保持されたイントロンは、標的タンパク質又は機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体からスプライシングされ、それによって、被験体において標的タンパク質又は機能的RNAの生成又は活性を増加させる、組成物。
[項目53] 被験体においてツベリンタンパク質に関係する疾病を処置する方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、
該方法は、被験体の細胞によってツベリンタンパク質の発現を増加させる工程であって、細胞が保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、及び保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含む、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前駆体がツベリンタンパク質をコードする、工程と、細胞をアンチセンスオリゴマーと接触させる工程であって、それによって、保持されたイントロンは、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、ツベリンタンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、ツベリンタンパク質の発現を増加させる、工程を含む、組成物。
[項目54] 疾病は疾患又は障害である、項目53に記載の組成物。
[項目55] 疾患又は障害は結節性硬化症である、項目54に記載の組成物。
[項目56] 標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はTSC2遺伝子によってコードされる、請求項55に記載の組成物。
[項目57] アンチセンスオリゴマーは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする、項目52~56のいずれか1つに記載の組成物。
[項目58] アンチセンスオリゴマーはRIC mRNA前駆体の一部を標的とし、これは、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から+100の領域、
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16から-100の領域、の内部の保持されたイントロンにある、項目52~57のいずれか1つに記載の組成物。
[項目59] アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの保持されたイントロンの5’スプライス部位の約500、400、300、200、又は100ヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイントロンの3’スプライス部位の約100、200、300、400、又は500ヌクレオチド上流までの領域内にあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする、項目52~56のいずれか1つに記載の組成物。
[項目60] RIC mRNA前駆体の標的部分は、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域、あるいは、
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域、
の内部にある、項目52~56のいずれか1つに記載の組成物。
[項目61] RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、項目52~60のいずれか1つに記載の組成物。
[項目62] RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2~8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む、項目52~61のいずれか1つに記載の組成物。
[項目63] アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質又は機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより標的タンパク質又は機能的RNAの量を増加させない、項目52~62のいずれか1つに記載の組成物。
[項目64] アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質又は機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、機能的RNA又は機能的タンパク質の量を増加させない、項目52~62のいずれか1つに記載の組成物。
[項目65] RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体、又は野生型のmRNA前駆体からの部分的なスプライシングによって生成された、項目52~64のいずれか1つに記載の組成物。
[項目66] 標的タンパク質又は機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである、項目52~65のいずれか1つに記載の組成物。
[項目67] 生成された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である、項目52~66のいずれか1つに記載の組成物。
[項目68] 保持されたイントロンは律速イントロンである、項目52~67のいずれか1つに記載の組成物。
[項目69] 前記保持されたイントロンは前記RIC mRNA前駆体で最も豊富な保持されたイントロンである、項目52~68のいずれか1つに記載の組成物。
[項目70] 保持されたイントロンは前記RIC mRNA前駆体で2番目に豊富な保持されたイントロンである、項目52~68のいずれか1つに記載の組成物。
[項目71] アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合又はホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、項目52~70のいずれか1つに記載の組成物。
[項目72] 前記アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、項目52~71のいずれか1つに記載の組成物。
[項目73] アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、項目52~72のいずれか1つに記載の組成物。
[項目74] アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む、項目52~73のいずれか1つに記載の組成物。
[項目75] それぞれの糖部は修飾された糖部である、項目74に記載の組成物。
[項目76] アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基からなる、項目52~75のいずれか1つに記載の組成物。
[項目77] アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である、項目52~76のいずれか1つに記載の組成物。
[項目78] アンチセンスオリゴマーは、ツベリン RIC mRNA前駆体の標的部分に結合し、ここで標的部分は、SEQ ID NO:5097~5105から選択される配列内にある、項目52~77のいずれか1つに記載の組成物。
[項目79] アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9~5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、請求項52~78のいずれか1つに記載の組成物。
[項目80] アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9~5096から選択されたヌクレオチド配列を含む、項目52~78のいずれか1つに記載の組成物。
[項目81] 項目52~80の組成物のいずれかのアンチセンスオリゴマー及び賦形剤を含む医薬組成物。
[項目82] 皮膚への局所投与、肺への肺送達、くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、又は静脈内注射により、項目81に記載の医薬組成物を投与することによって被験体を処置する方法。
[項目83] 不足しているTSC2 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズするアンチセンスオリゴマーであって、不足しているTSC2 mRNAの転写産物が保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーが不足しているTSC2 mRNAの転写産物からの保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、アンチセンスオリゴマーと、
薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、
医薬組成物。
[項目84] 不足しているTSC2 mRNAの転写産物は、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物である、項目83に記載の医薬組成物。
[項目85] TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-500までの領域内の保持されたイントロンにある、項目83又は84に記載の医薬組成物。
[項目86] TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、項目83~85のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目87] TSC2 RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2~8のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む、項目83~86のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目88] アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合又はホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、項目83~87のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目89] アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、項目83~88のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目90] アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、項目83~89のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目91] アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む、項目83~90のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目92] アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基を含む、項目83~91のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目93] アンチセンスオリゴマーは、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である、項目83~92のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目94] TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:5097~5105から選択される配列内にある、項目83~93のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目95] アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9~5096のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、請求項83~94のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目96] アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:9~5096から選択されたヌクレオチド配列を含む、項目83~94のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目97] 医薬組成物は、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射のために製剤される、項目83~95のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[項目98] ツベリンタンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたTSC2 mRNA転写産物を生成するべく、保持されたイントロンの除去を促すために不足しているTSC2 mRNA転写産物の処理を誘発する方法であって、
前記方法は、
(a)被験体の標的細胞へアンチセンスオリゴマーを接触させる工程と、
(b)アンチセンスオリゴマーを不足しているTSC2 mRNAの転写産物にハイブリダイズする工程であって、不足しているTSC2 mRNAの転写産物が、ツベリンタンパク質の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工程と、
(c)ツベリンタンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたTSC2 mRNA転写産物を生成するために不足しているTSC2 mRNA転写産物から少なくとも1つの保持されたイントロンを除去する工程と、
(d)十分に処理されたTSC2 mRNAの転写産物からツベリンタンパク質の機能形態を翻訳する工程を含む、方法。
[項目99] 保持されたイントロンは保持されたイントロン全体である、項目98に記載の方法。
[項目100] 不足しているTSC2 mRNAの転写産物は、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物である、項目98又は99に記載の方法。
[項目101] ツベリンタンパク質の量又は活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体を処置する方法であって、
前記方法は、
SEQ ID NO:9~5096のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に投与する工程を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の諸原則が利用される例示的な実施形態について説明する以下の詳細な記載と、添付の図面を参照することで、本発明の特徴および利点についてのよりよい理解が得られるであろう。
【
図1】典型的な保持されたイントロン含有(RIC)mRNA前駆体の転写産物の概略図を示す。5’スプライス部位コンセンサス配列は、-3eから-1eおよび+1から+6(「e」と標識された数字はエクソンであり、標識されていない数字はイントロンである)まで下線を引かれた文字(文字はヌクレオチドである;大文字:エクソン部分、および小文字:イントロン部分)で示されている。3’スプライス部位コンセンサス配列は、-15から-1および+1e(「e」と標識された数字はエクソンであり、標識されていない数字はイントロンである)まで下線を引かれた文字(文字はヌクレオチドである;大文字:エクソン部分、および小文字:イントロン部分)で示されている。ASOスクリ-ニングのためのイントロン標的領域は、保持されたイントロンの5’スプライス部位(左の矢印)に対するヌクレオチド+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位(右の矢印)に対するヌクレオチド-16までを含む。実施形態では、ASOスクリ-ニングのためのイントロン標的領域は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド+6から+100、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に対するヌクレオチド-16から-100を含む。エクソン標的部位は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4e、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4eのヌクレオチドを含む。「n」または「N」はヌクレオチドを表し、「y」はピリミジンを表す。図示された配列は、哺乳動物のスプライス部位に対するコンセンサス配列を表し、個々のイントロンおよびエクソンは、すべての位置でコンセンサス配列に一致する必要はなない。
【
図2A】核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)方法の概略図を例示する。
図2Aは、核と細胞質区画に分割された細胞を示す。核では、エクソン(長方形)およびイントロン(接続線)からなる標的遺伝子のmRNA前駆体の転写産物は、mRNAを生成するためにスプライシングを受け、このmRNAは細胞質に輸送され、標的タンパク質へと翻訳される。この標的遺伝子については、イントロン1のスプライシングは非効率的であり、保持されたイントロン含有(RIC)mRNA前駆体は、主として核内に蓄積し、細胞質に輸送された場合は劣化し、標的タンパク質の産生にはつながらない。
【
図2B】核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)方法の概略図を例示する。
図2Bは、核と細胞質区画に分割された同様の細胞の例を示す。アンチセンスオリゴマー(ASO)での処置は、イントロン1のスプライシングを促進し、かつmRNAの増加をもたらし、これは順に、高レベルの標的タンパク質に翻訳される。
【
図3】イントロン4をもつTSC2遺伝子中のイントロン保持を詳細に示す。RNA配列決定(RNAseq)を用いた、TSC2遺伝子中のイントロン保持事象の特定は、UCSCゲノムブラウザで視覚化され示される。上のパネルは、HCN(ヒトの皮質ニューロン)において発現され、且つ細胞質(上)または核分画(下)のいずれかにおいて局在化されたTSC2転写産物に対応する読み取り密度を示す。このパネルの底部には、TSC2遺伝子のグラフ表現が、スケールに合わせて示される。読み取り密度は、ピークとして示される。最も高い読み取り密度は、エクソン(ブラックボックス)に相当し、一方、いずれの細胞分画においてもイントロンの大半(矢印頭部を有する線)について読取は観察されない。細胞質分画と比較してより高い読み取り密度は、核分画のイントロン4、25/26、および31/32(矢印により示される)で検出され、これはイントロン4、25/26、および31/32のスプライシング効率が低く、結果としてイントロン保持をもたらすことを示している。保持されたイントロン含有mRNA前躯体の転写産物は、核に保持され、細胞質には輸送されない。HCN中のイントロン4の読み取り密度は、下のパネルで詳細に示される。
【
図4】TSC2遺伝子IVS 4 ASOウォーク(walk)を示す。2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、5’スプライス部位のすぐ下流、または3’スプライス部位の上流の配列を標的とするTSC2 IVS 4に対して行われたASOウォークが図示される。ASOは、一度に5つのヌクレオチドの位置を変えることにより、これらの領域をカバーするように設計された。TSC2エクソン-イントロン構造はスケールに合わせて示される。
【
図5】イントロン25と26をもつTSC2遺伝子中のイントロン保持を詳細に示す。TSC2遺伝子中のイントロン保持は、本明細書中の実施例において述べられているように、RNA配列決定(RNAseq)によって特定され、UCSCゲノムブラウザ中で視覚化された。HCN中のイントロン25と26の読み取り密度は、下のパネルで詳細に示される。イントロン25と26は、代替的にスプライシングされたエクソンであるエクソン26に隣接している。これは、TSC2転写産物及びRNAseqデータのグラフ表現において証明され、従ってエクソン26を表す長方形が幾つかの転写産物中に存在する一方で他の転写産物中には存在せず、細胞質分画中のエクソン26に対応する読み取り密度は、TSC2中の構成的にスプライシングされたエクソンよりも著しく低い。イントロン26についての読み取り密度は、生物情報学的な分析によって計算されるとおり51%のイントロン保持を示す下のパネルで詳細に示される。
【
図6】TSC2遺伝子IVS 25及び26のASOウォークを示す。2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、イントロン25の5’スプライス部位のすぐ下流、またはイントロン26の3’スプライス部位の上流の配列を標的とするTSC2 IVS 25と26に対して行われたASOウォークのグラフ表現が示される。代替的なエクソン26に隣接しているスプライス部位のイントロン領域は、エクソン26の包含レベルに影響を及ぼすのを回避するために標的とされない。ASOは、一度に5つのヌクレオチドの位置を変えることにより、これらの領域をカバーするように設計された。TSC2エクソン-イントロン構造はスケールに合わせて示される。
【
図7】イントロン31と32を持つTSC2遺伝子中のイントロン保持を詳細に示す。TSC2遺伝子中のイントロン保持は、本明細書中の実施例において述べられているように、RNA配列決定(RNAseq)によって特定され、UCSCゲノムブラウザ中で視覚化された。イントロン31と32の読み取り密度は、下のパネルで詳細に示される。イントロン31と32は、代替的にスプライシングされたエクソンであるエクソン32に隣接している。これは、TSC2転写産物及びRNAseqデータの図式表示において証明され、従ってエクソン32を表す長方形が幾つかの転写産物中に存在する一方で他の転写産物中には存在せず、細胞質分画中のエクソン32に対応する読み取り密度は、TSC2中の構成的にスプライシングされたエクソンよりも著しく低い。イントロン31についての読み取り密度は、生物情報学的な分析によって計算されるとおり43%のイントロン保持を示す下のパネルで詳細に示される。
