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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】長時間の座位に適した膝支持装具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20220404BHJP
   A41D 13/06 20060101ALI20220404BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20220404BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A41D13/06 105
A61F13/00 355P
A61F13/00 355Z
A61F13/06 B
A61F13/02 345
A61F13/02 350
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019532209
(86)(22)【出願日】2017-08-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-10
(86)【国際出願番号】 FR2017052267
(87)【国際公開番号】W WO2018042108
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2020-08-12
(31)【優先権主張番号】1658001
(32)【優先日】2016-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515315576
【氏名又は名称】ミレー イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミレー,ダミエン
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526945(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090194(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3022290(JP,U)
【文献】特開2014-47425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0053743(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0041214(US,A1)
【文献】国際公開第2014/184459(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01-02
A61F 13/00-08
A41D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝装具であって、
膝の両側および上から下肢に圧縮力を加えるように成形された弾性織布からなるスリーブ(14)と、
粘弾性層を含むパッド(11、11’)であって、前記パッドは、前記粘弾性層が膝の皮膚に直接接触した状態になるように前記スリーブの内面に取り付けられ、前記パッドは、膝の膝蓋骨を取り囲むように成形された環状部分(11a)と、前記環状部分の外縁から前記スリーブの軸方向に延在する遠位タブ(11b)とを含み、前記粘弾性層は、前記スリーブによって肢に加えられる圧縮力の作用下で前記スリーブが伸長力によって長手方向に伸長され際に、前記パッドが前記スリーブと共に伸長し、前記伸長力の除去の後に伸長されたままになり、その下にある肢の一部に膝の中心に向かう第1のを、かつ肢の軸における第2の力を局所的に印加するよう皮膚との接着を有するパッドと、
前記スリーブ(14)の近位および遠位部分を前記下肢上の固定された位置に維持するための近位および遠位固定装置(19a、19b)と、
を備える、装具であり、
前記スリーブは、
前記パッド(11、11’)が取り付けられる前面パネル(17)と、
前記前面パネルに対向し、かつ前記前面パネルよりも低い前記スリーブの軸方向の弾性係数を有する背面パネル(16)と、
それぞれが前記前面パネルの側縁および前記背面パネルの側縁に取り付けられ、かつ前記前面パネルよりも大きい前記スリーブの軸方向の弾性係数を有する2つの側面パネル(18a、18b)と、
を含む布のパネルから形成されていることを特徴とする、装具。
【請求項2】
前記スリーブ(14)は、弾性布で作られた近位スリーブ(15a)および遠位スリーブ(15b)を含み、前記近位スリーブ(15a)および前記遠位スリーブ(15b)のそれぞれの内面は、前記圧縮力の作用下で皮膚と直接接触し、かつ前記スリーブの近位縁部および遠位縁部の皮膚との固定を提供するように、皮膚に接着する各々の粘着層(19a、19b)で部分的に覆われ、前記近位スリーブは、前記前面パネル(17)、前記背面パネル(16)および前記2つの側面パネル(18a、18b)のそれぞれの近位縁に取り付けられており、かつ前記遠位スリーブは、前記前面パネル(17)前記背面パネル(16)および前記2つの側面パネル(18a、18b)のそれぞれの遠位縁部に取り付けられている、請求項1に記載の装具。
【請求項3】
以下の特徴:
前記近位スリーブ(15a)は、前記近位スリーブの縦軸における70~80mmの幅を有し、かつ前記近位スリーブ上に形成された前記接着層(19a)は、前記近位スリーブの縦軸における50~60mmの幅を有すること、
