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特許7051976胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)結合性抗体および抗体を使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)結合性抗体および抗体を使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220404BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220404BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220404BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220404BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220404BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220404BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220404BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220404BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220404BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220404BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C07K16/46
C07K16/24
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/12
A61K47/04
A61K9/12
A61K9/14
A61P11/00
A61P11/06
A61P1/04
A61P11/02
A61P37/08
A61P43/00 111
A61P17/00
A61P37/06
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020180181
(22)【出願日】2020-10-28
(62)【分割の表示】P 2019077590の分割
【原出願日】2016-09-07
(65)【公開番号】P2021035376
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-26
(31)【優先権主張番号】62/216,050
(32)【優先日】2015-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/342,511
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ロンドー,ジーン-ミッチェル レーン
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ダンフォース
(72)【発明者】
【氏名】ヒュアン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘミグ,レーン
(72)【発明者】
【氏名】クノップ,ハンス-ペーター
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,カピル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ヒーク,ジーノ アンセルマス
(72)【発明者】
【氏名】ホウスト,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】アンドロワー,バーバラ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509862(JP,A)
【文献】特表2009-527235(JP,A)
【文献】特表2009-523426(JP,A)
【文献】The New England Journal of Medicine,2014年,Vol.370,p.2102-2110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K 16/00-46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に特異的に結合する抗体または抗体断片をコードする核酸であって、前記抗体または抗体断片が、
a)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1);
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2);
配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3);
配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1);
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2);および
配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)
を含む抗体または抗体断片;
b)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1;
配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2;
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3;
配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR1;
配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR2;および
配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む抗体または抗体断片;
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む抗体または抗体断片;
d)配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体または抗体断片;
e)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体または抗体断片;
のうちのいずれか1つから選択される、核酸。
【請求項2】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体または抗体断片をコードする核酸。
【請求項3】
抗体断片が、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、ミニボディ、またはダイアボディから選択される、請求項1に記載の抗体または抗体断片をコードする核酸。
【請求項4】
抗体断片がFabである、請求項3に記載の抗体または抗体断片をコードする核酸。
【請求項5】
抗体断片がヒトまたはヒト化Fabである、請求項4に記載の抗体または抗体断片をコードする核酸。
【請求項6】
抗体がヒト免疫グロブリンである、請求項1または2に記載の抗体または抗体断片をコードする核酸。
【請求項7】
抗体または抗体断片が、100pM未満の解離定数(K)で、ヒトTSLPに結合する、請求項1から6のいずれかに記載の抗体または抗体断片をコードする核酸。
【請求項8】
抗体または抗体断片が、10pM未満の解離定数(K)で、ヒトTSLPに結合する、請求項7に記載の抗体または抗体断片をコードする核酸。
【請求項9】
)配列番号8および配列番号18;
)配列番号10および20;
)配列番号21および24;
)配列番号23および26;
を含む、請求項1に記載の核酸。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の核酸を含むベクター。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載の核酸または請求項10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の抗体又は抗体断片を作製する方法であって、
請求項1から9のいずれかに記載の抗体又は抗体断片をコードする核酸を発現する宿主細胞を培養するステップと;
前記抗体又は抗体断片を、培養培地から回収するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットにより電子的に提出され、参照によりその全体が本
明細書に組み込まれる、配列表を含有する。2016年8月23日に作成された前記AS
CIIコピーは、PAT057035-WO-PCT_SL.txtと名付けられ、46
,696バイトのサイズである。
【0002】
本発明は、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に特異的に結合する分子、例えば
、抗体または抗体断片、これらの分子を含む組成物、ならびにこれらの分子を使用する方
法および作製する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、IL-7Rαサブユニットと、一般的な
γ-受容体様鎖と相同な固有の構成要素であるTSLP-Rとからなるヘテロ二量体の受
容体を介してシグナル伝達するサイトカインである(Pandey et al., Nat. Immunol. 200
0, 1(1):59-64)。TSLPは、胸腺内、肺内、皮膚内、腸内、および扁桃内の上皮細胞
、ならびに気道平滑筋肉細胞、肺線維芽細胞、および間質性細胞が発現する(Edwards, 2
008, Drug news & perspectives 21, 312-316;He and Geha, 2010, Annals of the New
York Academy of Sciences 1183, 13-24;Reche et al., 2001, Journal of immunology
167, 336-343)。これらの細胞は、炎症促進性刺激に応答して、TSLPを産生し、TS
LPは、樹状細胞(Soumelis et al., 2002, Nature immunology 3, 673-680)、単球(R
eche et al., 2001, Journal of immunology 167, 336-343)、およびマスト細胞(Allak
hverdi et al., 2007, The Journal of Experimental Medicine 204, 253-258)を含む、
多数の生得免疫細胞に対するその活性を介して、アレルギー性炎症性応答を駆動する。T
SLP-RおよびIL-7Rαの両方を最高度に発現する公知の細胞集団は、骨髄樹状細
胞である(Reche et al., 2001, Journal of immunology 167, 336-343)。
【0004】
TSLPは、ナイーブT細胞の増殖を促進することが可能であり、高レベルのIL-4
、IL-5、およびIL-13を発現するTh2細胞への、それらの分化を駆動しうる(
Omori and Ziegler, 2007, Journal of immunology 178, 1396-1404)。高レベルのTS
LP発現が、喘息性の肺上皮細胞内および慢性アトピー性皮膚炎病変内で見出されている
ことから、アレルギー性炎症におけるTSLPの役割が示唆される(Ziegler and Artis,
2010, Nature immunology 11, 289-293)。より近年の証拠は、TSLPを、Th17細
胞の分化およびTh17に駆動される炎症性過程と関係づけている(Hartgring et al.,
2011, Arthritis and rheumatism 63, 1878-1887;Tanaka et al., 2009, Clinical and
experimental allergy: Journal of the British Society for Allergy and Clinical Im
munology 39, 89-100;Wu et al., 2014, Journal of molecular and cellular cardiolo
gy 76, 33-45)。慢性アレルギー性(アトピー性)喘息は、Th2型の炎症を特徴とする
ことが多いのに対し、非アレルギー性喘息性炎症は主に好中球性であり、Th1とTh1
7とを混合したサイトカイン環境を伴う。喘息における慢性炎症の帰結は、気管支過敏性
(BHR)、粘液の過剰産生、気道壁のリモデリング、および気道の狭窄を含む(Lambre
cht and Hammad, 2014, Nature immunology 16, 45-56)。TSLPは、アレルギー性喘
息性応答の誘発および維持/増強に関与することが示されている(Wang et al., 2006, I
mmunity 24, 827-838)。より近年になって、TSLPシグナル伝達はまた、局所抗原に
よる二次感作に対する、メモリーT細胞のリコール応答にも要求されることが見出された
(Wang et al., 2015, The Journal of allergy and clinical immunology 135, 781-791
e783)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本明細書では、ヒト胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に特異的に
結合する分子、例えば、モノクローナル抗体、またはFab、Fab’、F(ab’)
、scFv、ミニボディ、もしくはダイアボディなど、その抗体断片が提示される。一部
の実施形態では、TSLP結合性分子は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決
定領域1(HCDR1);配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC
DR2);配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3);配列
番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1);配列番号12のア
ミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2);および配列番号13のアミノ酸
配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含みうる。一部の実施形態では、TS
LP結合性分子は、配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1;配列番号6のアミノ酸
配列を含むHCDR2;配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3;配列番号14のア
ミノ酸配列を含むLCDR1;配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR2;および配
列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む分子を含みうる。
【0006】
一部の具体的な実施形態では、分子は、ヒトTSLPに結合し、配列番号4のアミノ酸
配列を含むHCDR1;配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2;配列番号3のアミ
ノ酸配列を含むHCDR3;配列番号11のアミノ酸配列を含むLCDR1;配列番号1
2のアミノ酸配列を含むLCDR2;および配列番号13のアミノ酸配列を含むLCDR
3を含む抗体断片を含む。他の具体的な実施形態では、分子は、ヒトTSLPに結合し、
配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1;配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR
2;配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3;配列番号14のアミノ酸配列を含むL
CDR1;配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR2;および配列番号16のアミノ
酸配列を含むLCDR3を含む抗体断片を含む。
【0007】
一部の実施形態では、TSLP結合性分子は、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可
変領域と、配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含みうる。
【0008】
一部の実施形態では、TSLP結合性分子は、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖
と、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含みうる。一部の実施形態では、TSL
P結合性分子は、配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号19のアミノ酸配列
を含む軽鎖とを含みうる。
【0009】
一部の実施形態では、TSLP結合性分子は、以下の残基:配列番号22の重鎖配列の
Thr28、Asp31、Tyr32、Trp33、Asp56、Glu101、Ile
102、Tyr103、Tyr104、Tyr105、または配列番号25の軽鎖配列の
Gly28、Ser29、Lys30、Tyr31、Tyr48、Asp50、Asn5
1、Glu52、Asn65、およびTrp92のうちの、少なくとも1つ、少なくとも
2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも
7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なく
とも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16
個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または全てを含むパラト
ープを含みうる。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書では、ヒトTSLP内のエピトープに特異的に結合する
分子であって、エピトープが、以下の残基:配列番号38のLys38、Ala41、L
eu44、Ser45、Thr46、Ser48、Lys49、Ile52、Thr53
、Ser56、Gly57、Thr58、Lys59、Lys101、Gln145、お
よびArg149のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくと
も4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくと
も9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、
少なくとも14個、少なくとも15個、または全てを含む分子が提示される。一部の実施
形態では、このような分子は、配列番号38の残基の以下のセット:(a)Lys49お
よびIle52、(b)Gly57およびLys59、(c)Lys101、または(d
)Gln145およびArg149のうちの少なくとも1つを含むエピトープに結合する
【0011】
一部の実施形態では、TSLP結合性分子は、ヒトTSLPに特異的に結合するヒト免
疫グロブリンである。一部の実施形態では、TSLP結合性分子は、モノクローナル抗体
、またはFab、Fab’、F(ab’)、scFv、ミニボディ、もしくはダイアボ
ディから選択される抗体の断片である。一部の実施形態では、TSLP結合性分子は、ヒ
トTSLPに特異的に結合するFab、例えば、ヒトまたはヒト化Fabである。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書で記載される分子は、100pM未満の解離定数(K
)で、ヒトTSLPに結合する。一部の実施形態では、本明細書で記載される分子は、1
0pM未満の解離定数(K)で、ヒトTSLPに結合する。
【0013】
別の態様では、本明細書では、少なくとも1つの、本明細書で記載されるTSLP結合
性分子と、少なくとも1つの、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提示され
る。一部の実施形態では、賦形剤:TSLP結合性分子の質量比は、0.5を超える。一
部の実施形態では、TSLP結合性分子は、医薬組成物のうちの約5%~約95%、また
は約10%~約90%、または約15%~約85%、または約20%~約80%、または
約25%~約75%、または約30%~約70%、または約40%~約60%、または約
40~50%(w/w)である。一部の実施形態では、医薬組成物は、トリロイシンまた
はロイシンなどのシェル形成剤を含む。一部の実施形態では、トリロイシンまたはロイシ
ンは、組成物のうちの約10~75%(w/w)である。一部の実施形態では、トリロイ
シンは、組成物のうちの約10~30%(w/w)である。他の実施形態では、ロイシン
は、組成物のうちの約50~75%(w/w)である。一部の実施形態では、医薬組成物
は、少なくとも1つのガラス形成賦形剤であって、ヒスチジン、トレハロース、マンニト
ール、スクロース、またはクエン酸ナトリウムから選択されるガラス形成賦形剤を含む。
一部の実施形態では、少なくとも1つのガラス形成賦形剤は、トレハロースまたはトレハ
ロースとマンニトールとの混合物である。一部の実施形態では、ガラス形成賦形剤は、組
成物のうちの約15~35%(w/w)である。一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒ
スチジン緩衝液、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、またはリン酸緩衝液などの緩衝剤を含む
。一部の実施形態では、緩衝剤は、組成物のうちの約5~13%である。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書で提示される医薬組成物を、乾燥粉末製剤、例えば、吸
入に適する乾燥粉末製剤として製剤化する。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書で提示される医薬組成物は、シェルおよびコアを含み、
シェルが、トリロイシンまたはロイシンを含み、コアが、(i)TSLP結合性分子、ト
レハロース、マンニトール、および緩衝剤;または(ii)TSLP結合性分子、トレハ
ロース、緩衝剤、およびHClを含む噴霧乾燥粒子を含む。緩衝剤は、ヒスチジン緩衝液
、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、またはリン酸緩衝液でありうる。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書で提示される医薬組成物は、(i)トリロイシンまたは
ロイシンを含むシェルと;(ii)トレハロース、マンニトール、ヒスチジン、およびT
SLP結合性分子を含むコア、またはトレハロース、ヒスチジン、HCl、およびTSL
P結合性分子を含むコアであって、TSLP結合性分子が、(a)配列番号4のアミノ酸
配列を含むHCDR1;配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2;配列番号3のアミ
ノ酸配列を含むHCDR3;配列番号11のアミノ酸配列を含むLCDR1;配列番号1
2のアミノ酸配列を含むLCDR2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むLCDR
3;または(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1;配列番号6のアミノ酸配
列を含むHCDR2;配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3;配列番号14のアミ
ノ酸配列を含むLCDR1;配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR2;および配列
番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3のいずれかを含む、抗体のFab断片である、
コアとを含む噴霧乾燥粒子を含む。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書で提示される医薬組成物は、
(a)40%(w/w)のTSLP結合性分子、25%(w/w)のトリロイシン、合
わせた重量を30%(w/w)とするトレハロースおよびマンニトール、ならびに5%(
w/w)のヒスチジン;
b)50%(w/w)のTSLP結合性分子、15%(w/w)のトリロイシン、2.
6%(w/w)のHCl、5.6%(w/w)のヒスチジン、ならびに合わせた重量を2
6.8%(w/w)とするトレハロースおよび塩基;または
c)50%(w/w)のTSLP結合性分子、15%(w/w)のトリロイシン、19
.4%(w/w)のトレハロース、13.04%(w/w)のヒスチジン、および2.5
6%(w/w)のHCl
を含む。
【0018】
本明細書ではまた、本明細書で記載される、任意のTSLP結合性分子をコードする核
酸、このような核酸を含むベクター、および核酸またはベクターを含む宿主細胞も提示さ
れる。
【0019】
また、本明細書で記載されるTSLP結合性分子を作製する方法も提示される。このよ
うな方法は、(a)分子をコードする核酸を発現する宿主細胞を培養するステップと;(
b)分子を、培養培地から回収するステップとを含みうる。
【0020】
別の態様では、本明細書では、少なくとも1つの、本明細書で記載されるTSLP結合
性分子または医薬組成物と、分子または医薬組成物を、対象に送達するためのデバイスと
を含むキットが提示される。一部の実施形態では、デバイスは、分子または医薬組成物を
、エアゾール化形態で送達しうる。一部の実施形態では、デバイスは、乾燥粉末吸入器で
ある。
【0021】
別の態様では、本明細書では、対象に、治療有効量の、本明細書で記載される、任意の
TSLP結合性分子または医薬組成物を投与することにより、それを必要とする対象、例
えば、ヒト患者におけるTSLP関連状態を処置する方法が提示される。また、それを必
要とする対象におけるTSLP関連状態の処置における使用のための、本明細書で記載さ
れる分子または医薬組成物も提示される。それを必要とする対象におけるTSLP関連状
態を処置するための、本明細書で記載されるTSLP結合性分子または医薬組成物の使用
もまた含まれる。本開示はまた、それを必要とする対象におけるTSLP関連状態の処置
における使用のための、医薬の製造における、本明細書で記載される分子の使用も含む。
【0022】
TSLP関連炎症性状態は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー
性鼻副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、好酸球性食道炎、またはアトピー性皮膚炎のうちの
いずれか1つでありうる。一部の実施形態では、TSLP関連炎症性状態は、喘息である
。一部の実施形態では、TSLP結合性分子を、吸入に適する乾燥粉末製剤として製剤化
する。一部の実施形態では、TSLP結合性分子を、対象に、例えば、エアゾール化形態
で、経口投与または鼻腔内投与する。一部の実施形態では、TSLP結合性分子を、対象
に、乾燥粉末吸入器により投与する。
【0023】
一部の実施形態では、TSLP関連状態を処置する方法またはTSLP結合性分子の使
用は、第2の薬剤を、処置を必要とする対象に投与するステップもさらに含む。第2の薬
剤は、コルチコステロイド、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、また
はPDE-4阻害剤でありうる。
【0024】
別の態様では、本明細書では、本明細書で記載されるTSLP結合性分子を含む乾燥粉
末製剤を作製するための方法が提示される。このような方法は、以下のステップ:(a)
本明細書で記載されるTSLP結合性分子、トリロイシンまたはロイシン、ガラス形成賦
形剤、および緩衝剤を含む水溶液を用意するステップ;(b)ステップ(a)の水溶液を
、約120℃~約200℃の間(インレット)および55℃~約75℃(アウトレット)
の範囲の温度で噴霧乾燥させて、乾燥粉末粒子を作製するステップ;ならびに(c)乾燥
粉末粒子を回収するステップのうちの1つまたは複数を含みうる。一部の実施形態では、
緩衝剤は、ヒスチジン緩衝液、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、またはリン酸緩衝液から選
択される。一部の実施形態では、ガラス形成賦形剤は、ヒスチジン、ヒスチジンHCl、
トレハロース、マンニトール、スクロース、またはクエン酸ナトリウムから選択される。
【0025】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細を、付属の図面および下記の記載に明示する
。本発明の、他の特色、目的、および利点は、記載および図面、ならびに特許請求の範囲
から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1Aは、抗ヒトTSLP Fab1重鎖(配列番号22)のアミノ酸配列を示す図であり、CDRに下線を付し(Kabatにより規定される)、抗体-抗原間界面に位置する残基を、*で表示する。図1Bは、抗ヒトTSLP Fab1軽鎖(配列番号25)のアミノ酸配列を示す図であり、CDRに下線を付し(Kabatにより規定される)、抗体-抗原間界面に位置する残基を*で表示する。
図2】結晶構造解析研究で使用される組換えヒトTSLPのアミノ酸配列(配列番号38)を示す図であり、二次構造エレメントを、アミノ酸配列の下方に示す。ボックスは、αヘリックスである、α、α、α、およびαを表し、太線は、ループ領域を表す。成熟ヒトTSLPは、Tyr29から始まる。ここで使用される構築物は、N末端のヘキサヒスチジンタグ(配列番号40)(残基15~20)に続き、HRV-3Cプロテアーゼ(PreScission)認識部位(残基21~28)、およびクローニングから生じる残基11~14を有した。Asn64およびAsn119は、潜在的なN結合型グリコシル化部位であり、残基127~130は、フリン切断部位を構成する。
図3】TSLP中和の、抗原で二次感作されたオボアルブミン感作マウスにおける肺炎症に対する効果を示す棒グラフである。アラムを加えたオボアルブミン(OVA)または生理食塩水で感作されるマウスには、感作の1時間前に、抗マウスTSLP抗体またはアイソタイプ対照抗体のいずれかの静脈内投与を施した。全てのマウスを、21日目にOVAで二次感作し、24時間後に屠殺した。値は、BAL中の総細胞数および区別した上での細胞数(total and differential cell counts)の平均値±SEM(標準誤差の平均値)を表す。統計学的解析は、対応のないスチューデントのT検定を使用して実施した。アイソタイプで処置された生理食塩水感作マウスと、OVA感作マウスとの有意差であって、p<0.05における有意差を、(*)で描示し、p<0.01における有意差を(**)で描示する。アイソタイプ抗体で処置されたOVA感作マウスと、抗TSLP抗体処置されたOVA感作マウスとの、p<0.05における差違を、(#)で描示する[PMN:多形核細胞(好中球);Eos:好酸球;MO:単球;Lymph:リンパ球;TCC:総細胞数]。
図4図4A~4Cは、TSLPの中和が、抗原で二次感作されたオボアルブミン感作マウスの肺内の、IL-13レベル(図4A)、エオタキシン-2レベル(CCL24;図4B)、ならびに胸腺調節性ケモカインレベルおよび活性化調節性ケモカインレベル(TARC、CCL17;図4C)を著明に抑制することを示す一連の棒グラフである。アラムを加えたOVA(または生理食塩水)で感作されるマウスには、感作の1時間前に、抗マウスTSLP抗体またはアイソタイプ対照抗体の静脈内投与を施した。全てのマウスを、21日目にOVAで二次感作し、24時間後に屠殺した。値は、特異的ELISAにより測定される、BAL中のメディエーターの平均値±SEMレベルを表す。統計学的解析は、対応のないスチューデントのT検定を使用して実施した。アイソタイプで処置された生理食塩水感作マウスと、OVA感作マウスとの有意差であって、p<0.05における有意差を、(*)で描示し、p<0.01における有意差を(**)で描示する。アイソタイプ抗体で処置されたOVA感作マウスと、抗TSLP抗体処置されたOVA感作マウスとの、p<0.05における差違を、(#)で描示する。
図5】サルにおける総抗TSLP Fab1についての、平均値血清濃度-時間プロファイルを示す折れ線グラフである。
図6図6Aおよび6Bは、最終回の吸入投与の1時間後(1日当たり1kg当たり1、10、20mgの吸入群)、または6日後(1kg当たり1mgのIV+1日当たり1kg当たり20mgの吸入群)におけるサルの、BAL中(6A)または肺ホモジネート中(6B)の総抗TSLP Fab1の平均値濃度を示す棒グラフである。
図7】抗TSLP Fab1と複合したヒトTSLPについての概観を例示する図である。TSLPヘリックスを、N末端から、C末端へと、AからDと表示する。
図8】抗TSLP Fab1により標的とされるTSLPエピトープを示す図である。図の上部は、非水素原子間の4.0Å以内の距離にある、直接的な分子間接点の数を示し、下部は、複合体形成における、溶媒にアクセス可能な表面の低減を示す。TSLPのアミノ酸配列(配列番号41)を、水平軸上に表示する。
図9】抗体から見たTSLPエピトープを示す図である。TSLPを、リボン型の模式図表示で示す。Fab1との直接的な接触(4.0Åの距離カットオフ)に関与する全てのアミノ酸残基を、棒球表示で示す。
図10図10Aおよび10Bは、抗TSLP Fab1の重鎖(配列番号42)(A)パラトープおよび軽鎖(配列番号43)(B)パラトープを示す図である。図の上部は、非水素原子間の直接的な分子間接点(≦4.0Å)の数を示し、下部は、複合体形成における、溶媒にアクセス可能な表面の低減を示す。重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列を、水平軸上に表示する。
図11図11A~11Cは、抗TSLP Fab1の作用方式を示す図である。図11Aは、IL-7Rαとのマウス細胞外シグナル伝達複合体を黒で示し、TSLPRとのマウス細胞外シグナル伝達複合体をライトグレーで示す略図である。図11Bは、図11Aと同じ配向の、ヒトTSLP-Fab1複合体についての略図である。図11Cは、サイトカインのCα原子に基づく、2つの複合体の構造的重複を示す図である。マウスシグナル伝達複合体をライトグレーで示し、ヒトTSLP-Fab1複合体を黒で示す。
図12】賦形剤:タンパク質比が大きな製剤が、タンパク質凝集速度の低減により示される通り、抗TSLP Fab1の物理化学的安定性を改善することを例示する散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本明細書および特許請求の範囲で使用される、単数形の「1つの(a)」、「1つの(a
n)」、および「その」とは、そうでないことが文脈により明確に指示されない限りにお
いて、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」という用語は、複数の
細胞を、その混合物を含め、含意する。
【0028】
範囲を含む、全ての数値表示、例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量は、(
+)または(-)0.1の増分で変化する概数である。常に明示的に言明されているわけ
ではないが、全ての数値表示には、「約」という用語を前置することを理解されたい。ま
た、常に明示的に言明されているわけではないが、本明細書で記載される試薬は、単に例
示的なものであり、当技術分野では、このような試薬の同等物が公知であることも理解さ
れたい。
【0029】
本明細書で使用される、「TSLP」(「胸腺間質性リンパ球新生因子」としてもまた
公知である)は、炎症促進性刺激に応答して、非造血細胞により産生されるサイトカイン
を指す。ヒトTSLP遺伝子は、染色体位置である5q22.1へとマッピングされ、T
SLP遺伝子のゲノム配列は、GenBankのNC_000005.10に見出すこと
ができる。代替的スプライシングのために、ヒトには、2つのTSLPアイソフォームが
存在する。2つのヒトTSLPアイソフォームのタンパク質配列およびmRNA配列を、
表1に列挙する。
【0030】
【表1-1】
【0031】
【表1-2】
【0032】
【表1-3】
【0033】
【表1-4】
【0034】
【表1-5】
【0035】
【表1-6】
【0036】
【表1-7】
【0037】
【表1-8】
【0038】
長型のTSLPアイソフォーム1は、気道炎症性疾患の発症と連関する(Headley et a
l., 2009, Journal of immunology 182, 1641-1647;Ying et al., 2005, Journal of im
munology 174, 8183-8190)。本明細書で使用される「TSLP」という用語は、TSL
Pアイソフォーム1を指す。本明細書で使用されるヒトTSLPタンパク質はまた、その
全長にわたり、GenBank受託番号:NP_149024.1のアミノ酸配列と、少
なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%
、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
、99%、または100%の配列同一性を有するタンパク質も包含する。ヒトTSLPの
核酸配列は、その全長にわたり、GenBank受託番号:NM_033035.4の核
酸配列と、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、7
7%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、8
7%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、9
7%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。当技術分野では、マウス
、カニクイザル、および他の動物のTSLPタンパク質の配列も公知である(例えば、表
1を参照されたい)。
【0039】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合する免疫グロブリン
分子に由来するタンパク質配列またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナル
の場合もあり、モノクローナルの場合もあり、多重鎖の場合もあり、単鎖の場合もあり、
無傷免疫グロブリンの場合もあり、天然の供給源に由来する場合もあり、組換え供給源に
由来する場合もある。自然における「抗体」とは、ジスルフィド結合により相互接続され
た、少なくとも2つの重(H)鎖と、2つの軽(L)鎖とを含む、糖タンパク質である。
各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書では、VHと略記する)および重鎖定常領域を含む。
重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2、およびCH3を含む。各軽鎖は
、軽鎖可変領域(本明細書では、VLと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常
領域は、1つのドメインであるCLを含む。VH領域およびVL領域は、フレームワーク
領域(FR)と称するより保存的な領域を散在させた、相補性決定領域(CDR)と称す
る超可変性の領域へとさらに細分することができる。各VHおよび各VLは、アミノ末端
からカルボキシ末端へと、以下の順序で配置される3つのCDRおよび4つのFR:FR
1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4からなる。重鎖および軽鎖
の可変領域は、抗原と相互作用する結合性ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫
グロブリンの、宿主組織または免疫系の多様な細胞(例えば、エフェクター細胞)および
古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む因子への結合を媒介しうる。抗体は、モノク
ローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ科動物抗体、またはキメラ抗体でありうる
。抗体は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、お
よびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、
およびIgA2)、またはサブクラスの抗体でありうる。
【0040】
本明細書で使用される、抗体の「抗体断片」、「抗原結合性断片」、「その抗原結合性
断片」、「抗原結合性部分」などの用語は、所与の抗原(例えば、TSLP)に特異的に
結合する能力を保持する、インタクト抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体の抗原結
合性機能は、インタクトな抗体の断片により果たされうる。抗体の「抗原結合性部分」と
いう用語内に包含される結合性断片の例は、Fab断片、VLドメイン、VHドメイン、
CLドメイン、およびCH1ドメインからなる一価断片;ヒンジ領域においてジスルフィ
ド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)断片;VH
ドメインおよびCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのVLドメインお
よびVHドメインからなるFv断片;VHドメインからなる単一ドメイン抗体(dAb)
断片(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);ならびに単離相補性決定領域(CDR
)を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLドメインおよびVHドメインは
、個別の遺伝子によりコードされるが、組換え法を使用して、それらを単一のタンパク質
鎖として作製することを可能とする人工のペプチドリンカーにより付着することができ、
この場合、VL領域およびVH領域は、対合して一価分子(単鎖Fv(scFv)として
公知であり、例えば、Bird et al., 1988 Science 242:423-426;およびHuston et al.,
1988 Proc. Natl. Acad. Sci. 85:5879-5883を参照されたい)を形成する。このような単
鎖抗体は、抗体の1つまたは複数の「抗原結合性部分」を含む。これらの抗体断片は、当
業者に公知の従来の技法を使用して得られ、断片も、インタクトな抗体と同じ形で有用性
についてスクリーニングされる。抗原結合性部分はまた、単一ドメイン抗体、マキシボデ
ィ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-N
AR、およびbis-scFv(例えば、Hollinger and Hudson, 2005, Nature Biotech
nology, 23, 9, 1126-1136を参照されたい)へと組み込むこともできる。抗体の抗原結合
性部分は、III型フィブロネクチン(Fn3)などのポリペプチド(フィブロネクチン
ポリペプチドモノボディについて記載する米国特許第6,703,199号明細書を参照
されたい)に基づく足場へとグラフトすることができる。抗原結合性部分は、相補的な軽
鎖ポリペプチドと併せて抗原結合性領域の対を形成する、タンデムFvセグメント(VH
-CH1-VH-CH1)の対を含む単鎖分子へと組み込むことができる(Zapata et al
., 1995 Protein Eng. 8(10):1057-1062;および米国特許第5,641,870号明細書
)。
【0041】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンへの特異的な結合が可能であるか、また
は分子と他の形で相互作用することが可能な、任意のタンパク質決定基を含む。エピトー
プ決定基は一般に、アミノ酸または炭水化物もしくは糖側鎖など、化学的に活性な表面分
子群からなり、特異的な三次元構造特徴のほか、特異的な電荷特徴も有しうる。エピトー
プは、「直鎖状」エピトープの場合もあり、「コンフォメーショナル」エピトープの場合
もある。コンフォメーショナルエピトープと、直鎖状エピトープとは、前者への結合は、
変性溶媒の存在下で失われるが、後者は失われないという点で識別される。
【0042】
「パラトープ」という用語の定義は、「エピトープ」についての上記の定義から、視点
を逆転することにより導出される。したがって、本明細書で使用される「パラトープ」と
いう用語は、抗原が特異的に結合する、抗体上または抗体断片上の領野または領域、すな
わち、抗体または抗体断片が、抗原と物理的に接触する、抗体上または抗体断片上の領野
または領域を指す。
【0043】
本明細書で、抗体、例えば、Fab断片と、その抗原との間の複合体についての空間座
標により規定される、X線により導出される結晶構造の文脈では、パラトープという用語
は、そうでないことが指定されるか、または文脈により反対のことが指示されない限りに
おいて、標的抗原内の重原子から、指定の距離内、例えば、4オングストロームの距離内
に、重原子(すなわち、非水素原子)を有することを特徴とする抗体残基として、具体的
に規定される。
【0044】
本明細書で使用される「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、抗体または
抗原結合性断片のアミノ酸残基であって、抗原への結合の一因となるアミノ酸残基を指す
【0045】
本明細書で使用される「一価抗体」という用語は、標的分子上の単一のエピトープに結
合する抗体を指す。
【0046】
本明細書で使用される「二価抗体」という用語は、少なくとも2つの同一な標的分子上
の、2つのエピトープに結合する抗体を指す。二価抗体はまた、標的分子を互いと架橋す
ることも可能である。「二価抗体」はまた、少なくとも2つの同一な標的分子上の、2つ
の異なるエピトープに結合する抗体も指す。
【0047】
「多価抗体」という用語は、価数が1を超える、単一の結合性分子を指すが、この場合
、「価数」とは、抗体構築物の分子1つ当たりに存在する抗原結合性部分の数として記載
される。したがって、単一の結合性分子は、標的分子上の、1つを超える結合性部位に結
合しうる。多価抗体の例は、二価抗体、三価抗体、四価抗体、五価抗体などのほか、二特
異性抗体およびバイパラトープ抗体を含むがこれらに限定されない。例えば、TSLPで
あれば、TSLPバイパラトープ抗体などの多価抗体は、それぞれ、TSLPの2つの異
なるドメインを認識する結合性部分を有するであろう。
【0048】
「多価抗体」という用語はまた、2つの別個の標的分子に対する、1つを超える抗原結
合性部分を有する、単一の結合性分子も指す。例えば、TSLPと、TSLPではない第
2の標的分子とに結合する抗体である。一実施形態では、多価抗体とは、4つのエピトー
