(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】機械部品を装飾するための方法
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20220404BHJP
G04B 19/12 20060101ALI20220404BHJP
G04B 19/10 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G04B19/06 A
G04B19/12 Z
G04B19/10 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020083729
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2020-05-12
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599044744
【氏名又は名称】コマディール・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ネトゥシル
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・ボンタ
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】西独国特許出願公告第1191592(DE,B)
【文献】特表2012-502813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
B44C 1/00 - 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械部品の装飾されるべき少なくとも1つの表面(4)を装飾するための方法であって、
・ 少なくとも1つの装飾要素(2a、2b)が決定された厚さ及び輪郭に従ってその上に作成しようとしている、装飾されるべき前記機械部品を選ぶステップと、
・ 前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)上に、作成されるべき前記装飾要素(2a、2b)の前記厚さに少なくとも等しい厚さを有するマスキング層(6)を堆積させるステップと、
・ 前記装飾要素(2a、2b)が作成されるべきである前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)の場所と一致する少なくとも1つの開口(14a、14b)を前記マスキング層(6)に作るステップであって、前記開口(14a、14b)が、作成されるべき前記装飾要素(2a、2b)の前記輪郭と同じである輪郭を有し、装飾されるべき前記機械部品を備えた体積を画定する、ステップと、
・
前記マスキング層(6)に作られた前記開口(14a、14b)を通して、前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)にキャビティ(16)をエッチングするステップであって、
前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)にエッチングされた前記キャビティ(16)は、前記充填材料の前記装飾要素(2a、2b)を係留するための手段を含む、ステップと、
・ 前記装飾要素(2a、2b)がそれで作成されることが求められている充填材料を用いて、前記マスキング層(6)と前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)とによって区切られた前記体積を充填するステップと、
・ 前記マスキング層(6)を除去するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記充填材料は、結晶性金属又はアモルファス金属である、ことを特徴とする請求項1に記載の装飾方法。
【請求項3】
前記アモルファス金属は、アモルファス白金合金、アモルファスパラジウム合金、又は、アモルファスジルコニウム合金である、ことを特徴とする請求項2に記載の装飾方法。
【請求項4】
前記マスキング層(6)の前記開口(14a、14b)と、装飾されるべき前記機械部品の前記キャビティ(16)とは、レーザビームを使用して同時にエッチングされる、ことを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装飾方法。
【請求項5】
前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)にエッチングされた前記キャビティ(16)の深さは、200μmに実質的に等しい、ことを特徴とする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装飾方法。
【請求項6】
前記キャビティ(16)は、壁(20)によって区切られ、それの少なくとも1つの面(18)が、この壁(20)が前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)から離れるにつれて、前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)に垂直な面(P)から次第にそれて行く、ことを特徴とする
