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特許7051802交換可能なカートリッジを備える噴霧装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】交換可能なカートリッジを備える噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20220404BHJP
   B05B 12/08 20060101ALI20220404BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20220404BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20220404BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A01M7/00 G
A01M7/00 J
B05B12/08
B05D1/02 Z
B05D3/12 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019500825
(86)(22)【出願日】2017-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2017066612
(87)【国際公開番号】W WO2018011012
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-05-15
(31)【優先権主張番号】16178764.3
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16178766.8
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/360,548
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/360,555
(32)【優先日】2016-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507203353
【氏名又は名称】バイエル・クロップサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー、グートマン
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-007710(JP,A)
【文献】特公平06-013100(JP,B2)
【文献】特公平04-031939(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0175363(US,A1)
【文献】実開昭60-039364(JP,U)
【文献】特開平07-023685(JP,A)
【文献】特開2014-121312(JP,A)
【文献】特許第5946905(JP,B2)
【文献】特開平01-104334(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02213031(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
B05B 7/00-7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯式噴霧装置であって、
希釈剤(11)を受容する容器(10)と、
出口(30)と、
前記希釈剤(11)を前記出口(30)の方向へ送る手段(15)と、
農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤、または殺菌剤の濃縮液(21)を含む前記噴霧装置用の交換可能なカートリッジ(20)であって、前記カートリッジ(20)は、前記カートリッジ(20)を前記噴霧装置へ可逆的に接続する手段(22a)を含み、前記カートリッジ(20)は、電子記憶部(28)を有し、設定されるべき前記濃縮液(21)の希釈度についての情報が、前記記憶部(28)に記憶され、前記情報が、希釈剤の流量の調整を可能とする前記噴霧装置の制御部により読み出し可能となる、カートリッジ(20)と、
前記濃縮液を含む前記カートリッジを前記噴霧装置へ可逆的に接続する手段(22b)と、
前記濃縮液を前記出口(30)の方向へ送る手段(25)と、
制御部(1)と、
を含み、
前記制御部は、前記カートリッジに関連付けられた電子記憶部から希釈度を読み出す手段を有し、前記制御部は、前記濃縮液を前記希釈度に従って前記希釈剤(11)で希釈するように設計された調整部を有する、ことを特徴とする携帯式噴霧装置。
