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特許7051880流体からエネルギを抽出するための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】流体からエネルギを抽出するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/24 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
F03B13/24
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019541829
(86)(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 AU2017051122
(87)【国際公開番号】W WO2018071963
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】2016904200
(32)【優先日】2016-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2017903451
(32)【優先日】2017-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519140947
【氏名又は名称】ウェーブ・スウェル・エナジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】デニス,トーマス
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105003384(CN,A)
【文献】特表2010-507041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0175667(US,A1)
【文献】特開平11-294311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B13/00-13/26
F03B17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動する作動流体からエネルギを抽出するための装置であって、
- 前記振動する作動流体を受けるための流路を内部に画定するハウジングと、
- 使用時に前記流路内の前記振動する作動流体と流体連通するように前記ハウジングに配置されたエネルギ変換ユニットと、
- 前記流路と流体連通する流れ制御装置であって、使用時に、当該流れ制御装置と前記エネルギ変換ユニットとが、アクティブ構成とバイパス構成とで前記流路の構成を選択的に変更するように順次的に動作するように構成され、前記アクティブ構成は、前記作動流体の流れが前記エネルギ変換ユニットを介して前記流路に入り、前記作動流体の流れが前記エネルギ変換ユニットに作用し、前記バイパス構成は、有意な量の作動流体が前記エネルギ変換ユニットを介して前記流路から抜けるのではなく、前記作動流体の流れが前記流れ制御装置を介して前記流路から出て、前記作動流体の流れが前記エネルギ変換ユニットを迂回する、流れ制御装置と、
を備える装置。
【請求項2】
前記流れ制御装置は、前記振動する作動流体の圧力の変化に応じて前記流路へのアクセスの構成を変える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流れ制御装置は、前記アクティブ構成において、前記タービンのみを介して前記振動する作動流体の流れを促すように完全に閉鎖可能である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記流れ制御装置が、前振動する作動流体の流れに対して開閉するように動作可能である、請求項または3に記載の装置。
【請求項5】
前記流れ制御装置は、ヒンジ式、スライド式、または回転式の可動式であり、前記流れ制御装置の断面開口通路を覆う形状のものである、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記タービンが、中央ハブと、前記ハブの周囲から延在するように配置された複数のブレードと、を備えるロータを含み、前記ロータは、前記流路に接続されたロータハウジング内に配置され、前記ブレードの形状および前記ハブに対する向きが、前記ロータハウジングを通る前記振動する作動流体の一方向の軸方向流れに応じて前記タービンのロータの一方向の回転を促す、請求項1からのいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
発電機が、前記タービンによって回転して電気エネルギを発生させるように構成されている、請求項に記載の装置。
【請求項8】
駆動軸が、当該駆動軸の近位端で前記ハブに連結され、当該駆動軸の遠位端で前記発電機に連結されている、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記振動する作動流体が空気であり、前記空気の流れが、前記流路と流体連通しており且つダクト内に位置する振動水柱の振動によって発生する、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記ハウジングは、使用時に水域に隣接して配置されるように構成され、その流路は、前記水域からの流入波および流出波に応じてその中に振動水柱を形成するように構成され、前記エネルギ変換ユニットに作用する前記振動する作動流体の前記一方向の軸方向流れは、前記ハウジングから流出する前記振動水柱からの流出波によって生成される吸引と関連し、前記流れ制御装置を介して前記流路から流出する前記振動する作動流体の前記一方項の軸方向流れは、前記ハウジング内の前記振動水柱に受け入れられる流入波によって生成される圧力に関連する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、
a.第1の部分であって、使用時に当該第1の部分が配置されている前記水域の平均表面レベル(MSL)よりも下方で実質的に水没するように配置され、前記水域からの到来波を受けるように配置された開口部を有する、第1の部分と、
b.第2の部分であって、前記第1の部分から延び、使用時に前記MSLの上方に延在するように配置され、前記第1の部分を通った後の前記到来波から水を受け取るためのものである、第2の部分と、
を備え、
前記流路は、前記第1の部分を通って流れた後の前記到来波から受け取る水の最大水位の上方で延在する前記第2の部分の領域によって画定される、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ハウジングの前記第1の部分および前記第2の部分は概して細長い導管であり、前記第1の部分は、前記第2の部分の断面積より大きい断面積を有する、請求項に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の部分の開口部における断面積は、当該第1の部分の残りの部分よりも大きい断面積であり、前記導管は、前記水域から前記ハウジング内への前記到来波の流れを加速するように、前記開口部の外側進入口領域から前記第2部分に向かう方向に移動するときに断面積が小さくなる、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の部分の前記外側進入口領域は、前記水域から前記ハウジング内への入射波の流れをより大きく捕捉するように、当該第1の部分が使用時に位置する水域の前記MSLの上方に延在するように配置される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
振動する作動流体からエネルギを抽出する方法であって、
(i)前記振動する作動流体を受け取る流路を内部に画定するハウジングを少なくとも部分的に波を有する水域に配置するステップと、
(ii)前記流路および前記振動する作動流体と流体連通するようにエネルギ変換ユニットを配置するステップと、
(iii)前記流路と流体連通する流れ制御装置を提供するステップであって、使用時に、前記流れ制御装置と前記エネルギ変換ユニットとがアクティブ構成とバイパス構成とで前記流路の構成を選択的に変更するように順次的に動作するように構成され、
- 前記アクティブ構成は、第1の所定の方向に流れるときに前記作動流体の流れが前記エネルギ変換ユニットを介して流入して当該エネルギ変換ユニットに作用し、
- 前記バイパス構成は、第2の所定方向に流れるときに、有意な量の作動流体が前記エネルギ変換ユニットを介して前記流路から抜けるのではなく、前記作動流体が前記エネルギ変換ユニットを迂回して前記流れ制御装置を介して前記流路から流出する、ステップと、
を含む方法。
【請求項16】
振動波柱エネルギ捕捉装置を水域の沖合位置に配置する方法であって、
(i)請求項1から14のいずれか1項に記載の装置を前記エネルギ捕捉装置として選定し、
ii)前記装置自体が浮揚補助具を備えており、前記装置を、動作可能な水中浮遊式のプラットフォームに配置し、
iii)前記プラットフォームと前記装置とを前記水域に浮かべ、
