(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】改善されたEBVワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/245 20060101AFI20220404BHJP
A61P 31/22 20060101ALI20220404BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220404BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220404BHJP
C12N 15/38 20060101ALI20220404BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220404BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220404BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61K39/245 ZNA
A61P31/22
A61P37/04
A61P35/00
C12N15/38
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2019524064
(86)(22)【出願日】2017-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2017078898
(87)【国際公開番号】W WO2018087296
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-09-10
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デレクリューズ,ヘンリ-ジェイクス
(72)【発明者】
【氏名】シュミロフ,アナトリー
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ミン-ハン
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503915(JP,A)
【文献】FEEDERLE, R. et al.,J Virol,2006年,Vol. 80, No. 19,pp. 9435-43
【文献】NEUHIERL, B. et al.,J Virol,2009年,Vol. 83, No. 9,pp. 4616-23
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 35/00
A61K 48/00
C12N 15/00
C12N 1/00
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エプスタインバールウイルス(Epstein-Barr Virus、EBV)粒子を含む
、対象のワクチン接種における使用のための組成物であって、
前記EBV粒子が、機能的BNRF1ポリペプチド、機能的BPLF1ポリペプチド、機能的BGLF3ポリペプチド、機能的BRRF2ポリペプチド、機能的BKRF4ポリペプチド、及び/又は機能的BXLF1ポリペプチドを含まず、前記対象が、18歳未満のヒトであり、及び/又は前記対象が、免疫不全に罹患している、及び/若しくは免疫抑制治療を受けることが計画されている、組成物。
【請求項2】
前記EBV粒子が、EBV DNAを含まない、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記EBV粒子が、BNRF1遺伝子産物を含まない、請求項
1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記EBV粒子が、少なくとも1つの非EBVポリペプチ
ドをさらに含む、
及び/又は前記EBV粒子が、少なくとも1つの非必須EBVポリペプチド活性をさらに欠く、及び/若しくは少なくとも1つの形質転換EBVポリペプチドをさらに欠く、請求項1~
3のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記対象が
、15歳未満
、好ましくは10歳未満、最も好ましくは5歳未満のヒトである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記ワクチン接種が、染色体異常の誘導を回避することを含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がないEBV粒子を含む、請求項
1~6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記組成物は、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がない、請求項
1~7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
EBVゲノムをコードする
、対象のワクチン接種における使用のためのポリヌクレオチドであって、前記EBVゲノムは、
a)
機能的BNRF1ポリペプチド、機能的BPLF1ポリペプチド、機能的BGLF3ポリペプチド、機能的BRRF2ポリペプチド、機能的BKRF4ポリペプチド、機能的BXLF1ポリペプチド、機能的BALF4ポリペプチド、機能的BXLF2ポリペプチド、機能的BKRF2ポリペプチド、及び/又は機能的BZLF2ポリペプチドをコードする遺伝子を含まず、及び
b) EBV末端反復配列を欠き、及び/又はBFLF1遺伝子及びBBRF1遺伝子から選択される少なくとも1つの機能的に発現可能な遺伝子を欠
き、
前記対象が、18歳未満のヒトであり、及び/又は前記対象が、免疫不全に罹患している、及び/若しくは免疫抑制治療を受けることが計画されている、ポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項
9に記載のポリヌクレオチドを含む
、対象のワクチン接種における使用のためのベクター
であって、前記対象が、18歳未満のヒトであり、及び/又は前記対象が、免疫不全に罹患している、及び/若しくは免疫抑制治療を受けることが計画されている、ベクター。
【請求項11】
請求項
9に記載のポリヌクレオチド、又は請求項
10に記載のベクターを含む
、対象のワクチン接種における使用のための宿主細胞
であって、前記対象が、18歳未満のヒトであり、及び/又は前記対象が、免疫不全に罹患している、及び/若しくは免疫抑制治療を受けることが計画されている、宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象のワクチン接種における使用のためのエプスタインバールウイルス(Epstein-Barr Virus、EBV)粒子を含む組成物であって、前記EBV粒子が有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有する、組成物に関する。本発明はまた、対象のワクチン接種における使用のためのEBV粒子を含む組成物であって、前記ワクチン接種は、前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することを含む、組成物に関する。更に、本発明は、上記組成物に関するポリヌクレオチド、宿主細胞、方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍形成性のエプスタインバールウイルス(EBV)は、ヒトBリンパ球に潜伏感染し得るガンマヘルペスウイルス科に属する。EBVは、ヒト集団の90%を超える割合で終生持続するB細胞感染を確立する(Kieff及びB. Rickinson. (2006), Epstein-Barr virus and its replication, D. M. Knipe及びP. M. Howley (編者), Fields virology, 第5版 Lippincott-Raven, Philadelphia, PA. 2603-2654; Kuppers, R. (2003). B cells under influence: transformation of B cells by Epstein-Barr virus, Nat. Rev. Immunol. 3:801-812)。健康な個体では、大部分のEBV感染B細胞は、限定されたウイルス遺伝子発現及び、休止期の表現型(resting phenotype)を示す。潜伏感染細胞の形質細胞への最終分化は、ウイルスの再活性化、産生、B細胞の再感染をもたらす(Laichalk, L. L.及びD. A. Thorley-Lawson. (2005), Terminal differentiation into plasma cells initiates the replicative cycle of Epstein-Barr virus in vivo. J. Virol. 79:1296-1307)。すべてのウイルス潜伏遺伝子(viral latency gene)が発現すると、感染B細胞の増殖形質転換(growth transformation)及び増殖がもたらされ、それは、in vitroにおいてEBV形質転換されたリンパ芽球様B細胞株が過増殖(outgrowth)すること、及びin vivoにおいてEBVが、様々なタイプのリンパ腫を含む様々なB細胞リンパ増殖性疾患と関連することにより、反映される。先天性の又は医原的に誘発されるT細胞機能不全を有する患者においてEBV関連の悪性腫瘍の発生率が増大したこと(Rickinson, A. B.及びE. Kieff. (2006), Epstein-Barr virus, D. M. Knipe及びP. M. Howley (編者), Fields virology, 第5版 Lippincott- Raven, Philadelphia, PA., 2655-2700)、及びポリクローナルEBV特異的T細胞株の注入による造血幹細胞移植受容者におけるEBV関連の移植後リンパ増殖性疾患の治療が成功したこと(Rooney, C. M.等 , (1998), Infusion of cytotoxic T cells for the prevention and treatment of Epstein-Barr virus-induced lymphoma in allogeneic transplant recipients. Blood 92:1549-1555)により示されるように、EBV感染はT細胞により制御される。B細胞リンパ増殖を誘発することに加え、EBVは、リンパ腫及び鼻咽頭癌又は平滑筋肉腫等の上皮又は間葉由来の腫瘍において検出され、このため、EBVはWHO国際癌研究機関(IARC)によりクラスIの発癌物質として分類された。このような腫瘍では、少なくともいくつかのウイルス潜伏遺伝子(viral latent gene)の発現に加え、染色体異常、特に転座が頻繁に見られる。このような異常は、EBVの溶解複製と関連することが特定された(Kawanishi M. Epstein-Barr virus induces fragmentation of chromosomal DNA during lytic infection. Journal of Virology 67, 7654-7658 (1993))。
【0003】
標的細胞のEBV感染には、特定のウイルス糖タンパク質が細胞表面上の受容体と相互作用すること及びウイルス膜が標的細胞の膜と融合することが必要となる。EBVのB細胞への結合には、gp350ウイルス糖タンパク質が細胞の受容体CD21と相互作用することが必要となることが知られている。標的細胞との膜融合は、EBVのBXLF2、BKRF2及びBZLF2遺伝子によりそれぞれコードされるEBVのgp85/gp25/gp42糖タンパク質の複合体により媒介される。さらに、ウイルスのBALF4遺伝子によりコードされるgp110は、感染後にエンドソームからウイルス粒子が脱出するために必要となることが知られている(Neuhierl等(2009), J Virol 83(9):4616);従って、gp110の機能は、単純ヘルペスウイルスにおけるそのホモログ(gB)に相当する、即ち、ウイルス膜のエンドソーム膜との融合を媒介し、その結果、感染細胞の細胞質へのウイルス粒子のテグメント及びカプシドの放出をもたらすことであると考えられる。EBVのBNRF1遺伝子は、エンドソームからBリンパ球の核へのウイルス粒子の移動において役割を果たす主要なテグメントタンパク質をコードすることが知られている(Feederle等 (2006), J Virol 80(19): 9435)。しかしながら、この役割についての正確な分子基盤はまだ依然として解明されていない。
【0004】
EBVは発癌物質であるため、EBV感染を予防又は除去するためのワクチンを開発する必要が当該技術分野にある。このようなワクチンは外見上健康な対象に適用されることが好ましいだろうから、このようなワクチンの安全性は主要な関心事であるだろう。今のところ、市販されているのはEBV gp350に対するペプチドワクチンのみである。しかしながら、このワクチンを用いた最初の臨床試験が示すところによると、それはEBV陰性の移植受容者におけるEBV感染を予防しない(Rees L等(2009), A phase I trial of Epstein-Barr virus gp350 vaccine for children with chronic kidney disease awaiting transplantation. Transplantation 88(8):1025-9.)。
【0005】
ウイルス様粒子(VLP)は、成熟ビリオンに類似の又はそれと同一の構造であるが、ウイルスゲノムを欠く。一般的に、これらは例えば単量体のペプチドよりも高度に宿主の免疫反応を刺激する。このため、これらはいくつかのウイルス、例えばB型肝炎及びパピローマウイルスに対するワクチン接種のために優先的に使用されてきた(Greenstone, H. L.等(1998), Chimeric papillomavirus virus-like particles elicit antitumor immunity against the E7 oncoprotein in an HPV16 tumor model. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:1800-1805; Mandic, A.及びT. Vujkov. (2004). Human papillomavirus vaccine as a new way of preventing cervical cancer: a dream or the future? Ann. Oncol. 15:197-200)。VLPワクチン投与計画の極めて重要な安全面は、使用されるVLPがウイルスゲノム(DNA又はRNA)を含まないものでなければならないことである。なぜなら、そうでなければワクチン接種はウイルス複製及び/又はウイルスによる潜伏感染を誘発し得るからである。
【0006】
EBV及び他のヘルペスウイルスのウイルス溶解複製、即ち子孫ウイルス粒子の形成をもたらす過程は、様々なタンパク質種(protein class)の一連の活性化により生じる複雑な過程である。溶解複製中、ウイルスゲノムは様々な複製起点から数千倍に増幅され、高度に分岐した構造を形成する。そして、これらの巨大なコンカテマーは、感染細胞の核内で事前に形成されたプロカプシドにパッケージングされるだろう単位長の線状ウイルスゲノムに分解される。ウイルスDNAを含有するカプシドは、更なるコンフォメーション及び構造変化を経て感染細胞からエンベロープを有するビリオン粒子として脱出するだろう(Roizman, B.及びD. M. Knipe. (2001), Herpes simplex viruses and their replication, D. M. Knipe, P. M. Howley, D. E. Griffin, R. A. Lamb, M. A. Martin, B. Roizman及びS. E. Straus (編者), Fields virology, 第4版, vol. 2. Lippincott Williams及びWilkins, Philadelphia, Pa., 2399-2459.)。EBVカプシド化(encapsidation)をもたらす1つの必須のシスエレメントは、ウイルス溶解複製中に形成されるコンカテマーからの個々のウイルスゲノムの切除並びにそれらのパッケージングに関与する、線状ゲノムの両末端にある末端反復(TR)である。これらの末端反復が欠失したEBV変異株(delTR-EBV)が生成されている。対照のEBVを用いた場合29%の細胞が前記ゲノム由来のマーカー遺伝子を発現したのに比べ、delTR-EBVを含有する上清で感染させた細胞のわずか0.001%しか前記ゲノム由来のマーカー遺伝子を発現しなかったため、溶菌サイクル(lytic cycle)の誘導後に大量の空のEB-VLPが産生されること、及びゲノムのカプシド化の効率は著しく低いことが示された(Feederle R等, (2005), Defective infectious particles and rare packaged genomes produced by cells carrying terminal-repeat-negative Epstein-Barr virus. J. Virol. 79; 7641-7)。これは、末端反復はゲノムのカプシド化に重要であるが絶対的に必須であるわけではないことを示す。さらに、delTR-EBVから産生されるVLPは依然として稀ではあるが細胞に感染し、従って、ワクチンとして使用するためのdelTR-EBV VLPの安全性を保証しないことが示された。従って、EBV粒子含有ワクチンの安全性を増大させるために、EBVゲノムから既知の形質転換タンパク質LMP-1、EBNA-2、EBNA3a、EBNA-3b、及びEBNA 3cをコードする遺伝子をさらに欠失させることがさらに提案された(国際公開第2012/025603号を参照)。
【発明の概要】
【0007】
要約すれば、需要が存在するにも関わらず、現在、EBVに対する安全かつ効率的なワクチンを製造するための方法は全く開発されていない。従って、本発明の根底にある技術的課題は、EBVワクチンの効率的な製造を可能とする手段及び方法の提供と見なされ得る。当該技術的課題は、特許請求の範囲及び以下本明細書において特徴づけられる実施形態により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】エプスタインバールウイルスにより感染させたB細胞は染色体不安定性の特徴を見せる。感染後3又は6日間、細胞を培養し続け、サイトスピンし、αチューブリン、セントリン2、有糸分裂染色体のマーカーであるPH3、又はセントロメアのマーカーであるCRESTについて染色した。8個の血液試料の分析結果を報告する。各試料について、サイトスピンした感染細胞から少なくとも100個の有糸分裂及び500個の間期細胞を調査した。(a)6個の中心体の周囲に構成される多極有糸分裂を経ている細胞。(b)増大した数の中心小体の周囲に構成された後期の細胞。(c)写真は、中期を経ている細胞における整列していない染色体(矢印)を示す。(d)この後期細胞は、2個の遅滞染色体(矢印)を示す。(e)染色体の非対称の分配を示す有糸分裂細胞。(f)増大した数の中心小体を有する間期細胞。差し込み図は、中心体の拡大表示を示す。(g)多数の核を有する細胞。(h)大きい核の隣にある小核、並びに差し込み図において拡大される多数の中心体を見せる間期細胞。(i)46個を超えるセントロメアを含有する単一核を有する多倍数体細胞。(j)ドットプロットは、アメリカヤマゴボウマイトジェンで刺激した、又は野生型M81若しくはM81/ΔZRに感染した同一個体由来のB細胞における、(a~h)に記載の染色で特定された異常な有糸分裂の頻度の概要を示す。この分析は、続いて記載される異数体の頻度を除外する。得られた結果のいくつかには、空値が含まれた。このため、正確なWilcoxonの符号付き順位検定を適用し、当該結果を比較した。
