(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】気体透過性細胞培養作業のための閉鎖系装置および方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20220404BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220404BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220404BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20220404BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/10
C12N5/0783
C12N1/02
C12N1/00 B
(21)【出願番号】P 2020177194
(22)【出願日】2020-10-22
(62)【分割の表示】P 2019132568の分割
【原出願日】2014-06-24
【審査請求日】2020-11-19
(32)【優先日】2013-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506118799
【氏名又は名称】ウィルソン ウォルフ マニュファクチャリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】WILSON WOLF MANUFACTURING CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェルチ,ダニエル ピー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,ジョン アール
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-195336(JP,A)
【文献】特開平08-172956(JP,A)
【文献】特開2010-268813(JP,A)
【文献】特開2004-089138(JP,A)
【文献】特開2008-092935(JP,A)
【文献】特開2008-079554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静置細胞培養用の気体透過性の細胞培養・細胞回収装置であって、
培養面と培養面に対向する上端とによって少なくとも一部において区切られた内容物と、通気口と、培地除去開口部を含む培地除去導管と、細胞除去開口部を含む細胞除去導管とを備え、
培養面が液体不透過性かつ気体透過性の材料からなり、少なくともその気体透過性材料の一部が周囲気体と接触しており、気体透過性材料がその下面から出ている嵌合機構を含み、
気体透過性材料は、気体透過性材料の下面から出ている嵌合機構と噛み合うことのできる支持部に対して嵌合機構で物理的に取り付けられており、
装置が静置細胞培養の向きに置かれたときに、培養面は水平位置にあり、かつ、対向する上端の下に少なくとも一部において位置しており、培養面から細胞除去開口部までの距離が、培養面から培地除去開口部までの距離よりも小さく、上端から培養面までの最大距離が内容物の最大培地高さであることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、最大培地高さが2.0cmを超えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、装置が静置細胞培養の位置にあるときに、培養面と培地除去開口部との間の距離が、培養面と上端との間の距離の50%以下であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、装置が静置細胞培養の位置にあるときに、培養面と培地除去開口部との間の距離が少なくとも0.2cmであることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、培養面と培地除去開口部との間の距離が2.0cmを超えないことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、装置が静置細胞培養の位置にあるときに、通気口が培地除去開口部の高さよりも高い位置に存在することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、装置が静置細胞培養の位置にあるときに、通気口が上端の高さよりも高い位置に存在することを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、装置が静置細胞培養の位置にあるときに、細胞除去導管が培養面に接触していることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
培地を含み、培養面と培地の最上面が水平位置にあるときに、培地の最下部から培地の最上部までの培地高さが1cm~25cmの範囲内であることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項1に記載の装置であって、気体透過性材料がシリコーンであることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置であって、装置が細胞除去の向きに置かれたときに、細胞除去開口部が内容物の低い位置にあることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置であって、培地除去導管が、培地除去導管に細胞が入らないようにするフィルタを含まないことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置であって、装置内に細胞と培地を含み、その装置が細胞培養に適した周囲気体のある場所にあり、かつ、静置細胞培養の向きに置かれていることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2013年6月24日に出願された「気体透過性細胞培養作業のための閉鎖系装置および方法」という名称の米国仮出願第61/838,730号(その全体を参照により本出願に組み込む)の利点を請求する。更に、同時係属米国特許出願第10/961,814号(以下、「814」)、米国特許出願第11/952,848号(以下、「848」)、米国特許出願第12/963,597号(以下、「597」)、米国特許出願第13/475,700号(以下、「700」)および米国特許出願第13/493768号(以下、「768」)は、その全体を参照により本出願に組み込む。
【0002】
本発明の技術分野は、新規な気体透過性細胞培養装置内で効率よく細胞を増殖させ、かつ、ほぼまたは全く汚染のリスクを伴わず、ほぼまたは全く細胞損失を伴わず、かつ、ほぼまたは全く気体透過性表面の歪みを伴わずに、流体を培養系に添加するまたはそれから除去することを可能にする静止細胞培養方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術で記載された従来技術の限界に関する考察
T細胞療法、養子免疫療法および養子細胞療法は、in vitroで免疫系の細胞を増殖させ、次いで増殖細胞を患者内に投与して病気と闘うことを含み、様々な病気を治療するために効果のある方法を指す。これらの療法形態が幅広く社会に行き渡るには、細胞集団の増殖と当該細胞の回収作業が、費用対効果が高く、実用的で、細胞損失を引き起こしにくく、汚染リスクが最小か全くないものとする必要がある。
【0004】
今日、T細胞療法、養子免疫療法および養子細胞療法用途において製造する細胞を調製して保存するための費用対効果が大きくかつ実用的なシステムであって、細胞を製造した後に、培地から細胞を分離するのに相当な量の手間を必要とせず、また汚染を受けないシステムはない。FDA承認にとって実用的なT細胞製造作業を作成する重要な要素は、作業の複雑性を最小にしつつ、汚染の機会を最小にし、また排除しさえすることである。本分野の通常の語彙において、一般に汚染に閉鎖的な培養作業は、通常、「閉鎖系」と呼ばれる。WAVE Bioreactor(商標)、OriGen PermaLife(商標)バッグ、および/またはVueLife(登録商標)バッグは、閉鎖系T細胞製造に適合する装置である。バッグは、典型的には重力に応じてバッグを圧搾することにより、および/または、蠕動ポンプで培地を回収することにより培地および細胞を除去する際に崩壊し得る弾性のある容器を有する。WAVE Bioreactor(商標)は蠕動ポンプに依拠して培地および細胞を除去する。
【0005】
最近、G-Rex(商標)細胞培養装置は、WAVE Bioreactor(商標)、OriGen PermaLife(商標)バッグおよびVueLife(登録商標)バッグと比べて多数の利点に基づき、T細胞培養用として普及している。これら利点の1つを同時係属‘570に記載しており、培地から細胞を分離するのに必要な時間と手間の量を最小にするために、細胞を回収する前に大部分の培地を除去する能力である。しかしながら、上述の方法に依拠して培地および細胞を除去する最新技術の方法がG-Rex(商標)培養装置では適切に機能しないことがその後に発見されている。G-Rex装置は、培地が除去される際にバッグが崩壊するようには崩壊せず、G-Rex装置から培地を除去するために蠕動ポンプを使用することにより、平面状の気体透過性表面が、その水平な培養に適した位置から移動して、装置内に形成される真空によって装置の内容積に引き込まれる状態となる。より大きくかつより広い表面積の通気口フィルタを使用することによって真空が形成されるのを防ぐ試みは、気体透過性表面が平面位置および/または水平位置にとどまることを可能にする実現可能な構成をもたらしてはいない。その平面および/または水平状態から膜を引っ張ることは、製造作業にとって有害であり、培地容量が減少する際に細胞が失われる、または培養物の汚染に繋がるかもしれない漏れが形成されるおよび/または作業者がバイオハザードに曝される可能性を生む。
【0006】
よって、閉鎖系様式で細胞回収作業を単純化するために、特にT細胞療法の分野に関して、‘814、‘848、‘597、‘700、および‘768に開示されるものなどの、気体透過性細胞培養装置のための新規な閉鎖系流体処理方法を作成する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
細胞および残量の培地を細胞回収容器内へ移す前に、気体が初期容量の培地の一部を廃液容器内へ移すことを可能にする特定の実施例を開示する。
