(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】シール性樹脂組成物、シール材、包装材、包装容器および包装体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/08 20060101AFI20220404BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20220404BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220404BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20220404BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220404BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L53/02
B32B27/00 H
B32B27/28 101
B32B27/30 B
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2019566480
(86)(22)【出願日】2019-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2019001034
(87)【国際公開番号】W WO2019142809
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2018007916
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】石原 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸一郎
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-301314(JP,A)
【文献】特開平04-096959(JP,A)
【文献】特開2004-182916(JP,A)
【文献】特表2017-536458(JP,A)
【文献】特開2017-193658(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168869(WO,A1)
【文献】特開2015-010142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/08
C08L 53/02
B32B 27/00
B32B 27/28
B32B 27/30
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むシール性樹脂組成物であって、
前記シール性樹脂組成物中の前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および前記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が60質量%以上99質量%以下であり、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が1質量%以上40質量%以下であり、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および前記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量が、前記シール性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、60質量%以上であり、
下記試験方法により測定されるn-ヘキサンへの抽出量が100mg/L以下であり、開口を有する包装容器
に接着して密閉シールするためのシール材に用いられるシール性樹脂組成物。
(試験方法)
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられ、かつ、前記シール性樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する。次いで、前記シール層側が上になるように、前記試験片を片面溶出用専用冶具にセットする。次いで、前記試験片をセットした前記片面溶出用専用冶具を、V[L]のn-ヘキサン溶媒に浸漬し、25℃で2時間静置する。次いで、得られたn-ヘキサン抽出液から前記n-ヘキサンを留去する。次いで、前記n-ヘキサンを留去することにより得られた抽出残渣物の質量M[mg]を測定し、前記n-ヘキサンへの抽出量X(M/V)を算出する。
【請求項2】
請求項1に記載のシール性樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むシール性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシール性樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むシール性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシール性樹脂組成物において、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)が不飽和カルボン酸および前記不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を含むシール性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のシール性樹脂組成物において、
前記不飽和カルボン酸がマレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも一種を含むシール性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載のシール性樹脂組成物において、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)を構成する前記スチレン系共重合体がスチレン-エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)から選択される一種または二種以上を含むシール性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシール性樹脂組成物において、
前記シール性樹脂組成物中の粘着付与樹脂の含有量が、前記シール性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、5質量%未満であり、
前記粘着性付与剤が脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物であるシール性樹脂組成物。
【請求項8】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むシール性樹脂組成物であって、
前記シール性樹脂組成物中の前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および前記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が60質量%以上99質量%以下であり、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が1質量%以上40質量%以下であり、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および前記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量が、前記シール性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、60質量%以上であり、かつ
