(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】全自動ガット張りシステム
(51)【国際特許分類】
A63B 51/14 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
A63B51/14
(21)【出願番号】P 2020116551
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2020-07-06
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】520247523
【氏名又は名称】林 奐祥
【氏名又は名称原語表記】LIN,HUAN-SIANG
【住所又は居所原語表記】128F., Gaotie 5th Rd., Zhubei City, Hsinchu County 302, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林 奐祥
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/109713(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0175994(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332301(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110917586(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110935149(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第1980299(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第107158670(CN,A)
【文献】国際公開第2019/039456(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0026508(KR,A)
【文献】sinmarimo,テニス ストリングの張り方,You Tube [online] [video],2010年10月06日,https://www.youtube.com/watch?v=UORysksCwqA,主に0:05~0:25を参照。,[検索日 2018年9月11日]
【文献】茶トラ猫,テニスラケットの全自動ガット張り機は存在するのか”,茶トラ猫のエンジニア 日記,2020年01月30日,インターネット<URL:https://itneko.com/tennis-gut-machine/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 51/00- 51/16
A63B 102/02-102/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる2つの角度から第1所定位置に位置するラケット上のガット穴を撮像する2つのレンズモジュールであって、前記これら角度に基づき三角測量法により前記ガット穴の第1相対座標を決定するレンズモジュールと、
切断を行うための機械アームと、
複数のプログラム、前記第1所定位置、初期位置、第2所定位置が記憶されている制御ユニットと、
ガットが巻き付けられ、前記ガットの第1端を前記第2所定位置に供給するガット供給ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、
前記機械アームを制御して前記初期位置から前記ラケットを保持するとともに、前記ラケットを移動して前記第1所定位置に配置することと、
前記プログラムのうちのガット先端認識プログラムを実行して、前記機械アームを第2所定位置に移動するように制御して前記ガットの前記第1端を挟持し、前記ガットの前記第1端が所定長さまで延伸した後、前記機械アームにより切断を行うことと、
前記レンズモジュールは、前記第1端を撮像して前記第1端の第2相対座標を算出することと、前記第1相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記ガットの前記第1端を挟持して前記ガット穴に通すことと
を行うように、複数のプログラムを実行し、