プ結合性ドメインを有する四価抗体である。四価分子は、その標的分子上の各結合性部位
に対して、二特異性分子および二価分子でありうる。
【0049】
本明細書で使用される「バイパラトープ抗体」という用語は、単一の標的分子上の、2
つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。用語はまた、少なくとも2つの標的分子の
、2つのドメインに結合する抗体、例えば、四価バイパラトープ抗体も含む。
【0050】
本明細書で使用される「二特異性抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる標的上
の、2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0051】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」と
いう語句は、実質的に同一なアミノ酸配列を有するか、または同じ遺伝子供給源に由来す
る、抗体、二特異性抗体などを含むポリペプチドを指す。この用語はまた、単一の分子組
成による抗体分子の調製物も含む。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対
する単一の結合特異性およびアフィニティーを提示する。
【0052】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という語句は、フレームワーク領域およびCDR領
域のいずれもが、ヒト由来の配列に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらに、抗体
が定常領域を含有する場合、定常領域もまた、このようなヒト配列、例えば、ヒト生殖細
胞系列配列もしくはヒト生殖細胞系列配列の突然変異させたバージョン、または、例えば
、Knappik et al.(2000, J Mol Biol 296, 57-86)において記載されている、ヒトフレ
ームワーク配列解析に由来する、コンセンサスのフレームワーク配列を含有する抗体に由
来する。免疫グロブリン可変ドメイン、例えば、CDRの構造および場所は、周知の番号
付けスキーム、例えば、Kabat番号付けスキーム、Chothia番号付けスキーム
、またはKabatおよびChothiaによる組合せ番号付けスキーム(例えば、Sequ
ences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human
Services (1991), eds. Kabat et al;Al Lazikani et al., (1997) J. Mol. Bio. 273:
927 948);Kabat et al., (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,
5th edit., NIH Publication no. 91-3242 U.S. Department of Health and Human Servi
ces;Chothia et al., (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917;Chothia et al., (1989) Na
ture 342:877-883;およびAl-Lazikani et al., (1997) J. Mal. Biol. 273:927-948を参
照されたい)を使用して規定することができる。
【0053】
本発明のヒト抗体は、ヒト配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in v
itroにおけるランダム突然変異誘発もしくは部位特異的突然変異誘発により導入され
た突然変異、またはin vivoにおける体細胞突然変異により導入された突然変異、
または安定性もしくは製造を促進する保存的置換により導入された突然変異)を含みうる
。しかし、本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、マウスなど、別の哺乳動物
の種の生殖細胞系列に由来するCDR配列を、ヒトフレームワーク配列へとグラフトした
抗体を含むことを意図しない。
【0054】
本明細書で使用される「組換えヒト抗体」という語句は、ヒト免疫グロブリン遺伝子に
ついてトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウス)
またはこれにより調製されるハイブリドーマから単離される抗体、ヒト抗体を発現させる
ように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、組
換えのコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、およびヒト免疫グロ
ブリン遺伝子配列の全部または一部の、他のDNA配列へのスプライシングを伴う、他の
任意の手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される抗体な
ど、組換え手段により調製されるか、発現させるか、創出されるか、または単離される全
てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域およびCDR領
域が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしなが
ら、ある特定の実施形態では、このような組換えヒト抗体は、in vitroの突然変
異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックである動物を使用する場合は
、in vivoの体細胞突然変異誘発)にかけることができ、したがって、組換え抗体
のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH配列およびVL配
列に由来し、これらに関連するが、in vivoのヒト抗体の生殖細胞系列レパートリ
ー内で天然には存在しない可能性がある配列である。
【0055】
本明細書で使用される「Fc領域」という用語は、抗体の定常ドメインのうちの、CH
3、CH2、およびヒンジ領域のうちの少なくとも一部を含むポリペプチドを指す。任意
選択で、Fc領域は、一部の抗体クラスに存在するCH4ドメインを含みうる。Fc領域
は、抗体の定常ドメインのうちのヒンジ領域全体を含みうる。一実施形態では、本発明は
、抗体のFc領域およびCH1領域を含む。一実施形態では、本発明は、抗体のFc領域
のCH3領域を含む。別の実施形態では、本発明は、抗体の定常ドメインに由来する、F
c領域、CH1領域、およびCカッパ/ラムダ領域を含む。一実施形態では、本発明の結
合性分子は、定常領域、例えば、重鎖定常領域を含む。一実施形態では、このような定常
領域を、野生型の定常領域と比較して修飾する。すなわち、本明細書で開示される、本発
明のポリペプチドは、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)および/
または軽鎖定常領域ドメイン(CL)のうちの1つまたは複数に対する改変または修飾を
含みうる。修飾例は、1つまたは複数のドメイン内の、1つまたは複数のアミノ酸の付加
、欠失、または置換を含む。このような変化は、エフェクター機能、半減期などを最適化
するように組み入れることができる。
【0056】
本明細書で使用される「アフィニティー」という用語は、単一の抗原性部位における抗
体と抗原との間の相互作用の強度を指す。各抗原性部位内では、抗体「アーム」の可変領
域は、多数の部位において、弱い非共有結合的力を介して抗原と相互作用し、相互作用が
大きいほど、アフィニティーは強くなる。本明細書で使用される、IgG抗体またはその
断片(例えば、Fab断片)に対する「高アフィニティー」という用語は、標的抗原に対
するノックダウンが、10-8M以下、10-9M以下、または10-10M、または1
-11M以下、または10-12M以下、または10-13M以下である抗体を指す。
しかし、他の抗体アイソタイプに対する高アフィニティー結合は、変化しうる。例えば、
IgMアイソタイプに対する高アフィニティー結合は、ノックダウンが、10-7M以下
、または10-8M以下である抗体を指す。
【0057】
本明細書で使用される「アビディティー」という用語は、抗体-抗原複合体の、全体的
な安定性または強度についての有益な尺度を指す。アビディティーは、3つ主要な因子:
抗体エピトープのアフィニティー;抗原および抗体の両方の価数;ならびに相互作用部分
の構造的配置により制御される。最終的に、これらの因子は、抗体の特異性、すなわち、
特定の抗体が、正確な抗原エピトープに結合する可能性を規定する。
【0058】
本明細書で使用される「結合特異性」という用語は、1つの抗原決定基と反応するが、
異なる抗原決定基とは反応しない、抗体の個別の結合性部位の能力を指す。抗体の結合性
部位は、分子のFab部分内に位置し、重鎖および軽鎖の超可変領域から構築される。抗
体の結合アフィニティーは、単一の抗原決定基と、抗体上の単一の結合性部位との反応の
強度である。結合特異性とは、抗原決定基と、抗体の結合性部位との間に作用する引力お
よび斥力の合計である。
【0059】
「~を処置する」および「処置」という用語は、治療的処置および予防的処置または防
止的措置の両方を指し、この場合、目的は、所望されない生理学的変化または障害を防止
するかまたは緩徐化させることである。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床結果
は、検出可能なものであれ、検出不可能なものであれ、症状の緩和、疾患の程度の減殺、
疾患状態の安定化(すなわち、非増悪)、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善
または抑制、および寛解(部分寛解であれ、完全寛解であれ)を含むがこれらに限定され
ない。「処置」はまた、処置を施されない場合に予測される生存と比較した生存の延長も
意味しうる。
【0060】
「対象」という用語は、本発明の方法に従う処置が施される、ヒトまたは非ヒト動物を
含む。獣医科適用および非獣医科適用が想定される。用語は、哺乳動物、例えば、ヒト、
他の霊長動物、ブタ、マウスおよびラットなどの齧歯動物、ウサギ、モルモット、ハムス
ター、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、ヒツジ、およびヤギを含むがこれらに限定されない。典
型的な対象は、ヒト、農場動物、ならびにネコおよびイヌなどの愛玩動物を含む。
【0061】
「有効量」とは、有益な結果または所望の結果を及ぼすのに十分な量を指す。例えば、
治療量とは、所望の治療効果を達成する量である。この量は、疾患または疾患症状の発症
を防止するのに必要な量である、予防有効量と同じ場合もあり、異なる場合もある。有効
量は、1回もしくは複数回の投与、適用、または1つもしくは複数の投与量により投与す
ることができる。治療用化合物の「治療有効量」(すなわち、有効な投与量)は、選択さ
れる治療用化合物に依存する。組成物は、例えば、毎日1回または複数回から、毎週1回
または複数回、毎月1回または複数回、毎年1回または複数回にわたり投与することがで
きる。当業者は、疾患または障害の重症度、かつての処置、対象の全般的な健康および/
または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むがこれらに限定されない、ある特定の因子
が、対象を効果的に処置するのに要求される投与量およびタイミングに影響を及ぼしうる
ことを察知するであろう。さらに、治療有効量の、本明細書で記載される治療用化合物に
よる対象の処置は、単回の処置を含む場合もあり、一連の処置を含む場合もある。
【0062】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖形態または二本鎖形態のい
ずれかの、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、およびこれらのポリ
マーを指す。具体的に限定されない限りにおいて、用語は、天然ヌクレオチドの公知の類
似体であって、基準核酸と同様の結合特性を有し、自然におけるヌクレオチドと同様の形
で代謝される類似体を含有する核酸を包含する。そうでないことが指し示されない限りに
おいて、特定の核酸配列はまた暗黙に、保存的に修飾されたその変異体(例えば、縮重コ
ドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補性配列のほか、明示的に指し
示される配列も包含する。具体的に、縮重コドン置換は、1つまたは複数の選択された(
または全ての)コドンの第3の位置を、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で
置換した配列を作り出すことにより、達成することができる(Batzer et al., Nucleic A
cid Res. 19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);お
よびRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。
【0063】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は、互換的に使用
され、ペプチド結合により共有結合的に連結されたアミノ酸残基から構成される化合物を
指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず
、タンパク質またはペプチドの配列を含みうるアミノ酸の最大数には、限定を設けない。
ポリペプチドは、ペプチド結合により互いと接合された、2つ以上のアミノ酸を含む、任
意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される用語は、当技術分野ではま
た一般に、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも称する短鎖、なら
びに、当技術分野では一般に、タンパク質と称し、多くの種類が存在する長鎖の両方を指
す。「ポリペプチド」は、例えば、中でも、生物学的に活性の断片、実質的に相同なポリ
ペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、修飾ポ
リペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、
組換えペプチド、またはこれらの組合せを含む。
【0064】
「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体または抗体断片の結合
特徴にそれほど大きな影響を及ぼしたりこれを改変したりしないアミノ酸修飾を指す。こ
のような保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加、および欠失を含む。修飾は、部位指向突
然変異誘発およびPCRを媒介する突然変異誘発など、当技術分野で公知の標準的な技法
により、本発明の抗体または抗体断片へと導入することができる。保存的アミノ酸置換と
は、アミノ酸残基を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置きかえたアミノ酸置換である
。当技術分野では、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが規定されている。こ
れらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側
鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、ア
スパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン
)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェ
ニルアラニン、メチオニン)、ベータ-分枝型側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソ
ロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン
、ヒスチジン)を伴うアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体または抗体断片など、
分子内の1つまたは複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーに由来する他のアミノ酸
残基で置きかえることができ、改変された分子は、本明細書で記載される機能アッセイを
使用して調べることができる。
【0065】
「相同な」または「同一性」という用語は、2つのポリマー分子の間、例えば、2つの
DNA分子もしくは2つのRNA分子など、2つの核酸分子の間、または2つのポリペプ
チド分子の間の、サブユニットの配列同一性を指す。2つの分子の両方におけるあるサブ
ユニット位置を同じ単量体サブユニットが占める場合、例えば、2つのDNA分子の各々
における位置をアデニンが占める場合、それらは、その位置において相同または同一であ
る。2つの配列の間の相同性とは、マッチする位置または相同な位置の数の直接的な関数
であり;例えば、2つの配列内の位置のうちの半分(例えば、10サブユニットの長さの
ポリマー内の5つの位置)が相同である場合、2つの配列は、50%相同であり;90%
の位置(例えば、10のうち9つ)がマッチするかまたは相同である場合、2つの配列は
、90%相同である。「配列同一性」の百分率は、2つの最適に配列決定された配列を、
比較域にわたり比較することにより決定することができるが、この場合、比較域内のアミ
ノ酸配列の断片は、2つの配列の最適のアライメントのための基準配列(付加または欠失
を含まない)と比較して、付加または欠失(例えば、ギャップまたはオーバーハング)を
含みうる。百分率は、両方の配列内で同一なアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して、
マッチした位置の数を得、比較域内で、マッチした位置の数を、位置の総数で除し、結果
に100を乗じて、配列同一性の百分率を得ることにより計算することができる。出力は
、対象配列の、クエリー配列との同一性パーセントである。
【0066】
「単離された」という用語は、天然状態から改変または取り出されていることを意味す
る。例えば、生存する動物において天然で存在する核酸またはペプチドは、「単離」され
ていないが、その天然状態の材料から、部分的または完全に分離された、同じ核酸または
ペプチドは、「単離」されている。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製さ
れた形態で存在する場合もあり、例えば、宿主細胞など、非天然環境内に存在する場合も
ある。単離抗体は、異なる抗原特異性を有する、他の抗体を実質的に含まない(例えば、
TSLPに特異的に結合する単離抗体は、TSLP以外の抗原に特異的に結合する抗体を
実質的に含まない)。しかし、標的分子に特異的に結合する単離抗体は、他の種に由来す
同じ抗原との交差反応性を有する、例えば、ヒトTSLPに特異的に結合する単離抗体は
、他の種に由来するTSLP分子に結合しうる。さらに、単離抗体は、他の細胞の材料お
よび/または化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0067】
一部の実施形態では、本出願の乾燥粉末製剤は、シェル形成賦形剤と、API、ガラス
形成賦形剤、および緩衝剤を含むコアとを含むコア-シェル粒子であって、本明細書では
また、場合によって、プラットフォーム製剤またはシェルコアプラットフォーム製剤とも
称する、コア-シェル粒子を含む。
【0068】
本明細書で使用される「有効成分」、「治療有効成分」、「活性薬剤」、「薬物」、ま
たは「原薬」という用語は、医薬有効成分(API)としてもまた公知である、医薬品の
有効成分を意味する。
【0069】
本明細書で使用される「質量中央径」または「MMD」または「x50」という用語は
、複数の粒子であって、典型的には、多分散粒子集団内の粒子、すなわち、ある範囲の粒
子サイズからなる粒子の中央径を意味する。本明細書で報告されるMMD値は、文脈によ
りそうでないことが指し示されない限りにおいて、レーザー回折(Sympatec H
elos、Clausthal-Zellerfeld、Germany)により決定さ
れる。これに対し、dは、単一の粒子についての幾何学径を表す。
【0070】
本明細書で使用される「タップ密度」またはρtappedという用語は、例えば、ww
w.usp.org/sites/default/files/usp_pdf/EN/USPNF/revisions/m99375-bulk_density_and
_tapped_density_of_powders.pdfにおいて記載されている、方法Iに従い測定される粒子
密度を指す。タップ密度は、測定値が、実際の粒子密度より約20%小さい場合に、粒子
密度の最も緊密な近似を表す。
【0071】
本明細書で使用される「凹凸がある」という用語は、多数のひだまたはしわを有するこ
と、すなわち、隆線またはひだが寄っていることを意味する。
【0072】
本明細書で使用される「凹凸度」という用語は、加工粒子の表面粗さの尺度である。本
発明の目的では、凹凸度を、BET測定から得られる比表面積、ヘリウム比重瓶法から得
られる真の密度、およびレーザー回折(Sympatec)により得られる表面積対体積
比から計算する、すなわち:
凹凸度=(SSA×ρtrue)/S
[式中、S=6/D32[式中、D32は、単位表面積に基づく平均直径である]]
。表面粗さの増大は、粒子間凝集力を低減し、エアゾールの、肺への標的化を改善するこ
とが予測される。肺への標的化の改善は、患者間のばらつき、ならびに中咽頭および全身
循環における薬物レベルを低減することが予測される。1つまたは複数の実施形態では、
凹凸度Sは、3~20、例えば、5~10である。
【0073】
本明細書で使用される「一次粒子の空気動力学中央径」またはDという用語は、レー
ザー回折を介して決定される、粒子の一次幾何学サイズ(x50)と、それらのタップ密
度とから計算される直径、すなわち:D=x50(ρtapped1/2を指す。
【0074】
本明細書で使用される「送達用量」または「DD」という用語は、粉末ユニットからの
作動イベントまたは分散イベントの後における、吸入器デバイスからの乾燥粉末の送達に
ついての数値表示を指す。DDは、吸入デバイスにより送達される用量の、名目用量また
は計量用量に対する比として規定する。DDは、実験で決定されるパラメータであり、患
者への投与を模倣する、in vitroデバイス装備を使用して決定することができる
【0075】
本明細書で使用される「空気動力学質量中央径」または「MMAD」という用語は、典
型的には、多分散集団内の、複数の粒子の空気動力学的サイズの中央値を指す。「空気動
力学径」とは一般に、空気中で、粉末として、同じ沈降速度を有する、単位密度球体の直
径であり、したがって、エアゾール化粉末または他の分散粒子もしくは粒子製剤を、その
沈降挙動との関係で特徴付けるのに有用な方途である。本明細書では、空気動力学粒子サ
イズ分布(APSD)およびMMADは、NEXT GENERATION IMPAC
TOR(商標)を使用して、カスケード衝突により決定する。一般に、粒子が空気動力学
的に大きすぎると、肺の深部に到達する粒子は少なくなるはずである。粒子が小さすぎる
と、粒子のうちの大きなパーセントは、吐出されうる。これに対し、dとは、単一の粒
子についての空気動力学径を表す。
【0076】
本明細書で使用される「総肺用量」(TLD)という用語は、理想化されたアルベルタ
口腔咽頭モデルにおいて、圧力降下を4kPaで、乾燥粉末吸入器からの粉末の吸入後に
沈着しない有効成分の百分率を指す。データは、名目用量または送達用量の百分率として
表すことができる。AITとは、平均的な成人対象について、上気道の理想化形を表す。
そうでないことが言明されない限りにおいて、TLDは、アルベルタ理想化咽頭モデルで
測定する。AITについての情報および実験装備についての詳細な記載は、www.copleysc
ientific.comにおいて見出すことができる。
【0077】
本明細書で使用される「慣性パラメータ」という用語は、上気道内の慣性衝突を特徴付
けるパラメータを指す。パラメータは、ストークスの法則に由来し、
【0078】
【数1】

[式中、dは、空気動力学径であり、Qは、体積流量である]
と等しい。
【0079】
本明細書で使用される「固体含量」という用語は、噴霧乾燥ささる溶液中または分散液
中に溶解または分散させた、有効成分および賦形剤の濃度を指す。
【0080】
本明細書で使用される「ALR」という用語は、空気対液体比を規定する工程パラメー
タであって、アトマイザー内で用いられる工程パラメータである。ALR値が小さくなる
ほど、アトマイズされた液滴は大きくなることが典型的である。
【0081】
本明細書で使用される「粒子集団密度」(PPD)という用語は、固体含量と、アトマ
イザー内液体流量との積を、乾燥器内総ガス流量で除した商から計算される無次元数であ
る。PPDは、一次幾何学粒子サイズと相関することが観察されている。
【0082】
TSLP結合性分子
本明細書では、TSLPに特異的に結合し、TSLP活性を阻害する分子、例えば、F
ab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、およびdAb断片、scFv、単一のド
メイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ
、テトラボディ、v-NAR、およびbis-SCFvを含む、抗体または抗体断片が提
示される。これらの分子は、喘息および慢性閉塞性肺疾患を含む、TSLP関連炎症性状
態、を処置するために有用である。TSLPは、Th2エフェクターサイトカインの上流
における、鍵となるノーダルサイトカインであるので、TSLPの阻害は、下流における
複数のTh2エフェクター(例えば、IL-4、IL-5、IL-13)を同時に遮断す
ることが可能であり、また、Th2非介在性経路(例えば、IL-17、IFN-γ)に
も影響を及ぼしうる。
【0083】
TSLP抗体およびTSLP結合性抗体断片
一部の実施形態では、本発明は、ヒトTSLPに特異的に結合する抗体および抗体断片
を提供する。TSLP抗体および抗体断片は、実施例を含む、本明細書で記載される通り
に作り出された、ヒトモノクローナル抗体および抗体断片ならびにヒト化モノクローナル
抗体および抗体断片を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、本発明は、1
00pM未満の解離定数(K)、例えば、90pM未満、80pM未満、70pM未満
、60pM未満、50pM未満、40pM未満、30pM未満、20pM未満、10pM
未満のKで、ヒトTSLPに結合する、単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する
。一部の実施形態では、本明細書で提示される単離抗体または抗原結合性断片は、10p
M未満の解離定数(K)で、ヒトTSLPに結合する。
【0084】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるTSLP結合性分子は、重鎖CDR1、重
鎖CDR2、重鎖CDR3、ならびに軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、および軽鎖CDR3
を含む。一部の実施形態では、本明細書で提示されるTSLP結合性分子は、CDR1、
CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、およびCDR3
を含む軽鎖可変領域とを含む。一部の実施形態では、本明細書で提示されるTSLP結合
性分子は、全長重鎖配列および全長軽鎖配列を含む。一部の実施形態では、分子は、TS
LP結合性Fabである。
【0085】
表2は、それらの全てが、ヒトTSLPに、高アフィニティーで結合する、例示的なT
SLP結合性抗体およびFabの配列を列挙する。例えば、抗TSLP Fab1は、6
pMの解離定数(K)で、組換えヒトTSLPに結合する。一部の実施形態では、抗T
SLP Fab1は、それぞれ、5.0±2.0pMおよび1.4±0.6pMのK
で、ヒトおよびカニクイザルのTSLPタンパク質に結合する。
【0086】
【表2-1】
【0087】
【表2-2】
【0088】
【表2-3】
【0089】
【表2-4】
【0090】
【表2-5】
【0091】
【表2-6】
【0092】
一部の実施形態では、抗体は、表2に列挙されるVH CDRのうちのいずれか1つの
アミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、本発明は、TSLPタンパク質に特異
的に結合する抗体であって、表2に列挙されるVH CDRのうちのいずれかのアミノ酸
配列を有する、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのVH CDRを含む(また
は代替的に、これらからなる)抗体を提供する。本発明はまた、TSLPタンパク質に特
異的に結合する抗体であって、表2に列挙されるVL CDRのうちのいずれか1つのア
ミノ酸配列を有するVL CDRを含む抗体も提供する。特に、本発明は、TSLPタン
パク質に特異的に結合する抗体であって、表2に列挙されるVL CDRのうちのいずれ
かのアミノ酸配列を有する、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのVL CDR
を含む(または代替的に、これらからなる)抗体を提供する。
【0093】
本発明はまた、表2に列挙されるVHアミノ酸配列を含み(または代替的に、これらか
らなり)、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)内の約1つ、2つ、3つ
、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、1
5個、16個、17個、18個、19個、または20個以下のアミノ酸を、突然変異させ
た(この場合、突然変異とは、多様な非限定的な例として述べると、付加、置換、または
欠失である)、抗体およびその抗原結合性断片も提供する。
【0094】
本発明はまた、TSLPタンパク質に特異的に結合する抗体およびその抗原結合性断片
であって、表2に列挙されるVLアミノ酸配列を含み(または代替的に、これらからなり
)、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)内の約1つ、2つ、3つ、4つ
、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10個、11個、12個、13個、14個、15個、
16個、17個、18個、19個、または20個以下のアミノ酸を、突然変異させた(こ
の場合、突然変異とは、多様な非限定的な例として述べると、付加、置換、または欠失で
ある)、抗体またはその抗原結合性断片も提供する。
【0095】
本発明の他の抗体およびそれらの抗原結合性断片は、突然変異させているが、CDR領
域内で、表2に記載される配列内で描示されたCDR領域と、少なくとも60、70、8
0、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99パーセントの
同一性を有し、TSLPに結合することが可能なアミノ酸を含む。一態様では、本発明の
他の抗体およびそれらの抗原結合性断片は、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ、ま
たは5つ以下のアミノ酸を、表2に記載される配列に描示されるCDR領域と比較して突
然変異させた、突然変異体のアミノ酸を含む。
【0096】
本発明はまた、TSLPタンパク質に特異的に結合する抗体およびそれらの抗原結合性
断片のVH、VL、全長重鎖、および全長軽鎖をコードする核酸配列も提供する。このよ
うな核酸配列は、哺乳動物細胞内の発現について最適化することができる。
【0097】
他のTSLP抗体およびそれらの抗原結合性断片は、アミノ酸またはアミノ酸をコード
する核酸を突然変異させているが、表2に記載される配列との、少なくとも60、70、
80、90、または95パーセントの同一性を有する抗体およびそれらの抗原結合性断片
を含む。一実施形態では、抗体およびそれらの抗原結合性断片は、実質的に同じ治療的活
性を保持しながら、可変領域内の1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下のアミノ酸を
、表2に記載される配列に描示される可変領域と比較して突然変異させた、突然変異体の
アミノ酸配列を含む。
【0098】
本明細書で開示される抗体の各々は、TSLPに結合しうるので、VH配列、VL配列
、全長軽鎖配列、および全長重鎖配列(アミノ酸配列およびアミノ酸配列をコードするヌ
クレオチド配列)を、「混合し、マッチさせ」て、本発明の他のTSLP結合性抗体およ
びそれらの抗原結合性断片を創出することができる。このような「混合し、マッチさせた
」TSLP結合性抗体は、当技術分野で公知の結合アッセイ(例えば、ELISAおよび
実施例節で記載される他のアッセイ)を使用して調べることができる。これらの鎖を混合
し、マッチさせる場合、特定のVH/VL対合に由来するVH配列を、構造的に類似する
VH配列で置きかえるものとする。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合に由来する全
長重鎖配列を、構造的に類似する全長重鎖配列で置きかえるものとする。同様に、特定の
VH/VL対合に由来するVL配列を、構造的に類似するVL配列で置きかえるものとす
る。同様に、特定の全長重鎖/全長軽鎖対合に由来する全長軽鎖配列を、構造的に類似す
る全長軽鎖配列で置きかえるものとする。
【0099】
別の態様では、本発明は、表2に記載される、重鎖CDR1、重鎖CDR2、および重
鎖CDR3、ならびに軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、および軽鎖CDR3、またはこれら
の組合せを含むTSLP結合性抗体を提供する。CDR領域は、Kabatシステム(Ka
bat et al. 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition,
U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を使
用して、またはChothiaシステム(Chothia et al. 1987 J. Mol. Biol. 196: 901
-917;およびAl-Lazikani et al. 1997 J. Mol. Biol. 273: 927-948)を使用して画定さ
れる。代替的に、CDR領域を画定するための他の方法も使用することができる。例えば
、KabatおよびChothiaの両方のCDR定義を、組み合わせることができる。
【0100】
これらの抗体の各々は、TSLPに結合することが可能であり、抗原結合特異性は主に
、CDR1領域、CDR2領域、およびCDR3領域によりもたらされることを踏まえれ
ば、各抗体は、本発明の他のTSLP結合性分子を創出するのに、VH CDR1配列、
VH CDR2配列、およびVH CDR3配列、ならびにVL CDR1配列、VL
CDR2配列、およびVL CDR3配列を、「混合し、マッチさせる」ことができる(
すなわち、異なる抗体に由来するCDRを、混合し、マッチさせることができる。但し、
VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにVL CDR1、V
L CDR2、およびVL CDR3を含有しなければならない)。このような「混合し
、マッチさせた」TSLP結合性抗体は、当技術分野で公知の結合アッセイおよび実施例
で記載される結合アッセイ(例えば、ELISA)を使用して調べることができる。VH
CDR配列を混合し、マッチさせる場合は、特定のVH配列に由来するCDR1配列、
CDR2配列、および/またはCDR3配列を、構造的に類似するCDR配列で置きかえ
るものとする。同様に、VL CDR配列を混合し、マッチさせる場合は、特定のVL配
列に由来するCDR1配列、CDR2配列、および/またはCDR3配列を、構造的に類
似するCDR配列で置きかえるものとする。当業者には、新規のVH配列およびVL配列
を、1つまたは複数のVH CDR領域配列および/またはVL CDR領域配列を、本
発明のモノクローナル抗体のための、本明細書で示されるCDR配列に由来する、構造的
に類似する配列で突然変異させることにより創出しうることがたやすく明らかであろう。
【0101】
したがって、本発明は、配列番号1、4、または5のうちのいずれかから選択されるア
ミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1(HCDR1);配列番号2または6のうちの
いずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR2(HCDR2);配
列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR3(HCDR3);配列番号11ま
たは14のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1(
LCDR1);配列番号12または15のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を
含む軽鎖可変領域のCDR2(LCDR2);および配列番号13または16のうちのい
ずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR3(LCDR3)を含み
、TSLPに特異的に結合する、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片を提
供する。
【0102】
一部の実施形態では、TSLPに特異的に結合する抗体または抗体断片は、表2に記載
される抗体または抗体断片である。
【0103】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトTSLPに結合し、それぞれ、配列番号4、2、
および3の、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列と、それぞれ、配
列番号11、12、および13の、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3
配列とを含む、単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0104】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトTSLPに結合し、それぞれ、配列番号5、6、
および3の、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列と、それぞれ、配
列番号14、15、および16の、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3
配列とを含む、単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0105】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトTSLPに結合し、それぞれ、配列番号1、2、
および3の、HCDR1配列、HCDR2配列、およびHCDR3配列と、それぞれ、配
列番号11、12、および13の、LCDR1配列、LCDR2配列、およびLCDR3
配列とを含む、単離抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0106】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトTSLPに結合し、配列番号7のアミノ酸配列を
含むVHと、配列番号17のアミノ酸配列を含むVLとを含む、単離抗体またはその抗原
結合性断片を提供する。
【0107】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトTSLPに結合し、配列番号22のアミノ酸配列
を含む重鎖と、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗
原結合性断片を提供する。
【0108】
一部の実施形態では、本発明は、ヒトTSLPに結合し、配列番号9のアミノ酸配列を
含む重鎖と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原
結合性断片を提供する。
【0109】
抗体の可変領域または全長鎖が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子を使用する
系から得られる場合、本明細書で使用されるヒト抗体は、特定の生殖細胞系列配列「の産
物」であるかまたはこれ「に由来する」、重鎖もしくは軽鎖可変領域または全長重鎖もし
くは軽鎖を含む。このような系は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニ
ックマウスを、対象の抗原で免疫化するか、または対象の抗原を伴うファージ上で提示さ
れるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖
細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由来する」ヒト抗体は
、ヒト抗体のアミノ酸配列を、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較し
、配列がヒト抗体の配列と最も近似する(すなわち、同一性%が最大である)ヒト生殖細
胞系列の免疫グロブリン配列を選択することにより、それ自体として同定することができ
る。特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列「の産物」であるかまたはこれ「に由
来する」ヒト抗体は、例えば、自然発生の体細胞突然変異または部位特異的突然変異の意
図的な導入に起因して、生殖細胞系列配列と比較したアミノ酸の差異を含有しうる。しか
し、VHフレームワーク領域またはVLフレームワーク領域では、選択されたヒト抗体は
、アミノ酸配列が、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ
酸配列と少なくとも90%の同一であり、ヒト抗体を、他の種の生殖細胞系列免疫グロブ
リンアミノ酸配列(例えば、マウス生殖細胞系列配列)と比較した場合に、ヒトとして同
定するアミノ酸残基を含有することが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、ア
ミノ酸配列が、生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と
、少なくとも60%、70%、80%、90%、または少なくとも95%、なおまたは、
少なくとも96%、97%、98%、または99%同一でありうる。組換えヒト抗体は、
VHフレームワーク領域内またはVLフレームワーク領域内のヒト生殖細胞系列の免疫グ
ロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、10アミノ酸以下の差異を提示す
ることが典型的である。ある種の場合には、ヒト抗体は、生殖細胞系列の免疫グロブリン
遺伝子によりコードされるアミノ酸配列との、5アミノ酸以下、なおまたは、4、3、2
、または1アミノ酸以下の差異を提示しうる。
【0110】
相同抗体
さらに別の実施形態では、本発明は、表2に記載される配列と相同なアミノ酸配列を含
む、抗体またはその抗原結合性断片を提供し、前記抗体は、TSLPに結合し、表2に記
載される抗体の、所望の機能的な特性を保持する。
【0111】
例えば、本発明は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHが
、配列番号7からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも9
0%、または少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含み;VLが、配列番号17からな
る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも90%、または少なく
とも95%同一なアミノ酸配列を含み;抗体が、TSLPタンパク質に特異的に結合し、
TSLPを阻害する、単離モノクローナル抗体(またはその抗原結合性断片)を提供する
【0112】
一実施形態では、VHアミノ酸配列および/またはVLアミノ酸配列は、表2に示され
る配列と、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%
、98%、または99%同一でありうる。一実施形態では、VHアミノ酸配列および/ま
たはVLアミノ酸配列は、1、2、3、4、または5カ所以下のアミノ酸位置におけるア
ミノ酸置換を除き同一でありうる。表2に記載されている抗体のVH領域およびVL領域
と大きな(すなわち、80%以上の)同一性を有するVH領域およびVL領域を有する抗
体は、配列番号8もしくは21、または配列番号18もしくは24のそれぞれをコードす
る核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異
誘発)の後、本明細書で記載される機能アッセイを使用して、コードされる改変抗体を、
機能の保持について調べることにより得ることができる。
【0113】
一実施形態では、全長重鎖アミノ酸配列および/または全長軽鎖アミノ酸配列は、表2
に示される配列と、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%
、97%、98%、または99%同一でありうる。配列番号9の全長重鎖、および配列番
号19の全長軽鎖と大きな(すなわち、80%以上の)同一性を有する全長重鎖および全
長軽鎖を有する抗体は、このようなポリペプチドをコードする核酸分子の突然変異誘発(
例えば、部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発)の後、本明細書で記載
される機能アッセイを使用して、コードされる改変抗体を、機能の保持について調べるこ
とにより得ることができる。
【0114】
一実施形態では、全長重鎖ヌクレオチド配列および/または全長軽鎖ヌクレオチド配列
は、表2に示される配列と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、
98%、または99%同一でありうる。
【0115】
一実施形態では、重鎖ヌクレオチド配列および/または軽鎖ヌクレオチド配列の可変領
域は、表2に明示された配列と、60%、70%、80%、90%、95%、96%、9
7%、98%、または99%同一でありうる。
【0116】
本明細書で使用される、2つの配列の間の同一性パーセントとは、2つの配列の最適な
アライメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮
する配列により共有される、同一な位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一な位置の
数/位置の総数×100)である。2つの配列の間の配列の比較および同一性パーセント
の決定は、下記の非限定的な例で記載されている、数学的アルゴリズムを使用して達成す
ることができる。
【0117】
加えて、または代替的に、本発明のタンパク質配列は、公表されたデータベースに照ら
して検索を実施する、例えば、関連の配列を同定するための「クエリー配列」としてさら
に使用することもできる。例えば、このような検索は、Altschul et al., 1990 J. Mol.
