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特許7051873廃棄プラスチックのプロピレンおよびクメンへの変換
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】廃棄プラスチックのプロピレンおよびクメンへの変換
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/66 20060101AFI20220404BHJP
   C07C 15/085 20060101ALI20220404BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20220404BHJP
   C10G 45/00 20060101ALI20220404BHJP
   C10G 35/04 20060101ALI20220404BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20220404BHJP
   C10G 69/14 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C07C2/66
C07C15/085
C10G1/10
C10G45/00
C10G35/04
C10G45/58
C10G69/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019536850
(86)(22)【出願日】2018-01-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2018050048
(87)【国際公開番号】W WO2018127817
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】62/442,679
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ラママーシー,クリシュナ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナズワミー,ラヴィチャンダー
(72)【発明者】
【氏名】ガナパシー・ボートラ,ヴェンカタ・ラマナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラウス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ガンジ,サントシュ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/128033(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0141700(US,A1)
【文献】特表2016-514170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 2/66
C07C 15/085
C10G 1/10
C10G 45/00
C10G 35/04
C10G 45/58
C10G 69/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クメンを製造する方法であって、
(a)熱分解ユニットにおいてプラスチック廃棄物を炭化水素液体流と熱分解ガス流とに変換する工程、
(b)水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記炭化水素液体流の少なくとも一部を水素化処理触媒と接触させることにより炭化水素産物および第一ガス流を生成することを含んでなり、該炭化水素産物がC+炭化水素類を含む工程、
(c)前記炭化水素産物の少なくとも一部を改質ユニットに供給することにより改質ユニット産物、第二ガス流および水素流を生成することを含んでなり、該改質ユニットが改質触媒を含み、および該改質ユニット産物中のC~C芳香族炭化水素類の量が該炭化水素産物中のC~C芳香族炭化水素類の量より大きい工程、
(d)前記改質ユニット産物の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニットに導入することにより非芳香族化合物類リサイクル流および第二芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第二芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む工程、
(e)前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記改質ユニットにリサイクルする工程、
(f)前記第二芳香族化合物類流の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニットに導入することによりベンゼン流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C10芳香族化合物類流およびC11+芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該ベンゼン流がベンゼンを含み、該C芳香族化合物類流がトルエンを含み、および該C芳香族化合物類流がキシレン類およびエチルベンゼンを含む工程、
(g)不均化およびトランスアルキル化ユニットにおいて水素の存在下で前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C10芳香族化合物類流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒に接触させることにより第三芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第三芳香族化合物類流がベンゼンおよびキシレン類を含む工程、
(h)前記C11+芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記水素化処理ユニットに搬送する工程、
(i)前記熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第一ガス流の少なくとも一部、前記第二ガス流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニットに導入することにより第一プロピレン流、第一CおよびC不飽和流および飽和ガス流を生成することを含んでなり、該第一プロピレン流がプロピレンを含み、該第一CおよびC不飽和流がエチレンおよびブチレン類を含み、および該飽和ガス流が水素およびC~C飽和炭化水素類を含む工程、
(j)前記第一CおよびC不飽和流の少なくとも一部をメタセシス反応器に供給することにより第二プロピレン流を生成することを含んでなり、該メタセシス反応器がメタセシス触媒を含み、および該第二プロピレン流がプロピレンを含む工程、ならびに、
(k)前記ベンゼン流の少なくとも一部および前記第一プロピレン流の少なくとも一部および/または前記第二プロピレン流の少なくとも一部をアルキル化ユニットに供給することによりクメンを生成することを含んでなり、該アルキル化ユニットがアルキル化触媒を含む工程、を含む方法。
【請求項2】
前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記熱分解ユニットにリサイクルすることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭化水素産物の少なくとも一部を第一芳香族化合物類分離ユニットに導入して飽和炭化水素類流および第一芳香族化合物類流を生成することをさらに含み、該飽和炭化水素類流がC+飽和炭化水素類を含み、および該第一芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(i)前記飽和炭化水素類流の少なくとも一部を前記改質ユニットに搬送すること、および/または、(ii)前記第一芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記第三芳香族化合物類分離ユニットに搬送すること、をさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第三芳香族化合物類流から前記ベンゼンの少なくとも一部を回収することをさらに含む請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記C芳香族化合物類流から前記キシレン類の少なくとも一部を回収することをさらに含む請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱分解ユニットにおいてプラスチック廃棄物を炭化水素液体流と熱分解ガス流とに変換する前記工程(a)が約450℃未満の温度で行われる請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱分解ユニットが低過酷度熱分解ユニットである請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素産物が、該炭化水素産物の総重量に基づいて約95重量%以上のC-炭化水素類を含む請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
クメンを製造する方法であって、
(a)第一熱分解ユニットにおいて第一プラスチック廃棄物を第一炭化水素液体流と第一熱分解ガス流とに変換する工程、
(b)任意に第一水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記第一炭化水素液体流の少なくとも一部を第一水素化処理触媒と接触させることにより第一炭化水素産物および第一C1-4ガス流を生成することを含んでなり、該第一炭化水素産物がC+炭化水素類を含む工程、
(c)前記第一炭化水素液体流の少なくとも一部および/または前記第一炭化水素産物の少なくとも一部を前記第一熱分解ユニットにリサイクルする工程、
(d)第二熱分解ユニットにおいて第二プラスチック廃棄物を第二炭化水素液体流と第二熱分解ガス流とに変換する工程、
(e)第二水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記第二炭化水素液体流の少なくとも一部を第二水素化処理触媒に接触させることにより第二炭化水素産物および第二C1-4ガス流を生成することを含んでなり、該第二炭化水素産物がC~C炭化水素類を含み、および該第一水素化処理触媒と該第二水素化処理触媒とが同じまたは異なる工程、
(f)前記第二炭化水素産物の少なくとも一部を改質ユニットに供給することにより改質ユニット産物、第三C1-4ガス流および水素流を生成することを含んでなり、該改質ユニットが改質触媒を含み、および該改質ユニット産物中のC~C芳香族炭化水素類の量が該第二炭化水素産物中のC~C芳香族炭化水素類の量より多い工程、
(g)前記改質ユニット産物の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニットに導入することにより非芳香族化合物類リサイクル流および第二芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第二芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む工程、
(h)前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記改質ユニットにリサイクルする工程、
(i)前記第二芳香族化合物類流の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニットに導入することによりベンゼン流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C10芳香族化合物類流およびC11+芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該ベンゼン流がベンゼンを含み、該C芳香族化合物類流がトルエンを含み、および該C芳香族化合物類流がキシレン類およびエチルベンゼンを含む工程、
(j)不均化およびトランスアルキル化ユニットにおいて水素の存在下で前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C10芳香族化合物類流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒と接触させることにより第三芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第三芳香族化合物類流がベンゼンおよびキシレン類を含む工程、
(k)前記C11+芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記第一水素化処理ユニットおよび/または前記第二水素化処理ユニットに搬送する工程、
(l)前記第一熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第二熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第一C1-4ガス流の少なくとも一部、前記第二C1-4ガス流の少なくとも一部、前記第三C1-4ガス流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニットに導入することにより第一プロピレン流、第一CおよびC不飽和流および飽和ガス流を生成することを含んでなり、該第一プロピレン流がプロピレンを含み、該第一CおよびC不飽和流がエチレンおよびブチレン類を含み、および該飽和ガス流が水素およびC~C飽和炭化水素類を含む工程、
(m)前記第一CおよびC不飽和流の少なくとも一部をメタセシス反応器に供給することにより第二プロピレン流を生成することを含んでなり、該メタセシス反応器がメタセシス触媒を含み、および該第二プロピレン流がプロピレンを含む工程、ならびに、
(n)前記ベンゼン流の少なくとも一部、および前記第一プロピレン流の少なくとも一部および/または前記第二プロピレン流の少なくとも一部をアルキル化ユニットに供給することによりクメンを生成することを含んでなり、該アルキル化ユニットがアルキル化触媒を含む工程、を含む方法。
【請求項11】