【
図8】TSC2遺伝子IVS 31及び32のASOウォークを示す。2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、イントロン31の5’スプライス部位のすぐ下流、またはイントロン32の3’スプライス部位の上流の配列を標的とするTSC2 IVS 31と32に対して行われたASOウォークのグラフ表現が示される。代替的なエクソン32に隣接しているスプライス部位のイントロン領域は、エクソン32の包含レベルに影響を及ぼすのを回避するために標的とされない。ASOは、TSC2-IVS32-33およびTSC2-IVS32-51を例外として、一度に5つのヌクレオチドの位置を変えることにより、これらの領域をカバーするように設計された。TSC2エクソン-イントロン構造はスケールに合わせて示される。
【
図9】NM_000548に対応するTSC2イントロン4のReSeq遺伝子の模式図を表す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【
図10】偽処理した細胞上で80nMの示されたASOで24時間処置したARPE-19細胞にイントロン4が無いTSC2 mRNAの発現レベルにおける平均(n=3)の倍率変化を示す、典型的なグラフを表す。データはRPL32発現に正規化される。
【
図11】NM_000548に対応するTSC2イントロン25のReSeq遺伝子の模式図を表す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【
図12】偽処理した細胞上で80nMの示されたASOで24時間処置したARPE-19細胞にイントロン25が無いTSC2 mRNAの発現レベルにおける平均(n=3)の倍率変化を示す、典型的なグラフを表す。データはRPL32発現に正規化される。
【
図13】NM_000548に対応するTSC2イントロン26のReSeq遺伝子の模式図を表す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【
図14】NM_000548に対応するTSC2イントロン31のReSeq遺伝子の模式図を表す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【
図15】偽処理した細胞上で80nMの示されたASOで24時間処置したARPE-19細胞にイントロン31が無いTSC2 mRNAの発現レベルにおける平均(n=3)の倍率変化を示す、典型的なグラフを表す。データはRPL32発現に正規化される。
【
図16】NM_000548に対応するTSC2イントロン32のReSeq遺伝子の模式図を表す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
2つ以上のイントロンを有するタンパク質コード遺伝子の一次転写産物中の個々のイントロンは、異なる効率性をもつ一次転写産物からスプライシングされる。ほとんどの場合、完全にスプライシングされたmRNAだけが、続く細胞質での翻訳のために核膜孔を通じて輸送される。スプライシングされていない、または部分的にスプライシングされた転写産物は、核内で検出可能である。完全にスプライシングされていない転写産物の核内蓄積は、タンパク質に翻訳され得る細胞質中での潜在的に有害なmRNAの蓄積を防止するメカニズムであると一般的に考えられる。いくつかの遺伝子については、最も効率性の低いイントロンのスプライシングは、細胞質中での翻訳に先立つ、遺伝子発現における律速的な転写後の工程である。
【0018】
本発明は、完全にスプライシングされた成熟mRNAの安定した状態の産生を増加させる、およびそれ故、翻訳されたタンパク質レベルを増加させるために、遺伝子発現の核段階に対して律速的である1つ以上の保持されたTSC2イントロンのスプライシングをアップレギュレートするための組成物および方法を提供する。これらの組成物および方法は、核に蓄積する保持されたイントロン含有TSC2 mRNA前駆体のイントロンスプライス部位において構成的スプライシングを促進するアンチセンスオリゴマー(ASO)を活用する。したがって、実施形態では、TSC2不足に起因する疾病を処置するために、本発明の方法を用いて、TSC2タンパク質を増加させる。
【0019】
他の実施形態では、本発明の方法は、必要とする被験体の疾病を処置するために、TSC2生成を増加させるために使用される。実施形態では、被験体は、TSC2が野性型に対して必ずしも不足していないが、それにも関わらずTSC2の増加が疾患を緩和する疾病を有している。実施形態では、疾病はTSC2ハプロ不全によって引き起こされる。実施形態では、疾病は、常染色体優性障害である。実施形態では、疾病は、常染色体劣性障害である。
【0020】
<結節性硬化症>
結節性硬化症は、多臓器系における腫瘍増殖を特徴とする疾患である(Au et al.,J.Child Neurol.2004,19,699-709)。腫瘍は通常良性であるが、時に悪性である。結節性硬化症の症例のおよそ90%は皮質結節を表し;顔面線維性血管腫及び腎臓の血管筋脂肪腫が症例の80%より多くに生じる。加えて、症例のおよそ80%は上衣下結節を表し、症例のおよそ50%は心臓の横紋筋腫を表し、症例の51%~およそ88%は爪/爪下線維腫を表す。中枢神経系(CNS)の腫瘍は、腎疾患が後続する罹患率と死亡率の主因である(Au et al.,J.Child Neurol.2004,19,699-709)。
【0021】
結節性硬化症は、常染色体優性遺伝パターン及び高い突然変異率を備えた遺伝病である(Au et al.,J.Child Neurol.2004,19,699-709)。染色体領域9q34.3と16p13.3への結節性硬化症の結合は、TSC1及びTSC2遺伝子それぞれの特定に繋がった。結節性硬化症の症例の69%より多くはTSC2のハプロ不全から結果として生じ、患者のおよそ3分の2の疾患はデノボの突然変異又は欠失から結果として生じる(Au et al.,J.Child Neurol.2004,19,699-709)。重篤な疾患は他の対立遺伝子の「第2のヒット(hit)」の減少を必要とすると考えられる。結節性硬化症の有病率は、アメリカ合衆国において1年につき5,800の生児出生、或いはおよそ300の出生のうち1つほどであり、1年につき200の症例がTSC2の突然変異の結果から生じる。疾病は例えば、参照により本明細書に組み込まれるOMIM #613254(Online Mendelian Inheritance in Man,Johns Hopkins University,1966-2015)により説明されている。
【0022】
TSC2遺伝子はツベリンと称されるタンパク質をコードする。TSC2遺伝子は、うち2つが代替的にスプライシングされる41のエクソンを含有し、染色体16上でおよそ40kbに及ぶ(Au et al.,J.Child Neurol.2004,19,699-709)。ツベリンは、TSC1遺伝子産物であるハマルチンとの複合体を形成する200kDaのタンパク質である。ツベリン-ハマルチンの複合体は、様々なシグナルカスケードを介した、細胞の増殖、輸送、細胞の大きさ、細胞接着、及び移動の調節の役割を果たす。例えば、ツベリン-ハマルチンの複合体は、翻訳を調節するフォスファチジルイノシトール-3-キナーゼ及びタンパク質B経路(PI3K/PKB)において機能する。具体的に、ツベリン-ハマルチンの複合値は、mTORキナーゼ活性を抑えることにより細胞増殖と翻訳を抑え、その結果、p70リボソームタンパク質S6キナーゼ(S6K)1の抑制及び真核生物翻訳開始因子4E結合タンパク質1(4E-BP1)の活性化をもたらす。更に、ツベリンのGAPドメインは、脳において豊富なRasホモログである小さなGタンパク質Rhebに結合したグアノシン三リン酸(GTP)を加水分解して、故にmTOR活性化を防ぐ。
【0023】
加えて、ツベリンとハマルチンは、MAPキナーゼ(MAPK)及びE-カドヘリン-ベータ-カテニン経路を介して細胞増殖と細胞接着をそれぞれ調節する。染色体16p13の部分のヘテロ接合性の損失の特定により最初に発見されると、多数の突然変異はTSC2について説明された(Au et al.,J.Child Neurol.2004,19,699-709)。突然変異は、フレームシフト及びタンパク質短縮化、ナンセンス変異、スプライシングに影響を及ぼす突然変異、インフレーム変異、欠失、挿入、重複、及び大きな欠失と転位を含む。短縮化されたタンパク質生成物をもたらすTSC2の突然変異は、ツベリン-ハマルチン複合体を形成することができず、故に細胞増殖の調節の損失が結果として生じる。多数のシグナル伝達経路の主要調節因子としてのツベリン-ハマルチンの複合体の役割は、発作、知的障害、及び発達遅延などの神経学的及び神経反応性の異常を含む、多臓器系に関与する結節性硬化症を患う患者間での臨床所見の幅広いスペクトルと一致している(Au et al.,J.Child Neurol.2004,19,699-709)。
【0024】
<保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)>
実施形態では、本明細書の方法は、細胞の核内で、TSC2遺伝子から転写され且つツベリンタンパク質をコードする、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の存在を活用する。成熟し、完全にスプライシングされたTSC2 mRNAを産出するための、特定のTSC2 RIC mRNA前駆体の種のスプライシングは、保持されたイントロンのスプライシングアウトを刺激するASOを用いて誘導される。結果としてもたらされる成熟TSC2 mRNAは、細胞質に輸送されて翻訳され、それによって患者の細胞中のツベリンタンパク質の量を増加させ、結節性硬化症の症状を緩和する。この方法は以下で更に説明される、核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)として知られる。
【0025】
<TSC2核の転写産物>
本明細書の実施例に記載されるように、TSC2遺伝子はイントロン保持事象について分析され、イントロン4、25、26、31、および32の保持が観察された。UCSCゲノムブラウザによって視覚化されたRNA配列決定(RNAseq)は、HCN(ヒト皮質ニューロン)細胞に発現したTSC2転写産物を示し、細胞質または核分画のいずれかに局在した。どちらの分画においても、読み取りは大多数のイントロンについて観察されなかった。しかし、細胞質分画と比較してより高い読み取り密度が、核分画のイントロン4、25、26、31、および32において検出され、これはイントロン4、25、26、31、および32のスプライシング効率が低く、結果としてイントロン保持をもたらすことを示している。保持されたイントロン含有mRNA前駆体の転写産物は、主として核に蓄積し、ツベリンタンパク質へと翻訳されない。ASTのイントロン26についての読み取り密度は、生物情報学的な分析によって計算されるとおり51%のイントロン保持を示す下のパネルで詳細に示される。イントロン26のイントロン保持率(PIR)の値は、平均化した4つの値(87、83、20および12)により得られた。それぞれの値は、4つの異なるアルゴリズムのうち1つを使用し、腎上皮細胞において判定された、ASTのイントロン31についての読み取り密度は、43%のイントロン保持を示す下のパネルで詳細に示される。イントロン31のイントロン保持率(PIR)の値は、平均化した4つの値(78、71、16および8)により得られた。それぞれの値は、4つの異なるアルゴリズムのうちの1つを使用し、腎上皮細胞において判定された。イントロン4および32はマッピングされなかった。イントロン保持事象を特定するための、ENCODEデータの分析(例えば、Tilgner,et al.,2012,「Deep sequencing of subcellular RNA fractions shows splicing to be predominantly co-transcriptional in the human genome but inefficient for lncRNAs」Genome Research 22(9):1616-25に記載)は、イントロン25、26、又は31を保持されたものとして特定せず、イントロン4と32をマッピングしなかった。
【0026】
表1は、TSC2 RIC mRNA前駆体の領域を標的化することによってツベリンタンパク質の生成を増加させるのに有用な、配列IDごとのTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的配列、および、配列IDごとのASOの、非限定的なリストを提供する。実施形態では、これらの目的に有用な他のASOは、例えば、本明細書に記載の方法を用いて特定される。
【0027】
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、TSC2ゲノム配列から転写されたRIC mRNA前駆体を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンを含むTSC2ゲノム配列からのRIC mRNA前駆体の転写産物を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:1のRIC mRNA前駆体の転写産物を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンを含むSEQ ID NO:1のRIC mRNA前駆体の転写産物を標的とする。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、TSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、3、24、29、またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318829におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、4、25、26、31、32、またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_000548におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、4、25、30、またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001077183におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、4、25、26、31、またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001114382におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、22、27、28、またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318831におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、4、25、30、またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318832におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、3、24、29、またはその組み合わせで保持されたイントロンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318827におけるmRNA配列に対応する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:2に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24、保持されたイントロン3、保持されたイントロン29、またはそれらの組み合わせを含む、SEQ ID NO:2に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:3に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25、保持されたイントロン26、保持されたイントロン4、保持されたイントロン31、またはそれらの組み合わせを含む、SEQ ID NO:3に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:4に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25、保持されたイントロン4、保持されたイントロン30、またはそれらの組み合わせを含む、SEQ ID NO:4に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:5に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25、保持されたイントロン26、保持されたイントロン4、保持されたイントロン31、またはそれらの組み合わせを含む、SEQ ID NO:5に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:6に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27、保持されたイントロン28、保持されたイントロン22、またはそれらの組み合わせを含む、SEQ ID NO:6に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:7に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25、保持されたイントロン4、保持されたイントロン30、またはそれらの組み合わせを含む、SEQ ID NO:7に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:8に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24、保持されたイントロン3、保持されたイントロン29、またはそれらの組み合わせを含む、SEQ ID NO:8に係るTSC2 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、SEQ ID NO:5097-5105を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:9-5096のいずれか1つに係る配列を有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン24またはエクソン25を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318829におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から約2~約75或いは約4~約74のヌクレオチド上流(または5’)のエクソン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2~約150或いは約2~約147のヌクレオチド下流(または3’)のエクソン25配列を標的とする。
【0031】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のイントロン24を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318829におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6~約497のヌクレオチド下流(または3’)のイントロン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16~約496のヌクレオチド上流(または5’)のイントロン24配列を標的とする。
【0032】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン3またはエクソン4を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318829におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4~約94のヌクレオチド上流(または5’)のエクソン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2~約127のヌクレオチド下流(または3’)のエクソン4配列を標的とする。
【0033】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のイントロン3を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318829におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6~約435のヌクレオチド下流(または3’)のイントロン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16~約432のヌクレオチド上流(または5’)のイントロン3配列を標的とする。
【0034】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン29またはエクソン30を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318829におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4~約184のヌクレオチド上流(または5’)のエクソン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2~約102のヌクレオチド下流(または3’)のエクソン30配列を標的とする。
【0035】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のイントロン29を標的とし、ここで、イントロンの番号付けは、NM_001318829におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6~約492のヌクレオチド下流(または3’)のイントロン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16~約500或いは約36~約500のヌクレオチド上流(または5’)のイントロン29配列を標的とする。
