(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】クランクシャフトの渡り部を衝撃処理するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23P 9/04 20060101AFI20220404BHJP
F16C 3/08 20060101ALI20220404BHJP
C21D 7/04 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B23P9/04
F16C3/08
C21D7/04 Z
(21)【出願番号】P 2019569843
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2018063698
(87)【国際公開番号】W WO2018228799
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-02-19
(31)【優先権主張番号】102017113078.0
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591025923
【氏名又は名称】マシネンファブリック アルフィング ケスラー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MASCHINENFABRIK ALFING KESSLER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】レーブ、アルフォンス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ヨヘン
(72)【発明者】
【氏名】グリム、コンラッド
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102006058710(DE,A1)
【文献】特表2007-524761(JP,A)
【文献】特開昭60-127928(JP,A)
【文献】特開2010-077518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 9/00,9/04,
F16C 3/08,
C21D 7/06,
B21K 1/08,
B24B 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの渡り部(8)に衝撃力(F
S)を導入するため
の1つの衝撃装置(1)を備え、クランクシャフト(4)の渡り部(8)、特に前記クランクシャフト(4)の連接棒軸受ジャーナル(5)とクランクウェブ(7)との間の渡り部(8)及び/又は主軸受ジャーナル(6)と前記クランクウェブ(7)との間の渡り部(8)に衝撃を与えて硬化させるための装置であって、
前記衝撃装置(1)
は複数の衝撃ツール(16)を有し、
当該複数の衝撃ツール(16)の各々は、少なくとも1つの衝撃ヘッド(21)を有しており、前記複数の衝撃ツール(16)は、同一の渡り部(8)に割り当てられており、
当該複数の衝撃ツール(16)の各衝撃ヘッド(21)が前記同一の渡り部(8)に衝撃を与え、または、
前記衝撃装置(1)
は、
前記同一の渡り部(8)に割り当てられ当該渡り部(8)に衝撃を与える複数の衝撃ヘッド(21)を
備えた衝撃ツール(16)を
少なくとも1つ有する
衝撃硬化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衝撃硬化装置であって、
前記衝撃装置(1)が衝撃ピストン(23)及び偏向部(20)を有し、前記少なくとも1つの衝撃ツール(16)が偏向部(20)に配置され、前記衝撃ピストン(23)が前記偏向部(20)を介して前記少なくとも1つの衝撃ツール(16)に衝撃を伝達し、前記少なくとも1つの衝撃ツール(16)の前記1つ以上の衝撃ヘッド(21)が関連する前記渡り部(8)に前記衝撃力(F
S)を導入することを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の衝撃硬化装置であって、
前記衝撃ヘッド(21)が、前記連接棒軸受ジャーナル(5)及び/又は前記主軸受ジャーナル(6)の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部(8)の衝撃硬化中に、前後にオフセットして、かつ/あるいは、相互に隣接してオフセットして配置されるように前記衝撃ヘッド(21)を配置することを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の衝撃硬化装置であって、
前記連接棒軸受ジャーナル(5)及び/又は前記主軸受ジャーナル(6)の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部(8)の衝撃硬化中に、同一の渡り部(8)に割り当てられた少なくとも2つの衝撃ヘッド(21)、またはすべての衝撃ヘッド(21)が独自の衝撃痕(28)の軌跡を形成するように、前記衝撃ヘッド(21)を配置することを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項5】
請求項4に記載の衝撃硬化装置であって、
前記衝撃痕(28)の軌跡が重なり合うことを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の衝撃硬化装置であって、
前記連接棒軸受ジャーナル(5)及び/又は前記主軸受ジャーナル(6)の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部(8)の衝撃硬化中に、同一の渡り部(8)に割り当てられた少なくとも2つの衝撃ヘッド(21)、またはすべての衝撃ヘッド(21)が他の衝撃痕(28)の内側に位置する前記衝撃痕(28)の軌跡を形成するように、前記衝撃ヘッド(21)を配置することを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の衝撃硬化装置であって、
前記衝撃硬化用の前記複数の衝撃ヘッド(21)が球面を有することを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載の衝撃硬化装置であって、
前記複数の衝撃ヘッド(21)がそれぞれ異なるサイズを有することを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか1つに記載の衝撃硬化装置であって、
前記衝撃硬化装置が、前記偏向部(20)の偏向点(U
P)と前記少なくとも1つの衝撃ツール(16)の前記1つ以上の衝撃ヘッド(21)の前端との間の間隔(d)を調整するように構成されることを特徴とする
衝撃硬化装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の衝撃硬化装置により、クランクシャフト(4)の渡り部(8)、特に前記クランクシャフト(4)の連接棒軸受ジャーナル(5)とクランクウェブ(7)との間の渡り部(8)及び/又は主軸受ジャーナル(6)と前記クランクウェブ(7)との間の渡り部(8)に衝撃を与えて硬化させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、クランクシャフトの渡り部、特に連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部及び/又は主軸受ジャーナルとクランクシャフトのクランクウェブとの間の渡り部に衝撃を与えて硬化させる(以下、衝撃硬化とする)ための装置に関する。
【0002】
本発明はまた、クランクシャフトの渡り部を衝撃硬化するための方法に関する。
【0003】
本発明はまた、クランクシャフトに関する。
【背景技術】
【0004】
内燃機関の開発が継続的に進められ、その性能が向上し、当該内燃機関には排出要件が課せられるようになったため、現代のエンジンには、これまで以上に大きな負荷がかけられている。このため、自動車産業においては、特に、高負荷を受け、かつ、内燃機関の機能にとって重要なクランクシャフトの強度に関して高い要求が課されている。ここで、構造の観点から要求されることが多いのは、クランクシャフトの軽量化と必要スペースの縮小である。これは、クランクシャフトの設計においては、断面積の増加、すなわち、クランクシャフトの断面係数ではなく、可能な限り、局所的な内部圧縮応力状態によって負荷容量を増加させるべきであるということを意味する。このため、現代のクランクシャフトは、さらなる高レベルのエンジン出力にさらされるので、様々な機械加工及び熱処理方法を使用して製造される。
【0005】
