IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヴェクトラコー インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図1
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図2
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図3
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図4
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図5
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図6
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図7
  • 特許-モバイル心臓モニタリング装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】モバイル心臓モニタリング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/332 20210101AFI20220404BHJP
【FI】
A61B5/332 ZDM
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018554312
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-03-14
(86)【国際出願番号】 US2016066502
(87)【国際公開番号】W WO2017116703
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-12-16
(31)【優先権主張番号】14/984,838
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518234553
【氏名又は名称】ヴェクトラコー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158551
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 貴明
(72)【発明者】
【氏名】シュレック デイヴィッド エム
(72)【発明者】
【氏名】シュレック ブラッド エス
(72)【発明者】
【氏名】シュレック アンドリュー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ラール ミハエル ジー
【審査官】牧尾 尚能
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-525899(JP,A)
【文献】特表2005-531359(JP,A)
【文献】特開2005-323821(JP,A)
【文献】特開2002-282229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0105928(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0171227(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0208943(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0270112(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004547(US,A1)
【文献】特開2001-269322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05 - 5/0538
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル心臓モニタリング装置を用いた心臓モニタリング方法であって、
抽象因子分析法をトレーニングセットにおける各心電図の電圧-時間データアレイに適用した後、シンプレックス最適化法を前記トレーニングセットに適用することによって生成される汎用変換行列を記憶するステップと、
前記モバイル心臓モニタリング装置において、ユーザの心電図誘導サブセットの電圧-時間測定値を受け取るステップであって、前記モバイル心臓モニタリング装置が前記モバイル心臓モニタリング装置と通信する4つ又は5つの電極から3直交心電図誘導基準セットの電圧-時間測定値を受け取る、ステップと、
n誘導心電図を生成するように、記憶されている前記汎用変換行列を前記3直交心電図誘導基準セットに適用することにより、前記3直交心電図誘導基準セットの電圧-時間測定値から前記n誘導心電図の心電図誘導フルセットを導出することによって、前記心電図誘導サブセットから前記ユーザの心電図誘導フルセットを導出するステップと、
前記心電図誘導サブセットのうちの少なくとも1つの誘導の前記電圧-時間測定値に基づいて、前記ユーザの心拍数を計算して心調律をモニタするステップと、
導出された前記心電図誘導フルセットから複数の心拍それぞれについて心臓電気バイオマーカを計算することによって、前記導出された心電図誘導フルセットから動的心臓電気バイオマーカを計算するステップであって、前記動的心臓電気バイオマーカが双極性及び多極エネルギー含量を定量化する、ステップと、
を含み、
導出された前記心電図誘導フルセットから複数の心拍それぞれについて動的心臓電気バイオマーカを計算することは、前記複数の心拍それぞれについて、導出された前記心電図誘導フルセットの電圧-時間データにおける固有ベクトルのセットを抽象因子分析を用いて計算し、及び、前記固有ベクトルのセットから第1の固有値、第2の固有値及び第3の固有値を計算することを含み、前記第3の固有値は、前記複数の心拍それぞれについての前記心臓電気バイオマーカとして用いられ、
前記方法は、さらに、
各心拍について、当該心拍について計算された前記心臓電気バイオマーカが異常ゾーンにあるかを検出するステップと、
前記モバイル心臓モニタリング装置において、前記心臓電気バイオマーカが前記異常ゾーンにある心拍の割合が所定の時間間隔内に閾値を上回ったときに検出されるトリガ条件を前記心臓電気バイオマーカに基づいて検出するステップと、
前記トリガ条件を検出したことに応答して、前記モバイル心臓モニタリング装置から所定の遠隔装置にアラートを送信するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
(a)前記心電図誘導フルセットを導出するステップ、前記心拍数を計算するステップ、及び前記動的心臓電気バイオマーカを計算するステップは、前記モバイル心臓モニタリング装置によって実行される、又は、
(b)前記モバイル心臓モニタリング装置において、ユーザの心電図誘導サブセットの電圧-時間測定値を受け取るステップが、前記心電図誘導サブセットの電圧-時間測定値を前記4つ又は5つの電極から無線通信プロトコルを介して受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)前記3直交心電図誘導基準セットの電圧-時間測定値を受け取ることは、前記モバイル心臓モニタリング装置と通信する前記4つ又は5つの電極から前記3直交心電図誘導基準セットの電圧-時間測定値を受け取ることを含み、前記3直交心電図誘導基準セットを記録する前記電極のうちの1つの電極内に接地が配置され、
(b)前記3直交心電図誘導基準セットの電圧-時間測定値を受け取ることは、I、aVF及びV2心電図誘導の電圧-時間測定値を受け取ることを含み、又は、
(c)前記3直交心電図誘導基準セットの電圧-時間測定値を受け取ることは、I、II及びV2心電図誘導の電圧-時間を受け取ることを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)前記n誘導心電図は、12誘導心電図であり、
(b)前記n誘導心電図は、15誘導心電図又は22誘導心電図であり、又は
(c)前記導出された心電図誘導フルセットから動的心臓電気バイオマーカを計算するステップは、前記n誘導心電図の12誘導から前記心臓電気バイオマーカを計算する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(a)前記モバイル心臓モニタリング装置のディスプレイ上に、時間の経過に伴う前記動的心臓電気バイオマーカのグラフを表示するステップを、
(b)前記導出された心電図誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを前記モバイル心臓モニタリング装置のリムーバブル記憶装置に記憶するステップを、
(c)前記心電図誘導サブセットの前記電圧-時間測定値、前記導出された心電図誘導フルセット、前記計算された心拍数、又は前記計算された動的心臓電気バイオマーカのうちの少なくとも1つを前記モバイル心臓モニタリング装置のディスプレイ上に表示するステップを、又は、
(d)前記導出された心電図誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとをリアルタイムで前記遠隔装置に送信するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記トリガ条件を検出したことに応答して前記モバイル心臓モニタリング装置から前記所定の遠隔装置に前記アラートを送信するステップは、前記導出された心電図誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記トリガ条件前の一定期間にわたる前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを含むテキストメッセージ又は電子メールメッセージの少なくとも一方を前記所定の遠隔装置に送信するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
モバイル心臓モニタリング装置であって、
抽象因子分析法をトレーニングセットにおける各心電図の電圧-時間データアレイに適用した後、シンプレックス最適化法を前記トレーニングセットに適用することによって生成される汎用変換行列を記憶するための記憶装置と、
前記モバイル心臓モニタリング装置と通信する4つ又は5つの電極から3直交ECG誘導基準セットの電圧-時間測定値を取得することによって、ユーザのECG誘導サブセットの電圧-時間測定値を取得する心電図(ECG)電極と、