【0008】
1つのこういった実施例は、細胞培養装置から培地を除去するための装置であって、気体透過性細胞培養装置に接続するフィルタに接続できる気体送出部であって、前記フィルタを用いることにより前記気体透過性細胞培養装置内に気体を送出できる気体送出部と、前記気体透過性細胞培養装置に接続される培地除去導管内へ移動する流体がいつ液体から気体へと変化するのかを検出できる第1流体検出部であって、前記培地除去導管を通る流体の流れを停止できる第1流体流動制御部へ信号を送ることができる第1流体検出部と、を含む装置を開示する。
【0009】
1つのこのような実施例は、前記気体透過性細胞培養装置に接続する細胞除去導管内を移動する流体がいつ液体から気体へと変化するのかを検出できる第2流体検出部であって、前記細胞除去導管を通る流体の流れを停止できる第2流体流動制御部へ信号を送ることができる第2流体検出部とを含む装置を開示する。
【0010】
1つのこのような実施例は、細胞および培地を含有する気体透過性細胞培養装置内の液体培地の容量を減らし、前記気体透過性細胞培養装置に接続するフィルタに前記気体送出成分を接続することにより培地1ミリリットル当たりの細胞濃度を上げる装置であって、細胞培養装置が培地除去導管を含み、第1流体検出部を前記培地除去導管に接続し、第1流体流動制御部を前記培地除去導管に接続し、前記気体送出部からの気体送出を開始し、それにより、気体が前記細胞培養装置へ移動し、気体が培地を前記細胞培養装置から前記培地除去導管に接続した培地回収容器内へ移し、前記第1流体検出部が、前記培地除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へと変化したのかを検出し、その検出を行うと、前記第1流体検出部が前記第1流体流動制御部に信号を送り、前記第1流体流動制御部が前記信号を受け取ると、前記第1流動制御部が前記培地除去導管を通る流体の流れを停止させる装置を開示する。
【0011】
1つのこのような実施例は、細胞を回収するための装置の使用であって、第1流動制御部が培地除去導管を通る流体の流れを停止させた後、細胞回収容器を培地除去導管に接続し、前記培地除去導管が培地と接触する培地除去開口部を有し、第1流動制御部が前記培地除去導管を通る流体の流れを開放し、前記気体送出部から送出した気体が前記細胞培養装置内へ移動し、培地および細胞が前記培地除去導管を通って前記細胞回収容器内へ移動し、前記第1流体検出部が、前記培地除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へと変化したのかを検出し、前記第1流体流動制御部に信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第1流動制御部が前記培地除去導管を通る流体の流れを停止させる用途を開示する。
【0012】
1つのこのような実施例は、液体培地および細胞を含有する気体透過性細胞培養装置に接続するフィルタに気体送出部を接続することにより気体透過性細胞培養装置における培地1ミリリットル当たりの細胞数を増大させ、前記細胞の少なくとも一部分が前記細胞培養装置内の培養面と接触し、前記細胞培養装置が培地除去導管と細胞除去導管とを包含し、前記第1流体検出部を前記培地除去導管に接続し、第1流体流動制御部を前記培地除去導管に接続し、前記気体送出部からの気体送出を開始し、それにより、気体が前記細胞培養装置へ移動し、気体が前記細胞培養装置から培地除去導管に接続した培地回収容器内へ培地を移し、前記第1流体検出部が、前記培地除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へと変化したのかを検出し、その検出を行うと、前記第1流体検出部が前記第1流体流動制御部へ信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第1流動制御部が前記培地除去導管を通る流体の流れを停止させ、前記第2流体検出部を前記細胞除去導管に接続し、前記第2流体流動制御部を前記細胞除去導管に接続し、前記気体送出部からの気体送出を開始することにより前記気体透過性細胞培養装置から細胞を除去し、それにより、気体が前記細胞培養装置内に移動し、前記細胞除去導管によって前記細胞培養装置から前記細胞除去導管に接続された細胞回収容器内へと培地および細胞を移し、前記第2流体検出部が、前記細胞除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へと変化したのかを検出し、検出すると、前記第2流体検出部が前記第2流体流動制御部に信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第2流動制御部が前記細胞除去導管を通る流体の流れを停止させることを開示する。
【0013】
1つのこのような実施例は、濃縮された細胞を気体透過性細胞培養装置から回収することであって、第2流動制御部が細胞除去導管を通る流体の流れを停止させた後、前記細胞培養装置を大気に通気し、第1流動制御部を開放して前記培地除去導管を通る流体が流れられるようにし、培地が前記培地除去導管を通って前記細胞培養装置内へ移動し、前記第1流動制御部を閉鎖し、前記培地を撹拌して細胞を前記培地内へ移動し、前記細胞培養装置がもはや大気に通気せず、気体が前記気体送出部から前記細胞培養装置内へ送出し、前記細胞培養装置から前記細胞除去導管に接続した細胞回収容器内に培地および細胞を移し、前記第2流体検出部が、前記細胞除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へと変化したのかを検出し、その検出を行うと、前記第2流体検出部が前記第2流体流動制御部に信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第2流動制御部が前記細胞除去導管を通る流体の流れを停止させることを開示する。
【0014】
1つのこのような実施例は、培地容量を減らして、培地除去導管を包含する前記細胞培養装置に接続されるフィルタに気体送出部を接続することにより培地1ミリリットル当たりの細胞濃度を増大させることによって、第1容量の培地および培養面上にある細胞を含有する気体透過性細胞培養装置内の培地1ミリリットル当たりの細胞数を増大させ、第1流体検出部を前記培地除去導管に接続し、第1流体流動制御部を培地除去導管に接続し、前記気体送出部からの気体送出を開始し、それにより、気体が前記細胞培養装置内へ移動し、気体が前記細胞培養装置から前記培地除去導管に接続した培地回収容器内に培地を移し、前記第1流体検出部が、前記培地除去導管を通って移動する流体がいつ培地から気体へと変化したのかを検出し、その検出を行うと、前記第1流体検出部が前記第1流体流動制御部に信号を送り、前記第1流体流動制御部が前記信号を受け取ると、前記第1流動制御部が、前記細胞培養装置内に残量の培地および細胞を残しつつ前記培地除去導管を通る流体の流れを停止させ、前記培地の残量が前記培地の第1容量未満であることを開示する。
【0015】
1つのこのような実施例は、気体透過性細胞培養装置内で細胞を濃縮することであって、第1流動制御部が培地除去導管を通る流体の流れを停止させた後、細胞回収容器を前記培地除去導管に接続し、培地が前記培地除去導管の培地除去開口部と接触した状態で、第1流動制御部を開放して前記培地除去導管を通る流体が流れられるようにし、前記気体送出部から送出された気体が前記細胞培養装置内へ移動し、前記残量の培地および細胞を、前記培地除去導管を通じて前記細胞回収容器内へ移し、前記第1流体検出部が、前記培地除去導管を通って移動する流体がいつ培地から気体へと変化したのかを検出し、前記第1流体流動制御部に信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第1流動制御部が前記培地除去導管を通る流体の流れを停止させることを開示する。
【0016】
1つのこのような実施例は、気体透過性細胞培養装置から細胞を回収することであって、培地および細胞を含有する気体透過性細胞培養装置に接続されるフィルタに気体送出部を接続することによって、細胞を含有する気体透過性細胞培養装置内の第1容量の培地を減らして1ミリリットル当たりの細胞濃度を増大させる第1工程であって、前記細胞培養装置が培地除去導管および細胞除去導管を包含し、第1流体検出部を前記培地除去導管に接続し、第1流体流動制御部を前記培地除去導管に接続し、少なくとも一部の細胞が培養面上にある状態で、前記気体送出部からの気体送出を開始し、それにより、気体が前記細胞培養装置内へ移動し、前記気体が培地を前記細胞培養装置から前記培地除去導管に接続される培地回収容器内へ移し、前記第1流体検出部が、前記培地除去導管を通って移動する流体がいつ培地から気体へと変化したのかを検出し、その検出を行うと、前記第1流体検出部が第1流体流動制御部に信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第1流動制御部が、前記細胞培養装置内に残量の培地および細胞を残しつつ前記培地除去導管を通る流体の流れを停止させ、前記培地の残量が前記培地の第1容量未満である工程と、第2流体検出部を前記細胞除去導管に接続し、第2流体流動制御部を前記細胞除去導管に接続し、細胞が前記残量の培地全体にわたって分配された状態で、気体送出部からの気体送出を開始することによって前記気体透過性細胞培養装置から細胞を除去する第2工程であって、それにより、気体が前記細胞培養装置内へ移動し、前記細胞培養装置から前記細胞除去導管に接続された細胞回収容器内へと培地および細胞を移し、前記第2流体検出部が、前記細胞除去導管を通って移動する流体がいつ培地から気体へと変化したのかを検出し、その検出がなされると、前記第2流体検出部が前記第2流体流動制御部に信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第2流動制御部が前記細胞除去導管を通る流体の流れを停止させる工程を含むことを開示する。
【0017】