前記第1相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記ガットの前記第1端を挟持して前記ガット穴に通すことは、前記機械アームを制御して前記ガットの前記第1端を挟持して前記第1端を前記第2相対座標から前記第1相対座標に移動し、前記プログラムのうちの縦向きのガット張りの工程を含むことを含む、ことを特徴とする全自動ガット張りシステム。
【請求項2】
前記機械アームを制御して前記ラケットを保持したのち、前記機械アームが前記ラケットを前記レンズモジュールの前方まで移動して、これらの前記レンズモジュールにより前記ラケットの画像を撮像するとともに、前記ラケットの画像を前記制御ユニットに予め記憶された異常ラケットデータベースと比較を行い、前記制御ユニットが異常を判断すると、前記機械アームが前記ラケットを前記初期位置まで後退させるか又は前記ラケットを第2所定位置まで移動させるように、前記制御ユニットは前記プログラムを実行することを特徴とする請求項1に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項3】
前記機械アームは、前記ガット穴の前記第1相対座標に基づき前記ラケットのシャフト又はグリップを保持するように、前記制御ユニットは前記プログラムを実行することを特徴とする請求項2に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項4】
切断後の前記ガットの第2端を第3所定位置に固定するガット固定ユニットと、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項5】
前記機械アームは、前記第2所定位置で前記第1端を挟持した後、前記機械アームが前記第1端を伸ばして前記所定長さまで延伸した後、前記機械アームが前記所定長さの前記ガットを得るように、前記制御ユニットは前記プログラムを実行することを特徴とする請求項4に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項6】
前記レンズモジュールは前記第1端を撮像して前記第1端の第2相対座標を算出することは、前記所定長さに基づき前記第2端の位置を算出することを含む、ことを特徴とする請求項5に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項7】
前記ガットの前記第2端を前記第3所定位置で固定したとき、前記制御ユニットは、前記第2相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記第1端を挟持し、且つ前記制御ユニットは、前記第1相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記第1端を前記ガット穴に通すように、前記制御ユニットは前記プログラムを実行することを特徴とする請求項6に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項8】
前記ガットのうちの一端を前記第3所定位置に固定したとき、前記機械アームは他端で前記ガットを引っ張り所定のポンド数のテンションを生成するように、前記制御ユニットは前記プログラムを実行することを特徴とする請求項7に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、前記これらレンズモジュールに基づき前記第1相対座標を(x0,y0,z0)及び前記第2相対座標を(x1,y1,z1)と算出し、
前記第1相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記ガットの前記第1端を挟持して前記ガット穴に通すことは、前記機械アームは前記第1端を前記第2相対座標(x1,y1,z1)から前記第1相対座標(x0,y0,z0)に移動した後、前記機械アームは、前記第1端をZ軸方向に沿って推進して前記ガット穴を通して (x0,y0,z2)に移動することを含み、
z2はZ軸方向の平行移動であることを特徴とする請求項7に記載の全自動ガット張りシステム。
【請求項10】
前記機械アームを制御して最後又は最初のガット穴付近でノットを結び、
前記機械アームは前記ガットの前記
第1端を挟持して回転し、前記ガットに少なくとも1つの
ガット輪を作り、次に他方の前記機械アームが前記