iv)前記プラットフォームと前記装置とを前記水域内の所定の位置に移動させ、
)前記プラットフォームを水没させて前記装置から分離させ、それにより前記装置を前記浮揚補助具によって前記水域に浮かせた状態にし、
vi)前記装置が部分的に水没して意図された動作使用のために前記所定の位置で水域の床上に静止することができるように、前記浮遊補助具を取り外す、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してエネルギ生成に関し、より詳細には、限定されるものではないが海洋波エネルギ抽出システムを使用するエネルギ生成に関する。本開示は、装置の設計、及びそうした装置からのエネルギの捕捉を最適化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野では、数多くの種類の波力発電システムが提案されている。このようなシステムは、波の運動を利用してタービンの回転運動によって発電機を駆動させて電気を発生させるという原理に基づいている。既知の波力発電システムは、タービンに接続された振動水柱(OWC)を収容するための1つ又は複数の流体流れダクトを使用する。このようなシステムでは、内向きおよび外向きの波の流れによって引き起こされるOWC内の波の振動運動の結果として、ダクト内の空気の変位によって引き起こされる空気の流れの状態が頻繁に逆転する。これらのタービンは、構成が複雑で製造コストが高く、厳しい環境条件(塩水、大きな力または予測できない力をもたらす高い海または荒れた海)に長期間耐えることができないという欠点をしばしば有する。これらの従来のシステムの多くは、双方向タービンにおいてOWCの運動を回転機械エネルギに変換するときの損失のため、低い効率で作動する。
【0003】
効率的な方法でOWCからエネルギを取り込むことができ、そうしたタスクを実行するコストを低下できる、改善されたシステム設計が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様では、振動する作動流体からエネルギを抽出するための装置が記載されており、前記装置は、前記作動流体のための流路と、タービンと、流れ制御装置とを備え、前記タービンおよび前記流れ制御装置のそれぞれは前記流路と直接流体連通しており、使用時において、前記流れ制御装置は、第1の構成と第2の構成とを選択的に動作させることができ、前記第1の構成は、前記流れ制御装置が開くことによって前記作動流体の流れが当該流れ制御装置を通って前記流路を出ることができ、前記第2の構成は、前記流れ制御装置が当該流れ制御装置を通る流れを制限することによって、前記作動流体が前記タービンを介して前記流路に入る。
【0005】
特定の実施形態では、前記流れ制御装置は、前記振動する作動流体の圧力および/または流れの方向の変化に応じて前記流路へのアクセスの構成を変える。
【0006】
特定の実施形態では、前記流れ制御装置は、前記第2の構成において、前記タービンのみを介して前記作動流体の流れを促すように完全に閉鎖可能である。
【0007】
特定の実施形態では、前記流れ制御装置が、前記第1構成と前記第2構成との動作を制御するための制御機構を備えている。この形態では、前記流れ制御装置は、前記作動流体の流れに対して開閉するように前記制御機構によって移動可能な要素を有する。この特定の形態では、要素は、ヒンジ式、スライド式、または回転式の可動式であり、前記流れ制御装置の断面開口通路を覆う形状のものである。
【0008】
特定の実施形態では、流れ制御装置はバタフライ弁またはチェック弁のうちの1つである。
【0009】
特定の実施形態では、前記タービンは、中央ハブと、前記ハブの周囲から延在するように配置された複数のブレードと、を備えるロータを含み、前記ロータは、前記流路に接続されたハウジング内に配置され、前記ブレードの形状および前記ハブに対する向きが、前記ハウジングを通る前記作動流体の一方向の軸方向流れに応じて前記タービンのロータの一方向の回転を促す。この一形態において、発電機が、前記タービンによって回転して電気エネルギを発生させるように構成されている。特定の実施形態では、駆動軸が、当該駆動軸の近位端で前記ハブに連結され、当該駆動軸の遠位端で前記発電機に連結されている。
【0010】
特定の実施形態では、前記作動流体が空気であり、前記空気の流れが、前記流路と流体連通しており且つダクト内に位置する振動水柱の振動によって発生する。
【0011】
特定の実施形態では、前記ダクトは、(a)第1の部分であって、使用時に当該第1の部分が配置されている水域の平均表面レベル(MSL)よりも下方で実質的に水没するように配置され、前記水域からの到来波を受けるように配置された開口部を有する、第1の部分と、(b)第2の部分であって、前記第1の部分から延び、使用時に前記MSLの上方に延在するように配置され、前記第1の部分を通った後の前記到来波から水を受け取るためのものである、第2の部分と、
を備え、前記流路は、前記第1の部分を通って流れた後の前記到来波から受け取る水の最大水位の上方で延在する前記第2の部分の領域によって画定される。
【0012】
この一形態では、前記ダクトの前記第1の部分および前記第2の部分は、当該第1の部分および当該第2の部分の中間にある流れ方向制御セグメントを介して接続され、前記流れ方向制御セグメントは、接続部に配置されて前記第1の部分と前記第2部分との間に延びる平面傾斜部分によって画定される。
【0013】
前記ダクトの前記第1の部分および前記第2の部分は概して細長い導管であり、前記第1の部分は、前記第2の部分の断面積より大きい断面積を有する。この一形態では、第前記第1の部分の開口部における断面積は、当該第1の部分の残りの部分よりも大きい断面積であり、前記導管は、前記水域から前記ダクト内への前記到来波の流れを加速するように、前記開口部の外側進入口領域から前記第2部分に向かう方向に移動するときに断面積が小さくなる。特定の実施形態では、前記第1の部分の前記外側進入口領域は、水域から前記ダクト内への入射波の流れをより大きく捕捉するように、当該第1の部分が使用時に位置する水域の前記MSLの上方に延在するように配置される。
【0014】
特定の実施形態では、前記ダクトは、当該ダクトが配置されている水域の底に位置するように動作可能である。
【0015】
第2の態様では、波エネルギ抽出システムの実施形態が開示され、前記システムは、
(a)振動水柱を受けるための少なくとも1つのダクトであって、(i)第1の部分であって、使用時に当該第1の部分が配置されている水域の平均表面レベル(MSL)よりも下方で実質的に水没するように配置され、前記水域からの到来波を受信するように配置された開口部を有する、第1の部分と、(ii)第2の部分であって、前記第1の部分から延び、使用時に前記MSLの上方に延在するように配置され、前記第1の部分を通った後の前記到来波から水を受け取るためのものである、第2の部分と、を備え、使用時に、前記ダクト内外への水の繰り返しの移動の結果として振動水柱がダクト内に形成され、前記ダクト外への水の流れは、前記開口部を介して且つ前記到来波の方向とは反対の方向に流れる、ダクトと、
(b)前記ダクトの前記第2の部分内に配置された流路と直接に流体連通する回転可能な空気タービンと、
(c)前記流路と直接に流体連通する少なくとも1つの流れ制御装置であって、使用時において、前記流れ制御装置は、第1の構成と第2の構成とを動作させることができ、前記第1の構成は、前記装置が開くことによって、前記ダクトの前記第2の部分の中に前記振動水柱が受け取られるときに、変位した空気の流れが前記流路を出ることができ、前記第2の構成は、前記装置が前記第2の部分の中へ流れる空気を制限することによって、前記振動水柱が前記ダクトから前記反対方向に流出すると、前記回転可能な空気タービンを介して空気流が前記流路に引き戻される、流れ制御装置と、を備える。
【0016】
特定の実施形態では、前記流れ制御装置は、前記振動する作動流体の圧力および/または流れの方向の変化に応じて、前記第2の部分へのアクセスの構成を変える。
【0017】
特定の実施形態では、前記タービンによって回転して電気エネルギを発生させるように構成された発電機をさらに備える。この一形態では、前記タービンが、中央ハブと、前記ハブの周囲から延在するように配置された複数のブレードと、を備えるロータを含み、前記ロータは、前記第2の部分に接続された前記流路内に配置され、前記ブレードの形状および前記ハブに対する向きが、前記流路を通って前記第2の部分に入る軸方向空気流に応じて前記タービンのロータの一方向の回転を促す。この特定の一形態では、駆動軸が、当該駆動軸の近位端で前記ハブに連結され、当該駆動軸の遠位端で前記発電機に連結されている。
【0018】
特定の実施形態では、1つ又は複数の前記流れ制御装置の前記第1の構成と前記第2の構成との選択的な動作によって前記MSLの上方に延在する前記第2の部分の表面領域の割合として前記流れ制御装置の断面積を変えることによって、使用時の前記振動水柱の周波数を変えることができる。この一形態では、前記MSLの上方に延在する前記第2の部分の表面領域の割合としての前記流れ制御装置の断面積が15パーセント未満であるように構成される。この特定の形態では、前記割合が10パーセント未満になるように構成される。