前記シール性樹脂組成物中の粘着付与樹脂の含有量が、前記シール性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、5質量%未満であり、
前記粘着性付与剤が脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物であり、
開口を有する包装容器
に接着して密閉シールするためのシール材に用いられるシール性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のシール性樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むシール性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8または9に記載のシール性樹脂組成物において、
前記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むシール性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか一項に記載のシール性樹脂組成物において、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)が不飽和カルボン酸および前記不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を含むシール性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のシール性樹脂組成物において、
前記不飽和カルボン酸がマレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも一種を含むシール性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項11または12に記載のシール性樹脂組成物において、
前記酸変性スチレン系共重合体(B)を構成する前記スチレン系共重合体がスチレン-エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)から選択される一種または二種以上を含むシール性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載のシール性樹脂組成物により構成されたシール材。
【請求項15】
基材層と、前記基材層の一方の面に設けられた請求項14に記載のシール材からなるシール層と、を備える包装材。
【請求項16】
蓋材である請求項15に記載の包装材。
【請求項17】
開口を有する容器本体と、前記容器本体の前記開口に蓋をする請求項16に記載の包装材からなる蓋体と、を備える包装容器。
【請求項18】
請求項17に記載の包装容器と、
前記容器本体に収容された内容物と、
を備える包装体。
【請求項19】
請求項18に記載の包装体において、
前記内容物が半固体状または液状である包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール性樹脂組成物、シール材、包装材、包装容器および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品の容器として包装容器が広く使用されている。そしてこれらの包装容器を蓋体で密封シールするためのシール材として従来から種々のものが提案され、実用化されている。このようなシール材としては、例えば、エチレン-不飽和エステル共重合体および粘着付与樹脂を含む樹脂組成物が知られている。
【0003】
エチレン-不飽和エステル共重合体および粘着付与樹脂を含む樹脂組成物に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2017-186460号公報)に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、JIS K6924-1で測定した酢酸ビニル含有率が3~18重量%の範囲であり、JIS K6924-1で測定したメルトマスフローレイトが5~40g/10分の範囲であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)78~94.8重量%、環球法で測定した軟化点が90℃~140℃の粘着付与剤(B)5~20重量%、及び少なくとも有機ホウ素化合物を含む帯電防止剤(C)0.2~2重量%((A)、(B)及び(C)の合計は100重量%)を含む組成物よりなるシーラント用接着剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品や医薬品の容器の蓋体等に用いられるシール材について要求される技術水準は、ますます高くなっている。本発明者らは、特許文献1に記載されているようなエチレン-不飽和エステル共重合体および粘着付与樹脂を含む樹脂組成物に関し、以下のような課題を見出した。
本発明者らの検討によれば、エチレン-不飽和エステル共重合体および粘着付与樹脂を含有する従来のシール材は、低溶出性に劣ることが明らかになった。そのため、シール材を構成する成分が食品や医薬品等の内容物に基準値以上に溶け出してしまう懸念があった。
さらに、本発明者らの検討によれば、シール材中の粘着付与樹脂の含有量を減らすことによってシール材の低溶出性を改善できる一方で、シール材に液体が付着している状態でのシール性が悪化してしまうことが明らかになった。
すなわち、本発明者らは、従来のシール材には、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスを良好にするという観点において、改善の余地があることを見出した。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れるシール材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、(1)n-ヘキサンへの抽出量が特定量以下になるように、エチレン・不飽和エステル共重合体に対し、酸変性スチレン系共重合体を特定の割合で組み合わせる、あるいは(2)エチレン・不飽和エステル共重合体に対し、酸変性スチレン系共重合体を特定の割合で組み合わせ、さらに粘着付与樹脂の含有量を特定量以下とすることで、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れるシール材が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示すシール性樹脂組成物、シール材、包装材、包装容器および包装体が提供される。
【0009】
[1]
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むシール性樹脂組成物であって、
上記シール性樹脂組成物中の上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および上記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が60質量%以上99質量%以下であり、
上記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が1質量%以上40質量%以下であり、
