(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】デンドロビウムベ-スの材料を含有する皮膚保護組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 69/712 20060101AFI20220404BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20220404BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220404BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220404BHJP
A61K 31/09 20060101ALI20220404BHJP
A61K 31/222 20060101ALI20220404BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20220404BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20220404BHJP
C07C 43/205 20060101ALI20220404BHJP
C07C 69/30 20060101ALI20220404BHJP
C07C 69/773 20060101ALI20220404BHJP
C07C 69/92 20060101ALI20220404BHJP
C07C 69/78 20060101ALI20220404BHJP
C07C 69/54 20060101ALI20220404BHJP
C07C 69/74 20060101ALI20220404BHJP
C07C 69/614 20060101ALI20220404BHJP
C07C 43/215 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C07C69/712 Z CSP
A61K8/33
A61Q19/02
A61Q19/08
A61K31/09
A61K31/222
A61K31/235
A61P17/16
C07C43/205 C
C07C69/30
C07C69/773
C07C69/92
C07C69/78
C07C69/54 B
C07C69/74 Z
C07C69/614
C07C43/215
(21)【出願番号】P 2019524017
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(86)【国際出願番号】 CN2017107798
(87)【国際公開番号】W WO2018090805
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-05-20
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517085701
【氏名又は名称】ホンコン バプテスト ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ホンジエ
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,シウ ワイ
(72)【発明者】
【氏名】ツ-,ユ-
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193590(JP,A)
【文献】特開2009-292768(JP,A)
【文献】特表2010-534227(JP,A)
【文献】特開2015-164903(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102816090(CN,A)
【文献】特表2011-504467(JP,A)
【文献】特開2011-213716(JP,A)
【文献】特開2015-134754(JP,A)
【文献】柚木崎千鶴子,ラジカル消去能,日本食品科学工学会誌,2009年,56(10),,549
【文献】Reimann, Eberhard,Natural stilbenes. Synthesis of polyhydroxystilbene ethers by the Wittig reaction,Chemische Berichte,1969年,102(9),,2881-8
【文献】Erdtman, Holger; Ronlan, A.,Phenol dehydrogenation. XI. Intramolecular oxidative coupling of dihydropiceatannol,Acta Chemica Scandinavica (1947-1973),1969年,23(1),,249-54
【文献】Reimann, Eberhard,Natural stilbenes. Synthesis of polyhydroxystilbene ethers by the Wittig reaction,Chemische Berichte,1969年,102(9),,2881-8
【文献】Erdtman, Holger; Ronlan, A.,Phenol dehydrogenation. XI. Intramolecular oxidative coupling of dihydropiceatannol,Acta Chemica Scandinavica (1947-1973),1969年,23(1),,249-54
【文献】柚木崎千鶴子,ラジカル消去能,日本食品科学工学会誌,2009年,56(10),,549
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7、DR8、DR9、DR10、又はDR11から選択される化合物、若しくは、そのエナンチオマ-、光学的に純粋な立体異性体、ラセミ体、若しくはジアステレオマ-、又は、その薬学的に許容される塩。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項2】
皮膚の黒化の進行を治療、予防及び/又は遅延させるための組成物であって、有効量の請求項1に記載の化合物、若しくは、そのエナンチオマ-、光学的に純粋な立体異性体、ラセミ体、若しくはジアステレオマ-、又は、その薬学的に許容される塩、及びその薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項3】
必要とする対象において皮膚の黒化の進行を治療、予防及び/又は遅延させるための組成物の製造における、請求項1に記載の化合物、若しくは、そのエナンチオマ-、光学的に純粋な立体異性体、ラセミ体、若しくはジアステレオマ-、又は、その薬学的に許容される塩の、単独での及び/又は1つ若しくは複数の薬学的に許容される皮膚ホワイトニング剤及び皮膚保護剤との組み合わせでの使用。
【請求項4】
前記組成物は前記対象に局所的に適用される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記対象はヒトである、請求項3又は4に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、(1)2016年11月15日に出願された米国非仮特許出願第15/351,636号;(2)2016年11月16日に出願された米国非仮特許出願第15/352,903号;(3)2017年6月27日に出願された米国非仮特許出願第15/633,780号の利益を主張する。ここで、米国非仮特許出願第15/351,636号は、2015年6月16日に出願されたシリアル番号14/740,410の米国非仮特許出願の一部継続出願であり;米国非仮特許出願第15/352,903号は、2015年6月16日に出願されたシリアル番号14/740,410の米国非仮特許出願の一部継続出願であり;米国非仮特許出願第15/633,780号は、2016年11月15日に出願された米国非仮特許出願第15/351,636号の分割出願である。これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、Dendrobium officinale及びDendrobium nobileなどのデンドロビウム植物から単離されたスチルベノイド及び/又はスチルベノイド含有抽出物を含んだ、メラニン形成、肌の黒化、及び肌の老化の管理のための皮膚保護組成物に関する。より具体的には、本発明は、メラニン細胞のメラニン形成を低減するためのデンドロビウム成分の利用に関する。本発明はまた、メラニン細胞における活性酸素種及び酸化フリ-ラジカルの生成を減らすためのデンドロビウム成分の利用に関する。本発明は、さらに、皮膚の保護、皮膚のホワイトニング、及び/又は、抗皮膚老化製品の配合における、デンドロビウム由来の抽出物又は成分の使用に関する。
【0002】
一般に、明るい肌は、日光にさらされると暗くなることがある。日光は、私たちの日常生活における主な紫外線源である。紫外線にさらされると、活性酸素種(ROS)及び揮発性の高いフリ-ラジカルが誘発される。その結果、皮膚の表皮にあるメラニン産生細胞、又はメラノサイトは、体細胞の間接的な損傷を最小限に抑えるために、より多くのメラニンを産生する傾向があり、我々の肌は暗くなる(Sklar LR, Almutawa F, Lim HW, Hamzavi I. Effects of ultraviolet radiation, visible light, and infrared radiation on erythema and pigmentation: a review. Photochemical & Photobiological Sciences 2013; 12:54-64)。言い換えれば、メラニン産生の上昇は、実際には紫外線に対する防御メカニズムである。しかしながら、メラニンの蓄積は、異常な色素沈着、皮膚の暗色化、及び美的問題、例えばそばかす又は斑点病を含む有害な生物学的効果をもたらす可能性がある(Mishima Y, Imokawa G. Selective aberration and pigment loss in melanosomes of malignant melanoma cells in vitro by glycosylation inhibitors: premelanosomes as glycoprotein. Journal of Investigative Dermatology 1983; 81: 106-114)。 これに関して、ROS及びフリ-ラジカルの形成は、肌の黒化及び肌の老化をもたらす極めて重要なメカニズムを演じる。ROS及びフリ-ラジカルの除去により、間違いなく酸化ダメ-ジから皮膚細胞を保護することができる。現在、局所抗酸化剤、例えばビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、アスコルビン酸(AC)、ブチル化ヒドロキシアニソ-ル(BHA)及び/又はそれらの誘導体が、市販のスキンケア製品に広く使用されている。 しかしながら、これらの製品は、脱色及び抗酸化特性の両方を有する有効な皮膚保護剤ではない。この点において、それらの皮膚保護に対する効果は非常に限られており、また抑制されている。肌が黒くてくすんでいると、人が年をとって憂鬱で見苦しくみえるという考えが一般的な観念として存在する。したがって、特に東洋の国々では、人々は中程度の肌色と彼らの外皮系の心地良い外観を維持することに熱心である。
【0003】
実は、メラニンは、基本的な肌の色調から、そばかす、誕生跡、しみ、さらには目や髪に至るまで、多種類の肌の色を与える一群の内因性色素を意味する。人体では、メラニンは、メラニン細胞によって産生され、ユ-メラニン、フェオメラニン及びニュ-ロメラニンの3つの主要なタイプに分類される。それらは、化学構造及び物理的性質において異なり、それゆえ、これらは、外部刺激に対する異なる生物学的応答によって誘発される。ユ-メラニン及びフェオメラニンは、皮膚に見られるメラニンの2種である。ユ-メラニンは、主に暗褐色から黒色をもたらす一方で、フェオメラニンは赤みがかった色を生成する(Maresca V, Flori E, Picardo M. Skin phototype: a new perspective. Pigment Cell & Melanoma Research 2015; 28:378-389)。メラニン形成において、チロシナ-ゼは、表皮メラニン形成細胞におけるメラニン産生を調節するための主要な律速酵素である。他方、チロシナ-ゼ関連タンパク質(TRP)は、メラニンバイオポリマ-中のカルボキシル化サブユニットの割合を制御するメラニン形成酵素である。日光にさらされると、メラニン細胞からより多くのアルファ-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)が放出されるにつれて、メラニン沈着が加速される。明白な皮膚の暗色化に加えて、そのような加速は、結果として、顔のしわ、そばかす、発疹、及びシミの大部分を引き起こす、ROS及び/又はフリ-ラジカルのUV誘発生成に対する防御機構である。まとめると、一定の又は過剰な日光又は紫外線曝露の有害な影響には、皮膚の老化、皮膚の損傷、更には皮膚癌までもが含まれる。本発明は、メラニン及び酸化性物質の生合成を効率的に減弱させる組成物を提供する。どのメカニズムにおいても、本発明は、メラニンの蓄積及び/又は皮膚における酸化的損傷を抑制することができ、それ故、皮膚の保護を達成することができる。
【0004】
本発明の組成物は、スチルベノイド、及び/又は、デンドロビウム属の植物(一般に「ShiHu」と呼ばれるラン科の植物)、特にはD.officinale及びD.nobile、から得られる抽出物を含んでいる。前記スチルベノイド、具体的にはトランス-レスベラトロ-ル及びジヒドロ-レスベラトロ-ル、並びに抽出物は、ROS及び酸化的フリ-ラジカルの発生を減弱させる及び/又はメラニン形成細胞中の細胞メラニン含有量を減少させることが見出され、ヒトの皮膚のための皮膚保護、美白及び/又は抗皮膚老化製品の化粧品ブレンドに配合可能である。メラニン形成の減少は、色素産生酵素、即ちチロシナ-ゼ、TRP-1、及びTRP-2の活性の阻害と関連している可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の目的は、スチルベノイド、及び/又は、Dendrobium officinale及びDendrobium nobileなどのデンドロビウム植物から単離されたスチルベノイド含有抽出物を含む、皮膚保護組成物に関する。本発明はまた、メラニン形成及び皮膚の黒化の管理のためのメラニン形成細胞におけるメラニン形成を減少させるための、デンドロビウム由来抽出物又は成分の使用に関する。特に、本発明はまた、皮膚保護、美白及び/又は抗皮膚老化製品の配合物中の、デンドロビウム由来抽出物又は成分の使用に関する。
【0006】