前記遠位スリーブ(15b)は、前記遠位スリーブの縦軸における40~50mmの幅を有し、かつ前記遠位スリーブ上に形成された前記接着層(19b)は、前記遠位スリーブの縦軸における20~30mmの幅を有すること、
前記近位(15a)および遠位(15b)スリーブ上にそれぞれ形成された前記接着層(19a、19b)は18~22μg/cmの表面重量を有すること、
前記近位(15a)および遠位(15b)スリーブは羊毛糸を含まない弾性布で作られていること、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項2に記載の装具。
【請求項4】
前記パッド(11、11’)は、近位角度扇形部(12a)および前記タブ(11b)を含む遠位角度扇形部(12d)によって前記スリーブ(14)に取り付けられており、前記パッドは前記スリーブに取り付けられていない側面角度扇形部(12b、12c)を有する、請求項1乃至3の1項に記載の装具。
【請求項5】
前記パッド(11、11’)の粘弾性層は0.25~0.5mmの厚さを有し、かつ前記近位角度扇形部(12a)、前記側面角度扇形部(12b、12c)および前記遠位角度扇形部(12d)それぞれ、前記パッド(11)の環状部分(11a)の外周の4分の1にわたって延在している、請求項4に記載の装具。
【請求項6】
前記パッド(11’)の粘弾性層は0.35~0.45mmの厚さを有し、かつ前記側面角度扇形部(12b、12c)はそれぞれ、前記近位角度扇形部(12a)の面積よりも4~5倍大きく、かつ前記タブ(11b)を含まない前記遠位角度扇形部(12d)の面積よりも1.5~2倍大きい面積を有する、請求項4に記載の装具。
【請求項7】
前記パッド(11’)の環状部分(11a)は、内縁と外縁との間に2.2~2.8cmの前記近位角度扇形部(12a)の幅(L1)と、2.7~3.3cmの前記側面角度扇形部(12bおよび12c)の幅(L2)とを有する、請求項6に記載の装具。
【請求項8】
前記パッド(11、11’)の粘弾性層は、ポリジメチルシロキサンオイルの混合物の少なくとも部分重合によって得られるシリコーンゲルで作られている、請求項1乃至7の1項に記載の装具。
【請求項9】
前記パッド(11、11’)は、前記粘弾性層に取り付けられた弾性布層(11d)を含む、請求項1乃至8の1項に記載の装具。
【請求項10】
前記パッド(11、11’)のタブ(11b)は脛骨粗面を覆うように成形されており、前記装具は右または左の下肢上で等しく使用されるように構成されている、請求項1乃至9の1項に記載の装具。
【請求項11】
以下の特徴:
前記スリーブ(14)の前面パネル(17)は0.4~0.5mmの厚さを有することと、
前記2つの側面パネル(18a、18b)のそれぞれは0.3~0.4mmの厚さを有することと、
前記背面パネル(16)は0.2~0.3mmの厚さを有することと、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1乃至10の1項に記載の装具。
【請求項12】
前記スリーブ(14)を形成しているパネルは、40%の伸長下で、前記前面パネル(17)では1.75~2N、前記側面パネル(18a、18b)では1.7N~3N、前記背面パネル(16)では1.7~1.8Nの弾性係数を有する、請求項1乃至11の1項に記載の装具。
【請求項13】
前記スリーブ(14)の外周に沿った前記前面パネル(17)および前記背面パネル(16)のそれぞれの長さは前記スリーブ(14)の外周の3分の1にわたって延在しており、かつ前記2つの側面パネル(18a、18b)のそれぞれの長さは前記スリーブ(14)の外周の6分の1にわたって延在している、請求項1乃至12の1項に記載の装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝を維持するための装具に関する。本発明は特に、限定されるものではないが必ずしも関節を固定することなく膝を支持するために適用される。そのような装具は、慢性痛を予防したり軽い捻挫を緩和したりするために、あるいは外傷後の活動の回復中に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
膝蓋骨を確実に支持するための「膝蓋骨ペロッテ」または特定の筋肉をマッサージするためのマッサージペロッテなどの膝支持体または装具が存在する。そのような装具は、例えば米国特許出願公開第2006/0041214号、第2010/0036303号および第2011/0160631号に記載されている。これらの文献に記載されている装具は、膝蓋骨を支持するためにそれを取り囲むように設計された発泡体またはシリコーン製の環状要素を備える。
【0003】
これらの装具はいくつかの欠点を有する。それらは、特に織布すなわち縦糸および横糸を含む布と同程度に薄くすることができない編地のみを作り出す編機を用いて作られているため、比較的厚くて重い。編地の比較的大きな重量により、編地が型崩れするのを防止するためにフレームを設けることが必要になる場合がある。それらの比較的大きな厚さおよびフレームの存在により、それらはズボンの下で不快であったり、ぴったりとしたズボンを着用するのには適していなかったりする。それらは、例えば競争の状況において膝を繰り返し屈曲させている間に、特にそれらの重量が原因で大腿および脚に沿って滑り落ちる傾向がある。膝が曲げられた状態にある場合、不可避的に膝の裏で膝窩のくぼみの中に形成されるその折れ目は重なり合って数ミリメートルの厚さになることがあり、これが使用者に不快感やさらには痛みまで引き起こすことがある。それらは大腿の上および膝の裏で十分な支持を確保するためにループおよびフックを有する締め付けバンドの使用を必要とする場合が多い。