特定の実施形態では、第2の態様のシステムは、第1の態様で記載された装置を含む。
【0019】
第3の態様では、振動水柱の水の移動周波数を、当該柱と流体連通している水域にて出入りする波の周波数に実質的に対応するように制御する方法の実施形態が開示され、前記方法は、
(a)前記振動水柱を受けるためのダクトを配置するステップであって、前記ダクトが、(i)第1の部分であって、使用時に当該第1の部分が配置されている前記水域の平均表面レベル(MSL)よりも下方で実質的に水没するように配置され、前記水域からの到来波を受信するように配置された開口部を有する、第1の部分と、(ii)第2の部分であって、前記第1の部分から延び、使用時に前記MSLの上方に延在するように配置され、前記第1の部分を通った後の前記到来波から水を受け取るためのものである、第2の部分と、を備え、使用時に、前記ダクト内外への水の繰り返しの移動の結果として前記振動水柱がダクト内に形成され、前記ダクト外への水の流れは、前記開口部を介して且つ前記到来波の方向とは反対の方向に流れる、ステップと、
(b)前記MSLの上方に延在する前記ダクトの前記第2の部分の内部の流路と直接に流体連通する少なくとも1つの流れ制御装置の構成を変更するステップであって、使用時において、前記装置は、第1の構成と第2の構成とを動作させることができ、前記第1の構成は、前記装置が開くことによって、前記ダクトの中に前記振動水柱が受け取られるときに、変位した空気の流れが前記第2の部分の前記流路を出ることができ、前記第2の構成は、前記装置が前記第2の部分の前記流路を通って内部へ流れる空気を制限し、前記ダクトに出入りする前記振動水柱の周波数が、前記水域からの出入りする波の周波数に実質的に対応する。
【0020】
特定の実施形態では、前記方法は、制御機構を用いて、前記出入りする波の周波数の変化に応じて前記少なくとも1つの流れ制御装置の構成を連続的に調整するステップをさらに含む。この一形態では、使用時に、前記制御機構は、前記1つまたは複数を流れ制御装置を前記第1の構成と前記第2の構成とで選択的に動作させる。
【0021】
特定の実施形態において、第3の態様のダクト、流れ制御装置、及び制御機構は、第1の態様において記載された通りである。
【0022】
第4の態様では、振動水柱を受けるためのダクトの実施形態が開示され、前記ダクトは、(a)第1の部分であって、使用時に当該第1の部分が配置されている水域の平均表面レベル(MSL)よりも下方で実質的に水没するように配置され、前記水域からの到来波を受信するように配置された開口部を有する導管を備える、第1の部分と、(b)第2の部分であって、前記第1の部分から延び、使用時に前記MSLの上方に延在するように配置される更なる導管を備え、前記第1の部分を通った後の前記到来波から水を受け取るためのものである、第2の部分と、を備え、前記第1の部分の前記開口部の入口は、前記水域から前記ダクト内への到来波の流れをより大きく捕捉するように、当該第1の部分が使用時に配置される水域の前記MSLの上方で部分的に延在するように配置される。
【0023】
特定の実施形態では、前記第1の部分は、前記第1の部分の残りの部分よりも前記開口部においてより大きな断面積を有し、前記導管は、前記水域から前記ダクト内への前記到来波の流れを加速するように、前記開口部の前記入口から前記第2の部分へ向かう方向に移動するときに断面積が小さくなる。この一形態では、前記第1の部分の前記入口の使用時の最上部および最外部領域は、使用時に、前記水域の前記MSLの上方で部分的に延在するように配置される。特定の一形態では、前記第1の部分の最上面は、前記開口部の前記入口から前記第2の部分に向かう方向に移動するときに下方に傾斜する。
【0024】
特定の実施形態において、第4の態様のダクトは、他の点では第1の態様において記載された通りである。
【0025】
第5の態様では、振動する作動流体からエネルギを抽出するための装置の実施形態が開示され、前記装置は、前記作動流体の流路を画定するハウジングと、使用時に前記流路内の前記作動流体と流体連通するように前記ハウジングに配置されたエネルギ変換ユニットと、前記流路と流体連通する流れ制御手段であって、使用時にアクティブ構成とバイパス構成とで前記流路の構成を選択的に変更可能であり、前記アクティブ構成は、前記作動流体がエネルギ変換ユニットに作用し、前記バイパス構成は、前記作動流体が前記エネルギ変換ユニットを迂回する、流れ制御手段と、を備える。
【0026】
特定の実施形態では、使用時に、前記流れ制御手段および前記エネルギ変換ユニットは、作動流体の流れが前記流れ制御手段を介して前記流路を出るように、および作動流体の流れが前記エネルギ変換ユニットを介して前記流路に入るように、順次的に動作するように構成される。
【0027】
特定の実施形態では、前記ハウジングは、海に隣接して位置する振動水柱を含むように構成され、前記エネルギ変換ユニットに作用する前記作動流体の方向は、通過する波の落下に関連する。
【0028】
特定の実施形態では、前記エネルギ変換ユニットがタービンロータを含む。
特定の実施形態において、第5の態様の装置は、その他の点では第1の態様において記載された通りである。
【0029】
第6の態様では、振動する作動流体からエネルギを抽出する方法の実施形態が開示され、前記方法は、
(i)前記振動する作動流体を受け取る流路を画定するハウジングを少なくとも部分的に波を有する水域に配置するステップと、
(ii)前記振動する作動流体と流体連通するようにエネルギ変換ユニットを配置するステップと、
(iii)アクティブ構成とバイパス構成とで前記流路の構成を選択的に変更するための流れ制御手段を提供するステップであって、前記アクティブ構成は、第1の所定の方向に流れるときに前記作動流体が前記エネルギ変換ユニットに作用し、前記バイパス構成は、第2の所定方向に流れるときに前記作動流体が前記エネルギ変換ユニットを迂回する、ステップと、
を含む。
【0030】
特定の実施形態では、第6の態様の方法は、他の点では第3の態様で記載された通りである。
【0031】
第7の態様では、振動波柱エネルギ捕捉装置を水域の沖合位置に配置する方法の実施形態が開示され、前記方法は、
(i)前記装置自体が浮揚補助具を備えており、前記装置を、動作可能な水中浮遊式のプラットフォームに配置し、
(ii)前記プラットフォームと前記装置とを前記水域に浮かべ、
(iii)前記プラットフォームと前記装置とを前記水域内の所定の位置に移動させ、
(iv)前記プラットフォームを水没させて前記装置から分離させ、それにより前記装置を前記浮揚補助具によって前記水域に浮かせた状態にし、
(v)前記装置が部分的に水没して意図された動作使用のために前記所定の位置で水域の床上に静止することができるように、前記浮遊補助具を取り外す、ことを含む。
【0032】
特定の実施形態において、エネルギ捕捉装置は、他の点では第1または第5の態様において記載されている通りである。
【0033】
本要約および明細書全体を通して、略語MSLは「平均表面水位」または「平均海水面」のために使用され、水域における特定の場所での平均低水位と平均高水位の間の中間点として定義される。MSLは、特定の水域の表面の平均高さを意味し、また、波高またはトラフの変動を測定することができる垂直深さ基準点を表す。
【0034】
本開示の態様、特徴、および利点は、本開示の一部であって例として開示された任意の発明の原理を説明する添付の図面と併せて読むことにより、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
添付の図面は、説明される様々な実施形態の理解を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本開示の第1の実施形態による、水域からの波などの振動流体からエネルギを抽出するための装置の前方斜視概略図である。
図2図2は、図1による装置の後方斜視図である。
図3A図3Aは、MSLに直交する断面A―Aに沿って見た図1による装置の概略部分断面側面図であり、装置に向かって移動する波の発端時の図である。
図3B図3Bは、MSLに直交する断面A―Aに沿って見た図1による装置の概略部分断面側面図であり、波が装置を通って移動し、気体が変位して流体制御装置から流出する時の図である。
図3C図3Cは、MSLに直交する断面A―Aに沿って見た図1による装置の概略部分断面側面図であり、波が装置から水域に向かって戻り、流体制御装置が閉じられ、気体が一方向タービンを通って流れの中へ引き込まれ、タービンを回転させ、電気エネルギを発生させる時の図である。
図4図4は、本開示のさらなる実施形態による、水域からの波などの振動流体からエネルギを抽出するための装置の前方斜視概略図である。
図5図5は、図4による装置の後方斜視概略図であり、振動波柱の内部への最下部入口領域と、波貫通リップとを示している。
図6図6は、本開示のさらなる実施形態による、水域からの波などの振動流体からエネルギを抽出するための装置の概略部分断面側面図であり、波が装置を通って移動し、気体が移動して流体制御装置から流出する時の図である(挿入写真、弁が開く)。