【0036】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン32またはエクソン33を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_000548におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約49ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン33配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約102ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン33配列を標的とする。
【0037】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン32を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_000548におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約495ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン32を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16~約500または約36~約500ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン32配列を標的とする。
【0038】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン25またはエクソン26を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_000548におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約74ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約112ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。
【0039】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン25を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_000548におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約497ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約498ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。
【0040】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン26またはエクソン27を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_000548におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約111ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン27配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約147ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン27配列を標的とする。
【0041】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン26を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_000548におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約500ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約496ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン26配列を標的とする。
【0042】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン4またはエクソン5を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_000548におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約94ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約127ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。
【0043】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン4を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_000548におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約435ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約432ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。
【0044】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン31またはエクソン32を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_000548におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約184ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約52ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン32配列を標的とする。
【0045】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン31を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_000548におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約331ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約333ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン31配列を標的とする。
【0046】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン25またはエクソン26を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001077183におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約74ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約142ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。
【0047】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン25を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001077183におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約497ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約499ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。
【0048】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン4またはエクソン5を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001077183におけるmRNA配列に一致する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約94ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約127ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。
【0049】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン4を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001077183におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約435ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約432ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。
【0050】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン30またはエクソン31を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001077183におけるmRNA配列に一致する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約184ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約102ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン31配列を標的とする。
【0051】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン30を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001077183におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約492ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約500または約36から約500ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン30配列を標的とする。
【0052】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン25またはエクソン26を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001114382におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約74ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約112ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。
【0053】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン25を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001114382におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約497ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約498ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。
【0054】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン26またはエクソン27を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001114382におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約111ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン27配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約147ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン27配列を標的とする。
【0055】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン26を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001114382におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約500ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン26を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約496ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン26配列を標的とする。
【0056】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン4またはエクソン5を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001114382におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約94ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約127ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。
【0057】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン4を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001114382におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約435ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約432ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。
【0058】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン31またはエクソン32を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001114382におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約184ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約102ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン32配列を標的とする。
【0059】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン31を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001114382におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約492ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約500または約36から約500ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン31配列を標的とする。
【0060】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン27またはエクソン28を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001318831におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン27配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約184ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン27配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン28配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約52ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン28配列を標的とする。
【0061】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン27を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318831におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン27配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約331ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン27配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン27配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン27を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約333ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン27配列を標的とする。
【0062】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン28またはエクソン29を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001318831におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン28配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約49ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン28配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約102ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン29配列を標的とする。
【0063】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン28を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318831におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン28配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約495ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン28配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン28配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン28を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約500または約36から約500ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン28配列を標的とする。
【0064】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン22またはエクソン23を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001318831におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン22配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約74ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン22配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン23配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約142ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン23配列を標的とする。