【請求項2】
前記容器は、前記容器をユーザの背中へ固定して前記ユーザが前記容器を運ぶことを可能とするストラップを有する、請求項1に記載の携帯式噴霧装置。
【請求項3】
携帯式噴霧装置であって、
希釈剤(11)を保持する容器(10)と、
出口(30)と、
前記希釈剤(11)を前記出口(30)の方向へ送る手段(15)と、
農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤、または殺菌剤の濃縮液(21)を含む交換可能なカートリッジ(20)を前記噴霧装置へ可逆的に接続する手段(22b)と、
前記濃縮液(21)を前記出口(30)の方向へ送る手段(25)と、
制御部(1)と、
いう構成要素を含む携帯式噴霧装置と、
交換可能なカートリッジ(20)であって、前記カートリッジ(20)を前記噴霧装置へ可逆的に接続する手段(22a)を含む、交換可能なカートリッジ(20)と、
を含むシステムであって、
前記カートリッジ(20)は、前記カートリッジ(20)が前記噴霧装置へ接続された場合に前記噴霧装置の前記制御部により読み出される電子記憶部(28)を有し、設定されるべき前記希釈剤(11)による前記濃縮液(21)の希釈度についての情報が、前記電子記憶部(28)に記憶される、ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
活性剤製剤を塗布する方法であって、
活性物質濃縮液を含む交換可能なカートリッジであって、電子記憶部を含み、希釈度が前記記憶部に記憶された、交換可能なカートリッジを利用可能にするステップと、
希釈剤を有する携帯式噴霧装置であって、制御部を含み、前記制御部が前記記憶部から前記希釈度を読み出す手段を有する、携帯式噴霧装置を利用可能にするステップと、
ユーザが前記交換可能なカートリッジを前記噴霧装置へ接続するステップと、
前記制御部により前記記憶部から前記希釈度を読み出すステップと、
前記活性物質濃縮液および/または前記希釈剤の、その容器から前記出口の方向への流量を調整することで、前記活性物質濃縮液および前記希釈剤の混合物であって前記活性物質濃縮液が前記読み出された希釈度に従って希釈された混合物が前記出口から排出されるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯式噴霧装置(portable spraying device)を使った液状活性物質の塗布に関する。本発明の主題は、携帯式噴霧装置と、活性物質濃縮液を含む交換可能なカートリッジと、を備えるシステムである。本発明の主題はさらに、液状活性物質製剤を塗布する方法である。本発明の更なる主題は、カートリッジに含まれる活性物質濃縮液に対して設定すべき希釈度についての情報が記憶された記憶部を有する交換可能なカートリッジである。本発明の更なる主題は、噴霧装置に接続されたカートリッジの記憶部を読み出して、読み出した情報に基づいてカートリッジに入っている活性物質濃縮液に対して希釈度を設定することのできる制御部を備える噴霧装置である。
【背景技術】
【0002】
農業用殺虫剤(pesticide)、殺虫剤(insecticide)、除草剤(herbicide)、および殺菌剤(fungicide)などの活性物質を塗布するための携帯式噴霧装置が知られている(ドイツ特許出願第102013109785A1、米国特許出願第2006/0249223A1、米国特許出願第2006/0102245A1、米国特許出願第2006/0261181A1、米国特許出願第2005/0006400A1)。
【0003】
これに関連して、圧縮式噴霧器と呼ばれる噴霧装置が普及している。この装置は、噴射される液体を保持するためのタンクを含む。通常手動で作動される、タンクの一部を形成する空気圧ポンプは、慣習的なピストンロッド構造およびその作動用ハンドルを含む。この空気圧ポンプは、噴射される液体を利用して空気圧を発生させるのに使用される。タンクは、操作者が定期的にポンプを作動させることで、所望のタンク圧力に達するまで加圧される。噴霧液体に作用する空気圧により、噴霧液体は、タンク内の噴霧液体の中に浸かっているパイプを通って排出され、ホース、ホースの外端の噴射ジェットバルブ、延長パイプ、そして最終的に噴射ノズルを通って、選択された目標の領域へと流れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日、農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤、および殺菌剤は、濃縮液の形態でますます販売されている。濃縮液は、低い輸送費という利点を有する。ユーザは使用する前に活性物質を希釈する必要がある。希釈の指示は、通常は包装材または添付の冊子上で与えられる。