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装飾方法。
【請求項7】
少なくとも1つの円錐穴(22)は、前記キャビティ(16)の底部(24)に穴あけされ、この円錐穴(22)は、装飾されるべき前記表面(4)の反対側の前記機械部品の後面(26)に向かってフレア化する、ことを特徴とする
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装飾方法。
【請求項8】
前記マスキング層(6)を堆積させる前に、結合層(8)は、前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)に堆積される、ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の装飾方法。
【請求項9】
前記結合層8は、金の層(12)がその上に堆積されるクロムの層(10)によって形成される、ことを特徴とする請求項
8に記載の装飾方法。
【請求項10】
前記クロムの層(10)及び前記金の層(12)はそれぞれ、50nmに実質的に等しい厚さを有する、ことを特徴とする請求項
9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記結合層(8)及び前記マスキング層(6)は、ガルバニック成長によって、前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)に堆積される、ことを特徴とする請求項
8乃至
10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記マスキング層(6)は、銀、銅、又は、ニッケルで作られる、ことを特徴とする請求項
11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記マスキング層の前記厚さは、400μmに少なくとも等しい、ことを特徴とする請求項
12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記マスキング層(6)と前記機械部品の装飾されるべき前記表面(4)とによって区切られた体積を充填する前に、前記マスキング層(6)は、前記機械部品(1)の装飾されるべき前記表面(4)に平行な平面状の表面を得るために平らにされる、ことを特徴とする請求項1乃至
13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記マスキング層(6)に作られた前記開口(14a、14b)によって区切られた体積を前記充填材料で充填した後に、前記装飾要素(2a、2b)の上面は、機械加工されて仕上げ処理される、ことを特徴とする請求項1乃至
14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記装飾要素(2a、2b)は、艶出し又は研磨される、ことを特徴とする請求項
15に記載の製造方法。
【請求項17】
機械加工及び仕上げ処理の後に、前記マスキング層(6)及び前記装飾要素(2a、2b)の残りの厚さは、約200μmに等しい、ことを特徴とする請求項
15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記装飾要素(2a、2b)を機械加工及び仕上げ処理した後に、前記マスキング層(6)は、除去される、ことを特徴とする請求項
15乃至
17のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記マスキング層(6)は、化学薬品浴でのエッチングによって除去される、ことを特徴とする請求項
18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品を装飾するための方法に関する。より詳細には、本発明は、時計やジュエリの分野で使用される機械部品を装飾するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計の文字盤やベゼルなどの機械部品の表面に浮き上がった装飾を作成するための方法は、従来技術において多数知られている。これらの知られている方法のうちのいくつかは、装飾されるべき機械部品とは別に装飾要素を製造すること、次いで、これらの装飾要素をそれらが意図されている機械部品に締結すること、から構成される。
【0003】
文字盤などの機械部品を装飾するための別の方法は、The Swatch Group Research and Development Ltdによって出願された欧州特許出願EP2370865A1から知られている。この装飾方法は、
・ 装飾されるべき機械部品を選ぶことと、
・ プレート・タイプのマスクを作ることであって、それの厚さが装飾要素の所望の厚さに少なくとも等しく、開口が機械加工され、それの輪郭が所望の装飾要素の形状に対応する、作ることと、
・ マスクの開口が装飾要素を受容することを目的とする機械部品の場所と一致するように、機械部品の装飾されるべき表面にマスクを位置決めすることと、
・ その厚さが装飾要素の所望の厚さに少なくとも対応するマスクは、装飾されるべき機械部品と共に、充填材料で充填される型を形成することと、
・ 装飾された機械部品の表面の装飾要素を露出させるためにマスクを除去することと、を含む。