第一熱分解ユニットにおいて第一プラスチック廃棄物を第一炭化水素液体流と第一熱分解ガス流とに変換する前記工程(a)が約450℃以上の温度で行われる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第二熱分解ユニットにおいて第二プラスチック廃棄物を第二炭化水素液体流と第二熱分解ガス流とに変換する前記工程(d)が約450℃未満の温度で行われる請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記第三芳香族化合物類流から前記ベンゼンの少なくとも一部を回収することをさらに含む請求項1012のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記C芳香族化合物類流から前記キシレン類の少なくとも一部を回収することをさらに含む請求項1013のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱分解、水素化処理、改質、不均化、アルキル化およびオレフィンメタセシスを含むプロセスによる混合プラスチックからの芳香族炭化水素類のような高付加価値産物の製造に関し、クメンが好ましい産物である。
【背景技術】
【0002】
クメンは重要な化学中間体であり、製造されたほとんどすべてのクメンがクメンヒドロペルオキシドに変換され、これは、ビスフェノールAの製造にさらに使用することができるフェノールおよびアセトンのような工業的に重要な他の化学物質の合成における中間体である。クメンを製造するための現在の方法は、石油原料をベンゼンおよびプロピレンに変換し、次いでそれらが反応させられてクメンを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8895790号明細書
【文献】国際公開第2016/009333号
【文献】米国特許出願第15/085445号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石油原料から誘導された中間体から製造されたクメンは高価であり、その結果、ビスフェノールAの製造方法の経済性に影響を与える。したがって、原油以外の供給原料から、たとえば廃棄プラスチックから誘導される供給原料からクメンを製造する方法を開発することが継続的に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示されているのは、クメンを製造する方法であって、(a)熱分解ユニットにおいてプラスチック廃棄物を炭化水素液体流と熱分解ガス流とに変換する工程、(b)水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記炭化水素液体流の少なくとも一部を水素化処理触媒と接触させることにより炭化水素産物および第一ガス流を生成することを含んでなり、該炭化水素産物がC+炭化水素類を含む工程、(c)前記炭化水素産物の少なくとも一部を改質ユニットに供給することにより改質ユニット産物、第二ガス流および水素流を生成することを含んでなり、該改質ユニットが改質触媒を含み、および該改質ユニット産物中のC~C芳香族炭化水素類の量が該炭化水素産物中のC~C芳香族炭化水素類の量より大きい工程、(d)前記改質ユニット産物の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニットに導入することにより非芳香族化合物類リサイクル流および第二芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第二芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む工程、(e)前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記改質ユニットにリサイクルする工程、(f)前記第二芳香族化合物類流の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニットに導入することによりベンゼン流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C10芳香族化合物類流およびC11+芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該ベンゼン流がベンゼンを含み、該C芳香族化合物類流がトルエンを含み、および該C芳香族化合物類流がキシレン類およびエチルベンゼンを含む工程、(g)不均化およびトランスアルキル化ユニットにおいて水素の存在下で前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C10芳香族化合物類流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒に接触させることにより第三芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第三芳香族化合物類流がベンゼンおよびキシレン類を含む工程、(h)前記C11+芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記水素化処理ユニットに搬送する工程、(i)前記熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第一ガス流の少なくとも一部、前記第二ガス流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニットに導入することにより第一プロピレン流、第一CおよびC不飽和流および飽和ガス流を生成することを含んでなり、該第一プロピレン流がプロピレンを含み、該第一CおよびC不飽和流がエチレンおよびブチレン類を含み、および該飽和ガス流が水素およびC~C飽和炭化水素類を含む工程、(j)前記第一CおよびC不飽和流の少なくとも一部をメタセシス反応器に供給することにより第二プロピレン流を生成することを含んでなり、該メタセシス反応器がメタセシス触媒を含み、および該第二プロピレン流がプロピレンを含む工程、ならびに、(k)前記ベンゼン流の少なくとも一部および前記第一プロピレン流の少なくとも一部および/または前記第二プロピレン流の少なくとも一部をアルキル化ユニットに供給することによりクメンを生成することを含んでなり、該アルキル化ユニットがアルキル化触媒を含む工程、を含む方法である。
【0006】
本明細書に開示されるのは、また、クメンを製造する方法であって、(a)第一熱分解ユニットにおいて第一プラスチック廃棄物を第一炭化水素液体流と第一熱分解ガス流とに変換する工程、(b)任意に第一水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記第一炭化水素液体流の少なくとも一部を第一水素化処理触媒と接触させることにより第一炭化水素産物および第一C1-4ガス流を生成することを含んでなり、該第一炭化水素産物がC+炭化水素類を含む工程、(c)前記第一炭化水素液体流の少なくとも一部および/または前記第一炭化水素産物の少なくとも一部を前記第一熱分解ユニットにリサイクルする工程、(d)第二熱分解ユニットにおいて第二プラスチック廃棄物を第二炭化水素液体流と第二熱分解ガス流とに変換する工程、(e)第二水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記第二炭化水素液体流の少なくとも一部を第二水素化処理触媒に接触させることにより第二炭化水素産物および第二C1-4ガス流を生成することを含んでなり、該第二炭化水素産物がC~C炭化水素類を含み、および該第一水素化処理触媒と該第二水素化処理触媒とが同じまたは異なる工程、(f)前記第二炭化水素産物の少なくとも一部を改質ユニットに供給することにより改質ユニット産物、第三C1-4ガス流および水素流を生成することを含んでなり、該改質ユニットが改質触媒を含み、および該改質ユニット産物中のC~C芳香族炭化水素類の量が該第二炭化水素産物中のC~C芳香族炭化水素類の量より多い工程、(g)前記改質ユニット産物の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニットに導入することにより非芳香族化合物類リサイクル流および第二芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第二芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む工程、(h)前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記改質ユニットにリサイクルする工程、(i)前記第二芳香族化合物類流の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニットに導入することによりベンゼン流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C10芳香族化合物類流およびC11+芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該ベンゼン流がベンゼンを含み、該C芳香族化合物類流がトルエンを含み、および該C芳香族化合物類流がキシレン類およびエチルベンゼンを含む工程、(j)不均化およびトランスアルキル化ユニットにおいて水素の存在下で前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C10芳香族化合物類流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒と接触させることにより第三芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第三芳香族化合物類流がベンゼンおよびキシレン類を含む工程、(k)前記C11+芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記第一水素化処理ユニットおよび/または前記第二水素化処理ユニットに搬送する工程、(l)前記第一熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第二熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第一C1-4ガス流の少なくとも一部、前記第二C1-4ガス流の少なくとも一部、前記第三C1-4ガス流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニットに導入することにより第一プロピレン流、第一CおよびC不飽和流および飽和ガス流を生成することを含んでなり、該第一プロピレン流がプロピレンを含み、該第一CおよびC不飽和流がエチレンおよびブチレン類を含み、および該飽和ガス流が水素およびC~C飽和炭化水素類を含む工程、(m)前記第一CおよびC不飽和流の少なくとも一部をメタセシス反応器に供給することにより第二プロピレン流を生成することを含んでなり、該メタセシス反応器がメタセシス触媒を含み、および該第二プロピレン流がプロピレンを含む工程、ならびに、(n)前記ベンゼン流の少なくとも一部、および前記第一プロピレン流の少なくとも一部および/または前記第二プロピレン流の少なくとも一部をアルキル化ユニットに供給することによりクメンを生成することを含んでなり、該アルキル化ユニットがアルキル化触媒を含む工程、を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】クメンを製造するためのシステムの構成を示す図。
図1B】クメンを製造するためのシステムの構成を示す図。
図2A】ベンゼンを製造するためのシステムの構成を示す図。
図2B】ベンゼンを製造するためのシステムの構成を示す図。
図3A】クメンを製造するためのシステムの他の構成を示す図。
図3B】クメンを製造するためのシステムの他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示されるのは、プラスチック廃棄物を処理することによってクメンのような高付加価値産物を製造するための方法およびシステムである。この方法は、低温または高温熱分解によりおよび熱または接触熱分解によって分解または熱分解することができる廃棄プラスチックの変換を含むことができ、熱分解産物の組成はプロセス条件および触媒を変えることによって所望の産物を最大にするように変えることができる。熱分解は、ベンゼン、トルエン、キシレン類(BTX)およびエチルベンゼン(EB)を高収率として、プロピレンおよび/または芳香族化合物類を最大にするように構成することができる。ベンゼン生成を最大にするために、低過酷度および/または高過酷度熱分解から得られた液体をさらに水素化分解および/または水素化処理することにより、重質分の沸点を下げることができる(たとえば、重質分は大部分C10-炭化水素類に分解することができる)とともに、液体オレフィン類を飽和させることもできる。このような水素化分解および/または水素化処理から製造された液体はさらに芳香族化合物抽出装置および/または改質装置に送られて種々の芳香族炭化水素類を製造することができる。ベンゼンを回収することができ、より大きな芳香族化合物類(たとえば、C+芳香族化合物類)は不均化反応によってさらにベンゼンに変換することができる。ベンゼンをさらにプロピレンでアルキル化してクメンを形成することができる。
【0009】
操作実施例以外にまたは他に指示がある場合を除き、明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、反応条件などに関する全ての数または表現は、全ての場合において用語「約」により修飾されると理解されるべきである。様々な数値範囲が本明細書に開示されている。これらの範囲は連続的なので、最小値と最大値の間のすべての値が含まれる。同じ特徴または構成要素を列挙しているすべての範囲の終点は、独立して組み合わせ可能でありおよび列挙された終点を含む。他に明示的に示されない限り、本出願において特定される様々な数値範囲は近似値である。同じ成分または特性を対象とするすべての範囲の端点は、端点を含み、独立して組み合わせることができる。「X以上」という用語は、指定された成分が値X、およびXより大きい値の量で存在することを意味する。
【0010】
用語「a」、「an」および「the」は、量の制限を意味するのではなく、むしろ言及された項目のうちの少なくとも一つの存在を意味する。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の指示対象を含む。
【0011】
本明細書で使用されるとき、「それらの組み合わせ」は、列挙された要素のうちの一つまたは複数を、任意に、列挙されていない同様の要素とともに含み、たとえば、一つまたは複数の指定された構成要素と、任意に、本質的に同じ機能を有する具体的に指定されていない一つまたは複数の他の構成要素との組み合わせを含む。本明細書で使用されるとき、用語「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、反応産物などを含む。
【0012】
本明細書における開示の目的において、特に断りのない限り、「量」という用語は、その特定の組成物の全重量(たとえば、その特定の組成物中に存在する全成分の全重量)に基づく、特定の組成物中の所定の成分の重量%を指す。
【0013】
