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特許7051882多偏波レーダデータを用いて対象を分類する方法、および当該方法に適した装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】多偏波レーダデータを用いて対象を分類する方法、および当該方法に適した装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/41 20060101AFI20220404BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20220404BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20220404BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G01S7/41
G01S13/931
H01Q21/24
G01V3/12 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019544043
(86)(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018054548
(87)【国際公開番号】W WO2018154066
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】102017203057.7
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017205455.7
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017210964.5
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500062575
【氏名又は名称】アスティックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルマー ステファン
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0209506(US,A1)
【文献】特表2016-516983(JP,A)
【文献】特表2005-503567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0307716(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
H01Q 21/24
G01V 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を分類する方法であって、
a)楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を分類に供される物体に送信し、
b)共偏波反射信号から第一レーダ画像を生成するとともに、交差偏波反射信号から第二レーダ画像を生成し、
c)前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の比較を行な
前記比較は、前記共偏波反射信号と前記交差偏波反射信号の局所極大点に係る信号属性を参照してなされ、
前記物体は、前記比較に基づいて分類される、
方法。
【請求項2】
前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の生成は、左円偏波信号成分と右円偏波信号成分の少なくとも一方に基づいてなされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の生成は、水平直線偏波信号成分と垂直偏波信号成分の少なくとも一方に基づいてなされる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の生成は、好ましくは前記楕円偏波送信信号または円偏波送信信号により同時になされる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記比較は、前記物体における複数の目標領域の信号属性を参照してなされる、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記信号属性は、
共偏波局所極大点の数、
交差偏波局所極大点の数、
共偏波と交差偏波の強度比、好ましくは平均強度比、
共偏波と交差偏波の最大強度比、
共偏波と交差偏波の最小強度比、
共偏波と交差偏波の位相比、
共偏波と交差偏波の強度比が高くなる局所極大点の位置または低くなる局所極大点の位置、および
速度評価
の少なくとも一つを含んでいる、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