【0005】
しかし、ユーザによって行われる希釈には、以下の理由で不利益がある。
ユーザが活性物質と望まない接触をする可能性がある。濃縮液および希釈剤の量の計算の最中にユーザが間違うことが考えられる。高粘度の濃縮液では、必要量の体積の寸法指示が不正確となることがある。
【0006】
活性物質を不正確に投与することにより、一連の望ましくない結果がもたらされることがあり、すなわち、噴射される物体の処置が効果を持たないことがあったり、過剰投与が発生することがある。投与量についての正式な指示が守られないことが考えられる。投与量が不正確に計算されているために、在庫監視が不良となることが考えられる。
【0007】
上記の噴霧装置の更なる不利益は、別の活性物質が使用される際にはまずタンクを洗浄する必要があるということである。特定の状況においては、洗浄用流体は廃棄する必要がある。
【0008】
上述した先行技術を出発点として、取り扱いが容易で濃縮液を手作業で希釈する必要がなく、正確に定義できる量の活性物質を出力し、輸送しやすくてユーザが持ち運んだり輸送したりするのに好都合で、費用のかかる洗浄を必要とすることなく様々な方法で使用できる、活性物質塗布用の装置を利用可能とすることが目的となってきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は独立請求項1、5、8、および11の主題を利用することで達成される。好ましい実施形態は、従属請求項内および本明細書内に見られる。
【0010】
本発明の第1の主題は、農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤、または殺菌剤の濃縮液の入ったカートリッジであり、このカートリッジは、このカートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段を含み、電子記憶部を有することを特徴とし、設定されるべき濃縮液の希釈度についての情報が記憶部に記憶される。
【0011】
本発明の更なる主題は、
― 希釈剤を入れる容器と、
― 出口と、
― 希釈剤を出口の方向へ送る手段と、
― 農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤、または殺菌剤の濃縮液の入った交換可能なカートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段と、
― 濃縮液を出口の方向へ送る手段と、
― 制御部と、
を含む噴霧装置であって、制御部がカートリッジに関連付けられた電子記憶部から希釈度を読み出す手段を有し、制御部が濃縮液を希釈度に従って希釈剤で希釈するように設計された調整部を有することを特徴とする噴霧装置である。
【0012】
本発明の更なる主題は、
― 携帯式噴霧装置であって、
― 希釈剤を保持する容器と、
― 出口と、
― 希釈剤を出口の方向へ送る手段と、
― 農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤、または殺菌剤の濃縮液の入った交換可能なカートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段と、
― 濃縮液を出口の方向へ送る手段と
― 制御部と、
いう構成要素とを含む携帯式噴霧装置と、
― 交換可能なカートリッジであって、該カートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段を含む交換可能なカートリッジと、
を含むシステムであって、カートリッジが噴霧装置へ接続された場合に噴霧装置の制御部により読み出される、設定されるべき希釈剤による濃縮液の希釈度についての情報が記憶される電子記憶部をカートリッジが有することを特徴とするシステムである。
【0013】
本発明の更なる主題は、活性物質製剤を塗布する方法であって、
― 活性物質濃縮液の入った交換可能なカートリッジであって、電子記憶部を含む、希釈度が該記憶部に記憶される交換可能なカートリッジを利用可能にするステップと、
― 希釈剤の入った噴霧装置であって、制御部を含み、該制御部が記憶部から希釈度を読み出す手段を有する噴霧装置を利用可能にするステップと、
― ユーザが交換可能なカートリッジを噴霧装置へ接続するステップと、
― 制御部により記憶部から希釈度を読み出すステップと、
