(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】注射デバイス用のフィードバック機構
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20220404BHJP
A61M 5/31 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61M5/20 510
A61M5/31 520
(21)【出願番号】P 2019522770
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2017076056
(87)【国際公開番号】W WO2018082887
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-09-28
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マルク・シャーダー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・クナイプ
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ラウ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/034407(WO,A2)
【文献】特表2013-536032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14-5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に薬剤を送達するように構成された注射デバイス用のフィードバック機構であって:
注射デバイスの使用中に流体チャンバ内へ動くように適用されるピストン、および該流体チャンバと;
ピストンの動きを減衰させるように配置されたダンパと;
ピストンが流体チャンバ内へ所定の距離だけ動いた後に前記使用者にフィードバックを提供するように配置されたインジケータとを含み、該インジケータは、偏向したときに可聴音を生成するプリストレス要素を含む、前記フィードバック機構。
【請求項2】
使用中にピストンを流体チャンバ内へ付勢するように配置された付勢部材をさらに含む、請求項1に記載のフィードバック機構。
【請求項3】
ダンパは、流体チャンバ内に配置された回転撹拌器を含み、流体チャンバ内へのピストンの動きは、回転撹拌器を回転させ、その結果、該回転撹拌器によってピストンの動きが減衰する、請求項1または2に記載のフィードバック機構。
【請求項4】
ピストンは、回転撹拌器を含む、請求項3に記載のフィードバック機構。
【請求項5】
ピストンは、流体チャンバを横切って延びる板を含み、ダンパは、該板に位置する1つまたはそれ以上のオリフィスを含み、ピストンが流体チャンバ内へ動くと、流体がオリフィスを通って流れる、請求項1または2に記載のフィードバック機構。
【請求項6】
受取りチャンバをさらに含み、ピストンが流体チャンバ内へ動くと、流体が受取りチャンバ内へ付勢され、ダンパは、流体チャンバと受取りチャンバとの間に配置されたオリフィスを含む、請求項1または2に記載のフィードバック機構。
【請求項7】
受取りチャンバは、受取りチャンバ内へ進む流体によって動かされるスライダを含み、該スライダは、該スライダが所定の距離だけ動いた後にインジケータに係合するように構
成され、インジケータは、係合された後に前記使用者にフィードバックを提供する、請求項6に記載のフィードバック機構。
【請求項8】
インジケータは、ピストンと前記注射デバイスの一部との間に配置され、したがって流体チャンバ内へのピストンの動きにより、ピストンおよび/または前記注射デバイスの前記一部によってインジケータが係合され、該インジケータは、係合された後に前記使用者にフィードバックを提供する、請求項1または2に記載のフィードバック機構。
【請求項9】
インジケータは、可聴音を生成する音発生器を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のフィードバック機構。
【請求項10】
薬剤送達機構を含む注射デバイスであって、薬剤送達機構は、
リザーバ、および、注射デバイスの使用中に使用者へ送達するために薬剤をリザーバから変位させるように動くプランジャと;
請求項1~9のいずれか1項に記載のフィードバック機構とを含む、前記注射デバイス。
【請求項11】
使用中にプランジャをリザーバ内へ押し込むように配置された付勢部材をさらに含む、請求項10に記載の注射デバイス。
【請求項12】
前記注射デバイスは、遠位端および近位端を有し、前記付勢部材は、使用中に該注射デバイスの遠位端に向かって前記ピストンを前記流体チャンバ内へと付勢するよう構成される、請求項11に記載の注射デバイス。
【請求項13】
前記付勢部材は、使用中に該注射デバイスの遠位端に向かって前記プランジャを前記リザーバ内に押し込むよう構成される、請求項12に記載の注射デバイス。
【請求項14】
付勢部材は、ピストンに作用するように配置され、ピストンおよびプランジャは、ピストンに加えられる力が流体チャンバを介してプランジャへ伝達されるように配置される、請求項11~13のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項15】
ダンパは、プランジャ内に形成されたオリフィスを含む、請求項10~14のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項16】
ハウジングをさらに含み、ダンパは、ハウジング内に形成されたオリフィスを含む、請求項10~14のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項17】
インジケータは、偏向したときに可聴音を生成するプリストレス要素を含み、該プリストレス要素は、プランジャに取り付けられており、プランジャが動いて薬剤を変位させると偏向するように配置される、請求項16に記載の注射デバイス。
【請求項18】
プランジャがリザーバ内へ所定の距離だけ動いた後にピストンが流体チャンバ内へ動き始めるように構成される、請求項10~17のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項19】
プランジャが所定の位置に到達するまでピストンを保持し、次いでピストンを解放し、したがってピストンが流体チャンバ内へ動くことができるように配置されたロッキング機構をさらに含む、請求項18に記載の注射デバイス。
【請求項20】
リザーバは、薬剤を収容する、請求項10~19のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項21】
ハウジングをさらに含む、請求項10~20のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項22】
ニードルスリーブをさらに含み、該ニードルスリーブは、前記ハウジングに対する該ニードルスリーブの動きが可能なように該ハウジングに連結される、請求項2
1記載の注射デバイス。
【請求項23】
針をさらに含み、前記ニードルスリーブは、該針の端部が露出するよう前記ハウジングに対して近位に向かって動くことができる、請求項
22に記載の注射デバイス。
【請求項24】