Biol. 215:403-10によるBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して実施する
ことができる。
【0118】
保存的修飾を伴う抗体
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、CDR1配列、CDR2
配列、およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1配列、CDR2配列、および
CDR3配列を含む軽鎖可変領域とを有し、これらのCDR配列のうちの1つまたは複数
は、本明細書で記載される抗体またはその保存的修飾に基づき指定されたアミノ酸配列を
有し、抗体は、本発明のTSLP結合性抗体およびそれらの抗原結合性断片の、所望の機
能的特性を保持する。したがって、本発明は、CDR1配列、CDR2配列、およびCD
R3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1配列、CDR2配列、およびCDR3配列を含
む軽鎖可変領域とからなり、配列番号1、4、もしくは5、またはその保存的変異体のう
ちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域のCDR1;配列番号2
もしくは6、またはその保存的変異体のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含
む、重鎖可変領域のCDR2;配列番号3、またはその保存的変異体のアミノ酸配列を含
む、重鎖可変領域のCDR3;配列番号11もしくは14、またはその保存的変異体のう
ちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域のCDR1;配列番号1
2もしくは15、またはその保存的変異体のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列
を含む、軽鎖可変領域のCDR2;および配列番号13もしくは16、またはその保存的
変異体のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域のCDR3;
抗体またはその抗原結合性断片が、TSLPタンパク質に特異的に結合し、TSLPを阻
害する、単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合性断片を提供する。
【0119】
一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、重鎖可変領域および
軽鎖可変領域を有し、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、本明細書で記載される抗体ま
たはその保存的修飾に基づき指定されたアミノ酸配列を有し、抗体は、本発明のTSLP
結合性抗体およびそれらの抗原結合性断片の、所望の機能的特性を保持する。したがって
、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域からなる、単離モノクローナル抗体または
その抗原結合性断片であって、重鎖可変領域が、配列番号7のアミノ酸配列またはその保
存的変異体を含み;軽鎖可変領域が、配列番号17のアミノ酸配列またはその保存的変異
体を含み;TSLPタンパク質に特異的に結合し、TSLPを阻害する、抗体またはその
抗原結合性断片を提供する。
【0120】
同じエピトープに結合する抗体
本発明は、表2に列挙されているTSLP結合性抗体と同じエピトープに結合する抗体
を提供する。したがって、TSLP結合アッセイにおいて、本発明の他の抗体およびそれ
らの抗原結合性断片と交差競合する(例えば、本発明の他の抗体およびそれらの抗原結合
性断片の結合を、統計学的に有意な形で競合的に阻害する)それらの能力に基づき、さら
なる抗体を同定することができる。本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片の、TS
LPタンパク質への結合を阻害する被験抗体の能力により、被験抗体が、その抗体と、T
SLPへの結合について競合することが可能であり、このような抗体は、非限定的な理論
によれば、TSLP上の、それが競合する抗体と同じであるかまたは関連の(例えば、構
造的に類似するか、または空間的に近接した)エピトープに結合しうることが裏付けられ
る。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体およびそれらの抗原結合性断片と同
じ、TSLP上のエピトープに結合する抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。このよ
うなヒトモノクローナル抗体は、本明細書で記載される通りに、調製および単離すること
ができる。一部の実施形態では、本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片と同じ、T
SLP上のエピトープに結合する抗体は、マウスモノクローナル抗体である。ある特定の
実施形態では、本明細書で開示される抗体およびそれらの抗原結合性断片と同じ、TSL
P上のエピトープに結合する抗体は、マウスモノクローナル抗体に由来する、ヒト化モノ
クローナル抗体である。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される抗体およびそれ
らの抗原結合性断片と同じ、TSLP上のエピトープに結合する抗体は、ヒト化モノクロ
ーナル抗体である。このようなヒト化モノクローナル抗体は、本明細書で記載される通り
に、調製および単離することができる。
【0121】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性
断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、以下の残基:配列番号38のLys38
、Ala41、Leu44、Ser45、Thr46、Ser48、Lys49、Ile
52、Thr53、Ser56、Gly57、Thr58、Lys59、Lys101、
Gln145、およびArg149のうちの1つまたは複数を含むエピトープに特異的に
結合する。一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗
原結合性断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、以下の残基:配列番号38のL
ys38、Ala41、Leu44、Ser45、Thr46、Ser48、Lys49
、Ile52、Thr53、Ser56、Gly57、Thr58、Lys59、Lys
101、Gln145、およびArg149のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、
少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、
少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも1
2個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、または全てを含むエピ
トープに特異的に結合する。
【0122】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性
断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、以下の残基:配列番号38のLys38
、Ala41、Leu44、Ser45、Thr46、Ser48、Lys49、Ile
52、およびThr53のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少
なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、ま
たは全てを含むエピトープに特異的に結合する。このようなモノクローナル抗体またはそ
の抗原結合性断片のエピトープはまた、以下の残基:配列番号38のSer56、Gly
57、Thr58、Lys59、Lys101、Gln145、およびArg149のう
ちの1つまたは複数も含みうる。
【0123】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性
断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、以下の残基:配列番号38のSer56
、Gly57、Thr58、およびLys59のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ
、少なくとも3つ、または全てを含むエピトープに特異的に結合する。このようなモノク
ローナル抗体またはその抗原結合性断片のエピトープはまた、以下の残基:配列番号38
のLys38、Ala41、Leu44、Ser45、Thr46、Ser48、Lys
49、Ile52、Thr53、Lys101、Gln145、およびArg149のう
ちの1つまたは複数も含みうる。
【0124】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性
断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、配列番号38のLys101を含むエピ
トープに特異的に結合する。このようなモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片の
エピトープはまた、以下の残基:配列番号38のLys38、Ala41、Leu44、
Ser45、Thr46、Ser48、Lys49、Ile52、Thr53、Ser5
6、Gly57、Thr58、Lys59、Gln145、およびArg149のうちの
1つまたは複数も含みうる。
【0125】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性
断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、配列番号38のGln145またはAr
g149を含むエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書で提示さ
れるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトTSLP内のエピトープであ
って、配列番号38のGln145およびArg149を含むエピトープに特異的に結合
する。このようなモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片のエピトープはまた、以
下の残基:配列番号38のLys38、Ala41、Leu44、Ser45、Thr4
6、Ser48、Lys49、Ile52、Thr53、Ser56、Gly57、Th
r58、Lys59、およびLys101のうちの1つまたは複数も含みうる。
【0126】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性
断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、以下の残基:配列番号38のLys49
、Ile52、Gly57、Lys59、Lys101、Gln145、およびArg1
49のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少な
くとも5つ、少なくとも6つ、または全てを含むエピトープに特異的に結合する。一部の
実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、
ヒトTSLP内のエピトープであって、以下の残基:配列番号38のLys49、Ile
52、Gly57、Lys59、Lys101、Gln145、およびArg149の全
てを含むエピトープに特異的に結合する。
【0127】
一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性
断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、配列番号38の残基の以下のセット:(
a)Lys49およびIle52、(b)Gly57およびLys59、(c)Lys1
01、(d)Gln145およびArg149のうちの少なくとも1つを含むエピトープ
に特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体ま
たはその抗原結合性断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、配列番号38のLy
s49およびIle52を含むエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、本
明細書で提示されるモノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトTSLP内の
エピトープであって、配列番号38のGly57およびLys59を含むエピトープに特
異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書で提示されるモノクローナル抗体または
その抗原結合性断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって、配列番号38のLys1
01を含むエピトープに特異的に結合する。一部の実施形態では、本明細書で提示される
モノクローナル抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトTSLP内のエピトープであって
、配列番号38のGln145およびArg149を含むエピトープに特異的に結合する
【0128】
一部の実施形態では、TSLP結合性分子は、以下の残基:配列番号22の重鎖配列の
Thr28、Asp31、Tyr32、Trp33、Asp56、Glu101、Ile
102、Tyr103、Tyr104、Tyr105、または配列番号25の軽鎖配列の
Gly28、Ser29、Lys30、Tyr31、Tyr48、Asp50、Asn5
1、Glu52、Asn65、およびTrp92のうちの、少なくとも1つ、少なくとも
2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも
7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10個、少なくとも11個、少なく
とも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16
個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、または全てを含むパラト
ープを含みうる。
【0129】
抗原上の所望のエピトープを決定したら、例えば、本発明で記載される技法を使用して
、そのエピトープに対する抗体を作り出すことが可能である。代替的に、発見過程におい
て、抗体の作出および特徴付けにより、所望のエピトープについての情報を解明すること
もできる。次いで、この情報から、抗体を、同じエピトープへの結合について、競合的に
スクリーニングすることが可能である。これを達成する手法は、互いと競合的に結合する
抗体、例えば、抗原への結合について競合する抗体を見出す交差競合研究を行うことであ
る。それらの交差競合に基づき、抗体を「ビニング」するハイスループット過程について
は、国際公開第2003/48731号パンフレットにおいて記載されている。当業者に
より察知される通り、抗体が特異的に結合しうる、事実上いかなるものも、エピトープで
ありうるであろう。エピトープは、抗体が結合する残基を含みうる。
【0130】
一般に、特定の標的抗原に特異的な抗体は、タンパク質および/または高分子の複合混
合物中の、標的抗原上のエピトープを優先的に認識するであろう。
【0131】
エピトープを含む所与のポリペプチドの領域は、当技術分野で周知の、任意の数のエピ
トープマッピング法を使用して同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protoc
ols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana
Press, Totowa, New Jerseyを参照されたい。例えば、直鎖状エピトープは、例えば、固
体支持体上で、タンパク質分子の部分に対応する、多数のペプチドを、共時的に合成し、
ペプチドをなおも支持体へと接合させながら、ペプチドを、抗体と反応させることにより
決定することができる。当技術分野では、このような技法が公知であり、例えば、米国特
許第4,708,871号明細書;Geysen et al., (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
8:3998-4002;Geysen et al., (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:78-182;Geysen
et al., (1986) Mol. Immunol. 23:709-715において記載されている。同様に、コンフォ
メーショナルエピトープは、例えば、水素/重水素交換、x腺結晶構造解析、および二次
元核磁気共鳴などにより、アミノ酸TSLPの空間的コンフォメーションを決定すること
によりたやすく同定される。例えば、Epitope Mapping Protocols、前出を参照されたい
。タンパク質の抗原性領域はまた、例えば、The Oxford Molecular
Groupから入手可能な、Omigaバージョン1.0ソフトウェアプログラムを使
用して計算されるプロットなど、標準的な抗原性/疎水性プロットを使用して同定するこ
ともできる。このコンピュータプログラムは、抗原性プロファイルを決定するためのホッ
プ/ウッズ法、Hopp et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci USA 78:3824-3828、および
疎水性プロットのためのカイト-ドゥーリトル法、Kyte-Doolittle technique, Kyte et
al., (1982) J. MoI. Biol. 157:105-132を利用する。
【0132】
操作抗体および修飾抗体
出発抗体から特性を改変した修飾抗体を操作する出発材料として、VH配列および/ま
たはVL配列のうちの1つまたは複数を有する抗体を使用して、本発明の抗体をさらに調
製することができる。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/また
はVL)内、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内、および/または1つもしくは複
数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を修飾することにより操作することが
できる。加えて、または代替的に、抗体は、定常領域内の残基を修飾して、例えば、抗体
のエフェクター機能を改変することによっても操作することができる。
【0133】
実施しうる可変領域操作のうちの1つの種類は、CDRグラフティングである。抗体は
、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介し
て、標的抗原と相互作用する。この理由で、CDR内のアミノ酸配列は、個別の抗体の間
の多様性が、CDRの外部の配列より大きい。CDR配列は、大半の抗体-抗原間相互作
用の一因となるため、異なる特性を伴う異なる抗体に由来するフレームワーク配列へとグ
ラフトされた特異的自然発生抗体に由来するCDR配列を含む発現ベクターを構築するこ
とにより、特異的自然発生抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能であ
る(例えば、Riechmann, L.et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P.et al., 1986
Nature 321:522-525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad. U.S.A. 86:10029-100
33;Winterによる米国特許第5,225,539号明細書、ならびにQueenら
による米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第
5,693,762号明細書;および同第6,180,370号明細書を参照されたい)
【0134】
このようなフレームワーク配列は、ゲルミン抗体遺伝子配列または再配列された抗体配
列を含む公表されたDNAデータベースまたは公表された参考文献から得ることができる
。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子のゲルミンDNA配列は、ヒト生殖細胞系
列の配列データベースである「VBase」(インターネットのwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/
vbaseで入手可能である)のほか、それらの各々の内容が、参照により本明細書に明示的
に組み込まれる、Kabat, E. A. et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological
Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publ
ication No. 91-3242; Tomlinson, I. M. et al., 1992 J. fol. Biol. 227:776-798;お
よびCox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836においても見出すことが
できる。例えば、ヒト重鎖可変領域遺伝子およびヒト軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列
のDNA配列、ならびに再配列された抗体配列は、「IMGT」データベースにおいて見
出すことができる(インターネットのwww.imgt.orgにおいて利用可能である;Lefranc, M
.P. et al., 1999 Nucleic Acids Res. 27:209-212を参照されたい;これらの各々の内容
は、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0135】
本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片における使用のためのフレームワーク配列
の例は、本発明の選択された抗体およびそれらの抗原結合性断片により使用されるフレー
ムワーク配列、例えば、本発明のモノクローナル抗体により使用されるコンセンサス配列
および/またはフレームワーク配列と構造的に類似するフレームワーク配列である。VH
CDR1配列、VH CDR2配列、およびVH CDR3配列、ならびにVL CD
R1配列、VL CDR2配列、およびVL CDR3配列は、フレームワーク配列が由
来する生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子内で見出される配列と同一の配列を有するフ
レームワーク領域へとグラフトすることもでき、CDR配列は、生殖細胞系列配列と比較
して、1つまたは複数の突然変異を含有するフレームワーク領域へとグラフトすることも
できる。例えば、ある種の場合には、フレームワーク領域内の残基を突然変異させて、抗
体の抗原結合能力を維持または増強することが有益であると見出されている(例えば、Q
ueenらによる米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明
細書;同第5,693,762号明細書;および同第6,180,370号明細書を参照
されたい)。
【0136】
可変領域修飾の別の種類は、「アフィニティー成熟」として公知の、VH CDR1領
域内、VH CDR2領域内、および/もしくはVH CDR3領域内、ならびに/また
はVL CDR1領域内、VL CDR2領域内、および/もしくはVL CDR3領域
内のアミノ酸残基を突然変異させて、これにより、対象の抗体の1つまたは複数の結合特
性(例えば、アフィニティー)を改善することである。部位特異的突然変異誘発またはP
CR媒介突然変異誘発を実施して、突然変異を導入することができ、本明細書で記載され
、実施例でも提示される、in vitroアッセイまたはin vivoアッセイにお
いて、抗体結合性または他の対象の機能的特性に対する効果を査定することができる。保
存的修飾(上記で論じた)を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換の場合
もあり、付加の場合もあり、欠失の場合もある。さらに、CDR領域内の、典型的には1
つ、2つ、3つ、4つ、または5つ以下の残基も改変する。
【0137】
結果として得られるポリペプチドが、TSLPに特異的に結合する少なくとも1つの結
合性領域を含む限りにおいて、多種多様な抗体/免疫グロブリンのフレームワークまたは
足場を援用することができる。このようなフレームワークまたは足場は、ヒト免疫グロブ
リン、それらの抗原結合性断片の5つの主要なイディオタイプを含み、好ましくはヒト化
側面を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。この点で、ラクダ科動物において同定
される単一重鎖抗体などの単一重鎖抗体は、特に対象である。当業者により、新規のフレ
ームワーク、足場、および断片が、発見および開発され続けている。
【0138】
一態様では、本発明は、本発明のCDRをグラフトしうる非免疫グロブリン足場を使用
して、非免疫グロブリンベースの抗体を作り出す方法に関する。それらが、標的のTSL
Pタンパク質に特異的な結合性領域を含む限りにおいて、公知または将来の非免疫グロブ
リンフレームワークおよび非免疫グロブリン足場を援用することができる。公知の非免疫
グロブリンフレームワークおよび非免疫グロブリン足場は、フィブロネクチン(Comp
ound Therapeutics,Inc.、Waltham、Mass.)、アン
キリン(Molecular Partners AG、Zurich、Switzer
land)、ドメイン抗体(Domantis,Ltd.、Cambridge、UK、
およびAblynx nv、Zwijnaarde、Belgium)、リポカリン(P
ieris Proteolab AG、Freising、Germany)、低分子
モジュラー免疫医薬(Trubion Pharmaceuticals Inc.、S
eattle、Wash.)、マキシボディ(Avidia,Inc.、Mountai
n View、Calif.)、プロテインA(Affibody AG、Sweden
)、およびアフィリン(ガンマ-クリスタリンまたはユビキチン)(SciI Prot
eins GmbH、Halle、Germany)を含むがこれらに限定されない。
【0139】
フィブロネクチン足場は、III型フィブロネクチンドメイン(例えば、III型フィ
ブロネクチンの第10モジュール(10 Fn3ドメイン))に基づく。III型フィブ
ロネクチンドメインは、それら自体が互いに対してパックされてタンパク質のコアを形成
し、ベータ鎖を互いへと接続し、溶媒へと露出されるループもさらに含有する(CDRと
類似する)、2つのベータシートの間に分配された、7つまたは8つのベータ鎖を有する
。ベータシートサンドイッチの各エッジには、少なくとも3つのこのようなループがあり
、エッジは、ベータ鎖の方向に対して垂直なタンパク質の境界である(米国特許第6,8
18,418号明細書を参照されたい)。全体的なフォールドは、ラクダおよびラマIg
G内の抗原認識単位全体を含む最小の機能的抗体断片である重鎖可変領域のフォールドと
密接に関連するが、これらのフィブロネクチンベースの足場は、免疫グロブリンではない
。この構造のために、非免疫グロブリン抗体は、性質およびアフィニティーが抗体の性質
およびアフィニティーと類似する抗原結合特性を模倣する。これらの足場は、in vi
voにおける抗体のアフィニティー成熟の工程と類似する、in vitroにおけるル
ープのランダム化戦略およびシャフリング戦略において使用することができる。これらの
フィブロネクチンベースの分子は、標準的なクローニング法を使用して、分子のループ領
域を本発明のCDRで置きかえうる、足場として使用することができる。
【0140】
アンキリン技術は、アンキリンに由来するリピートモジュールを伴うタンパク質を、異
なる標的への結合に使用しうる可変領域を保有する足場として使用することに基づく。ア
ンキリンリピートモジュールとは、2つのアンチパラレルのアルファ-ヘリックスおよび
ベータ-ターンからなる、33アミノ酸のポリペプチドである。可変領域の結合は、リボ
ソームディスプレイを使用することにより大部分が最適化される。
【0141】
アビマーは、LRP-1など、天然のAドメイン含有タンパク質に由来する。これらの
ドメインは、本来、タンパク質間相互作用に使用され、ヒトでは、250を超えるタンパ
ク質が、構造的にAドメインに基づく。アビマーは、アミノ酸リンカーを介して連結され
た多数の(2つ~10の)異なる「Aドメイン」単量体からなる。標的抗原に結合しうる
アビマーは、例えば、米国特許出願公開第20040175756号明細書;同第200
50053973号明細書;同第20050048512号明細書;および同第2006
0008844号明細書において記載されている方法を使用して創出することができる。
【0142】
アフィニティーリガンドであるアフィボディとは、プロテインAのIgG結合性ドメイ
ンのうちの1つの足場に基づく3ヘリックスバンドルからなる、低分子の単純なタンパク
質である。プロテインAとは、細菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に
由来する表面タンパク質である。この足場ドメインは、それらのうちの13が、多数のリ
ガンド変異体を伴うアフィボディライブラリーを作り出す、ランダム化されている58ア
ミノ酸からなる(例えば、米国特許第5,831,012号明細書を参照されたい)。ア
フィボディ分子は、抗体を模倣し、150kDaである抗体の分子量と比較して、分子量
が6kDaである。その小サイズにもかかわらず、アフィボディ分子の結合部位は、抗体
の結合部位と同様である。
【0143】
アンチカリンとは、Pieris ProteoLab AG社により開発された生成
物である。アンチカリンは、通例、化学的に感受性の化合物または不溶性の化合物の生理
学的輸送または貯蔵に関与する、広範にわたる低分子の頑健なタンパク質群であるリポカ
リンに由来する。いくつかの天然リポカリンは、ヒト組織内またはヒト体液中で生じる。
タンパク質のアーキテクチャーは、リジッドフレームワークの上部の超可変ループを伴う
免疫グロブリンを連想させる。しかし、抗体またはそれらの組換え断片とは対照的に、リ
ポカリンは、単一の免疫グロブリンドメインよりかろうじて大きい、160~180アミ
ノ酸残基を伴う単一のポリペプチド鎖からなる。結合性ポケットを構成する4つのループ
のセットは、顕著な構造可塑性を示し、様々な側鎖を許容する。したがって、異なる形状
の規定の標的分子を、高度なアフィニティーおよび特異性で認識するために、結合性部位
を独自の工程で再形成することができる。4つのループのセットを突然変異誘発すること
によりアンチカリンを開発するのには、リポカリンファミリーの1つのタンパク質である
、オオモンシロチョウ(Pieris Brassicae)のビリン結合性タンパク質(BBP)が使用
されている。アンチカリンについて記載する特許出願の1つの例は、PCT公開第WO1
99916873号にある。
【0144】
アフィリン分子とは、タンパク質および低分子に対する特異的なアフィニティーのため
にデザインされた低分子非免疫グロブリンタンパク質である。新たなアフィリン分子は、
それらの各々が、異なるヒト由来の足場タンパク質に基づく2つのライブラリーから非常
に迅速に選択することができる。アフィリン分子は、免疫グロブリンタンパク質に対する
いかなる構造相同性も示さない。現在、2つのアフィリン足場が援用されており、それら
のうちの一方は、ヒト水晶体の構造タンパク質であるガンマクリスタリンであり、他方は
、「ユビキチン」スーパーファミリータンパク質である。いずれのヒト足場も非常に小型
で、高度な熱安定性を示し、pH変化および変性剤に対してほぼ耐性である。この高度な
安定性は主に、タンパク質のベータシート構造の展開に起因する。ガンマクリスタリンに
由来するタンパク質の例は、国際公開第200104144号パンフレットにおいて記載
されており、「ユビキチン様」タンパク質の例は、国際公開第2004106368号パ
ンフレットにおいて記載されている。
【0145】
タンパク質エピトープ模倣体(PEM)とは、タンパク質間相互作用に関与する主要な
二次構造である、タンパク質のベータ-ヘアピン二次構造を模倣する、中程度のサイズの
環状ペプチド様分子(分子量:1~2kDa)である。
【0146】
ヒトTSLP結合性抗体は、当技術分野で公知の方法を使用して作り出すことができる
。例えば、非ヒト抗体を、操作ヒト抗体へと転換するのに使用されるヒト化技術である。
米国特許出願公開第20050008625号明細書は、非ヒト抗体の結合特徴と比べて
、同じ結合特徴または良好な結合特徴を維持しながら、抗体内の非ヒト抗体の可変領域を
、ヒト可変領域で置きかえるためのin vivo法について記載している。方法は、非
ヒト基準抗体の可変領域の、完全ヒト抗体による、エピトープ誘導型置換に依拠する。結
果として得られるヒト抗体は一般に、基準非ヒト抗体と構造的に非類縁であるが、基準抗
体と同じ抗原上の同じエピトープに結合する。略述すると、逐次的エピトープ誘導型相補
性置換法は、被験抗体の、抗原への結合に応答するレポーター系の存在下で、限られた量
の抗原への結合について、「競合体」と、基準抗体の多様なハイブリッド体のライブラリ
ー(「被験抗体」)との、細胞内の競合を準備することにより可能となる。競合体は、単
鎖Fv断片など、基準抗体またはその誘導体でありうる。競合体はまた、基準抗体と同じ
エピトープに結合する、抗原の天然リガンドまたは人工リガンドでもありうる。競合体の
唯一の要件は、それが、基準抗体と同じエピトープに結合し、基準抗体と、抗原結合につ
いて競合することである。被験抗体は、非ヒト基準抗体に由来する、1つの共通の抗原結
合性V領域と、ヒト抗体のレパートリーライブラリーなど、多様な供給源からランダムに
選択される他のV領域とを有する。基準抗体に由来する共通のV領域は、選択に、基準抗
体に対する最高の抗原結合性忠実度へのバイアスをかけるように、被験抗体を、抗原上の
同じエピトープに、同じ配向性で配置するガイドとして用いられる。
【0147】
多くの種類のレポーター系を使用して、被験抗体と抗原との所望の相互作用を検出する
ことができる。例えば、相補的レポーター断片は、断片の相補性によるレポーターの活性
化が、被験抗体が、抗原に結合する場合に限り生じるように、抗原および被験抗体のそれ
ぞれへと連結することができる。被験抗体-レポーター断片と抗原-レポーター断片との
融合体を、競合体と共発現させる場合、レポーターの活性化は、被験抗体が競合体と競合
する能力であって、被験抗体の、抗原に対するアフィニティーと比例する能力に依存する
。使用しうる他のレポーター系は、米国特許出願第10/208,730号明細書(公開
第20030198971号)において開示されている、自己阻害レポーター再活性化の
再活性化因子(RAIR系)、または米国特許出願第10/076,845号明細書(公
開第20030157579号)において開示されている競合活性化系を含む。
【0148】
逐次的エピトープ誘導型相補性置換系では、単一の被験抗体を、競合体、抗原、および
レポーター成分と共に発現する細胞を同定するように、選択を行う。これらの細胞内では
、各被験抗体は、限られた量の抗原への結合について、競合体と一対一で競合する。レポ
ーターの活性は、被験抗体に結合した抗原の量に比例し、被験抗体に結合した抗原の量は
、被験抗体の、抗原に対するアフィニティーおよび被験抗体の安定性と比例する。被験抗
体はまず、被験抗体として発現させる場合の基準抗体の活性と比べた、それらの活性に基
づき選択する。選択の第1ラウンドの結果は、それらの各々が、基準抗体に由来する、同
じ非ヒトV領域と、ライブラリーに由来するヒトV領域とから構成され、それらの各々が
、抗原上の、基準抗体と同じエピトープに結合する、「ハイブリッド」抗体のセットであ
る。第1ラウンドで選択されるハイブリッド抗体のうちの1つまたは複数は、抗原に対す
る、基準抗体のアフィニティー以上のアフィニティーを有するであろう。
【0149】
第2のV領域置きかえステップでは、第1のステップで選択されたヒトV領域を、残り
の非ヒト基準抗体V領域の、コグネイトヒトV領域の多様なライブラリーによるヒト置換
体を選択するためのガイドとして使用する。第1ラウンドで選択されたハイブリッド抗体
はまた、選択の第2ラウンドのための競合体としても使用することができる。選択の第2
ラウンドの結果は、基準抗体と構造的に異なるが、同じ抗原への結合について、基準抗体
と競合する、完全ヒト抗体のセットである。選択されたヒト抗体の一部は、基準抗体と同
じ抗原上の同じエピトープに結合する。これらの選択されたヒト抗体の中で、1つまたは
複数は、同じエピトープに、基準抗体のアフィニティー以上のアフィニティーで結合する
【0150】
ラクダ科動物抗体
ラマ種(アルパカ(Lama paccos)、ラマ(Lama glama)、およびビクーニャ(Lama vi
cugna))などの新世界メンバー含む、ラクダおよびヒトコブラクダ(dromedary)(フタ
コブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Calelus dromaderius))フ
ァミリーのメンバーから得られる抗体タンパク質は、サイズ、構造的複雑性、およびヒト
対象に対する抗原性に関して特徴付けられている。天然で見出されるこのファミリーの哺
乳動物に由来するある種のIgG抗体は、軽鎖を欠き、したがって、他の動物に由来する
抗体の場合の、2つの重鎖および2つの軽鎖を有する、典型的な4つの鎖の四次構造とは
構造的に異なっている。PCT/EP93/02214(1994年3月3日に公表され
たWO94/04678)を参照されたい。
【0151】
VHHとして同定される小型の単一の可変ドメインである、ラクダ科動物抗体の領域は
、標的に対して高いアフィニティーを有する低分子タンパク質をもたらすことから、「ラ
クダ科動物ナノボディ」として公知の低分子量抗体由来タンパク質を結果としてもたらす
遺伝子操作により得ることができる。1998年6月2日に取得された米国特許第5,7
59,808号明細書を参照されたい。また、Stijlemans, B. et al., 2004 J Biol Che
m 279:1256-1261; Dumoulin, M. et al., 2003 Nature 424:783-788; Pleschberger, M.