【0065】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン22を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318831におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン22配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約497ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン22配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン22配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン22を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約499ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン22配列を標的とする。
【0066】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン25またはエクソン26を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318832におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約74ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約142ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン26配列を標的とする。
【0067】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン25を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318832におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約497ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン25を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約499ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン25配列を標的とする。
【0068】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体のエクソン4またはエクソン5を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318832におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約94ヌクレオチド上流(または5’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約127ヌクレオチド下流(または3’)のエクソン5配列を標的とする。
【0069】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体中のイントロン4を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318832におけるmRNA配列に相当する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約435ヌクレオチド下流(または3’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン4を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約432ヌクレオチド上流(または5’)のイントロン4配列を標的とする。
【0070】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン30またはエクソン31を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318832におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約184のヌクレオチド上流(または5’)のエクソン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約102のヌクレオチド下流(または3’)のエクソン31配列を標的とする。
【0071】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン30を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318832におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約492のヌクレオチド下流(または3’)のイントロン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン30を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約500、あるいは約36から約500のヌクレオチド上流(または5’)の、イントロン30配列を標的とする。
【0072】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン24またはエクソン25を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001318827におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約74のヌクレオチド上流(または5’)のエクソン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン25配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約147のヌクレオチド下流(または3’)のエクソン25配列を標的とする。
【0073】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン24を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318827におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約497のヌクレオチド下流(または3’)のイントロン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン24配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン24を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約496のヌクレオチド上流(または5’)のイントロン24配列を標的とする。
【0074】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン3またはエクソン4を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001318827におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約69のヌクレオチド上流(または5’)のエクソン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン4配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約127のヌクレオチド下流(または3’)のエクソン4配列を標的とする。
【0075】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン3を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318827におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約499のヌクレオチド下流(または3’)のイントロン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン3配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン3を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約497のヌクレオチド上流(または5’)のイントロン3配列を標的とする。
【0076】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RICmRNA前駆体のエクソン29またはエクソン30を標的とし、ここでイントロンの番号付けは、NM_001318827におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(または5’)のエクソン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約4から約184のヌクレオチド上流(または5’)のエクソン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(または3’)のエクソン30配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約2から約102のヌクレオチド下流(または3’)のエクソン30配列を標的とする。
【0077】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RICmRNA前駆体中のイントロン29を標的とし、ここでイントロンの番号付けはNM_001318827におけるmRNA配列に対応する。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(または3’)のイントロン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から、約6から約492のヌクレオチド下流(または3’)のイントロン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(または5’)のイントロン29配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン29を含むTSC2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から、約16から約500、あるいは約36から約500のヌクレオチド上流(または5’)の、イントロン29配列を標的とする。
【0078】
イントロン保持の程度は、パーセントイントロン保持(PIR)、すなわち所与のイントロンが保持される転写産物のパーセンテージとして表すことができる。手短に言えば、エクソン-イントロン連結の読み取りとエクソン-エクソン連結の読み取りの平均の合計に対して、エクソン-イントロン連結にマッピングする平均読み取り数のパーセンテージとして、PIRを算出することができる。
【0079】
<ツベリンタンパク質発現>
結節性硬化症の症例の69%以上はTSC2のハプロ不全に起因し、また、およそ3分の2の患者の疾患は、デノボの突然変異または欠失に起因する(Au,K.et al.,J.Child Neurol.,2004,19:699-709)。
【0080】
実施形態では、本明細書に記載の方法が、機能的ツベリンタンパク質の産生を増加させるために使用される。本明細書において使用される用語「機能的」は、結節性硬化症の1つ以上の症状を除去するのに必要なツベリンタンパク質の活性または機能の量を指す。実施形態では、該方法は、部分的機能的ツベリンタンパク質の産生を増加させるために使用される。本明細書において使用される用語「部分的機能的」は、疾患または疾病の1つ以上の症状を除去または予防するのに必要な活性または機能の量未満の、ツベリンタンパク質の活性または機能の量を指す。いくつかの実施形態では、部分的機能的タンパク質またはRNAは、完全な機能的タンパク質またはRNAに比して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、85%、少なくとも90%、または少なくとも95%少ない活性を持つだろう。
【0081】
実施形態では、該方法は、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を有する被験体の細胞によって、ツベリンタンパク質の発現を増加させる方法であり、該被験体は、ツベリンタンパク質活性の量の不足に起因する結節性硬化症を有し、および該ツベリンタンパク質量の不足は、ツベリンタンパク質のハプロ不全に起因する。そのような実施形態では、被験体は、機能的ツベリンタンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、ツベリンタンパク質が産生されない第2の対立遺伝子とを有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的ツベリンタンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、非機能的ツベリンタンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的ツベリンタンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、部分的機能的ツベリンタンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。これらの実施形態のいずれの場合でも、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子(機能的ツベリンタンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合し、それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、機能的ツベリンタンパク質をコードする成熟mRNAレベルの増加と、被験体の細胞中のツベリンタンパク質発現の増加をもたらす。
【0082】
実施形態では、被験体は、機能的ツベリンタンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、部分的機能的ツベリンタンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子(機能的ツベリンタンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分、あるいは第2の対立遺伝子(部分的機能的ツベリンタンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合し、それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、ツベリンタンパク質をコードする成熟mRNAレベルの増加と、被験体の細胞中の機能的あるいは部分的機能的ツベリンタンパク質発現の増加をもたらす。
【0083】
関連する実施形態では、該方法は、タンパク質あるいは機能的RNAの発現を増加させるためにASOを用いる方法である。実施形態では、ASOは、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を有する被験体の細胞中のツベリンタンパク質発現を増加させるために使用され、該被験体は、ツベリンタンパク質の量または機能の不足、例えば結節性硬化症を有する。
【0084】
実施形態では、疾患または疾病の原因となる、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物は、本明細書に記載されるASOによって標的化される。いくつかの実施形態では、疾患の原因ではない、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物は、ASOによって標的化される。例えば、特定の経路における第1のタンパク質の突然変異または欠失がもたらす疾患は、第2のタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を標的とし、それによって第2のタンパク質産生が増加することで、改善しうる。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質の活性は、第1のタンパク質の突然変異または不足(それは疾患または疾病の原因である)を補うことができる。
【0085】
実施形態では、被験体は、
a.第1の変異対立遺伝子であって、
i)ツベリンタンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生され、
ii)ツベリンタンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した形態で生成され、または
iii)ツベリンタンパク質あるいは機能的RNAが産生されない、第1の変異対立遺伝子;
および
b.第2の変異対立遺伝子であって、
i)ツベリンタンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生され、
ii)ツベリンタンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して機能が低下した形態で産生され、または
iii)ツベリンタンパク質が産生されない、第2の変異対立遺伝子を有し、ここで、
RIC mRNA前駆体は、第1の対立遺伝子および/または第2の対立遺伝子から転写される。これらの実施形態では、ASOは、第1の対立遺伝子または第2の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合することで、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、ツベリンタンパク質をコードするmRNAレベルの増加を引き起こし、被験体の細胞中の標的タンパク質または機能的RNAの発現の増加をもたらす。これらの実施形態では、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングの結果として生じる、発現レベルの増加を有する標的タンパク質あるいは機能的RNAは、同等の野性型タンパク質と比較して機能性の低い形態(部分的機能的)、あるいは同等の野性型タンパク質と比較して完全な機能性を有する(完全機能的)、のいずれかで有り得る。
【0086】
実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするmRNAのレベルは、例えば、アンチセンスオリゴマーで処置されない、あるいはTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分と結合しないアンチセンスオリゴマーで処置された、対照細胞内で産生されたTSC2をコードするmRNAの量と比較した場合、1.1倍から10倍に増加する。
【0087】
実施形態では、ツベリンタンパク質の量あるいは活性の不足に起因する疾病は、ASOが標的とされる保持されたイントロンの選択的スプライシングあるいは異常スプライシングに起因する疾病ではない。実施形態では、ツベリンタンパク質の量あるいは活性の不足に起因する疾病は、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体内の保持されたイントロンの、選択的スプライシングあるいは異常スプライシングに起因する疾病ではない。実施形態では、選択的スプライシングあるいは異常スプライシングが、遺伝子から転写されたmRNA前駆体に生じうる。しかしながら、本発明の組成物および方法は、この選択的スプライシングあるいは異常スプライシングを予防しないし、修正しない。
【0088】
実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子から部分的機能的ツベリンタンパク質を発現し、その部分的機能性ツベリンタンパク質は、フレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、あるいは部分的な遺伝子欠失に起因する。実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子から非機能的ツベリンタンパク質を発現し、その非機能的ツベリンタンパク質は、1つの対立遺伝子中のフレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、あるいは部分的な遺伝子欠失に起因する。実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子にTSC2全遺伝子欠失を有する。
【0089】
実施形態では、被験体は、R611Q/WおよびR905Wから選択されたTSC2ミスセンス変異を有する。実施形態では、被験体は、エクソン38に少なくとも6つのアミノ酸のTSC2欠失突然変異を有する。実施形態では、被験体は、トリプトファンまたはグルタミンのためのアルギニン611のTSC2置換突然変異を有する。実施形態では、当技術分野において既知の、および、例えば先に参照された(Au,K.et al.,J.Child Neurol.,2004,19:699-709)等の文献に記載された、任意のTSC2突然変異を有する被験体が、本発明の方法および組成物を使用して処置される。
【0090】
<ツベリンタンパク質発現を増加させるためのTANGOの使用>
前述したように、実施形態では、核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)は、ツベリンタンパク質の発現を増加させるために、本発明の方法において使用される。これらの実施形態では、ツベリンタンパク質をコードする保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)は、細胞の核内にある。ツベリンタンパク質をコードする、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接するエクソン、および3’スプライス部位に隣接するエクソンを含むTSC2 RIC mRNA前駆体を有する細胞を、RIC mRNA前駆体の標的部分に対して相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる。RIC mRNA前駆体の標的部分へのASOのハイブリダイゼーションは、保持されたイントロンのスプライス部位(5’スプライス部位あるいは3’スプライス部位)のスプライシングを増強し、その後の標的タンパク質産生を増加させる。
