(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】締結具
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20220404BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20220404BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20220404BHJP
A44B 18/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F16B19/00 L
F16B5/07 H
F16B5/06 A
A44B18/00
F16B19/00 F
(21)【出願番号】P 2019510796
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2017071302
(87)【国際公開番号】W WO2018037068
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-06-29
(32)【優先日】2016-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170996
【氏名又は名称】アプリックス
【氏名又は名称原語表記】APLIX
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンガーナー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ウッドリング、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、スコット
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-203480(JP,A)
【文献】特開昭47-028359(JP,A)
【文献】実開平04-031511(JP,U)
【文献】特表2011-503489(JP,A)
【文献】米国特許第07337505(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0066266(US,A1)
【文献】特開2003-322130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 17/00- 19/14
F16B 5/00- 5/12
A44B 13/00- 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持面および前記把持面と反対側の背面を有する把持部と、
前記把持部に固定されるアンカー近位端およびアンカー遠位端を備えるアンカー部であって、基材上の装着位置に前記アンカー部を挿入するのに必要な挿入力より大きい保持力で締結要素を前記基材に固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部と、
前記基材の貫通孔内で前記締結要素を回すと、前記締結要素が所定の点を超えてさらに回るのを防止し、前記締結要素が回って挿入位置に戻るのを防止することができるように構成された回転係止手段と、
を備える締結要素であって、
前記少なくとも1つの弾性クリップは、
前記アンカー遠位端に近接して配置されたクリップ近位端および前記アンカー近位端に近接して配置されたクリップ遠位端と、
前記クリップ近位端から延在し、前記アンカー部を前記基材の受容部に挿入する間に前記アンカー部の長手方向軸に向けて前記少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、
前記圧縮部の末端から前記アンカー部の前記長手方向軸に向かって延在する肩部と、
前記少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて前記基材に保持力を加えるように構成された保持部であって、前記アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、前記肩部の近くの位置から前記クリップ遠位端に向かって非直交角度で延在する保持部と
を備え
、
前記アンカー部は、前記少なくとも1つの弾性クリップと前記回転係止手段を除き、略円筒状形状又は3次元多辺形状であり、
前記回転係止手段は、前記アンカー近位端において、前記略円筒状形状又は前記3次元多辺形状から径方向外側に突出している、締結要素。
【請求項2】
前記弾性クリップの静止位置において、前記肩部は、前記アンカー部の前記長手方向軸に対して実質的に垂直に延在する、請求項1に記載の締結要素。
【請求項3】
前記肩部から前記クリップ遠位端に向かって実質的に垂直に延在する肩部緩衝部を備える、請求項1に記載の締結要素。
【請求項4】
前記非直交角度は、前記アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、10°~80°の範囲である、請求項1に記載の締結要素。
【請求項5】
前記挿入力は約25N~45Nの範囲であり、前記保持力は133Nより大きい、特に、前記保持力は約133N~250Nの範囲である、請求項1に記載の締結要素。
【請求項6】
前記把持面は、複数のフックおよび/または複数のループのうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の締結要素。
【請求項7】
前記把持面は、前記締結要素と一体成形された複数のフックを備える、請求項6に記載の締結要素。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弾性クリップの長さは、前記クリップ遠位端の先端から前記クリップ近位端の基部まで測定したときに、3.5mm~5.5mm、特に、4.5mm~5.5mmの範囲である、請求項1に記載の締結要素。
