(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】自動車のトランスミッションに装備するためのトルク伝達モジュール
(51)【国際特許分類】
F16D 13/46 20060101AFI20220404BHJP
F16D 13/52 20060101ALI20220404BHJP
F16D 25/10 20060101ALI20220404BHJP
F16D 25/0638 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F16D13/46 C
F16D13/52 C
F16D25/10 A
F16D25/0638
(21)【出願番号】P 2019533516
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017083584
(87)【国際公開番号】W WO2018114972
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-23
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】503041177
【氏名又は名称】ヴァレオ アンブラヤージュ
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】テマン、キム
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム、バロクオー
(72)【発明者】
【氏名】エルベ、リボ
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014212406(DE,A1)
【文献】特開2004-347109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-23/14
F16D 25/00-39/00
F16D 48/00-48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のトランスミッションに装備するためのトルク伝達モジュール(1)であって、前記モジュール(1)が、
-軸(O)を中心として回転するように構成されたデュアルクラッチ機構(10)と、
-前記デュアルクラッチ機構(10)を収容するチャンバ(3)を双方の間に画定するフランジ(12)およびカバー(11)と
を含み、
前記フランジ(12)と前記カバー(11)は、互いに当接するように構成された第1の周辺縁(123)と第2の周辺縁(113)をそれぞれ含み、
前記第1および第2の周辺縁(123、113)が、軸方向に並べられて前記トランスミッションへの前記モジュール(1)の固定に寄与する、前記モジュール(1)の固定用の少なくとも1つの穴(115、125)をそれぞれ含む、トルク伝達モジュールであって、
前記フランジ(12)が、互いに異なる少なくとも1つの第1の作動部品(180)および第2の閉鎖部品(190)を含み、前記第1の作動部品(180)および前記第2の閉鎖部品(190)が一緒にチャンバ(3)を画定し、前記第1の作動部品(180)および前記第2の閉鎖部品(190)が、少なくとも1つの保持装置(500)により互いに接続され
、
第1のシール装置(6)が、前記第2の閉鎖部品(190)の半径方向の当接領域(123’)と、前記トランスミッションの半径方向の接触領域(2’)との間に配置されるように構成され、前記半径方向の当接領域(123’)が、前記半径方向の接触領域(2’)に対応する形状である、トルク伝達モジュール。
【請求項2】
前記第1の作動部品(180)が、2個のクラッチ(100、200)の作動システム(300)を部分的に形成し、前記第1の作動部品(180)が、前記作動システム(300)のカバー(181)であり、前記作動システム(300)が、前記作動システム(300)のカバー(181)内でスライドしてクラッチ(100、200)の少なくとも一方に応力を及ぼすように構成された少なくとも1つのアクチュエータ(320、330)を含む、請求項1に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項3】
前記第1の作動部品(180)が、車両のトランスミッションに前記トルク伝達モジュール(1)をセンタリングするように構成された、円筒形のセンタリング軸受(182)を含む、請求項1又は2のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項4】
前記第2の閉鎖部品(190)が、前記第1の周辺縁(123)を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項5】
前記第1の周辺縁(123)が、前記トランスミッションに前記モジュール(1)を結合するように構成され、前記第1の周辺縁(123)が、前記トルク伝達モジュール(1)の前方部分で軸方向にオフセットされている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項6】
前記保持装置(500)が、前記第1の作動部品(180)に対して前記第2の閉鎖部品(190)の少なくとも1つの自由度を可能にする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項7】
前記保持装置(500)が、前記第1の作動部品(180)に対して前記第2の閉鎖部品(190)の軸方向移動(502)および半径方向移動(503)を可能にする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項8】
前記保持装置(500)が、前記第1の作動部品(180)に対する前記第2の閉鎖部品(190)の固定保持を保証する少なくとも1つの内側固定ねじ(187)および/またはリベットを含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項9】
前記保持装置(500)が、前記第1の作動部品(180)に対する前記第2の閉鎖部品(190)の少なくとも1つの支承面(P)を形成可能であり、前記支承面(P)が、前記第1の作動部品(180)のストッパ(185)に当接する前記第2の閉鎖部品(190)の半径方向内縁(192)により部分的に形成される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項10】
前記第2の閉鎖部品(190)の前記半径方向内縁(192)が、前記第1の作動部品(180)の前記ストッパ(185)、いわゆる第1のストッパ(185)と、前記第1の作動部品(180)に結合される第2のストッパ(184)とに当接する、請求項9と組み合わせた請求項1乃至8のいずれか一項に記載の
トルク伝達モジュール
(1)。
【請求項11】
前記第2の閉鎖部品(190)が、少なくとも1つの円筒軸受面(123”)を含み、前記円筒軸受面(123”)が、前記トランスミッションの軸方向と周方向の接触領域(2”)に当接するように構成され、前記円筒軸受面(123”)が、前記軸方向と周方向の接触領域(2”)に対応する形状である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項12】
前記ストッパ(185)、いわゆる第1のストッパ(185)が、前記第1の作動部品(180)のショルダから形成され、前記第2のストッパ(184)が、前記第1の作動部品(180)に配置された止めリングから形成される、請求項10に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項13】
前記ストッパ(185)、いわゆる第1のストッパ(185)が、前記第1の作動部品(180)に配置された止めリングから形成され、前記第2のストッパ(184)が、前記第1の作動部品(180)のショルダから形成される、請求項10に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項14】
前記第2の閉鎖部品(190)が、弾性リング(501)によりあらかじめ負荷をかけられており、前記弾性リング(501)が、前記半径方向内縁(192)を前記ストッパ(185)に当接させる、請求項9乃至請求項10のいずれか一項が取り入れられた請求項9乃至1
3のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項15】
第1のシール装置(6)が、前記第2の閉鎖部品(190)の前記軸方向の円筒軸受面(123”)と、トランスミッションの軸方向と周方向の接触領域(2”)との間に配置されるように構成され、前記軸方向の円筒軸受面(123”)が、軸方向と周方向の接触領域(2”)に対応する形状である、請求項11に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項16】
ロック装置が、前記フランジ(12)の前記第1の作動部品(180)を前記フランジ(12)の前記第2の閉鎖部品(190)に対して回転ロックする、請求項1乃至1
5のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【請求項17】
前記フランジ(12)、
前記デュアルクラッチ機構(10)のクラッチ(100、200)、および前記カバー(11)が、あらかじめ組み立てられたサブアセンブリを形成する、請求項1乃至1
6のいずれか一項に記載のトルク伝達モジュール(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、自動車用のトランスミッションの分野である。本発明は、特に、自動車のトランスミッションに装備するためのトルク伝達モジュールの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
このようなトルク伝達モジュールは、特に自動車用の、あるいは、いわゆる産業車両、たとえば大型トラック、公共輸送車両、または農業車両用のトランスミッションの一部を構成するためのものである。
【0003】
従来技術では、一般には多板タイプの湿式デュアルクラッチ機構を含む、こうしたトルク伝達モジュールが知られており、この機構は、自動車のギヤボックスに取り付けることを意図している。
【0004】
特に、軸を中心として回転駆動されるように構成されたデュアルクラッチ機構を含むトルク伝達モジュールが知られている。このデュアルクラッチ機構は、通常、それぞれ第1および第2のシャフトに結合される第1および第2のクラッチを含む。このような機構は、一般に、クラッチフランジ、すなわち、いわゆるクラッチカバー(carter d’embrayage)と、クラッチ機構の外装体を形成するカバー(couvercle)とによって一緒に画定される容積内に収容される。こうしたトルク伝達モジュールは、それらの外装体によって自動車のギヤボックスケースに取り付けることができる。
【0005】