少なくともレーダセンサが前記楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を送信する場合において、前記物体は、
前記レーダセンサからの距離、
前記レーダセンサに対する角度、
前記レーダセンサに対する物体の向き、および
前記レーダセンサに対する相対速度
を含むサブ分類に供される、
請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記物体の分類は、前記物体の位置と向きの検出に関連しており、
前記物体は、好ましくは車両である、
請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前方から物体の特定を行なう場合、車両における前領域、前ホイールハウス、ステアリングホイール領域、およびサイドミラーの少なくとも一つが評価される、
請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
物体を分類する方法であって、
a)楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を分類に供される物体に送信し、
b)共偏波反射信号から第一レーダ画像を生成するとともに、交差偏波反射信号から第二レーダ画像を生成し、
c)前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の比較を行ない、
少なくとも一つの送信アンテナによって、左円偏波と右円偏波が時間をずらして送信され、または左回転楕円波と右回転楕円波が時間をずらして送信され、戻り反射された信号における左回転信号成分または右回転信号成分のみが評価される
法。
【請求項11】
複数の送信器を使用する場合、同一状態の偏波が同時に送信されるとともに位相エンコードされることにより、複数の右回転偏波送信信号の同時使用に前後して複数の左回転偏波送信信号が同時使用される送信シーケンスが得られる、
請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
物体を分類する方法であって、
a)楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を分類に供される物体に送信し、
b)共偏波反射信号から第一レーダ画像を生成するとともに、交差偏波反射信号から第二レーダ画像を生成し、
c)前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の比較を行ない、
前記物体の分類に加えて、当該物体を異なる距離で検出するとともに、前記楕円偏波送信信号または円偏波送信信号に対する受信信号における交差偏波信号成分のみの極小点を評価することにより、当該物体の高さが特定される
法。
【請求項13】
請求項1から9、および11のいずれか一項に記載の方法を用いて物体を分類する装置であって、
a)楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を分類に供される物体に送信する手段と、
b)共偏波反射信号から第一レーダ画像を生成するとともに、交差偏波反射信号から第二レーダ画像を生成する手段と、
c)前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の比較を行なう手段と、
を備えており
前記比較は、前記共偏波反射信号と前記交差偏波反射信号の局所極大点に係る信号属性を参照してなされ、
前記物体は、前記比較に基づいて分類される、
装置。
【請求項14】
前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の生成を、左円偏波信号成分と右円偏波信号成分の少なくとも一方に基づいて行なう手段を備えている、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の生成を、水平直線偏波信号成分と垂直偏波信号成分の少なくとも一方に基づいて行なう手段を備えている、
請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の生成は、好ましくは前記楕円偏波送信信号または円偏波送信信号により同時になされる、
請求項13から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記比較は、前記物体における複数の目標領域の信号属性を参照してなされる、
請求項13に記載の装置
【請求項18】
請求項10に記載の方法を用いて物体を分類する装置であって、
a)楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を分類に供される物体に送信する手段と、
b)共偏波反射信号から第一レーダ画像を生成するとともに、交差偏波反射信号から第二レーダ画像を生成する手段と、
c)前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の比較を行なう手段と、
を備えており、