【請求項9】
前記アンカー部は、前記把持部と一体成形される、請求項1に記載の締結要素。
【請求項10】
前記アンカー部は、前記背面に締結される、請求項1に記載の締結要素。
【請求項11】
前記締結は、接着およびオーバーモールドの少なくとも一方によって行われる、請求項10に記載の締結要素。
【請求項12】
前記クリップ遠位端と前記背面との間の間隙は、0.5mm~2mm、特に、1mm~2mmの範囲である、請求項1に記載の締結要素。
【請求項13】
前記少なくとも1つのクリップの幅は、0.9mm~2.6mmの範囲である、請求項1に記載の締結要素。
【請求項14】
前記締結要素および前記アンカー部は、熱可塑性材料で成形される、請求項1に記載の締結要素。
【請求項15】
前記肩部は、前記1つのクリップの幅と同様の幅、特に、0.4mm~1.5mmの範囲の幅を有する、請求項1に記載の締結要素。
【請求項16】
アンカー近位端およびアンカー遠位端と、それぞれが他の基材と異なる厚さを有する複数の基材のいずれか1つに締結要素を固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部と、前記基材の貫通孔内で前記締結要素を回すと、前記締結要素が所定の点を超えてさらに回るのを防止し、前記締結要素が回って挿入位置に戻るのを防止することができるように構成された回転係止手段とを備える、前記締結要素用の多基材アンカーであって、
前記少なくとも1つの弾性クリップは、
前記アンカー遠位端に近接して配置されたクリップ近位端および前記アンカー近位端に近接して配置されたクリップ遠位端と、
前記クリップ近位端から延在し、前記多基材アンカーを前記基材の貫通孔に挿入する間に前記多基材アンカーの長手方向軸に向けて前記少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、
前記圧縮部の末端から前記アンカー部の長手方向軸に向かって延在する肩部と、
前記肩部近くの点から延在し、前記少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて前記基材の前記貫通孔内の厚さの少なくとも一部に保持力を加えるように構成された基材接合面であって、前記多基材アンカーの前記長手方向軸に対して鋭角で前記クリップ遠位端に向かって延在する保持部と、を備え
、
前記アンカー部は、前記少なくとも1つの弾性クリップと前記回転係止手段を除き、略円筒状形状又は3次元多辺形状であり、
前記回転係止手段は、前記アンカー近位端において、前記略円筒状形状又は前記3次元多辺形状から径方向外側に突出している、多基材アンカー。
【請求項17】
前記弾性クリップの静止位置において、前記肩部は、前記多基材アンカーの前記長手方向軸に対して垂直に延在する、請求項16に記載の多基材アンカー。
【請求項18】
前記肩部から前記クリップ遠位端に向かって垂直に延在する肩部緩衝部を備える、請求項16に記載の多基材アンカー。
【請求項19】
前記クリップは、引抜力が前記アンカーに加えられない限り、前記アンカーが取付位置にあるときに前記肩部が前記基材を圧迫しないように構成される、請求項16に記載の多基材アンカー。
【請求項20】
把持面および前記把持面と反対側の背面を有する把持部と、
前記把持部に固定されるアンカー近位端およびアンカー遠位端を備えるアンカー部であって、基材上の装着位置に前記アンカー部を挿入するのに必要な挿入力より大きい保持力で締結要素を基材に固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部と、
前記基材の貫通孔内で前記締結要素を回すと、前記締結要素が所定の点を超えてさらに回るのを防止し、前記締結要素が回って挿入位置に戻るのを防止することができるように構成された回転係止手段と、を備える締結要素であって、
前記少なくとも1つの弾性クリップは、
前記アンカー近位端に近接して配置されたクリップ近位端およびクリップ遠位端と、
前記クリップ遠位端から一定の角度に延在し、前記アンカー部を前記基材の受容部に挿入する間に前記アンカー部の長手方向軸に向けて前記少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、
前記圧縮部の末端から前記アンカー部の前記長手方向軸に向かって延在する肩部と、
前記少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて前記基材に保持力を加えるように構成された保持部であって、前記アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、前記肩部の近くの位置から前記クリップ近位端に向かって非直交角度で延在する保持部と、
を備え
、
前記アンカー部は、前記少なくとも1つの弾性クリップと前記回転係止手段を除き、略円筒状形状又は3次元多辺形状であり、
前記回転係止手段は、前記アンカー近位端において、前記略円筒状形状又は前記3次元多辺形状から径方向外側に突出している、締結要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、挿入力低減締結具に関し、より詳細には、異なる厚さを有し得る様々な基材と共に使用されるように構成されたアンカー部を有する挿入力低減締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
ある業界では、締結具は様々な製品の組み立てにおいて重要な役割を果たし、一般に、取付者の仕事を容易にすると同時に反復的なプロセスのタイプの怪我を減らすために、そのような締結具を容易に挿入できるようにすることが望ましい。しかしながら、そのような締結具が、変化する応力および負荷を受けた状態でしっかりと保持すると同時に、さらに、特に振動による音の発生を伴わないことも重要である。