【0004】
特許出願の国際公開第2014/184459号では、本出願人は、膝の両側および上から脚に圧縮力を加えるように成形された弾性スリーブと、そのスリーブの内面に取り付けられる粘弾性ポリマーゲルのパッドとを備えた装具を提案している。そのパッドは、膝蓋骨を取り囲むように成形された環状部分と、環状部分の外縁からスリーブの軸方向に延在するタブとを含む。そのパッドは、スリーブによって加えられる圧縮力の作用下でスリーブが長手方向に伸長された際にそれが伸長されたままであり、かつ膝蓋骨の中心に向かって局所的に支持力を印加すると共に脚の軸における力を回復させるように皮膚に接着するように構成されている。
【0005】
この装具はスポーツ活動中に膝を支持するのに有効である。その一方で、上述の他の装具のように、特に長時間座っている間、すなわち膝関節が80°超で曲げられた状態に維持される場合には、この装具は1日中着用することができない。実際にこの体勢では、この装具によって膝蓋骨に印加される力は最終的に耐え難い痛みを引き起こすことがある。さらに、スリーブの下のポリマーゲルの粘着性は皮膚に剪断力を印加し、これにより最終的に擦傷が生じることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、望ましくない作用を生じることなく、長時間座っている状態を含む通常の活動中に1日中着用されるように構成された膝装具が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態は、膝の両側および上から下肢に圧縮力を加えるように成形された弾性織布からなるスリーブと、粘弾性層を含むパッドであって、パッドは粘弾性層が膝の皮膚に直接接触した状態になるようにスリーブの内面に取り付けられ、パッドは膝の膝蓋骨を取り囲むように成形された環状部分と、環状部分の外縁からスリーブの軸方向に延在する遠位タブとを含み、粘弾性層は、スリーブによって加えられる圧縮力の作用下でスリーブが長手方向に伸長された際に、その下にある肢の一部に膝の中心に向かって支持力を局所的に印加し、かつ肢の軸における力を回復させることによってパッドが伸長して伸長されたままになるような皮膚との接着を有するパッドと、スリーブの近位および遠位部分を下肢上の固定された位置に維持するための近位および遠位固定装置とを備えた膝装具に関する。一実施形態によれば、スリーブは、パッドが取り付けられる前面パネルと、前面パネルに対向し、かつ前面パネルよりも低いスリーブの軸方向の弾性係数を有する背面パネルと、それぞれが前面パネルの側縁および背面パネルの側縁に取り付けられ、かつ前面パネルよりも大きいスリーブの軸方向の弾性係数を有する2つの側面パネルとを含む布のパネルから形成されている。
【0008】
一実施形態によれば、スリーブは、圧縮力の作用下で皮膚と直接接触し、かつスリーブの近位および遠位縁部の皮膚との固定を提供するように、近位および遠位スリーブの内面に配置される皮膚に接着する層で部分的に覆われた弾性布で作られた近位スリーブおよび遠位スリーブを含み、近位スリーブは前面、背面および側面パネルのそれぞれの近位縁に取り付けられており、遠位スリーブは前面、背面および側面パネルのそれぞれの遠位縁部に取り付けられている。
【0009】
一実施形態によれば、本装具は、「近位スリーブは70~80mmの幅を有し、かつ近位スリーブ上に形成された接着層は50~60mmの幅を有する」、「遠位スリーブは40~50mmの幅を有し、かつ遠位スリーブ上に形成された接着層は20~30mmの幅を有する」、「近位および遠位スリーブ上にそれぞれ形成された接着層は18~22μg/cmの表面重量を有する」、「近位および遠位スリーブは羊毛糸を含まない弾性布で作られている」という特徴のうちの少なくとも1つを有する。
【0010】
一実施形態によれば、パッドは近位角度扇形部とタブを含む遠位角度扇形部とによってスリーブに取り付けられており、パッドはスリーブに取り付けられていない側面角度扇形部を有する。
【0011】
一実施形態によれば、パッドの粘弾性層は0.25~0.5mmの厚さを有し、近位、側面および遠位角度扇形部はそれぞれパッドの環状部分の外周の実質的に4分の1にわたって延在している。
【0012】
一実施形態によれば、パッドの粘弾性層は0.35~0.45mmの厚さを有し、側面角度扇形部はそれぞれ近位角度扇形部よりも4~5倍大きく、かつタブを含まない遠位角度扇形部よりも1.5~2倍大きい範囲を有する。
【0013】
一実施形態によれば、パッドの環状部分は、内縁と外縁との間に2.2~2.8cmの近位角度扇形部の幅および2.7~3.3cmの側面角度扇形部の幅を有する。
【0014】
一実施形態によれば、パッドの粘弾性層は、ポリジメチルシロキサンオイルの混合物の少なくとも部分重合によって得られるシリコーンゲルで作られている。
【0015】
一実施形態によれば、パッドは粘弾性層に取り付けられる弾性布層を含む。
【0016】
一実施形態によれば、パッドのタブは、脛骨粗面を覆うように成形されており、本装具は右または左の下肢上で等しく使用されるように構成されている。
【0017】
一実施形態によれば、本装具は、「スリーブの前面パネルは0.4~0.5mmの厚さを有する」、「側面パネルは0.3~0.4mmの厚さを有する」および「背面パネルは0.2~0.3mmの厚さを有する」という特徴のうちの少なくとも1つを有する。
