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特許7051856動的エネルギーストレージシステム制御のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】動的エネルギーストレージシステム制御のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20220404BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220404BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J3/32
H02J3/00 170
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019529930
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 CA2017051435
(87)【国際公開番号】W WO2018098575
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】62/427,199
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519194917
【氏名又は名称】ピーク パワー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PEAK POWER INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】イーラン リー
(72)【発明者】
【氏名】パイセン フー
(72)【発明者】
【氏名】デレク リム ソー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ザックス
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-140285(JP,A)
【文献】特開2009-055713(JP,A)
【文献】特開2011-130584(JP,A)
【文献】特開2015-192586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギーストレージシステムを制御するための制御システムであって、
配電システムから電気設備によって引き出されるエネルギーを記録するように配置された少なくとも1つのメーター装置からメーターデータを受信するための、メーターインターフェースと、
前記電気設備に接続されたエネルギーストレージシステムであって、エネルギー容量および定格出力電力を有する前記エネルギーストレージシステムと通信するための、エネルギーストレージシステムインターフェースと、
前記配電システムの管轄区域全体の予測送電レベル負荷および信頼値を生成するようにトレーニングされた人工ニューラルネットワークを形成するように構成されている複数の層状ノードを含む、コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、少なくとも1つのメモリと少なくとも1つのプロセッサとを備え、
前記人工ニューラルネットワークによって生成された前記予測送電レベル負荷および信頼値に基づいて前記配電システムにおける潜在的な同時ピークを識別し、
潜在的な同時ピークを識別した場合に、前記エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを前記電気設備に消費させる信号を送信し、識別された前記潜在的な同時ピーク中に前記配電システムから引き出される前記エネルギーを減らすように構成されており、
前記コントローラは、強化学習モデルに基づいて前記人工ニューラルネットワークのパラメータを更新するように構成されており、
前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを更新することは、
前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを用いて複数の期間の離散タブーサーチを実行することと、
前記離散タブーサーチの期間の予測送電レベル負荷と前記期間の実際の予測送電レベル負荷との間の誤差を最小にするように前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを更新することと、
を含む、制御システム。
【請求項2】
送信された前記信号は、前記エネルギーストレージシステムの前記エネルギー容量と前記定格出力電力に少なくとも部分的に基づいて選択された期間中に、前記エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを前記電気設備に消費させる、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記複数の層状ノードは、前記配電システムの前記管轄区域内の負荷側リソースと前記配電システムの前記管轄区域内の発電機の出力とによって少なくとも部分的に定義された予測ターゲットに基づいて前記人工ニューラルネットワークを形成するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記人工ニューラルネットワークは、定義された以後数時間の予測送電レベル負荷の行列を生成する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記エネルギーストレージシステムは、前記電気設備の過去同時ピークデータおよびエネルギー消費速度に基づいて前記エネルギーストレージシステムの前記エネルギー容量および前記定格出力電力を提供するための1つまたは複数のエネルギーストレージ装置を有するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記電気設備の予測負荷に基づいて前記エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを前記電気設備に消費させる前記信号を送信するように構成されている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項7】
前記人工ニューラルネットワークは、負荷側リソースおよび発電機に影響を与える以前および現在の条件に関連する入力を有する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
前記人工ニューラルネットワークは、電力消費および発電データの周波数、相対相関または分散の少なくとも1つを考慮するために、スペクトル分析を介して前処理されたデータを用いてトレーニングされる、請求項1に記載の制御システム。
【請求項9】
エネルギーストレージシステムを制御するための方法であって、
配電システムから引き出されるエネルギーを記録するために前記配電システムと電気設備との間に配置された少なくとも1つのメーター装置からメーターデータを受信するステップと、
人工ニューラルネットワークを形成するように構成された複数の層状ノードを用いて、リアルタイムまたは略リアルタイムの過去および現在の電力消費および発電データを使用し、前記配電システムの管轄区域全体の予測送電レベル負荷および信頼値を生成するステップと、
前記人工ニューラルネットワークによって生成された前記予測送電レベル負荷および信頼値に基づいて前記配電システムにおける潜在的な同時ピークを識別するステップと、
潜在的な同時ピークを識別した場合に、前記エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを前記電気設備に消費させる信号を送信し、識別された前記潜在的な同時ピーク中に前記配電システムから引き出される前記エネルギーを減らすステップと、
強化学習モデルに基づいて前記人工ニューラルネットワークのパラメータを更新するステップと、
を含み、
前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを更新するステップは、
前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを用いて複数の期間の離散タブーサーチを実行するステップと、
前記離散タブーサーチの期間の予測送電レベル負荷と前記期間の実際の予測送電レベル負荷との間の誤差を最小にするように前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを更新するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