仏国特許第3026153号明細書は、このようなトルク伝達モジュールを記載しており、カバーとクラッチフランジが一連の第1の固定部により互いに結合されている。トルク伝達モジュールはクラッチハウジング(cloche d’embrayage)内に全体として収容され、一連の第2の固定ねじの締め付けを介してクラッチハウジングに結合されている。このような一連の第1および第2の固定ねじは、軸を中心としてクラッチカバーの周辺に規則正しく配分されている。その場合、クラッチハウジングは、一連の第3の固定ねじにより内燃機関のカバーに取り付けられる。
この文献は同様に、デュアルクラッチ機構の作動を保証するオイル分配装置を収容する支持部と、外周縁がカバーに当接するように構成された、ほぼハウジングの形状の閉鎖部とを含む単一部品からなるクラッチフランジを記載している。
【0006】
しかしながら、このようなモジュールには複数の欠点がある。第1の欠点は、こうしたトルク伝達モジュールの製造に関する。実際、クラッチフランジは、鋳鉄等の塊状の材料から構成されるという欠点がある。このようなフランジは高価で場所をとる。さらに、この材料は、トランスミッションの重量、したがって自動車の総重量をふやす原因になる。
【0007】
こうしたクラッチフランジは同様に、その製造にも欠点がある。実際、このクラッチフランジは成形方法により製造可能である。しかし、この成形方法には複数の欠点がある。まず、大量生産の場合、あらかじめ形成されたクラッチフランジの成形を行うのに使用されるキャビティ(empreinte)は所定の数に制限されている。また、あらかじめ形成されたクラッチカバーは複数の鋳ばりを含み、クラッチ機構に組み立て可能にするには、さらに寸法調整をする必要がある。その場合、このような寸法調整は加工方法により実施される。この調整は、カバー、クラッチ機構の諸要素または自動車のトランスミッションとの機械的な結合を保証するクラッチフランジの特に表面の加工を目的としている。
【0008】
上記のクラッチフランジは同様に、動作時に硬いという欠点を有する。実際、クラッチフランジは、第2の固定ねじを用いたクラッチハウジングに対する締め付けによって不静定(hyperstatique)とされる。このような不静定の取り付けは、動作時にクラッチ機構を妨害する可能性がある機械的な振動を発生する作用がある。
【0009】
加えて、このようなフランジは、その不静定の取り付けによって、構造を脆弱化させるたわみ点を形成する作用がある。そのうえ、クラッチカバー上のフランジの軸方向の支持と、クラッチカバー上のフランジのセンタリング支持とは、幾何学的構造不良が存在するときは実施されないことがある。
さらに、このようなクラッチフランジは、組み立てにくいという欠点がある。実際、この組立を実施するには多数この固定ねじを使うことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の欠点の少なくとも1つを解消し、組立が簡単で不静定の取り付け問題を解決可能な簡易フランジを備えたトルク伝達モジュールを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明は、自動車のトランスミッションに装備するためのトルク伝達モジュールを対象とし、このモジュールは、
-軸を中心として回転するように構成されたデュアルクラッチ機構と、
-デュアルクラッチ機構を収容するチャンバを双方の間に画定するフランジとカバーとを含み、
-フランジとカバーは、互いに当接するように構成された第1の周辺縁と第2の周辺縁をそれぞれ含み、
第1および第2の周辺縁が、軸方向に並べられて(aligne’、6文字目の「e」にアキュート・アクセントを付したものについては「e’」と表記する)上記トランスミッションへの上記モジュールの固定に寄与する少なくとも1つの穴をそれぞれ含む、トルク伝達モジュールであって、
フランジが、互いに異なる少なくとも1つの第1の作動部品および第2の閉鎖部品を含み、第1の作動部品および第2の閉鎖部品が一緒にチャンバを画定し、第1の作動部品および第2の閉鎖部品が少なくとも1つの保持装置により接続されることを特徴とする。
【0013】
この特徴により、これらの部分すなわち第1の作動部品または第2の閉鎖部品の少なくとも一方を異なる材料で構成可能なフランジを提案することができる。たとえば、鋳鉄または鋼鉄材料で第1の作動部品を製造し、アルミニウム合金または鋼板等の可撓性を有しうる材料で第2の閉鎖部品を製造することができる。
【0014】
その場合、トランスミッションモジュールの重量を減らすことができ、したがって、自動車の総重量の低減に寄与することができる。
【0015】
本発明の別の長所は、トルク伝達モジュールのフランジの製造に関する。この場合、第1の作動部品と第2の閉鎖部品は異なる製造方法で製造される。たとえば、第1の作動部品を成形により製造する一方で、第2の閉鎖部品を型打ち鍛造により製造可能である。したがって、フランジの第1の周辺縁の特別な加工方法を必要とせずに、あるいは最小限にして、フランジの製造を簡素化することができる。
【0016】
本発明は、さらに、不静定取り付けの問題を解決することができる。実際、本発明の保持装置では、フランジが同じ材料でできたモノブロックであるとき、フランジのたわみ領域を回避できる。
【0017】
「保持装置」とは、2つの部品を一緒に保持可能なあらゆる機械的装置を意味する。このような保持装置は、柔軟な機械結合すなわち、少なくとも1つの部品が他方の部品に対して自由度を持ちうる結合を保証することができる。
【0018】
あるいは、保持装置は、2つの部品を一緒に固定保持可能にするあらゆる機械装置を示すことができる。このような保持装置は、剛性の機械結合、すなわち一方の部品が他方の部品に対して自由度を持たない結合を保証することができる。
いずれの場合も「保持装置」とは、2つの部品の取り付けまたは分解が可能な機械装置を意味する。
【0019】
このような保持装置には、フランジを形成する2つの部分の組立を簡素化する効果がある。この保持装置には、また、簡単に分解できるという長所がある。
【0020】
さらに、本発明の保持装置は少なくとも1つの自由度を認めることができる。このようにして、フランジの支持部分とフランジの閉鎖部分との間の結合の剛性を弱めることができる。
【0021】
もはやギヤボックスケースへの不静定の取り付けのおそれはない。
【0022】
本発明の個々の特徴の別の1つの長所は、ギヤボックスケース等の自動車のトランスミッションの基板へのフランジの組立に関する。実際、たとえば、保持装置が、本発明により定義されるような軸に対して半径方向への自由度を可能にするとき、この同じ方向にフランジの第2の閉鎖部品を並進移動させることができる。その場合、このような並進移動によって、ギヤボックスケースと接するパッキンが適切に圧縮されるようにしながらギヤボックスケースへのフランジの組立を容易にすることができる。
【0023】
本発明によるトルク伝達モジュールは、有利には、少なくとも1つの以下の改良を含むことができ、これらの改良を形成する技術的な特徴は、単独または組み合わせて選択可能である:
第1の作動部品が、少なくとも1つのクラッチの作動システムを部分的に形成する。
第1の作動部品が、2個のクラッチの作動システムを部分的に形成する。
第1の作動部品が、作動システムのケースであり、システムは、この作動システムのケース内で摺動して少なくとも1つのクラッチに応力を及ぼす(exercer un effort)ように構成された少なくとも1つのアクチュエータを含む。
【0024】
第1の作動部品は、車両のトランスミッションにトルク伝達モジュールをセンタリングするように構成された円筒形のセンタリング軸受を含む。
第1の作動部品は、少なくとも1つの支持軸受を介してクラッチの基板に接続される。
【0025】
第2の閉鎖部品は、第1の周辺縁を含む。
有利には、第1の周辺縁が軸に対して半径方向外側に延びる。
第2の閉鎖部品は、チャンバから見て凹状であり、このチャンバは、第2の閉鎖部品の凹部により主に画定される。
【0026】
第1の周辺縁は、上記トランスミッションに上記モジュールを結合するように構成され、上記第1の周辺縁は、トルク伝達モジュールの前方部分で軸方向にオフセット(de’cale’、2文字目と6文字目の「e」にアキュート・アクセントを付したものについては「e’」と表記する)されている。
有利には、第1の周辺縁が、上記モジュールを上記トランスミッションに切り離し式に結合するように構成されている。
【0027】
保持装置は、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の軸方向移動を可能にする。
【0028】
好ましくは、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品により可能にされる軸方向移動の振幅が約1~5mmである。
有利には、保持装置が、軸に平行な方向への第2の閉鎖部品の軸方向移動を可能にする。
有利には、保持装置が、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品の少なくとも1つの自由度を可能にする。
有利には、保持装置が、軸に平行な軸方向に、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品の自由度を可能にする。
有利には、軸方向への第2の閉鎖部品の自由度が軸方向移動を可能にする。
有利には、保持装置は、軸に対する軸方向変形を可能にする少なくとも1つのたわみ要素を含む。
有利には、たわみ要素が弾性リングから構成される。
第2の閉鎖部品は、保持装置により軸方向に保持され、保持装置は、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品の半径方向移動を可能にする。
有利には、保持装置は、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品の半径方向移動を可能にする。
有利には、保持装置は、軸に垂直な半径方向に、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品の自由度を可能にする。
有利には、半径方向への第2の閉鎖部品の自由度が、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品の半径方向移動を可能にする。
第1の作動部品と第2の閉鎖部品との間に半径方向の隙間が設けられる。
有利には、半径方向の隙間が半径方向移動により形成される。
半径方向の隙間は、第2の閉鎖部品の内径と第1の作動部品の外径との間に形成される。
第1の作動部品と第2の閉鎖部品との間に軸方向の隙間が設けられる。
保持装置は、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の軸方向移動および半径方向移動を可能にする。
有利には、保持装置は、軸に平行な軸方向に、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の第1の自由度を可能にし、軸に垂直な半径方向に、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の第2の自由度を可能にする。
