(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】体の通路などの通路で阻害の少なくとも一部または全体を治療するための注入カテーテルを形成する装置
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20220404BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20220404BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220404BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20220404BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61M25/10
A61M25/14 514
A61M25/00 534
A61M25/09
A61M31/00
(21)【出願番号】P 2018563176
(86)(22)【出願日】2017-05-31
(86)【国際出願番号】 FR2017051368
(87)【国際公開番号】W WO2017207931
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-04-10
(32)【優先日】2016-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507210122
【氏名又は名称】エグザカトゥ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ブライネ, ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ペイルス, ニコ
(72)【発明者】
【氏名】アシュル, ジル, シャルル, フランクラン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-117510(JP,A)
【文献】特表平09-505503(JP,A)
【文献】特表平10-500606(JP,A)
【文献】特開2015-120088(JP,A)
【文献】特表平06-504451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323887(US,A1)
【文献】特表2006-513771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 25/14
A61M 25/00
A61M 25/09
A61M 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸X-Xを規定し、外面(12b)、および内面(12a)を規定する実質的に管状形状の外壁(12;112;212;312)を有し、遠位端(D)および近位端(P)を規定する細長い実質的に管状形状を持つ注入カテーテル装置(10;110;210;310)であって、内壁(54;154;254;354)および外壁(56;156;256;356)を持ち、治療対象である阻害(60;160;260;360)または閉塞の少なくとも一部または全体を含む導管(50;150;250;350)に導入されるようになっており、前記外壁(12;112;212;312)の遠位端(D)に1つ以上の注入液(LI)用に前記外面(12b)から前記内面(12a)まで延在する貫通注入オリフィス(16,18,20,22;116、118、122;216,218,220,222;316,322)と、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で前記注入カテーテル(10;110;210;310)の近位側(P)の前記外壁の前記外面(12b)に
、非閉塞休止位置と閉塞動作位置を有し、前記閉塞動作位置で前記導管を一時的
に閉塞
する用の
少なくとも1つの一時的閉塞要素(70;170,270;370)を含み、
前記注入オリフィス(16,18,20,22;116、118、122;216,218,220,222;316,322)は、前記一時的閉塞要素(70;170,270;370)の下流にのみ、前記外壁(12;112;212;312)に位置し、前記阻害(60;160;260;360)または閉塞を治療し、前記外壁の前記外面の横方向の前記注入オリフィス
(16,18,20,22;116、118、122;216,218,220,222;316,322)を通して、前記一時的閉塞要素(70;170,270;370)の下流および閉塞位置
のみに前記注入液(LI)を注入するようになっている、注入カテーテル装置であって、
a.実質的に管状で、柔軟性があるが実質的に非膨張性であり、実質的に折り畳めない材料からなり、
前記外壁の内部に位置し、ガイドワイヤ30を受容する第一の通路29を規定するようになっており、前記注入カテーテル装置の前記遠位端(D)に取出口(29a)を持つ第一の要素28、
b.実質的に管状で、柔軟性があるが実質的に非膨張性であり、実質的に折り畳めない材料からなり、前記注入液LIを受容する第二の通路(14;114;214;314)を規定し、前記遠位端(D)において前記第一の要素と強く結合する前記外壁(12;112;212;312)を規定するようになっており、
前記一時的閉塞要素(70;170,270;370)が、前記閉塞動作位置にあるときに、前記第二の通路から前記注入カテーテル装置の外及び側面に前記注入液LIを注入するために前記1つ以上の注入オリフィス(16、116、216、316;18、118、218、318;20、120、220、320;22、122、222、322)が前記注入カテーテル装置の前記第二の要素(12;112;212;312)の外壁を
一時的閉塞要素(70;170,270;370)の下流でのみ貫通している第二の要素、および
c.少なくとも1つ以上の温度センサー(32;132;232;332
;342)を含み、そのうちの少なくとも1つの温度センサー
(32;132;232;332)は前記ガイドワイヤの遠位部(D)に配置されて、前記注入オリフィスの下流で前記カテーテル装置の遠位側で注入流体の温度を測定する、前記ガイドワイヤ(30;130;230;330)を含む、注入カテーテル装置。
【請求項2】
前記第一の要素(28;228;328)は前記注入カテーテル装置(10;210;310)の縦軸X-Xに対して同軸に配置され、一変形によれば、前記第二の要素(12;212;312)も同様に同軸で、前記第一の要素(28)の直径よりも大きい直径を持ち、従って同心となり、前記注入カテーテル装置の前記外壁(12)を規定する壁を持ち、前記外壁は前記注入オリフィスを含む、請求項1に記載の注入カテーテル装置。
【請求項3】
前記第一の要素(128)は、前記注入カテーテル装置の前記第二の要素(112)と共通壁(128a)を持つようにその軸が前記注入カテーテル装置の縦軸X-Xと平行に配置される、請求項1に記載の注入カテーテル装置。
【請求項4】
前記一時的閉塞要素(70;170;270;370)は、萎んだ状態の休止位置と膨張した状態の動作位置を持つバルーン(72;172;272;372)を含み、前記バルーンは前記注入カテーテル装置の外に配置され、前記注入カテーテル(10;110;210;310)の内部またはその表面に配置された膨張通路(80、180;280;380)から膨張流体が供給される、請求項1~3のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項5】
少なくともいくつかの注入オリフィス(16、18、20、22;216、218、220、222;316、318)は、前記注入カテーテル装置の同軸面に互いに所定の距離を置いて前記外壁に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項6】
少なくともいくつかの注入オリフィス(116、118、122)は、前記注入カテーテル装置の縦軸X-Xと実質的に平行である前記注入カテーテル装置の同軸上で、互いに所定の距離を置いて前記外壁に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項7】
前記注入液LIを注入する近位側通路C1を含み、前記注入液LIは前記導管内で優勢な温度より低い温度で導入される熱伝導液である、請求項4~6のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項8】
前記阻害または閉塞(160)は、好適な液体に溶解してもよく、前記注入液は、前記阻害または閉塞(160)を溶解する製品を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項9】