【0018】
一実施形態によれば、スリーブを形成しているパネルは、スリーブの縦軸に沿った40%の伸長下で、前面パネルでは1.75~2N、側面パネルでは1.7N~3N、背面パネルでは1.7~1.8Nの弾性係数を有する。
【0019】
一実施形態によれば、スリーブを形成しているパネルは、スリーブの横軸に沿った40%の伸長下で、前面パネルでは1.75~2N、側面パネルでは1.7N~3N、背面パネルでは1.7~1.8Nの弾性係数を有する。
【0020】
一実施形態によれば、前面および背面パネルはスリーブの外周の約3分の1にわたって延在しており、側面パネルはスリーブの外周の約6分の1にわたって延在している(10%以内まで)。
【0021】
他の利点および特徴は、例示のためにのみ提供され、かつ添付の図面に表されている本発明の特定の実施形態の以下の説明からより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る膝装具の前面図である。
図2】一実施形態に係る膝装具の背面図である。
図3】右の下肢の上に置かれた図1の装具の4分の3前面図である。
図4】右の下肢の上に置かれた図1の装具の4分の3背面図である。
図5A-5B】図5Aおよび図5Bは実施形態に係る装具の概略断面図であり、図5AはAA’平面に沿った横断面図であり、図5BはBB’平面に沿った縦断面図であり、AA’およびBB’平面は図1に示されている。
図6】一実施形態に係るポリマーゲル層を含む本装具のパッドを表す。
図7A-7B】図7Aおよび図7Bは別の実施形態に係る本装具のパッドを示し、パッドはそれぞれ膝が伸ばされた状態と膝が曲げられた状態の2つの構成で表されている。
図8】本装具を着用している右の膝の断面図である。
図9A-9C】図9A図9Bおよび図9Cはそれぞれ、膝が伸ばされた状態、90°に曲げられた状態および本装具を着用して90°に曲げられた状態の右の下肢の骨(腸骨、大腿骨、膝蓋骨、脛骨)の矢状断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図4図5Aおよび図5Bは一実施形態に係る膝装具10を示し、図3および図4は右の下肢に置かれた装具10を示す。図1は、反転された構成の本装具を示し、目に見える面は皮膚に接触することが意図されている面である。装具10は、弾性スリーブ14と、皮膚に接触するように構成されたスリーブ14の面に取り付けられる粘弾性ポリマーゲル層を含むパッド11とを備える。スリーブ14は、大腿、膝および脚に圧縮力を加えるように成形されている。この目的のために、スリーブ14は、下肢のこれらの異なる部分において所望の圧縮力を得るために、下側大腿、膝および上側ふくらはぎの直径に適したスリーブの長手方向に可変直径を有する管状形状を有する。スリーブ14は、現在の規格に準拠して圧縮力を加えるように成形されている。
【0024】
一実施形態によれば、スリーブ14は、実質的に同じ長さのいくつかの中央パネル17、18a、18b、16、スリーブの形態の近位部分15aおよび同様にスリーブを形成する遠位部分15bから作られている。中央パネルは、その上にパッド11が取り付けられる前面パネル17、2つの側面パネル18a、18b、背面パネル16を含む。
【0025】
一実施形態によれば、前面パネル17および背面パネル16はスリーブ14の外周の約3分の1にわたって延在しており、側面パネル18a、18bはスリーブの外周の約6分の1にわたって延在している(10%以内まで)。
【0026】
一実施形態によれば、前面パネル17(膝の屈曲中にパネル17、18a、18b、16のうち最も圧力を受ける)は、本装具を着用して長時間座っている場合に生じ得る不快感を抑えるために、側面パネル18a、18bよりも低いスリーブ14の軸に沿った弾性係数(ヤング率)を有する。背面パネル16は膝窩のくぼみ、すなわち膝関節腔に対応する位置を覆うので、例えば0.3mm未満の小さい厚さを有する弾性材料で作られている。これは、座ったりしゃがんだりする間に膝が曲げられた際に不快感または痛みを引き起こすことがある折れ目の重なり合いにより生じる過剰な厚さの形成を防止する。実際には、1ミリメートルを超える過剰な厚さにより刺激や擦傷が引き起こされることがある。パネル16は、膝の屈曲にも関わらず寄生的な力の緩み(parasitic force play)を生じさせることなく引張したままであるように、スリーブ14を形成する他のパネル18a、18b、15a、15bに取り付けられていてもよい。
【0027】
一実施形態によれば、部分15a、15bは、スリーブ14を大腿およびふくらはぎ上に保持して、スリーブ14が脚に沿って下方または上方のいずれかに滑り落ちるのを防止する。この目的のために、皮膚に接触する部分15a、15bの表面は、スリーブ14の近位および遠位縁部を皮膚に固定する粘着層19a、19bで少なくとも部分的に覆われている。粘着層19a、19bは、それらの固有の粘着性、皮膚と接触している表面積および部分15a、15bおよび粘着層19a、19bによって加えられる圧縮力に応じて、スリーブ14の力よりも大きな力で皮膚に粘着する。粘着層19a、19bは連続的であっても非連続的であってもよい。従って、それらは例えば層の形態で作られていてもよく、例えばコーティングによって堆積されていてもよく、あるいはスタッドの形態で作られていてもよい。これらの層およびスタッドは例えば、その皮膚との粘着性のために選択されるシリコーンゲルなどのポリマーゲルで作られていてもよい。粘着層19a、19bのそれぞれの幅および部分15a、15bによって大腿またはふくらはぎに加えられる圧縮作用は、肢への過剰な圧縮力を回避しながらスリーブ14を脚の上に保持する所望の程度に適合させることができる。従って、本装具の上下部分を皮膚の上に固定する皮膚接着力は、パネル17の弾性を考慮して脚の屈曲に関わる力よりも高い値に設定にして、最終的に擦傷を引き起こす粘着層19a、19bと皮膚との間の滑り落ちを防止することができる。粘着層19a、19bは、ポリジメチルシロキサンオイルの混合物の重合によって得られるシリコーンゲルなどのポリマーゲルで作られていてもよい。