1つのこのような実施例は、前記第2流動制御部が前記細胞除去導管を通る流体の流れを停止させた後、前記細胞培養装置を濯いで前記細胞培養装置および/または前記細胞除去導管内に残っている可能性がある更なる細胞を回収する更なる工程を含む細胞の回収であって、前記細胞培養装置が大気に通気する際に、前記培地除去導管を通る液体の流動を開始し、前記液体が前記培地除去導管を通って前記細胞培養装置内へ移動し、前記液体を撹拌して前記細胞培養装置内の細胞を前記液体中へ移動させ、前記気体送出部から前記細胞培養装置内への気体送出を開始し、前記気体が液体および細胞を前記細胞培養装置から前記細胞回収容器内へと前記細胞除去導管を介して移し、前記第2流体検出部が、前記細胞除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へと変化したのかを検出し、その検出がなされると、前記第2流体検出部が前記第2流体流動制御部に信号を送り、前記信号を受け取ると、前記第2流動制御部が前記細胞除去導を通る流体の流れを停止させることを更に含むことを開示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1B】廃液容器を装着した気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図1C】廃液容器を装着した気体透過性細胞培養装置、廃液容器内に培地を移動させる蠕動ポンプおよび水平位置から外れた培養面の断面図を示す。
【
図1D】廃液容器を装着した気体透過性細胞培養装置、廃液容器内に培地を移動させる蠕動ポンプ、水平位置から外れた培養面および廃液容器に進入する細胞の断面図を示す。
【
図2A】廃液容器を装着した気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図2B】廃液容器を装着した気体透過性細胞培養装置、廃液容器内に培地を移動させる蠕動ポンプ、水平位置にとどまる培養面および細胞が存在する培地の残量まで減らした初期培地容量の断面図を示す。
【
図2C】細胞および残留培地を除去できるように細胞回収の向きに置いた後の気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図2D】細胞回収の向きに向け、細胞および残留培地が細胞回収容器へ移動した後の気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図3】培地除去導管および培地除去導管開口部を備えた気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図4A】培地除去導管および培地除去導管開口部を培地除去の配置にした気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図4B】培地除去導管および培地除去導管開口部を細胞除去の配置にした気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図5A】培地除去導管および培地除去導管開口部を細胞除去の配置にした気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図5B】培地除去導管および培地除去導管開口部を細胞除去の配置にした気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図5C】培地除去導管および培地除去導管開口部を細胞除去の配置にした気体透過性細胞培養装置の断面図を示し、ここで、細胞除去導管開口部は培養面ポケット内にある。
【
図6A】培地除去導管および細胞除去導管を備えた気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図6B】気体が装置内に送り込まれ、培地培地除去導管を介して除去された後の気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図6C】気体が装置内に送り込まれ、培地が培地除去導管を介して除去されて廃液回収容器内へ移動した後の気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図6D】気体が装置内に送り込まれ、細胞および残量の培地が細胞除去導管を介して除去されて細胞回収容器内へ移動した後の気体透過性細胞培養装置の断面図を示す。
【
図7】培地および細胞の除去を自動化する機器と接続している気体透過性細胞培養装置の概略図を示す。
【
図8】培養面支持体に連結した培養面の断面図を示す。
【
図9】培養面支持体上に成形した培養面の断面図を示す。
【
図10】培地および細胞除去中に培養面が平面位置にとどまる気体透過性細胞培養装置および作業の断面図を示す。
【
図11】培地および細胞除去中に培養面が平面位置にとどまる気体透過性細胞培養装置および作業の断面図を示す。
【
図12A】培地および細胞除去中に培養面が平面位置にとどまる気体透過性細胞培養装置および作業の断面図を示す。
【
図12B】培地および細胞除去中に培養面が平面位置にとどまる気体透過性細胞培養装置および作業の断面図を示す。
【
図13A】培地および細胞除去中に培養面が平面位置にとどまる気体透過性細胞培養装置および作業の断面図を示す。
【
図13B】培地および細胞除去中に培養面が平面位置にとどまる気体透過性細胞培養装置および作業の断面図を示す。
【
図13C】培地および細胞除去中に培養面が平面位置にとどまる気体透過性細胞培養装置および作業の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示を通して、指定しない限り、以下の一般的考察を適用する。本書に開示された装置および方法を用いる場合、細胞は均一に広がった状態で気体透過性表面に存在するのが好ましい。当業者は、細胞培養分野で一般的に使用するものに適合する気体透過性材料の選択をするよう推奨されている。気体透過性材料は液体不透過性であることが望ましい。使用できる気体透過性表面の種類に関する更なる指針は、同時係属‘814、‘848、‘597、‘700および‘768にも見られる。任意の種類の非接着性動物細胞を培養の対象となる細胞とする場合、気体透過性表面は、無孔性、液体不透過性および疎水性とするのが好ましい。この表面をシリコーンから構成し、0.001~0.024インチの厚さを有するのが最も好ましい。特にT細胞の場合、シリコーンを材料とするのが好ましい。更に、細胞を気体透過性材料の方に向かわせ、気体透過性材料の表面全体に拡げるために、気体透過性材料は、培養中は水平位置にあるのが好ましく、均一な表面密度内にあるのがより好ましい。当業者は、気体透過性材料は培地の重みで当該材料が支持体と直接接触しない区域において僅かに下方へ移動できるので、本発明を通して、用語「水平な」が「実質的に」水平であることを含むことを認識されたい。実質的に水平な配向の意図は、気体透過性材料全体にわたって細胞を分配させることである。好ましくは、培養面の実質的に水平な状態は、当該表面が表面区域または培養面の20%を超えて、より好ましくは10%、更により好ましくは5%および最も好ましくは2.5%面外へ移動しないようなものである。
【0020】
培養すべき動物細胞が接着性細胞を含む場合、気体透過性材料は親水性でとするのが好ましく、プラズマ帯電表面などの装着しやすい表面を有する。本開示または同時係属‘814、‘848、‘597、‘700および‘768の明細書のいずれかを通して、当業者は、用語「気体透過性膜」が「気体透過性材料」と同義であり、かつ非限定的であることを認識すべきである。その理由は、当業者は更に、用語「膜」が、同時係属‘814、‘848、‘597、‘700および‘768に記載するものを含む細胞培養方法および細胞培養装置に関して、一般的に使用することが当業者に既知であるいずれかの形態の材料の気体透過性材料として広く定義されるものであることを理解すべきだからである。本開示全体を通じて、用語「培地」は、動物細胞培養に使用する任意の様々な基質および/または栄養素を含有する液体と同義である。培養作業と関連する流体に曝される可能性がある装置の全ての材料は、細胞培養に適合するのが好ましい(例えば、USP VI、非細胞毒性、許容可能な浸出可能かつ粒子状の標準規格を満たす)。また、培地除去中に細胞が失われているかどうかを判断する、或いは、その他の理由で内容物を評価することが確実にできるように、細胞培養/細胞回収装置は、光学的に透明な構成材料を使用することによりできるような内容物の視覚的評価を可能にするべきとするのが好ましい。
【0021】
本発明の1つの実施例の態様は、同時係属‘700および関連図面である
図22Bに見ることができ、これは例証目的で
図1Aとしてここで再現し、この図に関して項目番号が1000番台から100番台に変えた。
図1Aには、培養が終了し、細胞がまもなく回収されようとしている時点での作動中の細胞回収装置100が示している。細胞116は培養面106上にあり、この培養面106は、当該装置の底部を形成し、前述の特徴の気体透過性材料から構成される。初期培地容量120Aは初期培地高さ121Aにあり、この高さは最も高い培地面から最も低い培地面までの距離と同じで、OriGen PermaLife(商標)およびVueLife(登録商標)バッグなどの静止細胞培養バッグに特有の1.0cmの高さを超えるのが好ましい。初期培地高さ121Aは、2.0cmを超える方が好ましい。いかなる高さも可能であるが、最適な高さは細胞培養用途の詳細に応じて変わる。例えば、同時係属‘700への記載のように、培地交換の必要なくCAR T細胞を増殖させる際に、培地交換の必要なく僅かな数の細胞からはるかに多い数の細胞までの培養を進行させようとする場合、10cmの初期培地高さが好ましい。また、培地高さが増大するにつれ、細胞の回収前により多くの培地を除去することが可能になる。我々は、培地高さが低くなるにつれ、従来とは異なる高さのあるの培地の下に沈んだ細胞が容易に培地内に分配されなくなることを発見した。当業者は、細胞を掻き乱すことなく大容量の培地を除去することが、培地交換を行おうとする(即ち、装置内に再導入するために除去する培地から細胞を分離するという要件、および/または、新たな装置に培養物を分割する要件はない)、または培養を終了させて細胞を回収する(即ち、厄介な遠心分離機器の使用とは違って、培地のバルクからの細胞分離は装置内で行われる)上で非常に役立てられることに気付くはずである。
【0022】
不運にも、標準の閉鎖系流体処理方法を使用して、同時係属‘814、‘848、‘597、‘700および’768にて開示したもののような装置において培地容量を減らす新規な能力の強みを十分に利用すると、細胞損失に繋がり、かつ、培養装置を損傷するかもしれず、そのために、T細胞療法、養子免疫療法および/または養子細胞療法用途は高額の医療費がかかるかもしれないことを見つけた。
図1B、
図1Cおよび
図1Dをまとめると、G-Rex(商標)装置および同時係属‘814、‘848、‘597、‘700および’768に開示するもののような他の気体透過性装置から細胞を回収する前に、従来の培地処理ツールや方法を用いて培地容量を減らそうとする際に発見した問題の例を示している。
図1Bは、廃液容器132を培地除去導管110に装着した後の、
