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特許7051906ペクチン-ドキソルビシン共役化合物及びその調製方法と用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】ペクチン-ドキソルビシン共役化合物及びその調製方法と用途
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/06 20060101AFI20220404BHJP
   A61K 47/61 20170101ALI20220404BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220404BHJP
   C07K 5/00 20060101ALN20220404BHJP
   A61K 47/60 20170101ALN20220404BHJP
   A61K 47/65 20170101ALN20220404BHJP
   A61K 31/704 20060101ALN20220404BHJP
【FI】
C08B37/06
A61K47/61
A61P35/00
C07K5/00
A61K47/60
A61K47/65
A61K31/704
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019564079
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 CN2019091627
(87)【国際公開番号】W WO2020252648
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2019-11-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519407161
【氏名又は名称】四川瀛瑞医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN YINGRUI PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY COMPANY
【住所又は居所原語表記】Floor 1-5,Building 1,Incubation Park,1480 Tianfu Avenue North Section,High-tech Zone,Chengdu,Sichuan 610041 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】唐 小海
(72)【発明者】
【氏名】曽 誠
(72)【発明者】
【氏名】黄 源芳
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101045163(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103044521(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106334195(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107955153(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107737347(CN,A)
【文献】Carbohydrate Polymers,2017年07月01日,Vol.174,p.493-506
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/06
A61K 47/61
A61P 35/00
C07K 5/00
A61K 47/60
A61K 47/65
A61K 31/704
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有することを特徴とするペクチン-ドキソルビシン共役化合物。
a-b-c-d-e (I)
ここで、aはペクチン又は修飾ペクチンであり、前記ペクチンは、ポリガラクツロン酸の含有量が90%以上であり、分子量が1-60KDの脱エステル化ペクチンであり、前記修飾ペクチンは、ポリガラクツロン酸脱エステル化ペクチンのカルボニル基と、ヒドロキシ基置換されたC-Cのアルキルアミンで形成したアミドを、さらにペクチン炭酸エステルに活性化したものであり、
bはポリエチレングリコールPEGnであり、nは6-12の整数であり、
cはval-alaであり、
dはアミノベンジルオキシカルボニル基であり、
eはドキソルビシンである。
【請求項2】
aは修飾ペクチンであり、前記aの分子量は1-4KDであることを特徴とする請求項1に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物。