このような方法の例として、誘導及び表面硬化、レーザ硬化、又は窒化による表面硬化法等の熱処理、並びにディープローリング、ショットピーニング、又は衝撃硬化等のひずみ硬化法が挙げられる。これらの方法は一般的、かつ、よく確立された方法であることがほとんどであり、様々な目的に適している。
【0006】
このような方法の例に関して、以下の文献を参照する:EP 1 479 480 A1、EP 0 788 419 B1、 EP 1 612 290 A1、DE 10 2007 028 888 A1、及び EP 1 034 314 B1。
【0007】
特に、衝撃硬化は、クランクシャフトの疲労強度、特に、曲げ疲労強度及びねじり疲労強度を高めるために有利な方法である。ここでは、断面の渡り及び断面の移行部の負荷領域において、冷間加工、好ましくは、特別な衝撃ツールによる打撃によってクランクシャフトに衝撃力を導入することにより、疲労強度を高める。このような処理の例として、DE 34 38 742 C2及びEP 1 716 260 B1を参照する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】EP 1 479 480 A1
【文献】EP 0 788 419 B1
【文献】EP 1 612 290 A1
【文献】DE 10 2007 028 888 A1
【文献】EP 1 034 314 B1
【文献】DE 34 38 742 C2
【文献】EP 1 716 260 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、クランクシャフトの疲労強度をさらに改善するために、衝撃硬化のための方法及び装置をさらに開発するという目的に基づいている。
【0010】
最後に、本発明は、改善されたクランクシャフト、特に、その疲労強度に関して改善されたクランクシャフトを提供するという目的にも基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、装置については、請求項1において特定された特徴により、方法については、請求項12において特定された特徴により達成される。
【0012】
クランクシャフトに関して、当該目的は、請求項13において特定された特徴により達成される。
【0013】
以下に記載の従属請求項及び特徴は、本発明の有利な実施形態及び変形例に関する。
【0014】
本発明に係るクランクシャフトの渡り部、特に、クランクシャフトの連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部及び/又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部を衝撃硬化するための装置は、少なくとも1つの渡り部に衝撃力を導入するための少なくとも1つの衝撃装置を備える。
【0015】
したがって、少なくとも1つの渡り部に衝撃力を導入するために、2つ以上の衝撃装置、例えば、2つの衝撃装置、3つの衝撃装置、又は4つの衝撃装置を設けることもできる。ここで、衝撃装置は異なる設計のものであってもよく、特に、1つの衝撃装置を本発明に従って設計するだけで十分である可能性がある。本発明に従って、2つ、複数、又はすべての衝撃装置を設計することもできる。
【0016】
以下、簡潔にするため、連接棒軸受ジャーナル及び主軸受ジャーナルを単に「ジャーナル」と呼ぶ場合もある。ここで、「ジャーナル」という表現は、連接棒軸受ジャーナル及び主軸受ジャーナルの両方を指す場合があり、あるいは、連接棒軸受ジャーナルのみ若しくは主軸受ジャーナルのみを指す場合もある。特に明記されていない限り、本明細書において、この3パターンのジャーナルはすべて「ジャーナル」という表現に包含される。
【0017】
本発明は、例えば、長さ0.2~8mまたはそれ以上のクランクシャフト及び/もしくは直径30~500mmまたはそれ以上の主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルを有するクランクシャフトの疲労強度を高めるのに特に好適である。しかしながら、本発明は、長さ1.5~8mまたはそれ以上の大きなクランクシャフト及び/もしくは直径100~500mmまたはそれ以上の主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルを有する大きなクランクシャフトの疲労強度を高めるのに特に大変好適である。
【0018】
クランクシャフトは、様々な種類の渡り部、例えば、3心アーチ形状等を有するフィレット部分又はアンダーカット部分若しくは渡りを伴う部分を有していてもよい。渡り部は、例えば、主軸受ジャーナル及び連接棒軸受ジャーナルの軸受ジャーナルポイント又は走行面に対して接線方向に設けられてもよい。
【0019】
これは、接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び断面における他の幾何学的移行部への渡りに対しても当てはまる。
【0020】
クランクシャフトは、通常、断面における渡り、すなわち、移行部のすべてにおいて渡り部を有する。これは、特に、軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の断面における移行部に当てはまる。本発明は、これらに特に適している。ただし、断面における他の移行部、特に、クランクシャフトの端部、特に、フランジ、ディスク、又はシャフト等への渡りにおける断面の移行部に対して、渡り部が設けられてもよい。
したがって、本発明に係る方法及び/又は本発明に係る装置によって疲労強度が改善される渡り部は、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間に必ずしも存在する必要はなく、むしろ、クランクシャフトの任意の位置に配置されてもよい。「連接棒軸受ジャーナル」、「主軸受ジャーナル」、「フランジ」、「ジャーナル」、及び/又は「クランクウェブ」という表現は、当業者によって適宜再解釈されてもよい。
【0021】
連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間及び/又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部の硬化に実質的に基づいて、本発明を以下に説明する。ただし、これは限定的なものとして理解されるべきものではなく、単に理解度の向上又は読みやすさの向上を目的としている。本発明の文脈において渡り部について言及する場合、この渡り部は、基本的に、クランクシャフトの任意の位置における渡り部であってもよい。
【0022】
本発明によれば、衝撃装置は、同一の渡り部に割り当てられた複数の衝撃ヘッドを有する。
【0023】
衝撃力の導入は、衝撃装置の衝撃ヘッド、又は、衝撃装置のいわゆる「ヘッダー」が、硬化対象のクランクシャフトの領域(本例では、渡り部)に衝突することを意味すると理解できる。ここで、衝突は、ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿って、所望の衝撃位置で、目的に応じて行われる。
【0024】
複数の衝撃ヘッドによって渡り部の衝撃硬化が行われることにより、内部圧縮応力の範囲と深さ効果とを目的に応じて事前に定義することができる。したがって、本発明の解決法によれば、任意の所望の「深さ」及び/又は強度で、衝撃力を好ましくは互い違いに交互に渡り部の周囲に沿って導入することが可能になる。
【0025】
従来技術に係る方法及び装置は、渡り部の衝撃硬化において、単一の衝撃ヘッドにより渡り部に衝撃力を導入することとしている。したがって、衝撃ヘッドのサイズのみを変更することができる。この場合、衝撃ヘッドのサイズは、まず、渡り部のサイズに制限され、衝撃ヘッドのサイズを小さくすると、同時に衝撃硬化の深さ効果が変化する。
すなわち、従来技術によれば、深さ効果に同時に影響を与えることなく衝撃硬化の程度又は内部圧縮応力を導入する領域の幅を任意に変えることはできない。本発明による解決法を用いれば、複数の衝撃ヘッドを使用することにより、この関係を排除することができる。したがって、本発明では柔軟性が増加し、さらに対象を絞って内部圧縮応力を導入することができる。
【0026】
このようにして、クランクシャフトを、エンジンの動作にさらに良好に適合させることができる。特に、クランクシャフトの疲労強度を、必要であれば、従来技術において現在可能な疲労強度からさらに高めることができる。
【0027】
本発明に係る方法及び本発明に係る装置は、他の方法を使用して予め機械加工されたクランクシャフトの場合であっても、その疲労強度特性を高めるために適用又は使用してもよい。例えば、本発明に係る装置又は方法を使用して内部圧縮応力を導入することにより、高周波焼入れにより硬化したクランクシャフトも、その曲げ疲労強度及びねじり疲労強度に関して遡及的に改善することができる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る、同一の渡り部に割り当てられた複数の衝撃ヘッドを有する衝撃装置は、様々な方法で実現可能である。例えば、複数の衝撃装置が、それぞれ1つの衝撃ヘッドを有し、かつ、同一の渡り部に割り当てられた2つ以上の衝撃ツールを有することができる。