【
図2】野生型EBV(M81WT)又は複製欠損変異体(M81/ΔZR)により形質転換した細胞における染色体不安定性の比率。8個の試料ペアを分析した。感染後3、6又は30日目に細胞を分析した。細胞をサイトスピンし、複数のマーカーで染色した。各試料について、少なくとも100個の有糸分裂及び500個の間期細胞を調査した。それとは独立して、異数体の比率を評価するために染色体を調製し、これらの試料各々について少なくとも50個の有糸分裂を分析した。図は、4個を超える中心小体の周囲に構成される双極有糸分裂(a)、4個を超える中心小体を有する間期細胞(b)、多核細胞(c)、1個又は複数個の小核を有する細胞(d)、異数性有糸分裂(e)、多倍数性有糸分裂(f)、の頻度を総括する。グラフには、感染後30日目に分析した試料ペアについて行った統計的に有意な対応のあるt検定の結果が含まれる。dpi:感染後の日数
【
図3】感染の4週間後、野生型EBVにより形質転換したB細胞は、非複製(non-replicative)変異体で形質転換したB細胞よりも高いCIN率を見せる。野生型EBV(a)、又は複製-細胞欠損変異体(b)に感染した形質転換細胞株のペア由来の有糸分裂を示す、M-FISH核型の例。(c)及び(d)は、野生型EBVにより形質転換した2つの他の細胞株において見出された2個の転座を示す。
【
図4】野生型M81に感染したB細胞は、複製欠損M81/ΔZRウイルスに感染したB細胞より、免疫不全マウスにおいて高頻度で腫瘍を誘発する。B細胞をM81野生型及びM81/ΔZR変異体に暴露し、NSGマウスに腹腔内注入し、又はin vitroで増殖させた。(a)グラフは、34日間のin vitroでの7個の独立のB細胞試料の細胞増殖を示す。標準偏差と共に平均値を示す。(b)(a)に記載の試料のうち3つを、1ウェル当たり3又は30個のEBNA2陽性細胞の濃度の供給細胞でコーティングされた96ウェルクラスタープレート中に播種した。ドットプロットは、形質転換のマーカーと考えられる過増殖した(outgrown)ウェルの百分率を示す。(c)グラフは、4×10
4個の感染B細胞の注入後の、免疫不全マウスにおける腫瘍の発生率を示す。この実験における3個の感染初代B細胞試料の使用によるばらつきを考慮に入れるために、野生型M81及びM81/ΔZRを用いて得られた結果は、層を用いた正確なMantel-Haenszel検定により評価した。(d)ドットプロットは、M81又はM81/ΔZRに感染した4×10
5個のB細胞の注入後に腫瘍を発生させた16の動物ペアにおける腫瘍量を示す。結果は対応のないt検定により分析した。(e)免疫不全マウスにおける、EBV感染細胞の注入後に発生した腫瘍の形態を示す組織学的染色(H&E染色)、EBERノンコーディングRNAの、並びにBZLF1及びgp350タンパク質の、発現パターン。野生型ウイルスでの感染後、又はM81/ΔZR変異体での感染後に発生した腫瘍の1例を示す。dpi:感染後の日数。
【
図5】野生型M81で生成したリンパ系腫瘍は、複製欠損M81/ΔZR変異体で生成したリンパ系腫瘍よりも高度のCINを示す。32匹のNSGマウスに、野生型M81又はM81/ΔZR変異体に感染した4×10
5個のB細胞を注入した。ドットプロットは、4個を超える中心小体の周囲に構成される双極有糸分裂(a)、4個を超える中心小体を有する間期細胞(b)、多核細胞(c)、1個又は複数個の小核を有する細胞(d)、異数性有糸分裂(e)、多倍数性有糸分裂(f)、の頻度を総括する。2つの試料を除いた各試料について、少なくとも100個の有糸分裂及び500個の間期細胞を調査した。結果は、対応のないt検定に付した。in vitroでの感染の結果との比較のために、
図2もまた参照されたい。
【
図6】野生型EBV感染細胞における中心体増幅は、主に過剰複製に起因する。野生型ウイルスに感染したLCLを、中心体に局在する2つのタンパク質、セントリン及びCEP170に特異的な抗体で同時染色し、DAPIで対比染色した。(a)この感染細胞は、2個のセントリン陽性中心小体(緑色)を示すが、1個の中心小体(赤色)のみがCEP170を発現している。(b)約50%の中心小体においてCEP170についての染色を示す、中心体蓄積を有する感染二核細胞。(c)1個のみのCEP170陽性中心小体及び少なくとも4個のセントリン陽性中心小体を有する、中心体過剰複製を示す感染細胞。(d)このグラフは、野生型M81又はM81/ΔZRに感染した細胞における、過剰複製を通して生じた中心体増幅を有する細胞の割合を示す。分析は3個の血液試料について行った。(e)Plk4、Sas-6、STIL、アクチン又はBZLF1に特異的な抗体を用い、M81又はM81/ΔZRに感染した3対のLCLについて行った免疫ブロット。非感染休止B細胞、CD40L及びIL4で刺激したB細胞、及びバーキットリンパ腫細胞株Elijahは対照として機能した。
【
図7】M81/ΔZRで形質転換したB細胞、アメリカヤマゴボウマイトジェン刺激したB細胞、CD40L刺激したB細胞及びRPE-1細胞のウイルス様粒子への暴露は、中心小体増幅をもたらす。異なる細胞集団を、M81ウイルス様粒子(VLP)、標的細胞と融合できないウイルス様粒子(Δgp110 VLP)、又は培地で処理した。分析は、感染の3日後に行った。各試料について、少なくとも100個の有糸分裂及び500個の間期細胞を調査した。ドットプロットは、(a、b及びc)M81/ΔZR変異体により形質転換した6個のB細胞試料における、(d、e及びf)IL4及びCD40-Lで刺激した7個のB細胞試料における、中心小体増幅を有する間期細胞、増大した数の中心体を有する双極有糸分裂、又は異数性有糸分裂、の頻度を示す。また、アメリカヤマゴボウマイトジェンで刺激した6個のB細胞試料において(g及びh)及び3つの独立の感染に付したRPE-1細胞において(i及びj)、4個を超える中心小体を見せた間期細胞の又は有糸分裂の百分率を定量化した。B細胞試料については対応のあるt検定の、RPE-1細胞については対応のないt検定の、結果を示す。
【
図8】BNRF1を欠くエプスタインバールウイルスに感染したB細胞は、野生型感染に比べ、中心体増幅及び異数体の比率の顕著な低下を示す。(a~c)M81/ΔZRウイルスにより形質転換し、野生型B95-8又はB95-8/ΔBNRF1ウイルスに暴露した細胞における中心体増幅及び異数体の比率。分析は、感染の3日後に行った。これらのドットプロットは、4個を超える中心小体を有する間期細胞(a)、4個を超える中心小体の周囲に構成される双極有糸分裂(b)、異数性有糸分裂(c)、の頻度を総括する。結果は、対応のあるt検定を用いて評価した。(d~g)野生型B95-8、B95-8/ΔBNRF1ノックアウトウイルス、又はBNRF1で相補したB95-8/ΔBNRF1ウイルス(ΔBNRF1-C)を用い、5個の独立の血液試料由来のLCLを生成した。ドットプロットは、増大した数の中心小体を含んでいる間期細胞(d)、4個を超える中心小体の周囲に構成される双極有糸分裂(e)、多極有糸分裂(f)、及び異数性分裂(g)の頻度を示す。(h~k)M81に基づいて構築したBNRF1ノックアウトウイルスを用いて行ったことを除き、(d~g)と同じ実験。各試料について、少なくとも100個の有糸分裂及び500個の間期細胞を調査した。(a)~(c)については、対応のあるt検定の結果を与え;(d)~(k)については正確なWilcoxonの符号付き順位検定を適用し、ΔBNRF1変異体に感染したB細胞の異常の比率を、野生型又は相補したウイルスに感染したB細胞の異常の比率と比較した。p値は、ランダム効果を用いたグローバルな混合線形モデル(global mixed linear model)分析の結果を与える。
【
図9】BNRF1は中心体画分中に豊富である。293細胞をBNRF1過剰発現にさらした。核を除いた後、細胞小器官をスクロース勾配上で分離させた。中心体タンパク質を特定するためのγチューブリンに特異的な抗体、及びBNRF1に特異的な抗体を用いて、この勾配から回収した連続画分を免疫染色した。また、中心体に局在するタンパク質であるPARP1に特異的な抗体で抽出物を染色した。PARP1に特異的な抗体は、完全な大きさのタンパク質、並びにカスパーゼ3切断により生じる小さい形態のタンパク質を特定する。最後に、遊離の細胞質タンパク質からの汚染を検出するために、Aktに特異的な抗体でブロットを染色した。後者の染色は、勾配が遊離の細胞質タンパク質で汚染されていないことを保証するために行った。BNRF1過剰発現を有する細胞の非精製の細胞全体抽出物(WCL)が陽性対照として含まれ、φは試料なしのウェルを示す。(a)は、BNRF1を発現する細胞から回収した画分を示し、(b)は空の対照プラスミドでトランスフェクトした細胞から回収した画分を示す。(c)中心体タンパク質を含有し、(a)及び(b)に記載される画分を免疫ブロットした。
【
図10-1】染色体不安定性を誘導するEBVタンパク質。293 HEK細胞を、表示のEBV遺伝子についての発現プラスミドでトランスフェクトした。染色体不安定性の指標を決定した。(a)組み合わされたHEK293トランスフェクション間期;y軸:>4の中心小体を有する細胞の割合(%);(b)組み合わされたHEK293トランスフェクション中心体クラスタリング;y軸:クラスター化中心体有糸分裂(clustered centrosome mitosis)を有する細胞の割合(%);(c)組み合わされたHEK293トランスフェクション多極性(multipolarity);y軸:多極有糸分裂の割合(%)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従って、本発明は、対象のワクチン接種における使用のためのエプスタインバールウイルス(Epstein-Barr Virus、EBV)粒子を含む組成物であって、前記EBV粒子が有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有する、組成物に関する。
【0010】
以下で使用される場合、「有する(have)」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」との用語又はそれらの任意の恣意的な文法的変形は、非排他的に使用される。従って、これらの用語は、当該文脈に記載される実体中にこれらの用語により導入される特徴以外に更なる特徴が存在しない状況、及び1個以上の更なる特徴が存在する状況の両方を意味し得る。一例として、「AはBを有する(A has B)」、「AはBを含む(A comprises B)」、及び「AはBを含む(A includes B)」との表現は、AにはB以外に他の要素が存在しない状況(即ち、Aは唯一かつ排他的にBから成る状況)、及び実体AにはB以外に1個以上の更なる要素、例えば要素C、要素C及びD、又はより更なる要素、が存在する状況の両方を意味し得る。
【0011】
更に、以下で使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的には」、「より具体的には」との用語、又は同類の用語は、任意選択的な特徴と併せて使用され、更なる可能性を限定するものではない。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意選択的な特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものでない。本発明は、当業者が認識するように、代替的な特徴を使用することにより実施してもよい。同様に、「本発明の実施形態では」又は同様の表現により導入される特徴は、任意選択的な特徴であるものとし、本発明の更なる実施形態に関するいかなる限定もなく、本発明の範囲に関するいかなる限定もなく、こうして導入される特徴を本発明の他の任意選択的特徴又は非任意選択的特徴と組み合わせる可能性に関するいかなる限定もない。更に、別段の記載がない限り、「約」との用語は、関連分野において一般に認められている技術的精度を有する表示値に関し、好ましくは、表示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。
【0012】
例えば、有意な変化、有意な割合、及び有意な低下という文脈において、本明細書で使用される「有意」との用語は、統計的有意性に関する。ある偏差、変化又は部分が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計用評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値決定、スチューデントt検定、マンホイットニー検定等を使用し、それ以上作業することなく当業者によって決定され得る。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.05、0.01、0.005、又は0.0001である。従って、好ましくは、有意に低下したポリペプチドの活性は、好ましくは、0.05以下、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.005以下のp値で対照の活性から外れる活性に関する。同様に、好ましくは、化合物、例えばポリペプチドの有意に低下した量は、0.05以下、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.005以下のp値で対照の量から外れる量に関する。
【0013】
EBV遺伝子及びその産物に関する命名法に従って、遺伝子について使用される名称はまた、前記遺伝子の産物であるポリペプチドについて使用され得る。明確には、本明細書で使用される場合、「X遺伝子」との用語は、それに潜在的に含まれるオープンリーディングフレーム及び調節配列を含む遺伝子Xに関し、「X RNA」との用語は、X遺伝子から転写されたRNAに関し、「Xポリペプチド」は、X RNAの翻訳産物であるポリペプチドに関する。「X活性」及び「Xポリペプチド活性」との用語は、Xポリペプチドにより媒介される活性に関する。本明細書で使用される場合、生得的活性(ascribed activity)を有するEBVポリペプチドのバリアントは、「機能的EBVポリペプチド」と称され、一方、生得的活性を有しないEBVポリペプチドのバリアントは、「非機能的EBVポリペプチド」と称される。
【0014】
本明細書で使用される場合、「組成物」との用語は、少なくとも示された構成要素を含む物質の組成物に関する;好ましくは、組成物は1個以上の追加の成分を含むこともまた、企図される。好ましくは、組成物は示された化合物から成る。好ましくは、本明細書の他の箇所で特定されるように、組成物は医薬組成物、より好ましくはワクチンである。
【0015】
「エプスタインバールウイルス」及び「EBV」との用語は、ヒトヘルペスウイルス4(HHV-4)としても知られる、ヘルペスウイルス科、リンフォクリプトウイルス(lymphocryptovirus)属の一員であるウイルスに関するものとして当業者に知られている。EBVのいくつかの亜型が知られている(例えばEBV 1型:Genbank登録番号:NC_007605.1 GI:82503188;ゲノム:配列番号1;de Jesus O等 (2003) J. Gen. Virol. 84, 1443-1450;及びM81株(配列番号3)を含む、EBV 2型:Genbank登録番号:NC_009334.1 GI:139424470;Dolan A等 (2006) Virology Vol.350, 164-170)、ゲノム:配列番号2)。本明細書で使用される場合、「EBV粒子」との用語には、EBV構造ポリペプチドを含み、ヘルペスウイルス粒子の全体構造を有するすべての粒子が含まれる。従って、EBV粒子との用語には、以下本明細書において特定される感染性EBV粒子及びエプスタインバールウイルス様粒子が含まれる。EBV粒子との用語にはまた、テグメントを一部又はすべて欠く、好ましくは機能的なBNRF1ポリペプチドを欠く、より好ましくはBNRF1ポリペプチドを完全に欠く粒子が含まれる。
【0016】
EBVにコードされるタンパク質に加え、EBV粒子はまた1個以上の人工ポリペプチドを含み得る。「人工ポリペプチド」との用語は、野生型EBVに含まれない、EBV粒子に組み込まれる任意のポリペプチドに関する。好ましくは、人工ポリペプチドは、非天然のポリペプチドである。人工ポリペプチドがEBV粒子に組み込まれ、従ってEBV粒子に含まれるか否かは、既知の方法に従いEBV粒子を得、例えば遠心分離又は免疫沈降により産生細胞からEBV粒子を分離した後、前記EBV粒子における人工ポリペプチドの存在を判定すること(それは、例えばイムノアッセイ又は特定のポリペプチドに適し当業者に既知の任意の他の方法により、達成され得る)により、評価され得る。好ましくは、人工ポリペプチドは、ヘルペスウイルスの糖タンパク質の膜内在性部位(membrane-integral part)を含む融合ポリペプチドである。好ましい実施形態では、人工ポリペプチドは検出可能なタグをさらに含む。「検出可能なタグ」との用語は、本発明の融合ポリペプチドに付加又は導入されるアミノ酸区域(stretch of amino acids)を意味する。好ましくは、タグは、本発明の融合ポリペプチドのC又はN末端に付加されるだろう。前記アミノ酸区域は、タグを特異的に認識する抗体による融合ポリペプチドの検出を可能とするだろう、或いは、それはキレート剤等の機能的なコンフォメーションを形成することを可能とするだろう、或いは、それは蛍光タグにより可視化することを可能とするだろう。好ましいタグは、Mycタグ、FLAGタグ、6-Hisタグ、HAタグ、GSTタグ又はGFPタグである。適当なタグは当該技術分野において周知である。さらに好ましい実施形態では、前記融合タンパク質は、免疫原性タンパク質、好ましくは病原性微生物の免疫原性タンパク質、より好ましくはEBVタンパク質、最も好ましくは潜伏EBVタンパク質(latent EBV protein)、のアミノ酸配列を含むペプチド又はポリペプチドを含む。
【0017】
しかしながら、1個以上の非必須のEBVポリペプチドがEBV粒子から欠けていることもまた、本発明により企図される。本明細書の文脈において、「非必須のEBVポリペプチド」は、野生型EBV粒子に組み込まれるがこのような粒子の形成に必須でないポリペプチドに関する。従って、好ましくは、非必須のEBVポリペプチドは、本明細書において特定されるようにEBV粒子の形成に必須でないEBVポリペプチドである;従って、好ましくは非必須のEBVポリペプチドは、感染性EBV粒子の形成に必須でないEBVポリペプチドであり、EB-VLPの形成に必須でない。従って、EBV末端反復、BFLF1遺伝子及びBBRF1遺伝子は、本明細書で使用される非必須のEBVポリペプチドである。ポリペプチドは、電子顕微鏡法、又は例えばEBV粒子の適切な宿主細胞への結合、EBV粒子による適切な宿主細胞の感染等を含む、EBV粒子を検出するための当業者に既知の他の方法の1つによりこのようなポリペプチド非存在下で産生細胞からEBV粒子が検出可能である場合、非必須である。EBVの溶解感染中に宿主細胞からポリペプチドを除外する方法は当業者に周知である。好ましくは、ポリペプチドは、ウイルスゲノムから前記ポリペプチドをコードする遺伝子を欠失させること、又は遺伝子操作の手段により、前記遺伝子を発現できないようにすることにより、例えば開始コドンを非開始コドンに変異させることにより、除外される。
