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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】改変バクテリオファージ
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220404BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220404BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61K38/00
A61K48/00
A61K35/76
A61P31/04
A61K9/12
【請求項の数】 35
(21)【出願番号】P 2019503776
(86)(22)【出願日】2017-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2017058470
(87)【国際公開番号】W WO2017174810
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-26
(31)【優先権主張番号】1606319.0
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503181152
【氏名又は名称】フィコ セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー・フェアヘッド
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ウィルキンソン
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/141135(WO,A2)
【文献】特表2010-535482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0064770(US,A1)
【文献】J. Biotechnol.,2005年,vol.115, p.101-107
【文献】PLOS ONE,2013年,vol.8, no.7, e68562
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる標的細菌に感染することができる改変バクテリオファージを含み、
前記バクテリオファージは、前記標的細菌に対して毒性である毒素タンパク質をコードする毒素遺伝子を含み、溶菌性であり、複数の細菌宿主特異性を有する宿主域決定因子タンパク質を発現し、
前記複数の細菌宿主特異性を有する宿主域決定因子タンパク質が、バクテリオファージ由来の尾部繊維タンパク質であることを特徴とする細菌細胞増殖を阻害又は予防するための剤。
【請求項2】
前記毒素遺伝子が、SASPをコードするα/β低分子酸可溶性胞子タンパク質(SASP)遺伝子を含む請求項1に記載の剤。
【請求項3】
前記SASPが、SASP-Cである請求項2に記載の剤。
【請求項4】
前記SASP-Cが、バシラス・メガテリウム由来である請求項3に記載の剤。
【請求項5】
前記宿主域決定因子の細菌宿主特異性が、同一細菌種内にある請求項1から4のいずれかに記載の剤。
【請求項6】
前記毒素遺伝子が、構成的プロモーターの制御下にある請求項1から5のいずれかに記載の剤。
【請求項7】
前記構成的プロモーターが、pdhA、rpsB、pgi、fda、lasB、及びそれらと90%を超える配列同一性を有するプロモーターから選択される請求項6に記載の剤。
【請求項8】
前記構成的プロモーターが、fdaである請求項7に記載の剤。
【請求項9】
前記標的細菌の少なくとも1つが、シュードモナス、又は複数の異なるシュードモナス細菌である請求項1から8のいずれかに記載の剤。
【請求項10】
前記シュードモナス細菌が、緑膿菌を含む請求項9に記載の剤。
【請求項11】
各尾部繊維タンパク質が、前記標的細菌に結合するための受容体結合領域、及び前記受容体結合領域をバクテリオファージの本体に連結する領域を含む請求項1から10のいずれかに記載の剤。
【請求項12】
前記受容体結合領域がC末端受容体結合領域であり、前記C末端受容体結合領域を前記バクテリオファージの本体に連結する領域がN末端領域である請求項11に記載の剤。
【請求項13】
配列番号:50で表されるバクテリオファージPhi33の尾部繊維タンパク質のアミノ酸配列に基づいて、前記N末端領域が前記尾部繊維タンパク質のアミノ酸1~628を含み、前記C末端領域が前記尾部繊維タンパク質のアミノ酸629~964を含む請求項12に記載の剤。
【請求項14】
前記C末端領域が、バクテリオファージPhi33、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、JG024、NH4、PTP47、PTP92、C36、及びPTP93のいずれか1つに由来する請求項13に記載の剤。
【請求項15】
前記N末端領域が、バクテリオファージPhi33のN末端領域と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する請求項13から14のいずれかに記載の剤。
【請求項16】
前記N末端領域が、バクテリオファージPhi33、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、JG024、NH4、PTP47、PTP92、C36、及びPTP93のいずれか1つに由来する請求項15に記載の剤。
【請求項17】
前記改変バクテリオファージがバクテリオファージPTP387である請求項16に記載の剤。
【請求項18】
前記宿主域決定因子タンパク質が、複数の異なるバクテリオファージ由来のアミノ酸配列をそれぞれが含むハイブリッド宿主域決定因子タンパク質である請求項1から17のいずれかに記載の剤。
【請求項19】
前記ハイブリッド宿主域決定因子タンパク質が、C末端受容体結合領域及び前記C末端受容体結合領域を前記バクテリオファージの本体に連結するN末端領域を含むハイブリッド尾部繊維タンパク質を含み、前記C末端及びN末端領域がそれぞれ異なるバクテリオファージに由来する請求項18に記載の剤。
【請求項20】
各ハイブリッド尾部繊維タンパク質が、バクテリオファージPTP47のC末端受容体結合領域及びバクテリオファージPhi33のN末端領域を含む請求項19に記載の剤。
【請求項21】
各ハイブリッド尾部繊維タンパク質が、バクテリオファージPTP92のC末端受容体結合領域及びバクテリオファージPhi33のN末端領域を含む請求項19に記載の剤。
【請求項22】
前記バクテリオファージが、複数の異なる宿主域決定因子を発現し、各宿主域決定因子は異なる細菌宿主特異性を有する請求項1から16のいずれかに記載の剤。
【請求項23】
各宿主域決定因子タンパク質が、Phi33、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、JG024、NH4、PTP47、PTP92、C36、及びPTP93から選択されるバクテリオファージに由来する尾部繊維タンパク質を含む請求項22に記載の剤。
【請求項24】
標的細菌に感染することができ、前記標的細菌に対して毒性であるSASPをコードするSASP遺伝子を含む少なくとも1つの他の改変バクテリオファージを更に含む請求項1から23のいずれかに記載の剤。
【請求項25】
細菌感染の治療に使用するための請求項1から24のいずれかに記載の剤。
【請求項26】
前記細菌感染が、限局性臓器感染又は多臓器感染を含む請求項25に記載の剤。
【請求項27】
前記感染が、局所感染、経口感染、呼吸器感染、眼感染、又は血流感染を含む請求項25から26のいずれかに記載の剤。
【請求項28】
ヒトの治療用である請求項25から27のいずれかに記載の剤。
【請求項29】
請求項1から23のいずれかで定義された改変バクテリオファージを含むことを特徴とする細菌細胞増殖を阻害又は予防するための剤。
【請求項30】
請求項1から23のいずれかで定義された改変バクテリオファージ及びそのための担体を含むことを特徴とする細菌細胞増殖を阻害又は予防するための組成物。
【請求項31】
少なくとも2つが異なる宿主特異性を有する複数の前記改変バクテリオファージを含む請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
バクテリオファージPTP387、バクテリオファージPTP388、及びバクテリオファージPTP389を含む請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
医薬における使用のために製剤化された、局所使用のために製剤化された、又は呼吸器への送達のために製剤化された請求項30から32のいずれかに記載の組成物。
【請求項34】
細菌除染剤としての請求項1から23のいずれかで定義された改変バクテリオファージの使用。
【請求項35】
表面細菌汚染の処理、土地修復、又は水処理を含む請求項34に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変バクテリオファージ、その使用、及び前記改変バクテリオファージを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関の2014年の抗菌剤耐性の世界規模調査に関する報告では、抗生物質耐性が世界的な問題であり、地域社会や病院における一般的な感染症を治療する能力を危うくしていることが明らかにされた。迅速な対応なしでは、世界はポスト抗生物質の時代に向かっており、何十年にも亘って治療可能であった一般的な感染症や軽傷が再び死に繋がり得る可能性がある(非特許文献1)。抗生物質耐性は、軽微な手術からの患者の回復を困難にし、ますます治療上の失敗を引き起こす。事実、利用可能な全ての抗生物質に対して耐性がある、世界中を循環する細菌の幾つかの属の新たな株が存在する。そのような株は、一般に、いわゆるESKAPE病原菌、即ち、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びエンテロバクター(Enterobacter)種の範囲に入る(非特許文献2)。ESKAPE病原菌という用語は、現在、これらの細菌が米国及び欧州で大多数の院内感染を引き起こし、現在の汎抗生物質耐性感染症が発生している状況において、利用可能な抗生物質の全てではないにしても、その大部分から効果的に「エスケープ」できることを強調するために、Boucherらによって名付けられた。病院で治療される一般的な細菌によって引き起こされる重篤な感染症の患者の死亡率は、同じ非耐性細菌によって引き起こされる感染症に罹患する患者の死亡率の約2倍である。例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の感染症は、非耐性型感染症の罹患者よりも、死亡する可能性が64%高いと推定されている(非特許文献1)。グラム陽性細菌のうち、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、米国及び欧州の病院において、罹患率及び死亡率の主要原因となり続けている。しかし、より最近になって、アシネトバクター種、多剤耐性(MDR)緑膿菌、カルバペネム耐性クレブシエラ種、及び大腸菌などの幾つかの高度に耐性なグラム陰性病原体が、重篤な、時に治療不能な感染症を引き起こす主要病原体として浮上している。医学の進歩はますます複雑な処置が行われることを意味し、これらの進歩は、高齢患者数及び手術、移植、及び化学療法を受ける患者数の増加につながり、これらはいずれも、感染症のリスクにさらされる免疫不全個体数の更なる増加をもたらす(非特許文献3)。この現象は、効果的な抗生物質へのより大きな依存及び要求につながっている。
【0003】
緑膿菌は、高頻度の多剤耐性(MDR)である1つの細菌であり、その外膜の浸透性が低いことによる内因的な抵抗性を有し、細胞内に薬剤が入るのを制限し、且つ細胞内に成功裏に入った薬剤を放出する多数の流出ポンプを有する。緑膿菌は、グラム陰性菌に対する「最終手段の抗生物質」であるカルバペネムに対する耐性など、更なる耐性機構も獲得している。緑膿菌は、全ての院内感染症の約10%を引き起こし、院内感染性肺炎の第2位の原因であり、全ての院内感染症処方の50%を占めている。病院での緑膿菌感染症は、通常、患者が少なくとも2つの抗生物質で治療されることを記載する緑膿菌感染の現在の標準的ケアによる静脈内(IV)治療を必要とする。残念なことに、耐性は、患者の治療中に頻繁に発生する。過去30~40年内に開発され承認された抗生物質の数は非常に少なく、新規で安全で効果的な抗菌剤が強く求められている。
【0004】
従来の抗生物質の代替として、細菌内で広いスペクトルの抗菌活性を示すタンパク質の1つのファミリーは、α/β型の低分子酸可溶性胞子タンパク質(以下、SASPと称する)を含む。細菌内では、SASPは、細菌DNAに結合する:極低温電子顕微鏡を用いたこのプロセスの視覚化は、最も研究されたSASPがDNAを覆い、突起ドメインを形成し、B型(ピッチ3.4nm)からA型(3.18nm;A型のDNAは2.8nmのピッチを有する)にDNA構造を変化させることを示している(非特許文献4及び非特許文献5)。突出したSspCモチーフは、隣接するDNA-SspCフィラメントと相互作用し、このフィラメントを核タンパク質ヘリックスの緊密なアセンブリにパッケージする。2008年、Leeらは、10bpのDNA二本鎖に結合したα/β型SASPの2.1Å分解能での結晶構造を報告した。この複合体では、α/β型SASPはヘリックスターンヘリックスモチーフを採用し、小溝接触を介してDNAと相互作用し、約6bpのDNAと二量体として結合する。このDNAはA-B型立体構造である。このようにして、DNA複製が停止され、結合すると、SASPはDNA転写を妨げる。SASPは、非配列特異的な様式でDNAに結合する(非特許文献6)ので、細菌DNAの変異はSASPの結合に影響しない。α/β型SASPの配列は、好ましいα/β型SASPであるバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のSASP-Cを含む特許文献1の付属書1に見出すことができる。
【0005】
特許文献1は、SASP遺伝子を組み込むように改変されたバクテリオファージの抗菌剤としての使用を記載している。細菌宿主における改変バクテリオファージの効果的な産生を提供するために、特許文献1は、産生中のSASP遺伝子の発現など、産生宿主の増殖を妨害し得る因子を回避することを目的とする。この目的のために、SASP遺伝子を誘導性プロモーターの制御下に配した。好ましい構成では、溶菌プロセスに関与する遺伝子コード産物の少なくとも1つが不活性化された。
【0006】
特許文献2は、バクテリオファージの効果的な産生が達成できることを記載しており、ここでは、バクテリオファージが溶菌遺伝子を欠失し、バクテリオファージとは独立に制御され且つ外因的制御又はトランス制御(in trans regulation)が必要でなく提供されない構成的なプロモーターの制御下でSASPをコードする遺伝子を有するように改変されている。そのような改変バクテリオファージは、製造宿主株においてプロファージとして維持され、適切な誘導方法によって増幅されて、製造宿主株内に新しいファージを合成することができる。この場合、生存可能なファージを放出させるためには、製造宿主株を、外因性物質、例えば、溶菌酵素又は化学物質の添加によって溶菌させなければならない。好適なプロモーターの例は、黄色ブドウ球菌由来のfbaAプロモーターであり、これは、バシラス・メガテリウムからのSASP-C遺伝子の発現を駆動するために使用されると共に、例えば複数のコピーで存在する場合、例えば標的細胞の感染後に、SASP発現の毒性レベルを駆動する。
【0007】
SASP遺伝子を含むように改変されたバクテリオファージベクターは、一般に、SASPjectベクターと称される。SASP遺伝子が標的細菌に送達されると、これらの細菌DNAの中にSASPが生成され、細菌DNAに結合し、DNAの立体構造をB型からA型に変化させる。標的細菌細胞内に十分なSASPを産生すると、罹患細胞の生存率が低下する。
【0008】