【0003】
例えば、自動車業界では、自動車の多くの部品が自動車の他の部品に(例えば、ヘッドライナが自動車のルーフに)締結され、これらの締結具は、高い閉鎖強度を有すると同時に、静かな状態を維持することが重要である。また、これらの締結具は、1日に数十または数百もの締結具を取り付ける場合がある取付者の怪我の危険性を減らすために、取り付けやすいことも望ましい。
【0004】
さらに、例えば、自動車用途において、取付時に多数の形態が存在する。単一締結具の設計は、例えば、締結具が取り付けられる基材の厚さに基づいて、様々な取付形態を満たすのに不十分であることが多い。したがって、一般に、取付時に多数の締結具形態が利用される。これは、製造業者が様々な用途に対して多数の個別の締結具形態を提供できなければならず、そのことが追加のコストおよび製造上の問題につながる可能性があることを意味する。
【0005】
米国特許出願公開第2015/0158437号明細書は、構成要素に取り付けられ得る少なくとも1つの保持部であって、一方の側に、片側で突出する接着要素またはフック要素を備えた平坦な支持部、反対側に、少なくとも1つの締結具を有する少なくとも1つの保持部を有する締結システムを開示している。密封デバイスも提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2015/0158437号明細書
【発明の概要】
【0007】
本出願の発明者らは、高い保持強度、および様々な基材厚さへの適合性を有する、取付力低減締結具が有益であると判断した。
【0008】
したがって、本開示によれば、締結要素が提供される。締結要素は、把持面および把持面と反対側の背面を有する把持部と、把持部に固定されたアンカー近位端およびアンカー遠位端を備えるアンカー部であって、アンカー部を基材上の装着位置に挿入するのに必要な挿入力よりも大きい保持力で締結要素を基材に固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを含むアンカー部とを含む。少なくとも1つの弾性クリップは、アンカー遠位端に近接して配置されたクリップ近位端およびアンカー近位端に近接して配置されたクリップ遠位端と、クリップ近位端から延在し、アンカー部を基材の受容部に挿入する間にアンカー部の長手方向軸に向けて少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、圧縮部の末端からアンカー部の長手方向軸に向かって延在する肩部と、少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて基材に保持力を加えるように構成された保持部であって、アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、肩部の近くの位置からクリップ遠位端に向かって非直交角度で延在する保持部とを含む。
【0009】
そのような締結具を提供することによって、比較的小さい挿入力の締結具が得られると同時に、比較的大きい保持力が得られる。さらに、このような構造を有する締結具は、広範囲の基材厚さへの取り付けを可能にし得る。広範囲の基材厚さは、最大厚さと最小厚さを含む。最大厚さは最小厚さの少なくとも105%であり得、特に、最大厚さは最小厚さの少なくとも150%であり得、このような場合、最大厚さは最小厚さの少なくとも200%であり得る。基材厚さの範囲は、特に、0.1mm~2mm、特に、0.7mm~1.6mm、または0.5mm~1.2mm、または0.1mm~1.5mmに含まれ得る。
【0010】
弾性クリップの静止位置では、肩部は、アンカー部の長手方向軸に対して実質的に垂直に延在し得る。
【0011】
肩部からクリップ遠位端に向かって実質的に垂直に延在する肩部緩衝部が設けられ得る。
【0012】
非直交角度は、アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、10°~80°、特に、アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに10°~50°の範囲であり得る。
【0013】
挿入力は、約25~45Nの範囲であり得、保持力は、133Nより大きい力であり得、特に、保持力は、約133N~250Nの範囲であり得る。
【0014】
把持面は、複数のフックおよび/または複数のループのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0015】
把持面は、締結要素と一体成形された複数のフックを含み得る。
【0016】
少なくとも1つの弾性クリップの長さは、クリップ遠位端の先端からクリップ近位端の基部まで測定したときに、3.5mm~5.5mm、特に、4.5mm~5.5mmの範囲であり得る。
【0017】
アンカー部は、把持部と一体成形され得る。
【0018】
アンカー部は、背面に締結され得る。
【0019】
締結は、複数のフックおよび/または複数のループの接着およびオーバーモールドのうちの少なくとも1つによって行われ得る。
【0020】
クリップ遠位端と背面との間の間隙は、0.5mm~2mm、特に、1mm~2mmの間の範囲であり得る。
【0021】
少なくとも1つのクリップの幅は、0.9mm~2.6mmの範囲であり得る。
【0022】
締結要素およびアンカー部は、熱可塑性材料から成形され得る。
【0023】
肩部は、1つのクリップの幅と同様の幅、特に、0.4mm~1.5mmの範囲の幅を有し得る。
【0024】