前記注入液LIを注入するための近位側通路C1を含み、前記注入液は前記阻害または閉塞(60;160)付近の組織を治療する少なくとも1つの薬剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項10】
前記カテーテルは、所望の注入速度を得るために注入液の圧力を高めることにより、注入速度をプログラムする自動注入ポンプと接続され、
前記カテーテルは、超柔軟バルーンが5/6barから最大圧力約14/15barで展開し、第二の通路(29;129;229; 329)または注入導管では約35/40barまで支持される、差圧を有するように配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項11】
少なくとも1つ以上の温度センサー(32;132)を含み、そのうちの少なくとも1つの温度センサー(342)は前記カテーテル内に少なくとも1つの注入オリフィスに近接して配置され、注入オリフィスを通って出る前に前記注入カテーテル装置内の前記注入流体の温度を前記注入カテーテル装置(
図14)の遠位側で測定する、請求項1~10のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項12】
少なくとも1つの(216)前記注入オリフィス(216、218、220、222)の近くの第一の通路の壁に位置し、前記注入液LIが循環する第二の通路(229)と第一の通路を連通する少なくとも1つの内部オリフィス(236)を含み、第一の通路内に、前記内部オリフィス(236)(
図13)に対向するまで前記注入カテーテル装置の外側から移動可能な温度センサー要素(32;132;232;332)を備えた前記ガイドワイヤ(30;130;230)の存在により第一の通路内の前記注入液の温度を測定する、請求項2~11のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項13】
前記注入カテーテル装置は、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管である前記導管(50;150)に導入されるような形状である、請求項1~12のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項14】
前記注入液は、前記阻害または腎臓結石もしくは胆石から選択される閉塞(160)を溶解する製品を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【請求項15】
前記バルーン膨張流体は希釈または非希釈の造影剤LCを含む、請求項4~14のいずれか一項に記載の注入カテーテル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療対象の阻害の少なくとも一部または全体を含む導管に導入することができるように設計されている注入カテーテル装置に関する。特に、本発明は、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管に導入することができる注入カテーテル装置に関する。本発明は、特に、心臓手術および介入心臓学用、特に心筋梗塞を起こす冠状動脈閉塞を治療して、この動脈に依存する心筋の部分の生存を向上させるカテーテル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、Millarの特許文献1には、生物学的管に複数のカテーテルを導入する方法および装置が開示されている。
図1~
図7に示す第一の実施形態によれば、このカテーテル装置は、柔軟性のあるガイドワイヤ10を通過させる第一の導管、および様々な可能な構成を持つ圧力センサー要素12を含む。
図2の実施形態によれば、このカテーテル装置は、注入カテーテル32を導入するための第二の通路を含む。この注入カテーテルは、造影剤を注入するためのもので、ガイドワイヤ10および上記カテーテル装置またはいくつかのカテーテル装置を配置するのに用いることができる。
【0003】
圧力センサーは、血圧を検出することができ、他の温度やpHを検出するセンサー、あるいはドップラーセンサーとも共同して用いることができる。なお、この装置は、静脈系、尿路、および食道を含む各種用途で有用である場合がある(要約書、図面、および請求項を参照のこと)。
【0004】
同様に、Millarの特許文献2には、上記のMillarの特許文献1に記載された内容を補う追加の実施形態が記載されており、従って、この米国特許は継続すなわち一部継続出願である。
【0005】
また、非特許文献1に発表されたMr Pijlsを含むVan’t Veer et al.の論文から、連続注入により冠動脈血流を決定する熱希釈法および熱希釈装置が知られている。
【0006】
689~690ページの項2.3「測定試験規約」には、冠動脈によって形成された血管に挿入するガイドワイヤ通路用の中央管を含む注入カテーテルの2つの実施形態がある。上記カテーテルは、遠位端方向にカテーテル端部から互いに3cmの等距離で配置された複数の側部オリフィスを含み、一実施形態では、カテーテルの遠位端から0.5cm~1cmの距離で配置された4個のオリフィスを持つ。
【0007】
非特許文献2に発表されたMr PijlsおよびMr De Bruyneを含むAarnoudse et al.の論文には、冠動脈内および狭窄付近に導入したこの熱希釈カテーテルの他の実施形態が開示されている。この注入カテーテルを、遠位端に温度センサーが設けられた中央ガイドワイヤ上を摺動させて前進させ、温度センサーがカテーテルの遠位端のさらに下流に配置され、カテーテルの遠位端は狭窄に近接して配置されるようにY字形状のコネクタ、導管Y1により導入する(
図1、2296ページを参照のこと)。上記実施形態では、カテーテルの遠位端の下流に膨張可能な血管周囲閉塞装置が設けられている。第二のY字形状コネクタを用いて、室温にてカテーテルの注入通路に8~25ml/分の速度で生理食塩水溶液を注入する。冠動脈圧力の測定値と温度をRadi analyzerのインターフェースで回収して、表示する。圧力はガイドカテーテルの遠位端で測定し、通常の圧力変換器で記録してインターフェースに表示する。ヒトで行った試験は、血管周囲流センサーおよび閉塞装置が異なる以外はイヌで行ったものと同じであった。用いたカテーテルの遠位端は、注入カテーテルの遠位端から5mmに設けられた4個のオリフィスのうち、最も近いオリフィスの流量を制限するように先細あるいは傾斜していた。
【0008】
また、Slaterの特許文献3には、血管内部を治療する方法および装置が開示されている。この方法および装置は、様々な実施形態(一般に生理食塩水溶液からなる注入流体のための側部注入オリフィスの数および配置を含む)を持っていてもよい。注入カテーテルの遠位端には注入オリフィスのさらに下流に膨張可能なバルーンが設けられていてもよい。注入オリフィスは前記バルーンの前の近位側で上流に配置されている(例えば、上記特許文献の
図29~
図32を参照のこと)。
【0009】
また、Regittnigの特許文献4には、第一のルーメンおよび第一の貫通孔を規定する第一の管状要素、ならびに第二のルーメンおよび第二の貫通孔を規定する第二の管状要素を含むカテーテルが記載されている。第二の管状要素は、これら2つの管状要素の間に室を規定するように第一の管状要素を受容するようになっており、第二の管状要素の一方の端部が第一の管状要素の端部と接触している。第一および第二の管状要素は、第一の貫通孔から観察体への第一の流体通路、および観察体から第二の貫通孔を通って室内までの第二の流体通路を提供するように配置されている(
図1~
図10を参照のこと)。
【0010】
また、Anderson、Boston Scientificの特許文献5には、熱希釈カテーテルシステムおよび血流量を決定する方法が記載されている。
【0011】
この特許文献によれば、上記カテーテルは、内部管状要素14と指示薬流体を供給する外部管状要素12との間に規定された流体路82、および内部管状要素によって規定されたガイドワイヤ30用の通路を含み、注入流体開口部40の1つは流体がカテーテルの外側と血液導管80の内側を通るように外部管状要素の遠位端に形成されている。外部への出口で流体の温度を検出するため、ガイドワイヤ30は温度センサー32を含む。温度センサー32は、内部管状要素14の遠位側壁に設けられたオリフィス50とは反対側に位置して、流体の流れを受けてその温度を測定する(図面および要約書を参照のこと)。注入カテーテルの外側管の外側に拡散するため、いくつかのオリフィスをカテーテルと同軸面に等距離で設けてもよい(
図1Aを参照のこと)。
【0012】
さらに、Hooft et al.の特許文献6には、光学的手法、特に光ファイバーを用いて血流を測定するシステムが記載されている。
【0013】
また、Czygan et al.の特許文献7には、僧帽弁の血流を測定する音響センサーを持つ埋め込み可能な医療器具が開示されている。
【0014】