― 活性物質濃縮液および/または希釈剤の、それぞれの容器から出口の方向への流量を調整することで、活性物質濃縮液および希釈剤の混合物であって活性物質濃縮液が読み出した希釈度に従って希釈された混合物が出口から排出されるステップと、
を含む方法である。
【0014】
本発明によれば、活性物質濃縮液と希釈剤は別の容器に存在する。しかし、ユーザは手作業により自分で活性物質濃縮液を希釈する必要はない。そうではなく、混合工程は散布工程の最中に自動的に行われる。ユーザは、活性物質濃縮液と希釈剤が混合されるべき比率を気にする必要すらない。正しい混合比は、設定されるべき混合比を濃縮液カートリッジから受信して混合物が正しい混合比で出口を通って噴霧装置から出るように希釈剤および/または濃縮液の流量を調整する、制御部により設定される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るシステム、カートリッジ、噴霧装置、および方法を特徴づける個々の要素は、以下でより詳細に説明される。この説明において、本発明の個々の主題(カートリッジ、噴霧装置、システムおよび方法)の間で区別は行われない。そうではなく、以下の説明は、その文脈とは関係なく本発明のすべての主題に同様に当てはまる。
【0016】
本発明の一つの主題は携帯式噴霧装置である。「携帯式」という用語は、装置を機械の助けなしに一つの場所から別の場所へ人が輸送可能であることを意味することが意図されている。
【0017】
噴霧装置は希釈剤を保持するための容器を含む。希釈剤は、それによって濃縮液を希釈するために濃縮液と混合するのに使用される。
【0018】
濃縮液のように、希釈剤も液体である。「液体」という用語は、溶液、乳液、および懸濁液も含むと理解されたい。
【0019】
好ましい実施形態では、希釈剤は水である。
【0020】
濃縮液は好ましくは活性物質濃縮液である。「活性物質濃縮液」という用語は、より濃縮された形で存在する、使用する前に希釈しないといけない/希釈するべきである活性物質の製剤を意味すると理解される。活性物質は、生物学的作用を持つ物質または物質の混合物である。活性物質の例は農業用殺虫剤、殺虫剤、除草剤、および殺菌剤である。さらに好ましい実施形態では、濃縮液は農業用殺虫剤の濃縮液である。
【0021】
希釈剤を保持するための容器は、希釈剤に適合する任意の所望の材料から構成することができる。「適合する」という用語は、材料が希釈剤により化学的に冒されないであろうということ、また材料が希釈剤に対して不浸透性であろうということを意味する。
【0022】
容器は、過剰圧力に耐えるタンクとして具現化することができる。過剰圧力は、希釈剤をタンクから出口の方向へ送るのに使用することができる。
【0023】
好ましい実施形態では、容器は加圧することなく稼働される。容器が過剰圧力に耐える必要がないという事実は、容器を比較的薄肉のより軽い材料で製造可能であるということを意味する。
【0024】
特に好ましい一実施形態では、容器は可撓性バッグとして具現化される。そのようなバッグは、好ましくはバッグをユーザの背中へ固定してリュックサックのように運ぶことができるようにストラップを有する。
【0025】
一実施形態では、噴霧装置は、輸送中にユーザが噴霧装置の容器を含む一部を一方の手で運び、噴霧装置の出口を含む別の一部を他方の手で運べるように具現化される。
【0026】
装置は、好ましくはユーザが噴霧装置の容器を含む一部を背負って持ち運び輸送できるように具現化される。出口を含む別の一部は、変わらず一方の手で運ばれるが、第2の手は自由になる。装置は、この目的で対応するストラップを装備している。
【0027】
本発明に係る噴霧装置はまた、希釈剤を容器から出口の方向へ送る手段を有する。既に説明したように、圧力を利用して希釈剤を容器から出口の方向へ送ることができる。この圧力は、例えば手動式の、もしくは電動式の空気ポンプまたは圧力カートリッジを使って発生させることができる。
【0028】
希釈剤は、好ましくは電動式ポンプを使って出口の方向へ送られる。
【0029】
本発明に係る噴霧装置はまた、交換可能なカートリッジを噴霧装置へ可逆的に接続する手段を含む。カートリッジは濃縮液を保持する働きをする。カートリッジおよび噴霧装置は、互いに適合する、カートリッジを噴霧装置へ接続するための手段を有する。カートリッジが噴霧装置へ接続されると、カートリッジに入っている濃縮液をカートリッジから噴霧装置の一部を通して噴霧装置の出口の方向へ送ることができる。
【0030】
カートリッジの噴霧装置への接続は、例えばネジによる接続またはバヨネット接続を使ってもたらされる。
【0031】