【0004】
この装飾方法の1つの利点は、それの実装が比較的簡単なことにある。より具体的には、多数の装飾方法のケースでは、装飾要素が、装飾されるべき機械部品とは別に作成され、次いで、この機械部品に単に締結されるのに対して、マスクが使用されるケースでは、装飾要素が、同じ方法のステップで、直接作成されて、装飾されるべき機械部品に締結され、それは、時間を節約する。
【0005】
それにもかかわらず、装飾されるべき機械部品の表面に配置されたマスクを使用する装飾方法の1つの欠点が見られ得る事実とは、マスクが装飾されるべき機械部品の表面と密接に接触しないリスクが除外され得ないこと、しかも、様々な型を充填するとき、機械部品の表面で充填材料が少し漏れるリスクがあり、これらの機械部品の一部が廃棄されるのを必要とすることである。これは、特に、時計のための文字盤を装飾しようとするときに問題になり、その理由はそういった文字盤が高価な機械部品であるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、前述の問題並びに他の問題を、時計の文字盤やベゼルなどの機械部品を装飾するための方法を提案することによって克服することであり、この方法は、特に、装飾されるべき機械部品の表面に固定される装飾要素が、除去されなければならない汚れや、これらの機械部品のいくつかを廃棄することにまでもつながる汚れを有するのを防止する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため、本発明は、機械部品の少なくとも1つの表面を装飾するための方法に関し、次のステップ、即ち、
・ 少なくとも1つの装飾要素が決定された厚さ及び輪郭に従ってその上に作成されることが求められている(be sought to)、装飾されるべき機械部品を選ぶステップと、
・ 機械部品の装飾されるべき表面上に、作成されるべき装飾要素の厚さに少なくとも等しい厚さを有するマスキング層を構築するステップと、
・ 装飾要素が作成されるべきである機械部品の表面の場所と一致する少なくとも1つの開口をマスキング層に作るステップであって、開口が、作成されるべき装飾要素の輪郭と同じである輪郭を有し、装飾されるべき機械部品を備えた体積を画定する、ステップと、
・ 装飾要素がそれで作成されることが求められている充填材料を用いて、マスキング層と機械部品の装飾されるべき表面とによって区切られた体積を充填するステップと、
・ マスキング層を除去するステップと、を含む。
【0009】
これらの特徴のおかげで、本発明は、時計の文字盤又はベゼルなどの機械部品を装飾するための方法を提供し、マスキング層は、装飾されるべき機械部品の表面に直接形成される。マスキング層は、こうして、装飾されるべき機械部品の表面と密接に接触することが保証され、充填材が流れるどんなリスクも防止し、装飾要素は、マスキング層と装飾されるべき機械部品の表面との間に作成されるべきであり、それは、得られるべき高い精度で装飾要素が画定されるのを可能にする。特に、装飾要素の形状及び厚さは、細心に調整される。更に、構築されるべき対象の表面に直接犠牲的マスクを形成することは、装飾されるべき機械部品とは別にマスクを機械加工して次いでこのマスクを機械部品上に位置決めしてプレス加工するよりも、より簡単、高速、低コストである。同様に、キャビティが、装飾要素がそれで作成されることが求められている材料で充填されると、装飾要素の上面を仕上げ処理するための作業は、所定の位置に機械式に保持されねばならない装飾されるべき機械部品の表面に固定されたマスクの場合と比べて、マスキング層の存在下で実行することがより容易であると思われる。こうして作成された装飾要素は、装飾されるべき機械部品の表面に非常に良く付着すると同じく思われる。その上、この接着の強度は、キャビティが、装飾要素を受容しなければならない場所で、装飾されるべき機械部品の表面に機械加工されるときに、更に向上される。より具体的には、キャビティの存在のおかげで、装飾要素は、装飾されるべき機械部品の内部深くに係留され、この部品がこの機械部品から脱離するようになるリスクは、非常に低い。
【0010】
特定の実施形態によれば、本発明に係る機械部品を装飾するための方法は、次のステップを含むことを特徴とし、
・ 充填材料は、結晶性金属又はアモルファス金属であり、
・ アモルファス金属は、アモルファス白金合金、アモルファスパラジウム合金、又は、アモルファスジルコニウム合金であり、
・ マスキング層に作られた開口を通して、機械部品の装飾されるべき表面にキャビティをエッチングすること、
・ マスキング層の開口と、装飾されるべき機械部品のキャビティとは、レーザビームを使用して同時にエッチングされ、
・ 機械部品の装飾されるべき表面にエッチングされたキャビティの深さは、200μmに実質的に等しく、
・ 機械部品の装飾されるべき表面にエッチングされたキャビティは、充填材料を係留するための手段を含み、
・ キャビティは、機械部品の装飾されるべき表面に垂直な鉛直面に対して、機械部品の装飾されるべき上記表面から離れるにつれて、この鉛直面から次第にそれて行く少なくとも1つの壁によって区切られ、
・ 機械部品の装飾されるべき表面の反対側の後面を介してキャビティの中に開く少なくとも1つの円錐穴を穴あけすること、
・ マスキング層を堆積させる前に、機械部品の装飾されるべき表面に結合層を堆積させること、