本発明の第1側面の第1の実施形態では、それを必要とする対象の臓器に存在する星状細胞の線維性メディエ-タを抑制するのに使用するための化合物、又は、前記対象の内臓に存在する星状細胞の線維性メディエ-タを抑制するための組成物の調製のための上記化合物の使用が提供される。前記化合物は、下記式(3)を有し、
【化1】
ここで、
R
2及びR
4は、各々独立に、-OR
11及び-OC(O)R
11から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
11、及び-OC(O)R
11から選択されるか;又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成していてもよく;
R
11は、独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR
12によって置換されていてもよく;
R
12は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR
13、-C(O)R
14、-C(O)N(R
13)R
14、-C(O)OR
13、-OC(O)R
14、-S(O)
2R
13、-S(O)
2N(R
13)R
14、-N(R
13)R
14から選択され;
R
13及びR
14は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C
1-6アルキル及びC
1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、そのエナンチオマ-であり;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグであり;
又は、上記化合物、その誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物である。
【0007】
本発明の第1側面の第2の実施形態では、それを必要とする対象の臓器に存在する星状細胞の線維性メディエ-タを抑制するのに使用するための化合物、又は、前記対象の臓器に存在する星状細胞の線維性メディエ-タを抑制するための組成物の調製のための上記化合物の使用が提供され、上記化合物は、以下の式を有している。
【化2】
又は
【化3】
又は
【化4】
又は
【化5】
又は
【化6】
又は
【化7】
又は
【化8】
又は
【化9】
又は
【化10】
【0008】
本発明の第2側面の第1の実施形態では、それを必要とする対象の臓器に存在する星状細胞中の線維性メディエ-タを抑制する方法が提供される。この方法は、式(i)~(viii)又はジヒドロレスベラトロ-ル[即ち式(2)]の1つ又は複数の化合物を含んだ組成物を必要とする対象に投与することを含んでいる。
【0009】
本発明の第2側面の第2の実施形態では、それを必要とする対象の臓器に存在する星状細胞中の線維性メディエ-タを抑制する方法が提供される。ここで、必要とする対象に投与される組成物は、下記式の化合物からなり、少なくとも1.622mg/kg/日の投与量で投与される。
【化11】
【0010】
本発明の第2側面の第3の実施形態では、必要としている対象の臓器に存在する星状細胞における線維性メディエ-タを抑制するための方法であって、前記対象がヒトである方法が提供される。
【0011】
本発明の第2側面の第4の実施形態では、それを必要とする対象の内臓に存在する星状細胞における線維性メディエ-タを抑制する方法であって、組成物がそれを必要とする前記対象に経口投与される方法が提供される。
【0012】
本発明の第2側面の第5の実施形態では、それを必要とする対象の臓器に存在する星状細胞における線維性メディエ-タを抑制する方法であって、上記臓器は膵臓、肝臓、腎臓、及び肺を含む方法が提供される。
【0013】
本発明の第2側面の第6の実施形態では、上記組成物は上記対象に経口投与される。
【0014】
本発明の第3側面の第1の実施形態では、以下の式で表される治療有効量の化合物を用いて、それを必要とする対象において膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療するための化合物が提供される。
【化12】
ここで、
R
2及びR
4は、各々独立に、-OR
11及び-OC(O)R
11から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
11、及び-OC(O)R
11から選択されるか;又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成していてもよく;
R
11は、独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR
12によって置換されていてもよく;
R
12は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR
13、-C(O)R
14、-C(O)N(R
13)R
14、-C(O)OR
13、-OC(O)R
14、-S(O)
2R
13、-S(O)
2N(R
13)R
14、-N(R
13)R
14から選択され;
R
13及びR
14は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C
1-6アルキル及びC
1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、そのエナンチオマ-であり;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグであり;
又は、上記化合物、その誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物である。
【0015】
本発明の第3側面の第2の実施形態では、下記式の化合物を含んだ組成物を用いることを含む、それを必要とする対象において膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療するための方法が提供される。
【化13】
ここで、
R
2及びR
4は、各々独立に、-OR
11及び-OC(O)R
11から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
11、及び-OC(O)R
11から選択されるか;又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成していてもよく;
R
11は、独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR
12によって置換されていてもよく;
R
12は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR
13、-C(O)R
14、-C(O)N(R
13)R
14、-C(O)OR
13、-OC(O)R
14、-S(O)
2R
13、-S(O)
2N(R
13)R
14、-N(R
13)R
14から選択され;
R
13及びR
14は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C
1-6アルキル及びC
1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、そのエナンチオマ-であり;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグであり;
又は、上記化合物、その誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物である。
【0016】
本発明の第3側面の第3の実施形態では、それを必要とする対象において膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療する方法が提供され、上記組成物は下記式を有する化合物からなり、少なくとも1.622mg/kg/日の用量で必要とする対象に投与される。
【化14】
【0017】
本発明の第3側面の第4の実施形態では、それを必要とする対照において膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療するための方法であって、上記対象がヒトである方法が提供される。
【0018】
本発明の第3側面の第5の実施形態では、それを必要とする対象において膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療する方法であって、それを必要とする上記対象に組成物を経口投与する方法が提供される。
【0019】
第3側面の第6の実施形態において、前記化合物は、前記対象の膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療するための組成物の調製に使用され、前記対象はヒトである。
【0020】
本発明の第4側面の第1の実施形態では、以下の式のうちの1つの治療有効量の化合物を含む、それを必要とする対象における膵臓糖尿病(又は3c型糖尿病)の治療に使用するための組成物が提供される。
【化15】
又は
【化16】
又は
【化17】
又は
【化18】
又は
【化19】
又は
【化20】
又は
【化21】
又は
【化22】
又は
【化23】
【0021】
本発明の第4側面の第2の実施形態において、それを必要とする対象において膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療するための組成物が提供され、前記対象に投与される前記組成物は、下記式を有する化合物からなり、上記組成物は少なくとも1.622mg/kg/日の用量で投与される。
【化24】
【0022】
本発明の第4側面の第3の実施形態では、それを必要とする対象において膵臓性糖尿病(又は3c型糖尿病)を治療するための組成物であって、前記対象はヒトである組成物が提供される。
【0023】
本発明の第5側面の第1の実施形態では、下記式(4)の化合物が提供される:
【化25】
ここで、
R
2、R
4、及びR
8は、各々独立に、-OR
11、-OCH
2R
12、-OC(O)R
11、-OCH
2C(O)OR
12、及び、-OC(O)CH
2R
12から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
12、及び-OC(O)R
12から選択されるか;又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成していてもよく;
R
11は、独立して、-(CH
2)-ヒドロカルビル、C
2-10アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリ-ル、及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR
13によって置換されていてもよく;
R
12は、独立して、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、1、2、3、4又は5のR
13によって置換されていてもよく;
R
13は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR
14、-C(O)R
15、-C(O)N(R
14)R
15、-C(O)OR
14、-OC(O)R
15、-S(O)
2R
14、-S(O)
2N(R
14)R
15、-N(R
14)R
15から選択され;
R
14及びR
15は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C
1-6アルキル及びC
1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。
【0024】
本発明の第5側面の第2の実施形態において、式(4)の化合物が提供され、ここで、前記化合物は、その光学的に純粋な立体異性体、エナンチオマ-、ラセミ体、又はジアステレオマ-である。
【0025】
本発明の第5側面の第3の実施形態において、有効量の式(4)の化合物、その誘導体、及びその薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0026】
本発明の第5側面の第4の実施形態では、有効量の式(4)の皮膚ホワイトニング及び皮膚保護化合物、それらの誘導体、及びそれらの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0027】
本発明の第5側面の第5の実施形態において、式(4)の化合物が提供され、上記化合物は、それぞれが下記式で表される、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5、DR6、DR7、DR8、DR9、DR10、若しくはDR11、又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグから選択される。
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【0028】
本発明の第5側面の第6の実施形態では、必要とする対象において皮膚の黒化の進行を治療、予防及び/又は遅延させるための組成物の製造における、化合物(4)及び/又はその誘導体若しくは化学的ヴァリアントの、単独での及び/又は1つ若しくは複数の薬学的に許容される皮膚ホワイトニング剤及び皮膚保護剤との組み合わせでの使用が提供される。
【0029】
本発明の第5側面の第7の実施形態では、必要とする対象において皮膚の黒化の進行を治療、予防及び/又は遅延させるための組成物の製造における、化合物(4)及び/又はその誘導体若しくは化学的ヴァリアントの、単独での及び/又は1つ若しくは複数の薬学的に許容される皮膚ホワイトニング剤及び皮膚保護剤との組み合わせでの使用であって、前記対象がヒトである使用が提供される。
【0030】
本発明の第5側面の第8の実施形態では、式(4)の化合物及び/又はその誘導体をそれを必要とする対象に投与することを含む、皮膚の黒化の発症及び進行を治療及び予防するための方法が提供される。
【0031】
本発明の第5側面の第9の実施形態では、式(4)の化合物及び/又はその誘導体をそれを必要とする対象に投与することを含む、皮膚の黒化の発症及び進行を治療及び予防するための方法であって、前記対象はヒトである方法が提供される。
【0032】
本発明の第5側面の第10の実施形態では、必要とする対象において皮膚の黒化の進行を治療、予防及び/又は遅延させるための組成物の製造における、化合物(4)及び/又はその誘導体若しくは化学的ヴァリアントの、単独での及び/又は1つ若しくは複数の薬学的に許容される皮膚ホワイトニング剤及び皮膚保護剤との組み合わせでの使用であって、前記組成物が局所的に適用される使用が提供される。
【0033】