少なくとも一つの送信アンテナによって、左円偏波と右円偏波が時間をずらして送信され、または左回転楕円波と右回転楕円波が時間をずらして送信され、戻り反射された信号における左回転信号成分または右回転信号成分のみが評価される
置。
【請求項19】
複数の送信器を使用する場合、同一状態の偏波が同時に送信されるとともに位相エンコードされることにより、複数の右回転偏波送信信号の同時使用に前後して複数の左回転偏波送信信号が同時使用される送信シーケンスが得られる、
請求項13から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
請求項12に記載の方法を用いて物体を分類する装置であって、
a)楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を分類に供される物体に送信する手段と、
b)共偏波反射信号から第一レーダ画像を生成するとともに、交差偏波反射信号から第二レーダ画像を生成する手段と、
c)前記第一レーダ画像と前記第二レーダ画像の比較を行なう手段と、
を備えており、
前記物体の分類に加えて、当該物体を異なる距離で検出するとともに、前記送信信号に対する受信信号における交差偏波信号成分のみの極小点を評価することにより、当該物体の高さが特定される
置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多偏波レーダデータを用いて対象を分類する方法、および当該方法に適した装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
直線偏光信号を出力するレーダを対象分類に使用することが一般的に知られている。この場合に得られうる結果は、例えば、記録されるレーダ画像が一定でなかったり、対象の分類が曖昧だったりする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明の目的は、上記の従来技術における不利を軽減する対象分類方法、および当該方法に適した装置を提供することである。また、本発明の目的は、対象分類における相関性を高め、多様な用途に利用されうるデータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該目的は、請求項1に記載された特徴を有する方法、および請求項12に記載された特徴を有する装置によって達成される。
【0005】
楕円偏波送信信号または円偏波送信信号を分類に供される物体に送信すると、異なる複数のレーダ画像を生成するための異なる複数の反射信号が得られることが見出された。当該複数のレーダ画像は、比較に供されうる。この測定法により得られる効果は、特徴的な物体領域を区別可能であり、結果として物体の分類性が向上することである。
【0006】
よって、本願に係る方法と本願に係る装置は、特に高度に自動化または自律化された運転において使用されうるレーダセンサにおいて将来的に用いられうる。
【0007】
そのため、多偏波レーダセンサが必要とされる。多偏波レーダセンサは、目標物について非常に多くの情報が生成されうる点において、現在使用されているレーダ(直線偏波信号を用いるもの)と区別されうる。共偏波と交差偏波について互いに独立したレーダ画像が生成されうるからである。また、円偏波を用いたより高い目標検出可能性を有する。
【0008】
本発明に係る方法は、異なる物体を分類するためのパターン認識に関し、多偏波レーダデータの評価だけでなく、いわゆる「ゴースト目標物」の検出も行なう。後者は、マルチパス伝搬、サイドローブ、および周期的にリカーリングするメインローブ(いわゆるグレーティングローブ)によって引き起こされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】偏波レーダの原理を示している。
図2】前方から検出された車両の共偏波レーダ画像と交差偏波レーダ画像を示している。
図3】前方から検出された車両の偏波レーダ画像を示している。
図4】正面を向いた車両と-20度傾いた車両の多偏波レーダ画像を示している。
図5】前方から検出された車両における分類のためのパターン領域を示している。
図6】斜めから検出された車両における分類のためのパターン領域を示している。
図7】側方から検出された車両における分類のためのパターン領域を示している。
図8】側方から検出された車両における分類のためのパターン領域を示している。
図9】目標物が静止または移動中の場合における多偏波情報を利用したマルチパス伝搬の検出を示している。
図10】目標物が移動中の場合に多偏波情報を利用した「ゴースト目標物」の検出を示している。
図11】送信側におけるポラリメトリの実施形態例を示している。
図12】同じ偏波状態を有する送信信号のエンコードの例を示している。
図13】直線偏波送信信号を用いて物体高さを特定する既知の方法における伝搬経路を示している。
図14】円または楕円偏波を用いて物体高さを特定する本発明に係る方法における伝搬経路を示している。
図15】直線偏波による既知の方法と円または楕円偏波による本発明に係る方法における特性曲線の例を示している。