たとえば混合プラスチック(たとえばプラスチック廃棄物)からクメンを製造する方法を、図1Aおよび図1Bを参照してより詳細に説明する。図1Aおよび図1Bを参照すると、クメン製造システム1000が開示されている。クメン製造システム1000は、一般に、熱分解ユニット100、水素化処理ユニットまたはハイドロプロセッサー200、第一分離ユニットまたは第一分離器300、アルキル化ユニット500、メタセシス反応器800、およびベンゼン製造システム900を含む。本開示を、単一の熱分解ユニット、単一の水素化処理ユニット、単一のアルキル化ユニット、単一のメタセシス反応器、および単一のベンゼン製造システムに関連して詳細に論じるが、クメン製造システムのための任意の適切な構成を使用することができ、クメン製造システムのための任意の所定の構成は、1、2またはそれ以上の熱分解ユニット、1、2またはそれ以上の水素化処理ユニット、1、2またはそれ以上のアルキル化ユニット、1、2またはそれ以上のメタセシス反応器、および1、2またはそれ以上のベンゼン製造システムを含むことができることを理解すべきである。
【0014】
クメンを製造するためのプロセスは、熱分解ユニットにおいてプラスチック廃棄物を炭化水素液体流と熱分解ガス流とに変換する工程を含むことができる。この方法は、廃棄プラスチックを熱分解ユニットに導入して熱分解産物を生成することを含むことができ、ここで熱分解産物は気相と液相とを含む。
【0015】
混合プラスチック(たとえば、廃棄プラスチック)は、熱分解ユニット100に入れるか、または廃棄プラスチック流110を介して熱分解ユニット100に供給することができる。熱分解ユニット100では、廃棄プラスチック流110は熱分解を介して熱分解産物に変換され、その熱分解産物は気相(たとえば、C1~C4ガス、水素(H2)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、塩酸(HCl)ガスなどの熱分解ガス)および液相(たとえば、熱分解液)を含む。
【0016】
廃棄プラスチック流110を介して熱分解ユニット100に装填または供給(loaded into or fed to)することができるプラスチック廃棄物は、混合プラスチック廃棄物のような消費後廃棄プラスチックを含みうる。混合プラスチックは、非塩素化プラスチック(たとえば、ポリオレフィン類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、コポリマーなど)、塩素化プラスチック(たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)など)など、またはそれらの混合物を含みうる。一般に、廃棄プラスチックは長鎖分子またはポリマー炭化水素類を含む。本明細書に開示される廃棄プラスチックは、使用済みタイヤも含む。
【0017】
熱分解ユニット100は、廃棄プラスチックを気相および液相産物に(たとえば同時に)変換するように構成された任意の適切な容器でありうる。容器は、気相、液相、気液相、気固相、液固相、またはスラリー相の操作用に構成することができる。容器は、砂、ゼオライト、アルミナ、接触分解触媒、またはそれらの組み合わせを含む不活性材料または熱分解触媒の一つ以上の床を含みうる。一般に、熱分解触媒は、熱分解ユニット100内で熱分解プロセスを受ける構成要素に熱を伝達することができる。あるいは、熱分解ユニット100は、触媒なしで動作させることができる(たとえば、純粋熱分解)。熱分解ユニット100は、断熱的に、等温的に、非断熱的に、非等温的に、またはそれらの組み合わせで運転することができる。本開示の熱分解反応は、一段階または多段階で実施することができる。たとえば、熱分解ユニット100は、直列に流体接続された二つの反応容器でありうる。
【0018】
熱分解ユニット100が二つの容器を含む構成では、熱分解プロセスは、第一の容器内で行われる第一の段階と、第二の容器内で行われる第一の段階の下流で流体接続される第二の段階とに分けられうる。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りて、第二の段階は、第一の段階から第二の段階へ流れる中間熱分解産物流の熱分解を促進して、第二の段階から流れる熱分解産物を生成することができる。いくつかの構成では、第一の段階は廃棄プラスチックの熱分解を利用し、第二の段階は廃棄プラスチックの熱分解または接触分解を利用して第二の段階から流れる熱分解産物を生じさせることができる。あるいは、第一の段階で廃棄プラスチックの接触分解を利用し、第二の段階で廃棄プラスチックの熱分解または接触分解を利用して第二の段階から流れる熱分解産物を得ることができる。
【0019】
いくつかの構成では、熱分解ユニット100は、混合プラスチックを気相産物および液相産物に変換するように構成された一つまたは複数の装置を含みうる。一つ以上の装置は、上記のような不活性材料または熱分解触媒を含んでもよいし、含まなくてもよい。そのような装置の例には、一つ以上の加熱押出機、加熱回転キルン、加熱タンク型反応器、充填床反応器、バブリング流動床反応器、循環流動床反応器、空の加熱容器、プラスチックが壁に沿って流下してクラッキングする密閉加熱面、オーブンまたは炉に囲まれた容器、またはクラッキングを助長するために加熱面を提供する他の適切な機器が含まれる。
【0020】
熱分解ユニット100は、熱分解するように構成することができ(たとえば、クラッキング)、いくつかの態様においては(たとえば、水素が熱分解ユニット100に添加される場合)、熱分解ユニット100に供給される廃棄プラスチック流110の成分をさらに水素化する。熱分解ユニット100内で起こりうる反応の例としては、一つ以上のノルマルパラフィン類の一つ以上のi-パラフィン類への異性化、一つ以上のシクロパラフィン類の一つ以上のi-パラフィン類への選択的開環、長鎖分子から短鎖分子へのクラッキング、ヘテロ原子含有炭化水素類からのヘテロ原子の除去(たとえば、脱塩素)、プロセスで発生したコークスの水素化、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
熱分解ユニット100の一つ以上の構成において、熱分解段階(廃棄プラスチックの液相および/または気相産物への変換)の全体または一部においてヘッドスペースパージガスを利用することによって、プラスチックの分解を促進する、価値ある産物を生産する、水蒸気分解のための供給原料を提供する、またはそれらの組み合わせを行うことができる。ヘッドスペースパージガスとしては、水素(H)、C~C炭化水素ガス(たとえば、アルカン類、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン)、不活性ガス類(たとえば、窒素(N)、アルゴン、ヘリウム、蒸気)など、またはそれらの組み合わせが挙げられる。廃棄プラスチックが塩素化プラスチックを含む場合、ヘッドスペースパージガスの使用は、熱分解ユニット100内の脱塩素を助ける。ヘッドスペースパージガスを熱分解ユニット100に導入して、熱分解ユニット100内に存在する溶融混合プラスチックに混入した揮発物の除去を促進することができる。
【0022】
たとえば、廃棄プラスチック流110とは無関係に熱分解ユニットに直接供給されるH含有流を介して、水素(H)含有流を熱分解ユニット100に添加することにより、熱分解ユニット環境をHで富化し、熱分解ユニット内で捕捉された塩化水素をストリッピングするのを助け、熱分解溶融物または液体中の水素に富む局所環境を提供する、あるいはそれらの組み合わせを奏することができる。いくつかの態様では、プラスチック供給物による水素処理のために適切な安全対策が組み込まれた状態で、Hを流110とともに熱分解ユニット100に導入することもできる。
【0023】
熱分解ユニット100は、水素の存在下で、または水素とともに、廃棄プラスチック流110の成分のあらゆる反応を促進することができる。不飽和分子(たとえば、オレフィン類)の二重結合への水素原子の付加などの反応が起こる可能性があり、飽和分子(たとえば、パラフィン類、i-パラフィン類、ナフテン類)を生じる。追加的または代替的に、熱分解ユニット100内の反応は、有機化合物の結合の開裂を引き起こすことがあり、その後、反応および/またはヘテロ原子の水素との置換を伴う。
【0024】
熱分解ユニット100における水素の使用は、i)クラッキングの結果としてのコークスを減らす、ii)プロセス中に使用される触媒(もしあれば)を活性状態に保つ、iii)熱分解ユニット100からの熱分解産物が廃棄プラスチック流110に対して実質的に脱塩素化されるように流110からの塩化物の除去を改善し、熱分解ユニット100の下流のユニットにおける塩化物除去要求を最小にする、iv)オレフィン類を水素化する、v)熱分解産物中のジオレフィン類を減少させる、vi)熱分解ユニット100内の廃棄プラスチック流110の同レベルの変換のために低温で熱分解ユニット100を操作するのを助ける、またはi)~vi)の組み合わせの有益な効果を有することができる。
【0025】
熱分解ユニット100における熱分解プロセスは、低過酷度または高過酷度でありうる。低過酷度熱分解プロセスは、約450℃未満、あるいは250℃~450℃、あるいは275℃~425℃、あるいは300℃~400℃の温度で起こる可能性があり、モノオレフィン類およびジオレフィン類が豊富で、芳香族化合物類も多く含まれている熱分解油を生成することができる。高過酷度熱分解プロセスは、約450℃以上、あるいは450℃~750℃、あるいは500℃~700℃、あるいは550℃~650℃の温度で起こる可能性があり、芳香族化合物類およびより多くのガス産物(低過酷度熱分解と比較して)に富んだ熱分解油を生成する。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、熱分解の間により多くのガス(たとえば、プロピレン)を生成することが望ましい場合、低過酷度熱分解法よりも高過酷度熱分解法が好ましい。
【0026】
廃棄プラスチックの熱分解プロセスの一例が米国特許第8895790号明細書(特許文献1)に開示されており、これはその全体が参考として援用される。熱分解プロセスの別の例が、国際公開第2016/009333号(特許文献2)、および2016年3月30日に出願された米国特許出願第15/085445号明細書(特許文献3)に開示されており、その各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
熱分解産物は、熱分解ユニット100からの流出物として回収され、熱分解分離ユニットに運ばれる(たとえば、ポンプ輸送、重力、圧力差などを介して流れる)ことができる。熱分解産物は、熱分解分離ユニットにおいて熱分解ガス流120と炭化水素液体流130とに分離することができ、熱分解ガス流120は熱分解産物の気相の少なくとも一部を含み、炭化水素液体流130は熱分解産物の液相の少なくとも一部を含む。熱分解分離ユニットは、任意の好適な気液分離器、たとえば、蒸気-液体分離器、オイル-ガス分離器、ガス-液体分離器、脱気器、脱液器、スクラバー、トラップ、フラッシュドラム、コンプレッサーサクションドラム、重力分離器、遠心分離器、フィルターベーンセパレーター、ミストエリミネーターパッド、液-ガスコアレッサー、蒸留塔など、またはそれらの組み合わせを含みうる。
【0028】
いくつかの構成では、熱分解分離ユニットは、熱分解産物の一部を炭化水素液体(たとえば、液体産物)に凝縮しながら炭化水素ガスを気相(たとえば、ガス産物)に残した状態で作動する凝縮器でありうる。液体産物は熱分解分離ユニットから炭化水素液体流130中を流れ、ガス産物は熱分解分離ユニットから熱分解ガス流120中を流れる。熱分解ガス流120は、H、C~C炭化水素類、不活性ガス類(たとえば、窒素(N)、アルゴン、ヘリウム、水蒸気、CO、CO)など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0029】
炭化水素液体流130は、パラフィン類、i-パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、芳香族化合物類、有機塩化物類、またはそれらの組み合わせを含むことができる。炭化水素液体流130がパラフィン類、i-パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、および芳香族化合物類を含むとき、その流れはPIONA流と呼ぶことができ、炭化水素液体流130がパラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、および芳香族化合物類を含むとき、その流れはPONA流と呼ぶことができる。いくつかの態様では、炭化水素液体流130はプラスチック熱分解油および/またはタイヤ熱分解油を含むことができる。
【0030】
本明細書で論じられるように、本明細書に開示される方法の態様は、分子、特に炭化水素液体流130の重質炭化水素分子の水素化分解を企図する。このように、炭化水素液体流130の少なくとも一部は重炭化水素分子(たとえば、熱分解油の重質末端とも呼ばれる)を含むと考えられる。一つの態様では、炭化水素液体流130中の重質炭化水素分子の量は、炭化水素液体流130の全重量に基づいて10重量%未満でありうる。あるいは、炭化水素液体流130中の重質炭化水素分子の量は、炭化水素液体流130の全重量に基づいて10重量%~90重量%でありうる。本明細書において後により詳細に記載されるように、重質炭化水素分子は、パラフィン類、i-パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、芳香族炭化水素類、またはそれらの組み合わせを含みうる。いくつかの態様では、重質炭化水素分子はC16以上の炭化水素類を含みうる。炭化水素液体流130中の5、10、15、20、25、30重量%、またはそれ以上の重質炭化水素分子が水素化処理ユニット200内で水素化分解される。
【0031】
炭化水素液体流130中に存在してもよいパラフィン類の例としては、限定されるものではないが、C~C22のn-パラフィン類およびi-パラフィン類が挙げられる。パラフィン類は、炭化水素液体流130の全重量に基づいて10重量%未満の量で炭化水素液体流130中に存在することができる。あるいは、パラフィン類は、炭化水素液体流130中に、炭化水素液体流130の全重量に対して10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、またはそれ以上の量で存在することができる。特定の炭化水素液体流は炭素数22までのパラフィン類を含むが、本開示はパラフィン類の適切な範囲の上限として炭素数22に限定されず、そのパラフィン類はより高い炭素数、たとえば、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、およびそれ以上を含むことができる。いくつかの態様では、炭化水素液体流130中のパラフィン類の少なくとも一部は重質炭化水素分子の少なくとも一部を含む。
【0032】