送信された前記信号は、前記エネルギーストレージシステムのエネルギー容量および定格出力電力に少なくとも部分的に基づいて選択された期間中に、前記エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを前記電気設備に消費させる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の層状ノードは、前記配電システムの前記管轄区域内の負荷側リソースと前記配電システムの前記管轄区域内の発電機の出力とによって少なくとも部分的に定義された予測ターゲットに基づいて前記人工ニューラルネットワークを形成するように構成されている、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記人工ニューラルネットワークは、定義された以後数時間の予測送電レベル負荷の行列を生成する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記電気設備の予測負荷に基づいて前記エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを前記電気設備に消費させる前記信号を送信するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項14】
前記人工ニューラルネットワークは、負荷側リソースおよび発電機に影響を与える以前および現在の条件に関連する入力を有する、請求項に記載の方法。
【請求項15】
電力消費および発電データの周波数、相対相関または分散の少なくとも1つを考慮するために、スペクトル分析を介して前処理されたデータを用いて前記人工ニューラルネットワークをトレーニングするステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項16】
エネルギーストレージシステムを制御するための装置であって、
少なくとも1つのメモリと、配電システムの管轄区域全体の予測送電レベル負荷および信頼値を生成するようにトレーニングされた人工ニューラルネットワークを形成するように構成されている複数の層状ノードを提供する、少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記人工ニューラルネットワークによって生成された前記予測送電レベル負荷および信頼値に基づいて前記配電システムにおける潜在的な同時ピークを識別し、
潜在的な同時ピークを識別した場合に、前記エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを電気設備に消費させる信号を送信し、識別された前記潜在的な同時ピーク中に前記配電システムから引き出される前記エネルギーを減らすように構成されており、
前記装置は、強化学習モデルに基づいて前記人工ニューラルネットワークのパラメータを更新するように構成されており、
前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを更新することは、
前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを用いて複数の期間の離散タブーサーチを実行することと、
前記離散タブーサーチの期間の予測送電レベル負荷と前記期間の実際の予測送電レベル負荷との間の誤差を最小にするように前記人工ニューラルネットワークの前記パラメータを更新することと、
を含む、装置
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本開示は、2016年11月29日に出願された、「SYSTEM AND METHOD FOR FORECASTING UTILITY POWER LOADS WITH MACHINE LEARNING(機械学習による電力負荷を予測するためのシステムおよび方法)」という名称の米国仮特許出願第62/427,199号に対する優先権を含むすべての利益を主張するものであり、この先行出願は、参照により本発明に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概してエネルギーストレージシステムの分野に関するものであり、より詳細には、本開示の実施形態は、エネルギーストレージシステムの動的制御のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気料金は、典型的には、キロワット時(kWh)で計測される使用エネルギー量に基づく構成要素と、キロワット(kW)で計測される最大瞬間需要量に基づく構成要素とを有する。電気事業者(Utility)は、常にすべての顧客に中断されることのない電力を供給することを任務としているが、電力需要は一日および一年を通じて大きく変化する。「ピーク需要」と呼ばれるこの問題を解決するために、電気事業者はこれらの制約された瞬間において利用可能な余剰容量を持たなければならないが、この余剰容量にはコストがかかる。ピークイベント中の電力は、発電するために、卸売市場レベルでのオフピークにおける電力よりも50~70倍多くのコストが掛かることがある。
【0004】
従来の電力モデルは、料金を支払う顧客に対して、送電および配電システムを介して電気を送電する集中型の発電所に基づくものである。このモデルでは、独立系統運用者(ISO)が、それぞれの市場内で需要と供給が常に等しく一致していることを確実にする責任がある。しかしながら、需要を満たすのに十分な供給があることを確実にするために、ピーク需要の際に利用可能な十分な発電資産がなければならない。ピーク需要は年間数時間しか発生しないことがあるため、これらのシステムは非常に非効率的である。その結果、「ピーカー発電設備(peaker plants)」またはピーク需要の期間にのみ使用される発電設備は、稼働するのに非常に費用がかかり、多くの場合、ベース発電よりもはるかに重大な汚染を起こし得る。
【0005】
これらの問題を認識し、多くの電気事業者関連団体は、エネルギー消費者への請求額の全部または一部が、どれだけのエネルギーがピーク需要の期間に使用されて消費者によって引き出されているかに基づく、容量ベースの料金設定モデルに移行した。
【0006】
多くの管轄区域において、電力料金構造は、ISO管轄区域内全体の電気システムがそのピークにある時間における、顧客の平均エネルギー需要(kW)に基づく構成要素を含む。これは、「同時ピーク(coincident peak)」と呼ばれ、管轄区域によって形態が異なる。オンタリオでは、クラスAの顧客は、連続して発生しない5つの1時間単位の同時ピーク時におけるシステム負荷全体に対する顧客のシェアに基づいて、グローバル調整(Global Adjustment)費用のシェアを支払う。NYISO(ニューヨーク独立系統運用者)、PJM(商標)およびその他の管轄区域には、年間の1つまたは複数の1時間単位のピーク時におけるシステム全体の負荷に対する顧客のシェアに基づいて、同様の費用が設定されている。ニューヨークでは、これはICAP(設置容量)と呼ばれている。
【発明の概要】
【0007】
ある実施形態では、本開示の態様は、同時ピークイベントの期間における、顧客の電気設備(インフラストラクチャ)のエネルギー需要を低減することができる。状況によっては、これによって電気システムの全体的な負荷が低減され、電気事業者によって課金される電気料金が削減され得る。
【0008】
一態様によれば、エネルギーストレージシステムを制御するための制御システムが提供される。制御システムは、電気設備によって配電システムから引き出されるエネルギーを記録するように配置された少なくとも1つのメーター装置(metering device)からメーターデータを受信するためのメーターインターフェースと;エネルギー容量および定格出力電力を有し且つ電気設備に接続されるエネルギーストレージシステムと通信するためのエネルギーストレージシステムインターフェースと;そして、配電システムの管轄区域全体の予測送電レベル負荷および信頼値を生成するようにトレーニングされた人工ニューラルネットワークを形成するように構成された複数の層状ノードを含むコントローラと、を含む。コントローラは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサとを備え、人工ニューラルネットワークによって生成された予測送電レベル負荷および信頼値に基づいて、配電システムにおける潜在的な同時ピークを識別し、潜在的な同時ピークを識別した場合に、エネルギーストレージシステムに蓄積されたエネルギーを電気設備に消費させる信号を送電し、それによって、識別された潜在的な同時ピーク中に配電システムから引き出されるエネルギーを減らす。
【0009】