n誘導ECGを生成するように、記憶されている前記汎用変換行列を前記3直交ECG誘導基準セットに適用することにより、前記3直交ECG誘導基準セットの電圧-時間測定値から前記n誘導ECGのECG誘導フルセットを導出することによって、前記ECG誘導サブセットから前記ユーザのECG誘導フルセットを導出するECG導出モジュールと、
前記ECG誘導サブセットのうちの少なくとも1つの誘導の前記取得された電圧-時間測定値に基づいて、前記ユーザの心拍数を計算して心調律をモニタする心拍数計算及び心調律モニタリングモジュールと、
導出された前記ECG誘導フルセットから複数の心拍それぞれについて動的心臓電気バイオマーカを計算する動的心臓電気バイオマーカ計算モジュールであって、導出された前記ECG誘導フルセットから複数の心拍について動的心臓電気バイオマーカを計算することは、前記複数の心拍それぞれについて、導出された前記ECG誘導フルセットの電圧-時間データにおける固有ベクトルのセットを抽象因子分析を用いて計算し、及び、前記固有ベクトルのセットから第1の固有値、第2の固有値及び第3の固有値を計算することを含み、前記第3の固有値は、前記複数の心拍それぞれについての心臓電気バイオマーカとして用いられる、動的心臓電気バイオマーカ計算モジュールと、
アラートモジュールであって、
各心拍について、当該心拍について計算された前記心臓電気バイオマーカが異常ゾーンにあるかを検出し、
前記モバイル心臓モニタリング装置において、前記心臓電気バイオマーカが前記異常ゾーンにある心拍の割合が所定の時間間隔内に閾値を上回ったときに検出されるトリガ条件を前記心臓電気バイオマーカに基づいて検出し、
前記トリガ条件を検出したことに応答して、前記モバイル心臓モニタリング装置から所定の遠隔装置にアラートを送信する、アラートモジュールと、
を備えることを特徴とするモバイル心臓モニタリング装置。
【請求項8】
(a)前記ユーザの前記導出されたECG誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを表示するディスプレイ、
(b)前記導出されたECG誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを遠隔装置に送信するためのネットワークインターフェイス、又は
(c)前記ユーザの前記導出されたECG誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを記憶するリムーバブル記憶装置、をさらに備える、
請求項7に記載のモバイル心臓モニタリング装置。
【請求項9】
(a)前記記憶装置は、ユーザの前記導出されたECG誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを記憶し、
(b)前記ECG電極は、左腕電極と、右腕電極と、左脚電極と、V2電極とを含み、
(c)前記ECG電極は、左腕電極と、右腕電極と、左脚電極と、右脚電極と、V2電極とを含み、又は
(d)前記ECG電極は、前記ECG誘導サブセットの前記取得した電圧-時間測定値を、無線通信プロトコルを介して送信する、
請求項8に記載のモバイル心臓モニタリング装置。
【請求項10】
前記ECG電極は、3ECG誘導の電圧-時間測定値を取得し、前記ECG導出モジュールは、前記3ECG誘導の前記電圧-時間測定値からn誘導ECGのECG誘導フルセットを導出する、
請求項7に記載のモバイル心臓モニタリング装置。
【請求項11】
モバイル心臓モニタリング装置であって、
プロセッサと、
前記プロセッサによって実行されたときに前記プロセッサに動作を実行させるコンピュータプログラム命令を記憶するメモリと、
を備え、前記動作は、
n誘導心電図(ECG)を生成するように、汎用変換行列を3直交ECG誘導基準セットに適用することにより、前記3直交ECG誘導基準セットの電圧-時間測定値から前記n誘導ECGのECG誘導フルセットを導出することによって、前記モバイル心臓モニタリング装置と通信する4つ又は5つのECG電極から受け取られる前記3直交ECG誘導基準セットからユーザのECG誘導のフルセットを導出するステップであって、前記汎用変換行列は、抽象因子分析法をトレーニングセットにおける各心電図の電圧-時間データアレイに適用した後、シンプレックス最適化法を前記トレーニングセットに適用することによって生成される、ステップと、
前記4つ又は5つのECG電極から受け取られたECG誘導サブセットのうちの少なくとも1つの誘導の電圧-時間測定値に基づいて、前記ユーザの心拍数を計算して心調律をモニタするステップと、
導出された前記ECG誘導フルセットから複数の心拍それぞれについて心臓電気バイオマーカを計算することによって、前記導出されたECG誘導フルセットから動的心臓電気バイオマーカを計算するステップであって、
導出された前記心電図誘導フルセットから複数の心拍について動的心臓電気バイオマーカを計算することは、前記複数の心拍それぞれについて、導出された前記ECG誘導フルセットの電圧-時間データにおける固有ベクトルのセットを抽象因子分析を用いて計算し、及び、前記固有ベクトルのセットから第1の固有値、第2の固有値及び第3の固有値を計算することを含み、前記第3の固有値は、前記複数の心拍それぞれについての前記心臓電気バイオマーカとして用いられる、ステップと、
各心拍について、当該心拍について計算された前記心臓電気バイオマーカが異常ゾーンにあるかを検出するステップと、
前記モバイル心臓モニタリング装置において、前記心臓電気バイオマーカが前記異常ゾーンにある心拍の割合が所定の時間間隔内に閾値を上回ったときに検出されるトリガ条件を前記心臓電気バイオマーカに基づいて検出するステップと、
前記トリガ条件を検出したことに応答して、前記モバイル心臓モニタリング装置から所定の遠隔装置にアラートを送信するステップと、
を含む、
ことを特徴とするモバイル心臓モニタリング装置。
【請求項12】
前記n誘導ECGは、12誘導ECGである、又は
前記n誘導ECGは、22誘導ECG又は15誘導ECGである、
請求項11に記載のモバイル心臓モニタリング装置。
【請求項13】
(a)前記導出されたECG誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを表示するディスプレイ、
(b)前記ユーザの前記導出されたECG誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された動的心臓電気バイオマーカとを記憶するリムーバブル記憶装置、又は
(c)前記ユーザの前記導出されたECG誘導フルセットと、前記計算された心拍数と、前記計算された心臓電気バイオマーカとをネットワークを介して遠隔装置に送信するためのネットワークインターフェイスをさらに備える、
請求項11に記載のモバイル心臓モニタリング装置。
【請求項14】
複数の患者の心臓モニタリングのためのシステムであって、
複数のモバイル心臓モニタリング装置と、
中央モニタリングシステムと、
を備え、
前記複数のモバイル心臓モニタリング装置の各々は、
複数の患者のそれぞれの患者の心電図(ECG)誘導サブセットの電圧-時間測定値であって、前記モバイル心臓モニタリング装置のそれぞれと通信する4つ又は5つの電極から3直交ECG誘導基準セットである電圧-時間測定値を取得し、
記憶されている汎用変換行列を前記3直交ECG誘導基準セットの電圧-時間測定値に適用することによって、複数の患者の前記それぞれの患者の前記ECG誘導サブセットの前記電圧-時間測定値をネットワークを介して送信し、
前記中央モニタリングシステムは、
前記複数のモバイル心臓モニタリング装置から送信された、前記複数の患者の各患者の前記ECG誘導サブセットの前記電圧-時間測定値を受け取り、
前記記憶されている汎用変換行列を3直交ECG誘導基準セットの前記電圧-時間測定値に適用することによって、前記それぞれのECG誘導サブセットから前記複数の患者それぞれについてのECG誘導フルセットを導出し、
前記導出されたそれぞれのECG誘導フルセットから複数の心拍それぞれについて心臓電気バイオマーカを計算することによって、前記複数の患者の各患者のそれぞれの動的心臓電気バイオマーカを計算し、
導出された前記ECG誘導フルセットそれぞれから複数の心拍それぞれについて動的心臓電気バイオマーカを計算することは、前記複数の心拍それぞれについて、導出された前記ECG誘導フルセットの電圧-時間データにおける固有ベクトルのセットを抽象因子分析を用いて計算し、及び、前記固有ベクトルのセットから第1の固有値、第2の固有値及び第3の固有値を計算することを含んでおり、前記第3の固有値は、前記複数の心拍それぞれについての心臓電気バイオマーカとして用いられ、
前記中央モニタリングシステムは、さらに、
各心拍について、当該心拍についての前記心臓電気バイオマーカそれぞれが異常ゾーンにあるかを検出し、
前記複数の患者の各患者について計算された前記それぞれの心臓電気バイオマーカに基づいて、前記それぞれの心臓電気バイオマーカが前記異常ゾーンにある心拍の割合が所定の時間間隔内に閾値を上回ったときに検出されるトリガ条件が生じたかどうかを検出
前記トリガ条件を検出したことに応答して、アラート通知を生成する、
ことを特徴とするシステム。
【請求項15】
(a)前記中央モニタリングシステムは、前記複数の患者のうちの1人の患者についてトリガ条件が生じたことを検出したことに応答して、前記トリガ条件がどの患者について生じたかを示す可聴アラート又は可視アラートの少なくとも一方を生成し、
(b)前記中央モニタリングシステムは、前記導出されたECG誘導フルセットと、前記複数の患者の各患者の前記計算された動的心臓電気バイオマーカそれぞれとを表示する1又は2以上のディスプレイを含み、又は
(c)前記複数の心臓モニタリング装置の各々は、複数の患者の前記それぞれの患者の3ECG誘導の電圧-時間測定値を取得し、前記中央モニタリングシステムは、前記複数の患者の各患者について、前記3ECG誘導の前記電圧-時間測定値から12誘導ECGのそれぞれのECG誘導フルセットを導出する、
請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル心臓モニタリング装置に関し、具体的には、心調律と動的心臓電気バイオマーカとをモニタするモバイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国では、急性冠症候群(ACS)に至る冠状動脈性心臓病が死亡原因の第1位であり、800万件超の年間救急外来受診が胸痛によって占められている。しかしながら、しばしば救急処置室では急性心筋梗塞(AMI)が誤診され、AMIを患う多くの患者が正しく評価されないまま救急処置室から帰宅する。