下記試験方法により測定されるn-ヘキサンへの抽出量が100mg/L以下であるシール性樹脂組成物。
(試験方法)
基材層と、上記基材層の一方の面に設けられ、かつ、上記シール性樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する。次いで、上記シール層側が上になるように、上記試験片を片面溶出用専用冶具にセットする。次いで、上記試験片をセットした上記片面溶出用専用冶具を、V[L]のn-ヘキサン溶媒に浸漬し、25℃で2時間静置する。次いで、得られたn-ヘキサン抽出液から上記n-ヘキサンを留去する。次いで、上記n-ヘキサンを留去することにより得られた抽出残渣物の質量M[mg]を測定し、上記n-ヘキサンへの抽出量X(M/V)を算出する。
[2]
上記[1]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むシール性樹脂組成物。
[3]
上記[1]または[2]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むシール性樹脂組成物。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のシール性樹脂組成物において、
上記酸変性スチレン系共重合体(B)が不飽和カルボン酸および上記不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を含むシール性樹脂組成物。
[5]
上記[4]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記不飽和カルボン酸がマレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも一種を含むシール性樹脂組成物。
[6]
上記[4]または[5]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記酸変性スチレン系共重合体(B)を構成する上記スチレン系共重合体がスチレン-エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)から選択される一種または二種以上を含むシール性樹脂組成物。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載のシール性樹脂組成物において、
上記シール性樹脂組成物中の粘着付与樹脂の含有量が、上記シール性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、5質量%未満であるシール性樹脂組成物。
[8]
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むシール性樹脂組成物であって、
上記シール性樹脂組成物中の上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および上記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が60質量%以上99質量%以下であり、
上記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が1質量%以上40質量%以下であり、
上記シール性樹脂組成物中の粘着付与樹脂の含有量が、上記シール性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、5質量%未満であるシール性樹脂組成物。
[9]
上記[8]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むシール性樹脂組成物。
[10]
上記[8]または[9]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)がエチレン・酢酸ビニル共重合体を含むシール性樹脂組成物。
[11]
上記[8]乃至[10]のいずれか一つに記載のシール性樹脂組成物において、
上記酸変性スチレン系共重合体(B)が不飽和カルボン酸および上記不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を含むシール性樹脂組成物。
[12]
上記[11]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記不飽和カルボン酸がマレイン酸および無水マレイン酸から選択される少なくとも一種を含むシール性樹脂組成物。
[13]
上記[11]または[12]に記載のシール性樹脂組成物において、
上記酸変性スチレン系共重合体(B)を構成する上記スチレン系共重合体がスチレン-エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)から選択される一種または二種以上を含むシール性樹脂組成物。
[14]
上記[1]乃至[13]のいずれか一つに記載のシール性樹脂組成物により構成されたシール材。
[15]
基材層と、上記基材層の一方の面に設けられた上記[14]に記載のシール材からなるシール層と、を備える包装材。
[16]
蓋材である上記[15]に記載の包装材。
[17]
開口を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口に蓋をする上記[16]に記載の包装材からなる蓋体と、を備える包装容器。
[18]
上記[17]に記載の包装容器と、
上記容器本体に収容された内容物と、
を備える包装体。
[19]
上記[18]に記載の包装体において、
上記内容物が半固体状または液状である包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れるシール材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、数値範囲の「X~Y」は特に断りがなければ、X以上Y以下を表す。また、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは」アクリル、メタクリルまたはアクリルとメタクリルの両方を意味する。
【0012】
1.シール性樹脂組成物(P)およびシール材(H)
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含み、シール性樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が60質量%以上99質量%以下であり、酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が1質量%以上40質量%以下であり、下記試験方法により測定されるn-ヘキサンへの抽出量が100mg/L以下である。
(試験方法)
基材層と、上記基材層の一方の面に設けられ、かつ、上記シール性樹脂組成物により構成されたシール層とを備える試験片を準備する。次いで、上記シール層側が上になるように、上記試験片を片面溶出用専用冶具にセットする。次いで、上記試験片をセットした上記片面溶出用専用冶具を、V[L]のn-ヘキサン溶媒に浸漬し、25℃で2時間静置する。次いで、得られたn-ヘキサン抽出液から上記n-ヘキサンを留去する。次いで、上記n-ヘキサンを留去することにより得られた抽出残渣物の質量M[mg]を測定し、上記n-ヘキサンへの抽出量X(M/V)を算出する。
ここで、上記基材層としてはn-ヘキサンに対して溶解しないものを使用する。上記基材層としては、例えば、金属層(アルミニウム箔等)、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アルミニウム蒸着プラスチックフィルム、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルム、アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。
