(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ワイドギャップ半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220404BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220404BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20220404BHJP
H01L 29/866 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H01L29/78 657B
H01L29/78 652T
H01L29/78 652Q
H01L29/90 D
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
(21)【出願番号】P 2019551851
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2017040677
(87)【国際公開番号】W WO2019092872
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊一
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159235(JP,A)
【文献】特開2015-015329(JP,A)
【文献】特開平03-129779(JP,A)
【文献】特開2010-263032(JP,A)
【文献】特開2009-004399(JP,A)
【文献】特表2014-504013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/866
H01L 21/329
H01L 21/76
H01L 21/822
H01L 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第2導電型からなるウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられたソース領域と、
前記ウェル領域
であってゲートパッドの下方に設けられ、
前記ゲートパッドに電気的に接続されるゲートコンタクト領域と、
前記ウェル領域に設けられ、面方向において前記ソース領域と前記ゲートコンタクト領域との間に設けられたツェナーダイオード領域と、
を備え、
前記ツェナーダイオード領域は、ソースパッドの下方に設けられた超高濃度第2導電型半導体領域と、前記超高濃度第2導電型半導体領域に隣接して設けられて高濃度第2導電型半導体領域よりも不純物濃度の低い高濃度第1導電型半導体領域と、を有し、
前記ゲートコンタクト領域は、前記高濃度第1導電型半導体領域に隣接して設けられ、
前記超高濃度第2導電型半導体領域は前記高濃度第1導電型半導体領域よりもソース領域側に設けられることを特徴とするワイドギャップ半導体装置。
【請求項2】
前記ゲートコンタクト領域は超高濃度第1導電型半導体領域又は高濃度第1導電型半導体領域であることを特徴とする請求項
1に記載のワイドギャップ半導体装置。
【請求項3】
前記ツェナーダイオード領域と前記ソース領域とは面内方向で分離されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載のワイドギャップ半導体装置。
【請求項4】
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられたソース領域と、
前記ウェル領域に設けられた副次的MOSFET領域と、
を備え、
前記副次的MOSFET領域は、一対の第1導電型半導体領域と、前記一対の第1導電型半導体領域の間に設けられた第2導電型半導体領域と、前記第1導電型半導体領域及び前記第2導電型半導体領域に副次的MOSFET絶縁層を介して設けられ、
ゲートパッドに電気的に接続される副次的MOSFETゲート電極と、を有し、
前記第1導電型半導体領域の一方
の少なくとも一部はソースパッド
の下方に設けられ、前記ソースパッドに電気的に接続され、
前記第1導電型半導体領域の他方はゲートパッド
の下方に設けられ、前記ゲートパッドに電気的に接続され、
前記ウェル領域は、前記ゲートパッドの下方
に少なくとも一部が設けられた第1ウェル領域と、前記第1ウェル領域と分離
され、前記ゲートパッドの下方に少なくとも一部が設けられた第2ウェル領域とを有し、
前記第1ウェル領域に、前記副次的MOSFET領域の前記一対の第1導電型半導体領域及び前記第2導電型半導体領域が設けられていることを特徴とするワイドギャップ半導体装置。
【請求項5】
前記第1導電型半導体領域は高濃度第1導電型半導体領域を有し、
前記第2導電型半導体領域は高濃度第2導電型半導体領域を有することを特徴とする請求項