【請求項3】
dはp‐アミノベンジルオキシカルボニル基、すなわちPABCであることを特徴とする請求項1に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物。
【請求項4】
式(13)の化合物と式(9)の化合物をアルカリ性試薬の存在下で反応させることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物の調製方法。

式(13)において、aは2-4から選択された整数であり、mは1-60であり、式(9)の化合物はb-c-d-ADMであり、ADMはドキソルビシンであり、bはPEGnであり、cはval-alaであり、dはp‐アミノベンジルオキシカルボニル基、すなわちPABCであり、nは6-12の整数である。
【請求項5】
式(13)の化合物の調製方法として、ペクチンとアルコールを反応させてエステル化ペクチンを得、さらにアミノ置換されたC-Cのアルコールと反応させてアミドを形成した後、さらに炭酸ビス(4-ニトロフェニル)と反応させて式(13)の化合物を得ることを特徴とする請求項に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物の調製方法。
【請求項6】
式(9)の化合物の調製方法として、式(5)の化合物をドキソルビシンとアルカリ性試薬の存在下で反応させて式(6)の化合物を得、式(6)の化合物をピペリジンの存在下で脱保護することにより式(7)の化合物を得、さらに式(7)の化合物をR-b-COOHと反応させて式(8)の化合物を得、式(8)の化合物をピペリジンの存在下で脱保護することにより化合物(9)を得ることを特徴とする請求項に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物の調製方法。
ここで、式(5)の化合物はR-c-PABCであり、式(6)の化合物はR-c-PABC-eであり、式(7)の化合物はc-PABC-eであり、式(8)の化合物はR-b-c-PABC-eであり、Rはフルオレニルメトキシカルボニル基Fmocである。
【請求項7】
式(5)の化合物の調製方法として、式(3)の化合物を酸結合剤の存在下でp-アミノベンジルアルコールと反応させて式(4)の化合物を得、式(4)の化合物をアルカリ試薬の存在下で炭酸ビス(4-ニトロフェニル)と反応させて式(5)の化合物を得ることを特徴とする請求項に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物の調製方法。
ここで、式(3)の化合物はR-c-OHであり、式(4)の化合物はR-c-PABOHであり、PABOHは4-(ヒドロキシメチル)フェニルアミノ基である。
【請求項8】
前記式(3)の化合物の調製方法として、式(I)の化合物をN-ヒドロキシスクシンイミドとジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で反応させて式(2)の化合物を得、式(2)の化合物をアルカリ試薬の存在下でアミノ酸と反応させて式(3)の化合物を得ることを特徴とする請求項に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物の調製方法。
ここで、式(I)の化合物はR-c-OHであり、式(2)の化合物はR-c-OSuであり、Suはスクシンイミド基であり、cはアミノ酸である。
【請求項9】
請求項1-3のいずれか一項に記載のペクチン-ドキソルビシン共役化合物のがん治療薬の調製に使用する方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬学分野に関し、特にペクチン-ドキソルビシン共役化合物及びその調製方法と用途に関する。
【背景技術】
【0002】
「ペクチン-ドキソルビシン共役化合物」標的指向性ドラッグデリバリーシステム(PAC)は、多くの予備的研究と文献調査に基づいて、ペクチンを高分子抗がんプロドラッグの担体として選定し、さらにペクチンの構造を修飾することにより、ポリペプチド-ドキソルビシンと共有結合させて水溶性の高い薬剤担持力を有するペクチン-ドキソルビシン共役化合物を形成させている。
【0003】