他の態様によれば、エネルギーストレージシステムを制御する方法が提供される。当該方法は、配電システムと電気設備との間に配置され、配電システムから引き出されるエネルギーを記録する、少なくとも1つのメーター装置からメーターデータを受信するステップを含む。当該方法は、人工ニューラルネットワークを形成するように構成された複数の層状ノードと共に、リアルタイムまたは略リアルタイムの過去および現在の電力消費および発電データを使用して、配電システムの管轄区域全体の予測送電レベル負荷および信頼値を生成するステップを含む。当該方法は、人工ニューラルネットワークによって生成された予測送電レベル負荷および信頼値に基づいて配電システムにおける潜在的な同時ピークを識別するステップを含む。そして、当該方法は、潜在的な同時ピークを識別した場合に、エネルギーストレージシステムに蓄積されたエネルギーを電気設備に消費させる信号を送信し、それによって、識別された潜在的な同時ピーク中に配電システムから引き出されるエネルギーを減らすステップを含む。
【0010】
他の態様によれば、エネルギーストレージシステムを制御するための装置が提供される。当該装置は、少なくとも1つのメモリと、配電システムの管轄区域全体の予測送電レベル負荷および信頼値を生成するようにトレーニングされた人工ニューラルネットワークを形成するように構成された複数の層状ノードを提供する少なくとも1つのプロセッサとを備える。少なくとも1つのプロセッサは、人工ニューラルネットワークによって生成された予測送電レベル負荷および信頼値に基づいて配電システムにおける潜在的な同時ピークを識別し、潜在的な同時ピークを識別した場合に、エネルギーストレージシステムに蓄積されたエネルギーを電気設備に消費させる信号を送信し、それによって、識別された潜在的な同時ピーク中に配電システムから引き出されるエネルギーを減らすように構成されている。
【0011】
本明細書に記載された実施形態に関する多くの更なる特徴およびこれらの組み合わせは、本開示を読むことで、当業者にもたらされる。
【0012】
図面において、例として実施形態が示されている。詳細な説明および図面は、理解を助けるため、例示を目的とするものにすぎないことを明確に理解されたい。
【0013】
実施形態を、例示として、添付の図面を参照しながら、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、エネルギーストレージシステムを制御するための例示的なシステムの態様を示すブロック図である。
図2図2は、エネルギーストレージシステムを制御するための例示的な解決方法の態様を示すフローチャートである。
図3図3は、商業ビルの電力使用量の例示的なプロットを示す図である。
図4図4は、制御システムを動作させるための例示的な方法の態様を示すフローチャートである。
図5図5は、機械学習処理の態様を示す図である。
図6図6は、例示的な機械学習処理の結果を示す図である。
図7図7は、電力負荷予測のための例示的な制御システム700の態様を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
電力同時ピークを予測するための一つのアプローチは、回帰ベースの統計分析の使用を含む。これらの分析に基づいて、大規模産業用地では、コストを削減するためにピークイベントの期間に生産を削減し或いは完全にシャットダウンすることができる。一般に、これらのアプローチは、より大きな精度の枠(例えば、4~8時間)で、同時ピーク事象の時間を予測可能な予測を生成する。生産(すなわちエネルギー使用量)のシャットダウンまたは削減は、それぞれ独自の経済的コストが掛かり、生産施設にとって侵略的で問題があるとされ得る。
【0016】
回帰分析は、予測方法であり、予測される変数に影響を与え得る根本的な要因を特定することが可能であるという仮定に基づいている。線形回帰および通常の最小二乗回帰などを含む、いくつかの回帰ベースの技術が開発されている。回帰ベースの方法は、電力負荷(utility load)を予測するために広く使用されているが、場合によっては、いくつかの欠点がある。負荷需要と影響要因との間の非線形で複雑な関係のため、正確なモデルを開発することが簡単ではない。回帰ベースの方法のオンサイトテストでは、突然の天候の変化および負荷イベントによって負荷が変動した場合にパフォーマンスの低下が示された。この欠点の主な理由の1つは、モデルが結果的要因の特定を必要とすることであって、電力負荷の予測などの複雑なシステムでは、精密に考慮されない追加的な結果的要因があり得るためである。回帰ベースの予測モデルの欠点は、電力グリッドが従来のモデルからトランザクティブグリッド(transactive grid)の電力モデルに進化するにつれて、より明確になってきた。
【0017】
ある実施形態では、トランザクティブグリッドモデルの特徴は、発電および電力消費が、グリッド内において集中するのではなく、分散されることである。トランザクティブグリッドモデルは、電力の需要と供給の双方が不安定で変動しやすい点を認識しており、供給と需要を迅速かつ正確に一致させるための既存の回帰モデルの範囲を超えている点を認識している。電気設備および市場の設計によって、需要と供給のバランスを効率的に確保する精度の高い料金シグナルを実現するために、新しいプラットフォームおよび料金設定構造が必要とされている。トランザクティブグリッドははるかに動的であり、このため、より精度の高い負荷予測の方法が必要とされている。トランザクティブグリッドは、その性質上、需要と供給の両方を迅速かつ正確に予測する高度にインテリジェントなシステムと方法を必要とし、適切なスケジューリング、ディスパッチ、および料金設定のシグナルが市場に送信され得る。
【0018】
予測処理がより正確になれば、システムは、より短い期間にそのエネルギー消費を削減するだけで良く、施設への影響をより低減させることができる。
【0019】
ディープニューラルネットワークおよび機械学習を用いて電力負荷を予測するシステムおよび方法を以下に記載する。本システムおよび方法は、複数の機械学習モジュールを組み合わせて、例えば、過去の(historical)負荷データ、天気予報、リアルタイム送電システムデータ、並びに電気および天然ガスの価格などのリアルタイム経済要因を用いて既存の短期および長期の電力負荷予測を改良する自己学習機能を自動化し、有効化する。
【0020】
ある状況において、本明細書に記載されたシステムは、現在のシステムに比べてより高精度に負荷を予測する可能性を有して得る。本明細書に記載の方法により、提供されたシステムは、例えば、過去の負荷データ、天気予報、リアルタイム送電システムデータなどのエネルギー変数、並びに電気および天然ガスの料金などのリアルタイム経済変数を使用して、電気事業者のデータを学習して、既存の短期電力負荷予測を改良することができる。
【0021】
変数の効果は、他の変数が存在しているか否かを含むエネルギーのコンテキストに、より一般的には、分析される電力グリッドに依存することが見出されてきた。そのため、ある特定の変数がある電気事業者のコンテキストでは重要でないとされ得る一方で、他の電気事業者のコンテキストではサージまたは出力低下を引き起こし得る。したがって、本システムおよび方法は、エネルギー変数の優先順位付けおよび解釈を組み込むことができる。具体的には、エネルギー変数が評価され、優先順位リストとして、変数がランク付けされ提示され得る。これらの変数の優先順位付けは、システムの効率および精度を向上させるために使用することができる。
【0022】
短期電力負荷予測では、時系列の未来の値が、過去の値と時系列に影響を与えるその他の外部変数との未知関数(unknown function)であると仮定される。ニューラルネットワークは、この未知関数を比較的高い精度で近似させるために使用される。ニューラルネットワークは、系統間流量データ、スパーク割合、並びに前日および前週の同日の負荷プロファイルなど、個別には電力負荷に直接関連する或いは影響を及ぼす要因ではないと思われる、広範囲で収集された過去データを使用してトレーニングされる。ある実施形態では、学習環境は、特定の電力業界の洞察に基づいて構造化され、その結果、学習精度が向上し、複雑な計算およびアルゴリズムを介して結果を生成する速度が向上する。
【0023】
本明細書では例示的なフィードフォワードネットワークが記載されているが、実装されるニューラルネットワークの種類は、単にフィードフォワードニューラルネットワークに限定されず、畳み込みニューラルネットワーク、再帰型ニューラルネットワーク、オートエンコーダ、およびボルツマンマシンを含む、サポートベクターマシン、回帰モデル、およびニューラルネットワークも適用することができることを理解されたい。さらに、本システムおよび方法は、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシン、および多変数回帰を含む、機械学習モジュールの組み合わせに基づくことも可能である。