【0091】
用語「mRNA前駆体」および「mRNA前駆体の転写産物」は、交換可能に使用され、少なくとも1つのイントロンを含むmRNA前駆体種を指すこともある。実施形態では、mRNA前駆体またはmRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャップ、および/またはポリA末端を含む。実施形態では、mRNA前駆体またはmRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャップおよびポリA末端の両方を含む。いくつかの実施形態では、mRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャップ、および/またはポリA末端を含まない。タンパク質に翻訳されない場合(あるいは核から細胞質へと輸送された場合)、mRNA前駆体の転写産物は非生産的メッセンジャーRNA(mRNA)分子である。
【0092】
本明細書において使用されるように、「保持されたイントロン含有mRNA前駆体」(「RIC mRNA前駆体」)は、少なくとも1つの保持されたイントロンを含むmRNA前駆体の転写産物である。RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソンを含み、標的タンパク質をコードする。「標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体」は、完全にスプライシングされた場合に、標的タンパク質をコードすると解される。「保持されたイントロン」は、同じ遺伝子によってコードされた、隣接するイントロン等の1つ以上の他のイントロンが、同じmRNA前駆体の転写産物からスプライシングアウトされた場合に、mRNA前駆体の転写産物に存在するイントロンである。いくつかの実施形態では、保持されたイントロンは、標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体において最も豊富なイントロンである。実施形態では、保持されたイントロンは、細胞内の標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団において最も豊富なイントロンであり、当該RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含む。実施形態では、標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の集団において最も豊富なイントロンに標的とされたアンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーが標的とされた、または結合する保持されたイントロンを含む集団内の、2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。実施形態では、標的タンパク質をコードする成熟mRNAは、それによって産生される。「成熟mRNA」および「完全にスプライシングされたmRNA」の用語は、標的タンパク質をコードする完全に処理されたmRNA(例えば、核から細胞質へと輸送され、標的タンパク質に翻訳されたmRNA)、あるいは完全に処理された機能的RNAを記載するように、本明細書において交換可能に使用される。用語「生産的mRNA」もまた、標的タンパク質をコードする完全に処理されたmRNAについて記載するように使用することができる。実施形態では、標的領域は、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団に最も豊富な保持されたイントロンにある。実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体において最も豊富な保持されたイントロンは、イントロン4、25、26、31、32、25および26、または31および32である。実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体に最も豊富な保持されたイントロンは、イントロン26である。実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体に最も豊富な保持されたイントロンは、イントロン31である。いくつかの実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体において最も豊富な保持されたイントロンは、イントロン26であり、またツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体において2番目に豊富な保持されたイントロンは、イントロン31である。
【0093】
実施形態では、保持されたイントロンは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、あるいは少なくとも約50%の保定の保持率に基づき、保持されたイントロンとして特定されたイントロンである。実施形態では、保持されたイントロンはすなわち、約5%~約100%、約5%~約95%、約5%~約90%、約5%~約85%、約5%~約80%、約5%~約75%、約5%~約70%、約5%~約65%、約5%~約60%、約5%~約65%、約5%~約60%、約5%~約55%、約5%~約50%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約10%~約100%、約10%~約95%、約10%~約90%、約10%~約85%、約10%~約80%、約10%~約75%、約10%~約70%、約10%~約65%、約10%~約60%、約10%~約65%、約10%~約60%、約10%~約55%、約10%~約50%、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約15%~約100%、約15%~約95%、約15%~約90%、約15%~約85%、約15%~約80%、約15%~約75%、約15%~約70%、約15%~約65%、約15%~約60%、約15%~約65%、約15%~約60%、約15%~約55%、約15%~約50%、約15%~約45%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約20%~約100%、約20%~約95%、約20%~約90%、約20%~約85%、約20%~約80%、約20%~約75%、約20%~約70%、約20%~約65%、約20%~約60%、約20%~約65%、約20%~約60%、約20%~約55%、約20%~約50%、約20%~約45%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約25%~約100%、約25%~約95%、約25%~約90%、約25%~約85%、約25%~約80%、約25%~約75%、約25%~約70%、約25%~約65%、約25%~約60%、約25%~約65%、約25%~約60%、約25%~約55%、約25%~約50%、約25%~約45%、約25%~約40%、あるいは約25%~約35%の保定の保持率に基づき、保持されたイントロンとして特定されたイントロンである。
【0094】
本明細書において使用されるように、用語「含む(comprise)」、あるいは「含む(comprises)」または「含む(comprising)」等の変化形は、列挙された特徴(例えば、アンチセンスオリゴマーの場合、定義された核酸塩基配列)を含むが、他のいかなる特徴をも除外しないことを示すと解されるべきである。したがって、本明細書において使用されるように、用語「含む(comprising)」は包含的で、追加の列挙されていない特徴(例えば、アンチセンスオリゴマーの場合、追加の列挙されていない核酸塩基の存在)を除外しない。
【0095】
本明細書において提供される組成物および方法のいずれかの実施形態において、「含む(comprising)」は「から本質的に成る(consisting essentially)」または「から成る(consisting of)」と置換可能である。「から本質的に成る(consisting essentially)」という句は、特定された特徴(例えば核酸塩基配列)と共に、請求される本発明の性質または機能に実質的に影響しない特徴も必要とするために本明細書で使用される。本明細書で使用される用語「成る(consisting)」は、列挙された特徴(例えば核酸塩基配列)単独の存在を示すために使用される(その結果、特定された核酸塩基配列から成るアンチセンスオリゴマーの場合には、追加の列挙されていない核酸塩基の存在は除外される)。
【0096】
実施形態では、標的領域は、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体に2番目に豊富なイントロンである保持されたイントロンにある。例えば、2番目に豊富な保持されたイントロンは、最も豊富な保持されたイントロンよりもむしろ標的とされ得る。その要因は、2番目に豊富な保持されたイントロンのヌクレオチド配列の独自性、特定のヌクレオチド配列を標的とするASO設計の容易さ、および/またはASOによりイントロンを標的とすることから生じるタンパク質産生量の増加である。実施形態では、保持されたイントロンは、細胞内の標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体集団において2番目に豊富なイントロンであり、そのRIC mRNA前駆体集団は、2つ以上の保持されたイントロンを含む。実施形態では、標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団における2番目に豊富なイントロンを標的とするアンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーが標的とされた、または結合する保持されたイントロンを含む集団において、2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。それによって、実施形態では、標的タンパク質をコードする完全にスプライシングされた(成熟)RNAが産生される。実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体に2番目に多く保持されたイントロンは、イントロン4、25、26、31、32、25および26、または31および32である。いくつかの実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体に2番目に豊富に保持されたイントロンは、イントロン31である。
【0097】
実施形態では、ASOは、RIC mRNA前駆体の保持されていないイントロン内にある標的領域に相補的である。実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部分は:保持されていないイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+100の領域;または保持されていないイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-100の領域内にある。実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されていないイントロンの5’スプライス部位に対する+100から、保持されていないイントロンの3’スプライス部位に対する-100の領域内にある。領域または配列の場所を特定するために使用されるように、「内(within)」は、列挙される位置で残基を含むように理解される。例えば、+6から+100の領域は、+6および+100の位置に残基を含む。それによって、実施形態では、標的タンパク質をコードする完全にスプライシングされた(成熟)RNAが産生される。
【0098】
実施形態では、RIC mRNA前駆体の保持されたイントロンは、非効率的にスプライシングされたイントロンである。本明細書で使用されるように、「非効率的にスプライシングされた」は、RIC mRNA前駆体における別のスプライス部位でのスプライシングの頻度と比較して、保持されたイントロンに隣接するスプライス部位(5’スプライス部位または3’スプライス部位)でのスプライシングの頻度が比較的低いことを指し得る。用語「非効率的にスプライシングされた」はまた、スプライス部位でのスプライシングの相対速度または動態(kinetics)を指し得る。この「非効率的にスプライシングされた」イントロンは、RIC mRNA前駆体における別のイントロンと比較して、より遅い速度でスプライシングあるいは除去され得る。
【0099】
実施形態では、5’スプライス部位に隣接するエクソンの-3eから-1e、および保持されたイントロンの+1から+6の9-ヌクレオチド配列は、対応する野生型配列と同一である。実施形態では、保持されたイントロンの-15から-1および3’スプライス部位に隣接するエクソンの+1eの16ヌクレオチド配列は、対応する野生型配列と同一である。本明細書に使用されるように、「野生型配列」は、生体および科学の情報のNCBIリポジトリに寄託された公開された参照ゲノムにおけるTSC2遺伝子に対するヌクレオチド配列を指す。本明細書に使用されるように、「野生型配列」は、NCBI Gene ID7249で見つけられるTSC2遺伝子に対する標準配列を指す。さらに本明細書で使用されるように、「e」で示されたヌクレオチド位置は、ヌクレオチドがエクソン(例えば、5’スプライス部位に隣接するエクソン、または3’スプライス部位に隣接するエクソン)の配列中に存在することを示す。
【0100】
該方法では、細胞を、ツベリンタンパク質をコードするmRNA前駆体の一部に相補的であるASOと接触させ、結果としてTSC2の発現が増加する。本明細書で使用されるように、細胞に「接触させる」または投与することは、ASOと細胞が相互作用するように、ASOを細胞に即座に近接させる方法を指す。ASOと接触させられる細胞は、ASOを細胞へと取り込む又は輸送する。該方法は、疾病または疾患に関係する又は疾病または疾患に関連する細胞を、本明細書に記載されるASOのいずれかと接触させる工程を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、ASOを細胞型に対して標的とする、ASOと疾病または疾患に関係する又は疾病または疾患に関連する細胞との間の接触を増強する、またはASOの取り込みを増強するために、さらに修飾され得るかまたは別の分子に結合され得る(例えば、共有結合される)。
【0101】
本明細書で使用されるように、用語「タンパク質産生を増加させる」または「標的タンパク質の発現を増加させる」は、細胞中のmRNAから翻訳されるタンパク質の量を増加させることを意味する。「標的タンパク質」は、発現/産生の増加が望まれるタンパク質で有り得る。
【0102】
実施形態では、TSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部位に相補的であるASOに、TSC2 RIC mRNA前駆体を発現する細胞を接触させることにより、mRNA前駆体によってコードされたツベリンタンパク質(例えば標的タンパク質)の量の測定可能な増加をもたらす。タンパク質の産生を測定または検出する方法は、当業者に明白となり、あらゆる既知の方法、例えば、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およびELISAを含む。
【0103】
実施形態では、TSC2 RIC mRNAの転写産物の標的部位に相補的であるASOに、細胞を接触させることにより、ASOの欠如/処置の欠如下における細胞によって産生されたタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%の産生されたツベリンタンパク質の量の増加をもたらす。実施形態では、アンチセンスオリゴマーが接触させられた細胞によって産生されたツベリンタンパク質の総量は、対照の化合物により生産された標的タンパク質の量と比較して、約1.1倍から約10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10倍、約4倍から約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.1倍から約7倍、 約1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍から約6倍、約2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6倍、約3倍から約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、 約4倍から約8倍、約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも4倍、 少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加される。対照化合物は、例えば、RIC mRNA前駆体の標的部位に相補的でないオリゴヌクレオチドでもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、細胞を、TSC2 RIC mRNA前駆体の標的部位に相補的であるASOと接触させることで、標的タンパク質をコードする成熟mRNAを含むTSC2をコードするmRNA量の増加がもたらされる。いくつかの実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするmRNA、またはツベリンタンパク質をコードする成熟mRNAの量は、ASOの欠如/処置の欠如下における細胞によって産生されたタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%増加する。実施形態では、アンチセンスオリゴマーが接触させられた細胞内で産生される、ツベリンタンパク質をコードするmRNA、またはツベリンタンパク質をコードする成熟mRNAの総量は、未処理の細胞、例えば未処理の細胞または対照の化合物により処理された細胞内で産生された成熟RNAの量と比較して、約1.1倍から約10倍、約1.5倍から約10倍、約2倍から約10倍、約3倍から約10倍、約4倍から約10倍、約1.1倍から約5倍、約1.1倍から約6倍、約1.1倍から約7倍、 約1.1倍から約8倍、約1.1倍から約9倍、約2倍から約5倍、約2倍から約6倍、約2倍から約7倍、約2倍から約8倍、約2倍から約9倍、約3倍から約6倍、約3倍から約7倍、約3倍から約8倍、約3倍から約9倍、約4倍から約7倍、 約4倍から約8倍、約4倍から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する。対照化合物は、例えば、TSC2 RIC mRNA前駆体の標的部位に相補的でないオリゴヌクレオチドでもよい。
【0105】
<RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシング>
本明細書で提供される方法およびアンチセンスオリゴヌクレオチド組成物は、例えば、ツベリンタンパク質の量または活性の不足がもたらす結節性硬化症を有する被験体において、ツベリンタンパク質をコードするmRNA、またはツベリンタンパク質をコードする成熟mRNAのレベルを増加させることによって、細胞内のツベリンタンパク質の発現を増加させるのに有用である。特に、本明細書に記載されるような方法および組成物は、ツベリンタンパク質をコードするTSC2 RIC mRNA前駆体の転写産物からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、それによって、ツベリンタンパク質をコードするmRNA、またはツベリンタンパク質をコードする成熟mRNAのレベルが増加し、ツベリンタンパク質の発現が増加する。
【0106】
RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングは、保持されたイントロンをRIC mRNA前駆体から正しく除去する。この保持されたイントロンは、野生型スプライス配列を有する。構成的スプライシングは、本明細書で使用されるように、遺伝子または対立遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異を有する遺伝子または対立遺伝子から転写された、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンのスプライシングを包含しない。例えば、本明細書で提供される方法およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して誘発された、保持されたイントロンの構成的スプライシングは、mRNA前駆体における異常スプライシングを修正しない、あるいはmRNA前駆体の選択的スプライシングに影響せず、結果的に標的タンパク質または機能的RNAの発現が増加する。
【0107】
実施形態では、構成的スプライシングは、保持されたイントロンをTSC2 RIC mRNA前駆体から正しく除去する。このTSC2 RIC mRNA前駆体は、野生型の遺伝子または対立遺伝子、あるいは多形性の遺伝子または対立遺伝子から転写され、完全に機能的な標的タンパク質または機能的RNAをコードする。前記遺伝子または対立遺伝子は、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異を有さない。
【0108】
いくつかの実施形態では、TSC2タンパク質をコードするTSC2 RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングは、ツベリンタンパク質をコードするTSC2 RIC mRNA前駆体から、保持されたイントロンを正しく除去する。前記TSC2 RIC mRNA前駆体は、野生型対立遺伝子からの産生と比較して減少したレベルで標的遺伝子あるいは機能的RNAを産生する遺伝子または対立遺伝子から転写される。そして、前記遺伝子または対立遺伝子は、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異を有さない。これらの実施形態では、構成的にスプライシングされた保持されたイントロンの正しい除去は、同等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較した場合に機能的である、標的タンパク質または機能的RNAの産生をもたらす。
【0109】