また、特許文献8(発明者:Macoviak)では、上行大動脈に配置される上流閉塞要素、および大動脈弓の下流の下行大動脈に配置される下流係留要素を備える大動脈カテーテルが開示されている(上記特許の見返しおよびそれに対応する
図27を参照のこと)。
【0015】
この大動脈カテーテルの目的は、心肺バイパス時に大動脈を選択的に分けて灌流するために心筋保護下の心停止を誘導することである。
【0016】
以下に記載する本発明の目的は、前記特許のものとは全く異なるものである。また、複数の使用が可能な本発明カテーテルとは異なり、前記特許の場合は大動脈弓に特異的である。
【0017】
また、特許文献9(発明者:Thramann)には、「ワイヤに被せて」展開するカテーテルを含む、「フローバイ(flow-by)」路と呼ばれるものを備えたカテーテルが開示されている。このフローバイ路は、標準的な手順に従って閉塞した動脈の真下に配置される。そして、阻害または閉塞された動脈中の血液の流れを効果的に逆流させるため、フローバイ路は血液を分岐させて、脆いアテローム班をすべて高圧の頸動脈閉塞から陰圧の端部に送る。そして、ステントを動脈まで進めて、展開する。Thramannによれば、血管カテーテルは、血管内手術中の脳卒中の問題を解決するのに側副血行をもたらすという利点がある(要約書を参照のこと)。
【0018】
従って、上記の構造は以下で記載する本発明とは全く異なっており、本発明とは全く異なる方法で閉塞またはアテローム性動脈硬化の問題を解決することを探求している。
【0019】
Formanの特許文献10には、拡張バルーン24、および薬剤を送達するためのオリフィス56を含む内部カテーテルを含むカテーテル装置が開示されている。
【0020】
しかしながら、バルーンが広がった状態では、薬剤送達オリフィスはバルーンに対して後退した位置にあり、バルーンを含む外部カテーテルは、薬剤の注入のために薬剤送達オリフィスを露わにするために後退しなければならない。
【0021】
従って、この装置の構造は以下で記載する本発明による装置の構造とは異なる。
【0022】
Mohlの特許文献11には、膨張可能なバルーン122、およびバルーン122の下流に設けられたオリフィス129を含むカテーテルが開示されている。
【0023】
しかしながら、これら下流のオリフィス129は液体を注入するのに用いられるのではなく、膨張可能なバルーンの下流にある血液の特性(例えば、中央ルーメン125内に配置されたセンサー装置の存在により血圧および血液の温度)を検出するのに用いられる(
図4および
図5を参照のこと)。
【0024】
Mohlの特許文献は、以下で記載する本発明とは全く関連がない。
【0025】
Innovation for Heart and Vesselsの特許文献12は、血管内微小カテーテルを提供する。このカテーテルは、薬剤などの活性物質を送達するためのもので、第一の実施形態によれば、カテーテル3の下流端すなわち遠位端に20から200個という多数の孔5が均一に分布している。
【0026】
第二の実施形態には膨張可能なバルーン9が記載されている(
図4および
図5を参照のこと)。
【0027】
このバルーンは、血管を近位側で閉塞するように設計されており(段落[0012]、3段目、29~31行)、活性物質の逆流を防止して活性物質を標的位置にのみ送達する効率を向上させるようになっていることが指定されている。これは、特に、細胞分裂阻害など毒性薬物を用いる場合に利点がある。また、バルーンによりカテーテルが安定する(3段目、31~35行を参照のこと)。
【0028】
しかしながら、このバルーンは、阻害を治療する機能を持つ意図ではなく、また以下に記載する本発明とは基本的に異なるものである。
【0029】
また、特許文献13は、膨張可能なバルーンを備えるカテーテル、およびガイドワイヤを供給するルーメンから流体剤を注入する可能性を提供する。この流体剤は、実際は造影剤である。バルーンの下流には流体流オリフィス310bが設けられている(特に
図5および
図1を参照のこと。また、段落[0041]の前の4段目、1~9行の箇所、
図5の実施形態の段落[0049]を参照のこと)。
【0030】
以下に記載する本発明に対して、膨張可能なバルーンを用いて阻害を治療する機能はない。
【0031】
Chiuの特許文献14もまた、関係がないその他の特許文献である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【文献】米国特許第4,771,782号明細書
【文献】米国特許第4,966,148号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/113798号明細書
【文献】国際公開第2009/049823号
【文献】米国特許出願公開第2014/0323887号明細書
【文献】国際公開第2012/164481号
【文献】欧州特許出願公開第1930045号明細書
【文献】米国特許第6,585,689B1号明細書
【文献】米国特許第6,689,097B2号明細書
【文献】米国特許第5,415,636号明細書
【文献】米国特許第8177704号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3009161号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/198186号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/018,498号明細書
【非特許文献】
【0033】
【文献】Van’t Veer et al.,Medical Engineering And Physics 31(2009),688-694
【文献】Aarnoudse et al.,Journal of American College of Cardiology,volume50,no.24,2007,2214-2304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
本発明の主な目的は新規な技術的課題を解決することであり、導管の少なくとも一部の阻害または閉塞またはその全部の治療を可能にすると同時に、前記阻害または閉塞が位置する導管および少なくともその下流の壁の治療を行うことができることを含む。
【0035】
また、本発明の主な目的は、特に、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管により形成された導管内に任意の種類の導管阻害の部分または全体の治療を可能にすると同時に、前記阻害または閉塞が位置する導管および少なくともその下流の壁の治療を行うことにより、この新規な技術的課題を解決することである。
【0036】
また、本発明の主な目的は、特に心筋梗塞につながる冠状動脈閉塞を治療し、この冠状動脈に依存する心筋の部分の生存を向上させることにより、心臓手術用カテーテル装置の形態で解決法を提供することで新規な技術的課題を解決することである。
【0037】
また、本発明の主な目的は新規な技術的課題を解決することであり、阻害または閉塞の一部または全部の下流で低体温処置により血管の阻害または閉塞の一部または全部の治療を可能にすると同時に、阻害または閉塞の下流の組織がさらに悪化するのを防ぐように阻害または閉塞を治療することを含む。
【0038】
また、本発明の目的は、簡単な組成で、製造が容易で信頼性が高く、工業的および医学的に再現性のある解決法を提供してこれらの技術的問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
従って、第一の態様によれば、本発明は遠位端および近位端を持つ注入カテーテル装置に関する。このカテーテル装置は、内壁および外壁を持ち、治療対象である阻害または閉塞の少なくとも一部または全体を含む導管に導入されるようになっている。前記装置は、遠位端の外壁に設けられた注入液用の1つ以上の注入オリフィスと、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で前記外壁の注入カテーテルの近位側に設けられ、非閉塞休止位置と閉塞動作位置の間で移動可能に前記阻害または閉塞を治療し、閉塞位置の閉塞要素の下流に注入液の注入を行うようになっている少なくとも1つの一時的閉塞用の閉塞要素とを含む。
【0040】
第二の態様によれば、本発明は遠位端および近位端を持つ注入カテーテル装置に関する。このカテーテル装置は、内壁および外壁を持ち、治療対象である阻害または閉塞の少なくとも一部または全体を含む導管に導入されるようになっている。前記装置は、前記外壁の遠位端に設けられた1つ以上の注入液用注入オリフィスと、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で前記外壁の注入カテーテルの近位側に設けられた少なくとも1つの一時的閉塞用の閉塞要素とを含む。この閉塞要素は、非閉塞休止位置と閉塞動作位置の間で移動可能に前記阻害または閉塞を治療し、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管であることが好ましい導管内に存在する少なくとも一部の阻害または閉塞あるいはその全部を治療し、同時に封止位置の封止要素の下流に注入液の注入を行うようになっている。