バクテリオファージは、1920年代又は30年代以来、細菌感染症の治療薬として使用されている。一般に、バクテリオファージは、それらの細菌宿主に対して特異的である。バクテリオファージは、テンプレートファージであるものと、非テンプレートファージであるものとがある。テンプレートファージは、宿主細胞に感染することができ、宿主細胞ゲノムに組み込まれ、この状態で宿主細胞に一般的には無害なプロファージになる。非テンプレート又は「溶菌性」ファージは、新しいバクテリオファージの子孫を作り、宿主細胞の溶菌及び成熟ファージ粒子を放出することによって、溶菌の生活様式においてのみ複製することができる。有用な医薬品のためには、有効な方法で種々の異なる細菌からの感染を治療するために使用することができるバクテリオファージ組成物を提供することが課題である。これは、最も強力なバクテリオファージ組成物:バクテリオファージの混合物又は「カクテル」として広範な宿主域を有するもの(非特許文献7及び非特許文献8)を用いて達成されると一般に考えられている。野生型ファージのカクテルが、臨床的菌株に対する十分な活性スペクトルを確保するために用いられている(非特許文献9)。このようなカクテルは、最大20種類の無関係のファージからなることができる(非特許文献10)。カクテルアプローチの代替法として、大腸菌バクテリオファージK1-5が単離されている。これは、大腸菌のK1株及びK5株の両方に感染及び複製することを可能にする、1つ以上の宿主域決定因子(HRD)を有する天然の恒常的溶菌ファージである(非特許文献11)。これらのファージは非常に強力であると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO02/40678
【文献】WO2009019293
【非特許文献】
【0010】
【文献】WHO, 2014
【文献】Boucherら, 2009
【文献】Walkerら, 2009
【文献】Francesconiら, 1988
【文献】Frenkiel-Krispinら, 2004
【文献】Nicholsonら, 1990
【文献】Carlton, 1999
【文献】Kutateladze及びAdamia, 2010
【文献】Burrowes及びHarper, 2012
【文献】Abedon 2008
【文献】Schollら, 2001
【発明を実施するための形態】
【0011】
医学における細菌感染症の治療、ならびに医療及び非医学的状況における細菌細胞増殖の阻害又は予防に使用するための改善されたバクテリオファージを提供する必要性が依然として存在する。
【0012】
第1の態様において、本発明は、複数の異なる標的細菌に感染することができる改変バクテリオファージであって、前記標的細菌に対して毒性である毒素タンパク質をコードする毒素遺伝子を含み、溶菌性であり、複数の細菌宿主特異性を有する宿主域決定因子(HRD)タンパク質を発現するバクテリオファージを提供する。HRDの細菌宿主特異性は、有利には同一細菌種内にある。
【0013】
驚くべきことに、様々な異なる標的細菌に感染することができると共に、毒素タンパク質の遺伝子を有するように設計されたときに、医薬品における使用に有効である、改変バクテリオファージが産生できることが見出された。改変バクテリオファージは、細菌細胞にとって致死的であり、溶菌性であるために細胞から放出されるファージライフサイクルの完了を必要とするにもかかわらず、数回の感染及び複製によって宿主細胞内で製造することができる。
【0014】
1つの態様では、複数の細菌宿主特異性を有するHRDタンパク質は、複数の異なるバクテリオファージ由来のアミノ酸配列をそれぞれ含むハイブリッドHRDタンパク質である。改変バクテリオファージはハイブリッドHRDタンパク質を発現するので、これはファージ上に広範な宿主域を付与する。本発明に係るバクテリオファージは、例えば、密接に関連するファージからHRDを選択することにより、遺伝子工学によって作製することができる。そのような非常に強力な溶菌ファージを作製した後、毒素遺伝子を含むベクターであって、宿主細胞中で産生することができると共にインビボで抗菌剤として有効なベクターが得られるように設計することができる。
【0015】
別の態様では、バクテリオファージによって発現されるHRDタンパク質は複数の異なるHRDを含み、各HRDは異なる細菌宿主特異性を有する。この態様において、HRDは、ホモロガス、ヘテロガス、ホモロガス及びハイブリッドHRDの混合物又は(ハイブリッド)であり得る。複数の異なるHRDは、バクテリオファージに広範な宿主域を付与する。そのようなバクテリオファージは、遺伝子工学によって、例えば、同じ細菌種に感染するファージからHRDを選択することによって作製することができる。そのような非常に強力な溶菌ファージを作製した後、毒素遺伝子を含むベクターであって、宿主細胞中で産生することができると共にインビボで抗菌剤として有効なベクターが得られるように設計することができる。
【0016】
好ましい構成において、毒素遺伝子は、SASPをコードするα/β低分子酸可溶性胞子タンパク質(SASP)遺伝子を含む。1つの態様では、本明細書中で使用される「SASP」という用語は、α/β型SASP活性を有するタンパク質、即ち、DNAに結合し、その構造をB型形態からA型形態に変化させる能力を意味し、WO02/40678の付属書1に列挙されるタンパク質だけでなく、その任意のホモログ、及びα/β型SASP活性を有する他のタンパク質も包含する。別の態様では、本明細書中で使用される「SASP」という用語は、WO02/40678の付属書1に列挙される任意のタンパク質、又はWO02/40678の付属書1に列挙されるタンパク質の1つと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、98%、又は99%の配列同一性を有するホモログを意味する。別の代替態様では、本明細書中で使用される用語「SASP」は、WO02/40678の付属書1に列挙される任意のタンパク質を意味する。
【0017】
SASP遺伝子は、WO02/40678の付属書1に開示されているSASPをコードする遺伝子のいずれか1つから選択することができる。好ましい構成では、SASPはSASP-Cである。SASP-Cは、バシラス・メガテリウム由来のものであってもよい。
【0018】
SASP遺伝子は、改変バクテリオファージが標的細菌中に複数のコピーで存在する場合に、SASPの毒性レベルの産生を促進するのに有利且つ十分に強力な構成的プロモーターの制御下にあることが好ましい。有用な構成的プロモーターとしては、ピルビン酸デヒドロゲナーゼE1成分アルファサブユニットのpdhA、30Sリボソームタンパク質S2のrpsB、グルコース-6-リン酸イソメラーゼのpgi、及びフルクトースビスリン酸アルドラーゼ遺伝子プロモーターfdaが挙げられる。感染中に活性である好ましい調節プロモーターは、エラスターゼに対するlasBである。これらのプロモーターは、典型的には緑膿菌由来である。これらのプロモーター配列に対して少なくとも90%の配列同一性を示す配列を有するプロモーターもまた使用することができる。
【0019】
本発明は、一般に、様々な異なる標的細菌に感染するバクテリオファージに適用可能である。1つの構成では、標的細菌の少なくとも1つがシュードモナス(Pseudomonas)である。有利なことに、複数の異なる標的細菌は、複数の異なるシュードモナス細菌である。重要な標的は緑膿菌である。
【0020】
SASPjectベクターの要件は、最適な治療用途のために特異的に溶菌性ではないということであるので、絶対的溶菌ファージ(obligate lytic phage)は、SASPjectベクターとしての使用には適切ではないとこれまで考えられていた。非溶菌性ベクターは、SASP発現のための長い時間ウィンドウを可能にし、それにより、治療の効力を増加させる。更に、インビボでの治療時の迅速な溶菌の防止は、危険な炎症応答をもたらし得る抗生物質耐性遺伝子及び毒性のある細胞壁成分の潜在的な放出を制限するので、有利であると考えられた。
【0021】
本発明に記載のアプローチは、先に記載したファージカクテルアプローチと比較して有利である。SASPjectベクターなどの改変バクテリオファージの混合物は、異なるHRD又はハイブリッドHRDを有する以外は、構造及びゲノム配列が同一である。1つの利点は、SASPjectのミックスの製造プロセスを制御することが容易であることであり、これは製薬製剤の重要な側面である。即ち、これらが同一又は略同一の生物物理学的特性を有するので、このプロセスは、ヘテロガスHRDを有するように改変されたファージについて物質的に同一となる。別の利点は、各ベクターが構造的に同一又は類似しているので、SASPjectベクターのインビボ特性(例えば、薬物動態学/薬力学)が類似している可能性が高いことである。
【0022】
本発明の1つの側面において、複数の細菌宿主特異性を有するHRDを有する非常に強力な絶対的溶菌性バクテリオファージであるファージを作製できることが見出された。驚くべきことに、そのようなファージは、溶菌表現型を維持し、インビボで有効性を維持する向上したSASPjectベクターを作製するために使用することができ、このようなファージは、細菌宿主において適切な力価を有するまで製造することができる。WO02/40678及びWO2009019293は、1つ以上の溶菌遺伝子が除去されるように改変され、宿主細胞にプロファージとして存在するバクテリオファージからのSASPjectベクターの作製を教示している。そのようなSASPjectベクターは、プロファージ誘導によって製造され、細胞は、溶菌剤、例えば、細胞壁分解酵素又は化学物質(クロロホルムなど)の外的添加によって溶菌される。このように、最終溶菌段階が、改変されたファージ自身の溶菌タンパク質の宿主細胞における合成及び蓄積に依存しないので、細胞はファージライフサイクルの終わりまで生存可能である必要はない。SASPタンパク質の毒性及び本発明に記載の改変ファージの非常に強力な性質を考慮すると、このようなファージは、絶対的溶菌ライフサイクルを経て製造することができるSASPjectを作製するための改変に適しているとは考えられず、生存可能なSASPjectベクターを作製するために、ファージが溶菌ライフサイクルを完了することを必要とする。しかし、このようなSASPjectベクターは、宿主細胞中で適切な力価まで複製することができることが見出されている。これにより、インビボ使用に有効な適切な量のSASPjectベクターの製造が可能になる。有利には、このような改変された絶対的溶菌ファージに基づくSASPjectベクターは、感染部位で複製することができる。これは、溶菌性SASPjectに必要な用量が、インビトロで使用される場合に非溶菌性SASPjectに必要とされる用量よりも低くできることを意味する。本発明に係る溶菌性SASPjectベクターは、それらの非溶菌性対応物よりも強力であると考えられ得る。
【0023】
そのような改変に適したファージは、選択された細菌種に感染することができるファージをスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、緑膿菌に感染するファージは、代表的な緑膿菌株でプラークを形成することができるファージの環境源をスクリーニングすることによって単離することができる(Gill及びHyman, 2010)。単離されたファージについて、その全ゲノムを配列決定し、アノテートすることができる。HRDは、宿主細菌への初期の認識/結合を担うタンパク質、例えばファージT4、T5、及びT7において一般的に見出される尾部繊維タンパク質であることができる(Rakhubaら, 2010)。或いは、他のHRDは、ベースプレートタンパク質であってもよい。ファージゲノムは、BLAST検索を用いて、ファージゲノム中の全てのタンパク質の既知配列との相同性を評価することによって潜在的なHRD配列を検索することができる。
【0024】
本発明によれば、各HRDは広い宿主域を有することが好ましい。これは、多様な集合体又は臨床分離株(少なくとも合計で35種、好ましくは少なくとも40種、より好ましくは少なくとも44種、最も好ましくは>50種)の>50%に感染する能力として定義することができる。そのような分離株は、欧州、米国、アジアなどのある範囲の地理的位置に由来すべきであり、多剤耐性(MDR)株を含む多様な範囲の抗生物質耐性表現型を有するべきであり、多様な範囲の感染部位、例えば、血液、肺、及び皮膚感染から培養された菌株であるべきである。そのような分離株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)及びナショナル・コレクション・オブ・タイプ・カルチャー(NCTC)のような公的な株コレクションから得ることができる。一般に、各尾部繊維タンパク質は、標的細菌への結合のためのC末端受容体結合領域及びC末端受容体結合領域をバクテリオファージの本体に連結するN末端領域を含む。C末端及びN末端領域のそれぞれは、異なるバクテリオファージ由来のものであってもよい。1つの構成において、N末端領域は、尾部繊維タンパク質のアミノ酸1~628を含み、C末端領域は、尾部繊維タンパク質のアミノ酸629~964を含む。
【0025】
C末端領域は、バクテリオファージPhi33のC末端領域と96%以下のアミノ酸配列同一性を有することができ、バクテリオファージPhi33、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、JG024、NH-4、PTP47、C36、PTP92、及びPTP93のうちの1つに由来することができる。C末端領域におけるより低いアミノ酸配列同一性が好ましい。有利には、配列同一性は、90%未満、より有利には80%未満、好ましくは70%未満、より好ましくは60%未満、更により好ましくは50%未満、特に好ましくは40%未満、より特に好ましくは30%未満である。N末端領域は、バクテリオファージPhi33のN末端領域と少なくとも90%、有利には少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有し、バクテリオファージPhi33、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、JG024、NH-4、PTP47、C36、PTP92、及びPTP93のうちの1つに由来することができる。N末端領域及びC末端領域は、同じバクテリオファージ由来であり、ホモロガスな尾部繊維タンパク質を提供することができる。或いは、N末端領域及びC末端領域は、異なるバクテリオファージ尾部繊維タンパク質由来であり、ヘテロガスな尾部繊維タンパク質を提供することができる。ファージ尾部繊維タンパク質がホモロガスである1つの構成において、各尾部繊維タンパク質は、Phi33、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、JG024、NH-4、PTP47、C36、PTP92、及びPTP93から選択されるバクテリオファージ由来である。
【0026】
N末端領域において90%を超える配列同一性を有するファージ尾部繊維タンパク質を同定することが有利である。例えば、緑膿菌株に対して広い宿主域を有する幾つかのファージ、Phi33、PTP47、PTP92、及びC36(260株に対して分析したときに、これらのファージはいずれも>60%に感染)が、単離/同定され、それらのゲノムが配列決定されている。Phi33、PTP47、PTP92、及びC36のゲノム配列の分析は、Phi33尾部繊維タンパク質1~628と比較した2配列BLASTアラインメントの結果、それらがN末端領域に高レベルの配列同一性(>95%のアミノ酸配列同一性)を有する推定尾部繊維タンパク質をコードする遺伝子を含むことが示されている(C36(96%)、PTP47(98%)、PTP92(97%)(括弧内はアミノ酸同一性))。BLAST検索により、これらの4種のファージが、PB1、SPM1、F8、LBL3、KPP12、LMA2、SN、JG024、NH-4、及び14-1などのPB1様ファージのファミリーを共に形成する10種の他の寄託ファージゲノム配列に関連することが示されている(Ceyssensら, 2009)。これらの推定尾部繊維タンパク質の相同性を評価した。Phi33尾部繊維タンパク質と比較した2配列BLASTアラインメントの結果、LBL3(96%)、SPM-1(95%)、F8(95%)、PB1(95%)、KPP12(94%)、LMA2(94%)、SN(87%)、14-1(86%)、JG024(83%)、NH-4(83%)、C36(96%)、PTP47(86%)、PTP92(83%)(括弧内はアミノ酸同一性)であった。前記ファージ尾部繊維タンパク質の全14個のアラインメントを図13に示す。
【0027】