【0003】
心臓の電気生理学
ECGとして記録される心臓の電位には、最終的に膜貫通イオン電流が関与する。ECGは、複雑な一連の生理的及び技術的過程の最終結果である。膜貫通イオン電流は、隣接する細胞間の細胞膜を横切るイオン束によって生成される。これらの電流は、心臓の活性化(興奮)と回復のシーケンスによって合成されて、心臓内及びその周辺に、心周期中に時間と共に変化する心臓電場を形成する。この電場は、肺、血液及び骨格筋を含む、通過時に心臓電場を乱す数多くの他の構造を通過する。Braunwald’s Heart Disease(Braunwaldの心臓病学)第8版、Saunders、Elsevier社(2008年)第12章、P.149。その後、皮膚に到達した電流が、四肢及び胴部の特定の位置に配置されて誘導(lead)を生じるように構成された電極によって検出される。これらの誘導の出力を様々な電子装置によって増幅し、フィルタ処理し、表示して心電図記録が作成され、これらの記録に診断基準を適用して解釈が行われる。
【0004】
心臓双極子(cardiac dipole)
電流源及び電流シンクなどの、互いに近接近して配置された強度が等しい異極性の点源は、電流双極子として表すことができる。従って、単一の心臓線維(cardiac fiber)の活性化は、活性化の伝搬方向に移動する電流双極子としてモデル化することができる。このような双極子は、強度又は双極子モーメント、位置及び配向という3つのパラメータによって完全に特徴付けられる。双極子モーメントは、細胞内電位の変化率に比例する。同様に、複数の隣接する心臓線維が同調して活性化すると活動面が生じ、これによって活性化の方向に配向された双極子が形成される。この波面における全ての双極子の正味の効果は、全ての同時にアクティブな成分の双極子の(ベクトルの)和に等しい強度及び配向の単一の双極子である。ld.at 150
【0005】
電流双極子は、陽電位がその前方に突出して負電位がその後方に突出する特徴的な電位場を形成する。この電場内のいずれかの部位において記録される実際の電位は、双極子モーメントに正比例し、双極子から記録部位までの距離の2乗に反比例し、双極子の軸と双極子から記録部位まで引いた線との間の角度の余弦に正比例する。ld.at 150
【0006】
この活性化方向と電流双極子の配向と電位の極性との間の関係は、電極が感知する電位の極性と活動面の移動方向との間の基本的関係を表し、すなわち電極は、活動面が電極に向かって移動する時には陽電位を感知し、活動面が電極から離れて移動する時には負電位を感知する。ld.at 150
【0007】
透過因子(transmission factor)は、心臓電場を著しく修正する(容積導体と呼ばれる)物理的3次元環境の中身である。透過因子は、4つの広いカテゴリに分類することができる。
【0008】
細胞因子は、局所的膜貫通電位勾配(local transmembrane potential gradients)に起因する電流束の強度を決定し、細胞内及び細胞外抵抗と、ナトリウムイオンなどの関連するイオンの濃度とを含む。イオン濃度が低いと、電流フローの強度が低下して細胞外電位が低下する。
【0009】
心臓因子は、1つの心臓細胞から別の心臓細胞への関係に影響を与える。2つの主な因子は、(1)線維の幅を横切る電流フロー及び伝搬よりも長さに沿った電流フロー及び伝搬の方が大きく速くなる心臓組織の特性である異方性、並びに(2)隣接する線維の効果的な電気的結合を妨げる結合組織が心臓線維間に存在することである。
【0010】
心外因子は、心室壁、心腔内及び胸腔内血液、心膜、肺、骨格筋、皮下脂肪及び皮膚を含む、活性化領域と体表面との間に存在する全ての組織及び構造を含む。これらの組織は、隣接する組織の電気抵抗の差異、すなわち胴部内における電気的不均一性の存在に起因して心臓場を変化させる。
【0011】
他の因子としては、心臓と記録電極との間の距離の変化が挙げられ、電位振幅は、この距離と胸部内における心臓の偏心度との二乗に比例して減少する(すなわち、心臓が胴体の後部よりも前部の方に近く、右心室と左心室の前壁中隔面とが左心室の他の部分及び心房よりも前胸壁の近くに位置すると、心電図電位は後部よりも前部のほうが高くなり、前部左心室から胸壁に投影される波形の方が、後部心室領域によって生じる波形よりも大きくなる)。ld.at 151
【0012】
心周期
心臓は電流発生器であり、その電場は圧倒的に双極性であることが周知である。
【0013】
「心周期」という用語の使用は、1回の心拍の開始から次の心拍の開始までに生じる冠血流量又は血圧に関連する電気的及び機械的事象の全部又は一部を意味する。血圧は、心周期全体を通じて増減する。心周期の頻度が心拍数である。心臓の1回1回の「拍動」には、(1)半月弁が閉じ、房室(AV)弁が開いて心臓全体が弛緩する「拡張後期」、(2)左右の心房の心筋が収縮し、AV弁が開いて心房から心室に血液が流れる「心房収縮期」、(3)心室が収縮し始め、AV弁及び半月弁が閉じて量が変化しない「等容性心室収縮」、(4)心室は空であるが依然として収縮中であり、半月弁が開く「心室駆出」、及び(5)圧力が低下し、心室に血液が流入せず、心室が収縮を停止して弛緩し始め、大動脈内の血液が半月弁を押すことによって半月弁が閉じる「等容性心室弛緩」、という5つの主要段階が伴う。心周期は、洞房結節及び房室結節内に見られる特殊な心臓細胞によって生じる一連の電気的刺激によって協調される。心臓は、活動する心筋及び特殊な心臓伝導系の生体構造及び生理機能によって決定される特徴的な方法で各心周期中に活性化と回復とを行う。P.Libby他編、Braunwald’s Heart Disease(Braunwaldの心臓病学)、第8版、Elsevier社、フィラデルフィア(2008年) at 155
【0014】
正常な心周期は、高位右心房(RA)内に位置する特殊組織部位である洞結節の自然脱分極と共に開始する。その後、電気的脱分極の波がRAを通じて広がり、心房中隔を横切って左心房(LA)内に至る。ld。
【0015】
心房は、電気的に不活性な線維輪によって心室から隔てられているので、正常な心臓では、心房から心室への唯一の電気的脱分極伝搬ルートは房室(AV)結節を通るようになる。ld。AV結節は、電気信号を短時間にわたって遅延させ、脱分極の波は、ヒス束、右脚及び左脚を通じて心室中隔(IVS)の下方に広がって右心室(RV)及び左心室(LV)内に至る。通常の伝導では、2つの心室が同時に収縮する。Id.
【0016】
心臓の完全な脱分極後、心筋は、再び次の心周期のための脱分極準備が整う前に再分極しなければならない。
【0017】
標準12誘導心電図
標準的な表面ECGの記録では、8つの個々の誘導から得られる12個の異なる誘導「方向」が示されるが、これを実現するには皮膚上に10個の記録電極があればよい。これらの電極のうちの6つが心臓上の胸部に配置されて、6つの胸部誘導又は前胸部誘導を記録する。4つの電極は四肢に配置されて6つの四肢誘導を記録する。標準的なECGでは、10個の記録電極の各々を正しい位置に配置することが必須であり、そうでなければECGの外観が著しく変化して正しい解釈が妨げられてしまう。
【0018】
誘導I、II及びIIIなどの単純な双極誘導では、誘導ベクトルが負極から正極に向けられる。増強四肢誘導(augmented limb leads)及び胸部誘導では、誘導ベクトルの始点が、複合電極を構成する電極同士を接続する軸の中間点に存在し、すなわち誘導aVLでは、このベクトルが、右腕と左脚の電極を接続する軸の中間点から左腕の方に向く。胸部誘導では、誘導ベクトルが、3つの標準四肢誘導によって形成される三角形の中心から胸部誘導位置の方に向く。
【0019】
四肢誘導は、冠状面におけるECGを記録し、従ってこれを用いて(通常は冠状面のみにおいて測定される)電気軸を特定することができる。四肢誘導は、誘導I、II、III、aVR、aVL及びaVFと呼ばれる。従来、心臓を通って左側に(正確に誘導Iの方向に)向かう水平の線は0度(0°)の基準点と呼ばれている。この基線からの角度に関して、他の誘導が心臓を「見る」方向が度数で表される。
【0020】
胸部誘導は、横断面又は水平面におけるECGを記録し、V1、V2、V3、V4、V5及びV6と呼ばれる。左後胸部から記録されるV7、V8及びV9、右前胸部から記録されるV3R、V4R、V5R及びV6Rを含む他の誘導規定も存在し、臨床において使用することができる。
【0021】
汎用変換行列を使用する改善されたECG
心筋障害を検出する改善されたECG技術は、数学的抽象因子分析法及びシンプレックス最適化アルゴリズムを用いて、全ての患者に適用可能な時間非依存型の汎用変換行列を導出する(引用により組み込み入れられる米国特許第6,901,285号)。この汎用変換行列は必要時に適用可能であり、実施前に各患者の完全なn誘導ECGを取得する必要がない。これを行うには、最初に何らかのECG誘導の組について電圧-時間データを測定し、これをデジタル化してECGトレーニングセットを定義する。電圧-時間データアレイを取得したら、測定するアレイの誤差を最小化するために、トレーニングセット内の各ECG電圧-時間データアレイに抽象因子分析(「AFA」)法を適用する。次に、最終段階として、全ての患者に適用可能な時間非依存型汎用変換行列を導出するために、トレーニングセットにシンプレックス最適化法(「SOP」)を適用する。その後、この汎用変換行列を標準測定3誘導サブシステム(測定されたI、AaVF及びV2誘導)に適用して標準12誘導ECG及びその他のシステムを導出し、より正確な心臓電気活動の解釈を可能にするために少なくとも22の誘導を生成することができる。これらの導出されたECG誘導は、観察される誘導測定値と比べた時に情報量の約99%を占める。
【0022】
ECGは、胸痛患者の初期評価における最初の検査であるが、複数の研究においてAMIの初期診断における感度が低いことが示されている。
【0023】
急性心筋虚血障害の評価及び重症度分類では、心臓血清マーカがECGの重要な補完となる。最近では、血清トロポニン評価が心筋壊死の診断のための究極の判断基準になってきた。しかしながら、一般に血清トロポニンの結果は直ちに入手することも、或いは継続的にリアルタイムで取得することもできず、通常は初期患者評価及び関連する12誘導ECGの解釈のみに依存して初期治療プロトコルを実施しなければならない。
【0024】