有利には、軸方向への第2の閉鎖部品の第1の自由度が、第1の作動部品に対する軸方向移動を許可し、半径方向への第2の閉鎖部品の第2の自由度が、第1の作動部品に対する半径方向移動を可能にする。
有利には、第1の作動部品と第2の閉鎖部品との間に半径方向の隙間が設けられて半径方向移動を保証する一方で、軸方向移動は、たわみ要素の軸方向変形により可能にされる。
【0029】
保持装置は、第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品を固定保持する少なくとも1つの内側固定ねじおよび/またはリベットを含む。
保持装置は、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の少なくとも1つの支承面(appui plan)を形成可能である。
支承面は、チャンバから見て第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の当接により形成される。
支承面は、チャンバの外側から見て第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の当接により形成される。
有利には、第1の作動部品が、第2の閉鎖部品の第2の内側固定穴に向かい合うように構成された第1の内側固定穴を含み、第1の内側固定穴と第2の内側固定穴とが、内側固定ねじを受容するように構成される。
有利には、第1の内側固定穴と第2の内側固定穴との各中心が、軸に平行な直線と一致する。
有利には、取り付けた状態で、第1の内側固定穴と第2の内側固定穴がトルク伝達モジュールの内側固定部材を形成する。
有利には、第1の周辺縁が、トランスミッションのギヤボックスケースのねじ込み穴と向かい合うように構成されたモジュール固定用の第1の穴を含む。
有利には、第2の周辺縁が、第1の周辺縁に配置されたモジュール固定用の第1の穴と向かい合うように構成されたモジュール固定用の第2の穴を含み、モジュール固定用の第1の穴と第2の穴が、モジュール固定用のねじを受容するように構成される。
有利には、取り付けた状態で、モジュール固定用の第1の穴とモジュール固定用の第2の穴が、トルク伝達モジュールの固定部材を形成する。
支承面は、第1の作動部品のストッパに当接する第2の閉鎖部品の半径方向内縁により部分的に形成される。
有利には、半径方向内縁が、軸に垂直な方向に対して定義される。
有利には、ストッパが第1の内側固定穴を含み、周辺縁が第2の内側固定穴を含む。
【0030】
第2の閉鎖部品の半径方向内縁が、第1の作動部品の第1のストッパと、第1の作動部品に結合される第2のストッパとに当接する。
【0031】
第2の閉鎖部品が、少なくとも1つの軸方向の円筒軸受面を含み、この軸方向の円筒軸受面が、トランスミッションの軸方向と周方向の接触領域に当接するように構成され、軸方向の円筒軸受面が、軸方向と周方向の接触領域に対応する形状である:
有利には、軸方向の円筒軸受面が、軸に平行な方向に対して定義される。
【0032】
第1のシール装置が、第2の閉鎖部品の半径方向の当接領域とトランスミッションの半径方向の接触領域との間に配置されるように構成され、半径方向の当接領域が、半径方向の接触領域と対応する形状である。
有利には、第1のシール装置が板パッキンである。
第2の閉鎖部品の半径方向の当接領域と軸方向の円筒軸受面とが、同一の接合縁により画定される。
【0033】
ストッパすなわち第1のストッパが、第1の作動部品のショルダから形成され、第2のストッパが、第1の作動部品に配置された止めリングから形成される。
有利には、止めリングが開放リングであり、より有利には、止めリングがサークリップである。
【0034】
ストッパすなわち第1のストッパが、第1の作動部品に配置された第1の止めリングから形成され、第2のストッパが、第1の作動部品に配置されたショルダから形成される。
【0035】
ストッパすなわち第1のストッパが、第1の作動部品に配置された第1の止めリングから形成され、第2のストッパが、第1の作動部品に配置された第2の止めリングから形成される。
【0036】
第2の閉鎖部品が、弾性リングによりあらかじめ負荷をかけられている。
有利には、保持装置が弾性リングを含む。
有利には、弾性リングが第1のストッパと内側周辺縁との間に配置される。
弾性リングが、半径方向内縁をストッパに当接させる。
有利には、弾性リングが、半径方向内縁を第1のストッパに当接させる。
弾性リングが、半径方向内縁を第2のストッパに当接させる。
第2の閉鎖部品の半径方向内縁が、第1の作動部品の第1のストッパに当接し、弾性リングが、第1の作動部品に結合された第2のストッパに軸方向に当接する。
有利には、第2の閉鎖部品の半径方向内縁が、第1の作動部品の第2のストッパに当接し、弾性リングが、第1の作動部品に結合される第1のストッパに軸方向に当接する。
少なくとも1つの内側固定ねじが、支承面を形成可能である。
内側固定ねじが、チャンバから見て第2の閉鎖部品の半径方向内縁の面から軸方向に配置される。
内側固定ねじが、チャンバの外側から見て第2の閉鎖部品の半径方向内縁の面に軸方向に配置される。
有利には、第2の閉鎖部品が、半径方向内縁を画定する環状部分をその中心に含む。
【0037】
第1のシール装置は、第2の閉鎖部品の第2の部品の軸方向の円筒軸受面と、トランスミッションの軸方向と周方向の接触領域との間に配置されるように構成され、軸方向の円筒軸受面が、軸方向と周方向の接触領域と対応する形状である。
有利には、第1のシール装置がOリングである。
第2のシール装置は、フランジの第1の作動部品とトランスミッションとの間に配置されるように構成される。
第2のシール装置は、フランジの第1の作動部品とトランスミッションとの間に配置されるように構成される。
【0038】
ロック装置は、フランジの第2の閉鎖部品に対してフランジの第1の作動部品の回転をロックする。
ロック装置は、第2の閉鎖部品のスプライン形状と対応する第1の作動部品のスプライン形状からなる。
第2の閉鎖部品は、第1の作動部品に軸方向にセンタリングされる。
第1の作動部品はアルミニウム合金であり、第2の閉鎖部品は、シートメタルである。
第2の閉鎖部品は、アルミニウム合金であり、第1の作動部品はシートメタルである。
シートメタルはアルミニウム合金または鋼鉄である。
有利には、シートメタルがプレスでの型打ち鍛造により得られる。
クラッチが湿式である。
クラッチが、半径方向に互いに上下に配置される。
有利には、クラッチが軸方向に互いに前後に配置される。
【0039】
フランジ、クラッチ、およびカバーが、あらかじめ組み立てられるサブアセンブリを形成する。
有利には、角方向の位置決め装置が、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の位置決めを保証し、第1の内側固定穴を第2の内側固定穴の正面に位置決めする。
有利には、角方向の位置決め装置が、第1の作動部品を第2の閉鎖部品に接続する少なくとも1つの位置合わせ部から形成される。
有利には、角方向の位置決め装置が、第1の作動部品を第2の閉鎖部品に接続する少なくとも1つの位置合わせ部から形成される。
有利には、角方向の位置決め装置が、位置合わせ部に向かい合った位置合わせ穴を含む。
有利には、位置合わせ穴が第1の作動部品に形成され、位置合わせ部が第2の閉鎖部品に形成される。
【0040】
本発明は、また、トランスミッションの少なくとも1つのギヤボックスケースと、上記のようなトルク伝達モジュールとを含む、自動車用のトランスミッションを対象とする。
【0041】
本発明によるトランスミッションは、有利には、上記の改良の少なくとも1つを含むことが可能であり、これらの改良を形成する以下の技術的特徴を単独または組み合わせで取り入れることができる:
第1のシール装置がフランジの第2の閉鎖部品の第1の周方向内縁と、ギヤボックスケースとの間に配置される。
第2のシール装置が、フランジの第1の作動部品とギヤボックスケースとの間に配置される。
第1のシール装置が、第2の閉鎖部品の半径方向の当接領域と、ギヤボックスケースの対応する半径方向の接触領域との間に配置される。
第2のシール装置が、フランジの第1の作動部品とギヤボックスケースとの間に配置される。
【0042】
本発明は、また、車両のトランスミッションに本発明によるトルク伝達モジュールを組み立てる方法を対象とし、この方法は、以下の工程:
a.第1の作動部品に第2の閉鎖部品を接近させる位置決め工程
b.保持装置を用いて第1の作動部品に対して第2の閉鎖部品を保持し、フランジを形成するようにする保持工程
c.チャンバ内にクラッチを配置する組立工程
d.フランジの第1の周辺縁に対してカバーの第2の周辺縁を当接させながら、モジュールの少なくとも1つの固定穴を用いてチャンバを閉鎖する閉鎖工程
を含む。
有利には、位置決め工程において、第1の内側固定穴が、第2の内側固定穴に向かい合って配置される。
有利には、位置決め工程において、第2の閉鎖部品が、円筒形のセンタリング軸受により画定される第1の作動部品の軸方向の一端から、第1の作動部品に接近する。
有利には、位置決め工程において、第2の閉鎖部品が、円筒形のセンタリング軸受と反対の第1の作動部品の軸方向の一端から、第1の作動部品に接近する。
【0043】
本発明の他の特徴、細部および長所は、添付図面に関して例として以下に挙げた説明を読めば、いっそう明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】フランジが第1の作動部品と第2の閉鎖部品とを含み、特に、保持装置が、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の軸方向移動を可能にする、本発明によるトルク伝達モジュールの第1の実施形態を示す断面図である。
【
図2】特に、保持装置が、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の軸方向移動と半径方向移動とを同時に可能にする、本発明によるトルク伝達モジュールの第2の実施形態を示す断面図である。
【
図3】特に、保持装置が、第1の作動部品に対する第2の閉鎖部品の固定保持を保証する、本発明によるトルク伝達モジュールの第3の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の説明および請求項では、理解を容易にするために限定的ではなく例として以下の用語を使用する:
「前方」AVまたは「後方」ARは、トランスミッションシステムの主要回転軸Oにより決定される軸方向の向きに応じたものであり、「後方」は、図の右側に配置された部分でトランスミッション側をさし、「前方」は、図の左側部分のエンジン側をさす。
【0046】
軸Oに対して半径方向「内側/内部」または「外側/外部」は、軸方向に直交し、「内側」は軸Oに近い部分をさし、「外側」は軸Oから離れた部分をさす。
【0047】
最初に、
図1に示したトルク伝達モジュールのクラッチ機構について説明する。各実施形態のクラッチ機構は同じであり、後述するような