図7図7は、図6による装置の概略部分断面側面図であり、波が装置から水域に向かって戻り、流体制御装置が閉じられ、気体が一方向タービンを通って流れの中に引き込まれ、タービンを回転させ、電気エネルギを発生させる時の図である。
図8図8は、本開示のさらなる実施形態による、水域からの波などの振動流体からエネルギを抽出するための装置の前方斜視概略図である。波エネルギ収集装置は、水中にある浮遊式ドック上に配置されて示されている。水没していない状態では、ドックは、装置の水中位置のために輸送船の後ろに牽引することによって動かすことができる。振動波柱装置はそれ自身が浮揚補助具を備えている。
図9図9は、図8によるエネルギを抽出するための装置の前方斜視図であり、装置は、水中ではない位置に示されている水中浮遊式ドック上に配置されており、装置とドックとが、水域上の装置の所定の目的地に向かう方向にタグボートの形態で輸送船の後ろに牽引されているところが示されている。
図10図10は、図8によるエネルギを抽出するための装置の前方斜視概略図であり、装置は水中浮遊式ドックから分離して示されている。装置(浮揚補助手段によって浮揚パネルの形で浮揚している)は前方へ引っ張られてドックから分離することができるように、ドックは水中で下降して示されている。
図11図11は、図8によるエネルギを抽出するための装置の前方斜視図であり、装置は水中浮遊式ドックから分離されて示されており、ドックは再び水中で上昇して浮遊している。タグボートは、波力エネルギ収集ユニットをドックの前方かつドックから離れる方向に引っ張っている。
図12図12は、図8によるエネルギを抽出するための装置の前方斜視概略図であり、装置は、その外側壁からブイパネル要素(浮遊補助具)のいくつかを取り外すことによって部分的に沈められているように示されている。これは、装置が水域内の所定の最終用途位置に移動したためである。ユニットは海岸線の海底でその位置に維持される。
図13図13は、図8によるエネルギを抽出するための装置の前方概略斜視図であり、装置は、海底に置かれて波を捕獲してエネルギを発生する、水中の最終位置に部分的に沈められているように示される。すべてのブイパネル要素(浮揚補助具)は側面から取り除かれている。繰り返し使用するために、浮遊式ドックおよびブイパネルは、すべてタグボートによって取り外されるように示されている。
図14図14は、本開示のさらなる実施形態による、水域からの波などの振動流体からエネルギを抽出するための装置の前方上面斜視図であり、装置は周囲の水域に配置されて示されている。
図15図15は、図14の装置の前方斜視概略図であり、装置は周囲の水域に配置されて示されており、図15は装置の上のタービンのより詳細を示している。
図16図16は、本開示の装置に基づいて開発されている大規模試作品の一方向空気タービンについての予測効率曲線を示すグラフである。
図17図17は、本開示の装置の一形態である、通気式振動水柱装置について見出されたエネルギ収支のグラフ描写である。
図18図18:実験データから、モデルスケールの空気チャンバ圧力の時系列プロット(上のプロット)、及び下のプロットでは、隣接する入射波プローブの水位(破線)と平均表面高度(実線)。
図19図19:実験データから、規則的な波から導き出された試験波エネルギ捕捉装置の空気圧力の結果(237データポイント)。
図20図20:実験データから、規則的な波から導き出された試験波エネルギ捕捉装置の空気圧効率(237データポイント)。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示は、振動する作動流体、例えば使用中に装置に繰り返し出入りする海の波からエネルギを抽出するための装置の特徴に関する。本開示はまた、到来波の捕捉を最大化する装置の特徴に関する。本開示はまた、生成されるエネルギ量を最大にするために装置を操作および制御する方法に関する。装置は、当分野で知られている技術よりも単位流体流れ当たりの大きなエネルギ発生を可能にする設計を有する。
【0037】
図面を参照すると、図1および図2に示される装置は、2つのアーム部分12、14を有するダクト10を備え、各アームは、断面がほぼ長方形で互いに直角に配置され、ダクト10を側面から見たときに概してL字形に接続される細長い導管を備えている。(更なる実施形態では、本説明における参照を容易にするために、同様の部分には同様の符号を付している)。
【0038】
ダクト10の第1の導管12は、使用時に、当該導管12が配置されている水域16の平均表面レベル(MSL)よりも実質的に下に沈むように配置され、例えば、海岸線で砂および岩盤18に置かれ、その細長い軸が砂および岩盤18と整列するように概ね水平に向くように配向される。
【0039】
第1の導管12は、水域から流れ込む到来波を受けるように配置された長方形の開口部20を有し、この開口部20は、例えば海または湖など波の源である水域の中へ外側に向けられている。図1に示すように、開口部20からダクト10の内部に向かって第2の導管14に向かう方向に移動すると第1の導管12の断面積が小さくなるため、口部20の断面積は、第1の導管12の残りの部分のどの点の面積よりも大きい。この固体壁の第1の導管12の概して先細りの効果は、水域16からダクト10への到来波の流れを加速することであり、その理由は振動流が使用中に生成されるときに明らかになるであろう。
【0040】
図示の実施形態では、第1の導管12の上壁22の一部は、下方に傾斜しており、使用時に砂および岩盤18の上に載置される平らなベースフロア24に向かって傾斜している。垂直側壁26は、平らなベースフロア24と第1の導管の上壁22との間に延びる。図示の実施形態では、第1の導管12の先細り入口領域は、導管12の長さの約3分の1だけ延びているが、これは他の実施形態では異なる割合であり得る。例えば、第1の導管は、その全長にわたって傾斜した上壁と、平らなベースフロア24と、それらの間に延在する垂直側壁26とを備えていてもよい。別の実施形態では、第1の導管は、開口部からダクトの内側に向かう方向に移動するときに、導管の長さの一部にわたって互いに向かって内側に傾斜している上壁およびベースフロアを有し得る。さらに別の実施形態では、第1の導管の側壁も、開口部からダクトの内側に向かう方向に移動するときに断面積が減少するように幅が狭くなる導管を形成するように、内側に先細りになるように傾斜し得る。
【0041】
図面に示される実施形態では、第1の導管12の口部20の最外部および最上部領域28は、使用時に、口部20が配置される水域16のMSLの上方に延びるように配置され、口部20の波貫通リップ30を形成する。この特徴によって、特に水域の動きが粗いか荒れている場合に、水域16からダクト10へのより多くの到来波の流れを補足して導くことを促すことができる。
【0042】
ダクト10の第2の導管14は、使用時に、導管14が配置されている水域16のMSLの上に実質的に延びるように配置され、その細長い軸が第1の導管12の軸に対してほぼ垂直となるように配向され、第1の導管12を通って流れた後の到来波から水を受け取るように配置されている。到来波が第1の導管12を通ってダクトの第2の導管14に入った後、第2の導管14から第1の導管12を介して自由に逆流して水域16に戻ることにより、水域16の海岸線における波の出入りの流れと一致するように設けられるダクト10内に振動する水流を生じさせる。第2の導管14は、第1の導管12を通って流れた後に到来波から受けた最大水位32を超える高さまで延びる。最大水位32より上に位置する気体(典型的には空気)は、簡単に後述するように、第2の導管14の最上部領域から追い出され、その後引き戻され得る。
【0043】
振動する水流を補助するために、導管12、14が接合されている移行面におけるダクト10の内部の寸法は同じである。また、第1および第2の導管12、14は、2つの導管12、14の接合部に配置された平面傾斜部34の形態の流れ方向制御セグメントを有し、水が逆方向に振動するとき、到来する水の流れがダクト10内で水平軸方向流れから垂直軸方向流れ方向へ、続いて垂直軸方向流れから水平軸方向流れ方向へ、そして、ダクト10から水域16に向かう外向きへの流れへと、変化することを可能にする。流体がダクト10内に進むにつれて第1の導管12の断面積が狭くなると流体速度が増加し、ダクト10内に形成された流体柱をより速く振動するように駆動させることができる。
【0044】
第2の導管14の最上部領域36内で、到来波から受け取られるときの最大水位32の上には、移動可能な空気があり、自動的に開く、または揺動するもしくは開くように配置され得るバタフライ弁または一方向逆止弁38の形態のいくつかの流れ制御装置を介して最上部領域36から出ることができる。第2の導管14の内側の(そして最大水位32の上方の)最上部領域36は流路40を画定し、一方向タービン44と流体連通する。本明細書に示す実施形態では、弁38およびタービン44は流路40と直接流体連通しており、つまり、流路40に出入りする空気の移動がタービンに達する前に弁を通過しない、又はその逆である。言い換えれば、これらの弁およびタービンは互いに直列に配置されているのではなく、むしろ互いに平行な動作構成で配置されており、第2の導管14の内側で、流路チャンバ40の壁の間隔をあけて離れた開口部に配置されている。こうした配置によって、流路40の構成を選択的に変更することが可能になり、その結果、作動流体(空気など)はタービンに対して一方向に作用することができ、あるいは代わりにバイパス構成で(すなわちタービンをバイパスして)動作して、排出弁を介して一方向に流れることができる。後述するように、流路40の最上端において、これらの弁およびタービンは海、湖または他の水域の水位の到達範囲の上方にある。