【0029】
本発明の一改良形態では、衝撃装置が、複数の衝撃ヘッドを有する少なくとも1つの衝撃ツールを有するようにしてもよい。
【0030】
特に、衝撃装置が2つの衝撃ツールを有するようにしてもよく、各衝撃ツールが1つの渡り部に割り当てられ、複数の衝撃ツールのうちの少なくとも1つの衝撃ツールが、対応する渡り部に割り当てられた多数の衝撃ヘッドを有する。
【0031】
衝撃装置が一組の衝撃ツールを有するようにすることもでき、各衝撃ツールが1つの渡り部に割り当てられる。一組の衝撃ツールにおける2つの衝撃ツールは、この場合、それぞれ、2つ以上の衝撃ヘッドを有していてもよい。複数の衝撃ツールのうちの一方の衝撃ツールのみが2つ以上の衝撃ヘッドを有し、一組の衝撃ツールにおける他方の衝撃ツールが衝撃ヘッドを1つのみ有するようにしてもよい。
【0032】
さらに、本発明の一改良形態では、衝撃装置が衝撃ピストン及び偏向部を有してもよく、少なくとも1つの衝撃ツールが偏向部に配置され、衝撃ピストンが偏向部を介して少なくとも1つの衝撃ツールに衝撃を伝達し、少なくとも1つの衝撃ツールの1つ以上の衝撃ヘッドが関連する渡り部に衝撃力を導入する。
【0033】
この目的のため、衝撃ヘッドに(例えば、空気圧、油圧、及び/又は電気で発生した)強いパルス又は衝撃を伝達する衝撃ピストンを使用してもよい。
【0034】
衝撃力に応じて、それぞれの衝撃位置に衝撃ヘッドの目に見える衝撃痕が形成される。衝撃痕の深さ及び導入された内部圧縮応力の質又は深さ効果は、この場合、選択した衝撃力に依存する。ツール及び処理パラメータは、それぞれのクランクシャフト及び、ここでは、適切な場合、部分的な幾何学的移行部(断面における移行部)と正確に整合されることが好ましい。
【0035】
次に、衝撃角度を変えることで、衝撃力を個別に最大荷重に設定したり、最大荷重にさらに正確に合わせたりすることができる。
【0036】
説明の一部が「衝撃ヘッド/衝撃ツール」又は「衝撃装置」又は「複数の衝撃ヘッド/衝撃ツール/衝撃装置」を指す場合、基本的には、任意の数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上の衝撃ヘッド/衝撃ツール/衝撃装置を意味することを理解されたい。複数又は単数への言及は、読みやすくするためだけにされているものであり、限定するものではない。
【0037】
共通の衝撃装置において2つの衝撃ツールを使用するようにしてもよく、当該衝撃ツールは、好ましくは、連接棒軸受ジャーナルの渡り部又は主軸受ジャーナルの渡り部に同時に衝撃力を導入する。
【0038】
これは、接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び断面における他の幾何学的移行部への渡りに対して当てはまる。
【0039】
衝撃ツールは、好ましくは、共通の衝撃ピストンにより操作されてもよい。
【0040】
複数の衝撃ツール(及び/又は衝撃装置)を使用する場合、衝撃ツール用の(共同又は個別の)油圧、空気圧、機械的及び/又は電気的手段により衝撃ツールに対応する衝撃力を生成することができる共通の圧力パルス装置を設けてもよい。
【0041】
本発明の一改良形態では、衝撃装置が複数の衝撃ツールを有するようにしてもよく、少なくとも2つの衝撃ツールの衝撃ヘッドは、同一の渡り部に割り当てられる。
【0042】
ここで、同一の渡り部に割り当てられた少なくとも2つの、複数の、又はすべての衝撃ツールが、それぞれ、1つの衝撃ヘッドを有するようにしてもよい。あるいは、同一の渡り部に割り当てられた少なくとも2つの、複数の、又はすべての衝撃ツールが、それぞれ、複数の衝撃ヘッドを有するようにしてもよい。
ここでも、混合形式が可能である。すなわち、少なくとも1つの衝撃ツールが1つの衝撃ヘッドを有し、同一の渡り部に割り当てられた少なくとも1つの衝撃ツールが2つ以上の衝撃ヘッドを有する。
【0043】
したがって、例えば、衝撃装置が、それぞれ1つのみの衝撃ヘッドを有し、同一の渡り部に割り当てられる複数の衝撃ツールを有してもよい。衝撃装置が、それぞれ1つのみの衝撃ヘッドを有する複数の衝撃ツールを有するようにすることもでき、複数の衝撃ヘッドを有する別の衝撃ツールが設けられる。任意の構成又は組み合わせが可能である。この構成は、クランクシャフトの要求に依存する場合もある。
【0044】
したがって、本発明に係る装置を、クランクシャフトの要求及び/又は渡り部の強度に対する要求に対応して適合させることができ、多数の構成の可能性が存在する。
【0045】
本発明の一改良形態では、連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部の衝撃硬化中に、衝撃ヘッドが前後に及び/又は相互に隣接してオフセットして配置されるように、衝撃ヘッドを配置するようにしてもよい。
【0046】
横方向のオフセット又は相互に隣接してオフセットされた衝撃ヘッドの配置により、渡り部の周囲に沿って内部圧縮応力を渡り部に導入する「幅」を、使用する衝撃ヘッドの数により変えることができる。
【0047】
衝撃ヘッドを前後にオフセットして配置する場合、機械加工継続時間及び/又は機械加工効果、又は機械加工処理の深さ効果を改善することができる。さらに、衝撃を互い違いに交互に、場合によっては、異なる強度で導入するようにすることもできる。
【0048】
本発明の一改良形態では、特に、同一の渡り部に割り当てられた少なくとも2つの衝撃ヘッド、好ましくはすべての衝撃ヘッドが、連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部の衝撃硬化中に各衝撃ヘッドが独自の衝撃痕の軌跡を生じるように配置されてもよい。
【0049】
最後に、本発明の一改良形態では、軌跡が重なり合うようにしてもよい。
【0050】
特に、渡り部の周囲並びに/若しくは連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿って衝撃痕の軌跡が重なり合うことにより、硬化の効果に特に良好な影響を及ぼし得る。
【0051】
本発明の一改良形態では、さらに、同一の渡り部に割り当てられた少なくとも2つの衝撃ヘッド、好ましくはすべての衝撃ヘッドが、連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部の衝撃硬化中に、各衝撃ヘッドが相互に内側に衝撃痕の軌跡を生じるように配置されてもよい。
【0052】
例えば、渡り部の周囲に沿って大きな幅を有する第1の衝撃痕の軌跡を提供してもよい。第1の衝撃痕の軌跡内において、比較的小さな幅を有する第2の衝撃痕の軌跡が延びる。このようにして、導入される内部圧縮応力の深さを改善できる場合がある。
【0053】
あるいは、異なる衝撃ヘッドにより形成された軌跡が同一の幅を有していてもよく、これにより、互い違いの衝撃硬化を実現することができる。これにより、単一の衝撃ヘッドのみを使用した単一の衝撃により衝撃硬化を行った場合とは異なる効果を得ることができる。
【0054】
本発明の一改良形態では、さらに、衝撃硬化用の衝撃ヘッドが球面を有してもよい。
【0055】
衝撃ヘッドは、好ましくは、特に、硬化目的でクランクシャフトに衝突するその前部領域又は前端が実質的に球形であってもよい。ただし、衝撃ヘッドは、基本的に、任意の所望の形状を有していてもよく、例えば、楕円形、半球形、又は平らな形状を有してもよい。
【0056】
本発明の一改良形態では、衝撃ヘッドが異なるサイズを有してもよい。
【0057】
例えば、衝撃ヘッドが、渡り部の75%~99%、好ましくは渡り部の85%~98%、特に好ましくは渡り部の85%~95%のサイズの半径を有してもよい。
【0058】
ただし、衝撃ヘッドの半径は、渡り部の75%未満又は渡り部の95%を超えていてもよい。衝撃ヘッドの半径は、渡り部に対応していてもよい。
【0059】
衝撃ヘッドのサイズは、場合によっては、渡り部毎に使用する衝撃ヘッドの数に依存してもよい。基本的に、渡り部毎に使用する衝撃ヘッドの数が多いほど、衝撃ヘッドが小さくなることが好ましい。例えば、1つの渡り部に対して2つの衝撃ヘッドを設ける場合、衝撃ヘッドは、例えば、渡り部の30%~49%、好ましくは渡り部の40%~48%、特に大変好ましくは渡り部の40%~45%のサイズの半径を有していてもよい。
例えば、1つの渡り部に対して3つの衝撃ヘッドを設ける場合、衝撃ヘッドは、例えば、渡り部の10%~33%、好ましくは渡り部の20%~30%、特に大変好ましくは渡り部の20%~25%のサイズの半径を有していてもよい。