PACは高分子の共役化合物で、粒径は200nm前後であり、注射後循環系に入った薬物の一部は、腫瘍組織の高分子物質に対する透過性・滞留性亢進効果(EPR)を利用して腫瘍組織に蓄積し、受動的標的指向性の目的を達成することができる。PACは腫瘍組織の中で次第に腫瘍細胞に飲み込まれ、リソソーム中で加水分解してドキソルビシンを放出し、腫瘍を殺傷する役割を果たす。既存のペクチン-ドキソルビシン共役化合物はすべてペクチンとドキソルビシンが直接アミド結合又はアシルヒドラゾン結合によって結合され、水に溶解しにくいため、ナノ粒子懸濁液又は凍結乾燥粉薬にする必要があり、局部限定の薬としてしか利用できない。全身薬の場合、網状内皮系に飲み込まれやすいため、標的指向性が制限され、高濃度で悪性腫瘍組織内に長時間蓄積できず、腫瘍に対する治療効果がよくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術の欠点に対して、高濃度かつ標的指向性で悪性腫瘍組織内に長時間蓄積できるペクチン-ドキソルビシン共役化合物を提供することにあり、効果を高め毒性を軽減する目的を達成することができる。本発明はまた上記ペクチン-ドキソルビシン共役化合物の調製方法を提供する。
【0005】
上記の目的を実現するために本発明が採用する技術的手段は、式(I)a-b-c-d-e(I)の構造を有するペクチン-ドキソルビシン共役化合物である。
【0006】
ここで、aはペクチン又は修飾ペクチンであり、bはPEGn(PEGnはポリエチレングリコール)であり、cは酵素的切断基、ポリペプチド又はポリペプチド誘導体であり、dは自己分解基であり、eはドキソルビシンである。
【0007】
前記ペクチンはポリガラクツロン酸脱エステル化ペクチンであり、前記aの分子量は1-4KDであり、さらに好ましくは、前記ポリガラクツロン酸脱エステル化ペクチンのポリガラクツロン酸の含有量は95%以上である。さらに、前記修飾ペクチンは、ポリガラクツロン酸脱エステル化ペクチンのカルボニル基と、ヒドロキシ基置換されたC-Cのアルキルアミンで形成したアミドであり、さらにペクチン炭酸エステルに活性化される。
【0008】
さらに、式(I)において、bはPEGnであり、nは1-20の整数であり、cはジペプチド、ジペプチド誘導体、トリペプチド、トリペプチド誘導体、テトラペプチド、テトラペプチド誘導体のいずれかであり、好ましくは、nは6-12の整数であり、好ましくは、cはval-alaである。
さらに、dはp‐アミノベンジルオキシカルボニル基(PABC)である。
【0009】
本発明はまた、式(13)の化合物と式(9)の化合物をアルカリ性試薬の存在下で反応させる、上記のペクチン-ドキソルビシン共役化合物の調製方法を開示する。
【0010】
式(13)において、aは2-4から選択された整数であり、mは1-60であり、式(9)の化合物はb-c-d-ADMであり、ADMはドキソルビシンであり、bはPEGnであり、cはポリペプチドである。好ましくは、cはジペプチド、ジペプチド誘導体、トリペプチド、トリペプチド誘導体、テトラペプチド、テトラペプチド誘導体であり、好ましくは、nは6-12の整数であり、好ましくは、cはval-alaであり、好ましくは、dはPABCであり、PEGnはポリエチレングリコールであり、nは重合度である。
【0011】
さらに、式(13)の化合物の調製方法としては、ペクチンのカルボキシ基とアルコール(メタノール)を縮合させてエステル化ペクチンを得た後、さらにヒドロキシ基置換されたC-Cのアルキルアミンとアミドを形成した後に炭酸ビス(4-ニトロフェニル)と反応して式(13)の化合物を得る。
【0012】
さらに、式(9)の化合物の調製方法として、式(5)の化合物をドキソルビシンとアルカリ性試薬の存在下で反応させて式(6)の化合物を得、式(6)の化合物をピペリジンの存在下で脱保護することにより式(7)の化合物を得、さらにR-b-COOHと反応させて式(8)の化合物を得、式(8)の化合物をピペリジンの存在下で脱保護することにより式(9)の化合物を得る。式(5)の化合物はR-c-PABCであり、式(6)の化合物はR-c-PABC-eであり、式(7)の化合物はc-PABC-eであり、式(8)の化合物はR-b-c-PABC-eであり、Rは保護基であり、好ましくは、Rはフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)である。
【0013】
さらに、式(5)の化合物の調製方法は、式(3)の化合物を酸結合剤の存在下でp-アミノベンジルアルコールと反応させて式(4)の化合物を得、式(4)の化合物をアルカリ試薬の存在下で炭酸ビス(4-ニトロフェニル)と反応させて式(5)の化合物を得る方法であり、式(3)の化合物はR-c-OHであり、式(4)の化合物はR-c-PABOHであり、PABOHは4-(ヒドロキシメチル)フェニルアミノ基である。
【0014】
さらに、式(3)の化合物の調製方法として、式(I)の化合物をNHSとDCCの存在下で反応させて式(2)の化合物を得、式(2)の化合物をアルカリ性試薬の存在下でアミノ酸と反応させて式(3)の化合物を得る。式(I)の化合物はR-c-OHであり、式(2)の化合物はR-c-OSuであり、cはアミノ酸であり、好ましくは、cはvalである。
本発明はまた、上記のペクチン-ドキソルビシン共役化合物を用いて、がん治療薬を調製する用途を開示している。
【発明の効果】
【0015】