【0045】
ここで図3Aを参照すると、ダクト10に向かって移動する波の開始の時が示されており、波貫通リップ30および第1の導管12の狭い断面積は、到来波をダクト10内に案内する働きをする。図3Bでは、波はダクト10を通って矢印42の方向に移動し、最上部領域36の流路40内の空気の一部はダクト10内の垂直方向に上昇する水によって置換され、バタフライ弁または一方向逆止弁38から流出し、大気中に排出される。弁38は、軽い羽根のような動きをするように設けられているので、流路40から出る空気の流れは弁38を開くのに十分であり、一方向タービン44を介してかなりの量の空気が流路から出るのではなく、ダクト10から出る抵抗が最も少ない経路を提供する。
【0046】
図3Cでは、波は次に、口部20を介してダクト10から出て、図3Bに示す到来波の方向42と反対の方向である矢印46の方向に水域16に向かって移動する。外側方向46への流れの結果として、大気は、流出する水によって作り出される吸引力によって最上部領域36内の流路40内に引き込まれる。バタフライ弁または一方向逆止弁38は完全に閉じられるため、空気は、一方向タービン44を通してしか吸い込まれず、この空気流がタービン44を回して電気エネルギを発生させる。
【0047】
いくつかの他の実施形態では、流出する水によって作り出される吸引力によって大気が最上部領域36の流路40内に引き込まれるときに、弁は、そうした空気流を完全に閉鎖するのではなく、空気流を制限するタイプのものであり得る、または部分的閉鎖位置に配置され得る。しかしながら、流路40に引き込まれる空気の大部分は一方向タービン44を介している。したがって、流路40に出入りする空気の流れの両方は、ダクト10内で振動する水の振動に反応すると共に、当該振動によって生成され、特定の場所で繰り返される波の流れの周波数によって設定される。
【0048】
本明細書に開示されるさらに他の構成では、図3Bおよび図3Cに示される流れの状況が逆にされて、波がダクト10内に移動すると最上部領域38の流路40内の空気が水の上昇によってダクト10内で移動して一方向タービン44から流出し、大気に放出される。このような構成では、波が口部20を介してダクト10から出て水域16に向かって移動すると、大気が、バルブ38を介して流路40に引き戻される。バルブ38は、一方向性のタービン44を通って流路40内に達することができる空気流よりも、流路40内に一方向に開きやすいように構成されている。しかしながら、本発明者の研究によれば、こうした構成の効率は、図3Bおよび図3Cに示す流れの状況によって達成される効率よりも著しく低いことが立証された。最大の発電機能が提供されるのは、流路40への空気の吸込みのダウンストローク(すなわち、振動する水チャンバからの波の落下、又は引き抜き)のときであり、この構成でのタービン44の回転によって生成されるエネルギは、(i)双方向タービン、又は(ii)到来する海洋波からのようなダクト内へのおよびタービンへの空気圧のアップストロークの圧力を使用することによって達成可能なエネルギよりもはるかに大きい。(後者はエネルギの面で最も弱い)
【0049】
図4および図5に示される実施形態を参照すると、幾分異なる外観のダクト10が示されている。全ての点において当該実施形態は前述した実施形態と機能的に類似している。各アーム部分12、14は、断面がほぼ長方形の細長い導管を備え、これらの部分は互いに直交して配置され、ほぼL字型の構成で接続されている。
【0050】
ダクト10の第1の導管12は、使用時に水域の平均表面高さ(MSL)より下に実質的に沈むように配置され、その細長い軸が砂および岩盤18と整列するようにほぼ水平に配向される。第2の導管14の最上部領域36には、バタフライ弁または一方向逆止弁38の形態の多数の流れ制御装置があり、これらは自動的に開くことができ、または揺動または開くように配置され得る。第2の導管14の内側の(そして最大水位32の上方の)最上部領域36は流路40を画定し、流路40も一方向タービン44と流体連通している。
【0051】
本発明者によって採用された幾何学的設計の特徴は、ダクト10の前面への波の負荷を軽減するために、図5に示される傾斜した前縁および尖った弓33の導入を含む。
【0052】
図14および図15に示す実施形態を参照すると、幾分異なる外観のダクト10が示されている。全ての点において当該実施形態は前述の実施形態と機能的に類似している。機能を説明するために、同様の符号が使用されている。
【0053】
さらに他の実施形態では、弁38は、それらの開閉構成を制御するための制御機構を備えている。例えば、弁は、ヒンジ式移動、スライド式移動、又は回転式移動によって、ゲートの断面開放通路の少なくとも一部を覆って気体の流れに対して開閉することができるゲートを有してもよい。さらに他の実施形態では、使用される弁は、流路40に出入りする振動空気の圧力および/または流れの方向の変化に応答するように他の任意の適切な向きに構成され得る。
【0054】
重要なことに、第2の導管14の最上部領域36の流路40内の置換可能な気体へのアクセスは、1つ以上の弁38(または他の形態の流れ制御装置)および一方向タービン44を介して可能であるため、システムは、流れチャンバへの各形態のアクセスを別々に、そして順次的に他方へと操作するように構成され得る。そうすることによって、従来技術の構成、つまりシャフト上で一方向に回転するタービンを使用して双方向に対処することができる新しいタービン設計の開発に多くの場合焦点を合わせている発電用の従来技術の振動水柱における構成よりも、タービン44の設計をかなり単純にすることができる。このような従来技術の装置では、第2の導管の最上部領域の流路内の気体は、ダクト内の垂直方向に上昇する水によって置換され、一方向タービンから流出して大気に放出されるものの、吸引によって流路に戻るには、同一の一方向性タービンを介して反対方向に流れる必要があり、非常に複雑な調節可能な流れタービン設計を必要とする。
【0055】
本システムでは、タービン44は基本的に公知の設計のものであり、回転シャフトの一端に配置された中央ハブ50と、ハブ50の周囲に配置され且つハブ50の周囲から延びる複数のブレード52とを備えるロータ48を有し、ロータ48は、流路40と流体連通するようにハウジング54内に配置されている。タービンブレード52の形状、及びハブ50に対するそれらの向きは、タービンハウジング54を通る気体の一方向の軸方向流れに応じ、タービンロータ48の一方向の回転を促す。
【0056】
このタイプのタービンでは一般的であるように、発電機はタービンによって回転して電気エネルギを発生するように構成され、タービン44の駆動軸の端部に接続され、駆動軸の他の端部でハブ50の位置に接続される。
【0057】
記載されたシステムは、振動する空気の圧力および/または流れの方向の変化に応答するように弁38の向きを調整することができるので、既知の従来技術に対して他にも重要な動作上の利点を有する。例えば、ダクト10内の振動水柱の周波数を「同調」して、MSLの上方に延びる部分で第2の導管14に配置された多数のバルブ38を開閉することによって、海洋からの出入りする波の移動の周波数に合わせることができる。こうすることによって、ダクト10内の上昇水に面する第2の導管14の最上部領域36内の流路40内の空気圧抵抗を調整することができる。ダクト10に出入りする振動水柱の周波数が、水域16からの出入りする波の周波数と実質的に一致する場合、ダクト10内の振動流が常に波のシークエンスから外れて余分な乱流およびタービン44内への非効率的な空気の引き込みを受ける状況で動作する必要がある場合よりも、エネルギ抽出装置の動作はより円滑かつより効率的になる。
【0058】
ダクト内の振動水流の周波数のこうした「同調」は、例えば出入りする波の圧力の測定された変化に応答する制御機構を使用して弁開口部の調整を自動化することによって、全体的な波浪条件に応じて連続的に実行できる。このような構成では、制御機構は、1つ又は複数の弁38を選択的に開閉する(または部分的に開閉する)ことができる。この調整は、本発明者によって「最適通気比」として定義されている割合である、MSLよりも上にある第2の導管14の全表面積の割合として、第2の導管14の最上部領域36における流路40に出入りする利用可能な開口部の断面積を変えることができる。一例では、最適通気比は15%未満であるが、10%未満の最適通気比も適切であり得る。平均的な波の高さと波の周期とに応じて(海の状態は非常に穏やかである又は非常に荒いかもしれない)、振動水流がダクト内10に滞在する時間を最適化するために、より低い又はより高い最適通気比、例えば1%が求められ得る。
【0059】