本発明の第5側面の第11の実施形態では、化合物(4)及び/又はその誘導体若しくは化学的ヴァリアントを単独で及び/又は1つ若しくは複数の薬学的に許容される皮膚ホワイトニング剤及び皮膚保護剤との組み合わせで含む組成物であって、上記組成物が、ペ-スト、固体、粉末、粒子、エマルジョン、デイクリ-ム、ナイトクリ-ム、フェイスロ-ション、ボディロ-ション、ボディバタ-、スキンピ-ル、マスク、シャワ-ジェル、サンクリ-ム、サンロ-ション、アフタ-サンクリ-ム、アフタ-サンロ-ション、リップバ-ム、リップグロスなどの形態である組成物が提供される。
【0034】
本発明の第6側面の第1の実施形態では、式(5)で表される、紫外線露出、皮膚の損傷及び老化に対抗する皮膚ホワイトニング及び皮膚保護化合物が提供される。
【化37】
ここで、
R
2、R
4、及びR
8は、各々独立に、-OR
11、-OCH
2R
11、-OC(O)R
11、-OCH
2C(O)OR
11、及び、-OC(O)CH
2R
11から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
11、及び-OC(O)R
11から選択されるか;又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成していてもよく;
R
11は、独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR
12によって置換されていてもよく;
R
12は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR
13、-C(O)R
14、-C(O)N(R
13)R
14、-C(O)OR
13、-OC(O)R
14、-S(O)
2R
13、-S(O)
2N(R
13)R
14、-N(R
13)R
14から選択され;
R
13及びR
14は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C
1-6アルキル及びC
1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、そのエナンチオマ-、光学的に純粋な立体異性体、ラセミ体、若しくはジアステレオマ-であり;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。
【0035】
本発明の第6側面の第2の実施形態では、下記の式で表される、紫外線露出、皮膚の損傷及び老化に対抗する皮膚ホワイトニング及び皮膚保護化合物、又は、そのエナンチオマ-、又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグが提供される。
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【0036】
本発明の第7側面では、それぞれ以下の合成スキ-ムに従って、ジヒドロレスベラトロ-ルから式DR1~DR11の化合物を合成する方法が提供される。
DR1乃至DR3用のスキ-ム1:
【化50】
ここで、
Rは、-OR
11、-OCH
2R
11又は-OCH
2C(O)OR
11であり;
R
11はヒドロカルビルである。
DR4乃至DR11用のスキ-ム2:
【化51】
ここで、
Rは、-R
11、-CH
2R
11であり;
R
11は、1、2、3、4又は5のR
12によって任意に置換されていてもよいヒドロカルビルであり;
R
12は、ハロゲン又は-OR
13であり;
R
13は、水素又はヒドロカルビルである。
【0037】
一実施形態では、スキ-ム1の下で、ジヒドロレスベラトロ-ル及びRBrをジメチルホルムアミド(DMF)及びK2CO3中に添加し、混合物を形成する。得られた混合物を、薄層クロマトグラフィ-(TLC)上で原材料が消失するまで室温で撹拌する。次いで混合物をH2Oで希釈し、有機相を抽出するために、ジクロロメタン(DCM)で3回洗浄する。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム(NaCl)で2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥する。これを真空中で濃縮し、そして分取TLC(PE/EA=5/1又は3/1)により精製して、所望の化合物を得る。
【0038】
他の実施形態では、スキ-ム2の下で、ジヒドロレスベラトロ-ル及びRCOClをDCM及びEt3N中に0℃で添加し、混合物を形成する。得られた混合物を室温まで温め、原材料がTLC上で消失するまで撹拌する。次いで混合物をH2Oで希釈し、DCMで3回洗浄して、有機相を抽出する。合わせた有機層を飽和NaClで2回洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥する。これを真空中で濃縮し、そして分取TLC(PE/EA=5/1又は3/1)により精製して、所望の化合物を得る。
【0039】
本発明の他の側面では、式(1)の化合物を含む有効量のスチルベノイド誘導体を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することによって膵臓の急性炎症状態及び関連全身合併症を治療する方法が提供される。
【化52】
式中、R
1、R
2及びR
3は、各々独立して、アルキル基から選択される。用語「アルキル」は、単独で又は他の基と組み合わせて、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖アルキル部位への言及を含んでいる。この用語はさらに、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル又はイソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル)、ペンチル、ヘキシルなど、並びにそれらの誘導体又は化学的ヴァリアントなどの基によって例示される。また、上記化合物、誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物も含まれる。
【0040】
本発明の他の側面の一実施形態では、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症を治療する方法であって、スチルベノイド誘導体が、トランス-3,5,4’-トリヒドロキシビベンジル又はジヒドロレスベラトロ-ル(即ち式(2)の化合物)、並びにそれらの誘導体又は化学的ヴァリアント、又は、上記化合物、その誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物である方法が提供される。
【化53】
【0041】
本発明の他の側面の他の実施形態では、対象がヒト又は動物である、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症の治療方法が提供される。
【0042】
本発明の他の側面の別の実施形態では、組成物が経口投与される、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症の治療方法が提供される。
【0043】
本発明の他の側面のさらに別の実施形態では、膵臓の急性炎症性症状があらゆる形態の急性膵炎を含み、関連性全身性合併症が肺損傷を含む、膵臓の急性炎症性症状及び関連全身性合併症の治療方法が提供される。
【0044】
したがって、本発明の他の側面の別の実施形態では、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症を治療する方法であって、上記組成物が20mg/kg以上の用量で上記対象に1日3回以上投与される方法が提供される。
【0045】
本発明の他の側面のさらなる実施形態では、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症を治療する方法であって、上記組成物が3.24mg/kg以上の用量で上記対象に1日3回以上投与される方法が提供される。
【0046】
本発明の別の側面において、分子式C
14H
14O
3及び式(2)の化合物を調製する方法が提供される。この化合物は、トランス-レスベラトロ-ルの水素化によって得られるトランス-3,5,4’-トリヒドロキシビベンジルの化学名を有するスチルベノイド誘導体である。
【化54】
【0047】
本発明の別の側面の一実施形態では、分子式C14H14O3及び式(2)の化合物を調製する方法であって、トランス-レスベラトロ-ルの水素化が以下の工程を含んでいる方法が提供される。
トランス-レスベラトロ-ルの溶液を、無水エタノ-ル(EtOH)中、室温、5atm水素圧、10%Pd/Cの存在下で、8時間撹拌すること;
攪拌溶液から触媒を濾別すること;
濾液を真空中で蒸発させて残渣を生成させること;そして、
石油エ-テル及び酢酸エチル(1:1)を用いたシリカゲルクロマトグラフィ-分離を使用して残渣を溶出させてジヒドロ-レスベラトロ-ルを生成すること。
【0048】
当業者は、本明細書に記載された発明が具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受けやすいことを理解するであろう。本発明はそのような変形及び修正の全てを含む。
【0049】
本発明はまた、本明細書において個々に又はまとめて参照又は示されるすべてのステップ及び特徴、並びにあらゆるすべての組み合わせ、又は任意の2つ以上のステップ又は特徴を含む。
【0050】
本明細書を通じて、文脈上別段の要求がない限り、「comprise」又は「comprises」若しくは「comprising」などの変形は、記載された整数又は整数群を含むことを意味し、他の整数又は整数群をを排除することを意味しない。本開示、特に請求の範囲及び/又は段落において、「comprises」、「comprised」、「comprising」などの用語は、対応する特許法においてそれに起因する意味を有することができることに留意されたい。例えば、それらは「includes」、「included」、「including」などを意味することがある。「consisting essentially of」及び「consists essentially of」などの用語もまた、米国特許法においてそれらに付与されている意味を有し、例えば、それらは明示的に列挙されていない要素を許容しているが、先行技術において見いだされているか、又は、本発明の基本的若しくは新規な特徴に影響を及ぼす要素を除外している。
【0051】
さらに、本明細書及び請求の範囲を通して、文脈上別段の要求がない限り、「include」又は「includes」若しくは「included」などの変形は、記載された整数又は整数群を含むことを意味し、他の整数又は整数群を排除することを意味しない。
【0052】
本明細書で使用される選択された用語の他の定義は、本発明の詳細な説明の中に見出されるかもしれない。そして、その定義は、全体を通して適用され得る。他に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0053】
本発明の他の態様及び利点は、以下の説明を検討することから当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の上記の及び他の目的及び特徴は、本発明に関する以下の記載を、下記の図面と共に参照することにより、明らかになるであろう。
【0055】
【
図1】
図1は、セルレイン誘発急性膵炎の結果としての膵臓浮腫の影響によるラットの水分含有量の増加を示す。得られた体重は、体重に対する膵臓重量の比率として表されている。p値が0.05未満の値は、統計的に有意とみなされる。対照群と比較して
*p<0.05であり、セルレイン群と比較して
#p<0.05である。
【0056】
【
図2】
図2A乃至
図2Fは、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色による、対照群(
図2A)、セルレイン群(
図2B)、及び、ジヒドロ-レスベラトロ-ル(D-Res)治療群(
図2C~2F)の膵臓組織における構造及び形態変化を示す。画像は50μmのスケ-ルバ-で示されている。
【0057】
【
図3】
図3A乃至
図3Eは、H&E染色による、対照群(
図3A)、セルレイン群(
図3B)、及び、ジヒドロ-レスベラトロ-ル(D-Res)治療群(
図3C~3E)の肺組織における構造及び形態変化を示す。画像は200倍の倍率で示されている。
【0058】
【
図4A】
図4Aは、比色分光光度法による、対照群、セルレイン群、及び、ジヒドロ-レスベラトロ-ル(D-Res)治療群の膵臓組織における好中球の隔離を表すMPO活性の測定を示す。p値が0.05未満の値は、統計的に有意とみなされる。対照群と比較して
*p<0.05であり、セルレイン群と比較して
#p<0.05である。
【0059】
【
図4B】
図4Bは、比色分光光度法による、対照群、セルレイン群、及び、ジヒドロ-レスベラトロ-ル(D-Res)治療群の肺組織における好中球の隔離を表すMPO活性の測定を示す。p値が0.05未満の値は、統計的に有意とみなされる。対照群と比較して
*p<0.05であり、セルレイン群と比較して
#p<0.05である。
【0060】
【
図5A】
図5Aは、酵素免疫測定法(ELISA法)による、対照群、セルレイン群、及び、ジヒドロ-レスベラトロ-ル(D-Res)治療群の膵臓組織中のTNF-αレベルの測定を示す。p値が0.05未満の値は、統計的に有意とみなされる。対照群と比較して
*p<0.05であり、セルレイン群と比較して
#p<0.05である。
【0061】
【
図5B】
図5Bは、ELISAによる、対照群、セルレイン群、及び、ジヒドロ-レスベラトロ-ル(D-Res)治療群の肺組織中のTNF-αレベルの測定を示す。p値が0.05未満の値は、統計的に有意とみなされる。対照群と比較して
*p<0.05であり、セルレイン群と比較して
#p<0.05である。
【0062】
【
図6A】
図6Aは、比色分光光度法による、対照群、セルレイン群、及び、ジヒドロ-レスベラトロ-ル(D-Res)治療群の膵臓組織中のグルタチオンレベルの測定を示す。p値が0.05未満の値は、統計的に有意とみなされる。対照群と比較して
*p<0.05であり、セルレイン群と比較して
#p<0.05である。
【0063】
【
図6B】
図6Bは、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)及びトランスレスベラトロ-ル(Res)の、セルレイン誘発性急性膵炎ラットにおける膵臓浮腫の結果としての水分量の減少に対する改善効果を示す。得られた体重は、体重に対する膵臓重量の比率として表されている。p値が0.05未満の値は、統計的に有意とみなされる。生理食塩水処置対照群(Con)と比較して
*p<0.05であり、セルレイン処置群と比較して
#p<0.05である。
【0064】
【
図7】
図7は、ジヒドロレスベラトロ-ル及びトランスレスベラトロ-ルで処理した膵臓腺房細胞におけるMTT細胞増殖による代謝速度の測定を示す。ジヒドロレスベラトロ-ル又はトランスレスベラトロ-ルなしで処理した細胞と比較した場合に
*p<0.05である。
【0065】