4に記載のワイドギャップ半導体装置。
【請求項6】
前記ウェル領域は、前記ゲートパッドの下方の一部に設けられた第1ウェル領域と、前記第1ウェル領域と分離された第2ウェル領域とを有し、
前記第1ウェル領域に、前記ツェナーダイオード領域
が設けられていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のワイドギャップ半導体装置。
【請求項7】
前記ウェル領域は、前記ゲートパッドの下方の一部に設けられた第1ウェル領域と、前記第1ウェル領域と分離された第2ウェル領域とを有し、
前記第1ウェル領域に
、前記副次的MOSFET領域が設けられていることを特徴とする請求項
4又は5のいずれかに記載のワイドギャップ半導体装置。
【請求項8】
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第2導電型からなるウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられたソース領域と、
前記ウェル領域に設けられ、ゲートパッドに電気的に接続されるゲートコンタクト領域と、
前記ウェル領域に設けられ、面方向において前記ソース領域と前記ゲートコンタクト領域との間に設けられたツェナーダイオード領域と、
を備え、
前記ウェル領域は、前記ゲートパッドの下方の一部に設けられた第1ウェル領域と、前記第1ウェル領域と分離された第2ウェル領域とを有し、
前記第1ウェル領域に、前記ツェナーダイオード領域が設けられ、
前記第1ウェル領域と前記第2ウェル領域との間に、前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型半導体からなる分離領域が設けられていることを特徴と
するワイドギャップ半導体装置。
【請求項9】
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられたソース領域と、
前記ウェル領域に設けられた副次的MOSFET領域と、
を備え、
前記副次的MOSFET領域は、一対の第1導電型半導体領域と、前記一対の第1導電型半導体領域の間に設けられた第2導電型半導体領域と、前記第1導電型半導体領域及び前記第2導電型半導体領域に副次的MOSFET絶縁層を介して設けられ、
ゲートパッドに電気的に接続される副次的MOSFETゲート電極と、を有し、
前記第1導電型半導体領域の一方はソースパッドに電気的に接続され、
前記第1導電型半導体領域の他方は
前記ゲートパッドに電気的に接続され、
前記ウェル領域は、前記ゲートパッドの下方の一部に設けられた第1ウェル領域と、前記第1ウェル領域と分離された第2ウェル領域とを有し、
前記第1ウェル領域に、前記副次的MOSFET領域が設けられ、
前記第1ウェル領域と前記第2ウェル領域との間に、前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型半導体からなる分離領域が設けられていることを特徴とするワイドギャップ半導体装置。
【請求項10】
層間絶縁膜と、
前記ウェル領域と前記層間絶縁膜との間に設けられたゲート絶縁膜と、
をさらに備え、
前記ゲート絶縁膜は略同一の厚みを有していることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のワイドギャップ半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1導電型のドリフト層と、ドリフト層に設けられた第2導電型からなるウェル領域と、ウェル領域に設けられたソース領域と、を有するワイドギャップ半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーMOSFETにおいては、ゲート絶縁膜を保護するために、ゲート-ソース間にツェナーダイオードを設けることが提案されている。例えば特開2012-064727号公報の開示によれば、こうしたツェナーダイオードが高濃度にドープしたp型及びn型ポリシリコンを多段接続することで作製することが提案されている。
【0003】
SiC等のワイドギャップ半導体からなるMOSFETは、それ自身は高温で使用できるが、特開2012-064727号公報のようにポリシリコンで構成されたツェナーダイオードでは、高温においてリーク電流が増えてくる。このため、ゲートの充放電速度が遅くなり、スイッチングが遅くなる課題があった。SiC等のワイドギャップ半導体からなるMOSFETは一般にSi-MOSFETよりも高い駆動電圧を必要とし、Ciss(入力容量)も大きいので、リーク電流によって充放電速度への影響を受けやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ゲート絶縁膜を保護でき、かつ充放電速度が遅くなることを防止できるワイドギャップ半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概念1]