【0024】
ある実施形態および特定の状況では、本明細書に記載または他の方法で説明される本方法およびシステムは、生の過去エネルギーデータ、(回帰がすでに適用されていることを意味する)予測準備エネルギーデータ、またはそれらのエネルギーデータセット若しくはスパーク割合データまたは系統間流量などの他のエネルギー変数から抽出される特徴に適用され得る。本方法は、様々な条件に亘るベースライン平均を必要とせずに、1つまたは複数のエネルギー変数を計算することができる。本方法は、すべてのエネルギー変数に影響を与える変数を同じ方法で検出することができる。本方法は、リアルタイムのエネルギー変数を過去参照エネルギー変数と比較して、電力およびエネルギーのコンテキストに応じて、同じ変数に対して異なる予測をすることを可能にする。本方法は、少なくとも2層の処理ユニットを有するディープニューラルネットワークを用いて、条件固有のエネルギー変数を計算することができる。本方法は、今までに見たことのない変数をスコア化することができる。本方法は、予測準備エネルギーデータ、基準エネルギーデータセットおよび/または生の過去エネルギーデータの間の差を計算するために使用することができ、これは任意の既知または未知のエネルギー変数をランク付けするために使用され得る。本方法は、変数間の差を計算するために使用することができ、これは未知の変数が既知の変数にどれだけ類似しているかに基づいて未知の変数を分類するのに有用である。本方法は、1つまたは複数の基準エネルギー変数を1つまたは複数のエネルギー変数と比較することによって、1つまたは複数のエネルギー変数におけるエネルギーデータ予測のセットを計算するために使用することができる。
【0025】
ある実施形態では、エネルギーストレージシステム(ESS)は、低エネルギー負荷の期間中(すなわち夜間)に充電し、ピーク負荷の期間中に放電することによってピークイベントを平滑化するためにシステムに含められ、グリッドにおいて要求されるエネルギーを低減する。エネルギーストレージシステムは、kWで計測されるインバータまたは他の同様の装置、およびkWhで計測されるバッテリーまたは他のストレージ装置から構成され得る。典型的には、ESSによる節約の可能性はインバータサイズ(kW)に基づいているが、ESSのコストはバッテリーサイズ(kWh)に基づいている。
【0026】
多くの状況において、エネルギーストレージは、「非侵略的な(non-invasive)」方法で(すなわち、施設の運用に少ない影響でまたは影響なしで)、施設の負荷を低減することができる。しかしながら、システムのコストはバッテリーのサイズに直接関係する。6~8時間の枠で十分な容量のストレージシステムをインストールすることの経済性は低い。さらに、状況によっては、バッテリーは多く使用されるほど劣化するため、正確な予測がされることでシステムにおける使用回数が減り、バッテリーの寿命が延び得る。
【0027】
本開示の一態様によれば、システムは、統計および機械学習を利用して、同時ピークイベントの予測を提供するように構成され、施設においてビハインド・ザ・メーター(behind-the-meter)で設置されたエネルギーストレージシステム(ESS)の充電/放電を制御するように構成されている。
【0028】
実施形態について図面を参照しながら説明する。説明を簡単かつ明瞭にするために、適切であると考えられる場合、対応する要素または類似の要素を示すために、参照番号は図面間で繰り返されることがある。さらに、本明細書に記載された実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的詳細が説明されている。しかしながら、本明細書に記載された実施形態はこれらの具体的詳細によらず実施され得ることは、当業者によって理解されるであろう。他の例では、本明細書で説明されている実施形態を曖昧にしないために、周知の方法、手順、および構成要素は詳細に説明されていない。また、本詳細な説明は、本明細書に記載の実施形態の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0029】
本明細書を通じて使用される様々な用語は、文脈がそうでないことを示さない限り、以下のように理解することができる:全体を通じて「または」は包括的で、「および/または」と記載されているとみなし得る。全体を通じて使用される単数形の冠詞および代名詞は、それらの複数形も含み、逆もまた同様である。同様に、性別代名詞は、それと対になる代名詞を含み、代名詞は、本明細書に記載されるものを単一の性別による使用、実装、実行などに限定するものとして理解されるべきではない。「例示的」は、「実例として」または「一例として」として理解されるべきであり、必ずしも他の実施形態よりも「好ましい」として理解されるべきではない。用語の更なる定義が本明細書に記載されることがあり、本詳細な説明を読むことで理解されるように、この定義は、当該用語の前または後の事例にも適用され得る。
【0030】
本明細書にて命令を実行するものとして例示された、任意のモジュール、ユニット、コンポーネント、サーバ、コンピュータ、端末、エンジン、または装置は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、またはテープなどの、(取り外し可能なおよび/または取り外し不可能な)記憶媒体、コンピュータ記憶媒体、またはデータ記憶装置などのコンピュータ可読媒体を含み、或いはそれらとのアクセスを有する。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータなど、情報を記憶するための任意の方法または技術で実装された、揮発性および不揮発性、取り外し可能および取り外し不可能の媒体を含み得る。コンピュータ記憶媒体の例には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、または他のメモリ技術、CD-ROM、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、または他の光学記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置、または他の磁気記憶装置、或いは所望の情報を記憶するために使用可能で、アプリケーション、モジュール、またはその両方によってアクセス可能な任意の他の媒体が含まれる。これらの任意のコンピュータ記憶媒体は、装置の一部であってもよく、或いは装置とアクセス可能または接続可能であってもよい。さらに、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、本明細書に記載の任意のプロセッサまたはコントローラは、単一のプロセッサまたは複数のプロセッサとして実装され得る。複数のプロセッサは、配列されても分散されてもよく、本明細書で言及される任意の処理機能は、単一のプロセッサが例示されていても、単一または複数のプロセッサによって実行され得る。本明細書で説明される任意の方法、アプリケーション、またはモジュールは、これらのコンピュータ可読媒体によって記憶または他の方法で保持され、単一または複数のプロセッサによって実行され得る、コンピュータ可読/実行可能命令を使用して実装され得る。
【0031】
方法、システム、および装置の実施形態は、図面を参照して記載されている。以下の説明において、本発明の主題の多くの例示的な実施形態が提示される。各実施形態は本発明の要素の1つの組み合わせであるが、本発明の主題は、開示された要素の全ての取り得る組み合わせを含むと見なされる。したがって、第1の実施形態が要素A、B、およびCを含み、第2の実施形態が要素BおよびDを含む場合、本発明の主題には、明示的に記載されていなくても、A、B、C、またはDの他の残りの組み合わせも含まれると見なされる。
【0032】
図1は、エネルギーストレージシステム115を制御するための例示的なシステム100の態様を示すブロック図である。設備(インフラストラクチャ)110は、電気を消費する1つまたは複数の装置、機械、電気接続などを含む。ある実施形態では、設備には、オフィスビル、製造施設、住宅用のまたは商業用の設備などが含まれる。ある実施形態では、電気設備は、配電システム102および/またはエネルギーストレージシステム115に接続され、或いはそれらからの電気エネルギーを頼りにするまたは消費する、設備の態様のみを指し得る。
【0033】