AMIを含む急性心筋虚血障害の迅速な診断が緊急治療を実施するための鍵である。急性冠症候群(ACS)と推定される患者では、通常は患者の到着時点及びその後数時間毎にECG及び心臓血清マーカを取得し、最大24時間の患者観察にわたってACSの進行を識別する。特に、患者が無症候性虚血障害を患っている場合には、これらの血清マーカとECG取得との間の時間中に患者が危険な状態に陥る可能性がある。さらに、胸痛で救急処置室を訪れた患者の約95%は、治療を受けることなく帰宅する。これらの患者も危険な状態に陥る可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、患者の心拍数及び心調律と、取得された心電図(ECG)誘導と、心臓電気バイオマーカとをモニタするモバイル心臓モニタリング装置を提供する。このモバイル心臓モニタリング装置は、3つの測定誘導から12誘導ECG~少なくとも22誘導ECG(n誘導ECG)を導出し、導出された12誘導ECGから動的心臓電気バイオマーカを計算することができる。このモバイル心臓モニタリング装置は、セルラーネットワークなどのデータネットワークを介して通信し、動的心臓電気バイオマーカに基づいてトリガ条件が検出された時にアラートを送信することができる。
【0026】
本発明の1つの実施形態では、モバイル心臓モニタリング装置において、ユーザのECG誘導サブセットの電圧-時間測定値を受け取る。ECG誘導サブセットからユーザのn-ECG誘導フルセットを導出する。測定されたECG誘導サブセットのうちの少なくとも1つのECG誘導サブセットに基づいて、ユーザの心拍数を計算してユーザの心調律をモニタする。導出されたECG誘導フルセットから心臓電気バイオマーカ(CEB)を計算する。
【0027】
本発明の別の実施形態では、モバイル心臓モニタリング装置が、ユーザのECG誘導サブセットの電圧-時間測定値を取得する心電図(ECG)電極と、ECG誘導サブセットからユーザのECG誘導フルセットを導出するECG導出モジュールと、測定されたECG誘導サブセットのうちの少なくとも1つのECG誘導サブセットに基づいて、ユーザの心拍数を計算して心調律をモニタする心拍数計算及び心調律モニタリングモジュールと、導出されたECG誘導フルセットからCEBを計算する心臓電気バイオマーカ(CEB)計算モジュールとを含む。
【0028】
本発明の別の実施形態では、モバイル心臓モニタリング装置が、プロセッサと、プロセッサによって実行された時にプロセッサに動作を実行させるコンピュータプログラム命令を記憶するメモリとを含み、この動作は、ECG電極から受け取られたECG誘導サブセットからユーザの心電図(ECG)誘導フルセットを導出するステップと、測定されたECG誘導サブセットのうちの少なくとも1つのECG誘導サブセットに基づいて、ユーザの心拍数を計算して心調律をモニタするステップと、導出されたECG誘導フルセットから心臓電気バイオマーカ(CEB)を計算するステップとを含む。
【0029】
本発明の別の実施形態では、複数の患者の心臓モニタリングのためのシステムが、複数の心臓モニタリング装置と、中央モニタリングシステムとを含む。複数の心臓モニタリング装置の各々は、複数の患者のそれぞれの患者の心電図(ECG)誘導サブセットの電圧-時間測定値を取得する。複数の心臓モニタリング装置の各々は、複数の患者のそれぞれの患者のECG誘導サブセットの電圧-時間測定値をネットワークを介して送信する。中央モニタリングシステムは、複数の心臓モニタリング装置から送信された、複数の患者の各患者のECG誘導サブセットの電圧-時間測定値を受け取る。中央モニタリングシステムは、それぞれのECG誘導サブセットから複数の患者の各患者のそれぞれのECG誘導フルセットを導出する。中央モニタリングシステムは、導出されたそれぞれのECG誘導フルセットから複数の患者の各患者のそれぞれの心臓電気バイオマーカ(CEB)を計算し、複数の患者の各患者について計算されたそれぞれのCEBに基づいてトリガ条件が生じたかどうかを複数の患者の各々について検出する。
【0030】
当業者には、以下の詳細な説明及び添付図面を参照することによって本発明のこれらの及びその他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態によるモバイル心臓モニタリング装置100を示す図である。
図2】本発明の実施形態による、ユーザの身体上のECG電極の配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態による、n誘導ECGの導出方法を示す図である。
図4】ECGによって測定される典型的な心臓電気信号を示す図である。
図5】本発明の実施形態による、モバイル心臓モニタリング装置を用いた心臓モニタリング方法を示す図である。
図6】本発明の実施形態による、モバイル心臓モニタリング装置を用いた心臓モニタリング及びアラート通知方法を示す図である。
図7】本発明の実施形態による、モバイル心臓モニタリング装置700とリーダ装置710との間の通信を示す図である。
図8】本発明の実施形態による、患者の心臓モニタリングのためのシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、モバイル心臓モニタリング装置に関する。本発明の実施形態は、患者の心拍数及び心調律、取得された心電図(ECG)誘導、及び心臓電気バイオマーカをモニタするためのモバイル心臓モニタリング装置を提供する。モバイル心臓モニタリング装置は、患者を遠隔的にモニタして心臓病の進行をリアルタイムでモニタするために使用することができる。
【0033】
図1に、本発明の実施形態によるモバイル心臓モニタリング装置100を示す。モバイル心臓モニタリング装置100は、スタンドアロン装置として実装することも、或いは携帯電話機、タブレットなどの他のモバイル装置の一部として実装することもできる。有利な実施形態によれば、心臓モニタリング装置100はポータブルなハンドヘルド装置であり、従って「モバイル」又は「携帯型」装置と見なすことができる。図1に示すように、モバイル心臓モニタリング装置100は、データ記憶装置106及びメモリ104に動作可能に結合されたプロセッサ102を含む。プロセッサ102は、心臓モニタリング装置100の動作を定めるコンピュータプログラム命令を実行することによってこのような動作全体を制御する。コンピュータプログラム命令は、データ記憶装置106又はリムーバブル記憶装置118に記憶して、コンピュータプログラム命令の実行が望ましい時にメモリ104にロードすることができる。心電図(ECG)導出モジュール108、心拍数及び心調律モジュール110、動的心臓電気バイオマーカ(CEB)モジュール112、及びアラートモジュール114、並びに後述する図3図4及び図6の方法ステップは、データ記憶装置106に記憶されたコンピュータプログラム命令によって定義することができ、コンピュータプログラム命令を実行するプロセッサ104が、コンピュータプログラム命令をメモリ104にロードする際に制御することができる。例えば、コンピュータプログラム命令は、図3図4及び図6の方法ステップを実行して図1に示すモジュール108、110、112及び114を実装するように当業者によってプログラムされたコンピュータ実行可能コードとして実装することができる。
【0034】
プロセッサ102は、汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサとを両方とも含むことができ、心臓モニタリング装置100の単独のプロセッサとすることも、或いは複数のプロセッサのうちの1つとすることもできる。プロセッサ102は、例えば1又は2以上の中央処理装置(CPU)を含むことができる。プロセッサは、1又は2以上のグラフィック処理装置(GPU)を含むこともできる。プロセッサ102、データ記憶装置106及び/又はメモリ104は、1又は2以上の特定用途向け集積回路(ASIC)及び/又は1又は2以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含み、これらによって補完し、又はこれらに組み込むことができる。
【0035】
データ記憶装置106及びメモリ104の各々は、有形の非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。メモリ104は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダブルデータレート同期ダイナミックランダムアクセスメモリ(DDR RAM)、又はその他のランダムアクセス固体メモリデバイスなどの高速ランダムアクセスメモリを含むことができる。データ記憶装置106は、内部ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの1又は2以上の磁気ディスク記憶装置、光磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置、フラッシュメモリデバイス、消去可能プログラム可能リードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能リードオンリメモリ(EEPROM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスクリードオンリメモリ(DVD-ROM)ディスクなどの半導体メモリデバイス、又はその他の不揮発性固体記憶装置、などの不揮発性メモリを含むことができる。心臓モニタリング装置100は、リムーバブル記憶装置118も含む。リムーバブル記憶装置118は、ポートと、対応するリムーバブル記憶媒体とを含む。例えば、リムーバブル記憶装置118は、セキュアデジタル(SD)ポート及び対応するSDカードとすることができるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、他のあらゆるタイプのリムーバブル記憶装置を使用することができる。
【0036】
心臓モニタリング装置100は、ディスプレイ120と、ユーザと心臓モニタリング装置100との相互作用を可能にする1又は2以上の他の入力/出力装置122とを含むこともできる。例えば、ディスプレイ120は、ユーザに情報を表示する液晶ディスプレイ(LCD)とすることができる。他の入力/出力装置122は、ユーザが心臓モニタリング装置100に入力を提供できるようにするタッチ画面、キーパッド、ボタンなどの入力装置と、USBポート、ミニUSBポート、マイクロUSBポートなどの入力ポートと、スピーカ、ヘッドホン差し込み口、発光ダイオード(LED)などの出力装置とを含むことができる。心臓モニタリング装置100は、充電式バッテリなどの電源126も含む。
【0037】