基材層の厚さは、例えば、1μm以上100μm以下である。基材層の形状は、例えば、シート、フィルム等の形状である。
【0013】
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)において、n-ヘキサンへの抽出量は100mg/L以下であるが、低溶出性をより良好にする観点から、50mg/L以下であることが好ましく、30mg/L以下であることがより好ましく、25mg/L以下であることが特に好ましい。n-ヘキサンへの抽出量は、例えば、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量を調整することによって、上記範囲内に調整することができる。
n-ヘキサンへの抽出量の下限値は低ければ低いほど好ましいため特に限定されないが、例えば、1mg/L以上である。
【0014】
また、本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)は、以下の態様であってもよい。
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、を含むシール性樹脂組成物であって、上記シール性樹脂組成物中の上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および上記酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、上記エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が60質量%以上99質量%以下であり、上記酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が1質量%以上40質量%以下であり、上記シール性樹脂組成物中の粘着付与樹脂の含有量が、上記シール性樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、5質量%未満である。
【0015】
また、本実施形態に係るシール材(H)はシール性樹脂組成物(P)により構成される。
【0016】
前述したように、本発明者らの検討によれば、食品や医薬品の包装容器を蓋体で密封シールするために用いられるエチレン-不飽和エステル共重合体および粘着付与樹脂を含有する従来のシール材は、低溶出性に劣ることが明らかになった。そのため、シール材を構成する成分が食品や医薬品等の内容物に基準値以上に溶け出してしまう懸念があった。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、シール材中の粘着付与樹脂の含有量を減らすことによってシール材の低溶出性を改善できる一方で、シール材に液体が付着している状態でのシール性が悪化してしまうことを見出した。
すなわち、本発明者らは、従来のシール材には、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスを良好にするという観点において、改善の余地があることを見出した。
本発明者らは、上記知見を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、(1)n-ヘキサンへの抽出量が上記上限値以下になるように、エチレン・不飽和エステル共重合体に対し、酸変性スチレン系共重合体を上記割合で組み合わせる、あるいは(2)エチレン・不飽和エステル共重合体に対し、酸変性スチレン系共重合体を特定の割合で組み合わせ、さらに粘着付与樹脂の含有量を特定量以下とすることで、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れるシール材(H)が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)およびシール材(H)によれば、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量がそれぞれ上記範囲内であり、かつ、n-ヘキサンへの抽出量が上記上限値以下または粘着付与樹脂の含有量が上記上限値以下であることで、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスを良好にすることができる。
【0017】
また、本実施形態に係るシール材(H)は、本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)により構成される。本実施形態に係るシール材(H)は包装容器に対するシール性に優れているため、包装容器の蓋体を構成する蓋材として好適に用いることができる。
また、本実施形態に係るシール材(H)は、シール性樹脂組成物(P)により構成されているため、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れている。そのため、包装容器の容器本体に半固体状または液状である内容物が収容された包装体の蓋体を構成する蓋材として特に好適に用いることができる。
【0018】
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)において、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量は、シール性樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、60質量%以上99質量%以下であるが、好ましくは65質量%以上、より好ましくは68質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%未満、特に好ましくは90質量%以下である。
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の含有量が上記下限値以上であると、液体存在下でのシール性や製膜性をより一層良好にできる。
【0019】
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)において、酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量は、シール性樹脂組成物(P)中のエチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量を100質量%としたとき、1質量%以上40質量%以下であるが、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%超過、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは32質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が上記下限値以上または超過であると、得られるシール材の液体存在下でのシール性をより一層良好なものとすることができる。また、酸変性スチレン系共重合体(B)の含有量が上記上限値以下であると、製膜性をより一層良好にできる。
【0020】
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)において、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量は、シール性樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)の合計含有量が上記範囲内であると、得られるシール材の液体存在下でのシール性や低溶出性、柔軟性、機械的特性、耐熱性、取扱い性、加工性等のバランスをより一層良好なものとすることができる。