本発明の概念1によるワイドギャップ半導体装置は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第2導電型からなるウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられたソース領域と、
前記ウェル領域に設けられ、ゲートパッドに電気的に接続されるゲートコンタクト領域と、
前記ウェル領域に設けられ、面方向において前記ソース領域と前記ゲートコンタクト領域との間に設けられたツェナーダイオード領域と、
を備えてもよい。
【0006】
[概念2]
本発明の概念1によるワイドギャップ半導体装置において、
前記ツェナーダイオード領域は、超高濃度第2導電型半導体領域と、前記超高濃度第2導電型半導体領域に隣接して設けられた高濃度第1導電型半導体領域と、を有し、
前記ゲートコンタクト領域は、前記高濃度第1導電型半導体領域に隣接して設けられ、
前記超高濃度第2導電型半導体領域は前記高濃度第1導電型半導体領域よりもソース領域側に設けられてもよい。
【0007】
[概念3]
本発明の概念1又は2によるワイドギャップ半導体装置において、
前記ゲートコンタクト領域は超高濃度第1導電型半導体領域又は高濃度第1導電型半導体領域であってもよい。
【0008】
[概念4]
本発明の概念1乃至3のいずれか1つによるワイドギャップ半導体装置において、
前記ツェナーダイオード領域と前記ソース領域とは面内方向で分離されてもよい。
【0009】
[概念5]
本発明の概念5によるワイドギャップ半導体装置は、
第1導電型のドリフト層と、
前記ドリフト層に設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域に設けられたソース領域と、
前記ウェル領域に設けられた副次的MOSFET領域と、
を備え、
前記副次的MOSFET領域は、一対の第1導電型半導体領域と、前記一対の第1導電型半導体領域の間に設けられた第2導電型半導体領域と、前記第1導電型半導体領域及び前記第2導電型半導体領域に副次的MOSFET絶縁層を介して設けられ、前記ゲートパッドに電気的に接続される副次的MOSFETゲート電極と、を有し、
前記第1導電型半導体領域の一方はソースパッドに電気的に接続され、
前記第1導電型半導体領域の他方はゲートパッドに電気的に接続されてもよい。
【0010】
[概念6]
本発明の概念5によるワイドギャップ半導体装置において、
前記第1導電型半導体領域は高濃度第1導電型半導体領域を有し、
前記第2導電型半導体領域は高濃度第2導電型半導体領域を有してもよい。
【0011】
[概念7]
本発明の概念1乃至6のいずれか1つによるワイドギャップ半導体装置において、
前記ウェル領域は、前記ゲートパッドの下方の一部に設けられた第1ウェル領域と、前記第1ウェル領域と分離された第2ウェル領域とを有し、
前記第1ウェル領域に、前記ツェナーダイオード領域又は前記副次的MOSFET領域が設けられてもよい。
【0012】
[概念8]
本発明の概念1乃至7のいずれか1つによるワイドギャップ半導体装置において、
前記第1ウェル領域と前記第2ウェル領域との間に、前記ドリフト層よりも不純物濃度の高い第1導電型半導体からなる分離領域が設けられてもよい。
【0013】
[概念9]
本発明の概念1乃至8のいずれか1つによるワイドギャップ半導体装置は、
層間絶縁膜と、
前記ウェル領域と前記層間絶縁膜との間に設けられたゲート絶縁膜と、
をさらに備え、
前記ゲート絶縁膜は略同一の厚みを有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ソース領域とゲートコンタクト領域との間にツェナーダイオード領域又は副次的MOSFET領域が設けられている。このため、充放電速度が遅くなることを防止しつつ、ゲート絶縁膜を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる半導体装置の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる半導体装置の断面図であって、
図1とは異なる箇所の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる半導体装置の断面図であって、セル領域側における断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる半導体装置の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施の形態で用いられうる半導体装置の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施の形態で用いられうる半導体装置の断面図であって、