カートリッジは交換可能であり、つまり、噴霧装置へ接続して、また取り外すことができる。そして、カートリッジは好ましくはまた取り外されて、空になった場合、適切な場合は別のカートリッジ、または新しいカートリッジと交換される。
【0032】
カートリッジは、濃縮液に対して不浸透性で、濃縮液により化学的に冒されることがないように具現化される。
【0033】
好ましい実施形態では、カートリッジは少なくともプラスチックで具現化される。プラスチックは多くの物質に対して化学的に不活性であることが知られている。またプラスチックは軽くて良好に加工することができ、事実上任意の所望の形状を作ることができる。
【0034】
好ましい実施形態では、カートリッジは加圧容器として具現化される。カートリッジには、好ましくは濃縮液だけでなく、圧力下にあって濃縮液から分離されている推進剤が入っている。カートリッジは好ましくはバルブを有する。バルブは、カートリッジが噴霧装置へ接続された場合に、好ましくは自動的に開けることができる。圧力下にある推進剤は、濃縮液をカートリッジから噴霧装置へと押し出す。噴霧装置内に位置する追加のバルブは、濃縮液がさらに流れるのを阻止する。この追加のバルブは、好ましくはユーザが塗布工程を開始した際に、通常はハンドルを動かすことで開けられる。
【0035】
好ましくは加圧容器として具現化されるカートリッジは、耐圧性であって例えばスプレー缶(例えば髭剃り用クリーム)で使用される、例えばアルミニウムまたはスズめっきをした材料で構成することができる。
【0036】
カートリッジには、バルブ(バルブバッグシステム)へ接続され、濃縮液の入ったバッグが入っていると考えられる。推進剤は濃縮液で満たされたバッグを取り囲み、濃縮液をカートリッジから押し出すのに必要な圧力を加える(ドイツ特許出願第69820260T2、米国特許出願第5505039、欧州特許出願第0718213Aを参照)。
【0037】
しかし、推進剤および濃縮液がピストンによってお互いに分離されていることも考えられる(ドイツ特許出願第3934237A1を参照)。推進剤はピストンへ圧力を加える。バルブが開いている場合、濃縮液はピストンによりカートリッジから押し出される。例えば、ZIMAピストンの使用が考えられる。
【0038】
カートリッジは使い捨てのカートリッジまたは複数回使用のカートリッジとして具現化することができる。
【0039】
カートリッジは電子記憶部を有する。
【0040】
電子記憶装置という用語は、情報を電子(半導体)構成要素内に、または電子(半導体)構成要素に基づいて記憶する、すべてのメモリ媒体を網羅する。例えば、ROM(読み出し専用メモリ)、PROM(プログラム可能型読み出し専用メモリ)、EPROM(消去可能プログラム可能型読み出し専用メモリ)、EEPROM(電気的消去可能プログラム可能型読み出し専用メモリ)、フラッシュEEPROM(例えば、スティック形状USBメモリ)、FRAM(強誘電体メモリ)、MRAM(磁気抵抗メモリ)、および相変化RAM(相変化ランダムアクセスメモリ)である。
【0041】
希釈度、またはそれを基に希釈度の決定が可能となる情報は、記憶部に記憶される。希釈度は、所望の効果を得るために濃縮液と希釈剤(通常は水)を混合させる比率を指定する。
【0042】
噴霧装置は制御部を有する。制御部はカートリッジの記憶部から希釈度の情報を読み取ることができる。記憶部を読み出す手段および記憶部そのものは、お互いに適合している。制御部と記憶部の間の通信を実現する、様々な取り得る方法がある。こうした取り得る方法の一部が以下で説明される。
【0043】
読み出すのに取り得る一つの方法は、例えばRFIDタグを備えたカートリッジを与えることである。RFIDタグは電子記憶部を有する。制御部は、RFIDタグ内の電子記憶部を読み出すためにそれに応じた手段を有する。
【0044】
この場合、読み出しは非接触形式で行われる。指定された通信形式に加えて、電子記憶部と制御部の間での、ブルートゥースや近距離通信といった他の非接触式の通信が考えられる。
【0045】
しかし、通信は接触形式でも行うことができる。例えば、カートリッジおよび噴霧装置の両方が、カートリッジが噴霧装置へ接続された際にカートリッジと噴霧装置の間での電気的または光学的な接触をもたらす電気的または光学的な接点を有し、この接点を介して制御部がカートリッジの電子記憶部にアクセスすることができるということが考えられる。
【0046】
設定されるべき希釈度に加えて、更なる情報、例えば活性物質の種類、バッチ番号、使用期限等をカートリッジの記憶部に記憶することができる。
【0047】
