IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンクステック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-多層配線板及びその製造方法 図1
  • 特許-多層配線板及びその製造方法 図2
  • 特許-多層配線板及びその製造方法 図3
  • 特許-多層配線板及びその製造方法 図4
  • 特許-多層配線板及びその製造方法 図5
  • 特許-多層配線板及びその製造方法 図6
  • 特許-多層配線板及びその製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】多層配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20220404BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
H05K3/46 J
H05K1/02 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019551860
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2017040744
(87)【国際公開番号】W WO2019092881
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】521386593
【氏名又は名称】リンクステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋志
(72)【発明者】
【氏名】住本 尚
(72)【発明者】
【氏名】畑澤 大樹
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-168050(JP,A)
【文献】特開平5-267845(JP,A)
【文献】特開平7-115276(JP,A)
【文献】特開平6-275958(JP,A)
【文献】特開平7-221455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号線、前記信号線を取り囲む絶縁層、前記絶縁層の周りに配置されるシールド層を有し、第1方向に延在する同軸ワイヤと、
前記第1方向及び当該第1方向に交差する第2方向により画定される面方向に沿って広がり、前記同軸ワイヤが布線される接着シートと、
前記接着シートの第1の面の側に配置され、前記同軸ワイヤの一部を露出させる第1の孔が外表面から内に向けて設けられる基材と、
前記基材の外表面に設けられる外層電極と、
前記第1の孔内で露出する前記同軸ワイヤの前記シールド層と前記外層電極とを電気的に接続する金属層と、
を備え、
前記基材の前記第1の孔が非貫通孔であり、前記第1の孔の直径又は前記第2方向に沿った横幅が前記同軸ワイヤの前記シールド層の外径よりも大きい、多層配線板。
【請求項2】
前記第1の孔の前記直径又は前記横幅は、前記同軸ワイヤの前記シールド層の外径の1.2倍以上3倍以下である、請求項1に記載の多層配線板。
【請求項3】
前記第1の孔の前記第1方向に沿った縦幅は、前記第1の孔の前記横幅と異なっている、請求項1又は2に記載の多層配線板。
【請求項4】
前記第1の孔の前記横幅が前記縦幅よりも広い、請求項に記載の多層配線板。
【請求項5】
金属箔を有し、前記接着シートの前記第1の面と逆の第2の面側に配置される積層板を更に備え、
前記積層板の前記金属箔は、前記同軸ワイヤと同電位になるように構成されており、前記金属層は、前記金属箔に電気的に接続される、請求項1~の何れか一項に記載の多層配線板。
【請求項6】
前記基材には、前記同軸ワイヤの前記一部とは異なる他部を露出させる第2の孔が設けられ、前記第2の孔内に露出する前記同軸ワイヤの前記シールド層と前記外層電極とが前記金属層により電気的に接続される、請求項1~の何れか一項に記載の多層配線板。
【請求項7】
前記第2の孔の直径又は前記第2方向に沿った横幅が前記同軸ワイヤの前記シールド層の外径よりも大きい、請求項に記載の多層配線板。
【請求項8】
信号線、前記信号線を取り囲む絶縁層、前記絶縁層の周りに配置されるシールド層を有する同軸ワイヤを準備する工程と、
第1方向及び当該第1方向に交差する第2方向により画定される面方向に沿って広がる接着シートを準備する工程と、
少なくとも一部が前記第1方向に沿うように前記同軸ワイヤを前記接着シートに布線する工程と、
前記同軸ワイヤが布線された前記接着シートの上に基材を積層する工程と、
前記基材の外表面に外層電極を設ける工程と、
前記基材において前記同軸ワイヤが布線されている領域の一部に、前記同軸ワイヤの一部が露出するように前記外表面から内に向かって孔を設ける工程と、
前記孔内に露出する前記同軸ワイヤの前記シールド層と前記外層電極とを金属層によって電気的に接続する工程と、
を備え、
前記孔を設ける工程では、前記基材の前記孔の直径又は前記第2方向に沿った横幅が前記同軸ワイヤの前記シールド層の外径よりも大きくなるように、非貫通孔である前記孔を設ける、多層配線板の製造方法。
【請求項9】
前記孔を設ける工程は、