【0021】
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、シール性樹脂組成物(P)のメルトフローレート(MFR)が、0.01g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
【0022】
以下、本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)を構成する各成分について説明する。
【0023】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンと、不飽和エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。エチレン・不飽和エステル共重合体(A)としては、エチレンと不飽和エステルとを含む共重合体を例示することができる。
また、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)はエチレン・ビニルエステル共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体から選択される少なくとも一種の重合体を含むことが好ましい。
また、本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレンおよび不飽和エステル以外の重合性モノマーを含んでいてもよく、例えばプロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンを例示することができる。
【0024】
本実施形態に係るエチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等から選択される一種または二種以上を用いることができる。
【0025】
本実施形態に係るエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸アルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
【0026】
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。
これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)の生産性、衛生性等の観点から、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
不飽和カルボン酸アルキルエステルにおけるアルキル部位としては、炭素数1~12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。本実施形態では、アルキルエステルのアルキル部位の炭素数は、1~8が好ましい。
【0028】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルから選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチルから選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0029】
本実施形態において、好ましいエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でも(メタ)アクリル酸エステルとして1種類の化合物からなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体等が挙げられる。
【0030】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体から選択される一種または二種以上を含むことが好ましく、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含むことがより好ましい。
なお、本実施形態においてはエチレン・不飽和エステル共重合体(A)は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本実施形態において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)が、0.01g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
エチレン・不飽和エステル共重合体(A)のMFRは、異なるMFRを有するエチレン・不飽和エステル共重合体(A)を複数ブレンドして調整してもよい。
【0032】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)において、エチレン・不飽和エステル共重合体を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、エチレンから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは70質量%以上95質量%以下、より好ましくは72質量%以上93質量%以下、特に好ましくは75質量%以上92質量%以下である。
エチレンから導かれる構成単位の含有量が上記下限値以上であると、得られるシール材の耐熱性や機械的強度、耐水性、加工性等をより良好にすることができる。また、エチレンから導かれる構成単位の含有量が上記上限値以下であると、得られるシール材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好にすることができる。
【0033】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)において、エチレン・不飽和エステル共重合体を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量は、好ましくは5質量%以上30質量%以下、より好ましくは7質量%以上28質量%以下、特に好ましくは8質量%以上25質量%以下である。
不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量が上記下限値以上であると、得られるシール材の透明性や柔軟性、接着性等をより良好にすることができる。また、不飽和エステルから導かれる構成単位の含有量が上記上限値以下であると、得られるシール材の耐熱性や機械的強度、耐水性、加工性等をより良好にすることができる。
【0034】
本実施形態に係るエチレン・不飽和エステル共重合体(A)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、各重合成分を高温および高圧下でラジカル共重合することによって得ることができる。また、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)は市販されているものを用いてもよい。
【0035】
<酸変性スチレン系共重合体(B)>
本実施形態に係る酸変性スチレン系共重合体(B)は、酸変性スチレン系ブロック共重合体が好ましく、少なくともハードセグメントであるスチレンブロックとソフトセグメントであるゴムブロックとを有するスチレン系ブロック共重合体を酸変性した重合体がより好ましい。酸変性スチレン系共重合体(B)としては、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物によりグラフト変性されたスチレン系共重合体を例示することができる。