希釈度はカートリッジの記憶部に直接記憶されると考えられる。しかし、カートリッジおよび/またはカートリッジに入っている濃縮液に対する識別子が記憶部に記憶されることも考えられる。このような識別子は、例えば識別番号でありうる。制御部は記憶部から識別子を読み出すことができる。制御部は設定されるべき希釈度および識別子と共に様々な濃縮液が記憶されるレジスタを有し、その結果、制御部は識別子を読み出し、その結果、設定されるべき希釈度をレジスタから推測することができると考えられる。しかし、制御部は携帯電話ネットワークを介して外部のデータベースにアクセスして、識別子に基づいて外部のデータベースから設定されるべき希釈度を決定することができるとも考えられる。
【0048】
本発明に係る噴霧装置は、濃縮液をカートリッジから出口の方向へ送る手段を有する。この手段は好ましくは電動式ポンプである。
【0049】
特に好ましい一実施形態では、ステッピングモータ式定量ポンプが使用される(ドイツ特許出願第102004047584、国際出願第2012048976、ドイツ特許出願第102009006203を参照)。少量の濃縮液であっても、ステッピングモータ駆動を利用して希釈剤へ加えることができる。
【0050】
制御部は必要な希釈度または所望の希釈度を決定し、それに応じて、希釈剤および/または濃縮液の流量を調整する。ここで異なる変形も考えられるが、いくつかの変形を以下で説明する。
【0051】
例えば、希釈剤が容器から出口の方向へ送られ、流量が流量計を利用して決定されるということが考えられる。流量計は制御部へ接続することができて、希釈剤の出口の方向への流量を使って濃縮液の流量を調整するように、または濃縮液と希釈剤の間で一定の混合比が設定されるように構成することができる。したがって、希釈剤が流れる間に流量が測定され、所望の/必要な混合比(希釈度)の混合物をもたらす、正確な量の濃縮液が希釈剤へ送られる。
【0052】
「一定の混合比」という用語は、混合比が噴射時間にわたって予め規定された範囲内であることを意図している。
【0053】
もちろん、逆の変形も考えられて、濃縮液が出口の方向へ送られ、流量が測定されて、所望の/必要な希釈度を設定する正確な量の希釈剤が濃縮液へ送られる。
【0054】
また、希釈剤および濃縮液の流量が、所望の/必要な希釈度を得るために調整手段により互いに合わせられるということも考えられる。そのような場合、両者の流量は、対応するセンサを使って記録される。
【0055】
好ましい実施形態では、希釈剤は容器から出口の方向へ第1電動ポンプを使って送られる。希釈剤の流量は流量計を使って記録され、測定値が制御部へ転送される。制御部は第2電動ポンプへ接続され、濃縮液および希釈剤が所望の/必要な混合比の混合物として出口を通って噴霧装置から排出されるように、出口の方向への濃縮液の流量を調整する。
【0056】
噴射ノズルの方向へ流れる液体の単位時間あたりの量は流量計を使って記録される。「液体の量」という用語は、使用される測定方法に応じて、体積または質量を意味すると理解される。
【0057】
流量計は、好ましくは通常は閉管路で使用される、例えば磁気誘導式流量計、浮き子式流量計、超音波流量計、コリオリ質量流量計、熱量流量計、または渦流量計といったものである。しかし、測定用オリフィスまたは動圧プローブを使用することも考えられる。
【0058】
好ましい実施形態では、流量測定は差圧検出器を使って行われる。
【0059】
さらに好ましい実施形態では、羽根車輪センサが流量の測定に使用される。測定原理は、羽根車輪が、羽根車輪を駆動する流体の流量に比例した回転数を取るという事実に基づいている。回転数を計測するために永久磁石を羽根車輪へ取り付けることができて、この永久磁石が羽根車輪と共に動く。永久磁石がその上を超えて動く、ホールセンサをパルス計数装置として使用することができる。測定される単位時間当たりのパルス数は羽根車輪の回転数と比例し、したがって流体の流量と比例する。
【0060】
流量測定の詳細は、例えば以下のマニュアルに見られる:K.W.Bonfig、Technische Durchflussmessung(技術的流量測定)、Vulkan-Verlag Essen、3rd edition 2002、ISBN 3-8027-2190-X。
【0061】
活性物質濃縮液および希釈剤は、出口を通って混合物として噴霧装置から排出される。
【0062】
希釈剤および濃縮液は、対応する供給管内で出口より前で直接混ぜ合わされると考えられる。しかし、出口の上流に、希釈剤と濃縮液が2つの別の供給管を通って送られる混合室があることも考えられる。そして、希釈剤と濃縮液は混合室に送られた後に、混合物が出口を通って噴霧装置から排出される。
【0063】
希釈剤と濃縮液の完全な混合は、適切な手段を使って、例えば静的混合要素を利用して促進することができる。