請求項18~23のいずれか1項に記載の注射デバイスの作動方法であって、薬剤を使用者に送達した後に:
付勢部材がピストンを流体チャンバ内へ動かすことと;
流体チャンバ内の流体がピストンの動きを減衰させることと;
可聴音を生成するプリストレス要素を含むインジケータが偏向することによってピストンが流体チャンバ内へ所定の距離だけ動いた後に前記使用者にフィードバックを提供することとを含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイス用のフィードバック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動注射器などの注射デバイスは、典型的にはシリンジを有しており、シリンジにプランジャを押し込んで、針を介してシリンジから患者へ薬剤を投薬する。この注射プロセスは、プランジャがシリンジ内へ適当な距離だけ押し込まれると完了する。適当な体積の薬剤が注射されたことを使用者に示すフィードバック機構を提供することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、フィードバックを使用者に提供する注射デバイス用のフィードバック機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様によれば、使用者に薬剤を送達するように構成された注射デバイス用のフィードバック機構であって:
注射デバイスの使用中に流体チャンバ内へ動くように適用されるピストン、および流体チャンバと;
ピストンの動きを減衰させるように配置されたダンパと;
ピストンが流体チャンバ内へ所定の距離だけ動いた後に前記使用者にフィードバックを提供するように配置されたインジケータとを含むフィードバック機構が提供される。
【0005】
フィードバック機構は、使用中にピストンを流体チャンバ内へ付勢するように配置された付勢部材をさらに含むことができる。
【0006】
ダンパは、流体チャンバ内に配置された回転撹拌器(rotary agitator)を含むことができ、流体チャンバ内へのピストンの動きは、回転撹拌器を回転させることができ、その結果、回転撹拌器によってピストンの動きが減衰する。
【0007】
ピストンは、回転撹拌器を含むことができる。
【0008】
ピストンは、流体チャンバを横切って延びる板を含むことができ、ダンパは、この板に位置する1つまたはそれ以上のオリフィスを含むことができ、ピストンが流体チャンバ内へ動くと、流体がオリフィスを通って流れる。
【0009】
フィードバック機構は、受取りチャンバ(recipient chamber)をさらに含むことができ、ピストンが流体チャンバ内へ動くと、流体が受取りチャンバ内へ付勢され、ダンパは、流体チャンバと受取りチャンバとの間に配置されたオリフィスを含むことができる。
【0010】
受取りチャンバは、受取りチャンバ内へ進む流体によって動かされるスライダを含むことができ、スライダは、スライダが所定の距離だけ動いた後にインジケータに係合するように構成することができ、インジケータは、係合された後に前記使用者にフィードバックを提供することができる。
【0011】
インジケータは、ピストンと前記注射デバイスの一部との間に配置することができ、したがって流体チャンバ内へのピストンの動きにより、ピストンおよび/または前記注射デバイスの前記一部によってインジケータが係合され、インジケータは、係合された後に前記使用者にフィードバックを提供することができる。
【0012】
インジケータは、可聴音を生成する音発生器を含むことができる。
【0013】
音発生器は、偏向したときに可聴音を生成するプリストレス要素(pre-stressed element)を含むことができる。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、薬剤送達機構を含む注射デバイスであって、薬剤送達機構は、リザーバ、および、注射デバイスの使用中に使用者へ送達するために薬剤をリザーバから変位させるように動くプランジャと;上述したフィードバック機構とを含む、注射デバイスも提供される。
【0015】
注射デバイスは、使用中にプランジャをリザーバ内へ押し込むように配置された付勢部材をさらに含むことができる。
【0016】
付勢部材は、ピストンに作用するように配置することができ、ピストンおよびプランジャは、ピストンに加えられる力が流体チャンバを介してプランジャへ伝達されるように配置することができる。
【0017】
ダンパは、プランジャ内に形成されたオリフィスを含むことができる。
【0018】
注射デバイスは、ハウジングをさらに含むことができ、ダンパは、ハウジング内に形成されたオリフィスを含むことができる。
【0019】
インジケータは、偏向したときに可聴音を生成するプリストレス要素を含むことができ、プリストレス要素は、プランジャに取り付けられており、プランジャが動いて薬剤を変位させると偏向するように配置される。
【0020】
プランジャは、アームを含むことができ、アームにプリストレス要素が取り付けられており、アームは、ピストンが流体チャンバ内へ動くとピストンの機能に係合するように配置され、アームは、ピストンの機能に係合した後にプリストレス要素を偏向させるように配置される。
【0021】
注射デバイスは、プランジャがリザーバ内へ所定の距離だけ動いた後にピストンが流体チャンバ内へ動き始めるように構成することができる。
【0022】
注射デバイスは、プランジャが所定の位置に到達するまでピストンを保持し、次いでピストンを解放し、したがってピストンが流体チャンバ内へ動くことができるように配置されたロッキング機構をさらに含むことができる。
【0023】
リザーバは、薬剤を収容することができる。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、注射デバイスを使用する方法であって:
使用者に薬剤を送達することと;
ピストンを流体チャンバ内へ動かすことと;
ピストンの前記動きを減衰させることと;
ピストンが流体チャンバ内へ所定の距離だけ動いた後に前記使用者にフィードバックを提供することとを含む方法も提供される。
【0025】
本発明の上記その他の態様は、後述する実施形態から明らかになり、これらの実施形態を参照することによって解明される。
【0026】
本発明の実施形態について、例示のみを目的として、添付の図面を参照して次に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】本発明を実施する注射デバイスおよび取外し可能なキャップの概略側面図である。
【
図1B】キャップがハウジングから取り外された、
図1Aの注射デバイスの概略側面図である。
【
図2A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、ダンパおよびインジケータを有する注射デバイスの側断面図である。
【
図2B】注射デバイスが使用された後の、
図2Aの注射デバイスの側断面図である。
【
図3A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、ダンパ、インジケータおよびロッキング機構を有する注射デバイスの側断面図である。
【
図3B】
図3Aの注射デバイスのロッキング機構の拡大側断面図である。
【
図4】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、ダンパおよびインジケータを有する別の注射デバイスの側断面図である。