et al., 2003 Bioconjugate Chem 14:440-448; Cortez-Retamozo, V. et al., 2002 Int
J Cancer 89:456-62;およびLauwereys, M. et al., 1998 EMBO J 17:3512-3520も参照さ
れたい。ラクダ科動物抗体および抗体断片の操作ライブラリーは、例えば、Ablynx
、Ghent、Belgiumから市販されている。非ヒト由来の他の抗体および抗原結
合性断片と同様に、ラクダ科動物抗体のアミノ酸配列は、ヒト配列により酷似する配列を
得るように、組換えにより改変することができる、すなわち、ナノボディは、「ヒト化」
することができる。したがって、ヒトに対するラクダ科動物抗体の天然の小さな抗原性を
、さらに低減することができる。
【0152】
ラクダ科動物ナノボディの分子量は、ヒトIgG分子の分子量の約10分の1で、タン
パク質の物理的直径は、数ナノメートルに過ぎない。サイズが小さいことの1つの帰結は
、大型の抗体タンパク質には機能的に不可視である抗原性部位に結合するラクダ科動物ナ
ノボディの能力である、すなわち、ラクダ科動物ナノボディは、古典的な免疫学的技法を
使用するこれ以外の形では隠蔽されたままの抗原を検出する試薬として有用であり、可能
な治療剤として有用である。したがって、サイズが小さいことのさらに別の帰結は、ラク
ダ科動物ナノボディが、標的タンパク質のグルーブ内または狭小なクレフト内の特異的部
位に結合することの結果として、標的タンパク質を阻害することが可能であり、よって、
古典的な抗体の機能よりも、古典的な低分子量の薬物の機能により酷似する能力において
用いられうることである。
【0153】
低分子量およびコンパクトなサイズはさらに、熱安定性が極めて大きく、極端なpHお
よびタンパク質分解性消化に対して安定的であり、抗原性が小さいラクダ科動物ナノボデ
ィを結果としてもたらす。別の帰結は、ラクダ科動物ナノボディが、循環系から組織へと
たやすく移動し、血液脳関門もなお越え、神経組織に影響を及ぼす障害も処置しうること
である。ナノボディはさらに、血液脳関門を越える薬物輸送も容易としうる。2004年
8月19日に公表された米国特許出願公開第20040161738号明細書を参照され
たい。これらの特色を、ヒトに対する抗原性が小さいことと組み合わせることにより、大
きな治療的可能性が指し示される。さらに、これらの分子は、大腸菌(E. coli)などの
原核細胞内で完全に発現させることができ、バクテリオファージとの融合タンパク質とし
て発現させ、機能的である。
【0154】
したがって、本発明の特色は、TSLPに対して高いアフィニティーを有するラクダ科
動物抗体またはラクダ科動物ナノボディである。本明細書の一実施形態では、ラクダ科動
物抗体またはラクダ科動物ナノボディは、天然ではラクダ科動物において産生される、す
なわち、他の抗体について本明細書で記載される技法を使用する、TSLPまたはそのペ
プチド断片による免疫化の後で、ラクダ科動物により産生される。代替的に、TSLP結
合性ラクダ科動物ナノボディは、操作もされる、すなわち、例えば、本明細書の実施例に
おいて記載されている、標的としてのTSLPを伴うパニング手順を使用する、適切に突
然変異誘発されたラクダ科動物ナノボディタンパク質を提示するファージライブラリーか
らの選択によっても作製される。操作されたナノボディはさらに、遺伝子操作により、レ
シピエント対象における半減期が、45分間~2週間となるようにカスタマイズすること
もできる。具体的な実施形態では、ラクダ科動物抗体またはラクダ科動物ナノボディを、
例えば、PCT/EP93/02214において記載されている通り、本発明のヒト抗体
の重鎖または軽鎖のCDR配列を、ナノボディまたは単一ドメイン抗体フレームワーク配
列へとグラフトすることにより得る。
【0155】
二特異性分子および多価抗体
別の態様では、本発明は、本発明のTSLP結合性抗体またはその断片を含む二特異性
分子または多特異性分子を特色とする。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、少な
くとも2つの異なる結合性部位または標的分子に結合する二特異性分子を作り出すように
誘導体化することもでき、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例
えば、受容体に対する別の抗体またはリガンド)へと連結することもできる。本発明の抗
体は実際、3つ以上の異なる結合性部位および/または標的分子に結合する多特異性分子
を作り出すように誘導体化することもでき、他の2つ以上の機能的分子へと連結すること
もでき、このような多特異性分子はまた、本明細書で使用される「二特異性分子」という
用語により包含されることも意図される。本発明の二特異性分子を創出するには、本発明
の抗体を、二特異性分子が結果として得られるように、別の抗体、抗体断片、ペプチド、
または結合性模倣体など、1つまたは複数の他の結合性分子へと機能的に連結する(例え
ば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合的会合により、またはこれら以外の形
で)ことができる。
【0156】
したがって、本発明は、TSLPに対する少なくとも1つの第1の結合特異性および第
2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む二特異性分子を含む。例えば、第2
の標的エピトープは、TSLPの別のエピトープであって、第1の標的エピトープと異な
るエピトープでありうる。他の実施形態では、第2の標的エピトープは、TSLPと非類
縁であるが、TSLPと組み合わせて治療的有益性をもたらす標的でありうる。
【0157】
加えて、二特異性分子が多特異性である本発明では、分子は、第1の標的エピトープお
よび第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性もさらに含みうる。
【0158】
一実施形態では、本発明の二特異性分子は、結合特異性として、例えば、Fab、Fa
b’、F(ab’)2、Fv、または単鎖Fvを含む、少なくとも1つの抗体またはその
抗体断片を含む。抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖の二量体、またはLadnerら、米国
特許第4,946,778号明細書において記載されている、Fvもしくは単鎖構築物な
ど、その任意の最小断片でありうる。
【0159】
ダイアボディとは、同じ鎖上の2つのドメインの間の対合を可能とするには短すぎるリ
ンカーにより接続されたVHドメインおよびVLドメインを単一のポリペプチド鎖上で発
現させた、二価の二特異性分子である。VHドメインおよびVLドメインは、別の鎖の相
補的なドメインと対合し、これにより、2つの抗原結合性部位を創出する(例えば、Holl
iger et al., 1993 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poijak et al., 1994 S
tructure 2:1121-1123を参照されたい)。ダイアボディは、VHA-VLBおよびVHB
-VLA構造(VH-VL立体配置)、またはVLA-VHBおよびVLB-VHA構造
(VL-VH立体配置)を伴う2つのポリペプチド鎖を、同じ細胞内で発現させることに
より作製することができる。ダイアボディの大半は、細菌内の可溶性形態で発現させるこ
とができる。単鎖ダイアボディ(scDb)は、2つのダイアボディ形成ポリペプチド鎖
を、約15アミノ酸残基のリンカーで接続することにより作製する(Holliger and Winte
r, 1997 Cancer Immunol. Immunother., 45(3-4):128-30; Wu et al., 1996 Immunotechn
ology, 2(1):21-36を参照されたい)。scDbは、細菌内の可溶性で活性の単量体形態
で発現させることができる(Holliger and Winter, 1997 Cancer Immunol. Immunother.,
45(34):128-30; Wu et al., 1996 Immunotechnology, 2(1):21-36; Pluckthun and Pack
, 1997 Immunotechnology, 3(2):83-105; Ridgway et al., 1996 Protein Eng., 9(7):61
7-21を参照されたい)。ダイアボディをFcへと融合させて、「ジダイアボディ」を作り
出すことができる(Lu et al., 2004 J. Biol. Chem., 279(4):2856-65を参照されたい)
【0160】
本発明の二特異性分子内で援用しうる他の抗体は、マウスモノクローナル抗体、キメラ
モノクローナル抗体、およびヒト化モノクローナル抗体である。
【0161】
本発明の二特異性分子は、当技術分野で公知の方法を使用して、構成要素である結合特
異性をコンジュゲートさせることにより調製することができる。例えば、二特異性分子の
各結合特異性は、個別に作り出し、次いで、互いとコンジュゲートさせることができる。
結合特異性がタンパク質またはペプチドである場合は、様々なカップリング剤または架橋
剤を、共有結合的コンジュゲーションに使用することができる。架橋剤の例は、プロテイ
ンA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-5-アセチル-チオアセテート(SAT
A)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマ
レイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネ
ート(SPDP)、およびスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロ
ヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)を含む(例えば、Karpovsky et a
l., 1984 J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. USA
82:8648を参照されたい)。他の方法は、Paulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No.78、118
-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83;およびGlennie et al., 1987 J. Immu
nol. 139:2367-2375において記載されている方法を含む。コンジュゲート剤は、SATA
およびスルホ-SMCCであり、いずれも、Pierce Chemical Co.(
Rockford、Ill)から入手可能である。
【0162】
結合特異性が、抗体である場合、それらは、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域をスルフヒ
ドリル結合させることによりコンジュゲートさせることができる。特定の実施形態では、
コンジュゲーションの前に、奇数のスルフヒドリル残基、例えば、1つのスルフヒドリル
残基を含有するように、ヒンジ領域を修飾する。
【0163】
代替的に、いずれの結合特異性も、同じベクター内でコードさせ、同じ宿主細胞内で発
現およびアセンブルさせることができる。この方法は、二特異性分子が、mAb×mAb
融合タンパク質、mAb×Fab融合タンパク質、Fab×F(ab’)2融合タンパク
質、またはリガンド×Fab融合タンパク質である場合に、特に有用である。本発明の二
特異性分子は、1つの単鎖抗体および結合決定基を含む単鎖分子の場合もあり、2つの結
合決定基を含む単鎖二特異性分子の場合もある。二特異性分子は、少なくとも2つの単鎖
分子を含みうる。二特異性分子を調製する方法については、例えば、米国特許第5,26
0,203号明細書;米国特許第5,455,030号明細書;米国特許第4,881,
175号明細書;米国特許第5,132,405号明細書;米国特許第5,091,51
3号明細書;米国特許第5,476,786号明細書;米国特許第5,013,653号
明細書;米国特許第5,258,498号明細書;および米国特許第5,482,858
号明細書において記載されている。
【0164】
それらの特異的な標的に対する二特異性分子の結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッ
セイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS解析、バイオアッセイ
(例えば、成長阻害アッセイ)、またはウェスタンブロットアッセイにより確認すること
ができる。これらのアッセイの各々では一般に、対象の複合体に特異的な、標識された試
薬(例えば、抗体)を利用することにより、特に対象となるタンパク質-抗体複合体の存
在が検出される。
【0165】
別の態様では、本発明は、TSLPに結合する、本発明の抗体およびそれらの抗原結合
性断片の、少なくとも2つの、同一であるかまたは異なる抗原結合性部分を含む、多価化
合物を提供する。抗原結合性部分は、タンパク質の融合または共有結合的連結もしくは非
共有結合的連結を介して、互いに連結することができる。代替的に、二特異性分子のため
の連結法も記載されている。四価化合物は、例えば、本発明の抗体およびそれらの抗原結
合性断片を、本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片の定常領域に結合する抗体また
は抗原結合性断片、例えば、Fc領域またはヒンジ領域と架橋することにより得ることが
できる。
【0166】
三量体化ドメインについては、例えば、Borean Pharmaによる特許である
欧州特許第1012280号明細書において記載されている。五量体化モジュールについ
ては、例えば、PCT/EP97/05897において記載されている。
【0167】
半減期を延長した抗体
本発明は、TSLPに特異的に結合し、in vivoにおける半減期を延長した抗体
を提供する。
【0168】
多くの因子が、in vivoにおけるタンパク質の半減期に影響を及ぼしうる。例え
ば、腎臓における濾過、肝臓における代謝、タンパク質分解性酵素(プロテアーゼ)によ
る分解、および免疫原性応答(例えば、抗体によるタンパク質の中和ならびにマクロファ
ージおよび樹状細胞による取込み)などの因子である。様々な戦略を使用して、本発明の
抗体およびそれらの抗原結合性断片の半減期を延長することができる。例えば、ポリエチ
レングリコール(PEG)、reCODE PEG、抗体足場、ポリシアル酸(PSA)
、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合性リガンド、および炭水化物シ
ールドとの化学的連結により;アルブミン、IgG、FcRn、およびトランスフェリン
などの血清タンパク質に結合するタンパク質との遺伝子融合により;ナノボディ、Fab
、DARPin、アビマー、アフィボディ、およびアンチカリンなど、血清タンパク質に
結合する他の結合部分とカップリングする(遺伝子的または化学的に)ことにより;rP
EG、アルブミン、アルブミンのドメイン、アルブミン結合性タンパク質、およびFcと
の遺伝子融合により;またはナノ担体、徐放製剤、もしくは医療デバイスへの組込みによ
り、本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片の半減期を延長することができる。
【0169】
in vivoにおける抗体の血清中循環を延長するため、高分子量のPEGなど、不
活性のポリマー分子を、PEGの、抗体のN末端もしくはC末端への部位特異的コンジュ
ゲーションを介して、またはリシン残基上に存在するイプシロン-アミノ基を介して、多
官能性リンカーを伴うかまたは多官能性リンカーを伴わない、抗体またはそれらの断片へ
と付着することができる。抗体をPEG化するには、抗体、その抗原結合性断片を、PE
Gの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と
、1つまたは複数のPEG基が抗体または抗体断片に付着する条件下で反応させることが
典型的である。PEG化は、反応性PEG分子(または類似する反応性の水溶性ポリマー
)とのアシル化反応またはアルキル化反応により実行することができる。本明細書で使用
される「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-ポ
リエチレングリコールもしくはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチ
レングリコール-マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているP
EGの形態のうちのいずれかを包含することを意図するものである。一実施形態では、P
EG化される抗体は、脱グリコシル化抗体である。直鎖状ポリマーまたは分枝状ポリマー
の誘導体化であって、生物学的活性の喪失を結果として最小とする誘導体化が、使用され
るであろう。コンジュゲーションの程度を、SDS-PAGEおよび質量分析により緊密
にモニタリングして、PEG分子の抗体への適正なコンジュゲーションを確認することが
できる。反応しなかったPEGは、サイズ除外クロマトグラフィーまたはイオン交換クロ
マトグラフィーにより、抗体-PEGコンジュゲートから分離することができる。PEG
誘導体化抗体は、当業者に周知の方法を使用して、例えば、本明細書で記載されるイムノ
アッセイにより、結合活性ならびにin vivoにおける有効性について調べることが
できる。当技術分野では、タンパク質をPEG化するための方法が公知であり、本発明の
抗体およびそれらの抗原結合性断片に適用することができる。例えば、Nishimur
aらによる欧州特許第0154316号明細書およびIshikawaらによる欧州特許
第0401384号明細書を参照されたい。
【0170】
他の改変されたPEG化技術は、tRNAシンセターゼおよびtRNAを含む再構成系
を介して、化学的に特定された側鎖を、生合成タンパク質へと組み込む、再構成化学的直
交性直接操作技術(reconstituting chemically orthogonal directed engineering)(
ReCODE PEG)を含む。この技術は、30を超える新たなアミノ酸の、大腸菌(
E. coli)細胞内、酵母細胞内、および哺乳動物細胞内の生合成タンパク質への組込みを
可能とする。tRNAは、規範的なアミノ酸を、アンバーコドンが配置される任意の位置
へと組み込み、終止アンバーコドンから、化学的に特定されたアミノ酸の組込みシグナル
を伝達するコドンへと転換する。
【0171】
組換えPEG化技術(rPEG)はまた、血清半減期の延長にも使用することができる
。この技術は、300~600アミノ酸の非構造化タンパク質テールを、既存の医薬用タ
ンパク質へと遺伝子融合させることを伴う。このような非構造化タンパク質鎖の見かけの
分子量は、その実際の分子量の約15倍であるため、タンパク質の血清半減期は、大きく
増大する。化学的コンジュゲーションおよび再精製を要求する従来のPEG化とは対照的
に、製造工程は大きく簡略化され、生成物は、均質である。
【0172】
ポリシアリル化は、天然のポリマーであるポリシアル酸(PSA)を使用して、活性寿
命を延長し、治療用ペプチドおよび治療用タンパク質の安定性を改善する、別の技術であ
る。PSAとは、シアル酸(糖)のポリマーである。タンパク質および治療用ペプチドの
薬物送達に使用される場合、コンジュゲーション時に、ポリシアル酸は、保護的微小環境
をもたらす。これは、循環内の治療用タンパク質の活性寿命を延長し、それが免疫系によ
り認識されることを防止する。PSAポリマーは、天然では、ヒト体内で見出される。P
SAは、数百万年にわたり、それらの壁をPSAでコーティングするように進化したある
種の細菌により採用された。次いで、これらの天然でポリシアリル化した細菌は、分子的
模倣により、体内の防御系を失効化することが可能となった。自然の究極のステルス技術
であるPSAは、このような細菌から、大量に、かつ、所定の物理的特徴を伴って、容易
に作製することができる。細菌PSAは、ヒト体内ではPSAと化学的に同一であるので
、タンパク質へとカップリングさせた場合でもなお、完全に非免疫原性である。
【0173】
別の技術は、抗体に連結されたヒドロキシエチルデンプン(「HES」)誘導体の使用
を含む。HESとは、蝋状トウモロコシデンプンに由来する、修飾された天然ポリマーで
あり、体内の酵素により代謝されうる。HES溶液は通例、血液量不足を補い、血液のレ
オロジー特性を改善するために投与される。抗体のHES化は、分子の安定性を増大させ
ることのほか、腎クリアランスを低減することによっても、循環半減期の延長を可能とし
、生物学的活性の増大を結果としてもたらす。HESの分子量など、異なるパラメータを
改変することにより、広範にわたるHES抗体コンジュゲートをカスタマイズすることが
できる。
【0174】
in vivoにおける半減期を延長した抗体はまた、1つまたは複数のアミノ酸修飾
(すなわち、置換、挿入、または欠失)を、IgG定常ドメインまたはそのFcRn結合
性断片(好ましくはFcドメイン断片またはヒンジFcドメイン断片)へと導入しても作
り出すことができる。例えば、国際公開第98/23289号号パンフレット、国際公開
第97/34631号パンフレット;および米国特許第6,277,375号明細書を参
照されたい。
【0175】
さらに、抗体または抗体断片を、in vivoにおいてより安定的とするか、または
in vivoにおける半減期を延長するために、抗体を、アルブミンへとコンジュゲー
トさせることもできる。当技術分野では、技法が周知であり、例えば、国際特許公開第9
3/15199号パンフレット、同第93/15200号パンフレット、および同01/
77137号パンフレット;ならびに欧州特許第413,622号明細書を参照されたい
【0176】
半減期を延長するための戦略は、in vivoにおける半減期の延長が所望される、
ナノボディ、フィブロネクチンベースの結合剤、および他の抗体またはタンパク質におい
てとりわけ有用である。
【0177】
抗体コンジュゲート
本発明は、TSLPの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合
性断片であって、融合タンパク質を作り出すように、異種タンパク質または異種ポリペプ
チド(またはその抗原結合性断片、好ましくは、少なくとも10、少なくとも20、少な
くとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少な
くとも80、少なくとも90、または少なくとも100アミノ酸のポリペプチドへと)へ
と、組換えにより融合させるか、または化学的にコンジュゲートさせた(共有結合的コン
ジュゲーションおよび非共有結合的コンジュゲーションの両方を含む)、抗体またはそれ
らの抗原結合性断片を提供する。特に、本発明は、本明細書で記載される抗体の抗原結合
性断片(例えば、Fab断片、Fd断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、
VH CDR、VLドメイン、またはVL CDR)と、異種タンパク質、異種ポリペプ
チド、または異種ペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。当技術分野では、タンパ
ク質、ポリペプチド、またはペプチドを、抗体または抗体断片と融合またはコンジュゲー
トさせる方法が知られている。例えば、米国特許第5,336,603号明細書、同第5
,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,349,053
号明細書、同第5,447,851号明細書、および同第5,112,946号明細書;
欧州特許第307,434号明細書および同第367,166号明細書;国際公開第96
/04388号パンフレットおよび同第91/06570号パンフレット;Ashkenazi et
al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:10535-10539; Zheng et al., 1995, J. Im
munol. 154:5590-5600;およびVil et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1133
7-11341を参照されたい。
【0178】
さらなる融合タンパク質は、遺伝子シャフリング、モチーフシャフリング、エクソンシ
ャフリング、および/またはコドンシャフリング(まとめて、「DNAシャフリング」と
称する)の技法を介して作り出すことができる。DNAシャフリングを利用して、本発明
の抗体およびそれらの抗原結合性断片の活性を改変する(例えば、アフィニティーが大き
く、解離速度が小さい抗体およびそれらの抗原結合性断片)ことができる。一般に、米国
特許第5,605,793号明細書、同第5,811,238号明細書、同第5,830
,721号明細書、同第5,834,252号明細書、および同第5,837,458号
明細書;Patten et al., 1997, Curr. Opinion Biotechnol. 8:724-33;Harayama, 1998,
Trends Biotechnol. 16 (2):76-82;Hansson, et al., 1999, J. Mol. Biol. 287:265-7
6;およびLorenzo and Blasco, 1998, Biotechniques 24 (2):308-313(これらの特許お
よび刊行物の各々は、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる)を参照
されたい。抗体およびそれらの抗原結合性断片、またはコードされた抗体およびそれらの
抗原結合性断片は、組換えの前に、エラープローンPCRによるランダム突然変異誘発、
ランダムヌクレオチド挿入、または他の方法にかけることにより改変することができる。
TSLPのストーク領域に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片をコードする
ポリヌクレオチドを、1つまたは複数の異種分子の、1つまたは複数の構成要素、モチー
フ、区間、部分、ドメイン、断片などで組み換えることができる。
【0179】
さらに、抗体およびそれらの抗原結合性断片は、精製を容易とするペプチドなどのマー
カー配列へと融合させることもできる。一実施形態では、マーカーのアミノ酸配列は、そ
れらのうちの多くが市販されている中でとりわけ、pQEベクター(QIAGEN,In
c.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif、913
11)において提供されているタグなどのヘキサヒスチジンペプチド(配列番号40)で
ある。Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:821-824において記載され
ている通り、例えば、ヘキサヒスチジン(配列番号40)は、融合タンパク質の簡便な精
製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグは、インフルエンザヘマグルチニンタンパ
ク質に由来するエピトープ(Wilson et al., 1984, Cell 37:767)に対応するヘマグルチ
ニン(「HA」)タグ、および「フラッグ」タグを含むがこれらに限定されない。
【0180】
一実施形態では、本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片を、診断剤または検出用
薬剤へとコンジュゲートさせる。このような抗体は、疾患または障害の発生、発症、進行
、および/または重症度を、特定の治療の有効性を決定することなど、臨床検査手順の一
部としてモニタリングまたは予後診断するのに有用でありうる。このような診断および検
出は、抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラク
トシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼなどであるがこれらに限定されない多様
な酵素;ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどであるがこれらに
限定されない補欠分子族;ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオ
レセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド
、またはフィコエリトリンなどであるがこれらに限定されない蛍光材料;ルミノールなど
であるがこれらに限定されない発光材料;ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオ
リンなどであるがこれらに限定されない生物発光材料;ヨウ素(131I、125I、1
23I、および121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、イ
ンジウム(115In、113In、112In、および111In)、テクネシウム(
99Tc)、タリウム(201Tl)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(
103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、
153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166H
o、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、
68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr
、54Mn、75Se、113Sn、および117Tinなどであるがこれらに限定され
ない放射性材料;ならびに多様なポジトロン断層法を使用するポジトロン放出金属および
非放射性の常磁性金属イオンを含むがこれらに限定されない検出可能な物質へとカップリ
ングすることにより達成することができる。
【0181】
さらに、抗体およびその抗原結合性断片は、治療用部分または薬物部分へとコンジュゲ
ートさせることもできる。治療用部分または薬物部分は、古典的化学的治療剤に限定され
るとは見なされないものとする。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を保有するタ
ンパク質、ペプチド、またはポリペプチドでありうる。このようなタンパク質は、例えば
、アブリン、リシンA、シュードモナス属外毒素、コレラ毒素、またはジフテリア毒素な
どの毒素;腫瘍壊死因子、アルファ-インターフェロン、ベータ-インターフェロン、神
経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子、アポトーシス剤、
抗血管新生剤;または例えば、リンホカインなどの生体応答修飾剤などのタンパク質を含
みうる。
【0182】
さらに、抗体は、213Biなどのアルファ放射体などの放射性金属イオン、131I
n、131LU、131Y、131Ho、131Smを含むがこれらに限定されない放射
性金属イオンを、ポリペプチドへとコンジュゲートするのに有用な大環状キレート化剤な
どの治療用部分へとコンジュゲートさせることもできる。一実施形態では、大環状キレー
ト化剤は、リンカー分子を介して抗体へと付着させうる、1,4,7,10-テトラアザ
シクロドデカン-N,N’,N’’,N’’’-テトラ酢酸(DOTA)である。当技術
分野では、このようなリンカー分子が一般に公知であり、各々が参照によりそれらの全体
において組み込まれる、Denardo et al., 1998, Clin Cancer Res. 4(10):2483-90; Pete
rson et al., 1999, Bioconjug. Chem. 10(4):553-7;およびZimmerman et al., 1999, N
ucl. Med. Biol. 26(8):943-50において記載されている。
【0183】
治療用部分を、抗体へとコンジュゲートさせるための技法は周知であり、例えば、Amon
et al., 「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」
, Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld et al., (ed), pp.243-56(Ala
n R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., 「Antibodies For Drug Delivery」, Contr
olled Drug Delivery(2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp.623-53(Marcel Dekker, I
nc. 1987); Thorpe, 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A
Review」, Monoclonal Antibodies 84: Biological And Clinical Applications, Pinche
ra et al. (eds.), pp.475-506(1985); 「Analysis, Results, And Future Prospective
Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」, Monoclonal
Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp.303-16(Ac
ademic Press 1985);およびThorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照され
たい。
【0184】
抗体はまた、特に、イムノアッセイまたは標的抗原の精製に有用な固体支持体へと付着
させることもできる。このような固体支持体は、ガラス、セルロース、ポリアクリルアミ
ド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、またはポリプロピレンを含むがこれらに
限定されない。
【0185】
抗体をコードする核酸
本発明は、上記で記載したTSLP抗体のセグメントまたはドメインを含むポリペプチ
ドをコードする、実質的に精製された核酸分子を提供する。このようなポリヌクレオチド
は、本明細書で記載されるTSLP抗体の重鎖または軽鎖に由来する、少なくとも1つの
CDR領域をコードすることが可能であり、通例は、3つCDR領域全てをコードしうる
。このようなポリヌクレオチドはまた、本明細書で記載されるTSLP抗体の重鎖および
/または軽鎖の可変領域配列の全てまたは実質的に全てもコードしうる。このようなポリ
ヌクレオチドはまた、抗体の可変領域および定常領域の両方もコードしうる。コードの縮
重性のために、様々な核酸配列は、免疫グロブリンアミノ酸配列の各々をコードするであ
ろう。
【0186】
ポリヌクレオチド配列は、デノボの固相DNA合成、またはTSLP結合性抗体または
その結合性断片をコードする既存の配列(例えば、下記の実施例で記載される配列)に対
するPCRによる突然変異誘発により作製することができる。核酸の直接的な化学合成は
、Narang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90によるホスホトリエステル法;Brown et
al., Meth. Enzymol. 68:109, 1979によるホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra
. Lett., 22:1859, 1981によるジエチルホスホルアミダイト法;および米国特許第4,4
58,066号明細書による固体支持体法など、当技術分野で公知の方法により達成する
ことができる。PCRによる、突然変異の、ポリヌクレオチド配列への導入は、例えば、
PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H.A. Erlich (
Ed.), Freeman Press, NY, N.Y., 1992;PCR Protocols: A Guide to Methods and Appli
cations, Innis et al. (Ed), Academic Press, San Diego, Calif., 1990; Mattila et
al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991;およびEckert et al., PCR Methods and Appli
cations 1:17, 1991において記載されている通りに実施することができる。
【0187】
本発明ではまた、上記で記載したTSLP結合性抗体を作製するための発現ベクターお
よび宿主細胞も提供される。多様な発現ベクターを、援用して、TSLP結合性抗体鎖ま
たは結合性断片をコードするポリヌクレオチドを発現させることができる。ウイルスベー
スの発現ベクターおよび非ウイルス発現ベクターのいずれを使用しても、哺乳動物宿主細
胞内で抗体を作製することができる。非ウイルスベクターおよび非ウイルス系は、プラス
ミド、典型的に、タンパク質またはRNAを発現させるための発現カセットを伴うエピソ
ームベクター、およびヒト人工染色体を含む(例えば、Harrington et al., Nat Genet 1
5:345, 1997を参照されたい)。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞内のTSLP結
合性ポリヌクレオチドおよびTSLP結合性ポリペプチドの発現に有用な非ウイルスベク
ターは、pThioHis A、pThioHis B、およびpThioHis C、
pcDNA3.1/His、pEBVHis A、pEBVHis B、およびpEBV
His C(Invitrogen、San Diego、Calif.)、MPSVベ
クター、ならびに他のタンパク質を発現させるための、当技術分野で公知の他の多数のベ
クターを含む。有用なウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随
伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40に基づくベクター、パピロー
マウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクター、およびセ
ムリキ森林熱ウイルス(SFV)を含む。Brent et al., 前出; Smith, Annu. Rev. Micr
obiol. 49:807, 1995;およびRosenfeld et al., Cell 68:143, 1992を参照されたい。
【0188】
発現ベクターの選択は、その中でベクターを発現させる、意図される宿主細胞に依存す
る。発現ベクターは、TSLP結合性の抗体鎖の抗原結合性断片をコードするポリヌクレ
オチドに作動可能に連結されたプロモーターおよび他の調節配列(例えば、エンハンサー
)を含有することが典型的である。一実施形態では、誘導条件下を除き、挿入された配列
の発現を防止するのに、誘導的プロモーターを援用する。誘導的プロモーターは、例えば
、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター、または熱ショックプロモー
ターを含む。形質転換された生物の培養物は、それらの発現産物が宿主細胞により良好に
許容されるコード配列の集団にバイアスをかけずに、非誘導条件下で増殖させることがで
きる。プロモーターに加えて、他の調節的エレメントもまた、TSLP結合性の、抗体鎖
または抗原結合性断片の効率的な発現に要求または所望される可能性がある。これらのエ
レメントは、ATG開始コドンおよび隣接のリボソーム結合性部位または他の配列を典型
的に含む。加えて、発現の効率は、使用される細胞系に適するエンハンサーを組み入れる
ことにより増強することもできる(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Diffe
r. 20:125, 1994;およびBittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987を参照された
い)。例えば、SV40エンハンサーまたはCMVエンハンサーを使用して、哺乳動物宿
主細胞内の発現を増大させることができる。
【0189】
発現ベクターはまた、挿入されたTSLP結合性抗体配列によりコードされるポリペプ
チドとの融合タンパク質を形成するように、分泌シグナル配列の位置ももたらしうる。挿
入されたTSLP結合性抗体配列は、ベクター内に組み入れる前に、シグナル配列へと連
結することが多い。TSLP結合性抗体の軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインをコ
ードする配列を受容するのに使用されるベクターは、場合によってまた、定常領域または
それらの一部もコードする。このようなベクターは、定常領域との融合タンパク質として
の可変領域の発現を可能とし、これにより、インタクトな抗体およびそれらの抗原結合性
断片の作製をもたらす。このような定常領域は、ヒト定常領域であることが典型的である
【0190】
TSLP結合性抗体鎖を保有し、これを発現させるための宿主細胞は、原核細胞の場合
もあり、真核細胞の場合もある。大腸菌(E. coli)は、本発明のポリヌクレオチドをク
ローニングし、発現させるのに有用な1つの原核生物宿主である。使用に適する他の微生
物宿主は、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿菌、およびサルモネラ(Salmonella)
属種、セラチア(Serratia)属種、および多様なシュードモナス(Pseudomonas)属種な
ど、他の腸内細菌科を含む。これらの原核生物宿主内ではまた、典型的に、宿主細胞と適
合性の発現制御配列(例えば、複製起点)を含有する発現ベクターも作製することができ
る。加えて、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベ
ータ-ラクタマーゼプロモーター系、またはファージラムダに由来するプロモーター系な
ど、任意の数の、様々な周知のプロモーターも存在する。プロモーターは、任意選択で、
オペレーター配列により発現を制御することが典型的であるが、転写および翻訳を開始し
て終結させるためのリボソーム結合性部位配列なども有する。本発明のTSLP結合性ポ
リペプチドを発現させるのに、酵母など、他の微生物もまた援用することができる。また
、バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用することができる。
【0191】
一実施形態では、本発明のTSLP結合性ポリペプチドを発現させ、作製するのに、哺
乳動物宿主細胞を使用する。例えば、哺乳動物宿主細胞は、内因性免疫グロブリン遺伝子
を発現させるハイブリドーマ細胞系(例えば、実施例で記載される、1D6.C9骨髄腫
ハイブリドーマクローン)の場合もあり、外因性発現ベクターを保有する哺乳動物細胞系
(例えば、下記で例示されるSP2/0骨髄腫細胞)の場合もある。哺乳動物宿主細胞は
、任意の正常非不死化動物細胞または正常不死化動物細胞もしくは非正常不死化動物細胞
またはヒト細胞を含む。例えば、CHO細胞系、多様なCos細胞系、HeLa細胞、骨
髄腫細胞系、形質転換B細胞、およびハイブリドーマを含む、インタクトな免疫グロブリ
ンを分泌することが可能な多数の適切な宿主細胞系が開発されている。ポリペプチドを発
現させるための、哺乳動物組織細胞培養物の使用については、例えば、Winnacker, FROM
GENES TO CLONES, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987において一般に論じられている。
哺乳動物宿主細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、およびエンハンサ
ーなどの発現制御配列(例えば、Queen et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986を参照さ
れたい)、ならびにリボソーム結合性部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位
、および転写ターミネーター配列などの、必要なプロセシング情報部位を含みうる。これ
らの発現ベクターは通例、哺乳動物遺伝子に由来するプロモーターまたは哺乳動物ウイル
スに由来するプロモーターを含有する。適切なプロモーターは、構成的プロモーター、細
胞型特異的プロモーター、段階特異的プロモーター、および/またはモジュレート可能プ
ロモーターもしくは調節可能プロモーターでありうる。有用なプロモーターは、メタロチ
オネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘
導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRP polIIIプロモーター
、構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト即初
期CMVプロモーターなど)、構成的CMVプロモーター、および当技術分野で公知のプ
ロモーター-エンハンサーの組合せを含むがこれらに限定されない。
【0192】
対象のポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主の種
類に応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが一般に原核細胞に
活用されるのに対し、リン酸カルシウム処理または電気穿孔は、他の細胞宿主に使用する
ことができる(一般に、Sambrook et al., 前出を参照されたい)。他の方法は、例えば
、電気穿孔、リン酸カルシウム処理、リポソーム媒介型形質転換、注射およびマイクロイ
ンジェクション、遺伝子銃法、ウィロソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン:核酸コ
ンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質であ
るVP22との融合体(Elliot and O'Hare, Cell 88:223, 1997)、DNAの薬剤増強型
取込み、およびex vivoにおける形質導入を含む。組換えタンパク質の長期にわた
る高収率作製のためには、安定的発現が所望されることが多い。例えば、TSLP結合性
抗体鎖または結合性断片を安定的に発現させる細胞系は、ウイルス複製起点または内因性
発現エレメント、および選択マーカー遺伝子を含有する、本発明の発現ベクターを使用し
て調製することができる。ベクターを導入した後、細胞は、強化培地中で1~2日間にわ
たり成長させてから、選択培地へと切り替えることができる。選択マーカーの目的は、選
択に対する耐性を付与し、その存在により細胞の成長を可能とし、これにより、導入され
た配列を選択培地中で発現させることに成功することである。耐性で安定的にトランスフ
ェクトされた細胞は、細胞型に適する組織培養法を使用して増殖させることができる。
【0193】
抗体および抗体断片の作製
モノクローナル抗体(mAb)は、従来のモノクローナル抗体法、例えば、Kohler and
Milstein, 1975 Nature 256: 495による標準的な体細胞ハイブリダイゼーション法を含
む様々な技法により作製することができる。例えば、Bリンパ球のウイルス性形質転換ま
たは発がん性形質転換など、モノクローナル抗体を作製するための多くの技法を援用する
ことができる。
【0194】
ハイブリドーマを調製するための動物系は、マウス系である。マウスにおけるハイブリ
ドーマの作製は、十分に確立された手順である。当技術分野では、融合体のための免疫化
された脾臓細胞を単離するための免疫化プロトコールおよび免疫化法が公知である。融合
パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた公知である。
【0195】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。本発明のキ
メラ抗体またはヒト化抗体およびそれらの抗原結合性断片は、上記で記載した通りに調製
されたマウスモノクローナル抗体の配列に基づき調製することができる。重鎖および軽鎖
免疫グロブリンをコードするDNAは、対象のマウスハイブリドーマから得、標準的な分
子生物学の技法を使用して、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含有するよ
うに操作することができる。例えば、キメラ抗体を創出するには、当技術分野で公知の方
法(例えば、Cabillyらによる米国特許第4,816,567号明細書を参照され
たい)を使用して、マウス可変領域を、ヒト定常領域へと連結することができる。ヒト化
抗体を創出するには、当技術分野で公知の方法を使用して、マウスCDR領域を、ヒトフ
レームワークへと挿入することができる。例えば、Winterによる米国特許第5,2
25,539号明細書;ならびにQueenらによる米国特許第5,530,101号明
細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書;および同第
6180370号明細書を参照されたい。
【0196】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。TSLP
を指向するこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウスの系ではなく、ヒト免疫系の一
部を保有する、トランスジェニックマウスまたはトランスクロモソームマウスを使用して
作り出すことができる。これらのトランスジェニックマウスおよびトランスクロモソーム
マウスは、本明細書で、それぞれ、HuMAbマウスおよびKMマウスと称するマウスを
含み、本明細書ではまとめて、「ヒトIgマウス」と称する。
【0197】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,Inc.)は、内因性ミュー鎖遺伝
子座および内因性カッパ鎖遺伝子座を不活化する標的化突然変異と併せて、再配列されて
いないヒト重(ミューおよびガンマ)鎖免疫グロブリン配列およびカッパ軽鎖免疫グロブ
リン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座を含有する(例えば、Lo
nberg et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859を参照されたい)。したがって、マウス
は、マウスIgMまたはKの発現の低減を呈示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重
鎖および軽鎖トランス遺伝子は、クラススイッチングおよび体細胞突然変異を経て、高ア
フィニティーのヒトIgG-カッパモノクローナル抗体を作り出す(Lonberg, N. et al.