本開示のさらなる実施形態によれば、締結要素用の多基材アンカーが提供される。多基材アンカーは、アンカー近位端およびアンカー遠位端と、各々が他の基材と異なる厚さを有する複数の基材のいずれかに締結要素を固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部とを含む。少なくとも1つの弾性クリップは、アンカー遠位端に近接して配置されたクリップ近位端およびアンカー近位端に近接して配置されたクリップ遠位端と、クリップ近位端から延在し、多基材アンカーを基材の貫通孔に挿入する間に多基材アンカーの長手方向軸に向けて少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、圧縮部の末端からアンカー部の長手方向軸に向かって延在する肩部と、肩部近くの点から延在し、少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて基材の貫通孔内の厚さの少なくとも一部に保持力を加えるように構成された基材接合面であって、多基材アンカーの長手方向軸に対して鋭角でクリップ遠位端に向かって延在する保持部とを含む。
【0025】
このようなアンカーを提供することによって、比較的小さい挿入力を有する締結具が得られると同時に、比較的大きい保持力が得られる。さらに、このような構造を有する締結具は、広範囲の基材厚さへの取り付けを可能にし得る。
【0026】
弾性クリップの静止位置では、肩部は多基材アンカーの長手方向軸に対して垂直に延在し得る。
【0027】
多基材アンカーはさらに、肩部からクリップ遠位端に向かって垂直に延在する肩部緩衝部を含み得る。
【0028】
クリップは、引抜力がアンカーに加えられない限り、アンカーが取付位置にあるときに肩部が基材を圧迫しないように構成され得る。
【0029】
本開示のさらに別の実施形態によれば、締結要素が提供される。締結要素は、把持面および把持面と反対側の背面を有する把持部と、把持部に固定されたアンカー近位端およびアンカー遠位端を備えるアンカー部であって、アンカー部を基材上の装着位置に挿入するのに必要な挿入力よりも大きい保持力で締結要素を基材に固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部とを含む。少なくとも1つの弾性クリップは、アンカー近位端に近接して配置されたクリップ近位端およびクリップ遠位端と、クリップ遠位端から一定の角度で延在し、アンカー部を基材の受容部に挿入する間にアンカー部の長手方向軸に向けて少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、圧縮部の末端からアンカー部の長手方向軸に向かって延在する肩部と、少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて基材に保持力を加えるように構成された保持部であって、アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、肩部の近くの位置からクリップ近位端に向かって非直交角度で延在する保持部とを含む。
【0030】
当業者は、明らかに矛盾する場合を除いて、上記の要素の様々な組み合わせがなされ得ることを理解するであろう。
【0031】
本開示のさらなる目的および利点は、一部は以下の説明に記載され、そして一部はその説明から明らかになり、または本開示の実施によって習得され得る。本開示の目的および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘されている要素および組み合わせによって実現され、達成されるであろう。
【0032】
前述の概要と以下の詳細な説明は共に、例示的かつ説明的なものに過ぎず、請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本明細書に組み込まれ、本明細書一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を例示し、本開示の説明と共に、本開示の原理を明確にする助けとなる。
【0034】
【
図1A】第1の厚さの基材に取り付けられた本開示の実施形態の締結要素の例示的側面図であり、基材の断面図の切断線が締結要素および2つの弾性クリップの中央を通る図である。
【
図1B】第2の厚さの基材に取り付けられた本開示の実施形態の締結要素の例示的側面図であり、基材の断面図の切断線が締結要素および2つの弾性クリップの中央を通る図である。
【
図2】本開示の実施形態の締結要素の正面図である。
【
図3A】本開示の第2の実施形態の締結要素の例示的側面図であり、基材の断面図の切断線が締結要素および2つの弾性クリップの中央を通る図である。
【
図4】本開示の実施形態の締結要素の把持面上の把持要素の例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
ここで、本開示の例示的実施形態について詳細に説明する。その実施例は、添付図面に示されている。可能な限り、同じ参照番号は、図面全体にわたって同じまたは同様の部分を指すために使用される。
【0036】
図1Aおよび
図1Bは、本開示の実施形態に係る、基材3に取り付けられた締結要素1の例示的側面図であり、基材の断面図の切断線は、締結要素および2つの弾性クリップの中央を通る。
図1Aおよび
図1Bの基材3は、異なる厚さSを有する。
図1Aの基材3の厚さSは、
図1Bの基材3の厚さSよりも大きい。しかしながら、図示されている厚さは、原寸に比例するものではなく、本発明の締結要素が装着され得る基材の最大厚さおよび最小厚さであると解釈すべきでない。これらの
図1Aおよび
図1Bは、例示的なものに過ぎない。
【0037】
締結要素1は、締結要素1が締結要素のアンカー部15を基材3上の装着位置に挿入するのに必要な挿入力よりも大きい保持力を有するように、基材3に挿入されるように構成され得る。挿入力について論じるとき、そのような力は、例えば、挿入中に締結要素1に力を加えるのに使用されるプッシュ/プルゲージ(例えば、IMADAプッシュプルスケール)によって測定されるものとする。保持力について論じるとき、そのような力は、例えば、プッシュ/プルゲージのプル部分を使用して、同様の方法によって測定されるものとする。