前記孔の直径又は前記横幅が前記同軸ワイヤの前記シールド層の外径よりも大きくなるように前記外表面から前記同軸ワイヤの前記シールド層の手前までドリル加工を行って前記孔の主要部を形成する工程と、
前記ドリル加工を行う工程の後に、前記孔の前記主要部を基準にして前記シールド層までレーザ加工を行い、前記孔を形成する工程と、
を備える、請求項に記載の多層配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同軸ワイヤを備えた多層配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、同軸ワイヤを備えた多層配線板が開示されている。この多層配線板では、内層に配置された同軸ワイヤの信号線が貫通孔の内壁に設けられためっき層を介して外層電極に接続され、また、同軸ワイヤのシールド層が非貫通孔(ビア)の内壁等に設けられためっき層及び外層電極を介して配線板の内層に位置するグランドに接続されている。特許文献2には、同軸ワイヤを備えた配線板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-168050号公報
【文献】特開平5-152760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に記載の同軸ワイヤを備えた多層配線板では、同軸ワイヤを多層配線板の外表面に近い内層に配置していることから、同軸ワイヤを多層配線板の内側の奥に配置している場合に比べて、同軸ワイヤのシールド層(外周導体)を露出させるための非貫通孔(ビア)を外側から形成し易くなっている。しかしながら、この多層配線板は熱等によって収縮してしまうこともあり、また多層配線板に用いられる同軸ワイヤが多層配線板の内層に配置されることから、同軸ワイヤのシールド層を露出させるための非貫通孔(ビア)の加工位置を同軸ワイヤの配置箇所に精度よく一致させることが難しい場合もある。仮に同軸ワイヤと非貫通孔(ビア)との位置がずれた場合(図7参照)には、金属めっきした際の接触面積の不足により接続信頼性が低下してしまい、不要電波の輻射を防止するといったシールド効果を十分に得ることができなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、十分なシールド効果を確実に得ることができる多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その一側面として、多層配線板に関する。この多層配線板は、信号線、信号線を取り囲む絶縁層、絶縁層の周りに配置されるシールド層を有し、第1方向に延在する同軸ワイヤと、第1方向及び当該第1方向に交差する第2方向により画定される面方向に沿って広がり、同軸ワイヤが布線される接着シートと、接着シートの第1の面の側に配置され、同軸ワイヤの一部を露出させる第1の孔が外表面から内に向けて設けられる基材と、基材の外表面に設けられる外層電極と、第1の孔内で露出する同軸ワイヤのシールド層と外層電極とを電気的に接続する金属層と、を備えている。この多層配線板では、基材の第1の孔の直径又は第2方向に沿った横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径よりも大きい。
【0007】
上記の多層配線板では、基材に設けられる第1の孔の直径又は第2方向に沿った横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径よりも大きくなるように構成されている。この場合、同軸ワイヤのシールド層を露出させるための第1の孔(ビア)の加工位置に対して同軸ワイヤの配置箇所が多少ずれたとしても、第1の孔の直径又は横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径よりも大きく形成されているため、第1の孔において同軸ワイヤのシールド層を十分に露出させることができ、同軸ワイヤのシールド層と外層電極とを金属層によってより確実に電気的に接続することが可能となる。その結果、この多層配線板によれば、十分なシールド効果を確実に得ることができる。また、この多層配線板では、同軸ワイヤを用いていることから、隣接する導体との間のワイヤピッチが微細(例えば0.3mm以下)となり高密度化された多層配線板であっても、電磁障害によるクロストークの影響を抑制することができる。なお、ここで用いる「布線(Wiring)」とは、同軸ワイヤを接着シートなどの上に一部が埋没するように這わせると共に、当該シートに付着させることを意味する。
【0008】
上記の多層配線板では、第1の孔が非貫通孔であってもよい。この場合、同軸ワイヤのシールド層と外層電極とを電気的に接続するのに必要な範囲で第1の孔を作製することができるため、第1の孔を容易に作製することができる。また、第1の孔が非貫通孔である場合、必要な配線層の深さまでしか第1の孔が形成されないため、それよりも深い配線層には他の配線を配置することができ、配線の高密度化を図ることができる。
【0009】