図1Aに記載した装置を示す。細胞116を回収しなければならない初期培地容量120Aの量を減らす際の第1工程として、培地除去導管110を介して廃液容器132にそれを圧送することによって、初期培地容量120Aの一部を細胞培養/細胞回収装置100から引き出す。培地を圧送する一般的な方法は、蠕動ポンプ134を用いて培養装置から培地を引き出すことである。
図1Cに示すように、初期培地容量の一部を細胞培養/細胞回収装置100から除去すると、滅菌通気口フィルタ128全体で圧力が降下し、内容物114が大気圧よりも低くなり、通常は装置の内容物114内がすばやく真空になる。培養面106は、ほとんどの場合で、材料を薄くかつ脆くさせる気体を透過する性質を有する気体透過性材料を含むのが好ましいため、真空が形成されると、培養面106はあっという間にその望ましい水平平面状態から引っ張られて、図に示すように新しく非平面の配置になる。更に、蠕動ポンプのローラー136が回転すると、ローラー間の間隙により装置内に真空が発生してパルスし、それにより拡張した培養面106をパルスし、細胞116を取り除き、培地全体に取り除いた細胞を分散させる。その後、
図1Dに示すように、培地を廃液容器132内へ引き抜き続けると、細胞116も廃液容器132内へ引き抜かれる。この一連の事象により、相当数の細胞が廃液容器内に分配される可能性が高い。患者の病気の経過は治療用量における細胞数に相関しているので、これら貴重な細胞の損失のために高額の医療費がかかることもある。また、細胞が失われないとしても、培養面は、培地除去導管に引き込まれて損傷を受ける可能性がある。例えば、培養面に穴が開くと、細胞培養設備内のものをバイオハザードに曝す可能性があることに加えて、培養物を汚染し、患者への使用に適合しなくなる可能性がある。培養面が培地除去導管によって損傷しないとしても、培地除去導管に引き込まれる場合は、培地および細胞をこれ以上除去できない可能性がある。要約すると、その平らで望ましい水平な状態から培養面を引っ張ることは、細胞損失、細胞の除去ができないこと、その膨張に起因する培養面の損傷、培地除去導管との物理的接触に起因する培養面への損傷、培養物の汚染、製造労働者のバイオハザードへの暴露、のいずれか、或いはすべてを引き起こすかもしれない。したがって、これらの危険を回避する細胞回収方法が必要となる。
【0023】
一般に、細胞培養を行った後に、細胞は気体透過性材料を含む装置の底部に引き寄せられていて装置が依然として培地を保持しているとき、装置の内容物を加圧する方法で細胞培養/細胞回収装置内へある容量の気体を移動させる場合に有利である。好ましくは、第1容量の気体を装置内へ移動させて、第1容量の培地を装置から廃液容器内へ移動させる。当該工程は、細胞が存在する培養面が水平面を向くように置いた装置で行われることが好ましい。この工程が完了すると、培地の残留量が装置内に残り、細胞も装置内に残る。第2容量の気体を装置内へ移動させ、それにより、装置から培地の残留量および細胞を移し、培地の残留量および細胞を細胞回収容器内へ移動させる。このようにして、培地容量の細胞数に対する比が減少する。
【0024】
図2Aから
図2Eは本発明の実施例の実例を提供し、これは、
図1B~
図1Dに示す課題を、真空下で装置から培地を引き出すのとは異なり、圧力下で装置から培地或いは培地と細胞を追いやる細胞培養/細胞回収装置に気体を押し込むことによって解決する。この手法は、真空の形成を防止し、培養面の上方への歪みを防止し、迅速に細胞を取り除くことができる平面状態になるならないを繰り返す培養面のパルスを防止することのいずれか或いはすべてにより、細胞損失の可能性、装置への損傷のいずれか或いは両方を最小限に抑える。
図2Aでは、細胞培養/細胞回収装置1000の細胞培養の向きおよびその装置の静止細胞培養状態での断面図を示している。細胞培養/細胞回収装置1000は、上端1012およびそれより低い位置にある培養面1006により区切られた内容物1014と、通気口1028と、培地除去開口部1008を備えた培地除去導管1010とを含む。培地除去導管クランプ1009は、内容物1014内に培地を保持するべく閉鎖位置にある。上端1012は、側壁1054によって培養面1006に隣接するのが好ましく、側壁1054は培養面1006に垂直であり、かつ、剛性であるので、接種した細胞は培養面1006上に均一に広がることができる。初期培地容量1020Aは装置内に存在する。初期培地容量1020Aの高さは、細胞培養/細胞回収装置1000の境界内にて初期培地高さ1021Aとし、この高さは最も高い培地面から最も低い培地面までの距離に等しい。細胞1016も存在しており、培養面1006上に引き寄せられている。培養面1006は、平面状とするのが好ましく、培養作業中は水平方向に置かれ、無孔性で気体透過性かつ液体不透過性の材料を含み、非接着性細胞を培養する場合には疎水性とする。培地除去開口部1008は、培養面1006から少し離れており、図で分かるように、離れていることで残留培地高さ1021Bが決まる。細胞培養作業のある時点では、初期培地容量1020Aをより少量の残留培地容量まで減らす培地除去作業を行って、新鮮な培地を追加するか細胞を残留培地容量まで濃縮することが望ましい。
【0025】
初期培地容量1020Aの一部を除去するために、培養面1006が底部に、上端1012が頂部にあるように細胞培養/細胞回収装置1000を配置する。別の言い方をすれば、細胞培養/細胞回収装置1000を、静止細胞培養に好ましい位置に配置する。細胞1016は、培養面1006上に初期細胞密度で存在し、この初期細胞密度は細胞1016を初期培地容量1020Aで割った数量である(例えば細胞/ml)。細胞1016はまた、初期表面密度で培養面1006上に存在し、この初期表面密度は細胞1016を細胞がある培養面1006の表面積で割った数量である(例えば細胞/cm
2)。気体送出部を、通気口1028に接続し、
図2Bで一番よく分かるように、装置の頂部に配置するのが好ましい。どのように細胞培養/細胞回収装置の内容物を通気するとしても、それは、0.2ミクロンの通気口フィルタなどの気体を滅菌濾過できるガンマ線安定材料を経由するのが好ましい。この例では、気体送出部をダイアフラムポンプ1050とし、これを気体導管1052によって通気口1028に接続する。気体送出部が盛んに気体を出している(即ち、この例では、ダイアフラムポンプ1050を作動させている)とき、気体は気体導管1052内に追いやられ、通気口1028を介して細胞培養/細胞回収装置1000内に入る。通気口1028は、細胞培養/細胞回収装置1000内へ気体が確実に移動することができる材料を含み、滅菌されているのが最も好ましい。通気口1028はまた、濾過表面上に堆積して濃縮する可能性を最小限にする位置に配置するのが好ましい。この図では、通気口1028の濾過表面は、培養面1006に平行ではなく、代わりに、培養面1006に対して垂直に配置する。培地除去導管クランプ1009が開放位置にある状態で細胞培養/細胞回収装置1000に気体を送出するとき、培地の除去開口部1008に追いやられる際に初期培地容量1020Aの一部が細胞培養/細胞回収装置1000から培地除去導管1010を介して廃液容器へ移り、それにより細胞1016および残留培地容量1020B(残留培地高さ1021Bで存在する)が残る。廃液容器は筐体とする必要はなく、培地除去導管1010に物理的に装着される必要もない。例えば、廃液容器は、代わりに実験室のシンクのように一般的なものとすることもできるが、バッグなどの密封容器とし、閉鎖系の様式でバイオハザードの可能性を封じ込めるために培地除去導管1010に密封して接続する。このような密封容器を
図2Aおよび
図2Bにて密封した廃液容器1032として図示しており、この廃液容器1032は培地除去導管1010に接続している。
【0026】
この培地除去の作業中、気体が細胞培養/細胞回収装置1000に進入して内容物1014の圧力が上昇する際に、培養面1006が望ましい水平位置から動かないようにする方が良い。例示的実施例に記載するように、水平面にて培養面を保持する培養面支持体によりこれを果たすことができ、培養面の損傷を防ぐ。当業者は、培養面支持体の構造に関する更なる指針のために、同時係属‘814および‘848を参照されたい。
【0027】
培地除去作業の完了後、通気口1028を周囲大気に開放し(例えば、気体導管1052を切断または通気し)、培地除去導管1010(または装置内に存在可能で、その目的にふさわしく構造化できる他のポート)を介して新鮮な培地を足すことで新鮮な培地を足すことができる。新鮮な培地を装置へ足す必要がなく、培養を終了する場合、
図2Cに示すように、静止細胞培養に好ましい向きから細胞除去のための向き(培地除去開口部1008が内容物1014内の低い地点に存在する)へ細胞培養/細胞回収装置1000を置き直すことで、細胞1016を除去できる。細胞および培養面の固有の特質に応じて、装置から細胞を除去しようとする前に、装置内の残留培地を攪拌して培養面から細胞を取り除き、残留培地にそれらを懸濁することは有用かもしれない。我々は、培養面がシリコーンなどの疎水性の気体透過性材料であったとしても、もはや培地内に細胞が沈んでいない所まで装置を傾けても、T細胞などの非接着性細胞が培養面上に堆積したまま残る傾向があることを発見した。よって、残留培地を除去する際に確実に細胞が装置内に残らないようにするには、残留培地を引き抜く前に攪拌してその中に細胞を懸濁させることが好ましい。当業者は、残留培地中に細胞を懸濁させる多くの方法があることを認識するであろう。例えば、単に装置に運動を与えて装置の周囲および培養面上に残留培地を渦流させ、いつ細胞を培養面から取り除いて残留培地内へ移動したかを視覚的に判断してもよい。我々は、円形の培養面を囲む円筒状の壁により十分にこの手法が円滑に行われることを見出した。しかしながら、この工程は、細胞を培養面から取り除いて残留培地に分散させると終了し、細胞の回収は培地および細胞を回収する従来の方法(例えば蠕動ポンプを使用する)により行う。しかしながら、通気口が滅菌フィルタを含むときは通気口全体に圧力降下が発生するので、装置から培地を引き出すことにより細胞を引き抜くと、装置内に真空が形成されるために気体透過性材料が平面位置から移動する。しかし、気体透過性材料が水平位置から新たな位置へ移動するときに気体透過性材料が無傷である状態を壊さず、または細胞培養/細胞回収装置のその他の側面が完全であることに影響を受けなければ、これを行うことができる。しかしながら、気体透過性材料または細胞培養/細胞回収装置のその他の側面を損傷の危険のある状況に置かない好ましい方法は、気体を細胞培養/細胞回収装置内に送出することにより残留培地および細胞を移すことである。