第1端を挟持して前記ガット輪に通すことを行うように、前記制御ユニットは前記プログラムのうちのノット結びプログラムを実行することを特徴とする請求項1記載の全自動ガット張りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラケットのガット張りシステムに関し、特にガット穴座標を予め位置決めするとともに、機械アームによりガット張り及びノット結びの操作を完成させる全自動ガット張りシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の各種ラケットのガット張りはいずれも手動で行っていた。市場において、ガット張り装置はストリンガー(ガットを張る人)のガット張り補助を行う装置に過ぎず、全自動ガット張りの能力はない。そして、ラケットの安定性はストリンガーの技により決定され、且つラケット1本に少なくとも30分以上の時間を費やしてガット張りの作業が完成できる。故に、ラケットの生産又はガット交換において、生産量及び交換速度を向上させることはできなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一実施例の目的は、ラケットの異常の有無を検出可能な全自動ガット張りシステムを提供することである。
【0004】
本発明の一実施例の目的は、ガット穴と機械アームの相対座標を検出可能な全自動ガット張りシステムを提供することである。
【0005】
本発明の一実施例の目的は機械アームによりガットの切断が可能な全自動ガット張りシステムを提供することである。
【0006】
本発明の一実施例の目的は、機械アームにより引っ張り、ガットに必要なテンションをかけることが可能な全自動ガット張りシステムを提供することである。
【0007】
本発明の一実施例の目的は、機械アームによりガット張り又はノット結びが可能な全自動ガット張りシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が提供する全自動ガット張りシステムは、2つのレンズモジュール及び制御ユニットを含み、前記2つのレンズモジュールはそれぞれ異なる2つの角度から第1所定位置に位置するラケット上のガット穴を撮影し、これらレンズモジュールはこれら角度に基づき三角測量法により前記ガット穴の第1相対座標を決定し、前記制御ユニットは、機械アームを制御して初期位置から前記ラケットを保持し、前記ラケットを移動して前記第1所定位置に配置し、前記制御ユニットは、前記機械アームを制御して第2所定位置でガットの第1端を挟持し、前記ガットの前記第1端が所定長さまで延伸した後、前記機械アームは切断を行う。そのうち、前記制御ユニットは前記第1相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記ガットの前記第1端又は第2端を挟み取り前記ガット穴に通し、又は前記制御ユニットは前記第1相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記ガットの前記第1端又は前記第2端を挟み取り前記ガット穴においてノット結びを行う。
【0009】
本発明の実施例において、制御ユニットは前記機械アームが前記ラケットを保持したのち、前記機械アームが前記ラケットを前記レンズモジュールの前方まで移動して、前記レンズモジュールにより前記ラケットの画像を撮像し、前記制御ユニットに予め記憶された異常ラケットデータベースと比較を行い、前記制御ユニットは異常を判断して、前記機械アームが前記ラケットを前記初期位置まで戻す又は前記ラケットを第2所定位置まで移動させる。
【0010】
本発明の実施例において、全自動ガット張りシステムは、ガット供給ユニット及びガット固定ユニットを有し、前記ガット供給ユニットは、ガットが巻き付いており、前記ガットの前記第1端を前記第2所定位置に供給し、前記ガット固定ユニットは切断後の前記ガットの第2端を第3所定位置に固定する。
【0011】
本発明の実施例において、前記ガットの前記第2端が前記第3所定位置で固定されたとき、前記制御ユニットは前記第2相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記第1端を挟み取り、且つ前記制御ユニットは前記第1相対座標に基づき前記機械アームを制御して前記第1端をガット穴に通す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の全自動ガット張りシステムの実施例の概略図である。
【
図2】特定位置に固定されたレンズモジュールである。
【
図3】機械アームがラケットを保持した概略図である。
【
図4】ラケットをラケットホルダーに配置した概略図である。
【
図5】機械アームが第2所定位置でガットの第1端を挟持した概略図である。
【
図6】ガットがガット固定ユニットに固定された概略図である。
【