【0036】
酸変性スチレン系共重合体(B)における上記不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、が挙げられる。これらの中でも、上記不飽和カルボン酸は、酸変性スチレン系共重合体(B)の生産性、衛生性等の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、マレイン酸を含むことがより好ましい。
酸変性スチレン系共重合体(B)における上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸等の酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等の酸エステル、酸アミド、酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらの中でも、上記不飽和カルボン酸の誘導体は無水マレイン酸を含むことが好ましい。
これらの不飽和カルボン酸および上記不飽和カルボン酸の誘導体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
酸変性スチレン系共重合体(B)を構成するスチレン系共重合体は、少なくともハードセグメントであるスチレンブロックとソフトセグメントであるゴムブロックとを有するブロック共重合体が好ましく、ソフトセグメントであるゴムブロックはハードセグメントであるスチレンブロックの中間に位置していることが好ましい。このようなスチレンブロックとゴムブロックとを有する重合体は、スチレンブロック部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、ゴムブロックは重合体にゴム弾性を与える。
ソフトセグメントであるゴムブロックとしては、ポリブタジエン(B)、ポリイソプレン(I)およびポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン(EP))等が挙げられる。
ハードセグメントであるポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)および放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。
【0038】
酸変性スチレン系共重合体(B)を構成するスチレン系共重合体としては、スチレン系ブロック共重合体が好ましく、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SI)およびスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)若しくはそれらブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。
かかる水素添加物は、スチレンブロックとジエンブロックの全てが水素添加されたブロック共重合体であっても、ジエンブロックのみ水素添加されたブロック共重合体あるいはスチレンブロックとジエンブロックの一部が水素添加されたブロック共重合体等の部分水素添加物であってもよい。
これらのスチレン系共重合体は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
これらのブロック共重合体の中でも、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SI)の水素添加物等のスチレンブロックとジエンブロックとを含有するブロック共重合体の水素添加物がより好ましく、具体的には、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SB)の水素添加物であるスチレン-エチレン・ブテンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物であるスチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物であるスチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)が押出成形時の熱安定性に優れ、加工時の安定性や劣化物の発生および臭いの発生を抑制する観点から好ましい。
【0040】
本実施形態に係る酸変性スチレン系共重合体(B)は、スチレン系共重合体に不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体から選択される少なくとも一種の化合物をラジカル開始剤の存在下において溶融状態でグラフトさせたものを用いることもできる。ラジカル開始剤はポリオレフィンのグラフト反応に一般的に用いられるものであればよい。
【0041】
本実施形態において、加工安定性をより向上させる観点から、JIS K7210:1999に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定される、酸変性スチレン系共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)が、0.01g/10分以上150g/10分以下であることが好ましく、0.1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、0.5g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
酸変性スチレン系共重合体(B)のMFRは、異なるMFRを有する酸変性スチレン系共重合体(B)を複数ブレンドして調整してもよい。
【0042】
酸変性スチレン系共重合体(B)の市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製のクレイトン(登録商標)や、旭化成ケミカルズ社製のタフテック(登録商標)等が挙げられる。
【0043】
<粘着付与樹脂(C)>
また、本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)には粘着付与樹脂(C)が含まれてもよいが、粘着付与樹脂(C)の含有量は、シール性樹脂組成物(P)の全体を100質量%としたとき、好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは3質量%未満であり、さらに好ましくは1質量%未満であり、さらにより好ましくは0.5質量%未満、さらにより好ましくは0.1質量%未満である。また、実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)は、粘着付与樹脂(C)を実質的に含まないことがさらにより好ましく、粘着付与樹脂(C)を含まないことが特に好ましい。粘着付与樹脂(C)の含有量を上記上限値未満とすることにより、シール性樹脂組成物(P)およびシール材(H)のn-ヘキサンへの抽出量を低下させることができ、その結果、シール性樹脂組成物(P)およびシール材(H)の低溶出性をより良好にすることができる。
なお、「粘着付与樹脂(C)を実質的に含まない」とは、本発明の効果が損なわれない程度には含有してもよいことを意味する。
【0044】