図16】本発明に係る円または楕円偏波を用いる方法による物体高さの特定を示している。
図17】測定レイアウトの例を示している。
図18】低摩擦係数の路面の場合の結果を示している。
図19】高摩擦係数の砂利道の場合の結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る物理的原理が、図1に示されている。円偏波または楕円偏波が送信され、目標物の構造に応じて、一次交差偏波または一次共偏波が受信される。目標物において奇数回の反射がある場合、偏波方向は回転する。目標物において偶数回の反射がある場合、同じ方向の偏波が戻される。例えば、左円偏波が送信されると、交差偏波は、右円偏波となり、共偏波は左円偏波となる。この原理と多偏波レーダセンサの構造に係る説明は、文献1に記載されている。
【0011】
この原理を実現可能にするためには、少なくとも左円(または楕円)偏波、または右円(または楕円)偏波を送信可能な送信器が必要である。この場合、受信器は、フルポラリメトリック対応であることを要する。すなわち、円偏波、楕円偏波、および直線偏波が受信されうる。受信信号における左円偏波成分と右円偏波成分を検出できればよい。全ての偏波は、左偏波成分と右偏波成分の比率によって表現されうる。フルポラリメトリック対応であるために、受信信号における垂直直線偏波成分と水平直線偏波成分も検出される。この場合、全ての偏波が表現されうるためには、垂直直線偏波成分と水平直線偏波成分の振幅と位相が評価されることを要する。
【0012】
図2は、車両を例にとった円偏波測定の結果を示している。二つの独立したレーダ画像(共偏波レーダ画像と交差偏波レーダ画像)が取得されている。共偏波レーダ画像においては、目標物上に偶数回の反射(基本的に二回反射)が見られる。交差偏波レーダ画像においては、目標物上に奇数回の反射(基本的に一回反射)が見られる。双方において、戻り反射信号の極大点が円によって表されており、円の直径が極大値の大きさに比例している。
【0013】
図3は、図2における共偏波の極大点と交差偏波の極大点の双方を含む偏波レーダ画像を示している。但し、共偏波信号成分と交差偏波信号成分の強度比(以降は単に「比」と称する)を表す様々な記号が、各極大点に対して付与されている。対象の分類を可能にする偏波パターンが、車両の様々な領域で形成されている。目標物の様々な領域におけるパターン認識に際しては、極大点について下記の属性が評価される。
・共偏波極大点の数:ここでは所定のS/N比(ノイズレベルからの距離)も考慮
・交差偏波極大点の数:ここでは所定のS/N比(ノイズレベルからの距離)も考慮
・共偏波と交差偏波の強度比の平均値
・共偏波と交差偏波の強度比の最大値
・共偏波と交差偏波の強度比の最小値
・共偏波と交差偏波の位相比
・とりわけ特徴的な属性
【0014】
例えば、車両の前ナンバープレート領域における第一反射の比は、-20dB以下である。
【0015】
ここでなされるパターン分類は、対象物の種類を区別する。例えば、車両、歩行者、自転車、トラック、バイク、路上構造物(側溝、フェンス、ガードレール、橋、トンネルなど)である。
【0016】
図4は、前方から測定された車両と-20度だけ傾けて測定された車両を示している。前方から測定された車両に対し、-20度だけ傾けて測定された車両については下記の事項が明らかになった。
・比が-20dB以下になる前領域の特徴的な反射は、車両の右側へ移動した。
・前領域においては、比の値が10dBと15dBの間、および15dBと20DBとなる反射が生じた。(これは強い共偏波特性によるものである。前領域において、特に車両が斜めに配置されることによってグリル領域において、より多くの二回反射が生じている。)
・車両の前領域、ステアリングホイール領域、および後領域において上記全ての多偏波パターンに変化が生じた。
【0017】
これらの特性を参照することにより、センサに対する車両の角度を特定できる。
【0018】
図5は、前方から検出された車両における分類のためのパターン認識において特に重要となる領域を示している。前領域、前ホイールハウス、ステアリングホイール領域、およびサイドミラーが示されている。
【0019】
図6は、前方から検出された車両における分類のためのパターン認識において特に重要となる領域を示している。前領域、センサに対向するホイールハウス、センサに対向する前ドアの隙間、およびセンサに対向する車両の後隅部が示されている。
【0020】
この場合にとりわけ特徴的なのは、車両の輪郭がL字状に検出されること、ホイールハウスの正確な位置が検出されること、他の測定位置と比較して高い比を有する信号(二回反射)が多くなることである。
【0021】
図7は、側方から検出された車両における分類のためのパターン認識において特に重要となる領域を示している。センサに対向する横領域、センサに対向するホイールハウス、センサに対向する車両の隅部、およびセンサに対向する前ドアが示されている。
【0022】