本発明のペクチン-ドキソルビシン共役化合物は、新規な化学構造を有しており、標的指向性・高濃度で悪性腫瘍組織内に長時間蓄積し、効果を高め、毒性を軽減する目的を達成し、適応症は様々な固形悪性腫瘍の化学療法である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】化合物6のH NMRスペクトルである。
図2】化合物7のH NMRスペクトルである。
図3】化合物8のH NMRスペクトルである。
図4】化合物8の13C NMRスペクトルである。
図5】化合物9のH NMRスペクトルである。
図6】化合物13のH NMRスペクトルである。
図7】最終生成物であるドキソルビシン-ペクチン共役化合物のHNMRスペクトルである。
図8】最終生成物であるドキソルビシン-ペクチンと対照化合物(ペクチンとドキソルビシンは直接アミド結合により結合したもの)のH22肝臓がんマウス腫瘍モデルに対する抑制作用を示す図である。
図9】最終生成物のドキソルビシン-ペクチンと対照化合物(ペクチンとドキソルビシンは直接アミド結合により結合したもの)の4T1乳がんマウス腫瘍モデルに対する抑制作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0018】
実施例1
化合物1(150g、0.44mol)を1.5LのTHFに溶解し、順にNHS(56g、0.49mol)、DCC(137g、0.66mol)を加え、室温で一晩撹拌し、濾過し、固体をジクロロメタンで2回洗浄し、濾液を濃縮乾固し、再結晶して、化合物2の純品を得た。
【0019】
実施例2
【0020】
化合物2(147g、0.34mol)を1.5LのTHFに溶解し、L-アラニン(32g、0.35mol)、NaHCO(30g、0.35ml)を順に加え、さらに500mlの水を加えた。THFと水の割合を調節して液体を単相(難しい)にする。室温で一晩撹拌しながら反応させた後、THFを濃縮除去し、水で希釈して、HClでpHを3-4に調節し、固体を析出させて水洗し、真空乾燥し、酢酸エチルで洗浄して、生成物3(少量の不純物を含む)130gを得て、結晶を精製した。
【0021】
実施例3
【0022】
化合物3(30g、73mmol)をジクロロメタン500mlに懸濁させ、4-アミノベンジルアルコール(11g、90mmol)、EEDQ(27g、113mmol)を順に加え、最後にメタノールを透明になるまで加え、室温で一晩撹拌して、濾過し、固体をジクロロメタンで洗浄し、濾液を濃縮乾固して粗化合物4を得て、さらにメチルtert-ブチルエーテルで洗浄して純品20gを得た。
【0023】
実施例4
【0024】
化合物4(21g、41mmol)をジクロロメタン500mlに懸濁させ、順にDIPEA(16g、126mmol)、炭酸ビス(p-ニトロフェニル)(18.5g、69mmol)を加え、最後に溶液が透明になるまでDMFを加えて、室温で一晩撹拌した。減圧蒸留でDMFを除去し、粘稠状の固体をまず少量のメタノールで洗浄し、さらに石油エーテルと酢酸エチル(又はメチルtert-ブチルエーテル)で複数回再結晶し、7gの純化合物5を得た。
【0025】
実施例5
【0026】
ドキソルビシン塩酸塩690mg、化合物5を1.036g秤量し、丸底フラスコに入れた後、DMF10mlを加えた。撹拌しながらDIPEAを0.21 ml添加し、室温で5h反応させた後、反応液をメチルtert-ブチルエーテルにゆっくりと滴下し、遠心分離して粗生成物を得た。少量のDMFに溶解して、二回目の再結晶を行った。収量は1.076gであり、収率=78%であった。
【0027】
実施例6
【0028】
化合物6を400mg秤量し、丸底フラスコに入れた後、DMF10mlを加えた。室温で撹拌しながらピペリジン1.8mlを素早く添加し、室温で70sを反応させた後、反応液を素早く氷浴中のメチルtert-ブチルエーテルに流し込み、遠心分離して粗生成物を得た。さらに少量のDMFに溶解し、室温でメチルtert-ブチルエーテルにゆっくりと滴下して二回目の再結晶を行った。製品収量は210mgであり、収率=66%であった。
【0029】
実施例7
【0030】
565mgのPEG8を秤量して丸底フラスコに入れ、DMFを5ml加えた後、室温で撹拌しながらHATUを440mg、DIPEAを0.13ml加えた。少量のDMFに化合物7を溶解し、ピペットで反応フラスコ(溶剤5ml使用)に移した。室温で1.5h撹拌しながら反応させ後、反応液をメチルtert-ブチルエーテルにゆっくり加え、遠心分離して、粗生成物を得た。さらに少量のDMFに溶解し、メチルtert-ブチルエーテルに滴下して二回目の再結晶を行った。カラムクロマトグラフィーで精製した。Ea:MeOH=20:1。収率は55%であった。
【0031】


化合物8の確認:
RP-HPLC(Agilent 1260) 20.641 min,ピーク面積:92.4038%.