図5とは異なる箇所の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施の形態であって第1の実施の形態に準じた態様を採用した場合の半導体装置の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施の形態において第1の実施の形態に準じた態様を採用した場合の半導体装置の断面図であって、
図7とは異なる箇所の断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4の実施の形態であって第3の実施の形態に準じた態様を採用した場合の半導体装置の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4の実施の形態において第3の実施の形態に準じた態様を採用した場合の半導体装置の断面図であって、
図9とは異なる箇所の断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第5の実施の形態で用いられうる半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1の実施の形態
《構成》
本実施の形態では、一例として縦型のMOSFETを用いて説明する。本実施の形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、このような態様に限られることはなく、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。また、本実施の形態では、ワイドギャップ半導体として炭化ケイ素を用いて説明するが、このような態様に限られることはなく、ワイドギャップ半導体として窒化ガリウム等を用いてもよい。本実施の形態では、
図1の上下方向である厚み方向と直交する方向を「面内方向」と呼ぶ。すなわち、
図1の左右方向及び紙面の法線方向を含む面が「面内方向」になる。
【0017】
図3に示すように、本実施の形態の炭化ケイ素半導体装置は、n型の炭化ケイ素半導体基板11と、炭化ケイ素半導体基板11の第1の主面(上面)に設けられ、n型の炭化ケイ素材料を用いたドリフト層12と、ドリフト層12に設けられたp型からなる複数のウェル領域20と、ウェル領域20に設けられたn型のソース領域30と、を有してもよい。ウェル領域20は例えばドリフト層12に対してp型の不純物を注入することで形成され、ソース領域30は例えばウェル領域20に対してn型の不純物を注入することで形成されてもよい。炭化ケイ素半導体基板11の第2の主面(下面)にドレイン電極90が設けられてもよい。セルとして利用される領域の周縁外方には耐圧構造部が設けられてもよい。ドレイン電極90としては、例えば、チタン、アルミニウム、ニッケル等を用いてもよい。
【0018】
図1に示すように、炭化ケイ素半導体装置は、ウェル領域20に設けられ、ゲートパッド120に電気的に接続されるゲートコンタクト領域103と、ウェル領域20に設けられ、ソース領域30とゲートコンタクト領域103との間に設けられたツェナーダイオード領域100と、を有してもよい。ゲートコンタクト領域103及びツェナーダイオード領域100は例えばウェル領域20に対してn型の不純物又はp型の不純物を注入することで形成されてもよい。
【0019】
ゲートコンタクト領域103は、超高濃度n型半導体領域(n
++)又は高濃度p型半導体領域(n
+)であってもよい。ゲートコンタクト領域103は、層間絶縁膜65に設けられたゲートコンタクトホールを介してゲートパッド120と超高濃度n型半導体領域(n
++)又は高濃度p型半導体領域(n
+)とが接触することで形成されてもよい。なお、
図1に示す態様では、ゲートコンタクト領域103は超高濃度n型半導体領域(n
++)となっており、超高濃度n型半導体領域(n
++)とゲートパッド120とが電気的に接続されている。
【0020】
図2に示すように、ゲートコンタクト領域103が存在する箇所と異なる箇所では、ゲートパッド120がゲート電極125に接続されて、ゲート接続領域126を形成してもよい。ゲート接続領域126は、層間絶縁膜65に設けられたゲートコンタクトホールを介してゲート電極125とゲートパッド120とが接触することで形成されてもよい。
【0021】
ウェル領域20と層間絶縁膜65との間にゲート絶縁膜60が設けられ、このゲート絶縁膜60は略同一の厚みを有してもよい。つまり、本実施の形態では、一般的にゲートパッド120の下方に設けられるフィールド絶縁膜が用いられなくてもよい。なお、「略同一の厚み」とは、ゲート絶縁膜60の平均厚みD0の10%以内の厚みにあることを意味し、ウェル領域20と層間絶縁膜65との間のゲート絶縁膜60の厚みが0.9×D0以上であり、1.1×D0以下であることを意味している。