【0028】
図2Dは、これを行う方法を示す。細胞培養/細胞回収装置1000を細胞除去のための向きに置き、培地除去導管1010は、できれば密封した廃液容器1032の代わりに使用する細胞回収容器1040に接続し、ダイアフラムポンプ1050などの気体送出部は通気口1028に接続し、これは気体導管1052によって通気口1028に接続する。気体送出部が盛んにガスを送出しているとき(即ち、この例では、ダイアフラムポンプ1050を作動させるとき)、気体を気体導管1052内に送出し、通気口1028を介して細胞培養/細胞回収装置1000内へ入る。細胞培養/細胞回収装置1000内に気体を送出するとき、1つ以上の側壁1054から出ている培地除去開口部1008へ懸濁した細胞1016を追いやると、懸濁した細胞1016を含有する残留培地容量1020Bは細胞培養/細胞回収装置1000から培地除去導管1010を介して細胞回収容器1040へ移る。細胞回収容器1040は、遠心分離および/または冷凍保存などに供するあらゆる下流作業にも適する設計の密封容器とするのが好ましい。培養面1006の損傷を防止するために、培養面支持体が存在し、気体が細胞培養/細胞回収装置1000に進入するときに培養面1006を平面状態で保持するのが望ましい。
【0029】
当業者は、初期培地容量が存在する高さを装置底部よりも高くすることは、様々な理由により有利であることを認識すべきであり、その理由は、栄養源を増加させること、細胞廃物用シンクを大きくすること、初期培地容量のより大きな部分を細胞損失なしに除去する能力を含むものとする。培地の高さを限定はしないとはいえ、培養面及び/又は培地の最上面が水平位置にあるときに培地の最下部から培地の最上部までを測定したときの培地高さは、1cm~25cmの範囲とするのが好ましく、1cm~20cmの範囲とするのがより好ましい。更により好ましいのは1cm~15cmの範囲、更により好ましくは2cm~11cmの範囲内とする。残留培地高さも特に限定しないが、培養面及び/又は培地の最上面が水平位置にあるときに培地の最下部から培地の最上部までを測定したときの残留培地高さを0.2cm~2.0cmの範囲内とするのが好ましい。より好ましくは0.2cm~1.0cmの範囲内、更により好ましくは0.2cm~0.5cmの範囲内とする。
【0030】
図3は、本発明の更に別の実施例を示し、細胞培養/細胞回収装置2000の断面図は、培地除去導管2010内に位置する細胞除去開口部2008を含むものとする。培地除去導管は、内容物2014に1つ以上の側壁2054を介さずにつながり、この図では上端2012を介して移動する。細胞培養/細胞回収装置2000を培地回収の配置(つまり細胞培養の配置)にする際に、前述のように培地の回収が可能であり、この培地回収の配置にて細胞2016は培養面2006上に存在するものとする。
図3に示すように、元の培地容量の一部は、培地除去導管2010を介して除去する。残留培地2020Bは、培地除去開口部2008の高さに存在する。細胞培養/細胞回収装置2000を細胞除去の配置へ単に置き直すことにより、細胞2016を前述のように回収することができ、この細胞除去の配置にて培地除去開口部2008は、残留培地容量2020Bの低い点に存在する。細胞2016が残留培地2020Bに懸濁しているので、培地除去導管2010を介して残留培地容量2020Bを除去することによりそれらを回収可能とする。
【0031】
本発明の別の実施例は、導管の開口(部)が培養面からの距離の変更を可能にする。
図4Aでは、細胞培養の配置かつ静止細胞培養の状態での細胞培養/細胞回収装置3000の断面図を示している。細胞培養/細胞回収装置3000は、上端3012に区切られた内容物3014と、培養面3006と、通気口3028と、培地除去開口部3008を備えた培地除去導管3010とを含むものとする。上端3012は、1つ以上の側壁3054により培養面3006に隣接するのが好ましく、1つ以上の側壁3054は、培養作業の間、培養面3006に垂直とするのがより好ましい。
【0032】
上述のような様式で培地除去開口部3008を介して培地を除去することが可能であり、細胞培養/細胞回収装置3000が平面状の培養面3006が水平位置に存在する状態に置かれ、細胞が培地中に懸濁せずに(つまり培地中に分散していない)培養面上に存在するときが好ましい。培地除去作業の終了後、通気口3028を周囲大気に開放させ(例えば気体導管を切断または通気する)、培地除去導管3010(或いは、装置内に存在し、その目的のために適切に構造化することが可能なその他のポート)を介して新鮮な培地を添加することにより新鮮な培地を添加することができる。新鮮な培地を装置に添加する必要がなく、培養を終了する場合、細胞除去を行うことができる。細胞除去開口部3008と培養面3006の間の距離を変更するための手段を含むように細胞培養/細胞回収装置を構成することにより、培地除去開口部3008の位置を培地除去の配置から細胞除去の配置へ変更可能とする。その際、培地除去開口部は、前述のように、細胞を除去せずに培地容量を減らすよう動作可能なだけでなく、培地容量を減らした後に残留培地および細胞を除去することも可能とする。このように、たった1つのポートを使用して、残留培地中で細胞を濃縮し、濃縮した細胞を除去することもできる。
図4Bは、これを実現する方法の一例を示す。この例では、1つ以上の側壁3054は、細胞培養/細胞回収装置の内容物の下端を上端へ接続する構造を提供する。この図では、培養面3006が下端である。細胞培養/細胞回収装置3000の1つ以上の側壁3054は、培地除去開口部3008と培養面3006の間の距離を調整する手段を含むものとする。当業者は、これを達成する多くの方法と認識すべきである。例えば、1つ以上の側壁3054は、シリコーンなどの弾性のある材料を含むことができ、1つ以上の側壁3054の高さを変えられるように蛇腹状にすることもできる。1つ以上の側壁3054の高さを変えて、示すように培地除去の配置から細胞除去の配置へ培地除去開口部3008を動かすと、培地除去開口部3008と培養面3006の間の距離が縮まり、培地除去開口部3008が細胞除去の配置に来る。この細胞除去の配置において、開口部は培養面3006に近接し、残留培地および細胞の通過を可能にできる。別の言い方をすれば、細胞培養/細胞回収装置3000を培地除去の配置にしたとき、培地除去開口部3008と培養面3006の間の距離(この図では、静止細胞培養の状態で装置が動作しているときに培地が存在できる下端である)は、細胞除去の配置にあるときの培地除去開口部3008と培養面3006の間の距離よりも大きい。逆に、細胞培養/細胞回収装置3000を細胞回収の配置にしたとき、培地除去開口部3008と培養面3006の間の距離は、細胞培養/細胞回収装置3000を培地除去の配置にしたときの培地除去開口部3008と培養面3006の間の距離よりも小さい。
【0033】
当業者は、培地除去開口部と培養面との間の距離を調整する方法が多種多様であることを認識されたい。例えば、壁の一部が他の部分へ液密に滑り込むピストンのような様式で、装置の壁を折りたたみできるようにする多くの方法(弾性のある(曲げやすい)材料での製造を含む。)がある。そのような場合、培地除去開口部を培地除去の配置から細胞除去の配置に変更すると、細胞培養/細胞回収装置の上端と培養面の間の距離は小さくなる。しかし、当業者は、細胞培養/細胞回収装置の上端と培養面との間の距離の変えることが、培地除去の配置から細胞除去の配置へ培地除去開口部を移動する唯一の方法ではないことを認識されたい。
【0034】
図5Aおよび
図5Bは、細胞培養/細胞回収装置4000の断面図を示し、この細胞培養/細胞回収装置は、培地除去開口部4008と培養面4006の間の距離を調整するように作られている。弾性のある側壁4001は、培地除去導管4010および上端4012に対して密封を形成する。培地除去導管4010は、密封された接続部を有し、この実例では雌口ルアーコネクター4011を含み、この雌口ルアーコネクターが雄口ルアーコネクター4013と噛み合い、それにより回収容器を培地除去導管4010に容易に取り付けることができる。当業者は、滅菌した管の溶着部を含むこのような接続をする多くの方法があることを認識されたい。培地除去開口部4008と培養面4006の間の距離を変えるには、弾性のある側壁4001の高さを変える。弾性のある側壁4001の上面に力を加えてその高さを低くすることで(つまり培養面4006の方向へ蛇腹部分を圧縮する)、それにより培地除去開口部4008を培養面4006の方向へ移動させ、培地除去開口部4008と培養面4006との間隔を小さくした後の弾性のある側壁4001の高さを
図5Bは示している。当業者は、細胞培養/細胞回収装置4000を汚染の危険がある状態に置くことなく、培地除去開口部4008と培養面4006との間隔を様々に変えられるようになることを認識すべきである。好ましくは、細胞回収時、培地の除去開口4008は培養面4006に隣接し、細胞培養/細胞回収装置4000は細胞培養の配置(つまり培養面4006は水平位置にある)にある。これにより、細胞培養/細胞回収装置をその細胞培養の配置から回転させる必要なく細胞培養/細胞回収装置の培地および細胞含有物を除去する自動化作業を容易にする。
【0035】
細胞回収の前に、装置を撹拌して培養面から細胞を取り除いて、細胞を培地に懸濁させることは有用かもしれない。我々は、培養面がシリコーンなどの疎水性膜であっても、装置を傾けたときに、T細胞などの非接着性細胞は培養面上に堆積したまま残る傾向があることを発見した。よって、残留培地を除去する際に細胞が確実に残らないようにするには、装置を攪拌するのが好ましい。例えば、単に残留培地を渦流させ、細胞を培養面から取り除いて残留培地内へ移動したことを視覚的に判断してもよい。細胞を培養面から取り除くと、細胞回収は、培地および細胞を引き抜く従来の方法(例えば、蠕動ポンプを使用する)により行うことができる。装置から培地を引き出すことにより細胞を引き抜くと、装置内に真空が形成されるために気体透過性膜が水平位置から移動する。膜が無傷である状態を壊さない限り、これを行うことができる。しかしながら、膜を損傷の危険のある状況に置かない望ましい方法は、前述の気体移送方法を用いて細胞を回収することである。
【0036】
図5Cは細胞培養/細胞回収装置4000を示し、これは更に、細胞を回収するのに用いる導管開口部を装置内の最も低い位置に置くために装置を傾ける必要をなくすことで、細胞回収の自動化を更に促進するように作られている。培養面4006が細胞培養に好ましい水平面内にあるとき、細胞回収ポケット4007は、培養面4006の水平面より下にある。培地除去開口部4008は、細胞回収ポケット4007内にある。この位置にて、培地除去開口部4008は、内容物4014の最下点に存在し(つまり、装置を静止細胞培養の状態に置く際の培地の最も低い位置)、培地および細胞の回収を促す。この特徴は、任意の細胞培養/細胞回収装置の実施例にあり得る。