ダクト内の振動水流の周波数の「同調」のさらに別の例では、例えば嵐の間など、全体的な波浪状態が危険である又は荒れている場合、弁開放制御機構を使用して、十分な数の弁38を閉じて閉鎖し、それによって流路40内に空気圧の頭が確立されるようにすることができる。このような「離調」は、海洋からの最も強い波がダクトの中に届いて遠くまで到達することを排除することによって安全機能として働くことができ、そうすることで、弁およびタービンを嵐の被害から守ることができる。
【0060】
図2に示されるように、ダクトの第2の導管14の最上部領域36は、ダクト10の後部の上部垂直側壁56に示される4つのバタフライ弁38と、第2の導管14の最上部領域36の上部水平壁に示される3つのバタフライ弁38とを有する。他の実施形態では、ダクトの初期構築時に、こうした数より多い又は少ない数の弁38を、設置場所および予想される波の程度に応じて設置することができ、それにより、特定のダクトの可能な最大通気比を変える設計上の特徴である。他の実施形態では、弁の種類も変えることができ、またダクトに合うように異なる種類の弁を組み合わせること可能である(バタフライ弁、一方向チェック弁など)。
【0061】
波がダクト10に入るときに弁38を開き、続いて弁38を閉じ、波がダクト10を出るときに空気がタービン44を介して第2の導管14に引き込まれるという繰り返しステップが行われ、安定したパターンに達すると、タービン44および発電機は、絶縁された高電圧銅ケーブルによってダクト10(沖合に位置する場合)から陸上(海岸上)に伝達することができる電気エネルギを生成する。
【0062】
サイズの一般的かつ非限定的な指標として、典型的なダクトは、約8~10メートルの第1の導管長さ、および配置される水域または海域の底部表面上で15~18メートル延びる第2の導管を有する。ダクトの構造は、腐食性の塩分のある環境において、海洋の波によって繰り返し作用する圧力に耐えることができるような重量および強度を有するように、典型的には鉄筋コンクリートで作られる。
【0063】
本発明者は、新しいエネルギ抽出装置を用いた実験結果から、双方向の空気流で動作するように構成された一方向タービンではなく、一方向の空気流で動作するように構成された一方向タービン44からのエネルギ捕捉が大幅に増加することを発見した。同等の運転期間では、波がダクト10から水域16に向かって移動して空気がタービン44を通って流路40内に引き込まれるときに、生成されるエネルギは、流れが同じ方向に動作する既知の双方向タービン設計を使用して達成され得るよりも16%優れている。この改善された結果は、第2の導管14内に位置する振動水柱の下向き静水圧ヘッドと、水域16から水を引き出す際の水の引き込みとの組み合わせによって引き起こされると考えられる。したがって、本システムは、異なる装置を使用して流路40に関して空気の排出および吸い込みの両方のステップを分離するように構成することができるので、ダクトからの波の流出に応答して作動し最高の位置エネルギを有する気体流れのみからエネルギを捕捉することが可能である。
【0064】
本発明者はまた、新規のエネルギ抽出装置を使用した実験結果から、波貫通リップ30の特徴が第1の導管12の開口部20に追加されたときにエネルギ捕捉が大幅に増加することを発見した。ダクト10内への到来波の流れの加速された搬送は、こうした特徴を有しない既知の振動ダクト装置と比較した場合、発生させることができるエネルギにおいて更に20%の改善をもたらす。この特徴はダクト10内により多くの流体をもたらし、続いて、波がダクト10を離れるときにタービン44を介して第2の導管14内の流路40内に引き込まれる空気をより多く引き起こす。本開示の波貫通リップ30は、特定の位置における波のMSLの上にほぼ常に視認できるように配置されている。
【0065】
振動流体ダクトのような重くて丈夫な装置を水域の端で水の中に安全に配置することは困難である。したがって、発明者は、水中浮遊式ドック35(乾式ドックなど)を使用して装置を位置決めする方法を考案した。図8図13のシーケンスを参照されたい。
【0066】
水没していない状態では、ドック35は、装置10の水中位置のために輸送船37の後ろで牽引することによって動かすことができる。振動波柱装置10それ自体は、最終段階での位置決めに必要とされるときに使用するための浮選補助具41を備えている。組み立てられた振動流体ダクトの設置の準備が整うと、振動流体ダクトは上記の水中浮遊ドック上に配置される(または構築段階中にそのプラットフォームの上に構築される)。水没していない浮遊ドックおよびダクトは、長いケーブル39を使用して輸送船、例えばタグボートの後ろに牽引して、水域上で装置の所定の目的地、例えば海洋の縁/波の縁領域に向かう方向に移動することができる。
【0067】
最終的な場所に近づくと、浮遊式ドックは水没し、ダクトは自身の浮揚補助具によって水中に浮かぶままになる。これらの浮揚補助具は、中空ブイパネル、膨張式ガスバルーンなどのような多くの形態であり得る。浮遊ダクトと水中浮遊ドックとが互いに離れると、浮遊ダクトは自身で所望の最終作業位置に短い距離だけ牽引され、浮遊補助剤は除去される又は収縮させられる。ユニットは、その後に海岸線の海底の位置において重力の下で落ち着き、波を捕獲してエネルギを発生させる水中の最終位置に部分的に沈められたままになる。
【0068】
水中ドックを使用することによって、最終的な設置のために遠い海岸線に到達するために外洋を横切って移動するときに、こうした大型の装置を取り扱うことの安定性などの大きな利点が提供される。浮遊ドックは、荒天時にダクト装置の転覆または沈下の危険性を最小限に抑える。
【0069】
実験セクション
波エネルギ変換器(WEC)としての振動水柱(OWC)の本実施形態についての実験的性能結果が示される。本装置の動作原理は、空気弁を利用し、正圧時に開くことによって空気チャンバを通気し、空気チャンバ圧力が負になったときに閉鎖することによって一方向空気タービンのパワーテイクオフ(PTO)を通して空気を引き込む。結果は、通常の海と不則の海の両方で示されている。
【0070】
試作品の上部リップ及び前壁の幾何学的形状は、装置の動作特性に好影響を与えると考えられる設計上の特徴である。実験結果は、この一方向試作品が広範囲の波周波数にわたって非常に優れた環境発電能力を示すことを示している。
【0071】
OWCは、部分的に海底に沈んで位置し、水中の開口部を通って海に開口される大きな中空のコンクリート製のチャンバである。また、チャンバは、空気タービンが収容された水ラインの上方大気への小さな開口部を有している。
【0072】
波の山と谷が通常のOWCを通過すると、水はその水没した開口部を通ってチャンバに出入りする。この水はチャンバ内で上下し、上方に閉じ込められた空気の圧力を正圧と負圧の間で振動させる。いくつかの過去の実施形態では、こうしたときに安定して電気を発生させることを試みて、圧力変動によって、空気をチャンバの頂部で双方向タービンを通過させていた。
【0073】
本開示のOWCと従来のOWCとの間の基本的な概念上の違いは、タービンに一方向からの空気流のみが作用することである。受動空気流弁は、空気がチャンバから逃げることができるが戻ることはできないようにする。これはよりタービン設計上の制約を簡易にし、タービンが一方向の空気流に対して最適化され得ることを意味する。また、タービンは低い摩擦損失を示す。
【0074】
空気が波のサイクルの半分だけの間空気タービンを通って導かれるとしても、全体の波のサイクルからのほとんどすべてのエネルギ(従来の乱流および摩擦損失を差し引く)が抽出に利用可能である。このプロセスは、図17に示すエネルギ収支によってさらに詳しく説明される。
【0075】
A.一方向空気タービンパワーテイクオフ
OWCの空気圧によって引き起こされる空気流から電力を抽出するために、従来のステータプラスロータ型タービン設計が発明者によって開発された。単段タービンは、広範囲の圧力降下条件にわたって一方向の空気流入に対して作動する。タービンの差分空気圧(Δp)に対する予測タービン効率は、Aoleus平均線タービン性能解析で生成された図16に示されている。-30kPa(トルクに角速度を掛け、圧力損失と体積流量の積で割って測定された)までの代表的な運転範囲における加重平均タービン効率は、650RPMの一定のタービン回転速度に基づいて77%である。
【0076】
B.WSC OWCジオメトリ
発明者によって採用された幾何学的設計の特徴は、図5に最も明確に示されている傾斜した前方リップと尖った弓の導入を含む。これらの幾何学的な機能強化は、水力性能を改善し、OWC前面の波荷重を軽減する観点を含む。
【0077】
C.キング島試作品
キング島は、バス海峡の西海岸に位置し、タスマニアとオーストラリア本土の間にほぼ等距離にある。島の人口は約1700人で、風力タービン、幾らかの太陽光発電、蓄電池で構成され、ディーゼル発電で補完された独自のグリッドシステムによって発電されている。
【0078】
キング島のパイロットプラントプロジェクトは、平均海面深度10メートル、海岸から約700mに位置する。このプロジェクトのためのOWC装置の新規な設計は幅20メートルで、公称ピーク発電能力は1MWである。この場所の波浪気候は45kW/mを超えており、波エネルギ資源の点において世界で最も優れていると評価されている。適切なグリッド接続の近くに位置する提案場所の水深測量調査と海底プロファイリングが完了している。