【0038】
締結要素1は、様々な材料(例えば、熱可塑性材料、複合材料、および/または他の適切な材料)を使用して、成形(例えば、射出成形、オーバーモールド成形)され得る。熱可塑性材料は、本開示の実施形態のポリプロピレンまたはポリウレタンを含み得る。例えば、ポリプロピレンの場合、50%のホモポリマーと50%のコポリマーによって構成され、溶融状態での流動性指数22g/10mmおよび屈曲モジュール130,000psi~150,000psiを有する不飽和ポリエステルの混合物が選択され得る。他の可能な材料としては、溶融状態での流動性指数7および屈曲モジュール175,000psiを有するAtofina社のポリプロピレン(PPC5660)、溶融状態での流動性指数35~100および屈曲モジュール190,000psi~250,000psiを有するBP Amoco社のプロピレンコポリマー(Acclear 8949およびAcctuf impact copolymer 3934X)、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、高密度ポリエチレン、低密度線状ポリエチレン、ポリカーボネートが挙げられる。溶融状態での流動性指数は1~100であり、屈曲モジュールは30,000~1,140,000、好ましくは100,000~1,000,000、さらに好ましくは300,000~1,000,000である。
【0039】
適切であり得るプロピレン系樹脂以外の樹脂としては、衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ナイロン、高密度ポリエチレン、低密度線状ポリエチレン、ポリカーボネートおよびオレフィン系熱可塑性樹脂が挙げられる。非常に高い屈曲モジュールを有する、ガラス長繊維によって強化されたポリプロピレン(StaMax社によって販売されている屈曲モジュール856,000psiを有する樹脂30YM240/10010および屈曲モジュール1,140,000psiを有する樹脂40YM240/10010)もまた提供され得る。この場合、ガラス長繊維はキャビティ(長繊維が侵入するには小さすぎるかまたは細すぎる)内に入り込まず、可撓性フックを有する非常に剛性の高いプレートが得られる。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、締結要素1は、得られるデバイスが一体構造となるように、すなわち、締結要素1の全ての要素が一体的に形成されるように、単一ステッププロセスを用いて射出成形される。このような形成は、所望の強度および製造しやすさをもたらすと同時に、その後の基層への層状部分(例えば、把持部層)の組み立てを排除し得る。
【0041】
デバイスは、可視射出ゲートを備え得る。あるいは、締結要素1の一部は、単一ステッププロセスを用いて射出成形され得、例えば、把持要素および/またはアンカー部15は接着剤または他の適切な結合(例えば、溶融および再凝固、オーバーモールドなど)によって締結要素1に接合され得る。把持部の基部およびアンカー部は一体成形され得る。締結要素1の一部が単一ステッププロセスを用いて射出成形される場合、成形は熱可塑性材料の金型への導入または注入の単一ステップで行われるので、フックを成形して、その後、フックを形成するのを待つ必要はなく、したがって、フックの領域と成形品の残りの部分との間の材料に接合面が形成されない。このことにより、成形品とフックとは、一部品として一体的に形成される。得られた製品の特定の特徴の1つは、フックの領域の形状に応じて、材料が、点、線または星形であり得るパターンに従って中央領域に集まりながら、押し付けられる領域の大部分またはさらには全周から浸透し得ることである。材料の前面は動作速度のために冷却時間がない可能性があるので、接合領域はフックと成形品の残りの部分との間に真の接合面を含まない可能性があり(特に、裸眼で見える接合面はない可能性がある)、したがって、これは、部品の脆弱性のより高い領域を形成しない可能性がある。いくつかの例では、分子配向の分析のみにより、この領域を明らかにすることが可能になるであろう。
【0042】
締結要素1は、把持面6と、把持面6と反対側の背面7とを有する把持部5を含む。締結要素1は、把持部5に(例えば、背面7の幾何学的中心で)固定されたアンカー近位端16とアンカー遠位端17とを備えるアンカー部15をさらに含む。
【0043】
把持部5には、把持部5から(例えば、把持面6から)高さH1で延在する複数の把持要素21および/または把持要素22が設けられ得る。例えば、把持面6は、締結要素1と一体成形および/またはオーバーモールド成形された複数のフックを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、把持要素21および/または把持要素22は、把持要素21および/または把持要素22の遠位部が把持面6および背面7から所定の距離だけ離間するように、把持部5から垂直方向に列を成して延在し得る。重要なことに、当業者は、把持要素21および/または把持要素22は所望の締結を達成するのに望ましい任意の方向に延在し得、複数の把持要素21および/または把持要素22全体が同一方向に延在する必要はないが、複数の把持要素全体が同一方向に延長され得る。さらに、高さH1は、把持要素21および/または把持要素22間で異なり得るか、または実質的に均一であり得る。フックを備える把持要素の高さH1は、0.1mm~2mm、特に、0.2mm~1.7mmまたは0.9mm~1.43mmであり得る。
【0045】
把持要素21および/または把持要素22は、把持要素21および/または把持要素22が別の所望の表面(例えば、把持要素20および/または把持要素20´と相互作用するように設計された複数のループまたはフックを備える表面)との締結を達成させることができる特性を有するフックおよび/またはループを備え得る。把持要素21および/または把持要素22は、行および列を成して配置され得る。いくつかの実施形態によれば、把持要素21および/または把持要素22は、第2の表面との締結を容易にするために、例えば、