【0032】
実施例8
【0033】
200mg化合物8を秤量し丸底フラスコに入れ、DMFを6ml加えた後、室温で撹拌しながらピペリジン660μlを素早く添加し、室温で140s反応させた後、反応液を素早く氷浴中のメチルtert-ブチルエーテルに流し込み、遠心分離して粗生成物を得た。さらに少量のDMFに溶解し、室温でメチルtert-ブチルエーテルにゆっくりと滴下して二回目の再結晶を行った。
【0034】
実施例9
柑橘系のペクチン(市販の原料)2gを200ml(0.2mol/L)の希硝酸溶液に溶かし、85℃(内温83℃、外温90℃)に昇温し、85℃(内温は83℃)になった時点で時間計測を開始し、約2h後に加熱を停止し、室温に冷却した後、反応液を800mlの無水エタノールに滴下し、膜ろ過、洗浄、真空乾燥して化合物10を得た。
【0035】
化合物10の確認:
【0036】
実施例10
【0037】
化合物10を2g秤量して片口フラスコに入れ、メタノール20mlと濃HClを2ml加え、内温が55℃に上昇した時点から時間を計測し、7h反応した後撹拌を中止し、温度を下げて反応液を無水エタノールに滴下し、撹拌、濾過、洗浄、真空乾燥して化合物11を得た。
【0038】
実施例11
600mgの化合物11を丸底フラスコに入れ、3-アミノ-1-プロパノール(粘稠状液体)3.16gを加えて2日間撹拌し、反応時間が48hを超えた後、澄んだ粘稠状反応液をゆっくりと無水エタノールに滴下し、撹拌、濾過、洗浄、真空乾して化合物12を得た。
【0039】
実施例12
【0040】
化合物12の1gを15mlのDMSOに完全に溶解し、炭酸ビス(p-ニトロフェニル)1.29gを加え、さらにDIEA0.7mlを加えて一晩反応(12h以上)させ、最後に反応液をゆっくりとEA溶液(200ml)に滴下し、素早くろ過して、洗浄、真空乾燥して化合物13を得た。
【0041】
化合物13の確認:
【0042】
実施例13
化合物13を秤量し、DMFとDMSOの混合溶液に完全に溶解し、化合物9を加えて、撹拌して均一になった後、DIEAを加え、室温で24h反応させた後、HPLCでドキソルビシンとその誘導体が検出されなくなるまで、溶液を直接DMSO-水勾配で透析した後、透析液を凍結乾燥してペクチン-ドキソルビシン共役化合物を得た。
【0043】
ペクチン-ドキソルビシン共役化合物の確認:
【0044】
実施例14
本実施例では、ペクチン-ドキソルビシン共役化合物(実施例1-13により調製したものであってもよい)は、以下の構造を有する。
【0045】
体外細胞毒性試験:対数増殖期のHT-29結腸がん細胞、HepG-2肝臓がん細胞、SMMC 7721肝臓がん細胞、SKOV3卵巣がん細胞及びMCF-7乳がん細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を調整し、各ウェルに100μlを入れて、測定対象細胞密度を4000個/ウェル(エッジウェルを無菌PBSで充填する)となるようにプレーティングする。5%CO、37℃で24hインキュベーションした後、培地を取り除いて濃度勾配(ドキソルビシン含有量0.125、0.25、0.5、1.0、2.0、4.0、8.0、16.0μg/ml)のペクチン-ドキソルビシン又はドキソルビシンを加え、各濃度に3つのダブルウェルを設ける。そして5%CO、37℃のインキュベーターで48hをインキュベーションする。各ウェルにCCK-8溶液10μlを入れた後さらに2h培養した。マイクロプレート分光光度計で450nmにおける各ウェルの吸光度を測定し、ペクチン-ドキソルビシンとドキソルビシンの種々のがん細胞に対するIC50値を計算した。
【0046】
[表1] 体外細胞毒性試験
【0047】
表1に示した体外細胞毒性試験の結果から、本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物の様々ながん細胞に対する阻害率は陽性対照薬ドキソルビシンと明らかな差がなく、良好な体外細胞毒性作用を有することがわかった。
【0048】
実施例15
本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物(実施例1-13により調製したもの)は、体内でEPR効果によって腫瘍組織内に蓄積される。受動的な標的指向性目的を達成するため、本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物のマウス移植モデルに対する体内薬効を考察した。
【0049】