【0028】
パネル17、18a、18b、16、15aおよび15bは、例えば縫い目21、22、23、24を介して組み立てられてスリーブ14を形成する弾性布で作られていてもよい。前面パネル17は、縫い目23によって側面パネル18a、18bに取り付けられている。背面パネル16は、縫い目24によって側面パネル18a、18bに取り付けられている。近位部分15aは、縫い目22によってスリーブ14(パネル17、18a、18b、16を含む)に取り付けられている。遠位部分15bは縫い目21によってスリーブ14に取り付けられている。一実施形態によれば、スリーブ14を形成するパネル17、18a、18bおよび16は、厚さが大きくなるのを防止するように縁と縁とを合わせて組み立てられる。
【0029】
4つの部分からなる中央スリーブ14、18a、18b、16ならびに近位および遠位スリーブ15a、15bを含むこれまで説明してきた膝支持構造は、印加領域に適した力を局所的に加え、かつ製造が容易であるという利点を有する。特に、スリーブ14を作るために異なる布パネルを使用することで、膝が曲げられた場合のパネルの伸長の関数としてふくらはぎおよび大腿の周りのスリーブ14の各パネルの剛性を調節することが可能になる。従って、パネル17は膝が曲げられた場合に最も伸長するが、パネル16はこの動きの間に圧力を受けない。
【0030】
図6は一実施形態に係るパッド11を示す。パッド11は、中央開口部12を有する環状部分11aと、環状部分の外縁から延在するタブ11bとを含む。図1および図3では、パッドは、環状部分11aが膝蓋骨を取り囲むことができ、かつ舌部11bが前側の脛骨粗面を覆うことができる位置で、スリーブ14の内面に取り付けられている(図3)。従って、タブ11bはスリーブ14の遠位方向に延在している。開口部12は、膝蓋骨の寸法よりも僅かに小さい寸法を有する円形状または楕円形状を有する。環状部分11aは(その内縁と外縁との間に)2~4cmの範囲の幅を有する。タブ11bは、脛骨粗面の寸法よりも僅かに大きい寸法を有する。タブ11bは、前側の脛骨粗面が膝蓋骨の中心を通る脚の縦軸に対して中心にないという事実にも関わらず、左および右の膝のために異なる装具を作製することを回避するのに十分な幅を有していてもよい。
【0031】
パッド11は、スリーブ14によって加えられる圧縮力の作用下でスリーブが長手方向に伸長された際に、それが伸長されたままであり、かつ環状部分の中心に向かって皮膚の表面に平行な引張力を皮膚に局所的に印加するような皮膚との接着を有する。
【0032】
パッド11は、縫い目によってスリーブ14(パネル17上)に取り付けられていてもよい。図1図3および図6の例では、パッド11は縫い目13a、13b、13cによって取り付けられる。縫い目13aは、環状部分11aの近位角度扇形部上に環状部分11aの外縁の近位部に沿って形成されている。縫い目13aの端部は環状部分の内縁に接合していてもよいが、これは必須ではない。縫い目13bは環状部分11aの内縁全体に沿って形成されている。縫い目13cは、環状部分11aの遠位角度扇形部の上にタブ11bの縁部を含むパッド11の外縁の遠位部に沿って形成されている。縫い目13cの端部は環状部分の内縁に接合していてもよいが、これは必須ではない。言い換えると、縫い目13aおよび13cは、パッドを環状部分11aから4つの扇形部12a~12dに分割するものであり(図6)、すなわち近位扇形部12aはパネル17に取り付けられており、遠位扇形部12dはタブ11bを含むパネル17に取り付けられおり、2つの側面扇形部12b、12cは取り付けられていない。縫い目13a、13cは、近位扇形部12aおよび遠位扇形部12dの縁部に沿って形成されている。従って、側面扇形部12b、12cの外縁は解放されたままである。環状部分11aの内縁をスリーブ14に取り付ける縫い目13bは、単に裂け目の形成を防止するように機能し、近位および遠位扇形部12a、12dの上に位置する部分を含めることによって全体的または部分的に省略することができることに留意されたい。
【0033】
縫合される代わりに、パッド11の近位および遠位扇形部12a、12dは接着剤層によってスリーブ14に取り付けられていてもよく、側面扇形部12b、12cはスリーブ14に取り付けられていなくてもよい。
【0034】
図5A図5Bは、装具10およびこの装具に取り付けられるパッド11を示す。パッド11は、環状部分11aの開口部12を閉鎖することなくパッド11のポリマーゲル層の片側に取り付けられた弾性織布の断片11dを含む。パッド11および布断片11dの組み立ては例えば接着によって行うことができる。次いで、布断片11dとポリマーゲル層を含むパッド11との集合体を、縫い目13a、13b、13cによってスリーブ14のパネル17に縫い付けることができる。縫い目13aおよび13cは、近位および遠位環状扇形部12a、12d(図6では縫い目13aおよび13cによって区切られている)の上に塗り広げられた接着剤層によって布断片11d(パッドに接着される)をパネル17に接着することによって省略することができる。布断片11dは、0.5mm、例えば0.4mm未満の厚さを有し、例えば背面パネル16と同じ布で作られていてもよい。