これらの14個のファージからアノテートされた尾部繊維タンパク質配列の分析により、タンパク質のN末端領域(Phi33尾部繊維アミノ酸1~628に対応)が、アミノ酸レベルにおいて、その全長に亘るこれらのタンパク質の配列同一性よりも更に高いレベルの配列同一性を示すことが示されている(全14種のタンパク質について96~100%の範囲である)。Phi33尾部繊維タンパク質のN末端アミノ酸1~628と比較した2配列BLASTアラインメントの結果、LBL3(96%)、SPM-1(96%)、F8(96%)、PB1(96%)、KPP12(98%)、LMA2(99%)、SN(99%)、14-1(97%)、JG024(97%)、NH-4(97%)、PTP47(98%)、C36(96%)、PTP92(97%)(括弧内はアミノ酸同一性)であった。しかし、タンパク質のC末端領域(Phi33尾部繊維アミノ酸629~964に対応)は、タンパク質の幾つかのN末端領域ほど保存されておらず、配列同一性の範囲は典型的には57~96%である。Phi33尾部繊維タンパク質のC末端629~964アミノ酸と比較した2配列BLASTアラインメントの結果、LBL3(94%)、SPM-1(93%)、F8(93%)、PB1(94%)、KPP12(87%)、LMA2(85%)、SN(65%)、14-1(65%)、JG024(57%)、NH-4(57%)、PTP47(64%)、C36(96%)、PTP92(57%)(括弧内はアミノ酸同一性)であった。よく特徴付けられた他のファージ由来のファージ尾部繊維の分析により、それらがN末端尾部ベースプレート結合領域及びC末端受容体結合領域を有することが示されている(Veesler及びCambillau、2011)。プラークアッセイ又は増殖阻害試験を用いた細菌株宿主域の実験分析において、ファージPhi33、PTP47、PTP92、及びC36は、重複はするが同一ではない宿主域を有する(表1)。細菌宿主受容体結合に関与するファージ尾部繊維のC末端領域の役割、及びこれらの4種のファージのC末端領域における配列変異、及びそれらと類似しているが同一ではない宿主域に関する確立された証拠をまとめると、C末端変異が、評価されたファージにおける宿主域に関連していると推定される。
【0028】
本発明によれば、更に、ホモロガスな尾部繊維タンパク質の遺伝子を1つのファージから採取し、これを、N末端領域における高レベルの配列同一性に基づき別のものに加えて、常在性尾部繊維に置き換えることができる。N末端領域は、ファージ尾部への結合に関与する尾部繊維と考えられており(Veesler及びCambillau, 2011)、ドナーファージの尾部繊維に関連する宿主域を有する生存可能なファージの形成を可能にする。本明細書に記載されているものなどの尾部繊維遺伝子を用いて、ホモロガスなドナーファージ尾部繊維タンパク質由来の可変C末端受容体結合領域と共に、レシピエントファージからの尾部繊維の保存されたN末端尾部結合領域を有するハイブリッド尾部繊維遺伝子を作製することができる。そのような尾部繊維ハイブリッド遺伝子は、ファージの尾部繊維を置き換えるために使用することができる。これはハイブリッド尾部繊維(レシピエントファージ由来)のN末端領域を提供し、ドナーファージの尾部繊維C末端受容体結合領域に関連する宿主域を有する生存可能なファージの形成を可能にする。設計された尾部繊維ハイブリッド遺伝子のレシピエントファージへの移植が、本発明において示されている。標準的な分子遺伝学的技法を用いて、Phi33が、以下のファージに由来するヘテロガスな尾部繊維ハイブリッドを有するように改変されている:即ち、PTP92、PTP47、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、NH-4。改変ファージはいずれも、生存可能であり、緑膿菌でプラークを形成することができることが示されている。(尾部繊維ハイブリッドの命名は、以下のようである。一例として、Phi33のN末端尾部結合領域がPTP47のC末端受容体結合領域とハイブリダイズするようなハイブリッド遺伝子は、Phi33(N)PTP47(C)である。)
【0029】
そのような改変ファージの1つでは、Phi33は、その尾部繊維遺伝子がPTP92のC末端受容体結合領域を有し、PTP93(Phi33(N)PTP92(C))を生成するように設計された。これは、35種類の緑膿菌臨床分離株に対する宿主域を試験することにより、より詳細に評価された。前駆体ファージ(Phi33)、尾部繊維ドナー(PTP92)、及びハイブリッドファージ(PTP93)の宿主域を比較すると、PTP93ハイブリッドファージの宿主域は、Phi33ではなく尾部繊維ドナーファージ(PTP92)と同等であるが、驚くべきことに、ある例では、PTP93が、PTP92が感染することができない株にPhi33の宿主域を有し、したがって、PTP93が両方のファージの宿主域を受け継ぐことが見出された(表2)。PTP93は、Phi33(74%)又はPTP92(66%)よりも広い宿主域(92%)を有する(表2)。PTP93は、未改変状態で示されるものよりも高い特性を有するので、「非常に強力である」とみなすことができる絶対的溶菌バクテリオファージの例である。このような非常に強力なファージは、SASPjectベクターを作製するための更なる改変に適している。
【0030】
当業者による配列相同性の評価によれば、Phi33は、PB1様ファージのグループに属することができ(Ceyssensら, 2009)、先に与えられた定義により広い宿主域のファージとみなすことができる。このようなファージは、先に記載した方法によって単離することができた。Phi33は、プロモーターの制御下でSASPの遺伝子を導入するための遺伝子改変に適している。このような改変されたファージは、感受性緑膿菌によって引き起こされる感染症の治療に、単独又は他の改変バクテリオファージと組み合わせて使用するのに適している。1つの構成では、本発明は、単離されたバクテリオファージPTPX31又はPTPX32にまで及ぶことはない。
【0031】
本発明に係る好ましいアプローチは、それぞれが構成的プロモーターから発現されるSASP遺伝子を有するように設計された1つ以上の絶対的溶菌ファージを使用することであり、各ファージは尾部繊維又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子以外は遺伝的に同一である。尾部繊維遺伝子又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子を作製するための尾部繊維遺伝子の改変及び提供のための好ましい絶対的溶菌ファージは、他の単離又は同定ファージの尾部繊維のN末端領域に比べて、N末端領域において≧90%のアミノ酸配列同一性を有する予測タンパク質をコードする尾部繊維遺伝子を有するファージである。
【0032】
本発明に係る別の好ましいアプローチは、それぞれが構成的プロモーターから発現されるSASP遺伝子を有するように設計された2つ以上のHRDを発現するように設計された1つ以上の絶対的溶菌ファージ(非常に強力な絶対的溶菌ファージ)を使用することであり、各ファージは異なる尾部繊維遺伝子又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子を有する以外は遺伝的に同一である。複数の尾部繊維遺伝子又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子を有するファージを作製するための尾部繊維遺伝子の改変及び提供のための好ましい絶対的溶菌ファージは、他の単離又は同定ファージの尾部繊維のN末端領域に比べて、N末端領域において≧90%のアミノ酸配列同一性を有する予測タンパク質をコードする尾部繊維遺伝子を有するファージである。
【0033】
これらの基準を満たす好ましい絶対的溶菌ファージは、Phi33、PTP92、PTP47、LBL3、SPM-1、F8、PB1、KPP12、LMA2、SN、14-1、NH-4、PTP93、JG024、PTP47、及びC36である。このようなファージは、単離されたファージのプラークを、尾部遺伝子のN末端領域の高度に保存された領域に特異的なプライマーを用いたPCRに付すことによって、簡単なPCRアッセイによって同定することができる。このようにして、完全ゲノム配列決定を行うことなしに、適切なファージを同定することができる。ファージPB1は、公的な株コレクションから取得することができる。ファージは、尾部繊維配列を生成するために単離又は提供される必要がない。これは、そのような配列は、DNA配列データベース又は他のDNA配列源で同定することができるからである。これらは、標準的な方法によって、そのような配列を合成及びクローニングするために必要な情報、又はハイブリッド尾部繊維配列を作製するために必要な情報を提供し得る。
【0034】
改変に特に好ましいファージは、PTP93、Phi33、PTP92、PTP47、及びC36である。特に好ましい非常に強力な絶対的溶菌ファージは、常在尾部繊維に代えて尾部繊維ハイブリッドPhi33(N)PTP92(C)を有するように改変されたPhi33、常在尾部繊維に代えて尾部繊維ハイブリッドPhi33(N)PTP47(C)を有するように改変されたPhi33である。本発明の1つの態様では、Phi33の好ましい非常に強力な非溶菌SASPject誘導体は、常在尾部繊維に代えて尾部繊維ハイブリッドPhi33(N)PTP92(C)を有し、且つ、緑膿菌フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ(fda)遺伝子プロモーターの制御下で緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたバシラス・メガテリウム由来のSASP-Cを有するように改変されたPhi33、常在尾部繊維に代えて尾部繊維ハイブリッドPhi33(N)PTP47(C)を有し、且つ、緑膿菌フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ(fda)遺伝子の制御下で緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたバシラス・メガテリウム由来のSASP-Cを有するように改変されたPhi33、緑膿菌フルクトースビスホスフェートアルドラーゼ(fda)遺伝子プロモーターの制御下で緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたバシラス・メガテリウム由来のSASP-Cを有するように改変されたPhi33を含む。特に好ましい態様において、本発明は、共に製剤化された3つの前記SASPjectを含む又はからなるSASPjectの混合物を提供する。
【0035】
PT3.9と命名された3つの改変バクテリオファージの混合物を構築し、その緑膿菌を殺滅する効力を試験した。この混合物は、以下のものからなる:fda-SASP-C(緑膿菌コドン最適化配列)(PTP388)を有するように改変されたPhi33(N)PTP92(C)尾部繊維を有するPhi33、fda-SASP-C(緑膿菌コドン最適化配列)(PTP389)を有するように改変されたPhi33(N)PTP47(C)尾部繊維を有するPhi33、fda-SASP-C(緑膿菌コドン最適化配列)(PTP387)を有するように改変されたPhi33(N)Phi33(C)尾部繊維を有するPhi33。
【0036】
緑膿菌の多剤耐性(MDR)臨床分離株、株3503及び参照株ATCC27853(気管単離部位、セフタジジム、ピペラシリン-タゾバクタム及びイミペネムに対する抗生物質耐性)に対する6時間の時間殺傷曲線実験で、PT3.9の有効性を試験した。簡単に述べると、5mM塩化カルシウム、5mM硫酸マグネシウム、及び0.1%グルコース(LCブロス)を添加したLuria Bertani(LB)ブロス中に培養物をセットし、37℃で増殖させた。緑膿菌の1ミリリットル当たり5×10コロニー形成単位(cfu/ml)を、PT3.9の1ml当たり3×10プラーク形成単位(pfu/ml)、又は対照(未処理培養)として余りのLCブロスと共にインキュベートした。連続希釈及びLC寒天プレート上へのプレーティングのために0、1、2、4、及び6時間でサンプルを取り出し、次いで32℃で一晩インキュベートした。両方の株について、生存細胞数は、処理1時間以内に5×10cfu/mlから検出限界(10cfu/ml)まで低下し、6時間後に生存細胞は検出されなかった(図14)。対照的に、未処理対照培養物は、両方の株の場合において、5×10~1×10cfu/mlに増殖した。これは、PT3.9の緑膿菌の臨床株を殺滅する能力を実証する。
【0037】
PT3.9の成分SASPjectであるPTP387を、溶菌遺伝子(エンドリシン)の1つを欠如している以外はPTP387に相当するSASPjectであるPTP284と比較するインビボ試験を行った。緑膿菌菌血症の免疫適格マウスモデルを用いて、2つのSASPjectベクターの効力を評価した。簡単に述べると、動物に、緑膿菌株ATCC27853の7.5log10cfuの接種物を静脈注射により感染させた。感染の2時間後に、マウスを、PTP284、PTP387、ビヒクル(緩衝液)、又はセフタジジム(50mg/kg)を静脈注射により処置した。PTP284及びPTP387を以下の用量で投与した:3×1010、1×1010、3×10、及び1×10pfu。処置後22時間で、マウスを二酸化炭素窒息により安楽死させ、肝臓を取り出し、秤量した。肝組織をトリプトン大豆ブロス(TSB)中でホモジナイズし、肝組織中の生存細胞の数を、連続希釈及びCetrimide寒天プレート上でのプレーティングによって計数した。感染の2時間後に対照(未処置)マウス群を安楽死させ、肝組織中の生存細胞を計数して、処置時の肺組織における生存細胞数を評価した。肝組織中の緑膿菌のバイオバーデンレベルの幾何平均を評価すると、PTP284及びPTP387の両方について用量反応が見られた(図15)。処置時に評価したレベルと比較して、cfu/g肝組織における対数減少を評価すると、PTP387の効力はPTP284の効力よりも大きかった。処置後22時間で、PTP387は、1×10pfuの用量で、肝組織バイオバーデンの3log減少をもたらし、一方、PTP284と同等の効果が1×1010pfuで見られた。PTP387は、3×1010pfuの用量で、PTP284に比べて、肝組織バイオバーデンの減少により大きな最大効果をもたらした。PTP387は、処置の22時間後に肝組織のバイオバーデンで5.4logの減少をもたらし、一方、PTP284は2.4logの減少をもたらした。これは、同等の非溶菌性SASPjectと比較したとき、インビボでの溶菌性SASPjectの効力の増加を実証する。
【0038】
PT3.9を含む溶菌性改変SASPjectファージの混合物を、PT3.8を含む非溶菌性改変SASPjectファージの混合物と比較するインビボ試験を行った。PT3.8の改変ファージは、PT3.9に存在する溶菌遺伝子(エンドリシン)が欠如している以外は、PT3.9のものと同一である。緑膿菌肺炎の好中球減少性マウスモデルを使用して、SASPjectファージの2つの混合物の効力を評価した。簡単に述べると、動物を、シクロホスファミド200mg/kgを感染の4日前に、感染の1日前に150mg/kgを腹腔内注射して、免疫抑制によって好中球減少症にした。動物を麻酔し、4.5×10cfuの緑膿菌株ATCC27853で鼻腔内感染させた。6頭のマウスからなる各群に各処置を施した。感染の15分後に、PT3.8及びPT3.9をエアロゾル化形態で、以下の用量にて気管支を介して投与した:即ち、1×10、3×10、1×1010、及び1.5×1010pfu。トブラマイシン(200μg)をエアロゾル化形態で対照群のマウスに投与し、別の群をプラセボ緩衝液で処置した。動物を、処置の24時間後に安楽死させ、肺組織を取り出し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中でホモジナイズした。組織ホモジネートを連続希釈し、寒天プレート上にプレーティングして、肺組織中の細菌を計数した。対照(未処置)マウス群を感染後15分で安楽死させ、肺組織中の生存細胞を計数して、処置時の組織中の生存細胞数を評価した。肺組織中のP.緑膿菌のバイオバーデンレベルの幾何平均を評価すると、PT3.8及びPT3.9の両方について用量反応が見られた(図16)。PT3.9の効力はPT3.8の効力よりも大きかった。処置時に評価したレベルと比較してcfu/g肺組織の対数減少を評価すると、処置後24時間では、PT3.9は、肺組織バイオバーデンの1×10pfu用量で>2log減少をもたらし、一方、1×1010~1.5×1010pfuの用量でPT3.8の同等の効果が見られた。したがって、PT3.9は、PT3.8よりも10倍超強力であった。