【0022】
図1に示すように、ソース領域30の間のゲート絶縁膜60にはゲート電極125が設けられてもよい。
図2に示すように、ゲート電極125はゲートパッド120と電気的に接続されている。
【0023】
ドリフト層12は、炭化ケイ素半導体基板11の第1の主面にCVD法等により形成されてもよい。ドリフト層12におけるn型の不純物濃度は、炭化ケイ素半導体基板11におけるn型の不純物濃度よりも小さくなってもよく、ドリフト層12は低濃度領域(n-)となり、炭化ケイ素半導体基板11はドリフト層12と比較して濃度が高くなってもよい。
n型の不純物としてはNやP等を用いることができ、p型の不純物としてはAlやB等を用いることができる。本実施の形態のドリフト層12である低濃度領域(n-)における不純物濃度は例えば1×1014~4×1016cm-3であり、炭化ケイ素半導体基板11における不純物濃度は例えば1×1018~3×1019cm-3である。
【0024】
ゲートパッド120は例えばAl等の金属によって形成され、ゲート電極125は例えばポリシリコン等によって形成されてもよい。ゲート電極125等の上面には層間絶縁膜65が形成されてもよい。ゲート電極125は、CVD法、フォトリソグラフィ技術等を用いて形成されてもよい。層間絶縁膜65は、CVD法等によって形成されてもよく、例えば二酸化ケイ素によって形成されてもよい。
【0025】
図1に示すように、ツェナーダイオード領域100は、前述した超高濃度p型半導体領域(p
++)102と、超高濃度p型半導体領域102に隣接して設けられた高濃度n型半導体領域(n
+)101と、を有してもよい。前述したゲートコンタクト領域103は、高濃度n型半導体領域101に隣接して設けられてもよい。なお、本実施の形態における高濃度n型領域(n
+)における不純物濃度は例えば1×10
18~2×10
19cm
-3であり、超高濃度n型領域(n
++)における不純物濃度は例えば2×10
19~1×10
21cm
-3である。本実施の形態におけるウェル領域20における不純物濃度は例えば5×10
16~1×10
19cm
-3であり、超高濃度p型領域(p
++)における不純物濃度は例えば2×10
19~1×10
21cm
-3であり、高濃度p型領域(p
+)の不純物濃度は例えば3×10
17~2×10
19cm
-3である。
【0026】
超高濃度p型半導体領域102、高濃度n型半導体領域101及びゲートコンタクト領域103の各々は略同一の深さであってもよい。なお、本実施の形態において「略同一の深さ」とは、平均深さの10%以内の深さにあることを意味する。このため、超高濃度p型半導体領域102、高濃度n型半導体領域101及びゲートコンタクト領域103の各々は略同一の深さであるということは、超高濃度p型半導体領域102、高濃度n型半導体領域101及びゲートコンタクト領域103の平均深さH0の10%以内の深さにあることを意味し、超高濃度p型半導体領域102、高濃度n型半導体領域101及びゲートコンタクト領域103の各々の深さが0.9×H0以上であり、1.1×H0以下であることを意味している。
【0027】
また、超高濃度p型半導体領域102、高濃度n型半導体領域101及びゲートコンタクト領域103の各々と、ソース領域30の高濃度n型領域31及び超高濃度n型領域32の各々も略同一の深さであってもよい。
【0028】
ウェル領域20の深さは、その底面がドリフト層12の底面より高い位置に位置づけられており、ドリフト層12内にウェル領域20が設けられることになる。また、ソース領域30の深さは、その底面がウェル領域20の底面より高い位置に位置づけられており、ウェル領域20内にソース領域30が形成されることになる。また、ゲートコンタクト領域103及びツェナーダイオード領域100の深さは、その底面がウェル領域20の底面より高い位置に位置づけられており、ウェル領域20内にゲートコンタクト領域103及びツェナーダイオード領域100が形成されることになる。
【0029】
ソース領域30のうち、ソースパッド110に接続される箇所は超高濃度n型領域(n++)となり、超高濃度n型領域(n++)に隣接して高濃度n型領域(n+)が設けられてもよい。
【0030】
本実施の形態のようなツェナーダイオード領域100はゲートパッド120の周囲だけに設けるのではなく、セル領域の周縁部の全部または一部に沿って層間絶縁膜65上に設けられたゲート電極に対する配線であるゲートランナー(図示せず)の周囲に設けるようにしてもよい。また、このような態様に限られることはなく、本実施の形態のようなツェナーダイオード領域100は、ゲートパッド120の周囲だけに設けてもよいし、ゲートランナーの周囲だけに設けるようにしてもよい。
【0031】
図1に示すように、ソース領域30は、ゲート電極125側に配置された高濃度n型領域(n
+)31と、高濃度n型領域(n
+)31に隣接して設けられた超高濃度n型領域(n