上記の多層配線板では、第1の孔の直径又は横幅は、同軸ワイヤのシールド層の外径の1.2倍以上3倍以下であってもよい。このように第1の孔の直径又は横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径の1.2倍以上である場合、多層配線板における同軸ワイヤの布線の配線位置精度が許容限界に近い値であったり又は多層配線板に対して熱収縮が生じた場合であっても、第1の孔においてシールド層を十分に露出させることができ、シールド層と外層電極とを金属層によってより確実に電気的に接続することが可能となる。一方、第1の孔の直径又は横幅がシールド層の外径の3倍以下である場合、多層配線板に必要以上に大きな孔を明けなくてよくなり、多層配線板の表層に設けられる配線パターン(配線回路)の設計自由度を高めることができる。
【0010】
上記の多層配線板では、第1の孔の第1方向に沿った縦幅は、第1の孔の横幅と異なっていてもよい。この場合、金属層の形成等により適した孔形状とすることができる。また、この多層配線板では、第1の孔の横幅がその縦幅よりも広くてもよい。この場合、同軸ワイヤのシールド層を露出させるための第1の孔(ビア)の加工位置に対する、同軸ワイヤの配置箇所のずれの許容範囲を広くすることができると共に、孔の形成による表層の配線パターンの設計自由度の低下を抑制することができる。
【0011】
上記の多層配線板は、金属箔を有し、接着シートの第1の面と逆の第2の面側に配置される積層板を更に備えてもよく、この積層板の金属箔は、同軸ワイヤと同電位になるように構成されており、金属層は、金属箔に電気的に接続されてもよい。この場合、第1の孔の深さを一定以上深くすることなく、また、その深さを一定にできる作用があるため、生産による品質ばらつきを抑えることができる。
【0012】
上記の多層配線板では、基材には、同軸ワイヤの一部とは異なる他部を露出させる第2の孔が設けられてもよく、第2の孔内に露出する同軸ワイヤのシールド層と外層電極とが金属層により電気的に接続されてもよい。この場合、同軸ワイヤのシールド層と外層電極とが2箇所以上で電気的に接続されることになり、両者の接続信頼性を更に高めることができ、十分なシールド効果をより確実に得ることができる。また、この場合において、第2の孔の直径又は第2方向に沿った横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径より大きくてもよい。この場合、第1及び第2の孔のいずれにおいても、同軸ワイヤのシールド層と外層電極とが電気的により確実に接続されることになり、十分なシールド効果をより一層確実に得ることができる。
【0013】
また、本発明は、別の側面として、多層配線板の製造方法に関する。この多層配線板の製造方法は、信号線、信号線を取り囲む絶縁層、絶縁層の周りに配置されるシールド層を有する同軸ワイヤを準備する工程と、第1方向及び当該第1方向に交差する第2方向により画定される面方向に沿って広がる接着シートを準備する工程と、少なくとも一部が第1方向に沿うように同軸ワイヤを接着シートに布線する工程と、同軸ワイヤが布線された接着シートの上に基材を積層する工程と、基材の外表面に外層電極を設ける工程と、基材において同軸ワイヤが布線されている領域の一部に、同軸ワイヤの一部が露出するように外表面から内に向かって孔を設ける工程と、孔内に露出する同軸ワイヤのシールド層と外層電極とを金属層によって電気的に接続する工程と、を備えている。この製造方法では、孔を設ける工程において、基材の孔の直径又は第2方向に沿った横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径よりも大きくなるように、孔を設ける。
【0014】
上記の多層配線板の製造方法では、孔を設ける工程において、基材の孔の直径又は第2方向に沿った横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径よりも大きくなるように、孔を設けている。この場合、同軸ワイヤのシールド層を露出させるための第1の孔(ビア)の加工位置に対して同軸ワイヤの配置箇所が多少ずれたとしても、第1の孔の直径又は横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径よりも大きく形成されているため、第1の孔において同軸ワイヤのシールド層を十分に露出させることができ、同軸ワイヤのシールド層と外層電極とを金属層によってより確実に電気的に接続することが可能となる。その結果、この多層配線板の製造方法によれば、十分なシールド効果を有する多層配線板を容易に得ることができる。
【0015】
上記の多層配線板の製造方法では、孔を設ける工程は、孔の直径又は横幅が同軸ワイヤのシールド層の外径よりも大きくなるように外表面から同軸ワイヤのシールド層の手前までドリル加工を行って孔の主要部を形成する工程と、ドリル加工を行う工程の後に、孔の主要部を基準にしてシールド層までレーザ加工を行い、孔を完成させる工程と、を備えている。この場合、同軸ワイヤのシールド層を露出させるための孔の主要部を加工速度の速いドリル加工により行い、その後、加工精度がより高いレーザ加工を行ってシールド層の破損を抑えて孔を完成させている。このため、同軸ワイヤのシールド層を露出させるための孔を早期且つ確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分なシールド効果を確実に得ることができる多層配線板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る多層配線板を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す多層配線板の製造方法を示す図である。