体内薬効試験:対数増殖期のH 22肝臓がん細胞、4T1乳がん細胞、EMT6乳がん細胞及びHT-29結腸がん細胞を収集し、細胞懸濁液の濃度を3X10個細胞/mlとなるように調整し、Balb/cマウス又は裸マウスの右上肢皮下に0. ml/匹(細胞数は約3×10個)を接種し、接種したマウスの腫瘍体積が平均100mmに達した時に、マウス移植モデルをランダムに陰性対照グループ(0.9%塩化ナトリウム注射液)、ドキソルビシン対照グループ(5mg/kg)、ペクチン-ドキソルビシン実験グループ(ドキソルビシンの量は5mg/kg)に分けて、各グループの8匹のマウスに上記の薬物を静脈注射し、全部で4回投薬し、腫瘍の体積変化と体重を記録した。体積の計算式は、体積=(長さ×幅)/2である。
【0050】
体内薬効実験において、本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物はH 22肝臓がん、4T1乳がん、EMT6乳がん及びHT-29結腸がんに対する治療効果はいずれもドキソルビシン対照より優れている。本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物は、H 22肝臓がん、4T1乳がん、EMT6乳がんマウス移植モデルの腫瘍の成長を著しく抑制でき、抑制率が高く、それぞれ72.98%、78.1%、71.68%であった。それに対して対照のドキソルビシンは、H 22肝臓がん、4T1乳がん、EMT6乳がんマウス移植モデルに対する抑制率は本発明で調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物の抑制率より低く、それぞれ53.42%、50.61%、56.95%であった。また、実験において、本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物を投入したグループにおいてマウスの体重の減少がほとんどみられず、マウスの死亡も確認されていない。一方、ドキソルビシン群のマウスは大幅に体重を減らし、体重の15%以上を減らし、一部のマウスは死亡した。体内薬効実験の結果から、本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物は、ドキソルビシンに比べて、効果を高め、毒性を軽減する効果があることが明らかになった。H 22肝臓がんマウス移植モデルを殺して、腫瘍組織を採取して小動物生体蛍光イメージングシステムで組織内のドキソルビシンイメージング強度を観察したところ、本発明で作製したペクチン-ドキソルビシン共役化合物を投入したクループにおいてマウスの腫瘍にドキソルビシンの強い蛍光が認められており、本発明で作製したペクチン-ドキソルビシン共役化合物が長時間、高濃度で腫瘍組織に蓄積できることがわかった。
【0051】
実施例16
本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物(実施例1-13により調製したもの)と既存の対照化合物(ペクチンとドキソルビシンは直接アミド結合によって結合されたもの)の治療効果を比較するために、H 22肝臓がんと4T1乳がんのマウスモデルを選択して比較した。
【0052】
[表2] 本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物と対照化合物(ペクチンとドキソルビシンがアミド結合によって結合されているもの)の性質相違の比較
【0053】
その結果、本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物は、H 22肝臓がん及び4T1乳がんマウス腫瘍モデルに対する抑制率が既存の対照化合物(ペクチンとドキソルビシンは直接アミド結合によって結合されたもの)に比べていずれも高く、抑制率はそれぞれ70.83%、76.20%であったが、既存の対照化合物(ペクチンとドキソルビシンは直接アミド結合によって結合されたもの)の抑制率はわずか48.64%、47.00%であった。図8及び図9に示すように、発明者は、実験中にまた本発明によって調製されたペクチン-ドキソルビシン共役化合物は、腫瘍に対する抑制率が高いだけでなく、高い抑制率を長時間維持することができることを見出した。すなわち同じ量を投与しても、ペクチン-ドキソルビシンの共役化合物の抑制作用が長く維持されていることが分かった。
【0054】
上記の実施例は、単に本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものであり、その目的は当業者が本発明の内容を理解し実施するためであり、そのため本発明及びその合成方針の最適化された保護範囲を制限することはできない。本発明の内容の本質に基づいてなされる等価な変化又は修飾は、すべて本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
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図9