粘着付与樹脂(C)としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族-芳香族共重合体系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂等の石油系樹脂の水素添加物;ピネン樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等のテルペン系樹脂の水素添加物;重合ロジン系樹脂の水素添加物;(アルキル)フェノール系樹脂の水素添加物;キシレン系樹脂の水素添加物;スチレン系樹脂の水素添加物等が挙げられる。これらの中でも、石油系樹脂の水素添加物が好ましく、脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物および芳香族系炭化水素樹脂の水素添加物から選択される少なくとも一種がとくに好ましい。これらの粘着付与樹脂(C)には、オレフィン樹脂が含まれていてもよい。
【0045】
石油系樹脂の水素添加物としては、ビニルトルエン、インデン、α-メチルスチレン等のC8~C10のビニル芳香族炭化水素を主成分とする樹脂の水素添加物等が挙げられる。
テルペン系樹脂の水素添加物としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体等の水素添加物が挙げられる。
重合ロジン系樹脂の水素添加物としては、例えば、水素化ロジン、水素化ロジンのグリセリンエステルまたはその重合体、および水素化ロジンのペンタエリスリットエステルまたはその重合体等が挙げられる。
スチレン系樹脂の水素添加物としては、例えば、スチレン系モノマーの単独重合体、スチレン・オレフィン共重合体、ビニルトルエン・α-メチルスチレン共重合体等の水素添加物が挙げられる。
【0046】
<その他の成分>
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン・不飽和エステル共重合体(A)および酸変性スチレン系共重合体(B)以外の成分を含有してもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、光安定剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤、その他の樹脂等を挙げることができる。その他の成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
<シール性樹脂組成物(P)の調製方法>
本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)の調製方法としては特に限定されないが、例えば、(エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、必要に応じて添加されるその他の成分と、をドライブレンドして混合することにより調製する方法;)エチレン・不飽和エステル共重合体(A)と、酸変性スチレン系共重合体(B)と、必要に応じて添加されるその他の成分と、を押出機等で溶融混練することにより調製する方法;等を採用することができる。
【0048】
本実施形態に係るシール材(H)の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができ、例えば、プレス成形法、押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。
本実施形態に係るシール材(H)の形状は特に限定されないが、フィルムやシートが好ましい。
【0049】
2.包装材
本実施形態に係る包装材は、例えば、基材層と、上記基材層の一方の面に設けられた本実施形態に係るシール材(H)からなるシール層と、を備える。
本実施形態に係る包装材は、本実施形態に係るシール材(H)からなるシール層を備えるため、容器に対するシール性に優れている。そのため、容器の蓋体を構成する蓋材として特に好適に用いることができる。
また、本実施形態に係る包装材は、本実施形態に係るシール材(H)からなるシール層を備えるため、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れている。そのため、包装容器の容器本体に半固体状または液状である内容物が収容された包装体の蓋体を構成する蓋材として特に好適に用いることができる。
【0050】
本実施形態に係る包装材において、本実施形態に係るシール材(H)からなるシール層の厚さは、例えば、1μm以上200μm以下であり、好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0051】
基材層は、包装材の取り扱い性や機械的特性、導電性、断熱性、耐熱性、防湿性等の特性をより良好にすることを目的として設けられる層である。基材層としては、例えば、金属層(アルミニウム箔等)、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、アルミニウム蒸着プラスチックフィルム、シリカ蒸着プラスチックフィルム、アルミナ蒸着プラスチックフィルム、アモルファス・ポリエチレンテレフタレートフィルム等を用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらは一軸あるいは二軸に延伸されたものであってもよい。
【0052】
基材層はシール層との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、プライマーコート処理等を行ってもよい。
基材層の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、2μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上40μm以下がさらに好ましい。
基材層の形状は、特に限定されないが、例えば、シート、フィルム等の形状が挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る包装材は、基材層とシール層とのみで構成されていてもよいし、包装材に様々な機能を付与する観点から、基材層とシール層以外の層(以下、その他の層とも呼ぶ。)を有していてもよい。その他の層としては、例えば、発泡層、金属層、無機物層、ガスバリア性樹脂層、帯電防止層、ハードコート層、接着層、反射防止層、防汚層等を挙げることができる。その他の層は1層単独で用いてもよいし、2層以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、接着層は、各層同士の接着性を高めるために設けられる層である。
【0054】
本実施形態に係る包装材には、必要に応じて、任意の率で一軸または二軸延伸を加えてもよい。
【0055】
押出成形、射出成形、ブロー成形、フィルムやシート成形等の成形方法を用いて、本実施形態に係るシール性樹脂組成物(P)を成形することにより、本実施形態に係る包装材は各種形状とすることができる。
本実施形態に係る包装材の形状は特に限定されないが、フィルムやシートが好ましい。
【0056】
本実施形態に係る包装材は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装材として好適に用いることができ、食品および医薬品の包装材として特に好適に用いることができる。
【0057】
3.包装容器
本実施形態に係る包装容器は、例えば、開口を有する容器本体と、上記容器本体の上記開口に蓋をする本実施形態に係る包装材からなる蓋体と、を備える。
【0058】
また、開口を有する容器本体としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂製の容器が挙げられる。
本実施形態に係る包装容器は、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等を包装するために用いられる包装容器として好適に用いることができ、食品および医薬品の包装容器として特に好適に用いることができる。
【0059】
4.包装体