図3図3は、図2の(e)に示す工程において、同軸ワイヤのシールド層を上方から視た模式的な上面図である。
図4図4は、図2の(e)に示す工程において、変形例の同軸ワイヤのシールド層を上方から視た模式的な上面図である。
図5図5は、本発明の他の実施形態に係る多層配線板を示す断面図である。
図6図6は、本発明の変形例に係る多層配線板における接続関係を示す模式図である。
図7図7は、比較例に係る多層配線板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る多層配線板の実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る多層配線板を示す断面図である。図1に示すように、多層配線板1は、同軸ワイヤ10、基材20、接着シート21、基材22、外層電極23、及び、金属層24を備えている。多層配線板1には、同軸ワイヤ10のシールド層13の一部(図では上部)を露出させる孔22aが基材22の外側から内にかけて設けられている。孔22aは、図1に示す実施形態では、非貫通孔であるが、貫通孔であってもよい。
【0020】
同軸ワイヤ10は、信号線11、信号線11を被覆して取り囲む絶縁層12、絶縁層12の周りに配置されるシールド層13、及び、シールド層13を被覆して取り囲みシールド層13を構成する複数の導体を固定する導体固定層14を備えている。同軸ワイヤ10は、図1の紙面に直交する方向(第1方向)に延在するワイヤである。
【0021】
信号線11は、例えば直径が50μm以上300μm以下のワイヤであり、100μm以上220μm以下のワイヤであることがより好ましく、銅、銅合金、若しくは、アルミニウム合金又はピアノ線に銅を被覆したもの等を用いることができる。信号線11は、同軸ワイヤ10において高周波信号(例えば10GHz等の電気信号)が伝送される領域である。信号線11は単線であってもよいが、撚り線であってもよい。
【0022】
絶縁層12は、信号線11を絶縁するための被覆樹脂層であり、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、又はフッ素系樹脂から構成されている。絶縁層12は、信号線11の外周にその長手方向に沿って被覆されており、例えばその厚みを80μm以上150μm以下とすることができる。
【0023】
シールド層13は、信号線11を流れる高周波信号からの電磁ノイズの外部放射を遮蔽し、隣接配置等される他のワイヤ又は各種配線に対して電磁ノイズが入らないようにするための外部導体である。シールド層13は、例えば線径が15μm以上30μm以下の複数の銅線を円周方向に沿って隙間なく配置した層であり、信号線11を被覆する絶縁層12の周りを取り囲むようにその外周に配置され、電磁ノイズの外部放出を遮蔽する。シールド層13は、これら複数の銅線の撚り線であってもよいが、遮蔽効果を実現することができれば、他の構成であってもよい。また、シールド層13は、外部ノイズが信号線11へ入射することも遮蔽する。
【0024】
導体固定層14は、シールド層13を構成する複数の金属線(銅線)を被覆して、同軸ワイヤ10が捻られた際などの場合であってもばらばらにならないように固定するための樹脂層であり、例えば、フッ素樹脂又はイミド系樹脂から構成されている。導体固定層14は、例えばその厚みを10μm以上50μm以下とすることができ、より好ましくは20μm以上40μm以下とすることができる。また、導体固定層14は、外部から同軸ワイヤに加えられるダメージを軽減するジャケットとしても機能する。なお、導体固定層14は、UV硬化型又は熱硬化型の接着性樹脂から構成されていてもよい。この場合、同軸ワイヤ10の接着シート21への接着性を向上させることができる。
【0025】
基材20は、例えばプリプレグなどの絶縁性を有する基材である。「プリプレグ」とは、補強材(例えばガラスクロス)に絶縁樹脂(例えばポリイミド樹脂)を含浸させ、半硬化状態としたシート状のもの、又は、この半硬化状態のシート状のものを用いて、加熱加圧による積層一体化等により硬化形成した絶縁層をいう。
【0026】
接着シート21は、布線により少なくとも下方の一部(図1の例では下側半分)がその中に埋め込まれた同軸ワイヤ10を、含有された接着剤成分等を硬化することで、接着シート21上に固定するための層である。接着シート21は、例えばフェノキシ系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、又は、ビスマレイミド系樹脂の何れか1種類の接着性樹脂成分を含んで構成されている。接着シート21を構成する接着性樹脂成分は、UV硬化型又は熱硬化型のいずれであってもよい。また、接着シート21は、例えばその厚みが300μm以上700μm以下とすることができ、より好ましくは400μm以上500μm以下とすることができる。ここで用いる「布線」とは、同軸ワイヤを接着シートの上に一部が埋没するように所定の配線パターンに沿って這わせると共に、当該接着シートに付着させることを意味する。この付着は例えば超音波によって実行することができる。なお、接着シート21の上方側には基材22が積層されている。