この場合にとりわけ特徴的なのは、前ドアの領域において比が非常に低く強い反射(強い一回反射)が得られることである。
【0023】
図8は、側方から検出された車両における分類のためのパターン認識において特に重要となる領域を示している。車両の後領域、センサに対向する車両の隅部、およびセンサに対向する前ドアが示されている。
【0024】
この場合にとりわけ特徴的なのは、後尾の外郭において比が非常に低く強い反射(強い一回反射)が得られること、車両の内部から多偏波パターンが到来することである。
【0025】
多偏波パターンの属性は、対象物の分類やサブ分類に応じて異なる角度や距離範囲に割り当てられて、分類アルゴリズムの基礎として用いられる。
【0026】
円偏波を検出に使用すると「ゴースト目標物」の検出という利点がさらに得られる。「ゴースト目標物」は、マルチパス伝搬、サイドローブ、ディスタービングリカーリングメインローブなどによって生じる。後の二つは、強い反射を伴う目標物が大きなオフセット角で検出される際に、非常に強く表れる。
【0027】
図9は、目標物において付加的な反射が生じることに起因するマルチパス伝搬の例を示している。これにより、目標物において異なる角度の反射が生じる。しかしながら、付加的な反射は、偏波特性の回転ももたらす。変更された偏波パターンを解析することにより、マルチパス伝搬の特定が可能になる。
【0028】
図10は、図9と同じ状況ではあるが、特にレーダセンサおよび環境に対して目標物が相対速度を有している場合を示している。所定の距離および角度範囲内にある目標物について局所極小点が共偏波信号と交差偏波信号とで異なる速度をもつ場合、当該目標物は「ゴースト目標物」である。この現象は、マルチパス伝搬とサイドローブまたはリカーリングメインローブの双方によりもたらされる。
【0029】
レーダセンサが円偏波または楕円偏波を送信する場合、反射されて戻る信号は、左回転成分と右回転成分に分解されうる。これにより、対象物の分類に使用されうる多偏波パターンが得られる。左回転成分と右回転成分を受信可能とするための一実施形態としては、二つの偏波に対してそれぞれ受信チャンネルを設けることが考えられる。しかしながら、この場合に生じる明らかな不利益は、同じ角度分解能を得るためにリニアレーダシステムの二倍の受信チャンネルが必要とされる点である。
【0030】
本発明に係る方法によれば、この不利益を避ける解決策を提供できる。左回転波と右回転波は交互に続けて送信されるので、一つの偏波方向のみが受信される。例えば、左回転信号が受信される場合、左回転波が送信されると共偏波信号成分が受信される。続いて右回転波が送信されると、交差偏波信号成分が受信される。図11は、本発明に係る方法を例示している。
【0031】
複数の送信器が使用される場合、明らかな解決策の一つは、時間をずらして複数の送信器を動作させ、時間オフセットした複数の受信信号を取得し、これらを信号評価に供することである。しかしながら、送信継続時間が長くなるので、明らかな不利益が生じる。観測継続時間が非常に長くなるので、非常に良好な速度分解能が得られるものの、より高い速度を特定するためにより長い時間が必要になる。
【0032】
本発明に係る方法は、この場合に対する解決策を提供する。複数の送信器は、同時に作動されるとともに、個別に位相エンコードがなされる。同時に作動される複数の送信器は、常に同じ状態の偏波を発する。例えば、まず全ての左回転偏波送信信号が、位相エンコードされつつ同時に送信される。続いて、時間オフセットを伴い、全ての右回転偏波送信信号が、位相エンコードされつつ同時に送信される。一般に、位相エンコードは、異なる長さで行なわれる。
【0033】
図12は、本発明に係る方法を例示している。長距離範囲にある物体の高さを測定するために、直線偏波信号を送信するレーダ設備に係る方法が知られている。路上にある物体を測定する場合、異なる伝搬経路に起因して信号の重畳が生じる。この場合、ダイレクト検出がマルチパス伝搬に重畳する。マルチパス伝搬は、路面からの付加的な反射と二つのいわゆるラウンドトリップからなる。ラウンドトリップは、往路と復路が異なることを意味する。よって、ラウンドトリップの第一の場合においては、往路がダイレクト経路であり、復路が路面反射を伴う。ラウンドトリップの第二の場合においては、往路が路面反射を伴い、復路がダイレクト経路である。異なる経路の伝搬が重畳することにより、受信信号は、各伝搬経路の後方反射信号が重畳してなる。したがって、受信信号は、物体に依存する特徴的なプロファイルを、距離の関数として有する。当該プロファイルは、複数の信号が強め合ったり弱め合ったりしながら重畳し、物体までの距離に応じて定まる。
【0034】
センサに対して相対速度を有する物体がトラッカにより距離の関数として追尾される場合、検出中に少なくとも二つの特徴(例えば受信信号における二つの極小点)から当該物体の高さを特定できる。しかしながら、直線偏波の場合、顕著な不利点がある。四つの異なる伝搬経路が重畳することにより、極小点が局所的に強調された特性曲線が得られる。長距離の場合、戻り反射信号の振幅はノイズレベルと大差ないことが一般的であり、直線偏波では特定の距離において目標物を検出できない。受信信号レベルがノイズレベルを下回るからである。図13は、直線偏波信号に係る既知の手法において生じた複数の伝搬経路を示している。