【0041】
第三の態様によれば、本発明はまた、内壁および外壁を持つ導管内の治療対象である閉塞の一部または全部を治療する方法を利用可能にする。前記導管は、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管により形成されている。
-前記方法は、治療対象である少なくとも一部の阻害または閉塞あるいはその全部を含む前記導管に導入することができるようになっているカテーテル装置を準備することを含む。前記装置は、遠位端に設けられた1つ以上の注入液用注入オリフィスと、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で注入カテーテルの近位側に設けられ、非閉塞休止位置と閉塞動作位置との間を移動可能に前記阻害または閉塞を治療するようになっている少なくとも1つの一時的閉塞用の閉塞要素とを含む。前記方法は、以下のことを含む。
-阻害または閉塞の一部あるいは全部の付近、特にその内部に閉塞装置が配置されるまで閉塞装置を休止位置にしたまま前記カテーテル装置を前記導管に導入すること、
-前記導管内の閉塞の一部または全部の下流に遠位端が配置されるまでガイドワイヤをカテーテルに導入する、あるいは後退させること、
-前記閉塞要素を一時的閉塞位置に配置して、前記カテーテル装置の外壁と治療対象である導管の内壁および前記導管の閉塞の一部または全部との間に配置された狭い空間を規定する、あるいは圧縮により前記阻害または閉塞を治療すること、
-前記狭い空間または前記阻害または閉塞の下流に前記注入オリフィスから注入液を注入して前記管内に存在する前記閉塞の一部または全部の治療あるいは前記阻害または閉塞の下流の導管壁の治療を行うこと。
【0042】
特定の実施形態によれば、前記注入液は、前記導管壁の材料すなわち組織を保護する温度にした液体である。この温度は、所定の時間の間、保護対象の管の組織を活動させないような十分に低い温度であってもよい。当業者であれば、阻害または閉塞の下流の周辺組織の保護のためにどのように温度を決定するか、既知である。
【0043】
従って、心臓手術で閉塞動作位置にある閉塞要素により閉塞が維持される間、例えば、血液の温度よりも6~8℃低い温度にした注入液を5~15分間、特に約10分間注入してもよい。この温度は、注入オリフィスの下流でカテーテルまたはガイドワイヤに配置された温度センサーの存在により測定される。これらの条件下で、周辺組織の温度は、血液より約3~6℃、特に約4℃低い。
【0044】
本発明によれば、制限なく、任意の管、特に血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管内で治療対象である閉塞の一部または全部を治療すると同時に、前記壁を形成する材料すなわち組織を保護するために下流の管の壁を治療することができる。
【0045】
動物の体の管の場合、血管、動脈または冠動脈の文脈では、これは一般に、血栓形成、狭窄、または血塊である。尿路では、一般に、凝固物すなわち結石(例えば、膀胱、腎臓、または尿道の結石)である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
第一の態様によれば、本発明は、縦軸、外面、内面を規定し、遠位端(D)および近位端(P)を規定する細長い、実質的に管状形状を持つ注入カテーテル装置に関する。このカテーテル装置は、内壁および外壁を持ち、治療対象である阻害または閉塞の少なくとも一部または全体を含む導管に導入されるようになっている。前記装置は、遠位端(D)の前記外壁に設けられた1つ以上の注入液(LI)用注入オリフィスと、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で前記注入カテーテルの近位側(P)の前記外壁に設けられた少なくとも1つの一時的閉塞用の閉塞要素とを含む。この閉塞要素は、非閉塞休止位置と閉塞動作位置との間を移動可能であり、前記阻害または閉塞を治療し、閉塞要素の下流および閉塞位置で注入液(LI)を注入するようになっている。
【0047】
特定の実施形態によれば、本発明による装置は、
a.柔軟性があるが実質的に非膨張性であり、実質的に折り畳めない材料からなり、ガイドワイヤを受容する第一の通路を規定するようになっており、前記装置の遠位端(D)に取出口を持つ実質的に管状の第一の要素、
b.柔軟性があるが実質的に非膨張性であり、実質的に折り畳めない材料からなり、注入液LIを受容する第二の通路を規定するようになっており、第二の通路から装置の外に注入液LIを注入するために前記1つ以上の注入オリフィスが装置の第二の要素の壁を貫通している実質的に管状の第二の要素、を含む。
【0048】
自明であるが、本発明の文脈で、第一の通路および第二の通路の直径は、特に治療対象である導管内部のカテーテルの長さに沿って少なくとも閉塞要素の領域では実質的に一定であり、各通路の直径は閉塞要素の休止位置または閉塞位置とは独立している。
【0049】
第一の通路の直径は第二の通路の直径と異なっていてもよい。
【0050】
カテーテルの異なる要素を作製するための材料およびその製造方法は、特に上で分析した先行技術文献から当業者にはよく知られている。例えば、FormanのUS5,415,636の4段目50行目から6段目55行、またはUS2010/0198.186の段落[0061]、およびChiuのUS2009/018.498の段落[0124]および[0131]を参照のこと。
【0051】
一変形によれば、注入オリフィスから注入液を押し出すため、前記第二の通路の遠位端は漏れないように閉じられている。
【0052】
実施形態の一変形によれば、第一の要素はカテーテル装置に対して同軸に配置されている。この場合、一変形によれば、第二の要素もまた同軸であってもよく、第一の要素よりも直径が大きい。従って、同心となり、カテーテル装置の外壁を構成する壁を持つ。
【0053】
他の実施形態の変形によれば、第一の要素は、その軸がカテーテル装置の縦軸と平行になるように、特にカテーテル装置の第二の要素と共通の壁を持つように配置されている。また、一変形によれば、第二の要素はカテーテル装置の外壁を構成していてもよく、これにより第二の要素と第一の要素との間の第二の通路を規定している。
【0054】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置において、一時的閉塞要素は、カテーテル装置の外側に配置され、カテーテル内部またはカテーテル表面に配置された膨張通路から膨張流体が供給される膨張可能なバルーンを含む。特に、バルーン膨張流体は希釈または非希釈の造影剤を含んでいてもよい。
【0055】
特定の特徴によれば、膨張させたバルーンにより注入液を確実に通すために、差圧を用いる。超柔軟バルーンは5/6barから最大圧力約14/15barで展開するが、第二の通路、すなわち注入導管では約35/40barまで支持される。従って、所望の注入速度を得るためには注入液の圧力を高めるだけでよい。実際には、カテーテルは、速度をプログラムする自動注入ポンプと接続されている。
【0056】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置において、少なくともいくつかの注入オリフィスは、前記カテーテル装置の同軸面で互いに所定の距離で前記外壁に配置されている。
【0057】
さらなる特定の実施形態によれば、本発明による装置において、少なくともいくつかの注入オリフィスは、前記装置の縦軸と実質的に平行である前記カテーテル装置の同軸上で、互いに所定の距離で前記外壁に配置されている。
【0058】
さらに他の特定の実施形態によれば、本発明による装置において、ガイドワイヤは、少なくとも1つ以上の温度センサーを含み、そのうちの少なくとも1つのセンサーは、注入流体の温度を測定するため、前記注入オリフィスの下流のカテーテル装置遠位側でガイドワイヤの遠位部(D)に配置されている。
【0059】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、少なくとも1つ以上の温度センサーを含み、そのうちの少なくとも1つのセンサーは、カテーテル内で少なくとも1つの注入オリフィスに近接して配置され、前記注入オリフィスを通って出る前に注入流体のその場温度をカテーテル装置の遠位側で測定する。
【0060】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、内部管状要素と外部管状要素との間で規定され、その内部で注入液LIが循環する室と連通する少なくとも1つの内部オリフィスを含み、前記少なくとも1つの内部オリフィスは、カテーテルの外に注入液LIを注入する外部オリフィスのうち少なくとも1つに対して設けられて、内部オリフィスに対向する位置まで外部から下流に移動可能な温度センサー要素を備えたガイドワイヤの存在により注入液の温度を測定する。