炭化水素液体流130中に存在しうるオレフィン類の例としては、C~C10オレフィン類およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。熱分解ユニット100における水素化反応のために水素が熱分解ユニット100に導入される場合、オレフィン類は、炭化水素流130の全重量に基づいて10重量%未満の量で炭化水素液体流130中に存在しうる。あるいは、オレフィン類は、炭化水素液体流130中に、炭化水素液体流130の合計重量に基づいて5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、またはそれ以上の量で存在することができる。特定の炭化水素流は100までの炭素数のオレフィン類を含むが、本開示はオレフィン類の適切な範囲の上限値としての炭素数100に限定されず、オレフィン類はより高い炭素数、たとえば11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、およびそれ以上を含む。いくつかの態様では、炭化水素液体流130中の一つまたは複数のオレフィン類の少なくとも一部は、重質炭化水素分子の少なくとも一部を含む。あるいは、炭化水素液体流130中の重質炭化水素分子はいずれもオレフィン類ではない。
【0033】
いくつかの態様では、炭化水素液体流130はオレフィン類を含まず、たとえば炭化水素液体流130は実質的にオレフィン類を含まない。いくつかの態様では、炭化水素液体流130は、1、0.1、0.01、または0.001重量%未満のオレフィン類を含む。
【0034】
炭化水素液体流130中に存在しうるナフテン類の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、およびシクロオクタンが挙げられるが、これらに限定されない。ナフテン類は、炭化水素液体流130の全重量に基づいて、10重量%未満の量で炭化水素液体流130中に存在することができる。あるいは、ナフテン類は、炭化水素液体流130の全重量に基づいて10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、またはそれ以上の量で炭化水素液体流130中に存在することができる。特定の炭化水素流は炭素数8までのナフテン類を含むが、本開示はナフテン類の適切な範囲の上限として炭素数8に限定されず、ナフテン類はより高い炭素数、たとえば9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、およびそれ以上を含むことができる。いくつかの態様では、炭化水素液体流13中のナフテン類の少なくとも一部は重質炭化水素分子の少なくとも一部を含む。
【0035】
炭化水素液体流130は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、およびそれ以上の炭素数を有する芳香族炭化水素類を含むことができる。一つの態様では、芳香族炭化水素類の炭素数は22程度でありうる。炭化水素液体流130の一部として本開示での使用に適した芳香族炭化水素類の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン類、エチルベンゼン、プロピルベンゼン類、トリメチルベンゼン類、テトラメチルベンゼン、ブチルベンゼン、ジメチルナフタレン、ビフェニルなど、またはそれらの組み合わせが挙げられる。芳香族炭化水素類は、炭化水素液体流130中に、炭化水素液体流130の全重量に基づいて5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%、40重量%、50重量%、60重量%、またはそれ以上の量で存在することができる。いくつかの態様では、炭化水素液体流130中の芳香族炭化水素類の少なくとも一部は重質炭化水素分子の少なくとも一部を含む。
【0036】
クメンを製造する方法は、水素化処理ユニット200において水素の存在下で炭化水素液体流130の少なくとも一部を水素化処理触媒に接触させることにより炭化水素産物流210および第一ガス流220を生成する工程を含むことができ、該炭化水素産物流210はC+炭化水素類を含む。第一ガス流220は、H、C~C炭化水素類、不活性ガス類(たとえば、窒素(N)、アルゴン、ヘリウム、水蒸気、CO、CO)など、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0037】
水素化処理ユニット200は、水素化分解ユニット、水素化熱分解モードで操作される接触分解ユニット、水素化分解モードで操作される流動接触分解ユニット、水素化処理装置など、またはそれらの組み合わせのような任意の適切な水素化処理反応器でありうる。水素化処理ユニット200は、長鎖分子(たとえば、炭化水素液体流130に含まれる重質炭化水素分子)を水素化分解し、水素化処理ユニット200に供給された炭化水素液体流130の成分を水素化および脱塩素化(流130が塩化物を含む場合)するように構成されている。水素化処理ユニット200において、炭化水素液体流130が水素の存在下で水素化処理触媒と接触されて炭化水素産物流210が生成される。炭化水素液体流130、H2流またはそれらの組み合わせを段階的に添加してまたは添加せずに、炭化水素液体流130を、上向流、下向流、半径方向流またはそれらの組み合わせで、水素化処理触媒と接触させることができると考えられる。
【0038】
水素化処理ユニット200は、本明細書に開示される水素化処理触媒を含むように構成された任意の容器であってもよい。容器は、気相、液相、気液相、気液固相、またはスラリー相の操作用に構成することができる。水素化処理ユニット200は、固定床、流動床、移動床、沸騰床、スラリー床、またはそれらの組み合わせとして構成された水素化処理触媒の一つ以上の床を含むことができる。水素化処理ユニット200は、断熱的、等温的、非断熱的、非等温的、またはそれらの組み合わせで操作してもよい。一つの態様では、水素化処理ユニット200は一つまたは複数の容器を含むことができる。
【0039】
水素化処理ユニット200は、水素の存在下または水素とともに、炭化水素液体流130の構成要素の任意の反応を促進することができる。反応は、不飽和分子(たとえば、オレフィン類、芳香族化合物類)の二重結合への水素原子の付加として起こる可能性があり、飽和分子(たとえば、パラフィン類、i-パラフィン類、ナフテン類)を生じる。さらに、水素化処理ユニット200内での反応は、有機化合物の結合の開裂を引き起こし、炭化水素分子の二つ以上のより小さな炭化水素分子への「クラッキング」をもたらし、またはその後の反応および/またはヘテロ原子の水素での置換をもたらす。水素化処理ユニット200で起こりうる反応の例としては、オレフィン類の水素化、ヘテロ原子含有炭化水素類からのヘテロ原子の除去(たとえば、脱塩素化)、長鎖パラフィン類またはi-パラフィン類の短鎖炭化水素分子への水素化分解、芳香族炭化水素類からより小さい環式または非環式炭化水素類への水素化分解、一種以上の芳香族化合物類から一種以上のシクロパラフィン類への変換、一種以上のノルマルパラフィン類から一種以上のi-パラフィン類への異性化、一種以上のシクロパラフィン類から一種以上のi-パラフィン類への選択的開環、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
一つの態様では、水素の存在下で炭化水素液体流130を水素化処理触媒と接触させると、C~CガスおよびC+(C以上の重質)液体炭化水素類が生じる。廃棄プラスチック流110が塩化物を含有するとき、本明細書に記載されるような水素化処理触媒を用いた脱塩素化を、塩素吸着剤を使用することなく、脱塩素剤として機能するのに有効な量のNaCOを添加することなく、またはその両方の条件で、水素化処理ユニット200内で行いうると考えられる。
【0041】
水素化処理触媒は、オレフィン類および芳香族炭化水素類の水素化(たとえば、飽和化)に使用される任意の触媒(たとえば、市販の水素化処理触媒)であってもよい。水素化処理触媒は、アルミナ担体上のコバルトおよびモリブデン触媒(Co-Mo触媒)、アルミナ担体上のニッケルおよびモリブデン触媒(Ni-Mo触媒)、アルミナ担体上のタングステンおよびモリブデン触媒(W-Mo触媒)、アルミナ担体上の酸化コバルトおよび酸化モリブデン、アルミナ担体上の酸化ニッケルおよび酸化モリブデン、アルミナ担体上の酸化タングステンおよび酸化モリブデン、アルミナ担体上の硫化コバルトおよび硫化モリブデン、アルミナ担体上の硫化ニッケルおよび硫化モリブデン、アルミナ担体上の硫化タングステンおよび硫化モリブデン、一種以上の金属を含むゼオライト等、またはそれらの組み合わせ、を含むことができる。水素化処理触媒としての使用に適した他の触媒としては、アルミナ担体上の白金およびパラジウム触媒(Pt-Pd触媒)、スラリー加工に適した硫化ニッケル、スラリー加工に適した硫化モリブデンなど、またはそれらの組み合わせが挙げられる。ゼオライトは、ZSM-5、ZSM-11、Y、高シリカY、USYなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。ゼオライトの一種以上の金属の各金属は、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、銅、マグネシウム、スズ、鉄、亜鉛、タングステン、バナジウム、ガリウム、カルシウム、マンガン、ルテニウムおよびレニウムからなる群より独立して選択することができる。
【0042】
炭化水素液体流130が一種以上の硫化物および一種以上の塩化物化合物を含有する構成では、炭化水素液体流130を水素化処理触媒と接触させることは、硫化によって水素化処理触媒を活性化し、塩素化によって水素化処理触媒を酸性化するように作用する。水素化処理触媒を、一種以上の硫化物、一種以上の塩化物化合物、またはその両方を含有する炭化水素液体流130と連続的に接触させると、触媒活性を連続的に維持することができる。本明細書の開示の目的において、水素化処理触媒に関する用語「触媒の活性」または「触媒活性」は、水素化分解反応、水素化脱塩素化反応などの水素化処理反応を触媒する水素化処理触媒の能力を指す。
【0043】
たとえば、炭化水素液体流130とは無関係に水素化処理ユニットに直接供給される流れを介して、水素流を水素化処理ユニット200に添加して、水素化処理ユニット環境にHを富化させることができる。さらにまたは代替的に、水素化処理ユニット200に入る前にH含有流を炭化水素液体流130に添加することができる。水素化処理ユニット200への水素添加速度は、一般に、本明細書に開示の水素対炭化水素類比を達成するのに充分である。
【0044】
開示された水素化処理ユニット200は様々な処理条件で運転することができる。たとえば、水素の存在下で炭化水素液体流130を水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理ユニット200内で250℃~600℃、あるいは275℃~550℃、あるいは300℃~500℃の温度で起こりうる。水素化処理ユニット200内の温度は、供給原料(たとえば、炭化水素液体流130)予熱炉および/または供給原料-水素化処理ユニット流出物熱交換器を使用することによって達成することができる。炭化水素液体流130を水素の存在下で水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理ユニット200において1barg~200barg、あるいは10barg~150barg、あるいは20barg~60bargの圧力で起こりうる。炭化水素液体流130を水素の存在下で水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理ユニット200において0.1/hr~10/hr、あるいは1/hr~3/hrの重量時間空間速度(WHSV)で起こりうる。炭化水素液体流130を水素の存在下で水素化処理触媒と接触させることは、水素化処理ユニット200において10NL/L~3000NL/L、あるいは200NL/L~800NL/Lの水素対炭化水素類(H/HC)流量比で起こりうる。
【0045】
いくつかの構成では、水素化処理ユニット200は、精製操作で使用される穏やかな水素化分解ユニットなどの穏やかな水素化分解ユニットであってよく、水素化処理ユニット200は100bargまでの圧力および430℃までの温度で操作できる。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りて、水素化処理ユニット200は、水素消費を節約し、単環式芳香族化合物類(および飽和の二環式芳香族化合物類および多環式芳香族化合物類、ならびにオレフィン類のみ)を保存するために、より低い圧力で運転することができる。一般に、穏やかな水素化分解ユニットは、穏やかな水素化分解ユニットに導入された液体オレフィン類を飽和させることができ、および選択的分解および水素化によって重質分を減らすことができ、その結果、単環芳香族化合物類の少なくとも一部を保存できる。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、プラスチック熱分解油は石油残留物と比較して水素含有量が豊富であるので、100barg未満のより低い圧力で水素化処理を行うことが可能である。さらに、当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、100bargを超えるより高い圧力もプラスチック熱分解油とともに使用することができる。
【0046】
いくつかの態様では、水素化処理ユニット200はさらに水素化脱アルキル化ユニットを含むことができ、ここで水素化脱アルキル化ユニットは水素化脱アルキル化触媒を含むことができる。水素化脱アルキル化ユニットは、水素化分解ユニット、水素化分解モードで操作される接触分解ユニット、水素化分解モードで操作される流動接触分解ユニット、水素化処理ユニット、水素化脱アルキル化反応器など、またはそれらの組み合わせのような任意の適切な水素化処理装置でありうる。水素化脱アルキル化ユニットは、水素化脱アルキル化するように、およびいくつかの構成では、炭化水素液体流130の成分をさらに水素化分解、脱塩素化および水素化するように構成することができる。
【0047】
水素化脱アルキル化ユニットは、本明細書に開示される水素化脱アルキル化触媒を収容するように構成された任意の容器でありうる。容器は、気相、液相、気液相、気固相、気液固相、またはスラリー相の操作用に構成することができる。水素化脱アルキル化ユニットは、固定床、流動床、移動床、沸騰床、スラリー床、またはそれらの組み合わせとして構成される水素化脱アルキル化触媒の一つ以上の床を含みうる。水素化脱アルキル化ユニットは、断熱的に、等温的に、非断熱的に、非等温的に、またはそれらの組み合わせで運転することができる。一つの態様では、水素化脱アルキル化ユニットは一つまたは複数の容器を含みうる。
【0048】