【0035】
本発明に係る方法においては、円偏波または楕円偏波信号が送信される。この場合、左回転偏波と右回転偏波のいずれかが送信されるが、交差偏波受信信号のみが評価される。この場合、交差偏波信号または共偏波信号は、送信信号に対する偏波方向を参照する。例えば、送信信号が左回転波である場合、交差偏波受信信号は右回転し、共偏波受信信号は左回転する。本発明に係る方法によれば、交差偏波受信信号のみを評価するので、直線偏波信号を用いる既知の手法とは異なり、二つの伝搬経路のみが存在し、それらの戻り反射信号が受信器において重畳される。伝搬経路は、直接検出とマルチパス伝搬からなる。マルチパス伝搬は、路面からの付加的反射を伴う。これら二つの伝搬経路においては偶数回の反射が存在するので、受信信号は交差偏波受信チャネルに現れる。直線偏波信号を用いる既知の方法において生じるラウンドトリップは、本発明に係る方法においては存在しない。当該信号は、伝搬経路における反射回数が偶数であるがゆえに、共偏波受信経路に生じるからである。既知の方法においては、局所的に強い極小点が生じ、特定の距離における物体検出を妨げる。本発明に係る方法においては、そのような事はない。物体は、全ての距離において検出されうる。そして、特定の距離において生じる二つの極小点などの一般的な特徴を評価することにより、当該物体の高さが特定されうる。図14は、物体の高さを特定するための本発明に係る方法における伝搬経路の概略を示している。図15は、既知の方法と本発明に係る方法における距離の関数としての一般的な特性曲線を示している。本発明においては、各極小点が基本的にノイズレベルを上回ることが重要である。これに対して既知の方法における極小点は、しばしばノイズレベルを下回り、検出が困難となる。図16は、物体高さを特定するための関係式を示している。
【0036】
本願に係る方法と本願に係る装置の別用途として、好ましくはレーダセンサによって例えば路面からの付加的反射が測定される場合、路面の摩擦係数を特定できる。
【0037】
特に高度に自動化あるいは自律化された運転の場合、路面の摩擦係数を予測する測定が求められる。この測定は、例えばドリフトが生じる虞を伴わずにカーブを通過できる速度の設定を可能にする。
【0038】
摩擦係数の測定には、円偏波または楕円偏波を用いるレーダセンサが必要とされる。当該センサは、前方を向くように車両に搭載され、当該車両の前方に位置する路面あるいは地面の領域を二次元的に検出する。この構造を、図17に示す。
【0039】
摩擦係数の特定には、以下の手続きが必要とされる。
1)戻り反射された共偏波信号と交差偏波信号(左回転信号と右回転信号)について局所極大点を算出する。
2)特定の路面を含む領域を探索する。
3)当該領域の全局所極大点について、以下の属性を解析する。
・共偏波信号成分と交差偏波信号成分の振幅強度比
・共偏波信号成分と交差偏波信号成分の位相差
・局所極大点の振幅強度と偏波状態
【0040】
推奨されうるパラメータのグラフ化を例示する。図18においては、粗さが低いビチューメン舗装された路面の場合の結果が示されている。図19においては、普通は粗さが高い砂利道の場合の結果が示されている。それぞれ、y軸は共偏波信号成分と交差偏波信号成分の振幅強度比を表しており、x軸はそれらの位相比を表している。交差偏波の局所極大点は円で表されており、共偏波の局所極大点は四角で表されている。円と四角の大きさは、信号強度に比例している。
【0041】
路面の摩擦係数は、下記の属性を用いて特定されうる。
・クラスタ形成、散乱
・クラスタの大きさ
・クラスタの位相差位置の平均値
・クラスタの振幅強度比の平均値
・クラスタの位相差位置の標準偏差
・クラスタの振幅強度比の標準偏差
・局所極大点の数
・局所極大点の信号強度
【0042】
図18図19によれば、摩擦係数の低い路面は、摩擦係数の高い路面と比較して下記の属性を有している。
・クラスタが小さい
・位相差と振幅強度比の標準偏差が小さい
・信号振幅が小さい
・局所極小点が少ない
【0043】
摩擦係数が低い場合、上記の属性は、後方散乱点が同様の現れ方をすること、およびセンサに対する後方散乱点の向きが同様になることによって得られる。非常に高い摩擦係数の場合、散乱点が異なる現れ方をし、それらのセンサに対する方向も異なる。
【0044】
さらに、複数のクラスタの位相位置は、異なる表面(雪、氷、落葉などに覆われた表面)のより正確な分析を可能にする。水の層が路上にある場合、レーダ信号の全てが反射により消えてしまうので、レーダ画像における無信号領域(すなわちレーダ信号の不在)に基づいて、危険なアクアプレーン状態が判断されうる。
【0045】
有利な詳細事項は、従属項に係る発明特定事項として記載されている。
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