【
図8A】
図8Aは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【
図8B】
図8Bは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【
図8C】
図8Cは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【
図8D】
図8Dは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【
図8E】
図8Eは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【
図8F】
図8Fは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【
図8G】
図8Gは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【
図8H】
図8Hは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)からの8つの誘導体(すなわち化合物iから化合物viii)を示す。
【0066】
【
図8I】
図8Iは、ジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)の化学構造を示す。
【0067】
【
図9】
図9は、TGF-β(5ng/mL)と共にプレインキュベ-トし、20μg/mLのトランスレスベラトロ-ル(Resv)又はジヒドロレスベラトロ-ル又はスチルベン化合物i~viiiで24時間に亘って処理したLTC-14PSCのウエスタンブロッティングを示す。対照(Control)は、Resv又はいかなるスチルベノイドによっても処理されなかった。
【0068】
【
図10】
図10は、TGF-β(5ng/mL)と共にプレインキュベ-トし、示された濃度においてトランスレスベラトロ-ル(Resv)又はジヒドロレスベラトロ-ルで処理したLTC-14細胞のウエスタンブロッティングにおけるα-SMA及びFN1のプロ-ビングを示す。
【0069】
【
図11】
図11は、PSC活性化の程度を示唆するLTC-14細胞における線維性フィラメントα-SMAの緑色蛍光シグナル(図中の矢印)を示す。
【0070】
【
図12】
図12は、セルレイン(Cer)誘発慢性膵炎マウスにおける、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res、20mg/kg/日)又はトランスレスベラトロ-ル(Res、20mg/kg/日)による処置の有無による、線維症の程度の推定のための膵臓組織切片におけるフィブロネクチン(FN1)沈着の蛍光シグナルを示す。
【0071】
【
図13】
図13は、腹腔内耐糖能試験における、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res、20mg/kg/日)による処置の有無による、正常マウス(対照)及び慢性膵炎マウス(Cer)のグルコ-ス応答を示す。すべての時点で、Cer群とCer+D-Res群との間で、有意な差(p<0.05)が達成された。
【0072】
【
図14】
図14は、膵臓インスリン分泌細胞(すなわちベ-タ細胞)領域の評価のための膵臓組織切片中のインスリンの蛍光シグナルを示す。比較は、対照マウス、慢性膵炎マウス、及び20mg/kg/日のジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)の処置を受けている慢性膵炎マウスの間で行われる。
【0073】
【
図15】
図15は、B16メラノサイトにおける細胞メラニン含有量に対する、デンドロビウムスチルベノイド(25μM)、即ち、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)、トランスレスベラトロ-ル(Res)、及び化合物DR1乃至DR11の抑制効果を示す。アスコルビン酸(AC)及びBHAを陽性対照として用いた。デ-タは平均値±標準誤差(SEM)として表す(n=3)。DMSO処理細胞に対して
*p<0.05及び
**p<0.01である。
【0074】
【
図16】
図16は、A375メラノサイトにおける細胞メラニン含有量に対する、デンドロビウムスチルベノイド(25μM)、即ち、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)、トランスレスベラトロ-ル(Res)、及び化合物DR1乃至DR11の抑制効果を示す。アスコルビン酸(AC)及びBHAを陽性対照として用いた。デ-タは平均値±標準誤差(SEM)として表す(n=3)。DMSO処理細胞に対して
*p<0.05及び
**p<0.01である。
【0075】
【
図17】
図17は、B16メラノサイトにおける細胞メラニン含有量に対する、D.nobile抽出物(JCSH、50μg/mL)、D.officinale抽出物(TPSH、50μg/mL)、トランスレスベラトロ-ル(Res、25μM)、及び、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res、25μM)の抑制効果を示す。アスコルビン酸(AC)を陽性対照として用いた。デ-タは平均値±標準誤差(SEM)として表す(n=3)。DMSO処理細胞に対して
*p<0.05である。
【0076】
【
図18】
図18は、B16メラノサイトにおけるチロシナ-ゼ活性に対する、デンドロビウムスチルベノイド(25μM)、即ち、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)、トランスレスベラトロ-ル(Res)、及び化合物DR1乃至DR11の阻害効果を示す。アスコルビン酸(AC)及びBHAを陽性対照として用いた。デ-タは平均値±標準誤差(SEM)として表す(n=3)。DMSO処理細胞に対して
*p<0.05及び
**p<0.01である。
【0077】
【
図19】
図19は、A375メラノサイトにおけるチロシナ-ゼ活性に対する、デンドロビウムスチルベノイド(25μM)、即ち、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)、トランスレスベラトロ-ル(Res)、及び化合物DR1乃至DR11の阻害効果を示す。アスコルビン酸(AC)及びBHAを陽性対照として用いた。デ-タは平均値±標準誤差(SEM)として表す(n=3)。DMSO処理細胞に対して
*p<0.05である。
【0078】
【
図20】
図20は、B16メラノサイトにおけるチロシナ-ゼ活性に対する、D.nobile抽出物(JCSH、50μg/mL)、D.officinale抽出物(TPSH、50μg/mL)、トランスレスベラトロ-ル(Res、25μM)、及び、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res、25μM)の阻害効果を示す。アスコルビン酸(AC)を陽性対照として用いた。デ-タは平均値±標準誤差(SEM)として表す(n=3)。DMSO処理細胞に対して
*p<0.05及び
**p<0.01である。
【0079】
【
図21】
図21は、B16メラノサイトにおけるTRP-1、TRP-2、フォスフォ-AKT及びフォスフォ-p38のタンパク質レベルに対する、D.nobile抽出物(JCSH、L:10;M:25;H:50μM)、D.officinale抽出物(TPSH、L:10;M:25;H:50μM)、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res、L:25;H:50μM)、トランスレスベラトロ-ル(Res、L:25;H:50μM)、アスコルビン酸(AC、H:50μg/mL)の抑制効果を示す。GAPDHは、ロ-ディング基準として機能する。
【0080】
【
図22】
図22は、B16メラニン形成細胞におけるROS生成に対する、D.nobile抽出物(JCSH、高:50μg/mL;低:25μg/mL)、D.officinale抽出物(TPSH、高:50μg/mL;低:25μg/mL)、トランスレスベラトロ-ル(Res、高:50μM;低:25μM)、ジヒドロレスベラトロ-ル(D-R、高:50μM;低:25μM)及びアスコルビン酸(AC、50μM)の抑制効果を示す。蛍光シグナルは、Ex488nmで測定される。デ-タは平均値±標準誤差(SEM)として表す(n=3)。TBHP単独処理(即ち、デンドロビウム抽出物又は化合物なし)に対して
*p<0.05である。
【0081】
【
図23】
図23は、7日目及び14日目における個々のヒト対象の腕上における、2%トランスレスベラトロ-ル(Res)又は2%ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)含有溶液のホワイトニング効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態のいずれかによって範囲が限定されるべきではない。以下の実施形態は例示のためにのみ提示される。
【0083】
定義
ヒドロカルビル
本明細書で使用される「ヒドロカルビル」という用語は、水素原子及び炭素原子のみからなる部分への言及を含む。そのような部分は脂肪族及び/又は芳香族部位を含み得る。この部位は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子を含み得る。ヒドロカルビル基の例には、C1~6アルキル(例:C1、C2、C3又はC4アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチル);アリ-ルで置換されたC1~6アルキル(例えばベンジル)又はシクロアルキルで置換されたC1~6アルキル(例えばシクロプロピルメチル);シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又はシクロヘキシル);アリ-ル(例えば、フェニル、ナフチル又はフルオレニル)などが挙げられる。
【0084】
アルキル
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル部位への言及を含む。、アルキル基の例には、「C1~6アルキル」及び「C2-10アルキル」が含まれる。本明細書で使用される「C1~6アルキル」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル部位への言及を含む。本明細書で使用される「C2-10アルキル」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル部位への言及を含む。この用語は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル又はイソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチル)、ペンチル、ヘキシルなどの基への言及を含む。特に、アルキル部位は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有していてもよい。
【0085】
アルケニル
「アルケニル」及び「C2-6アルケニル」という用語は、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有し、さらに少なくとも1つの二重結合を有する直鎖又は分枝鎖アルキル部位への言及を含む。該当する場合には、E又はZの何れかの立体化学を有し得る。この用語は、エテニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル及び3-ヘキセニルなどの基への言及を含む。
【0086】
アルキニル
「アルキニル」及び「C2-6アルキニル」という用語は、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有し、さらに少なくとも1つの三重結合を有する直鎖又は分枝鎖アルキル部位への言及を含む。この用語は、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニルなどの基への言及を含む。
【0087】
アルコキシ
「アルコキシ」及び「C1-6アルコキシ」という用語は、-O-アルキルへの言及を含み、ここでアルキルは、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐鎖である。あるクラスの実施形態において、アルコキシは、1、2、3又は4個の炭素原子を有する。この用語は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどの基への言及を含む。
【0088】
シクロアルキル
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有する脂環式部分への言及を含む。この基は、架橋又は多環式の環系であり得る。より多くの場合には、シクロアルキル基は単環式である。この用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、ビシクロ[2.2.2]オクチルなどの基への言及を含む。
【0089】
アリ-ル
本明細書で使用される「アリ-ル」という用語は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の環炭素原子を含む芳香族環系への言及を含む。アリ-ルはしばしばフェニルであるが、少なくとも1つが芳香族である2つ以上の環を有する多環式環系であり得る。この用語は、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、インデニル、アントリルなどの基への言及を含む。
【0090】
環状基
「環式基」は、不飽和又は部分的に不飽和であり得るが、通常は飽和であり、典型的には5~13個の環形成原子、例えば5又は6員環を含む環又は環系を意味する。環又は環系は、1つ又は複数のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。環式基には、カルボシクリル及びヘテロシクリル部位が含まれる。
【0091】
カルボシクリル
本明細書で使用される「カルボシクリル」という用語は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の炭素環原子を有する飽和(例えばシクロアルキル)又は不飽和(例えばアリ-ル)環部分への言及を含む。特に、カルボシクリルは、飽和でも不飽和でもよい、3~10員環又は環系、特に5又は6員環を含む。環又は環系は、1つ又は複数のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。カルボシクリル部位は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、インデニル、アントリルなどから選択される。
【0092】