【0035】
パッド11の硬さおよび厚さは、パッド11全体(布断片11dを含む)の縫い合わせを可能にするように選択されてもよい。さらに、パッド11のポリマーゲル層の粘着性は、スリーブ14によって膝に加えられる圧縮力を考慮して、パッドが皮膚の上を滑り落ちるのを防止するように選択されてもよい。
【0036】
図6に示す一実施形態によれば、縫い目13aおよび13cによって区切られている環状扇形部12a~12dはそれぞれ環状部分11aの外周の約4分の1に延在しており(10%以内まで)、パッドは、長時間座っている間の本装具の快適な着用を可能にするのに十分な低い剛性を有する。
【0037】
一実施形態によれば、パッド11のポリマーゲル層は、ポリジメチルシロキサンオイルなどのシリコーンオイルの混合物の少なくとも部分重合によって得られるシリコーンゲルから形成されている。そのような混合物は、混合物の重合の程度を定める混合物のシリコーンオイルのそれぞれの割合に応じて硬さおよび粘着性などの異なる特性を有する様々なシリコーンゲルを生成することができる。従って、これらの割合を調整することによって、程度の差こそあれ硬く、かつ程度の差こそあれ粘着性の粘弾性ゲルを得ることができる。パッド11の硬さの調整は、パッドが機械的に非常に大きな圧力を受けることを心に留めて弾性および耐摩耗性要件を考慮し、特にウェーハを縫い合わせる場合には硬さ要件を考慮してもよい。実際には、粘弾性ゲルが柔軟すぎる場合には、縫い目を作るために使用される針を汚しやすい。パッド11の弾性はその形状およびその寸法、および特にその厚さによっても決まることに留意されたい。従って、その剛性を考慮して、パッド11のポリマーゲル層は0.25~0.5mmの厚さを有していてもよい。
【0038】
本装具は、パッド11が膝蓋骨の上に置かれるまで、それをスリーブ14の上縁、すなわち部分15aを掴んで足の上方に引き上げることによって、脚に装着してもよい(図3)。スリーブの天然の剛性はスリーブの伸長を決めるが、これはスリーブを形成する布の弾性限界よりも非常に低い。大腿を覆うスリーブの部分の伸長は、膝を90°で曲げた場合に、牽引が最大であるスリーブの領域において20%未満のままであり、この領域から部分15aに向かって4cmの位置では10%未満のままであることが分かる。この伸長はスリーブを形成する布の最大伸長よりも非常に小さい。これらの条件では、歩いている時や走っている時の膝の交互の折り畳みは、バンド15aによって保証される大腿上でのスリーブ14の保持に著しく影響を与えない。その結果、部分15a、15bは本装具が滑り落ちるのを防止するのに十分である。
【0039】
スリーブ14の布における弾性応力は膝蓋骨の上で最大であり、大腿の上部に向かって減少することが分かる。従って、部分15aをスリーブ14の弾性応力が比較的低い大腿の領域(ここでは皮膚はほとんど伸長しない)に置くために、スリーブ14はパッド11の位置とその近位縁との間に十分な長さを有して設けることができる。一実施形態によれば、部分15aは部分15bよりも幅広であってもよく、典型的には部分15bの2倍の幅を有していてもよい。
【0040】
一実施形態によれば、スリーブ14は、膝蓋骨の軸から18~28cmの長さにわたって大腿を覆うように作製されていてもよい(10%以内まで)。
【0041】
パネル17、18a、18b、16、15aおよび15bは、2つの垂直方向、例えば布の縦糸および横糸に沿って弾性である織布から作られていてもよく、これらのパネルの縦糸は大腿または脚の軸に沿っており、横糸は垂直方向に沿っている。従って、スリーブ14のパネル17を形成する布は0.4~0.5mm、例えば0.42mmの厚さ、80~90%、例えば85%の最大伸長(布の縦糸および横糸に応じて)、および40%の伸長下で横糸では1.75~2N、例えば1.8Nの弾性係数(ヤング率)および縦糸では1.95Nの弾性係数(ヤング率)を有していてもよい。側面パネル18a、18bを形成する布は0.3~0.4mm、例えば0.38mmの厚さ、縦糸では90~100%、例えば92%および横糸では99%の最大伸長(布の縦糸および横糸に応じて)、ならびに横糸では1.7N~3N、例えば2Nおよび縦糸では2.7Nの40%での弾性係数を有していてもよい。背面パネル16を形成する布は0.2~0.3mm、例えば0.27mmの厚さ、縦糸では65~75%、例えば70%および横糸では67%の最大伸長(布の縦糸および横糸に応じて)ならびに縦糸では1.7~1.8N、例えば1.74Nおよび横糸では1.73Nの40%での弾性係数を有していてもよい。
【0042】