図1の実施形態と同じように説明可能であることに留意されたい。
【0048】
したがって、
図1に示したように、トルク伝達モジュール1のこの実施例は、自動車のトランスミッションに装備することを意図している。そのため、トルク伝達モジュールは、自動車のギヤボックスケース2に取り付けられる。トルク伝達モジュールは、カバー11とフランジ12とを含み、これらは、デュアルクラッチ機構10を収容するチャンバ3を一緒に形成する。
【0049】
トルク伝達モジュール1は、好ましくは湿式デュアルクラッチタイプ、さらに好ましくは、いわゆる半径方向の位置にある、デュアルクラッチ機構10を含み、第1のクラッチ100が第2のクラッチ200に対して外側に配置される。デュアルクラッチ機構10は、
図1に示していないトランスミッションを含む伝達チェーンに組み込まれ、トランスミッションは、デュアルクラッチ機構10に回転結合される。
【0050】
一般に、デュアルクラッチ機構10は、第1のクラッチ100または第2のクラッチ200をそれぞれ介して、第1のトランスミッションシャフトA1または第2のトランスミッションシャフトA2に、入力シャフト(図示せず)を回転結合できるように構成される。
【0051】
本発明の状況では、入力シャフトがエンジン、たとえば熱機関(
図1では示さず)の少なくとも1つのクランクシャフトにより回転駆動される。第1および第2のトランスミッションシャフトA1、A2は、たとえば自動車に装備するタイプのギヤボックス等のトランスミッションに回転結合されることを意図している。
【0052】
好ましくは、第1のトランスミッションシャフトA1と第2のトランスミッションシャフトA2が同軸である。特に、第2のトランスミッションシャフトA2は、中空の円筒形の形状を呈し、その内部に第1のトランスミッションシャフトA1を挿入可能である。
【0053】
図1に示したように、第1のクラッチ100と第2のクラッチ200は、有利には多板式である。多板式の各クラッチは、一方では、入力シャフトに相対回転不能に(solidairement en rotation)結合された、たとえば連結ディスク等の複数の第1の摩擦要素101、201を含み、他方では、トランスミッションシャフトA1、A2の少なくとも一方に相対回転不能に結合された、たとえば摩擦ディスク等の複数の第2の摩擦要素102、202を含む。
【0054】
必要に応じて、複数の第1の摩擦要素101、201は、入力シャフトに相対回転不能に結合された摩擦ディスクからなり、複数の第2の摩擦要素102、202は、トランスミッションシャフトA1、A2の少なくとも一方に相対回転不能に結合されたフランジからなる。
【0055】
第1のトランスミッションシャフトA1は、入力シャフトに回転結合されており、第1のクラッチ100が、いわゆるクラッチをつないだ位置にあって、複数の第1の摩擦要素101が複数の第2の摩擦要素102に回転結合されるとき、入力シャフトにより回転駆動される。あるいは、第1のトランスミッションシャフトA1は、第1のクラッチ100が、いわゆるクラッチを切った位置で構成されて、複数の第1の摩擦要素101が複数の第2の摩擦要素102に回転結合されないとき、入力シャフトとの回転結合を遮断される。
【0056】
同様に、第2のトランスミッションシャフトA2は、入力シャフトに回転結合されており、第2のクラッチ200が、いわゆるクラッチをつないだ位置で構成されて、複数の第1の摩擦要素201が複数の第2の摩擦要素202に回転結合されるとき、入力シャフトにより回転駆動される。あるいは、第2のトランスミッションシャフトA2は、第2のクラッチ200が、いわゆるクラッチを切った位置で構成されて、複数の第1の摩擦要素201が複数の第2の摩擦要素202に回転結合されないとき、入力シャフトとの回転結合を遮断される。
【0057】
図1に示したデュアルクラッチ機構10では、第1のクラッチ100が、トランスミッションの奇数比を係合するように構成され、第2のクラッチ200が、トランスミッションの偶数比と後退とを係合するように構成される。あるいは、上記の第1のクラッチ100と第2のクラッチ200の係合比をそれぞれ逆にしてもよい。
【0058】
第1のクラッチ100と第2のクラッチ200は、入力シャフトのいわゆる入力パワー、(トルクと回転速度)を、各クラッチ100、200の個々の構成に応じて、入力カバー109を介して2個のトランスミッションシャフトA1、A2の一方に交互に伝達するように構成されている。
【0059】
クラッチ100と200は、クラッチをつないだ同じ構成に同時にならないようにされる。それに対して、第1および第2のクラッチ100、200は、クラッチを切った位置に同時に構成することが可能である。
【0060】
次に、チャンバ3に収容されるデュアルクラッチ機構について詳しく説明する。
【0061】
図1に示したように、デュアルクラッチ機構10は、一方では入力シャフト、他方では入力カバー109に回転結合されて、デュアルクラッチ機構10のクラッチ100、200の一方にエンジンレベルで発生したパワー(トルクと回転速度)を伝達する入力要素を含む。好ましくは、デュアルクラッチ機構10の入力要素が、好ましくは軸Oを中心として回転する入力ハブ150を含む。入力ハブ150は、その下方の延長部で、必要に応じて、たとえばダンパ内蔵ダブルフライホイール等のダンパ装置(図示せず)を介して、入力シャフトに回転結合され、および/または軸方向に結合される。
【0062】
入力ハブ150は、その外側延長部で入力カバー109に結合され、特に、この入力カバー109の前方に配置された下端の位置で結合される。好ましくは、入力カバー109と入力ハブ150は結合され、たとえば溶接および/またはリベット締めにより固定される。
【0063】
入力カバー109は、その上端側で、入力ディスクホルダ106を介して第1のクラッチ100に回転結合され、入力ディスクホルダ106は、好ましくは、たとえばスプラインによる形状の係合により入力カバー109に回転結合される。
【0064】
第1および第2のクラッチ100、200は、クラッチをつないだ構成とクラッチを切った構成との間の任意の1つの構成にできるようにされた作動システム300によって、制御される。
【0065】
作動システム300は、
-クラッチをつないだ構成とクラッチを切った構成との間の1つの構成に第1のクラッチ100を置くようにされた第1のアクチュエータ320と、
-クラッチをつないだ構成とクラッチを切った構成との間の1つの構成に第2のクラッチ200を置くようにされた第2のアクチュエータ330と、
-第1および第2のアクチュエータ320、330の少なくとも一部が内部に収容されるカバー181と
を含む。
【0066】
好ましくは、第1および第2のアクチュエータ320、330が油圧ジャッキタイプである。第1および第2のアクチュエータ320、330は、各々が1個の環状ピストンを含むことができ、各環状ピストンは、軸Oと同軸であり、対応するクラッチ操作を構成するために軸方向運動を展開する。この場合、作動システム300はまた、各アクチュエータ320、330のための油圧流体の供給ダクトを含む。好ましくは、油圧流体が加圧流体であり、たとえばオイルである。
【0067】
第1のアクチュエータ320は、一方では第1のデカップリング軸受140、他方では、第1の応力伝達部材105を介して、第1のクラッチ100に結合される。第1のデカップリング軸受140は、第1のアクチュエータ320が発生する軸方向応力を第1の応力伝達部材105に伝達するように構成される。
【0068】
第1の応力伝達部材105は、第1のクラッチ100に、その上方延長部を介して軸方向応力を伝達するように構成され、上方延長部は軸方向前方に延びて、一方では第2の摩擦要素102に対して、他方では入力カバー109の外側リアクション手段103に対して第1の摩擦要素101を離したり押し付けたりすることができるようされている。
【0069】
第1の応力伝達部材105は、その半径方向外側の端部で軸方向前方に向かって湾曲した、波形鋼板の形状を呈している。特に、第1の応力伝達部材105は、上方フィンガ1051を形成する複数の軸方向延長軸受面1051を介して第1のクラッチ100と協働し、上方フィンガは、第1のアクチュエータ320の前方への軸方向運動の作用で第1のクラッチ100の摩擦要素101、102を前方に押すことが可能である。
【0070】
限定的ではなく例として、第1の応力伝達部材105は型打ち鍛造により得られる。
【0071】
第1の応力伝達部材105は、上方フィンガ1051の後方に配置された半径方向上方延長軸受面1052を含む。半径方向上方延長軸受面1052は、第1のクラッチ100から第2のクラッチ200の内部まで半径方向に延びる。
【0072】
中間の軸方向延長軸受面1053は、第2のクラッチ200の下で半径方向上方延長軸受面1052をデュアルクラッチ機構10の前方側に延長する。
【0073】
さらに、第1の応力伝達部材105は、湾曲領域1054を介して中間の軸方向延長軸受面1053に接続された半径方向内側の延長部分1055を含む。半径方向内側の延長部分1055の背面は、第1のアクチュエータ320に接続された第1のデカップリング軸受140の前面と接触する。
【0074】
外側リアクション手段103は、入力カバー109に結合される。好ましくは、外側リアクション手段103は、入力カバー109と同じ材料で形成される。あるいは、外側リアクション手段103は、たとえばリベット締めまたは溶接等のあらゆる固定手段によって入力カバー109にしっかりと固定される。
【0075】
外側リアクション手段103は、第1または第2の摩擦要素101、102に係合する形状を有しており、第1のアクチュエータ320がクラッチをつないだ位置に第1のクラッチ100を構成するために前方に向けて軸方向応力を及ぼすと、第1および第2の摩擦要素101、102の摩擦による結合を可能にする。反対に、第1の応力伝達部材105が後述するような弾性の戻し要素により後方に押し戻されると、第1の摩擦要素101は、第2の摩擦要素102から離れ、上記の摩擦要素を切り離し可能にし、それによって、第1のクラッチ100を遮断位置に構成することができる。
【0076】
外側リアクション手段103は、入力ディスクホルダ106の対応する内側スプラインと協働する外側スプラインを特に有する。
【0077】
第1のクラッチ100は、この第1のクラッチ100の出力要素を形成する第1の出力ディスクホルダ104を介して第1のトランスミッションシャフトA1に回転結合されるように構成される。特に、第1の出力ディスクホルダ104は、一方では、その上端位置で第2の摩擦要素102に、他方では、その下端位置で第1の出力ハブ170に回転結合される。
【0078】
第1の出力ディスクホルダ104は、その半径方向外周部に、歯列を備えた軸方向延長部107を含み、この歯列は、特に、第1のクラッチ100の第2の各摩擦要素102の半径方向内周部で、第2の各摩擦要素102に係合する歯列と協働するように構成される。したがって、第1の出力ディスクホルダ104は、第1のクラッチ100の第2の摩擦要素102とのかみ合いにより回転結合される。
【0079】