水素化脱アルキル化ユニットは、水素の存在下または水素とともに炭化水素液体流130の成分の任意の適切な反応を促進しうる。水素化脱アルキル化ユニットにおける反応は、C+芳香族炭化水素類の水素化脱アルキル化反応を含み、ここで、水素の存在下でのC+芳香族炭化水素類は、低分子量芳香族炭化水素類(たとえば、C6-8芳香族炭化水素類)およびアルカンを形成する。たとえば、トリメチルベンゼン類は水素化脱アルキル化反応を受けてキシレン類およびメタンを生成することができる。不飽和分子(たとえば、オレフィン類、芳香族化合物類)の二重結合への水素原子の付加など、他の反応が水素化脱アルキル化ユニットにおいて起こる可能性があり、飽和分子(たとえば、パラフィン類、i-パラフィン類、ナフテン類)をもたらす。さらに、水素化脱アルキル化ユニット中の反応は、有機化合物の結合の切断を引き起こし、炭化水素分子の二つ以上のより小さい炭化水素分子への「クラッキング」をもたらし、または後続の反応および/またはヘテロ原子の水素による置換をもたらす。水素化脱アルキル化ユニット中で起こりうる反応の例には、C+芳香族炭化水素類の水素化脱アルキル化、オレフィン類の水素化、ヘテロ原子含有炭化水素類からのヘテロ原子の除去(たとえば脱塩素)、高分子量のパラフィン類またはi-パラフィン類の低分子量の炭化水素分子への水素化分解、芳香族炭化水素類からより小さい環式または非環式炭化水素類への水素化分解、一種以上の芳香族化合物類から一種以上のシクロパラフィン類への変換、一種以上のノルマルパラフィン類から一種以上のi-パラフィン類への異性化、一種以上のシクロパラフィン類から一種以上のi-パラフィン類への選択的開環、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
水素化脱アルキル化触媒は、水素化処理触媒について記載された触媒のような、オレフィン類および芳香族炭化水素類の水素化(たとえば、飽和)に使用される任意の適切な触媒でありうる(たとえば、市販の水素化処理触媒)。さらに、水素化脱アルキル化触媒は、アルミナ担体上の酸化クロム、シリカ担体上の酸化クロム、アルミナ担体上の酸化モリブデン、シリカ担体上の酸化モリブデン、アルミナ担体上の白金、シリカ担体上の白金、アルミナ担体上の白金酸化物、シリカ担体上の白金酸化物など、またはそれらの組み合わせのような、任意の適切な水素化脱アルキル化触媒(たとえば、市販の水素化脱アルキル化触媒)でありうる。
【0050】
炭化水素産物流210はC+液体炭化水素類を含み、C+液体炭化水素類は重質炭化水素分子を含む。水素化処理ユニット200において水素の存在下で炭化水素液体流130を水素化処理触媒と接触させる工程の間の、炭化水素液体流からの重質炭化水素分子の少なくとも一部の水素化分解が原因で、炭化水素産物流210中の重質炭化水素分子の量は、炭化水素液体流130中の重質炭化水素分子の量より少ない。
【0051】
いくつかの態様では、炭化水素産物流210は、炭化水素産物流210の全重量に基づいて約90重量%以上、あるいは約92.5重量%以上、あるいは約95重量%以上のC10-炭化水素類を含むことができる。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、水素化処理ユニット200の内部の条件は、生成された炭化水素産物がほとんどC10-炭化水素類を含むようなものでありうる。
【0052】
他の態様では、炭化水素産物流210は、炭化水素産物流210の総重量に基づいて約95重量%以上、あるいは約96重量%以上、あるいは約97.5重量%以上のC-炭化水素類(たとえば、C~C炭化水素類)を含むことができる。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、水素化処理ユニット200の内部の条件を、製造された炭化水素産物が大部分C-炭化水素類(たとえば、C~C炭化水素類)を含むようにすることができる。
【0053】
炭化水素産物流210は、炭化水素液体流130のオレフィン含有量より低いオレフィン含有量によって特徴付けることができる。いくつかの態様において、炭化水素産物流210は、炭化水素産物流210の総重量に基づいて、約1、0.1、0.01または0.001重量%未満のオレフィン含有量によって特徴付けることができる。
【0054】
炭化水素産物流210は、炭化水素液体流130の沸点より低い沸点によって特徴付けることができる。一つの態様では、約97重量%以上、あるいは98重量%、あるいは99.9重量%の炭化水素産物流210が370℃未満、あるいは約350℃未満の沸点を特徴とする。いくつかの態様では、炭化水素産物流210は約370℃未満の沸点を特徴としている。
【0055】
炭化水素産物流210は、炭化水素液体流130の塩化物含有量より低い塩化物含有量を特徴とすることができ、塩化物含有量の減少は、水素化処理ユニット200において水素の存在下で炭化水素液体流130を水素化処理触媒に接触させる工程の間の炭化水素液体流130の脱塩化水素から生じる。炭化水素産物流210は、炭化水素産物流210の総重量に基づいて約10重量部パーミリオン(ppmw)未満、あるいは約5ppmw未満、あるいは約3ppmw未満の量で一種以上の塩化物化合物類を含むことができる。
【0056】
クメンを製造する方法は、炭化水素産物流210の少なくとも一部をベンゼン製造システム900に供給して、ベンゼン流920、キシレン類流930および第二ガス流42を生成する工程を含むことができ、ベンゼン流920はベンゼン75を含み、キシレン類流930はキシレン類76を含む。
【0057】
図2Aおよび図2Bを参照すると、ベンゼン製造システム900が開示されている。ベンゼン製造システム900は、一般に、任意の第一芳香族化合物類分離ユニットまたは第一芳香族化合物類分離器30、改質ユニット40、第二芳香族化合物類分離ユニットまたは第二芳香族化合物類分離器50、第三芳香族化合物類分離ユニットまたは第三芳香族化合物類分離器60、ならびに不均化およびトランスアルキル化ユニット(たとえば、Tatorayユニット)70を備える。
【0058】
クメンを製造する方法は、任意に、炭化水素産物流の少なくとも一部210aを第一芳香族化合物類分離ユニット30に導入して飽和炭化水素類流31および第一芳香族化合物類流32を生成する工程を含むことができ、飽和炭化水素類流31はC+飽和炭化水素類を含み、および第一芳香族化合物類流32はC+芳香族炭化水素類を含む。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、飽和炭化水素類流31のC+飽和炭化水素類は、(i)C+芳香族炭化水素類を排除し、(ii)C+オレフィン類を除外し、および(iii)C+パラフィン類、イソパラフィン類およびナフテン類を含む。第一芳香族化合物類流32は、C芳香族炭化水素類、C芳香族炭化水素類、C芳香族炭化水素類、C芳香族炭化水素類、C10芳香族炭化水素類、およびそれらの組み合わせを含む。
【0059】
第一芳香族化合物類分離ユニット30は、炭化水素産物流210を飽和炭化水素類流31と第一芳香族化合物類流32とに分離するように構成された任意の適切な分離ユニットを含むことができる。たとえば、第一芳香族化合物類分離ユニット30は、選択的吸着、選択的吸収、抽出蒸留など、またはそれらの組み合わせを採用することができる。
【0060】
クメンを製造する方法は、炭化水素産物流210の少なくとも一部および/または飽和炭化水素類流31の少なくとも一部を改質ユニット40に供給して改質ユニット産物流41、第二ガス流42および水素流43を生成する工程を含むことができ、該改質ユニット40は改質触媒を含む。一つの態様では、水素流43の少なくとも一部を水素化処理ユニット200および/または熱分解ユニット100にリサイクルすることができる。第二ガス流42は、HおよびC~C炭化水素類を含むことができる。
【0061】
改質ユニット40は、連続接触改質装置(CCR)、半再生改質装置、AROMAXユニットなど、またはそれらの組み合わせのような任意の適切な芳香族化装置を含むことができる。芳香族化ユニットは、一般に、特定の芳香族化合物類の供給源としてのナフテン類およびパラフィン類から芳香族化合物類を製造する。いくつかの態様では、改質ユニット40への供給物(たとえば、炭化水素産物流210および/または飽和炭化水素類流31)は、一般に、ベンゼン、トルエンおよびキシレン類のようなC~C芳香族炭化水素類の生産を最大にするために、C~C10化合物類あるいはC~C化合物類に制限されうる。一つの態様では、改質ユニット産物流41中のC~C芳香族炭化水素類の量は、炭化水素産物流210および/または飽和炭化水素類流31中のC~C芳香族炭化水素類の量よりも多い。
【0062】
改質ユニット40は、改質触媒の存在下で、炭化水素産物流210および/または飽和炭化水素類流31の成分の任意の適切な反応を促進しうる。改質ユニット40における反応は、ナフテン類の芳香族化合物類への脱水素化、パラフィン類およびナフテン類の異性化、パラフィンの芳香族化合物類への脱水素環化など、またはそれらの組み合わせを含む。
【0063】
改質触媒は、炭化水素類芳香族化に使用される任意の適切な触媒でありうる。改質触媒は、単金属(たとえば、Pt)、二金属(Pt、Re)、多金属(たとえば、Pt、Re、Pd、Niなど)でありうる。改質触媒の金属は一般に、脱水素化および水素化を促進し、ならびに脱水素環化および異性化に寄与する。改質触媒は酸活性を有することができる(たとえば、アルミナベースに組み込まれたハロゲン/シリカ)。酸活性は、異性化、水素化クラッキングの初期段階、ならびにパラフィン類脱水素環化への関与を促進する。
【0064】
改質ユニット産物流41は、約60重量%、70重量%または80重量%以上の芳香族炭化水素類、および約40重量%、30重量%または20重量%未満の非芳香族類炭化水素類(たとえば、パラフィン類、イソパラフィン類、ナフテン類)を含むことができる。
【0065】
クメンを製造する方法は、改質ユニット産物流41の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニット50に導入して非芳香族化合物類リサイクル流51および第二芳香族化合物類流52を生成する工程を含むことができ、該第二芳香族化合物類流52は、C+芳香族炭化水素類を含む。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、非芳香族化合物類リサイクル流51は、(i)C+芳香族炭化水素類を排除し、(ii)C+パラフィン類、イソパラフィン類およびナフテン類を含む。第二芳香族化合物類流52は、C芳香族炭化水素類、C芳香族炭化水素類、C芳香族炭化水素類、C芳香族炭化水素類、C10芳香族炭化水素類、およびそれらの組み合わせを含む。
【0066】
第二芳香族化合物類分離ユニット50は、改質ユニット産物流41を非芳香族化合物類リサイクル流51と第二芳香族化合物類流52とに分離するように構成された任意の適切な分離ユニットを含むことができる。たとえば、第二芳香族化合物類分離ユニット50は、選択的吸着、選択的吸収、抽出蒸留など、またはそれらの組み合わせを採用することができる。
【0067】
いくつかの態様では、非芳香族化合物類リサイクル流51の少なくとも一部を改質ユニット40にリサイクルすることができる。他の態様では、非芳香族化合物類リサイクル流51の少なくとも一部を熱分解ユニット100および/または水素化処理ユニット200にリサイクルすることができる。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、所望の産物が液体芳香族類である場合、非芳香族化合物類リサイクル流51を改質ユニット40にリサイクルすることが好ましい。さらに、当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、熱分解ガス流120および/または第一ガス流220のようなガス産物を最大化することが望ましい場合、非芳香族化合物類リサイクル流51を熱分解ユニット100および/または水素化処理ユニット200にそれぞれリサイクルすることが好ましい。
【0068】
クメンを製造する方法は、第一芳香族化合物類流32の少なくとも一部および/または第二芳香族化合物類流52の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニット60に導入して第一C芳香族化合物類流(たとえば、ベンゼン流)61、C芳香族化合物類流62、C芳香族化合物類流63、C芳香族化合物類流64、C10芳香族化合物類流65、およびC11+芳香族化合物類流66を生成する工程を含むことができ、ここで、ベンゼン流61はベンゼン75を含み、C芳香族化合物類流62はトルエンを含み、およびC芳香族化合物類流63はキシレン類およびエチルベンゼン(EB)を含む。C芳香族化合物類流64は、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼンなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。C10芳香族化合物類流65は、テトラメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、メチルプロピルベンゼンなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0069】
第三芳香族化合物類分離ユニット60は、第一芳香族化合物類流32および/または第二芳香族化合物類流52をその成分(たとえば、流61、62、63、64、65および66)に分離するように構成された任意の適切な分離ユニットを含みうる。いくつかの態様では、第三芳香族化合物類分離ユニット60は一つまたは複数の蒸留塔を含むことができる。一般に、一つ以上の蒸留塔は、それらの沸点に基づいて、第一芳香族化合物類流32および/または第二芳香族化合物類流52の成分を分離することができる。
【0070】
いくつかの態様では、C11+芳香族化合物類流66の少なくとも一部を水素化処理ユニット200に搬送することができる。他の態様では、C11+芳香族化合物類流の少なくとも一部を熱分解ユニット100に搬送することができる。C11+芳香族化合物類流66は、メチルブチルベンゼン、ジエチルメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、ジメチルナフタレンなど、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0071】
クメンを製造する方法は、C芳香族化合物類流63からキシレン類の少なくとも一部を回収することをさらに含むことができる。いくつかの態様では、クメンを製造する方法は、たとえば、抽出蒸留、分別結晶化、モレキュラーシーブを用いる選択的吸着、またはそれらの組み合わせにより、C芳香族化合物類流63を第一キシレン類流83とEB流84とに分離することをさらに含むことができる。第一キシレン類流83はキシレン類76(たとえば、p-キシレン)を含むことができる。EB流84は、EBとo-キシレンおよびm-キシレンとを含むことができる。
【0072】