, 1994 前出; Lonberg, N., 1994 Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101
において総説される; Lonberg, N. and Huszar, D., 1995 Intern. Rev. Immunol. 13: 6
5-93;ならびにHarding, F. and Lonberg, N., 1995 Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:536-54
6)。HuMAbマウスの調製および使用、ならびにこのようなマウスにより保有される
ゲノムの修飾は、それらの全ての内容が、参照によりそれらの全体において本明細書に具
体的に組み込まれる、Taylor, L. et al., 1992 Nucleic Acids Research 20:6287-6295;
Chen, J. et al., 1993 International Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al., 199
3 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3720-3724; Choi et al., 1993 Nature Genetics 4:1
17-123; Chen, J. et al., 1993 EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al., 1994 J. Immu
nol. 152:2912-2920; Taylor, L. et al., 1994 International Immunology 579-591;な
らびにFishwild, D. et al., 1996 Nature Biotechnology 14: 845-851においてさらに記
載されている。さらに、全てがLonbergおよびKayによる、米国特許第5,54
5,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細
書;同第5,633,425号明細書;同第5,789,650号明細書;同第5,87
7,397号明細書;同第5,661,016号明細書;同第5,814,318号明細
書;同第5,874,299号明細書;および同第5,770,429号明細書;Surani
らによる、米国特許第5,545,807号明細書;全てがLonbergおよびKay
による、PCT公開第WO92103918号、同第WO93/12227号、同第WO
94/25585号、同第WO97113852号、同第WO98/24884号、およ
び同第WO99/45962号;ならびにKormanらによるPCT公開第WO01/
14424号も参照されたい。
【0198】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、ヒト重鎖トランス遺伝子およびヒト軽鎖トラン
スクロモソームを保有するマウスなど、トランス遺伝子上およびトランスクロモソーム上
にヒト免疫グロブリン配列を保有するマウスを使用してもたらすことができる。本明細書
で「KMマウス」と称するこのようなマウスは、IshidaらによるPCT公開第WO
02/43478号において詳細に記載されている。
【0199】
当技術分野ではなおさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現させる代替的なトランス
ジェニック動物系も入手可能であり、TSLP結合性抗体およびそれらの抗原結合性断片
をもたらすのに使用することができる。例えば、Xenomouse(Abgenix,
Inc.)と称する代替的なトランスジェニック系を使用することができる。このような
マウスは、例えば、Kucherlapatiらによる米国特許第5,939,598号
明細書;同第6,075,181号明細書;同第6,114,598号明細書;同第6,
150,584号明細書;および同第6,162,963号明細書において記載されてい
る。
【0200】
当技術分野ではさらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現させる代替的なトランスクロ
モソーム動物系も入手可能であり、本発明のTSLP結合性抗体をもたらすのに使用する
ことができる。例えば、「TCマウス」と称する、ヒト重鎖トランスクロモソームおよび
ヒト軽鎖トランスクロモソームの両方を保有するマウスを使用することができるが、この
ようなマウスは、Tomizuka et al., 2000 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727にお
いて記載されている。当技術分野ではさらに、ヒト重鎖および軽鎖トランスクロモソーム
を保有するウシも記載されており(Kuroiwa et al., 2002 Nature Biotechnology 20:889
-894)、本発明のTSLP結合性抗体をもたらすのに使用することができる。
【0201】
ヒトモノクローナル抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリー
ニングするためのファージディスプレイ法を使用して調製することもできる。当技術分野
では、ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法が確立されているか
、または下記の実施例で記載する。例えば、Ladnerらによる米国特許第5,223
,409号明細書;同第5,403,484号明細書;および同第5,571,698号
明細書;Dowerらによる米国特許第5,427,908号明細書;および同第5,5
80,717号明細書;McCaffertyらによる米国特許第5,969,108号
明細書;および同第6,172,197号明細書;ならびにGriffithsらによる
米国特許第5,885,793号明細書;同第6,521,404号明細書;同第6,5
44,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明
細書;および同第6,593,081号明細書を参照されたい。
【0202】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、免疫化するとヒト抗体応答を作り出しうるよ
うにヒト免疫細胞を再構成した、SCIDマウスを使用して調製することもできる。この
ようなマウスは、例えば、Wilsonらによる米国特許第5,476,996号明細書
;および同第5,698,767号明細書において記載されている。
【0203】
抗体のFab断片またはFabは、モノクローナル抗体を、パパインで消化し、次いで
、アフィニティークロマトグラフィーで精製することにより作り出することができる。F
abはまた、上記で記載したFabをコードする核酸を使用する組換え合成により作り出
すこともできる。Fab断片は、完全IgG分子の結合特異性および/または活性を保持
しうるが、サイズは小さく、分子量も小さく、これが、Fab断片を、完全IgG分子と
は異なる適用に適するものとしている。
【0204】
フレームワークまたはFcの操作
本発明の操作抗体およびそれらの抗原結合性断片は、例えば、抗体の特性を改善するよ
うに、VH内および/またはVL内のフレームワーク残基へと、修飾が施された抗体およ
びそれらの抗原結合性断片を含む。このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を
低下させるように施すことが典型的である。例えば、1つの手法は、1つまたは複数のフ
レームワーク残基を、対応する生殖細胞系列配列へと「復帰突然変異させる」ことである
。より具体的には、体細胞突然変異を経た抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異
なるフレームワーク残基を含有しうる。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、
抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより同定することができる。フレーム
ワーク領域配列を、それらの生殖細胞系列の立体配置へと戻すには、例えば、部位特異的
突然変異誘発により、体細胞突然変異を、生殖細胞系列配列へと「復帰突然変異させる」
ことができる。このような「復帰突然変異させた」抗体もまた、本発明により包含される
ことを意図する。
【0205】
フレームワーク修飾の別の種類は、1つもしくは複数のフレームワーク領域内の残基、
なおまたは、1つもしくは複数のCDR領域内の残基を突然変異させて、T細胞エピトー
プを除去して、これにより、抗体の潜在的な免疫原性を低減することを伴う。この手法は
また、「脱免疫化」とも称し、Carrらによる米国特許出願公開第200301530
43号明細書においてさらに詳細に記載されている。
【0206】
フレームワーク内またはCDR領域内に施された修飾に加えて、またはこれと代替的に
、本発明の抗体は、Fc領域内の修飾を含んで、典型的に、血清半減期、補体の結合、F
c受容体の結合、および/または抗原依存性細胞性細胞傷害など、抗体の1つまたは複数
の機能的特性を改変するように操作することもできる。さらに、本発明の抗体は、化学的
に修飾することもでき(例えば、1つまたは複数の化学的部分を抗体に付着することがで
きる)、そのグリコシル化を改変して、ここでもまた、抗体の1つまたは複数の機能的特
性を改変するように修飾することもできる。これらの実施形態の各々については、下記で
さらに詳細に記載する。Fc領域内の残基の番号付けは、KabatによるEUインデッ
クスである。
【0207】
一実施形態では、ヒンジ領域内のシステイン残基の数を改変する、例えば、増大または
減少させるように、CH1のヒンジ領域を修飾する。この手法は、Bodmerらによる
米国特許第5,677,425号明細書においてさらに記載されている。CH1のヒンジ
領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリーを容易とするか
、または抗体の安定性を増大もしくは低下させるように改変する。
【0208】
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域を突然変異させて、抗体の生物学的半減期を
短縮する。より具体的には、抗体のブドウ球菌属プロテインA(SpA)への結合が、天
然Fc-ヒンジドメインのSpAへの結合と比べて損なわれるように、1つまたは複数の
アミノ酸突然変異を、Fc-ヒンジ断片のCH2ドメイン-CH3ドメイン間界面領域へ
と導入する。この手法は、Wardらによる米国特許第6,165,745号明細書にお
いてさらに詳細に記載されている。
【0209】
別の実施形態では、抗体は、その生物学的半減期を延長するように修飾する。多様な手
法が可能である。例えば、以下の突然変異:Wardによる米国特許第6,277,37
5号明細書において記載されている、T252L、T254S、T256Fのうちの1つ
または複数を導入することができる。代替的に、生物学的半減期を延長するために、抗体
を、Prestaらによる米国特許第5,869,046号明細書;および同第6,12
1,022号明細書において記載されている、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つ
のループから採取されたサルベージ受容体結合性エピトープを含有するように、CH1領
域内またはCL領域内で改変することもできる。
【0210】
一実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸残基を、抗体のエフェクター機能を改変す
る異なるアミノ酸残基で置きかえることにより、Fc領域を改変する。例えば、抗体が、
エフェクターリガンドに対するアフィニティーを改変しているが、親抗体の抗原結合能は
保持するように、1つまたは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置きかえることが
できる。それに対するアフィニティーを改変するエフェクターリガンドは、例えば、Fc
受容体または補体のC1成分でありうる。この手法は、両方ともWinterらによる米
国特許第5,624,821号明細書;および同第5,648,260号明細書において
さらに詳細に記載されている。
【0211】
別の実施形態では、抗体が、C1qへの結合を改変し、かつ/または補体依存性細胞傷
害作用(CDC)を低減もしくは消失させるように、アミノ酸残基から選択される1つま
たは複数のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置きかえることができる。この手法は、I
dusogieらによる米国特許第6,194,551号明細書においてさらに詳細に記
載されている。
【0212】
別の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸残基を改変して、これにより、補体に結
合する抗体の能力を改変する。この手法は、BodmerらによるPCT公開第WO94
/29351号においてさらに記載されている。
【0213】
さらに別の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸を修飾することにより、抗体依存
性細胞性細胞傷害(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大させ、かつ/またはFc-ガ
ンマ受容体に対する抗体のアフィニティーを増大させるように、Fc領域を修飾する。こ
の手法は、PrestaによるPCT公開第WO00/42072号においてさらに記載
されている。さらに、ヒトIgG1上の、Fc-ガンマRI、Fc-ガンマRII、Fc
-ガンマRIII、およびFcRnに対する結合性部位もマップされており、結合を改善
させた変異体も記載されている(Shields, R.L. et al., 2001 J. Biol. Chen. 276:6591
-6604を参照されたい)。
【0214】
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化を修飾する。例えば、脱グリコシル化抗
体(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠く)を作製することができる。グリコシル化は
、例えば、抗原に対する抗体のアフィニティーを増大させるように改変することができる
。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位
を改変することにより達成することができる。例えば、1つまたは複数の可変領域フレー
ムワークグリコシル化部位の消失を結果としてもたらす、1つまたは複数のアミノ酸置換
を作製して、これにより、その部位におけるグリコシル化を消失させることができる。こ
のような脱グリコシル化により、抗原に対する抗体のアフィニティーを増大させることが
できる。このような手法は、Coらによる米国特許第5,714,350号明細書;およ
び同第6,350,861号明細書においてさらに詳細に記載されている。
【0215】
加えて、または代替的に、フコシル残基の量を低減した低フコシル化抗体または二分枝
型GlcNac構造を増大させた抗体など、グリコシル化の種類を改変した抗体を作製す
ることもできる。このようなグリコシル化パターンの改変は、抗体のADCC能を増大さ
せることが裏付けられている。このような炭水化物修飾は、例えば、グリコシル化機構を
改変した宿主細胞内で抗体を発現させることにより達成することができる。当技術分野で
は、グリコシル化機構を改変した細胞が記載されており、本発明の組換え抗体を発現させ
、これにより、グリコシル化を改変した抗体を産生するための宿主細胞として使用するこ
とができる。例えば、Hangらによる欧州特許第1,176,195号明細書は、この
ような細胞系内で発現させた抗体が、低フコシル化を呈示するように、フコシルトランス
フェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に破壊した細胞系について記載している
。PrestaによるPCT公開第WO03/035835号は、フコースをAsn(2
97)連結された炭水化物へと付着する能力を低減し、また、その宿主細胞内で発現させ
た抗体の低フコシル化も結果としてもたらす、変異体のCHO細胞系である、LecI3
細胞について記載している(また、Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26
733-26740も参照されたい)。UmanaらによるPCT公開第WO99/54342号
は、操作細胞系内で発現させた抗体が、抗体のADCC活性の増大を結果としてもたらす
二分枝型GlcNac構造の増大を呈示するように、糖タンパク質を修飾するグリコシル
トランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)--Nアセチルグルコサミニルトランス
フェラーゼIII(GnTIII))を発現させるように操作された細胞系について記載
している(また、Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照されたい)。
【0216】
改変抗体を操作する方法
上記で論じた通り、本明細書で示されるVH配列およびVL配列または全長重鎖および
全長軽鎖配列を有するTSLP結合性抗体は、全長重鎖配列および/もしくは全長軽鎖配
列、VH配列および/もしくはVL配列、またはこれらへと付着された定常領域を修飾す
ることにより、新たなTSLP結合性抗体を創出するのに使用することができる。したが
って、本発明の別の態様では、本発明のTSLP結合性抗体の構造的特徴を使用して、構
造的に類縁のTSLP結合性抗体であって、ヒトTSLPに結合することなど、本発明の
抗体およびそれらの抗原結合性断片の、少なくとも1つの機能的特性を保持するTSLP
結合性抗体を創出する。
【0217】
例えば、本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片の、1つもしくは複数のCDR領
域、またはそれらの突然変異を、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRと
、組換えにより組み合わせて、上記で論じた通り、さらなる、組換えにより操作された本
発明のTSLP結合性抗体およびそれらの抗原結合性断片を創出することができる。他の
種類の修飾は、前出の節で記載した修飾を含む。操作法のための出発材料は、本明細書で
提示されるVH配列および/もしくはVL配列のうちの1つもしくは複数、またはそれら
の1つもしくは複数のCDR領域である。操作抗体を創出するのに、本明細書で提示され
るVH配列および/もしくはVL配列のうちの1つもしくは複数、またはそれらの1つも
しくは複数のCDR領域を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発
現させる)ことは必要ではない。そうではなくて、配列内に含有される情報を、元の配列
に由来する「第2世代の」配列を創出するための出発材料として使用し、次いで、「第2
世代の」配列を、タンパク質として調製し、発現させる。
【0218】
改変抗体配列はまた、CDR3配列、または米国特許出願公開第2005025555
2号明細書において記載されている、最小限の不可欠な結合決定基を固定し、CDR1配
列およびCDR2配列には多様性を持たせた抗体ライブラリーをスクリーニングすること
によっても調製することができる。スクリーニングは、ファージディスプレイ技術など、
抗体を、抗体ライブラリーからスクリーニングするのに適切な任意のスクリーニング技術
に従い実施することができる。
【0219】
標準的な分子生物学の技法を使用して、改変抗体配列を調製し、発現させることができ
る。改変抗体配列によりコードされる抗体は、本明細書で記載されるTSLP結合性抗体
の機能的特性であって、ヒトTSLPタンパク質に特異的に結合し、安定化させることを
含むがこれらに限定されない機能的特性のうちの1つ、一部、または全部を保持する抗体
である。
【0220】
改変抗体の機能的特性は、実施例において示されるアッセイ(例えば、ELISA)な
ど、当技術分野において利用可能であり、かつ/または本明細書で記載される標準的なア
ッセイを使用して評価することができる。
【0221】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片を操作する方法
では、突然変異を、TSLP結合性抗体をコードする配列の全部または一部に沿って、ラ
ンダムに、または選択的に導入することができ、結果として得られる修飾TSLP結合性
抗体を、本明細書で記載される結合活性および/または他の機能的特性についてスクリー
ニングすることができる。当技術分野では、突然変異法が記載されている。例えば、Sh
ortによるPCT公開第WO02/092780号は、飽和突然変異誘発、合成ライゲ
ーションアセンブリー、またはこれらの組合せを使用して、抗体の突然変異を創出し、ス
クリーニングするための方法について記載している。代替的に、LazarらによるPC
T公開第WO03/074679号は、コンピュータによるスクリーニング法を使用して
、抗体の生理化学的特性を最適化する方法について記載している。
【0222】
本発明の抗体の特徴付け
本発明の抗体およびそれらの抗原結合性断片は、多様な機能的アッセイにより特徴付け
ることができる。例えば、それらは、TSLPに結合し、TSLPの活性を阻害するそれ
らの能力により特徴付けることができる。
【0223】
TSLPに結合する抗体の能力は、対象の抗体を標識することにより、直接的に検出す
ることもでき、抗体を標識せずに、当技術分野で公知の、多様なサンドイッチアッセイフ
ォーマットを使用して、結合を間接的に検出することもできる。
【0224】
一部の実施形態では、本発明のTSLP結合性抗体およびその抗原結合性断片は、基準
TSLP結合性抗体の、TSLPポリペプチドへの結合を遮断するか、またはこれと競合
する。これらは、上記で記載した、完全ヒトTSLP結合性抗体またはヒト化TSLP結
合性抗体でありうる。これらはまた、基準抗体と同じエピトープに結合する、他のヒトT
SLP結合性抗体、マウスTSLP結合性抗体、キメラTSLP結合性抗体、またはヒト
化TSLP結合性抗体でもありうる。基準抗体の結合を遮断するか、またはこれと競合す
る能力は、被験下のTSLP結合性抗体が、基準抗体により規定されるエピトープと同じ
であるかもしくは類似のエピトープ、または基準TSLP結合性抗体が結合するエピトー
プと十分に近位のエピトープに結合することを指し示す。このような抗体は、とりわけ、
基準抗体について同定される有利な特性を共有する可能性が高い。基準抗体を遮断するか
、またはこれと競合する能力は、例えば、競合的結合アッセイにより決定することができ
る。競合的結合アッセイでは、被験下の抗体を、基準抗体の、TSLPポリペプチドなど
、共通の抗原への特異的結合を阻害する能力について検討する。過剰量の被験抗体が、基
準抗体の結合を実質的に阻害する場合、被験抗体は、抗原への特異的結合について、基準
抗体と競合する。実質的な阻害とは、被験抗体が、基準抗体の特異的結合を、通例、少な
くとも10%、25%、50%、75%、または90%低減することを意味する。
【0225】
抗体の、特定のタンパク質、この場合、TSLPへの結合についての、基準抗体との競
合について評価するのに使用しうる、多数の公知の競合的結合アッセイが存在する。これ
らは、例えば、直接的固相イムノアッセイまたは間接的固相イムノアッセイ(RIA)、
直接的固相イムノアッセイまたは間接的固相イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競
合アッセイ(Stahli et al., Methods in Enzymology 9:242-253, 1983を参照されたい)
;直接的固相ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al., J. Immunol. 137:3614-3619
, 1986を参照されたい);直接的固相標識アッセイ、直接的固相標識サンドイッチアッセ
イ(Harlow & Lane、前出を参照されたい);I-125標識を使用する、直接的固相標
識RIA(Morel et al., Molec. Immunol. 25:7-15, 1988を参照されたい);直接的固
相ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al., Virology 176:546-552, 1990);および
直接的標識RIA(Moldenhauer et al., Scand. J. Immunol. 32:77-82, 1990)を含む
。このようなアッセイは、非標識化被験TSLP結合性抗体または標識化基準抗体のいず
れかを保有する固体表面または細胞に結合させた精製抗原の使用を伴うことが典型的であ
る。競合的阻害は、被験抗体の存在下で、固体表面または細胞に結合した標識の量を決定
することにより測定する。通例、被験抗体は、過剰に存在する。競合アッセイ(競合抗体
)により同定される抗体は、基準抗体と同じエピトープに結合する抗体と、基準抗体が結
合するエピトープと、立体障害が生じる程度に十分に近位の隣接エピトープに結合する抗
体とを含む。
【0226】
選択されたTSLP結合性モノクローナル抗体が、固有のエピトープに結合するかどう
かを決定するために、市販の試薬(例えば、Pierce、Rockford、Ill製
の試薬)を使用して、各抗体をビオチニル化することができる。非標識化モノクローナル
抗体およびビオチニル化モノクローナル抗体を使用する競合研究は、TSLPポリペプチ
ドでコーティングしたELISAプレートを使用して実施することができる。ビオチニル
化MAbの結合は、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼプローブにより検出す
ることができる。精製TSLP結合抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプ
ELISAを実施することができる。例えば、マイクロ滴定プレートのウェルを、4℃で
一晩、1μg/mlの抗ヒトIgGによりコーティングすることができる。1%のBSA
によるブロッキングの後で、プレートを、1μg/ml以下の、TSLP結合性モノクロ
ーナル抗体または精製アイソタイプ対照と、雰囲気温度で、1~2時間にわたり反応させ
る。次いで、ウェルを、ヒトIgG1またはヒトIgM特異的アルカリホスファターゼコ
ンジュゲートプローブと反応させることができる。次いで、精製抗体のアイソタイプを決
定しうるように、プレートを、現像および解析する。
【0227】
TSLP結合性モノクローナル抗体の、TSLPポリペプチドを発現する生細胞への結
合を裏付けるために、フローサイトメトリーを使用することができる。略述すると、TS
LPを発現する細胞株(標準的な成長条件下で成長させた)を、0.1%のBSAおよび
10%のウシ胎仔血清を含有するPBS中に多様な濃度のTSLP結合性抗体と共に混合
し、37℃で、1時間にわたりインキュベートすることができる。洗浄後、細胞を、一次
抗体染色と同じ条件下で、フルオレセイン標識化抗ヒトIgG抗体と反応させる。試料は
、単一の細胞にゲートをかけるように、光特性および側方散乱特性を使用する、FACS
can装置により解析することができる。蛍光顕微鏡法を使用する代替的なアッセイを、
フローサイトメトリーアッセイ(に加えて、またはこれの代わりに)使用することができ
る。細胞は、上記で記載した通りに正確に染色し、蛍光顕微鏡法により検討することがで
きる。この方法は、個々の細胞の視覚化を可能とするが、抗原の密度に応じて、感度が低
下する場合がある。
【0228】
本発明のTSLP結合性抗体およびそれらの抗原結合性断片は、ウェスタンブロット法
により、TSLPポリペプチドまたはTSLP抗原性断片との反応性について、さらに調
べることができる。略述すると、精製TSLPポリペプチドもしくは融合タンパク質、ま
たはTSLPを発現する細胞に由来する細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウムポ
リアクリルアミドゲル電気泳動にかけることができる。電気泳動の後、分離された抗原を
、ニトロセルロース膜へと移し、10%のウシ胎仔血清でブロッキングし、被験モノクロ
ーナル抗体でプローブする。抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを使用して、ヒトIg
G結合を検出し、BCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem.Co.、S
t.Louis、Mo.)で現像することができる。
【0229】
機能的アッセイの例はまた、下記の実施例節でも記載する。
【0230】
医薬組成物および製剤
本明細書ではまた、組成物、例えば、TSLPに特異的に結合する、1つまたは複数の
分子、例えば、抗体、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、ミニボディ、また
はダイアボディなどの抗体断片を、有効成分として含む医薬組成物も提示される。
【0231】
医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含むことが典型的である。薬学的に許容さ
れる賦形剤は、医薬の投与に適合性の、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌
剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含みうる。医薬組成物は、その意図さ
れる投与経路に適合性となるように製剤化することが典型的である。例えば、吸入による
投与のために、化合物は、適切な高圧ガス、例えば、二酸化炭素などのガスを含有する加
圧型容器または分注器または噴霧器から噴霧される、エアゾールの形態で送達することが
できる。このような方法は、米国特許第6,468,798号明細書において記載されて
いる方法を含む。
【0232】
一部の実施形態では、本明細書で提示される医薬組成物を、対象の気道、とりわけ、対
象の肺への標的化された送達のために製剤化する。このような製剤は、対象の上気道内の
有効成分の沈着を回避し、これにより、口腔および咽頭における薬物沈着と関連する、忍
容性問題または安全性問題を最小化することができる。一部の実施形態では、本明細書で
提示される医薬組成物を、乾燥粉末製剤として製剤化する。このような乾燥粉末製剤は、
有効成分、シェル形成賦形剤、ガラス形成賦形剤、および緩衝剤を含みうる。
【0233】
有効成分
乾燥粉末製剤の有効成分は、本明細書で記載される抗TSLP抗体および抗体断片のう
ちの1つまたは複数を含みうる。
【0234】
医薬製剤中の有効成分の量は、単位用量当たり、治療有効量の有効成分を送達して、所
望の結果を達成するように調整することができる。実際には、これは、特定の成分、その
活性、処置される状態の重症度、患者集団、投与要件、所望の治療効果、および組成物中
に含有される添加剤の相対量に応じて、大幅に変化するであろう。組成物は一般に、約1
重量%~約99重量%の有効成分、例えば、約5重量%~約95重量%、約10重量%~
約90重量%、約15重量%~85重量%、約20重量%~80重量%、約25重量%~
75重量%、約30重量%~70重量%、約40重量%~60重量%、または約50重量
%の有効成分を含有するであろう。本発明の組成物は、特に、1日当たり0.001mg
~1日当たり100mgの用量、好ましくは、1日当たり0.01mg~1日当たり75
mgの用量で送達され、より好ましくは、1日当たり0.10mg~1日当たり50mg
の用量で送達される有効成分に有用である。1つを超える有効成分を、本明細書で記載さ
れる製剤へと組み込むことができ、「有効成分」という用語の使用は、いかなる形であれ
、2つ以上のこのような有効成分の使用を除外しないことを理解されたい。
【0235】
賦形剤
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、薬学的に許容される疎水
性シェル形成賦形剤を含有する。シェル形成賦形剤とは、噴霧乾燥粉末の分散性を増強す
る界面活性剤である。疎水性シェル形成賦形剤は、乾燥粉末製剤の組成および意図される
使用に少なくともある程度依存する多様な形態を取りうる。適切な、薬学的に許容される
疎水性賦形剤は一般に、長鎖リン脂質、疎水性アミノ酸、およびペプチド、ならびに長鎖
脂肪酸石鹸からなる群から選択することができる。
【0236】
一部の実施形態では、シェル形成賦形剤は、グリシン、アラニン、バリン、トリロイシ
ン、ジロイシン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、
トリプトファン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホ
スファチジルコリン(DSPC)、およびステアリン酸マグネシウムを含む。一部の実施
形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、トリロイシンを含む。
【0237】
製剤および工程の制御により、噴霧乾燥粒子の表面を、主に、シェル形成賦形剤から構
成させることが可能である。表面濃度は、75%または80%または85%を超えるなど
、70%を超えうる。一部の実施形態では、表面は、90%を超えるシェル形成賦形剤、
または95%もしくは98%もしくは99%を超える疎水性賦形剤から構成される。強力
な有効成分のために、表面を、95%を超えるシェル形成賦形剤から構成させることもま
れではない。
【0238】
一部の実施形態では、シェル形成賦形剤は、ESCA(Electron Spectroscopy for Ch
emical Analysis;X線光電子分光法またはXPSとしてもまた公知である)により測定
される、70%を超える、好ましくは、90%または95%を超える粒子界面を含む。
【0239】
一部の実施形態では、シェル形成賦形剤は、凹凸がある粒子形状の発生を容易とする。
これは、粒子形状が、滑らかではなく、多孔性であるか、ひだがあるか、コルゲートであ
るか、またはしわがあることを意味する。これは、吸入用医薬粒子の内面および/または
外面に、少なくとも部分的に、凹凸があることを意味する。この凹凸度は、粉末の流動化
および分散性を改善することにより、高送達効率、用量一貫性、および薬物の標的化をも
たらすのに有用である。粒子凹凸度の増大は、粒子が、ファンデルワールス接触距離内に
接近できないことの結果として、粒子間凝集力の減少をもたらす。凝集力の減少は、凹凸
がある粒子の集団内の粉末の流動化および分散を劇的に改善するのに十分である。
【0240】
存在する場合、シェル形成賦形剤の含量は一般に、医薬の約15~50%w/wの範囲
である。トリロイシンでは、シェル形成剤としての許容可能な性能をもたらすのに、製剤
中、最小で約15%が要求される。ロイシンでは、要求される最小含量はより大きく、約
30%である。
【0241】
トリロイシンなど、疎水性シェル形成賦形剤の使用は、液体原料中のそれらの可溶性に
より制限されうる。典型的に、加工粉末中のトリロイシンの含量は、30%w/w未満で
あり、10%w/w~20%w/w(約10~30%w/w)のオーダーであることがよ
り多い。その水中で制限される可溶性およびその界面活性のために、トリロイシンは、優
れたシェル形成剤である。ロイシンもまた、シェル形成賦形剤として使用することができ
、本発明の実施形態は、約50%~75%のロイシン濃度を含む粒子を含みうる。
【0242】
脂肪酸石鹸は、ロイシンおよびトリロイシンと同様に挙動するので、適切な表面修飾剤
である。
【0243】
乾燥イベントの時間スケールが短いために、原料中に溶解させた有効成分は一般に、噴
霧乾燥させた医薬品中でアモルファス固体として存在するであろう。
【0244】
アモルファス固体の分子運動性は、その結晶質対応物の分子運動性と比較した場合に著
明である。分子運動性は、分子拡散と関連する、長距離運動のほか、結合の回転など、局
所的な運動も含む。アモルファス材料の固体状態安定化の中心原理は、分子運動性が、所
望されない物理化学的変化をもたらすことである。したがって、アモルファス材料のため
の製剤戦略は通例、分子運動性の抑制に焦点を当てる。
【0245】
分子運動性と不安定性との関係の存在は、直観的かつ周知である。しかし、有用である
ために、分子運動性は、存在する運動の種類との関係で、注意深く規定および理解しなけ
ればならない。長距離分子運動は、α緩和として公知の、構造的緩和から生じる。このよ
うな運動の時間スケールは、温度が、ガラス転移温度(Tg)を下回って低下するか、ま
たは、逆に、Tgが一定の観察温度に上昇すると、顕著に増大する。ガラス内の分子の安
定化は、その長距離分子運動性を制限するため、これは、アモルファス薬物の固体状態安
定化のための、最も一般的な製剤戦略となっている。
【0246】
固体状態下にある分子運動性のガラス安定化制御であって、ガラス形成剤の使用を介す
る制御などの制御は、製剤中のタンパク質の物理化学的安定性を改善しうる。ガラス形成
剤が必要とされる場合、複数の検討事項が、その選択を支配するであろう。ガラス形成賦
形剤の主要な役割は、薬物の全体的な長距離分子運動性を低減することである。実際には
、これは、薬物を含有するアモルファス相のガラス転移温度を上昇させることにより達せ
られる。Tg値が高い賦形剤が一般に所望されるが、一部の製剤(例えば、薬物のTgが
中程度であるか、または製剤中の薬物濃度が低濃度である場合)には、Tgが中程度の賦
形剤も適しうる。配合を行う者への手引きとして、理想的なガラス形成剤の特性:ガラス
転移温度が高い、生体適合性材料であって、薬物と混和可能な生体適合性材料であること
、水によりごく弱く可塑化される、単一のアモルファス相を形成することを強調すること
は有意義である。
【0247】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、ガラス形成賦形剤を含有
する。長距離分子運動性を抑制するガラス形成賦形剤は、炭水化物、アミノ酸、および緩
衝剤を含む。一部の実施形態では、ガラス形成賦形剤は、ヒスチジン、ヒスチジンHCl
、スクロース、トレハロース、マンニトール、およびクエン酸ナトリウムを含む。したが
って、ヒスチジンなど、一部の賦形剤は互換的に、緩衝剤またはガラス形成賦形剤と称し
うる。一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤、例えば、コア-シェル
製剤は、トレハロースを含む。
【0248】
薬学文献では、他の種類の分子運動の重要性も、ますます認識されるようになっている
。分子運動の種類を指示するのに使用される用語法(α、βなど)は、広帯域誘電分光法
に由来する。誘電緩和スペクトルは従来、周波数スケール上にプロットされている。これ
らのスペクトルを解釈する場合、最低周波数における誘電喪失ピークをα運動、高周波数
の運動をβ運動、次いで、γ運動などと呼ぶ。したがって、高周波数で生じるβ運動およ
び他の運動を、「速い」運動または二次運動と称する(そして、場合によって、ジョハリ
-ゴールドスタイン緩和と称する)。これらの二次緩和は、異なる分子部分(例えば、タ
ンパク質上の側鎖)の分子内運動に帰せられることが多いが、これらは、非可撓性の分子
にも存在する。最も単純な物理的描像では、β運動は、場合によって、その最も近傍の近
隣分子種間でトラップされる分子種の、ランダムな「ケージラットリング」として記載さ
れる。ある点で、最も近傍の近隣分子種の局所運動は、トラップされた種の拡散性ジャン
プを可能とするのに十分な自由容積をもたらす。これがα運動である。したがって、β運
動は、α運動をもたらす。
【0249】
二次運動は、理論および実践の両面から、活動的な研究領域である。そして、大半の文
献では、凍結乾燥させるかまたはメルトクエンチしたガラスが関わるが、その原理は、吸
入のためのアモルファスの加工粒子(例えば、噴霧乾燥またはある特定の他のボトムアッ
プ工程を使用して製造される粉末)にも当てはまる。Tg近傍における低分子の結晶化は
、β運動から生じることが疑われている。タンパク質の配合を行う者は、これらのβ運動
を制御することの重要性を認識した。アモルファス製剤中のβ運動の抑制は典型的に、グ
リセロール、マンニトール、ソルビトール、およびジメチルスルホキシドなどの有機低分
子賦形剤によりなされる。これらが、β運動を抑制することが最もしばしば報告される賦
形剤であるが、他の有機低分子量分子(例えば、緩衝塩または対イオン)も、この目的で
用いられる。これらの賦形剤は、局所的な粘度を増大させることにより、高運動性ドメイ
ンの運動を抑制すると仮定されている。ガラス安定化についての膨大な文献に精通した読
者にとって、このような賦形剤の使用は、直観に反すると考えられうるだろう。これらの
低分子量材料および他の最低分子量材料は、Tg値が低く、製剤のTgを低減するが、こ
れは、可塑化として公知の現象である。しかし、これらの賦形剤はまた、β運動も減衰さ
せうる。したがって、これらの賦形剤を、基準点に応じて、逆可塑剤、または、場合によ
って、可塑剤と称するが、これらは、α運動を可塑化し、β運動を逆可塑化する。この用
語法は、文献における、誤解の潜在的な供給源であることに留意されたい。可塑剤または
逆可塑剤という材料の呼称は、基準点がα運動であるのか、二次運動であるのかに依存す
る。
【0250】
タンパク質の固体状態安定化は、ガラスマトリックスの製剤化を要求するため、α運動
およびβ運動の寄与が特に対象となる。文献では、ガラス形成剤を使用して、タンパク質
を安定化させることについて、多数の言及があるが、近年まで、これらの薬剤の、局所運
動への影響についての具体的な言及はほとんど見られなかった。タンパク質のガラス転移
温度は、測定が難しいが、大半のデータは、Tg>150℃を示唆する。したがって、タ
ンパク質を安定化させるのに最も一般に使用される賦形剤(例えば、スクロースまたはト
レハロースなどの二糖)はまた、タンパク質内のα運動を可塑化する(そして、二次運動
を逆可塑化する)。近年の研究は、β運動が、大部分、糖ガラス中のタンパク質の安定性
を支配することを裏付けている。したがって、二糖は、タンパク質製剤中のβ運動を逆可
塑化する。
【0251】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、ガラス転移温度が高い(
>80℃)ガラス形成賦形剤を含む。一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉
末製剤は、スクロース、トレハロース、マンニトール、フマリルジケトピペラジン、およ
びクエン酸ナトリウムなどのガラス形成剤を含む。
【0252】
ガラス形成剤の混合物を使用して、アモルファス固体の最適の安定化を達成することが
できる。一部の実施形態では、「プラットフォーム」コア-シェル製剤のために、トレハ
ロースと、マンニトールとの混合物を使用する。
【0253】
分子運動性の抑制を達成し、物理化学的安定性を達成するのに要求されるガラス形成剤
の量は、活性薬剤の性質に依存するであろう。噴霧乾燥タンパク質を伴う一部の実施形態
では、ガラス形成剤の、タンパク質に対するモル比は、300~900の範囲でありうる
。低分子では、要求されるガラス形成剤の量は、活性薬剤のTgに依存するであろう。
【0254】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、緩衝剤を含有する。緩衝
剤は、生理学的に適合性のpHで薬物を送達する(すなわち、忍容性を改善する)手段と
してのほか、薬物の化学的安定性に好適な溶液状態をもたらす手段として、pH制御で知
られている。本明細書で記載される、一部の製剤および工程では、薬物と緩衝剤とを、同
じ粒子内で共製剤化することにより、薬物のpH環境を制御することができる。
【0255】
固体状態の医薬品中のpHの意味を問題とすることは当然であり、多数の研究が、固体
状態の化学的安定性に対する、pH制御の重要性を裏付けている。水は、固体状態にある
「乾燥」粉末製剤中でなお遍在する。アモルファス材料の可塑剤としてのその役割に加え
て、水は、反応物質、分解生成物であり、また、溶解および化学反応のための媒介物とし
ても用いられうる。粒子表面への水の吸着は、表面薄膜内で、飽和溶液を結果としてもた
らすという証拠がある。実際、一部の研究では、薬物スラリー(すなわち、飽和溶液)の
pHを、「乾燥」粉末の表面薄膜内に溶解した薬物の局所pHまたは「微小環境」pHの
指標として使用している。微小環境pHは、場合によって、薬物の安定性に関連すること
が示されている。
【0256】
薬物と同様に、賦形剤もまた、吸着した水の表面薄膜中に溶解して、飽和溶液を形成す
る。配合を行う者は、これを利用して、吸着水分層内の局所pHの制御を可能としうる。
一般に、ヒスチジンまたはリン酸などの、緩衝剤またはpH修飾剤を、凍結乾燥製剤中ま
たは噴霧乾燥製剤中で使用して、タンパク質の、溶液状態および固体状態における化学的
分解を制御する。
【0257】
一部の実施形態では、製剤のための緩衝剤は、ヒスチジン、グリシン、酢酸、およびリ
ン酸を含む。
【0258】
任意選択の賦形剤は、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリ
ウム)、抗酸化剤(例えば、メチオニン)、溶液中のタンパク質の凝集を低減する賦形剤
(例えば、アルギニン)、矯味剤、および高分子の、全身循環への吸収を改善するように
デザインされた薬剤(例えば、フマリルジケトピペラジン)を含む。
【0259】
製剤
本明細書では、平均的な成人対象の中咽頭における沈着を効果的に回避する噴霧乾燥粒
子を含み、医薬の肺への標的化された送達を可能とする乾燥粉末製剤が提示される。
【0260】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒子は、平均的な成人対象
に対する、名目用量の80~95%w/wの間、例えば、85~90%w/wの間のin
vitro総肺用量(TLD)を有する。
【0261】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒子は、平均的な成人対象
に対する、送達用量の90~100%w/wの間、例えば、90~95%w/wの間のi
n vitro総肺用量(TLD)を有する。
【0262】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、120~400μm
/分の間、例えば、150~300μmL/分の間の慣性パラメータを有することが適
切な送達用量を含む。
【0263】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、多孔性表面、コルゲート
表面、または凹凸表面を含む加工粒子を含む。このような粒子は、一次粒子サイズが同等
な微粒化薬物結晶と比較した、粒子間凝集力の低減を呈する。これは、微粒化薬物と、粗
ラクトースとの秩序混合物と比べた、粉末の流動化および分散性の改善をもたらす。
【0264】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒子は、1.5を超える、
例えば、1.5~20、3~15、または5~10の凹凸度を有する。
【0265】
一部の医薬有効成分、例えば、多くのペプチドまたはタンパク質(例えば、抗TSLP
Fab)のために、純粋な薬物の噴霧乾燥を介して、凹凸表面を達成することができる
。このような場合、製剤は、100%w/wの活性薬剤または薬物である、純粋な薬物を
含みうる。
【0266】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、薬物および緩衝剤を含む
。製剤は、70%~99%w/wの薬物または活性薬剤を含むことが可能であり、残りは
緩衝剤である。
【0267】
一部の実施形態では、本明細書で記載される製剤は、0.1~99%w/wの活性薬剤
、または0.1~70%w/wの活性薬剤、または0.1~50%w/wの有効成分、ま
たは0.1%~30%w/wの有効成分を含みうる。
【0268】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤は、製剤の安定性または生体
適合性をさらに増強するように、賦形剤を含みうる。例えば、多様な塩、緩衝剤、抗酸化
剤、シェル形成賦形剤、およびガラス形成賦形剤が想定される。
【0269】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒子は、0.8~2.0μ
mの間、例えば、1.0~1.5μmの間の、質量中央径(x50)として表される幾何
学サイズを有する。
【0270】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒子は、2.0μm~4.