++)32とを有してもよい。そして、超高濃度n型領域(n
++)32に隣接してツェナーダイオード領域100の超高濃度p型半導体領域102が設けられてもよい。ソース領域30の超高濃度n型領域(n
++)32及びツェナーダイオード領域100の超高濃度p型半導体領域102とソースパッド110との間には、ニッケル、チタン又はニッケル若しくはチタンを含有する合金からなる金属層40が設けられてもよい。
【0032】
ソース領域30の超高濃度n型領域(n++)32はソースパッド110の下方に設けられた金属層40とオーミック接触してもよい。また、超高濃度p型半導体領域102もソースパッド110の下方に設けられた金属層40とオーミック接触してもよい。
【0033】
図3に示すように、ソース領域30の面方向の間には、金属層40と接触するウェルコンタクト領域21が設けられてもよい。ウェルコンタクト領域21は超高濃度のp型半導体からなってもよい。ウェルコンタクト領域21と金属層40とはオーミック接触してもよい。ウェルコンタクト領域21は例えばウェル領域20に対してp型の不純物を注入することで形成されてもよい。
【0034】
《作用・効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による作用・効果の一例について説明する。なお、「作用・効果」で説明するあらゆる態様を、上記構成で採用することができる。
【0035】
本実施の形態において、
図1に示すように、ソース領域30とゲートコンタクト領域103との間にツェナーダイオード領域100を設ける態様を採用した場合には、充放電速度が遅くなることを防止しつつ、ゲート絶縁膜60を保護できる。
【0036】
ツェナーダイオード領域100が、超高濃度p型半導体領域(p++)102と、超高濃度p型半導体領域(p++)102に隣接して設けられた高濃度n型半導体領域(n+)101とを有し、高濃度n型半導体領域101におけるn型不純物濃度がウェル領域20のp型不純物濃度よりも高い場合には、耐圧が超高濃度p型半導体領域102と高濃度n型半導体領域101との間の接合で決まる。炭化ケイ素等のワイドギャップ半導体の場合は、このような高濃度領域同士の接合が一段だけであっても、ゲートに十分な正バイアスを印加でき、かつ、過剰な正バイアスからは保護するのに好適な耐圧(たとえば15~40V)とすることができる。例えば、4H-SiCを用い、高濃度n型半導体領域(n+)101における不純物濃度が2.5×1018cm-3で、超高濃度p型半導体領域(p++)102における不純物濃度がこれよりも十分高い(例えば2×1020cm-3)とき、デバイスシミュレーションによる耐圧は30V程度であった。
【0037】
また、本実施の形態のようなツェナーダイオード領域100を設けた場合において、寄生バイポーラトランジスタが動作しない程度にウェル領域20の厚みを厚くすることで、ドリフト層12とウェル領域20との間の接合容量の一部をCrss(逆伝達容量)に移動することができる。この結果、パッシブミラー動作をさせることも可能になり、dV/dtが必要以上に上昇するのを防止することも可能になる。
【0038】
本実施の形態において、
図2のように、ウェル領域20と層間絶縁膜65との間に設けられるゲート絶縁膜60が略同一の厚みを有しており、フィールド絶縁膜を設けない態様を採用した場合には、ゲート耐圧が下がることを防止できる。つまり、フィールド絶縁膜を設け、フィールド絶縁膜にゲート絶縁膜60を乗り上げる構成を採用した場合には、ゲート絶縁膜60に段差部が形成されることになる。このような段差部が形成されると、ゲート耐圧が下がってしまうことになる。他方、前述したようなゲート絶縁膜60が略同一の厚みを有しており、フィールド絶縁膜を設けない態様を採用した場合には、このような段差部がそもそも形成されないことから、ゲート耐圧が下がってしまうことを防止できる。
【0039】
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0040】
本実施の形態では、
図4に示すように、ツェナーダイオード領域100の設けられたウェル領域20とソース領域30の設けられたウェル領域20が面方向で分離されている。その他については、第1の実施の形態と同様であり、第1の実施の形態で採用したあらゆる構成を第2の実施の形態でも採用することができる。第1の実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。
【0041】
第1の実施の形態でも述べたように、本実施の形態のようなツェナーダイオード領域100を設けた場合においてウェル領域20の厚みを厚くすることで、ツェナーダイオード領域100とウェル領域20との間の接合容量の一部をCrss(逆伝達容量)に移動することができ、パッシブミラー動作をさせることも可能になる。このようなパッシブミラー動作をさせる場合には、ツェナーダイオード領域100の超高濃度p型半導体領域102とソース領域30とが形成されるウェル領域20が分離されることが有益である。この場合、