【
図5A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、ダンパおよびインジケータを有する別の注射デバイスの側断面図である。
【
図5B】注射デバイスが使用された後の、
図5Aの注射デバイスの側断面図である。
【
図6A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、ダンパおよびインジケータを有する別の注射デバイスの側断面図である。
【
図6B】注射デバイスが使用された後の、
図6Aの注射デバイスの側断面図である。
【
図7A】注射デバイスが使用される前の状態で示されている、ダンパおよびインジケータを有する別の注射デバイスの側断面図である。
【
図7B】注射デバイスが使用された後の、
図6Aの注射デバイスの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載する薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスの使用者は、患者、または看護師もしくは医師などの医療従事者であり、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要のあるカートリッジ式のシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の体積は、約0.5ml~約2mlの範囲とすることができる。さらに別のデバイスは、「大きい」体積の薬剤(典型的には、約2ml~約10ml)を送達するために一定期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に粘着するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0029】
特定の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要な仕様で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、ある期間(たとえば、自動注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約10分~約60分)内で薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様は、低いもしくは最小レベルの不快感、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲に及ぶことなどの様々な要因により生じることがある。したがって、薬物送達デバイスは、多くの場合、サイズが約25~約31ゲージの中空針を含む。一般的なサイズは、17および29ゲージである。
【0030】
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気のエネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて、単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、バルブ、または他の機構をさらに含むことができる。
【0031】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能はそれぞれ、起動機構を介して起動することができる。そのような起動機構は、アクチュエータ、たとえばボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1つの工程または複数の工程からなるプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能を引き起こすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要がある。たとえば、1つの工程からなるプロセスでは、使用者は、ニードルスリーブを自分の体に押し当てることで、薬剤の注射を行うことができる。他のデバイスは、自動機能を複数の工程によって起動することを必要とすることがある。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げてニードルシールドを後退させることが必要となることがある。
【0032】
追加として、1つの自動機能の起動により、1つまたはそれ以上の後続の自動機能を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を行うために、特定の工程シーケンスを必要とすることがある。他のデバイスは、独立した工程シーケンスで動作することができる。
【0033】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器のうちの1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には自動注射器に見られる)と、用量設定機構(典型的にはペン注射器に見られる)とを含むことができる。
【0034】
本開示のいくつかの実施形態によれば、例示的な薬物送達デバイス10が
図1Aおよび
図1Bに示されている。デバイス10は、上述したように、患者の体に薬剤を注射するように構成される。デバイス10は、典型的には注射予定の薬剤を収容するシリンジ18を収容するハウジング11と、送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要とされる構成要素とを含む。また、ハウジング11に取外し可能に取り付けることができるキャップ12が設けられる。典型的には、使用者は、デバイス10を動作させる前に、ハウジング11からキャップ12を取り外さなければならない。
【0035】
図示のように、ハウジング11は実質上円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って実質上一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。「遠位」という用語は、注射部位に比較的近い位置を指し、「近位」という用語は、注射部位から比較的遠い位置を指す。
【0036】
デバイス10はまた、ハウジング11に連結されたニードルスリーブ19を含むことができ、ハウジング11に対するスリーブ19の動きが可能にされるようになっている。たとえば、スリーブ19は、長手方向軸A-Aに対して平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ19が近位方向に動くことで、針17がハウジング11の遠位領域Dから延びることを可能にすることができる。
【0037】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定して配置することができ、最初は延ばされたニードルスリーブ19内に位置することができる。スリーブ19の遠位端を患者の体に当て、ハウジング11を遠位方向に動かすことによって、スリーブ19が近位に動くことで、針17の遠位端が露出される。そのような相対的な動きにより、針17の遠位端が患者の体内へ延びることが可能になる。そのような挿入は、患者がハウジング11をスリーブ19に対して手動で動かすことを介して針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0038】