【0064】
好ましくは、噴射ノズルは出口に取り付けられる。
【0065】
塗布された混合物は、噴射ノズルを使って所望の空間分布とすることができる。通常、噴射ノズルはそれを通る液体を、とりわけ液体の圧力、液体の流量、および噴射ノズルの形状に依存する特定の液滴粒度分布を持つ液滴に変える。
【0066】
噴射ノズルは好ましくは交換可能であり、その結果、ユーザは塗布および対象物に適した、噴射される材料の液滴粒度分布および空間分布が所望のものである噴射ノズルを選択することができる。
【0067】
噴射ノズルは、例えばランスもしくはピストルの形、または他の形でありうる。噴射ノズルは、好ましくはユーザが片手で保持して対象物へ向けることができるように具現化される。
【0068】
通常、噴射ノズルは散布工程を開始するためにユーザによって動かされるハンドルを有する。通常、ハンドルを動かすことで、希釈剤および濃縮液がそれぞれの容器から噴射ノズルの方向へ、そして噴射ノズルを通って対象物へと送られるようにバルブが開かれる。
【0069】
好ましい実施形態では、交換可能な噴射ノズルおよび制御部は、制御部が噴射ノズルの存在、および/または存在する噴射ノズルの種類を検知できるようにする手段を有する。例えば、噴射ノズルも接続されている場合のみ、制御部が液体をその容器から噴射ノズルの方向へ送り始めることが考えられる。噴射ノズルが接続されていない場合、例えば安全上の理由から送りは起こらない。さらに、制御部が、最適な散布結果となるように、液体を送るためのパラメータを存在する噴射ノズルの種類に適合させることが考えられる。噴射液の所望の空間分布を生成するため、流入する液体の圧力が最低であることを噴射ノズルが必要とすることが考えられる。この最低圧力は、制御部が読み取れるように噴射ノズルにおいて符号化されることがあり、その結果、ユーザはそのようなパラメータを手動で設定する必要はない。
【0070】
通常、圧力は噴射ノズルの上流で高まる。最適な散布結果を得るために、圧力を既定の範囲内にする必要があると考えられる。
【0071】
したがって、好ましい実施形態では、制御部に接続される圧力センサは噴射ノズルの上流に取り付けられる。圧力センサを利用して、制御部は圧力が常に既定の範囲内で変動するように希釈剤および/または濃縮液の流量を調整する。
【0072】
バルブは、好ましくは出口の上流に取り付けられる。バルブは手動または自動的に開けたり閉じたりすることができる。
【0073】
このバルブは、好ましくは手動で作動させることができて、その結果、ユーザは出口に取り付けられた噴射ノズルを対象物へ向けて、手動でバルブを開いて散布工程を始めることができる。
【0074】
また、バルブが自動的に開けられることも考えられる。例えば、噴霧装置が噴射ノズルの空間的な位置を検出するセンサを有し、特定の位置でバルブを自動的に開ける、または閉じることが考えられる。例えば、噴射ノズルが床面に向けられているとバルブが閉じられ、噴射ノズルが水平位置へ上げられるとバルブが開けられる、ということが考えられる。
【0075】
また、噴射ノズルが対象物に近づいた場合にバルブが自動的に開けられるということが考えられる。これは、例えばセンサまたはGPSの支援(GPS-全地球測位システム)を利用して行うことができる。
【0076】
さらに好ましい改良では、塗布される濃縮液の量が決定されて記憶される。記憶は、噴霧装置の制御部および/またはカートリッジの記憶部にて行うことができる。カートリッジ内にまだある濃縮液の残量は、好ましくは決定されて記憶される。記憶は、今度は噴霧装置の制御部および/またはカートリッジの記憶部にて行うことができる。
【0077】
好ましい実施形態では、外部のコンピュータシステムが本発明に係るシステムと関連付けられる。「外部の」という用語は、コンピュータシステムが噴霧装置の不可分の一部ではなく、カートリッジの一部でもないことを意味すると理解される。しかし、コンピュータシステムはデータ転送を行うために噴霧装置の制御部および/またはカートリッジの記憶部との通信可能な接続を許容する。データは、例えば製品データ、濃縮のために設定されるべき希釈度等を送信するために、コンピュータシステムから記憶部へ送信することができる。また、記憶部からのデータ、例えばカートリッジに入っている濃縮液の残量について、コンピュータシステムへ送信することができると考えられる。また、制御部からのデータ、例えば塗布される濃縮液の量、噴射時間および/もしくは散布箇所、ならびに/またはユーザについてのデータがコンピュータシステムへ送信されると考えられる。また、コンピュータシステムからのデータ、例えば散布操作に対する命令についてのデータが制御部へ転送されると考えられる。