ヘテロシクリル
本明細書で使用される「ヘテロシクリル」という用語は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の環原子を有する飽和(例えばヘテロシクロアルキル)又は不飽和(例えばヘテロアリ-ル)複素環部分への言及を含む。上記環原子の少なくとも1つは、窒素、酸素、リン、ケイ素及び硫黄から選択される。特に、ヘテロシクリルは、飽和でも不飽和でもよい、3~10員環又は環系、特に5又は6員環を含む。環又は環系は、1つ又は複数のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。
【0093】
ヘテロシクリル部位は、例えば、オキシラニル、アジリニル、1,2-オキサチオラニル、イミダゾリル、チエニル、フリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、チオピラニル、チアトレニル、イソベンゾフラニル、ベンゾフラニル、クロメニル、2H-ピロリル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ピロリジジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、ベンズイミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピラゾリジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジチアゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピリダジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、特にチオモルホリノ、インドリジニル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、クマリル、インダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、プリニル、4/V-キノリジニル、イソキノリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、デカヒドロキノリル、オクタヒドロイソキノリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾイル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フラザニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロメニル、イソクロマニル、クロマニルなどから選択される。
【0094】
ヘテロシクロアルキル
本明細書で使用される「ヘテロシクロアルキル」という用語は、3、4、5、6又は7個の環炭素原子、及び、窒素、酸素、リン及び硫黄から選択される1、2、3、4又は5個の環ヘテロ原子を有する、飽和複素環式部位への言及を含む。この基は、多環式環系であり得るが、より多くの場合は単環式である。この用語は、アゼチジニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキシラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、インドリジジニル、ピペラジニル、チアゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、キノリジジニルなどの基への言及を含む。環又は環系は、1つ又は複数のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。
【0095】
ヘテロアリ-ル
本明細書で使用される「ヘテロアリ-ル」という用語は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の環原子を有する芳香族複素環系への言及を含む。上記環原子の少なくとも1つは、窒素、酸素、及び硫黄から選択される。この基は、少なくとも1つが芳香族である、2つ以上の環を有する多環式環系であり得る。より多くの場合には、この基は単環式である。環又は環系は、1つ又は複数のヒドロカルビル基で置換されていてもよい。この用語は、ピリミジニル、フラニル、ベンゾ[b]チオフェニル、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピロリジニル、ピリジニル、ベンゾ[b]フラニル、ピラジニル、プリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、フェノチアジニル、トリアジニル、フタラジニル、フタラジニル、フタラジニル、2H-クロメニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、プテリジニルなどの基への言及を含む。
【0096】
ハロゲン
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br又はIへの言及を含む。
【0097】
ハロゲン含有部位
本明細書で使用される「ハロゲン含有部位」という表現は、炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~30個の複数の原子価原子を含む部分への言及を含み、この部位は少なくとも1つのハロゲンを含む。この部位は、ヒドロカルビル、例えばC1~6アルキル又はC1~6アルコキシ、又はアリ-ルなどのカルボシクリルであり得る。
【0098】
置換
ある部位に関して本明細書で使用される「置換された」という用語は、前記部位中の1個以上、特に5個まで、更に特には1、2又は3個の水素原子が互いに独立して対応する数の置換基によって置換されることを意味する。本明細書で使用される「任意に置換されている」という用語は、置換又は非置換であることを意味する。当然のことながら、置換基は、それらが化学的に可能である位置にのみ存在し、当業者は過度の努力なしに(実験的に又は理論的に)特定の置換が可能かどうかを決定できる。
【0099】
エナンチオマ-
本明細書で使用される「エナンチオマ-」という用語は、互いの鏡像を有する2つの立体異性体のうちの一方を意味する。
【0100】
ラセミ体
本明細書で使用される「ラセミ体」という用語は、キラル分子の等量のエナンチオマ-の混合物を意味する。
【0101】
ジアステレオマ-
本明細書で使用される「ジアステレオマ-」という用語は、エナンチオマ-ではないが、1つ以上の等価キラル中心で異なる立体配置を有する立体異性体のクラスの1つを意味する。ジアステレオマ-の例は、ただ1つのキラル中心の立体配置が異なるエピマ-である。
【0102】
立体異性体
本明細書で使用される「立体異性体」という用語は、同じ分子式及び結合原子の配列を有するが空間におけるそれらの原子の異なる三次元配向を有するクラスの異性体分子の1つを意味する。
【0103】
プロドラッグ
プロドラッグは、不活性な(又は完全に活性なわけではない)化学誘導体として投与され、その後、典型的には通常の代謝過程を経て体内で活性な薬理学的物質に変換される薬である。
【0104】
独立して
2つ以上の部位が原子又は基のリストから「各々独立して」選択されると記載されている場合、これは、それらの部位が同じでも異なっていてもよいことを意味する。したがって、各部位の同一性は、1つ又は複数の他の部位の同一性とは無関係である。
【0105】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の各態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えて、他の態様の各々と同様である。さらに、更なる実施形態を提供するために、各実施形態で指定された特徴を他の指定された特徴と組み合わせることができる。
【0106】
確立されたいくつかの動物モデルの中で、コレシストキニン分泌促進薬であるセルレインの反復腹腔内(i.p.)注射が、実験的な急性膵炎の生成のための最も広く使用されている再現性の高い方法である。リポ多糖(LPS)の単回投与がその後に行われると、肺組織における好中球の隔離及び肺胞膜関門の透過性の増加を特徴とする肺損傷が、急性膵炎関連合併症としてしばしば観察される。急性膵炎の発症を診断するためには、消化酵素、すなわちα-アミラ-ゼの血流への大量の漏出が主要な病理学的パラメ-タとみなされている。急性膵炎の重症度及び関連する肺損傷を評価するために、間質性浮腫、細胞損傷、白血球浸潤及び出血を含む臓器構造の形態学的変化が、組織学的及び/又は病理学的パラメ-タとして特徴付けられる。組織学的検査のほかに、異常なMPO活性は、好中球が仲介する炎症状態の重症度を評価するためにしばしば測定される。局所及び全身の炎症反応は、罹患組織のホモジネ-ト中に存在する高レベルの炎症誘発性サイトカインによってさらに確認することができる。さらに、防御機構であるグルタチオン枯渇は、組織損傷の重症度を評価するための最も一般的なパラメ-タの1つである。
【0107】
本発明の方法により治療される対象は、ヒト又は動物であり得る。本発明は、様々な形態の急性膵炎、特に肺損傷を含む急性膵炎関連全身性合併症に適用可能である。
【0108】
トランス-3,5,4’-トリヒドロキシビベンジルとしても知られているジヒドロレスベラトロ-ルは、植物抽出物からしばしば得られる、スチルベノイドのファミリ-に属するポリフェノ-ルの誘導体である。実は、ジヒドロレスベラトロ-ルは、非生物的及び生物的課題に対する、ラン科植物及びCannabis sativa L.を含む様々な植物種によって産生されるフィトアレキシンである。特に、Fritzemeier, K.H., Kindl, H. 1983. 9,10-dihydrophenanthrenes as phytoalexins of Orchidaceae. Biosynthetic studies in vitro and in vivo proving the route from L-phenylalanine to dihydro-m-coumaric acid, dihydrostilbene and dihydrophenanthrenes. Eur J Biochem 133, 545-550に報告されているような真菌感染症の場合に該当する。
【0109】
本発明は、式(1)を有するスチルベノイドファミリ-のポリフェノ-ル誘導体の使用法に関する。
【化55】
式中、R
1、R
2及びR
3は、各々独立して、アルキル基から選択される。用語「アルキル」は、単独で又は他の基と組み合わせて、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖アルキル部位への言及を含んでいる。この用語はさらに、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル又はイソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル)、ペンチル、ヘキシルなどの基によって例示され、膵臓及び肺の組織損傷を改善する。
【0110】
本発明はさらに、膵臓及び肺の組織損傷を改善するための、ジヒドロレスベラトロ-ル(式(2)参照)としても知られるトランス-3,5,4’-トリヒドロキシビベンジルを含むスチルベン化合物の使用に関する。
【化56】
本発明において、この特定のスチルベノイド誘導体は、トランスレスベラトロ-ルの脱水素化によって白色粉末として得られる。
【0111】
さらに、本発明は、上記化合物の製造方法、そのような化合物を含有する医薬製剤、及び医薬製剤の製造のためのこの化合物の使用に関する。
【0112】
20mg/kg以上の充分な投与量でのジヒドロレスベラトロ-ルの経口投与は、セルレイン処置ラットにおける急性膵炎の重症度及び関連する肺損傷を有意に改善することが示されている。病理学的パラメ-タに関しては、急性膵炎のラットは、膵臓浮腫の減弱により膵臓水分量が減少し(
図1)、α-アミラ-ゼの血漿レベルが低下し(表1)、より無傷の腺房形態を示し(
図2C乃至2F)、肺胞壁及び出血の厚みが減少する(
図3C乃至3E)ことが示されている。
表1:血漿α-アミラ-ゼ活性がU/μl/分として表される。p値が0.05未満の場合は統計的に有意であるとみなされ、SDは標準偏差を表す。対照群と比較して
*p<0.05であり、セルレイン群と比較して
#p<0.05である。
【表1】
【0113】
MPOの活性として定量されるセルレイン誘発性の高レベルの好中球隔離は、ジヒドロレスベラトロ-ルの投与によって膵臓及び肺組織において有意に抑制される(
図4A及び4B)。膵臓及び肺におけるセルレイン誘発性の高レベルのTNF-αは、ジヒドロレスベラトロ-ルの投与によって有意に抑制される(
図5A及び5B)。
【0114】
グルタチオン枯渇は、組織損傷の特徴的な徴候である。膵臓におけるセルレイン誘発性の低下したグルタチオンレベルは、ジヒドロレスベラトロ-ルの投与によって有意に回復する(
図6A)。
【0115】
本発明では、ジヒドロレスベラトロ-ルは、0.5%(重量/体積、w/v)メタノ-ルに安全に容易に溶解する一方、トランスレスベラトロ-ルは、激しく振とうし、2.5%(w/v)メタノ-ルに溶解する(表2)。従って、ジヒドロレスベラトロ-ルの溶解度は、トランスレスベラトロ-ルのそれと比較して、少なくとも5倍高い。ジヒドロレスベラトロ-ルの改善効果は、トランスレスベラトロ-ルのそれと比較して、セルレイン誘発性急性膵炎のラットにおける膵臓浮腫の結果としての水分量の減少に対して、より効果的であった(
図6B)。
表2:ジヒドロレスベラトロ-ル及びトランスレスベラトロ-ルのメタノ-ル中での溶解度
【表2】
【0116】
MTTアッセイによるミトコンドリア代謝速度の評価から、膵臓腺房細胞におけるジヒドロレスベラトロ-ルの細胞毒性は約500μMであると決定され、一方トランスレスベラトロ-ルのそれは約250μMであると決定される(
図7)。従って、ジヒドロレスベラトロ-ルの細胞毒性は、トランスレスベラトロ-ルのそれより50%低かった。
【0117】
実験
【0118】
ジヒドロレスベラトロ-ルの調製及び構造同定。ジヒドロレスベラトロ-ルの分子式は、C14H14O3として決定され、トランスレスベラトロ-ルの水素化によって白色粉末として得られた。トランスレスベラトロ-ル(10g、43.8mmol)の無水エタノ-ル(150ml)の溶液を5気圧のH2下室温で10%Pd/C(0.2g)の存在下で撹拌した。触媒を濾別することにより、8時間後に反応を停止させた。濾液を真空中で蒸発させ、残留物を石油エ-テル及び酢酸エチル(1:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィ-分離にかけて、白色アモルファス粉末として、ジヒドロレスベラトロ-ルを得た(9.6g、95%収率):HR-ESIMS ([M+1]+ m/z 231.1026, calcd 231.1016 for C14H15O3); 1H NMR (methanol-d4, 400 MHz) δ6.96 (2H, ABd, J = 8.3 Hz), 6.67 (2H, ABd, J = 8.4 Hz), 6.13 (2H, brd, J = 2.2 Hz), 6.09 (1H, brt, J = 2.2 Hz), 2.74 (2H, brdd, J = 8.5, 5.6), 2.67 (2H, brdd, J = 8.3, 5.2); 13C NMR (methanol-d4, 100 MHz) δ159.2 (2C, s), 156.3 (1C, s), 145.6 (1C, s), 134.1 (1C, s), 130.3 (2C, d), 116.0 (2C, d), 108.1 (2C, d), 101.1 (1C, d), 39.6 (2C, t), 38.0 (2C, t)