【0061】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は注入液LIを注入するための近位側通路C1を含み、注入液LIは前記導管内で優勢な温度より低い温度で導入される熱伝導液であってもよい。
【0062】
さらに特定の実施形態によれば、本発明による装置では、例えば、腎臓結石または胆石などの阻害または閉塞を好適な液体に溶解する場合に注入液を注入するための近位側通路C1を含み、前記注入液は阻害または閉塞を溶解する製品を含む注入液であってもよい。当業者であれば、用いることができる溶解剤について既知である。結石を溶解する製品は、例えば、塩化アンモニウムNH4Clまたは硝酸アンモニウムNH4NO3である。
【0063】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、注入液を注入するための近位側通路C1を含み、前記注入液は前記阻害または閉塞付近の組織を治療するための少なくとも1種の薬剤を含む液体であってもよい。当業者であれば、用いることができる薬剤について既知である。薬剤として以下のものを使用することができる:再狭窄を阻害する薬剤の水性懸濁液または分散液(例えば、特許文献US5,874,419号に記載された成長因子、特にヘパリンに結合する成長因子と組み合わせたポリイオン性シクロデキストリン誘導体);Camezind et al.の論文(Journal of Cardiovascular Pharmacology,volume43,no.1,January 2004)またはUS2005/0239743に記載された、特に111In(インジウム111)で放射標識されたオクトレオチドを含む生理食塩水溶液を含む他の再狭窄阻害薬剤(例えば、ヘパリンと共に200IU/mlの速度で投与した場合の投与量が0.02μg/ml(投与));阻害または閉塞に隣接する、およびその下流の損傷した組織の治癒/回復という形態で応答を誘導する有効量での抗血栓症治療を行う薬剤または傷の治癒を促進する薬剤で、例えば、以下のものを含むあるいはそれからなるもの:非還元性糖またはその硫酸化された類縁体、例えば、非還元性単糖もしくは二糖、またはその硫酸化された類縁体(例えば、グルコース、スクロース、フルクトース、またはその硫酸化された類縁体、特に、特許文献WO94/22885号に記載されているオクタ硫酸ナトリウムスクロース溶液);特許文献US7084117号に記載のソマトスタチン受容体1作動薬;例えば、L-アルギニン、L-リシン、またはそれらの混合物から選択される、NOのプロドラッグ。平滑筋細胞増殖阻害剤、細胞骨格阻害剤、および大環状トリエン抗生物質から他の抗再狭窄剤を選択してもよい。この抗再狭窄剤は水溶性または非水溶性であってもよい。水溶性抗再狭窄剤の例としてはペプチドファミリーに属するものが挙げられ、非水溶性薬剤の例としてはリムス(limus)ファミリーに属する薬剤が挙げられる。
【0064】
さらに特定の実施形態によれば、本発明による装置では、ガイドワイヤは少なくとも1つ以上の温度センサーを含み、そのうちの少なくとも1つのセンサーは前記ガイドの遠位部に配置されて、前記導管内の阻害または閉塞の下流または上流でカテーテル装置の遠位側で前記注入オリフィスの後方に注入された注入流体の温度を測定する。
【0065】
さらに特定の実施形態によれば、本発明による装置は少なくとも1つ以上の温度センサーを含み、そのうちの少なくとも1つの温度センサーはカテーテル内で少なくとも1つの注入オリフィスに近接して配置され、前記注入オリフィスを通って出る前に注入液のその場温度をカテーテル装置の遠位側で測定する。
【0066】
さらに特定の実施形態によれば、本発明による装置は、内部管状要素と外部管状要素の間で規定され注入液が循環する室と連通する少なくとも1つの内部オリフィスを含み、前記少なくとも1つの内部オリフィスは、カテーテルの外に注入液を注入する外部オリフィスに対して設けられて、内部オリフィスに対向する位置まで外部から下流に移動可能な温度センサー要素を備えたガイドワイヤの存在により注入液の温度を測定する。
【0067】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、前記カテーテル装置の近位の位置および/または中間の位置および/または遠位の位置に少なくとも1つの視覚的標識システムを含み、これにより医療関係者が治療対象である導管内でカテーテル装置を正確に配置できるようになっている。
【0068】
さらに特定の実施形態によれば、本発明による装置では、前記視覚的標識システムは1つ以上のX線不透過性マーカーを含む。
【0069】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、前記導管に導入されるようになっており、前記導管は血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管である。
【0070】
本発明の第二の態様によれば、本発明は、内壁および外壁を持ち、治療対象である阻害または閉塞の少なくとも一部または全体を含む導管に導入されるようになっている、遠位端および近位端を持つ注入カテーテル装置に関する。前記装置は、遠位端の外壁に設けられた1つ以上の注入液用注入オリフィスと、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で前記外壁の注入カテーテルの近位側に設けられた少なくとも1つの一時的閉塞用の閉塞要素とを含む。この閉塞要素は、非閉塞休止位置と閉塞動作位置との間を移動可能に前記阻害または閉塞を治療するようになっており、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管であることが好ましい導管内に存在する少なくとも一部の阻害または閉塞あるいはその全部を治療し、同時に閉塞位置の閉塞要素の下流に注入液の注入を行う。
【0071】
第三の態様によれば、本発明はまた、導管内に存在する少なくとも一部の阻害または閉塞あるいはその全部を治療する方法に関する。前記方法は、
-閉塞装置が阻害または閉塞の一部あるいは全部の付近、特に内部に配置されるまで閉塞装置は休止位置にある状態で、上または以下で記載する第一の態様に対して規定される何れかの実施形態によって規定される、特に遠位端に温度センサーを備えるカテーテル装置を前記導管に導入すること、
-前記導管内の閉塞の一部または全部の下流に遠位端が配置されるまで前記ガイドワイヤをカテーテルに導入する、
-閉塞要素を一時的閉塞位置に配置して、カテーテル装置の外壁と治療対象である導管の内壁および前記導管の閉塞の一部または全部との間に配置される狭い空間を規定するか、あるいは圧縮により阻害または閉塞を治療すること、
-前記注入オリフィスから前記狭い空間内または阻害または閉塞の下流に注入液を注入して、前記管に存在する前記閉塞の一部または全部の治療あるいは前記阻害または閉塞の下流の導管壁の治療を行うこと、を含む。
【0072】
特定の一実施形態によれば、この方法は、阻害または閉塞の下流の導管壁を熱処理するための温度に調節された熱伝導注入液の使用を含む。
【0073】
特に、前記導管が血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管である場合、注入液の温度を調節して前記体の管の組織を低温処置する。
【0074】
特定の一実施形態によれば、本発明の方法は、この熱処理の後、当業者にはよく知られているステントなどの膨張装置を阻害または閉塞の領域に挿入することによる手術治療を含む。
【0075】
特定の実施形態の一変形によれば、この方法はまた、この膨張の後、本発明によるカテーテル装置を前記導管内の阻害の一部または全部の領域に用いて術後の熱処理を行い、体の管の組織の回復を向上させることを含む。
【0076】
従って、心臓手術では閉塞動作位置にある閉塞要素により閉塞を維持している間、例えば、5~15分間、特に約10分間、血液の温度より6~8℃低い温度にした注入液を注入することができる。この温度は、注入オリフィスの下流のカテーテルまたはガイドワイヤに配置された温度センサーの存在により測定される。これらの条件下で、周囲の組織の温度は血液の温度よりも約3~6℃、特に約4℃低い温度である。
【0077】
本発明によって、制限なく、任意の管、特に、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管内で治療対象である阻害の一部または全部を治療すると同時に、下流の管の壁を治療して前記壁を形成する材料すなわち組織を保護することができる。
【0078】
動物の体の管の場合、血管、動脈、または冠動脈の文脈では、これは一般に、血栓形成、狭窄、または血塊である。例えば、尿路では、一般に、凝固物または結石である。