【0060】
本発明によれば、同一の渡り部に割り当てられた衝撃ヘッドが、それぞれ、同一のサイズを有してもよい。
【0061】
衝撃ヘッドを前後に及び/又は相互に隣接して配置する場合、異なるサイズを有する衝撃ヘッドを設けることもできる。前後に配置する場合、例えば、移動方向の前方に位置する衝撃ヘッドを後方に位置する衝撃ヘッドよりも大きくなるように設計するようにしてもよい。相互に隣接して配置する場合、例えば、中央の衝撃ヘッドが外側の2つの衝撃ヘッドよりも大きくなるように設計することができ、その逆もまた同様である。ここで、衝撃痕及び/又は導入する衝撃力を変えるために、任意の変形例を実現してもよい。
【0062】
本発明の特定の一実施形態では、偏向部の偏向点と衝撃ツールの1つの衝撃ヘッド又は複数の衝撃ヘッドの前端との間の間隔を調整するような装置を構成してもよい。
【0063】
偏向点は、偏向部の中心点及び/又は1つ又は複数の衝撃ツールの回転/取付軸であってもよい。
【0064】
衝撃ヘッドの前端は、衝撃ヘッドの一部(又は表面)を意味し、衝撃硬化を目的として、衝撃ヘッドが前端でクランクシャフトに衝突する。
【0065】
偏向点と衝撃ヘッドの前端との間の間隔によって、偏向点と衝撃ヘッドの中心点との間の間隔又は偏向点と衝撃ヘッドの後端との間の間隔を調整することもできる。
【0066】
偏向部の偏向点と衝撃ツールの衝撃ヘッドとの間の間隔が調整可能であることにより、衝撃力が渡り部に導入される角度を変更又は調整することができる。クランクシャフトの動作中に最大負荷点又は最大荷重部に正確に適合された角度で衝撃力が導入されるように当該角度を選択するのが好ましい。
【0067】
衝撃角度、すなわち、偏向点から渡り部まで衝撃ツールが進む向きを調整することにより、衝撃力のプロファイルを変えることができる。前後に配置された衝撃ツールが複数の衝撃ヘッドを有する場合、適切な衝撃角度を選択することにより、様々な衝撃体の衝撃力を適切な位置及び適切な角度で導入することができる。衝撃位置及び衝撃角度は、渡り部の最大荷重部のプロファイルに対応するのが好ましい。
【0068】
衝撃ツールが相互に隣接して配置された複数の衝撃ヘッドを有する場合、例えば、中央の衝撃ヘッドをその衝撃位置及び衝撃角度に関して最大荷重部に合わせるようにしてもよく、あるいは、最大荷重部を2つの中央衝撃ヘッドの間に位置させるようにしてもよい。
【0069】
衝撃角度の変化、すなわち、衝撃ヘッドが配置された衝撃ツールのプロファイルにより、対応するクランクシャフトの要求に正確に調整することができ、特に、目的に応じて渡り部の最大荷重部を機械加工することができる。
【0070】
複数の衝撃ツールが同一の渡り部に割り当てられる場合、特定の利点が得られる可能性がある。したがって、衝撃ツールの衝撃角度を変えることにより、個々の衝撃ツールの衝撃ヘッドが渡り部に当たる位置だけでなく、その衝撃角度も変えることができる。したがって、例えば、個々の衝撃ツールの衝撃ヘッドの衝撃位置を同一とし、その角度を異ならせることもできる。
【0071】
したがって、偏向部の偏向点と少なくとも1つの衝撃ツールの1つ又は複数の衝撃ヘッドの前端との間の間隔を変更する特定の実施形態により、好ましい点及び好ましい角度で衝撃力を導入することができる。
【0072】
対照的に、既知の従来技術に係る方法及び装置では、所定の固定角度で衝撃力を渡り部に導入することができるに過ぎない。通常、この目的のために与えられる衝撃角度は約45°である。
【0073】
例えば、クランクシャフトの用途によっては、45°の固定衝撃角度ではなく、異なる角度を選択することが有利な場合がある。
【0074】
クランクシャフトの最大負荷がかかる場所は、一般に、エンジンの動作及び/又は数学モデルによって決定される。新たに検討した手法では、この目的のため、単軸負荷からの最大負荷及び二軸重畳負荷からの最大負荷を考慮する。
【0075】
衝撃角度を調整することにより、非常に正確な加工と衝撃硬化が保証される。目的に応じて最大荷重の渡り部に衝撃力を導入することができ、当該衝撃力は最適な角度で導入されるため、達成可能な疲労強度効果は変わらないまま、衝撃力を減らすことができる可能性がある。したがって、この装置は特に効率的である。
【0076】
2つ以上の衝撃ツールを共通の渡り部に割り当てるようにしてもよく、この場合、各衝撃ツールは少なくとも1つ(好ましくは厳密に1つ)の衝撃ヘッドを有し、衝撃ツールの衝撃角度は同一ではない。
【0077】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの衝撃ツールの長さを好ましくは伸縮自在に調整可能にするようにしてもよい。
【0078】
この目的のため、衝撃ツールは伸縮レールのように設計されてもよく、あるいは、伸縮手段を有していてもよい。少なくとも1つの衝撃ツールを伸縮チューブとして設計してもよい。本発明は、特定の種類の伸縮手段又は特定の種類の伸縮特性に限定されるものと理解されるべきではないことは自明である。
【0079】
少なくとも1つの衝撃ツールの長さは、例えば、糸によって調整されてもよい。
【0080】
少なくとも1つの衝撃ツールの長さは、手動で及び/又はアクチュエータ手段によって調整可能であるようにしてもよい。例えば、この目的のため、電気モータ、特にリニアドライブを設けてもよい。ただし、電気モータは、基本的には、任意の電気モータ、例えば、三相モータ、交流モータ、直流モータ、又はユニバーサルモータであってもよい。好ましくは、ステッピングモータを用いてもよい。
【0081】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの衝撃ツール及び/又は少なくとも1つの衝撃ヘッド及び/又は偏向部及び/又は衝撃装置を交換し、偏向部の偏向点と少なくとも1つの衝撃ツールの衝撃ヘッドの前端との間の間隔を異なる値に調整するため、マガジン付きの切替装置を設けてもよい。
【0082】
衝撃力が大きいため、衝撃装置の部品に高い機械的負荷が作用することが知られている。特に、少なくとも1つの衝撃ツールの長さを調整するためにフィリグリー部品を使用する場合、これにより、衝撃装置又はその部品の耐用年数が制限され得る。少なくとも1つの衝撃ツール及び/又は衝撃ヘッド及び/又は偏向部及び/又は衝撃装置にマガジン又は切替装置を設けた場合、少なくとも1つの衝撃ツールの伸縮運動を省略できる可能性があるため、衝撃装置又は装置全体を特に堅牢な設計のものとすることができる。
【0083】
したがって、マガジン付きの切替装置によって、偏向部の偏向点と少なくとも1つの衝撃ツールの衝撃ヘッドとの間の間隔を長さ調整目的で交換される衝撃装置の部品を用いて有利に調整することができる。
【0084】
異なる寸法の距離リング又はスペーサを使用することにより、偏向部の偏向点と少なくとも1つの衝撃ツールの衝撃ヘッドの前端との間の間隔を調整可能であるようにしてもよい。
【0085】
本発明の一実施形態では、2つ以上の衝撃装置を設けてもよく、偏向装置の偏向点と第1の衝撃装置の1つ又は複数の衝撃ヘッドの前端との間の間隔は、偏向装置の偏向点と第2の衝撃装置の1つ又は複数の衝撃ヘッドの前端との間の間隔と同一ではない。
【0086】
したがって、クランクシャフトの渡り部にそれぞれの衝撃力を導入することができる1つ以上の衝撃ツールを有する複数の衝撃装置をそれぞれ使用することにより、相互に独立して使用できる複数の衝撃ツールを提供することができ、衝撃ツールのコントローラ間で対応する同期が提供される。したがって、複数の衝撃装置を同時に使用できるため、クランクシャフトの衝撃硬化を特に迅速に行うこともできる。
【0087】
複数の衝撃装置を使用する場合、偏向点と衝撃ヘッドとの間のそれぞれの間隔がすべての衝撃ツールにおいて同一であるようにしてもよく、少なくとも2つの衝撃ツールにおいて相互に異なるようにしてもよい。偏向部の偏向点と同じジャーナルに隣接する渡り部の硬化のための2つの衝撃ツールの衝撃ヘッドとの間のそれぞれの間隔が同一であることが好ましい。
【0088】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの衝撃ツールの縦軸とクランクシャフトの縦軸に垂直な線との間の衝撃角度が5°~80°、好ましくは10°~70°、より好ましくは20°~60°、特に好ましくは30°~55°、特に35°~50°となるようにしてもよい。
【0089】
本発明はまた、クランクシャフトの渡り部、特に、クランクシャフトの連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部及び/又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部を衝撃硬化する方法に関する。
【0090】