【0027】
基材22は、基材20と同様に、例えばプリプレグなどの絶縁性を有する基材である。基材22は、接着シート21上に布線された同軸ワイヤ10の一部(例えば、上方半分)がその中に位置するように、接着シート21の上に積層されている。また、基材22には、同軸ワイヤ10のシールド層13の上部表面が露出するように孔22a(第1の孔)が設けられている。孔22aは、多層配線板1の外表面から内に向かって形成された非貫通孔である。孔22aは、多層配線板1の構成によっては、一方の外表面から他方の外表面まで貫通する貫通孔であってもよい。なお、孔22aでは、導体固定層14が一部(上部)削られた構成となっており、シールド層13が露出するようになっている。
【0028】
外層電極23は、基材22の外層の表面に設けられる電極層である。外層電極23は、例えば、銅箔などの金属箔から構成され、プリプレグ等からなる基材22上に貼り付けられる。外層電極23の厚みは、例えば、5μm以上70μm以下であってもよい。
【0029】
金属層24は、孔22a内で露出する同軸ワイヤ10のシールド層13と外層電極23とを電気的に接続するための導電層である。金属層24は、シールド層13の露出した領域を覆う第1領域24aと、シールド層13の露出領域を除く孔22aの底面上に設けられる第2領域24bと、孔22aの内周面上に設けられる第3領域24cと、外層電極23上に設けられる第4領域24dとを有しており、例えばめっき処理によって、これら第1領域24a~第4領域24dが一括して形成される。金属層24の厚みは、例えば、10μm以上30μm以下であってもよい。
【0030】
ここで、基材22に設けられる孔22aについて、更に詳細に説明する。孔22aは、例えば平面視した際に、円形(図3参照)、楕円形、又は、四角形(図4参照)などの多角形といった形状を呈する孔であり、その内径又は横幅D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径D2よりも広くなるように形成されている。孔22aの内径又は横幅D1は、同軸ワイヤ10を布線する方向(第1方向)に直交(交差)する方向(第2方向、図1の左右方向)に沿った長さである。孔22aは、その内径又は横幅D1がシールド層13の外径D2の1.2倍以上3倍以下であることがより好ましい。孔22aの内径又は横幅D1がシールド層13の外径D2の1.2倍以上であることにより、多層配線板1における同軸ワイヤ10の布線の配線位置精度が許容限界に近い値であったり(その分、所定位置より孔22aが横にずれたり)、又は多層配線板1に対して熱収縮が生じた場合であっても、孔22aにおいてシールド層13を十分に露出させることができ、シールド層13と外層電極23とを金属層24によってより確実に電気的に接続することが可能となる。ここで、孔22aにおいてシールド層13を十分に露出させるには、孔22a内においてシールド層13の上部外周の50%以上(全外周の25%以上)が露出している部分を有することが好ましく、上部外周の70%以上(全外周の35%以上)がより好ましく、上部外周の90%以上(全外周の45%以上)がさらに好ましい。一方、孔22aの直径又は横幅D1がシールド層13の外径の3倍以下であることにより、多層配線板1に必要以上に大きな孔を明けなくてよくなり、多層配線板1の表層に設けられる配線パターン(配線回路)の設計自由度を高めることができる。
【0031】
また、孔22aは、図3に示す例では平面視円形の孔であるが、これに限定されることはなく、角部を丸めた略矩形形状であってもよい(図4参照)。この場合、孔22bの横幅D1は、同軸ワイヤ10の布線方向に沿った縦幅D3と異なっており、横幅D1が縦幅D3よりも広くなっている。
【0032】
次に、図2を参照して、同軸ワイヤ10のシールド層13が露出する孔22aを備えた多層配線板の製造方法について説明する。図2は、図1に示す多層配線板の製造方法を示す図である。
【0033】
まず、信号線11、絶縁層12、シールド層13及び導体固定層14を備える同軸ワイヤ10を準備すると共に、図2の(a)に示すように、基材20上に接着シート21を積層した積層体を準備する。なお、ここで準備した基材20及び接着シート21は、図の左右方向及び図2の紙面に直交する方向により画定される面方向に沿って広がっている。
【0034】
次に、図2の(b)に示すように、基材20及び接着シート21からなる積層体の接着シート21上に同軸ワイヤ10を布線する。同軸ワイヤ10の布線方向は、例えば、図2の紙面に直行する方向であるが、布線パターンによっては、途中で違う方向に曲げるようにしてもよい。同軸ワイヤ10を布線する際には、例えば同軸ワイヤ10に所定の圧力を付与しながら、超音波を与えて同軸ワイヤ10を接着シート21に固定する。これにより、所望の布線パターンとされた同軸ワイヤ10が接着シート21上に形成される。
【0035】
次に、図2の(c)に示すように、同軸ワイヤ10が布線された接着シート21の上に基材22を積層する。基材22は、例えばプリプレグから構成されており、接着シート21の上に積層した後、加熱加圧を加えることにより、接着シート21に固定される。なお、基材22の上には、外層電極23となる金属箔23a(例えば銅箔)が取り付けられている。