図4に示されているように、一列内で、実質的に把持面6の全体にわたって頭を互い違いの向きにして配置され得る。あるいは、把持要素21および/または把持要素22は、把持面6の表面全体にわたって単一配向で配置され得る。
【0046】
本明細書で使用されるとき、把持要素21および/または把持要素22に関する用語「頭」は、フックの能動部分が位置する把持要素21および/または把持要素22の遠位部分(すなわち、湾曲したフック面)を指す。
【0047】
把持要素21および/または把持要素22は、把持面6に関連するかなりの面積を覆い得る。例えば、把持表面積の少なくとも50%、60%、70%、80%、さらには90%の被覆は、把持要素21および/または把持要素22によって達成され得る。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、把持要素21および/または把持要素22の任意の望ましい被覆量が実施され得ることを理解するであろう。把持機能を最大にするために、把持表面積の少なくとも80%、85%、90%、95%の被覆が把持要素21および/または把持要素22によって達成され得る。
【0048】
把持要素21および/または把持要素22がフックとして実施される場合、フック21および/またはフック22は異なる配向/偏向を有し得る。言い換えれば、当業者は、単一フックが単一方向を有し、その方向によってフック留めが達成され得ることを理解する。したがって、
図4に示されているように、列内に単一配向のフック21の列を配置することが可能になる。本開示のいくつかの実施形態によれば、単一配向の列が把持面6上にだけ配置され、したがって、基材3との取付位置に基づいて締結具1に複数の配向が付与され得る。
【0049】
あるいは、いくつかの実施形態によれば、フック21および/またはフック22の向きは、互い違いの向きを呈するように、フック21およびフック22の列全体にわたって互い違いにされ得る。したがって、このような形態では、基材3内の締結具1の異なる配向は少なくなるが、締結される材料の可撓性は大きくなる(例えば、締結ループがフックに引っかかる可能性がより高くなる)。
【0050】
アンカー部15は、略円筒状形状であり得、例えば、とりわけ、基材3に存在する貫通孔への挿入を容易にするために、アンカー遠位端17にテーパ部が設けられ得る。テーパ部のテーパ角は、把持部5に対して約60°~85°の範囲、特に、約75°であり得る。重要なことに、例示的な実施形態では、用語「円筒状」がアンカー部15の形状を説明するために使用されているが、アンカー部15の形状は、一般に、3次元多辺形、例えば、四角柱、楕円柱などとしても実現可能であることを理解されたい。さらに、用語「略」という用語は、後述する追加の特徴、例えば、弾性クリップ20および/または回転係止手段24を欠くアンカー部の形状を示すものとする。
【0051】
アンカー部15は、アンカー部15を基材3上の装着位置に挿入するのに必要な挿入力よりも大きい保持力で基材3に締結要素1を固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップ20(例えば、1つのクリップ、2つのクリップ、3つのクリップなど)を含む。基材3上の装着位置からアンカー部15を引き抜くための締結要素に関連する引抜力は、把持要素の一部と把持部の締結を達成するのに使用される他の所望の表面との分離力(剥離力および/または剪断力など)よりも大きい力であり得る。弾性クリップは、例えば、存在する弾性クリップ20の数に基づいて、円筒状アンカー部15の周囲に離間配置され得る。例えば、2つの弾性クリップが円筒状アンカー部15上に存在する場合、弾性クリップ20は互いに中心で180°離間され得る。
【0052】
別の例では、多角柱がアンカー部15として実施される場合、多角柱の各面が弾性クリップ20を含み得、あるいは多角柱の交互に重なる面が弾性クリップ20を有し得る。当業者であれば、そのような形態はいずれも本開示の範囲内にあることを理解するであろう。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、弾性クリップ20は、アンカー遠位端17に近接して位置するクリップ近位端29と、アンカー近位端16に近接して位置するクリップ遠位端28とを含み得る。例えば、クリップ近位端29は、長手方向軸Yに沿って測定したときに、アンカー遠位端のテーパ部の終端またはその近くに位置決めされ得る。
【0054】
当業者は、締結要素1を基材3に取り付けるのに使用される挿入力を修正するために、弾性クリップ20の幅および長さが調整され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態によれば、弾性クリップ20の長さH2(すなわち、背面6からクリップ近位端29まで)は、締結要素1の全厚さTの約40%~70%(例えば、いくつかの実施形態では、3.5mm~5.5mm)の範囲であり得、いくつかの実施形態では、約4.5mm~5.5mmであり得る。
【0055】
上述の実施形態によれば、上述の割合を有する弾性クリップ20の幅Wは、例えば、弾性クリップの長さH2の約20%~40%、例えば、約0.9mm~2.6mmの範囲であり得る。当業者であれば、とりわけ、締結要素1の製造に使用される材料の種類に応じて挿入力が調整され得ること、および上記の測定値は例示に過ぎないことを理解するであろう。
【0056】
さらに、クリップ遠位端28と背面7との間の間隙Cは、弾性クリップ20の長さH2の約2%~5%、例えば、約0.5mm~2mm、特に、1mm~2mmの範囲であり得る。
【0057】
各々の弾性クリップ20は、とりわけ、圧縮部30、肩部35、および保持部37を備える。