【0039】
宿主細胞中で増殖し、更なる精製に適した細菌溶菌産物を生成するPTP387の能力を、未改変ファージ(Phi33)と比較して評価した。簡単に述べると、緑膿菌株1868の一晩培養物を用いて、0.5Lのリッチブロス培地をそれぞれ含む2×1Lのバイオリアクター容器にOD600が0.05になるように植菌した。培養物をOD600=0.3~0.4になるまで増殖させ、その後、ファージPhi33又はPTP387を最終濃度で1×10pfu/mlとなるように感染させ、37℃で更に増殖させた。増殖の5時間後、培養物をベンゾナーゼで処理し、滅菌濾過した。プラークアッセイによって各ファージの濃度を決定した。PTP387について得られた溶菌産物の力価は、Phi33:2×1011pfu/ml(PTP387)及び5×1011pfu/ml(Phi33)で得られた溶菌物力価に匹敵した。PTP387の力価は、5時間で4log増加し、これは、毒性のあるSASP遺伝子が存在するにもかかわらず、幾つか感染、増殖、及び溶菌のサイクルを完了させるこのファージの能力を示している。
【0040】
PT3.9を含む改変ファージの3つ全てについて、15.5~16Lのスケールで発酵を行った。簡単に述べると、緑膿菌の一晩培養物を用いて、15.5~16Lの濃縮ブイヨン培地を含む16LバイオリアクターにOD600が0.05になるように植菌した。各培養物をOD600=0.4~0.7に増殖させた後、PTP387、PTP388、又はPTP389(PT3.9を含むSASPjectファージ)を最終濃度1×10pfu/mlまで感染させた。培養物を更に5時間培養した後、Benonzase処理を行った。サンプルを取り出し、滅菌濾過し、プラークアッセイによって分析した。各SASPjectファージについて2回の発酵を行った。PT3.9を含む改変SASPjectファージの3つ全てが、5×1011~1×1012pfu/mlまで増殖することができた。したがって、改変されたSASPjectファージの3つ全てが、毒性のあるSASP遺伝子が存在するにもかかわらず、幾つか感染、増殖、及び溶菌のサイクルを完了させることができる。
【0041】
1Lスケールでのこのような製造プロセスによって得られたPTP387の量は、マウス感染モデルにおけるこのような調製物の使用によって実証されるように、インビボでの有効な使用に適している(図15及び図16)。15.5~16Lのスケールでこのような製造プロセスによって得られたPT387、PTP388、及びPTP389のレベルは、マウス感染モデルにおいて、混合物(PT3.9)として組み合わせた場合、そのような調製物の使用によって実証されるように、有効なインビボでの使用に適している(図15及び図16)。
【0042】
別の実施形態では、、構成的プロモーターの制御下にSASP遺伝子を挿入することによって、SASPjectを作製するように絶対的溶菌ファージを改変することができ、尾部繊維遺伝子を完全に欠失させることができる。このようなファージは、尾部繊維遺伝子又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子がトランスで発現される株において増殖されなければならない。この場合、そのような株からのSASPject子孫は、増殖株に由来する単一の尾部繊維を有するが、それらのゲノムには、依然として、尾部繊維又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子が存在しないであろう。そのような幾つかの増殖株を構築することができ、同じ尾部繊維は、それぞれにおいて発現されたSASPjectを欠失した。このように、幾つかの異なるSASPject誘導体を作製することができ、その各々が、異なる尾部繊維又は尾部繊維ハイブリッドタンパク質を有する。これらのSASPjectを使用して混合物を処方することができた。
【0043】
別の実施形態では、構成的プロモーターから発現されるSASP遺伝子を有するように設計された絶対的溶菌ファージは、適切なプロモーターの制御下でハイブリッド尾部繊維タンパク質の遺伝子をトランスで有する宿主株で増殖することができる。尾部繊維ハイブリッド遺伝子の適切なプロモーターは、ファージプロモーターであることができ、特に設計された絶対的溶菌ファージ中の尾部繊維遺伝子の発現を駆動するプロモーターであることができる。他の適切なプロモーターは、それらの同族の調節タンパク質と同様に、lac及びtrpなどの誘導性プロモーターである。そのような株から得られたSASPject子孫は、非常に強力であり、トランスで及びその株自身から発現される尾部繊維ハイブリッドを有する。或いは、絶対的溶菌ファージ由来の尾部繊維遺伝子を完全に欠失させることができる。但し、この場合には、尾部繊維遺伝子又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子がトランスで発現され、派生的SASPjectの形成を可能にする増殖のために株が使用される。そのような場合、そのような株由来のSASPject子孫は、複数の尾部繊維を有するが、それらのゲノムには尾部繊維又は尾部繊維ハイブリッド遺伝子が依然として存在しないであろう。
【0044】
更なる態様において、本発明は、本明細書で定義される改変バクテリオファージ又はその混合物及びそのための担体を含む、細菌細胞増殖を阻害又は防止するための組成物を提供する。改変バクテリオファージは、標的細菌に毒性を示すSASPをコードするSASP遺伝子などの毒素遺伝子を含む、標的細菌に感染することができる少なくとも1つの他の改変バクテリオファージと混合して提供することができる。少なくとも1つの他の改変バクテリオファージは、複数の異なるHRDを発現してもしなくてもよい。このような組成物は、広範囲の用途を有することができ、したがって、意図される用途にしたがって製剤化される。前記組成物は、特にヒトの治療用の医薬品として処方することができ、細菌感染症を含む様々な状態を治療することができる。本発明にしたがって治療可能な感染症としては、血流感染、局所感染、虫歯を含む口腔感染、呼吸器感染、及び眼感染などの、限局された組織及び器官感染又は多臓器感染がある。担体は、薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤であることができる。このような組成物の成分の正確な性質及び量は、経験的に決定することができ、組成物の投与経路に一部依存する。
【0045】
レシピエントへの投与経路としては、静脈内、動脈内、経口、バッカル、舌下、鼻腔内、吸入、局所(点眼など)、筋肉内、皮下、膣内、髄腔内、及び関節内が挙げられる。使用の便宜上、本発明にしたがう投与量は、治療又は予防すべき感染の部位及び種類に依存する。呼吸器感染症は、吸入投与により治療することができ、眼感染症は点眼剤を用いて治療することができる。改変バクテリオファージを含有する口腔衛生製品も提供され、歯垢形成に関連する細菌を排除するように製剤化される本発明に係る改変バクテリオファージを含むうがい薬又は歯磨き粉を使用することができる。
【0046】
本発明に係る改変バクテリオファージ又はその混合物は、例えば、表面細菌汚染、ならびに土地修復又は水処理の処理における細菌除染剤として使用することができる。バクテリオファージは、医療従事者及び/又は患者の処置において使用することができ、例えば、手洗い用剤中の汚染除去剤として使用することができる。作業面及び装置の処理も提供され、特に病院の手続又は食品の調製に使用される。1つの特定の実施形態は、1つの個体から別の個体への細菌及び汚染の移動を予防、排除、又は低減するための局所使用のために製剤化される組成物を含む。微生物感染の伝播を制限することは、特に従来の抗生物質に対して耐性である細菌が蔓延する病院環境において重要である。このような使用のために、改変バクテリオファージは、トリス緩衝生理食塩水又はリン酸緩衝化生理食塩水に含有させることができ、又はゲル又はクリーム内に製剤化することができる。複数回使用する場合は、防腐剤を添加してもよい。或いは、生成物を凍結乾燥し、賦形剤、例えばスクロースなどの砂糖を添加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明を単なる例として、より詳細に説明する。
【0048】
図1-1】図1は、lacZΔM15を含むプラスミドの構築を示す概略図である。
図1-2】図1は、lacZΔM15を含むプラスミドの構築を示す概略図である。
図2-1】図2は、置換された尾部繊維部分を有するプラスミドの構築を示す概略図である。
図2-2】図2は、置換された尾部繊維部分を有するプラスミドの構築を示す概略図である。
図2-3】図2は、置換された尾部繊維部分を有するプラスミドの構築を示す概略図である。
図2-4】図2は、置換された尾部繊維部分を有するプラスミドの構築を示す概略図である。
図3-1】図3は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、ハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図3-2】図3は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、ハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図3-3】図3は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、ハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図3-4】図3は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、ハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図4-1】図4は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、更なるハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図4-2】図4は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、更なるハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図4-3】図4は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、更なるハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図4-4】図4は、本発明に係るSASP-Cを導入するように後に改変することができる、更なるハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するファージの構築を示す概略図である。
図5-1】図5は、lacZαマーカーが除去された、ハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するバクテリオファージの構築を示す概略図である。
図5-2】図5は、lacZαマーカーが除去された、ハイブリッド尾部繊維遺伝子を有するバクテリオファージの構築を示す概略図である。
図6-1】図6は、SASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図6-2】図6は、SASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図6-3】図6は、SASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図6-4】図6は、SASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図7-1】図7は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図7-2】図7は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図8-1】図8は、緑膿菌における発現のために最適化されたSASP-Cコドンが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図8-2】図8は、緑膿菌における発現のために最適化されたSASP-Cコドンが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図8-3】図8は、緑膿菌における発現のために最適化されたSASP-Cコドンが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図8-4】図8は、緑膿菌における発現のために最適化されたSASP-Cコドンが適切なPhi33挿入部位に導入されたプラスミドの構築を示す概略図である。
図9図9は、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたバシラス・メガテリウム株KM(ATCC 13632)由来のSASP-C遺伝子の配列を示す図である。
図10-1】図10は、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図10-2】図10は、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図10-3】図10は、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図10-4】図10は、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cが適切なPhi33挿入部位に導入されたバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図11-1】図11は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図11-2】図11は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図11-3】図11は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図11-4】図11は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図12-1】図12は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図12-2】図12は、本発明に係る更なるバクテリオファージの作製を示す概略図である。
図13-1】図13は、ファージSPM-1、F8、PB1、C36、LBL3、Phi33、LMA2、KPP12、JG024、PTP92、NH-4,14-1、PTP47、SNからの尾部繊維タンパク質のCLUSTAL 2.1多重配列アライメントである。
図13-2】図13は、ファージSPM-1、F8、PB1、C36、LBL3、Phi33、LMA2、KPP12、JG024、PTP92、NH-4,14-1、PTP47、SNからの尾部繊維タンパク質のCLUSTAL 2.1多重配列アライメントである。
図13-3】図13は、ファージSPM-1、F8、PB1、C36、LBL3、Phi33、LMA2、KPP12、JG024、PTP92、NH-4,14-1、PTP47、SNからの尾部繊維タンパク質のCLUSTAL 2.1多重配列アライメントである。
図13-4】図13は、ファージSPM-1、F8、PB1、C36、LBL3、Phi33、LMA2、KPP12、JG024、PTP92、NH-4,14-1、PTP47、SNからの尾部繊維タンパク質のCLUSTAL 2.1多重配列アライメントである。
図13-5】図13は、ファージSPM-1、F8、PB1、C36、LBL3、Phi33、LMA2、KPP12、JG024、PTP92、NH-4,14-1、PTP47、SNからの尾部繊維タンパク質のCLUSTAL 2.1多重配列アライメントである。