第1の出力ディスクホルダ104は、その半径方向下端で第1の出力ハブ170に結合され、これらは、好ましくは溶接またはリベット締めにより一緒に固定される。
【0080】
第1の出力ハブ170は、半径方向内部に、第1のトランスミッションシャフトA1に配置された係合するスプラインと協働して回転結合を実現するように構成された、軸方向のスプラインを含む。
【0081】
第1の出力ハブ170と入力ハブ150との間には半径方向の軸受195が配置され、入力シャフトと第1のトランスミッションシャフトA1とがそれぞれ回転可能な回転速度が異なるにもかかわらず、入力ハブ150および/または入力カバー109の半径方向の応力に耐えるようにされている。
【0082】
同様に、デュアルクラッチ機構10の第2のクラッチ200は、第1のクラッチ100に似た設計となっている。
【0083】
第2のアクチュエータ330は、一方では第2のデカップリング軸受240を介して、他方では第2の応力伝達部材205を介して第2のクラッチ200に結合される。第2のデカップリング軸受240は、第2のアクチュエータ330が発生する軸方向応力を第2の応力伝達部材205に伝達するように構成される。
【0084】
第2の応力伝達部材205は、入力ディスクホルダ106と第1の応力伝達部材105との間に軸方向に配置される。
【0085】
第2の応力伝達部材205は、その上方延長部を介して第2のクラッチに軸方向応力を伝達するように構成され、上方延長部は、入力ディスクホルダ106に設けられた開口部108を介して軸方向前方に延び、一方では第2の摩擦要素202に対して、他方では内側リアクション手段203に対して、第1の摩擦要素201を離したり押し付けたりすることができるようにされている。
【0086】
第2の応力伝達部材205は、その半径方向外側の端部で軸方向前方に湾曲した波形鋼板の形状を呈する。特に、第2の応力伝達部材205は、第2のアクチュエータ330の軸方向前方への運動の作用で第2のクラッチ200の摩擦要素201、202を前方へ押すことが可能な、内側フィンガ2051を形成する複数の軸方向延長軸受面2051を介して、第2のクラッチ200と協働する。
【0087】
限定的ではなく例として、第2の応力伝達部材205は型打ち鍛造により得られる。
第2の応力伝達部材205は、上方フィンガ2051の後方に配置された、半径方向上方に延長される軸受面2052を含む。半径方向上方に延長される軸受面2052は、特に第1の応力伝達部材105の軸方向の中間延長軸受面1053の外側で、第2のクラッチ200からこの第2のクラッチ200の内部まで半径方向に延びる。
【0088】
中間の軸方向延長軸受面2053は、第2のクラッチ200の下で半径方向上方延長軸受面2052をデュアルクラッチ機構10の前方に向かって延長する。中間の軸方向延長軸受面2053は、第2のクラッチ200の半径方向内側で第1の応力伝達部材105の半径方向上方延長軸受面1052の外側に配置される。特に、中間の軸方向延長軸受面は、入力ディスクホルダ106の内側に配置される。
【0089】
さらに、第2の応力伝達部材205は、半径方向延長軸受面2054を介して中間の軸方向延長軸受面2053に接続される半径方向内側延長部2055を含む。半径方向内側延長部2055の背面は、第2のアクチュエータ330に接続された第2のデカップリング軸受240の前面に接触する。
【0090】
内側リアクション手段203は、前方側に向けられた軸方向延長部206に結合され、軸方向延長部は、入力ディスクホルダ106に結合され、たとえば溶接またはリベット締め等のあらゆる手段により入力ディスクホルダ106に固定されている。あるいは、内側リアクション手段203と入力ディスクホルダ106は、同じ材料から形成される。外側リアクション手段203は、第1または第2の摩擦要素201、202に係合する形状を有し、第2のアクチュエータ330が第2のクラッチ200をつないだ位置に構成するように前方に向かって軸方向の応力を及ぼすと、第1および第2の摩擦要素201、202の摩擦によるカップリングを可能にする。反対に、第2の応力伝達部材205が、後述する従来の戻し要素により後方に向かって押されると、第1の摩擦要素201は、第2の摩擦要素202から分離され、上記の摩擦要素201、202を切り離し、これによって第2のクラッチ200をその遮断位置におくことができる。
【0091】
限定的ではなく例として、外側リアクション手段203は、外周に歯列を有して軸方向後方に延びる中央支持溝を備えた、リングの形状を呈することができる。
【0092】
第2のクラッチ200は、この第2のクラッチ200の出力要素を形成する第2の出力ディスクホルダ210を介して第2のトランスミッションシャフトA2に回転結合されるように構成される。特に、第2の出力ディスクホルダ210は、一方では、その上端位置で第2の摩擦要素202に、他方では、その下端位置で第2の出力ハブ220に回転結合される。
【0093】
第2の出力ディスクホルダ210は、その半径方向外周に、第2の各摩擦要素202に係合する歯列、特に第2のクラッチ200の第2の各摩擦要素202の半径方向内周に係合する歯列と協働するための歯列を備えた軸方向延長部207を含む。したがって、第2の出力ディスクホルダ210は、第2のクラッチ200の第2の摩擦要素202とかみ合いにより回転結合される。
【0094】
第2の出力ディスクホルダ210は、その半径方向下端の位置で、好ましくは溶接またはリベット締めにより一緒に固定された第2の出力ハブ220に結合される。さらに、軸方向の軸受160が第1の出力ディスクホルダ104と第2の出力ディスクホルダ210との間に配置され、2個の出力ディスクホルダ104、210の間に軸方向の応力を伝達できるようにし、これらの出力ディスクホルダは、第1および第2のクラッチ100、200が異なる構成にあるとき、異なる速度で回転することができる。
【0095】
第2の出力ハブ220は、第2のトランスミッションシャフトA2に配置された係合スプラインと協働するように構成された軸方向のスプラインを、半径方向内側に含み、回転結合を実現する。
【0096】
第1および第2のクラッチ100、200は、それぞれ、弾性の戻し要素(
図1では示さず)を含む。弾性の戻し要素は、軸方向後方に配向される戻し力を発生し、第1および第2のアクチュエータ320、330を後方に自動的に押し戻す。特に、弾性の戻し要素は、それぞれ第1および第2の応力伝達部材105、205を後方に向かって軸方向に付勢し、第1および第2のアクチュエータ320、330を後方に押し戻しながら、それぞれ第1および第2のクラッチ100、200の第2の摩擦要素102、202に対して第1の摩擦要素101、201の離隔を容易にする。
【0097】
次に、カバーおよびフランジならびに、これらの間の機械的な結合についてより詳しく説明する。
【0098】
同様に
図1を参照すると、前述のようなデュアルクラッチ機構10を収容するチャンバ3を一緒に画定するカバー11とフランジ12とから部分的に形成された、トルク伝達モジュール1が示されている。フランジ12は、第1の作動部品180と第2の閉鎖部品190とを含む。カバー11は、軸Oを有する円形回転体の形状である。カバーは、第2の半径方向内側の輪郭110と第2の半径方向外側の輪郭111とにより画定される。第2の半径方向内側の輪郭110は環状区間112を画定し、デュアルクラッチ機構10の入力ハブ150が環状区間112から出ることができる。第2の半径方向外側の輪郭111は、フランジ12の第1の周辺縁123に対応する第2の周辺縁113の外側端部を画定する。第2の延長部114は、軸Oに対してカバー11の第2の半径方向外側の輪郭111から半径方向外側に向かって延びる。第2の延長部114は、
図1に示した回転軸Oに対する横断面では丸みを帯びた形状である。第2の延長部114は、第2の各延長部114の中心に形成されるモジュール1の第2の固定穴115を介してモジュール1の固定ねじ116を受容するように構成される。
【0099】
モジュール1の第2の固定穴115と、対応するモジュール1の固定ねじ116は、モジュール固定部材117を部分的に形成する。「モジュール固定部材」は、モジュール1の固定ねじ116をそれぞれ受容するように構成された、フランジ12の第1の固定穴125に対応するカバー11の第2の固定穴115の各々をひとまとめにして意味する。換言すれば、モジュール固定部材117は、対応するモジュール1の第1の固定穴125と協働するモジュール1の第2の固定穴115の集合から形成される。
【0100】
同様に、カバー11の第2の周辺縁113に配置された少なくとも1つの位置合わせ部130から形成される角方向の位置合わせ装置13を示した。後述するように、位置合わせ部130は、フランジ12に対応して形成された位置合わせ穴132内に、移動せずにそれぞれ収容されるように軸Oに平行な軸方向に延びる。しかしながら、本発明は、1個の位置合わせ部に限定されず、有利には、角方向の位置合わせ装置13が2個の位置合わせ部130を含むこともできる。
【0101】
実際には、位置合わせ部130は、後述するような、あらかじめ決められた角度位置に従ってカバー11をフランジ12に位置決めする。
【0102】
したがって、位置合わせ部130から形成されるような角方向の位置合わせ装置13は、カバー11をフランジ12に半径方向かつ角方向に位置決めすることができる。
【0103】
カバー11は上記のような第2の半径方向外側の輪郭111と第2の半径方向内側の輪郭110とにより画定される波形の断面を含む。図示したようなカバー11の第2の延長部114は、第2の半径方向外側の輪郭111を越えて延び、また、第2の固定穴115を含む。カバー11は、その形状により第2のクラッチ機構10の入力カバー109と係合する。カバー11の環状区間112は、軸Oに対して半径方向外側に延びる第1の縁118と、続いて、クラッチ100、200に向かって軸Oに対して軸方向に延びる第2の縁119を含む。第2の縁119は、第1のパッキン4を全体として収容する。図示したように、第1のパッキン4は、入力ハブとカバー11とをシール接触させ、油圧流体がチャンバ3から外に流れないようにしている。
【0104】
フランジ12は、第2の閉鎖部材190の環状部分191を画定する第1の半径方向内側の輪郭120と第1の半径方向外側の輪郭121とを含む。図示したように、フランジ12は、チャンバ3から見て鐘型または凹状である。チャンバ3は、主に、第2の閉鎖部品190の凹部により画定されることが分かる。
図1に示した実施例では、フランジ12は、第1の半径方向内側の輪郭120によってデュアルクラッチ機構10の作動基板に半径方向に当接する。第1の半径方向外側の輪郭121は、カバー11の第2の周辺縁113に向かい合って配置された第1の周辺縁123を画定する。フランジ12は、カバー11の第2の延長部114に対応する複数の第1の延長部124を含み、カバー11のモジュール1の第2の固定穴115と協働するフランジ12のモジュール1の第1の固定穴125を介して、カバー11をフランジ12に固定することができる。図示したように、フランジ12の第1の延長部124は、第1の半径方向外側の輪郭121を越えて半径方向外側に延びる。第1の延長部124は、カバー11のモジュール1の第2の固定穴115の1つと対応する第1の固定穴125を含む。