【0119】
生物活性の評価体重70~90gの範囲で28日齢のSprague-Dawleyラットを無作為に6~8個体の6群に割り当てた。ラットを23±2℃の周囲温度、60~80%の相対湿度及び12時間の明/暗周期で飼育した。実験前に、ラットを一晩飢餓状態にしたが、水を自由に摂取させた。実験的急性膵炎は、最大刺激用量(50μg/kg)でセルレインを6時間毎に腹腔内注射し、続いて最後のセルレイン注射の1時間後に7.5mg/kgでLPSを単回投与することによってラットに誘発された。この群のラットをセルレイン群とした。対照群には、同じ体積及び同じ時間間隔でセルレインの代わりに0.9%食塩水を注射した。セルレイン及び経口投与量のジヒドロレスベラトロ-ル(10、20又は50mg/kg)を投与した処置群をセルレイン+D-res10又は20又は50mg/kgと命名した。最初のセルレイン注射の30分後に治療的介入を3時間続けた。瘢痕化したらすぐに膵臓を摘出し、秤量し、脂肪から切り取り、4%パラホルムアルデヒド-リン酸緩衝生理食塩水で4℃で一晩固定した。次いでサンプルを処理し、パラフィンワックス中に包埋し、切片にし、そしてH&E染色にかけた。膵臓及び肺のサンプル中のTNF-αのレベルは市販のELISAキットを用いて決定した。組織ホモジネ-トを、MPO活性及びグルタチオン含有量の評価のために生化学的アッセイにかけた。
【0120】
機能的な無傷の腺房は、穏やかな剪断力によるコラゲナ-ゼ消化を用いて膵臓組織から解離された。37℃、95%空気加湿雰囲気で、5%CO2中、5%ウシ胎児血清(GIBCO)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(GIBCO)を添加したダルベッコ改変イ-グル培地(GIBCO)で腺房を培養した。LTC-14細胞を1×104/ウェルの密度で96ウェルプレ-トに播種し、異なる濃度のジヒドロレスベラトロ-ル又はトランスレスベラトロ-ル(DMSOに溶解)で24時間に亘って培養した。24時間の治療期間の終わりに、MTT試薬を細胞に添加した。3時間の反応時間後、MTT生成物をDMSOに溶解し、570nmの吸光度を測定した。
【0121】
結果
【0122】
膵臓浮腫の発生のために、セルレインの誘発後、急性膵炎ラットにおける膵臓対身体の重量比は、非セルレイン誘発対照と比較した場合、およそ60%劇的に増加した。20mg/kg以上の充分な投与量でのジヒドロレスベラトロ-ルの経口投与は、膵臓の身体に対する重量比の有意な減少によって反映されるように、膵臓浮腫を顕著に減少させた。膵臓浮腫の減少に対するジヒドロレスベラトロ-ルの改善効果は、認定抗酸化剤であるトランスレスベラトロ-ルより効果的であった。ヒトの投与量に関して、相当する投与量は、Reagan-Shaw S, Nihal M, Ahmad N (2008) Dose translation from animal to human studies revisited. FASEB J 22(3) : 659-661による標準投与量換算に基づいて、3.24mg/kgである。
【0123】
ジヒドロレスベラトロ-ルの経口投与を行った場合、セルレイン誘発急性膵炎ラットでは、膵臓実質における小葉間中隔の焦点拡大、細胞質収縮及び白血球浸潤が著しく減少し、肺組織の肺壁肥厚及び出血は著しく改善された。
【0124】
膵臓及び肺の炎症状態を軽減するために、炎症誘発性サイトカインTNF-αのレベル及びMPO活性は、ジヒドロレスベラトロ-ルの経口投与によって膵臓組織及び肺組織において有意に減少した。
【0125】
セルレイン誘発膵臓組織中のグルタチオンのレベルは、非セルレイン処置対照と比較した場合、50%以上劇的に枯渇した。ジヒドロレスベラトロ-ルの経口投与は、セルレイン誘発膵臓におけるグルタチオン枯渇を有意に抑制した。
【0126】
メタノ-ルベ-スの溶媒中のジヒドロレスベラトロ-ルの溶解度は、トランスレスベラトロ-ルのそれの少なくとも5倍であった。腺房のミトコンドリア代謝率を評価することによって、ジヒドロレスベラトロ-ルの細胞毒性は約500μMであることが示されたのに対して、トランスレスベラトロ-ルのそれはおよそ250μMであった。従って、ジヒドロレスベラトロ-ルの細胞毒性は、トランスレスベラトロ-ルのそれより50%低かった。
【0127】
本発明の第1側面の第1の実施形態では、式(1)の化合物を含む有効量のスチルベノイド誘導体を含む組成物をそれを必要とする対象に投与することによって膵臓の急性炎症状態及び関連全身合併症を治療する方法が提供される。
【化57】
式中、R
1、R
2及びR
3は、各々独立して、アルキル基から選択される。用語「アルキル」は、単独で又は他の基と組み合わせて、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖アルキル部位への言及を含んでいる。この用語はさらに、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル又はイソプロピル)、ブチル(n-ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチル)、ペンチル、ヘキシルなど、並びにそれらの誘導体又は化学的ヴァリアントなどの基によって例示される。また、上記化合物、誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物も含まれる。
【0128】
本発明の他の側面の一実施形態では、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症を治療する方法であって、スチルベノイド誘導体が、トランス-3,5,4’-トリヒドロキシビベンジル又はジヒドロレスベラトロ-ル(即ち式(2)の化合物)、並びにそれらの誘導体又は化学的ヴァリアント、又は、上記化合物、その誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物である方法が提供される。
【化58】
【0129】
本発明の第1側面の第3の実施形態では、対象がヒト又は動物である、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症を治療する方法が提供される。
【0130】
本発明の第1側面の第4の実施形態では、組成物を経口投与する、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症の治療方法が提供される。
【0131】
本発明の第1側面の第5の実施形態では、膵臓の急性炎症性状態があらゆる形態の急性膵炎を含み、関連性全身性合併症が肺損傷を含む、膵臓の急性炎症性状態及び関連全身性合併症の治療方法が提供される。
【0132】
本発明の第1側面の第6の実施形態では、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症を治療する方法であって、上記組成物が20mg/kg以上の用量で上記対象に1日3回以上投与される方法が提供される。
【0133】
本発明の第1側面の第7の実施形態では、膵臓の急性炎症状態及び関連する全身性合併症を治療する方法であって、上記組成物が3.24mg/kg以上の用量で上記対象に1日3回以上投与される方法が提供される。
【0134】
本発明の第2側面第1の実施形態では、本発明の別の側面において、分子式C
14H
14O
3及び式(2)の化合物を調製する方法が提供される。この化合物は、トランス-レスベラトロ-ルの水素化によって得られるトランス-3,5,4’-トリヒドロキシビベンジルの化学名を有するスチルベノイド誘導体である。
【化59】
【0135】
本発明の第2側面の第2の実施形態では、分子式C14H14O3及び式(2)の化合物を調製する方法であって、トランス-レスベラトロ-ルの水素化が以下の工程を含んでいる方法が提供される。
トランス-レスベラトロ-ルの溶液を、無水EtOH中、室温、5atm水素圧、10%Pd/Cの存在下で、8時間撹拌すること;
攪拌溶液から触媒を濾別すること;
濾液を真空中で蒸発させて残渣を生成させること;そして、
石油エ-テル及び酢酸エチル(1:1)を用いたシリカゲルクロマトグラフィ-分離を使用して残渣を溶出させてジヒドロ-レスベラトロ-ルを生成すること。
【0136】
本発明の好ましい態様
TGF-βは、FN1を含む一連の線維性メディエ-タが上方制御されているPSC活性化の強力な誘導物質として、いくつかの先行研究によって報告されている。ラット由来の不死化PSCである培養LTC-14細胞において、線維性フィラメントα-SMA及びECMタンパク質FN1の発現レベルは、組換えTGF-β(5ng/mL)の外因性添加によって著しく上昇する。本発明のさらなる一実施形態では、本発明者らは、ジヒドロレスベラトロ-ルの投与が、TGF-βの攻撃時にラットPSCにおけるα-SMA及びFN1の発現レベルを有意に減弱させることを発見した。ジヒドロレスベラトロ-ルの誘導体は、PSCにおいて同様の抑制効果を発揮する。有名な抗酸化剤トランスレスベラトロ-ルと比較して、ジヒドロレスベラトロ-ルの抑制効果がより顕著である。試験スチルベノイドのうち、ジヒドロレスベラトロ-ルは、それらが中程度の構造的差異を有するにもかかわらず、PSCにおいて最も強力な抗線維化効果を発揮する。
【0137】
本発明は、必要としている対象の内臓に存在する星状細胞の線維性メディエ-タを抑制するための、以下の式の化合物を提供する。
【化60】
ここで、
R
2及びR
4は、各々独立に、-OR
11及び-OC(O)R
11から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
11、及び-OC(O)R
11から選択されるか;又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成していてもよく;
R
11は、独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR
12によって置換されていてもよく;
R
12は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR
13、-C(O)R
14、-C(O)N(R
13)R
14、-C(O)OR
13、-OC(O)R
14、-S(O)
2R
13、-S(O)
2N(R
13)R
14、-N(R
13)R
14から選択され;
R
13及びR
14は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C
1-6アルキル及びC
1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、そのエナンチオマ-であり;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグであり;
又は、上記化合物、その誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物である。
【0138】
本発明はさらに、必要とする対象の内臓に存在する星状細胞の線維性メディエ-タを抑制するための、下式の化合物:
【化61】
即ち、4-[2-(3-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)エチル]-2,6-ジメトキシ-フェノ-ル;
【化62】
即ち、トリスチン;
【化63】
即ち、3,3’ ,5-トリヒドロキシジベンジル;
【化64】
即ち、5-[2-(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)エチル]-2,3-ジメトキシ-フェノ-ル;
【化65】
即ち、5-[2-(3-ヒドロキシフェニル)エチル]-2,3-ジメトキシ-フェノ-ル;
【化66】
即ち、クレピダチン;
【化67】
即ち、モスカチリン;
【化68】
即ち、アロイフォルI;
【化69】
即ち、ジヒドロレスベラトロ-ル。
【0139】
内臓(臓器)は、例えば、対象の膵臓、肝臓、腎臓及び肺であり得る。対象は、ヒト対象であり得る。
【0140】
実験:
【0141】
LTC-14細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したIMDM中、95%空気及び5%CO2の加湿条件下で37℃で培養した。全ての実験において使用された細胞は、継代数9~25の間であった。LTC-14細胞を1×105の密度で12ウェルプレ-トに播種し、0.2%のFBSを補充したIMDM中、0、1、5、10及び20μg/mLのジヒドロレスベラトロ-ルを含む5ng/mLの組換えTGF-βとともに24時間インキュベ-トした。次いで、細胞をタンパク質抽出及びウエスタンブロッティング分析又は免疫蛍光染色のために採取した。
【0142】
LTC-14細胞の全タンパク質は、プロテア-ゼ阻害剤を含有するRIPA溶解緩衝液を使用して抽出される。細胞溶解物をロ-ドし、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離した。湿式エレクトロブロッティングの後、タンパク質をPVDF膜(Bio-rad)に移し、5%脱脂乳でブロックし、抗体でプロ-ブし、そしてECLキット(GE Healthcare)の利用により可視化した。
【0143】
α-SMAの免疫蛍光染色のために、LTC-14細胞を1×105の密度で24ウェルプレ-トのポリ-L-リジンコ-トカバ-ガラス上に播種し、ジヒドロレスベラトロ-ルを含む5ng/mLのTGF-β、及び0.2%FBSを補充したIMDM中、0及び10μg/mLで24時間インキュベ-トした。次いで細胞を固定し、3%BSAでブロックし、抗体でプロ-ブし、そして4′,6-ジアミジノ-2-フェニルインド-ル(DAPI)を含有する蛍光封入剤を用いて封入した。Nikon顕微鏡を用いて画像を捕捉し、SPOT Advancedソフトウェアによって分析した。
【0144】