設備は、配電システム102から電気エネルギーを受け取るように電気的に接続され、且つエネルギーストレージシステム115からも電気エネルギーを受け取るように電気的に接続されている。ある実施形態では、1つまたは複数のメーター装置105が、配電システム102と設備110との間の接続に設置されている。ある実施形態では、メーター装置は、全ての設備110および他の構成要素によって利用/消費されている、配電システム102からのエネルギーを監視する。メーター装置はメーターデータを生成し、それは、ある実施形態では電気エネルギーの消費速度に関するデータ(例えばkW)、消費された電気エネルギー量に関するデータ(例えばkWh)、電気エネルギーが消費された時間/日付に関するデータ、停電データ、電力品質データ、電圧データ、電流データ、負荷データ、無効電力、および/またはメーター装置によって監視、計測、計算、または他の方法で生成され得る任意の他のデータを含み得る。ある実施形態では、メーター装置105は、メーターデータを通信するためのインターフェースを含む。
【0034】
エネルギーストレージシステム115は、電気設備に提供され得るエネルギーを蓄積するための、1つまたは複数のエネルギーストレージ装置および/またはシステムを含む。ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、バッテリーまたはセル、キャパシタなどを含み得る。ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、電気エネルギーに変換可能な形態でエネルギーを蓄積することができる。ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、設備110に電気エネルギーを供給するように構成されている。
【0035】
エネルギーストレージシステムは、基礎となるエネルギーストレージ装置の容量に少なくとも部分的に基づいて定義されたエネルギー容量を有し得る。ある実施形態では、エネルギーストレージシステムは、エネルギーストレージシステムによって蓄積されたエネルギーを設備に供給可能な速度によって定義された定格出力電力を有し得る。ある実施形態では、定格出力電力は、エネルギーストレージシステムの装置、構成要素および/または回路の電気的特性に基づいている。例えば、インバータのサイズによって、エネルギーを供給可能な速度の少なくとも一部を定義することができる。
【0036】
ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、エネルギーストレージ装置から放電し、或いは、エネルギーストレージシステム115に蓄えられたエネルギーを設備に提供する信号を受信するための制御インターフェースを含む。ある実施形態では、受信した信号は、エネルギーストレージ装置を放電させ、或いは、放電するきっかけとなる、データメッセージ、命令、または電気的入力を含み得る。
【0037】
ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、(制御装置などの)1つまたは複数のプロセッサを含む。信号を受信し、信号に基づいて制御または命令信号などを送信し、他のエネルギーストレージ装置に放電させる。
【0038】
ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、配電システム102からエネルギーを受信して蓄積するように構成されている。ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、代替的にまたは追加的に、他の電源(例えばソーラーパネル)からエネルギーを受信して蓄積するように構成されていてもよい。ある実施形態では、エネルギーストレージシステム115は、(例えば、制御インターフェースを介して)エネルギーストレージ装置に充電させ、或いは、配電システムまたはエネルギーストレージ装置内の他の場所からエネルギーを蓄積するための信号を受信してもよい。
【0039】
システム100は、エネルギーストレージシステム115を制御するための制御システムを含む。ある実施形態では、制御システムは、電気設備にエネルギーストレージシステム115に蓄積されたエネルギーを消費させるための信号を生成する。ある実施形態では、信号は、モドバス(Modbus)で送信される。ある実施形態では、信号は、いつ放電するか(または放電を停止するか)、どのくらいの速度で放電するか、および/またはどのくらいの量のエネルギーを放電するかを示す、命令および/またはデータを含み得る。
【0040】
制御システムは、1つまたは複数のプロセッサ、メモリ、および/またはデータ記憶装置165を含む。ある実施形態では、制御システムは、サーバまたはコンピュータなどの処理装置で構成され或いはそれらは含む、コントローラ120を含む。ある実施形態では、コントローラ120は、設備110のオンサイトに設置される。
【0041】
ある実施形態では、制御システムは、完全にコントローラ120に実装されていてもよい。他の実施形態では、制御システムは、1つまたは複数のパブリックおよび/またはプライベートネットワーク135を介して、(例えば、設備、エネルギーストレージシステム、およびメーター装置を含む)消費者の施設に接続された、1つまたは複数の処理装置120Aを含んでもよい。ある実施形態では、ネットワーク接続された処理装置120Aは、制御システムの機能を提供するのに適した、中央サーバ、分散処理システム、および/または任意の数のプロセッサ、メモリ、および/または物理的および/または論理的配置のデータ記憶装置を含んでもよい。
【0042】
ある実施形態では、制御システムは、設備の存在する場所にある、複数の処理装置120の組み合わせであってもよく、ネットワーク135を介して接続された処理装置120Aであってもよい。
【0043】
ある実施形態では、制御システムは、様々なデータソースからの過去およびリアルタイム/略リアルタイムデータにアクセスし或いはそれらを取得するように構成されている。ある実施形態では、制御システムは、少なくとも1つのメーター装置からメーターデータを受信するためのメーターインターフェースを含む。ある実施形態では、制御システムは、設備によって計測、生成、および/または報告された設備データを受信するための設備インターフェースを含む。ある実施形態では、設備データは、例えば空調、暖房、換気システム、照明、機械などを含む電気消費装置に関する情報および/またはデータを含み得る。
【0044】
ある実施形態では、制御システムの1つまたは複数のプロセッサは、人工ニューラルネットワークによって生成された予測送電レベル負荷および信頼値に基づいて、配電システムにおける潜在的な同時ピークを識別するように構成されている。潜在的な同時ピークを識別した場合に、プロセッサは、エネルギーストレージシステムに蓄積されたエネルギーを電気設備に消費させる信号を送信する。ある状況では、これは、識別された潜在的な同時ピーク中に配電システムから引き出されるエネルギーを減らす。
【0045】
ある実施形態では、制御システムは、人工ニューラルネットワーク(ANN)を形成するように構成された複数の層状ノードを含む。ある実施形態では、ニューラルネットワークは、バッチ正規化および整流器非線形性を有する畳み込み層の複数の残差ブロックを含む。本明細書に記載または他の方法で説明されるとおり、ある実施形態では、ANNは、配電システムによってカバーされる管轄区域全体についての予測送電レベル負荷および信頼値を生成するようにトレーニングされる。
【0046】
換言すれば、ある実施形態では、制御システムは、(例えば、顧客の敷地内にある)メーター装置の背後にある電気設備だけでなく、配電システムによって提供される電力グリッド全体における送電レベル負荷を判定するように構成されている。
【0047】
ある実施形態では、本明細書に記載されているシステムおよび方法は、電力負荷分析に関連するエネルギー変数にディープラーニングを適用する。ある実施形態では、ディープラーニングは、より高いレベルがより抽象的なエンティティを表す、複数のレベルの抽象化を通してデータをマッピングする方法を含む。ある状況では、ディープラーニングは、人間が作成した機能およびルールを使用せずに、入力を出力にマッピングする複雑な機能を学習するための完全自動システムを提供できる。ある実施形態では、システムは、抽象化レベルが複数の非線形の隠れ層(hidden layer)によってモデル化されたフィードフォワードニューラルネットワークを含むことができる。本明細書に記載されたある実施形態は、入力として電力負荷エネルギー変数を受け付け、複数層の非線形処理ユニットを適用して、エネルギーデータ予測のセットを計算するシステムおよび方法を提供する。
【0048】