0μmの間、例えば、2.5μm~3.5μmの間の、x90として表される幾何学サイ
ズを有する。
【0271】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒子は、0.03~0.4
0g/cmの間、例えば、0.07~0.30g/cmの間の、タップ密度(ρta
pped)を有する。
【0272】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の一次粒子は、0.1~1.
0μmの間、例えば、0.5~0.8μmの間の、計算による空気動力学的サイズの中央
値(D)を有する。
【0273】
一部の実施形態では、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒子は、0.5~1.2μ
mの間、例えば、0.8~1.0μmの間の、計算による空気動力学径を有する。
【0274】
一部の実施形態では、送達用量中に存在する、本明細書で記載される乾燥粉末製剤の粒
子は、1.0~3.0μmの間、例えば、1.5~2.0μmの間の、空気動力学質量中
央径(MMAD)を有することが適切である。
【0275】
一部の実施形態では、本開示の製剤は、シェルおよびコア:粒子表面に存在するシェル
形成剤としてのトリロイシンと、有効成分(例えば、抗TSLP Fab)、トレハロー
ス、またはトレハロースおよびマンニトールの組合せ、ならびに緩衝剤を含むコアとを含
む粒子を含有する。
【0276】
一部の実施形態では、本発明は、約40%(w/w)のTSLP結合性分子、例えば、
抗TSLP Fab1、約25%(w/w)のトリロイシン、約30%(w/w)のトレ
ハロースおよびマンニトールの組合せ、ならびに約5%(w/w)のヒスチジンを含む製
剤を提供する。他の実施形態では、本出願は、約50%(w/w)のTSLP結合性分子
、約15%(w/w)のトリロイシン、約2.6%(w/w)のHCl、約5.6%(w
/w)のヒスチジン、ならびに約26.8%(w/w)のトレハロースおよび塩基の組合
せ;または約50%(w/w)のTSLP結合性分子、約15%(w/w)のトリロイシ
ン、約19.4%(w/w)のトレハロース、約13%(w/w)のヒスチジン、および
約2.6%(w/w)のHClを含む製剤を提示する。
【0277】
さらなる実施形態では、本出願は、乾燥粉末吸入器から送達可能な粒子を含む、担体を
含有しない医薬組成物であって、本明細書で開示される抗TSLP分子を含み、in v
itro総肺用量が、送達用量のうちの90%を超え、送達用量中の粒子が、120~4
00μmL/分の間の慣性パラメータを有する、組成物を開示する。
【0278】
別の実施形態では、本出願は、乾燥粉末吸入器から送達可能な、担体を含有しない医薬
組成物であって、本明細書で開示される抗TSLP分子、および少なくとも1つのガラス
形成賦形剤を含むコアと、疎水性賦形剤および緩衝剤を含むシェルとを含む複数の粒子を
含み、in vitro総肺用量が、送達用量のうちの90%w/wを超える、組成物を
開示する。一部の実施形態では、噴霧乾燥により、粒子を形成する。別の実施形態では、
疎水性賦形剤は、トリロイシンを含む。
【0279】
さらなる実施形態では、本出願は、乾燥粉末吸入器から送達可能な、複数の一次粒子お
よび粒子凝集物を含む、担体を含有しない医薬組成物であって、本明細書で開示される抗
TSLP分子を含み、in vitro総肺用量(TLD)が、名目用量のうちの80%
を超え、一次粒子が、コルゲート形状;0.3~1.0μmの間の空気動力学中央径(D
)を特徴とし、乾燥粉末吸入器から送達される粒子および粒子凝集物が、1.5~3.
0μmの間の空気動力学質量中央径(MMAD)を有する、組成物を開示する。一部の実
施形態では、医薬組成物は、一次粒子を含有するための容器と、乾燥粉末吸入器内のそれ
らのエアゾール化の前に、粒子を含有するのに適する容器とをさらに含み、この場合、前
記エアゾール化時に、吸入可能な凝集物を含むエアゾールが形成される。
【0280】
さらなる実施形態では、本出願は、肺送達のための医薬粉末製剤であって、粉末が、1
~100重量%の、本明細書で開示される抗TSLP分子を含む粒子を含み、粉末が、少
なくとも50%が、1~1.5ミクロンの間にある粒子サイズ分布、または0.05~0
.3g/cmの粉末密度、2ミクロン未満の空気動力学径、1.5~20の凹凸度を特
徴とし、粉末が、吸入により投与され、80%を超えるin vitro総肺用量をもた
らす、医薬粉末製剤を開示する。一部の実施形態では、医薬粉末製剤は、担体を含まない
。他の実施形態では、粉末を、乾燥粉末吸入器を伴う使用のために、容器内にパッケージ
ングし、前記乾燥粉末吸入器を使用してエアゾール化すると、粉末は、約2ミクロン未満
の空気動力学質量中央径を有する、吸入可能な凝集物を特徴とする。
【0281】
工程
本明細書ではまた、噴霧乾燥粒子を含む、吸入のための乾燥粉末製剤を調製するための
工程であって、製剤が、少なくとも1つの有効成分を含有し、平均的な成人対象に対する
、名目用量の80~95%w/wの間、例えば、85~90%w/wの間のin vit
ro総肺用量(TLD)を有する、工程も提示される。
【0282】
本明細書ではまた、噴霧乾燥粒子を含む、吸入のための乾燥粉末製剤を調製するための
工程であって、製剤が、少なくとも1つの有効成分を含有し、平均的な成人対象に対する
、送達用量の90~100%w/wの間、例えば、90~95%w/wの間のin vi
tro総肺用量(TLD)を有する、工程も提示される。
【0283】
一部の実施形態では、乾燥粉末製剤は、閉塞性または炎症性の気道疾患、特に、喘息お
よび/またはCOPDを処置するのに適する、少なくとも1つの有効成分、例えば、抗T
SLP Fabを含有する。一部の実施形態では、乾燥粉末製剤は、全身循環において、
疾患を非侵襲的に処置するのに適する、少なくとも1つの有効成分を含有する。
【0284】
噴霧乾燥は、吸入のための加工粒子を作製するときの利点であって、乾燥粉末を迅速に
作製する能力、ならびにサイズ、形状、密度、および表面組成を含む粒子属性の制御など
の利点を付与する。乾燥工程は、極めて迅速である(ミリ秒のオーダーである)。結果と
して、液相中で溶解させた大半の有効成分は、結晶化するのに十分な時間がないので、ア
モルファス固体として沈殿する。
【0285】
噴霧乾燥は、4つの単位操作:原料の調製、ミクロンサイズの液滴を作製する、原料の
アトマイゼーション、高温のガス中の液滴の乾燥、およびバグハウスまたはサイクロン分
離器による乾燥粒子の回収を含む。
【0286】
一部の実施形態では、乾燥粉末粒子を作製する工程は、3つのステップを含むが、一部
の実施形態では、これらのステップのうちの2つ、なおまたは3つ全てを、実質的に同時
に実行しうるので、実際の実践においては、工程を、単一ステップの工程として考えるこ
とができる。本発明の工程について記載することだけを目的として、3つのステップを別
個に記載するが、このような記載は、3ステップ工程に限定されることを意図するもので
はない。
【0287】
一部の実施形態では、工程は、溶液原料を調製するステップと、原料を噴霧乾燥させて
、活性の乾燥粉末粒子をもたらすステップとを含む。原料は、水性ベースの液体原料中に
溶解させた、少なくとも1つの有効成分を含む。一部の実施形態では、原料は、添加され
た共溶媒を含む水性ベースの原料中に溶解させた、少なくとも1つの有効成分(例えば、
抗TSLP Fab1)を含む。一部の実施形態では、原料は、エタノール/水原料中に
溶解させた、少なくとも1つの活性薬剤を含み、この場合、エタノールの画分は、5%~
30%w/wの間、例えば、5%~20%w/wの間である。
【0288】
アモルファス固体では、医薬品の水分含量を制御することが重要である。水和物でない
薬物では、粉末中の水分含量は、5%未満、より典型的には、3%未満、なおまたは2%
w/wであることが好ましい。水分含量は、十分に大きくなければならないが、粉末が著
明な静電引力を呈しないことを確保する程度の大きさでなければならない。噴霧乾燥粉末
中の水分含量は、カールフィッシャー滴定法により決定しなければならない。
【0289】
一部の実施形態では、原料を、加熱され、濾過された空気の流れであって、溶媒を蒸発
させ、乾燥生成物を回収器へと運ぶ流れへと噴霧する。次いで、使用済みの空気から溶媒
を枯渇させる。結果として得られる乾燥粒子の、要求される粒子サイズ、水分含量、およ
び生産収率をもたらすために、インレットおよびアウトレットの温度、フィード速度、ア
トマイゼーション圧力、乾燥空気の流量、ならびにノズル構成など、噴霧乾燥器の作動条
件を調整することができる。適切な装置および工程条件の選択は、本明細書の教示を念頭
に置いた当業者の視野の中にあり、不要な実験を伴わずに達することができる。NIRO
(登録商標)PSD-1(登録商標)scale dryerのための例示的な設定は、
以下の通り:空気インレット温度:約110℃~約170℃の間など、約80℃~約20
0℃の間;空気アウトレット:約60℃~100℃の間など、約40℃~約120℃の間
;液体フィード速度:約50g/分~100g/分の間など、約30g/分~約120g
/分の間;約160標準立方フィート(scfm)~210scfmなど、1分間当たり
約140scfm~約230scfmの総空気流量;およびアトマイゼーション空気流量
:約40scfm~80scfmの間など、約30scfm~約90scfmの間である
。噴霧乾燥原料中の固体含量は、典型的に、1.0%のw/v~5.0%のw/vなど、
0.5%w/v(5mg/ml)~10%のw/v(100mg/ml)の範囲内の固体
含量であろう。当然ながら、設定は、使用されるスケールおよび装置の種類、ならびに利
用される溶媒系の性質に応じて変化するであろう。いずれにせよ、これらおよび類似の方
法の使用は、エアゾールの肺への沈着に適切な直径を伴う粒子の形成を可能とする。
【0290】
一部の実施形態では、賦形剤は全て、原料中で溶解させ、分散させた有効成分上のコア
-シェルコーティングは、溶解させた溶質の物理的特性の差違により駆動される。
【0291】
アモルファスの有効成分を含む粒子について既に論じた通り、粒子表面の性質および形
状は、原料中の成分の可溶性および拡散性を制御することにより制御する。界面活性の疎
水性賦形剤(例えば、トリロイシン、リン脂質、脂肪酸石鹸)は、界面において濃縮され
、粒子の表面粗さの増大もまた駆動しながら、粉末の流動化および分散性を改善しうる。
【0292】
任意の噴霧乾燥ステップおよび/または噴霧乾燥ステップの全ては、吸入により投与さ
れる医薬品における使用のための噴霧乾燥粒子を調製するのに使用される従来の装置を使
用して実行することができる。市販の噴霧乾燥器は、Buchi Ltd.製およびNi
ro Corp.製の噴霧乾燥器を含む。
【0293】
一部の実施形態では、原料を、二連の流体ノズルによりアトマイズする。固体ロード量
が約1.5%w/wを上回ると、液滴の粒子サイズ分布の著明な拡大が生じる。分布のテ
ール部における大型サイズの液滴は、対応する粉末分布内で大型の粒子を結果としてもた
らす。結果として、二連の流体ノズルを伴う、一部の実施形態は、固体ロード量を、1.
0%w/wまたは0.75%w/wなど、1.5%w/w以下へと制限する。
【0294】
一部の実施形態では、狭い液滴サイズ分布は、例えば、米国特許第7,967,221
号明細書および同第8,616,464号明細書において開示されている、平面薄膜型ア
トマイザーにより、高固体ロード量で達成することができる。一部の実施形態では、原料
を、2%~10%w/wの間など、3%~5%w/wの間の固体ロード量でアトマイズす
る。
【0295】
一部の実施形態では、粒子集団密度またはPPDは、0.03×10-6~0.2×1
-6の間など、0.01×10-6~1.0×10-6の間である。
【0296】
一部の実施形態では、EtOH/固体比は、3.0~10.0の間など、1.0~20
.0の間である。
【0297】
一部の実施形態では、本出願は、吸入のための医薬粉末製剤であって、
a.本明細書で開示される抗TSLP結合性分子の溶液を、水/エタノール混合物中で
調製するステップであって、エタノールが、1~20%の間で存在し、エタノールの、総
固体に対する比が、1~20の間である、ステップと;
b.溶液を噴霧乾燥させて、微粒子を得るステップであって、微粒子が、0.2g/c
以下の粒子密度、1~3ミクロンの幾何学径、および1~2ミクロンの空気動力学径
を特徴とする、ステップと
を含み、
粉末が、吸入により投与されると、約80%を超えるin vitro総肺用量をもた
らす、
工程により作製される粒子を含む医薬粉末製剤を開示する。一部の実施形態では、医薬粉
末製剤は、ガラス形成賦形剤もさらに含む。一部の実施形態では、ガラス形成賦形剤は、
アルファ型ガラス形成賦形剤を含む。他の実施形態では、ガラス形成賦形剤は、ベータ型
ガラス形成賦形剤を含む。さらなる実施形態では、ガラス形成賦形剤は、トレハロースを
含む。
【0298】
医薬粉末製剤の一部の実施形態では、粒子集団密度は、0.01×10-6~1.0×
10-6の間である。
【0299】
本出願はまた、対象の肺へと、乾燥粉末を含む粒子を送達する方法であって、
a.本明細書で開示される抗TSLP結合性分子の溶液を、水/エタノール混合物中で
調製するステップであって、エタノールが、5~20%の間で存在する、ステップと、
b.溶液を噴霧乾燥させて、微粒子を得るステップであって、微粒子が、約0.05~
0.3g/cmの間の粒子密度、1~3ミクロンの幾何学径、および1~2ミクロンの
空気動力学径を特徴とする、ステップと;
c.噴霧乾燥させた粉末を、容器内にパッケージングするステップと;
d.粉末を抽出するための手段を有する吸入器を容器に備え付けるステップであって、
吸入器が、粉末を流動化およびエアゾール化する手段をさらに有し、吸入器が、患者駆動
型の約2~約6kPaの吸気労作にわたり作動可能であり、吸入器および粉末が、併せて
、約120~400μmL/分の間の慣性パラメータをもたらし、粉末が、吸入により
投与されると、少なくとも90%の肺沈着をもたらす、ステップとを含む方法も開示する
【0300】
本出願はまた、肺送達のための乾燥粉末医薬製剤を調製する方法であって、
a.本明細書で開示される抗TSLP結合性分子の溶液を、水/エタノール混合物中で
調製するステップであって、エタノールが、5~20%の間で存在する、ステップと、
b.溶液を噴霧乾燥させて、微粒子を得るステップであって、微粒子が、約0.05~
0.3g/cmの間の粒子密度、1~3ミクロンの幾何学径、および1~2ミクロンの
空気動力学径を特徴とする、ステップと
を含む方法も開示する。
【0301】
さらなる実施形態では、本出願は、乾燥粉末吸入器から送達可能な粉末医薬組成物であ
って、本明細書で開示される抗TSLP結合性分子を含む粒子を含み、in vitro
総肺用量が、送達用量のうちの90%w/wを超え、組成物が、担体を含まないこと、粒
子密度が0.05~0.3g/cmであること;粒子凹凸度が3~20であること;粒
子が、エタノール:水混合物から噴霧乾燥させるステップを含む工程により作製されてい
ること;および粒子が、1~20の間のエタノール:固体比を有する、エタノール:水混
合物から噴霧乾燥させるステップを含む工程により作製されていることのうちの少なくと
も1つの特徴を含む、粉末医薬組成物を開示する。一部の実施形態では、粉末医薬組成物
は、特徴のうちの少なくとも2つを含み;他の実施形態では、粉末医薬組成物は、特徴の
うちの少なくとも3つを含む。
【0302】
投与量
抗TSLP抗体またはそれらの断片を含む医薬組成物を含む、本明細書で開示される抗
TSLP分子の投与量、毒性、および治療的有効性は、細胞培養物または実験動物におい
て、例えば、LD50(集団のうちの50%に対して致死性である用量)およびED50
(集団のうちの50%において治療的に有効な用量)を決定するための標準的な薬学手順
により決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比を、治療指数とし、LD5
0/ED50の比として表すことができる。高治療指数を呈する化合物が所望される。毒
性副作用を呈する化合物も、使用しうるが、このような化合物を、非感染細胞に対する潜
在的な損傷を最小化し、これにより、副作用を低減するために、罹患組織の部位へと標的
化する送達系をデザインするように注意を払うべきである。
【0303】
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータを、ヒトにおける使用のための投
与量範囲の処方において使用することができる。このような化合物の投与量は、毒性をほ
とんどまたは全く伴わずに、ED50を含む循環濃度の範囲内にあることが好ましい。投
与量は、利用される剤形および用いられる投与経路に応じて、この範囲内で変化しうる。
本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効用量はまず、細胞培養
アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養物中で決定されるIC50(すな
わち、症状の最大半量の阻害を達成する化合物の濃度)を含む、循環血漿濃度範囲を達成
するように、動物モデルにより処方することができる。このような情報を使用して、ヒト
において有用な用量を、より正確に決定することができる。血漿中レベルは、例えば、高
速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0304】
キット
本明細書ではまた、本明細書で提示される医薬組成物、医薬組成物を対象に送達するた
めのデバイス、使用のための指示書のうちの1つまたは複数を含むキットも提示される。
一部の実施形態では、デバイスは、医薬組成物を、エアゾール化形態で送達しうる。一部
の実施形態では、デバイスは、吸入器、例えば、乾燥粉末吸入器(DPI)である。他の
実施形態では、デバイスは、定量吸入器または噴霧器でありうる。
【0305】
適切な乾燥粉末吸入器は、乾燥粉末をカプセル内またはブリスター内に保管した、単位
用量吸入器を含み、患者は、使用の前に、カプセルまたはブリスターのうちの1つまたは
複数を、デバイスへと装填する。代替的に、用量を、二重フォイルブリスター内、例えば
、カートリッジ内、ストリップ内、またはホイール内にあらかじめパッケージングした、
複数回投与用の乾燥粉末吸入器も想定される。
【0306】
乾燥粉末吸入器は、DISKUS(商標)(GSK;米国特許第6536427号明細
書において記載されている)、DISKHALER(商標)(GSK;国際特許出願公開
第WO97/25086号パンフレットにおいて記載されている)、GEMINI(商標
)(GSK;国際特許出願公開第WO05/14089号パンフレットにおいて記載され
ている)、GYROHALER(商標)(Vectura;国際特許出願公開第WO05
/37353号パンフレットにおいて記載されている)、およびPROHALER(商標
)(Valois;国際特許出願公開第WO03/77979号パンフレットにおいて記
載されている)など、複数回投与用の乾燥粉末吸入器を含む。
【0307】
単回投与用の乾燥粉末吸入器は、AEROLIZER(商標)(Novartis;米
国特許第3991761号明細書において記載されている)およびBREEZHALER
(商標)(Novartis;米国特許第8479730号明細書(Ziegler et al.)に
おいて記載されている)を含む。他の適切な単回投与用の吸入器は、米国特許第8069
851号および同第7559325号に記載されている吸入器を含む。
【0308】
一部の患者が、毎日1回の投与を要求する医薬を送達するための使用を容易かつより簡
便であると見出す、単位用量ブリスター吸入器は、米国特許第8573197号明細書(
Axford et al.)において記載されている吸入器を含む。
【0309】
一部の実施形態では、吸入器は、粉末を流動化および分散させるためのエネルギーを、
患者が与える、複数回投与用の乾燥粉末吸入器(すなわち、「受動的」MD-DPI)で
ある。本発明の粉末は、小さなピーク吸入流量(PIF)で、効果的に流動化および分散
する。結果として、観察されるPIFに伴う粉末分散の変化が小さいことにより、PIF
の増大に伴う慣性衝突の増大が効果的に調整され、流量に依存しない肺沈着がもたらされ
る。本発明の粉末について観察される、流量依存性の非存在は、患者間のばらつきの全体
的な低減を駆動する。
【0310】
使用のための指示書は、TSLP関連炎症性状態の診断または処置のための指示書を含
みうる。本明細書で提示されるキットは、本明細書で記載される方法のうちのいずれかに
従い使用することができる。当業者は、本明細書で提示されるキットに適する他の使用に
精通しており、このような使用のためにキットを利用することが可能であろう。本明細書
で提示されるキットはまた、解析のための試料を、例えば、検査室へと返送するのに使用
しうる、郵送用資材(例えば、郵送料前納封筒または郵送梱包材)も含みうる。キットが
試料のための1つまたは複数の容器を含む場合もあり、試料を標準的な血液回収バイアル
内に入れる場合もある。キットはまた、説明同意文書書式、検査依頼書式、および本明細
書で記載される方法により、どのようにしてキットを使用するのかについての指示書のう
ちの1つまたは複数も含みうる。本明細書にはまた、このようなキットを使用するための
方法も含まれる。書式(例えば、検査依頼書式)および試料を保持する容器のうちの1つ
または複数を、例えば、試料を供与した対象を同定するためのバーコードでコード化する
ことができる。
【0311】
処置法
本明細書では、対象に、治療有効量の、本明細書で記載されるTSLP結合性分子また
はその医薬組成物のうちのいずれかを投与することにより、その処置を必要とする対象、
例えば、ヒトにおける、TSLP関連状態を処置する方法が提示される。一部の実施形態
では、このような方法は、TSLP関連炎症性状態の処置を必要とする対象を同定および
選択するステップもさらに含む。本発明はまた、患者における疾患を処置または防止する
ための、本明細書で記載されるTSLP結合性分子またはその医薬組成物の使用も提供す
る。一部の実施形態では、本発明は、患者における疾患の処置または防止における使用の
ための、本明細書で記載されるTSLP結合性分子またはその医薬組成物を提供する。さ
らなる実施形態では、本発明は、患者における疾患の処置または防止における使用のため
の医薬の製造における、本明細書で記載されるTSLP結合性分子またはその医薬組成物
の使用を提供する。
【0312】
一部の実施形態では、TSLP関連炎症性状態は、アレルギー反応または環境的刺激物
(irritantまたはstimulant)により誘発されうる。一部の具体的実施形態では、TSL
P関連炎症性状態は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性鼻副鼻
腔炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、好酸球性食道炎を含む。
【0313】
一部の実施形態では、TSLP結合性分子を含むTSLP結合性分子または医薬組成物
を、対象に、吸入により、例えば、エアゾール化形態で、乾燥粉末吸入器により投与する
。他の実施形態では、TSLP結合性分子または医薬組成物は、当技術分野で公知の様々
な方法のうちの1つまたは複数を使用して投与することができる。当業者により察知され
る通り、投与経路および/または投与方式は、所望の結果に応じて変化するであろう。選
択される投与経路は、例えば、注射または注入による、静脈内投与経路、筋内投与経路、
皮内投与経路、腹腔内投与経路、皮下投与経路、脊髄内投与経路、または他の非経口投与
経路を含む。非経口投与は、通例注射による、腸内投与および局所投与以外の投与方式を
表す場合があり、限定なしに述べると、静脈内注射および注入、筋内注射および注入、動
脈内注射および動脈内注入、髄腔内注射および髄腔内注入、関節包内注射および関節包内
注入、眼窩内注射および眼窩内注入、心内注射および心内注入、皮内注射および皮内注入
、腹腔内注射および腹腔内注入、経気管注射および経気管注入、皮下注射および皮下注入
、表皮下注射および表皮下注入、関節内注射および関節内注入、被膜下注射および被膜下
注入、くも膜下注射およびくも膜下注入、脊髄内注射および脊髄内注入、硬膜外注射およ
び硬膜外注入、ならびに胸骨内注射および胸骨内注入を含む。代替的に、本発明のTSL
P結合性分子を含むTSLP結合性分子または医薬組成物は、局所投与経路、表皮投与経
路、または経粘膜投与経路、例えば、鼻腔内投与経路、経口投与経路、膣内投与経路、直
腸内投与経路、舌下投与経路、または局所投与経路など、非経口経路以外の経路を介して
投与することもできる。
【0314】
一部の実施形態では、TSLP関連炎症性状態は、喘息である。喘息は、気道の複合性
かつ雑多な慢性炎症性疾患であって、転導可能な気管支狭窄を特徴とし、広範にわたる気
管支収縮刺激に対する気道の過剰な応答(気道過敏性;AHR)と関連するする疾患であ
る。近年の研究は、喘息の発症機序に関与する免疫経路の同定に焦点を当てており、2型
ヘルパーT(Th2)細胞およびTh2非介在性エフェクター細胞の両方の役割を明らか
にしている(Lambrecht and Hammad, Nature immunology 2014, 16: 45-56)。好酸球性
炎症およびアトピーの証拠を特徴とするアレルギー性喘息の場合、Th2免疫経路エレメ
ントが、気道炎症およびAHRの発生および維持に極めて重要である。胸腺間質性リンパ
球新生因子(TSLP)は、Th2応答の、鍵となる上流調節因子である。TSLPは、
多様な刺激(例えば、物理的損傷、周囲微粒物質、アレルゲン、炎症促進性サイトカイン
またはTh2極性化サイトカイン、および微生物生成物)に応答して、気道内の粘膜上皮
細胞内で発現する。TSLPの役割は、樹状細胞(DC)をモジュレートし、ナイーブT
細胞の、炎症性Th2細胞への分化を誘導し、生得免疫応答の一部として、マスト細胞、
好酸球、およびマクロファージからのサイトカイン分泌を促進することである。加えて、
TSLPは、調節性T細胞の発生に干渉し、寛容性と炎症との平衡を損なう場合がある。
好中球性または顆粒球希少性(paucigranulocytic)炎症を特徴とする非アレルギー性喘
息の場合、炎症を駆動するサイトカインも理解されていないが、非Th2介在性サイトカ
インであるIL-17およびインターフェロンγ(IFN-γ)(interferon-y (IFN-y)
)はいずれも、役割を果たすと考えられている。興味深いことに、Th2応答を媒介する
その役割に加えて、前臨床における証拠は、TSLPが、非Th2応答を増幅し、また、
IL-17およびIFN-γ(IFN-y)により媒介される慢性炎症の確立にも重要であり
うることを示唆する。
【0315】
TSLPは、齧歯動物における、気道のTh2サイトカイン関連炎症の発症に、必要か
つ十分である。TSLPの構成的肺上皮分泌を伴うトランスジェニックマウスは、界面活
性剤であるプロテインCのプロモーターの制御下で、喘息と適合性の以下の特徴:好酸球
性気道炎症;Th2の発現によるバイアスがかかったCD4T細胞浸潤;全身性好酸球増
加症;IgEの増大;気道過敏性;ならびに杯細胞過形成と、気道線維症および血管線維
症とを含む、著明な気道リモデリングを発症した。アレルギー性炎症、TSLP発現、お
よびタンパク質産生における、TSLPの、さらなる促進的な役割はまた、肺内で、吸入
されたアレルゲンへの曝露を増大させることも見出される(Zhou et al., 2005, Nature
immunology 6, 1047-1053)一方、抗原の存在下における、TSLPの直接的な鼻腔内送
達は、重度の疾患の急速な発病をもたらす(Headley et al., 2009, Journal of immunol
ogy 182, 1641-1647)。TSLPR欠損マウスは、古典的なオボアルブミン+アラムプラ
イミングマウスモデルにおけるTh2様炎症の発症に対して抵抗性である(Al-Shami et
al., 2005, The Journal of experimental medicine 202, 829-839;Zhou et al., 2005,
Nature immunology 6, 1047-1053)。気道炎症の減退は、血清IgEの低減、ならびに
Th2サイトカインならびにIL-4、IL-5、IL-13、エオタキシン、およびT
ARC(Thymus- and Activation-Regulated Chemokine)などのTh2ケモカインの減少
と相関した。
【0316】
重度の喘息患者では、気道固有層内のTSLP発現の増大が特異的に観察された(Shik
otra et al., 2012, Journal of Allergy and Clinical Immunology 129, 104-111.e109
)。さらに、いくつかの研究は、ヒトTSLP遺伝子座における一塩基多型(SNP)の
頻度と、TSLPの発現レベルと、喘息および好酸球性食道炎への疾患感受性との関連も
示している(Ferreira et al., 2014, The Journal of allergy and clinical immunolog
y 133, 1564-1571;Harada et al., 2011, American journal of respiratory cell and
molecular biology 44, 787-793;He et al., 2009, The Journal of allergy and clini
cal immunology 124, 222-229;Rothenberg et al., 2010, Nature Genetics 42, 289-29
1)。近年の研究では、TSLP遺伝子の変異体はまた、エピスタシス性の関連を介して
、小児喘息における喘息危険性の著明な増大と関連することも見出された(Biagini Myer
s et al., 2014, The Journal of allergy and clinical immunology 134, 891-899 e893
)。
【0317】
組合せ療法
上記で記載した多様な処置は、TSLP関連炎症性状態のための現行の標準治療など、
他の処置パートナーと組み合わせることができる。したがって、本明細書で記載されるT
SLP関連炎症性状態を処置する方法は、第2の薬剤を、処置を必要とする対象に投与す
るステップもさらに含みうる。一部の実施形態では、第2の薬剤は、コルチコステロイド
、気管支拡張剤(SABA、LABA、SAMA、LAMA)、抗ヒスタミン剤、抗ロイ
コトリエン剤、およびPDE-4阻害剤から選択しうるがこれらに限定されない。
【0318】
「組合せ」という用語は、1つの単位剤形中に固定された組合せ、または本発明の化合
物と、組合せパートナー(例えば、下記で説明される通り、「治療剤」または「共薬剤」
ともまた称する、別の薬物)とを、同時に独立に、もしくは時間間隔を置いて別個に投与
しうる組合せ投与、とりわけ、これらの時間間隔により、この組合せパートナーが、協同
作用、例えば、相乗作用を示すことを可能とする組合せ投与を指す。単独の構成要素を、
キットにパッケージングすることもでき、個別にパッケージングすることもできる。構成
要素(例えば、粉末または液体)の一方または両方を、投与前に、所望の用量へと、復元
または希釈することができる。本明細書で用いられる「共投与」または「組合せ投与」な
どの用語は、選択された組合せパートナーの、それを必要とする単一の対象(例えば、患
者)への投与を包含することを意味し、薬剤を、必ずしも同じ投与経路により、または同
時に投与するわけではない処置レジメンを含むことを意図する。本明細書で使用される「
医薬の組合せ」という用語は、1つを超える治療剤の混合または組合せから生じる生成物
を意味し、治療剤の固定された組合せおよび固定されていない組合せの両方を含む。「固
定された組合せ」という用語は、治療剤、例えば、本発明の化合物および組合せパートナ
ーの両方を、患者へと、単一の実体または投与量の形態で、同時に投与することを意味す