近位および遠位部分15a、15bを形成する布は0.5~0.7mm、例えば0.67mmの厚さを有していてもよい。部分15a、15bは18~22μg/cm、例えば20μg/cmの表面重量を有する粘着層19a、19bによって部分的に覆われていてもよい。従って、粘着層19a、19bは0.15~0.25mmの厚さを有していてもよい。部分15a、15bを作製するために羊毛糸を含まない織布を用いることによって粘着層19a、19bのそのような低い重量値を達成することができる。近位部分15aを形成する布は70~80mm、例えば77mmの幅(脚の軸に沿って)を有していてもよい。層19aは50~60mm、例えば53mmの幅(脚の軸に沿って)を有していてもよい。近位部分15aを形成する布は、粘着性コーティングを含まない場合に4~5N、例えば4.5N、粘着性コーティング19aを含む場合に6~7.5N、例えば6.2Nの40%での弾性係数を有していてもよい。遠位部分15bを形成する布は40~50mm、例えば45mmの幅(脚の軸に沿って)を有していてもよい。層19bは、20~30mm、例えば25mmの幅(脚の軸に沿って)を有していてもよい。遠位部分15bを形成する布は、粘着性コーティングを含まない場合に2~3N、例えば2.6N、粘着性コーティング19bを含む場合に3~4N、例えば3.4Nの40%での弾性係数を有していてもよい。パネル17、18a、18b、16、15aおよび15bに関する全ての上記数値特性は5%以内になるように定められている。
【0043】
図7A図7Bは別の実施形態に係るパッド11’を示す。図7A図7Bは、同じ要素を示すために図6の場合と同じ符号を使用している。パッド11’は、環状部分11aの可変幅および異なる範囲を有する角度扇形部12a~12dの点でパッド11とは異なる。従って、パッド11’の環状部分11aは、その内縁と外縁との間に2.2~2.8cm、例えば2.5cmの角度扇形部12aの幅L1と、2.7~3.3cm、例えば3cmの角度扇形部12bおよび12cの幅L2とを有する。側面扇形部12b、12cは近位扇形部12aよりも4~5倍大きい範囲を有する。例えば、近位角度扇形部12aは、パッド11の縦軸Xの両側において開口部12の中心または焦点に約10~25°、例えば13~20°のその頂点を有する角度A1にわたって延在している。側面扇形部12b、12cは、タブ11bを含まない遠位角度扇形部12dの1.5~2倍の範囲を有する。例えば、遠位角度扇形部12dは、縦軸Xの両側において開口部12の中心または焦点に約40~58°、例えば52~54°のその頂点を有する角度A2にわたって延在している。パッド11’は例えば0.6~1mmの厚さを有していてもよい。これらの寸法は5%以内になるように定められている。これらの構成により、パッドの厚さを減少させることを必要とすることなく、パッドの伸長可能な部分、すなわち側面角度扇形部12b、12cを長くし、従ってこれらの角度扇形部の弾性(同じ伸長力下での伸長能力)を高めることが可能になる。実際には、縫い目によるスリーブ14上へのパッドの組み立ては、パッドの厚さが小さすぎる場合に弾性問題を引き起こす可能性がある。従って、パッドの厚さが(パッド11に対して)より大きいにも関わらず、パッド11’によって膝蓋骨に対して加えられる力はより小さく、これも不快感なくより長時間座ることを可能にする。
【0044】
図7A図7Bはそれぞれ非伸長構成および伸長構成のパッド11’を示し、それらはそれぞれ、例えば本装具が下肢の上の適所にある場合に膝が伸ばされた状態と膝が曲げられた状態である。非伸長構成では、ウェーハ11’の開口部12は、膝蓋骨の形状に適した実質的に円形もしくは楕円形である。タブ11bは皮膚上の固定点を形成し、これはスリーブ14によってパッド11’に加えられる圧縮力と、パッドおよび特にタブ11bの表面と、パッドのポリマーゲル層の粘着性との組み合わせによって得られる。バンド15aは大腿上のスリーブ14の固定点であり、バンド15bはふくらはぎ上のスリーブの固定点である。
【0045】
膝が曲げられた際のスリーブ14の伸長時に、伸長部分がパッド11’に伝達されるが、それは、パッドが皮膚に接着されており、バンド15a、15bによりスリーブ14が固定されており、特に環状部分11aを介したパッドの膝蓋骨への接続によりパッド11’のさらなる固定が生じるからである。これにより、パッド11’および特に環状部分11aの伸長Dが生じる。伸長Dによりパッド11’の弾性変形が生じ、特に開口部12の変形が生じ、開口部12はスリーブ14の長手方向に伸長し、かつスリーブ14の横方向に圧縮される。これにより、パッドによって取り囲まれた皮膚および肢の体積に対してパッドによって加えられる皮膚の表面に平行な牽引力が生じる。これらの力は、開口部12の中心に向かって対向する長手方向力F1、F1’および同様に開口部12の中心に向かって対向する横方向力F2、F2’を含む。力F2、F2’は膝蓋骨を維持し、かつその横方向への移動を回避する。
【0046】
力F1、F1’は、歩いている時や走っている時の各歩みを展開するのに関与する。従って、歩いている時や走っている時に、環状部分11aは、足が地面に置かれる能動期中に伸長し、体の慣性は膝の屈曲に関与する。足がもはや地面の上になく、かつ下肢が新しい歩みを行うために前方に伸長される受動期中に、環状部分11aはその非伸長構成を再開し、このようにして、蓄えられた弾性エネルギを脚に対して回復させる。力F2、F2’が比較的弱くとも、それらは、関節が支持されているという感覚(本装具の固有受容性効果)を与えることによって膝蓋骨の若干の支持を保証し、かつ関節を緩めるのに十分である。力F1およびF1’に関しては、それらの存在はそれらが印加される筋腱系を介して知覚される。
【0047】
なお、パッド11(図6)はパッド11’と同じように(先に記載したように)挙動し、パッド11が伸長された時に力F1、F1’、F2、F2’も現れる。
【0048】