図14図14は、緑膿菌株3503(A)及びATCC27853(B)に対するPT3.9のインビトロでの有効性を示す24時間の時間殺滅曲線を示す。培養物を、10mMの塩化カルシウム、1mMの硫酸マグネシウム、及び1%のグルコースを添加したLuria bertani(LB)ブロス中で37℃で培養した。
図15図15は、感染のマウス菌血症モデルにおけるPT3.9のインビボでの有効性を示す。マウスをビヒクル(1mM硫酸マグネシウム、10mM塩化カルシウム、及び10%v/vグリセロールを含むトリス緩衝生理食塩水)、PTP284又はPTP387(緑膿菌感染後2時間)でIVで処置した。処置後22時間の肝組織における生存細胞数を各群(群サイズ=6)の各動物について示し、各データセットの幾何平均は水平線によって表される。
図16図16は、好中球減少性マウス肺炎モデルにおけるPT3.9のインビボでの有効性を示す。マウスを、プラセボビヒクル(1mM硫酸マグネシウム、10mM塩化カルシウム、及び10%v/vグリセロールを含むトリス緩衝生理食塩水)、PT3.9、PT3.8、又はトブラマイシン(緑膿菌感染後15分で)でIT(気管支内)処置した。処置後24時間での肺組織における生存細胞数を各群(群サイズ=6)の各動物について示し、各データセットの幾何平均は水平線によって表される。
【0049】
本発明の製品は、1つの態様において、個々のファージ内に単一の尾部繊維を提供する、又は各タイプのファージがそれぞれ単一の異なる尾部繊維を有するファージのミックスを提供する。
【0050】
これは、溶菌性のバクテリオファージを非溶菌性にするための遺伝子改変の要約であり、通常は緑膿菌30Sリボソームサブユニットタンパク質S2遺伝子(rpsB)の発現を制御するプロモーターの制御下にあるSASP-Cに加えて、多数の可能な尾部繊維変異体の1つを有する、又は通常は緑膿菌フルクトース-1,6-二リン酸アルドラーゼ遺伝子(fda)の発現を制御するプロモーターの制御下で緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cを有する。
【0051】
相同組換えを用いて遺伝子を除去し、ファージゲノムに加えることができる。外来遺伝子及びプロモーターを有するファージを構築することができる幾つかの方法があり、以下はそのような方法の例である。
【0052】
Phi33誘導体の構築のために、大腸菌/緑膿菌の広宿主域ベクター(ほんの一例であるが)を使用して、バクテリオファージゲノム中の既存の尾部繊維又は尾部繊維部分を、相同組換えによって異なるバクテリオファージ由来の代替尾部繊維又は尾部繊維部分で置き換えることができる方法が示される。また、ほんの一例であるが、緑膿菌のrpsBプロモーターの制御下にあるバシラス・メガテリウム由来のSASP-C遺伝子、又は緑膿菌のrpsBプロモーターの制御下にある緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたバシラス・メガテリウム由来のSASP-C遺伝子などの更なるDNA配列を、相同組換えによってバクテリオファージゲノムに付加することができる方法が示される。
【0053】
広宿主域大腸菌/緑膿菌ベクターにおいて、lacZα遺伝マーカーと共に、別のファージ由来の尾部繊維遺伝子又は尾部繊維遺伝子の部分を、ネイティブの尾部繊維又はその部分に隣接するPhi33DNAの2つの領域の間にクローニングすることができる。このプラスミドを緑膿菌に導入し、得られた株をPhi33に感染させることができる。後代ファージの採取後、ネイティブのPhi33尾部繊維又は尾部繊維部分が新しい尾部繊維又は尾部繊維部分及びlacZαで置き換えられた二重組換え体を、β-ガラクトシダーゼの作用を検出する発色性基質を含有する培地を用いて、適切な緑膿菌(lacZΔM15+)宿主にプラーク形成させることによって単離することができる。
【0054】
後続の工程で、lacZαマーカーをバクテリオファージゲノムから除去することができる。これは、lacZαマーカーを含まない前述の尾部繊維領域組換えプラスミドのバージョンを作製し、新しいプラスミドを適切な緑膿菌宿主株に導入し、lacZαマーカーと共に代替の尾部繊維遺伝子又はその部分を有する以前に改変されたPhi33のバクテリオファージ誘導体に感染させることによって行うことができる。新しい尾部繊維又は尾部繊維部分を保持するがlacZαが除去された組換え体は、β-ガラクトシダーゼの作用を検出する発色性基質を含有する培地を用いて適切な緑膿菌(lacZΔM15+)宿主株にプラーク形成させることによって単離することができる。
【0055】
後続の工程で、同様の相同組換えを用いて、緑膿菌rpsBプロモーターの制御下でSASP-Cの遺伝子を導入すると共に、同時に、組換えファージの同定のための大腸菌lacZαレポーター遺伝子を、Phi33、又は先に記載したPhi33誘導体のいずれか、又は類似のバクテリオファージ又は類似の誘導体に付加することができる。広宿主域大腸菌/緑膿菌ベクターにおいて、rpsBプロモーターによって制御されるSASP-C及び大腸菌lacZα対立遺伝子からなる領域を、適切な挿入部位に隣接するPhi33の2つの領域の間にクローニングすることができる。このような部位としては、例えば、Phi33尾部繊維オペロンのすぐ下流に位置する遺伝子間領域などである。このプラスミドは、適切な緑膿菌(lacZΔM15+)株、及びPhi33の感染によって得られた株、又は以前に構築されたPhi33誘導体(最初のlacZαマーカーが除去されている)に導入することができる。子ファージを採取し、二重組換え体を同定することができる。これは、緑膿菌(lacZΔM15+)上にプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼの作用を検出する発色性基質を含む培地上の新しいlacZαレポーターの獲得を探索することによって行うことができる。
【0056】
別の後続工程で、同様の相同組換えを用いて、緑膿菌fdaプロモーターの制御下で緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cの遺伝子を導入すると共に、同時に、組換えファージの同定のための大腸菌lacZαレポーター遺伝子を、Phi33、又は先に記載したPhi33誘導体のいずれか、又は類似のバクテリオファージ又は類似の誘導体に付加することができる。広宿主域大腸菌/緑膿菌ベクターにおいて、fdaプロモーターによって制御されるコドン最適化されたSASP-C及び大腸菌lacZα対立遺伝子からなる領域を、適切な挿入部位に隣接するPhi33の2つの領域の間にクローニングすることができる。このような部位としては、例えば、Phi33尾部繊維オペロンのすぐ下流に位置する遺伝子間領域などである。このプラスミドは、適切な緑膿菌(lacZΔM15+)株、及びPhi33の感染によって得られた株、又は以前に構築されたPhi33誘導体(最初のlacZαマーカーが除去されている)に導入することができる。子ファージを採取し、二重組換え体を同定することができる。これは、緑膿菌(lacZΔM15+)上にプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼの作用を検出する発色性基質を含む培地上の新しいlacZαレポーターの獲得を探索することによって行うことができる。
【0057】
これらの改変バクテリオファージは溶菌性であるため(テンプレートではない)、バクテリオファージ構築のこれらの記載された工程の別の要件は、所望の組換えバクテリオファージのlacZα表現型を補完するための、細菌ゲノム中の適切な位置に大腸菌lacZΔM15遺伝子を有する適切な宿主緑膿菌株の構築である。一例として、これらの緑膿菌株の構築は、緑膿菌中で複製することができない大腸菌ベクターを用いた相同組換えによって達成することができる。lacZΔM15導入遺伝子の挿入のためのゲノム位置は、必須遺伝子が影響を受けず、隣接する遺伝子の発現に対する極性効果によって望ましくない表現型が生成されないように選択されるべきである。一例として、そのような位置の1つは、緑膿菌株PAO1phoA相同体のすぐ下流であることができる。
【0058】
大腸菌lacZΔM15対立遺伝子は、phoAの3’末端に隣接する緑膿菌株PAO1ゲノムDNAの2つの領域の間で、緑膿菌において複製することができない大腸菌ベクターにクローニングすることができる。このプラスミドを緑膿菌に導入し、テトラサイクリン(50μg/ml)耐性の獲得にしたがって選択されたゲノムにプラスミド全体を組み込むための単一の相同組換えを受けた分離体を得ることができる。次いで、第2相同組換えを受けた分離体(lacZΔM15+)を、10%スクロースを含む培地(プラスミド骨格上に存在するsacB対抗選択マーカーを利用する)上で単離することができる。
【0059】
後続の工程で、同様の相同組換えを使用して、緑膿菌rpsBプロモーターの制御下でSASP-Cの遺伝子を導入するように改変された前述の(lacZα+)Phi33誘導体からlacZαマーカーを除去することができる。広宿主域大腸菌/緑膿菌ベクターにおいて、rpsBプロモーターによって制御されるSASP-Cからなる領域を、選択した挿入部位に隣接するPhi33の2つの領域の間でクローニングすることができる。このプラスミドは、適切な緑膿菌(lacZΔM15+)株、及び先に記載した(lacZα+)Phi33誘導体の感染によって得られた株に導入することができる。これらの誘導体は、緑膿菌rpsBプロモーターの制御下でSASP-Cの遺伝子を導入するように改変されたものである。子ファージを採取し、二重組換え体を同定することができる。これは、緑膿菌(lacZΔM15+)上にプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼの作用を検出する発色性基質を含む培地上でlacZαレポーターがないことを探索することによって同定することができる。
【0060】
別の後続工程で、同様の相同組換えを用いて、緑膿菌fdaプロモーターの制御下にある、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cのための遺伝子を導入するように改変された、先に記載した(lacZα+)Phi33誘導体からlacZαマーカーを除去することができる。広宿主域大腸菌/緑膿菌ベクターにおいて、fdaプロモーターによって制御される緑膿菌における発現のために最適化されたSASP-Cからなる領域は、選択した挿入部位に隣接するPhi33の2つの領域の間でクローニングすることができる。このプラスミドを適切な緑膿菌(lacZΔM15+)株、及び先に記載した(lacZα+)Phi33誘導体の感染によって得られた株に導入することができる。これらの誘導体は、緑膿菌fdaプロモーターの制御下にある、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cの遺伝子を導入するように改変されたものである。子ファージを採取し、二重組換え体を同定することができる。これは、緑膿菌(lacZΔM15+)上にプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼの作用を検出する発色性基質を含む培地上でlacZαレポーターがないことを探索することによって同定することができる。
【0061】
実験手順
クローニング目的のためのDNAを生成するためのPCR反応は、製造業者の指示にしたがって、プライマーの融解温度(Tm)に応じて、Herculase II Fusion DNAポリメラーゼ(Agilent Technologies)を用いて行うことができる。スクリーニング目的のためのPCR反応は、製造業者の指示にしたがって、プライマーのTmに依存して、Taq DNAポリメラーゼ(NEB)を使用して行うことができる。特段の断りがない限り、制限酵素による消化、アガロースゲル電気泳動、T4 DNAリガーゼ依存性ライゲーション、コンピテント細胞調製、及び形質転換などの一般的な分子生物学技法は、Sambrookら、(1989)に記載の方法に基づくことができる。酵素は、New England Biolabs又はThermo Scientificから購入することができる。DNAは、酵素反応物から精製し、Qiagen DNA精製キットを用いて細胞から調製することができる。プラスミドは、コンジュゲーションヘルパー株大腸菌HB101(pRK2013)によって媒介されるコンジュゲーションによって、大腸菌株から緑膿菌株に導入することができる。β-ガラクトシダーゼによる消化時に、第二鉄でキレート化されて黒色沈殿を形成するβ-ガラクトシダーゼの発色性基質、S-galは、Sigma(S9811)から購入することができる。
【0062】
プライマーは、Sigma Life Scienceから得ることができる。プライマーが制限酵素の認識配列を含む場合、PCR増幅されたDNAの消化を確実にするために、5’末端に更に2~6ヌクレオチドを付加することができる。
【0063】
特段の断りがない限り、クローニングはいずれも、文献記載されるように(Sambrookら、1989)、DNAをT4 DNAリガーゼで一晩ライゲーションし、次に、DH5α又はTOP10などの大腸菌クローニング株に形質転換し、選択培地で単離することにより達成することができる。
【0064】
大腸菌/緑膿菌広宿主域ベクター(例えば、pSM1080A)を、大腸菌と緑膿菌との間に遺伝子を導入するために使用することができる。pSM1080Aは、緑膿菌プラスミド由来の広宿主域複製起点、pRK2由来のoriT、プラスミドpRK415由来の大腸菌及び緑膿菌の両方で使用するためのtetAR選択可能マーカー、及びプラスミドpUC19由来の、高コピー数の大腸菌複製起点oriVを組み合わせることによって先に作製された。
【0065】
緑膿菌中で複製できない大腸菌ベクター、pSM1104を用いて対立遺伝子交換により、緑膿菌突然変異体を生成することができる。pSM1104は、pRK2由来のoriT、プラスミドpRK415由来の大腸菌及び緑膿菌の両方で使用するためのtetAR選択可能マーカー、プラスミドpUC19由来の、高コピー数の大腸菌複製起点oriV、及び対抗選択可能マーカーとしての使用のための、強力なプロモーターの制御下における、枯草菌(Bacillus subtilis)168株由来のsacB遺伝子を組み合わせることによって先に作製された。
【0066】
PCRによるPhi33様ファージ(PB1様ファージファミリー)の保存されたN末端尾部繊維領域の検出
【0067】
1.実験ファージ試料中のPhi33様ファージ様尾部繊維遺伝子の検出のためのプライマーは、以下のように設計することができる。
【0068】
全配列が決定されたPhi33様ファージ(Phi33、PB1、NH-4,14-1、LMA2、KPP12、JG024、F8、SPM-1、LBL3、PTP47、C36、PTP92、及びSNを含む)に由来する尾部繊維遺伝子のDNA配列を、EBIウェブサイトで入手可能なClustal Omegaを用いてアラインさせることができ、この遺伝子の5’配列にマッピングする約2kb長の高度に保存された領域を同定することができる(PB1ゲノム配列中の31680~33557、Acc.EU716414)。11個の尾部繊維遺伝子配列において100%同一の部分は、目視検査によって同定することができる。選択された完全に保存された領域を標的とし、1kb以下のPCR産物を増幅する3対のPCRプライマーを、以下のように選択することができる。即ち、B4500とB4501の対(193bp長の領域を規定する);B4502及びB4503の対(774bp長の領域を規定する);及びB4504及びB4505の対(365bp長の領域を規定する)である。
【0069】
プライマーB4500は、位置31680~31697の範囲のPB1ファージゲノム(Acc.EU716414)の配列からなる。プライマーB4501は、31851~31872の範囲のPB1ファージゲノム(Acc.EU716414)の配列からなる。プライマーB4502は、31785~31804の範囲のPB1ファージゲノム(Acc.EU716414)の配列からなる。プライマーB4503は、32541~32558の範囲のPB1ファージゲノム(Acc.EU716414)の配列からなる。プライマーB4504は、32868~32888の範囲のPB1ファージゲノム(Acc.EU716414)の配列からなる。プライマーB4505は、33213~33232の範囲のPB1ファージゲノム(Acc.EU716414)の配列からなる。