心臓モニタリング装置100は、1又は2以上のネットワークを介して他の装置と通信するための1又は2以上のネットワークインターフェイス124を含むこともできる。有利な実施形態によれば、ネットワークインターフェイス124は、グローバルシステム・フォー・モバイル・コミュニケーションズ(GSM)ネットワーク、符号分割多元接続(CDMA)ネットワーク、又はロングタームエボリューション(LTE)ネットワークなどのセルラーネットワークを介して通信するためのセルラーネットワークインターフェイスを含むことができる。このようなセルラーネットワークは、データを送信できる3G又は4Gネットワークとすることができる。ネットワークインターフェイス124は、テキストメッセージ及び/又はマルチメディアメッセージを送受信するためのショートメッセージサービス(SMS)及び/又はマルチメディアメッセージサービス(MMS)ネットワークインターフェイスを含むこともできる。ネットワークインターフェイス124は、WIFIネットワークなどのデータネットワークを介した無線通信のための無線ネットワークインターフェイスコントローラ(WNIC)を含むこともできる。ネットワークインターフェイス124は、Bluetoothなどの単距離無線ネットワークのためのネットワークインターフェイスを含むこともできる。
【0038】
モバイル心臓モニタリング装置100は、ECG電極128に通信可能に結合される。1つの実施形態では、ケーブルを介してECG電極を心臓モニタリング装置100に接続することができる。例えば、ECG電極128は、移動体のUSBポートに差し込まれたUSBケーブルに接続することができる。本発明はUSBケーブルに限定されるものではなく、他のタイプのケーブルを使用することもできると理解されたい。別の実施形態では、ECG電極128が、モバイル心臓モニタリング装置100と無線で通信することができる。例えば、ECG電極128は、Bluetooth接続を介してモバイル心臓モニタリング装置100と通信することができる。ECG電極128は、ユーザ又は患者の身体上に配置され、ECG誘導サブセットの電圧-時間測定値をモバイル心臓モニタリング装置100に送信する。有利な実施形態によれば、ECG電極128から3ECG誘導の電圧-時間測定値が受け取られる。例示的な実装では、ECG電極128によってECG誘導I、II及びV2が測定される。別の考えられる実装では、ECG電極128によってECG誘導I、aVF及びV2を測定することができる。ECG電極128は、3ECG誘導を測定する5つの電極を含むことができ、これらの電極のうちの1つは接地である。考えられる実施形態では、接地を他の電極のうちの1つに含めて、これより少ない数の総電極を使用することもできる。
【0039】
図2に、本発明の実施形態による、ユーザの身体上のECG電極の配置を示す。図2に示すように、ユーザには5つの電極202、204、206、208及び210が配置される。電極202は左腕(LA)に配置され、電極204は右腕(RA)に配置され、電極206は左脚(LL)に配置され、電極208は右脚(RL)に配置することができ、電極210は胸骨近くの第4肋間におけるV2誘導位置に配置される。電極202、204及び206は、ユーザが配置しやすいように対応する四肢のあらゆる位置に配置することができる。電極208は接地であり、通常はユーザが配置しやすいように右脚に配置されるが、接地電極の配置は右脚に限定されるものではなく他の場所に配置することもできる。電極210も、ユーザが配置しやすい解剖学的部位に対応する。干渉を生じ得る筋肉上に直接電極が配置されていなければ、電極からの信号を改善することができる。例示的な別の実装では、接地をV2電極(210)に含めることができる。この場合、電極208は不要であり、代わりに4つの電極を使用することができる。他の考えられる実装では、接地を他の電極のうちの1つに含めることもできる。図2の電極配置を使用すると、ECG電極は、標準12誘導ECGを構成する誘導セットの要素であるECG誘導I、II及びV2を測定する。当業者であれば、体表面上に配置した他の電極を用いて他の基準直交誘導セット(basis orthogonal lead sets)を記録することもできると認識されるであろう。例えば、上述した例のV2の代わりに後胸部(V2の背後)にV9を配置して、n誘導ECGの導出及びCEBの構築を行うこともできる。
【0040】
再び図1を参照すると、ECG導出モジュール108、心拍数及び心調律モジュール110、動的CEB計算モジュール112及びアラートモジュール114は、データ記憶装置106に記憶することができる。これらの各モジュールは、メモリ104にロードされてプロセッサ102によって実行された時に特定の動作の組を実行するコンピュータプログラム命令を含む。データ記憶装置106は、ECG電極128から受け取った電圧-時間測定値、ECG導出モジュール108によって生成された導出ECGデータ、心拍数及び心調律モジュール110によって生成された心拍数及び心調律データ、及び動的CEB計算モジュール112によって生成された心臓電気バイオマーカ(CEB)データを含む様々な患者データを記憶する患者データストレージ116も含む。
【0041】
標準ECGは、患者の皮膚上に一連の電極を配置することによって測定される。標準ECG記録は、医師がパターン認識法を用いて解釈した特定の順序で配置される、I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5及びV6と呼ばれる12個の誘導波形を含む。通常の構成では、標準12誘導を定める電位を測定する10個の電極が身体の胴部上に配置される。本発明の実施形態によれば、ECG導出モジュール108は、ECG電極128によって測定されたECG誘導サブセットからECG誘導フルセットを導出することができる。本発明のいくつかのこのような実施形態によれば、ECG導出モジュール108は、ECG電極128から受け取った3つの測定誘導から患者の完全なn誘導(例えば、12誘導)ECGを導出することができる。ECG導出モジュール108は、抽象因子分析及びシンプレックス最適化アルゴリズムを用いて、トレーニングECGデータセットから生成された記憶されている汎用変換行列を適用することによって、3つの測定誘導から完全なn誘導ECGを導出することができる。このようなn誘導ECGの導出方法は、米国特許第6,901,285号に詳細に記載されており、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0042】
図3に、本発明の実施形態による、n誘導ECGの導出方法を示す。ECG導出モジュール108は、図3の方法ステップを実行して、ECG電極128から受け取った3ECG誘導の電圧-時間測定値から完全なn誘導ECGを導出することができる。図3を参照すると、ステップ302において、ECG電極128からECG誘導I、II及びV2のデジタル化された電圧-時間測定値を受け取る。誘導Iは、左腕(LA)電極と右腕(RA)電極との間の電圧であり、誘導I=LA-RAである。誘導IIは、左脚(LL)電極とRA電極との間の電圧であり、誘導II=LL-RAである。誘導V2は、V2電極における正極と、電極RA、LA及びLLからの測定値を平均化することによって生成されて身体全体にわたる平均電位をもたらすウィルソン中心電極として知られている複合磁極である負極との間の電圧であり、誘導V2=V2-1/3(RA+LA+LL)である。
【0043】
ステップ304において、測定されたECG誘導I及びIIからaVF ECG誘導を計算する。aVF(増強ベクトル肢(augmented vector foot))誘導は、誘導I及びIIの既知の形状から計算することができる。aVF誘導は、左脚に正極を有し、負極は右腕電極と左腕電極との組み合わせである。標準12誘導ECGにおける本質的な冗長性により、最初の6つの誘導のうちのいずれか2つの誘導の測定値を用いて、以下の幾何学に基づく公式に従って残りの4つの誘導を計算することができる。
誘導III=誘導II-誘導I
誘導aVR=0.87×((誘導I+誘導II)/2)
誘導aVL=0.87×((誘導I-誘導III)/2)
誘導aVF=0.87×((誘導II+誘導III)/2)
従って、aVF誘導は、誘導I及び誘導IIから、誘導aVF=[(2×誘導II)-誘導I)/2]×0.87として計算することができる。この結果、I、aVF及びV2という3つの直交誘導が得られる。別の実施形態によれば、係数0.87を使用せずに上記の方程式を計算して、誘導aVR、誘導aVL及び誘導aVFについて、誘導aVR=-((誘導I+誘導II)/2)、誘導aVL=((誘導I-誘導III)/2)、誘導aVF=((誘導II+誘導III)/2)という方程式をそれぞれ使用することもできる。図3の方法では、誘導I、II及びV2の電圧-時間測定値を取得した後に誘導I及びIIから誘導aVFを計算しているが、別の実施形態では、誘導I、aVF及びV2の電圧-時間測定値をECG電極から直接取得することができる。例えば、誘導aVFは、誘導aVF=LL-1/2(RA+LA)として取得することができる。
【0044】
ステップ306において、汎用変換行列を用いて誘導I、aVF及びV2からn誘導ECGを導出する。汎用変換行列は、ECGデータのトレーニングセットから導出され、ECG導出モジュール108の一部としてデータ記憶装置106に記憶される。限定するわけではないが、3誘導(I、aVF及びV2)から導出できる誘導セットの例は以下の通りである。
12誘導: I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5、V6
15誘導:I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5、V6、X、Y、Z
15誘導:I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9
16誘導:I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V3R、V4R、V5R、V6R
18誘導:I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、X、Y、Z
22誘導:I、II、III、aVR、aVL、aVF、V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V3R、V4R、V5R、V6R、X、Y、Z
【0045】