図7】レンズモジュールがラケット相対座標を検出し位置決めする概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明にかかる全自動ガット張りシステム100の実施例を示す概略図である。全自動ガット張りシステム100は、レンズモジュール10aと10b及び制御ユニット11、機械アーム12を含む。
【0014】
操作フロー1:制御ユニットの初期化
【0015】
電源を起動し、制御ユニット内に既にインストールされているプログラムを起動し画像撮像装置を起動し、ポンド数(テンション)を設定し、張り上げるガットの縦、横の穴数を設定し、ガット張りするラケットラックの間隔時間を検出するように設定する。制御ユニット内にインストールされたプログラムは、ラケット精度検査プログラム、ガット先端座標検出プログラム、ガット先端挟持プログラム、ガット穴座標検出プログラム、縦糸張りプログラム、横糸張りプログラム、ノット結びプログラム(ガット挟持プログラムを含む)、ガット切断プログラム、ガット張り工程監視プログラム、異常警報プログラム、異常処理プログラム及びプログラム実行時に必要な、例えばラケットラック空状態、各種以上なラケットの状態のデータを保存するデータベースを含む。
【0016】
この他、ガット張り工程監視プログラムはレンズモジュール10aと10bを運用してガット先端脱落、異物侵入現場などの事故による機械アームの誤作動を全工程監視し、事故があった場合、現状を戻し、再度フローを実行する。又は不可抗力の原因、例えば機器の故障、ラケットの割れが発生した場合、警報信号(アラーム、レッドライトの点滅)を発出するとともに、ガット張り作業を停止する。事故、異常現象状態は制御ユニット11のデータベースに記憶される。
【0017】
操作フロー2:ガット張りするラケットの有無を検出する。
【0018】
制御ユニット11はレンズモジュール10aと10bを運用してラケットラックにガット張りするラケットの有無を検出し、レンズモジュール10aと10bは特定位置、例えば
図2に示されるラケットラックWに固定される。
図2はレンズモジュールが特定位置に固定されていることを示す。別の実施例において、レンズモジュール10aと10bは機械アーム12に固定され、機械アーム12に伴い移動する。レンズモジュール10aと10bの検出方式は、画像撮像装置により所定時間間隔ごとに予め制御ユニット11内に記憶された空のラケットラックの画像又はラケットの特徴画像を比較し、制御ユニット11によりガット張りするラケットがラケットラックWに配置されていると判断することができる。実施例において、全自動ガット張りシステム100はラケットラックWにセンサ又はインジケータランプが取り付けられ、制御ユニット11はセンサ又はインジケータランプに基づきガットを張るラケットの情報を得る。
【0019】
操作フロー3:機械アームがラケットを保持する。
【0020】
図3は、機械アームがラケットを保持する概略図である。制御ユニット11はガット張りするラケットが初期位置に配置されたことを判断する。実施例において、初期位置はラケットラックWに設定し、制御ユニット11は機械アーム12を起動してラケットラック位置でラケットを保持し、機械アーム12はラケットのシャフト20又はグリップ21を保持する。実施例において、同時に2本の機械アーム12によりラケットのシャフト20及びグリップ21を同時に保持することができる。
【0021】
機械アーム12はラケットを保持し、後続の検査フローのためにレンズモジュール10a又は10bの前方に配置する。実施例において、ラケットラック、レンズモジュール10aと10bはいずれも指定の位置に固定されるために、レンズモジュール10aと10bの有無にかかわらず、機械アーム12はこのフローを正確に行うことができる。
【0022】
操作フロー4:ラケット検査
【0023】
このフローの目的は、ラケットの完全性を判断するためであり、ガット張り操作が行えるか否かを判断し、ラケットの精度及び異常をコンピュータのデータベースに予め記憶され、基本的にラケット表面に鋭利な線条を有したり、又はガット穴が完全な円形でなかったり、又は歪曲な現象を有することなどいずれも異常に属する。制御ユニット11が機械アーム12を制御してラケットを画像撮像装置前方に配置し、機械アーム12が180度、360度及びいかなる角度で回転でき、レンズモジュール10a又は10bにより制御ユニット11内に記憶されたラケットデータベースと比較してラケット上のガットの有無、即ち異常状況の有無を判断し、もしラケット上にガットが残っている又は異常ありと判定された場合、ラケットをラケットラックに戻す。
【0024】