B4500(配列番号:1)
5’-GTGATCACACCCGAACTG-3’

B4501(配列番号:2)
5’-CGATGAAGAAGAGTTGGTTTTG-3’

B4502(配列番号:3)
5’-ACGCCGGACTACGAAATCAG-3’

B4503(配列番号:4)
5’-TCCGGAGACGTTGATGGT-3’

B4504(配列番号:5)
5’-CCTTTCATCGATTTCCACTTC-3’

B4505(配列番号:6)
5’-TTCGTGGACGCCCAGTCCCA-3’
【0070】
2.Phi33様尾部繊維遺伝子は、以下のように実験ファージ試料中に検出することができる。
【0071】
環境由来の単離されたファージのプラークを寒天プレートから採取し、水に加え、30分間インキュベートして、プラークソークアウト(plaque soak outs)を形成することができる。このプラークソークアウトを希釈し、その一部を、前記プライマー対の1つ又は全てを含有するPCR反応物に加え、標準的なプロトコールにしたがってPCRを行うことができる。PCR産物をエチジウムブロミド染色で1.5%アガロースゲル上で可視化し、それらのサイズを評価することができる。使用されるプライマー対について正しいサイズのPCR産物をゲル抽出し、配列決定のための外部施設に提出することができる。配列決定結果を、PCR産物の同一性を確認するために、利用可能な尾部繊維遺伝子配列と比較することができる。
【0072】
大腸菌lacZΔM15遺伝子を有する緑膿菌株を、細菌ゲノムのphoA遺伝子座のすぐ下流に生成させるプラスミドの構築
【0073】
1.緑膿菌PAO1phoAホモログの3’末端に隣接するDNAを有するpSM1104を含むプラスミドpSMX200(図1)は、以下のように構築することができる。
【0074】
緑膿菌由来のphoA遺伝子の約1kbの末端を含む領域は、プライマーB4200及びB4201(図1)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、PCR産物を洗浄し、SpeI及びBglIIで消化することができる。PA3297オープンリーディングフレームの3’末端を含む、緑膿菌由来のphoA遺伝子の下流約1kbを含む第2の領域は、プライマーB4202及びB4203(図1)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、この第2のPCR産物を洗浄し、BglII及びXhoIで消化することができる。2つの消化物を再び洗浄し、3方向ライゲーションでSpeI及びXhoIで消化したpSM1104にライゲーションして、プラスミドpSMX200(図1)を得ることができる。
【0075】
プライマーB4200は、5’SpeI制限部位(下線部)と、それに続く、緑膿菌PAO1株由来のphoAの停止コドンの下流約1kbに位置する配列とからなる(図1)。プライマーB4201は、5’BglII及びAflII制限部位(下線部)と、それに続く、緑膿菌PAO1株由来のphoA遺伝子の末端に相補的な配列とからなる(停止コドンは小文字である;図1)。プライマーB4202は、5’BglII及びNheI制限部位(下線部)と、それに続く、緑膿菌PAO1株由来のphoA遺伝子の停止コドンのすぐ下流の配列とからなる(図1)。プライマーB4203は、5’XhoI制限部位(下線部)と、それに続く、PA3297オープンリーディングフレーム内の配列、緑膿菌PAO1株由来のphoA遺伝子の下流約1kbとからなる(図1)。

プライマーB4200(配列番号:7)
5’-gataACTAGTCCTGGTCCACCGGGGTCAAG-3’

プライマーB4201(配列番号:8)
5’-gctcagatcttccttaagtcaGTCGCGCAGGTTCAG-3’

プライマーB4202(配列番号:9)
5’-aggaagatctgagctagcTCGGACCAGAACGAAAAAG-3’

プライマーB4203(配列番号:10)
5’-gataCTCGAGGCGGATGAACATTGAGGTG-3’
【0076】
2.lacプロモーターの制御下にlacZΔM15を有するpSMX200を含むプラスミドpSMX203(図1)は、以下のように構築することができる。
【0077】
lacプロモーターの制御下にあるlacZΔM15遺伝子は、プライマーB4208及びB4209を用いて大腸菌株DH10BからPCRによって増幅することができる(図1)。次いで、得られたPCR産物を、BglII及びNheIで消化し、BglII及びNheIで消化したpSMX200にライゲーションしてプラスミドpSMX203を得ることができる(図1)。
【0078】
プライマーB4208は、5’BglII制限部位(下線部)と、それに続く、lacプロモーターの配列とからなる(図1)。プライマーB4209は、5’NheI制限部位(下線部)と、それに続く、二方向転写ターミネーター及びlacZΔM15の3’末端に相補的な配列とからなる(太字で下線、図1)。

プライマーB4208(配列番号:11)
5’-gataagatctgagcgcaacgcaattaatgtg-3’

プライマーB4209(配列番号:12)
5’-gatagctagcAGTCAAAAGCCTCCGGTCGGAGGCTTTTGACTTTATTTTTGACACCAGACCAAC-3’
【0079】
細菌ゲノムのphoA遺伝子座のすぐ下流に大腸菌lacZΔM15遺伝子を導入するための緑膿菌の遺伝子改変
【0080】
1.プラスミドpSMX203(図1)を、コンジュゲーションにより緑膿菌に導入し、テトラサイクリン(50μg/ml)に対する耐性の獲得で一次組換え体を選択することができる。
【0081】
2.次に、10%スクロースを含む培地上にプレーティングすることにより、sacB仲介対抗選択によって二重組換え体を選択することができる。
【0082】
3.次に、10%スクロース上で増殖する単離体をPCRによってスクリーニングして、lacZΔM15が緑膿菌phoA遺伝子の下流に導入されたことを確認することができる。
【0083】
4.次に、単離体(PAX21)の確認後、この株は、lacZαレポーターの相補性が必要とされるバクテリオファージの更なる改変のための宿主として使用することができる。
【0084】
lacZαスクリーニングプロセスを利用して、Phi33尾部繊維の3’部分をPTP92の3’部分で置き換えるためのプラスミドの構築
【0085】
1.Phi33尾部繊維遺伝子のすぐ下流の領域を有するpSM1080Aを含むPiMX284(図2)は、以下のように構築することができる。
【0086】
Phi33尾部繊維の末端20塩基及び隣接する下流領域をカバーするPhi33配列の1kb領域は、プライマーB4222及びB4249(図2)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、得られたPCR産物を洗浄し、NheIで消化し、pSM1080A(同様にNheIで消化し、次にライゲーションの前にアルカリホスファターゼで処理したものである)にライゲーションし、プラスミドpSMX284(図2)を得ることができる。
【0087】
プライマーB4222は、5’NheI制限部位(下線部)と、それに続く、Phi33由来の配列、Phi33尾部繊維遺伝子の末端の下流約1kbとからなる(図2)。B4249は、5’NheI-KpnI-AvrII制限部位(下線部)と、それに続く、Phi33尾部繊維の3’末端及び尾部繊維オープンリーディングフレームのすぐ下流の配列に相補的な配列とからなる(図2)。

B4222(配列番号:13)
5’-gataGCTAGCATGGTTTTCACGACCATG-3’

B4249(配列番号:14)
5’-GATAGCTAGCGAGGTACCGACCTAGGTTTTCCAGCGAGTGACGTAAAATG-3’
【0088】
2.lacZαを有するpSMX284、PTP92尾部繊維遺伝子配列の3’部分、及び尾部繊維遺伝子の5’末端及びPhi33尾部繊維遺伝子のすぐ上流に位置する配列を含むPhi33配列の領域を含むpSMX285(図2)は、以下のように構築することができる。
【0089】
lacZαオープンリーディングフレームは、プライマーB4250及びB4252(図2)を用いてpUC19からPCRによって増幅することができる。PTP92尾部繊維3’部分は、プライマーB4251及びB4254(図2)を用いてPTP92からPCRによって増幅することができる。次いで、lacZαオープンリーディングフレームを、外側プライマーB4250及びB4254を用いてSOEing PCRによってPTP92尾部繊維遺伝子3’部分に連結することができる。Phi33尾部繊維遺伝子の5’末端の配列及びPhi33尾部繊維遺伝子のすぐ上流に位置する配列を含む領域は、プライマーB4253及びB4229(図2)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、このPCR産物を、外側プライマーB4250及びB4229を用いてSOEing PCRによってlacZα及びPTP92尾部繊維遺伝子3’部分を含むPCR産物に連結することができる。次いで、得られたPCR産物を洗浄し、AvrII及びKpnIで消化し、同様にAvrII及びKpnIで消化したpSMX284にライゲーションして、プラスミドpSMX285(図2)を得ることができる。
【0090】
プライマーB4250は、5’AvrII制限部位と、それに続く、lacZαオープンリーディングフレームの3’末端に相補的な配列とからなる(図2)。プライマーB4252は、PTP92尾部繊維遺伝子(下線部)の3’末端と重複する配列の5’部分と、それに続く、lacZαオープンリーディングフレームの5’末端の配列とからなる。プライマーB4251は、プライマーB4252の逆相補物である(図2)。プライマーB4254は、Phi33尾部繊維遺伝子(下線部)内の5’配列と、それに続く、PTP92尾部繊維遺伝子の3’末端内の配列とからなる(図2)。プライマーB4253は、プライマーB4254の逆相補物である。プライマーB4229は、5’KpnI制限部位(下線部)と、それに続く、Phi33の尾部繊維遺伝子の約1kb上流領域に相補的な配列とからなる(図2)。