他の実施形態では、構成的スプライシングは、保持されたイントロンをTSC2 RIC mRNA前駆体から正しく除去する。このTSC2 RIC mRNA前駆体は、同等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較して、機能の低下した形態で産生された標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子または対立遺伝子から転写される。そして、前記遺伝子または対立遺伝子は、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異を有さない。これらの実施形態では、構成的にスプライシングされた保持されたイントロンの正しい除去は、部分的に機能的な標的タンパク質、または同等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較した場合に、部分的に機能的である機能的RNAの産生をもたらす。
【0110】
構成的スプライシングによる保持されたイントロンの「正しい除去」は、エクソンのいかなる部分も除去することなく、全イントロンを除去することを指す。
【0111】
実施形態では、本明細書に記載されるような、あるいは本明細書に記載される方法に使用されるアンチセンスオリゴマーは、TSC2遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングまたは異常スプライシングを調節することによって、ツベリンタンパク質をコードするmRNAの量、またはツベリンタンパク質量を増加させない。選択的スプライシングまたは異常スプライシングの調節は、RNA種の配列および長さを解析する任意の既知の方法を使用して、例えば、RT-PCRによって、および本明細書および文献中で別記される方法を使用して測定することができる。実施形態では、選択的スプライシングまたは異常スプライシングの調節は、少なくとも10%または1.1倍でスプライシングされた、対象となる種の量の増加または減少に基づいて判定される。実施形態では、調節は、本発明の方法においてツベリンタンパク質をコードするmRNAの増加の判定に関連して本明細書に記載されるように、少なくとも10%から100%または1.1倍から10倍のレベルでの増加または減少に基づいて判定される。
【0112】
実施形態では、該方法は、TSC2 RIC mRNA前駆体が、野生型TSC2 mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された方法である。実施形態では、該方法は、TSC2 RIC mRNA前駆体が、全長の野生型TSC2 mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された方法である。実施形態では、TSC2 RIC mRNA前駆体は、全長のTSC2 mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された。これらの実施形態では、全長のTSC2 mRNA前駆体は、野生型スプライス部位配列を有する保持されたイントロンのスプライシングと比較して、保持されたイントロンの正しいスプライシングを損なわない保持されたイントロンのスプライス部位に多型性を有し得る。
【0113】
実施形態では、ツベリンタンパク質をコードするmRNAは、全長の成熟mRNAまたは野生型成熟mRNAである。これらの実施形態では、全長の成熟mRNAは、野生型成熟mRNAによってコードされたツベリンタンパク質の活性と比較して、成熟mRNAによってコードされた標的タンパク質または機能的RNAの活性に影響しない多型性を有し得る。
【0114】
<アンチセンスオリゴマー>
本開示の一態様は、TSC2 RIC mRNA前駆体の標的とされた部分に結合することによってスプライシングを増強するアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。本明細書で使用されるように、用語「ASO」および「アンチセンスオリゴマー」は、交換可能に使用され、ワトソン・クリック塩基対またはゆらぎ塩基対(G-U)によって標的核酸(例えば、TSC2 RIC mRNA前駆体)配列にハイブリダイズする、核酸塩基を含む、ポリヌクレオチドなどのオリゴマーを指す。ASOは、標的配列に相補的な又はほぼ相補的(例えば、標的配列に結合し、スプライス部位でスプライシングを増強させるのに十分な相補性)である正確な配列を有し得る。ASOは、標的核酸(例えば、mRNA前駆体の転写産物の標的とされた部分)に結合し(ハイブリダイズし)、生理学的条件下でハイブリダイズされたままであるように設計されている。典型的に、ASOは、意図した(標的とされた)核酸配列以外の部位にハイブリダイズする場合、標的核酸でない限られた数の配列に(標的核酸以外の少数の部位に)ハイブリダイズする。ASOの設計は、mRNA前駆体の転写産物の標的とされた部分の核酸配列、或いはゲノムまたは細胞のmRNA前駆体またはトランスクリプトームにおける他の場所での十分に類似した核酸配列の発生を考慮に入れることができ、その結果、ASOが他の部位に結合し「オフターゲット」効果を引き起こす可能性は限定される。例えば、発明の名称「Reducing Nonsense-Mediated mRNA Decay」のWO2015/035091として公開されたPCT国際出願番号PCT/US2014/054151におけるものなどの、当業者に既知のアンチセンスオリゴマーは、本明細書に記載される方法を実施するために使用され得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、ASOは、標的核酸またはRIC mRNA前駆体の標的とされた部分に「特異的にハイブリダイズする」または「特異的である」。典型的に、そのようなハイブリダイゼーションは、37℃より実質的に高い融解温度(Tm)で、好ましくは少なくとも50℃で、および典型的に60℃からおよそ90℃の間で生じる。そのようなハイブリダイゼーションは、好ましくは、厳しいハイブリダイゼーション条件に対応している。与えられたイオン強度およびpHで、Tmは、標的配列の50%が相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。
【0116】
オリゴヌクレオチドなどのオリゴマーは、ハイブリダイゼーションが2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の逆平行構成で生じるときに、互いに「相補的」である。二本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の1つと第2のポリヌクレオチドの鎖の1つとの間に生じる場合に、別のポリヌクレオチドに「相補的」であり得る。相補性(1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般に容認された塩基対合則に従って、互いに水素結合を形成すると予期される対向する鎖における塩基の割合(例えばパーセンテージ)の点から数量化できる。アンチセンスオリゴマー(ASO)の配列は、ハイブリダイズするその標的核酸の配列に100%相補的である必要はない。特定の実施形態では、ASOは、標的とされる標的核酸配列内の標的部位に対する、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相補性を含むことができる。例えば、オリゴマー化合物の20の核酸塩基のうちの18が標的部位に相補的であり、それ故、特異的にハイブリダイズするASOは90パーセントの相補性を表わす。この例において、残りの相補的でない核酸塩基は、ともにクラスター化され得るか、または相補的な核酸塩基と分散され(interspersed)、互いに又は相補的な核酸塩基に隣接している必要はない。ASOの標的核酸の領域とのパーセント相補性は、BLASTプログラム(基礎的なローカルアライメント検索ツール)および当該技術分野で既知のPowerBLASTプログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., 1990, 215, 403-410; Zhang and Madden, Genome Res., 1997, 7, 649-656)を慣例的に使用して判定され得る。
【0117】
ASOは、標的配列におけるすべての核酸塩基にハイブリダイズする必要はなく、それがハイブリダイズする核酸塩基は、隣接しているか又は隣接していないかもしれない。ASOは、mRNA前駆体の転写産物の1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズし得、その結果、介在する又は隣接するセグメントは、ハイブリダイゼーション事象に関係しない(例えば、ループ構造またはヘアピン構造が形成され得る)。特定の実施形態では、ASOは、標的mRNA前駆体の転写産物において隣接していない核酸塩基にハイブリダイズする。例えば、ASOは、ASOがハイブリダイズしない1つ以上の核酸塩基によって分離される、mRNA前駆体の転写産物における核酸塩基にハイブリダイズすることができる。
【0118】
本明細書に記載されるASOは、RIC mRNA前駆体の標的部分に存在する核酸塩基に相補的である核酸塩基を含む。用語「ASO」は、オリゴヌクレオチド、および標的mRNA上の相補的な核酸塩基にハイブリダイズすることができる核酸塩基を含むが、ペプチド核酸(PNA)などの糖部を含まない、他のオリゴマー分子を具体化する。ASOは、自然発生のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾されたヌクレオチド、またはそれらの2つ又は3つの任意の組み合わせを含み得る。用語「自然発生のヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。用語「修飾されたヌクレオチド」は、修飾された又は置換された糖類及び/又は修飾された骨格を有するヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ASOのヌクレオチドのすべてが、修飾されたヌクレオチドである。本明細書に記載される方法および組成物と適合性のあるASOの化学修飾およびASOの成分は、当業者に明白であり、例えば、米国特許第8,258,109号 B2、米国特許第5,656,612号、米国特許公開番号2012/0190728、およびDias and Stein,Mol. Cancer Ther.2002,347-355で見られ得、それら全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0119】
ASOの核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルなどの自然発生の未修飾の核酸塩基、または標的mRNA前駆体上に存在する核酸塩基との水素結合が可能であるように未修飾の核酸塩基に十分に類似している合成または修飾された核酸塩基であり得る。修飾された核酸塩基の例としては、限定されないが、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、および5-ヒドロキシメチルシトシンが挙げられる。
【0120】
本明細書に記載されるASOはまた、オリゴマーの成分に結合する骨格構造を含む。用語「骨格構造」および「オリゴマー結合」は、交換可能に使用され、ASOの単量体間の結合を指し得る。自然発生のオリゴヌクレオチドでは、骨格は、オリゴマーの糖部を結合する3’-5’ホスホジエステル結合を含む。本明細書に記載されるASOの骨格構造またはオリゴマー結合は、(限定されないが)ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート(phosphoraniladate)、ホスホラミデート(phosphoramidate)などを含む。例えば、LaPlanche et al.,Nucleic Acids Res.14:9081(1986); Stec et al.,J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984),Stein et al.,Nucleic Acids Res.16:3209(1988),Zon et al., Anti Cancer Drug Design 6:539 1991;Zon et al.,Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, pp.87-108(F.Eckstein,Ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stec et al.,米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman,Chemical Reviews 90:543(1990)を参照。いくつかの実施形態では、ASOの骨格構造は、亜リン酸を含有していないが、例えば、ペプチド核酸(PNA)、またはカルバミン酸塩、アミド、および直鎖および環式の炭化水素基を含む連結基において、ペプチド結合を含有している。いくつかの実施形態では、骨格修飾は、ホスホロチオエート結合である。いくつかの実施形態では、骨格修飾は、ホスホラミデート結合である。
【0121】
実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間の結合の各々での立体化学は、ランダムである。実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間の結合の各々での立体化学は、制御され、ランダムではない。例えば、引用によって本明細書に組み込まれた米国特許出願公報第2014/0194610号、「Methods for the Synthesis of Functionalized Nucleic Acids」は、核酸オリゴマーにおいて各リン原子でキラリティーの掌性(handedness)を独立して選択する方法について記載している。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、ランダムでないリンヌクレオチド間の結合を有するASOを含む。実施形態では、本発明の方法に使用される組成物は、純粋なジアステレオマーASOを含む。実施形態では、本発明の方法に使用される組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、約100%、約90%から約100%、約91%から約100%、約92%から約100%、約93%から約100%、約94%から約100%、約95%から約100%、約96%から約100%、約97%から約100%、約98%から約100%、または約99%から約100%のジアステレオマー純度を有するASOを含む。
【0122】
実施形態では、ASOは、そのリンヌクレオチド間の結合でRpおよびSpの構成のランダムでない混合物を有している。例えば、良好な活性とヌクレアーゼの安定性のバランスを達成するために、RpとSpの混合がアンチセンスオリゴヌクレオチドに求められることが示唆されてきた(Wan, et al.,2014「Synthesis,biophysical properties and biological activity of second generation antisense oligonucleotides containing chiral phosphorothioate linkages」Nucleic Acids Research 42(22):13456-13468、これは引用によって本明細書に組み込まれる)。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約5~100%のRp、少なくとも約5%のRp、少なくとも約10%のRp、少なくとも約15%のRp、少なくとも約20%のRp、少なくとも約25%のRp、少なくとも約30%のRp、少なくとも約35%のRp、少なくとも約40%のRp、少なくとも約45%のRp、少なくとも約50%のRp、少なくとも約55%のRp、少なくとも約60%のRp、少なくとも約65%のRp、少なくとも約70%のRp、少なくとも約75%のRp、少なくとも約80%のRp、少なくとも約85%のRp、少なくとも約90%のRp、または少なくとも約95%のRpと、残りのsp、或いは、約100%のRpを含む。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約10%から約100%のRp、約15%から約100%のRp、約20%から約100%のRp、約25%から約100%のRp、約30%から約100%のRp、約35%から約100%のRp、約40%から約100%のRp、約45%から約100%のRp、約50%から約100%のRp、約55%から約100%のRp、約60%から約100%のRp、約65%から約100%のRp、約70%から約100%のRp、約75%から約100%のRp、約80%から約100%のRp、約85%から約100%のRp、約90%約100%のRp、または約95%から約100%のRp、約20%から約80%のRp、約25%から約75%のRp、約30%から約70%のRp、約40%から約60%のRp、または約45%から約55%のRpと、残りのSpを含む。
【0123】
実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約5~100%のSp、少なくとも約5%のSp、少なくとも約10%のSp、少なくとも約15%のSp、少なくとも約20%のSp、少なくとも約25%のSp、少なくとも約30%のSp、少なくとも約35%のSp、少なくとも約40%のSp、少なくとも約45%のSp、少なくとも約50%のSp、少なくとも約55%のSp、少なくとも約60%のSp、少なくとも約65%のSp、少なくとも約70%のSp、少なくとも約75%のSp、少なくとも約80%のSp、少なくとも約85%のSp、少なくとも約90%のSp、または少なくとも約95%のSpと、残りのRp、あるいは約100%のSpを含む。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約10%から約100%のSp、約15%から約100%のSp、約20%から約100%のSp、約25%から約100%のSp、約30%から約100%のSp、約35%から約100%のSp、約40%から約100%のSp、約45%から約100%のSp、約50%から約100%のSp、約55%から約100%のSp、約60%から約100%のSp、約65%から約100%のSp、約70%から約100%のSp、約75%から約100%のSp、約80%から約100%のSp、約85%から約100%のSp、約90%から約100%のSp、または約95%から約100%のSp、約20%から約80%のSp、約25%から約75%のSp、約30%から約70%のSp、約40%から約60%のSp、または約45%から約55%のSpと、残りのRpを含む。
【0124】
本明細書に記載されるASOのいずれかは、自然発生のヌクレオチド中に存在するような、リボースまたはデオキシリボースを含む糖部、あるいはモルホリン環を含む、修飾された糖部または糖アナログを含有し得る。修飾された糖部の限定しない例は、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’MOE)、2’-O-アミノエチル、2’F;N3’->P5’ホスホラミデート、2’ジメチルアミノオキシエトキシ、2’ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’-グアニジニウム(guanidinidium)、2’-O-グアニジニウムエチル、カルバミン酸塩修飾した糖、および二環式修飾した糖などの、2’置換基が挙げられる。いくつかの実施形態では、糖部修飾は、2’-O-Me、2’F、および2’MOEから選択される。いくつかの実施形態では、糖部修飾は、ロックド核酸(LNA)におけるような追加の架橋結合である。いくつかの実施形態では、糖アナログは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)などのモルホリン環を含有している。いくつかの実施形態では、糖部は、リボフラノシルまたは2’デオキシリボフラノシルの修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部は、2’4’-抑制(constrained)2’O-メチルオキシエチル(cMOE)修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部は、cEt 2’4’-抑制2’-OエチルBNA修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部は、トリシクロDNA(tcDNA)修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部は、エチレン核酸(ENA)修飾を含む。いくつかの実施形態では、糖部は、MCE修飾を含む。修飾は当該技術分野で既知であり、文献、例えば、Jarver,et al.,2014,「A Chemical View of Oligonucleotides for Exon Skipping and Related Drug Applications」Nucleic Acid Therapeutics 24(1):37-47に記載され、これは、この目的のための引用によって本明細書に組み込まれる。
【0125】
いくつかの例では、ASOの各単量体は同じ方法で修飾され、例えば、ASOの骨格の各結合はホスホロチオエート結合を含み、または各リボース糖部は2’O-メチル修飾を含む。ASOの単量体成分の各々の上に存在する、そのような修飾は、「均一な修飾」と呼ばれる。いくつかの例では、異なる修飾の組み合わせが望まれ得、例えば、ASOは、ホスホロジアミデート結合とモルホリン環を含む糖部(モルホリノ)との組み合わせを含み得る。ASOへの異なる修飾の組み合わせは、「混合修飾」または「混合化学作用」と呼ばれる。
【0126】
いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上の骨格修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上の糖部修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、1つ以上の骨格修飾および1つ以上の糖部修飾を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、2’MOE修飾およびホスホロチオエート骨格を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)を含む。いくつかの実施形態では、ASOは、ペプチド核酸(PNA)を含む。本明細書に記載されるASOのいずれか又はASOの成分(例えば、核酸塩基、糖部、骨格)は、ASOの望ましい特性または活性を達成するために或いはASOの望ましくない特性または活性を減少させるために修飾されてもよい。例えば、ASOまたはASOの1つ以上の成分は、mRNA前駆体の転写産物上の標的配列への結合親和性を増強する;非標的配列への結合を減少させる;細胞のヌクレアーゼ(つまり、RNase H)による分解を減少させる;細胞及び/又は細胞の核へのASOの取り込みを改善する;ASOの薬物動態(pharmacokinetics)または薬力(pharmacodynamics)を変更する;およびASOの半減期を調節するために修飾され得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、ASOは、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ホスホロチオエート修飾されたヌクレオチドで構成される。そのようなヌクレオチドで構成されたASOは、特に、本明細書で開示される方法によく適しており、そのような修飾を有しているオリゴマーは、ヌクレアーゼ分解に対する著しく増強された耐性および増加したバイオアベイラビリティを有すると示されており、これによって、例えば、本明細書に記載されるいくつかの実施形態における経口送達に適するようになる。例えば、Geary et al.,J Pharmacol Exp Ther.2001;296(3):890-7;Geary et al.,J Pharmacol Exp Ther.2001;296(3):898-904を参照。
【0128】
ASOを合成する方法は当業者に既知である。代替的に又は加えて、ASOは商用源から得てもよい。
【0129】
他に明記されない限り、一本鎖核酸(例えば、mRNA前駆体の転写産物、オリゴヌクレオチド、ASOなど)配列の左端は、5’末端であり、一本鎖または二本鎖の核酸配列の左方向は5’方向と呼ばれる。同様に、核酸配列(一本鎖または二本鎖)の右端または右方向は、3’末端または3’方向である。一般に、核酸中の基準点に対する5’にある領域または配列は「上流」として言及され、核酸中の基準点に対する3’にある領域または配列は「下流」として言及される。一般に、mRNAの5’方向または5’末端は、開始コドン(initiation or start codon)が位置する場所であり、一方で、3’末端または3’方向は、終止コドンが位置する場所である。いくつかの態様では、核酸中の基準点の上流にあるヌクレオチドは、負の数によって指定され、基準点の下流にあるヌクレオチドは、正の数によって指定され得る。例えば、基準点(例えば、mRNA中のエクソン-エクソン連結)は「ゼロ」部位として指定され得、基準点に直接隣接し且つその上流にあるヌクレオチドは、「マイナス1」、例えば「-1」と指定され、一方で、基準点に直接隣接し且つその下流にあるヌクレオチドは、「プラス1」、例えば「+1」と指定される。
【0130】
他の実施形態では、ASOは、TSC2 RIC mRNA前駆体において保持されたイントロンの5’スプライス部位の下流(3’の方向)であるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分(例えば5’スプライス部位に対して、正の数で示された方向)に対して相補的である(及び、標的部分に結合する)(
図1)。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+500、+6から+400、+6から+300、+6から+200、または+6から+100の領域内にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、5’スプライス部位に対して、+1から+5までのヌクレオチド(5’スプライス部位の下流に位置付けられた最初の5つのヌクレオチド)に対して相補的ではない。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+50のヌクレオチドの領域内にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的であり得る。いくつかの態様では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+90、+6から+80、+6から+70、+6から+60、+6から+50、+6から+40、+6から+30、または+6から+20の領域内にある標的部分に相補的である。
【0131】
いくつかの実施形態では、ASOは、TSC2 RIC mRNA前駆体において保持されたイントロンの3’スプライス部位の上流にある(5’の方向)TSC2 RIC mRNA前駆体の標的領域(例えば、負の数で指定された方向)に対して相補的である(
図1)。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-500、-16から-400、-16から-300、-16から-200、-16から-100の領域内にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、3’スプライス部位に対して、-1から-15までのヌクレオチド(3’スプライス部位の上流に位置付けられた最初の15のヌクレオチド)には相補的ではない。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-50の領域内にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。いくつかの態様では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-90、-16から-80、-16から-70、-16から-60、-16から-50、-16から-40、または-16から-30の領域内にある、標的部分に相補的である。
【0132】
実施形態において、TSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+100から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-100までの領域内に存在する。
【0133】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン内(上流)にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である(
図1)。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4eの領域内にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する-1eから-3eのヌクレオチドに相補的ではない。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する-4eから-100e、-4eから-90e、-4eから-80e、-4eから-70e、-4eから-60e、-4eから-50e、-4eから-40e、-4eから-30e、または-4eから-20eの領域内にある、TSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。
【0134】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソン内(下流)にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である(
図1)。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4eの領域内にあるTSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対するヌクレオチド+1eに相補的ではない。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する+2eから+100e、+2eから+90e、+2eから+80e、+2eから+70e、+2eから+60e、+2eから+50e、+2eから+40e、+2eから+30e、または+2eから+20eの領域内にある、TSC2 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。ASOは、スプライシングの特異的結合および効果的な増強作用に適する任意の長さでもよい。いくつかの実施形態では、ASOは8から50の核酸塩基から成る。例えば、ASOは、長さが8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、45または50の核酸塩基であってもよい。いくつかの実施形態では、ASOは50よりも多い核酸塩基から成る。いくつかの実施形態において、ASOは、8から50の核酸塩基、8から40の核酸塩基、8から35の核酸塩基、8から30の核酸塩基、8から25の核酸塩基、8から20の核酸塩基、8から15の核酸塩基、9から50の核酸塩基、9から40の核酸塩基、9から35の核酸塩基、9から30の核酸塩基、9から25の核酸塩基、9から20の核酸塩基、9から15の核酸塩基、10から50の核酸塩基、10から40の核酸塩基、10から35の核酸塩基、10から30の核酸塩基、10から25の核酸塩基、10から20の核酸塩基、10から15の核酸塩基、11から50の核酸塩基、11から40の核酸塩基、11から35の核酸塩基、11から30の核酸塩基、11から25の核酸塩基、11から20の核酸塩基、11から15の核酸塩基、12から50の核酸塩基、12から40の核酸塩基、12から35核酸塩基、12から30核酸塩基、12から25の核酸塩基、12から20の核酸塩基、12から15の核酸塩基、13から50の核酸塩基、13から40の核酸塩基、13から35の核酸塩基、13から30の核酸塩基、13から25の核酸塩基、13から20の核酸塩基、14から50の核酸塩基、14から40の核酸塩基、14から35の核酸塩基、14から30の核酸塩基、14から25の核酸塩基、14から20の核酸塩基、15から50の核酸塩基、15から40の核酸塩基、15から35の核酸塩基、15から30の核酸塩基、15から25の核酸塩基、15から20の核酸塩基、20から50の核酸塩基、20から40の核酸塩基、20から35の核酸塩基、20から30の核酸塩基、20から25の核酸塩基、25から50の核酸塩基、25から40の核酸塩基、25から35の核酸塩基、または25から30の核酸塩基の長さである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが30のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが29のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが28のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが27のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが26のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが25のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが24のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが23のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが22のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが21のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが20のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが19のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが18のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが17のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが16のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが15のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが14のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが13のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが12のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが11のヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ASOは長さが10のヌクレオチドである。
【0135】
幾つかの実施形態では、異なる化学作用を有するがRIC mRNA前駆体の同じ標的部分に相補的である2つ以上のASOが使用される。幾つかの実施形態では、RIC mRNA前駆体の異なる標的部分に対して相補的である2つ以上のASOが使用される。
【0136】
実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の部分または抱合体、例えば、オリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する標的とする部分または他の抱合体に化学的に連結される。そのような部分は、限定されないが、例えば、コレステロール部分、コレステリル部分のような脂質部分、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシルの残留物、ポリアミン鎖もしくはポリエチレングリコール鎖、あるいはアダマンタン酢酸を含む。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよび調製方法は、公開された文献に記載されている。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GulNAc)、またはマンノース(例えば、マンノース-6-リン酸塩)、脂質、またはポリ炭化水素化合物を含む部分で抱合される。抱合体は、例えばリンカーを使用して、当技術分野において理解され、文献中に記載されるように、糖、塩基またはリン酸基上の幾つかの位置のいずれかでアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドの1つ以上に連結され得る。リンカーは、二価または三価の分枝したリンカーを含むことができる。実施形態では、抱合体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に結合される。オリゴヌクレオチド抱合体を調製する方法は、例えば、米国特許第8,450,467号「Carbohydrate conjugates as delivery agents for oligonucleotides」に記載され、これは引用によって本明細書に組み込まれる。
【0137】
幾つかの実施形態では、ASOによって標的とされる核酸は、真核細胞などの細胞において発現されたTSC2 RIC mRNA前駆体である。幾つかの実施形態では、用語「細胞」は、細胞の集団を指し得る。幾つかの実施形態では、細胞は被験体内に存在する。幾つかの実施形態では、細胞は被験体から分離されている。幾つかの実施形態では、細胞はエクスビボにある。幾つかの実施形態では、細胞は、疾病または疾患関連の細胞または細胞株である。幾つかの実施形態では、細胞はインビトロに(例えば、細胞培養液中に)ある。
【0138】
<医薬組成物>
記載された組成物のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む及び記載された方法のいずれかにおいて使用するための医薬組成物または製剤は、製薬産業において周知の及び公開された文献に記載された従来の技術に従って調製され得る。実施形態では、被験体を処置するための医薬組成物または製剤は、上記されるような有効量のアンチセンスオリゴマー、あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、またはエステル、および薬学的に許容可能な希釈剤を含む。医薬製剤のアンチセンスオリゴマーはさらに、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を含み得る。
【0139】
薬学的に許容可能な塩は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などがない、ヒトおよび下等動物の組織と接触させる使用に適しており、合理的なベネフィット・リスク比に相応している(例えば、S. M. Berge,et al.,J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19(1977)を参照し、これは、この目的のための参照によって本明細書に組み込まれる)。その塩は、化合物の最終的な分離および精製中に、または別に遊離塩基の官能基を適切な有機酸と反応させることによって、インサイチュで調製され得る。薬学的に許容可能で無毒な酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸か、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸か、またはイオン交換などの他の文書で立証された方法を用いることによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属の塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。さらに薬学的に許容可能な塩は、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成された、無毒なアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンのカチオンを含む。
【0140】
実施形態では、組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、ソフトゲル、坐剤、および浣腸剤などの多くの考えられ得る剤形のいずれかへと製剤される。実施形態では、組成物は、水性媒体、非水性媒体、または混合媒体状の懸濁液として製剤される。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/又はデキストランを含む懸濁液の粘度を増加させる特定の物質をさらに含み得る。その懸濁液はまた、安定化剤も含み得る。実施形態では、本発明の医薬製剤または組成物は、限定されないが、溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、発泡体またはリポソーム含有製剤(例えば、カチオンリポソームまたは非カチオンリポソーム)を含む。
【0141】
本発明の医薬組成物または製剤は、必要に応じた及び当業者に周知の又は公開された文献に記載された、1つ以上の浸透促進剤、担体、賦形剤、または他の活性または不活性の成分を含み得る。実施形態では、リポソームは、立体的に安定したリポソーム、例えば、1つ以上の特定の脂質を含むリポソームも含む。これらの特定の脂質によって、結果として、リポソームの循環寿命は高められる。実施形態では、立体的に安定したリポソームは、1つ以上の糖脂質を含むか、またはポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つ以上の親油性ポリマーを用いて誘導体化される。実施形態では、界面活性剤は、医薬製剤または組成物中に含まれる。薬物製品、製剤およびエマルジョンにおける界面活性剤の使用は、当技術分野においてよく知られている。実施形態では、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの効率的な送達を達成する、例えば、細胞膜にわたる拡散を助ける及び/又は脂溶性薬物の浸透性を増強するために、浸透促進剤を利用する。実施形態では、浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、または非キレート性の非界面活性剤である。
【0142】
実施形態では、医薬製剤は、複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、別の薬物または治療剤と組み合わせて投与される。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野において知られている方法によって、血液脳関門を介する主題のアンチセンスオリゴヌクレオチドの浸透を促進することができる1つ以上の薬剤とともに投与される。例えば、筋組織における運動ニューロンへのアデノウイルスベクターの投与による薬剤の送達は、米国特許第6,632,427号「Adenoviral-vector-mediated gene transfer into medullary motor neurons」に記載され、これは引用によって本明細書に組み込まれる。脳、例えば、線条体、視床、海馬、または黒質への直接のベクターの送達は、例えば、米国特許第6,756,523号「Adenovirus vectors for the transfer of foreign genes into cells of the central nervous system particularly in brain」に記載され、これは引用によって本明細書に組み込まれる。
【0143】