【0036】
次に、図2の(d)及び(e)に示すように、基材22において同軸ワイヤ10が布線されている領域(同軸ワイヤ10が埋設されている領域)の一部に、同軸ワイヤ10のシールド層13の上部が露出するように外表面から内に向かって孔22aを設ける。この孔22aを設ける際、まずは、図2の(d)に示すように、同軸ワイヤ10が埋設されている領域に対して、基材22の外表面から同軸ワイヤ10のシールド層13の手前までドリルにより孔を明けて、孔22aの主要部22cを作製する。そして、このドリル加工の後に、図2の(e)に示すように、孔22aの主要部22cを基準にしてシールド層13までCOレーザを使って孔を精度よく掘り進め、同軸ワイヤ10の導体固定層14の一部を溶かし、シールド層13の上部を露出させる。
【0037】
孔22aをドリル及びレーザによって形成する際、図3に示すように、孔22aの直径D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径D2よりも長くなるように、孔22aを形成する。より好ましくは、孔22aの直径D1がシールド層13の外径の1.2倍以上3.0倍以下の範囲となるように孔22aを形成する。また、孔22aの形状は図3に示す円形に限られず、図4に示すように、角部を丸めた略矩形形状などの多角形であってもよく、このような形状の孔22bを設けてもよい。孔22bでは、横幅D1が縦幅D3よりも長くなっており、同軸ワイヤ10と孔の設置位置とのずれが大きくなっても、同軸ワイヤ10のシールド層13がより確実に孔22b内に露出するようになっている。
【0038】
次に、同軸ワイヤ10のシールド層13の上方が孔22a(又は孔22b)内に露出すると、無電解銅めっきなどの金属めっき処理により、シールド層13の内、孔内に露出している領域、孔22aの内周面、及び外層電極23の上方に、めっきからなる金属層24を形成する。なお、金属めっき処理の前処理としては、デスミア処理(アルカリ過マンガン酸水溶液)により孔22a(又は孔22b)内の残存異物を除去するようにしてもよい。以上により、図1に示す多層配線板1が作製される。
【0039】
以上、本実施形態に係る多層配線板1によれば、基材22に設けられる孔22a,22bの直径又は横幅D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径D2よりも大きくなるように構成されている。このため、同軸ワイヤ10のシールド層13を露出させるための孔22a,22b(ビア)の加工位置に対して同軸ワイヤ10の配置箇所が多少ずれたとしても、孔22a,22bの直径又は横幅D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径D2よりも大きく形成されているため、孔22a,22bにおいて同軸ワイヤ10のシールド層13を十分に露出させることができ、同軸ワイヤ10のシールド層13と外層電極23とを金属層24によってより確実に電気的に接続することが可能となる。その結果、この多層配線板1によれば、十分なシールド効果を確実に得ることができる。また、この多層配線板1では、同軸ワイヤ10を用いていることから、隣接する導体との間のワイヤピッチが微細(例えば0.3mm以下)となり高密度化された多層配線板であっても、電磁障害によるクロストークの影響を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る多層配線板1では、孔22a,22bが非貫通孔である。このため、同軸ワイヤ10のシールド層13と外層電極23とを電気的に接続するのに必要な範囲で孔22a,22bを作製することができるため、孔22a,22bを容易に作製することができる。また、孔22a,22bが非貫通孔である場合、必要な配線層の深さまでしか孔22a,22bが形成されないため、それよりも深い配線層には他の配線を配置することができ、配線の高密度化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る多層配線板1では、孔22a,22bの直径又は横幅D1は、同軸ワイヤ10のシールド層13の外径D2の1.2倍以上3倍以下であってもよい。このように孔22a,22bの直径又は横幅D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径の1.2倍以上である場合、多層配線板1における同軸ワイヤ10の布線の配線位置精度が許容限界に近い値であったり又は多層配線板1に対して熱収縮が生じた場合であっても、孔22a,22bにおいてシールド層13を十分に露出させることができ、シールド層13と外層電極23とを金属層24によってより確実に電気的に接続することが可能となる。一方、孔22a,22bの直径又は横幅D1がシールド層13の外径D2の3倍以下である場合、多層配線板1に必要以上に大きな孔を明けなくてよくなり、多層配線板1の表層に設けられる配線パターン(配線回路)の設計自由度を高めることができる。
【0042】