【0079】
実験設定
長さ35m、幅12m、深さ1mが可能であるが333mmの深さが満たされ、試作品の実物大で10mの深さに相当するオーストラリア海事大学のモデル試験流域(MTB)で実験を行った。MTBは、一端に16ピストンタイプの波作成器パドル、他端に受動ビーチを備えている。モデルは波作成器から12mのMTBの中心に配置した。
【0080】
1:30スケールのモデルが、内部チャンバの水位の目視観察を可能にするために透明なアクリルの側面を有する合板から製造された。3Dプリントされた受動チェック弁本体がモデルの背面と側面に取り付けられ、アセテートシートが本体の上端に軽くヒンジで取り付けられ、最小の正のチャンバ空気圧で弁を開くことができる。パワーテイクオフ(PTO)は、単段タービンのものと同様の非線形の圧力/流量関係を示すオリフィスプレートを用いてシミュレートされた。
【0081】
空気チャンバ差圧は、チャンバールーフの各側部と上部クリアボックスの側部とにある3つの別々の圧力トランスデューサ(海洋制御計器用増幅器(Ocean Controls instrument amplifier)KTA284によって調整された1psi ハネウェル TSCセンサ)を用いて観測した。各圧力センサは、ほぼ同じ値を示すことがわかった(たとえば、図18を参照)。チャンバの水面の高さは6つの抵抗波プローブによって観測した。波プローブは、HR Wallingford波プローブ信号調整ボックスを介してデータ取得システムに接続した。
【0082】
データは、BNC端子ボックスに接続された16ビットのナショナルインスツルメンツのPCIカード(NI PCI-6254)を使用して200Hzのレートで取得した。データ記録は、波のパドル運動によって開始され、規則的な波について30秒間、不規則な波について600秒間(30分フルスケール相当)の期間記録された。
【0083】
方法論
A.海の状態
本解析では、規則的な波と不規則な波の両方を調査した。フルスケール等価不規則波(JONSWAP)を表1にまとめた。テストされた不規則波条件は、キング島の試験領域で発生すると予想されるものに基づいて選択された。試験された規則的な波は、不規則な波の高さおよび周波数をカバーするように選択された。波キャリブレーションテストは、流域でWECモデルなしで実施された。
【0084】
【表1】
【0085】
B.空気圧
空気圧は次のように計算される。
【数1】
ここで、Δpはチャンバ差圧で、Qは空気の体積流量である。
選択されたモデルスケール(1:30)のため、空気圧縮率は無視できると考えられる。空気流入量は、次式を使用して空気チャンバ差圧から計算される。
【数2】
ここで、C=0.6はオリフィス排出係数、A=0.00111mは絞りオリフィスの断面積、ρ=1.4kgm-3は空気密度である。現場キャリブレーションでは、空気流入に対する係数がC=0.691であることが測定され、C=0.6は流れ推定にとって合理的かつ保守的であることを意味する。チャンバは空気弁を有するので、空気流出量は発電には寄与せず、さらに、Aが可変になるため空気圧差を用いて空気流出量を確実に予測することは不可能である。
【0086】
C.到来波パワー
次式によって中間水深計算を利用する線形理論で規則的な波のパワーが計算される。
【数3】
ここで、Eはエネルギ密度(単位表面積あたりのエネルギ)、Cは中間水深で解析された波群の精度、ρ=1000kg-3は水の密度、g=9.81ms-2は重力加速度、hは、山から谷まで測られた波の高さである。平均不規則波パワーは
【数4】
ここで、√mを有するhm0=4√mは、最初のスペクトルモーメント(波記録の標準偏差に等しい)である最初のスペクトルモーメントであり、Tは、(スペクトル解析から導き出された)エネルギ周期(m-1/m)である。
【0087】
D.空気圧効率
空気圧効率は、引き起こされた空気圧力を装置の幅方向の等価波パワーで割った比として定義される
【数5】
ここで、Wは、波面を向いた装置の幅である。
【0088】
E.結果のスケーリング
結果は表II(λ=30)のように単純化したFroude Similitudeスケーリングを使用してフルスケールにスケーリングし、水密度の差は無視した。
【0089】
【表2】
【0090】
F.エネルギ収支
エネルギ収支とは、エネルギ源から一時的な貯蔵部へ、そして最終的にシンクへのエネルギの流れを視覚的に表現したものである。図17は、空気弁用の追加経路を有するOWCのエネルギ収支を示す。実線と矢印は、システム内のエネルギの流れの可能な方向を示している。破線は、あまり重要ではないエネルギフロー接続を示している。100%の空気圧変換効率のためには、すべてのエネルギが入力波(ソース)からパワーテイクオフ(シンク)まで流れなければならない。
【0091】
実際には、水の波のすべてのエネルギを抽出できるわけではなく、一部のエネルギは無効な形(境界効果などの粘性損失、または渦放出などの乱流損失)に変換され、WECから反射またはWECを回折する。任意のタイプのOWC WECの主なエネルギ経路は、到来波から水柱上昇へ、そして空気チャンバと大気との間の圧力差によって駆動されるパワーテイクオフ(エアタービン)への経路である。双方向エアタービンを備えたOWCでは、空気弁が存在しないため、圧力差がサイクル全体でタービンを駆動する。
【0092】
空気弁が存在する構想では、変換サイクルの前半に水位が上昇し、空気チャンバの圧力が上昇する。続いて空気が空気弁を通って流れ、水柱が上昇するにつれて位置エネルギの形でエネルギも貯蔵される。式(1)によって定義されるように、空気圧パワーは、空気差圧(Δp)と空気流量(Q)との積である。サイクルのこの半分の間に空気弁(及びタービン形状に基づくPTOもありうる)を通して失われるエネルギは、その期間の空気圧パワーの積分である。
【0093】
主な目的は変換損失を最小にすることであるので、弁によって消費される電力は最小にされなければならない。式(1)を物理的に考察すると、これは、水柱が上昇するときの最大エネルギを可能にするために空気流れは妨げられるべきではないため、圧力差を最小にすることによってのみ達成可能である。実際には、これは空気弁の面積を最大にし、低い背圧を有する弁を利用することによって達成される。
【0094】
サイクルの後半では、水位が下がり始め、空気チャンバに負圧が生じる。空気弁が閉じて、すべての到来波のエネルギに加えて水柱上昇に蓄えられたエネルギがPTOで利用可能になり、WSE構想の場合には特注の一方向空気タービンである。
【0095】
図18は、空気チャンバ圧力、チャンバ水柱上昇(貯蔵)、及び水柱に隣接する通過する水面プロファイル(入射波)の間の関係を示す実験データのプロットである。チャンバの水位(空気弁によるエネルギ損失が最小)が上昇している間は空気チャンバの圧力がわずかに正になり、チャンバの水位が低下している間は有意に負になる。
【0096】
結果
次のセクションでは、規則的な波と不規則な波の両方にさらされたときの向い波での装置の電力性能について結果を示す。実物大の推定結果と効率の結果の両方が示されている。
【0097】
規則的な波の結果
図19は、フルスケールに外挿した規則的な波の空気圧パワーの結果を示す。結果は波作成器の237の別々の実行からまとめられた。発生した波の高さが所望のものからずれているので、空気圧パワーに対する線形補正(1+(h-h)/h、ここで、hは所望の高さであり、hは実際の山から谷までの高さ)が適用された。より大きな波高(2.7および3.0m)では、出力はいくらか不安定に思われ、これは、チャンバと前方リップを通り過ぎる大気との間の別個の大気接続のためにチャンバ内の水位が十分に低下したために、チャンバからの圧力損失が影響していることがわかった。
【0098】
波の周期が変化すると、8秒から12秒の間にほぼ一定の空気力が発生し、その後13秒から16秒の間に落ち込み、16秒から18秒の間に緩やかな増加と平準化が続いたことが理解される。
【0099】
図20は、規則的な波で作動する装置の空気圧効率を示す。ピーク効率は、8秒より前で、約1から1.1の間の値で発生することが見られた(より低い波高について改善する)。空気圧効率は、12秒に、約0.8から0.9である低い第2のピークが存在し、この第2のピークは前方リップおよび尖った弓形状と関連していると考えられた。12秒を超える波の期間では、効率は、14秒より後で、0.3から0.5の間に安定するまで急速に低下する。
【0100】
より長い周期の波はより短い周期の波よりも多くのエネルギを概して含むので、より長い周期の波に対する効率の損失は幾分か有害ではないと考えた。しかし、図19に戻って参照すると、13秒から15秒の間の波の期間で空気圧性能が依然として著しく低下しており、将来の研究のために表にしている。
【0101】
不規則波の結果
予測されたフルスケール空気パワー行列結果が、2次元線形補間を実行するためにグリッドデータ関数を使用して合計47の異なる波記録から計算された。規則的な波の結果と同様であり、空力発電は、11~13秒のピーク期間(T)の間に発生するピーク平均発電量で、より低い周期の波に向かって最良であった。同様に、効率は13秒以下のすべてTで0.5を大幅に超えた。