【0078】
本発明は、例示的な実施形態を参照して以下でより詳細に説明されるが、本発明をこうした例に限定することは意図していない。
【0079】
図1は、本発明に係るシステムの実施形態の模式図を示す。このシステムは本発明に係る噴霧装置および本発明に係るカートリッジを含む。
【0080】
本発明に係る噴霧装置は、希釈剤(11)の入った容器(10)、出口(30)、希釈剤(11)を容器(10)から出口(30)の方向へ送る手段(15)、バルブ(40)、交換可能なカートリッジ(20)を接続する手段(22b)、カートリッジ(20)内にある濃縮液(21)をカートリッジ(20)から出口(30)の方向へ送るための電動式ポンプ(25)、容器(10)から出口(30)の方向への希釈剤(11)の流量を測定するための流量計(2)、および制御部(1)を含む。
【0081】
希釈剤(11)を容器(10)から噴霧装置(30)の方向へ送る手段(15)は、図1において単に流れの方向を示す矢印として模式的に示されている。矢印は、対応する手段が供給管のこの場所に位置する必要があるということを意味するものではない。
【0082】
出口(30)は噴射ノズルとして具現化される。希釈剤および濃縮液は、一定の混合比を持つ混合物(50)の形で噴射ノズルを通って噴霧装置から排出される。
【0083】
本発明に係るカートリッジ(20)には濃縮液(21)が入っている。カートリッジはカートリッジ(20)を噴霧装置へ可逆的に接続する手段(22a)を有する。また、本発明に係るカートリッジ(20)は記憶部(28)も有する。混合比(希釈度)は記憶部(28)に記憶される。
【0084】
制御部(1)は記憶部(28)にアクセス可能で(アクセスは破線で示されている)、そこに記憶されている混合比を読み出すことができる。
【0085】
また、制御部(1)は流量計(2)およびポンプ(25)に接続されている。バルブ(40)が(手動でまたは自動的に)開けられると、希釈剤(11)は容器(10)から出口(30)の方向へ送られる。希釈剤(11)の流量は流量計(2)を利用して記録される。制御部(1)は流量計(2)により測定される流量に基づいて、ポンプ(25)を利用して希釈剤(11)へ送られる濃縮液(21)の量を調整し、その結果、記憶部(28)から読み出された混合比が設定される。
【0086】
図2は、本発明に係る噴霧システムの好ましい実施形態を示す。
【0087】
本発明に係る噴霧装置は、希釈剤(11)を有する容器(10)、出口(30)、希釈剤(11)を容器(10)から出口(30)の方向へ送るための第1ポンプ(15)、バルブ(40)、交換可能なカートリッジ(20)を接続する手段(22b)、カートリッジ(20)内にある濃縮液(21)をカートリッジ(20)から出口(30)の方向へ送るための第2ポンプ(25)、容器(10)から出口(30)の方向への希釈剤(11)の流量を測定するための流量計(2)、供給管内の出口(30)への圧力を測定するための圧力センサ(3)、および制御部(1)を含む。
【0088】
出口(30)は噴射ノズルとして具現化される。希釈剤(11)および濃縮液(21)は、一定の混合比を持つ混合物(50)の形で噴射ノズルを通って噴霧装置から排出される。
【0089】
容器(10)は可撓性バッグとして具現化される。容器(10)は再度閉じることが可能な閉鎖部材(12)を持つ開口部を含み、閉鎖部材(12)の上から希釈剤(11)をバッグへ充填できる。
【0090】
本発明に係るカートリッジ(20)には濃縮液(21)が入っている。カートリッジはカートリッジ(20)を噴霧装置へ可逆的に接続する手段(22a)を有する。また、本発明に係るカートリッジ(20)は記憶部(28)も含む。混合比(希釈度)は記憶部(28)に記憶される。
【0091】
制御部(1)は記憶部(28)にアクセス可能で(アクセスは破線で示されている)、そこに記憶されている混合比を読み出すことができる。
【0092】
また、制御部(1)は流量計(2)、ポンプ(25)、および圧力センサ(3)に接続されている。バルブ(40)が(手動でまたは自動的に)開けられると、希釈剤(11)は容器(10)から出口(30)の方向へ送られる。希釈剤(11)の流量は流量計(2)を利用して検出される。制御部(1)は流量計(2)により測定される流量に基づいて、ポンプ(25)を利用して希釈剤(11)へ送られる濃縮液(21)の量を調整し、その結果、記憶部(28)から読み出された混合比が設定される。
【0093】
制御部(1)は、供給管内の噴射ノズルへの圧力が常に既定の範囲内にとどまるように、圧力センサ(3)を利用して希釈剤および/または濃縮液の流量を調整する。
図1
図2