【0018】
好ましくは、非必須EBVポリペプチドは、以下本明細書において特定されるEBV膜融合ポリペプチド(fusogenic polypeptide)である;従って、好ましくは、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有するEBV粒子はさらに、以下本明細書において特定される1個以上のEBV膜融合ポリペプチドを欠いている。
【0019】
また好ましくは、非必須EBVポリペプチドは形質転換EBVポリペプチドである。従って、好ましくは、EBV粒子はさらに、少なくとも1つの形質転換EBVポリペプチドを欠く。「形質転換EBVポリペプチド」との用語は、EBVゲノムによりコードされ、宿主細胞、特にB細胞等の感染許容ヒト細胞に存在する場合、増殖が前記タイプの正常細胞が必要とする少なくともいくつかの成長シグナルと無関係な形質転換状態をとるよう細胞を誘導する、ポリペプチドに関するものとして当業者に知られている。従って、好ましくは、形質転換EBVポリペプチドは、許容宿主細胞に癌様の増殖状態をとらせるEBVポリペプチドである。好ましくは、形質転換EBVポリペプチドは、LMP-1ポリペプチド、LMP-2ポリペプチド、EBNA-2ポリペプチド、EBNA-3aポリペプチド及びEBNA-3cポリペプチドから成るリストから選択される。また好ましくは、2種以上の形質転換EBVポリペプチドがEBV粒子から欠け、より好ましくは少なくとも2種、さらにより好ましくは少なくとも3種、さらにより好ましくは少なくとも4種の形質転換EBVポリペプチドがEBVポリペプチドから欠けている。最も好ましくは、5種の形質転換EBVポリペプチド、好ましくはLMP-1ポリペプチド、LMP-2ポリペプチド、EBNA-2ポリペプチド、EBNA3aポリペプチド及びEBNA-3cポリペプチドがEBVポリペプチドから欠けている。本明細書で使用される場合、「形質転換EBVポリペプチド」との用語には、好ましくは、BNRF1ポリペプチドは含まれない。
【0020】
本明細書で使用される「エプスタインバールウイルス様粒子」又は「EB-VLP」との用語は、EBV由来のウイルス粒子であって、1%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.01%未満の前記粒子がEBV DNAを含む;より好ましくは、1%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.01%未満の前記粒子がDNAを含む、ウイルス粒子を意味する。従って、好ましくは、EB-VLPは、適切な宿主細胞において溶解複製も潜伏感染の確立もしない。EB-VLPは好ましくは、電子顕微鏡法により分析されるヘルペスウイルスの全体構造を有する。好ましくは、EB-VLPは、少なくともカプシド及び外膜を含む。好ましくは、EB-VLPは、既知のEBV型、好ましくは本明細書において上に特定されるEBV型について当業者に知られている、粒子形成に必須のEBV構造タンパク質(例えば、カプシド、コート、殻、表面又はエンベロープタンパク質及び糖タンパク質)を含む。
【0021】
「対象」との用語は、その生物にとって異質な分子に対し免疫反応を引き起こす能力を有する後生動物に関する。好ましくは、対象は動物、より好ましくは哺乳類、さらにより好ましくはヒト又は実験動物、特にラット、マウス、ウサギ、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウシ、ロバ、最も好ましくはヒトである。好ましくは、実験動物は本発明の方法が適用された後犠牲死させられる。
【0022】
本明細書で使用される「ワクチン接種」との用語は、対照の免疫系を刺激して適応免疫を発達させるために抗原物質を投与することに関する。好ましくは、ワクチン接種は、治療的又は予防的ワクチン接種である。本明細書の他の箇所で特定されるように、EBV粒子は1個以上の非EBVポリペプチドを含み得る;従って、少なくとも1つの非EBV免疫原性エピトープを含むEBV粒子が、非EBV抗原に対する対象のワクチン接種において使用され得る。好ましくは、前記非EBV抗原は、感染因子、より好ましくは、非EBVウイルス、細菌若しくは真核生物の感染因子、又はそれらに含まれる免疫原性構造である。好ましくは、非EBV抗原は、ヘルペスウイルス、特に単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、又はヒトヘルペスウイルス8である。より好ましくは、ワクチン接種は、EBV感染に対するワクチン接種である。
【0023】
治療的ワクチン接種とは、本明細書で言及される対象の疾患若しくは障害、又はそれらに付随する症状を有意な程度まで改善又は治すために投与されるワクチン接種を意味する。治療的ワクチン接種により、本明細書で言及される疾患又は障害に関して、健康の完全回復がもたらされ得る。本発明に従って使用される治療的ワクチン接種は、すべての対象において効果的ではない可能性があることは理解されるべきである。しかしながら、当該用語は好ましくは、本明細書で言及される疾患又は障害に罹患する対象の統計的に有意な部分が成功裏に治療され得ることを必要とするだろう。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、本明細書の他の箇所に論じられる様々な周知の統計用評価ツールを使用し、それ以上作業することなく当業者によって決定され得る。好ましくは、治療的ワクチン接種は、所与のコホート又は集団の対象の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%について効果的であるだろう。
【0024】
予防的ワクチン接種は、対象において特定の期間、好ましくは終生、本明細書で言及される疾患又は障害に関して、対象の健康を保持するために投与されるワクチン接種に関する。前記期間は、投与されたEBV粒子の量、及び本明細書の他の箇所で論じられる対象の個々の因子に依存し得ることは理解されるだろう。予防的ワクチン接種は、本発明に従ってEBV粒子で処置されるすべての対象において効果的ではない可能性があることは理解されるべきである。しかしながら、当該用語は、好ましくは、コホート又は集団の対象の統計的に有意な部分が、本明細書で言及される疾患若しくは障害、又はそれに付随する症状に罹患することから効果的に予防されることを必要とする。好ましくは、通常、即ち本発明による予防的ワクチン接種がなければ、本明細書で言及される疾患又は障害を発症するだろう対象のコホート又は集団が、この文脈において企図される。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、本明細書の他の箇所に論じられる様々な周知の統計用評価ツールを使用し、それ以上作業することなく当業者によって決定され得る。好ましくは、予防的ワクチン接種は、所与のコホート又は集団の対象の少なくとも25%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%について効果的であるだろう。
【0025】
従来のEBVワクチンでのワクチン接種は、ワクチン接種された対象の細胞において形質転換を誘導するリスクを負う。しかしながら、本発明のワクチンは染色体異常を誘導しないため、また、好ましい実施形態では本発明のワクチンは機能的EBV DNA及び/又は形質転換EBVポリペプチドがないため、本明細書で提案されるワクチンは、優れた安全特性を提供し、非末期の疾患に罹患する対象にも使用され得る。同じ理由で、若年の対象のワクチン接種が企図され得る。従って、好ましくは、ワクチン接種される対象は、平均余命の1/2未満、好ましくは1/4未満、より好ましくは1/5未満、最も好ましくは1/10未満の年齢を有する対象である。より好ましくは、対象は、18歳未満、好ましくは15歳未満、より好ましくは10歳未満、最も好ましくは5歳未満のヒトである。また好ましくは、対象は免疫不全に罹患している、及び/又は免疫抑制治療を受けることが計画されている。従って、好ましくは、対象は将来の移植受容者である。より好ましくは、対象は、臓器移植及び/又は造血幹細胞移植、好ましくは同種造血幹細胞移植、より好ましくは同種骨髄移植、の将来の受容者である。好ましくは、本発明によるワクチン接種は、染色体異常の誘導を回避することを含む。
【0026】
本明細書で使用される「染色体不安定性誘導EBVポリペプチド」との用語は、野生型EBVゲノムによりコードされ、宿主細胞のゲノムの不安定性を誘導する活性を有するポリペプチドに関する。好ましくは、前記染色体不安定性誘導EBVポリペプチドは、EBVのテグメントポリペプチドである。従って、好ましくは、染色体不安定性誘導EBVポリペプチドは、EBV粒子中に含まれる。好ましくは、染色体不安定性誘導EBVポリペプチドは、EBVのBNRF1ポリペプチド、BPLF1ポリペプチド、BGLF3ポリペプチド、BRRF2ポリペプチド、BKRF4ポリペプチド、又はBXLF1ポリペプチドである。より好ましくは、染色体不安定性誘導EBVポリペプチドは、EBVのBNRF1ポリペプチド又はBPLF1ポリペプチドである;最も好ましくは、染色体不安定性誘導EBVポリペプチドは、BNRF1ポリペプチドである。染色体不安定性誘導EBVポリペプチドの活性を決定するための手段及び方法は、実施例において本明細書に記載される;好ましくは、前記活性は、実施例において本明細書に特定されるように、細胞中で目的の遺伝子を過剰生産し、誘導された染色体異常の数を対照と比較することにより、決定される。本明細書で使用される場合、前記活性、特に変異原活性を有する染色体不安定性誘導EBVポリペプチドのバリアントは、「機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチド」と称され、一方、前記活性、特に変異原活性を有しない染色体不安定性誘導EBVポリペプチドのバリアントは「非機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチド」と称される。従って、例えば、好ましくは、前記活性、特に変異原活性を有するBNRF1ポリペプチドのバリアントは「機能的BNRF1ポリペプチド」と称され、一方、前記活性、特に変異原活性を有しないBNRF1ポリペプチドのバリアントは「非機能的BNRF1ポリペプチド」と称される。
【0027】
「BNRF1」との用語は、EBV株B95-8のBamHI N断片上に確認し得る最初の右側リーディングフレームに関するものとして当業者に知られる;不確かさを避けるためにいうと、本明細書で使用される場合、「BNRF1」との用語には他のEBV株由来のBNRF1ホモログが含まれる。好ましくは、BNRF1は、EBV株B95-8、P3HR1又はM81由来のBNRF1である。好ましくは、本明細書において上に特定されるように、「BNRF1ポリペプチド」との用語は、BNRF1 RNAの翻訳産物であるポリペプチドに関し、そのポリペプチドはまた、EBVの「主要テグメントタンパク質」又は「p140」として知られる。理解されるように、BNRF1 RNAもBNRF1ポリペプチドもBNRF1遺伝子の産物である(即ちBNRF1遺伝子産物である)。原型のEBV株B95-8のBNRF1ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:CAD53384.1 GI:23893579下で入手可能であり、B型EBV株P3HR1のBNRF1ポリペプチドのアミノ酸配列はGenBank登録番号:CAA47987.1 GI:59166下で入手可能である。B型EBV株P3HR1のBNRF1遺伝子の核酸配列は、GenBank登録番号:X67777.1 GI:59165下で入手可能である。BNRF1ポリペプチド及び遺伝子の更なる配列は、公開データベースにおいて入手可能である。「BNRF1活性」との用語は、BNRF1ポリペプチドにより媒介される活性に関する。好ましくは、BNRF1活性は、宿主細胞の核へのそれ自身の輸送を媒介するBNRF1ポリペプチドの活性及び/又は実施例において本明細書で特定されるその変異原活性である。より好ましくは、BNRF1活性は、BNRF1ポリペプチドの変異原活性であり、最も好ましくは、宿主細胞において染色体異常を誘導するBNRF1の活性である。宿主細胞の核へのそれ自身の輸送を媒介するBNRF1活性を決定するための手段及び方法は当業者に知られており、例えばBNRF1ポリペプチド又はそのバリアントを含む細胞から核を単離し、例えば免疫学的方法により前記単離された核のBNRF1含有量を決定する。BNRF1変異原活性を決定するための方法は、実施例において本明細書に記載される。好ましくは、BNRF1活性を欠くEBV粒子は、配列番号4において示される核酸配列を含むEBVゲノムから産生されるEBV株M81粒子である。
【0028】
「BPLF1」との用語は、EBV株B95-8のBamHI P断片上に確認し得る最初の左側リーディングフレームに関するものとして当業者に知られる;不確かさを避けるためにいうと、本明細書で使用される場合、「BPLF1」との用語には他のEBV株由来のBPLF1ホモログが含まれる。好ましくは、BPLF1は、EBV株B95-8、P3HR1又はM81由来のBPLF1である。好ましくは、本明細書において上に特定されるように、「BPLF1ポリペプチド」との用語は、BPLF1 RNAの翻訳産物であるポリペプチドに関し、そのポリペプチドはまた、EBVの「巨大テグメントタンパク質脱NEDD化酵素」として知られる。理解されるように、BPLF1 RNAもBPLF1ポリペプチドもBPLF1遺伝子の産物である(即ちBPLF1遺伝子産物である)。原型のEBV株B95-8のBPLF1ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:CAD53402.1 GI:23893598下で入手可能である。BPLF1ポリペプチド及び遺伝子の更なる配列は、公開データベースにおいて入手可能である。「BPLF1活性」との用語は、BPLF1ポリペプチドにより媒介される活性に関する。好ましくは、BPLF1活性は、宿主細胞の核へのそれ自身の輸送を媒介するBPLF1ポリペプチドの活性及び/又は実施例において本明細書で特定されるその変異原活性である。より好ましくは、BPLF1活性は、BPLF1ポリペプチドの変異原活性であり、最も好ましくは、宿主細胞において染色体異常を誘導するBPLF1の活性である。宿主細胞の核へのそれ自身の輸送を媒介するBPLF1活性を決定するための手段及び方法は当業者に知られており、例えばBPLF1ポリペプチド又はそのバリアントを含む細胞から核を単離し、例えば免疫学的方法により前記単離された核のBPLF1含有量を決定する。BPLF1変異原活性を決定するための方法は、実施例において本明細書に記載される。
【0029】
「BGLF3」との用語は、EBV株B95-8のBamHI G断片上に確認し得る3番目の左側リーディングフレームに関するものとして当業者に知られる;不確かさを避けるためにいうと、本明細書で使用される場合、「BGLF3」との用語には他のEBV株由来のBGLF3ホモログが含まれる。好ましくは、BGLF3は、EBV株B95-8、P3HR1又はM81由来のBGLF3である。好ましくは、本明細書において上に特定されるように、「BGLF3ポリペプチド」との用語は、BGLF3 RNAの翻訳産物であるポリペプチドに関する。理解されるように、BGLF3 RNAもBGLF3ポリペプチドもBGLF3遺伝子の産物である(即ちBGLF3遺伝子産物である)。原型のEBV株B95-8のBGLF3ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:YP_401689.1 GI:82503245下で入手可能である。BGLF3ポリペプチド及び遺伝子の更なる配列は、公開データベースにおいて入手可能である。「BGLF3活性」との用語は、BGLF3ポリペプチドにより媒介される活性に関する。好ましくは、BGLF3活性は、BGLF3ポリペプチドの変異原活性であり、最も好ましくは、宿主細胞において染色体異常を誘導するBGLF3の活性である。BGLF3活性を決定するための手段及び方法は、実施例において本明細書に記載される。
【0030】
「BRRF2」との用語は、EBV株B95-8のBamHI R断片上に確認し得る2番目の右側リーディングフレームに関するものとして当業者に知られる;不確かさを避けるためにいうと、本明細書で使用される場合、「BRRF2」との用語には他のEBV株由来のBRRF2ホモログが含まれる。好ましくは、BRRF2は、EBV株B95-8、P3HR1又はM81由来のBRRF2である。好ましくは、本明細書において上に特定されるように、「BRRF2ポリペプチド」との用語は、BRRF2 RNAの翻訳産物であるポリペプチドに関する。理解されるように、BRRF2 RNAもBRRF2ポリペプチドもBRRF2遺伝子の産物である(即ちBRRF2遺伝子産物である)。原型のEBV株B95-8のBRRF2ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:P03210.1 GI:141396下で入手可能である。BRRF2ポリペプチド及び遺伝子の更なる配列は、公開データベースにおいて入手可能である。「BRRF2活性」との用語は、BRRF2ポリペプチドにより媒介される活性に関する。好ましくは、BRRF2活性は、BRRF2ポリペプチドの変異原活性であり、最も好ましくは、宿主細胞において染色体異常を誘導するBRRF2の活性である。BRRF2活性を決定するための手段及び方法は、実施例において本明細書に記載される。
【0031】
「BKRF4」との用語は、EBV株B95-8のBamHI K断片上に確認し得る4番目の右側リーディングフレームに関するものとして当業者に知られる;不確かさを避けるためにいうと、本明細書で使用される場合、「BKRF4」との用語には他のEBV株由来のBKRF4ホモログが含まれる。好ましくは、BKRF4は、EBV株B95-8、P3HR1又はM81由来のBKRF4である。好ましくは、本明細書において上に特定されるように、「BKRF4ポリペプチド」との用語は、BKRF4 RNAの翻訳産物であるポリペプチドに関する。理解されるように、BKRF4 RNAもBKRF4ポリペプチドもBKRF4遺伝子の産物である(即ちBKRF4遺伝子産物である)。原型のEBV株B95-8のBKRF4ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:P30117.1 GI:267499下で入手可能である。BKRF4ポリペプチド及び遺伝子の更なる配列は、公開データベースにおいて入手可能である。「BKRF4活性」との用語は、BKRF4ポリペプチドにより媒介される活性に関する。好ましくは、BKRF4活性は、BKRF4ポリペプチドの変異原活性であり、最も好ましくは、宿主細胞において染色体異常を誘導するBKRF4の活性である。BKRF4活性を決定するための手段及び方法は、実施例において本明細書に記載される。