【0058】
圧縮部30は、クリップ近位端29から延在し、アンカー部15を基材3の受容部に挿入する間に、少なくとも1つの弾性クリップ20をアンカー部15の半径方向軸Yに向かって撓ませるように構成され得る。例えば、圧縮部30は、基材3の穴に挿入されると、圧縮部が弾性クリップ20をアンカー部15の半径方向軸Yに向かって内側に撓ませるように、アンカー部15の半径方向軸Yに対して約20°~70°の範囲の鋭角θを呈し得る。いくつかの実施形態によれば、角度θは、アンカー遠位端17に適用されたテーパ部に関連する角度に対応し得る。
【0059】
当業者が鋭角θに基づいて理解できるように、弾性クリップ20の撓みは、肩部35に達するまで、圧縮部30がさらに穴の中へと前進するにつれて大きくなる。
【0060】
肩部35は、圧縮部30の末端からアンカー部15の半径方向軸Yに向かって延在し得る。例えば、肩部は、アンカー部15の半径方向軸Yに対して実質的に垂直に延在し得る。いくつかの実施形態によれば、肩部35は、弾性クリップ20の長さH2の5%~20%、例えば、約0.5mm~2mm、特に、約1mm~2mmにわたって延在し得る。
【0061】
肩部緩衝部38が存在してもよく、肩部の終端部からクリップ遠位端に向かって実質的に垂直に延在し得る。肩部緩衝部38は、弾性クリップ20の全長の約5%~20%、例えば、約0.4mm~1.5mmの範囲であり得る。
【0062】
保持部37は、少なくとも1つのクリップ20の弾性作用に基づいて、基材3に保持力を加えるように構成される。言い換えれば、付勢力は、弾性クリップ20の弾性の結果として生じる。この力は、アンカー部を基材3内で保持するのを助ける。言い換えれば、少なくとも1つのクリップは、締結要素1が基材3の貫通孔に取り付けられたときに、少なくとも1つのクリップの一部が基材3の貫通孔の内側へ/中へ延在するように寸法決めされる。基材3の貫通孔の内側へ延在するクリップの部分は、締結具が定位置で維持され、振動によって生じる音を発生させずに振動を抑えることができるように、基材上に力を加える。弾性クリップ20の保持部37は、アンカー部15の半径方向軸Yに対して測定したときに、肩部の近くの位置からクリップ遠位端に向かって非直交角度αで延在する。例えば、非直交角度は、約10°~80°、特に、20°~60°の範囲であり得る。したがって、引抜力が加えられたときに、引抜距離が増加するにつれて保持部における力は増大する。このことにより、適度に高い保持力が得られる。
【0063】
保持部37の存在によって、保持部37の保持力を超える引抜力が締結要素1に加えられる場合を除いて、肩部35が基材3を圧迫するのが防止され得る。このような場合、肩部35は、アンカー部15が基材3から完全に引き抜かれるのを防止し得る。
【0064】
図1A、
図1Bおよび
図2に示されているように、締結具は回転係止手段24を備える。回転係止手段24は、基材の貫通孔内で締結要素1を回す(回転させる)と、回転係止手段24が、締結要素1が所定の点を超えてさらに回るのを防止し、締結要素1が回って挿入位置に戻るのを防止することができるように構成され得る。回転係止手段24はさらに、弾性クリップ20と同様の機能を果たし得、すなわち、締結要素1が係止位置まで回されると、回転係止手段24がさらに、基材3からの締結要素1の引き抜きを防止し得る。
【0065】
例えば、基材3の貫通孔は、円形、正方形、長方形、三角形などの異なる形状を有し得る。いくつかの実施形態によれば、締結要素1は、締結要素1が基材3の貫通孔内に取り付けられたときに締結具の回転を係止するための回転係止手段24を有し得る。
【0066】
回転係止手段24は、例えば、傾斜当接形態を備え得、締結要素1が回転すると、傾斜部が基材3の一部に加える力が増大し、当接部はそれ以上の旋回を防止することができる。傾斜部によって加えられる力が増大することによって、係止手段24はさらに、その後に、締結要素1が回って挿入位置に戻るのを実質的に防止し得る。
【0067】
図2、
図3Bおよび
図5に示されているように、締結要素のアンカー部は、キャビティ50を画定するように中央において中空材料である。
【0068】
【0069】
別の実施形態によれば、
図3Aおよび
図3Bに示されているように、クリップ近位端29はアンカー近位端16に近接して配置され得、クリップ遠位端28はアンカー遠位端17に近接して配置され得る。このような場合、クリップ遠位端28とアンカー部15の先端との間の(すなわち、アンカー部15の遠位端における)間隙は、弾性クリップ20の長さの約2%~5%、例えば、約0.5mm~2mm、特に、1mm~2mmの範囲であり得る。
【0070】
本明細書における本開示は特定の実施形態に関して説明されているが、これらの実施形態は本開示の原理および用途の単なる例に過ぎないことを理解されたい。
【0071】
特許請求の範囲を含む説明全体を通して、用語「備える」は、別段の指定がない限り、「少なくとも1つを備える」と同義であると理解されるべきである。さらに、特許請求の範囲を含む本明細書に記載された任意の範囲は、別段の指定がない限り、その最終値(単数または複数)を含むと理解されるべきである。記載されている要素の特定の値は、当業者に周知の製造上または業界の許容公差の範囲内であると理解されるべきであり、そして用語「実質的に」および/または「およそ」および/または「略」の使用は、本明細書内で別段の指定がない限り、このような許容公差の範囲内にあることを意味すると理解されるべきである。
【0072】
国内、国際、または他の標準化団体の任意の標準(例えば、ISOなど)が参照される場合、そのような参照は、本明細書の優先日の時点で国内または国際標準化団体によって定義された標準を指すものとする。このような標準に対するその後の実質的な変更は、本開示および/または特許請求の範囲および/または定義を修正することを意図するものではない。
【0073】