・ 結合層は、金(Au)の層がその上に堆積されるクロム(Cr)の層によって形成され、
・ クロムの層及び金の層はそれぞれ、50nmに実質的に等しい厚さを有し、
・ マスキング層は、ガルバニック成長によって、機械部品の装飾されるべき表面に作られ、
・ マスキング層は、金属又はポリマであり、
・ マスキング層は、銀(Ag)又は銅(Cu)で作られ、
・ マスキング層の厚さは、400μmに少なくとも等しく、
・ マスキング層と機械部品の装飾されるべき表面とによって区切られた体積を充填する前に、機械部品の装飾されるべき表面に平行な平面状の表面を得るために、マスキング層を平らにすること、
・ 充填材料を用いて、マスキング層と機械部品及びその下のキャビティの装飾されるべき表面とによって区切られた体積を充填した後に、マスキング層及び充填材料の装飾されるべき表面を機械加工及び仕上げ処理すること、
・ 機械加工及び仕上げ処理の後に、マスキング層及び充填材料の残りの厚さは、約200μmに等しく、
・ 機械加工及び仕上げ処理の後に、マスキング層は、除去され、
・ マスキング層は、化学薬品浴でのエッチングによって除去され、
・ 充填材料は、艶出し又は研磨される。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明に係る方法の一実施形態例の次の詳細な説明を解釈するとき、より明瞭に現出し、上記の例は、例証の目的のためだけに提供され、添付の図面を参照して、本発明の範囲を限定することを意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の方法に従って装飾された時計の文字盤の上面図である。
【
図2】マスキング層が堆積されている装飾されるべき表面上の時計の文字盤の立面図である。
【
図3】時計の文字盤の装飾されるべき表面とマスキング層との間に結合層が挿入されている、
図2の時計の文字盤の立面図である。
【
図4】装飾要素が作成されるべきである場所で開口がマスキング層及び結合層に形成されている、
図1の線IV-IVによる時計の文字盤の立面及び断面図である。
【
図5】装飾要素の係留を改善するために時計の文字盤の装飾されるべき表面にキャビティがエッチングされた、
図4の円で囲んだ領域の拡大スケールの図である。
【
図6】装飾要素の係留を改善するためにキャビティが傾斜した内壁を有する、
図5のそれと同様の図である。
【
図7】時計の文字盤に穴あけされてキャビティの底部の中に開く円錐穴が装飾要素の係留を改善することを目的とする、
図5のそれと同様の図である。
【
図8】開口及びキャビティが充填材料で充填されていることが示されている、時計の文字盤の立面図である。
【
図9】装飾要素の上面に実行される仕上げ作業中にマスキング層及び装飾要素の厚さが半分に減らされているのが見られる時計の文字盤の立面図である。
【
図10】マスキング層及び接合層が除去されている時計の文字盤の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、装飾されるべき機械部品、特に、時計の文字盤(より一般的には、ジュエリに加えて、ベゼル、中間部品、更にはブレスレット・リンクなどの時計の外付け要素)の表面に装飾要素を形成することから構成される一般的な独創的思想から引き出された。この結果を達成する目的で、本発明は、犠牲的タイプのマスクの、即ち、機械部品を装飾するための作業の最後に除去されることが意図されるマスクの、機械部品の装飾されるべき表面上への直接の堆積を開示する。マスクが、装飾されるべき機械部品の表面に密着して堆積され、次いで、装飾要素が作成されるべきである材料で充填される開口をそれに創出するように構築されると、マスクの上部及び装飾要素によって形成される表面は、機械加工を受け、もしかするとドレッシングを受け、その後に、マスクは、化学薬品浴でのエッチングによって普通に除去される。
【0014】
本発明に従って、装飾されるべき機械部品は、最初に選ばれる。図に示された例では、この装飾されるべき機械部品は、時計の文字盤1である。言うまでもないが、この例は、例証の目的のためだけに提供され、決して本発明の範囲を限定するものではなく、装飾されるべき機械部品は、時計用の外付け部品(ベゼル、ブレスレット・リンク、中間部等々)、ブリッジ、プレート、振動ウェイト、又はジュエリ・アイテム(でさえも)などの任意のタイプにすることができる。装飾されることが求められているこの機械部品が受ける唯一の制約は、本発明の方法によって実施される温度範囲で変更されない機械的特性を有する材料で作られなければならない、ということである。換言すると、機械部品は、本発明に係る装飾作業中に、変形、軟化、又は、溶融されてはならない。
【0015】
本発明のとおり、時計の文字盤1は、少なくとも1つの装飾要素が嵌合されることが意図され、その寸法及び厚さは、必要性に依存する。例として、装飾されるべき機械部品が時計の文字盤1であるケースでは、装飾要素は、時間シンボルを形成するために使用される場合がある。
図1に示されたように、第1の寸法の4個の第1の装飾要素2aは、例えば、時計の文字盤1上に正午、3時、6時、及び、9時を表示するために使用される場合があり、他方、第2の寸法の8個の第2の装飾要素2bは、他の完全な時刻を表示し、時間の周期を完了するために使用される場合がある。
【0016】