本発明はまた、フランジ及びジャーナルの渡り部、並びに、接線部分及びアンダーカット部分の両方の、断面における他の幾何学的変化における、渡り部に関する。
【0091】
本発明に係る方法は、同一の渡り部に割り当てられた複数の衝撃ヘッドを有する衝撃装置によって行われる渡り部を衝撃硬化する方法を提供する。
【0092】
本発明に係る装置に関連して既に説明した特徴は、本発明に係る方法についても有利に実現可能であり、その逆もまた同様であることは自明である。さらに、本発明に係る装置に関連して既に説明した利点は、本発明に係る方法に関連するものとして理解することができ、その逆もまた同様である。
【0093】
本発明の一実施形態に係る方法では、渡り部の最大荷重のプロファイルに従って衝撃角度を選択するようにしてもよく、最大荷重のプロファイルは、それぞれの種類のクランクシャフトのシミュレーション及び/又は計算及び/又は一連のテストに基づいて決定される。
【0094】
クランクシャフトの最高負荷領域も予め特定しておくことが好ましい。そして、目的に応じて対応する最大負荷領域に衝撃力を導入することができる。
【0095】
好ましくは、偏向部の偏向点と少なくとも1つの衝撃ツールの1つ又は複数の衝撃ヘッドの前端との間の間隔を調整することにより、特に高精度にクランクシャフトを衝撃硬化することができる。
【0096】
間隔を調整することにより、衝撃点だけでなく衝撃方向も定義することができる。このようにして、疲労強度、特に曲げ疲労強度及びねじり疲労強度がさらに最適化されたクランクシャフトを製造することができる。あるいは、現在利用可能な精度により、より小さな衝撃力を使用するだけで既存の疲労強度を得ることができる。
【0097】
本発明の一実施形態では、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間のすべての渡り部及び/又は主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間のすべての渡り部を同じ衝撃角度で衝撃硬化するようにしてもよい。
接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び/又は断面における他の幾何学的移行部へのすべての渡りを同じ衝撃角度で衝撃硬化することもできる。
【0098】
したがって、クランクシャフトのすべての渡り部が同じ衝撃角度で衝撃硬化されるようにしてもよく、この目的で選択された衝撃角度は、クランクシャフトの最大負荷点に関して最適化される。ただし、連接棒軸受ジャーナルのすべての渡り部が第1の衝撃角度で衝撃硬化され、主軸受ジャーナルのすべての渡り部が第2の衝撃角度で衝撃硬化されるようにしてもよく、第1及び第2の衝撃角度は、それぞれ、最大負荷の場所及び/又は最大荷重のプロファイルに対応して最適化される。
【0099】
本発明の代替実施形態では、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の少なくとも2つの渡り部が、異なる衝撃角度で衝撃硬化されるようにしてもよく、かつ/あるいは、主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の少なくとも2つの渡り部が異なる衝撃角度で衝撃硬化されるようにしてもよく、かつ/あるいは、連接棒軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の少なくとも1つの渡り部が、主軸受ジャーナルとクランクウェブとの間の渡り部とは異なる衝撃角度で衝撃硬化されるようにしてもよい。
【0100】
したがって、衝撃角度を渡り部毎に又は一群の渡り部毎に個別に定義又は最適化することができる。
【0101】
例えば、1つのジャーナル位置で異なる衝撃角度を同時に用いることができる。
【0102】
本発明の一実施形態では、最終的に、連接棒軸受ジャーナル及び/又は主軸受ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部の衝撃硬化中に衝撃角度を変更するようにしてもよい。
【0103】
これが、接線部分及びアンダーカット部分の両方について、フランジ、ジャーナル、及び/又は断面における他の幾何学的移行部への渡りに対しても当てはまることは自明である。
【0104】
このようにして、疲労強度、すなわち、曲げ疲労強度及び/又はねじり疲労強度をさらに増加できることが分かった。
【0105】
例えば、連接棒軸受ジャーナルのいわゆる下死点、又は下死点の周囲の定義された領域に、渡り部の残りの領域とは異なる衝撃角度を与えてもよい。
【0106】
衝撃力を生成するために衝撃ピストンが印加できる衝撃圧力は、動作モードに応じて、10~300バール、好ましくは30~180バール、特に好ましくは50~130バールである。
【0107】
クランクシャフトセグメントの領域又は機械加工される渡り部の温度は、65°C以下であることが好ましく、12°C~25°Cの値が好ましい。
【0108】
経験上、伝播することができないマイクロクラックは、エンジン又は試験台での動的荷重の後、クランクシャフトの表面に形成されることが分かっている。これらマイクロクラックは、疲労強度特性には影響しないが、外観を損なわせる可能性がある。
【0109】
好ましくは15mm又はそれ以上の深さまで内部圧縮応力を導入することができるので、これは、クランクシャフトの曲げ疲労強度及びねじり疲労強度、すなわち、疲労強度に悪影響を与えることなく、クランクシャフトの表面領域を数ミリメートル、例えば、0.1~3mm、好ましくは0.5mm除去できることを意味する。
【0110】
試験により、このような測定により疲労強度がわずかに、例えば最大5%増加することが示されている。
【0111】
表面の除去は、様々な方法、例えば、研削、旋削、フライス加工、ロータリフライス加工、剥離、又は研磨により実行してもよい。
【0112】
特に、渡り部の衝撃硬化中にアクチュエータ手段により衝撃角度を変えるようにされている場合、対応するアクチュエータ装置を作動させるために、開ループ及び/又は閉ループ制御装置、好ましくはマイクロプロセッサを備える開ループ及び/又は閉ループ制御装置を配置してもよい。
【0113】
マイクロプロセッサの代わりに、開ループ及び/又は閉ループ制御装置を実装するための他の任意の装置、例えば、回路基板、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は、他のプログラマブル回路上のディスクリート電子部品、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレンジメント(PLA)、及び/又は市販のコンピュータのうちの1つ以上の装置を準備するようにしてもよい。
【0114】
本発明に係る装置のいくつかの構成要素は、基本的に、その構造に関して、EP 1 716 260 B1による装置に対応し、そのため、EP 1 716 260 B1に開示された内容は、その全体が、参照により本開示に援用される。
【0115】
本発明はまた、上記方法に従って製造されたクランクシャフトに関する。
【0116】
本発明に係るクランクシャフトは、特に、その硬化のために、少なくとも2つの衝撃ヘッドを同一の渡り部に割り当て、さらに、場合によっては、異なる衝撃角度を用いることで、渡り部の特徴的な硬化を生じるという点で従来のクランクシャフトとは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】
図1は、本発明に係る第1の実施形態における方法を実施するための装置全体を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る第2の実施形態における方法を実施するための装置の一部を概略的に示す斜視図である
【
図3】
図3は、
図1の詳細「A」による拡大図における2つの衝撃ツールを有する衝撃装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、衝撃ツールを1つのみ有する衝撃装置を概略的に示す図である。
【
図5a】
図5aは、渡り部と3つの衝撃ヘッドを有する衝撃ツールとの拡大図を概略的に示す図である。
【
図5b】
図5bは、渡り部と、それぞれ1つの衝撃ヘッドを有する3つの平坦化された衝撃ヘッドを有する衝撃ツールとの拡大図を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、衝撃ヘッドのオフセットの例を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、3つの衝撃ヘッドにより衝撃硬化された渡り部を概略的に示す図であり、3つの衝撃痕の軌跡が重なり合っている。
【
図8】