【0032】
「BXLF1」との用語は、EBV株B95-8のBamHI X断片上に確認し得る最初の左側リーディングフレームに関するものとして当業者に知られる;不確かさを避けるためにいうと、本明細書で使用される場合、「BXLF1」との用語には他のEBV株由来のBXLF2ホモログが含まれる。好ましくは、BXLF1は、EBV株B95-8、P3HR1又はM81由来のBXLF1である。好ましくは、本明細書において上に特定されるように、「BXLF1ポリペプチド」との用語は、EBVチミジンキナーゼとしても知られる、BXLF1 RNAの翻訳産物であるポリペプチドに関する。理解されるように、BXLF1 RNAもBXLF1ポリペプチドもBXLF1遺伝子の産物である(即ちBXLF2遺伝子産物である)。原型のEBV株B95-8のBXLF1ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:YP_401701.1 GI:82503257下で入手可能である。BXLF1ポリペプチド及び遺伝子の更なる配列は、公開データベースにおいて入手可能である。「BXLF1活性」との用語は、BXLF1ポリペプチドにより媒介される活性に関する。好ましくは、BXLF1活性は、BXLF1ポリペプチドの変異原活性であり、最も好ましくは、宿主細胞において染色体異常を誘導するBXLF1の活性である。BXLF1活性を決定するための手段及び方法は、実施例において本明細書に記載される。
【0033】
上述に従い、「有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有するEBV粒子」との表現は、改変されていない、好ましくは野生型の、染色体不安定性誘導EBVポリペプチド遺伝子の存在下で産生されたEBV粒子に比べ統計的に有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有する、本明細書に特定されるEBV粒子に関する。好ましくは、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有するEBV粒子は、検出可能な染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を含まないEBV粒子である。より好ましくは、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有するEBV粒子は、106個の粒子において、実施例において本明細書に特定される方法により検出可能な染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を含まないEBV粒子である。本明細書で使用される場合、当該用語は、感染宿主細胞が暴露されるすべての染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性の低下に関する;当業者には理解されるように、染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性への宿主細胞の暴露は、宿主細胞の細胞質及び/若しくは核への活性な染色体不安定性誘導EBVポリペプチドの導入により、宿主細胞の細胞質及び/若しくは核への翻訳可能な染色体不安定性誘導EBVポリペプチドコードRNAの導入により、並びに/又は宿主細胞の細胞質及び/若しくは核への発現可能な染色体不安定性誘導EBVポリペプチドコード遺伝子の導入により、引き起こされ得る。当業者には理解されるように、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有するEBV粒子は、本明細書に特定される非機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチド、及び/又は非機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチドをコードする染色体不安定性誘導EBVポリペプチドコードRNA、及び/又は非機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチドをコードする染色体不安定性誘導EBVポリペプチドコード遺伝子を含み得る。
【0034】
従って、例えば好ましくは、「有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子」との表現は、改変されていない、好ましくは野生型の、BNRF1遺伝子の存在下で産生されたEBV粒子に比べ統計的に有意に低下したBNRF1活性を含む、本明細書に特定されるEBV粒子に関する。好ましくは、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、検出可能なBNRF1活性を含まないEBV粒子である。より好ましくは、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、106個の粒子において、実施例において本明細書に特定される方法により検出可能なBNRF1活性を含まないEBV粒子である。本明細書で使用される場合、当該用語は、感染宿主細胞が暴露されるすべてのBNRF1活性の低下に関する;当業者には理解されるように、BNRF1活性への宿主細胞の暴露は、宿主細胞の細胞質及び/若しくは核への活性なBNRF1ポリペプチドの導入により、宿主細胞の細胞質及び/若しくは核への翻訳可能なBNRF1 RNAの導入により、並びに/又は宿主細胞の細胞質及び/若しくは核への発現可能なBNRF1遺伝子の導入により、引き起こされ得る。当業者には理解されるように、BNRF1活性への宿主細胞の暴露にはまた、細胞小器官、特に中心体へのBNRF1遺伝子産物の導入が含まれ得る。本明細書で使用される場合、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、好ましくは有意に低下した量のBNRF1ポリペプチドを含み、より好ましくは機能的BNRF1ポリペプチドを含まず、最も好ましくはBNRF1ポリペプチドを含まない。また好ましくは、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、有意に低下した量のBNRF1 RNAを含み、より好ましくは機能的BNRF1ポリペプチドをコードするRNAを含まず、最も好ましくはBNRF1ポリペプチドをコードするRNAを含まない。また好ましくは、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、有意に低下した量のBNRF1遺伝子を含み、より好ましくは機能的BNRF1ポリペプチドをコードする遺伝子を含まず、最も好ましくはBNRF1ポリペプチドをコードする遺伝子を含まない。より好ましくは、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、好ましくは有意に低下した量のBNRF1ポリペプチド及びBNRF1 RNAを含み、より好ましくは機能的BNRF1ポリペプチド及びBNRF1 RNAを含まず、最も好ましくはBNRF1ポリペプチド及びBNRF1 RNAを含まない。最も好ましくは、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、好ましくは有意に低下した量のBNRF1ポリペプチド、BNRF1 RNA及びBNRF1遺伝子を含み、より好ましくは機能的BNRF1ポリペプチド、BNRF1 RNA及びBNRF1遺伝子を含まず、最も好ましくはBNRF1ポリペプチド、BNRF1 RNA及びBNRF1遺伝子を含まない。従って、好ましくは、EBV粒子はBNRF1遺伝子産物を含まない。従って、EBV粒子は、好ましくは、機能的に発現可能なBNRF1遺伝子を欠くEBVゲノムから産生され、好ましくは発現可能なBNRF1遺伝子を欠く。当業者には理解されるように、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子は、本明細書に特定される非機能的BNRF1ポリペプチド、及び/又は非機能的BNRF1ポリペプチドをコードするBNRF1 RNA、及び/又は非機能的BNRF1ポリペプチドをコードするBNRF1遺伝子を含み得る。
【0035】
好ましくは、EBV粒子を含む組成物は、医薬組成物である。本明細書で使用される「医薬組成物」との用語は、薬学的に許容可能な形態の本発明の1つ若しくは複数の化合物、及び薬学的に許容可能な担体を含む組成物に関する。本発明の化合物は、薬学的に許容可能な塩として製剤化され得る。許容可能な塩は、酢酸塩、メチルエステル、HCl、硫酸塩、塩化物等を含む。医薬組成物は、好ましくは局所的に、又は、より好ましくは全身的に投与される。薬物の投与のために通常用いられる適切な投与経路は、経口、静脈内又は非経口投与、並びに吸入である。好ましくは、本発明の医薬組成物は、非経口経路を介し、好ましくは皮下、筋肉内、鼻腔内、腹腔内に投与される。対象がヒトである場合、投与は好ましくは筋肉内にされる。しかし、ポリヌクレオチド化合物はまた、ウイルスベクター、ウイルス又はリポソームを用いることにより遺伝子治療法において投与され得、また、例えば軟膏として局所投与され得る。さらに、化合物は、共通の医薬組成物において、又は部品キットの形態で提供され得る個別の医薬組成物として、他の薬物と組み合わせて投与され得る。特に、本明細書の他の箇所で特定されるように、アジュバントの同時投与が企図される。好ましくは、EBV粒子及び医薬組成物は、凍結乾燥形態で提供される。
【0036】
化合物は、好ましくは、従来の手順に従って、標準の医薬担体と薬物とを組み合わせることによって調製される通常の剤形で投与される。これらの手順は、所望の製剤にとって適切なように成分を混合、造粒、及び圧縮又は溶解することを含み得る。薬学的に許容される担体又は希釈剤の形態及び特性は、それが組み合わせられる有効成分の種類及び量、投与経路、及び他の周知の変動要因によって決定されることは理解されよう。
【0037】
担体(複数可)は、製剤の他の成分に適合性であり、その受容者に有害でないという意味において許容されるものでなければならない。使用される医薬担体は、例えば、固体、ゲル又は液体であり得る。固体担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等である。液体担体の例は、リン酸緩衝食塩水、シロップ、落花生油及びオリーブ油等の油、水、乳剤、様々なタイプの湿潤剤、滅菌溶液等である。同様に、担体又は希釈剤は、当技術分野で周知の時間遅延材料、例えば、グリセリルモノステアレート又はグリセリルジステアレート等を単独で、又はワックスと共に含んでいてもよい。前記適切な担体は、上記のもの及び当技術分野で周知の他のものを含み、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。
【0038】
希釈剤(複数可)は、好ましくは、EBV粒子、免疫原性ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター又は宿主細胞、及び潜在的な更なる薬学的有効成分の生物活性に影響を与えないよう、選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は非毒性、非治療的、非免疫原性の安定剤等を含み得る。
【0039】
有効量とは、対象の免疫化という効果を引き出す、本発明の医薬組成物において使用される化合物の量を意味する。化合物の治療有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準の薬学的手順により、例えばED50(集団の50%で治療上有効な用量)及び/又はLD50(集団の50%に対し致死的な用量)を決定することにより、決定することができる。治療効果と毒性作用との間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50の比率として表すことができる。
【0040】
投与計画は、好ましくは関連の臨床的因子を考慮し、好ましくは本明細書の他の箇所に記載の方法のいずれか1つに従い、主治医により決定されるだろう。医学分野では周知であるように、任意のある患者のための投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的な健康状態、並びに同時に投与される他の薬物を含めた、多くの因子に依存し得る。しかし、また、特定の種、特にヒトの免疫化に適した標準用量は確立され得る。免疫化が成功しているかどうかは、定期的評価によりモニターされ得る。典型的な用量は、例えば、好ましくは1回の免疫化当たり、1μg~10000μgの範囲であり得る;しかし、特に上述の因子を考慮すると、この例示的な範囲を下回る又は上回る用量が想定される。本明細書で言及される医薬組成物及び製剤は、免疫化を確立するために少なくとも1回投与される。しかし、前記医薬組成物は、2回以上、例えば2~4回投与され得る。また、長期の免疫を確立又は維持するためにブースト免疫化(boost immunization)が企図され得る。
【0041】
特定の医薬組成物は、製薬分野において周知の方法で調製され、活性化合物として少なくともEBV粒子、ポリヌクレオチド、ベクター又は宿主細胞を、薬学的に許容される担体又は希釈剤との混合物中で、又は他のやり方でこれらと結び付けて含む。これらの特定の医薬組成物の製造については、活性化合物(複数可)は、通常、担体若しくは希釈剤と混合されるか、又は、カプセル、サシェ、カシェ、ペーパー若しくは他の適切な容器若しくはビヒクルに封入若しくはカプセル化される。得られた製剤は、投与様式に適合させることができ、すなわち錠剤、カプセル剤、坐剤、溶液、懸濁液等の形態である。推奨投与量は、考慮される受容者に応じて投与量の調整を予想するために、処方者又は使用者の使用説明書に表示されるだろう。
【0042】
有利なことに、本発明の基礎を成す仕事において、染色体不安定性誘導EBVポリペプチドをEBV粒子から除去することにより、染色体異常の誘導が、例えばEBVに感染した細胞において、回避され得ることが見出された。さらに、EBV粒子による染色体不安定性の誘導の回避はまた、EBV粒子が細胞のサイトゾル及び/又は核に入るのを妨げることにより、例えばウイルス膜の細胞膜との融合を妨げることにより、達成され得ることがさらに見出された。従って、EBV粒子、特にEB VLPを含むより安全なワクチンは、細胞のサイトゾル及び/又は核に染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を導入しないEBV粒子を提供することにより生産され得ることが見出された。
【0043】
上述した定義は、以下に必要な変更を加えて適用する。以下にさらに述べる追加の定義及び説明はまた、本明細書に記載した全ての実施形態についても必要な変更を加えて適用する。
【0044】
本発明はさらに、対象のワクチン接種における使用のためのEBV粒子を含む組成物であって、前記ワクチン接種は、前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性、好ましくはBNRF1活性と接触させることを回避することを含む、組成物に関する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避すること」との用語は、ワクチン接種のための適当なEBV粒子を選択することにより、細胞のサイトゾル及び/又は核が、本明細書において上に特定される染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性、好ましくはBNRF1活性、と接触しないことを能動的に保証することに関する。
【0046】
好ましくは、細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することは、ワクチン接種のために、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有する、より好ましくは、検出可能な染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を含まないEBV粒子を投与することにより達成される。理解されるように、細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避するために、好ましくは、検出可能な染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を含まないEBV粒子のみが投与される。より好ましくは、細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することは、前記対象を機能的染色体不安定性誘導EBV遺伝子産物と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象を機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチドと接触させることを避けることを含む。より好ましくは、細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することは、前記対象を機能的BNRF1遺伝子産物と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象を機能的BNRF1ポリペプチドと接触させることを回避することを含む。より好ましくは、細胞のサイトゾル及び/又は核をBNRF1活性と接触させることを回避することは、前記対象をBNRF1遺伝子産物と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象をBNRF1ポリペプチドと接触させることを回避することを含む。
【0047】
また好ましくは、細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することは、検出可能なEBV膜融合ポリペプチド活性を含まないEBV粒子を投与することにより達成される。本明細書で使用される「EBV膜融合ポリペプチド」及び「膜融合EBVポリペプチド」との用語は、EBVゲノムによりコードされ、EBV膜の細胞膜との融合を媒介する又は助ける活性を有するポリペプチドに関する。好ましくは、EBV膜融合ポリペプチドは、融合に必須のポリペプチドである;即ち、EBV粒子から除外された場合、前記EBV粒子を非膜融合性(non-fusogenic)にさせる、ポリペプチドである。EBV膜融合ポリペプチドを特定するための方法は当該技術分野において既知であり、例えば、EBVゲノムから目的の遺伝子を除去し、その結果得られたEBV粒子の感染性を観察することを含む。好ましくは、前記特定するための方法は、EBV粒子が標的細胞のエンドソーム小胞中に蓄積するか否か検出することをさらに含む。好ましくは、前記EBV膜融合ポリペプチドは、EBV粒子の膜に含まれるポリペプチドである。従って、好ましくは、EBV膜融合ポリペプチドは、EBV粒子中に含まれる。好ましくは、EBV膜融合ポリペプチドは、EBVのBALF4ポリペプチド、BXLF2ポリペプチド、BKRF2ポリペプチド又はBZLF2ポリペプチドである。より好ましくは、膜融合ポリペプチドは、EBVのBALF4ポリペプチド又はBXLF2ポリペプチドである;最も好ましくは、膜融合EBVポリペプチドは、BALF4ポリペプチドである。EBV膜融合ポリペプチドの活性を決定するための手段及び方法は当該技術分野において既知である。本明細書で使用される場合、前記膜融合活性を有するEBV膜融合ポリペプチドのバリアントは、「機能的EBV膜融合ポリペプチド」と称され、一方、前記膜融合活性を有しないEBV膜融合ポリペプチドのバリアントは、「非機能的EBV膜融合ポリペプチド」と称される。従って、例えば、好ましくは、前記膜融合活性を有するBALF4ポリペプチドのバリアントは、「機能的BALF4ポリペプチド」と称され、一方、前記膜融合活性を有しないBALF4ポリペプチドのバリアントは、「非機能的BALF4ポリペプチド」と称される。また好ましくは、本明細書の他の箇所で特定されるEBV膜融合ポリペプチド活性、好ましくはBALF4活性、を欠くEBV粒子が投与され得る。