汎用変換行列は、導出されるn誘導ECGにおける誘導の数に固有である。汎用変換行列は、ECG電圧-時間データアレイのトレーニングセットから生成される。具体的には、測定するアレイの誤差を最小化するために、トレーニングセット内の各ECG電圧-時間アレイに抽象因子分析(「AFA」)法を適用することができる。次に、全ての患者に適用可能な時間非依存型汎用変換行列を導出するために、トレーニングセットにシンプレックス最適化法(「SOP」)を適用する。汎用変換行列は、時間非依存であることに加えて、性別、体型などの他の特性にも非依存であることができる。しかしながら、汎用変換行列を導出するために使用するトレーニングデータに基づいて、性別、体型、性別などの特定の特性に対する特異性の高い変換行列を利用することもできる。汎用変換行列は、フルn誘導ECGを生成するために3誘導サブセットに適用されるN×3行列である。具体的には、N×3汎用変換行列を、特定の時間にわたる3誘導{I、aVF、V2}を含むベクトルで乗算してフルn誘導ECGを生じさせる。当業者であれば、{I、aVF、V2}は、汎用変換行列を構築するために必要な基準直交誘導セットに最も近いと理解するであろう。当業者であれば認識するように、他のこのような基準直交誘導セットを用いてこのステップを実行することもできる。例えば、他の例示的な基準直交誘導セットとしては、{I、aVF、V9}、{V6R、aVF、V2}及び{V6R、aVF、V9}が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
再び図1を参照すると、心拍数及び心調律モジュール110は、測定されたECG誘導のうちの少なくとも1つからユーザの心調律を識別して心拍数を計算する。通常、ECGは、縦軸に心臓の電気的活動を、横軸に時間をプロットしたグラフとして表される。標準ECG記録紙は、リアルタイム記録中に毎秒25mmで移動する。すなわち、印刷されたECGを見た時には、横軸に沿った25mmの距離が1秒を表す。ECG記録紙には、大小の正方形のグリッドが記されている。各小さな正方形は横軸に沿って40ミリ秒(ms)の時間を表し、各大きな正方形は5つの小さな正方形を含むので200msを表す。標準記録紙の速度及び正方形のマーキングは、心臓タイミング間隔の容易な測定を可能にする。これにより、心拍数の計算及び心臓内の異常な電気伝導の識別が可能になる。ECG上では、記録された電気信号の振幅又は電圧が垂直寸法で表され、ミリボルト(mV)単位で測定される。標準的なECG記録紙上では、1mVが10mmの偏位によって表される。
【0047】
図4に、ECGによって測定される典型的な心臓電気信号を示す。正常洞調律中に脱分極する最初の構造は右心房であってその直後に左心房が続くので、正常なECG上の最初の電気信号は心房から生じ、P波として知られている。通常、ECGのほとんどの誘導ではP波は1つしか存在しないが、実際には、P波は、通常は重なり合う2つの心房からの電気信号の和である。電気的脱分極は、PR間隔に関与する心室に進む前に房室(AV)結節によって遅くなるので、ECG上には、水平直線又は「等電位」線によって表される、電気活動が見られない短い時間である短い生理学的遅延が存在する。心室が脱分極すると、通常はECG信号の最大部分であるQRS群が生じる。Q波は、第1の最初の下向きの又は負の偏位であり、R波は、次の上向きの偏位であり、S波は、次の下向きの偏位である。心筋Iの再分極を反映する電気信号は、ST部分及びT波として示される。通常、ST部分は等電性であり、ほとんどの誘導のT波は、可変振幅及び可変期間の直立偏位である。T波の後には、U波として知られているさらなる低振幅波が続くこともある。通常、この遅い再分極は、先行するT波と同じ極性を有する。PR間隔は、P波の開始からQRS群の最初の偏位までとして測定され、正常範囲は120~200ms(ECG記録紙上の小さな正方形3つ~5つ分)である。QRS期間は、QRS群の最初の偏位から等電位線におけるQRS群の最後までとして測定され、正常範囲は最大120ms(ECG記録紙上の小さな正方形3つ分)である。QT間隔は、QRS群の最初の偏位から等電位線におけるT波の最後までとして測定され、正常範囲は最大440msであるが、これは心拍数によって変化し、女性ではわずかに長くなることもある。
【0048】
心拍数及び心調律モジュール110は、1又は複数のECG誘導における各QRS群間の時間を求めることによって患者の心拍数を計算することができる。ECG信号における1秒1秒は、横軸に沿った25mm(大きな正方形5つ分)によって推定することができる。従って、ECG誘導の各QRS群間の大きな正方形の数によって各QRS群間のおおよその時間が得られ、これを用いて心拍数を推定することができる。例えば、各QRS群間における大きな正方形の数が5である場合には、心拍数は毎分60拍であり、各QRS群間における大きな正方形の数が3である場合には、心拍数は毎分100拍であり、各QRS群間における大きな正方形の数が2である場合には、心拍数は毎分150拍である。標準記録紙の速度及び正方形のマーキングは、ECG信号をディスプレイ120上に表示するために拡大縮小して同様に心拍数を推定することもできると理解されたい。心拍数及び心調律モジュール110は、心調律が正常であるか、それとも異常であるかの識別に役立つように、取得及び/又は導出されたECG信号を評価して心調律をモニタすることもできる。
【0049】
動的CEB計算モジュール112は、導出されたECGからCEBを計算する。CEBとは、心臓電場内の双極子エネルギー含量を数値化した電気的バイオマーカのことである。心臓電場内に存在する双極子エネルギー含量が多ければ多いほど患者の状態は正常に近く、心臓電場内に存在する多極エネルギー含量が多ければ多いほど患者の状態は異常に近い。CEBは、急性心筋梗塞(AMI)を含む急性虚血障害(AMII)の有無を検出するための「ポイントオブケア」診断検査として使用することができる。CEBは、当初はAMII/AMIと診断されなかった患者をモニタして、AMII/AMIの発現及び/又は進行をリアルタイムでモニタして検出するために使用することもできる。心臓の電場は細胞レベルで始まり、AMII/AMIの場合には電場に対してごくわずかな多極成分が存在する。CEBは、心臓の電場における双極子電気活動を測定する。
【0050】
本発明の実施形態によれば、CEBは、導出されたECGから、導出されたECGの電圧-時間データの第3の固有値を計算することによって計算することができる。具体的には、抽象因子分析(AFA)を用いて、導出されたECGの電圧-時間データの固有ベクトルを計算することができる。導出されたECGの電圧-時間データのデータ行列アレイをDによって表すものとする。次に、Dをその転置行列で乗算することにより、共分散行列ZをZ=DTDとして構築することができる。次に、Q-1ZQ=[λjδjk]となるような行列Qを発見することによって共分散行列Zを対角化し、式中のdjkはクロネッカーのデルタであって、j≠kの場合にはdjk=0となり、j=kの場合にはdjk=1となり、λjは、一連の方程式Zqj=λjjの固有値であり、qjは、Q個の固有ベクトルのj番目の列である。計算された第3の固有値(λ3)をCEBとして使用する。本発明者は、心臓電場の双極子活動の測定値をもたらす第3の固有値を、急性心筋虚血障害の兆候を示すCEBとして使用できることを究明した。一般に、心臓電場内の多極力が大きければ大きいほど(双極力が小さければ小さいほど)AMII/AMIの可能性は高い。CEBは、AMIを示唆する心臓電場内の多極力を定量化した数値を有する。例えば、66未満のCEB値は正常状態を示すことができ、66~94のCEB値は不確定ゾーンにあると考えることができ、94を上回るCEB値は異常状態を示すことができる。本発明は、これらの特定のカットオフ値に限定されるものではなく、これらのカットオフ値は、特異性の高い汎用変換行列のユーザ操作性及び変動に基づいて異なることもできる。
【0051】
本発明の有利な実施形態では、動的CEB計算モジュール112が、導出された各心拍のECGからそれぞれのCEB値を計算することによって動的CEBを計算する。この場合、導出された各心拍のECGの電圧-時間データに抽象因子分析を適用して、導出された各心拍のECGの電圧-時間データの第3の固有値を計算し、各心拍のそれぞれのCEB値を得る。ディスプレイ120は、この動的CEBデータを時間の経過に伴うCEBのグラフとして表示することができる。別の考えられる実施形態では、所定の時間間隔(例えば、10秒)における導出されたECG内の心拍数を中間心拍に平均化し、この中間心拍ECGデータに基づいて、この時間間隔にわたる静的CEBを計算する。中間心拍の生成では、同じ形状の拍動を正確な代表的周期に合成する。この過程によってノイズが劇的に減少する。この場合、所定の時間間隔における連続するCEBによって動的CEBの表示をもたらすこともできる。
【0052】
別の考えられる実施形態では、固有値CEBの代わりに、又はこれに加えて、フラクタルCEBを計算することができる。フラクタルCEBは、米国特許第6,920,349号に記載されている方法を用いて計算することができ、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。この場合、導出されたECGのうちの少なくとも3つの誘導の誘導値から空間曲線を定めることができる。この空間曲線のフラクタルインデックスを時間の関数として計算する。一例として、フラクタルインデックスの時間的変化率をCEBとして計算することができる。負の時間的変化率は正常な心臓活動を示し、正の時間的変化率は病理学的活動を示す。考えられる実装では、動的CEB計算モジュール112が、各心拍の固有値CEB及びフラクタルCEBの両方を計算することができ、アラートモジュール114が、アラート条件がトリガされたかどうかを判断する上で、この固有値CEBとフラクタルCEBとの組み合わせを利用することができる。他の空間曲線のフラクタル分析を構築することもできる。複数のCEBの組を計算し、医師に関連する装置に表示及び/又は送信して、医師がAMII/AMIの発現及び/又は進行を理解する上で役立てることもできる。
【0053】