図7を参照すると、図示は、機械学習ユニットを備える、電力負荷予測のための例示的な制御システム700の態様である。機械学習ユニットは、ディープニューラルネットワーク(DNN)701によって実装されることが好ましい。DNNは、入力として、リアルタイムまたは過去のデータのエネルギーデータセットから抽出された特徴を含むエネルギー変数のセットを受け取り、電力負荷を予測することを目的とした出力を生成する。エネルギー変数の定量化は、これらのシステムでは、意味のある単位の有無によらず、絶対的または相対的なスケールで1つまたは複数の実数値で表すことができる。ある実施形態では、DNNは、電力負荷を予測することを目的とした出力に加えて、他の出力を提供することができる。
【0049】
システム700は、DNN701に通信可能に連結されたメモリ706をさらに含む。図示されたDNN701の実施形態は、複数の層702を有する(すなわちディープ)フィードフォワードニューラルネットワークを含む。各層は1つまたは複数の処理ユニット704を含み、各処理ユニットは、入力を出力にマッピングする特徴検出器および/または計算を実装している。処理ユニット704は他の層から複数のパラメータ入力を受け取り、それぞれの処理ユニット704へのそれらの各パラメータ入力に対して関連付けられた重みを有する活性化関数を適用する。一般に、層lの処理ユニットの出力は入力として1つまたは複数の層l+1へ供給される。
【0050】
各処理ユニットは、ネットワークの処理「ノード」と見なされてもよく、1つまたは複数のノードは、シングルまたはマルチコアプロセッサおよび/またはグラフィックス処理ユニット(GPU)などの処理装置によって実装されてもよい。さらに、各処理ユニットは、隠れ層または入力層として、それぞれ、ニューラルネットワークの隠れユニットまたは入力ユニットに関連付けられていると見なし得ることは理解されよう。大規模で(多数の隠れ変数)およびディープな(複数の隠れ層)ニューラルネットワークを使用することは、他のシステムと比較してCVPの予測パフォーマンスを向上させ得る。
【0051】
ある実施形態では、DNNの入力層への入力として、前日および前週の同日の負荷プロファイル、天気予報、リアルタイム送電システムデータ、および電気および天然ガスの料金、系統間流量データ、およびスパーク割合のようなリアルタイム経済的要因に由来する特徴を含む過去の負荷データが受け付けられてよく、DNNの出力層での出力には、エネルギー変数が含まれていてもよい。
【0052】
メモリ706は、各特徴検出器のアクティベーションおよび学習済みの重みを記憶し、電気事業者情報と追加情報のデータセットを記憶し、任意でDNN704からの出力を記憶するためのデータベースを含んでもよい。電気事業者情報は、トレーニングデータを含むトレーニングセットを含んでもよい。トレーニングデータは、例えば、エネルギー変数を予測するためにDNN701をトレーニングするために使用されてもよく、その場合、既知の特徴を有するエネルギー変数が提供されてもよい。メモリ706は、検証データを含む検証セットをさらに記憶することができる。
【0053】
一般に、トレーニング段階の間、ニューラルネットワークは、各処理ユニットのために最適化された重みを学習する。学習後、最適化された重み設定はテストデータに適用される。確率的勾配降下法が、フィードフォワードニューラルネットワークをトレーニングするために使用されてもよい。学習プロセス(バックプロパゲーション)は、ほとんどの部分で行列の乗算を伴うため、GPUを使用した高速化に適している。さらに、ドロップアウト技法を利用して、過剰適合を防ぐことができる。
【0054】
システムは、DNNで実行される動作を制御するために、DNN701に通信可能に連結された処理装置710をさらに含んでもよい。処理装置は、(コンピュータマウスまたはキーボードなどの)入力周辺機器および/またはディスプレイなどの入力装置および出力装置をさらに含んでもよい。処理装置710は、データを送信および受信するためにワイヤレスネットワーク708にさらに転結されてもよい。ある実施形態では、電気事業者情報は、メモリ706に記憶するためにネットワーク708を介して受信される。電力負荷予測およびエネルギー変数優先順位のリストは、ディスプレイを介してユーザに表示されてもよい。
【0055】
図には適用可能なアーキテクチャの実施形態が示されるが、隠れ層の数、各層に含まれる処理ユニットの数、およびそれらの配置は、図示のものに限られない。
【0056】
制御システムは、複数のデータソース160および/またはデータリポジトリ165にアクセスし、或いはデータを受信するように構成されている。ある実施形態では、すべてのデータの一部は、ネットワーク135を介して受信されてもよい。ある実施形態では、データの一部は、設備110の敷地内にローカルに記憶されてもよい。
【0057】
ある実施形態では、データソースは、サーバ、ウェブページ、データベース、および/または入力データを取得可能な処理装置およびストレージ装置の任意の組み合わせであってもよい。ある実施形態では、入力データは、天気データ(温度、湿度、風、日射量、雲量など)、およびリアルタイムまたは略リアルタイムでアクセスされ得る電力市場データセットを含む。ある実施形態では、制御システムは、過去データ(例えば、オンラインの設備が生成した前年、前月、前週、前日、前時のエネルギー使用量、電気のコスト、天然ガスのコスト、電力の入力および出力)を記憶および/またはアクセスする。
【0058】
ある実施形態では、データは、負荷に最大の影響を有するものに基づいて係数の重み付けを最適化するためにクリーニング或いは処理される。
【0059】
ある実施形態では、制御システムは、分散処理システムおよび/またはクラウドベースシステムを含む。例えば、制御システムの一態様は、データの分散記憶および/または分散処理のためにHadoop(商標)システム上に構築されてもよい。ある実施形態では、制御システムは、リアルタイムまたは略リアルタイムで何千もの要因を収集および分析して、何時に同時ピークが発生するかを予測する。
【0060】
ある実施形態では、制御システムは、一日を通して定期的(例えば5分ごとに)更新されるように構成されている。
【0061】
ある実施形態では、制御システムのANNは、多数の入力を考慮するようにトレーニングされる。同時ピーク料金は、供給事業者と小売事業者(load serving entity)との間で適切に請求および決済するためにISOが物理市場および金融市場を管理する送電レベル負荷に基づいている。したがって、システムは、負荷側の直接的な電力消費量、たとえば、この時間に住宅および製造施設などのすべてのユーザがどれだけの電力を使用しているかを予測するだけではない。配電レベルで接続された発電機は、送電レベルでの卸売市場の総負荷削減であるため、システムの予測目標は次のように表すことができる。
【数1】
ここで、
f(x,y)は、xおよびyの関数としての予測管轄区域の総負荷、
xは、各負荷側の電力を消費するリソース、そして、
yは、それぞれのISOまたは他の同等の市場運営者の管轄区域内の配電網に接続された各発電機、
とする。
【0062】
同時ピークを予測するために考慮されるデータの例示的なカテゴリーが含まれるがこれらに限定されるものではない。
【表1】
【0063】
ある状況では、負荷のリソースは、時間ごとのエネルギー消費でも、非線形関係でも互いの間で相関することができ、直接的および間接的な要因の非常に大きなセット(10,000以上の要因)に基づいてエネルギーを消費する。例えば、気象条件が負荷電力消費とソーラーPV(太陽光発電)発電所の発電に影響を与える可能性があり、電力の料金が短期的な電力消費に与える影響は最小限であるが、中期的には消費の変化を修正できる。
【0064】
ある実施形態では、ANNは、以下をカプセル化するか、そうでなければ考慮/解決するように構成されている。
【数2】
ここで、
Lx1は、時間tにおける負荷リソースx1からの電力消費量、
W(t)は、時間tにおける以前および現在の気象条件、
T(t)は、時間tにおける以前および現在の送電条件、
L(t)は、時間tにおける以前および現在の負荷情報、
P(t)は、時間tにおける以前および現在の料金情報、
G(t)は、時刻tにおける以前および現在の発電機情報、
LSR(t)は、時刻tにおける以前および現在の負荷側リソース情報、
とする。
【0065】
図2は、同時ピーク消費およびそれに関連する料金を削減するようにエネルギーストレージシステムを制御するための例示的なエンドトゥエンド方法の態様を示す。
【0066】
上記のとおり、ある実施形態では、入力データは、予測および実測の気象データセット、配電に連結された発電データセット、電気事業者およびISO公表の料金および送電データ、負荷側データなどを含むことができる。
【0067】
ニューラルネットワークの多くのアプリケーションでは、データの統計的特性が考慮されない。季節的なパターンは、ISOレベルおよび個々の負荷(すなわち商業ビル)の両方の電力使用量データに頻繁に発生し得る。系統的な1年の中の電力使用量の季節変動は、周期的な気候の影響または経済活動の振る舞いであり得る。