る。「固定されていない組合せ」という用語は、治療剤、例えば、本発明の化合物および
組合せパートナーの両方を、患者へと、別個の実体として、具体的時間制限を伴わずに、
同時、共時的、または逐次的のいずれかで投与し、このような投与が、患者の体内に、治
療有効レベルの、2つの化合物をもたらすことを意味する。後者はまた、カクテル療法、
例えば、3つ以上の治療剤の投与にも適用される。本明細書で使用される「医薬の組合せ
」という用語は、1つの単位剤形中に固定された組合せ、または2つ以上の治療剤を、同
時に独立に、もしくは時間間隔を置いて別個に投与しうる組合せ投与、とりわけ、これら
の時間間隔により、この組合せパートナーが、協同作用、例えば、相乗作用を示すことを
可能とする組合せ投与のための部分による、固定されていない組合せもしくはキットを指
す。
【0319】
「組合せ療法」という用語は、2つ以上の治療剤の投与であって、本開示で記載される
治療的状態または障害を処置する投与を指す。このような投与は、これらの治療剤の共投
与であって、一定の比の有効成分を有する単一のカプセル内など、実質的に共時的な形の
共投与を包含する。代替的に、このような投与は、各有効成分のための、複数または別個
の容器(例えば、錠剤、カプセル、粉末、および液体)による共投与も包含する。粉末お
よび/または液体は、投与前に、所望の用量へと、復元または希釈することができる。加
えて、このような投与また、各種の治療剤の、ほぼ同時または異なる時点のいずれかにお
ける、逐次的な形の使用も包含する。いずれの場合にも、処置レジメンは、本明細書で記
載される状態または障害の処置において、薬物の組合せの有益な効果をもたらすであろう
【0320】
そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される全ての科学技術用
語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する
。本発明の実施では、本明細書で記載される方法および材料と類似または同等の方法およ
び材料を使用しうるが、下記では、適切な方法および材料について記載する。本明細書で
言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりそれらの
全体が組み込まれる。矛盾する場合は、定義を含む、本明細書に従う。加えて、材料、方
法、および例は、例示的なものであるに過ぎず、限定的であることを意図するものではな
い。当業者は、本明細書で記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料
を、本発明の実施において使用しうることを認識するであろう。実際、本発明は、いかな
る形であれ、記載される方法および材料に限定されるものではない。
【実施例
【0321】
[実施例1]
ファージディスプレイを使用する、ヒト抗TSLP抗体およびそれらのFab断片の作出
MorphoSys HuCAL PLATINUM(登録商標)ファージディスプレ
イ技術を使用して、ヒトTSLPアイソフォーム1(配列番号27)に特異的に結合する
Fabを作り出した。ファージミドライブラリーは、HuCAL(登録商標)概念(Knap
pik et al., 2000, J Mol Biol 296, 57-86)に基づき、Fabをファージ表面上に提示
するために、CysDisplay(商標)技術を利用する(Lohning、国際公開第WO
2001/05950号パンフレット)。
【0322】
パニング
3種類のパニング:直接コーティングした組換えヒトTSLP(rhTSLP)に対す
る固相パニング、固相アミロイド前駆体タンパク質(APP)捕捉パニング、およびTS
LPに対する溶液パニングを実施した。
【0323】
直接コーティングしたrhTSLPに対する固相パニングのために、96ウェルMax
isorp(商標)プレートを、ウェル1つ当たり300μlの大腸菌(E. coli)由来
rhTSLP(R&D Systems)により、4℃で一晩にわたりコーティングした
。各パニングのために、約4×1013個のHuCAL PLATINUM(登録商標)
ファージ-抗体を、コーティングした各抗原へと添加し、マイクロ滴定プレートシェーカ
ー上、RTで2時間にわたりインキュベートした。その後、非特異的に結合したファージ
を、数回の洗浄ステップにより洗浄し、10mMのトリス/HCl、pH8中に25mM
のDTTを使用して、特異的に結合したファージを溶出させた。DTTによる溶出物を、
14mlの大腸菌(E. coli)TG1へと移し、ファージ感染のためにインキュベートし
た。
【0324】
感染した細菌を、2倍濃度のYT培地中に再懸濁させ、LB/Cam寒天プレート上に
播種し、一晩にわたりインキュベートした。コロニーを、プレートから擦り取り、ファー
ジレスキュー、選択されたクローンのポリクローナル増幅、およびファージ産生のために
使用した。精製されたファージにより、次のパニングラウンドを開始した。抗原の量を減
少させ、洗浄条件をより厳密とすることを除き、第1ラウンドのプロトコールに従い、第
2および第3ラウンドの固相パニングを実施した。
【0325】
カニクイザルTSLPに対する固相APP捕捉パニングでは、パニングで使用する抗原
は、APP6(アミロイド前駆体タンパク質)タグを有し、Maxisorp(商標)プ
レート上に固定化したマウス抗APP6抗体を介して、抗原-APP6融合タンパク質を
捕捉した。抗原のAPP6タグまたは抗APP6捕捉抗体に結合するファージの選択を防
止するため、捕捉抗体および無関係なAPP6タグ付け抗原を使用して、ファージのプレ
ブロッキングを実施した。
【0326】
96ウェルMaxisorp(商標)プレートを、300μlの抗APP抗体および無
関係なAPP6タグ付け抗原により、4℃で一晩にわたりコーティングした。抗原である
、ヒトTSLP_Avi-APP6またはカニクイザルTSLP_APP6-Aviを、
シェーカー上、RTで1時間にわたり捕捉した。並行して、ファージを、抗APP抗体上
および無関係な抗原上に、2回にわたり前吸着させた。
【0327】
抗原コーティング手順およびファージブロッキング手順に加え、捕捉パニングを、上記
で記載した固相パニングと同様に実施した。
【0328】
TSLPに対する溶液パニングのために、ファージを、50%のヒト血清/0.33倍
濃度のChemiBLOCKER/0.05%Tween20でブロッキングした。ファ
ージプールごとに、4mgのストレプトアビジンビーズ(Dynabeads(登録商標
)M-280 Streptavidin;Invitrogen)を、1倍濃度のCh
emiblocker中でブロッキングした。ストレプトアビジンまたはビーズに結合す
るファージを除去するために、ブロッキングされたストレプトアビジンビーズの各々を使
用して、ブロッキングされたファージ粒子の前吸着を、2回にわたり実施した。次いで、
ビオチニル化抗原である、ヒトTSLP_Avi-APP6を、ファージ粒子へと添加し
た。インキュベーションの後、ストレプトアビジンビーズを使用して、ファージ-抗原複
合体を捕捉し、ストレプトアビジンビーズに結合したファージ粒子を、磁気分離器により
回収した。非特異的に結合したファージを、PBS/0.05%Tween20およびP
BSを使用する、数回の洗浄ステップにより洗い落とした。10mMのトリス/HCl、
pH8中に25mMのDTTを使用することにより、特異的に結合したファージを、スト
レプトアビジンビーズから溶出させた。後続のファージ感染およびファージ産生を、固相
パニングプロトコールに従い実施し、次のパニングラウンドを開始した。
【0329】
発現
可溶性Fabの迅速な発現を容易とするため、選択されたHuCAL PLATINU
M(登録商標)ファージのインサートをコードするFabを、pMORPH(登録商標)
30ディスプレイベクターから、pMORPH(登録商標)x11発現ベクターである、
pMORPH(登録商標)x11_FHへとサブクローニングした。大腸菌(E. coli)
TG1-Fへの単一クローンによる形質転換後、HuCAL(登録商標)-Fab断片を
含有するペリプラズム抽出物の発現および調製を、既に記載されている通りに実施した(
Rauchenberger et al., 2003, J Biol Chem 278: 38194-38205)。
【0330】
クロラムフェニコール耐性の単一クローンを、2倍濃度のYT培地であらかじめ満たし
た滅菌384ウェルマイクロ滴定プレートのウェルへと採取し、37℃で一晩にわたり増
殖させた。翌朝、培地を含有するグリセロールを、マスタープレートの各ウェルへと添加
し;プレートを、アルミニウムホイルでシーリングし、-80℃で保管した。
【0331】
ELISAスクリーニング
ELISAスクリーニングを使用して、単一のFabクローンを、標的抗原への結合に
ついてのパニング出力から同定した。Fabは、粗大腸菌(E. coli)溶解物を含有する
Fabを使用して調べた。調製された大腸菌(E. coli)溶解物中のFabの発現を検証
するために、Maxisorp(商標)384ウェルプレートを、PBS中、1:100
0に希釈された、Fd断片特異的ヒツジ抗ヒトIgGでコーティングした。0.05%の
Tween20を含有するPBS中に5%のスキムミルク粉末によるブロッキングの後、
大腸菌(E. coli)溶解物を含有するFabを添加した。その後、結合したHuCAL(
登録商標)-Fab断片を、アルカリホスファターゼへとコンジュゲートさせたF(ab
)2特異的ヤギ抗ヒトIgG(1:5000に希釈した)を伴うインキュベーションに続
き、AttoPhos蛍光基質(Roche;型番11681982001)を添加する
ことにより検出した。535nmにおける蛍光発光は、430nmにおける励起を伴って
記録した。
【0332】
直接コーティングした抗原に対するELISAスクリーニングを実施するため、Max
isorp(商標)384ウェルプレートを、PBS中に2μg/mlの濃度の、異なる
TSLP抗原でコーティングした。PBS中に5%のスキムミルク粉末でプレートをブロ
ッキングした後、Fabを含有する大腸菌(E. coli)溶解物を添加した。Fabの結合
は、AttoPhos蛍光基質(Roche;型番11681982001)を使用して
、アルカリホスファターゼへとコンジュゲートさせたF(ab)2特異的ヤギ抗ヒトIg
G(1:5000に希釈した)により検出した。535nmにおける蛍光発光は、430
nmにおける励起を伴って記録した。
【0333】
APPで捕捉された抗原に対するELISAスクリーニングを実施するため、Maxi
sorp(商標)384ウェルプレートを、PBS中に2.5μg/mlの濃度の、抗A
PP特異的抗体でコーティングした。PBS中に5%のスキムミルク粉末でプレートをブ
ロッキングした後、2μg/mlの濃度のAPPタグ付けTSLP抗原を、RTで1時間
にわたり結合させた。次いで、Fabを含有する大腸菌(E. coli)溶解物を添加した。
Fabの結合は、AttoPhos蛍光基質(Roche;型番11681982001
)を使用して、アルカリホスファターゼへとコンジュゲートさせたF(ab)2特異的ヤ
ギ抗ヒトIgG(1:5000に希釈した)により検出した。535nmにおける蛍光発
光は、430nmにおける励起を伴って記録した。
【0334】
ビオチニル化抗原に対するELISAスクリーニングを実施するため、Maxisor
p(商標)384ウェルプレートを、PBS中、1:1000に希釈された、Fd断片特
異的ヒツジ抗ヒトIgG(The Binding Site;型番PC075)、また
は抗His特異的マウスIgG(R&D Systems;型番MAB050)のそれぞ
れでコーティングした。PBS中に5%のスキムミルク粉末によるブロッキングの後、大
腸菌(E. coli)溶解物を含有するFabを添加した。その後、捕捉されたHuCAL(
登録商標)-Fab断片を、0.7~1.5μg/mlの、ビオチニル化させた、hu
TSLP、hu TSLP、またはcy TSLPのそれぞれに結合させ、これを、アル
カリホスファターゼへとコンジュゲートさせたストレプトアビジンを伴うインキュベーシ
ョンに続き、AttoPhos蛍光基質(Roche;型番11681982001)を
添加することにより検出した。535nmにおける蛍光発光は、430nmにおける励起
を伴って記録した。
【0335】
ビオチニル化抗原(2.5~5μg/ml)はまた、ニュートラビジンコーティングプ
レート上でも捕捉した。PBS中に5%のスキムミルク粉末によるブロッキングの後、大
腸菌(E. coli)溶解物を含有するFabを添加した。Fabの結合は、AttoPho
s蛍光基質(Roche;型番11681982001)を使用して、アルカリホスファ
ターゼへとコンジュゲートさせたF(ab)2特異的ヤギ抗ヒトIgG(1:5000に
希釈した)により検出した。535nmにおける蛍光発光は、430nmにおける励起を
伴って記録した。
【0336】
9984のクローン(パニングサブコード1つ当たりのクローン384)を、NAプレ
ート上にコーティングされた、ビオチニル化ヒトTSLP_Avi-APP6およびビオ
チニル化カニクイザルTSLP_APP6-Aviについての一次ELISAスクリーニ
ング(3.4.4を参照されたい)において解析した。ELISA結果は、GENios
Proの「PrimeScreen」プログラムで解析した。結果は、バックグラウン
ドシグナルと比較して解析した。ヒト抗原については、シグナルがバックグラウンドの>
10倍であるウェルだけを陽性として選択し、カニクイザル抗原については、シグナルが
バックグラウンドの>5倍であるウェルを陽性として選択した。バックグラウンドの5倍
未満のシグナルは、発現が低度のFab、低アフィニティーのFab、マイクロ滴定プレ
ートのエッジ効果、または非再現可能値の結果である可能性が高い。溶液パニングは、3
133の固相パニング中、240の一次ヒットを結果としてもたらした。選択された14
72の一次ヒットを、二次ELISAスクリーニングにおいてさらに解析した。
【0337】
二次ELISAスクリーニングでは、C末端またはN末端のAvi-APP6タグ付け
抗原、直接コーティング抗原、溶液中で提示されるビオチニル化抗原、HEK由来抗原、
大腸菌(E. coli)由来抗原、抗原の脱グリコシル化変異体(PNGアーゼ処理変異体)
を含む、異なる抗原提示方式を使用した。加えて、二次スクリーニングでは、反標的(c
ountertarget)であるIL-7への非特異的結合も解析した。ビオチン結合
剤およびタグ結合剤を除外するため、ビオチニル化した無関係なAPP-Aviタグ付け
抗原を使用した。ELISA結果は、GENios Proの「PrimeScreen
」プログラムで解析し、結果は、バックグラウンドシグナルと比較して解析した。無関係
な抗原および反標的であるIL-7については、シグナルがバックグラウンドの<2倍で
あるヒットだけを選択した。
【0338】
二次スクリーニングの結果は、抗原提示方式が、交差反応性に極めて重要であることを
指し示す。脱グリコシル化抗原についてのスクリーニングは、糖エピトープを標的とする
結合剤が存在することを示した。さらに、タグの場所およびタグ組成も、コンフォメーシ
ョン変化に起因する交差反応性に影響を及ぼしうる。クローンを、それらの交差反応性プ
ロファイルに従い群分けする結果として、7つの異なる交差反応性群をもたらした。群1
~3は、大腸菌(E. coli)由来のhuTSLP単独またはHEK由来抗原と組み合わせ
た大腸菌(E. coli)由来のhuTSLPのいずれかと交差反応性である全てのクローン
を含む。群4は、溶液中で提示されるヒトTSLP_Avi-APP6と少なくとも交差
反応性である全てのクローンを含む。これに対し、群5は、溶液中のヒトTSLP_Av
i-APP6ともっぱら交差反応性である全てのクローンを含む。群6では、全てのクロ
ーンが、ヒトTSLP_Avi-APP6および脱グリコシル化ヒトTSLP_Avi-
APP6と交差反応性であり、群7では、全てのクローンが、脱グリコシル化抗原を含む
、全てのHEK由来抗原と交差反応性である。
【0339】
シーケンシングおよびIgGへの転換
配列解析を、交差反応性群1~3(大腸菌(E. coli)由来のTSLPと交差反応性で
あるクローン)のうちの73のクローン、および群4~7(HEK由来抗原と交差反応性
であるクローン)のうちの569のクローンに対して実施した。合計で、297の固有の
HCDR3クローンを同定し、222のクローンを確立し、124のクローンを、Fab
フォーマットで精製した。
【0340】
3回目および4回目のシーケンシング解析によるクローンを、速やかに、IgG転換に
かけ、その後、哺乳動物細胞内で発現させるために、pMORPH(登録商標)4_Ig
G1fベクターへとクローニングした。
【0341】
アフィニティーの決定
クローンのHuCAL(登録商標)FabおよびIgG形の解離定数(K)の決定は
、以下の通りに実施した:ストレプトアビジンMSDプレートに、アッセイ緩衝液中、0
.2μg/mlのビオチニル化ヒトTSLPを、RTで1時間にわたりコーティングした
。抗原によるコーティングの前に、ストレプトアビジンプレートを、3%のBSAを伴う
PBSにより、4℃で一晩にわたりブロッキングした。下記で記載される条件下で、ヒト
TSLPおよびカニクイザルTSLPについての溶液平衡滴定(SET)を実施した。抗
体タンパク質の単量体画分を使用した(少なくとも90%の単量体含量;解析的SEC;
それぞれ、FabのためのSuperdex75(Amersham Pharmaci
a)、またはIgGのためのTosoh G3000SWXL(Tosoh Biosc
ience)により解析した)。
【0342】
溶液中のアフィニティーの決定は基本的に、文献(Friquet et al., 1985, J Immnunol
Meth 77, 305-319)に記載されている通りに実施した。SET法の感度および精度を改
善するために、SET法を、古典的なELISAから、ECLベースの技術へと移行させ
た(Haenel et al., 2005, Anal Biochem 339, 182-184)。1mg/mlのヤギ-抗ヒト
(Fab)2断片特異的抗体(Dianova)を、製造元の指示書に従い、MSD S
ulfo-TAGTM NHS-Ester(Meso Scale Discover
y、Gaithersburg、MD、USA)で標識した。
【0343】
実験は、ポリプロピレン製のマイクロ滴定プレート内の、アッセイ緩衝液としての、0
.5%のBSAおよび0.02%のTween-20を含有するPBS pH7.4中で
実行した。標識されていない抗原を、予測Kの、少なくとも10倍の濃度で始まる、2
系列で希釈した。抗原を伴わないウェルを使用して、Bmax値を決定し;アッセイ緩
衝液だけを含有するウェルを使用して、バックグラウンドを決定した。適切な量の結合剤
(抗体濃度が予測Kと同様であるかまたはこれを下回り、最終容量を60μLとする)
を添加した後で、混合物を、RTで一晩にわたりインキュベートした。
【0344】
MSDプレートを、抗原(ウェル1つ当たり30μLずつ)でコーティングした。0.
02%のTween-20を含有するPBSによるプレートの洗浄後、平衡化させた試料
を、これらのプレート(ウェル1つ当たり30μlずつ)へと移し、20分間にわたりイ
ンキュベートした。洗浄後、ウェル1つ当たり30μlずつのMSD-Sulfoタグ標
識化検出抗体(抗ヒト(Fab)2、最終的な希釈を、典型的に、1:2,000とする
)を、MSDプレートへと添加し、Eppendorfシェーカー上(700rpm)、
RTで30分間にわたりインキュベートした。
【0345】
MSDプレートを洗浄し、ウェル1つ当たり30μLずつのMSD Read Buf
fer Tを、界面活性剤と共に添加した後、Sector Imager 6000(
Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD、USA
)を使用して、電気化学発光シグナルを検出した。
【0346】
データは、カスタマイズ化当てはめモデルを適用する、XLfit(IDBS)ソフト
ウェアで査定した。Fab分子のKを決定するために、以下の当てはめモデル(Haenel
et al., 2005に従い、Abraham et al., 1996に従い改変した):
【0347】
【数2】

を使用した。
【0348】
IgG分子のKを決定するために、以下の当てはめモデル(Piehler et al., 1997に
従い改変した):
【0349】
【数3】

を使用した。
【0350】
アフィニティーはまた、Biacore 3000またはBiacore T200測
定器(Biacore、GE Healthcare)を使用して、反応速度定数を決定
することを介する、Biacore表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することも
できる。直接コーティングした抗原を介する、BiacoreによるKの決定は基本的
に、以下の通りに実施した:50RUビオチニル化抗原ヒトTSLPを、SAチップ(B
iacore、GE Healthcare)上に捕捉した。基準フローセル1を、ブラ
ンクに保った。PBS pH7.2 GIBCO+0.05%Tween 20を、流量
を30μl/分とするランニングバッファーとして使用した。3.9~500nMの範囲
のFab濃度を、45μlの注射容量および300秒間の解離時間と共に使用した。結合
した解析物の再生は、10mMのグリシンpH1.5 5μlの、2回にわたる注入によ
り行った。パラメータであるRmaxをローカルに設定し、RIを0に設定して、生デー
タを、1:1結合モデルに当てはめた。
【0351】
アフィニティー成熟
7つのFab候補物質を、アフィニティー成熟のために選択した。選択されたFabの
アフィニティーおよび生体活性を増大させるため、L-CDR3領域およびHCDR2領
域を、トリヌクレオチド指向突然変異誘発を使用する、カセット式突然変異誘発により、
並行して最適化する(Virnekas et al., 1994, Nucleic Acids Res 22: 5600-5607)一方
で、フレームワーク領域は、一定に保った。親Fab断片のL-CDR3を最適化するた
めに、結合剤プールの軽鎖(405bp)の、LCDR3、フレームワーク4、および定
常領域を、酵素的消化により除去し、フレームワーク4および定数ドメインと併せた、多
様化させたL-CDR3のレパートリーで置きかえた。第2のライブラリーセットでは、
H-CDR2を多様化させる一方で、接続するフレームワーク領域は一定に保った。ライ
ゲーション混合物を、108~109独立のコロニーから得られる、4mlの大腸菌(E.
coli)TOP10F細胞に電気穿孔した。このライブラリーサイズは、理論的な多様性
のカバレッジを確保した。ライブラリーの増幅は、記載されている通りに実施した(Rauc
henberger et al., 2003, J Biol Chem 278: 38194-38205)。品質管理のために、単一の
クローンをランダムに採取し、シーケンシングした。アフィニティーを改善した結合剤を
選択するために、ビオチニル化抗原である、ヒトTSLP_Avi-APP6およびカニ
クイザルTSLP_APP6-Aviを使用して、成熟ライブラリーに由来するファージ
を、3ラウンドの溶液パニングにかけた。厳密性は、各パニングラウンドにおける抗原濃
度を低下させることにより増大させた(Low et al., 1996, J Mol Biol 260, 359-368. 1
996)。抗原の低減に加えて、オフ速度選択(Hawkins et al., 1992, J Mol Biol 226, 8
89-896)も実施した。これを、RTで一晩にわたる洗浄ステップと組み合わせた。
【0352】
一部の選択された抗体断片のアフィニティーおよび生体活性を増大させるため、L-C
DR1領域、L-CDR3領域、H-CDR2領域、H-CDR1領域を、トリヌクレオ
チド指向突然変異誘発を使用する、カセット式突然変異誘発により、並行して最適化した
(Virnekas et al., 1994, Nucleic Acids Res 22: 5600-5607)一方で、フレームワーク
領域は、一定に保った。
【0353】
CDR内の翻訳後修飾(PTM)は、このような抗体の効力は、PTMの位置に応じて
、潜在的に低下し、加えて、PTMは、不均質な化合物をもたらしうるので、所望されな
い。アフィニティー成熟の前に、選択工程中に、PTMを除去した変異体を選択すること
を目的として、NG部位、NS部位、およびDG部位を欠く変異体を作り出し、親クロー
ンを伴うプールに組み入れた。作り出された変異体の粗細菌細胞溶解物であって、Fab
を含有する粗細菌細胞溶解物を、ヒトTSLPについてのELISAにおいて、抗原への
結合について調べた。成熟ライブラリーを作り出すために、変異体のプラスミドDNAを
、親DNAと混合した。
【0354】
Haenel et al., 2005, Anal Biochem 339: 182-184により記載されている原理に基づく
溶液平衡滴定による成熟結合剤の評定のために、一定量の希釈BEL抽出物を、異なる濃
度の抗原で、一晩にわたり平衡化させた。次いで、混合物を、抗原であらかじめコーティ
ングされたMSDプレートへと移し、インキュベーションおよび洗浄の後、適切なMSD
-Sulfoタグ標識化検出抗体を添加した。その後、結合しなかったFabの濃度を、
Sector Imager 6000(Meso Scale Discovery、
Gaithersburg、MD、USA)を使用するECL検出を介して定量化した。
対応する当てはめモデルを適用して、アフィニティーを推定し、これにより、成熟により
最も改善されたクローンを同定する、XLfit(IDBS)ソフトウェアを使用して、
結果を処理した。
【0355】
産生
真核生物HKB11細胞に、抗TSLP Fabまたは抗TSLP IgGの重鎖およ
び軽鎖の両方をコードする、pMORPH(登録商標)4発現ベクターのDNAをトラン
スフェクトした。トランスフェクションの3または6日間後に、細胞培養物上清を採取し
た。滅菌濾過の後、液体操作ステーションを使用して、溶液を、プロテインAアフィニテ
ィークロマトグラフィー(MabSelect SURE、GE Healthcare
)にかけた。そうでないことが言明されない限りにおいて、1倍濃度のダルベッコPBS
(pH7.2、Invitrogen)との緩衝液交換を実施し、試料を滅菌濾過した(
0.2μmの小孔サイズ)。タンパク質濃度は、UV分光光度法により決定し、IgGの
純度は、Labchip System(Perkin Elmer、USA)を使用し
て、変性還元条件下で解析した。
【0356】
抗TSLP Fab1
抗TSLP Fab1は、初期パニングで同定された、MOR011086ファミリー
から導出した。MOR011086のアフィニティー成熟は、HC-CDR2内に、DG
翻訳後修飾モチーフを含む、MOR014051の作出を結果としてもたらした。このD
Gモチーフを除去することにより、MOR14701(DG→DA)を作り出し、次いで
、これを生殖細胞系列化して、MOR014824、すなわち、表2のMab1を作製し
た。表2の抗TSLP Fab1は、Mab1のFab断片である。
【0357】
Kabat番号付けスキーム、Chothia番号付けスキーム、または組合せ番号付
けスキームによる、抗TSLP Fab1の重鎖CDR(HCDR)、軽鎖CDR(LC
DR)のアミノ酸配列、ならびに重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を決定
し、表2に列挙した。抗TSLP Fab1は、SETにより決定される通り、組換えヒ
トTSLPに、極めて大きなアフィニティー(K=6pM)で結合した。抗TSLP
Fab1は、構造的に類似するサイトカインであるIL-7に結合しなかった。
【0358】
[実施例2]
レポーター遺伝子アッセイにおける、組換えヒトTSLPおよび天然分泌型ヒトTSLP
に対する、抗TSLP Fab1の効力
組換えヒトTSLP、天然分泌型ヒトTSLP、およびカニクイザルTSLPに対する
抗TSLP Fab1の効力を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにおいて調べ
た。
【0359】
材料および方法
天然分泌型ヒトTSLPは、IL-1β、TNF-α、およびIL-13による、24
時間にわたる刺激を介して、ヒト肺線維芽細胞から得た。
【0360】
Ba/F3細胞に、hTSLPR、hIL7Rα、およびStat5ルシフェラーゼレ
ポーター構築物をトランスフェクトした。Stat5とは、TSLPシグナル伝達の下流
のエフェクターである。細胞は、10%のFCIII(Fisher Scientif
ic、Pittsburgh、PA)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(Inv
itrogen、Grand Island、NY)、1μg/mlのピューロマイシン
(Sigma、St.Louis、MO)、および5ng/mlの組換えヒトTSLP(
rhTSLP、R&D Systems、Minneapolis、MN)を伴う細胞増
殖培地:RPMI1640(Invitrogen、GrandIsland、NY)中
で増殖させた。レポーターアッセイ緩衝液は、10%のFCIII、1%のペニシリン/
ストレプトマイシン、および1μg/mlのピューロマイシンを伴うRPMI 1640
を使用して作製した。
【0361】
Ba/F3細胞を、T162cmのフラスコ内の懸濁液中で増殖させ、毎週2回、1
:50に分割した。Ba/F3細胞を、対数増殖中期に回収し、200×gで5分間にわ
たる遠心分離によりペレット化し、TSLPを含有しない細胞増殖培地中で洗浄した。こ
れを繰り返し、次いで、TSLP非含有条件下で、18~24時間にわたりインキュベー
トした。翌日、細胞を、200×gで5分間にわたる遠心分離により、再度ペレット化し
、レポーターアッセイ緩衝液中に、1mL当たりの細胞1×10個の細胞濃度まで再懸
濁させた。1mL当たりの細胞1×10個のBa/F3細胞10μLを、白色の96ウ
ェルOptiplate(PerkinElmer、Waltham、Massachu
setts)の各ウェル内のレポーターアッセイ緩衝液70μLと組み合わせた。これに
続き、抗体の、10μLで6点にわたる、1:10の系列希釈(最終最高濃度を100n
Mとする)を行い、加湿型インキュベーター内、37℃/5%のCOで、30分間にわ
たりインキュベートした。最後に、0.5ng/mLのヒトTSLPもしくはカニクイザ
ルTSLP、または同じ相対活性を伴うように計算された濃度の天然分泌型TSLP 1
0μLを添加し、蒸発を低減するようにプレートをシーリングし、加湿型インキュベータ
ー内、37℃/5%のCOで、4時間にわたりインキュベートした。次いで、プレート
を、インキュベーターから取り出し、約15分間にわたり、室温へと平衡化させた。これ
に続き、100μLのSteady-Glo試薬(Promega、Madison、W
I)を、各ウェルへと添加し、室温で20分間にわたりインキュベートした。次いで、発
光プログラム(ウェル1つ当たりのカメラの露出1秒間)を使用して、プレートを、En
vision測定器上で読み取り、Microsoft ExcelおよびGraphp
ad Prismにより、データを解析した。
【0362】
結果
抗TSLP Fab1は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにおいて、組換え
ヒトTSLP(1ng/ml)に対する15.4pMのIC50、天然分泌型ヒトTSL
Pに対する17.1pMのIC50、およびカニクイザルTSLPに対する10.8pM
のIC50により、TSLPの3つの形態全てに対する優れた効力を裏付けた。複数回の
実験(n=3)についての平均値レポーター遺伝子アッセイ結果を計算したところ、組換
えヒトTSLPに対する、Fab1の平均値IC50値は、15.3pM±1.5pMの
SEMであった。カニクイザルTSLPに対する、Fab1の平均値IC50値は、9.