別の形態の挿入は「自動化」されており、それによって針17がハウジング11に対して動く。そのような挿入は、スリーブ19の動きまたはたとえばボタン13などの別の形態の起動によってトリガすることができる。
図1Aおよび
図1Bに示すように、ボタン13は、ハウジング11の近位端に位置する。しかし、他の実施形態では、ボタン13がハウジング11の側面に位置することもできる。
【0039】
他の手動または自動機能は、薬物の注射もしくは針の後退または両方を含むことができる。注射とは、栓14をシリンジ18内の近位位置からシリンジ18内のより遠位の位置へ動かし、針17を通って薬剤をシリンジ18から押し出すプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前、駆動ばね(図示せず)が圧縮されている。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域P内に固定することができ、駆動ばねの遠位端は、栓14の近位面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動後、駆動ばね内に貯蔵されたエネルギーの少なくとも一部を栓14の近位面に加えることができる。この圧縮力は、栓14に作用して栓14を遠位方向に動かすことができる。そのような遠位運動は、シリンジ18内の液体薬剤を圧縮して針17から押し出すように作用する。
【0040】
注射後は、針17をスリーブ19またはハウジング11内に後退させることができる。後退は、使用者が患者の体からデバイス10を取り外すにつれてスリーブ19が遠位に動くときに行うことができる。これは、針17がハウジング11に対して固定して配置されたままであるために行うことができる。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を越え、針17が覆われた後、スリーブ19をロックすることができる。そのようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ19のあらゆる近位運動をロックすることを含むことができる。
【0041】
別の形態の針の後退は、針17がハウジング11に対して動かされた場合に行うことができる。そのような動きは、ハウジング11内のシリンジ18がハウジング11に対して近位方向に動かされた場合に行うことができる。この近位運動は、遠位領域D内に位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって実現することができる。圧縮された後退ばねは、起動されると、シリンジ18を近位方向に動かすのに十分な力をシリンジ18に供給することができる。十分な後退後は、ロッキング機構により、針17とハウジング11との間のあらゆる相対的な動きをロックすることができる。加えて、必要とされる場合、デバイス10のボタン13または他の構成要素をロックすることができる。
【0042】
図2Aおよび
図2Bは、
図1Aおよび
図1Bを参照して上述したものに類似しているシリンジ18を含む例示的な注射デバイス20を示す。
図2Aの注射デバイス20はまた、ハウジング(図示せず)を含む。
【0043】
図示のように、注射デバイス20はまたプランジャ21を含み、プランジャ21は、栓14に作用して栓14をシリンジ18内へ動かし、針17を通って薬剤を投薬する。注射デバイス20の使用中、プランジャ21を栓14に押し付けてシリンジ18内へ押し込むために、駆動ばね22が設けられる。駆動ばね22は予荷重されたものとすることができ、プランジャ21を解放するための解放機構を設けることができ、したがって駆動ばね22は、前述したように、プランジャ21および栓14を押して、薬剤を投薬することができる。栓14は省略することができ、プランジャ21の端部23がシリンジ18内で栓として作用できることが理解されよう。
【0044】
図2Aの注射デバイス20はまた、プランジャ21がシリンジ18内へ動いた後の時点で遅延使用者フィードバックを提供する遅延機構を含む。この遅延フィードバックは、薬剤が投薬されたことを使用者に通知し、この遅延により、薬剤が注射部位から分散する時間が提供される。
【0045】
図示のように、この例の注射デバイス20は、プランジャ21内に位置するダンパ、この例ではピストン24、および流体チャンバ25を含む。プランジャ21は細長く、円筒孔26を有しており、プランジャ21の遠位端には開口部27が位置し、開口部27内にピストン24および流体チャンバ25が位置する。
【0046】
図示のように、この例のピストン24は、円板28および反対側端部29と、円板28および反対側端部29を連結するウエブ30とから形成される。ウエブ30は、円板28と反対側端部29との間でウエブ30を取り囲む区域内に自由空間を提供する。また、円筒孔26内に固定された封止板31が設けられ、円筒孔26は封止32を含む。封止板31はアパーチャを含み、ピストン24のウエブ30がアパーチャを通って延び、したがって円板28は、封止板31の第1の(近位)側に位置し、反対側端部29は、封止板31の第2の(遠位)側に位置する。流体チャンバ25は、プランジャ21内で封止板31と円筒孔26の端部との間に画成される。
【0047】
このようにして、円板28は流体チャンバ25内に位置する。駆動ばね22が、ピストン24の反対側端部29と注射デバイス20のハウジング(図示せず)との間に作用する。駆動ばね22は、ピストン24を流体チャンバ25の方へ押す。
【0048】
封止板31とピストン24の反対側端部29との間には、インジケータ、この例では音発生器33が位置する。この例では、音発生器33は、封止板31の近位側に固定されているが、別法としてピストン24に固定することもできる。音発生器33は、偏向したときに音を生成するプリストレス部材(pre-stressed member)を含み(以下に説明する)、これにより使用者に可聴インジケーションが提供される。
【0049】
注射デバイス20の使用中、駆動ばね22はピストン24を押し、ピストン24は流体チャンバ25に圧縮力を加え、流体チャンバ25はプランジャ21を栓14に付勢してシリンジ18に入れる。すなわち、駆動ばね22の力は、ピストン24および流体チャンバ25を介してプランジャ21に提供される。
【0050】
ピストン24の円板28は、少なくとも1つのオリフィス34を備え、ピストン24が駆動ばね22によって近位方向に付勢されると、流体チャンバ25内の流体はオリフィス34を通過する。オリフィス34により、流体が近位側から遠位側へ円板28を通過することが可能になり、したがってピストン24が近位に動くことが可能になる。ピストン24が近位に動くにつれて、ウエブ30は封止板31のアパーチャ内を摺動し、流体は封止板31とピストン24の円板28との間の空間内へ徐々に動く。
【0051】
オリフィス34は、駆動ばね22がピストン24を押し付けるときに流体がオリフィス34を通過することができる速度を抑えるように制限されたサイズである。それによってオリフィス34は、流体チャンバ25内へのピストン24の動きを減衰させるダンパを形成する。
【0052】
ピストン24が近位方向に動くことができる速度は、流体がオリフィス34を通過することができる速度に依存し、流体がオリフィス34を通過することができる速度は、流体の粘性、オリフィス34のサイズおよび数、ならびに駆動ばね22によって加えられる力に依存する。