実施例において、ラケットの異常は更に、フレームの不均衡、ひび、割れ、歪みなどの異常を含み、ラケットの外観の検査には、レンズモジュール10a又は10bにより水平か否か検出することができ、例えば、ラケットを水平に配置したとき、レンズモジュール10aか10bはX軸に沿って水平に移動し、ラケットに異常がない場合、ラケットのY軸値は固定値を維持する。別の実施例において、レンズモジュール10a又は10bがラケットに亀裂の疑いを検出した場合、直接後退させるか又は機械アーム12によりラケットフレームに軽く接触して確定する(機械アームがプローブに類似する)。ポジティブチェック法により、正常ラケットの特徴を入力し、正常の特徴に符合しないものはいずれも異常と分類する。
【0025】
操作フロー5:ラケットの定位置への配置。
【0026】
図4は、ラケットホルダーへのラケットの配置の概略図である。機械アーム12は検査済みのラケットを第1所定位置に配置する。本実施例において、第1所定位置をラケットホルダーTに設定する。ラケットは異なるメーカー、異なる製品番号のために、フレームにいくらか微小な差異を有する。ラケットホルダーTはこの差異の範囲を予め残す必要があり、フレームをロックするために自動的に位置の微調整を行う。自動微調整は固定クランプを全てのメーカーのモデル番号に符合する最大範囲まで予め開いておき、前記モデル番号に符合するサイズまで縮小することができる。他に、ラケットの状況に応じてガット穴に保護緩衝パットを設けることができる。
【0027】
操作フロー6:ガットの準備。
【0028】
図5は、機械アームが第2所定位置でガットの第1端Pを挟持することを示す。全自動ガット張りシステム100は、ガット供給ユニット13とガット固定ユニット14とを含み、ガット供給ユニット13にはガットが巻き付けられ、ガットの第1端Pを第2所定位置に供給し、ガット固定ユニット14は、切断されたガットの第2端Qを第3所定位置で固定する。
【0029】
制御ユニット11は、ガット先端認識プログラムを起動し、制御ユニット11は、機械アーム12を第2所定位置でガットの第1端Pを挟持するように制御する。第2所定位置は本実施例においてガット供給ユニット13に設定する。即ち、機械アーム12がガット供給ユニット13でガットの先端を挟持し、ガットの第1端Pが所定長さまで延伸した後、機械アーム12は所定長さのガットを得るために切断を行う。
【0030】
ここで注意すべきことは、
図6は、ガット固定ユニットにおいてガットを固定する概略図を示し、機械アーム12はガット供給ユニットでガット先端を挟持し、ガットを所定長さまで伸ばした後切断し、切断したガットの少なくとも一端をガット固定ユニット14で固定する。実施例において機械アーム12は、ガット供給ユニットにおいてガット先端(又は第1端P)を挟持し、ガットを所定長さまで伸ばした後、切断し、切断したガットの第1端Pと第2端Qをガット固定ユニット14により挟持し固定される。
【0031】
現時点のガット張りの方法は1本張りと2本張りの2種類の方法があり、1本張りは、10メートルの長さのガットが必要である。2本張りは、縦糸が一般的に5,5メートルの長さのガットを切断する必要があり、縦糸の必要な切断長さは、縦糸が必要な全長の約8.5倍であり、横糸は一般的に4.5メートルの長さのガットを切断する必要があり、横糸が必要な切断長さは横糸が必要な全長の約6.5倍である。実施例において、レンズモジュール10a又は10bが第1端を撮像するとともに、第1端の第2相対座標を算出する。そして、所定長さに基づき前記第2端の位置を算出する。又は、検出器(メジャー)を利用して、機械アーム12は第1端をガット固定ユニット14により挟持固定し、ガットを所定長さまで伸ばした時、レンズモジュール10a又は10bは所定長さが正確であるか確認する補助を行う。更に、機械アーム12は切断を行い、最後に第2端の先端をもう一つのガット固定ユニット14により挟持する。
【0032】
注意すべきことは、上述の縦糸と横糸は、本実施例において縦糸がラケットグリップ21に平行であり、横糸がラケットグリップ21に垂直であることである。
【0033】
ガット張り方法は、本全自動ガット張りシステム100により、将来更に複数の選択を有することができ、3本張り法、4本張り法など複数本のガット張り方法のいずれも実施可能である。ガット張り過程において、過度に長いガットが散らばるのを防ぐために、ガット収集器を配置して、ガットの安全を保護し、ガットの品質を維持すると同時に、ガットがV字型に折れ曲ってガット品質に影響するのを防止する。この他、例えば、2つ以上の機械アーム12の数量のように、機械アーム12の数量を増加してもよく、機械アーム12の数量を増加することによりガット張り作業の進行を加速できる。