【0048】
好ましくは、EBV膜融合ポリペプチドは、BXLF2ポリペプチドである、即ち、EBVの「gp85」又は「BXLF2タンパク質」として当業者に知られるポリペプチドである。EBV株B95.8由来のBXLF2ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:CAD53450.1 GI:23893646下で登録されている;さらに、更なるEBV株由来のホモログの更なるアミノ酸配列は、公開データベースにおいて入手可能である。また、BXLF2ポリペプチドをコードする遺伝子は公開データベースにおいて入手可能である。従って、当業者は、例えば配列アライメントにより、あるポリペプチドがBXLF2ポリペプチドであるか否か確認することができる。また、当業者は、例えば既知の方法による核酸ハイブリダイゼーションにより、新たなBXLF2遺伝子を同定することができる。
【0049】
また好ましくは、EBV膜融合ポリペプチドは、BKRF2ポリペプチドである、即ち、EBVの「gp25」又は「BKRF2タンパク質」として当業者に知られるポリペプチドである。EBV株B95.8由来のBKRF2ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号:P03212.1 GI:140976下で登録されている;さらに、更なるEBV株由来のホモログの更なるアミノ酸配列は、公開データベースにおいて入手可能である。また、BKRF2ポリペプチドをコードする遺伝子は公開データベースにおいて入手可能である。従って、当業者は、例えば配列アライメントにより、あるポリペプチドがBKRF2ポリペプチドであるか否か確認することができる。また、当業者は、例えば既知の方法による核酸ハイブリダイゼーションにより、新たなBKRF2遺伝子を同定することができる。
【0050】
また好ましくは、EBV膜融合ポリペプチドは、BZLF2ポリペプチドである、即ち、EBVの「gp42」又は「BZLF2タンパク質」として当業者に知られるポリペプチドである。EBV株B95.8由来のBZLF2ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号: CAD53422.1 GI:23893618下で登録されている;さらに、更なるEBV株由来のホモログの更なるアミノ酸配列は、公開データベースにおいて入手可能である。また、BZLF2ポリペプチドをコードする遺伝子は公開データベースにおいて入手可能である。従って、当業者は、例えば配列アライメントにより、あるポリペプチドがBZLF2ポリペプチドであるか否か確認することができる。また、当業者は、例えば既知の方法による核酸ハイブリダイゼーションにより、新たなBZLF2遺伝子を同定することができる。
【0051】
より好ましくは、EBV膜融合ポリペプチドは、BALF4ポリペプチドである、即ち、EBVの「gp110」、「gp125」又は「BALF4タンパク質」として当業者に知られるポリペプチドである。EBV株B95.8由来のBALF4ポリペプチドのアミノ酸配列は、GenBank登録番号: P03188.1 GI:138191下で登録されている;さらに、更なるEBV株由来のホモログの更なるアミノ酸配列は、公開データベースにおいて入手可能である。また、BALF4ポリペプチドをコードする遺伝子は公開データベースにおいて入手可能である。従って、当業者は、例えば配列アライメントにより、あるポリペプチドがBALF4ポリペプチドであるか否か確認することができる。また、当業者は、例えば既知の方法による核酸ハイブリダイゼーションにより、新たなBALF4遺伝子を特定することができる。「BALF4活性」との用語は、BALF4ポリペプチドにより媒介される活性に関する。好ましくは、BALF4活性は、感染後、EBV粒子のエンドソームからの脱出及びEBVテグメントポリペプチド及びカプシドの細胞質への侵入を媒介するBALF4ポリペプチドの活性である。BALF4活性を決定するための手段及び方法は、当業者に既知である。上述に従い、「検出可能なBALF4活性を含まないEBV粒子」との表現は、本明細書に特定される方法により検出可能でないBALF4活性を含む、本明細書に特定されるEBV粒子に関する。従って、本明細書で使用される場合、検出可能なBALF4活性を含まないEBV粒子は、好ましくは、機能的BALF4ポリペプチドを含まず、より好ましくは、BALF4ポリペプチドを含まない。また好ましくは、有意に低下したBALF4活性を含むEBV粒子は、機能的BALF4ポリペプチドをコードする遺伝子を含まず、より好ましくは、BALF4ポリペプチドをコードする遺伝子を含まない。また好ましくは、検出可能なBALF4活性を含まないEBV粒子は、機能的BALF4ポリペプチド及びBALF4遺伝子を含まず、最も好ましくは、BALF4ポリペプチド及びBALF4遺伝子を含まない。従って、好ましくは、EBV粒子はBALF4遺伝子産物を含まない。従って、EBV粒子は、好ましくは、機能的に発現可能なBALF4遺伝子を欠くEBVゲノムから産生され、好ましくは発現可能なBALF4遺伝子を欠く。また好ましくは、細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することは、前記対象を、gp85、gp25、gp42及び/又はgp110活性を含むEBV粒子と接触させることを回避することを含む。より好ましくは、細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することは、前記対象を、gp110活性を含むEBV粒子と接触させることを回避することを含む。従って、好ましくは、組成物は、有意に低下したBNRF1活性及び/又は有意に低下したgp110活性を含み、好ましくは、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がない。より好ましくは、組成物は、有意に低下したBNRF1活性を有する及び/又は有意に低下したgp110活性を有するEBV粒子を含み、最も好ましくは、組成物は、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がないEBV粒子を含む。
【0052】
本発明はまた、対象のワクチン接種における使用のための、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有するEBV粒子をコードするポリヌクレオチドに関する。
【0053】
さらに、本発明は、EBVゲノムをコードするポリヌクレオチドであって、前記EBVゲノムが、
a) 活性な染色体不安定性誘導EBVポリペプチドをコードする遺伝子を欠き、及び/又は活性なEBV膜融合ポリペプチドをコードする遺伝子を欠き、及び
b) EBV末端反復配列を欠き、及び/又はBFLF1遺伝子及びBBRF1遺伝子から選択される少なくとも1つの機能的に発現可能な遺伝子を欠く、
ポリヌクレオチドに関する。
【0054】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」との用語は、線状又は環状の核酸分子を意味する。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは、単離されたポリヌクレオチド(即ち天然の状況から単離される)として又は遺伝子組み換えされた形態で、提供されるだろう。当該用語は、1本鎖並びに2本鎖ポリヌクレオチドを包含する。さらに、グリコシル化若しくはメチル化ポリヌクレオチド等の天然に修飾されたポリヌクレオチド、又はビオチン化ポリヌクレオチド等の人工的に修飾された誘導体を含む、化学修飾ポリヌクレオチドもまた、含まれる。
【0055】
好ましくは、EBVゲノムをコードするポリヌクレオチドにおいて、本明細書に特定される遺伝子の少なくとも1つが、前記遺伝子から生成されるタンパク質の短縮化、崩壊(disruption)又は変異をもたらす少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、付加及び/又は置換を導入することにより、改変される。このような改変は、終止コドンの生成をもたらす遺伝子内の点突然変異、並びにオープンリーディングフレームのシフトをもたらす改変を包含する。作出されるこのようなポリペプチドは、異常に短く又は異常に長く、野生型ポリペプチドの活性を有さず、好ましくは、生物学的機能を有しない。生物学的機能がない又は減少したポリペプチドをもたらす遺伝子内の点突然変異もまた、包含される。また好ましくは、遺伝子発現を統御する転写制御配列(即ちプロモーター)の不活性化をもたらす、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、付加及び/又は置換が、好ましくは導入され得る。さらに、転写されたRNAにおいてRNA分解の増大をもたらす配列が、好ましくは導入され得る。より好ましくは、上記遺伝子の少なくとも1つの遺伝子座全体が欠失させられる、又は非機能的又は非発現可能な核酸により置換される。最も好ましくは、オープンリーディングフレームは、以下の図面及び実施例に示されるように、カナマイシン耐性遺伝子等の選択マーカー遺伝子により置換される、或いは、オープンリーディングフレームは欠失させられる。
【0056】
当業者には知られているように、上記遺伝子の1つの所与の改変が非発現可能遺伝子をもたらすか否かの試験は、導入される改変の性質に依存するだろう。例えば、遺伝子のコード配列の大部分が欠失した場合、EBVタンパク質を電気泳動分離した後、前記遺伝子のタンパク質産物に特異的な抗体で免疫ブロッティングを行うことが適切である。なぜなら、当該欠失を有する遺伝子の産物は明らかに低い分子量を有するだろうからである。一方、上記遺伝子の1つが完全に欠失している場合は、欠失を証明する、得られたEBVゲノムの制限分析で十分であり得る。各々のケースにおいて、上記遺伝子の1つの機能の喪失は、EBV粒子において対応する活性が検出されるか否かにより分析され得る。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞において本発明によるEBV粒子の生産を指令する生物活性を有するEBVゲノムを含むポリヌクレオチドである。前記活性を測定するための適切なアッセイは後述の実施例に記載される。
【0058】
さらに、本発明に従って使用される「ポリヌクレオチド」との用語は、上述の特定のポリヌクレオチドのバリアントをさらに包含する。前記バリアントは、本発明のポリヌクレオチドの株又はクローンバリアント(strain or clonal variant)を表し得る。ポリヌクレオチドバリアントは、好ましくは、それによりバリアント核酸配列が依然として上に特定される活性を有するEBVゲノムをコードするだろう少なくとも1つのヌクレオチドの置換、付加及び/又は欠失により、上述の特定の核酸配列から得られ得ることを特徴とする核酸配列を含む。上述の核酸配列いずれかの断片を含むポリヌクレオチドはまた、本発明のポリヌクレオチドとして包含される。当該断片は、上に特定される活性を依然として有するEBVゲノムをコードするだろう。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドは、上述の核酸配列から本質的に成る、又は上述の核酸配列を含む。従って、それらは更なる核酸配列を含有し得る。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、融合タンパク質の一方のパートナーが上記の核酸配列によりコードされるポリペプチドである融合タンパク質をコードし得る。このような融合タンパク質は、発現をモニターするためのポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色又は赤色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ等)、又は検出マーカー若しくは精製のための補助的手段として機能し得るいわゆる「タグ」を追加部分として含み得る。様々な用途のためのタグが当該技術分野において周知であり、FLAGタグ、6-ヒスチジンタグ、MYCタグ等を含む。
【0060】
好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、上に詳述される改変に加え、変更を含む。特に、EBVのいくつかの潜伏遺伝子産物は、細胞に対する形質転換効果を有することが知られている、又は予測されているため(EBNA-2、LMP-1、LMP-2、EBNA-3A及び-C、BHRF1ポリペプチド、並びにBART-miRNA (Hammerschmidt W, Sudgen B (1989) Genetic analysis of immortalizing functions of Epstein-Barr virus in human B-lymphocytes. Nature 340: 393-397; Cohen JI等 (1989) Epstein-Barr virus nuclear protein 2 is a key determinant of lymphocyte transformation. PNAS 86:9558-9562; Kaye KM等 (1993) Epstein-Barr virus latent membrane protein 1 is essential for B-lymphocyte growth transformation. PNAS, 90, 9150-9154; Tomkinson B等 (1993) Epstein-Barr virus nuclear proteins EBNA3A and EBNA3C are essential for B-lymphocyte growth transformation. J. Virol. 62:6762-6771))、本発明のポリヌクレオチドからこれらの形質転換タンパク質をコードする遺伝子を除去することが望ましい。
【0061】
EBVゲノムの文脈において、「末端反復」との用語は、例えばEBV粒子にパッケージングされる、線状ゲノムの5'末端及び3'末端でEBVゲノム中に含まれる反復配列に関することは、当業者に知られている。例えば、末端反復を欠くゲノムから産生されるEBV粒子(TR- EBV)は粒子当たり有意に減少した数のEBVゲノムを含有することを開示する国際公開第2012/025603号から、末端反復を欠くEBVゲノムは当分野で知られている。
【0062】
EBV遺伝子「BFLF1」及び「BBRF1」はまた、当業者に知られており、例えば国際公開第2013/098364号に、ウイルスDNAの粒子へのパッケージングに必須であることが記載されている。従って、BFLF1遺伝子及びBBRF1遺伝子から選択される少なくとも1つの機能的に発現可能な遺伝子を欠くEBVゲノムからは、検出可能なEBV DNAを含まないEBV粒子が生産される。関連の配列は、公開データベースにおいて入手可能である。例えばEBV 1型のBFLF1遺伝子についての配列:GenBank登録番号:YP_401648.1 GI:82503206;EBV 2型のBFLF1遺伝子についての配列:GenBank登録番号:YP_001129444.1 GI:139424479。EBV 1型のBBRF1遺伝子についての配列:GenBank登録番号:YP_401682.1 GI:82503238;EBV 2型のBBRF1遺伝子についての配列:GenBank登録番号:YP_001129476.1 GI:123811640。
【0063】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、非EBVポリペプチド、より好ましくは人工の非EBVポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む。また好ましくは、ポリヌクレオチドは、非必須のEBVポリペプチドをコードする、好ましくは形質転換EBVポリペプチドをコードする、より好ましくは発現可能なEBV潜伏遺伝子をコードする少なくとも1つの発現可能な遺伝子をさらに欠き、最も好ましくはBZLF1、LMP-1、LMP-2、EBNA-2、EBNA-3a及びEBNA-3cから成る群から選択される遺伝子を欠く。
【0064】
さらに、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0065】
好ましくは、ベクターは、細胞内でEBVゲノムを安定に維持することができるプラスミド又はウイルスベクターである。より好ましくは、ベクターは大腸菌(Escherichia coli、E.coli)のFプラスミドから得られる;これらのベクターは、例えばE.coli細菌細胞内で、完全なEBVゲノムを安定に維持することを可能とする、F因子ベースのレプリコン又は細菌人工染色体(BAC)として当業者に知られている。さらに、当該用語はまた、ゲノムDNAへの標的化コンストラクトのランダム又は部位特異的な組み込みを可能にする標的化コンストラクトに関する。このような標的コンストラクトは好ましくは、相同組み換え又は異種挿入(heterologous insertion)に十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主における伝搬及び/又は選択のための選択マーカーをさらに含む。ベクターは、当該技術分野において周知の様々な手法により宿主細胞に組み込まれ得る。宿主細胞に導入された場合、ベクターは細胞質に存在し得る、又はゲノムに組み込まれ得る。後者の場合、ベクターは、相同組み換え又は異種挿入を可能とする核酸配列をさらに含み得ることは理解されるべきである。ベクターは、通常の形質転換又はトランスフェクション法を介して原核又は真核細胞に導入され得る。ベクター及び形質転換若しくはトランスフェクション法は、当該技術分野において周知であり、更なる苦労をせずに当業者により適用され得る。例えば、BACプラスミドベクターは、エレクトロポレーションによりE.coli細胞に、又は、荷電脂質との複合体において哺乳類細胞に、導入することができる。
【0066】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0067】