【0037】
一般に、培地除去開口部が培地除去の位置にあるとき、当該開口部により細胞培養/細胞回収装置の全ての内容物を除去できないのが好ましい。気体送出部が不良となるか、または、培地除去開口部を通って移動できる培地の全ての移動後に気体の送出を停止することができずに気体を装置内に送出し続ける場合であっても、培地の少なくとも一部および細胞の大部分が装置内に確実に残るようにする。
【0038】
培地除去開口部と培養面との間隔を変える、または細胞を回収するために大きく傾けなければならないような細胞培養/細胞回収装置の設計を防ぐ場合、別々に培地除去開口部および細胞除去開口部を作成し、下流作業を簡素化するために前述の作業を細胞損失や培養面および/または気体透過性材料に損傷の恐れなく用いることは容易である。
図6A、
図6B、
図6Cおよび
図6Dはそういった例をもたらす。静止細胞培養の配置での細胞培養/細胞回収装置5000の断面図を示しており、この装置は上端5012と下端(この図では培養面5006)とにより区切られた内容物5014と、通気口5028と、培地除去開口部5008を備えた培地除去導管5010と、細胞除去開口部5002を備えた細胞除去導管5004とを含むものとする。上端5012は、1つ以上の側壁5054により下端へ接するのが好ましく、1つ以上の側壁5054は、培養面に垂直とするのがより好ましい。初期培地容量5020Aは装置内にある。初期培地容量5020Aの高さは、最も高い培地面から最も低い培地面までの距離と同じ初期培地高さ5021Aとする。使用中、細胞5016は培養面5006上に存在するものとする。一般に、当業者は、非接着性細胞(即ち、浮遊細胞とも呼ばれる)は、培養面と実際に物理的に接触する低い位置の多くの細胞と互いに積み重なることができるので、非接着性細胞の全てが培養面に接触するとは限らないことに気付くべきである。培養面5006は、培養作業中は水平に置くのが好ましく、無孔性の液体不透過性材料を含むとするのが好ましく、さらに、非接着性細胞を培養する場合には、疎水性とするのが好ましい。細胞5016は初期細胞密度にあるとし、この初期細胞密度は初期培地容量5020Aで割った細胞5016の量とする(例えば、細胞/ml)。また、細胞5016は初期表面密度にもあるとし、この初期表面密度は細胞が存在する培養面5006の表面積で割った細胞5016の量とする(例えば、細胞/cm
2)。重ねて、非接着性細胞の場合には、これは、静止状態に引き寄せられ、培養面に更に引き寄せられないようにした細胞の総数を含むものとする。これは、他の細胞の上に載っている細胞(培養面と直接接触していないもの)も含む。培地除去開口部5008は、培養面5006から離れており、分かるように、その間隔は残留培地高さ5021Bを構成する。
【0039】
細胞培養作業のある時点で、初期培地容量5020Aをより少量の残留培地容量まで減らす培地除去作業を行い、新鮮な培地を追加するか細胞を残留培地容量に濃縮することが望ましくなる。初期培地容量5020Aの一部を除去するために、
図6Bにて最もよく分かるように、気体送出部を通気口5028に接続する。この例では、気体送出部はダイアフラムポンプ5050とし、これは気体導管5052により通気口5028に接続する。ダイアフラムポンプ5050が作動すると、ダイアフラムポンプ5050は気体を気体導管5052内に押しやり、通気口5028を介して細胞培養/細胞回収装置5000内に入れる。気体を細胞培養/細胞回収装置5000の内容物5014内に追いやると、初期培地容量5020Aの一部が培地除去開口部5008内へ移り、培地除去導管5010を介して細胞培養/細胞回収装置5000から廃液容器内に追いやられ、
図6Cに示すように残留培地容量5020Bおよび細胞5016が残る。残留培地容量5020Bの高さは、残留培地高さ5021Bとし、最も高い残留培地面と最も低い残留培地面との間隔としてこの高さを定義する。細胞5016は残留細胞密度にあるとし、この残留細胞密度は残留培地容量5020Bで割った細胞5016の量(例えば、細胞/ml)とする。細胞5016はまた残留表面密度にもあるとし、この残留表面密度は細胞が存在する培養面5006の表面積で割った細胞5016の量(例えば、細胞/cm
2)とする。廃液容器を筐体とする必要はなく、培地除去導管5010に物理的に装着する必要もない。例えば、廃液容器を代わりに実験室のシンクのように一般的なものとすることもできるが、バッグまたは遠心分離管などの密封容器とするのが好ましく、閉鎖系の様式でバイオハザードの可能性を封じ込めるか、滅菌性を維持するために培地除去導管5010に封止して接続する。このような密封容器を
図6Cにて密封された廃液容器5032として示し、この廃液容器5032を培地除去導管5010に装着する。初期培地容量5020Aの一部を細胞培養/細胞回収装置5000から除去しているとき、廃液容器5032内の培地の容量は培地除去導管5010内の初期培地容量5020Aの分(あれば)だけ少ない初期培地容量5020Aとする。この培地の除去作業中、気体が細胞培養/細胞回収装置5000内に進入して内容物5014の圧力が上昇する際に、培養面5006は制約なしに上端5012とは反対方向へ移動することを防止するのが好ましい。
図6Cに示すように、培養面5006と接触し、実質的な平面位置で培養面5006を保持する培養面支持体5018によりこれを行い、培養面の損傷を防ぐ。「実質的」という用語は、以前、水平位置に関して説明したが、これは平面位置にも適用する。当業者は、培養面支持体の設計に関する更なる指針について、同時係属‘814および‘848を参照されたい。
【0040】
図6Dを参照すると、細胞回収容器5040を細胞培養/細胞回収装置5000の細胞除去導管5004に装着し、培地除去導管5010を閉じる培地除去導管クランプ5009により流体の流れを阻む更なる工程を、細胞5016の回収のために行う。培地除去導管5010での流体の流れを阻むことは、止血鉗子の使用と同じくらい単純にすることが可能であり、或いは本開示中に更に記載するように自動化してもよい。前述のように、細胞回収の前に、装置内の残留培地を撹拌して培養面から細胞を取り除き、それらを残留培地に懸濁させることは有用かもしれない。細胞回収は、培地及び細胞を回収する従来の方法(例えば、蠕動ポンプを使用すること)により行うことができるが、好ましい方法は、気体移送法が与える正圧を用いることにより、培養面及び/又は気体透過性材料が上端に向かって動いたり、作業中に形状が歪むのを防止することとする。
図6Dに示すように、気体送出部は気体導管5052を介して通気口5028に接続する。この例では、気体送出部をダイアフラムポンプ5050とする。ダイアフラムポンプ5050が作動すると、気体が気体導管5052内へ追いやられ、通気口5028を介して細胞培養/細胞回収装置5000内へ入る。気体が細胞培養/細胞回収装置5000内へ追いやられると、残留培地5020Bおよび細胞5016は細胞除去開口部5002内へ移り、細胞除去導管5004を通って細胞回収容器5040内へ追いやられる。その後、細胞回収容器5040は、細胞5016の後続作業のために、滅菌した管の溶着などの好ましい滅菌方法により、滅菌除去できる。
【0041】
細胞培養/細胞回収装置の内容物の一部を洗い流すことができ、これは初期細胞除去工程後に装置内に残る可能性のある細胞を回収するのに望ましい。例えば、これは、細胞除去作業の開始時には装置内になかった液体供給源を追加する必要なく行うことができる。洗い流す材料として密封した廃液容器内にある培地を使用して行うことができる。これを行うには、培地除去クランプを開放し、通気口を開放し、単に培地が装置に逆流できるようにするのに必要な高さまで廃液容器を上昇させることなどにより廃液容器を加圧する。これは、折りたためる場合(バッグなど)、廃液容器を圧搾して装置内への流動を開始することが役立てられる。十分な量の培地が装置に戻ったと使用者が判断した場合、培地除去導管クランプを閉じ、細胞除去作業を繰り返すことができる。
【0042】
空気を用いる培地および/または細胞を移す既述の作業は、例えば、止血鉗子で導管を開閉し、作業の視覚的判断により気体送出部をオン・オフに切り替えるなど単純な方法で行うことが可能で、多くの細胞調製を望む場合には作業の一部の自動化が有益かもしれない。考慮すべき要因の1つは、培地および/または細胞をそれぞれの容器内に追いやった後にも気体送出部が気体を装置に送出し続ける可能性があることである。この場合、気体を容器内に追いやり、容器を加圧することにより、容器などの密封が破壊する可能性がある。更に、気泡の表面張力や気体と細胞の接触により細胞膜が完全である状態を破壊するかもしれないため、気体が細胞の損傷を引き起こす可能性がある。考慮すべき別の要因は、培地および/または細胞をそれぞれの容器に追いやった後に気体送出部をオフにしていない場合に細胞培養/細胞回収装置自体の中に形成するかもしれない圧力である。
【0043】
図7は、これらの問題を解決するために設計した装置の例示的実施例の概略図を示す。当業者は、この例示的実施例が
図3などに示すようなたった1つの培地除去導管、又は調節可能な培地除去導管、又は独立した培地/細胞除去導管を備えて作られた細胞培養/細胞回収装置と適合することを認識すべきである。一般に、自動化装置は、培地除去導管又は細胞除去導管を介して細胞培養/細胞回収装置を出た培地を気体に置き換える作業点を認識することが好ましい。再び