【0034】
操作フロー7:ガット穴位置の検出。
【0035】
図7は、レンズモジュールがラケット相対座標を検出する概略図であり、二つの、レンズモジュール10aと10bはそれぞれ異なる二つの角度から第1所定位置に位置するラケット上のガット穴Oを撮像する。レンズモジュール10aと10bはそれぞれこの二つの角度に基づき三角測量法によりガット穴Oの第1相対座標を決定する。
【0036】
例えば、レンズモジュール10a座標が原点(0,0,0)の場合、レンズモジュール10bの距離を原点からX軸方向に6単位、即ちレンズ10bの座標を(6,0,0)に設定すると、レンズモジュール10aによりガット穴Oの投影平面座標をU0 = 2として得られ、レンズモジュール10bによりガット穴Oの投影平面座標をU1 = 4として得られる。レンズモジュール10aとレンズモジュール10bの間の距離がb=6の場合、レンズモジュール10aと10bが平面に投影する焦点距離はf = 2であるので、2つの投影平面の距離は、d = U1-U0 = 2である。即ちガット穴Oのレンズモジュール10aに対する第1相対座標は以下のとおりである。
【0037】
Z (depth) = f×b/(b-d) = 2×6/4 =3
【0038】
X = U0×Z/f = 2×3/2 = 3
【0039】
Y = y0×Z/f = 0×3/2 =0。この例では高度がいずれも同じなので、0である。
【0040】
即ち、ガット穴Oの第1相対座標は(3,0,3)である。
【0041】
このフローの目的はガット穴XYZ座標の位置を得るためであり、複数の方法で行うことができ、レンズモジュール、赤外線装置、音波検出装置、接触プローブのいずれでもガット穴のXYZ立体座標位置が得られる。
【0042】
実施例において、構造化光(Structured Light)アクティブ型深度センサ技術により、物体に特定のパターン(Pattern)を照射し、カメラモジュールが物体表面上のパターンのライトコーディング(Light Coding)を受信し、さらに、元の投影パターンとの相違を比較するとともに、三角原理により物体の3D座標を算出する。ガット張りに応用する際に、ラケットフレームに特定のパターン(Pattern)を照射し、画像認識ソフトにより丸穴を確認し、レンズモジュールがガット穴の特定パターンのライトコーディングを受信して、三角原理によりガット穴のXYZの3D座標を算出する。
【0043】
実施例において、TOF(Time of Flight;TOFと称す)アクティブ型深度センサ技術は、赤外線の折り返し時間によりガット穴との間の距離を計算し、3D被写界深度図が得られる。基本部品は、IRエミッタ、IR受信機、RGBカメラモジュールと感光素子又は感応アレイを含む。ガット張りの応用時にTOFを応用して3D立体カメラがラケットフレームに焦点を合わせ、画像認識ソフトにより円孔を確認し、TOFを運用して3D立体カメラがガット穴中心に焦点を合わせ、レンズモジュールが配置ソフトにより円孔中心XYZ座標値を表示する。
【0044】
レンズモジュール10a又は10bがラケット前方から画像を撮像し、撮像した画像を制御ユニット11に送信し、制御ユニット11は受信した画像に対し画像分析を行い、ラケットフレームのガット穴位置情報を獲得する。ガット穴の判定は、制御ユニット内の予め記憶されたガット穴モデルデータベースにより画像撮像装置が戻した画像と比較する、又はコンピュータ円形認識ソフトプログラムにより行う。また、予め記憶されたラケット円孔情報、例えば、円孔の可能性がある直径、半径、サイズ範囲と比較することもできる。また、市販の既存の画像認識ソフト、例えば、Talkwalker、Proprietary image recognition technology、Google ReverseImage Search、 Google API Cloud Vision、Amazon Rekognition、Clarifai、 LogoGrab、IBM Image Detection、Imagga'Cloudsight、 EyeEm等の円孔認識ソフトを運用してラケット上の円孔を判定することができる。ガット穴確定後、制御ユニット11はレンズモジュールが撮像した二つの画像を3D画像に構成した後、精確なX、Y、Zのガット穴の中心立体座標が得られる。
【0045】
レンズモジュールがガット穴を認識してXYZ座標が得ることは、一つ、二つ、複数のカメラ又は3Dカメラ、TOFカメラにより完成することができ、異なるセンサを組み合わせて達成してもよく、例えば、カメラとレーザの組み合わせ、カメラと音波の組み合わせ、カメラとプローブの組み合わせ、または複数のセンサの組み合わせであってもよい。