いくつかの態様では、異性化ユニットにおいてEB流84の少なくとも一部をさらに異性化してキシレン類(たとえば、p-キシレン)を生成することができ、ここで異性化ユニットは異性化触媒を含む。異性化触媒は酸触媒、たとえば二官能性触媒を含むことができる。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、二官能性異性化触媒は、一官能性異性化触媒よりもコーキングによる失活に対してより安定である。二官能性異性化触媒は、ゼオライト(たとえば、ZSM-5、モルデナイト)およびアルミナまたはシリカ-アルミナ上に担持された貴金属(たとえば、Pt)を含みうる。触媒コーキングを回避するために異性化装置に水素を導入することができる。
【0073】
他の態様では、脱アルキル化ユニットにおいてEB流84の少なくとも一部をさらに脱アルキル化してベンゼンを生成することができ、ここで、脱アルキル化ユニットは脱アルキル化触媒を含む。EB脱アルキル化の主産物はベンゼン(たとえば、ベンゼン75)であり、脱アルキル化触媒は一般に金属担持ゼオライトを含み、ここで金属はPt、Pd、Ni、Moなどでありうる。
【0074】
クメンを製造するための方法は、不均化およびトランスアルキル化ユニット70において水素の存在下で、C芳香族化合物類流の少なくとも一部62a、C芳香族化合物類流64の少なくとも一部、C10芳香族化合物類流65の少なくとも一部、EB流84の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒に接触させることにより第三芳香族化合物類流71を生成する工程を含むことができ、第三芳香族化合物類流71はベンゼンおよびキシレン類を含む。一つの態様では、不均化およびトランスアルキル化ユニット70は、Tatorayユニット、すなわちTatorayプロセス(たとえば、不均化およびトランスアルキル化プロセス)を収容する不均化およびトランスアルキル化ユニットを含む。
【0075】
たとえば、キシレン類(たとえば、パラキシレン)の生成を最大にするために、トルエンおよびC芳香族化合物類、場合によってはC10芳香族化合物類を選択的にベンゼンおよびキシレン類に変換するために、不均化およびトランスアルキル化プロセス(たとえば、Tatorayプロセス)が一般的に用いられる。Tatorayプロセスは、トルエンおよび重質芳香族化合物類から混合キシレン類を生成する。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、Tatorayプロセスは一般に化学平衡をベンゼンの生成からキシレン類の生成にシフトさせる。
【0076】
Tatorayプロセスにおける二つの主な反応は、不均化およびトランスアルキル化である。本明細書における開示の目的のために、トルエンのベンゼンおよびキシレン類への変換は、「不均化」(たとえば、トルエンの不均化)と呼ぶことができる。さらに、本明細書の開示の目的のために、「トランスアルキル化」という用語は、トルエンとC芳香族化合物類との、場合によってはC10芳香族化合物類との混合物のキシレン類への変換を指す。Tatorayプロセス反応は、触媒上でのコークス形成を最小限に抑えるように水素雰囲気中で行われる。Tatorayプロセスでは無視できるほどの環破壊があるため、水素の消費はほとんど無い。Tatorayプロセスにおける水素消費の大部分は、Tatorayユニット(たとえば、不均化およびトランスアルキル化反応ユニット70)への供給物中の非芳香族類不純物の分解に起因しうる。一般に、Tatorayプロセスにおける反応条件は、約350℃~約525℃の温度、約10気圧から約50気圧の圧力、および約5:1から約20:1の炭化水素類と水素とのモル比を含みうる。
【0077】
一つの態様では、クメンを製造するための方法は、水素流43の少なくとも一部を不均化およびトランスアルキル化ユニット70に搬送することをさらに含むことができる。
【0078】
本開示での使用に適した不均化およびトランスアルキル化触媒の非限定的な例には、ゼオライト、Si/Al比が約10以上であることを特徴とするZSM-5、金属を担持したZSM-5(ここで金属は白金、モリブデン、マグネシウム、レニウム、またはそれらの組み合わせを含む)、モルデナイト、酸化ビスマス担持モルデナイト、ベータゼオライト、MCM-22など、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0079】
クメンを製造する方法は、第三芳香族化合物類流71からベンゼンの少なくとも一部を回収することをさらに含むことができる。一つの態様では、第三芳香族化合物類流71は、さらに、たとえば蒸留により、ベンゼン75を含む第二C芳香族化合物類流(たとえばベンゼン流)73とキシレン類76を含む第二キシレン類流72とに分離することができる。いくつかの態様では、第二キシレン類流は、p-キシレン、o-キシレンおよびm-キシレンを含む。第二キシレン類流は、たとえば抽出蒸留、分別結晶化、モレキュラーシーブを使用する選択的吸着、またはそれらの組み合わせによって、p-キシレン画分、ならびにo-キシレンおよびm-キシレン画分にさらに分離することができる。
【0080】
本明細書の開示の目的のために、ベンゼン流920(図1B)は、第一C芳香族化合物類流61および/または第二C芳香族化合物類流73(図2Aおよび図2B)を含むことができ、また、ベンゼン製造システム900から回収された他のベンゼン、たとえばEB脱アルキル化により製造されたベンゼンを含むことができる。さらに、本明細書の開示の目的のために、キシレン類流930(図1B)は、第一キシレン類流83および/または第二キシレン類流72(図2A)、ならびにベンゼン製造システム900から回収された他のキシレンを含むことができる。
【0081】
クメンを製造する方法は、熱分解ガス流120の少なくとも一部、第一ガス流220の少なくとも一部、第二ガス流42の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニット300に導入して第一プロピレン流310、第一CおよびC不飽和流320および飽和ガス流330を生成する工程を含むことができ、第一プロピレン流310がプロピレンを含み、第一CおよびC不飽和流320がエチレンおよびブチレン類を含み、および飽和ガス流330がCOおよびCOとともに、水素およびC~C飽和炭化水素類を含む。
【0082】
第一分離ユニット300は、熱分解ガス流120および/または第一ガス流220を、第一プロピレン流310、第一C2~C4不飽和流320および飽和ガス流330に分離するように構成されている任意の適した分離ユニットでありうる。たとえば、第一分離ユニット300は、蒸留塔、低温蒸留塔、抽出蒸留塔、選択的吸着装置、選択的吸収装置など、またはそれらの組み合わせを使用することができる。
【0083】
クメンを製造する方法は、第一CおよびC不飽和流320の少なくとも一部をメタセシス反応器800に供給して第二プロピレン流810を生成する工程を含むことができ、メタセシス反応器800がメタセシス触媒を含み、および第二プロピレン流810がプロピレンを含む。一般に、オレフィンメタセシスは、トランスアルキリデン化としても知られているプロセスである、炭素-炭素二重結合の切断および再生によるオレフィンフラグメントの再分配を伴う反応を指す。Lummus Technologyのオレフィン変換技術(OCT)は、エチレンおよびブチレン類をプロピレンに変換するためのオレフィンメタセシスの例を提供する。
【0084】
メタセシス反応器800は、連続流通反応器、バッチ反応器、固定床反応器、流動床反応器、接触蒸留塔反応器など、またはそれらの組み合わせのような任意の適切なメタセシス反応器を含むことができる。メタセシス反応器800は、エチレンおよびブチレン類のプロピレンへのメタセシスに適した条件、たとえば約50℃以上、あるいは約100℃以上、あるいは約150℃以上、あるいは約200℃以上の温度、約1psiから約1,500psi、あるいは約10psiから約1,000psi、あるいは約25psiから約500psiの圧力、および約0.1/hrから約100/hr、あるいは約1/hrから約50/hr、あるいは約5/hrから約25/hrのWHSVで操作することができる。
【0085】
本開示における使用に適したメタセシス触媒の非限定的な例としては、有機金属化合物、Schrock触媒、モリブデンアルキリデン、タングステンアルキリデン、グラブス(Grubbs’)触媒、ルテニウムカルベノイド錯体、キレート化イソプロポキシスチレン配位子で修飾されたルテニウムカルベノイド錯体、Hoveyda触媒、ジフェニルアルキルアミノ系触媒など、またはそれらの組み合わせを含む。
【0086】
クメンを製造する方法は、ベンゼン流920の少なくとも一部、第一プロピレン流310の少なくとも一部および/または第二プロピレン流810の少なくとも一部をアルキル化ユニット500に供給してクメン流510を生成する工程を含むことができ、アルキル化ユニット500はアルキル化触媒を含み、クメン流510はクメンを含む。
【0087】
アルキル化ユニット500は、固定床反応器、流動床反応器などの、ベンゼンをプロピレンでアルキル化してクメンを得るのに適した任意の反応器(たとえば、アルキル化反応器)を含むことができる。
【0088】
いくつかの態様では、アルキル化ユニット500は、低温(たとえば、約135℃未満)および低圧(たとえば、約0.4MPa未満)で運転することができる。ベンゼンとプロピレンとをアルキル化反応器においてアルキル化触媒と接触させて、アルキルベンゼン類(たとえば、クメンまたはイソプロピルベンゼン)とポリアルキルベンゼン類(たとえば、ポリイソプロピルベンゼン類)との混合物を含むアルキル化反応器流出液を生成することができる。アルキル化反応器流出液は、さらに、トランスアルキル化触媒を含むトランスアルキル化反応器に導入することができ、ポリイソプロピルベンゼン類が、ベンゼンの存在下で、トランスアルキル化されてクメンになり、トランスアルキル化反応器からトランスアルキル化反応器流出液が回収される。アルキル化反応器流出液および/またはトランスアルキル化反応器流出液はさらに蒸留システムに導入することができ、蒸留システムは高純度クメン産物を回収するように設計することができる。蒸留システムはクメンを回収することができ、ならびに未変換のベンゼンおよびポリイソプロピルベンゼン類をアルキル化反応器および/またはトランスアルキル化反応器に分離してリサイクルすることができる。アルキル化触媒およびトランスアルキル化触媒は同じであってもよいし、異なっていてもよい。本開示における使用に適したアルキル化触媒および/またはトランスアルキル化触媒の非限定的な例としては、ゼオライト、β-ゼオライト、ゼオライトY、ZSM-12、MCM-22、モルデナイトなど、またはそれらの組み合わせが挙げられる。Polimeri EuropaおよびLummus Technologyのクメン製造プロセスは、独自のゼオライト触媒配合物であるPBE-1を使用して、プロピレンおよびベンゼンからクメンを製造する例を示している。
【0089】
他の態様では、アルキル化ユニット500は、高温(たとえば、約150℃以上)および高圧(たとえば、約1MPa以上)で運転することができる。そのような態様では、アルキル化触媒は固体リン酸系触媒を含むことができる。
【0090】
一つの態様では、本明細書に開示されるクメンの製造方法は、約25重量%以上、あるいは約30重量%以上、あるいは約40重量%以上のクメンの全収率によって特徴付けることができる。本明細書における開示の目的のために、他に特定されない限り、すべての収率はプラスチック供給物の総重量の重量%(wt.%)として計算され報告される。
【0091】
一つの態様では、本明細書に開示されるクメンの製造方法は、約16重量%以上、あるいは約18重量%以上、あるいは約20重量%以上、あるいは約25重量%以上であるベンゼンの全収率によって特徴付けることができる。本明細書の開示の目的のために、ベンゼンの全収率は、たとえば、EB脱アルキル化からの第一C芳香族化合物類流61、第二C芳香族化合物類流73、またはそれらの組み合わせからのプロセスからの任意の時点で回収されるベンゼンを対象とする。当業者には理解されるように、および本開示の助けを借りると、ベンゼン製造システム900を介したベンゼンの製造は、一般に、アルキル化ユニットの要求を超えることができ、そのようなものとして、ベンゼンをプロセスから高価値産物として回収することもできる。
【0092】
一つの態様では、本明細書に開示されるクメンの製造方法は、約16重量%以上、あるいは約18重量%以上、あるいは約20重量%以上、あるいは約25重量%以上のキシレン類の全収率によって特徴付けることができる。
【0093】
図3Aおよび図3Bを参照すると、クメン製造システム2000が開示されている。クメン製造システム2000は、一般に、第一熱分解ユニット150、第二熱分解ユニット160、任意の第一水素化処理ユニット250、第二水素化処理ユニット260、第一分離ユニット300、アルキル化ユニット500、メタセシス反応器800、およびベンゼン製造システム900を備える。
【0094】