【0105】
第2のパッキン5は、チャンバ3から第1および第2の周辺縁123、113に沿って油圧流体が流れるのを阻止するためにカバー11とフランジ12との間に配置される。特に、第2のパッキン5は、第1の周辺縁123と、第1および第2の延長部124、114の各々とに当接するように構成される。その場合、第2のパッキン5は、第1または第2の周辺縁123、113と、第1および第2の各延長部124、114に対応する形状である。
【0106】
フランジ12の第1の周辺縁123と、カバー11の第2の周辺縁113は、それぞれ、互いに向かい合った第1の当接領域128と、第2の当接領域118とを含む。第1の当接領域128および第2の当接領域118は、第2のパッキン5にそれぞれ当接するように構成される。
【0107】
角方向の位置合わせ装置13は、カバー11から形成された位置合わせ部130により示されている。位置合わせ部130は、上記のようなカバー11の第2の周辺縁113に形成される。一般に、位置合わせ部130は、たとえば型打ち鍛造または成形により形成可能である。フランジ12は、第1の周辺縁123に形成されて位置合わせ部130を受容するための位置合わせ穴132を少なくとも含む。位置合わせ部130は、軸Oに対して軸方向にフランジ12から第2の周辺縁113まで延びる非中空の円形形状を呈する。
【0108】
カバー11をフランジ12に組み立てるために、カバー11の第2の周辺縁113がフランジ12の第1の周辺縁123に向かい合うように、軸Oに対して軸方向にカバー11を配置する。その場合、カバー11は、軸Oを中心として角方向に位置決めされるので、位置合わせ部130はそれぞれ位置合わせ穴132と向かい合う。換言すれば、位置合わせ部130がそれぞれ位置合わせ穴132に向かい合うまで、軸Oを中心としてフランジ12に対してカバー11を回転させる。
【0109】
位置合わせ部130ならびに位置合わせ穴132は、一緒に、角方向の位置合わせ装置13を形成する。
【0110】
カバー11をフランジ12に組み立てると、第1の周辺縁123は、第2のパッキン5を介して第2の周辺縁113に押し当てられる。その場合、第2の周辺縁113の位置合わせ部130は、フランジ12の第1の周辺縁123の位置合わせ穴132に挿入される。
【0111】
これらの角方向の位置決め工程によって、モジュール固定部材117の第1および第2のモジュール1の固定穴115、125に対応する位置決めを保証することができる。フランジ12の第1の当接領域128およびカバー11の第2の当接領域118は、その場合、互いにほぼ垂直である。
【0112】
このような特別な位置決めにより、第2のパッキン5は、フランジ12の第1の当接領域128とカバー11の第2の当接領域118とを良好にシール接触させるとともに、トルク伝達モジュール1内にあって特にクラッチ機構10の潤滑を可能にする油圧流体の漏れを特に回避する。
【0113】
モジュール1の固定ねじ116は、それぞれフランジ12およびカバー11の第1および第2のモジュール1の固定穴115、125に挿入されるように構成され、ギヤボックスケース2のねじ込み穴21に収容される。取り付けた状態で、モジュール1の第1および第2の固定穴115、125は、上記のモジュール1の固定ねじ116を受容し、カバー11とフランジ12をギヤボックスケース2に対して一緒に締め付け保持するように構成される。
【0114】
第1のシール装置6は、フランジ12の第1の周辺縁123とギヤボックスケース2との間に配置されるように構成される。
【0115】
トルク伝達モジュール1のシール性は、モジュール1の固定ねじ116がギヤボックスケース2のねじ込み穴21に挿入されるとき、第2のパッキン5と、第1のシール装置6とが圧縮することによって保証される。
【0116】
フランジ12とカバー11が互いに異なる厚さの断面を有することにも同様に留意されたい。
【0117】
同様に、位置合わせ部130は、たとえばカバー11の製造時に型打ち鍛造または成形によって得られる。
【0118】
位置合わせ部130によって、フランジ12に対するカバー11の、特に、第1の周辺縁123に対する第2の周辺縁113の、角方向の位置決めが得られる。カバー11のこのような角方向の位置決めによって、軸Oに対して、したがって第1のパッキン4に対して、カバー11の半径方向の位置を決定することができる。その結果、カバー11の環状区間112とデュアルクラッチ機構10の入力ハブ150との間で良好なシール性を確保できる。このようにして、トルク伝達モジュール1の外への油圧流体の漏れを発生する可能性のある第1のシールパッキン4とカバー11との不適切な接触が回避される。
【0119】
特に
図1では、トルク伝達モジュール1を部分的に受容するためのギヤボックスケース2のハウジングを示した。組み立てられているように、デュアルクラッチ機構10は、フランジ12により画定されるチャンバ3の外に向かって軸Oに対して軸方向に延びる円筒形のセンタリング軸受182を含む。円筒形のセンタリング軸受182は、ギヤボックスケース2の円筒形領域を介してギヤボックスケース2内にあり、円筒形のセンタリング軸受182の軸方向端部は、第2のシール装置7を介してギヤボックスケース2に当接する。
【0120】
第1および第2のシール装置6、7は、軸Oに対してトルク伝達モジュール1を軸方向に保持できるように構成され、かつ寸法決定される。
【0121】
図2では、上記の位置合わせ装置13を示していないことに留意されたい。しかし、
図2の実施形態は、上記のような位置合わせ装置13を含むことができることが分かる。
【0122】
以上、本発明の様々な実施形態に共通する特徴を記載した。以下の説明では、これらの様々な実施形態について説明する。この場合、第1の実施形態は、第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190の軸方向移動502を可能にすることができる。第2の実施形態は、第1の作動部品180に対する第2の閉鎖部品190の軸方向移動と半径方向移動503とを同時に可能にすることができる。第3の実施形態は、第1の作動部品180により第2の閉鎖部品190を固定保持することができる。
【0123】
もちろん、以下に図示する実施形態は、少しも限定的なものではなく、各実施形態の技術的な特徴を、他の実施形態の技術的な特徴と組み合わせることができる。
【0124】
前述の本発明の
図1に示した第1の実施形態によれば、第1の作動部品180により第2の閉鎖部品190を保持する保持装置500を示した。図示されているように、第1の作動部品180は、デュアルクラッチ機構10の各クラッチ100、200の作動システム300を部分的に形成し、特に、第1の作動部品180は、クラッチ100、200の作動システム300のカバー181に対応する。作動システム300のこのカバー181は、各クラッチ100、200に係合するようにそれぞれ構成された2個のアクチュエータ320、330を収容する。これらのアクチュエータ320、330は、作動システム300のカバー181内でスライドしながらそれらの個々のクラッチ100、200に軸方向の応力を供給する役割を果たすことが分かる。第1の作動部品180は、定義されたように、円筒形のセンタリング軸受182から軸方向後方に向かって延びる。円筒形のセンタリング軸受182は、ギヤボックスケース2に関するこの実施形態では、車両のトランスミッションにトルク伝達モジュール1をセンタリングするように構成される。実際、
図2に示したように、第1の作動部品180は、第1の作動部品180とギヤボックスケース2とが接触しないようにするために、半径方向に延長される第1の解放面181Aと、軸方向に延長される第2の解放面181Bとによって画定される解放部を含み、その結果、ギヤボックスケース2に対する第1の作動部品180の位置決め、したがってトルク伝達モジュール1の位置決めを最適化することができる。このようにして、円筒形のセンタリング軸受182は、ギヤボックスケース2のセンタリング領域2’”に対する上記の円筒形のセンタリング軸受の軸方向遠位端の位置で、短いセンタリングを画定する。短いセンタリングは解放部により画定される。
【0125】
第1の作動部品180は、アンギュラコンタクト軸受タイプの支持軸受を介してクラッチ基板に接続される。
【0126】
この実施形態では、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181が、第1のストッパ183を形成するショルダ183を含む。図示されているように、ショルダ183は、作動システム300のカバー181と同じ材料から形成される。このショルダ183は、軸Oに対して垂直な方向に半径方向に延びる第1の作動部品180の突出部分から形成される。この突出部分は、軸Oを中心とする円形の形状である。図示されているように、ショルダ183は、チャンバ3内に配置されるように構成される。
【0127】
変形実施形態では、第1のストッパ183が作動システム300のカバー181にはめ込まれ、たとえば溶接により結合される。
【0128】
保持装置500は、さらに、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181の支持面181’(
図2または
図3に示す)に対する第2の閉鎖部品190の環状部分191の当接により部分的に形成される。この場合、第2の閉鎖部品190が、環状部分191を形成する半径方向内側端部の位置で半径方向の移動なしに第1の作動部品180に配置されることが分かる。
【0129】
作動システム300のカバー181の溝には、止めリング184が配置、収容され、必要に応じて締め付けられる。このようにして、止めリング184は、第1の作動部品180の第2の軸方向ストッパ184を形成する。この第2のストッパ184は、上記のようなチャンバ3の外側に配置される。第2の閉鎖部品190は、定義されているような第1のストッパ183と第2のストッパ184との間に半径方向内縁192によって配置される。
【0130】
最初に、トルク伝達モジュール1が車両のトランスミッションのギヤボックスケース2に組み立てられていないとき、弾性リング501が、第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190を保持するために、特に、第1の作動部品180の第2のストッパ184に対して第2の閉鎖部品190を半径方向内縁192により保持するために、十分な軸方向応力を及ぼすことに留意されたい。
【0131】
第2に、第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180との間で軸方向移動502を可能にするように弾性リング501が軸方向に変形可能であり、第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180との間、特に、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192と第1の作動部品180の第2のストッパ184との間に、軸方向の隙間が設けられることに留意されたい。