【0046】
操作フロー8:ガット張り作業
【0047】
図8Aと
図8Bはそれぞれガット張り作業の前後の概略図である。制御ユニット11は機械アーム12をガット固定ユニット14の位置に移動して制御する。即ち、第2所定位置でガットの第1端を挟持し、機械アーム12が第2所定位置で第1端を挟持したとき、制御ユニット11はレンズモジュール10a又は10bに基づき第1相対座標を(x0,y0,z0)及び前記第2相対座標を(x1,y1,z1)と算出した場合、機械アーム12は第1端を(x1,y1,z1)から(x0,y0,z2)に移動して、縦糸のガット張り工程を行う。そのうち、z2はZ軸方向の平行移動である。つまり、カメラがガットの先端座標及びガット穴
の第1相対座標を得たとき、ガット先端を
ガット先端座標(x1,y1,z1)位置から
ガット穴の第1相対座標(x0,y0,z0)位置まで移動した後、機械アーム12は、ガット先端を、Z軸方向に沿ってラケットフレームのガット穴を通すように推進する。
【0048】
同様に、ガットの第2端(即ち他方の先端)もまた前述のとおり同時に操作することもでき、機械アーム12はラケットフレームの直立した中間から開始し、テンションのバランスを考慮して順に両辺に向けてガットを延伸させて縦向きのガット張りの工程を行う。ガット張りの工程において、ガットの両端が機械アーム12にない時、ガットの両端はガット固定ユニット14上に一律に配置される。
【0049】
機械アーム12は初期設定パラメータ中のテンションポンド数、例えば26ポンドに基づいてもよく、直接機械アーム12が必要なポンド数までガットを引っ張る。別の実施例において、ガットのテンション張り上げ装置を運用して必要なポンド数を得る。機械アーム12又はガットテンション張り上げ装置がガットを定位まで引っ張った後、ガット固定ユニット14はテンション強度に符合したガットを自動的に固定する。実施例において、ラケットホルダーTは簡易型機械アームに対応し、簡易型機械アームはどの方向に移動してガットを挟持することができ、機械アーム12が次のガット穴にガットを通すとともに、順に縦向きのガット張りを完成することができる。
【0050】
操作フロー9:縦糸張り上げ完成後のノット結び
【0051】
図9A及び
図9Bは、本発明のノット結びの概略図である。縦向きガット張り完成後、制御ユニット11は機械アーム12を制御してノット結び及びガット切断の工程を行う。ノット結びは制御ユニット11により機械アーム12を制御して最終又は最初のガット穴付近でノットを結ぶ。1本の機械アーム12はガットの先端付近領域を挟持し回転してそのガットに少なくとも1つのガットの輪Lを作り、次に他方の機械アーム12が先端を挟持してガット輪Lに通し、最後に機械アーム12が余分なガットを切断してノットが完成する。そのうち、線Kはラケットフレームの内壁を示す。
【0052】
操作フロー10:横糸張り作業及び張り上げ後のノット結び、切断。
【0053】
横糸ガット張りはラッケト中間領域のガット穴からガット張りを始める必要はなく、つまりラケットの上部領域のガット穴、又はラケットの下部領域のガット穴からガット張りを開始してもよい。横糸が縦糸を通るときレンズモジュール10a又は10bが横糸と縦糸が誤って通っていないか確認する必要がある。即ち先ず縦糸上方から通し、次の縦糸の時、横糸は縦糸の下方を通すというように、フレームのガット穴までこれを繰り返す。操作方法は縦糸ガット張り及び張り上げ後のノット結び、切断と同じであるので、ここでは詳細に述べない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上より、本発明は全自動ガット張りシステムを利用して全工程を全自動で行い、手動によるガット張りを必要とせず、且つラケットの安定性及び一致性を向上することができ、ラケットの生産量も向上することができる。この他、ラケットの使用過程において、ガットが切れることがありので、ラケットのガット交換もまた巨大な商機である。本発明は新しいラケットの工場でのガット張り又は古いラケットのガット交換のいずれにおいても使用可能である。
【符号の説明】
【0055】
100 全自動ガット張りシステム
10a、10b レンズモジュール
11 制御ユニット
12 機械アーム
W ラケットラック
20 シャフト
21 グリップ
T ラケットホルダー
13 ガット供給ユニット
14 ガット固定ユニット
0 ガット穴
L ガット輪
P 第1端
Q 第2端