【0079】
本発明によれば、第一の態様の特定の実施形態の全ては当然だが第二の態様および第三の態様に適用される。
【0080】
当業者には自明であるが、本発明は、製造が容易で、工業規模および医療で安全かつ信頼性が高く、異なる種類の管の異なる種類の阻害または閉塞を治療することができる簡便な装置を使用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】
図1は、本発明によるカテーテル装置の第一の実施形態の概略図を示し、管(例えば、冠動脈)内の動作位置にある注入オリフィスの上流の閉塞要素(例えば、膨張バルーン)を備えたカテーテル装置の縦軸方向の拡大部分断面図が示されている。
【
図2】
図2は、阻害または閉塞での
図1の装置の縦軸方向断面図を示し、動作位置にある閉塞要素が示されている。ここでは阻害または閉塞が圧縮されており、閉塞の下流で注入液が注入されているのが示されている。
【
図3】
図3は、
図2の切断線III-IIIに沿った軸方向断面図を示す。
【
図4】
図4は、
図2の切断線IV-IVに沿った軸方向断面図を示す。
【
図5】
図5は、膨張バルーンなどの閉塞要素を備えた本発明によるカテーテル装置の第二の実施形態の概略図を示す。
【
図6】
図6は、
図5の本発明による第二のカテーテル装置の軸方向断面図を示す。装置がよく見えるように閉塞要素は前記動作位置すなわち膨張位置にある。
【
図7】
図7は、
図5の切断線VII-VIIに沿った軸方向断面図を示す。
【
図8】
図8は、
図5の切断線VIII-VIIIに沿った軸方向断面図を示す。
【
図9】
図9は、
図5の切断線IX-IXに沿った軸方向断面図を示す。
【
図10】
図10は、治療対象である阻害または閉塞(例えば、膀胱、腎臓、または胆嚢の結石あるいは凝固物)の上流に配置された動作位置にある
図5~
図9の本発明による第二の実施形態のカテーテル装置を示す。
【
図11】
図11は、
図2と同様に、治療対象である阻害およびその内部に配置された膨張バルーンなどの閉塞要素を備えた、本発明による第三の実施形態のカテーテル装置の軸方向断面図を示す。
【
図13】
図13は、
図11の同じ切断線XII-XIIに沿った軸方向断面図を示しているが、ガイドワイヤが後退位置にあり、温度センサー装置がガイドワイヤの中央通路に連通したオリフィスに対向している。
【
図14】
図14は、
図2と同様に、本発明による第四の実施形態のカテーテル装置の軸方向断面図を示す。このカテーテル装置は、治療対象である阻害およびその内部に配置された膨張バルーンなどの閉塞要素を備え、ガイドワイヤに設けられた第一の温度センサー、および注入流体の管通路内に少なくとも1つの注入オリフィスに近接して配置されて、注入オリフィスを通って出る前に注入流体のその場温度をカテーテル装置の遠位側で測定する第二の温度センサーを含む。
【実施例】
【0082】
本発明によるカテーテルの実施例1
図1~
図4には第一の実施形態のカテーテル装置10が示されている。カテーテル装置10は、内壁および外壁を持ち、治療対象である阻害または閉塞の少なくとも一部または全体を含む導管に導入されるようになっている。前記装置10は、近位端Pおよび遠位端Dを規定する細長い実質的に管状の形状、縦軸X-X、および外面13と内面14を規定する実質的に管状の外壁12を持つ。
【0083】
本発明によれば、前記装置10はまた、外壁12の遠位端(D)に設けられた1つ以上の注入液(LI)用注入オリフィス16、18、20、22と、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で前記外壁12の注入カテーテルの近位側(P)に設けられ、前記阻害または閉塞を治療すると同時に閉塞要素の下流および閉塞位置で注入液(LI)を注入するようになっている少なくとも1つの一時的閉塞用閉塞要素70とを備える。
【0084】
特定の一実施形態によれば、本発明による装置は以下のものを含む。
a.柔軟性があるが実質的に非膨張性であり、実質的に折り畳めない材料からなり、ガイドワイヤ30を受容する第一の通路29を規定するようになっており、前記装置の遠位端(D)に取出口29aを持つ実質的に管状の第一の要素28、および
b.柔軟性があるが実質的に非膨張性であり、実質的に折り畳めない材料からなり、注入液LIを受容する第二の通路14を規定するようになっており、第二の通路から前記装置の外にLI注入液を注入するために前記1つ以上の注入オリフィス16、18、20、22が前記装置の第二の要素(12)の壁を貫通している実質的に管状の第二の要素。
【0085】
実施形態の一変形によれば、注入オリフィス16、18、20、22から注入液LIを押し出すため、
図1~
図4に示すように、第二の通路の遠位端は漏れ防止パーティション12cにより閉じられている。
【0086】
他の実施形態の一変形によれば、第一の要素28はカテーテル装置10に対して同軸に配置されている。この場合、一変形によれば、
図1~
図4に示すように、第二の要素12もまた同軸であってもよいが、第一の要素28の直径よりも大きい直径を持ち、これにより同心となり、カテーテル装置の外壁を構成している。
【0087】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置では、一時的閉塞要素70は、カテーテル装置の外側に配置され、カテーテル10の内部またはその表面に配置された膨張通路80から膨張流体が供給される膨張可能なバルーン72を含む。一時的閉塞要素70は、開口部84を介してバルーン72の内部74に開口しているルーメン82を持つ。特に、バルーン膨張流体(例えば、空気などの気体、あるいは液体)は希釈されていない造影剤を含んでいてもよい。
【0088】
特定の一特徴によれば、膨張させたバルーンで注入液を確実に通すように、差圧が用いられる。超柔軟バルーンは5/6barから最大圧力約14/15barで展開するが、第二の通路、すなわち注入導管では約35/40barまで支持される。従って、所望の注入速度を得るためには注入液の圧力を高めるだけでよい。実際には、カテーテルは、速度をプログラムする自動注入ポンプ(ここでは図示せず)と接続されている。
【0089】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、カテーテル装置の遠位端Dの方向に配置されている少なくとも1つの温度センサー32を含む。前記温度センサー32は、前記注入オリフィス16、18、20、22の付近に配置されて、前記カテーテル装置の外の注入液LIの温度を測定する。
【0090】
他の特定の実施形態によれば、
図4に示すように、本発明による装置では、少なくともいくつかの注入オリフィス16、18、20、22は前記カテーテル装置の同軸面で互いに所定の距離で前記外壁に配置されている。
【0091】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置では、注入液は、前記導管内で優勢な温度よりも低い温度で導入される熱伝導液である。
【0092】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置では、例えば、腎臓結石または胆石などの阻害または閉塞を好適な液体に溶解させることができる場合に、前記注入流体は阻害または閉塞を溶解する製品を含む注入液である。当業者であれば、用いることができる溶解剤について既知である。結石を溶解する製品は、例えば、塩化アンモニウムNH4Clまたは硝酸アンモニウムNH4NO3である。
【0093】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置では、前記注入液は前記阻害または閉塞付近の組織を治療するための少なくとも1種の薬剤を含む液体である。当業者であれば、用いることができる薬剤について既知である。その薬剤として、例えば、上記のリストから選択される薬剤を用いることができる。
【0094】
さらに特定の実施形態によれば、
図1および
図2に示すように、本発明による装置では、ガイドワイヤ30は少なくとも1つ以上の温度センサー32を含み、そのうちの少なくとも1つのセンサー32は前記ガイドの遠位部に配置されて、前記導管内の阻害または閉塞の下流でカテーテル装置の遠位側で前記注入オリフィスの後方に注入された注入液の温度を測定する。
【0095】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置は前記カテーテル装置の近位の位置および/または中間の位置および/または遠位の位置に少なくとも1つの視覚的標識システムを含み、これにより医療関係者が治療対象である導管内でカテーテル装置を正確に配置できるようになっている。
【0096】
さらに特定の実施形態によれば、本発明による装置では、前記視覚的標識システムは、少なくともカテーテル装置の遠位端の位置、注入オリフィス、および閉塞要素を正確に位置決めできるような位置に設けられた1つ以上のX線不透過性マーカーを含む。