プライマーB4250(配列番号:15)
5’-GataCCTAGGttagcgccattcgccattc-3’

プライマーB4252(配列番号:16)
5’-CTATTCCAGCGGGTAACGTAAAatgaccatgattacggattC-3’

プライマーB4251(配列番号:17)
5’-GaatccgtaatcatggtcatTTTACGTTACCCGCTGGAATAG-3’

プライマーB4254(配列番号:18)
5’-CAAGCGGGCCGGCTGGTCTCTCGGCAATAACTCCTATGTGATC-3’

プライマーB4253(配列番号:19)
5’-GATCACATAGGAGTTATTGCCGAGAGACCAGCCGGCCCGCTTG-3’

プライマーB4229(配列番号:20)
5’-gataGGTACCGCGACCGGTCTGTACTTC-3’
【0091】
尾部繊維遺伝子の3’部分をPTP92の3’部分で置き換えるためのPhi33の遺伝子改変
【0092】
1.プラスミドpSMX285(図2図3)を、コンジュゲーションにより緑膿菌株PAX21に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA80株を生成することができる。
【0093】
2.PTA80株をファージPhi33に感染させ、子ファージを回収することができる。
【0094】
3.Phi33尾部繊維遺伝子の3’末端がPTP92の3’末端で置換され、lacZαが付加された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性を示す黒色プラークを探索することによって同定することができる。
【0095】
4.尾部繊維遺伝子が置換されており、lacZαが存在することを確認するためにPCRを行うことができる。
【0096】
5.確認された単離物(PTPX81;図3)の同定の後、この単離物は、更なる使用の前に、緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0097】
lacZαスクリーニングプロセスを利用して、Phi33尾部繊維の3’部分をPTP47の3’部分で置き換えるためのプラスミドの構築
【0098】
1.lacZαを有するpSMX284、PTP47尾部繊維遺伝子配列の3’部分、及び尾部繊維遺伝子の5’末端及びPhi33尾部繊維遺伝子のすぐ上流に位置する配列を含むPhi33配列の領域を含むpSMX286(図2)は、以下のように構築することができる。
【0099】
lacZαオープンリーディングフレームは、プライマーB4250及びB4258(図2)を用いてpUC19からPCRによって増幅することができる。PTP47尾部繊維の3’部分は、プライマーB4259及びB4260を用いてPTP47からPCRによって増幅することができる(図2)。次に、lacZαオープンリーディングフレームを、外側プライマーB4250及びB4260を用いてSOEing PCRによってPTP47尾部繊維遺伝子3’部分に連結することができる。Phi33尾部繊維遺伝子の5’末端の配列及びPhi33尾部繊維遺伝子のすぐ上流に位置する配列を含む領域は、プライマーB4261及びB4229(図2)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、このPCR産物を、外側プライマーB4250及びB4229を用いるSOEing PCRによって、lacZα及びPTP47尾部繊維遺伝子の3’部分を含むPCR産物に連結することができる。次いで、得られたPCR産物を洗浄し、AvrII及びKpnIで消化し、同様にAvrII及びKpnIで消化したpSMX284にライゲーションして、プラスミドpSMX286(図2)を得ることができる。
【0100】
プライマーB4250は、5’AvrII制限部位と、それに続く、lacZαオープンリーディングフレームの3’末端に相補的な配列とからなる(図2)。プライマーB4258は、PTP47尾部繊維遺伝子(下線部)の3’末端と重複する配列の5’部分と、それに続く、lacZαオープンリーディングフレームの5’末端の配列とからなる。プライマーB4259は、プライマーB4258の逆相補物である(図2)。プライマーB4260は、Phi33尾部繊維遺伝子(下線部)内の5’配列と、それに続く、PTP47尾部繊維遺伝子の3’末端内の配列とからなる(図2)。プライマーB4261は、プライマーB4260の逆相補物である。プライマーB4229は、5’KpnI制限部位(下線部)と、それに続く、Phi33の尾部繊維遺伝子の上流約1kbの領域に相補的な配列とからなる(図2)。

プライマーB4250(配列番号:15)
5’-GataCCTAGGttagcgccattcgccattc-3’

プライマーB4258(配列番号:21)
5’-CTTTTCCAGCGAGTGACGTAAAatgaccatgattacggattC-3’

プライマーB4259(配列番号:22)
5’-gaatccgtaatcatggtcatTTTACGTCACTCGCTGGAAAAG-3’

プライマーB4260(配列番号:23)
5’-CAAGCGGGCCGGCTGGTCTCTCGGCAATAACTCCTATGTGATC-3’

プライマーB4261(配列番号:24)
5’-GATCACATAGGAGTTATTGCCGAGAGACCAGCCGGCCCGCTTG-3’

プライマーB4229(配列番号:20)
5’-gataGGTACCGCGACCGGTCTGTACTTC-3’
【0101】
尾部繊維遺伝子の3’部分をPTP47の3’部分と置換するためのPhi33の遺伝子改変
【0102】
1.プラスミドpSMX286(図2図4)を、コンジュゲーションにより緑膿菌PAX21株に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA81株を産生することができる。
【0103】
2.PTA81株をファージPhi33に感染させ、子ファージを回収する。
【0104】
3.Phi33尾部繊維遺伝子の3’末端がPTP47のもので置き換えられ、lacZαが付加された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性を示す黒色プラークを探索することによって同定することができる。
【0105】
4.尾部繊維遺伝子が置換されており、lacZαが存在することを確認するためにPCRを行うことができる。
【0106】
5.確認された単離物(PTPX82;図4)の同定の後、この単離物は、更なる使用の前に、緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0107】
PTPX81からlacZαマーカーを除去するためのプラスミドの構築
【0108】
1.PTP92尾部繊維遺伝子の3’部分及びPhi33尾部繊維遺伝子のすぐ下流に位置するPhi33配列の領域を有するpSM1080Aを含むpSMX287(図5)は、以下のように構築することができる。
【0109】
Phi33尾部繊維のすぐ下流に位置するPhi33配列の領域は、プライマーB4222及びB4255(図5)を用いるPCRによって増幅することができる。PTP92尾部繊維遺伝子の3’末端は、プライマーB4256及びB4257(図5)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、これらの2つのPCR産物を、2つの外側プライマーB4222及びB4257を用いるSOEing PCRによって連結することができる。次いで、得られたPCR産物を洗浄し、NheIで消化し、再度洗浄し、pSM1080A(同様にNheIで消化し、ライゲーション前にアルカリホスファターゼで処理したもの)にライゲーションして、プラスミドpSMX287(図5)を得ることができる。
【0110】
プライマーB4255は、PTP92尾部繊維遺伝子の末端の5’部分(下線部)と、それ続く、Phi33尾部繊維遺伝子のすぐ下流の配列とからなる(図5)。プライマーB4256は、プライマーB4255の逆相補体である(図5)。プライマーB4257は、5’NheI制限部位(下線部)と、それに続く、PTP92テイル繊維遺伝子の末端1kbの配列とからなる(図5)。

プライマーB4255(配列番号:25)
5’-CTATTCCAGCGGGTAACGTAAAATGAAATGGACGCGGATCAG-3’

プライマーB4256(配列番号:26)
5’-CTGATCCGCGTCCATTTCATTTTACGTTACCCGCTGGAATAG-3’

プライマーB4257(配列番号:27)
5’-gataGCTAGCGGCAATAACTCCTATGTGATC-3’
【0111】
lacZαマーカーを除去するためのPTPX81の遺伝子改変
【0112】
1.プラスミドpSMX287(図5図3)を、コンジュゲーションにより緑膿菌株PAX21に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA82株を生成することができる。
【0113】
2.PTA82株をファージPTPX81に感染させ、子ファージを回収する。
【0114】
3.lacZαマーカーが除去された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性がないことを示す白色プラークを探索することによって同定することができる。
【0115】
4.尾部繊維遺伝子が保持されていること、及びlacZαが除去されていることを確認するためにPCRを行うことができる。
【0116】
5.確認された単離物(PTPX83;図3)の同定の後に、この単離物を、更なる使用の前に、緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0117】
PTPX82からlacZαマーカーを除去するためのプラスミドの構築
【0118】
1.PTP47尾部繊維遺伝子の3’部分及びPhi33尾部繊維遺伝子のすぐ下流に位置するPhi33配列の領域を有するpSM1080Aを含むpSMX288(図5)は、以下のように構築することができる。
【0119】
Phi33尾部繊維のすぐ下流に位置するPhi33配列の領域は、プライマーB4222及びB4262(図5)を用いるPCRによって増幅することができる。PTP47尾部繊維遺伝子の3’末端は、プライマーB4263及びB4264(図5)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、これらの2つのPCR産物を、2つの外側プライマーB4222及びB4264を用いてSOEing PCRによって連結することができる。次いで、得られたPCR産物を洗浄し、NheIで消化し、再度洗浄し、pSM1080A(同様にNheIで消化し、ライゲーション前にアルカリホスファターゼで処理したもの)にライゲーションして、プラスミドpSMX288(図5)を得ることができる。
【0120】
プライマーB4262は、PTP47尾部繊維遺伝子の末端の5’部分(下線部)と、それに続く、Phi33尾部繊維遺伝子のすぐ下流の配列とからなる(図5)。プライマーB4263は、プライマーB4262の逆相補物である(図5)。プライマーB4264は、5’NheI制限部位(下線部)と、それに続く、PTP47尾部繊維遺伝子の末端1kbの配列とからなる(図5)。

プライマーB4262(配列番号:28)
5’-CTTTTCCAGCGAGTGACGTAAAATGAAATGGACGCGGATCAG-3’

プライマーB4263(配列番号:29)
5’-CTGATCCGCGTCCATTTCATTTTACGTCACTCGCTGGAAAAG-3’

プライマーB4264(配列番号:30)
5’-gataGCTAGCGGCAATAACTCCTATGTGATC-3’
【0121】
lacZαマーカーを除去するためのPTPX82の遺伝子改変
【0122】
1.プラスミドpSMX288(図5図4)を、コンジュゲーションにより緑膿菌PAX21株に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA83株を生成することができる。
【0123】
2.PTA83株をファージPTPX82に感染させ、子ファージを回収する。
【0124】
3.lacZαマーカーが除去された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性がないことを示す白色プラークを探索することによって同定することができる。
【0125】
4.尾部繊維遺伝子が保持されていること、及びlacZαが除去されていることを確認するためにPCRを行うことができる。
【0126】
5.確認された単離物(PTPX84;図4)の同定の後に、この単離物を、更なる使用の前に、緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0127】
Phi33、PTPX83、PTPX84、及び類似のファージのファージゲノムに、rpsB-SASP-C及びlacZαを導入するためのプラスミドの構築
【0128】
1.rpsB-SASP-Cの選択された挿入部位(例えば、尾部繊維オペロンのすぐ下流の遺伝子間領域など)に隣接するPhi33の領域を含むpSM1080Aを含むプラスミドpSMX251(図6)は、以下のように構築することができる。
【0129】
選択された挿入部位のすぐ下流のPhi33配列の領域は、プライマーB4900及びB4901(図6)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、このPCR産物を洗浄し、NheI及びAvrIIで消化することができる。選択された挿入部位のすぐ上流のPhi33配列の領域は、プライマーB4902及びB4903(図6)を用いるPCRによって増幅することができる。次いで、この第2のPCR産物を洗浄し、AvrII及びNheIで消化することができる。次いで、2つのPCR産物消化物を再度洗浄し、NheIで消化し、ライゲーション前にアルカリホスファターゼで処理したpSM1080Aにライゲーションすることができる。2つのPCR産物の各々の1つのインサートを有するクローンは、プライマーB4900及びB4903を用いるPCR、及び精製された推定クローンのNheI制限消化分析によって同定し、プラスミドpSMX251(図6)を同定することができる。
【0130】
プライマーB4900は、5’NheI制限部位(下線部)と、それに続く、尾部繊維オペロンのすぐ下流の遺伝子間領域内にあるPhi33挿入部位の約500bp下流に位置するPhi33配列とからなる(図6)。プライマーB4901は、5’AvrII及びXhoI制限部位(下線部)と、それに続く、Phi33挿入部位のすぐ下流に位置する配列に相補的なPhi33の配列とからなる(図6)。プライマーB4902は、5’AvrII制限部位(下線部)と、それに続く、挿入部位のすぐ上流に位置するPhi33配列とからなる(図6)。プライマーB4903は、5’NheI部位(下線部)と、それに続く、Phi33挿入部位の約500bp上流に位置する配列に相補的なPhi33配列とからなる(図6)。