以下の態様は、本明細書に存在する特徴の様々な例示的な組み合わせを説明するものであって、限定することを意図するものではない。
態様1 把持面および把持面と反対側の背面を有する把持部と、
把持部に固定されるアンカー近位端およびアンカー遠位端を備えるアンカー部であって、基材上の装着位置にアンカー部を挿入するのに必要な挿入力より大きい保持力で締結要素(1)を基材に固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部と
を備える締結要素であって、
少なくとも1つの弾性クリップは、
アンカー遠位端に近接して配置されたクリップ近位端およびアンカー近位端に近接して配置されたクリップ遠位端と、
クリップ近位端から延在し、アンカー部を基材に挿入する間にアンカー部の長手方向軸に向けて少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、
圧縮部の末端からアンカー部の長手方向軸に向かって延在する肩部と、
少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて基材に保持力を加えるように構成された保持部であって、アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、肩部の近くの位置からクリップ遠位端に向かって非直交角度で延在する保持部とを備える、締結要素。
態様2 アンカー近位端およびアンカー遠位端と、それぞれが他の基材と異なる厚さを有する複数の基材のいずれか1つに締結要素(1)を固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部とを備える、締結要素用の多基材アンカーであって、
少なくとも1つの弾性クリップは、
アンカー遠位端に近接して配置されたクリップ近位端およびアンカー近位端に近接して配置されたクリップ遠位端と、
クリップ近位端から延在し、多基材アンカーを基材の貫通孔に挿入する間に多基材アンカーの長手方向軸に向けて少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、
圧縮部の末端からアンカー部の長手方向軸に向かって延在する肩部と、
肩部近くの点から延在し、少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて基材の貫通孔内の厚さの少なくとも一部に保持力を加えるように構成された基材接合面であって、多基材アンカーの長手方向軸に対して鋭角でクリップ遠位端に向かって延在する保持部と
を備える、多基材アンカー。
態様3 把持面および把持面と反対側の背面を有する把持部と、
把持部に固定されるアンカー近位端およびアンカー遠位端を備えるアンカー部であって、基材上の装着位置にアンカー部を挿入するのに必要な挿入力より大きい保持力で締結要素を基材に固定するように構成された少なくとも1つの弾性クリップを備えるアンカー部と
を備える締結要素であって、
少なくとも1つの弾性クリップは、
アンカー近位端に近接して配置されたクリップ近位端およびクリップ遠位端と、
クリップ遠位端から一定の角度に延在し、アンカー部を基材の受容部に挿入する間にアンカー部の長手方向軸に向けて少なくとも1つのクリップの撓みを引き起こすように構成された圧縮部と、
圧縮部の末端からアンカー部の長手方向軸に向かって延在する肩部と、
少なくとも1つのクリップの弾性作用に基づいて基材に保持力を加えるように構成された保持部であって、アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、肩部の近くの位置からクリップ近位端に向かって非直交角度で延在する保持部とを備える、締結要素。
態様4 弾性クリップの静止位置において、肩部はアンカー部の長手方向軸に対して垂直に延在する、態様1~態様3のいずれかに記載の締結要素。
態様5 肩部からクリップ遠位端に向かって垂直に延在する肩部緩衝部を備える、態様1~態様4の態様のいずれかに記載の締結要素。
態様6 前記非直交角度は、前記アンカー部の半径方向軸に対して測定したときに、10°~80°の範囲である、態様1~態様5のいずれかに記載の締結要素。
態様7 挿入力は、約25N~45Nの範囲であり、保持力は、133Nより大きく、特に、約133N~250Nの範囲である、態様1~態様6のいずれかに記載の締結要素。
態様8 把持面は、複数のフックおよび/または複数のループのうちの少なくとも1つを備える、態様1~態様7のいずれかに記載の締結要素。
態様9 把持面は、締結要素と一体成形された複数のフックを備える、態様6に記載の締結要素。
態様10 少なくとも1つの弾性クリップの長さは、クリップ遠位端の先端からクリップ近位端の基部まで測定したときに、3.5mm~5.5mmの範囲であり、特に、4.5mm~5.5mmの範囲である、態様1~態様7のいずれかに記載の締結要素。
態様11 アンカー部は、把持部と一体成形される、態様1~態様8のいずれかに記載の締結要素。
態様12 アンカー部は、背面に締結される、態様1~態様8のいずれかに記載の締結要素。
態様13 締結は、接着およびオーバーモールドのうちの少なくとも一方によって行われる、態様10に記載の締結要素。
態様14 クリップ遠位端と背面との間の間隙は、0.5mm~2mm、特に、1mm~2mmの範囲である、態様1、態様2、および態様4~態様12のいずれかに記載の締結要素。
態様15 少なくとも1つのクリップの幅は、0.9mm~2.6mmの範囲である、態様1~態様14のいずれかに記載の締結要素。
態様16 締結要素およびアンカー部は、熱可塑性材料で成形される、態様1~態様15のいずれかに記載の締結要素。
態様17 肩部は、0.4mm~1.5mmの範囲の幅を有する、態様1~態様16のいずれかに記載の締結要素。
【0074】
本明細書および実施例は単なる例に過ぎず、本開示の真の範囲は特許請求の範囲によって示されるものとする。