【0097】
特定の一実施形態によれば、本発明による装置では、前記導管50は、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管である。
【0098】
本発明によるカテーテルの実施例2
図5~
図10に第二の実施形態を示す。ここでは、同じ機能を持つ構成要素は同じ参照符号に100を加えて示されている。
【0099】
従って、参照符号は以下の通りである。カテーテル110、ガイドワイヤ130、その上の温度センサー132、ルーメン182を規定し、開口部184を通ってバルーン172の内部174に開口している専用通路180により供給される封止要素170(例えば、バルーン172など)。
【0100】
この第二の実施形態では、第一の要素128は、特に第二の管状要素112との共通壁128aを持つようにその軸をカテーテル装置110の縦軸X-Xと平行に配置されている。第二の管状要素112はまた、カテーテル装置110の外壁を規定している。この場合、一変形によれば、第二の通路114は第二の管状要素112と第一の管状要素128との間に存在する空間により規定されてもよい。
【0101】
実施形態の一変形によれば、第二の通路114の遠位端は、注入液を注入オリフィス116、118、122から押し出すために漏れ防止パーティション114cにより閉じられている。
【0102】
他の特定の実施形態によれば、本発明による装置では、
図9に示されるように、少なくともいくつかの注入オリフィス(ここでは、116、118、122)は、前記カテーテル装置の縦軸と実質的に平行に前記カテーテル装置の同じ軸上に互いに所定の距離を置いて配置されている。注入オリフィスのこの第二の実施形態は、もちろん、
図1~
図4の第一の実施形態と併用してもよく、その逆であってもよい。
【0103】
本発明によるカテーテルの実施例3
図11~
図13に第三の実施形態を示す。ここで、同じ機能を持つ構成要素は、上記2つの実施形態と同じ参照符号に100を加えて示されている。
【0104】
従って、参照符号は以下の通りである。カテーテル210、ガイドワイヤ230、その上の温度センサー232、ルーメン282を規定し、開口部284を通ってバルーン272の内部274に開口している専用通路280により供給される閉塞要素270(例えば、バルーン272)。
【0105】
この第三の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、内部管状要素228の壁を貫通し、内部管状要素228と外部管状要素212との間で規定される第二の通路214と第一の通路229とを連通し、その内部で注入液LIが循環する少なくとも1つの内部オリフィス236を、カテーテルの外に液体を注入する外部オリフィス216、218、220、222の領域に含み、内部オリフィス236に対向するまで外側から移動可能な温度センサー要素232を備えたガイドワイヤの存在よりカテーテル内で流体のその場温度を測定する。
【0106】
本発明によるカテーテルの実施例4
図14に第四の実施形態を示す。ここで、同じ機能を持つ構成要素は上記3つの実施形態と同じ参照符号に100を加えて示されている。
【0107】
従って、参照符号は以下の通りである。カテーテル310、ガイドワイヤ330、およびその上の温度センサー332、ルーメン382を規定し、開口部384を通ってバルーン372の内部374に開口している専用通路380より供給される封止要素370(例えば、バルーン372)。
【0108】
この第四の特定の実施形態によれば、本発明による装置は、少なくとも1つ以上の温度センサー332、342を含み、そのうちの少なくとも1つの温度センサー342はカテーテル内部(ここでは第二の通路314内)に少なくとも1つの注入オリフィス(ここでは320)に近接して配置され、前記注入オリフィスを通って出る前に注入流体のその場温度をカテーテル装置の遠位側で測定する。
【0109】
この実施形態によれば、カテーテルの外に配置された温度センサー332を備えるガイドワイヤは、
図11~
図13の第三の実施形態のように後退させる必要がなく、相対的に固定した位置に留まっていてもよい。従って、注入液LIの温度の測定は通路350への注入前にカテーテル内のその場で行い、同時に注入後に外側で行う。
【0110】
第二の態様によれば、本発明は、内壁(54;154)および外壁(56;156)を持ち、治療対象である阻害(60;160)または閉塞の少なくとも一部または全体を含む導管(50;150)に導入されるようになっている、遠位端(D)および近位端(P)を持つ注入カテーテル装置(10;110)に関する。前記装置は、前記外面の遠位端(D)に設けられた1つ以上の注入液(LI)用注入オリフィス(16;116、18;118、20、22;122)と、前記1つ以上の注入オリフィスの上流で前記外面の注入カテーテル(10;110)の近位側(P)に設けられた少なくとも1つの一時的閉塞用の閉塞要素(70)を含む。この閉塞要素は、前記阻害(60)または閉塞を治療し、閉塞要素(70)の下流および閉塞位置で注入液(LI)を注入し、血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管であることが好ましい導管内に存在する少なくとも一部の阻害または閉塞あるいはその全部を治療すると同時に、閉塞位置にある閉塞要素の下流に注入液の注入を行うようになっている。
【0111】
第三の態様によれば、本発明はまた、導管内に存在する少なくとも一部の阻害または閉塞あるいはその全部を治療する方法に関し、前記方法は上記4つの実施形態のカテーテル装置に適応可能である。前記方法は、
a)閉塞装置が
図1~
図4および
図11~
図14に示されるように阻害または閉塞の一部あるいは全部の付近、特にその内部、あるいは
図5~
図10の実施形態に示されるように阻害の上流に配置されるまで閉塞装置が休止位置にある状態で、特に遠位端に温度センサーを備える上または下で記載する第一の態様で規定される何れかの実施形態によるカテーテル装置を前記導管に導入すること、
b)前記導管内の閉塞の一部または全部の下流に遠位端が配置されるまで前記ガイドワイヤをカテーテルに導入することを含む。
【0112】
一変形によれば、治療される症状に依存して、工程a)およびb)の順序を逆にしてもよい。
c)前記閉塞要素を一時的閉塞位置に配置して、前記カテーテル装置の外壁と治療対象である導管の内壁および前記導管の閉塞の一部または全部との間に配置された狭い空間を規定する(
図5~
図10)、あるいは圧縮により前記阻害または閉塞を治療する(
図1~
図5および
図11~
図14)こと、
d)前記狭い空間(
図5~
図10)または阻害または閉塞の下流(
図1~
図5および
図11~
図14)に前記注入オリフィスから注入液を注入して、前記管内に存在する前記閉塞の一部または全部の治療、あるいは前記阻害または閉塞の下流の導管壁の治療を行うこと。
【0113】
特定の一実施形態では、この方法は、阻害または閉塞の下流の導管の壁を熱処理するための温度に調節した熱伝導注入液の使用を含む。
【0114】
特に、前記導管が血管、動脈、冠動脈、尿路、食道、および肺胞からなる群より選択される動物またはヒトの体の管である場合、注入液の温度を調節して前記体の管の組織を低温処置する。
【0115】
特定の一実施形態によれば、本発明の方法は、この熱処理の後、当業者にはよく知られているステントなどの膨張装置を阻害または閉塞の領域に挿入することによる手術治療を含む。
【0116】
特定の実施形態の一変形によれば、この方法はまた、この膨張の後、本発明によるカテーテル装置を前記導管内の阻害の一部または全部の領域に用いて術後の熱処理を行い、体の管の組織の回復を向上させることを含む。
【0117】
実施例5:心臓手術または介入心臓学での図1~図4および図11~図14の実施形態の使用
心臓手術の文脈で、本発明の目的は、選択可能な低温処置、すなわち、患者において急性心筋梗塞の危険性がある心筋の一部を選択可能に冷却することを提供することである。この冷却(低温処置)は、閉塞している動脈、すなわち梗塞に関与している動脈を再疎通(再開)される数分(約10分)前に始めなければならない。この冷却は、動脈の再疎通の後も数分間(10分間)継続しなければならない。これらの時間は単なる例示であり、患者とこれまでの研究で得た結果により変動することがある。
【0118】
心筋梗塞は冠動脈の閉塞により生じることが知られている。この突然の閉塞は、この冠動脈に依存する心筋の部分の生存を脅かす。この閉塞した動脈を急速に再疎通させると、傷害の程度を限定することができる。この急速な再疎通は梗塞の急性期の治療の一部であり、一次血管形成術と呼ばれる。しかしながら、動脈の急激な再灌流は心臓細胞の壊死を拡大する原因になることが分かっている。後者を「再灌流傷害」と言う。従って、一次血管形成術の利点によっては再灌流に関連する問題によって失われることがある。本発明による低温処置法により、正確にこの再灌流傷害が回避される。従って、梗塞の究極の程度はこの低温処置法により限定される場合がある。梗塞の程度は断然、心筋梗塞後の最も重要な予後因子である。従って、本発明による低温処置により、および梗塞の程度を限定し、患者の予後を向上させることが可能になる。