図7を参照すると、流体検出部6044A及び6044Bは、培地除去導管または細胞除去導管を介して細胞培養/細胞回収装置を出た培地を気体に置き換える作業点を認識することができ、培地除去導管6010および細胞除去導管6004に近接している。別の言い方をすれば、流体検出部は、液体又は気体が導管内に存在するかどうかを検出できる。第1流動制御部6046Aは、培地除去導管6010を開閉するように作動し、第2流動制御部6046Bは、細胞除去導管6004を開閉するように作動する。この例では、電子作動式ピンチクランプが流動制御部として機能し、導管は弾性のある管で作製される。細胞培養/細胞回収装置6000は、その細胞培養の配置における静止細胞培養装置(即ち、培地は強制混合に供されず、培養面は上端よりも下、好ましくは水平位置にある)とするのが好ましい。培地6020は、第1培地容量にて、かつ、第1培地高さにて細胞培養/細胞回収装置6000内に存在するものとし、細胞6016は培養面6006上で重力により下に沈んでいる。培養面6006を、培養面支持体6018により水平面に保持するのが好ましい。培地除去開口部6008から培養面6006の間隔は、細胞除去開口部6002から培養面6006の間隔をより大きい。細胞除去導管は側壁と接触し、又は培養面と接触し、又は1つ以上の側壁6054を培養面と接続する縁部に沿って配置し、又は前述のように培養面内のポケットに配置するのが好ましく、それにより細胞回収を最大にするべく細胞除去開口部を配置する。気体導管6052は、通気口6028を気体送給部6050に接続する。培地除去導管6010を廃液容器6032に接続し、細胞除去導管6004を細胞回収容器6040に装着する。ソフトウェアアルゴリズムは、高濃縮状態で細胞を回収するのに要する様々なタスクを実行するのに必要な電子信号を送出することができる。培地6020の容量を減らすために、流動制御部6046Aは培地除去導管6010を通る流体が流れられる状態とし、流動制御部6046Bは細胞除去導管6004を通る流体が流れられない状態とし、気体送出部を作動し、気体が通気口6028を介して細胞培養/細胞回収装置6000内に進入し、内容物6014を加圧し、培地6020を培地除去開口部6008に追いやり、培地除去導管6010を通して廃液容器6032に追いやる。培地6020の高さが培地除去開口部6008の僅か下に達すると、気体が培地除去開口部6008へ入り、培地除去導管6010を通り、流体検出部6044Aにより検出される。流体検出部6044Aは、流動制御部6046Aへ信号を送り、廃液容器6032への流体の流れを停止させる。気体送出部6038は、同時に気体の送出の停止と圧力安全弁6056開放の両方か片方を行うのが好ましい。この工程は必要があれば行うが、その強みは細胞培養/細胞回収装置6000内の圧力を最小限にすることであり、当業者は特定の圧力閾値に達した後に気体送出が不可能な気体送出部の使用や圧力安全弁の使用などを含む、その目的を果たす多くの方法があると認識されたい。培地6020が廃液容器6032へ移動し終わると、操作者は次に、培養面6006から細胞6016を取り除くために残りの培地を撹拌するかどうかを決められる。操作者が自動制御を無効にして、廃液容器への培地移動を停止することが強力なシステムにより可能である(例えば、細胞が廃液容器内に入って無駄になった場合に必要とできるように)ことを当業者は認識されたい。
【0044】
細胞6016が培地6020の残量内で適切な懸濁状態にあるおよび/または細胞回収作業を開始すべきと操作者が判断したら、使用者はボタンを押し、作業を再開する。内容物6014を加圧し、流動制御部6046Bは細胞回収容器6040へ流体が流れられるように作動する。操作者の好みであったり、細胞培養装置を静止細胞培養の配置にするときに、回収する細胞が最大になるような位置に細胞除去導管がくるように配置するべく当該装置を設計しているかどうかに応じて、この時に全ての培地および細胞が低い点に集まるような向きに細胞培養/細胞回収装置6000を置いてもよいし、置かなくてもよい。当業者は、攪拌して細胞を取り除き、装置を回収する細胞が最大になるような位置に向ける工程もまた自動制御できると認識するであろう。静止細胞培養の配置で、培養面6006の高さより低く細胞除去開口部6002があるとき、回収する細胞を最大にできる。例えば、前述のように培養面のポケット、培養面周囲の周縁凹部(その底部が培養面よりも低い)または培地を培養面よりも低いところに存在させ、細胞除去開口部が回収位置にくるように作用し得る任意の機構などによって可能になる。自動制御細胞除去作業のある時点で、気体は細胞除去開口部6002へ入り、細胞除去導管6004を通過し、流体検出部6044Bにより検出される。その時点で、流体検出部6044Bは、流動制御部6046Bへ信号を送り、細胞回収容器6040への流体の流れを停止させる。この時点で、容器6040を取り外すことができ、好ましくは、滅菌した管の溶着機を用いる無菌的な方法とする。しかしながら、装置内に残っているかもしれないような細胞をより多く回収する上で、培養膜を更に洗い流すことが役に立つと操作者が判断する場合、その作業は簡単であると考えられる。流動制御部6046Aを、培地除去導管6010を通る流体の流れを阻止せず、代わりに開放した状態に置くことができ、廃液容器6032を単に持ち上げるか、または圧搾して(廃液容器を袋状のものとするのが好ましい)培地6020を廃液容器6032から細胞培養/細胞回収装置6000内へ送る。この工程中に、通気口6028を大気へ開放するのが好ましい。適切な量の培地6020が細胞培養/細胞回収装置6000に戻ったら、細胞回収作業を繰り返せる。培地を追加したり除去するこの工程は、操作者がふさわしいと考えるだけの細胞を回収するのに必要なだけ繰り返すことができる。
【0045】
図7に示した実施例の装置を使用する方法は、気体送出部をフィルタに接続し、そのフィルタを培地および細胞を含有する気体透過性の細胞培養/細胞回収装置に接続されるようなものとし、細胞培養装置は培地除去導管を含み、第1流体検出部を培地除去導管に接続し、第1流体流動制御部を培地除去導管に接続し、気体送出部からの気体送出を開始し、それにより、気体を細胞培養装置内へ移動させるあらゆる作業や機器の使用を開始でき、気体により細胞培養装置から培地除去導管に接続した培地回収容器へと培地が移動する。第1流体検出部は、培地除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へと変化したかを検出し、第1流体検出部は第1流体流動制御部へ信号を送り、信号を受け取ると、第1流動制御部は培地除去導管を通る流体の流れを停止させる。第1流動制御部が培地除去導管を通る流体の流れを停止させた後、必要に応じて培地を撹拌して培養面から細胞を取り除いて残留培地内に送る工程を行うことができる。前記細胞除去導管と培地が接触する新たな配置に細胞培養装置を置くこともできる。しかしながら、培養面が水平位置にとどまり、細胞除去導管の細胞除去開口部が培養面と接触するか近接している場合、装置の向きを変更するような工程を行う必要はない。細胞回収容器を細胞除去導管に接続し、第2流動制御部により細胞除去導管を通る流体の流れを開放し、気体送出部からの気体は細胞培養装置内へ移動し、培地および細胞は細胞除去導管を通り細胞回収容器内へ移動し、第2流体検出部は細胞除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体に変化したかを検出し、第2流体流動制御部に信号を送る。信号を受け取ると、第2流動制御部は、細胞除去導管を通る流体の流れを停止させる。
【0046】
当業者は、
図7の例示的実施例に記載される装置が、培地容量を減らし、かつ残留培地容量および細胞を除去するように作用するたった1つの培地導管を有する種類の細胞培養/細胞回収装置と接続すると簡素化できることを認識されたい。
図2A~2D、
図3、
図4A~4B、
図5A~
図5Bおよび関連文には、こういった装置を更に詳細例として記載する。したがって、装置は、気体透過性細胞培養装置に接続するフィルタに接続できる気体送出部(この気体送出部は前記フィルタを介して前記気体透過性細胞培養装置に気体を送出することができる)と、気体透過性細胞培養装置に接続する培地除去導管内を移動する種類の流体がいつ液体から気体へと変化するのかを検出できる第1流体検出部(この部は前記培地除去導管を通る流体の流れを停止できる第1流動制御部に信号を送ることができる)とを包含する際に簡略化できる。第1流動制御部が培地除去導管を通る流体の流れを停止させた後、必要であれば、細胞培養装置を培地が培地除去導管と接触している新たな位置に向け、細胞回収容器を培地除去導管に接続し、第1流動制御部は、培地除去導管を通る流体の流れを開放し、前記気体送出部からの気体が前記細胞培養装置内へ移動し、培地および細胞は、培地除去導管を通って細胞回収容器内へ移動し、第1流量検出部は、培地除去導管を通って移動する流体がいつ液体から気体へ変化したかを検出し、第1流体流動制御部に信号を送る。信号を受け取ると、第1流動制御部は前記培地除去導管を通る流体の流れを停止させる。
【0047】
当業者は、細胞が実際に可能な最大限まで細胞除去導管から出て細胞回収容器内へ移ることが有益であることを認識するであろう。したがって、流動制御機構の下流かつできるだけ容器の近くに流体検出部を配置することにより
図7に示すような自動制御を使用する場合、流動制御機構が流動を停止する時の導管内の培地容量は、流体検出部の位置と細胞回収容器との間にあるものに限定される。また、管の内径を最小化することにより、更に導管内の細胞数を減らせる。あるいは、気体が導管内で検出された後、少量のさらなる気体が1つ以上の導管を介して運ばれ、作業完了時に液体が1つ以上の導管内に確実に捕捉されないようにできる。これは、全ての細胞を細胞回収容器へ確実に移動し、および/または導管内に液体がない状態で滅菌管をつなぎ合わせられるようにする上で役立つかもしれない。あるいは、導管を通じて気体を送ることで、作業完了時に導管内に液体を捕らえていないことを確実にできる。
【0048】
当業者は、流動制御部および流体検出部の使用が便利であると認識すべきであるが、細胞回収作業を手動で行うことができる。手動細胞回収作業において、操作者は細胞除去導管を通るクランプ流動を冷却し、培地除去導管を通る流れを開放し、次いで、気体を培地除去導管内へ移動するまで、注射器を使用して装置へ気体を注入できる。次いで、必要に応じて培地を静止状態から攪拌して、培養面から細胞を取り除くことができる。培地除去導管を閉鎖し、細胞除去導管を開放すると、気体を装置に加え、それにより細胞および残留培地を装置から追い出す。
【0049】
培養面および/または気体透過性材料の歪みを防止するために、培地の移動に気体を使用することは、的確な手法であるが、前述のような気体の移動とは違って、培地および/または細胞を装置から引き抜くことを望む場合、培養面および/または気体透過性材料の歪みが最小になるように装置を作ることが可能である。こういった手法は、装置の外部圧力より小さい圧力において装置の内容物で行うことができ、それにより装置の壁全体に圧力差が生まれる。このような条件の下で培養面の平面状態からの歪みを防止する1つの手法は、構成部分(例えば、培養面支持部などの)へ気体透過性材料を物理的に装着することである。
図8および
図9は、このような2つの例を提供する。簡素化のために、細胞培養/細胞回収装置全体は示していない。