本明細書で言及される「宿主細胞」は、真核細胞並びに原核細胞を包含する。特に、本発明に従い言及される原核細胞は、例えば本発明のポリヌクレオチド又はベクターの伝搬のために使用され得る細菌細胞であり得る。この用途のための好ましい細菌は、E.coli細菌、より好ましくはDH10B株である。真核細胞は、好ましくは、本発明のポリヌクレオチド又はベクター内に含まれるEBVゲノムの遺伝子を発現することができる細胞である。EBVの生活環の潜伏サイクルの遺伝子を発現する好ましい細胞は、例えば、ラージ細胞(Raji cell)である。より好ましくは、前記細胞はEBV粒子を組み立てることができる、即ち許容宿主細胞である。本明細書で使用される「許容宿主細胞」との用語は、EBVの溶解複製を促進し、EBV粒子の産生をもたらすことができる細胞に関する。好ましくは、前記許容細胞は、哺乳類細胞、より好ましくは霊長類細胞、さらにより好ましくはヒト細胞である。最も好ましくは、宿主細胞は293細胞、B細胞又はB細胞由来の細胞株である。宿主細胞がEBVの溶解複製に必須な特定の要素を提供し得ることもまた、本発明により企図される。例えば、ウイルスを溶解サイクルに入ることができないようにさせる、機能的BZLF1遺伝子を欠くEBVゲノムを使用する場合、このような機能は、前記BZLF1遺伝子、BRLF1遺伝子又は両方の遺伝子の発現コンストラクトが細胞にトランスフェクトされた後、宿主細胞により提供され得る。
【0068】
また、本発明は、本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明のベクターから産生される又は産生可能なEBV粒子に関する。
【0069】
さらに、本発明は、ワクチンの製造のための、有意に低下したBNRF1活性を含むEBV粒子、本発明によるEBVポリヌクレオチド、本発明によるベクター、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0070】
本発明はまた、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチドの活性、及び/又は有意に低下したEBV膜融合ポリペプチドの活性を含み、有意に低下した量のEBV DNAを含むEB-VLPを製造するための方法であって、以下の工程を含む方法に関する:
a) 本発明によるポリヌクレオチド及び/又は本発明によるベクターを含む許容宿主細胞を培養する工程;及び
b) 前記許容宿主細胞からEB-VLPを得る工程。
【0071】
本発明のEB-VLPを製造するための方法は、好ましくは、in vitroの方法である。さらに、それは、上に明確に述べられた工程に加えさらに工程を含み得る。例えば、更なる工程は、例えば、工程a)については前記許容宿主細胞内にBZLF1遺伝子産物を与えること、或いは、工程b)では許容宿主細胞を取り除くこと、及び/又は培養された許容宿主細胞の上清からEB-VLPを得ることに関し得る。さらに、前記工程の1つ以上は自動化装置により行われ得る。
【0072】
本発明はまた、EB-VLPを製造するための方法の工程、及びワクチンとしてEB-VLPを製剤化する更なる工程を含む、ワクチンの製造のための方法に関する。
【0073】
また、本発明は、対象にワクチン接種するための方法であって、前記方法は前記対象をEBV粒子を含む組成物と接触させることを含み、前記方法は前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核をBNRF1活性と接触させることを回避することを含む、方法に関する。
【0074】
本発明は、さらに、対象にワクチン接種するための方法であって、前記対象を
(i) 有意に低下したBNRF1ポリペプチドの活性を有するEBV粒子
(ii) 本発明によるポリヌクレオチド、
(iii) 本発明によるベクター、
(iv) 本発明による宿主細胞、
(v) 本発明によるEBV粒子、
(vi) 本発明による組成物、又は
(vii) (i)~(vi)の任意の組み合わせ
と接触させることを含む、方法に関する。
【0075】
さらに、本発明は、本明細書において上に特定されるEB-VLPを製造するための方法の工程を含む方法により得ることができる、有意に低下したBNRF1ポリペプチドの活性及び/又は有意に低下したgp110ポリペプチドの活性を有し、有意に低下した量のEBV DNAを含むEB-VLPを含む組成物に関する。
【0076】
上記を考慮すると、以下の実施形態が特に好ましい。
1.対象のワクチン接種における使用のためのエプスタインバールウイルス(Epstein-Barr Virus、EBV)粒子を含む組成物であって、前記EBV粒子が有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性、好ましくは低下したBNRF1活性を有する、組成物。
2.前記EBV粒子が、有意に低下した量のEBV DNAを含む、実施形態1の組成物。
3.前記EBV粒子が、EBV DNAを含まない、実施形態1又は2の使用のための組成物。
4.前記EBV粒子が、エプスタインバールウイルス様粒子(EB-VLP)である、実施形態1~3のいずれか1つの使用のための組成物。
5.前記EBV粒子が、機能的BNRF1ポリペプチド、機能的BPLF1ポリペプチド、機能的BGLF3ポリペプチド、機能的BRRF2ポリペプチド、機能的BKRF4ポリペプチド、及び/又は機能的BXLF1ポリペプチドを含まない、好ましくは機能的BNRF1ポリペプチドを含まない、実施形態1~4のいずれか1つの使用のための組成物。
6.前記EBV粒子が、有意に低下した量のBNRF1遺伝子産物を含む、実施形態1~5のいずれか1つの使用のための組成物。
7.前記EBV粒子が、BNRF1遺伝子産物を含まない、実施形態1~6のいずれか1つの使用のための組成物。
8.前記EBV粒子が、機能的に発現可能なBNRF1遺伝子を欠くEBVゲノムから産生される、好ましくは発現可能なBNRF1遺伝子を欠く、実施形態1~7のいずれか1つの使用のための組成物。
9.前記EBV粒子が、少なくとも1つの非EBVポリペプチド、好ましくは人工の非EBVポリペプチドをさらに含む、実施形態1~8のいずれか1つの使用のための組成物。
10.前記EBV粒子が、少なくとも1つの非必須EBVポリペプチド活性をさらに欠く、好ましくはEBV gp110活性を欠く、実施形態1~9のいずれか1つの使用のための組成物。
11.前記EBV粒子が、少なくとも1つの形質転換EBVポリペプチドをさらに欠く、実施形態1~10のいずれか1つの使用のための組成物。
12.前記ワクチン接種が、EBV感染に対するワクチン接種である、実施形態1~11のいずれか1つの使用のための組成物。
13.前記ワクチン接種が、非末期の疾患の対象のワクチン接種である、実施形態1~12のいずれか1つの使用のための組成物。
14.前記対象が、その平均余命の1/2未満、好ましくは1/4未満、より好ましくは1/5未満、最も好ましくは1/10未満の年齢を有する対象である、実施形態1~13のいずれか1つの使用のための組成物。
15.前記対象が、18歳未満、好ましくは15歳未満、より好ましくは10歳未満、最も好ましくは5歳未満のヒトである、実施形態1~14のいずれか1つの使用のための組成物。
16.前記対象が、免疫不全に罹患している、及び/又は免疫抑制治療を受けることが計画されている、実施形態1~15のいずれか1つの使用のための組成物。
17.前記対象が、将来の移植受容者である、実施形態1~16のいずれか1つの使用のための組成物。
18.前記対象が、臓器移植及び/又は造血幹細胞移植、好ましくは同種造血幹細胞移植、より好ましくは同種骨髄移植、の将来の受容者である、実施形態1~17のいずれか1つの使用のための組成物。
19.前記ワクチン接種が、染色体異常の誘導を回避することを含む、実施形態1~18のいずれか1つの使用のための組成物。
20.前記組成物が医薬組成物である、実施形態1~20のいずれか1つの使用のための組成物。
21.対象のワクチン接種における使用のためのEBV粒子を含む組成物であって、前記ワクチン接種は、前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核をBNRF1活性と接触させることを回避することを含む、組成物。
22.前記細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することが、前記対象をBNRF1遺伝子産物と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象をBNRF1ポリペプチドと接触させることを回避することを含む、実施形態21の使用のための組成物。
23.前記細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することが、前記対象を、EBV膜融合ポリペプチド活性を有するEBV粒子と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象を、EBVのBALF4ポリペプチド、BXLF2ポリペプチド、BKRF2ポリペプチド及び/又はBZLF2ポリペプチドを欠くEBV粒子と接触させることを含み、より好ましくは、前記対象を、EBVのBALF4ポリペプチド、BXLF2ポリペプチド、BKRF2ポリペプチド及び/又はBZLF2ポリペプチドを含むEBV粒子と接触させることを回避することを含む、実施形態21又は22の使用のための組成物。
24.前記組成物が、有意に低下したBNRF1活性及び/又は有意に低下したgp110活性を有し、好ましくは、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がない、実施形態21~23のいずれか1つの使用のための組成物。
25.前記組成物が、有意に低下したBNRF1活性及び/又は有意に低下したgp110活性を有するEBV粒子を含む、実施形態21~23のいずれか1つの使用のための組成物。
26.前記組成物が、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がないEBV粒子を含む、実施形態21~24のいずれか1つの使用のための組成物。
27.対象のワクチン接種における使用のための、実施形態2~11のいずれか1つにおいて特定されるEBV粒子をコードするポリヌクレオチド。
28.EBVゲノムをコードするポリヌクレオチドであって、前記EBVゲノムは、
a) 機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチドをコードする遺伝子を欠き、及び/又は機能的EBV膜融合ポリペプチドをコードする遺伝子を欠き、及び
b) EBV末端反復配列を欠き、及び/又はBFLF1遺伝子及びBBRF1遺伝子から選択される少なくとも1つの機能的に発現可能な遺伝子を欠く、
ポリヌクレオチド。
29.前記ポリヌクレオチドが、非EBVポリペプチド、好ましくは人工の非EBVポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、実施形態27又は28に記載のポリヌクレオチド。
30.前記ポリヌクレオチドが、非必須のEBVポリペプチドをコードする少なくとも1つの発現可能な遺伝子をさらに欠く、実施形態27~29のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
31.前記ポリヌクレオチドが、形質転換EBVポリペプチドをコードする少なくとも1つの発現可能な遺伝子をさらに欠く、実施形態27~30のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
32.前記ポリヌクレオチドが、少なくとも1つの発現可能なEBV潜伏遺伝子をさらに欠く、実施形態27~31のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
33.前記ポリヌクレオチドが、BZLF1、LMP-1、LMP-2、EBNA-2、EBNA-3a及びEBNA-3cから成る群から選択される少なくとも1つの発現可能な遺伝子をさらに欠く、実施形態27~32のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
34.実施形態27~33のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
35.実施形態27~33のいずれか1つのポリヌクレオチド及び/又は実施形態34のベクターを含む宿主細胞。
36.実施形態27~33のいずれか1つのポリヌクレオチド及び/又は実施形態34のベクターから産生される又は産生可能なEBV粒子。
37.ワクチンの製造のための、実施形態1~11において特定されるEBV粒子、実施形態27~33のいずれか1つに記載のEBVポリヌクレオチド、実施形態34に記載のベクター、及び/又は実施形態35に記載の宿主細胞の使用。
38.有意に低下したBNRF1ポリペプチドの活性、及び/又は有意に低下したgp110ポリペプチドの活性を有し、有意に低下した量のEBV DNAを含むEB-VLPを製造するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
a) 実施形態27~33のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド及び/又は実施形態34のベクターを含む許容宿主細胞を培養する工程;及び
b) 前記許容宿主細胞からEB-VLPを得る工程。
39.前記EB-VLPが、培養された許容宿主細胞の上清から得られる、実施形態38の方法。
40.実施形態38又は39の方法の工程、及びワクチンとしてEB-VLPを製剤化する更なる工程を含む、ワクチンの製造のための方法。
41.実施形態38又は39の方法の工程を含む方法により得ることができる、有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチドの活性、及び/又は有意に低下したEBV膜融合ポリペプチドの活性を有し、有意に低下した量のEBV DNAを含むEB-VLPを含む組成物。
42.対象にワクチン接種するための方法であって、前記方法は、前記対象をEBV粒子を含む組成物と接触させることを含み、前記方法は、前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核をBNRF1活性と接触させることを回避することを含む、方法。
43.対象を、
(i) 実施形態1~11のいずれか1つにおいて特定されるEBV粒子
(ii)実施形態27~33のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、
(iii)実施形態34に記載のベクター、
(iv)実施形態35に記載の宿主細胞、
(v) 実施形態36に記載のEBV粒子、
(vi)実施形態41に記載の組成物、又は
(vii) (i)~(vi)の任意の組み合わせ
と接触させることを含む、前記対象にワクチン接種するための方法。
【0077】
本明細書において引用するすべての文献は、それらの全体の開示内容、及び本明細書において具体的に言及される開示内容に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0078】
以下の実施例は本発明を単に例示するだけだろう。それらは、如何なる場合も本発明の範囲を制限するよう解釈されてはならない。
【0079】
<実施例1:方法>
倫理的配慮(Ethics Statement)
使用したすべてのヒト初代B細胞は、ハイデルベルク大学の血液バンクから購入した匿名のバッフィーコートから単離した。倫理的承認は何ら必要とされていない。すべての動物実験は、ドイツの動物保護法(TierSchG)を厳守して行い、ドイツ、カールスルーエ地方議会(Regierungsprasidium Karlsruhe)の連邦獣医局(federal veterinary office)により承認された(承認番号G156-12)。マウスは、ドイツ癌研究センターのクラスII隔離研究室(containment laboratories)において飼育し、欧州実験動物学会連合(Federation of European Laboratory Animal Science Associations、FELASA)及び実験動物学会(Society for Laboratory Animal Science、GV-SOLAS)により規定されるように、動物の苦痛を最小限にし、マウスの使用数を減らすために、良い動物慣例(animal practice)に従って扱った。
【0080】
細胞株、初代細胞、ウイルス
293細胞株は、胎児由来上皮腎臓細胞のアデノウイルスでの形質転換により得られる神経内分泌細胞株である(ATCC: CRL-1573)。HeLaは、パピローマウイルス18型に感染しているヒト子宮頚部腺癌細胞株(ATCC:CLL-2)である。HeLa Kyoto mEGFP-αチューブリン/H2B-mCherry細胞株は、mEGFP-αチューブリン及びH2B-mCherryタンパク質融合物を安定に発現するHeLaの派生物である(Held M等、Nature methods 7, 747-754 (2010))。RPE-1はhTERTで不死化されたヒト上皮細胞株である(ATCC: CRL-4000)。RPE-1/セントリン1-GFPは、セントリン1-GFP融合タンパク質を構成的に発現する細胞株である(Yang Z等, Nature cell biology 10, 748-751 (2008))。U2OSは、脛骨の中分化型肉腫に由来する細胞株である(ATCC: HTB-96)。ハイデルベルクの血液バンクから購入したバッフィーコート由来の末梢血単核細胞をFicollクッション(cushion)上に精製し、CD19陽性の初代Bリンパ球をM-450 CD19 (Pan B) Dynabeads (Dynal)を用いて単離し、Detachabead (Dynal)を用いて分離させた。WI38は、初代ヒト胎児肺由来線維芽細胞である(ATCC: CCL-75)。すべての細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)(Biochrom)を追加したRPMI-1640培地(Invitrogen)中で慣例的に培養し、初代B細胞にはLCLが確立されるまで20%FBSを追加した。HeLa Kyoto mEGFP-αチューブリン/H2B-mCherry細胞には、0.5μg/mlのピューロマイシン及び500μg/mlのG418を追加した。本研究において使用したEBV産生細胞(M81、M81/ΔZR、B95-8、B95-8/ΔBNRF1、B95-8/ΔBFLF1ΔBFRF1ΔBBRF1ΔBALF4 (gp110欠失を有するVLP)、B95-8/ΔBFLF1ΔBFRF1ΔBBRF1 (VLP))は、以前に記載されており、100μg/mlのハイグロマイシンを追加した293細胞へのEBV-BACの安定なトランスフェクションにより確立された(Lin X等, PLoS pathogens 11, e1005344 (2015); Tsai MH等, Cell reports 5, 458-470 (2013); Pavlova S等, Journal of virology 87, 2011-2022 (2013); Neuhierl B等, Journal of virology 83, 4616-4623 (2009))。VLPを産生する変異体及びΔBNRF1変異体はまた、M81株に基づき得ることができる。それらは、そのB95-8ホモログと同じように構築した。M81/ΔZRは、溶解複製を開始するBZLF1及びBRLF1のトランス活性化因子を欠き、そのため複製することができず、B95-8/ΔBNRF1及びM81/ΔBNRF1はBNRF1テグメントタンパク質を欠く。
【0081】
プラスミド