図8は右の膝およびそれを取り囲む本装具の断面を示す。環状部分11aは実質的に円錐台凹形状をなし、膝蓋骨2の側面の右、左、下部および上部を包み込んでいることを観察することができる。図8は、本装具によって膝蓋骨2の側縁に加えられる力F3、F3’、F4、F4’も矢印によって示し、これらの力はスリーブ14およびパッド11、11’の環状部分11aの表面に垂直に加えられる。スリーブ14によって加えられる力F3、F3’は膝の中心に向かって方向づけられ、パッド11の環状部分11aによって加えられる力F4、F4’は膝蓋骨2と大腿骨1との界面上に実質的に平行に方向づけられる。従って、本装具は、特に膝が伸びた状態にある時または屈曲運動の開始時、すなわち膝を取り囲む組織が最も緩んでいる位置にある時に、膝蓋骨2の側面を確実に支持する。
【0049】
なお、特に座位におけるパッド11’、特に環状部分11aの長手方向の伸長は、比較的伸長される環状部分11aの側面扇形部12b、12cの外縁に縫い目が存在しないことによって、および環状部分11aの角度扇形部12aのより小さい幅L1によって部分的に容易になる。スリーブ14、特に前面パネル17は、大腿またはふくらはぎに沿ったスリーブの近位および/または遠位縁部の滑り落ちを回避するために、座位において生じる伸長よりも大きな長手方向の伸長能力を有し得ることにも留意すべきである。パッド11、11’およびパネル17の長手方向の伸長能力が増加すれば、部分15a、15bによって加えられる圧縮力を減少させることができ、これは長時間の本装具の着用による生じる不快感を抑えるのに役立つ。
【0050】
これらの構成により、(現在の150gの重量を有する先行技術装具と比較して)45g未満の重量を有する膝装具を得ることが可能になるだけでなく、1日中の長時間の使用および一般的な動的活動(膝に負担をかけるスポーツ活動以外)または膝が長時間にわたって最大110°で折り曲げられたままになり得る静的活動に適合した膝蓋骨の有効な支持を保証する。
【0051】
一実施形態によれば、タブ11bは、その皮膚への接着を高めるためにスタッド27を有する(図7A図7B)。これらのスタッドは、例えばパッド11、11’の成形による製造中に形成されてもよい。
【0052】
図9A図9Bは、膝が伸ばされた構成および膝が約90°で曲げられた構成の矢状断面における下肢および骨盤の骨(腸骨4、大腿骨1、脛骨3および膝蓋骨2)を示す。図9Cは、装具10が装着された脚の部分に重ね合わせられた、膝が曲げられた構成を示す。図9A図9Bは、円によって骨の上の前側の参照点R1、R2、R3および後側の参照点R4を、線L12、L23によって参照点R1とR2およびR2とR3を接続する組織(筋肉、腱)を符号で表す。点R1およびR4はそれぞれ、大腿骨4の前側の縁部(顆)および後側の縁部に位置する。点R2は膝蓋骨2の上に位置する。点R3は脛骨3上の遠位位置に位置する。図9A図9Bは膝が伸ばされた際に伸長される内側および外側の側靱帯5も示す。膝の屈曲期の間に、本装具は膝蓋骨2を支持し、かつ膝を側方に安定化させるのに寄与する力Fを加える。
【0053】
図9A図9Bは、点R1とR2との間の前側連結線L12および点R2とR3との間のL23が膝が伸ばされた構成と膝が曲げられた構成との間で伸長されることを示す。その結果、曲げられた構成(特に座位)において、スリーブ14のパネル17は伸長されたままになり、パッド11と近位部分15aとの間ならびにパッド11と遠位部分15bとの間で永続的な引張を生じる。この永続的な引張がスリーブ15a、15bと皮膚との界面において剪断力を誘発することが分かる。
【0054】
スリーブ15a、15b、特にスリーブ15aの弾性および接着に関する特性は、膝屈曲中に最も圧力を受けるスリーブ14の部分、すなわちパネル17の弾性に関連している。スリーブ15a、15bの皮膚への接着が不十分な場合、膝の屈曲中にパネル17に印加され、かつスリーブ15aに伝達される伸長力によりスリーブの滑り落ちが生じるが、これによりスリーブ14が折れ目を作り、従って膝蓋骨を支持するというその役割をもはや果たさなくなるため、これは不満足なものとなる。逆に、スリーブ15a、15bが皮膚に強く接着し、かつパネル17が高すぎる剛性を有する場合、パネル17に印加され、かつ引張力の形態でスリーブ15a、15bに伝達される伸長力により、スリーブがその機械的剪断強度を超えて下にある皮膚に負担をかける。従って、パネル17の剛性は、その機械的剪断強度を超えてスリーブ15a、15bの下の皮膚に負担をかけないように構成されており、脚の周りのスリーブ15a、15bの引張および粘着性は、スリーブ14、および特にパネル17によってスリーブ15a、15bに加えられる引張力を考慮してスリーブ15a、15bが膝の屈曲中に滑り落ちる可能性がないような値で選択される。
【0055】
当業者には、本発明が様々な他の実施形態および様々な用途を対象にすることができることは明らかであろう。特に、本発明はスリーブ15a、15bを備えた装具に限定されない。実際には、スリーブ15a、15bを部分的または完全に除去し、使用者の骨盤および少なくとも1つの下肢を覆い、かつ本装具によって維持される女性用スラックスまたはタイツ(膝用)などの衣類でスリーブ14を置き換えてもよい。足首の近くにふくらはぎの先細り形状を用いて衣類の形状を調整することによって遠位スリーブ15bを除去してもよい。単に本装具が下肢上の固定された位置にスリーブ14の近位および遠位部分を維持するための近位および遠位固定装置を有することが重要である。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A-7B】
図8
図9A
図9B
図9C