また、本実施形態に係る多層配線板1では、孔22bの縦幅D3は、孔22bの横幅D1と異なっていてもよい。この場合、金属層24の形成等により適した孔形状とすることができる。また、この多層配線板1では、孔22bの横幅D1がその縦幅D3よりも広くてもよい。この場合、同軸ワイヤ10のシールド層13を露出させるための孔22b(ビア)の加工位置に対する、同軸ワイヤ10の配置箇所のずれの許容範囲を広くすることができると共に、孔22bの形成による表層の配線パターンの設計自由度の低下を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る多層配線板1の製造方法では、孔22a,22bを設ける工程において、基材22の孔22a,22bの直径又は横幅D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径よりも大きくなるように、孔を設けている。この場合、同軸ワイヤ10のシールド層13を露出させるための孔22a,22b(ビア)の加工位置に対して同軸ワイヤ10の配置箇所が多少ずれたとしても、孔22a,22bの直径又は横幅D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径D2よりも大きく形成されているため、孔22a,22bにおいて同軸ワイヤ10のシールド層13を十分に露出させることができ、同軸ワイヤ10のシールド層13と外層電極23とを金属層24によってより確実に電気的に接続することが可能となる。その結果、この多層配線板1の製造方法によれば、十分なシールド効果を有する多層配線板1を容易に得ることができる。
【0044】
本実施形態に係る多層配線板の製造方法では、孔を設ける工程は、孔22a,22bの直径又は横幅D1が同軸ワイヤ10のシールド層13の外径よりも大きくなるように外表面から同軸ワイヤ10のシールド層13の手前までドリル加工を行って孔22a,22bの主要部22cを形成する工程と、ドリル加工を行う工程の後に、孔22a,22bの主要部22cを基準にしてシールド層13までレーザ加工を行い、孔22a,22bを完成させる工程と、を備えている。この場合、同軸ワイヤ10のシールド層13を露出させるための孔22a,22bの主要部22cを加工速度の速いドリル加工により行い、その後、加工精度がより高いレーザ加工を行ってシールド層13の破損を抑えて孔22a,22bを完成させている。このため、同軸ワイヤ10のシールド層13を露出させるための孔22a,22bを早期且つ確実に形成することができる。
【0045】
ここで、図5を参照して、本発明の他の実施形態に係る多層配線板について説明する。図5は、本発明の他の実施形態に係る多層配線板を示す断面図である。図5に示すように、多層配線板1aは、同軸ワイヤ10、基材20、接着シート21、基材22、外層電極23、及び、金属層24を備えており、更に、銅張積層板26、絶縁基材27,28を備えている。また、多層配線板1aには、一方の外表面から他方の外表面まで貫通する貫通孔29が設けられている。
【0046】
多層配線板1aでは、同軸ワイヤ10のシールド層13の上部外周の100%(全外周の50%)と、同電位の銅箔26a(金属箔)を含む銅張積層板26が露出するように孔22dが設けられている。孔22dにめっき処理が施されることにより、銅張積層板26の銅箔26aを介して外層電極23と同軸ワイヤ10のシールド層13とが金属層24により電気的に接続されている。
【0047】
このように、多層配線板1aは、接着シート21の下面側に配置される銅張積層板26を更に備えており、銅張積層板26の銅箔26aが同軸ワイヤ10のシールド層13と同電位になるように構成され、銅張積層板26の銅箔26aを介してシールド層13が金属層24に電気的に接続されている。この場合、孔22dの深さを一定以上よりも深くすることなく、また、深さを一定にできる作用があるため、生産による品質ばらつきを抑えることができる。
【0048】
以上、本実施形態に係る多層配線板及びその製造方法について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態を適用することができる。例えば、上記実施形態では、基材22の1つの孔22a又は22bを設ける例を説明したが、シールド層13を露出して外層電極23と接続するための孔は1つである必要はなく、複数の孔を設けてもよい。例えば、図6に示すように、同軸ワイヤ10を第1の地点15aから第2の地点15bに向けて布線する場合、その途中において、上述した孔22aと金属層24を2箇所以上設けて、複数の箇所にて、同軸ワイヤ10のシールド層13と外層電極23とを電気的に接続する構成であってもよく、図6に示す例では、例えば、4箇所に孔22aを設け、4箇所でシールド層13と外層電極23とを接続している。また、この際、4箇所の孔すべてが図1に示す孔22aのように、同軸ワイヤ10のシールド層13の外径より大きくなる構成であってもよいし、少なくとも一部が当該構成であって、他は異なる構成(例えば図7の構成)であってもよい。少なくとも一部において、図1に示す構成の孔22a及び外層電極23を有していることにより、十分なシールド効果を確実に得ることができる多層配線板とすることができる。なお、図7に示す構成では、シールド層13の上部外周の半分弱(50%未満)を金属層24が覆う構成になっており、孔122eがシールド層13の外径よりも小さくなっている。