BZLF1(p509)、BALF4(pRA)及びBNRF1(B056)発現プラスミドは、以前に記載されている(Feederle R等, Journal of virology 80, 9435-9443 (2006))。本発明者らは、CMVプロモーターに駆動される66個のEBVタンパク質のライブラリーをスクリーニングした(Adhikary D等, PLoS One 2, e583 (2007))。ラットCD2の細胞質側が短縮化されたバージョン(cytoplasmic-truncated version)をコードする発現プラスミド(B673)を、pcDNA3.1中に構築した。本発明者らはまた、TetOオペレーターにより制御される最小CMVプロモーター、CAGプロモーターにより駆動されるテトラサイクリントランス活性化因子タンパク質(Tet-On)、B95-8株に由来するプラスミド複製起点、及びSV40プロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性カセットを含有するテトラサイクリン誘導性プラスミドにBNRF1遺伝子をクローニングした(B1439)(Bornkamm GW等, Nucleic acids research 33, e137 (2005))。挿入物のない親ベクターは陰性対照として機能した。
【0082】
トランスフェクション
すべてのトランスフェクション実験は、製造業者の使用説明書に従いリポソームベースのトランスフェクタントMetafectene (Biontex)を用いて行った。
【0083】
ウイルス産生
組み換えEBV-BACで安定にトランスフェクトされた293細胞を、BZLF1(p509)及びBALF4(pRA)をコードする発現プラスミドでトランスフェクトし、gp110を欠くVLPの産生を除いて溶解複製を誘導し、gp110を欠くVLPの産生の場合にはBZLF1をコードするプラスミドのみをトランスフェクトした。ΔBNRF1ウイルスを安定に保持する産生細胞株におけるBNRF1タンパク質をコードするプラスミド(B056)のトランスフェクションは、以前説明されたようにトランス相補性(trans-complementation)をもたらした(Feederle R等, Journal of virology 80, 9435-9443 (2006))。トランスフェクションの3日後、ウイルスの上清を回収し、0.4μmフィルターを通して濾過した。
【0084】
マイトジェン又はCD40リガンドでのB細胞刺激
新しく単離されたCD19+初代B細胞を15μg/mlのアメリカヤマゴボウマイトジェン(PWM) (L9379, Sigma-Aldrich)と共に培養し、又は、25ng/mlの組み換えヒトIL4(PeproTech, Germany)の存在下で90Gyのガンマ線を照射したCD40リガンド供給細胞層上で培養した。刺激の開始の3日後、細胞をサイトスピン又は染色体分析に供した。
【0085】
ギムザ染色
分裂中期停止を誘導し、分裂中期スプレッド(metaphase spread)の調製を可能とするため、細胞を2時間0.075μg/mlのコルヒチン(Sigma-Aldrich C3915)で処理した。PBSで3回洗浄した後、細胞を37℃で10分間、75mM KCl低張緩衝液中でインキュベートし、メタノール:氷酢酸(3:1)中で固定し、冷やしたスライドガラスに滴下し水中の5%ギムザ(Carl Roth GmbH T862.1)で染色した。DFC300 FX(Leica, Cambridge, UK)カメラを備えたDM2500(Leica, Wetzlar, Germany)顕微鏡を用いて分裂中期のデジタル画像を撮り、核型分析に供した。1試料当たり最低50個の有糸分裂を分析した。
【0086】
多重蛍光in situハイブリダイゼーション(M-FISH)
M-FISHは、Geigl等, Nature protocols 1, 1172-1184 (2006)により記載されるように行った。簡単には、縮重オリゴヌクレオチド及びPCR(DOP-PCR)を用い、フローソートされたヒト全染色体ペインティングプローブの7つのプールを増幅し、7種の異なる蛍光色素(DEAC、FITC、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5及びCy7)で直接標識した。スライドガラスに固定した分裂中期の染色体を、2分間、72℃で、70%ホルムアミド/2xSSC pH 7.0中で変性させた後、純度を増大させながらエタノール系列中で脱水させた。ハイブリダイゼーション混合物は、組み合わせて標識されたペインティングプローブ、過剰な非標識cot1 DNA、50%ホルムアミド、2×SSC、及び15%の硫酸デキストランを含有していた。それを75℃で7分間変性させ、20分間37℃でプレアニーリングし、変性させた分裂中期の標本に37℃でハイブリダイズさせた。48時間後、スライドを5分間室温で2×SSC中で2回(trice)洗浄した後、0.2×SSC/0.2% Tween-20中で2回、1回につき7分間56℃で洗浄した。分裂中期スプレッドを4.6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で対比染色し、褪色防止液(antifade solution)で覆った。Sensys CCDカメラ(Photometrics, Tucson, AZ)を備えたDM RXA落射蛍光顕微鏡(Leica Microsystems, Bensheim, Germany)を用い、分裂中期スプレッドを記録した。カメラ及び顕微鏡は、Leica Q-FISHソフトウェアにより制御し、画像はLeica MCKソフトウェアに基づいて処理し、多色の核型として表した(Leica Microsystems Imaging solutions, Cambridge, United Kingdom)。各試料につき15~20の分裂中期を分析した。
【0087】
有糸分裂紡錘体の分析
細胞を3回洗浄し、PBS-3%FBS中に再懸濁した。そして、単細胞懸濁液を、スライドを有するShandonサイトスピンチャンバー(Thermo Scientifics)に入れ、10分間2000rpmで遠心した。サイトスピンした細胞を空気乾燥させ、8分間-20℃で、純メタノール中で固定し、室温で2回、1回につき5分間PBS中で簡単に洗浄した。細胞を30分間 PBS-3%BSA中でブロッキングし、1.5時間一次抗体と共にインキュベートし、PBS中で5分間、3回洗浄し、1.5時間、Cy-3、Cy-5又はAlexa488にコンジュゲートされた二次抗体と共にインキュベートした。スライドを再びPBS中で3回洗浄し、DAPI蛍光色素(Life technologies)を含むProLong Gold褪色防止試薬中に載せた。各試料において、少なくとも100個の有糸分裂、及び500個の間期細胞を調べた。DM2500蛍光顕微鏡(Leica)に取り付けられたカメラ、又は共焦点顕微鏡(ZEN2009で作動させるZeiss LSM700)で、染色した細胞の写真を撮った。
【0088】
細胞周期同調
HeLa Kyoto mEGFP-αチューブリン/H2B-mCherry細胞(又は本研究において適用される他の細胞)を16時間2mMのチミジンで処理し、8時間リリースし、再び16時間ブロックし、2重チミジンブロックを得た。
【0089】
ライフセルイメージング(Life cell imaging)
培地、ウイルス又はウイルス様粒子で72時間処理したHeLa Kyoto mEGFP-αチューブリン/H2B-mCherry細胞についてライフセルイメージングを行った。この処理の間、細胞を2重チミジンブロックによりG1期に同調させた。チミジンブロックの2回目のリリース後、1ウェル当たり2.5×105個の細胞をIbidi μ-スライド 8 ウェルプレート又はLab-Tek IIチャンバーカバーガラス(chambered coverglass)(8チャンバー)中に播種した。5% CO2下、37℃インキュベータにおいて、カラーCCDカメラ AxioCam ICc 3に接続された倒立顕微鏡(Zeiss motorized Observer.Z1)上で、20x/0.4 空気対物レンズにより細胞をモニターした。GFPについては470nm、mCherryについては590nmのLEDモジュールColibri.2を、蛍光色素の励起のために用いた。cell Zeiss Zen blue ソフトウェアを用いて5~15時間、5分毎に6~8μmの範囲をカバーするように、3~8のzスタックで多点の画像を撮った。Image Jソフトウェアにより蛍光チャネルの最大値投影を行い、8-bitのRGB TIFFファイル及び動画を作成した。
【0090】
B細胞感染及びin vitroでの形質転換実験
以前説明されたように(Feederle R等, Journal of virology 80, 9435-9443 (2006))、異なる健康なドナーの末梢血から精製されたB細胞を2時間、1標的細胞当たりのqPCRにより定義される20ウイルスゲノムの感染多重度(MOI)でウイルスに暴露した。感染細胞をPBSで1回洗浄し、クラスタープレートにおいて20%FBSを加えたRPMI中にプレートした。形質転換アッセイのために、最初に、感染の3日後、免疫染色を用いて感染させた試料内のEBNA2陽性細胞の百分率を決定した。103個のガンマ線照射されたWI38供給細胞でコーティングされた96-Uウェルプレート中に、1ウェル当たり3又は30個のEBNA2陽性細胞の濃度で、感染細胞集団を播種した。非感染B細胞は陰性対照として機能した。リンパ芽球様細胞クローン(LCL)の過増殖を30dpiでモニターした。同時に、1週間に2度、感染させた集団における細胞数を計数することにより、バッチ培養における細胞増殖もモニターした。
【0091】
EBVライブラリーのスクリーニング
293細胞への一過的なトランスフェクションのために、EBVタンパク質発現ライブラリーを用いた。トランスフェクトされた細胞を特定するために、表面マーカーとして発現させられる細胞質側が短縮化されたラットCD2をコードするプラスミドを共トランスフェクトした。
【0092】
免疫不全マウスにおける形質転換実験
バッフィーコートからヒトCD19+ B細胞を単離し、一定の攪拌下、室温で2時間、in vitroでM81又はM81/ΔZRに、20%のEBNA2陽性細胞を生成するのに十分なMOIで暴露した(Lin X等, PLoS pathogens 11, e1005344 (2015))。3つの異なるバッフィーコートを用い、26匹のマウスに感染させた。感染細胞を遠心分離により回収し、PBSで2回洗浄した。それぞれ4×104及び4×105個のEBV感染細胞に相当するウイルスに暴露された2×105又は2×106個の初代B細胞をNSGマウスに腹腔内注入した。3つの異なるバッフィーコートを用い、4x104個のEBV感染細胞で26匹のマウスを感染させ、5つの異なるバッフィーコートを用い、4x105個のEBV感染細胞で32匹のマウスを感染させた。臨床症状(無気力、拒食、乱れた毛(ruffled hair)、体重の減少、触診可能な腫瘍)が現れる注入の6週間後にマウスを安楽死させた。慎重な剖検の後、H&E染色及び免疫組織化学を含む、肉眼的な調査及び顕微鏡を用いた調査に臓器を供した。また、一晩RPMI-20% FBS中で培養した腫瘍塊から単細胞懸濁液を生成し、中期スプレッドを生成するために用い、又はサイトスピンして免疫蛍光染色に供した。
【0093】
免疫組織化学
安楽死させたマウスから得た臓器を、10%ホルマリン中で固定し、パラフィン中に包埋した。3μmの薄片を調製し、抗原回復(10mMクエン酸ナトリウム、0.05% Tween 20、pH 6.0; 40分間98℃)後、免疫染色した。Envision(商標)Dual link system-HRP(Dako)で、結合抗体を可視化した。光学顕微鏡(Axioplan、Zeiss)に取り付けられたカメラで写真を撮影した。
【0094】
ウエスタンブロット
氷上で15分間、標準の溶解緩衝液(150 mM NaCl、0.5% NP-40、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、5 mM EDTA、20 mM Tris-HCl pH7.5、プロテイナーゼ阻害剤の混合物 (Roche))でタンパク質を抽出した後、ゲノムDNAを切断するために超音波処理を行った。95℃で5分間、Laemmli緩衝液中で変性させた最大20μgのタンパク質を、SDSポリアクリルアミドゲル上で分離し、ニトロセルロース膜(Hybond C、Amersham)にエレクトロブロットした。3% BSA PBST (0.2% Tween 20を有するPBS)中で当該ブロットをプレインキュベーションした後、標的タンパク質に対する抗体を添加し、1時間室温でインキュベートした。PBST中でよく洗浄した後、当該ブロットを二次抗体と共に1時間インキュベートした。ECL検出試薬(Pierce)を用いて結合抗体を露呈させた。
【0095】
抗体
本発明者らは、αチューブリン(Sigma-Aldrich T5168)、γチューブリン(Sigma-Aldrich T6557)、Plk1 (Santa Cruz sc-17783)、SAS-6(Santa Cruz sc-81431)、セントリン2(Millipore 04-1624)、NPM1(Zymed 32-5200)、βアクチン(Dianova DLN-07273)に対する、マウスモノクローナル一次抗体;セントリン2(Santa Cruz sc-27793-R)、CEP170(Abcam ab72505)、リン酸化ヒストンH3(PH3、Cell signaling 9716)、STIL(Bethyl Laboratories A302-442A)、PARP1(Cell signaling 9542S)、Akt(Cell signalling)に対するウサギポリクローナル抗体;ヒトポリクローナル抗セントロメア(CREST、Antibodies Incorporated 15-235-F)を用いた。BZLF1 (クローンBZ.1)、gp350 (クローンOT6)、LMP1 (クローンCS1-4)、ラットCD2 (クローンOX34)に対するマウスのモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ上清から回収した。BNRF1タンパク質に対するウサギの抗血清は、以前記載されたように生産された(Feederle R等, Journal of virology 80, 9435-9443 (2006))。ヒトPlk4に対するマウス抗体は、合成ペプチド(ヒトPlk4の567~579番目のアミノ酸)に対し作製された(Cizmecioglu O等、 Cep152 acts as a scaffold for recruitment of Plk4 and CPAP to the centrosome. The Journal of cell biology 191, 731-739 (2010))。免疫蛍光染色に適用した二次抗体は、Alexa488 (Invitrogen A11029)又はCy3 (Dianova 115-165-146)に結合させたヤギ抗マウス抗体、Alexa488 (Invitrogen A11008)又はCy3 (Dianova 111-165-144)に結合させた抗ウサギ抗体であった。ウエスタンブロット分析のために、ホースラディッシュペルオキシダーゼが結合したヤギの抗マウス又はウサギ抗体(Promega)を、二次抗体として適用した。
【0096】
中心体の単離
ピューロマイシン選択を用い(2μg/ml)、BNRF1又はその対照を保持するテトラサイクリン誘導性プラスミド(それぞれ、B1439、B484)で、293細胞を安定にトランスフェクトした。更なる実験のために、少なくとも90%の誘導率を示す単一細胞コロニーを選択した。これらの細胞を、1.5日間、0.025μg/mlのドキシサイクリンで誘導した後、90分間、ノコダゾール(10μg/ml; Merck Millipore)及びサイトカラシンB(5μg/ml; Merck Millipore)で処理した。氷冷したPBS中に細胞を再懸濁し、遠心分離によりペレットを回収した。0.1×PBS、8%スクロースで洗浄後、15cmプレート当たり8mlの溶解緩衝液(1mM Tris-HCl pH 8.0、0.5% ノニデットP-40、0.5mM MgCl2、0.1% β-メルカプトエタノール、1 X プロテイナーゼ阻害剤の混合物(Roche))を加えることにより、ペレットを溶解させ、数回反転させ、5分間氷上に置いた。溶解物を4℃で10分間2,500×gで遠心し、核、凝集体及び無傷の細胞を沈殿させた。清澄化した上清を慎重に回収し、さらに40μmセルストレーナーを通して濾過した。溶解物を、50×PE緩衝液(500mM Pipes、50mM ETDA、pH 7.2)を用いることにより1×PE(10mM Pipes、1mM ETDA)に調整し、15分間氷上で1μg/mlのDNaseIと共にインキュベートし、勾配緩衝液(1×PE 緩衝液、0.1% ノニデットP-40、0.1% β-メルカプトエタノール)中に調製した50%(重量/重量)スクロースクッション上に載せ、SW40Tiローターを用い12,000rpmで間断なく20分間、4℃で遠心した。遠心分離後、7mlの上清がクッション上に確認できた。本発明者らは、上清の最初の5mlを捨て、スクロース勾配の最初のmlと共に残りの2mlを回収した。これらの画分を組み合わせてよく混合し、勾配緩衝液中に調製した1mlの70%(重量/重量)スクロース、1.5mlの50%(重量/重量)スクロース、2.5mlの40%(重量/重量)スクロースで、底部から上部へ作られた不連続なスクロース勾配上に載せた。当該勾配を、間断なく90分間、4℃、34,000rpmで遠心した。遠心分離後、スクロース勾配上の上清を捨て、スクロース画分を底部から上部へ450μlアリコートで回収した。100μlの各画分を1.2mlの1×PE緩衝液と混合し、25分間4℃で、21,000gでそれらを遠心分離することにより、各画分に存在する細胞小器官を回収した。これらの調製物各々の上清を慎重に取り除き、ペレットを、SDS試料緩衝液を用いて溶解させ、SDS page及びウエスタンブロット分析に供した。
【0097】
統計的分析
本発明者らは、2つの異なる型のウイルスによる多数の初代B細胞試料又は同じ血液試料から確立したLCLの感染から収集したデータに対し、対応のあるスチューデントt検定を適用した。2種類の異なるウイルスを用いた細胞株の独立の感染実験から収集した結果は、対応のあるスチューデントt検定を用いて分析した。Bonferroni法により調整される一対比較(Bonferroni-adjusted pairwise comparison)を組み合わせ、ドナーに対するランダム効果を用いた混合線形モデルを使用して異なるウイルスへの暴露又はmock感染の効果をグローバルに分析した。計算は、SAS9.3で行った。陰性結果を含む感染実験は、Rでの計算を用いたWilcoxonの符号付き順位検定で分析した。多数のB細胞集団を感染のために用いた動物実験の結果は、層及びRでの計算を用いた正確なMantel-Haenszel検定で評価した。経時的にライフセルイメージングにより収集したデータは、予想通り、右に裾を引いており、対数変換した。その後それらを、SAS9.3上で行われるANOVA検定、それに続くBonferroni法により調整される一対比較に供した。
【0098】
<実施例2:感染B細胞におけるEBV複製は、染色体不安定性を増大させる。>