図8は、2つの衝撃ヘッドの衝撃痕の軌跡が相互に内側に位置されて衝撃硬化された渡り部を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、2つの伸縮衝撃ツールを有する衝撃装置を概略的に示す図である。
【
図10】
図10は、渡り部と、衝撃ヘッドを有する衝撃ツールとを概略的に示す拡大図であり、衝撃ツールは第1の衝撃角度で位置合わせされている。
【
図11】
図11は、渡り部と、衝撃ヘッドを有する衝撃ツールとを概略的に示す拡大図であり、衝撃ツールは第2の衝撃角度で位置合わせされている。
【
図12】
図12は、衝撃硬化に第1の衝撃角度を用いた場合の衝撃硬化した渡り部を概略的に示す図である。
【
図13】
図13は、衝撃硬化に第2の衝撃角度を用いた場合の衝撃硬化した渡り部を概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、ジャーナルの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部に沿って衝撃硬化中に衝撃角度を変更した場合の衝撃硬化した渡り部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0118】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0119】
各図は、好ましい例示的な実施形態を示しており、本発明の個々の特徴が相互に組み合わせて示されている。例示的な実施形態の特徴はまた、同一の例示的な実施形態の他の特徴と別個に実現可能であり、したがって、別の有意義な組み合わせ及び部分的組み合わせを作るために、当業者によって他の例示的な実施形態の特徴と容易に組み合わせることができる。
【0120】
各図において、機能的に同一の要素は、同一の参照符号で示されている。
【0121】
図1の全体図に示す装置は、基本的に、その構造に関して、1つ以上の衝撃装置1を有するDE 34 38 742 C2及びEP 1 716 260 B1のような装置に対応する。そのため、以下、重要な部分及び従来技術との相違点のみを詳細に説明する。
【0122】
上記装置は、機械ベッド2及び駆動装置3を有する。駆動装置3は、回転方向に沿ってクランクシャフト4を衝撃位置に移動又は回転させるために使用される。
【0123】
クランクシャフト4は、連接棒軸受ジャーナル5及び主軸受ジャーナル6を複数有し、それら各々の間にクランクウェブ7が複数配置される。渡り部8(
図3~8及び10~14参照)は、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間、及び主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間、すなわち、一般的に、クランクシャフト4の断面における渡り部分に形成される。
【0124】
クランクシャフト4の駆動装置3に面する側には、クランプディスク又は締結フランジ10を有する締結装置9が設けられる。クランクシャフト4の駆動装置3から離れた側には、支持体11、好ましくはテールストックのような支持体11が設けられ、当該支持体11は、クランクシャフト4を回転可能に収容又は回転可能に固定するための別の締結装置9を有する。任意選択的に又は支持体11に加えて、回転対象位置に配置されたバックレストを設けてもよい。
【0125】
駆動装置3は、クランクシャフト4を回転軸Cに沿って回転運動させることができる。ここで、クランクシャフト4の主回転軸C
KWが、
図1及び
図2に示すように、駆動装置3の回転軸Cから偏心して配置されるようにしてもよい。この目的のため、締結装置9の領域に位置合わせ手段17(
図2参照)を設けられることが好ましい。ここで、位置合わせ手段17が、硬化されるジャーナル5又は6の中心軸を変位させ、ジャーナル5又は6の中心軸が回転軸C上にあるようにしてもよい。
【0126】
駆動装置3に対して、ダイレクトドライブ、好ましくはクラッチなしのダイレクトドライブを設けてもよい。したがって、駆動装置3のモータ、好ましくは電気モータを伝達比なしで、すなわちトランスミッションなしで締結装置9又はクランクシャフト4に結合することができる。駆動力を伝達するために、入力シャフト13又は駆動シャフトを設けてもよい。
【0127】
以下に例として詳細に説明する衝撃装置1は、連接棒軸受ジャーナル5及び主軸受ジャーナル6の位置とクランクシャフト4の長さとに適合させるための、変位及び調整装置15の各々において調整可能に保持される。
【0128】
図1の二重矢印で示すように、支持体11を変位可能に設計してもよい。
【0129】
図1には2つの衝撃装置1が示されているが、基本的には、任意の数、例えば、1つのみの衝撃装置1を設けてもよい。
【0130】
駆動装置3の動作、好ましくは電気モータを備える駆動装置3の動作について、クランクシャフト4をそれぞれの衝撃位置に回転させるために閉ループ位置制御を使用してもよく、クランクシャフト4は、好ましくは、段階的に又は経時的に回転される。
【0131】
所望の方法で1つの渡り部8に衝撃を与えて硬化させた(以下、衝撃硬化とする)後、1つ又は複数の衝撃装置1を、硬化対象の次の渡り部8に移動させることができる。
【0132】
図2は、本発明に係る方法を実施するための別の装置の詳細を斜視図で示しているが、衝撃装置が含まれていない。ここで、
図2に示す装置は、
図1に示す装置と実質的に同一であるため、以下、重要な相違点のみ詳細に言及する。
【0133】
駆動装置3が再び設けられる。さらに、締結フランジ10と、それに締結された、クランクシャフト4を固定するためのクランプジョーを有する面板とを有する締結装置9が設けられる。締結装置9のクランプジョーを有する面板は、締結フランジ10上の位置合わせ手段17上で調整可能に配置され、これにより、クランクシャフト4の縦軸CKWを駆動シャフト又は入力シャフト13の回転軸Cに対して変位させることができる。
【0134】
図2に示すクランクシャフト4は、
図1に示す実施形態から逸脱する構成を有するが、基本的には、同様に、連接棒軸受ジャーナル5、主軸受ジャーナル6、及びクランクウェブ7を備える。
【0135】
図2(
図1と同様)において、省略してもよいが、駆動装置3から離れたクランクシャフト4の端部に別の締結装置9を設けてもよい。
【0136】
図1に示す衝撃装置1は、
図3に示す例により詳細に示されている。本発明は、基本的には、任意の衝撃装置1で実施することができる。しかしながら、以下に説明する衝撃装置1が特に適している。この衝撃装置1は、本体18を有する。本体18は、機械加工されるクランクシャフトセグメントの部分に対応して角柱状のアバットメントを有していてもよく、支持面内に2つの衝撃ツール16をガイドし、偏向部20の周りの支持角又は衝撃角度α(
図9~11参照)に関して、対応する自由度をそれら衝撃ツール16に付与するガイド19を有することが好ましく、クランクシャフト4の寸法条件への適合に有利である。いずれの場合も、衝撃ヘッドとして1つのボールを2つの衝撃ツール16の前端に配置する。中間部22は、衝撃ピストン23と偏向部20とを接続し、衝撃エネルギーを衝撃ツール16に伝達する。中間部22は省略してもよい。
【0137】
これにより、本発明によれば、衝撃装置1は、同一の渡り部8に割り当てられる複数の衝撃ヘッド21を有する。
【0138】
この目的のために、衝撃装置1が複数の衝撃ヘッド21を有する少なくとも1つの衝撃ツール16を有してもよい。
図3の断面図では、それぞれの場合において、図示のためにそれぞれの渡り部8について1つのみの衝撃ヘッド21が示されている。それにもかかわらず、
図3の変形例では、例えば、一方又は両方の渡り部8に対して、前後にオフセットされている複数の衝撃ヘッド21を配置することができる。
したがって、特に、
図3に示す2つの衝撃ツール16を有する衝撃装置1の場合、2つの衝撃ツール16のうちの一方のみが同一の渡り部8に割り当てられた複数の衝撃ヘッド21を有することもできる。
【0139】
本発明において、衝撃装置1が複数の衝撃ツール16を有するようにしてもよく、少なくとも2つの衝撃ツール16は、それぞれ、同一の渡り部8に割り当てられた1つ以上の衝撃ヘッド21を有する。ここで、1つの渡り部8に割り当てられた衝撃ツール16は、それぞれ、1つ以上の衝撃ヘッド21を有していてもよい。
【0140】
図3に示す衝撃装置1は、例えば、同一の渡り部8に割り当てられた複数の衝撃ヘッド21を有する第2の衝撃装置1(例えば、
図1参照)を設ける場合、衝撃ツール16に対して1つのみの衝撃ヘッド21が設けられる衝撃装置であってもよい。
【0141】
複数の衝撃装置1を設けることもでき、この場合、複数の衝撃装置1の少なくとも2つの衝撃ヘッド21が、同一の渡り部8に割り当てられる。
【0142】