【0053】
図2Bに示すように、ピストン24が流体チャンバ25内へ完全にまたはほぼ完全に動いたとき、音発生器33は反対側端部29および/または封止板31によって偏向する。音発生器33の偏向により、可聴音を生み出され、使用者にインジケーションが提供される。
【0054】
この例では、オリフィス34を通る流体の運動速度は、プランジャ21がシリンジ18内へのその動きの終了に到達した後の時点で、音発生器33が偏向する点にピストン24が到達するように構成される。特に、駆動ばね22の所与の力に対して、栓14をシリンジ18内へ押し込むのにかかる時間は、ピストン24を流体チャンバ25内へ押し込んで音発生器33を偏向させるのにかかる時間より短い。
【0055】
したがって、薬剤がシリンジ18から投薬された後の時点で、使用者にインジケーションが提供される。この遅延フィードバックにより、注射部位からの薬剤の分散が提供される。
【0056】
遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0057】
図3Aおよび
図3Bは、
図2Aおよび
図2Bを参照して説明したものに類似している例示的な注射デバイス35を示す。この例では、注射デバイス35はまた、プランジャ21および栓14がシリンジ18内へ所定の距離だけ動かされるまでピストン24をロック位置で保持するロッキング機構を有する。
【0058】
ロッキング機構は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、ロッキングアーム36を含み、ロッキングアーム36は、ピボット38でプランジャ21に旋回式に取り付けられており、ピストン24の反対側端部29の遠位側に係合する。各ロッキングアーム36に対して止め具37が設けられ、止め具37はプランジャ21上に位置し、止め具37は、プランジャ21および栓14がシリンジ18内へ動かされるまで、ロッキングアーム36の回転を防止するように配置される。
【0059】
特に、駆動ばね22がピストン24に作用すると、円板28および流体チャンバ25ではなく、ロッキングアーム36および止め具37を介して、プランジャ21へ力が伝達される。したがって、プランジャ21および栓14がシリンジ18内へ動いて薬剤を投薬する間、ロッキングアーム36は
図3Aおよび
図3Bに示す位置に留まる。
【0060】
シリンジ18内へのプランジャ21の動きの終了時または終了頃、ロッキングアーム36はシリンジ18の環状端39に当接する。ロッキングアーム36がシリンジ18の環状端39に当接することによって引き起こされるてこの作用により、ロッキングアーム36は止め具37を破断または変形させ、ロッキングアーム36が回転してピストン24とプランジャ21との間の係合を解放することが可能になる。その後、
図2Aおよび
図2Bを参照して説明したように、駆動ばね22の力がピストン24を流体チャンバ25内へ押し込むように作用し、ダンパ(オリフィス34)によって引き起こされる遅延後、最終的に音発生器33をトリガする。
【0061】
それによって、ロッキング機構は、プランジャ21が針17を通ってすべてまたはほとんどの薬剤を投薬するまで、ピストン24の動きを防止する。これは、温度および背圧の差によって生じうる流体が円板28内のオリフィス34を通過する時間の変動を取り除くために有利である。
【0062】
代替の例では、ロッキングアーム36が旋回式に取り付けられるのではなく、ロッキングアーム36自体がシリンジ18の環状端39に接触したときに破断または変形することができ、それによってピストン24がプランジャ21から独立して動くことが可能になる。
【0063】
図4は、
図2A、
図2B、および
図3を参照して上述したものに類似しているシリンジ18および栓14を含む代替の例示的な注射デバイス40を示す。
【0064】
この例の注射デバイス40はまた、ピストン41に作用する駆動ばね22を含み、ピストン41は、プランジャ42に作用してプランジャ42をシリンジ18内へ駆動する。
図3を参照して上述したのと同じように、プランジャ42がシリンジ18内へ動くまで、ロッキング機構がピストン41内でプランジャ42にロックする。特に、ロッキングアーム36は、ピボット38でプランジャ42に旋回式に取り付けられており、シリンジ18の環状端39に接触するまでピストン41に係合する。この時点で、止め具37は破断され、ロッキングアーム36は回転してピストン41をプランジャ42から解放することができる。その後、駆動ばね22は、プランジャ42の円筒孔43内に形成されて封止板31によって閉鎖された流体チャンバ25内へ、ピストン41を押し込むように作用する。
【0065】
図3Aおよび
図3Bの例と同様に、封止板31はプランジャ42内に位置し、ピストン41は、封止板31内のアパーチャを通過するウエブ44を含む。駆動ばね22は、ピストン41の近位端45に当接し、近位端45と封止板31との間には、音発生器33、この例ではプリストレス部材が位置する。流体リザーバ25内に位置するピストン41の遠位端は、回転撹拌器46の形態のダンパを含む。
【0066】
回転撹拌器46は、回転撹拌器46が流体チャンバ25内の流体中で回転すると抵抗を生み出す1つまたはそれ以上のフィン、パドル、または傾斜板を含む。
【0067】
ピストン41の近位端45は、プランジャ42の円筒孔43内に形成されたねじ山48に係合する少なくとも1つの突起47を含む。ねじ山48は、円筒孔43に沿ってつる巻き状であり、したがってピストン41は、注射デバイス40内で軸方向に動くには、突起47がねじ山48に沿って動くように回転しなければならない。
【0068】
したがって、ロッキングアーム36がピストン41をプランジャ42から解放した後、駆動ばね22がピストン41を遠位方向に押しているとき、ピストン41はプランジャ42内で回転する。この回転は、流体チャンバ25内の回転撹拌器46の回転によって減衰する。この抵抗により、遠位方向におけるピストン41の進行が遅延する。
【0069】
ピストン41が流体チャンバ25の端部の方へ押された/回転した後、音発生器33は、ピストン41の近位端45と封止板31との間で圧縮されて偏向する。音発生器は、偏向すると可聴音を生成し、使用者に可聴インジケーションを提供する。
【0070】
ピストン41の動きの開始と音発生器33の圧縮との間の遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0071】
この例では、ピストン41は、栓14がシリンジ18の端部またはその付近にきてはじめて流体チャンバ25内へ動き始め、したがってインジケーションは、薬剤が注射された後の時点で使用者に提供される。これにより、薬剤が注射部位から分散する時間が可能になる。
【0072】
代替の例では、ロッキング機構(ロッキングアーム)は省略され、回転撹拌器46および流体チャンバ25によって提供される減衰が増大し、したがって、駆動ばね22からの所与の力に対して、ピストン41が最初の位置から音発生器33がトリガされる位置へ動くのにかかる時間は、栓14をシリンジ18の端部へ動かしてすべての薬剤を投薬するために必要とされる時間より大きくなる。このようにして、可聴インジケーションは、薬剤が投薬された後の時点で提供され、注射部位からの薬剤の分散が可能になる。
【0073】