プライマーB4900(配列番号:31)
5’ gatagctagcTTTCTCGTTTTAATGTCG 3’

プライマーB4901(配列番号:32)
5’ gataCCTAGGtgCTCGAGTATTCGCCCAAAAGAAAAG 3’

プライマーB4902(配列番号:33)
5’ gataCCTAGGTCAGGAGCCTTGATTGATC 3’

プライマーB4903(配列番号:34)
5’ gatagctagcGGACTGGTAAGTCTGGTG 3’
【0131】
2.rpsBプロモーターの制御下にあるSASP-Cを含むpSMX251を含むプラスミドpSMX252(図6)は、以下のように構築することができる。
【0132】
バシラス・メガテリウム株KM(ATCC13632)由来のSASP-C遺伝子は、プライマーB4904及びB4270を用いるPCRによって増幅することができる(図6)。次いで、得られたPCR産物をXhoI及びNcoIで消化することができる。rpsBプロモーターは、プライマーB4271及びB4905を用いて緑膿菌からPCRによって増幅することができる(図6)。次いで、得られたPCR産物をNcoI及びAvrIIで消化することができる。次いで、2つの消化したPCR産物を洗浄し、XhoI及びAvrIIで消化したpSMX251にライゲーションして、プラスミドpSMX252(図6)を得ることができる。
【0133】
プライマーB4904は、5’XhoI制限部位、それに続く5塩基、次いで、二方向転写ターミネーター、次いで、バシラス・メガテリウム菌株KM(ATCC 13632)由来のSASP-C遺伝子の3’末端に相補的な配列(太字下線;図6)を含む。プライマーB4270は、5’NcoI制限部位(下線部)、それに続く、バシラス・メガテリウム株KM(ATCC 13632)由来のSASP-C遺伝子の5’末端の配列を含む(図6)。プライマーB4271は、5’NcoI制限部位(下線部)、それに続く、緑膿菌PAO1由来のrpsBプロモーターの末端に相補的な配列を含む(図6)。プライマーB4905は、5’AvrII制限部位(下線部)、それに続く、緑膿菌PAO1由来のrpsBプロモーターの開始配列を含む(図6)。

プライマーB4904(配列番号:35)
5’-gataCTCGAGGATCTAGTCAAAAGCCTCCGACCGGAGGCTTTTGACTttagtacttgccgcctag-3’

プライマーB4270(配列番号:36)
5’-gataccATGGcaaattatcaaaacgcatc-3’

プライマーB4271(配列番号:37)
5’-gataCCATggTAGTTCCTCGATAAGTCG-3’

プライマーB4905(配列番号:38)
5’-gataCCTAGGCCTAGGgatctGACCGACCGATCTACTCC-3’
【0134】
3.lacZαを含むpSMX252を含むpSMX253(図6)は、以下のように構築することができる。
【0135】
lacZαは、プライマーB4906及びB4907を用いてPCR増幅することができる(図6)。次いで、得られたPCR産物をXhoIで消化し、同様にXhoIで消化し、ライゲーション前にアルカリホスファターゼで処理したpSMX252にライゲーションして、pSMX253を得ることができる(図6)。
【0136】
プライマーB4906は、5’XhoI制限部位(下線部)と、それに続く、lacZαの3’末端に相補的な配列とからなる(図6)。プライマーB4907は、5’XhoI制限部位(下線部)と、それに続く、lacZαの発現を駆動するlacプロモーターの配列とからなる(図6)。

プライマーB4906(配列番号:39)
5’-gataCTCGAGttagcgccattcgccattc-3’

プライマーB4907(配列番号:40)
5’-gataCTCGAGgcgcaacgcaattaatgtg-3’
【0137】
rpsB-SASP-C及びlacZαを導入するための、Phi33、PTPX83、PTPX84、及び類似のファージの遺伝子改変
【0138】
1.プラスミドpSMX253(図6図3図4図7)を、コンジュゲーションにより緑膿菌PAX21株に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA51株を生成することができる。
【0139】
2.PTA51株は、個々の実験において、ファージPhi33、又はPTPX83、又はPTPX84、又は他の類似のファージで感染させ、子ファージを回収することができる。
【0140】
3.rpsB-SASP-C及びlacZαが選択された挿入部位に導入された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性を示す黒色プラークを探索することによって同定することができる。
【0141】
4.rpsB-SASP-C及びlacZαが存在することを確認するためにPCRを行うことができる。
【0142】
5.確認された単離物(例えば、PTPX85(図7)、PTPX86(図3)、PTPX87(図4))を同定した後、更なる使用の前に、単離体を緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0143】
PTPX85、PTPX86、PTPX87、及びPhi33の類似の誘導体からlacZαマーカーを除去するための遺伝子改変
【0144】
1.プラスミドpSMX252(図6図3図4図7)を、コンジュゲーションにより緑膿菌PAX21株に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA85株を生成することができる。
【0145】
2.PTA85株は、個々の実験において、ファージPTPX85、又はPTPX86、又はPTPX87、又は他の類似のファージで感染させ、子ファージを回収することができる。
【0146】
3.lacZαマーカーが除去された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性がないことw示す白色プラークを探索することによって同定することができる。
【0147】
4.rpsB-SASP-Cが依然として存在することを確認しつつ、lacZαマーカーの除去を確認するためにPCRを行うことができる。
【0148】
5.確認された単離物(例えば、PTPX88(図7)、PTPX89(図3)、PTPX90(図4))を同定した後、更なる使用の前に、単離体を緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0149】
Phi33、PTPX83、PTPX84、及び類似のファージのゲノム内の尾部繊維オペロンのすぐ下流の遺伝子間領域に位置する、選択された挿入部位にfda-SASP-C(コドン最適化)及びlacZαを導入するためのプラスミドの構築
【0150】
1.fdaプロモーターの制御下で、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたSASP-Cを含むpSMX251を含むプラスミドpSMX254(図8)は、以下のように構築することができる。
【0151】
バシラス・メガテリウム株KM(ATCC 13632)由来のSASP-C遺伝子は、緑膿菌(図9)における発現のためにコドン最適化され、インビトロで合成することができる。次いで、コドン最適化されたSASP-C遺伝子を、プライマーB4312及びB4313を用いるPCRによって増幅することができる(図8)。fdaプロモーターは、プライマーB4314及びB4315(図8)を用いて緑膿菌からPCRによって増幅することができる。次いで、得られた2つのPCR産物を、外側プライマーB4312及びB4314(図8)を用いたオーバーラップ伸長(SOEing)PCRによるスプライシングによって連結することができる。次に、得られたfdaコドン最適化SASP-C-ターミネーターPCR産物をXhoI及びAvrIIで消化し、洗浄し、XhoI及びAvrIIで消化したpSMX251にライゲーションして、プラスミドpSMX254(図8)を得ることができる。
【0152】
プライマーB4312は、5’XhoI制限部位、それに続く、二方向性転写ターミネーター、次いで、緑膿菌における発現のためにコドン最適化されたバシラス・メガテリウム株KM(ATCC 13632)由来のSASP-C遺伝子の3’末端に相補的な配列(下線、太字;図8)を含む。プライマーB4313は、緑膿菌PAO1由来のfdaプロモーターの3’末端の配列(太字)、それに続く、コドン最適化されたSASP-C遺伝子の5’末端の配列を含む。プライマーB4314は、コドン最適化SASP-C遺伝子の5’末端に相補的な配列、それに続く、緑膿菌PAO1由来のfdaプロモーターの3’末端に相補的な配列を含む(図8)。プライマーB4315は、5’AvrII制限部位(下線部)、それに続く、緑膿菌PAO1由来のfdaプロモーターの開始配列を含む(図8)。

プライマーB4312(配列番号:41)
5’-gataCTCGAGAGTCAAAAGCCTCCGACCGGAGGCTTTTGACTTCAGTACTTGCCGCCCAG-3’

プライマーB4313(配列番号:42)
5’-GATTGGGAGATACGAGAACCATGGCCAACTACCAGAACGC-3’

プライマーB4314(配列番号:43)
5’-GCGTTCTGGTAGTTGGCCATGGTTCTCGTATCTCCCAATC-3’

プライマーB4315(配列番号:44)
5’-GATACCTAGGAACGACGAAGGCCTGGTG-3’
【0153】
3.lacZαを含むpSMX254を含むpSMX255(図8)は、以下のように構築することができる。
【0154】
lacZαは、プライマーB4906及びB4907を用いてPCR増幅することができる(図8)。次いで、得られたPCR産物をXhoIで消化し、同様にXhoIで消化し、ライゲーション前にアルカリホスファターゼで処理したpSMX254にライゲーションし、pSMX255を得ることができる(図8)。
【0155】
プライマーB4906は、5’XhoI制限部位(下線部)と、それに続く、lacZαの3’末端に相補的な配列とからなる(図8)。プライマーB4907は、5’XhoI制限部位(下線部)と、それに続く、lacZαの発現を駆動するlacプロモーターの配列とからなる(図8)。

プライマーB4906(配列番号:40)
5’-gataCTCGAGttagcgccattcgccattc-3’

プライマーB4907(配列番号:41)
5’-gataCTCGAGgcgcaacgcaattaatgtg-3’
【0156】
fdaコドン最適化SASP-C及びlacZαを導入するための、Phi33、PTPX83、PTPX84、及び類似のファージの遺伝子改変
【0157】
1.プラスミドpSMX255(図8図10図11図12)を、コンジュゲーションにより緑膿菌PAX21株に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA86株を生成することができる。
【0158】
2.株PTA86は、個々の実験において、ファージPhi33、又はPTPX83、又はPTPX84、又は他の類似のファージに感染させ、子ファージを回収することができる。
【0159】
3.fdaコドン最適化SASP-C及びlacZαが導入された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性を示す黒色プラークを探索することによって同定することができる。
【0160】
4.fdaコドン最適化SASP-C及びlacZαが存在することを確認するためにPCRを行うことができる。
【0161】
5.確認された単離物(例えば、PTPX91(図12)、PTPX92(図10)、PTPX93(図11))を同定した後、更なる使用の前に、単離体を緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0162】
PTPX91、PTPX92、PTPX93、及びPhi33の類似の誘導体からlacZαマーカーを除去するための遺伝子改変
【0163】
1.プラスミドpSMX254(図8図10図11図12)を、コンジュゲーションにより緑膿菌PAX21株に導入し、テトラサイクリン耐性(50μg/ml)に基づいてトランスコンジュガントを選択し、PTA87株を生成することができる。
【0164】
2.株PTA87は、個々の実験において、ファージPTPX91、又はPTPX92、又はPTPX93、又は他の類似のファージに感染させ、子ファージを回収することができる。
【0165】
3.lacZαマーカーが除去された組換えファージは、工程(2)由来の溶菌物を緑膿菌PAX21株に、S-galを含有する培地上でプラーク形成させ、β-ガラクトシダーゼ活性がないことを示す白色プラークを探索することによって同定することができる。
【0166】
4.fdaコドン最適化SASP-Cが依然として存在することを確認しつつ、lacZαマーカーの除去を確認するためにPCRを行うことができる。
【0167】
5.確認された単離物(例えば、PTP387(図12)、PTP388(図10)、PTP389(図11))を同定した後、更なる使用の前に、単離体を緑膿菌PAX21株で更に2回プラーク精製することができる。
【0168】
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WHO (2014) Antimicrobial resistance: global report on surveillance 2014.
【0169】
表1.緑膿菌の44種の欧州臨床分離株に対するPhi33、PTP92、C36、及びPTP47の宿主域。
細菌を植菌した軟寒天オーバーレイプレート上に10μlの粗ファージ溶菌物を滴下することにより、各ファージに対する株の感受性を試験した。プレートを32℃で一晩増殖させ、植菌箇所でのクリアランスゾーンを評価することにより、各株の各ファージに対する感受性をスコア化した。細菌叢のクリアランスによって観察されるように、ファージが増殖を阻害した場合には、株は、感受性(+)であると示し、増殖の阻害が観察されない場合には、株は、非感受性(-)であると示した。
【表1】
【0170】
表2.緑膿菌の35種の欧州臨床分離株に対するPhi33、PTP92、及びPTP93の宿主域。
細菌を植菌した軟寒天オーバーレイプレート上に10μlの粗ファージ溶菌物を滴下することにより、各ファージに対する株の感受性を試験した。プレートを32℃で一晩増殖させ、植菌箇所でのクリアランスゾーンを評価することにより、各株の各ファージに対する感受性をスコア化した。細菌叢のクリアランスによって観察されるように、ファージが増殖を阻害した場合には、株は、感受性(+)であると示し、増殖の阻害が観察されない場合には、株は、非感受性(-)であると示した。
【表2】
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図13-4】
図13-5】
図14
図15
図16
【配列表】
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