アラートモジュール114は、動的CEB計算モジュール112によって計算されたCEB値をモニタし、特定のトリガ条件が検出された時にアラートを送信するようにモバイル心臓モニタリング装置100を制御する。考えられる実施形態では、アラートモジュール114が、各心拍について計算された動的CEB値をモニタし、各心拍のCEB値が異常ゾーンにあるかどうかを判断することができる。例えば、固有値CEBでは、94を上回るCEB値を異常ゾーンにあると見なすことができる。アラートモジュール114は、異常ゾーンにある心拍のプログラム可能な割合が所定の時間間隔内に閾値を超えた場合にトリガ条件が検出されたと判断し、ネットワークインターフェイス124を介してアラートメッセージを送信する。例えば、このアラートメッセージは、患者の医師に関連する装置などの所定の遠隔装置に送信されるテキストメッセージとすることができる。このテキストメッセージは、導出されたECGデータ及び/又は測定されたECG誘導と、推定心拍数データと、トリガ条件の検出前の一定期間にわたるCEBデータとを含むことができる。同様に、アラートメッセージは、所定の電子メールアドレスに送信される電子メールメッセージとすることもでき、この電子メールメッセージは、導出されたECGデータ及び/又は測定されたECG誘導と、心拍数データと、患者のCEBデータとを含むことができる。アラートモジュール114は、所定の遠隔装置に関連する電話番号(例えば、医師の電話番号)に電話して所定の音声アラートメッセージを再生するようにモバイル心臓モニタリング装置100を制御することもできる。アラートモジュール114は、緊急応答システムに自動的に連絡するようにモバイル心臓モニタリング装置100を制御することもできる。例えば、アラートモジュールは、トリガ条件の検出に応答して自動的に911に電話するようにモバイル心臓モニタリング装置100を制御することができる。考えられる実施形態では、さらなる計算を実行して追加情報を表示できるVetraplex ECGシステムなどのリーダ装置にデータをダウンロードすることができる。例えば、このような装置は、測定されたECG誘導から15誘導ECG又は22誘導ECGを導出し、導出された15誘導ECG又は22誘導ECGを表示することができる。
【0054】
図5に、本発明の実施形態による、モバイル心臓モニタリング装置を用いた心臓モニタリング方法を示す。図5の方法は、図1のモバイル心臓モニタリング装置100によって実行することができる。図5の方法ステップは、患者のリアルタイム心臓モニタリングを行うために繰り返すことができる。例示的な実装では、胸痛を示したものの救急処置室から帰宅させられた患者などの、医者の直接的な監督下にない患者にモバイル心臓モニタリング装置100を提供し、図5の方法を実行して患者のリアルタイムリモート心臓モニタリングを行うことができる。別の例示的な実施では、病院内、診療所内などの患者のリアルタイムポイントオブケアのために図5の方法を実行することができる。
【0055】
図5を参照すると、ステップ502において、3ECG誘導のデジタル化された電圧-時間測定値を受け取る。例えば、ECG電極128から誘導I、II及びV2、又はI、aVF及びV2の電圧-時間測定値を受け取ることができる。ステップ504において、3ECG誘導の電圧-時間測定値からフル12誘導ECGを導出する。上述したように、ECG導出モジュールは、予め記憶されている汎用変換行列を用いて12誘導ECGを導出することができる。図5の方法では12誘導ECGを導出するが、本発明は12誘導ECGに限定されるものではなく、他のあらゆるn誘導ECGを同様に導出することができる。例えば、モバイル心臓モニタリング装置は、フル15誘導ECG又は22誘導ECGを導出することができる。ステップ506において、ECG誘導のうちの少なくとも1つのECG誘導の受け取られた電圧-時間測定値から患者の心拍数を計算して心調律をモニタする。ステップ508において、導出された12誘導ECGから動的CEBを計算する。動的CEBは、各心拍のCEB値を計算することによって構築することができる。各心拍のCEB値は、各心拍に対応する導出された12誘導ECGの電圧-時間データの第3の固有値を計算することによって構築することができる。他の固有値分析を実行することもできる。
【0056】
次に、図5の方法は、3つの実施可能なステップ(510、512及び514)に進む。様々な実施形態によれば、モバイル心臓モニタリング装置100は、これらのステップのうちのいずれか1つ、これらのステップ全て、又はこれらのステップのいずれかの組み合わせを実行することができる。ステップ510において、導出された患者のECGデータ、心拍数データ、心調律データ及びCEBデータを記憶する。この患者データは、データ記憶装置106の患者データストレージ116及び/又はリムーバブル記憶装置118に記憶することができる。考えられる実装では、モバイル心臓モニタリング装置100を用いて特定の期間(例えば、1日又は2日)にわたって患者をモニタし、この期間中に取得された患者データをリムーバブル記憶装置118に記憶する。その後、医者がリムーバブル記憶装置118を取り外し、患者データを見るためにリムーバブル記憶装置から医者のコンピュータ(又は他の装置)にデータをロードすることができる。
【0057】
ステップ512において、導出された患者のECGデータ、心拍数データ、心調律データ及びCEBデータをモバイル心臓モニタリング装置100のディスプレイ120上に表示することができる。患者データは、取得して計算する際にリアルタイムで表示することができる。導出されたECGデータは、導出された12誘導ECGの各誘導についての時間の経過に伴うECG信号を表示することによって表示することができる。導出された12誘導ECGのうちの3つの測定誘導(I、aVF及びV2)又は他のいずれか3つの直交誘導を3次元空間内で互いにプロットすることによって得られる3次元空間ECGループを表示することによってECGデータを表示することもできる。モバイル心臓モニタリング装置は、モバイル心臓モニタリング装置によって導出されたフル15誘導ECG及び/又は22誘導ECGからECGベクトルループを表示することもできる。心拍数は、必要に応じて更新される数値として表示することができる。各心拍又は所定の心拍間隔について計算されるCEB値などの動的CEBデータは、時間の経過に伴うCEBのグラフとして表示することができる。動的CEBデータは、計算時にリアルタイムで表示することができる。動的又は静的CEBデータは、変化時に更新される数値として表示することもできる。考えられる実施形態では、例えば正常ゾーン、不確定ゾーン及び異常ゾーンに対応するCEB値に異なる色を使用してCEBデータを色分けすることもできる。
【0058】
ステップ514において、導出された患者のECGデータ、心拍数データ、心調律データ及びCEBデータを遠隔装置に送信する。例えば、患者データは、医者に関連するコンピュータ又はその他の装置、或いはリモートモニタリングシステムに送信することができる。例えば、患者の15誘導ECG又は22誘導ECGを計算できるリーダ装置にデータを送信することもできる。別の考えられる実施形態では、心臓モニタリング装置によってフル15誘導ECG及び/又は22誘導ECGを導出して遠隔装置に転送することができる。患者データは、取得して計算する際にリアルタイムで送信することができる。これにより、患者が遠くに存在する場合であっても、医者がリアルタイムで患者データをモニタできるようになる。別の考えられる実装では、プログラム可能な時間間隔で患者データを送信することができる。別の考えられる実装では、患者がモバイル心臓モニタリング装置100を手動でトリガしてデータを送信することもできる。例えば、モバイル心臓モニタリング装置は、患者/ユーザが患者データの送信を手動でトリガすることを選択できるイベントボタンを備えることができる。患者データは、ネットワークインターフェイス124を用いて、セルラーネットワーク、WIFI、テキスト又はマルチメディアメッセージング、Bluetoothなどのあらゆるタイプのデータネットワークを介して送信することができる。考えられる実装では、患者データをモニタリングサービスに送信し、その後にモニタリングサービスがモバイル心臓モニタリング装置100内のアラートモジュール114の代わりに又はこれに加えて患者データをモニタして緊急状態を検出することもできる。
【0059】
図6に、本発明の実施形態による、モバイル心臓モニタリング装置を用いた心臓モニタリング及びアラート通知方法を示す。図6の方法は、図1のモバイル心臓モニタリング装置100によって実行することができる。図6の方法ステップは、患者のリアルタイム心臓モニタリングを行うために繰り返すことができる。例示的な実装では、胸痛を示したものの救急処置室から帰宅させられた患者などの、医者の直接的な監督下にない患者にモバイル心臓モニタリング装置100を提供し、図6の方法を実行して患者のリアルタイム心臓モニタリングを行うことができる。別の例示的な実施では、病院内、診療所内などの患者のリアルタイムポイントオブケアのために図6の方法を実行することができる。
【0060】
図6を参照すると、ステップ602において、3直交ECG誘導のデジタル化された電圧-時間測定値を受け取る。例えば、ECG電極128から誘導I、II及びV2、又はI、aVF及びV2の電圧-時間測定値を受け取ることができる。ステップ604において、3ECG誘導の電圧-時間測定値からフル12誘導ECGを導出する。上述したように、ECG導出モジュールは、予め記憶されている汎用変換行列を用いて12誘導ECGを導出することができる。図5の方法では12誘導ECGを導出するが、本発明は12誘導ECGに限定されるものではなく、他のあらゆるn誘導ECGを同様に導出することができる。ステップ606において、ECG誘導のうちの少なくとも1つのECG誘導の受け取られた電圧-時間測定値から患者の心拍数を計算して心調律をモニタする。ステップ608において、導出された12誘導ECGから動的CEBを計算する。動的CEBは、各心拍又は特定の心拍間隔のCEB値を計算することによって構築することができる。各心拍のCEB値は、各心拍に対応する導出された12誘導ECGの電圧-時間データの固有値を計算することによって構築することができる。
【0061】
ステップ610において、トリガ条件が検出されたかどうかを判断する。トリガ条件が検出されたかどうかを判断するには、その心拍に関連するCEBが異常ゾーンにあるかどうかを各心拍(又は心拍間隔)について判断する。例えば、固有値CEBでは、94を上回るCEB値を異常ゾーンにあると見なすことができる。トリガ条件は、異常ゾーンにあるCEB値を有する心拍のプログラム可能な割合が所定の時間間隔内に閾値を超えた時に検出することができる。すなわち、トリガ条件はP>τの時に検出され、式中のPは、時間間隔t(例えば、1分)における異常ゾーンにあるCEB値を有する心拍の割合であり、τは閾値割合値(例えば、90%)である。トリガ条件は、一定の時間間隔にわたる平均CEB値に基づいて検出することも、一定の時間間隔の中央心拍について計算した静的固有値CEB値に基づいて検出することも、フラクタルCEBに基づいて検出することも、或いはフラクタルと固有値CEBとの組み合わせ又はその他のCEBの組み合わせに基づいて検出することもできる。トリガ条件が検出されない場合、方法はステップ602に戻り、ステップ602、604、606及び608を繰り返すことによって患者のモニタリングを継続する。トリガ条件が検出された場合、方法はステップ610に進む。