【0132】
そのため、
図1に示したように、弾性リング501は、第1のストッパ183と第2の閉鎖部品190との間に配置される。特に、弾性リング501は、チャンバ3内で第1のストッパ183と第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192との間に配置される。ギヤボックスケース2にモジュール1を組み立てると、円筒形のセンタリング軸受182の軸方向端部が第2のシール装置7に当接する。弾性リング501は、第1のストッパ183に軸方向に当接し、図示されているようにギヤボックスケース2へのトルク伝達モジュール1の組立位置で第2の閉鎖部品190を半径方向内縁192により保持するようにされる。その場合、前述のような軸方向移動502が生じる。
【0133】
先に述べたように、第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180は、半径方向の移動なしに相対的に配置される。この場合、保持装置500が可能にするのは、第1の作動部品180に対する第2の閉鎖部品190の軸方向運動に対応し、かつ軸方向移動502に対応する自由度だけである。
図1では、ギヤボックスケース2へのトルク伝達モジュール1の取り付け位置で弾性リング501の変形により設けられる可能性のある軸方向の隙間の軸方向移動502を示した。特に、第1の作動部品180の第2のストッパ184に対する第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192の位置は、定義されているような軸方向移動502を示すためのものである。
【0134】
この第1の実施形態では、保持装置500を部分的に形成して前述のような取り付け位置への第2の閉鎖部品190の保持を保証する弾性リング501について説明した。しかし、本発明はこのような弾性リング501に限定されるものではない。
【0135】
後述するように、第1のシール装置6は、第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123と、ギヤボックスケース2との間に配置される。より詳しくは、第1のシール装置6は、第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123の半径方向の当接領域123’とギヤボックスケース2の半径方向の接触領域2’との間に配置されるように構成されている。トルク伝達モジュール1が車両のトランスミッションに組み立てられると、第1のシール装置6と第2のシール装置7は、それぞれ第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123と、第1の作動部品180の円筒形のセンタリング軸受182の軸方向端部と、ギヤボックスケース2との間で双方のシール装置を圧縮するような寸法で構成され、それによって、トルク伝達モジュール1とギヤボックスケース2との間で軸方向寸法がゼロの系統を保証することを明記する。したがって、ギヤボックスケース2へのモジュール1の不静定の取り付けは回避される。
【0136】
変形実施形態では、定義された第1のストッパ183がチャンバ3の外側に配置される一方で、定義された第2のストッパ184がチャンバ3の内側に配置される。この場合、弾性リング501は、第2のストッパ184に当接し、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192を図示されているような位置に保持する。
【0137】
別の変形実施形態では、第1の構成モードの構成に従って、弾性リング501がチャンバ3の外側に配置されて第2のストッパ184に当接し、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192を図示されたような位置に保持する。この場合、第1の実施形態で定義したような軸方向移動502は、第1のストッパ183と第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192との間に形成される。
【0138】
この変形実施形態の1つの特徴によれば、第1のストッパ183がチャンバ3の外側に配置される一方で、第2のストッパ184は、チャンバ3の内側に配置される。この場合、弾性リング501は、第1のストッパ183に当接し、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192を図示されたような位置に保持する。その場合、第2のストッパ184と、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192との間に軸方向移動502が形成される。
【0139】
図2に示した、第1の実施形態と類似する本発明の第2の実施形態によれば、第1の作動部品180により第2の閉鎖部品190を保持する別の構成にある保持装置500を示した。
【0140】
図2に示したように、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181は、第1のストッパ183を形成するショルダ183を含む。ショルダ183は、作動システム300のカバー181と同じ材料で形成される。同様に、このショルダ183は、軸Oに対して半径方向垂直方向に延びる第1の作動部品180の突出部分から形成される。この突出部分は、軸Oを中心として円形である。ショルダ183は、チャンバ3の外側に配置されるように構成される。
【0141】
変形実施形態では、第1のストッパ183が作動システム300のカバー181にはめ込まれ、たとえば溶接により結合される。
【0142】
この第2の実施形態では、第2の閉鎖部品190の環状部分191の直径が、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181の支持面181’よりも大きく、この支持面181’が回転円形面であることが分かる。この場合、第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180との間、特に、第2の閉鎖部品190の環状部分191と作動システム300のカバー181の支持面181’との間に、半径方向移動503が形成されることが分かる。半径方向の隙間は、第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180との間で半径方向の移動503を可能にする。
【0143】
作動システム300のカバー181の溝に止めリング184が配置されて締め付けられる。その場合、止めリング184は、作動システム300のカバー181に結合される。したがって、止めリング184は、第1の作動部品180の第2のストッパ184を形成する。この第2のストッパ184は、チャンバ3の内側に配置される。第2の閉鎖部品190は、半径方向内縁192により第2のストッパ184と第1のストッパ183との間に配置される。
【0144】
弾性リング501は、第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190を保持するために第2の閉鎖部品190に十分な軸方向応力を及ぼし、その場合、半径方向の支承面Pは、第1の作動部品180の第1のストッパ183に対する第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192の当接により形成される。半径方向の支承面Pによって、第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190を止めることができる。
【0145】
第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180は、半径方向の移動503を伴って相対的に配置される。自由度は、第1の作動部品180に対する第2の閉鎖部品190の、軸Oに垂直な方向への少なくとも1つの半径方向運動に対応し、この運動は、半径方向の移動503により可能にされる。
図2では、ギヤボックスケース2へのトルク伝達モジュール1の取り付け位置で、第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180との間で可能になる半径方向の移動503を示した。特に、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181の支持面181’に対する第2の閉鎖部品190の環状部分191の位置は、半径方向移動503を示すためのものである。
【0146】
ギヤボックスケース2へのトルク伝達モジュール1の取り付け段階では、トルク伝達モジュール1のフランジ12、特にフランジ12の第2の閉鎖部品190が、ギヤボックスケース2にトルク伝達モジュール1を位置決めするように軸方向および/または半径方向に操作可能であり、これによって、モジュール1の固定ねじ116によりギヤボックスケース2にトルク伝達モジュール1を固定するようにされていることが分かる。
【0147】
この第2の実施形態では、弾性リング501が、保持装置500を部分的に形成し、この実施形態で定義された半径方向の支承面Pを用いて、形成された第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190を保持することを説明した。しかし、本発明は、このような弾性リング501に限定されるものではない。特に、軸Oに対する軸方向変形を可能にするたわみ要素によって弾性リング501の支持機能を実現することも可能であろう。
【0148】
第1の実施形態とは異なり、この第2の実施形態では、第1のシール装置6が第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123とギヤボックスケース2との間に配置されている。より詳しくは、第1のシール装置6は、第2の閉鎖部品190の軸方向の円筒軸受面123”と、ギヤボックスケース2の軸方向と周方向の接触領域2”との間に配置されるように構成されている。また、前述のように、第2のシール装置7は、第1の作動部品180とギヤボックスケース2との間、特に第1の作動部品180の円筒形のセンタリング軸受182とギヤボックスケース2との間に配置されるように構成されている。この構成では、車両のトランスミッションへの伝達モジュールの組み立て時に、第2のシール装置7だけが、第1の作動部品180の円筒形のセンタリング軸受182とギヤボックスケース2との間でこのシール装置を圧縮するような寸法で構成されることを明記する。この実施形態では、第2のシール装置7とは独立して第1のシール装置6を寸法決定できることが分かる。有利には、第1のシール装置6がOリングである。