実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、望ましい薬学的特性または薬力学的特性を提供する薬剤と連結または抱合される。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、血液脳関門にわたる浸透または輸送を促進するために、当技術分野において知られている物質、例えばトランスフェリン受容体に対する抗体に結合される。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンス組成物をより効果的にするために、または血液脳関門にわたる輸送を増加させるために、ウイルスベクターに連結される。実施形態では、浸透性の血液脳関門の破壊は、糖、例えば、メソ-エリトリトール、キシリトール、D(+)ガラクトース、D(+)ラクトース、D(+)キシロース、ズルシトール、ミオイノシトール、L(-)フルクトース、D(-)マンニトール、D(+)グルコース、D(+)アラビノース、D(-)アラビノース、セロビオース、D(+)マルトース、D(+)ラフィノース、L(+)ラムノース、D(+)メリビオース、D(-)リボース、アドニトール、D(+)アラビトール、L(-)アラビトール、D(+)フコース、L(-)フコース、D(-)リキソース、L(+)リキソース、およびL(-)リキソース、あるいはアミノ酸、例えば、グルタミン、リジン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、およびタウリンの注入によって助けられる。血液脳関門の浸透を増強するための方法および物質は、例えば、米国特許第4,866,042号「Method for the delivery of genetic material across the blood brain barrier」、米国特許第6,294,520号「Material for passage through the blood-brain barrier」、および米国特許第6,936,589号「Parenteral delivery systems」に記載され、これら各々は引用によって本明細書に組み込まれる。
【0144】
実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の部分または抱合体、例えば、オリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する標的とする部分または他の抱合体に化学的に連結される。そのような部分は、限定されないが、例えば、コレステロール部分、コレステリル部分のような脂質部分、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシルの残留物、ポリアミン鎖もしくはポリエチレングリコール鎖、あるいはアダマンタン酢酸を含む。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよび調製方法は、公開された文献に記載されている。他の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GulNAc)、またはマンノース(例えば、マンノース-6-リン酸塩)、脂質、またはポリ炭化水素化合物を含む部分で抱合される。抱合体は、例えばリンカーを使用して、当技術分野において理解され、文献中に記載されるように、糖、塩基またはリン酸基上の幾つかの位置のいずれかでアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドの1つ以上に連結され得る。リンカーは、二価または三価の分岐したリンカーを含むことができる。実施形態では、抱合体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に結合される。オリゴヌクレオチドを調製する方法は、例えば、米国特許第8,450,467号「Carbohydrate conjugates as delivery agents for oligonucleotides」に記載され、これは引用によって本明細書に組み込まれる。
【0145】
<被験体の処置>
本明細書で提供される組成物のいずれかが、個体に投与され得る。「個体」は、「被験体」または「患者」と互換的に使用されてもよい。個体は哺乳動物でもよく、例えばヒト、あるいはヒト以外の霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ロバ、ヤギ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、またはヒツジなどの動物であってもよい。実施形態では、個体はヒトである。実施形態では、個体は、胎児、胚、または小児である。他の実施形態では、個体は、植物などの別の真核生物であってもよい。幾つかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、細胞にエクスビボで投与される。
【0146】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、疾患または障害を処置する方法として個体に投与される。幾つかの実施形態では、個体は、本明細書に記載される疾患のいずれかなどの遺伝子疾患を有している。幾つかの実施形態では、個体は、本明細書に記載される疾患のいずれかなどの疾患を有しているリスクがある。幾つかの実施形態では、個体は、タンパク質の量の不足またはタンパク質の活性の不足によって引き起こされた疾患または障害を有するリスクが増加している。個体が、タンパク質の量の不足またはタンパク質の活性の不足によって引き起こされる疾患または障害を有するリスクが増加している場合、該方法は、防止的または予防的な処置を含む。例えば、個体は、疾患の家族歴のために、そのような疾病または障害を有するリスクが増加している場合がある。典型的には、そのような疾患または障害を有するリスクが増加している個体は、予防的処置から(例えば、疾患または障害の発症または進行を予防するか又は遅らせることによる)恩恵を受ける。
【0147】
本発明のASOの投与に適切な経路は、ASOの送達が望まれる細胞型に応じて変わり得る。複数の組織および臓器が、結節硬化症による影響を受け、脳、腎臓、皮膚、肺および心臓は、最も著しく影響を受ける組織である。本発明のASOは、局所的に患者の皮膚に投与されるか、または肺送達によって肺に投与され得る。本発明のASOは、例えば、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射によって、患者に非経口で投与されてもよい。実施形態では、脳、腎臓、皮膚、肺または心臓への送達が行われる。実施形態では、胎児は、例えば、ASO組成物を胎児に対して直接的または間接的に(例えば母親を介して)投与することによって子宮内で処置される。
【0148】
<スプライシングを増強する追加のASOを特定する方法>
本発明の範囲内にはまた、特に標的イントロンにおけるTSC2 RIC mRNA前駆体のスプライシングを増強する追加のASOを特定する(判定する)方法がある。mRNA前駆体の標的領域内で様々なヌクレオチドを特異的にハイブリダイズするASOは、標的イントロンのスプライシングの速度及び/又は程度を改善するASOを特定する(判定する)ためにスクリーニングされてもよい。幾つかの実施形態では、ASOは、スプライシング抑制因子/サイレンサーの結合部位をブロックまたは妨害し得る。イントロンの標的領域にハイブリダイズされたときに望ましい効果(例えば、スプライシング、タンパク質または機能的なRNA産生の増強)を結果としてもたらすASOを特定する(判定する)ために、当該技術分野における既知の方法が使用されてもよい。これらの方法はまた、保持されたイントロンに隣接するエクソンにおいて、または保持されていないイントロンにおいて標的領域に結合することによって保持されたイントロンのスプライシングを増強するASOの特定のためにも使用することができる。使用され得る方法の一例が以下に提供される。
【0149】
ASO「ウォーク(walk)」と呼ばれる、1ラウンドのスクリーニングは、mRNA前駆体の標的部位にハイブリダイズするように設計されているASOを使用して実行され得る。例えば、ASOウォークに使用されるASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位のおよそ100のヌクレオチド上流(例えば、標的とされた/保持されたイントロンの上流に位置するエクソンの配列の一部)から、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位のおよそ100のヌクレオチド下流まで、及び/又は保持されたイントロンの3’スプライス部位のおよそ100のヌクレオチド上流から、標的とされた/保持されたイントロンの3’スプライス部位のおよそ100のヌクレオチド下流(例えば、標的とされた/保持されたイントロンの下流に位置するエクソンの配列の一部)まで、5つのヌクレオチドごとに敷き詰められ(tiled)得る。例えば、15のヌクレオチドの長さの第1のASOは、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド+6から+20まで特異的にハイブリダイズするように設計され得る。第2のASOは、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド+11から+25まで特異的にハイブリダイズするように設計されている。ASOは、mRNA前駆体の標的領域に及ぶように設計されている。実施形態では、ASOは、より密に、例えば、1、2、3、または4つのヌクレオチドごとに敷き詰められ得る。さらに、ASOは、5’スプライス部位の100のヌクレオチド下流から3’スプライス部位の100のヌクレオチド上流まで敷き詰められ得る。
【0150】
1つ以上のASO、または1つの対照ASO(標的部位にハイブリダイズするとは予期されていない配列である、スクランブル配列を有するASO)は、例えばトランスフェクションによって、標的mRNA前駆体(例えば、本明細書で別記されるRIC mRNA前駆体)を発現する疾患関連の細胞株へと送達される。ASOの各々のスプライシングを誘発する効果は、本明細書で記載されるように、当該技術分野で既知の方法、例えば、スプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用する逆転写酵素(RT)-PCRによって評価され得る(「イントロン保持事象の特定」を参照)。対照のASO処理された細胞と比較して、ASO処理された細胞におけるスプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用して生成されたRT-PCR産物が減少または欠如することは、標的イントロンのスプライシングが増強されたことを示している。幾つかの実施形態では、スプライシング効率、スプライシングされていないmRNA前駆体に対するスプライシングされたmRNA前駆体の比率、スプライシングの速度、またはスプライシングの程度は、本明細書に記載されるASOを使用して改善され得る。標的mRNA前駆体によってコードされるタンパク質または機能的RNAの量も、各ASOが望ましい効果(例えば、タンパク質産生の増強)を達成したかどうかを判定するために評価され得る。ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およびELISAなどの、タンパク質産生を評価する及び/又は定量するための当該技術分野で既知の方法も使用することができる。
【0151】
ASO「ミクロウォーク(micro-walk)」と呼ばれる第2ラウンドのスクリーニングは、mRNA前駆体の標的部位にハイブリダイズするように設計されたASOを使用して実行され得る。ASOミクロウォークに使用されるASOは、ASOでハイブリダイズされたときに結果的にスプライシングを増強させるmRNA前駆体のヌクレオチド酸配列をさらに改良する(refine)ために、1つのヌクレオチドごとに敷き詰められる。
【0152】
標的イントロンのスプライシングを促進するASOによって定義された領域は、1-ntステップ(1-nt steps)で間隔を置かれたASOの他に、典型的に18-25ntである、より長いASOを含む、ASO「ミクロウォーク」によって、より詳細に調査される。
【0153】
上にASOウォークに関して記載されたように、ASOミクロウォークは、1つ以上のASO、または対照ASO(標的部位にハイブリダイズすると予期されていない配列である、スクランブル配列を有するASO)を、例えば、トランスフェクションによって、標的mRNA前駆体を発現する疾患関連の細胞株へと送達することにより実行される。ASOの各々のスプライシングを誘発する効果は、本明細書で記載されるように、当該技術分野で既知の方法、例えば、スプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用する逆転写酵素(RT)-PCRによって評価され得る(「イントロン保持事象の特定」を参照)。対照のASO処理された細胞と比較して、ASO処理された細胞におけるスプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用して生成されたRT-PCR産物が減少または欠如することは、標的イントロンのスプライシングが増強されたことを示している。幾つかの実施形態では、スプライシング効率、スプライシングされていないmRNA前駆体に対するスプライシングされたmRNA前駆体の比率、スプライシングの速度、またはスプライシングの程度は、本明細書に記載されるASOを使用して改善され得る。標的mRNA前駆体によってコードされるタンパク質または機能RNAの量も、各ASOが望ましい効果(例えば、タンパク質産生の増強)を達成したかどうかを判定するために評価され得る。ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およびELISAなどの、タンパク質産生を評価する及び/又は定量するための当該技術分野で既知の方法も使用することができる。
【0154】
mRNA前駆体の領域にハイブリダイズされたときに、結果的にスプライシングを増強させ、タンパク質産生を増加させるASOは、動物モデル、例えば、全長ヒト遺伝子がノックインされたトランスジェニックマウスモデルまたは疾患のヒト化マウスモデルを使用して、インビボで試験され得る。ASOの投与に適した経路は、ASOの送達が望まれる疾患及び/又は細胞型に応じて変化し得る。ASOは、例えば、皮膚に対する局所適用、肺に対する肺送達、髄腔内注射、脳室内注射、腹膜腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射によって投与され得る。投与後に、モデル動物の細胞、組織、及び/又は臓器は、当該技術分野に既知の方法および本明細書に記載される方法によって、例えば、スプライシング(効率、速度、程度)およびタンパク質産生を評価することによって、ASO処置の効果を判定するために評価され得る。動物モデルはまた、疾患または疾患重症度の表現型または行動的徴候であり得る。
【0155】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、記載されているが、このような実施形態がほんの一例として提供されることは当業者に明白となる。多くの変更、変化および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想到される。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用され得ることを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、これらの請求項の範囲内の方法および構造並びにそれらの同等物がそれによって包含されるものであることが意図される。
【実施例】
【0156】
本発明は、以下の実施例によってより具体的に例示される。しかしながら、本発明がいかなる方法でもこれらの実施例によって限定されないことが理解されるべきである。
【0157】
実施例1:次世代配列決定を用いたRNAseqによるTSC2転写産物のイントロン保持事象の特定
イントロン保持事象を特定するべくTSC2遺伝子によって産生された転写産物のスナップショットを明らかにするために、次世代配列決定を使用して、トランスクリプトーム全体のショットガン配列決定を実行した。この目的のために、HCN(ヒト皮質ニューロン)、腎上皮細胞、気管支上皮細胞、およびTHLE-3(ヒト肝上皮)細胞の核および細胞質の分画からのpolyA+RNAを単離し、IlluminaのTruSeq Stranded mRNAライブラリー Prep Kitを使用して、cDNAライブラリーを構築した。ライブラリーを、ペアエンド配列決定(pair-end sequenced)し、結果として、100のヌクレオチドの読み取り値をヒトゲノムにマッピングした(2009年2月、GRCh37/hg19アセンブリ)。TSC2に関する配列決定の結果を、
図3に示す。簡潔に言うと、
図3は、(UCSC Genome Informatics Group (Center for Biomolecular Science & Engineering, University of California, Santa Cruz, 1156 High Street, Santa Cruz, CA 95064)によって操作され、例えばRosenbloom, et al.,2015,「The UCSC Genome Browser database:2015 update」Nucleic Acids Research 43, Database Issue,doi: 10.1093/nar/gku1177に記載された)UCSCのゲノムブラウザを使用して視覚化されたマッピングされた読み取り値を示し、読み取り値の適用範囲および数はピーク信号によって推論され得る。ピークの高さは、特定の領域における読み取り値の密度によって与えられた発現のレベルを示している。TSC2の概略図(縮尺通りに描かれている)は、ピークがTSC2エクソン領域およびイントロン領域に適合されるように、(読み取り信号の下の)UCSCゲノムブラウザによって提供される。この表示に基づいて、(
図3の下の図におけるイントロン4に関して、
図5の下の図におけるイントロン25および26に関して、および
図7の下の図におけるイントロン31および32に関して示されるように)HCNの核分画において高い読取密度を有するが、これらの細胞の細胞質分画においては非常に低い読み取り値しか有さないか読み取り値を有さない、5つのイントロン(矢印により示された4、25、26、31、および32)を特定した。このことは、これらのイントロンが保持されること、およびイントロン-4、イントロン-25、イントロン-26、イントロン-31、およびイントロン-32を含有する転写産物が、細胞核中に残存することを示しており、これらの保持されたTSC2 RIC mRNA前駆体が、細胞質へと輸送されないため非生産的であることを示唆している。
【0158】
実施例2:TSC2のイントロン4を標的とするASO-ウォークの設計
ASOウォークを、本明細書に記載される方法を使用して、イントロン4を標的とするよう設計した(
図4;表2)。ヌクレオチド+6から+58に及ぶイントロン4の5’スプライス部位のすぐ下流の領域およびヌクレオチド-16から-68に及ぶイントロン4の3’スプライス部位のすぐ上流の領域を、2’-O-Me RNA、PS骨格を用いて標的とし、18-mer ASOを、5-ヌクレオチド間隔でシフトした。
【0159】
実施例3:TSC2のイントロン25および26を標的とするASO-ウォークの設計
ASOウォークを、本明細書に記載される方法を使用して、イントロン25および26を標的とするよう設計した(
図6;表2)。ヌクレオチド+6から+58に及ぶイントロン25の5’スプライス部位のすぐ下流の領域およびヌクレオチド-16から-68に及ぶイントロン26の3’スプライス部位のすぐ上流の領域を、2’-O-Me RNA、PS骨格を用いて標的とし、18-mer ASOを、5-ヌクレオチド間隔でシフトした。代替的なエクソン26に隣接しているスプライス部位のイントロン領域は、エクソン26の包含レベルに影響を与えることを回避するために、標的とされない。
【0160】
実施例4:TSC2のイントロン31および32を標的とするASO-ウォークの設計
ASOウォークを、本明細書に記載される方法を使用して、イントロン31および32を標的とするよう設計した(
図8;表2)。ヌクレオチド+6から+58に及ぶイントロン31の5’スプライス部位のすぐ下流の領域およびヌクレオチド-18から-68に及ぶイントロン32の3’スプライス部位のすぐ上流の領域を、2’-O-Me RNA、PS骨格を用いて標的とし、18-mer ASOを、5-ヌクレオチド間隔でシフトした(2つのASO、TSC2-IVS32-33およびTSC2-IVS32-51を例外とする)。代替的なエクソン32に隣接しているスプライス部位のイントロン領域は、エクソン32の包含レベルに影響を与えることを回避するために、標的とされない。
【0161】
実施例5:TSC2イントロン4、25、26、31または32のASO標的を介するスプライシング効率の改善は、転写産物レベルを増大させる
ASOを使用して、TSC2発現の増加が、TSC2イントロン4、25、26、31または32のスプライシング効率を改善することによって達成され得るかどうかを判断するために、RT-PCR産物を、放射性のRT-PCRおよびRT-qPCRを使用して評価した。ヒト網膜上皮細胞株である、ARPE-19細胞(American Type Culture Collection (ATCC), USA)、またはヒト肝細胞癌細胞株である、Huh-7(NIBIOHN、日本)、あるいはヒト神経芽腫細胞株である、SK-N-AS(ATCC)を、疑似トランスフェクトしたか、または
図10、
図12、
図15および表1-2に記載される標的ASOでトランスフェクトした。細胞を、供給業者の仕様書に従って、Lipofectamine RNAiMaxトランスフェクション試薬(Thermo Fisher)を用いてトランスフェクトした。簡潔に述べると、ASOを、96ウェル組織培養プレートに蒔き、Opti-MEM中に希釈したRNAiMaxと組み合わせた。細胞を、トリプシンを用いて剥離し、完全培地中で再懸濁し、約25,000個の細胞をASOトランスフェクション混合物に加えた。トランスフェクション実験を、三通りのプレート複製において実行した。最終的なASO濃度は80nMであった。供給業者の仕様書に従って、培地をトランスフェクションの6時間後に交換し、細胞を、DNAse(Thermo Fisher)を補足したCells-to-Ct RT試薬を用いて24時間で採取した。供給業者の仕様書に従って、cDNAを、Cells-to-Ct RT試薬(Thermo Fisher)で生成した。対象のイントロンでスプライシングの量を定量化するために、表1-2に列挙される、対応するエクソン-エクソン連結(Thermo Fisher)に及ぶプローブとともにTaqmanアッセイを使用して、定量的PCRを実行した。Taqmanアッセイを、QuantStudio 7Flex Real-Time PCRシステム(Thermo Fisher)上で、供給業者の仕様書に従って実行した。標的遺伝子アッセイ値を、RPL32(deltaCt)およびプレート適合偽トランスフェクションサンプル(delta-delta Ct)に対して正規化し、擬似定量(2^-(delta-delta Ct)にわたる倍数変化をもたらす。3つのプレート複製のモック(mock)にわたる平均倍数変化をプロットした(
図10、
図12および
図15)。
図10、
図12および
図15では、幾つかのASOは、標的遺伝子発現を増大させると特定され、これは、それぞれの標的イントロンでのスプライシングの増加を示唆している。
【0162】
【0163】
【配列表】