衝撃の有効性を高めるために、本体18から離れたジャーナル5又は6側にクランプナット27を有する調整可能なクランプボルト26により、スプリング25を介して、クランププリズム24を締結してもよい。ここで、他の構造的な解決法も可能である。
【0143】
機械加工されるクランクシャフト4の長さにわたって複数の衝撃装置1を配置することにより、必要に応じて、クランクシャフト4のすべての中央領域と、場合によっては、偏心した領域とを同時に機械加工することができる。上述のように、この場合、すべての衝撃装置1が本発明に従って割り当てられた複数の衝撃ヘッド21を有する必要はない。
【0144】
衝撃ピストン23は、偏向部20を介して衝撃ツール16に衝撃を伝達し、これにより、衝撃ツール16の衝撃ヘッド21は、渡り部8に衝撃力FSを導入する。
【0145】
本明細書における「FS」という表現及びこれに類似する表現は、単に当業者にとって適切と考えられる任意の衝撃力についてのプレースホルダ/変数として理解されるべきである。ここで、「衝撃力FS」と記載されている場合、それぞれの場合について、異なる衝撃力そうでなければ同一の衝撃力を指してもよい。
【0146】
図4は、1つのみの衝撃ツール16を備える衝撃装置1を示す。例示的な実施形態では、衝撃装置1は、特に、衝撃装置1の縦軸に対して同軸に配置された縦軸L
sの衝撃ツール16が、機械加工されるクランクシャフトセグメントの領域、本例では、機械加工される渡り部8の領域に対して垂直に衝撃を与えるように、クランクシャフト4に対して傾斜していることが好ましい。この場合、それぞれ、1つのクランクシャフトセグメントのみを機械加工することが可能であるが、衝撃装置1による構造設計と力の伝達が良好かつ簡単である。この衝撃ツール16により、定常位でボア端部をさらに硬化させることができる。
【0147】
本実施形態は、クランクシャフト4の端部領域及びオイルボア端部等の非対称のクランクシャフトセグメントでの使用に特に有利であることが証明されている。
【0148】
既に
図3に示したのと同様に、
図4に示す衝撃装置1には、衝撃ヘッド21が1つのみ示されている。しかしながら、
図4に示す衝撃装置1は、任意の数の衝撃ヘッド、例えば、2つの衝撃ヘッド、3つの衝撃ヘッド、又は4つの衝撃ヘッドを有していてもよい。さらに、
図4に示す様式の衝撃装置1及び/又は衝撃ヘッド16が、複数設けられてもよく、この場合、この衝撃装置1及び/又は衝撃ヘッド16はそれぞれ、1つ以上の衝撃ヘッド21を有し、かつ、同一の渡り部8に割り当てられる。
【0149】
図5aは、3つの衝撃ヘッド21を有する衝撃ツール16を非常に概略的に示し、当該衝撃ヘッド21は同一の渡り部8に割り当てられる。これに関して、幾何学的関係についてのより概略的な別の拡大図を(非常に誇張して)
図6に示す。
【0150】
ここで、
図5a及び6は、例示的なクランクシャフトセグメントの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部8の衝撃硬化中に、前後及び相互に隣接して配置された3つの衝撃ヘッド21の配置を示す。このようにして、広範囲にわたって、すなわち、大きな「幅」bにわたって、同時に高い深さ効果(
図5aにおいてハッチング領域MAXで示す)で、渡り部8の周囲に沿って内部圧縮応力を導入することができる。
【0151】
ここで、図示のクランクシャフトセグメントの周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部8の衝撃硬化中に、衝撃ヘッド21がそれぞれ独自の衝撃痕28(
図7参照)の軌跡を生じるように衝撃ヘッド21が配置される。
【0152】
衝撃ヘッド21は、衝撃痕28の軌跡が重なり合うように前後にオフセットして、かつ/あるいは、相互に隣接して配置されてもよい。
【0153】
上述のように、衝撃硬化用の衝撃ヘッド21は、球面を有していてもよく、あるいは、実質的に球形であってもよい。
【0154】
衝撃ヘッド21の衝撃痕28の軌跡が重なり合うようにする場合、
図6に誇張して示されている配置が有利である。ここで、衝撃ヘッド21は、渡り部8の円周方向における衝撃ヘッド21の幾何学的形状の重なりが、断面で見てクランクシャフト4の内側に位置するように、相互にオフセットして配置されている。
球面を有する衝撃ヘッド21を含む
図6に示す例では、それぞれの円周の交点Sは渡り部8の内部、すなわち、クランクシャフト4の内側に配置されている。ここで、衝撃硬化中の衝撃ヘッド21の(誇張して示された)侵入深さTを考慮する必要がある。
【0155】
上述のように、同一の渡り部8に割り当てられた1つ以上の衝撃ヘッド21をそれぞれ有する複数の衝撃ツール16を設けるようにしてもよい。これをさらに説明するために、本発明の例示的な変形例を
図5bに示す。
図5bに示す変形例では、それぞれ1つの衝撃ヘッド21を有する3つの衝撃ツール16が設けられている。したがって、
図5aに示す実施形態と同様に、同一の渡り部8に割り当てられた3つの衝撃ヘッド21が再び設けられている。
【0156】
衝撃ツール16は、それぞれの縦軸L
Sに沿って、渡り部8に衝撃力F
Sを導入する。ここで、衝撃ツール16を偏向部20(図を簡単にするために、偏向部の偏向点U
Pのみを
図5bに示す)上に配置する。衝撃力F
Sの導入中に衝撃ツール16が相互に支持し合い、当該衝撃ツール16が渡り部8の周囲に沿った関連するそれぞれの衝撃位置から滑り落ちないように、衝撃ツール16を設計し、相互に方向付けてもよい。
あるいは、及び/又はさらに、偏向点U
Pの位置が図示の位置から外れ、例えば、渡り部8の近くに配置されてもよく、その結果、外側の衝撃ツール16の衝撃角度αが変化し、同様に滑りを防止することができる。
【0157】
図5bに示す例は、いずれの場合も、特に比率及び角度方向に関して単に概略的なものとして理解されるべきである。
【0158】
衝撃ツール16は上下に及び/又は重なり合うように配置され、これを目的として、比較的制限された幾何学的要件を可能にするために、特に平坦な形状であってもよい。
図5bに示す変形例では、渡り部8の周囲に沿って中央に配置された衝撃ツール16が2つの他の衝撃ツール16の背後にオフセットされており、これにより、衝撃ツール16、したがって、衝撃ヘッド21のさらに制限された配置を実現することができる。ただし、衝撃ツール16相互の任意のオフセットを提供することができる。
【0159】
図7は、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間の例示的な渡り部8を示しており、それぞれの衝撃ヘッド21によって形成された衝撃痕28が主軸受ジャーナル6の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部8に沿って重なり合っている。ここで、その後の衝撃の間、それぞれの衝撃ヘッド21が先行する衝撃の衝撃痕28に少なくとも部分的に侵入する。これにより、
図7及びそれ以降の図に示す衝撃痕28の「軌跡」が生じる。
図5a又は5bに示すように、特徴的な硬化パターン又は衝撃痕28の軌跡の重なりは、例えば、前後及び相互に隣接してオフセットされた衝撃ヘッド21の配置により実現してもよい。したがって、渡り部8の周囲に沿って内部圧縮応力を大きな幅bにわたってクランクシャフト4に導入する。
【0160】
図8は、一方が他方の内側に位置する2つの衝撃痕28の軌跡を生じる別の例示的な渡り部8を示す。このようなパターンは、例えば、主軸受ジャーナル6の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部8の衝撃硬化中に、衝撃ヘッド21がそれぞれ衝撃痕28を生じさせるように、2つの衝撃ヘッド21を前後に配置することにより得ることができる。ここで、内側の衝撃痕28の軌跡を形成する衝撃ヘッド21は、外側の衝撃痕28の軌跡を形成する衝撃ヘッド21よりも小さい。
【0161】
したがって、衝撃ヘッド21が異なるサイズを有するようにしてもよい。衝撃ヘッド21は、同一のサイズのものあってもよい。第2の衝撃ヘッド21、すなわち、第1の衝撃ヘッド21によって既に形成されている衝撃痕28に衝撃を与える衝撃ヘッド21をより大きくするようにしてもよい。
【0162】
図8に示す方法で衝撃硬化を行うことにより、例えば、これまで達成されていなかった深さまで内部圧縮応力をクランクシャフト4に導入することができる。
【0163】
本発明の特定の一変形例では、偏向部20の偏向点U
Pと衝撃ツール16の1つ又は複数のそれぞれの衝撃ヘッド21の前端との間の間隔d(例えば
図9)が調整可能であるようにしてもよい。
【0164】
間隔dの調整のための1つの可能な技術的な解決法を
図3に破線で概略的に示す。少なくとも1つの衝撃ツール16及び/又は少なくとも1つの衝撃ヘッド21及び/又は偏向部20及び/又は少なくとも1つの衝撃装置1を交換し、偏向部20の偏向点U