時計の文字盤1が装備されると、犠牲的タイプのマスクを形成することを目的とするマスキング層6は、この時計の文字盤1の装飾されるべき表面4、通常は、この時計の文字盤1の上面、に堆積される(
図2参照)。用語「犠牲的」は、その目的を果たした後に除去されるマスキング層を指すと本明細書では理解される。このマスキング層6は、所望の高さに依存する厚さを有し、それによって、装飾要素2a、2bは、機械加工作業が実行されると、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4の上に最終的に突出する。例証の目的のためだけに、マスキング層6の厚さは、400μmであると決定される。このマスキング層6は、ガルバニック成長などの任意の適切な技術によって時計の文字盤1上に堆積される。
【0017】
好適な例を挙げるためだけに述べると、マスキング層6は、ポリマ層又は金属層によって形成される場合がある。マスキング層6が金属であるケースでは、それは、特に、銀、銅で、又は、ニッケルでも、作られる場合がある。留意されるべきは、本発明の1つの好適な実施形態によれば、マスキング層6を堆積させる前に、結合層8が、マスキング層の接着を最適化する目的で、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4に堆積される、ということである(
図3参照)。優先的に、この結合層8は、金の層12がその上に堆積されるクロムの層10によって形成される。一連のテストは、クロム10及び金12の各層のための約50nmの厚さが、時計の文字盤1上のマスキング層6の接着強度に関して、優れた結果を提供する、ということを決定した。また結合層8は、優先的には、ガルバニック成長によって堆積される。
【0018】
結合層8及びマスキング層6が、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4上に次から次に堆積されると、少なくとも1つの開口は、マスキング層6及び結合層8において、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4の位置と一致する場所に、作られ、装飾要素は、作成されるべきであり(
図4参照)、その輪郭及び高さは、所望の装飾要素の形状と寸法とに対応する。本明細書で説明されるケースでは、12個のそういった開口が存在し、4個の開口14aは、時計の文字盤1上に正午、3時、6時、及び、9時を表示するために使用される最初の4個の装飾要素2aに対応し、8個の開口14bは、時計の文字盤1上に他の完全な時刻を表示し時間の周期を完了するために使用される装飾要素2bに対応する。12個の開口14a、14bは、同じ形状、例えば、正方形又は矩形を有すると考えられる場合があるが、4個の開口14aの寸法は、8個の開口14bのそれよりも大きいと考えられる場合がある。これらの12個の開口14a、14bは、レーザビームなどの任意の適切な手段によって、マスキング層6及び結合層8に切り込まれる。
【0019】
本発明の1つの好適な、しかしながら、非限定的な実施形態によれば、キャビティ16は、マスキング層6及び結合層8に形成された開口14a、14bを介して、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4にエッチングされる(
図5参照)。これらのキャビティ16は、好ましくは、開口14a、14bと同時に機械加工されており、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4上の装飾要素2a、2bの不動化を改善することを目的とする。例証の目的のためだけに、これらのキャビティ16の深さは、約200μmに等しくなるように選択される。
【0020】
装飾要素2a、2bの不動化を更に改善するために、キャビティ16は、係留手段が設けられる。本発明の第1の実施形態(
図6参照)によれば、これらの係留手段は、キャビティ16の壁20の少なくとも1つの面18によって形成され、面18は、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4に垂直な鉛直面Pに対して、時計の文字盤1の装飾されるべき上記表面4から離れるにつれて、この鉛直面Pから次第にそれて行く。この傾斜面18の存在のおかげで、理解されることは、キャビティ16が充填材料で充填されると、結果的に得られる装飾要素2a、2bがもはやキャビティ16から除去できず、こうして時計の文字盤1に永続的に係留される、ということである。
【0021】
本発明の別の実施形態は、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4の装飾要素2a、2bの固定を改善することも目的としており、キャビティ16の底部24に少なくとも1つの円錐穴22を穴あけすることを提供し、これらの円錐穴22は、装飾されるべき表面4の反対側の時計の文字盤1の後面26に向かってフレア化する(
図7参照)。同じくこのケースで理解されることは、キャビティ16及び円錐穴22が充填材料で充填されると、装飾要素2a、2bがもはや除去できないことである。
【0022】
開口14a、14bがカットされ、キャビティ16がもしかしてエッチングされると、それらは、充填材料で充填される(