図4に示すように、ツェナーダイオード領域100の超高濃度p型半導体領域102と、ソース領域30に隣接するウェルコンタクト領域21とが形成されるウェル領域20を面方向で分離してもよい。
【0042】
第3の実施の形態
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0043】
本実施の形態では、
図5に示すように、ウェル領域20内に平面型の副次的MOSFET領域150が設けられている。この副次的MOSFET領域150は、一対のn型半導体領域151a,151b,152a,152bと、一対のn型半導体領域151a,151b,152a,152bの間に設けられたp型半導体領域156と、n型半導体領域151a,151b,152a,152b及びp型半導体領域156に副次的MOSFET絶縁層であるゲート絶縁膜60を介して設けられ、ゲートパッド120に電気的に接続される副次的MOSFETゲート電極159と、を有している。上記各実施の形態で採用したあらゆる構成を第3の実施の形態でも採用することができる。上記各実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。
図5に示す態様では、一対のn型半導体領域151a,151b,152a,152bのうちの一方がソースパッド110と電気的に接続されたn型半導体領域151a,152aを有し、他方がゲートパッド120と電気的に接続されたn型半導体領域151b,152bを有している。
【0044】
副次的MOSFET領域150のn型半導体領域151a,151b,152a,152bは、高濃度n型領域(n+)151a,151bと、高濃度n型領域151a,151bよりも不純物濃度の高い超高濃度n型領域(n++)152a,152bと、を有してもよい。一方の超高濃度n型領域152aが金属層40を介してソースパッド110と接触してソースコンタクト領域を形成し、他方の超高濃度n型領域152bがゲートパッド120に接触してゲートコンタクト領域を形成してもよい。副次的MOSFET領域150のp型半導体領域156は高濃度p型半導体領域(p+)であってもよい。当該副次的MOSFETの閾値電圧は、セル部のゲートに印加されるべき正バイアスよりも高くする必要があり、したがって、少なくとも当該副次的MOSFETのゲート絶縁膜60をセル部と略同一の厚みとする場合は、p型半導体領域156の不純物濃度はウェル領域20よりも高くする必要がある。
【0045】
図6に示すようにゲート電極125とゲートパッド120とは、ゲート接続領域126を介して電気的に接続されている。このゲート電極125と
図5に示す副次的MOSFETゲート電極159とは電気的に接続されてもよい。また、ゲート電極125と副次的MOSFETゲート電極159とは一体に構成されてもよい。
【0046】
副次的MOSFET領域150のn型半導体領域151a,151b,152a,152b及びp型半導体領域156の深さは、その底面がウェル領域20の底面より高い位置に位置づけられており、ウェル領域20内に副次的MOSFET領域150のn型半導体領域151a,151b,152a,152b及びp型半導体領域156が形成されることになる。副次的MOSFET領域150のn型半導体領域151a,151b,152a,152b及びp型半導体領域156の各々は例えばウェル領域20に対してn型の不純物又はp型の不純物を注入することで形成されてもよい。
【0047】
n型半導体領域151a,151b,152a,152b及びp型半導体領域156の各々は略同一の深さであってもよい。また、n型半導体領域151a,151b,152a,152b及びp型半導体領域156と、ソース領域30の高濃度n型領域31及び超高濃度n型領域32の各々も略同一の深さであってもよい。
【0048】
本実施の形態のような副次的MOSFET領域150はゲートパッド120の周囲だけに設けるのではなく、ゲートランナーの周囲に設けるようにしてもよい。また、このような態様に限られることはなく、本実施の形態のような副次的MOSFET領域150は、ゲートパッド120の周囲だけに設けてもよいし、ゲートランナーの周囲だけに設けるようにしてもよい。
【0049】
また、上記各実施の形態で示したようなツェナーダイオード領域100と本実施の形態における副次的MOSFET領域150の両方を採用してもよく、ツェナーダイオード領域100及び副次的MOSFET領域150をゲートパッド120の周囲とゲートランナーの周囲に設けるようにしてもよい。また、ツェナーダイオード領域100と副次的MOSFET領域150の両方を、ゲートパッド120の周囲だけに設けてもよいし、ゲートランナーの周囲だけに設けるようにしてもよい。また、ツェナーダイオード領域100と副次的MOSFET領域150の一方をゲートパッド120の周囲だけに設け、他方をゲートランナーの周囲だけに設けるようにしてもよい。