図5Aは、前述したものに類似している栓14およびシリンジ18を含む代替の例示的な注射デバイス50を示す。特に、注射デバイス50は、シリンジ18と、プランジャ51によってシリンジ18内へ押し込まれる栓14とを有する。この例では、プランジャ51と栓14との間にピストン52が位置しており、ピストン52は、プランジャ51の遠位端54内の凹部53内に受け入れられる。凹部53内に流体チャンバ25が画成され、ピストン52が流体チャンバ25を封止する。駆動ばね22はプランジャ51をピストン52に対して付勢し、ピストン52は栓14に対して付勢される。
【0074】
プランジャ51は、プランジャ51の近位端56から延びる円筒孔55を含み、凹部53は、プランジャ51の遠位端54内に位置する。壁57が、円筒孔55および凹部53を分離しており、壁57は、少なくとも1つのオリフィス58を含み、ピストン52が凹部53内へ動いて流体チャンバ25を圧縮すると、流体がオリフィス58を通過する。流体チャンバ25内の流体およびオリフィス58は、流体チャンバ25内へのピストン52の動きを減衰させるダンパを作成する。
【0075】
壁57の近位側(流体チャンバ25とは反対側)にはスペーサ59が位置し、スペーサ59は、オリフィス58と流体連通している受取りチャンバ60を画成し、したがって流体チャンバ25からオリフィス58を通過する流体は、受取りチャンバ60内へ進む。受取りチャンバ60は、空気出口61を含み、したがって流体によって変位した空気が逃げることができる。
【0076】
駆動ばね22はスペーサ59を押し、次に壁57を押し、したがってプランジャ51を栓14およびピストン52の方へ駆動する。その際、ピストン52は流体チャンバ25内へ動かされ、流体がオリフィス58を通って受取りチャンバ60内へ押し込まれる。オリフィス58を通る流体の運動速度が、ピストン52が凹部53内へ動く速度を決定する。したがって、流体の粘性ならびにオリフィス58のサイズおよび数を画成することによって、ピストン52が凹部53内へ動く速度を画成することができる。
【0077】
この例の注射デバイス50はまた、インジケータ、この例では音発生器を含む。図示のように、音発生器は、プランジャ51上に位置するプリストレス部材62を含み、プリストレス部材62は、プランジャ51がシリンジ18の方へ動くとプランジャ51とともに動く。
【0078】
図示のように、プランジャ51はまた、プランジャ51がシリンジ18内へ動くときにプリストレス部材62を第1の状態で保持するクリップ63を含む。クリップは、アーム64およびヘッド65を含み、ヘッド65は、ピストン52の側面に接触し、ピストン52の側面に対して付勢される。ヘッド65は、付勢部材(図示せず)によって、またはプリストレス部材62によって提供される力によって、ピストン52の側面に対して付勢することができる。
【0079】
ピストン52は、ピストン52が流体チャンバ25内へ所定の距離だけ動いた後にクリップ63のヘッド65を受け入れるように適用されたノッチ66を含む。
図5Aに示すように、最初の位置で、クリップ63のヘッド65はノッチ66の近位に位置しており、
図5Bに示すように、駆動ばね22によりピストン52が流体チャンバ25内へ動くと、ヘッド65およびノッチ66が位置合わせされる。位置合わせされた後、アーム64は内方へ偏向し、プリストレス部材62が偏向して、使用者にインジケーションを提供する可聴音を生成する。
【0080】
流体の粘性ならびにオリフィス58のサイズおよび数は、可聴インジケーションが生成される点にピストン52が到達する前に、駆動ばね22が栓14をシリンジ18内へ完全に押し込んで、すべての薬剤を投薬するように選択される。このようにして、フィードバックは、薬剤が注射された後の時点で提供され、薬剤が注射部位から分散することが可能になる。
【0081】
ダンパの配置により、流体チャンバ25内へのピストン52の動きの開始と、音発生器62が音を生成する時点との間に、遅延が生み出される。遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0082】
図6Aは、
図5を参照して説明した例に類似している代替の例示的な注射デバイス70を示す。特に、注射デバイス70は、シリンジ18と、プランジャ71によってシリンジ18内へ押し込まれる栓14とを有する。プランジャ71と栓14との間にピストン72が位置しており、ピストン72は、プランジャ71の遠位端74内の凹部73内に受け入れられる。凹部73は流体チャンバ25を形成し、ピストン72が流体チャンバ25を封止する。
【0083】
プランジャ71は、プランジャ71の近位端76から延びる円筒孔75を含み、凹部73は、プランジャ71の遠位端74内に位置する。壁77が、円筒孔75および凹部73を分離しており、壁77は、オリフィス78を含み、ピストン72が流体チャンバ25内へ動くと、流体がオリフィス78を通過する。
【0084】
壁77の近位側(流体チャンバ25とは反対側)に、細長い受取りチャンバ79が形成され、したがって流体チャンバ25からオリフィス78を通過する流体は、受取りチャンバ79内へ進む。細長い受取りチャンバ79内にはスライダ80が位置し、スライダ80は最初、壁77に近傍の遠位位置にある。
【0085】
駆動ばね22は、壁77を押し、したがってプランジャ71を栓14およびシリンジ18の方へ駆動する。その際、ピストン72は流体チャンバ25内へ動かされ、流体がオリフィス78を通って細長い受取りチャンバ79内へ押し込まれる。オリフィス78を通る運動速度が、ピストン72が流体チャンバ25内へ動く速度を画成する。したがって、流体の粘性ならびにオリフィス78のサイズおよび数を画成することによって、ピストン72が流体チャンバ25内へ動く速度を画成することができる。
【0086】
この例の注射デバイス70はまた、インジケータ、この例では音発生器を含む。図示のように、音発生器は、オリフィス78とは反対側で細長い受取りチャンバ79の近位端に位置するプリストレス部材81を含む。
図6Aに示すように、プリストレス部材81は最初、偏向状態にある。
【0087】
駆動ばね22がプランジャ71をピストン72および栓14に押し付けるにつれて、ピストン72は流体チャンバ25内へ徐々に動き、流体はオリフィス78を通って細長い受取りチャンバ79内へ押し込まれる。流体は、細長い受取りチャンバ79内へ進むと、スライダ80をプリストレス部材81に向かって近位方向に押す。最終的に、
図6Bに示すように、スライダ80はプリストレス部材81に接触してプリストレス部材81を偏向させ、使用者にインジケーションを提供する可聴音を生成する。
【0088】
流体の粘性およびオリフィス78のサイズは、スライダ80がプリストレス部材81に到達する前に、駆動ばね22が栓14をシリンジ18内へ完全に押し込んで、すべての薬剤を投薬するように選択することができる。このようにして、薬剤が完全に投薬される時点と、音発生器81がスライダ80によって接触される時点との間に遅延が生じ、薬剤が注射部位から分散する時間が可能になる。
【0089】
遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0090】
図7Aおよび
図7Bは、さらなる例示的な注射デバイス82を示す。注射デバイス82は、プランジャ83、キャリア84、および回転可能なロッキングアーム85を含み、ロッキングアーム85は、プランジャ83がシリンジ(図示せず)内へ一定距離だけ動かされるまで、キャリア84を保持する。