図8において、培養面6006は、その下面から出るタブ6058を包含する。タブ6058は、培養面支持体6018上の嵌合機構と噛み合っている。鉛直支持体6018Aは、培養面支持体6018の基部から突出して、静止細胞培養の間、培養面6006を水平位置に保持する。培養面6006は、気体透過性材料を含むのが好ましい。シリコーンの場合、液体射出成形により膜を製造可能であり、タブ6058を膜の形にすることができる。
図9は、培養面外側の圧力が細胞培養/細胞回収装置の内容物の圧力を超えるときに、培養面を実質的な平面状態で維持する別の例を示している。この実例では、培養面7006はシリコーンを含み、格子7060上の外側を被覆し(即ち、格子に装着し)、培養面支持体7018に装着する。通気開口部7018Bにより、培養物の受動的な気体交換が可能になる。別の言い方をすれば、周囲気体は、接触せざるを得ない状況になる必要なしに培養面と接触する。このように、培養面7006外側の圧力が細胞培養/細胞回収装置の内容物の圧力を超えても、培養面支持体7018との接触点を介して培養面7006を所定の位置に保持する。
【0050】
培地および/または流体を装置から引き出すときに培養面を実質的な平面状態で維持する別の方法は、細胞培養/細胞回収装置の内容物の圧力と培養面外側の圧力とのバランスをとることである。
図10は、それを達成可能な方法の実例を示している。細胞成長/細胞回収装置8000は、培養面支持体8018を含むものとする。培養面支持体8018は、1つ以上の通気開口部8021を含む。1つ以上の通気開口部により培養面8006へと培養面8006からの周囲気体の受動的な移動ができ、通気開口部は液体不透過性、気体透過性、無孔性とするのが好ましく、細胞培養中は実質的な水平面にある。別の言い方をすれば、気体を気体透過性材料と物理的に接触せざるを得ない構造を全く用いずに、受動的な移動により周囲気体は気体透過性培養面と接触する。培地除去導管8010を廃液容器8032に装着し、蠕動ポンプ8030により培地8020を細胞成長/細胞回収装置8000から引き出せるように蠕動ポンプ8030と接続する。培地の除去中、1つ以上の通気開口部8021が周囲気体とやりとりする能力を最小化し、できれば排除する。この図では、培地容量の減少中、液体除去アダプタ8027を一時的に装着し、液体除去アダプタ8027は、培養面支持体8018と嵌合し、圧力平衡導管8033Aを含み、更にたとえば接合部をルアー形状とすることもできる圧力平衡導管接合部8029を包含する。圧力平衡導管8033Aは、圧力平衡導管8033Bに嵌合することができる。圧力平衡導管8033Bは、培地除去導管8010への装着が可能で、作動時に、液体除去アダプタ8027と培養面支持体8018の間の空間から蠕動ポンプ8030は気体を引き出すことができ、事実上、気体空間8019は周囲気体に比べて低い圧力となる。圧力平衡導管8033Bを培地除去導管8010に装着する場合、圧力平衡導管8033Bは、必要があれば、逆止弁8034および/または圧力平衡導管フィルタ8035を包含し、これは気体を廃液容器へ移動し、培地8020が当該容器内へ移動するのを防止することができ、それと同時に装置とその流体接続部分の滅菌性を維持するのが好ましい。当業者は、圧力平衡導管8033Bを培地除去導管8010に取り付ける必要はないが、代わりに蠕動ポンプと接続している別個の導管とすることができることを認識すべきである。この場合、出来れば培地除去導管および圧力平衡導管に接続する多重流路を持つ蠕動ポンプを使用する。このような構成では、蠕動ポンプ8030は、培養面8006の下側から気体を引き出し、培養面8006に真空を引き、これが細胞成長/細胞回収装置8000内に作成される真空と平衡し、それにより培養面8006を実質的な水平状態に保持する、または少なくとも培養面8006が受ける歪みを軽減する。当業者は、圧力平衡導管から気体を引き出すいかなる装置も、培地を除去する際に、培養面に損傷を与える可能性のある歪みを防止する目的を満たせることを認識すべきである。
【0051】
培養面支持体8018を液体除去アダプタ8027と接続するように設計し、培養面支持体8018を、培養面に隣接したその外側の圧力が内容物8014の圧力以下になるような速度で気体を気体空間8019から除去できるように、細胞培養/細胞回収装置8000と接続するように設計する。当業者は、当該接続部が、気体空間8019の圧力を制御する限り、気密シールとする必要はないことを認識されたい。しかしながら、密封が設けられるのが好ましい。当業者はまた、液体除去アダプタ8027が、培地を細胞培養/細胞回収装置から引き出すときに実質的な水平状態で培養面を維持するという目的を満たす必要はないことを認識されたい。例えば、圧力平衡導管8033Bを1つ以上の通気開口部8021と直接接続できる。実際、使用する場合、接続を断つときに、周囲気体が任意の機構または作業を必要とすることなく培養面と受動的に接触して気体を送らざるをえないように、液体除去アダプタは、できれば培養面支持体への容易な接続と切断ができるのが好ましい。当業者は、培養面支持体を取り外せないような方法で細胞培養/細胞回収装置に装着する必要がないことに気付くべきである。
【0052】
図11は、実質的な歪みがほとんどない培養面を備えた装置から培地を引き出すことができるべく適合した細胞培養/細胞回収装置の別の実施例を示す。細胞成長/細胞回収装置9000は、培養面支持体9018を含むものとする。培養面支持体9018は、1つ以上の通気開口部9021を含む。1つ以上の通気開口部9021は、培養面9006へと培養面9006からの周囲気体の受動的な移動を可能にし、できれば気体透過性、液体不透過性で、細胞培養中は水平面内にあるものとする。通気開口部フィルタ9036により、1つ以上の通気開口部9021への汚染物質の接近を防ぐ。当業者は、通気開口部フィルタに選択した材料が滅菌バリアとして機能し、この材料により培養に十分な酸素付加ができる速度にて培養面へ受動的に気体を出入りさせられることを認識されたい。好ましくは、0.45ミクロン未満の孔径を有する多孔性材料とし、より好ましくは0.22ミクロン未満とする。培地除去導管9010を廃液容器9032に装着し、蠕動ポンプ9030により細胞成長/細胞回収装置9000から培地9020を引き出せるように、蠕動ポンプ9030と接続する。圧力平衡導管9033は、培地除去導管9010を気体空間9019に繋げ、必要があれば逆止弁9034(培地が気体空間へ入る可能性を防ぐため)および/または圧力平衡導管フィルタ9036(汚染物質またはバイオハザード物質が気体空間へ侵入し、その後、通気開口部フィルタを通過する可能性を防ぐため)を含んでもよい。培地除去の間、蠕動ポンプの速度は、気体空間内9019の圧力(即ち、培養面9006と通気開口部フィルタ9036の間の空間)が内容物9014の圧力以下とするようなものであり、それにより、上端9012方向への培養面9006の動きを最小限に抑えるか防止する。好ましくは、圧力平衡導管を、通気開口部から気体空間へ出ている管に嵌合する弾性のある管とし、滅菌した管の溶着部が嵌合するのに使用する。
【0053】
図12Aおよび
図12Bには、細胞培養/細胞回収装置および作業の更に別の実施例を示している。本実施例において、培地を細胞培養/細胞回収装置から引き出すときの周囲環境の圧力よりも細胞培養/細胞回収装置の内容物の圧力は低い。
図12Aは、静止細胞培養の状態にある細胞培養/細胞回収装置10000を示している。細胞10016は、気体透過性、液体不透過性の培養面10006上に重力により沈む。
図12Bにおいて、周囲気体制限器10018は、細胞培養/細胞回収装置10000と接触している。周囲気体制限器10018は、培養面10006との周囲気体の接触を制限するように機能し、液体を細胞培養/細胞回収装置10000から引き出すときに、培養面10006全体の圧力不均衡を機能する。この例では、蠕動ポンプ10030は、培地除去導管10010から培地10020を引き出すように機能する。培地を細胞培養/細胞回収装置から引き出すとき、通気口フィルタ10028により気体が装置に入るのを制限する場合、圧力が低下する。細胞培養/細胞回収装置10000の内容物の圧力が周囲環境に比べて低下しているにもかかわらず、周囲気体制限器10100により培養面10006が相対圧力不均衡を受けないようにする。周囲気体制限器10100は、細胞培養/細胞回収装置10000に対して気密に接続する必要はないが、上端10012に向かって培養面が実質的に動かないように制限したい場合には好ましい。1つ以上の導管を用いて、前述のように細胞回収の前に培地容量を減らす作業を行うことができる。好ましくは、培養面支持体10018がある場合には、その中の気体を最小限に抑えるようにこれを設計する。
【0054】
図13A、
図13B、および
図13Cには、細胞培養/細胞回収装置および方法の更に別の実施例を示している。この手法では、所定容量の気体を細胞培養/細胞回収装置へ注入する。この例示的実施例における注入した気体の吹き出し方は配置とするものの、当業者は、吹き出し部分が蛇腹状などのいかなる構造でも既知の容量の気体を分配できることを認識すべきである。
図13Aに示すように、細胞培養/細胞回収装置11000を静止細胞培養状態で示しており、これは初期培地容量11020Aおよび細胞11016を含むものとする。ピストン11100は、通気口フィルタ11028を介して細胞培養/細胞回収装置11000に接続する。
図3Bに示すように、廃培地を除去する際に、ピストンヘッド11150は、細胞培養/細胞回収装置11000へある容量の気体を送るために第1の所定距離を移動する。当該容量の気体は、培地除去導管11010から等量の培地を追いやり、この培地除去導管は廃液容器(明確にするのに図示はしない)に対して開放されている。この工程が完了すると、培地除去導管11010を廃液容器に対して閉じ、残存培地容量11020Bは、細胞11016とともに細胞培養/細胞回収装置11000に残る。
図13Cに示すように、細胞11016および残留培地11020Bを除去するとき、細胞培養/細胞回収装置11000へ追加容量の気体を分配するためにピストン11100は第2の所定距離を移動し、それにより細胞11016および残留培地容量11020Bを、開放細胞除去導管11004を通して細胞回収容器(明確にするのに図示はしない)に追いやる。
【0055】
当業者は、発明の趣旨を逸脱しない限り、本開示に対して多くの変更を行うことができることを認識するであろう。故に、本発明範囲を記載したり説明した実施例に限定する意図はない。むしろ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物により解釈されるべきである。本明細書で引用した各刊行物、特許、特許出願、および参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。