本実施形態に係る包装体は、例えば、本実施形態に係る包装容器と、上記容器本体に収容された内容物と、を備える。
また、容器本体に収容する内容物としては特に限定されないが、例えば、食品、医薬品、工業用品、日用品、化粧品等が挙げられる。
また、本実施形態に係る包装容器は、本実施形態に係る包装材からなる蓋体を備えるため、液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れている。そのため、包装容器の容器本体に収容する内容物としては、半固体状または液状であるものを好適に用いることができる。また、本実施形態に係る包装容器は低溶出性に優れていることから、容器本体に収容する内容物としては、低溶出性について高い水準が求められる食品や医薬品が好ましい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
シール性樹脂組成物(P)の調製に用いた成分の詳細は以下の通りである。
【0063】
<エチレン・不飽和エステル共重合体(A)>
EVA1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(MFR=15g/10min、エチレン含量(エチレンから導かれる構成単位の含有量)=81質量%、酢酸ビニル含量(酢酸ビニルから導かれる構成単位の含有量)=19質量%)
EMA1:エチレン・アクリル酸メチル共重合体(MFR=8g/10min、エチレン含量(エチレンから導かれる構成単位の含有量)=80質量%、アクリル酸メチル含量(アクリル酸メチルから導かれる構成単位の含有量)=20質量%)
【0064】
<酸変性スチレン系共重合体(B)>
酸変性SEBS1:無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(クレイトンポリマー社製、クレイトンFG1901)
【0065】
<粘着付与樹脂(C)>
粘着付与樹脂1:脂環族系炭化水素樹脂の水素添加物(荒川化学工業社製、アルコンAM-1)
【0066】
<その他のエチレン系重合体>
エチレン系重合体1:エチレン・α-オレフィン共重合体(三井化学社製、タフマーA4085S)
エチレン系重合体2:エチレン・α-オレフィン共重合体(三井化学社製、タフマーA20085S)
【0067】
<その他のスチレン系共重合体>
SEPS1:スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(クラレ社製、セプトンS2002)
【0068】
<その他の成分>
PEG:ポリエチレングリコール(日本精化社製)
ELA:エルカ酸アミド(日本油脂社製)
【0069】
[実施例1~7、比較例1~7]
表1および2に示す配合割合で各成分を押出機(先端ダルメージフライトスクリュー)にて160℃で溶融混練し、シール性樹脂組成物(P)をそれぞれ得た。
次いで、得られたシール性樹脂組成物(P)について、以下の条件で押出ラミネート加工をおこない、包装材をそれぞれ作製した。
シングル押出ラミネーターを用いて、押出機ダイ出口樹脂温度240℃、引取速度30m/分、成形後のシール性樹脂組成物(P)からなるシール層の厚みが20μmとなるような押出条件で、得られたシール性樹脂組成物(P)をTダイから基材層(AL層(20μm)/PE層(15μm)の2層積層体)のPE層上に溶融押出し、フィルム状にラミネート成形した。
得られた包装材について、以下の評価をおこなった。その結果を表1に示す。
【0070】
[液体存在下での高周波シール強度]
実施例および比較例で得られた包装材をシール層側が0.5mm厚のHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)シート(RP東プラ社製NOASTIC-M)に接するように、市販の乳酸菌飲料を塗布した上記HIPSシート上に積層し、包装材のAL層上に0.3mm厚のA-PETシート(RP東プラ社製NOACRYSTAL-V)を載せた。得られた積層体に対して、高周波ウェルダー(最大出力=3kW、発振周波数=40.46MHz)(精電舎社製)にて、出力50%または52%、0.1MPa(ゲージ圧)で加圧時間2秒間、溶着0.5秒間、冷却2秒間でシールを行い、HIPSシートに包装材を接着させ、室温(23℃)で24時間放置した。(シール時に用いたA-PETシートはシール直後に取り除いた)
次いで、23℃の環境下において、引張速度300mm/分で包装材(15mm幅の試験片)をHIPSシートから引き離し、最大応力をHIPSシートに対するシール強度(N/15mm)として算出した。
【0071】
[液体存在下での高周波シール性]
次いで、以下の基準により実施例および比較例で得られた包装材の液体存在下での高周波シール性を評価した。
◎:シール強度が6N/15mm以上
○:シール強度が5N/15mm以上6N/15mm未満
×:シール強度が5N/15mm未満
【0072】
[n-ヘキサンへの抽出量]
実施例及び比較例で得られた包装材から、100cm2の円を確保できるよう15cm×15cmの試験片を3枚切り出した。次いで、試験片の対象面積(3枚の合計)を300cm2とし、円内径11.3cmの片面溶出用専用冶具にシール層側が上になるように試験片をそれぞれセットした(100cm2/1台を3台分)。なお、片面溶出用専用冶具は文献「器具・容器包装の規格基準とその試験法」(厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課 監修 川村葉子著)の34頁の図に示すものを使用した。
次いで、300mL容の3つのメスシリンダーに、試験片をセットした上記片面溶出用専用冶具をそれぞれ入れ、25℃のn-ヘキサン溶媒を200mLずつ注ぎ入れ、それぞれ25℃下、2時間静置した。2時間経過後、得られたn-ヘキサン抽出液(合計600mL)を1Lのビーカーに回収し、恒量を得た150mLのソックスレーフラスコにn-ヘキサン抽出液を移した(恒量とは、空のフラスコを105℃、2時間乾燥後、30分冷却し、重量を測定することを繰り返したときの重量変化が0.5mg以下になること)。その後、ロータリーエバポレーターにより溶媒を留去(計600mLのヘキサンを数回に分けて留去)した。
次いで、105℃で2時間乾燥の後、デシケーター内で30分冷却した。次いで、抽出残渣物を含むソックスレーフラスコの重量m2を測定した。
また、ブランクとして、空のソックスレーフラスコの重量m1を測定した。ここで、600mLのn-ヘキサン抽出液の代わりに600mLのn-ヘキサンを用いた以外は重量m2の測定と同様に操作することによって、空のソックスレーフラスコの重量m1を測定した。n-ヘキサンへの抽出量X[mg/L]は下記式(1)から算出した。
X={(m2-m1)×1000}/600
X:ヘキサンへの抽出量[mg/L]
m1:空のソックスレーフラスコの重量[mg]
m2:抽出残渣を含むソックスレーフラスコの重量[mg]
【0073】
[低溶出性]
次いで、以下の基準により実施例および比較例で得られた包装材の低溶出性を評価した。
◎:n-ヘキサンへの抽出量が25mg/L以下
○:n-ヘキサンへの抽出量が25mg/L以上100mg/L以下
×:n-ヘキサンへの抽出量が100mg/L超過
【0074】
【0075】
【0076】
実施例1~7の包装材は液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに優れていた。これに対し、比較例1~7の包装材は液体存在下でのシール性と、低溶出性とのバランスに劣っていた。
【0077】
この出願は、2018年1月22日に出願された日本出願特願2018-007916号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。