一つの態様では、クメンを製造するためのプロセスは、(a)第一熱分解ユニット150において第一プラスチック廃棄物流115を第一炭化水素液体流135と第一熱分解ガス流125とに変換することを含んでなり、第一熱分解ユニット150が約450℃以上の温度で操作される高過酷度熱分解ユニットである工程、(b)任意に、第一水素化処理ユニット250において水素の存在下で第一炭化水素液体流135の少なくとも一部を第一水素化処理触媒と接触させることにより第一炭化水素産物流215および第一C1-4ガス流225を生成することを含んでなり、第一炭化水素産物流215がC+炭化水素類を含む工程、(c)第一炭化水素液体流135の少なくとも一部および/または第一炭化水素産物流215の少なくとも一部を第一熱分解ユニット150にリサイクルする工程、(d)第二熱分解ユニット160において、第二プラスチック廃棄物流116を第二炭化水素液体流136と第二熱分解ガス流126とに変換することを含んでなり、第二熱分解ユニット160が約450℃未満の温度で操作される低過酷度熱分解ユニットである工程、(e)第二水素化処理ユニット260において水素の存在下で第二炭化水素液体流136の少なくとも一部を第二水素化処理触媒と接触させることにより第二炭化水素産物流211および第二C1-4ガス流226を生成することを含んでなり、第二炭化水素産物流211がC~C炭化水素類を含み、および第一水素化処理触媒と第二水素化処理触媒とが同じまたは異なるものである工程、(f)第二炭化水素産物流211の少なくとも一部をベンゼン製造システム900に供給することにより、ベンゼン75を含むベンゼン流920、キシレン類76を含むキシレン類流930、および第三C1-4ガス流942を生成する工程、(g)第一熱分解ガス流125の少なくとも一部、第二熱分解ガス流126の少なくとも一部、第一C1-4のガス流225の少なくとも一部、第二C1-4ガス流226の少なくとも一部、第三C1-4ガス流942の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニット300に導入することにより第一プロピレン流310、第一CおよびC不飽和流320および飽和ガス流330を生成することを含んでなり、第一プロピレン流310がプロピレンを含み、第一CおよびC不飽和流320がエチレンおよびブチレン類を含み、および飽和ガス流330が水素およびC~C飽和炭化水素類を含む工程、(h)第一CおよびC不飽和流320の少なくとも一部をメタセシス反応器800に供給して第二プロピレン流810を生成することを含んでなり、メタセシス反応器800がメタセシス触媒を含み、および第二プロピレン流810がプロピレンを含む工程、および(i)ベンゼン流920の少なくとも一部、および第一プロピレン流310の少なくとも一部および/または第二プロピレン流810の少なくとも一部をアルキル化ユニット500に供給してクメンを含むクメン流510を生成することを含んでなり、アルキル化ユニット500がアルキル化触媒を含む工程、を含む。そのような態様において、クメンを製造する方法は、約27重量%以上のクメンの全収率によって特徴付けることができる。第二炭化水素産物流211の少なくとも一部をベンゼン製造システム900に供給する工程(f)は、さらに、(f1)第二炭化水素産物流211の少なくとも一部を改質ユニット40に供給して改質ユニット産物流41、第三C1-4ガス流942および水素流43を生成することを含んでなり、改質ユニット40が改質触媒を含み、および改質ユニット産物流41中のC~C芳香族炭化水素類の量が第二炭化水素産物流211中のC~C芳香族炭化水素類の量より多い工程、(f2)改質ユニット産物流41の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニット50に導入して非芳香族化合物類リサイクル流51および第二芳香族化合物類流52を生成することを含んでなり、第二芳香族化合物類流52がC+芳香族炭化水素類を含む工程、(f3)非芳香族化合物類リサイクル流51の少なくとも一部を改質ユニット40にリサイクルする工程、(f4)第二芳香族化合物類流52の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニット60に導入してベンゼン流61、C芳香族化合物類流62、C芳香族化合物類流63、C芳香族化合物類流64、C10芳香族化合物類流65およびC11+芳香族化合物類流66を生成することを含んでなり、ベンゼン流61がベンゼンを含み、C芳香族化合物類流62がトルエンを含み、およびC芳香族化合物類流63がキシレン類およびエチルベンゼンを含む工程、(f5)Tatorayユニット70において水素の存在下でC芳香族化合物類流62の少なくとも一部、C芳香族化合物類流64の少なくとも一部、C10芳香族化合物類流65の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒に接触させることにより、第三芳香族化合物類流71を生成することを含んでなり、第三芳香族化合物類流71がベンゼンおよびキシレン類を含む工程、および(f6)C11+芳香族化合物類流66の少なくとも一部を第一水素化処理ユニット250および/または第二水素化処理ユニット260に搬送する工程、を含むことができる。クメン製造システム2000が任意の第一水素化処理ユニット250を含まない構成では、第一炭化水素液体流135の少なくとも一部を、(i)第一熱分解ユニット150にリサイクルする、(ii)第二水素化処理ユニット260に搬送する、(iii)第二熱分解ユニット160に搬送する、または(i)~(iii)の組み合わせに付することができる。
【0095】
本明細書に開示されるクメンの製造方法は、クメンを生成するためにさらに反応することができるプロピレンとベンゼンとの両方を生成するためにプラスチック廃棄物を加工することを用いない他は類似のプロセスと比較すると、一つ以上のプロセス特徴において有利に向上を示すことができる。本明細書に開示されるクメンの製造方法は、クメンの製造を最大にするために、熱分解、水素化分解、改質、オレフィンメタセシス、およびベンゼンアルキル化を有利に統合する。本明細書に開示されているクメンの製造方法は、プロピレン、エチレン、ブチレン類、ベンゼンなどのようなクメン以外の高価値化学物質を有利に製造することができる。本明細書に開示されているクメンの製造方法のさらなる利点は、本開示を参照して当業者にとって明らかである。
【実施例
【0096】
課題を一般的に説明してきたが、以下の実施例は、本開示の特定の実施形態として、およびその実施および利点を実証するために与えられている。実施例は説明のために与えられており、特許請求の範囲の仕様をどのようにも限定することを意図するものではないことが理解される。
【0097】
〔実施例1〕
クメン合成のためのプロピレンおよびベンゼンの生成を調査するために、混合廃棄プラスチックの高過酷度熱分解を行った。混合廃棄プラスチックは、82%のオレフィン系供給物(たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびポリプロピレン(PP))、11%のポリスチレン(PS)を有しており、残りの7%はポリエチレンテレフタレート(PET)であった。熱分解は循環流動床での連続接触クラッキングで行われた。クラッキングは、57.5%の使用済み流動接触クラッキング(FCC)触媒および42.5%のZSM-5系ゼオライト添加剤を用いて行われ、供給物および触媒の390~560℃のカップ混合温度で行われた。プラスチック供給物の供給速度は316g/hrでありそして触媒/供給物重量比は約30であった。単段階熱分解プロセスの場合には、表1のデータから分かるように、熱分解流出液のプロピレン含有量は23.7%であった。軽ガスオレフィン類の全収率は約43重量%であった。240℃未満で沸騰する液体産物は87.5重量%の芳香族濃度を有していた。
【0098】
【表1】
【0099】
熱分解から回収された熱分解油はさらに水素化クラッカーに供給することができる。
【0100】
〔実施例2〕
クメン合成のためのプロピレンおよびベンゼンの生成を調べるために、混合廃棄プラスチックの低過酷度熱分解を行った。混合廃棄プラスチックは、82%のオレフィン系供給物(たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびポリプロピレン(PP))、11%のポリスチレン(PS)を有しており、残りの7%はポリエチレンテレフタレート(PET)であった。混合プラスチック廃棄物を、約450℃である温度を除いて、実施例1に記載したように熱分解した。熱分解流出液をさらに水素化処理して全ての液体オレフィン類を飽和させ、次いでさらにスチームクラッキングに送った。水素化処理熱分解液は、典型的には、35~45%のパラフィン類、35~45%のイソパラフィン類、15~20%のナフテン類、および5~10%の芳香族化合物類を含むことができ、水素化処理熱分解液は400℃未満で沸騰する。水素化処理熱分解液は、(i)スチームクラッキング単独、(ii)スチームクラッキングと、それに続くC-Cを分解する接触クラッキング、または、(iii)接触クラッキングに付すことができ、表2から分かるように各々の場合に異なるプロピレン収率が得られる。かくして、水素化処理熱分解液の下流でのクラッキングにより50~60%の軽ガスオレフィン類を製造することが可能である。
【0101】
【表2】
【0102】
〔実施例3〕
混合プラスチック廃棄物は、モジュール式ユニットにおいて低過酷度条件で分解され、あるいは循環流動層において高過酷度で接触分解され、あるいは循環流動床において低過酷度で接触分解されて、熱分解油を生成する。これらの分解実験からの結果を以下に示す。カップ混合温度は400~600℃、具体的には450~550℃の間で変動した。操作の過酷度に応じて、気体と液体産物とは分離された。分解液体産物の組成を以下の表3~5に示す。ガス中に存在する飽和炭化水素類は、エタンクラッカーまたはプロパンクラッカーであるガスクラッカーに送られた。ガスクラッカーは、所望の最終産物に応じて選択された。熱分解ユニットからの分解液体は、水素化処理に送られて全ての液体オレフィン類を飽和させたが、これは液体/ナフサクラッカーの要件である。水素化処理は、市販の水素化処理触媒を用いて、300~450℃および20~100bargの圧力で行って、水素化処理油を生成した。この水素化処理油の典型的な組成は、35~45%のパラフィン類、35~45%のイソパラフィン類、15~20%のナフテン類および5~10%の芳香族化合物類であり、液体沸点は400℃未満であった。以下の表3~5は、水素化処理油(たとえば、流210のような炭化水素産物流)の組成の一例を示す。次いで水素化処理した油をスチームクラッキングに付して、そこで軽ガスオレフィン類は最大化され、生成したガス飽和物はガスクラッカーに送られた。この実施例では、熱分解によって生成された16.3重量%の飽和物をガスクラッカーに送って、エチレンおよびプロピレンのようなより軽質のガスオレフィン類を形成した。
【0103】
水素化処理油、通常はパイガス(pygas)は、高い芳香族含有量を有するナフサ範囲の物質であった。この液体は、穏やかな水素化の後に芳香族抽出に付することができ、非芳香族類流をナフサ/スチームクラッカーに送り返して、さらにクラッキングすることができる。
【0104】
パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類、および芳香族化合物類(P/O/N/A)の組成を有するスチームクラッカーへの飽和熱分解油の供給の結果を以下に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
【表5】
【0108】
熱分解液の組成に応じて、それが連続循環流動床からの低過酷接触分解からであれ、または任意のモジュール式技術からの熱分解からであれ、芳香族抽出ユニットをスチームクラッカーの前またはスチームクラッカーの後に配置することができる。熱分解液の芳香族含有量が40%を超える場合、スチームクラッカーの前に芳香族抽出を行うことで、コークス形成を最小限に抑え、スチームクラッカーに送る前にベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンのような高価値化学物質の回収を最大限にすることができる。
【0109】
スチームクラッカーから得られた産物は、2重量%のスチーム対オイル(S/O)比、0.1秒の反応滞留時間、および850℃の温度で、以下に示される。本明細書の開示の目的のために、S/O比は、スチームクラッカーの総炭化水素類供給量当たりのスチームクラッカーに添加された水蒸気の質量百分率で表される比を指す。
【0110】
【表6】
【0111】
〔実施例4〕
この実施例は、82%のオレフィン類供給原料(たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびポリプロピレン(PP))、11%のポリスチレン(PS)を有し、残りの7%がポリエチレンテレフタレート(PET)である混合廃棄プラスチックの低および高過酷度熱分解に関する。この実験は連続式接触クラッキング循環流動床中で行われた。全ての場合において、第一工程で生成された軽ガスオレフィン類は28%より多く、飽和物も製造され、その飽和物を直接ガスクラッカーに送って軽ガスオレフィン類をさらに増やすことができる。ガソリンおよびディーゼル範囲の材料は、液体オレフィン類を飽和させるために水素化処理することができ、さらにナフサクラッカーに送ることができる。第一段階の熱分解とそれに続く飽和物用のガスクラッカーおよび液体用のナフサクラッカーとを組み合わせた軽ガスオレフィン類の全体的な製造は、プラスチック供給物(たとえば混合廃棄プラスチック)の総重量に基づいて>60重量%を示す。以下の表7に従って様々な触媒処方を試験した。
【0112】
【表7】
【0113】
未転化の飽和物は、さらなるクラッキングおよび軽ガスオレフィン類の形成のためにクラッカーに再循環して戻すことができる。ナフサクラッカーから得られるパイガスは芳香族化合物類に富み、ベンゼン、トルエン、キシレン類(BTX)およびエチルベンゼン(EB)(BTX+EB)の分離のために、芳香族抽出に送られる。
【0114】
全体的としては、熱分解器をガスクラッカーおよび液体クラッカーと組み合わせることにより、軽ガスオレフィン類のような高価値化学物質は>60%でありBTX+EBは>15~20%である。
【0115】
熱分解油のPIONAに基づくガソリンおよびディーゼルの範囲の液体飽和物の産物は、高価値の化学物質に変換するためにナフサクラッカーに送られるであろう。BTX+EBであるC-C範囲の芳香族化合物類は、水素化後に分離される。通常二環式芳香族化合物類および三環式芳香族化合物類である高級芳香族化合物類もまた、開環によって飽和または変換され、次いで、ガソリン飽和物、ディーゼルおよび重質範囲飽和物からなる供給物全体がスチームクラッカーに送られて、軽ガスオレフィン類およびBTX+EB範囲の芳香族化合物類の全収率を高める。
【0116】
〔実施例5〕
芳香族化合物類の生成を調べるために、混合廃棄プラスチックの低および高過酷度熱分解を行った。混合廃棄プラスチックは、82%のオレフィン系供給物(たとえば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびポリプロピレン(PP))、11%のポリスチレン(PS)を有し、残りの7%はポリエチレンテレフタレート(PET)であった。熱分解は、循環流動床における連続的接触/熱分解で、および、実験室規模のin-situ流動式バッチ反応器で行われた。表8の第一列のデータは、6の触媒/供給物比および約395℃の平均カップ混合温度で操作される実験室規模反応器からの低過酷度接触分解の結果を提供し、一方、表3の残りの3列のデータは、表8に示す触媒/供給物比に従って操作される連続運転循環流動床パイロットユニットからの接触分解データを示す。ZSM-5系ゼオライト添加剤を使用しカップ混合温度390~560℃の間で操作される使用済流体接触クラッキング(FCC)触媒の異なる組成を用いてクラッキングを行った。すべての場合において、液体中の芳香族化合物類の濃度は表8のデータから分かるように75%より高かった。クラッキングカップ混合温度は390℃より高く維持された。表8のデータは、プラスチック供給物に基づく240℃未満で沸騰する芳香族化合物類の収率を20重量%から36重量%の高収率まで変化させることが可能であり、軽ガスオレフィン類の収率がそれに対応して変換することを示している。
【0117】
【表8】
【0118】
〔実施例6〕
表9のPONA組成物(たとえば、パラフィン類、オレフィン類、ナフテン類および芳香族化合物類)は、実施例5に概説した触媒混合物を使用する約450℃でのモジュール式低過酷度クラッキングユニットにおける熱的クラッキングおよび約452℃の平均カップ混合温度における接触クラッキングの両方からの芳香族化合物濃度を示している。芳香族化合物類の濃度は9~90%の間で変動した。さらに改質により処理した芳香族に富むPONA流は、大量のC~C高価値芳香族化合物類を生成した。
【0119】
【表9】
【0120】
〔実施例7〕