生物活性の評価体重が20~25gの範囲の28日齢のC57/BL6マウスを無作為に6~8個体の4群に分けた。マウスは、23±2℃の周囲温度、60~80%の相対湿度及び12時間の明/暗サイクルで飼育した。耐糖能試験の前に、マウスを一晩飢餓状態にしたが、水を自由に摂取させた。実験的な慢性膵炎は、1週間に3日、合計6週間、1日に最大刺激用量(50μg/kg)でセルレインを1時間に4回i.p.注射することによってマウスに誘発された。対照群には、同じ体積及び同じ時間間隔でセルレインの代わりに0.9%食塩水を注射した。セルレイン及び経口投与量のジヒドロレスベラトロ-ル(20mg/kg/日)を投与した処置群をCer+D-resと命名した。処置の経過において、ジヒドロレスベラトロ-ルの投与量50mg/kg/日も試みられたが、線維症形成において20mg/kg/日の投与量と統計的に有意な差は達成されなかった。それにもかかわらず、in vivoトライアルにおいて、このより高い投与量からの有害な影響は得られなかった。従って、ジヒドロレスベラトロ-ルの有効投与量が少なくとも20mg/kg/日であると結論する。トランスレスベラトロ-ルが投与されるグル-プはCer+Resと命名される。両化合物の薬物介入は、4週目の最初の日から実験の終わりまで、すなわち合計3週間で行われた。6週間の実験の終わりに、マウスを腹腔内グルコ-ス負荷試験(IPGTT)にかけた。マウスはIPGTTの前に14時間飢餓状態にあり、ここで15%(w/v)グルコ-ス溶液が体重1kgあたり1.5gのグルコ-スで個々の動物に注射された。尾静脈から約1μLの血液が得られ、血糖値は、グルコメ-タ-(Medisign、韓国)を使用して、グルコ-ス注射の30分前(すなわち、絶食時)及び10、20、30及び60分後にモニタ-された。瘢痕化したらすぐに膵臓を摘出し、秤量し、脂肪から切り取り、4%パラホルムアルデヒド-リン酸緩衝生理食塩水中で4℃で一晩固定した。次にサンプルを処理し、パラフィンワックスに包埋し、切片にして免疫染色にかけた。
【0145】
用量換算式によると、ヒトの等価投与量(mg/kg)=動物の投与量(mg/kg)に動物のKm/ヒトのKmを掛けたものであり、ここで、マウスのKmは3、ヒトのKmは37である(成人健康志願者の治療薬の初期臨床試験における最大安全開始用量を推定する業界のためのガイダンス)。本発明のジヒドロレスベラトロ-ルの有効なヒト等価用量は少なくとも1.622mg/kg/日である。
【0146】
本発明のさらに別の実施形態において、ジヒドロレスベラトロ-ルの8つの他の誘導体(化合物i~viii)及びジヒドロレスベラトロ-ル(化合物2)が
図8A~8Iに示される。この実施形態では、各化合物は以下のようにして実験される。
【0147】
【0148】
LTC-14細胞をTGF-β(5ng/mL)と共にプレインキュベ-トし、トランスレスベラトロ-ル(Resv)又はジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)又はスチルベン化合物i~viiiを用いて、20μg/mLで24時間処理した。対照(Control)は、Resv又はいかなるスチルベノイドによっても処理されなかった。全タンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティングを用いて分析した。これを
図9に示す。
【0149】
LTC-14細胞は膵星細胞である。α-SMAは線維形成の顕著な構成要素であるのに対して、β-アクチンはロ-ディングコントロ-ルとして機能する。したがって、α-SMAの発現レベルはPSC活性化の程度を意味する。TGF-βは線維性事象の強力な誘発物質とみなされるために添加された。α-SMA発現レベルに対する抑制効果を、ジヒドロレスベラトロ-ル及び化合物i~viiiの間で、トランス-レスベラトロ-ル(Resv)との関連で試験した。全ての試験化合物は、α-SMA発現レベルの抑制効果を発揮する。
【0150】
LTC-14細胞をTGF-β(5ng/mL)と共にプレインキュベ-トし、トランスレスベラトロ-ル又はジヒドロレスベラトロ-ルを用いて、示された濃度で処理した。全タンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティングを用いて分析した。これを
図10に示す。
【0151】
FN1は、線維形成中又は膵星細胞の活性化時に産生される主要な細胞外マトリックスタンパク質である。その発現レベルは線維形成の程度を意味する。FN1及びα-SMAのレベルに対する抑制効果をジヒドロレスベラトロ-ル(すなわち化合物2)とトランスレスベラトロ-ルとの間で試験する。
【0152】
LTC-14細胞をTGF-β(5ng/mL)と共にプレインキュベ-トし、そして免疫蛍光染色の前に、24時間、20μg/mLのジヒドロレスベラトロ-ルで処理した。
【0153】
LTC-14細胞は膵星細胞である。α-SMAは線維形成の顕著な構成要素であるのに対して、β-アクチンはロ-ディングコントロ-ルとして機能する。したがって、α-SMAの緑色蛍光シグナル(
図11中の矢印によって識別される)は、PSC活性化の程度を意味する。TGF-βは線維性事象の強力な誘発物質とみなされるために添加された。α-SMA発現レベルに対するジヒドロレスベラトロ-ルの抑制効果を試験する。
【0154】
膵臓組織切片をFN1に対する抗体で染色する。したがって、免疫染色シグナルは、実質におけるFN1沈着の程度を意味する。20mg/kg/日のジヒドロレスベラトロ-ル(Cer+D-Res)による処置は、慢性膵炎におけるそのような沈着を、トランスレスベラトロ-ル(Cer+Res)よりもより有意な方法で軽減する。これを
図12に示す。
【0155】
生物活性の評価体重が20~25gの範囲の28日齢のC57/BL6マウスを無作為に6~8個体の4群に分けた。マウスは、23±2℃の周囲温度、60~80%の相対湿度、及び12時間の明/暗周期で飼育された。ジヒドロレスベラトロ-ルの経口投与(20mg/kg/日)が与えられたとき。慢性膵炎マウス(Cer)の空腹時血糖値は対照群のそれより著しく高くなり、これらの慢性膵炎マウスが糖尿病の識別可能な特徴である高血糖症を発症することを示している。重要なことに、耐糖能障害は、3週間のジヒドロレスベラトロ-ル処置(Cer+D-Res)によって有意に改善された。結果として、慢性膵炎マウスの高血糖状態は改善される。これを
図13に示す。
【0156】
ジヒドロレスベラトロ-ル(Cer+D-Res)の経口投与を20mg/kg/日で行うと、膵炎の重症度、並びに、膵島、特にβ細胞の収縮及び破壊、が顕著に改善される。
図14に示すように、膵臓β細胞領域は、免疫蛍光インスリンシグナルによって反映されている。ベ-タ細胞の面積又は質量の減少は、耐糖能の欠乏、又は糖尿病の発症を意味する。したがって、ジヒドロレスベラト-ル治療によるβ細胞領域の回復は、このスチルベノイドが膵臓性糖尿病(すなわち3c型糖尿病)の治療に有益であることを示している。
【0157】
用量換算式によると、ヒトの等価投与量(mg/kg)=動物の投与量(mg/kg)に動物のKm/ヒトのKmを掛けたものであり、ここで、マウスのKmは3、ヒトのKmは37である(成人健康志願者の治療薬の初期臨床試験における最大安全開始用量を推定する業界のためのガイダンス)。本発明のジヒドロレスベラトロ-ルの有効なヒト等価用量は少なくとも1.622mg/kg/日である。
【0158】
本発明の他の好ましい実施形態
一般に「Shi Hu」と呼ばれるデンドロビウム植物は、伝統的な漢方薬(TCM)システムや、慢性萎縮性胃炎、糖尿病、心血管疾患などのさまざまな種類の病気を治療するための民間療法で広く使用されている。デンドロビウム由来の抽出物又は成分は、かなりの量の様々なスチルベノイド、例えばトランスレスベラトロ-ル及びジヒドロレスベラトロ-ルを含んでおり、これらは、人体の酸化ストレスと戦うための潜在的な化合物である。しかしながら、皮膚保護又は皮膚ホワイトニングのためのこれらの化合物の使用は開示されていない。
【0159】
東洋の化粧品は植物ベ-スの構成を好むこともあり、本発明は、デンドロビウム由来のスチルベノイド、特にトランスレスベラトロ-ル、ジヒドロレスベラトロ-ル、又はジヒドロレスベラトロ-ル誘導体を、酸化的ラジカル及びROSの発生を阻害する可能性を有するメラニン形成の減少において使用することに関する。本組成物は、それを必要とする対象に局所投与により適用される。 本組成物は、デイクリ-ム、ナイトクリ-ム、フェイスロ-ション、ボディロ-ション、ボディバタ-、スキンピ-ル、マスク、シャワ-ジェル、サンクリ-ム、サンロ-ション、アフタ-サンクリ-ム、アフタ-サンロ-ション、リップクリ-ム、若しくはリップグロス、又はそれらの類似物の形態である。
【0160】
本組成物は、デンドロビウム植物から誘導される1つ又は複数の抽出物を含む。
【0161】
本組成物は、以下の式を有する1つ又は複数のスチルベノイドを含む。
【化70】
ここで、
R
2、R
4、及びR
8は、各々独立に、-OR
11、-OCH
2R
12、-OC(O)R
11、-OCH
2C(O)OR
12、及び、-OC(O)CH
2R
12から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
12、及び-OC(O)R
12から選択されるか、又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8がそれらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成しており;
R
11は、独立して、-(CH
2)-ヒドロカルビル、C
2-10アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリ-ル、及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR
13によって置換されていてもよく;
R
12は、独立して、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、1、2、3、4又は5のR
13によって置換されていてもよく;
R
13は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR
14、-C(O)R
15、-C(O)N(R
14)R
15、-C(O)OR
14、-OC(O)R
15、-S(O)
2R
14、-S(O)
2N(R
14)R
15、-N(R
14)R
15から選択され;
R
14及びR
15は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C
1-6アルキル及びC
1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、そのエナンチオマ-であり;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグある。
【0162】
本組成物は、以下の式を有するスチルベノイドを含む。これらは、ジヒドロレスベラトロ-ル、及びその誘導体又は化学的ヴァリアント、又は、前記化合物、その誘導体及び/又は化学的ヴァリアントの混合物である。
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【0163】
皮膚ホワイトニング及び皮膚保護のための本組成物は、以下の式を有するスチルベノイドを含む。
【化83】
ここで、
R
2、R
4、及びR
8は、各々独立に、-OR
11、-OCH
2R
11、-OC(O)R
11、-OCH
2C(O)OR
11、及び、-OC(O)CH
2R
11から選択され;
R
1、R
3、R
5、R
6、R
7、R
9、及びR
10は、各々独立して、水素、ハロゲン、トリフルオロメチル、-OR
11、及び-OC(O)R
11から選択されるか;又は、R
2及びR
3若しくはR
7及びR
8は、それらが結合している炭素原子と一緒になって環式基を形成していてもよく;
【0164】
R11は、独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの基の各々は、任意に、1、2、3、4又は5のR12によって置換されていてもよく;
【0165】
R12は、独立して、ハロゲン、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、オキソ、-OR13、-C(O)R14、-C(O)N(R13)R14、-C(O)OR13、-OC(O)R14、-S(O)2R13、-S(O)2N(R13)R14、-N(R13)R14から選択され;
【0166】
R13及びR14は、各々独立して、水素であるか、又は、ヒドロカルビル及びヘテロシクリルから選択され、これらの何れかは、任意に、水素、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、C1-6アルキル及びC1-6アルコキシから独立して選択される1、2、3、4又は5の置換基によって置換されていてもよく;
又は、そのエナンチオマ-であり;
又は、その薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグある。
【0167】
抗酸化能力を決定するために、予め形成された、ABTSとしても知られる2,2’-アジノビス-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)のラジカルモノカチオンで補完された分光脱色アッセイが使用される。このアッセイでは、ABTS(Abcam、米国)を7mMの濃度まで水に溶解し、ABTSストック溶液を2.45mMの過硫酸アンモニウム(シグマアルドリッチ、米国)と反応させてABTSラジカルカチオンを生成し、使用前に混合物を16時間室温で暗所に放置する。デンドロビウム抽出物サンプル又はスチルベノイドサンプルをテストする場合、ABTSラジカル溶液をエタノ-ルで734nmで0.70の吸光度に希釈し、30℃で平衡化する。試験サンプル(0.1mL)又はDMSO(0.1mL)の希釈物をABTSラジカル溶液(0.9mL)と共に、734nmで吸光度を測定する前に15分間インキュベ-トする。DMSOをビヒクル治療として使用する一方、0.001~0.05mg/mLの範囲の有名な誘導体ビタミンEであるTrolox(Abcam、米国)をポジティブドラッグレファレンスとして使用する。試験サンプルの抗酸化能力は、トロロックス標準曲線に従ってミリグラム(mg)でトロロックスに相当する量として表される。
【0168】
ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)、トランスレスベラトロ-ル(Res)、デンドロビウム抽出物サンプル、又は他のスチルベノイドサンプル(化合物DR1乃至DR11)とのインキュベ-ション時には、表3に示すように、事前に形成されたABTSラジカルを除去し、それらの抗酸化能をTrolox陽性標準に正規化する。
表3:トロロックスの量(mg)に相当するスチルベノイドの抗酸化能:
【表3】
【0169】