図7Bに示すように、キャリア84が解放された後、駆動ばね22はキャリア84を近位方向に付勢する。
【0091】
ロッキングアーム85は、ピボット86で注射デバイス82のハウジング87に旋回式に取り付けられる。ロッキングアーム85は、駆動ばね22がキャリア84に押し付けられたときにキャリア84を保持する偏向端88を含む。
図7Aに示す最初の位置では、プランジャ83の存在によって、ロッキングアームが回転するのが防止される。
図7Bに示すように、駆動ばね22がプランジャ83をシリンジ(図示せず)内へ動かした後、アーム83は回転してキャリア84を解放することができる。
【0092】
この例では、ハウジング87の近位端89は、円筒形の突起90を有しており、円筒形の突起90内にはピストン91が設けられて、流体チャンバ92を画成する。ピストン91と円筒形の突起90との間に、封止93が設けられる。ハウジング87の近位端89が、円筒形の突起90内にオリフィス94を含む。流体チャンバ92とはオリフィス94の反対側に、第2のチャンバ95が設けられる。第2のチャンバ95は、場合により、空気出口96を備える。
【0093】
図7Bに示すように、プランジャ83が遠位に動いた後、キャリア84がロッキングアーム84によって解放されたとき、駆動ばね22がキャリア84をピストン91に対して付勢し、ピストン91は、流体チャンバ92内へ押し込まれて流体をオリフィス94へ付勢し、第2のチャンバ95に入れる。第2のチャンバ95から空気出口96を通って空気を変位させることができる。
【0094】
最初、キャリア84が解放される前に第2のチャンバ95内への流体の動きを防止するために、オリフィス94を覆うように封止97を設けることができる。
【0095】
加えて、第2のチャンバ95は透明とすることができ、したがって使用者は、プランジャ83がシリンジ(図示せず)内へのその動きを完了したというインジケーションとして、流体が第2のチャンバ95に入るのを見ることができる。流体は色付きとすることができる。流体は液体、たとえば水とすることができる。
【0096】
オリフィス94は、流体チャンバ92内へのピストン91の動きを減衰させる。
【0097】
図7Aおよび
図7Bに示すように、ピストン91は、使用者への可聴インジケーションをトリガすることができる。この例では、ピストン91は、ピストン91から突出して音発生器に係合するアーム98を含む。音発生器は、ピストン91が流体チャンバ92内へ動くまでアーム98によって偏向位置で保持されるプリストレス要素99であり、ピストン91が流体チャンバ92内へ動いた時点で、アーム98はプリストレス要素99を係合解除し、プリストレス要素99はその自然な形状に戻る。このプリストレス要素99の形状変化により、可聴音が生成され、薬剤が注射部位から分散するのに十分な時間が経過したというインジケーションが使用者に提供される。特に、アーム98は、一定体積の流体が第2のチャンバ95内へ進むまで、プリストレス要素99を係合解除しないようになっており、一定体積の流体が第2のチャンバ95内へ進むことは、オリフィス94の減衰作用によって遅延され、それによってフィードバックの遅延が提供される。遅延の持続時間は、たとえば2秒を超え、もしくは5秒を超え、もしくは10秒を超えることができ、または10~30秒もしくは10~20秒とすることができる。
【0098】
ロッキングアーム85は、プランジャ83がシリンジ(図示せず)内へ所定の距離だけ動かされてはじめてキャリア84を解放し、次いでピストン91、流体チャンバ92、およびプリストレス要素99の配置により、可聴インジケーションが生成される前にさらなる遅延が生み出され、薬剤が注射部位から分散する時間が提供される。
【0099】
前述の注射デバイスのいずれにおいても、注射デバイスが手動で動作されるように適用されている場合、駆動ばねは省略することができることが理解されよう。たとえば、注射デバイスは、プランジャをシリンジ内へ押し込むために使用者が手動で動作させるレバーまたはボタンを備えることができる。この場合、使用者によって提供される力を使用して、流体リザーバを圧縮することができる。
【0100】
前述した例のいずれにおいても、フィードバックが生成される前に遅延を提供する減衰作用は、高粘性の流体または非ニュートン流体を使用することによって増大させることができる。これにより、流体リザーバの圧縮中に流体が出口を通過することができる速度が低減される。
【0101】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物を説明するために本明細書において使用される。以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つの低分子もしくは高分子、またはその組み合わせを含むことができる。例示的な薬学的に活性な化合物は、低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドを含むことができる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込むことができる。これらの薬物の1つまたはそれ以上の混合物もまた、企図される。
【0102】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。限定されることなく、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、かん流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み(たとえば、コーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここに説明される薬物は、針、たとえば小ゲージ針を含む注射デバイスで特に有用であることができる。
【0103】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含むことができる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つまたはそれ以上の薬学的に活性な化合物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の容器とすることができる。たとえば、一部の場合、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を保存するように設計することができる。一部の場合、チャンバは、約1カ月から約2年の間薬物を保存するように設計することができる。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。一部の場合、薬物容器は、薬物製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえば薬物および希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に薬物または薬剤の2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成することができる。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成することができる。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成することができる。