【0050】
第4の実施の形態
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0051】
本実施の形態では、
図7乃至
図10に示すように、ウェル領域20が、ゲートパッド120の下方の一部に設けられた第1ウェル領域20aと、第1ウェル領域20aと面方向で分離された第2ウェル領域20bとを有している。上記各実施の形態で採用したあらゆる構成を第4の実施の形態でも採用することができる。上記各実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。
図7に示す態様では、第1ウェル領域20a内にツェナーダイオード領域100が設けられている。
図9に示す態様では、第1ウェル領域20a内に副次的MOSFET領域150の一部が設けられている。
【0052】
スイッチング時にゲートパッド120の下方にあるドリフト層12とウェル領域20との間の大きな接合容量を充電する変位電流が原因でウェル領域20の電位が上昇しようとした場合、ゲート電極125に大きな電流が流れることがある。この場合には、dV/dtが著しく制限されることになる。このため、本実施の形態のように第1ウェル領域20aと第2ウェル領域20bとを分離して設け、ゲートパッド120の下方側領域の多くの部分(例えば面方向の面積で80%以上の部分)を第2ウェル領域20bが占め、この第2ウェル領域20bをセル領域及びツェナーダイオード領域100又は副次的MOSFET領域150の形成された第1ウェル領域20aから切り離して設けることが有益である。このように第1ウェル領域20aと第2ウェル領域20bとを分離して設けることで、dV/dtが著しく制限されることを防止できる。
【0053】
図7乃至
図10に示すように、第1ウェル領域20aと第2ウェル領域20bとの間に、ドリフト層12よりも不純物濃度の高いn型半導体からなる分離領域105が設けられてもよい。このようにドリフト層12よりも不純物濃度の高いn型半導体からなる分離領域105を設けることで、第1ウェル領域20aと第2ウェル領域20bとをより確実に分離することができる。なお、分離領域105は例えばウェル領域20の間隙付近に対してn型の不純物を注入することで形成されてもよい。分離領域105における不純物濃度は例えば5×10
16~5×10
17cm
-3である。
【0054】
第5の実施の形態
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
【0055】
本実施の形態では、第1の実施の形態、第2の実施の形態又は第4の実施の形態におけるツェナーダイオード領域100を採用した場合において、ゲートコンタクト領域として超高濃度n型領域(n++)を採用してゲートパッド120とオーミック接触させるのではなく、ゲートコンタクト領域として高濃度n型領域(n+)103aを採用し、ゲートコンタクト領域103aをゲートパッド120とショットキー接触されるようにしている。また、ゲートコンタクト領域103aのうち端部以外の箇所が、ウェル領域20のp型の不純物濃度よりも低いn型の不純物濃度となっており、例えば低濃度n型領域(n-)109となっていてもよい。上記各実施の形態で採用したあらゆる構成を第5の実施の形態でも採用することができる。上記各実施の形態で説明した部材に対しては同じ符号を付して説明する。
【0056】
ゲートコンタクト領域103aとして高濃度n型領域(n+)を採用し、ゲートコンタクト領域103aをゲートパッド120とショットキー接触されるようにすることで、pnダイオードのビルトイン電圧以上の負バイアス(例えば-3V以下)を印加できるようになる。
【0057】
また、
図11に示すように、低濃度n型領域109によってゲートコンタクト領域103aを分離するような態様を採用することで、ゲートコンタクト領域103aの端部以外の箇所で空乏化させることができ、Ciss(入力容量)が増加し過ぎることを防止できるようになる。
【0058】
上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0059】
12 ドリフト層
20 ウェル領域
20a 第1ウェル領域
20b 第2ウェル領域
30 ソース領域
60 ゲート絶縁膜
100 ツェナーダイオード領域
101 高濃度第1導電型半導体領域
102 超高濃度第2導電型半導体領域
103 ゲートコンタクト領域
105 分離領域
120 ゲートパッド
125 副次的MOSFETゲート電極
150 副次的MOSFET領域
151a,151b,152a,152b n型半導体領域
156 p型半導体領域
159 副次的MOSFETゲート電極