【0068】
2016年1月1日から2016年12月31日までのトロントの商業ビルの電力使用量のプロットを示す図3を参照すると、電力使用量データの季節性がニューラルネットワークの予測機能に大きな影響を与える可能性がある。左側のプロットでは、横軸は月を表し、ページ内の軸はその月の日を表し、縦軸は電力使用量を表す。右側のプロットは、横軸が月を表し、縦軸がその月の日を表し、電力使用量がカラースケールで表される、2Dでの同一のプロットである。これらのプロット例では、夏季の電力使用量が著しく多いこと、および平日の電力使用量も多いことを示すパターンがみられる。
【0069】
再び図2を参照すると、モデルをトレーニングするとき、データのクリーニング、統計的方法、および機械学習アルゴリズムが適用されてもよい。
【0070】
ある実施形態では、ニューラルネットワークに供給される前にデータの季節パターンを検出するために、スペクトル分析がデータ前処理に使用される。ある実施形態では、プロセッサは、データをモデルに供給する前に、スペクトル分析を適用して、任意の周波数、データの分散の相対相関を識別するように構成されている。ある実施形態では、スペクトル分析は、電気負荷などのタイムスタンプ付きデータに適用されて、設備が工場を含むかどうかなどの基礎となるリソースまたはデータの傾向および固有の特徴を分析するための周波数および増幅器タイプの出力を生成する。
【0071】
さらに、ある実施形態では、生のデータセットが高次元であるので、データの処理に高度な統計が適用され得る。プロセッサを使用して、データセットの初期の関連性を判断するために、ISO負荷における特定のパターンとの相関についてのデータセットが計算される。ほとんどのISO卸売電力市場における料金データは地域ベースのエネルギーの限界コスト(LMP)であり、リアルタイムマーケット(RTM)では5分ごとにノードベースで決済され、前日市場(DAM)では毎時で決済される。ある状況では、管轄区域の全体的な負荷を含む多くの要因により、選択された料金ポイントが送電線の輻輳に関する情報を提供する。
【0072】
ある実施形態では、プロセッサは、複数の変数回帰および信頼区間を生成するように構成されている。ある実施形態では、この統計分析は、システム内のすべての生データに関する記述統計の適用を含み、独立性のカイ二乗検定、特徴/ラベル間の相関関係、および/またはANOVA検定を含む完全性試験に進む。
【0073】
ある実施形態では、不均衡なデータセットが、(例えば、非常に曇りの日または変電所の修理など)まれに表される条件を説明するために選択される。ある状況では、これにより、不均衡なデータセットを利用しない方法よりもシステムの予測が向上し得る。ある実施形態では、これらのデータセットは、将来のモデリングおよびアルゴリズムがより高い精度で実行できることを確実にするために、複製データセット、ラベリング、およびバッチサイズ選択を含むが、これらに限定されない技法で処理され得る。ある実施形態では、不均衡データセットは、発生頻度およびISOレベル負荷との相関に基づいて選択される。
【0074】
ある実施形態では、システムは、エネルギーストレージ装置自体などの高度な制御能力を持つ潜在的市場を破壊する装置および技術を説明する。ある実施形態では、システムはデータセットを収集し、そのようなプロジェクトおよび/または制御能力を有する他の装置の現在のデマンドレスポンスを処理する。ある状況では、これらの資産は、一部のISO管轄で見られるように、ISOの負荷を減らす可能性がある。ある状況では、これらのデータフィードを維持し処理することによって、制御システムは負荷条件をより正確に決定することができる。
【0075】
ある実施形態では、異常値の分析は、特に分類が主要な目的の部分でのモデリングにおいて異常値の効果を制限するために行われ得る。
【0076】
システムは、パラメータθを持つディープニューラルネットワークfθをトレーニングし、利用する。このニューラルネットワークは、上述のとおり現在の状態と過去の生データの状態を入力として、以後数時間の電力使用量の予測とこの予測の信頼レベルの両方を出力する(p,v)=fθ(s)。pの行列は、今後数時間の予測された電力使用量を表す。このニューラルネットワークは、ポリシーネットワークおよびバリューネットワークの両方のタスクを1つのアーキテクチャにまとめる。ある実施形態では、ニューラルネットワークは、バッチ正規化および整流器非線形性を有する畳み込み層の多くの残差ブロックを含む。
【0077】
ある実施形態では、制御システム内のニューラルネットワークは、強化学習アルゴリズムで予測されたデータから一貫して自己学習する。各時間sにおいて、ニューラルネットワークfθによって導かれて、離散タブーサーチが実行される。検索は、各予測の信頼度xを出力する。これらの検索信頼度レベルは通常、ニューラルネットワークfθ(s)の生予測pよりも強固な予測を選択する。したがって、離散タブーはポリシー改善演算子と見なすことができる。
【0078】
ある実施形態では、システムは、ポリシー反復(イテレーション)手順をこれらの検索演算子を用いて強化学習アルゴリズムを適用する。ニューラルネットワークのパラメータは、移動確率および値(p,v)=fθ(s)を改良された検索確率および更新された実際ISO負荷値に、より密接に適合させるためにアップデートされる。これらの新しいパラメータは、検索を改善するために予測の次のイテレーションで使用される。図5は、自己学習パイプラインの態様を例示的に示した図である。
【0079】
自己学習フェーズでは、プログラムは、中期のISOレベルの電力使用量s1,・・・,sT自身を予測している。それぞれのstにおいて、最新のニューラルネットワークfθを用いて、離散タブーaθが実行される。予測は、離散タブーat~xtによって計算された検索確率に従って選択される。ターミナルsTは前の値に従って計算される。
【0080】
トレーニングの間、ニューラルネットワークは、入力として生データstを受信し、パラメータθを持つ多くの畳み込み層を通してそれを受け渡し、そして中期の予測を表すマトリックスptおよび信頼レベルを表すスカラー値vtを出力する。ニューラルネットワークパラメータθは、検索確率xtに対するポリシーベクトルptの類似性を最大にし、予測値と実測値との間の誤差を最小にするように更新される。新しいパラメータは、次の自己学習のイテレーションで使用される。
【0081】
ある実施形態では、ニューラルネットワークは、離散タブーサーチを使用してそれぞれの予測を計算することによって、自分自身をトレーニングするように構成され得る。はじめに、ニューラルネットワークをランダムな重みθに初期化する。各イテレーションにおいて、i≧1の場合に、予測が生成される(図5、自己学習参照)。それぞれのtにおいて、ニューラルネットワークfθi-1の前イテレーションを用いて、離散タブーサーチx=aθi-1(st)が実行される。
【0082】
ニューラルネットワーク(p,v)=fθ(s)は、予測されたISO負荷値とISO実測負荷値との誤差を最小にするように、かつ、検索確率xに対するニューラルネットワークの移動確率pの類似性を最大にするように調整される。具体的には、パラメータθは、平均二乗誤差とクロスエントロピー損失をそれぞれ合計する損失関数lの勾配降下によって調整される。
【0083】
【数3】
【0084】
ここで、Cは、(オーバーフィッティングを防ぐために)L2重量正則化のレベルを制御するパラメータである。
【0085】
実験例では、学習パイプラインは、人間の介入なしにシステムをトレーニングするために利用された。トレーニングの過程で、離散タブーサーチごとに1000のシミュレーションを使用して、1万を超える予測が生成された。
【0086】
図6は、精度に対する、トレーニング時間の関数として、自己学習強化学習時のシステムの性能を示す。学習はトレーニングを通してスムーズに進み、振動または壊滅的忘却の影響を受けなかった。36時間後、強化ディープラーニングを用いたシステムは、サポートベクトル回帰を用いたシステムよりも優れていることが観察された。
【0087】
図2を参照すると、ある実施形態では、トレーニングされたモデル(ANNなど)は、リアルタイム動作に合わせて調整するように変更されている。ある実施形態では、モデルは、リアルタイムまたは略リアルタイムのデータフィードからの欠損したまたは遅延したデータに対応するように変更されている。例えば、誤差はISOのソースからの誤差を含み得る。ある実施形態では、リアルタイム動作のためのアルゴリズムは、計算、モデル、および/または入力パラメータを含むように変更され、一般的に全てのデータが制御システムに供給されなくても結果を生成する。
【0088】