図2に示したように、第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123は、ギヤボックスケース2に直接当接し、すなわち中間のシール装置がないので、第1の周辺縁123の半径方向の当接領域123’は、ギヤボックスケース2の半径方向の接触領域2’に当接する。この構成は、第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190の半径方向の支承面Pを確保する効果を有する。特に、半径方向の支承面Pは、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192と、第1の作動部品180の第1のストッパ183との間に形成される。この実施形態では、第1のシール装置6が、第2の閉鎖部品190とギヤボックスケース2との間に配置されたスペースから外部への油圧流体の流れを阻止するように構成されていることに気付くだろう。
【0149】
この第2の実施形態の変形実施形態では、第1のストッパ183がチャンバ3の内側に配置されているのに対し、第2のストッパ184は、チャンバ3の外側に配置されている。この場合、弾性リング501は第1のストッパ183に当接し、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192を第2のストッパ184に対して保持する。
【0150】
この実施形態の別の変形実施形態では、弾性リング501がチャンバ3の外側に配置され、第1のストッパ183に当接し、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192を第1のストッパ183に対して保持する。
【0151】
この変形実施形態の1つの特徴によれば、第1のストッパ183は、チャンバ3の内側に配置されるのに対し、第2のストッパ184は、チャンバ3の外側に配置される。この場合、弾性リング501は、第2のストッパ184に当接し、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192を第2のストッパ184に対して保持する。
【0152】
図3に示した、第1の実施形態と類似する本発明の第3の実施形態によれば、第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190を固定保持する異なる構成の保持装置500が示されている。
【0153】
図3に示したように、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181は、ストッパをなすショルダ185を含む。ショルダ185は、作動システム300のカバー181と同じ材料で構成される。このショルダ185は、同様に、軸Oに対して垂直な方向に半径方向に延びる第1の作動部品180の突出部分から形成される。この突出部分は、軸Oを中心とする円形の形状である。ショルダ185は、チャンバ3の内部に配置されるように構成される。
【0154】
図3に示したように、ショルダ185は、このショルダに対して、第2の閉鎖部品190の安定した支承面、特に第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192の安定した支承面を保証するのに十分な寸法とされる。
【0155】
変形実施形態では、ストッパが作動システム300のカバー181にはめ込まれ、たとえば溶接により結合される。
【0156】
この第3の実施形態では、第2の閉鎖部品190の環状部分191が、その環状部分191によって第1の作動部品180の作動システム300のカバー181の支持面181’に当接する。この場合、第2の閉鎖部品190は、半径方向の移動なしに第1の作動部品180に配置されることが分かる。そのため、半径方向の支承面Pが形成されることが分かる。図示されているように、半径方向の支承面Pは、チャンバ3の外側から見てストッパに対する第2の閉鎖部品190の当接により形成される。
【0157】
ストッパには、第1の内側固定穴186が形成される。有利には、第1の内側固定穴186が、軸Oを中心として、このストッパの円形の輪郭にわたって規則正しく配分される。第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192には第2の内側固定穴193が形成される。好ましくは、第2の内側固定穴193が、軸Oを中心として、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192に規則正しく配分される。第1の内側固定穴186と第2の内側固定穴193は、第2の閉鎖部品190が第1の作動部品180の周囲に角方向に配置されたとき、互いにそれぞれ向かい合うことができるように配置される。第1の作動部品180に対する第2の閉鎖部品190の角方向の位置では、第1の内側固定穴186と第2の内側固定穴193に同時に内側固定ねじ187を挿入可能である。内側固定ねじ187は、第1の作動部品180と第2の閉鎖部品190とを固定保持する役割を果たす。図示されているように、これらの内側固定ねじ187は、チャンバ3の外側から第1の内側固定穴186と第2の内側固定穴193に挿入される。
【0158】
第1の内側固定穴186、第2の内側固定穴193、および内側固定ねじ187は、一緒に内側固定部材を形成する。
【0159】
第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180は、半径方向の移動なしに、かつ軸方向の移動なしに相対的に配置される。
【0160】
この場合、保持装置500は、一切の自由度を許可しない。第2の閉鎖部品190は、第1の作動部品180に対して動かない。ストッパは、第1の支持面181Aに対して軸方向に引っ込んで円筒形のセンタリング軸受182の解放部を形成し、それによって、ストッパに対する第2の閉鎖部品190の半径方向の支承面Pを可能にするとともに、内側固定ねじ187を、この内側固定ねじ187のヘッドとギヤボックスケース2との間で移動可能にしながら収容するようにされていることに留意されたい。
【0161】
第1の実施形態で説明したのと同様に、第1のシール装置6が第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123とギヤボックスケース2との間に配置される。より詳しくは、第1のシール装置6は、第2の実施形態で説明したような、第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123の半径方向の当接領域123’とギヤボックスケース2の半径方向の接触領域2’との間に配置されるように構成される。第1の実施形態と同様に、この構成では、トランスミッションモジュールを車両のトランスミッションに組み立てる際、第1のシール装置6および第2のシール装置7が、第1の周辺縁123と、第1の作動部品180の円筒形のセンタリング軸受182と、ギヤボックスケース2との間で双方のシール装置をそれぞれ圧縮するような寸法で構成されることを明記する。この第3の実施形態では、第1のシール装置6と第2のシール装置7が、トルク伝達モジュール1とギヤボックスケース2との間で寸法ゼロの系統を保証するように互いに軸方向に寸法決定されることが分かる。有利には、第1のシール装置6が板パッキンである。
図3に示したように、第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123は、第1のシール装置6を介してギヤボックスケース2に当接する。第1の実施形態と同様に、第1のシール装置6は、第2の閉鎖部品190とギヤボックスケース2との間に配置されたスペースから外側への油圧流体の流れを阻止するように構成されることに気付く。
【0162】
この第3の実施形態によれば、保持装置500は、一切の半径方向移動および軸方向移動を可能にしない。しかし、この構成は、異なる製造方法に従ってフランジ12を2つの部分すなわち、第1の作動部品180と第2の閉鎖部品190とで特に形成可能にすることを目的としている。さらに、内側固定ねじ187は、第1の作動部品180に対して第2の閉鎖部品190を固定保持するとともに、フランジ12が単一部品から形成されるときに第2の閉鎖部品190と第1の作動部品180との間の継目領域に形成されうるたわみ点を移動させることができる。内側固定ねじにより組み立てられる2個の部分からなるフランジ12によって、これらのたわみ点が内側固定ねじ側に移動する。好ましくは、第2の閉鎖部品190がシートメタルで形成され、軸方向および半径方向のたわみ性を有する。
【0163】
トルク伝達モジュール1の組立工程の際、モジュール1の固定ねじ116は、特に、第2の閉鎖部品190をその第1の周辺縁123によりギヤボックスケース2に対して保持するように、第1の軸方向応力を及ぼす。トルク伝達モジュール1を、このモジュール1の固定ねじ116によりギヤボックスケース2に組み立てると、第1のシール装置6および第2のシール装置7は、第2の閉鎖部品190の第1の周辺縁123と、円筒形のセンタリング軸受182と、ギヤボックスケース2との間で圧縮されることに気付く。
【0164】
この第3の実施形態の変形実施形態では、内側固定ねじ187が、チャンバ3から、第1の内側固定穴186および第2の内側固定穴193に軸方向に挿入される。
【0165】
この第3の実施形態の変形実施形態では、ストッパがチャンバ3の外側に配置される。この場合、ストッパに対し、チャンバ3から見て、第2の閉鎖部品190の半径方向内縁192の半径方向の支承面Pが形成される。
【0166】
この変形実施形態の1つの特徴によれば、内側固定ねじ187は、チャンバ3から第1および第2の内側固定穴186、193に挿入される。
【0167】
有利には、位置合わせ装置13および内側固定ねじ187とは異なる角方向の位置決め装置600が、第1の作動部品180に対する第2の閉鎖部品190の角方向の位置決めを実施可能である。
【0168】
有利には、角方向の位置決め装置600が、誤動作防止装置として使用可能である。
【0169】
有利には、角方向の位置決め装置600が、第2の閉鎖部品190に形成された角方向の位置決め部を含み、この位置決め部は、第1の作動部品180に形成された角方向の位置決め穴と一致するように構成される。
【0170】
有利には、第2の閉鎖部品190の環状部分191が非円形であり、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181の支持面181’の対応する形状と協働するように構成される。
【0171】
有利には、第2の閉鎖部品190の非円形の形状と、第1の作動部品180の作動システム300のカバー181の支持面181’の対応する形状とが、第2の閉鎖部品190に対する第1の作動部品の回転ロック装置を形成する。
【0172】
もちろん、本発明は、以上に記載された実施例に限定されるものではなく、これらの実施例に対し、本発明の範囲を逸脱することなく多数の修正を実施可能である。特に、本発明の様々な特徴、形状、実施形態および変形実施形態は、それらが互いに矛盾せず排他的でない限り、多様な組み合わせに従って互いに組み合わせ可能である。とりわけ、上記の全ての実施形態および変形実施形態は、互いに組み合わせることができる。