細胞メラニン含有量及びチロシナ-ゼ活性は、培養されたB16及びA375メラノサイトにおいて決定される。実際、メラノサイトはメラニン産生細胞であるが、メラニンは多数の肌の色を与える内因性色素のグル-プを指す。B16細胞(上海生物研究所、中国科学アカデミ-、米国)及びA375細胞(米国タイプカルチャ-コレクション、米国)は、通常、37℃の95%空気及び5%CO2の加湿雰囲気中の1%ペニシリン/ストレプトマイシン(ギブコ、米国)中、10%熱活性化ウシ胎児血清(FBS、ギブコ、米国)を添加したDMEM培地(ギブコ、米国)中で、培養する。
【0170】
細胞のメラニン含有量を測定するために、メラニン細胞を12ウェルプレ-ト(8×104セル/ウェル)に播種し、アルファ-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH、100nM)で24時間刺激する。このような刺激は、メラニン形成細胞におけるメラニンの細胞形成を促進することを目的としているので、メラニン形成に対する試験化合物又は抽出物の還元能力はより明白になる。α-MSH刺激の後、細胞は別のデンドロビウム抽出物サンプル又はスチルベノイドサンプル(5μL)又はDMSO(5μL、Sigma-Aldrich、USA)でさらに24時間処理される。DMSOはビヒクル治療として機能する。実験の終わりに、細胞を培養プレ-トから分離するためにトリプシン処理する。遠心分離後、各試料のメラニンペレットを100μLの1N水酸化ナトリウム溶液(Sigma-Aldrich、USA)と1.5時間70℃でインキュベ-トする。室温に冷却した後、溶液を15,000×gで10分間遠心分離する。各試料の上清(100μL)を96ウェルプレ-トに移し、405nmでの吸光度を読み取る。各サンプルの相対メラニン含有量はそのタンパク質含有量で正規化され、DMSO処理細胞に対する変化率として表される。
【0171】
ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)、トランスレスベラトロ-ル(Res)、デンドロビウム抽出物サンプル、又は他のスチルベノイドサンプル(化合物DR1乃至DR11)とのインキュベ-ション時には、B16及びA375メラニン形成細胞中の細胞メラニン含有量は、
図15~17に示すように減少している。
【0172】
細胞チロシナ-ゼ活性を測定するために、メラニン細胞を12ウェルプレ-ト(8×104セル/ウェル)に播種し、α-MSH(100nM)で24時間刺激する。α-MSH刺激の後、細胞は、更に24時間、異なる試験サンプル(5μL)又はDMSO(5μL)で処理される。実験の終わりに、細胞を氷冷リン酸緩衝食塩水(PBS、pH6.8)(ギブコ、米国)で2回洗浄し、次いで氷上で0.1%TritonX-100を含有する150μLのPBS(pH6.8)で溶解する。細胞溶解物を4℃で15分間15,000×gで遠心分離する。上清50μLのアリコ-トをL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン (L-DOPA、Abcam、USA)溶液(PBS中0.2%、pH6.8)に96ウェルプレ-ト中で混合し、37℃で2時間、暗所でインキュベ-トする。各サンプルの光学密度を475nmで測定する。吸光度は各サンプルのタンパク質含有量で正規化されている。メラノサイト中の細胞チロシナ-ゼの相対活性を計算し、DMSO処理細胞に対する変化率として表す。加えて、TRP1及びTRP2の発現レベルのウエスタンブロッティング分析のために、それらの上流調節因子p-AKT及びp-38と同様に別の組の実験を集める。
【0173】
ジヒドロレスベラトロ-ル(D-Res)、トランスレスベラトロ-ル(Res)、デンドロビウム抽出物サンプル、又は他のスチルベノイドサンプル(化合物DR1乃至DR11)とのインキュベ-ション時には、B16及びA375メラニン形成細胞におけるチロシナ-ゼ活性は、
図18~20に示されるように阻害されている。ウエスタンブロッティングの結果を
図21に示す。
【0174】
細胞内ROSの発生を調べるために、メラニン細胞を12ウェルプレ-ト(8×10
4セル/ウェル)に播種し、α-MSH(100nM)で24時間刺激する。α-MSHインキュベ-ションの終わりに、細胞を培養プレ-トから分離するためにトリプシン処理し、製造業者の指示に従って細胞ROS検出アッセイ(Abcam)に供する。簡単に説明すると、まず、細胞を20μMのDCFDAで37℃で30分間染色する。染色後、5μLの容量の我々の試験抽出物又は化合物又はアスコルビン酸(AC)との4時間のインキュベ-ションの前に、明らかなレベルのROS上昇のために、細胞をtert-ブチル過酸化水素(TBHP、55nM)を用いて処理する。ROS生成のシグナルは蛍光マイクロプレ-トリ-ダを用いて検出される。DCFは488nmのレ-ザ-により励起される。このアッセイの結果を
図22に示す。
【0175】
全てのアッセイは三重に行われ、個々の実験において少なくとも3回繰り返される。結果は平均値±標準偏差として示されている。2つのグル-プ間の差異はスチュ-デントのt試験によって評価され、2つ以上のグル-プ間の分散は、一元配置分散分析(一元ANOVA)によって計算される。0.05未満のp値は統計的に有意とみなされる。
【0176】
個々のヒト対象の皮膚の色を決定するために、個体の両腕の初期皮膚状態を0日目に皮膚比色計MPA5によって試験する。 個々の類型角(ITA°)は、輝度(L
*)及び黄-青成分(b
*)の値に基づいて比色計によって計算される。ITA°値が大きいほど、皮膚の白色度が大きい(S. Del Bino and F. Bernerd. Variations in skin colour and the biological consequences of ultraviolet radiation exposure. British Journal of Dermatology 2013; 169 (Suppl. 3), 33-40)。実際、肌の色は、表4に示すように、非常に淡い、淡い、中間的、日焼けしている、茶色、黒いの6つの主要な区分に分類される。2つの領域(それぞれ2cm×2cm)を治療領域として選択し、腕の治療領域を囲む領域を対照領域と見なす。200μLの試験用スチルベノイド(エタノ-ルに溶解した2重量%)を1日に2回、日中及び夜に、指定領域に塗布する。最初の週の終わり(7日目)に、スチルベノイドを7日間使用したことに関するデ-タを記録するために、個体を皮膚比色計でテストする。また、第2週の終わり(14日目)に、スチルベノイドを14日間使用することに関するデ-タを記録するために、個体を皮膚比色計で試験する。ITA°の読み取り値を表5に示す。ジヒドロレスベラトロ-ル又はトランスレスベラトロ-ルによる明白なワイトニング効果はほとんどの個人から得られる。局所治療を使用している人から撮影した代表的な画像のセットを
図23に示す。
表4:ITA°に基づく肌の分類:
表5:示された時点における個々のヒト対象のITA°測定:
【表4】
【表5】
【0177】
DR1~DR3の一般的な合成経路
【化84】
ジメチルホルムアミド(DMF、2mL)中のジヒドロレスベラトロ-ル(0.2mmol)及び臭化アルキル(RBr)(1.2mmol)の混合物に対して、K
2CO
3(1.2mmol)を加える。得られた混合物を、薄層クロマトグラフィ-(TLC)で出発物質が消失するまで室温で撹拌する。混合物をH
2O(10mL)で希釈し、ジクロロメタン(DCM、10mL)で3回洗浄した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム(NaCl)で2回洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥する。これを真空中で濃縮し、そして分取TLC(PE/EA=5/1又は3/1)により精製して、所望の化合物を得る。RBrのR基は、OR
11、-OCH
2R
11又は-OCH
2C(O)OR
11であってもよく、ここでR
11はヒドロカルビルである。
DR1:
【化85】
高分解能質量分析 (HRMS): 511.1997 [M+Na]
+
陽子核磁気共鳴 (
1H NMR, 400 MHz, CDCl
3) δ 1.31 (9H, t, J = 7.1 Hz), 2.82 (4H, s), 4.22-4.32 (6H, m), 4.56 (4H, s), 4.60 (2H, s), 6.29-6.41 (3H, m), 6.80-6.86 (2H, m), 7.04-7.13 (2H, m)
DR2:
【化86】
HRMS: 373.1770 [M+Na]+.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 2.84 (4H, d, J = 2.1 Hz), 4.49 (4H, dt, J = 5.3, 1.4 Hz), 4.51-4.53 (2H, m), 5.25-5.35 (3H, m), 5.37-5.48 (3H, m), 5.99-6.13 (3H, m), 6.36 (3H, s), 6.81-6.90 (2H, m), 7.05-7.15 (2H, m)
DR3:
【化87】
HRMS: 379.2220 [M+Na]
+.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 0.98-1.08 (9H, m), 1.74-1.90 (6H, m), 2.75-2.90 (4H, m), 3.85-3.95 (6H, m), 6.29-6.39 (3H, m), 6.81-6.87 (2H, m), 7.07-7.15 (2H, m)
【0178】
【0179】
DCM(2mL)中のジヒドロレスベラトロ-ル(0.2mmol)及び塩化アシル(RCOCl)(1.2mmol)の混合物に対して、0℃でEt
3N(1.2mmol)を加える。得られた混合物を室温に温め、出発物質がTLC上で消失するまで撹拌する。混合物をH
2O(10mL)で希釈し、そしてDCM(10mL)で3回洗浄した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム(NaCl)で2回洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥する。これを真空中で濃縮し、そして分取TLC(PE/EA=5/1又は3/1)により精製して、所望の化合物を得る。RCOCl中のR基は、-R
11又は-CH
2R
11であってもよく、R
11はヒドロカルビルであり、1、2、3、4又は5のR
12によって任意に置換されていてもよく、R
12はハロゲン又は-OR
13であり、R
13は水素又はヒドロカルビルである。
DR4:
【化89】
HRMS: 463.2044 [M+Na
+].
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 0.97-1.10 (9H, m), 1.72-1.89 (6H, m), 2.47-2.58 (6H, m), 2.91 (4H, s), 6.74-6.84 (3H, m), 6.94-7.04 (2H, m), 7.13-7.21 (2H, m)
DR5:
【化90】
HRMS: 667.0427 及び 669.0408 [M+Na
+].
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 3.01 (4H, s), 6.99-7.06 (3H, m), 7.10-7.17 (2H, m), 7.22-7.27 (2H, m), 7.46-7.55 (6H, m), 8.09-8.18 (6H, m)
DR6:
【化91】
HRMS: 655.1964 [M+Na
+].
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 3.00 (4H, s), 3.89-3.92 (9H, m), 6.97-7.04 (9H, m), 7.11-7.16 (2H, m), 7.23-7.27 (2H, m), 8.13-8.18 (6H, m)
DR7:
【化92】
HRMS: 565.1600 [M+Na]+.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 3.02 (4H, s), 7.02-7.08 (3H, m), 7.12-7.20 (2H, m), 7.25-7.29 (2H, m), 7.50-7.57 (6H, m), 7.60-7.70 (3H, m), 8.17 - 8.28 (6H, m)
DR8:
【化93】
HRMS: 415.1140 [M+Na]+
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 2.94 (4H, s), 5.98-6.08 (3H, m), 6.23-6.43 (3H, m), 6.58-6.70 (3H, m), 6.84-6.97 (3H, m), 7.01-7.13 (2H, m), 7.16-7.26 (2H, m)
DR9:
【化94】
HRMS: 514.2550 [M+Na]
+.
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.61-1.79 (12H, m), 1.88-2.09 (12H, m), 2.82-3.08 (7H, m), 6.72-6.83 (3H, m), 6.96-7.03 (2H, m), 7.15-7.20 (2H, m).
DR10:
【化95】
HRMS: 607.2070 [M+Na]+.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 2.91 (4H, s), 5.27 (6H, s), 6.91-6.98 (3H, m), 7.08-7.12 (2H, m), 7.14-7.19 (2H, m), 7.38-7.46 (15H, m).
DR11:
【化96】
HRMS: 505.2550 [M+Na]
+.
1H NMR (400 MHz, CDCl
3) δ 1.34-1.38 (27H, m), 2.86-2.94 (4H, m), 6.77 (3H, d, J = 2.1 Hz), 6.93-7.02 (2H, m), 7.14-7.21 (2H, m)
【産業上の利用可能性】
【0180】
本発明は、Dendrobium officinale及びDendrobium nobileなどのデンドロビウム植物から得られるスチルベノイド及び/又はスチルベノイド含有抽出物を含んだ、メラニン形成、肌の黒化、及び肌の老化の管理のための皮膚保護組成物に関する。より具体的には、本発明は、メラニン細胞のメラニン形成を低減するためのデンドロビウム成分及びスチルベノイドの利用に関する。本発明はまた、活性酸素種及び酸化フリ-ラジカルの生成を減らすためのデンドロビウム成分及びスチルベノイドの利用に関する。この発明は、皮膚の保護、皮膚のホワイトニング、及び/又は、抗皮膚老化製品の配合における、デンドロビウム由来の抽出物若しくは成分又はスチルベノイドの使用に関する。