【0119】
本発明による選択可能な低温処置の方法の利点は、所望の温度にすばやく到達し、危険に曝されている心筋の部分のみを冷却し、体液過剰を大きく低下させることである。従って、恐れられる何らかの全身性効果はあってもわずかである。
【0120】
上記の記載から明らかなように、本発明によるカテーテルは、従来のバルーンカテーテルの特徴と注入カテーテルの特徴とを組み合わせて、従来のバルーンカテーテルの寸法と同様の寸法を持っている。従って、本発明によるカテーテルは以下のように構成される。
【0121】
カテーテルは一般に、3つの通路すなわちルーメンを持つ。
-
図1~
図4および
図11~
図14に示す同軸の第一の通路すなわちルーメン29;229、または329、すなわちモノレールと呼ばれる、
図5~
図10の第一の側部ルーメンを規定する第一の側部通路128。これによりカテーテルを0.014インチの任意のガイドワイヤ30、130、230、330上を前進させることができ、従って温度センサーおよび/または圧力センサー32、132、232、332を備えたガイドワイヤ30、130、230、330上も前進させることができる、あるいは後退させることができる。
-一般にカテーテル10、110、210、310の第二の管状要素12、112、212、312の外壁によって形成された第二の通路すなわちルーメン14、114、214、314。このルーメンは、近位部分から、遠位部に配置され、近位側の注入通路LCから注入液(生理液または他の液体であってもよい)が注入される遠位側の注入オリフィス16、18、20、22;または116、118、122;または216、218、220、222;または316、318、320、322(ここでは側部)までを連通している。
-開口部84、184、284、384を介して閉塞要素(ここではバルーン72、172、272、372)の内部と連通している、第三のルーメン82、182、282、382を規定する第三の通路80、180、280、380。閉塞要素は、萎んで休止位置になり、この休止位置から膨張して
図1~
図3、
図6、
図8、
図10、
図11、
図13、および
図14に示す膨張動作位置になることができる。このバルーンの膨張は、近位側の通路LCから気体または液体の注入により行ってもよい。これが望ましい場合、気体または液体は、阻害または閉塞および注入オリフィスに対するカテーテル、特にバルーンの正確な位置を確認することを可能にする希釈した造影媒体を含んでいてもよい。
【0122】
例えば、遠位側の側部注入オリフィスの上流から1センチから数センチまたは数ミリの間に配置されたバルーンは、従来のバルーンと同様に膨張させたり、萎ませたりする。しかしながら、特定の特徴により、膨張させたバルーンで注入液を確実に通すために、差圧が用いられる。超柔軟バルーンは5/6barから最大圧力約14/15barで展開するが、第二の通路、すなわち注入導管では約35/40barまで支持される。従って、バルーンを膨張させている間に所望の注入速度を得るためには注入液の圧力を高めるだけでよい。実際には、カテーテルは、速度をプログラムする自動注入ポンプ(ここでは図示せず)と接続されている。
【0123】
心臓付近に入れる心臓手術の一実施形態では、カテーテルは長さが約20~22cmで、その外径は1mm未満、例えば、0.95mmであってもよい。注入オリフィスは、直径が、例えば、約150マイクロメートルであってもよく、カテーテルの遠位端から7~8mmで、0°、180°および/または90°および270°に配置されていてもよい。これにより、
図1~
図14の4つの実施形態に示すように、直径がカテーテル軸に対向および/または軸がカテーテル軸に沿ってオフセットしている。
【0124】
従って、カテーテルの近位端は2つのコネクタを備えている。第一のコネクタは注入液LI用注入ポンプに接続するためのものであり、第二のコネクタC2はバルーン72、172、272、372を膨張させたり萎ませたりする注射器またはポンプに接続するためのものである。
【0125】
選択可能な冷却手順:
急性心筋梗塞を持ち、一次血管形成術の恩恵を受ける可能性のある患者を通常のように正確にカテーテル検査台に載せる。送達カテーテル10、110、210、310を大腿動脈または橈骨動脈内に入れて前進させる。
【0126】
例えば、St Jude MedicalのPressureWireなど、サーミスタを備えるガイドワイヤ30、130、230、330を送達カテーテルに入れて前進させる。このガイドワイヤを動脈の遠位部まで進めて、梗塞を起こしている閉塞内を通す。
【0127】
カテーテル10、110、210、310を注入ポンプに接続して、管を洗浄して気泡で洗浄を除去する。次いで、カテーテルをガイドワイヤ30、130、230、330に取り付けて、バルーン72、172、272、372を冠動脈閉塞60、160、260、または360まで進める。すぐにバルーン72、172、272、372をこの領域で膨張させて梗塞部の再灌流を回避する。
【0128】
次いで、注入液LIの注入を開始する。注入液LIは、例えば、所望の熱処理温度でヘパリン化されていてもよい殺菌生理液であり、例えば手術室の温度で注入を開始する。バルーンによる閉塞の間、この注入は10分間維持される。
【0129】
動脈の遠位部に配置された少なくとも1つの温度センサーまたはサーミスタ32、132、232、332、342により遠位側温度を監視する。
【0130】
初期の研究プロトコルでは、冠動脈の遠位部の温度は、血液の温度よりも約6~8度低くなければならない。これらの条件で、血液の温度よりも約4度低い温度が周囲の心筋組織で得られた。
【0131】
約10分後、室温の注入液(例えば、生理食塩水)を約4°の温度の注入液(例えば、生理食塩水)で置換し、同時に閉塞バルーンを萎ませる。これにより、血液はカテーテルに沿って流れて冷やした生理食塩水と混じるようになる。再度、混合物の温度を動脈の遠位部に配置されたサーミスタにより調整する。この温度は、血液の温度よりも4~5度低くなければならない。これらの条件で、隣接する心筋の温度は血液の温度よりも約4度低くなることが知られている。
【0132】
約10分後、生理食塩水の注入を中断する。
【0133】
最後に、本発明によるカテーテル10、110、210、310を取り出して、その施設の手順に従ってステントを他の好適なカテーテルと共に配置する。
【0134】
もちろん、注入時間および注入される液体の温度は変動する。結論として、本発明による方法はまた、他の注入時間および他の温度にも適用される。
【0135】
遠位側注入オリフィスについて、上記カテーテルは、
図1~
図4および
図11~
図14の4つの側部オリフィスあるいは
図5~
図10の同一軸面にある3つの側部オリフィスと1つの遠位オリフィスとを備える記載されているが、もちろん、
図5~
図10に示すように装置の縦軸に平行な軸に沿ってオリフィスが分布した他の組み合わせを想起することも可能である。
【0136】
本発明によるカテーテルは、他のガイドワイヤと併用してもよく、挿入手順を逆にしてもよい。
【0137】
従って、本発明によるカテーテルは、注入カテーテルとバルーンカテーテルの組み合わせである。この組み合わせの目的は、血管の閉塞と注入液の注入を同時に可能にして、
図1~
図4および
図11~
図14の実施形態による閉塞の後に配置された組織の治療、あるいは以下に示す
図5~
図10の実施形態による閉塞の溶解を提供することである。
【0138】
実施例6:結石または凝固物などの阻害を破壊するための図5~10の実施形態の使用
尿路の阻害または閉塞(例えば、結石または凝固物)の前に注入オリフィスを配置した以外は実施例5に記載されたのと同様の手順を用いて、バルーン172の膨張後に通常の監視をしながら必要な時間に亘って閉塞を破壊または溶解する液体を注入することができる。
【0139】
同様に、特に結石または凝固物などの阻害または閉塞を破壊するのに用いることができる他の一変形によれば、第二の通路114の遠位端は開口していてもよく、これにより注入液が注入オリフィス116、118、122だけでなく、第二の通路の遠位側開口部を通ることができる。この一変形は
図1~
図14の4つの実施形態に適用可能である。
【0140】
従って、本発明によるカテーテル装置は非常に用途が広く、上記のように異なる種類の導管内の様々な種類の阻害または閉塞を治療するのに用いることができる。
【0141】
従って、本発明は
図1~
図14に記載され、示された手段の技術的均等物をすべてその範囲に含む。また、
図1~
図14は、本発明の不可欠な部分を形成し、その記載を補完するものである。