【0062】
ステップ612において、トリガ条件が検出されると、所定の遠隔装置にアラートが送信される。アラートは、テキストメッセージ、電子メール、通話又は他のいずれかのタイプのメッセージを介して所定の遠隔装置に送信される、患者の医者に関連するアドバイスなどのテキストメッセージとすることができる。テキストメッセージ又は電子メールなどのアラートメッセージは、導出されたECGデータ、計算された心拍数データ、心調律情報、及びトリガ条件の検出前の一定期間にわたるCEBデータを含むことができる。患者データを含むアラートメッセージに加えて、所定の音声メッセージを含む電話アラートメッセージを所定の電話番号に送ることもできる。方法はステップ602に戻り、ステップ602、604、606及び608を繰り返すことによって患者のモニタリングを継続する。
【0063】
上述したように、モバイル心臓モニタリング装置は遠隔装置にデータを送信することができる。図7に、本発明の実施形態による、モバイル心臓モニタリング装置700とリーダ装置710との間の通信を示す。モバイル心臓モニタリング装置700は、図1のモバイル心臓モニタリング装置100と同様に実装することができる。リーダ装置710は、モバイル心臓モニタリング装置700からデータを受け取り、データから追加情報を導出して医師に表示できる装置である。例えば、リーダ装置は、医師の診療所又は病院に設置されたVetraplexECGシステムとすることができる。考えられる実装によれば、モバイル心臓モニタリング装置700は、取得したECG誘導サブセットの電圧-時間測定値をリーダ装置710に送信することができる。他の考えられる実装では、計算されたCEB値、心拍数データ、心調律データ及び/又は導出された12誘導ECGデータなどの追加データをモバイル心臓モニタリング装置700からリーダ装置710に送信することもできる。モバイル心臓モニタリング装置700は、あらゆるタイプのデータ伝送プロトコルを用いてリーダ装置710に直接データを送信することができる。モバイル心臓モニタリング装置がデータネットワーク又は「クラウド」702にデータをアップロードした後に、データネットワーク又はクラウドがこのデータをリーダ装置710及び/又は医師に関連する他の遠隔装置に送信することもできる。リーダ装置710は、取得したECG誘導サブセット又はモバイル心臓モニタリング装置700から受け取った導出された12誘導ECGデータに基づいて患者のフル15誘導ECG又は22誘導ECGを導出し、導出した15誘導ECG又は22誘導ECGを医師に表示することができる。リーダ装置は、導出されたn誘導ECGに基づいて静的CEB値を計算し、このCEB値を表示することもできる。例示的な実装では、モバイル心臓モニタリング装置700が、所定の(プログラム可能な)時間間隔でリーダ装置710に(又はクラウド702に)データを送信することができる。モバイル心臓モニタリング装置700は、モバイル心臓モニタリング装置におけるアラート条件の検出に応答して、又はモバイル心臓モニタリング装置700における患者による手動トリガ(例えば、イベントボタンの選択)入力に応答して、リーダ装置710に(又はクラウド720に)データを送信することもできる。モバイル心臓モニタリング装置700は、モバイル心臓モニタリング装置700においてデータ要求が受け取られたことに応答してリーダ装置710に(又はクラウド702に)データを送信することもできる。
【0064】
図8に、本発明の実施形態による、患者の心臓モニタリングのためのシステムを示す。図8に示すように、システムは、中央モニタリングシステム800と、複数のモバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812とを含む。モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812は、図1のモバイル心臓モニタリング装置100と同様に実装することができる。図8のモバイル心臓モニタリング装置802、802、806、808、810及び812は、アラートモジュール114を伴わずに、或いはECG導出モジュール108、心調律推定モジュール110、動的CEB計算モジュール112及びアラートモジュール114のいずれかを伴わずに実装することもできる。モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812は、各々がそれぞれの患者に関連し、それぞれの患者データを中央モニタリングシステム800に送信する。中央モニタリングシステム800は、モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812に関連する各患者の患者データをモニタする。モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812は、WIFI、Bluetoothなどのいずれかのタイプのデータネットワークを介して患者データを送信することができる。1つの例では、図8のシステムを病院内に実装し、モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812のうちの1つを各患者に提供することができる。この結果、中央モニタリングシステム800を用いて、全ての患者、或いは病院の1つの階又は1つの科の全ての患者を同時にモニタすることができる。
【0065】
1つの考えられる実装では、モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812の各々が、それぞれの患者の3誘導ECGの電圧-時間測定値を取得して中央モニタリングシステム800に送信する。次に、中央モニタリングシステムは、各患者のフルn誘導(例えば、12誘導)ECGを導出し、導出したECGに基づいて各患者の心拍数を推定し、導出したECGに基づいて各患者のCEBを動的に計算する。例示的な実装では、中央モニタリングシステム800が、各患者の15誘導ECG又は22誘導ECGを導出することができる。中央モニタリングシステム800は、各患者について計算した患者CEBデータをモニタしてトリガ条件を検出することもできる。有利な実装では、中央モニタリングシステム800が、ECG導出、心拍数計算、心調律解釈、CEB計算及びトリガ条件検出を、図1のモバイル心臓モニタリング装置100について上述した方法と同様に、ただし複数の患者の各々について実行する。別の考えられる実装では、中央モニタリングシステム800が、15誘導ECG又は22誘導ECGを導出して各患者のCEB値を計算できる1又は2以上のリーダ装置(例えば、図7のリーダ装置710)と通信することができる。中央モニタリングシステム800は、いずれかの患者についてトリガが検出された場合にアラートを提供する。例えば、中央モニタリングシステムは、可聴アラート(例えば、警報)及び可視アラート(例えば、点滅光)を提供して、どの患者が検出されたトリガ条件に関連するかを医者に示すことができる。中央モニタリングシステム800は、医者に関連する装置にテキストメッセージ、通話などのアラートメッセージを送信することもできる。別の考えられる実装では、モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812の各々が、3誘導ECGの電圧-時間測定値を取得し、フルn誘導ECGを導出し、心拍数を推定し、それぞれの患者のCEBを計算した後に、導出されたECG、推定心拍数及びそれぞれについて計算したCEBを中央モニタリングシステム800にリアルタイムで送信することができる。この結果、中央モニタリングシステム800は、各患者のCEBをモニタしてトリガ条件が生じたかどうかを検出し、トリガ条件が検出された時に患者のためのアラート通知を生成する。
【0066】
中央モニタリングシステム800は、周知のコンピュータプロセッサ、メモリユニット、記憶装置、コンピュータソフトウェア及びその他の構成要素を用いて1又は複数のコンピュータ上に実装することができる。プロセッサは、中央モニタリングシステム800の動作を定めるコンピュータプログラム命令を実行することによってこのようなシステムの動作全体を制御する。コンピュータプログラム命令は、記憶装置(例えば、磁気ディスク)に記憶して、コンピュータプログラム命令の実行が望ましい時にメモリにロードすることができる。例えば、図3図5及び図6の方法ステップを実行するためのコンピュータプログラム命令をメモリ及び/又は記憶装置に記憶し、コンピュータプログラム命令を実行するプロセッサによって制御することができる。中央モニタリングシステム800は、モバイル心臓モニタリング装置802、804、806、808、810及び812などの他の装置とネットワークを介して通信するための1又は2以上のネットワークインターフェイスを含む。中央モニタリングシステム800は、様々な患者の患者データを表示し、ある患者についてトリガ条件が検出された時にアラート通知を表示する1又は2以上のディスプレイも含む。中央モニタリングシステム800は、中央モニタリングシステム800とユーザとの相互作用を可能にする他の入力/出力装置(例えば、キーボード、マウス、スピーカ、ボタンなど)も含む。
【0067】
上述した詳細な説明は、全ての面において限定ではなく例証的かつ例示的なものとして理解すべきであり、本明細書に開示した発明の範囲は詳細な説明によって定められるものではなく、むしろ特許法で認められている完全な外延に従って解釈される特許請求の範囲によって定められるものである。本明細書に図示し説明した実施形態は、本発明の原理を例示するものにすぎず、当業者であれば本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく様々な修正を行うことができると理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく他の様々な特徴の組み合わせを行うこともできる。
【符号の説明】
【0068】
100 モバイル心臓モニタリング装置
102 プロセッサ
104 メモリ
106 ストレージ
108 ECG導出モジュール
110 心拍数/心調律モジュール
112 動的CEB計算モジュール
114 アラートモジュール
116 患者データストレージ
118 リムーバブルストレージ
120 ディスプレイ
122 I/O
124 ネットワークインターフェイス
126 電源
128 ECG電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8