図8)。ケースにもよるが、充填材料は、結晶性金属又はアモルファス金属である場合がある。アモルファス金属タイプの充填材のケースでは、アモルファス白金合金、アモルファスパラジウム合金、アモルファスジルコニウム合金が用いられることが好ましい。
【0023】
本発明の第1の実施形態によれば、開口14a、14b及びキャビティ16の充填は、熱間加工によって行われ、それは、開口14a、14b及びキャビティ16が完全に充填されるのを可能にするために、並びに、装飾要素2a、2bが均一に正確に製造されることを可能にするために、使用される充填材料の粘度を調整することから構成される技術である。
【0024】
熱間加工による装飾要素2a、2bの作成は、金属又は金属合金、貴金属、そうでなければ、好ましくは、アモルファスにされたものなどの材料の使用を必要とする。より具体的には、その構造がアモルファスである金属又は金属合金は、それの冷却及び凝固中に、結晶構造を有する金属よりも収縮現象が少なくなりがちなことが知られている。こうして理解されることは、本発明の目的のために、アモルファス構造を有する材料の使用が特に興味深いことである。この目的のために、装飾要素2a、2bを作成するために選択された材料は、それの溶融温度を超える温度で液体状態に導かれ、次いで、原子が結晶構造に再組織化されるのを防止するために非常に急速に冷却される。
【0025】
アモルファス材料の製造中に、必要に応じて優先的に形状付けされる。本明細書で説明される例では、装飾要素2a、2bは、時間シンボルを形成することを目的とするから、これらの装飾要素2a、2bは、多くのケースにおいて、時計の文字盤1に環状の様式で配置される。こうして有利になり得ることは、アモルファス材料に、充填されるべき開口14a、14bの寸法に適する幅及び厚さを備えた環状の形状を与えることである。
【0026】
マスキング層6で覆われた時計の文字盤1は、それに続いて、熱間プレス内に配置され、アモルファス材料のリングは、充填されるべき開口14a、14bに沿って、時計の文字盤1の上に配置される。組立体は、次いで、アセンブリは、次に、アモルファス材料のガラス転移温度Tgと結晶化温度Txとの間の範囲に存する温度まで加熱される。この温度間隔では、アモルファス材料の粘度は、それのアモルファス構造を失うことなく、実質的に増加する。アモルファス材料のリングは、こうして、形状付けすることがより容易になり、従って、開口14a、14bに押し付けられ、それの幾何的構成を採る場合がある。開口14a、14bが充填されると、アモルファス材料は、それのアモルファス状態を維持するのに十分な速さで冷却される。
【0027】
本発明の第2の実施形態によれば、マスキング層6に作られた開口14a、14bは、電気めっきによって充填される。この技術は、結晶性金属で作られた装飾要素2a、2bが作成されることが求められている場合に使用される。この目的のために、関連性のある金属イオンと塩類が分散されている浴が使用される。装飾されるべき時計の文字盤1は、電気伝導性を有しており、電極に接続され、次いで、浴に浸漬される。補助電極を使用して、電流は、装飾要素2a、2bを形成する目的で、金属イオンが時計の文字盤1の伝導性部分に移動するという効果の下で浴を通過する。
【0028】
本発明の第3の実施形態によれば、装飾要素2a、2bは、金属を注入することによって作られる。マスキング層6でカバーされた時計の文字盤1は、装飾要素2a、2bを創出する目的で、キャビティ16a、16bを液体金属で満たすことのできる注入機械に配置される。優先的なやり方で、使用される金属は、それのガラス転移温度Tgよりも少なくとも高い温度に導かれ、また、それの原子が結晶構造に再組織化されるのを防止するのに十分なほど急速に冷却される。
【0029】
留意されるべきは、マスキング層6と時計の文字盤1の装飾されるべき表面4とによって区切られた体積を充填する前に、マスキング層6は、時計の文字盤1の装飾されるべき表面4に平行な平面状の表面を得るために、平らにされる場合がある。
【0030】
既に上で規定されたように、マスキング層6の厚さは、例えば、400μmであると決定される場合がある。本発明のこの段階では、装飾要素2a、2bの厚さは、こうして約400μmに等しい。装飾要素2a、2bの厚さが最終的に装飾されるべき表面4上200μmであることが望ましい場合、それが意味することは、約200μmの厚さの余分な充填する材料が、装飾要素2a、2bを機械加工して、特に、それを艶出し又は研磨することによって、それの表面仕上げを完全にする目的で提供されることである(
図9参照)。
【0031】
装飾要素2a、2bの仕上げ作業が完了すると、マスキング層6は、典型的には、化学薬品浴でのエッチングによって除去され、装飾要素2a、2bは、完全に露出する(
図10参照)。
【0032】
言うまでもないが、本発明は、上で説明された実施形態に限定されず、しかも、様々の単純な代替及び変更は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲を離れることなく、当業者によって考慮される場合がある。
【符号の説明】
【0033】
1 時計の文字盤
2a 装飾要素
2b 装飾要素
4 装飾されるべき表面
6 マスキング層
8 結合層
10 クロムの層
12 金の層
14a 開口
14b 開口
16 キャビティ
18 面
20 壁
22 円錐穴
24 底部
26 後面