図4は、制御システムを動作させるための例示的な方法の態様を示す。ある実施形態では、信号が、制御システムとエネルギーストレージシステム(ESS)との間で通信され得る。ある実施形態では、ESSは、安全性および/または動作パラメータ条件を制御システムに通信するように構成され得る。
【0089】
例えば、いくつかのエネルギーストレージシステムは、特にバッテリータイプでは、一般的なリチウムイオンなどの異なる化学物質に基づいている。これらの物質は、損傷、火災、爆発、またはその他の悪影響を防ぐために、さまざまな環境で安全な動作範囲がある。ある実施形態では、利用されるESSハードウェア技術に応じて、入力は周囲温度、湿度、セル温度、電流、無効電力、グリッド周波数などを含み得る。ある実施形態では、これらの入力は、ESSが放電されるべき期間の識別に影響を及ぼし得るESSのための動作パラメータを制御システムに提供する。
【0090】
ある実施形態では、ESSは、追加的または代替的に目標電力、動作モード、セル温度、実際の電力出力、公称残存エネルギーなどを含むデータを制御システムへ通信することができる。
【0091】
ある実施形態では、制御システムは、他の情報を考慮に入れながら収益の流れを最適化するアルゴリズムを適用するように構成されたソフトウェア・プラットフォームを含む。例えば、ある実施形態では、プラットフォームは、卸売体系および料金体系からのそれぞれの規則および収集データに従って消費および削減を計算し、そして、会計の観点から請求および決済サービスを提供することができる。
【0092】
潜在的な同時ピークを識別すると、プロセッサは、エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを電気設備に消費させる信号を送信する。ある状況では、これは、識別された潜在的な同時ピーク中において、配電システムから引き出されるエネルギーを減少させる。
【0093】
ある実施形態では、送信された信号は、エネルギーストレージシステムのエネルギー容量と定格出力電力に基づいて少なくとも部分的に選択された時間期間中に、エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーを電気設備に消費させる。
【0094】
例えば、ある実施形態では、制御システムは、電流または予測された設備による利用および定格出力電力に基づいて、エネルギーストレージシステムに貯えられたエネルギーが続く時間の長さを決定することができる。この時間の長さは、ESSから放電させる信号が生成され、同時ピーク中にESSから放出される可能性を最大にする時間に影響を及ぼし得る。ESSの容量が大きい場合、または定格出力電力が低い場合、ESSが放電できる期間が長くなるので、放電させる信号は、予測された同時ピークより早く開始し、および/または遅く終了してもよい。
【0095】
ある実施形態では、同時ピークの、より正確な識別を提供することにより、システムまたは設備がより小容量のESSを利用することができ、そしてさらに同時ピーク中の消費電力を低減することができる。ある状況では、これによって、より小さくより安価なESSを使用してシステムが設計および実装され得る。ESSをインストールするのに必要な設備投資(capital expenditure)が高いので、これによってかなりの節約がもたらされ得る。
【0096】
ある実施形態では、プロセッサは、前年と現在の年の過去のピーク値から過去の同時ピークデータに基づいて、潜在的な同時ピーク閾値を判定する。予測送電レベル負荷が、信頼値の影響を受ける潜在的な同時ピーク閾値を超えるとき、プロセッサは、ESSに貯えられたエネルギーを放出するための信号を生成するように構成されてもよい。
【0097】
ある実施例では、プロセッサは、現在の年の過去のピーク値、現在の年でのこれらのピークの量、および配電システムのISOによって記録される同時ピークの数に基づいて、潜在的な同時ピーク閾値を更新するように構成されている。例えば、現在の年の潜在的なピークの数がすでにISOで記録されている数を超えている場合、予測される送電レベル負荷が、前の潜在的な同時ピークの実際の送電レベル負荷に近いか、それを上回らない限り、プロセッサは、放電をトリガする可能性が低い。
【0098】
ある実施形態では、(例えば年次の)同時ピーク記録期間の終了時に、プロセッサは、制御システムが実際の同時ピーク中にESSの放電をトリガするか否かを自動的に判定し、かつ、潜在的な同時ピーク閾値およびANNパラメータを更新するように構成されている。
【0099】
本明細書に記載された装置、システムおよび方法の実施形態は、ハードウェアとソフトウェアの両方の組み合わせによって実装されてもよい。これらの実施形態は、各コンピュータが少なくとも1つのプロセッサ、(揮発性メモリ、不揮発性メモリ、他のデータ記憶素子、またはそれらの組み合わせを含む)データ記憶システム、および少なくとも1つの通信インターフェースを含む、プログラム可能なコンピュータで実装されることができる。
【0100】
プログラムコードは、入力データに適用され、本明細書に記載の機能を実行し、出力情報を生成する。出力情報は1つまたは複数の出力装置に適用される。ある実施形態では、通信インターフェースはネットワーク通信インターフェースであり得る。ある実施形態では、要素が組み合わされて、通信インターフェースは、プロセス間通信用のインターフェースなど、ソフトウェア通信インターフェースであってもよい。さらに他の実施形態では、ハードウェア、ソフトウェア、およびそれらの組み合わせとして実装された、通信インターフェースの組み合わせであってもよい。
【0101】
実施形態の技術的解決法は、ソフトウェア製品の形態であってもよい。ソフトウェア製品は、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、USBフラッシュディスク、またはリムーバブルハードディスクなどの、不揮発性または非一時的な記憶媒体に記憶することができる。ソフトウェア製品は、コンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、またはネットワーク装置)が実施形態によって提供される方法を実行することを可能にする、いくつかの命令を含む。
【0102】
本明細書に記載の実施形態は、処理装置、サーバ、受信機、送信機、プロセッサ、メモリ、ディスプレイ、およびネットワークを含む、物理的なコンピュータハードウェアにより実装される。本明細書に記載の実施形態は、有用な物理機械、特別に構成されたコンピュータハードウェア構成を提供する。本明細書に記載の実施形態は、様々な種類の情報を表す電磁信号を処理および変換するように適合された電子機器および電子機器によって実施される方法を対象とする。
【0103】
本明細書に記載の実施形態は、広範囲に一体的に、機械、およびそれらの使用に関する。そして、本明細書に記載の実施形態は、コンピュータハードウェア、機械、および様々なハードウェアコンポーネントを用いたそれらの使用以外には、意味または実際的適用性を有さない。
【0104】
特に、例えば精神的手順を用いた、様々な動作を実施するように構成された物理的なハードウェアの物理的なハードウェア以外への置き換えは、実質的に実施形態が動作する方法に影響することができる。そのようなコンピュータハードウェアの制限は、本明細書に記載の実施形態の明らかに必須の要素であり、本明細書に記載の実施形態の動作および構造に重大な影響を及ぼすことなく、省略または精神的手段に置き換えることはできない。コンピュータハードウェアは、本明細書に記載の様々な実施形態を実施するために不可欠であり、単に迅速にかつ効率的な方法でステップを実行するために使用されるものではない。
【0105】
実施形態を詳細に説明してきたが、様々な変更、交換および変更は、本明細書でなされ得ることが理解されるべきである。
【0106】
さらに、本出願の範囲は、明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本開示から、実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同様の結果を達成する、現在存在するまたは今後開発される、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法およびステップが適用され得ることを容易に理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップをその範囲内に含むことを意図している。
【0107】
理解可能なように、上述されおよび図面に示された実施例は単なる例示を意図している。
図1
図2
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図4
図5
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図7