【0104】
本明細書において説明される薬物送達デバイスおよび薬物は、数多くの異なるタイプの障害の処置および/または予防に使用することができる。例示的な障害は、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症を含む。さらなる例示的な障害は、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチである。
【0105】
糖尿病または糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のための例示的な薬物は、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容される塩もしくはその溶媒和物、またはそれらの任意の混合物を含む。本明細書において使用される用語「誘導体」は、元の物質と構造的に十分同様のものであり、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。
【0106】
例示的なインスリン類似体は、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0107】
例示的なインスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。例示的なGLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストは、たとえば:リキシセナチド(Lixisenatide)/AVE0010/ZP10/リキスミア(Lyxumia)、エキセナチド(Exenatide)/エクセンディン-4(Exendin-4)/バイエッタ(Byetta)/ビデュリオン(Bydureon)/ITCA650/AC-2993(アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Liraglutide)/ビクトザ(Victoza)、セマグルチド(Semaglutide)、タスポグルチド(Taspoglutide)、シンクリア(Syncria)/アルビグルチド(Albiglutide)、デュラグルチド(Dulaglutide)、rエクセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(Langlenatide)/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド(Exenatide)-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0108】
例示的なオリゴヌクレオチドは、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセン(mipomersen)/キナムロ(Kynamro)である。
【0109】
例示的なDPP4阻害剤は、ビルダグリプチン(Vildagliptin)、シタグリプチン(Sitagliptin)、デナグリプチン(Denagliptin)、サキサグリプチン(Saxagliptin)、ベルベリン(Berberine)である。
【0110】
例示的なホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストを含む。
【0111】
例示的な多糖類は、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩を含む。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、HylanG-F20/Synvisc、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0112】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例は、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントを含む。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばマウス)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、Fc受容体との結合を支持せず、たとえば、これは、突然変異したまたは欠失したFc受容体結合領域を有する。
【0113】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペププチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの単一特異性または多重特異性抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例は、当技術分野で知られている。
【0114】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0115】
例示的な抗体は、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ(Alirocumab))、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ(Sarilumab))、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ(Dupilumab))である。
【0116】
本明細書において説明される化合物は、(a)化合物または薬学的に許容されるその塩、および(b)薬学的に許容される担体を含む医薬製剤において使用することができる。化合物はまた、1つまたはそれ以上の他の医薬品有効成分を含む医薬製剤、または存在する化合物またはその薬学的に許容される塩が唯一の有効成分である医薬製剤において使用することもできる。したがって、本開示の医薬製剤は、本明細書において説明される化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の製剤を包含する。
【0117】
本明細書において説明される任意の薬物の薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類金属、たとえばNa+、もしくはK+、もしくはCa2+、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1からR4は互いに独立して:水素、場合により置換されたC1~C6-アルキル基、場合により置換されたC2~C6-アルケニル基、場合により置換されたC6~C10-アリル基、または場合により置換されたC6~C10-ヘテロアリール基を意味する)から選択されるカチオンを有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、当業者に知られている。
【0118】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物またはメタノラート(methanolate)またはエタノラート(ethanolate)などのアルカノラート(alkanolate)である。
【0119】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。