循環流動床反応器中での混合プラスチックの連続分解が、触媒の種々の組み合わせで行われ、熱分解と接触分解との両方の結果が表10に示されている。
【0121】
【表10-1】
【表10-2】
【0122】
熱分解産物中の芳香族化合物類の濃度は9~87重量%の間で変化させることができ、C~C芳香族化合物類の濃度は5~62重量%の間で変化させることができる。C+芳香族化合物類も8~42重量%の間で変化させることができる。C芳香族化合物類単独の濃度は、35重量%を超えることができる。
【0123】
図1~3に表示されている概略図に従って、表10に示されるデータから分かるように、C、CおよびC10芳香族化合物類の不均化およびトランスアルキル化、アルキル芳香族化合物類の穏やかな水素化分解または脱アルキル化、または非芳香族類材料の改質は、ベンゼンおよびキシレン類の形成を増加させることができる。
【0124】
表10に示される異なる操作ケースの全液体産物に対して、220℃未満で沸騰する液体は50~85重量%であり、220~370℃の間で沸騰する液体は15~32重量%であり、そして370℃より高温で沸騰する液体は2~21重量%であった。これらの様々な液体画分を、穏やかな水素化分解とそれに続く脱アルキル化に付することにより、ベンゼンおよびキシレン類の収率を最大にすることができる。
【0125】
全体として、上記の実施例を通して、図1~3に示されるような統合フローシートのプロセス構成に含まれるプロセスは、クメンの製造にさらに使用することができるプロピレンおよびベンゼンを生成することが示された。
【0126】
本開示は、以下の実施形態によってさらに説明されるが、これらの実施形態は、その範囲に制限を課すものとして決して解釈されるべきではない。それどころか、本明細書の説明を読んだ後に、本発明の精神からまたは添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆されうる様々な他の態様、実施形態、修正、およびそれらの等価物に頼ることができることを明確に理解されたい。
【0127】
〔追加の開示〕
以下は、非限定的な例として提供される列挙された実施形態である。
【0128】
(a)熱分解ユニットにおいてプラスチック廃棄物を炭化水素液体流と熱分解ガス流とに変換する工程、(b)水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記炭化水素液体流の少なくとも一部を水素化処理触媒と接触させることにより炭化水素産物および第一ガス流を生成することを含んでなり、該炭化水素産物がC+炭化水素類を含む工程、(c)前記炭化水素産物の少なくとも一部を改質ユニットに供給することにより改質ユニット産物、第二ガス流および水素流を生成することを含んでなり、該改質ユニットが改質触媒を含み、および該改質ユニット産物中のC~C芳香族炭化水素類の量が該炭化水素産物中のC~C芳香族炭化水素類の量より大きい工程、(d)前記改質ユニット産物の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニットに導入することにより非芳香族化合物類リサイクル流および第二芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第二芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む工程、(e)前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記改質ユニットにリサイクルする工程、(f)前記第二芳香族化合物類流の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニットに導入することによりベンゼン流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C10芳香族化合物類流およびC11+芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該ベンゼン流がベンゼンを含み、該C芳香族化合物類流がトルエンを含み、および該C芳香族化合物類流がキシレン類およびエチルベンゼンを含む工程、(g)不均化およびトランスアルキル化ユニットにおいて水素の存在下で前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C10芳香族化合物類流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒に接触させることにより第三芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第三芳香族化合物類流がベンゼンおよびキシレン類を含む工程、(h)前記C11+芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記水素化処理ユニットに搬送する工程、(i)前記熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第一ガス流の少なくとも一部、前記第二ガス流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニットに導入することにより第一プロピレン流、第一CおよびC不飽和流および飽和ガス流を生成することを含んでなり、該第一プロピレン流がプロピレンを含み、該第一CおよびC不飽和流がエチレンおよびブチレン類を含み、および該飽和ガス流が水素およびC~C飽和炭化水素類を含む工程、(j)前記第一CおよびC不飽和流の少なくとも一部をメタセシス反応器に供給することにより第二プロピレン流を生成することを含んでなり、該メタセシス反応器がメタセシス触媒を含み、および該第二プロピレン流がプロピレンを含む工程、ならびに、(k)前記ベンゼン流の少なくとも一部および前記第一プロピレン流の少なくとも一部および/または前記第二プロピレン流の少なくとも一部をアルキル化ユニットに供給することによりクメンを生成することを含んでなり、該アルキル化ユニットがアルキル化触媒を含む工程、を含むクメンを製造するための方法である第一の態様。
【0129】
前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記熱分解ユニットにリサイクルすることをさらに含む第一の態様の方法である第二の態様。
【0130】
前記炭化水素産物の少なくとも一部を第一芳香族化合物類分離ユニットに導入して飽和炭化水素類流および第一芳香族化合物類流を生成することをさらに含み、該飽和炭化水素類流がC+飽和炭化水素類を含み、および該第一芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む第一および第二の態様のいずれか一つの方法である第三の態様。
【0131】
(i)前記飽和炭化水素類流の少なくとも一部を前記改質ユニットに搬送すること、および/または(ii)前記第一芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記第三芳香族化合物類分離ユニットに搬送することをさらに含む第三の態様の方法である第四の態様。
【0132】
クメンの全収率が約25重量%以上である第一から第四の態様のいずれか一つの方法である第五の態様。
【0133】
前記第三芳香族化合物類流から前記ベンゼンの少なくとも一部を回収することをさらに含む第一から第五の態様のいずれか一つの方法である第六の態様。
【0134】
ベンゼンの全収率が約16重量%以上である第六の態様の方法である第七の態様。
【0135】
前記C芳香族化合物類流から前記キシレン類の少なくとも一部を回収することをさらに含む第一から第七の態様のいずれか一つの方法である第八の態様。
【0136】
キシレン類の全収率が約16重量%以上である第八の態様の方法である第九の態様。
【0137】
熱分解ユニットにおいてプラスチック廃棄物を炭化水素液体流と熱分解ガス流とに変換する前記工程(a)が約450℃未満の温度で行われる第一から第九の態様のいずれか一つの方法である第十の態様。
【0138】
前記熱分解ユニットが低過酷度熱分解ユニットである第一から第十の態様のいずれか一つの方法である第十一の態様。
【0139】
前記炭化水素産物が、該炭化水素産物の総重量に基づいて約95重量%以上のC-炭化水素類を含む第一から第十一の態様のいずれか一つの方法である第十二の態様。
【0140】
(a)第一熱分解ユニットにおいて第一プラスチック廃棄物を第一炭化水素液体流と第一熱分解ガス流とに変換する工程、(b)任意に第一水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記第一炭化水素液体流の少なくとも一部を第一水素化処理触媒と接触させることにより第一炭化水素産物および第一C1-4ガス流を生成することを含んでなり、該第一炭化水素産物がC+炭化水素類を含む工程、(c)前記第一炭化水素液体流の少なくとも一部および/または前記第一炭化水素産物の少なくとも一部を前記第一熱分解ユニットにリサイクルする工程、(d)第二熱分解ユニットにおいて第二プラスチック廃棄物を第二炭化水素液体流と第二熱分解ガス流とに変換する工程、(e)第二水素化処理ユニットにおいて水素の存在下で前記第二炭化水素液体流の少なくとも一部を第二水素化処理触媒に接触させることにより第二炭化水素産物および第二C1-4ガス流を生成することを含んでなり、該第二炭化水素産物がC~C炭化水素類を含み、および該第一水素化処理触媒と該第二水素化処理触媒とが同じまたは異なる工程、(f)前記第二炭化水素産物の少なくとも一部を改質ユニットに供給することにより改質ユニット産物、第三C1-4ガス流および水素流を生成することを含んでなり、該改質ユニットが改質触媒を含み、および該改質ユニット産物中のC~C芳香族炭化水素類の量が該第二炭化水素産物中のC~C芳香族炭化水素類の量より多い工程、(g)前記改質ユニット産物の少なくとも一部を第二芳香族化合物類分離ユニットに導入することにより非芳香族化合物類リサイクル流および第二芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第二芳香族化合物類流がC+芳香族炭化水素類を含む工程、(h)前記非芳香族化合物類リサイクル流の少なくとも一部を前記改質ユニットにリサイクルする工程、(i)前記第二芳香族化合物類流の少なくとも一部を第三芳香族化合物類分離ユニットに導入することによりベンゼン流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C芳香族化合物類流、C10芳香族化合物類流およびC11+芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該ベンゼン流がベンゼンを含み、該C芳香族化合物類流がトルエンを含み、および該C芳香族化合物類流がキシレン類およびエチルベンゼンを含む工程、(j)不均化およびトランスアルキル化ユニットにおいて水素の存在下で前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C芳香族化合物類流の少なくとも一部、前記C10芳香族化合物類流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを不均化およびトランスアルキル化触媒と接触させることにより第三芳香族化合物類流を生成することを含んでなり、該第三芳香族化合物類流がベンゼンおよびキシレン類を含む工程、(k)前記C11+芳香族化合物類流の少なくとも一部を前記第一水素化処理ユニットおよび/または前記第二水素化処理ユニットに搬送する工程、(l)前記第一熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第二熱分解ガス流の少なくとも一部、前記第一C1-4ガス流の少なくとも一部、前記第二C1-4ガス流の少なくとも一部、前記第三C1-4ガス流の少なくとも一部、またはそれらの組み合わせを第一分離ユニットに導入することにより第一プロピレン流、第一CおよびC不飽和流および飽和ガス流を生成することを含んでなり、該第一プロピレン流がプロピレンを含み、該第一CおよびC不飽和流がエチレンおよびブチレン類を含み、および該飽和ガス流が水素およびC~C飽和炭化水素類を含む工程、(m)前記第一CおよびC不飽和流の少なくとも一部をメタセシス反応器に供給することにより第二プロピレン流を生成することを含んでなり、該メタセシス反応器がメタセシス触媒を含み、および該第二プロピレン流がプロピレンを含む工程、ならびに、(n)前記ベンゼン流の少なくとも一部、および前記第一プロピレン流の少なくとも一部および/または前記第二プロピレン流の少なくとも一部をアルキル化ユニットに供給することによりクメンを生成することを含んでなり、該アルキル化ユニットがアルキル化触媒を含む工程、を含むクメンを製造する方法である第十三の態様。
【0141】
第一熱分解ユニットにおいて第一プラスチック廃棄物を第一炭化水素液体流と第一熱分解ガス流とに変換する前記工程(a)が約450℃以上の温度で行われる第十三の態様の方法である第十四の態様。
【0142】
第二熱分解ユニットにおいて第二プラスチック廃棄物を第二炭化水素液体流と第二熱分解ガス流とに変換する前記工程(d)が約450℃未満の温度で行われる第十三および第十四の態様のいずれか一つの方法である第十五の態様。
【0143】
クメンの全収率が約27重量%以上である第十三から第十五の態様のいずれか一つの方法である第十六の態様。
【0144】
前記第三芳香族化合物類流から前記ベンゼンの少なくとも一部を回収することをさらに含む第十三から第十六の態様のいずれか一つの方法である第十七の態様。
【0145】
ベンゼンの全収率が約18重量%以上である第十七の態様の方法である第十八の態様。
【0146】
前記C芳香族化合物類流から前記キシレン類の少なくとも一部を回収することをさらに含む第十三から第十八の態様のいずれか一つの方法である第十九の態様。
【0147】
キシレン類の全収率が約18重量%以上である第十九の態様の方法である第二十の態様。
【0148】
本開示の実施形態を示し説明してきたが、本発明の精神および教示から逸脱することなくそれらの修正を行うことができる。本明細書に記載の実施形態および実施例は例示的なものにすぎず、限定的であることを意図するものではない。本明細書に開示された本発明の多くの変形および修正が可能であり、それらは本発明の範囲内である。
【0149】
したがって、保護の範囲は上記の説明によって限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は特許請求の範囲の主題のすべての均等物を含む。各請求項は、本発明の実施形態として明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲はさらなる説明であり、本発明の詳細な説明への追加である。本明細書に引用された全ての特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B