NPCから単離された高度に複製する株M81、及びその複製欠損変異体(M81/ΔZR)に感染したB細胞を比較することにより、ウイルスにより誘導される新生物過程へのEBV溶解複製の寄与を検討した。アメリカヤマゴボウマイトジェン(PWM)で刺激された、又はM81若しくはM81/ΔZRに感染した細胞の有糸分裂を比較することにより、調査を開始した。処理後3日目に、分裂中のPWM刺激したB細胞は、娘細胞における染色体の均等な分配とともに、異なる段階で典型的な有糸分裂像を示した。対照的に、いずれかの型のウイルスに感染した多数の分裂細胞は、異常な有糸分裂を示した。多極の有糸分裂もあれば、双極だが多数の中心小体の周囲に配置されている有糸分裂もあった(
図1a、b、
図2a)。いくつかの有糸分裂は整列されていない染色体を含有し、いくつかの後期は、染色体遅滞の画像を示した(
図1c、d)。また、染色体のセットが不完全に分配される非対称の後期を発見した(
図1e)。総じて、この一連の実験により、PWM刺激後の0~6%と比較して感染細胞の15~42%の有糸分裂が異常な構成を見せることが示された(
図1)。さらに、2.2~7%の間期細胞は、ウイルス感染させた集団において4個以上の中心小体を示した(
図1f、
図2b)。
【0099】
感染の6日後、異常な核を有する細胞はまた、視認できた。2~4個の同じサイズの核を示す細胞もあれば、おおよそ通常サイズの核と共に共存する1個又はいくつかの小核を有する細胞もあった(
図1g、h、
図2c、d)。セントロメアの数を明示するCREST患者由来の血清での染色後、多倍数体(polyploid)であることが証明された単一の巨大な核を含有する細胞もあった(
図1i)。有糸分裂プレート(mitotic plate)のギムザ染色により、これらの試料における25~40%の細胞は異数体であり、最大3%が多倍数体であることが示された(
図2e、f)。M81又はM81/ΔZRでの感染の6日後、3つのペア試料に対しM-FISHを行った。この分析により、いずれかの型のウイルスに感染した細胞において異数体のレベルが高いこと(平均29.2%)が裏付けられたが、染色体欠失又は転座を有する細胞が稀に存在すること(それぞれ2/120、3/120)もまた裏付けられた。しかし、これらの異常はどれもクローナル(clonal)ではなかった、即ち、同一試料の2を超える有糸分裂において見出されなかった。この時点で、PWM刺激した細胞は死に、分析することができなかった。本発明者らは、野生型ウイルスに感染した細胞において溶解複製が始まる感染後30日まで、M81及びM81/ΔZRに感染した細胞をモニターし続けた。その時までに、M81/ΔZRに感染した細胞では、中心体増幅と異数体の比率の両方が約3倍減少し、それは、それらの外見をもたらした状態が次第に消滅したことを暗示する(
図2a、b及びe)。感染後3、6、15及び30日に、M81/ΔZRに感染した細胞を調査すると、中心体の増幅率が常に減少していることが示された。対照的に、野生型ウイルスに感染した細胞は、中心体増幅を示す細胞の百分率の減少を最初示したが、この比率は感染細胞が複製を開始する30日に急激に再び増大した(
図2a、b)。
【0100】
4つのペア試料のM-FISH核型分析により、感染の30日後、野生型ウイルスに感染した細胞では、複製欠損変異体に感染した細胞よりも、異数体のレベルがはるかに高いことが裏付けられた(平均38.75%対9%)(
図3)。前者の細胞はまた、染色体欠失及び転座を含む構造的再配列(structural rearrangement)を、より頻繁に有していた。野生型に感染した4つの試料のうち2つは、構造的異常については2個を超える同一の異常な有糸分裂、染色体の消失については3個を超える有糸分裂により定義される、クローン異常を示したが、M81/ΔZRに感染したものはどれも示さなかった。野生型ウイルスに感染したあるB細胞試料は、再発性の(recurrent)t(6;9)を有しており、他は染色体Yのクローン性消失を示した。溶解複製をほとんど誘導しないウイルス株であるB95-8に感染した細胞まで観察を広げたところ、それらはM81/ΔZRにより誘導されるものに非常に似たCIN及び異数体のパターンを示すことが見出された。また、感染の60日後、M-FISHを用い、B95-8により感染させた細胞株を分析したところ、再発性のt(9;15)を有することが見出された。
【0101】
<実施例3:EBV感染はin vivoで染色体不安定性を誘導する>
次いで、免疫不全のNSGマウスに、in vitroでEBVに短時間暴露させた休止初代B細胞を注入した。野生型又は複製欠損ウイルスでの休止B細胞の感染は、in vitroで同じ細胞形質転換率及び細胞増殖率を引き起こしたが、M81野生型に感染した4×10
4個のB細胞の腹腔内注入は、複製欠損変異体での感染よりも高い頻度で腫瘍発生を引き起こした(
図4a~4c)。この発生率の相違は、10倍多いEBV感染細胞(4×10
5個)の注入後、消失した。しかし、この場合、動物に生じた腫瘍量は、野生型ウイルスでの感染後の方が高かった(
図4d)。腫瘍試料の免疫組織化学的分析により、腫瘍細胞がEBVに感染していること、及び野生型ウイルスに感染した細胞のみが溶解複製を経たことが裏付けられた(
図4e)。これらの腫瘍における異数体及び中心体異常の頻度は、野生型ウイルスでの感染後では、M81/ΔZR変異体に比べ2~3倍高く、これらの異常の多くの絶対頻度は、in vitroで観察されたものより高かった(
図2及び
図5を比較されたい)。
【0102】
<実施例4:EBV感染は中心体過剰複製を誘導する>
中心体増幅は、S期の間の中心体過剰複製、又は有糸分裂スリップ(mitotic slippage)後(この時、分裂中の細胞はその染色体を分配せずにG1期に戻る)に起きる中心体蓄積に起因し、それにより4倍体になり2つの染色体19を備えることとなり得る。母中心小体20の遠位下付属物(subdistal appendage)と関連するCEP170タンパク質に対する抗体で、増加した数の中心体を有する細胞を染色することにより、両方の可能性を調査した(
図6a~d)。中心小体の過剰複製は、母中心小体の数よりも多い数の娘中心小体をもたらす一方、中心小体蓄積は同じ数の母及び娘中心小体をもたらす。CEP170及びセントリンに特異的な抗体で同時染色すると、野生型M81に感染し、中心小体数の増大を見せた2/3を超える細胞が中心小体の過剰複製を生じていることが明らかとなった。この割合はM81/ΔZRに感染した細胞では約1/3に減少しており、これらの細胞では、中心体増幅がより高い頻度で中心体蓄積に起因することを示す。観察された中心体過剰複製を、中心体複製の制御に関与するタンパク質の発現レベルの変化と関連付けることを試みた。しかし、M81又はM81/ΔZRに感染した細胞は、中心体複製21の主要制御因子であるPlk4タンパク質を同様のレベルで発現した(
図6e)。同様の結果が、中心体複製に関与する2つの他のタンパク質であるSAS-6及びSTILに特異的な抗体を用いて行った免疫ブロットで得られた。
【0103】
<実施例5:EBV粒子での重複感染は、分裂細胞においてCINを誘導する>
これまで収集した結果より、EBV溶解複製は異数体及び中心体増幅を増大させることが示された。しかし、大抵の感染細胞集団では、平均5%の細胞が溶解複製を生じる。この亜集団は、複製ウイルス(replicating virus)に感染した細胞で観察される非常に高い異数体及びCIN率を説明することはできない。しかし、ウイルス複製をしている細胞は、感染B細胞集団において近隣のB細胞に結合するビリオンを産生する。本発明者らは、これらの結合粒子が野生型EBVで形質転換したB細胞において観察された遺伝的異常を引き起こし得るか否かを、ウイルスDNAがなく慢性感染を確立することができないウイルス様粒子(VLP)を有するM81/ΔZR変異体で生成したLCLを処理することにより、試験した。上清から可溶性因子による汚染を除外するように精製した粒子に、3日間細胞を暴露した。本発明者らは、B95-8又はM81両方に由来するVLPを試験した。この処理により、いずれの型のVLP感染後にも、中心体増幅及び異数体の頻度が少なくとも二倍になった(
図7a、b、c)。重要なことに、この性質は、その標的に融合することができないVLPとは共有されなかった。なぜなら、それらは細胞侵入に必要なgp110タンパク質がないからである。B95-8又はM81のいずれかに由来するVLPの間に相違を発見しなかったため、はるかに高いレベルで生産することができるM81 VLPに集中した。IL4の存在下でCD40L系により増殖させたB細胞にM81 VLPを添加し、これらのEBV陰性細胞においてよく似た結果を得た(
図7d、e、f)。また、同じ条件下、PWM刺激したB細胞、RPE-1及びHeLa細胞をVLPで処理し、また、異常な中心体数を有する細胞の百分率が増大することを観察した(
図7g~j)。GFP-セントリン1融合タンパク質で安定にトランスフェクトしたRPE-1細胞で同様の結果が得られた。RPE-1細胞のM81 VLP処理はまた、細胞質分裂にある細胞の比率を倍増させた。それにより、この過程が当該処理により遅れることが示唆された。本発明者らは、mEGFP-αチューブリン及びH2B-mCherry融合タンパク質で安定にトランスフェクトしたHeLa細胞をEBV VLPに暴露することにより、この問題に取り組み、ライフセルイメージングを行った。
VLP又は野生型ウイルスで処理した細胞では、平均の有糸分裂時間は当該処理による影響を受けなかったが、細胞質分裂には有意に長い時間がかかった。
【0104】
<実施例6:BNRF1主要テグメントタンパク質は、中心体過剰複製及び異数体を誘導する>
次いで、293細胞において66個のEBVタンパク質を発現させ、それらのCINへの寄与を評価した。mockをトランスフェクトした細胞に比べ、EBV感染の効率を強力に高めるタンパク質であるBNRF1のトランスフェクションにより、中心小体増幅の頻度は2倍に、多極有糸分裂の頻度はほぼ3倍になることが見出された。CEP170について染色することにより、BNRF1でのトランスフェクションは、2個を超えるCEP170陽性中心小体を有する細胞の頻度を増大させないことが明らかとなり、それにより、このウイルスタンパク質は中心小体の過剰複製を引き起こすことが示唆された。EBVに暴露された初代B細胞においてBNRF1の発現をモニターした。このタンパク質は、感染後の最初の5日間、感染B細胞において明確に検出可能であった。この観察結果は、BNRF1タンパク質のレベルが感染後の最初の数日間細胞分裂により低下しないことを示唆しており、EBVが感染したB細胞が感染後3日の前に細胞分裂を開始しないという観察結果と一致する。それらはまた、感染後3日目(その時点でBNRF1はまだ感染細胞に見出すことができる)に見られた中心体増幅の動態と一致する。本発明者らはその後、野生型B95-8又はBNRF1を欠く欠損B95-8変異体を用い、上述の重複感染実験を繰り返した。複製欠損M81/ΔZR変異体で生成したLCLをBNRF1遺伝子がない組み換えB95-8 EBV(B95-8/ΔBNRF1)に暴露すると、これらの細胞で中心小体数は増大しなかったが(
図8a~8c)、野生型ウイルス又はBNRF1発現プラスミドでトランス相補(trans-complement)したB95-8/ΔBNRF1ウイルスに暴露すると、増大した。また、B95-8又はM81野生型ウイルスに由来するBNRF1ノックアウトウイルスで初代B細胞を感染させたところ、その増殖細胞は、野生型ウイルスに感染した細胞に比べ、中心小体増幅及び多極有糸分裂の平均頻度の5~10倍の顕著な低下を示すことが見出された(
図8d~f及びh~j)。野生型ウイルスを再構成するためにBNRF1タンパク質でこれらの欠損BNRF1ノックアウトウイルスを相補すると、異常が復元された。あまり顕著ではないが、異数体の比率においても同様の効果が見られた。B95-8/ΔBNRF1又はM81/ΔBNRF1ウイルスに感染した初代B細胞は、野生型ウイルス又はBNRF1を相補したウイルスでの感染に比べ、異数体の比率の2.5~3.5倍の低下を見せた(
図8g及びk)。
【0105】
<実施例7:BNRF1タンパク質は、中心体画分に局在する>
中心体増幅を誘導するBNRF1の能力の裏にある機構についていくらか見識を得ることを試み、本発明者らは、テトラサイクリン応答性プロモーターの制御下でBNRF1を発現する安定な293細胞株を生成した。これにより、90%を超える細胞で即時誘導が可能となる。核を除外した後、細胞小器官をスクロース勾配上で分離した。γチューブリン及びセントリン2に特異的な抗体でのウエスタンブロットにより、中心体を含有する勾配画分を特定することができた(
図9)。BNRF1に特異的な抗体での免疫ブロットにより、BNRF1は専ら中心体画分に局在することが明らかとなった。また、ヌクレオフォスミン(nucleophosmine、NPM1)及びヒトポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ1(PARP1)に特異的な抗体で、一連のスクロース画分を染色した。文献に以前記載されたように、両方のタンパク質はまた、中心体画分中に沈殿した。ウイルスタンパク質を発現する細胞においてカスパーゼ切断により生成された短い形態のPARP1が過剰出現(overrepresent)していたが、両方の細胞タンパク質の発現レベルは、BNRF1の存在又は非存在下で同様であった。
【0106】
<実施例8/
図10:>
(a) 表示したEBVタンパク質を293細胞にCD2発現ベクターと共に共トランスフェクトした。感染の1日後、トランスフェクトした細胞を、CD2タンパク質及びセントリンに対する抗体で染色した。CD2陽性細胞は、トランスフェクトが成功した細胞である。ドットプロットは、4個を超える中心小体を含有するCD2陽性細胞の百分率を示す。CD2発現プラスミドでトランスフェクトした細胞を、陰性対照として用いた。この実験により、BPLF1、BNRF1、BGLF3、BRRF2、BKRF4又はBXLF1でトランスフェクトした細胞では、中心体増幅を見せる細胞の百分率が異常に高いことが示された。(b) 異常な数の中心体の周囲に構成される有糸分裂の存在について試料を調査したことを除き、(a)と同じ。ドットプロットは、表示のEBVタンパク質のトランスフェクション後のこれらの異常の頻度を示す。(c) 多極有糸分裂を生じている細胞の頻度について試料を調査したことを除き、(a)と同じ。ドットプロットは、表示のEBVタンパク質のトランスフェクション後のこれらの異常の頻度を示す。
本発明は、以下を提供するものである。
1. 対象のワクチン接種における使用のためのエプスタインバールウイルス(Epstein-Barr Virus、EBV)粒子を含む組成物であって、前記EBV粒子は有意に低下した染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性を有する、組成物。
2. 前記EBV粒子が、EBV DNAを含まない、上記1に記載の使用のための組成物。
3. 前記EBV粒子が、機能的BNRF1ポリペプチド、機能的BPLF1ポリペプチド、機能的BGLF3ポリペプチド、機能的BRRF2ポリペプチド、機能的BKRF4ポリペプチド、及び/又は機能的BXLF1ポリペプチドを含まない、上記1又は2に記載の使用のための組成物。
4. 前記EBV粒子が、BNRF1遺伝子産物を含まない、上記1~3のいずれかに記載の使用のための組成物。
5. 前記EBV粒子が、少なくとも1つの非EBVポリペプチド、好ましくは人工の非EBVポリペプチドをさらに含む、上記1~4のいずれかに記載の使用のための組成物。
6. 前記EBV粒子が、少なくとも1つの非必須EBVポリペプチド活性をさらに欠く、好ましくはEBV gp110活性を欠く、及び/又は少なくとも1つの形質転換EBVポリペプチドをさらに欠く、上記1~5のいずれかに記載の使用のための組成物。
7. 前記対象が、18歳未満、好ましくは15歳未満、より好ましくは10歳未満、最も好ましくは5歳未満のヒトである、上記1~6のいずれかに記載の使用のための組成物。
8. 前記対象が、免疫不全に罹患している、及び/又は免疫抑制治療を受けることが計画されている、上記1~7のいずれかに記載の使用のための組成物。
9. 前記ワクチン接種が、染色体異常の誘導を回避することを含む、上記1~8のいずれかに記載の使用のための組成物。
10. 対象のワクチン接種における使用のためのEBV粒子を含む組成物であって、前記ワクチン接種は、前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性、好ましくはBNRF1活性と接触させることを回避することを含む、組成物。
11. 前記対象の細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することが、前記対象をBNRF1ポリペプチドと接触させることを回避することを含む、及び/又は前記対象をEBV膜融合ポリペプチド活性(fusogenic polypeptide activity)を含むEBV粒子と接触させることを回避することを含む、上記10に記載の使用のための組成物。
12. 前記細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することが、前記対象をBNRF1遺伝子産物と接触させることを回避することを含み、好ましくは、前記対象をBNRF1ポリペプチドと接触させることを回避することを含む、上記10又は11に記載の使用のための組成物。
13. 前記細胞のサイトゾル及び/又は核を染色体不安定性誘導EBVポリペプチド活性と接触させることを回避することが、前記対象を、EBV膜融合ポリペプチド活性を有するEBV粒子と接触させることを回避することを含み、好ましくは前記対象を、EBVのBALF4ポリペプチド、BXLF2ポリペプチド、BKRF2ポリペプチド及び/又はBZLF2ポリペプチドを含むEBV粒子と接触させることを回避することを含む、上記10~12のいずれかに記載の使用のための組成物。
14. 前記組成物が、有意に低下したBNRF1活性及び/又は有意に低下したgp110活性を有する、上記10~13のいずれかに記載の使用のための組成物。
15. 前記組成物が、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がないEBV粒子を含む、上記10~14のいずれかに記載の使用のための組成物。
16. 前記組成物は、BNRF1活性がない及び/又はgp110活性がない、上記10~15のいずれかに記載の使用のための組成物。
17. EBVゲノムをコードするポリヌクレオチドであって、前記EBVゲノムは、
a) 機能的染色体不安定性誘導EBVポリペプチドをコードする遺伝子を欠き、及び/又は機能的EBV膜融合ポリペプチドをコードする遺伝子を欠き、及び
b) EBV末端反復配列を欠き、及び/又はBFLF1遺伝子及びBBRF1遺伝子から選択される少なくとも1つの機能的に発現可能な遺伝子を欠く、
ポリヌクレオチド。
18. 上記17に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
19. 上記17に記載のポリヌクレオチド、又は上記18に記載のベクターを含む宿主細胞。
20. 対象にワクチン接種するための組成物であって、以下
(i) 上記1~9のいずれかにおいて特定されるEBV粒子
(ii) 上記17に記載のポリヌクレオチド
(iii) 上記18に記載のベクター
(iii) 上記19に記載の宿主細胞、又は
(iv) (i)~(iii)の任意の組み合わせ
を含む、組成物。
【配列表】