Pと少なくとも1つの衝撃ツール16の1つ又は複数の衝撃ヘッド21の前端との間の間隔dを異なる値に調整するため、マガジン付きの切替装置30を設ける。特に、衝撃ツール16を交換するための切替装置30を
図3に示す。この目的のため、切替装置30は、それぞれ異なる長さの衝撃ツール16を選択する。衝撃ツール16を交換することにより、間隔d、したがって、衝撃角度αを調整することができる。
【0165】
衝撃ツール16の長さを、好ましくは伸縮自在に調整可能とするようにしてもよい。対応する構造を
図9に示す。ここで、
図9は、衝撃装置1の詳細を示し、この衝撃装置1は
図3の実施形態と実質的に同一の設計のものであってもよい。
【0166】
図9では、2つの伸縮衝撃ツール16が概略的に示されている。衝撃ツール16の長さが調整可能であることにより、偏向部20の偏向点U
Pと衝撃ヘッド21の前端21との間の間隔dが調整可能である。したがって、このように、衝撃角度α及び、場合によっては、衝撃位置も間接的に影響を受ける可能性がある。
【0167】
図1に示すように、複数の衝撃装置1を使用するようにしてもよい。その場合、偏向点U
Pと衝撃ヘッド21との間のそれぞれの間隔dは、少なくとも、2つの衝撃装置1の場合、同一でないことが好ましい。これにより、それぞれの場合において、渡り部8又は一群の渡り部8の衝撃硬化に衝撃装置1を使用することができ、衝撃装置1の衝撃ツール16は、優先的に与えられる衝撃角度αに既に調整されている。したがって、衝撃装置1の変換は不要である。したがって、クランクシャフト4が2つの異なる有利な衝撃角度αの渡り部8のみを有する場合、対応するように事前に設定された2つの衝撃装置1で十分であることが好ましい。
【0168】
例えば、第1の衝撃装置1が衝撃力FSを第1の衝撃角度α1で導入し、第2の衝撃装置1が衝撃力FSを第2の衝撃角度α2で導入するようにしてもよい。衝撃装置1を使用してもよく、その場合、間隔d及び/又は衝撃角度αを異なる方法で調整可能である。従来の衝撃装置を、調整可能な間隔を有する衝撃装置1と組み合わせることもできる。本発明の範囲内において、同一の渡り部8に割り当てられた複数の衝撃ヘッド21を有する衝撃装置1との任意の組み合わせが考えられる。
【0169】
少なくとも1つの衝撃ツール16の縦軸LSとクランクシャフトの縦軸CKWに垂直な線lKWとの間の衝撃角度αが45°~80°、好ましくは10°~70°、より好ましくは20°~60°、特に好ましくは30°~55°、特に35°~50°となるようにしてもよい。
【0170】
その関係を説明するために、
図10及び11に、衝撃ツール16の衝撃ヘッド21と、クランクシャフト4の例示的な渡り部8とを非常に概略的に示す拡大図を示す。すべての関係が複数の衝撃ヘッド21を設ける場合にも当てはまることは自明である。ここで、
図10に示す例では、第1の衝撃角度α
1で衝撃硬化を行い、
図11に示す例では、第2の衝撃角度α
2で衝撃硬化を行う。
【0171】
偏向部20の偏向点UPと衝撃ツール16の少なくとも1つの衝撃ヘッド21との間の間隔dを変更して、対応する衝撃角度αを調整することにより、衝撃力FSの方向を事前に定義することができ、これにより、衝撃硬化の最大効果の範囲を目的に応じて設定することができる。
【0172】
例えば、断面積の低減、ボア、又は他の幾何学的条件が必要とする場合、衝撃力FSを目的に応じて低減させたり、動作の方向を変更したりするようにしてもよい。
【0173】
渡り部8の最大荷重MAX1又はMAX2のプロファイルに従って衝撃角度αを選択するのが好ましく、最大荷重MAX1又はMAX2のプロファイルは、それぞれの種類のクランクシャフトのシミュレーション及び/又は計算及び/又は一連のテストに基づいて決定される。
【0174】
図11では、衝撃ヘッド21が、
図10に示す渡り部8の位置と同じ位置に配置されている。しかしながら、偏向部20の偏向点U
Pと衝撃ヘッド21との間の間隔dは、衝撃ツール16が
図10の場合とは異なる衝撃角度αで位置合わせされるように設定される。このことから、衝撃ヘッド21は基本的に
図10に示す位置と同じ位置に適用されるが、衝撃が角度α
2で渡り部8に導入される。
【0175】
図11に示す例は、説明のために、
図10に示す例と特に大きく異なる。
【0176】
基本的に、渡り部8における衝撃ヘッド21の位置を変更することもできる。すなわち、渡り部8の周囲に沿った異なる位置に衝撃ヘッド21を適用することもでき、同時に、衝撃角度αが可変であってもよい。
【0177】
上述のように、1つ又は複数の衝撃ヘッド21は異なるサイズを有していてもよい。特に、1つの衝撃ヘッド21のみが衝撃ツール16上に設けられる場合、衝撃ヘッド21は、半径rSを有していてもよい。半径rSの大きさは、渡り部8の75%~99%、好ましくは渡り部8の85%~98%、特に好ましくは渡り部8の85%~95%となる。衝撃ヘッド21の半径rSは、渡り部8に実質的に対応することが好ましい。
【0178】
衝撃ヘッド21は、基本的には、任意のサイズのものであってもよい。複数の衝撃ヘッド21を衝撃ツール16に設ける場合、例えば、衝撃ヘッド21は、渡り部8より10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%大きくてもよい。しかしながら、衝撃ヘッド21のサイズは、渡り部8のサイズより10%小さくてもよく、あるいは、渡り部8のサイズに対応していてもよい。
【0179】
図12及び13は、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間の例示的な渡り部8を示し、本例において、衝撃硬化が異なる衝撃角度αで行われ、衝撃ツール16の衝撃ヘッド21による衝撃痕28は、主軸受ジャーナル6の周囲を環状に取り囲むように延びる渡り部8に沿って重なり合う。上述のように、その後の衝撃の間、衝撃ヘッド21が先行する衝撃の衝撃痕28に少なくとも部分的に侵入してもよく、各図に示す衝撃痕28の「軌跡」を生じさせることができる。
【0180】
図12及び13では、図の例示のために、衝撃痕28は、渡り部8の周囲にはっきりと見えるように相互にオフセットして延びている。当該オフセットは、実際には小さいことが好ましいが、それでも効果的である。オフセットプロファイルは、
図11に示すように、衝撃角度αを変更すること、及び/又は衝撃ヘッド21が適用される点を変更することによって実現することができる。
図12に示す渡り部8の場合、
図13に示す渡り部8の場合よりも小さい衝撃角度αを選択した。すなわち、偏向部20の偏向点U
Pと衝撃ツール16の衝撃ヘッド21との間の間隔dを、
図12による方法の場合に、
図13に示す渡り部8の場合よりも大きくなるように設定した。したがって、衝撃痕28は、
図12に示す渡り部8の場合よりも
図13に示す渡り部8の場合の方が、長く伸び、あるいは、クランクウェブ7の近くに伸びる。
【0181】
本発明の例示的な実施形態では、
図12及び13に示す衝撃痕28の軌跡がそれぞれ複数の衝撃ヘッド21を使用(ここではさらに詳細には示さない)して形成されている。本発明において、さらに、衝撃装置1が複数の衝撃ツール16、例えば、それぞれ1つの衝撃ヘッド21を有し、同一の渡り部8に割り当てられた2つの衝撃ツール16を有してもよく、衝撃ツール16のそれぞれの衝撃角度αは、異なるように設定される。その場合、例えば、相互に平行に(重なり合うか、又は重なり合わないように)延びる衝撃痕28の軌跡を形成することもできる。
【0182】
渡り部8の衝撃硬化中に、連接棒軸受ジャーナル5及び/又は主軸受ジャーナル6の周囲を環状に取り囲むように延びるそれぞれの渡り部8に沿って、衝撃ツール16の衝撃角度αを変更するようにしてもよい。これを
図14に示し、複数の衝撃ヘッド21を渡り部8に割り当てる場合でもそうしてよいことは自明である。
【0183】
連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間のすべての渡り部8を第1の衝撃角度αで衝撃硬化し、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間のすべての渡り部8を第2の衝撃角度αで衝撃硬化するようにしてもよい。
【0184】
あるいは、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間の少なくとも2つの渡り部8を異なる衝撃角度αで衝撃硬化し、かつ/あるいは、主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間の少なくとも2つの渡り部8を異なる衝撃角度αで衝撃硬化し、かつ/あるいは、連接棒軸受ジャーナル5とクランクウェブ7との間の少なくとも1つの渡り部8を主軸受ジャーナル6とクランクウェブ7との間の渡り部8とは異なる衝撃角度αで衝撃硬化するようにしてもよい。