【0102】
討論
空気圧縮率は、フルードスケールの外挿モデル試験結果と比較して、実際の海域での空気圧性能が低いことが知られている。他の研究者たちは、3D数値コードを使ってこの問題を調査し、従来のOWC PTOでは過大評価が12%程度であることを発見した。この単純な補正は、結果に応じて空気圧力推定結果を減らすことによって性能推定値に適用することができる。しかしながら、効率の低下は空気圧縮性容積に関係することも知られている。本開示の新しい構想のOWCはチャンバの水位をより高く上昇させるので、結果としてチャンバの空気量は減少する。ただし、この構想には、レアファクションのみが含まれ、圧縮性は含まれないため、12%の推定誤差が多少極端になる可能性がある。さらに、スケーリングの問題を補正するために、保守的な流動係数0.6(計算された0.691ではなく)が十分に保守的な見積もりであると考えられる。
【0103】
(前のセクションで説明したように)この新技術の強化された空気発電は、タービン効率(平均77.5%)および95%の想定電気変換効率と相まって、従来の双方向OWCと比較して出力の顕著な改善をもたらす。キング島領域で測定された波の気候と合わせて検討すると、パイロットプラントプロジェクトは472kWの平均出力を示すと予測される(1MWのピークユニットで47.2%の容量係数を意味する)。年間8,500時間の運用仮定を考えると、4GWhを超える年間エネルギ生産量になる。
【0104】
波に対するシステムの配線効率は、口語的に「電力出力を電力入力で割ったもの」として記載される。提案されたキング島パイロットプラント装置の平均「出力」は、すでに472kWと推定されている(上記参照)。「電力入力」は、平均入射波エネルギ密度(波の山のメートル当たりのkW)に装置の幅(メートル)を掛けたものとして定義される。キング島領域の波浪気候を詳細に評価すると、平均入射波エネルギ密度は52.87kW/mである。20メートルの装置幅を掛けると、WSE装置に入射する平均波電力(「電力入力」)が1057kWであることを示唆する。したがって、波に対するWSE装置の配線効率は44.6%と推定される。
【0105】
このレベルのエネルギ生産は、プロジェクトの予想されるフルライフサイクルコストと合わせて、最初の1回限りの商業プロジェクトのエネルギの平準化コスト(LCOE)が1kWhあたり0.13ドルであることを示す。同じ技術を利用した、25メガワット以上のマルチユニットプロジェクトのスケールメリットは、LCOEが1kWhあたり0.07ドル以下であることを示す。
【0106】
結論
新しい技術革新を取り入れたOWC技術の詳細が示された。この技術は、効率的な一方向空気タービンと共に使用するためのOWCの空気整流の問題に取り組んでいる。特注の形状変更と組み合わせた改正システムは、規則的な波と不規則な波の両方においてモデルスケールでテストされました。不規則な海での性能結果は83%のピーク空気圧効率をもたらした。規則的な波ではピーク空気圧変換効率は100%を超えることが分かった。これは、装置と入射波との共振が原因で局部波面が変化するためである。この現象は、OWCの前面に自然に入射するよりも多くのエネルギを装置に引き込むことになる。
【0107】
この新しい構想のOWC構成の変換効率における改善の最終結果は、エネルギ発生のコストの相応の減少である。キング島と似た波の気候を持つ場所での複数ユニット波エネルギプロジェクトでは、厳密な財務分析はLCOEが0.07米ドル付近であることを示唆している。これは、商業化段階の開始時におけるエネルギ技術にとっては並外れたものである。学習曲線の調査によると、このLCOEは今後10年間でさらに低下することが示されている。
【0108】
本明細書に開示される装置は、従来のOWC技術と同様に、従来の発電装置に対して多くの利点を有する。
- 入射波面との共鳴を達成するように動作することができる(タービン減衰特性をOWCに一致させる)。
- 柱/ダクトの寸法は、OWC構造の最適な流体力学的変換効率を用いて設計することができる(想定される入射波フィールドに対する部位特定のOWC設計)。
- 予想される圧力/流量特性に対するタービン性能/効率を最適化できる。
- 装置は、弁を閉じることによって損傷を防ぐために暴風雨状態で機械的に隔離することができる。堅牢な構造のため、嵐の中で吹き飛ばされることはない。
- 振動水柱(OWC)装置の実験的性能は、広範囲の波の周波数にわたって非常に良好な環境発電能力を示し、以前の双方向OWCと比較して出力に顕著な改善をもたらした。
- 波の作用のかなり上に安全に配置することができ、極端な条件に耐えるために、コンクリートケーソンによって要素から保護することができる、より単純でより効率的な一方向空気タービン。例示的な装置は、20メートル×20メートル、高さ18メートルである。このうち、水上線から8メートルのみが突出する。発電ユニットは一般に、水深10メートルで、海岸からある程度の距離に位置する。
- 近距離波エネルギ変換器のファーム(またはアレイ)を使用できると考えれる。これらの装置を沿岸防波堤(または防波堤)として使用することで、地域社会と産業に電力と保護された港の両方を提供しながら、大幅なコスト共有と節約を実現し得る。
- 技術全体の中で唯一の可動部品は、タービンといくつかの単純な既製の弁であり、それらはすべて水位線のはるかに上方に位置する。水の中または下に可動部分はない。つまり、メンテナンスは海のすぐ上のアクセスしやすい地域でのみ実行すればよい。他の多くの波力エネルギ装置の動作は水中で行われ、それらを塩水の腐食性および損傷作用にさらされたままにし、装置の維持または修理することを困難にする。タービンと発電機は水面より上に保たれているので、メンテナンスが少なく、どんな修理もスキューバ機器を必要とせずに実行できる。
- 水中には可動部分がないため、海洋生物への傷害が防がれる。油や汚染物質を放出することがない。
- 海洋波の信頼性と予測可能性は、太陽光や風力よりも大きな利点である。例えば、気象学やサーフィンのウェブサイトの多くはすでに1週間前までに正確に波の状態を予測している。
- したがって、この再生可能エネルギ源は補完的なベースロード電力と考えることができる。
【0109】
特定の実施形態における上記した説明では、明確さのために特定の専門用語に頼っている。しかしながら、本開示は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の用語は、同様の技術的目的を達成するために同様に動作する他の技術的等価物を含むことを理解されたい。「上方」および「下方」、「上に」および「下に」などのような用語は、参照点を提供するために便宜的な単語として使用され、限定的な用語として解釈されるべきではない。
【0110】
本明細書において、「備える」という用語は、その「開いた」という意味、すなわち「含む」という意味で理解されるべきであり、したがってその「閉じた」意味、すなわち「のみからなる」という意味に限定されない。対応する意味は、それらが現れるところの対応する用語「備える」、「有する」、および「含む」と捉えられるべきである。
【0111】
上記した説明は、共通の特性および特徴を有し得るいくつかの実施形態に関して示されている。任意の一実施形態の一つ以上の特徴が他の実施形態の一つ以上の特徴と組み合わせることができることを理解されたい。さらに、任意の実施形態における任意の単一の特性または特徴の組み合わせは、さらなる実施形態を構成し得る。
【0112】
さらに、上記では本発明のいくつかの実施形態のみを説明しており、開示された実施形態の範囲および趣旨から逸脱することなく変更、修正、追加、および/または変更を行うことができる。例えば、図面に示されているダクト10の特定のL字形の形状は異なっていてもよく、2つの導管12、14は必ずしも互いに直交していなくてもよい。弁38は、大きさ、形状およびそれらの総数が異なっていてもよい。任意の特定のダクト10上に2つ以上のタービン44があってもよく、これらは他の手段によって(例えばパイプを介して)収容されて第2の導管14の最上部領域36に接続されてもよい。ダクト10の構成材料は、典型的にはコンクリートでできているが、硬質プラスチックまたは炭素繊維のような他の材料であってもよく、そして海岸で基部18に固定されてもよい。海または海からの波の発生について言及してきたが、波は、湖、川および潮汐プールからも発生する可能性があり、それらはすべて本発明の方法および装置を使用するのに適している。
【0113】
さらに、最も実用的で好ましい実施形態であると現在考えられているものに関連して本発明を説明してきたが、本発明は開示された実施形態に限定されるべきではない。本発明の精神および範囲内に含まれる修正および等価の構成を含む。また、上述の様々な実施形態は他の実施形態と組み合わせて実施することができ、例えば、一実施形態の態様を他の実施形態の態様と組み合わせてさらに他の実施形態を実現することができる。さらに、任意の所与の組み合わせにおける各独立した特徴または構成要素は、さらなる実施形態を構成し得る。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20