【実施例
【0049】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
まず、図1に示す構成の多層配線板を作製するため、図2の(a)~(c)に示す手順で、基材20、接着シート21、同軸ワイヤ10、基材22、金属箔23a(外層電極23)を順に積層した積層体を作製した(図2の(c)を参照)。この積層体における同軸ワイヤ10のシールド層13の外径D2は0.24mmであった。また、ドリル径が0.2mm、0.3mm、0.5mm及び0.7mmの4種類のドリル(ユニオンツール株式会社製、商品名:UC30)を準備した。また、COレーザ(ビアメカニクス株式会社製、商品名:LC-2Q252)を準備した。
【0051】
続いて、図2の(c)に示す積層体を作製後、同軸ワイヤ10のシールド層13と外層電極23とを金属めっきにて電気的に接続するため、表層の金属箔23aから同軸ワイヤ10に向かってドリル加工を行った(図2の(d)参照)。この際、同軸ワイヤ10とドリル孔とを位置決めした後に、同軸ワイヤ10のシールド層13の最上部まで、最も近い位置において0.05mm程度に近接するまでドリル加工を行った。このドリル加工では、実施例1として0.3mmのドリル径のドリルを用いた。
【0052】
続いて、ドリルによるドリル加工が終了した後、図2の(e)に示すように、加工されたドリル孔を基準にしてCOレーザを使って20μsのパルス幅で1回加工を行った。この加工により、孔を更に深くすると共に、同軸ワイヤ10の導体固定層14の上部を取り除き、非貫通孔である孔22aを作製した。孔22aでは、同軸ワイヤ10のシールド層13が図2の(e)に示すように露出されていた。
【0053】
また、実施例2として、ドリル径が0.5mmのドリルを用いた以外は、実施例1と同様にして、図2の(e)に示す構成を作製した。
【0054】
また、実施例3として、ドリル径が0.7mmのドリルを用いた以外は、実施例1と同様にして、図2の(e)に示す構成を作製した。
【0055】
一方、比較例1として、ドリル径が0.2mmのドリルを用いた以外は、実施例1と同様にして、図2の(c)に示す積層体に対して、非貫通孔を作製した。
【0056】
比較例1の場合、図2の(c)の積層体に設けた非貫通孔と同軸ワイヤとの位置合わせが難しく、非貫通孔の中心と同軸ワイヤの中心とが一致せずに横にずれてしまった。比較例については、同様の条件で13回の穴開け加工を行ったが、最もずれが大きいものでは、同軸ワイヤ10のシールド層13の外径の半分程度が非貫通孔から外れてしまい、非貫通孔に露出するシールド層13(上部外周の50%未満、全外周の25%未満)と外層電極23との安定した電気接続を得ることが難しい状態となってしまった。なお、このような位置ずれは、設計値に対する同軸ワイヤ10の配線位置精度(許容誤差±0.05mm)と多層配線板の寸法収縮差(例えば0.12mm)の影響があり、シールド層13の外径よりも小さい径を有する非貫通孔を設けた場合には、これらの影響を十分に吸収できないことが原因と考えられた。
【0057】
これに対し、実施例1~3の場合、図2の(c)の積層体に設けた非貫通孔である孔22aと同軸ワイヤ10との位置合わせを容易に行うことができ、孔22aの中心と同軸ワイヤ10の中心とを一致させることができ、孔22aに露出したシールド層13(上部外周の70%以上、全外周の35%以上)と外層電極23との安定した電気的接続を得ることができた。これは、実施例1~3では、同軸ワイヤ10のシールド層13の外径よりも孔22aの径が0.3mm、0.5mm及び0.7mmと大きく、設計値に対する同軸ワイヤ10の配線位置精度(許容誤差±0.05mm)と多層配線板の寸法収縮差(例えば0.12mm)の影響があったとしても、これらの影響を十分に吸収することができたものと考えられた。
【0058】
以下の表1に、実施例1~3及び比較例1において用いたドリル径(孔21aの直径D1に相当)とシールド層13の外径D2との関係、及び、孔21aとシールド層13とのずれの有無についてまとめたものを示す。
【表1】
【0059】
以上、表1に示すように、ドリル径に相当する孔22aの直径(又は横幅)がシールド層13の外径よりも大きいことにより、孔21aとシールド層13の外形とのずれが生じにくくなることが確認できた。よって、上記実施形態の多層配線基板によれば、シールド層13と外層電極23とを金属層24によって確実に電気的に接続でき、十分なシールド効果を確実に得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、同軸ワイヤを備えた多層配線板に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1,1a…多層配線板、10…同軸ワイヤ、11…信号線、12…絶縁層、13…シールド層、14…導体固定層、20…基材、21…接着シート、22…基材、22a,22b,22d…孔、22c…主要部、23…外層電極、24…金属層、26…銅張積層板、26a…銅箔、27,28…絶縁基材、29…貫通孔、D1…直径又は横幅、D2…シールド層の外径、D3…縦幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7