5pM±0.9pMのSEMであった。
【0363】
したがって、抗TSLP Fab1は、ピコモルレベルの効力を伴う、ヒトおよびカニ
クイザルTSLPの強力な阻害剤である。抗TSLP Fab1が、ヒト肺線維芽細胞に
由来する天然分泌型TSLPに対する優れた効力を裏付けたという事実は、体内の活性ヒ
トTSLPと、抗TSLP Fabを作り出すのに使用される組換えヒトTSLPとの異
なるグリコシル化により引き起こされる問題の可能性を低減した。
【0364】
[実施例3]
抗TSLP Fab1による、初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からの、TSLP誘
導性TARC(thymus- and activation-regulated chemokine)分泌の阻害
抗TSLP Fab1が、初代細胞に駆動される応答の文脈で、TSLPを中和するこ
とが可能であるのかどうかを決定するために、ヒトPBMCからの、ヒトTSLPまたは
カニクイザルTSLPに誘導されるTARCの分泌について、抗TSLP Fab1の存
在下または非存在下で調べた。
【0365】
材料および方法
健常ドナーから採取した静脈血をヘパリン処理(Sigma、St.Louis、MO
)し、50mLのシリンジ内に回収し、次いで、2つの滅菌ファルコンチューブへと、2
5mlずつに分けた。パスツールピペットを使用して、血漿層を除去する前に、加速度お
よび減速度を小さくして、1200rpmで20分間にわたり、これらのチューブを遠心
分離した。各チューブからの血液20mlずつを、未使用の50mlファルコンチューブ
へと移し、20mLのPBS(1倍濃度;Invitrogen、Grand Isla
nd、NY)および4%のデキストラン(w/v;Sigma、St.Louis、MO
)10mLを、各々へと添加した。血液とデキストランとを完全に混合するように、チュ
ーブを倒立させ、次いで、室温で30分間にわたりインキュベートして、赤血球の沈降を
可能とした。20mLの上清を、未使用の50mlファルコンチューブへと移し、30m
lのPBSで洗浄して(1400rpmで8分間にわたり)から、上清を吸引し、細胞ペ
レットを、10mLのPBS中に再懸濁させた。
【0366】
赤血球を溶解させるために、20mLの滅菌低温蒸留水(Sigma、St.Loui
s、MO)を、細胞へと添加し、20mlのStripetteと、1分間にわたり混合
してから、2倍濃度の滅菌低温PBS 20mlを添加して、溶解を停止させた。チュー
ブを数回にわたり倒立させ、1400rpmで8分間にわたり遠心分離してから、1つの
チューブへとプールし、アッセイ緩衝液で2回にわたり洗浄した(1400rpmで8分
間ずつ)。アッセイ緩衝液は、10%のヒトAB Serum(Life Techno
logies、Grand Island、NY)および1%のペニシリン/ストレプト
マイシン(Invitrogen、Grand Island、NY)を伴う、RPMI
1640(GlutaMax;Invitrogen、GrandIsland、NY
)により作製した。
【0367】
細胞を計数し、1mL当たりの細胞10×10個の濃度で再懸濁させ、そのうちの1
00μlを、96ウェル平底プレートの各ウェルへと添加した(ウェル1つ当たりの細胞
1×10個)。ウェル1つ当たり50μlの抗TSLP抗体を、各ウェルへと添加し、
37℃で30分間にわたりインキュベートするように放置してから、ヒトTSLPまたは
カニクイザルTSLPを添加し、最終濃度を1ng/mlとするTSLP(66pM)を
得た。細胞を、24時間にわたりインキュベートしてから、プレートを、1300rpm
で5分間にわたり遠心分離し、上清を、ELISAによるTARC(thymus- and activa
tion-regulated chemokine)解析のために回収した。上清は、TARC ELISAにお
ける解析のためにそれらを融解させるまで、-20℃で保管した(試料は、何も加えずに
調べる)。
【0368】
TARC ELISA解析は、製造元のプロトコール(R&D Systems、Mi
nneapolis、MN)に従い実施した。略述すると、捕捉抗体を、担体タンパク質
を伴わないPBS中で、作業濃度まで希釈した。Microplate immuno
maxiSorpプレート(Fisher Scientific、Pittsburg
h、PA)を、ウェル1つ当たり100μlの希釈された捕捉抗体でコーティングし、プ
レートを、TopSeal粘着式蓋でシーリングし、室温で一晩にわたりインキュベート
した。翌日、捕捉抗体を吸引し、プレートを、洗浄緩衝液で洗浄し、工程を2回、のべ3
回の洗浄にわたり繰り返した。分枝管型分注器または自動式洗浄機を使用して、各ウェル
に300μLの洗浄緩衝液を満たすことにより、ウェルを洗浄した。最終回の洗浄の後、
プレートを倒立させ、清浄なペーパータオルで拭うことにより、残りの洗浄緩衝液を廃棄
した。次いで、300μLの試薬希釈液(PBS中に1%のBSA)を、各ウェルへと添
加することにより、プレートをブロッキングした。プレートを、室温で、最短1時間にわ
たりインキュベートした。洗浄ステップを繰り返し、試薬希釈液中、100μLの試料ま
たは標準物質を、ウェルごとに添加した。プレートを、粘着テープで覆い、室温で2時間
にわたりインキュベートした。次いで、吸引/洗浄ステップを繰り返し、100μLの希
釈された検出抗体を、各ウェルへと添加し、新たな粘着テープで覆い、室温で2時間にわ
たりインキュベートしてから、既に記載した通りに、洗浄ステップを繰り返した。ストレ
プトアビジン-HRPの作業希釈液100μLを、各ウェルへと添加し、次いで、プレー
トを再度覆い、プレートを直射日光下に置くことを避けながら、室温で20分間にわたり
インキュベートした。次いで、吸引/洗浄ステップを繰り返し、100μLのTMB基質
溶液を、各ウェルへと添加した。プレートを、暗所下、室温で、最長20分間にわたりイ
ンキュベートするのに続き、50μLの停止溶液を添加した。プレートを、静かにタッピ
ングして、ウェルを確実に混合し、450nmに設定したマイクロプレートリーダーを使
用して、各ウェルの光学濃度を速やかに決定した。
【0369】
結果
抗TSLP Fab1は、ヒトPBMCからの、組換えヒトTSLP誘導性TARC分
泌の極めて強力な阻害剤であり、1ng/mlの組換えヒトTSLPに対して、IC50
を20.3pMとし、IC90を99.65pMとした。抗TSLP Fab1は、ヒト
PBMCからの、カニクイザルTSLP誘導性TARC分泌の極めて強力な阻害剤である
ことが示され、1ng/mlの組換えカニクイザルTSLPに対して、IC50を11.
3pMとした。複数回の実験(n=3)についての平均値ヒトPBMC結果を計算したと
ころ、組換えヒトTSLPに対する、Fab1の平均値IC50値は、19.7pM±1
.9pMのSEMであった。カニクイザルTSLPに対する、Fab1の平均値IC50
値は、11.1pM±0.5pMのSEMであった。
【0370】
[実施例4]
抗TSLP Fab1による、初代カニクイザル末梢血単核細胞(PBMC)からの、T
SLP誘導性MDC(マクロファージ由来ケモカイン)分泌の阻害
材料および方法
カニクイザル静脈血を、Covance(Dedham、MA)製のヘパリンリチウム
を含有するVacutainerチューブへと回収した。各ドナーからの血液30mlず
つを、50mlのファルコンチューブへと移し、パスツールピペットを使用して、血漿層
を除去する前に、加速度および減速度を小さくして、1200rpmで20分間にわたり
、これらのチューブを遠心分離し、層の間に0.5cmの空隙をもたらした。残りの細胞
下層を再懸濁させ、10mlを、未使用のファルコンチューブへと移し、1倍濃度のPB
S 10mlおよび4%のデキストラン(w/v;Sigma、St.Louis、MO
)5mLを添加してから、完全に混合するように、チューブを、4~5回にわたり倒立さ
せた。全てのチューブを、ドラフト内、室温で25分間にわたりインキュベートして、R
BCを、チューブの底部に沈降させた。10mLの上清を、未使用の50mlファルコン
チューブへと移し、40mlの培養培地で洗浄して(1400rpmで8分間にわたり)
から、上清を吸引し、細胞ペレットを、1倍濃度のPBS 5mL中に再懸濁させた。
【0371】
赤血球を溶解させるために、20mLの滅菌低温蒸留水(Sigma、St.Loui
s、MO)を、細胞へと添加し、20mlのStripetteと、1分間にわたり混合
してから、2倍濃度の滅菌低温PBS 20mlを添加して、溶解を停止させた。チュー
ブを数回にわたり倒立させ、1400rpmで8分間にわたり遠心分離してから、1つの
チューブへとプールし、培養培地で2回にわたり洗浄した(4℃、1400rpmで、8
分間ずつ)。培養培地は、10%のFetal Clone III(Fisher S
cientific、Pittsburgh、PA) および1%のペニシリン/ストレ
プトマイシン(Invitrogen、Grand Island、NY)を伴う、RP
MI 1640(GlutaMax;Invitrogen、GrandIsland、
NY)により作製した。
【0372】
細胞を、トリパンブルー色素を使用して計数し、1mL当たりの細胞10×10個の
濃度で再懸濁させ、そのうちの100μlを、96ウェル平底プレートの各ウェルへと添
加した(ウェル1つ当たりの細胞1×10個)。ウェル1つ当たり50μlの抗TSL
P抗体(100nMの最終最高濃度)を、各ウェルへと添加し、37℃で30分間にわた
りインキュベートしたままにしてから、カニクイザルTSLPを添加し、最終濃度を0.
5ng/mlとするTSLP(33pM)を得た。細胞を、24時間にわたりインキュベ
ートしてから、プレートを、1400rpmで8分間にわたり遠心分離し、上清を、EL
ISAによるマクロファージ由来ケモカイン(MDC;CCL22)解析のために回収し
た。上清は、MDC ELISAにおける解析のためにそれらを融解させるまで、-20
℃で保管した(アッセイ緩衝液中、1:2に希釈してから、ELISAプレートへと添加
した)。MDC ELISA解析は、製造元のプロトコール(R&D Systems、
Minneapolis、MN)に従い実施した。
【0373】
結果
抗TSLP Fab1は、カニクイザルPBMCからの、組換えカニクイザルTSLP
誘導性MDC分泌の極めて強力な阻害剤であって、0.5ng/mlの組換えカニクイザ
ルTSLPに対して、IC50を55.5pMとする阻害剤であった。複数回の実験(n
=3)についての平均値カニクイザルPBMC結果を計算したところ、カニクイザルTS
LPに対する、Fab1の平均値IC50値は、25.1pM±5.9pMのSEMであ
った。
【0374】
[実施例5]
抗TSLP Fab1の種間交差反応性
材料および方法
Biacore表面プラズモン共鳴(SPR)結合解析を実行して、抗TSLP Fa
b1が、ヒト、マウス、またはラットのTSLPタンパク質に結合するのかどうかを確立
した。Series S Sensor Chip CM5、HBS-EP+緩衝液、ヒ
トFab捕捉キット、EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カル
ボジイミド)、NHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)、エタノールアミン、BIAn
ormalizing溶液、70%(w/w)のグリセロール、およびグリシンを含むB
iacore試薬は、GE Healthcareから購入した。Fabの捕捉およびT
SLP結合解析の両方に使用されるランニングバッファーは、10mMのHEPES(p
H7.4)、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vの界面活性剤
P20を伴う、1倍濃度のHBS-EP+であった。組換えヒトTSLP、組換えカニク
イザルTSLP、または組換えマウスTSLP(分子量:15kDa)は、R&D Sy
stems(Minneapolis、MN)から得た。組換えラットTSLP(分子量
:15.4kDa)は、USCN Life Science Inc.(Wuhan、
China)から得た。
【0375】
ヒトTSLP、マウスTSLP、またはラットTSLPを注射する前に、捕捉手法を使
用して、Biacore CM5チップ上で、抗TSLP Fab1を調製した。製造元
の指示書に従い、ヒトFab捕捉キットを使用して、ヒトFab結合剤を、CM5チップ
の4つのフローセル全てに固定化した。流量を10uL/分として、360秒間にわたる
接触時間を指定した。試料コンパートメントの温度を、10℃、解析温度を、25℃とし
、固定化の前に、CM5チップを、HBS-EP+でプライミングし、BIAnorma
lizing溶液で標準化した。0.5mg/mLの原液15uLを、pH5の固定化緩
衝液360uLと組み合わせることにより、20ug/mLのヒトFab結合剤375u
Lを調製した(いずれも、ヒトFab捕捉キットにより提供されている)。結果として得
られた固定化レベルは、Fc1、Fc2、Fc3、およびFc4中のヒトFab結合剤約
4000~4400RUであった。
【0376】
特注のBiacore法を使用して、1サイクル当たり、約14RUの抗TSLP F
ab1を捕捉する、反応速度アッセイを準備した。これは、10uL/分の流量で60秒
間にわたる接触時間に続く安定化時間を30秒間として、5nMの抗TSLP Fab1
を、HBS-EP+緩衝液中に注入することにより達成した。試料コンパートメントの温
度を、10℃とし、解析温度を、25℃とした。この特注Biacore法を使用して、
hTSLP、mTSLP、およびrTSLPの、捕捉された抗TSLP Fab1との相
互作用について査定する反応速度アッセイを準備した。各抗原について、0nMの緩衝液
ブランク、10nM、5nM、2.5nM、1.25nM、0.625nM、0.313
nM、0.156nM、0.078nM、0.039nM、0.02nMを含む、以下の
10の濃度を、HBS-EP+中で調製し、抗TSLP Fab1表面上に注入した。約
14RUの抗TSLP Fab1を捕捉した後で、抗原を、45uL/分で、360秒間
にわたり注入するのに続き、600秒間(全ての被験濃度について)または1200秒間
(0nMおよび2.5nMの抗原濃度について)にわたる解離時間を施した。Fab結合
剤表面の再生は、各サイクルの後、10mMのグリシン-HCl、pH2.0を、10u
L/分で60秒にわたり注入するのに続く、HBS-EP+緩衝液による追加洗浄により
達成した。試料コンパートメントの温度を、10℃とし、解析温度を、25℃とした。
【0377】
全てのSPR実験および解析は、Biacore T200制御ソフトウェアにより制
御される、Biacore T200測定器上で行った。データは、Biacore T
200査定ソフトウェアを使用して処理した。ブラックを控除したセンサーグラムを、抗
TSLP Fab1の交差種反応性についての定性解析のためにプロットした。
【0378】
結果
Biacore SPR交差反応性実験の結果は、抗TSLP Fab1の、組換えヒ
トTSLPへの緊密な結合を示す一方、組換えラットTSLPまたは組換えマウスTSL
Pへの検出可能な結合は見られなかったが、これは、ヒトTSLPと、齧歯動物TSLP
との低相同性(約40%)と符合する。
【0379】
抗TSLP Fab1は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイにおいて、極めて
大きなアフィニティーで、カニクイザル組換えTSLPに結合し、組換えカニクイザルT
SLPの極めて強力な阻害剤であった(1ng/mlの組換えTSLPに対するIC50
=10.8pM)。初代ヒトPBMCアッセイおよび初代カニクイザルPBMCアッセイ
のいずれにおいても、抗TSLP Fab1は、ヒトPBMCからの、組換えカニクイザ
ルTSLP誘導性TARC分泌(IC50=11.3pM)、およびカニクイザルPBM
Cからの、組換えカニクイザルTSLP誘導性MDC分泌(IC50=55.5pM)の
、極めて強力な阻害剤であった。
【0380】
したがって、抗TSLP Fab1は、組換えカニクイザルTSLPは認識するが、ラ
ットTSLPまたはマウスTSLPは認識しない、制限された種間交差反応性を示した。
【0381】
[実施例6]
喘息のマウス疾患モデルにおける、マウス抗TSLP抗体の有効性
材料および方法
アレルギー性気道応答におけるTSLPの中和効果を、全身オボアルブミン(OVA)
感作に続く、肺への抗原による局所二次感作のマウスモデルにおいて評価した。このモデ
ルは、Th2表現型および関連する好酸球性炎症の発生を特徴とした。実施例1の抗TS
LP Fab1は、実施例5で記載した通り、齧歯動物TSLPタンパク質と交差反応し
なかったので、組換えマウスTSLPの生体活性を、0.5nMのマウスTSLPに対し
て、約1.3nMのIC50で完全に中和することが報告されている(データは、R&D
Systemsから供与された)、市販のサロゲート抗マウスTSLPモノクローナル
抗体(MAB555;R&D Systems、Minneapolis、MN)を使用
して、TSLPの中和効果を評価した。全てのサイトカインおよびケモカインに特異的な
ELISAキットもまた、R&D Systemsから購入した。
【0382】
雌Balb/cマウスを、1日目および14日目に、OVA(または生理食塩水)およ
びアジュバントとしてのアラムで免疫化した。略述すると、マウスを、腹腔内の1.6m
gの水酸化アルミニウム(Sigma)中に吸着させた、100μgのオボアルブミン(
結晶化されたものを5倍濃度で;Sigma、UK)を含有する、0.9% 重量/体積
のNaCl(生理食塩水)0.2mLにより免疫化した。21日目に、マウスに、エアゾ
ールとして施されるOVAまたは生理食塩水で二次感作し、24時間後に屠殺した。気管
支肺胞洗浄液(BAL)中の、区別した上での細胞数および総細胞数により、炎症を評価
する一方で、特異的ELISAにより、サイトカインおよびケモカインを測定した。
【0383】
最終回の鼻腔内OVAまたはPBSによる二次感作の24時間後に、4mg/Kgのペ
ントバルビタールナトリウム(Rhone Merieux、Harlow,UK)の腹
腔内注射により、マウスに麻酔をかけた。気管にカニューレを挿管し、合計1.2mlの
生理食塩水で肺を洗浄すること(0.4mLずつ3回にわたる)により、BAL液を回収
した。各試料について、総細胞数を決定し、サイトスピン調製(Shandon Sci
entific Ltd.、Cheshire、UK)を実施した。細胞を、Diff-
Quik(Baxter Dade AG、Dudingen、Switzerland
)で染色し、標準的な形状基準を使用して区別しながら、細胞200個を計数した。
【0384】
TSLP枯渇の、応答の感作期に対する効果について評価するために、抗マウスTSL
Pモノクローナル抗体(10mg/Kg)またはラットIgG2aアイソタイプ対照を、
OVA感作の1時間前に静脈内投与し、14日目における追加投与の前にも再度静脈内投
与した。二次感作時におけるTSLPの役割を評価するために、一部のマウスには、21
日目におけるOVAのエアゾール投与の1時間前だけに、抗体を施した。これらの抗体静
脈内投与では、有害作用は観察されなかった。
【0385】
結果は、表示数の実験についての平均値±SEMとして表す。一元分散分析(ANOV
A)を使用して、群間における有意性を決定した。かなりの分散が見出された場合は、対
応のないスチューデントのT検定を使用して、平均値間の比較可能性を評価した。p≦0
.05の値を、有意であると考えた。
【0386】
結果
OVAによる感作および二次感作は、好酸球および好中球を含む気管支肺胞洗浄液中の
細胞数の、対照動物と比較した増大を結果としてもたらした(図3)。これは、単回の抗
原による二次感作後における、かつての応答の経過と符合する。さらに、OVAにより感
作/二次感作されたマウスの洗浄液中では、多数の炎症性メメディエーターもまた、対照
と比較して上方調節された(図4A~4C)。
【0387】
抗マウスTSLP抗体による処置(10mg/kg)は、BAL液中の細胞総数を、約
50%、著明に阻害する一方で、好酸球数を、80%低減した。抗原感作の非存在下にお
ける抗体処置は、ベースラインにおける洗浄液の細胞組成を著明には変更しなかった。T
SLP活性の下流のマーカーについての解析は、アレルギー性気道炎症と関連するサイト
カインであるIL-13(図4A)、ならびに、それらのいずれもが、Th2細胞および
好酸球の公知の化学誘引物質であって、TSLPに刺激された樹状細胞が発生させる化学
誘引物質である、ケモカインエオタキシン2およびTARC(図4Bおよび4C)のレベ
ルの低減を明らかにした。
【0388】
[実施例7]
ラットにおける、抗TSLP Fab1についての、薬物動態的特徴付け
材料および方法
静脈内(IV)ボーラス注射、気管内点滴(ITI)、または1mg/kgで噴霧され
る抗TSLP Fab1の単回の名目用量による投与の、20分間にわたる鼻腔内に限る
吸入後のラットにおける、抗TSLP Fab1の薬物動態(PK)および肺内沈着につ
いて研究した。多様な投与後時点における抗TSLP Fab1の濃度を、血漿中、BA
L液中、ならびに肺ホモジネート試料(肺血管系のBALおよび血液の潅流後における)
中において決定した。
【0389】
結果
抗TSLP Fab1は、IV注射後、全身循環から迅速にクリアランスされ、平均終
末消失半減期は、約3時間であった。ITIまたは吸入の後、抗TSLP Fab1は、
全身循環へと緩徐に吸収され、いずれの経路についても、およそ2時間後に血漿Cmax
に達し、平均終末半減期は、IV投与後に決定される平均終末半減期より長かった(IV
後の3時間と比較した、ITI後の7時間および吸入後の4時間)ことから、吸収律速型
の反応速度が指し示される。抗TSLP Fab1の全身バイオアベイラビリティーは平
均で、ITI後の約6%および吸入後の1%であったが、これはおそらく、ITIの後で
は、吸入と比較して、肺沈着画分が大きいことに起因する。全身曝露が低度であることと
比較して、ITIまたは吸入後における、BAL液中および肺ホモジネート中の抗TSL
P Fab1濃度(>100倍)は、投与の2、6、24、または72時間後において、
3つのマトリックス全てから回収された投与総量のうちの97~99%を占めた(BAL
についての66~79%および肺についての20~31%)。BAL中および肺ホモジネ
ート中のそれぞれの、抗TSLP Fab1の推定沈着半減期は平均で、約7および9時
間であった。
【0390】
[実施例8]
サルにおける、抗TSLP Fab1についての、薬物動態的特徴付け
材料および方法
1、10、および20mg/kgの用量で、毎日1時間ずつ14日間にわたる吸入(群
3~5)、または16日間の休薬期間の後における、用量を1mg/kgとする単回IV
投与に続く、用量を20mg/kgとする単回吸入のクロスオーバー(群6)後のカニク
イザルにおいて、抗TSLP Fab1のトキシコキネティクス、PK/PD、および肺
内分布について研究した。PK/PD、総TSLPのための系列血液試料を回収し、PD
マーカー評価および免疫原性評価として評価した。加えて、肺ホモジネート試料(終点に
おける)およびBAL液試料(群3~5については終点であり、PK群6については、静
脈内の前および終点における)もまた、PK評価、総TSLP評価、および免疫原性(B
AL液だけについて)評価のために回収した。
【0391】
結果
吸入後における血清中の抗TSLP Fab1の全身曝露は、低度であり、推定バイオ
アベイラビリティーは、20mg/kgの吸入用量レベルで、1%未満であった。1mg
/kgの吸入用量は、検出可能な全身曝露をもたらさず、10mg/kgの吸入用量と、
20mg/kg吸入用量とは、抗TSLP Fab1への、同等の全身曝露を示した。C
maxには、吸入の約3時間後に達した。ラットにおけるPKと同様に、全身消失半減期
は、吸入後において(約7時間)、IV(約2.3時間)と比較して長かったことから、
吸収律速型の反応速度が指し示される。血清中の曝露の蓄積は、14日間にわたる投与後
に観察された。低血清曝露(図5)と比較して、終末BAL液中および終末肺ホモジネー
ト中の抗TSLP Fab1濃度についての予備的データは、はるかに高く、用量の増大
と共に増大した(図6)。
【0392】
[実施例9]
抗TSLP Fab1についての、結晶構造解析およびエピトープマッピング
本実施例では、抗TSLP Fab1を、遊離状態またはヒトTSLPとの複合体で結
晶化させ、対応する結晶構造を決定した。ヒトTSLPに結合する抗TSLP Fab1
についての、X線データに基づく解析は、ヒトTSLP上の抗TSLP Fab1のエピ
トープについての洞察をもたらした。
【0393】
材料および方法
ヒトTSLPおよび抗TSLP Fab1の調製および精製
抗TSLP Fab1は、抗TSLPmAb1(10.6mg)を、10mMのDTT
を伴う、100mMのトリス(pH7.0)中、室温で2時間にわたり(RT)、21μ
gのパパインで消化することにより作り出した。反応は、30μMの、パパイン阻害剤で
あるE64により停止させた。次いで、抗TSLP Fab1を、20mMのリン酸ナト
リウム(pH7.0)で平衡化させた、5mLのLambda Selectカラム上で
精製した。Fabは、0.1Mのクエン酸、pH3.0で溶出させ、回収された画分のp
Hは、1:10に希釈した、1Mのトリス、pH8.5で速やかに調整した。LC-MS
解析は、47107.7Daの観察質量を示したが、これは、重鎖がThr228の後で
切断され、そのアミノ末端においてピログルタミン酸残基を保有する、予測されるアミノ
酸配列と合致した。結晶化のために、限外濾過デバイスを使用する濃縮-希釈ステップの
繰返しにより、緩衝液を、10mMのトリス-HCl、pH7.4、25mMのNaCl
と交換し、試料を、最終的に、13mg/mlの抗TSLP Fab1へと濃縮した。
【0394】
N末端のヘキサヒスチジンタグ(配列番号40)に続き、PreScission(H
RV-3Cプロテアーゼ)切断部位を伴う、ヒトTSLP(Uniprot登録番号:Q
969D9;アミノ酸29~159)の構築物をクローニングし、大腸菌(E. coli)内
で、封入体として発現させた。リフォールディングのために、89.4gの大腸菌(E. c
oli)細胞を、1mMのEDTA、6mMのMgCl、および0.375Mスクロース
を伴う、50mMのトリス(pH7.0)715ml中で、Avestin(登録商標)
高圧ホモジナイザーにより溶解させた。3.7kUのベンゾナーゼを伴う、30分間にわ
たるインキュベーションの後、溶解物を、SS-34固定角ローターにより、13,00
0rpmで、30分間にわたり遠心分離した。ペレットを、20mMのEDTA、0.5
MNaCl、2%のTriton X-100を伴う、100mMのトリス(pH7.0
)387ml中に再懸濁させ次いで、13,500rpmで、50分間にわたり遠心分離
した。ペレットを、20mMのEDTAを伴う、100mMのトリスpH7.0 387
ml中に、再度再懸濁させ、13,500rpmで30分間にわたり遠心分離し、この洗
浄手順を、4回にわたり繰り返し、13gの封入体をもたらした。次いで、封入体を、5
0mMの酢酸カリウム(pH5.0)、5mMのEDTA、および10mMのTCEPを
伴う、6Mの塩酸グアニジン溶液65ml中で可溶化させた。室温で2時間にわたるイン
キュベーションの後、試料を、20,000rpm(SS-34固定角ローター)で30
分間にわたり遠心分離した。上清(70ml)を、上記で記載した塩酸グアニジニウム溶
液により、100mlへと希釈した。リフォールディングは、0.5M塩酸アルギニン、
5mMのEDTA、および1mMのGSHを伴う、100mMのトリス(pH8.25)
10Lによる、4℃における急速希釈により実施した。希釈の後、0.1mMのグルタチ
オンジスルフィド(GSSG)を添加し、リフォールディングミックスを、緩徐な撹拌下
、4℃で7日間にわたりインキュベートした。次いで、酢酸により、pHを5.1へと調
整し、0.1mMのGSSGを添加して、残りのTCEPを破壊した。わずかに混濁した
リフォールディング溶液を、Sartobran 0.65/0.45μmフィルターカ
プセルにより濾過し、Pellicon 10kD交差流膜により、750mlへと濃縮
した。濃縮した溶液を、50mMの酢酸ナトリウム、pH5.4 10Lに対して透析し
た。リフォールディングしたTSLP約550mgを回収した。最終精製試料についての
LC-MS解析は、全てのジスルフィド架橋が形成されたことを確認し、des-Met
生成物(分子量=16862.8Da)94%と、N末端のメチオニンを伴うタンパク質
6%とを示した。抗TSLP Fab1による結晶化のために、リフォールディングした
TSLP試料を、PreScissionプロテアーゼによりN末端のタグを切断せずに
使用した。
【0395】
TSLP-Fab複合体を調製するために、50mMのNaClを伴う、25mMのト
リス(pH7.4)中に、2倍モル過剰量のHis-PreSc-TSLPタンパク質
(配列番号40として開示される「His」)を、抗TSLP Fab1へと添加し、
試料を、限外濾過により、約10mg/mlへと濃縮し、SPX-75サイズ除外クロマ
トグラフィーカラムへとロードし、25mMのNaClを伴う、10mMのトリス-HC
l、pH7.4中で、等張的に溶出させた。ピーク画分を、限外濾過により、9.2mg
/mlへと濃縮し、結晶化スクリーニングにかけた。
【0396】
結晶化およびX線データの収集
シッティングドロップ蒸気拡散法により、結晶を、96ウェルプレート(Innova
dyne SD2プレート)内で増殖させた。詳述すると、0.2μlのタンパク質原液
を、0.2μlのレザバー溶液と混合し、液滴を、80μlの同じレザバー溶液に対して
、20℃で平衡化させた。実験は、Phoenixロボットシステム(Art Robb
ins Instruments)により準備し、RockImager hotel(
Formulatrix)内に保管し、自動でイメージングした。
【0397】
X線データ収集のために、結晶を、CryoLoopに直接マウントし、液体窒素中で
、瞬時冷却した。X線データセットは、Swiss Light Sourceビームラ
インX10SAで、1.00001ÅのX線放射線を使用して、Pilatusピクセル
検出器により収集した。いずれの場合も、振動を0.25°ずつとする720の画像を、
結晶-検出器間距離を345mmとして記録し、2010年12月6日バージョンのXD
S(Kabsch 1993, J Appl Crystallogr; 26:795-800)であって、APRVに実装されて
いるXDSで処理した。
【0398】
構造の決定および解析
抗TSLP Fab1の構造は、抗CD132抗体Fab断片の結晶構造を出発モデル
として使用して、Phaserプログラム(McCoy, A. J. et al. 2007 J. Appl. Crysta
llogr. 40: 658-674)による分子置換法を介して決定した。抗CD132抗体のFabは
、抗TSLP Fab1との配列類似性に基づき選択した。可変ドメインおよび第1定常
ドメインを独立の検索モデルとして使用して、Fabの肘角度の可変性を可能とした。モ
デル構築サイクルの反復に続き、Coot 0.8.0プログラム(Crystalog
raphic Object-Oriented Toolkit;Emsley et al., 201
0, Acta Crystallogr Sect D: Biol Crystallogr; 66:486-501)およびAutobust
er 2.11.5プログラム(Bricogne et al., 2011, BUSTER version 2.11.2. Camb
ridge, United Kingdom: Global Phasing Ltd.)による、自動式結晶構造解析リファイン
メントを使用して、構造をリファイニングした。
【0399】
TSLP-Fab複合体の構造は、自社内で既に、別の抗体のFab断片と複合させて
決定した、遊離抗TSLP Fab1およびヒトTSLPの、のリファイニングされた構
造を使用して、Phaserプログラムによる分子置換法を介して決定した。ここでもま
た、抗TSLP Fab1の可変ドメインおよび第1定常ドメインを、独立の検索モデル
として使用した。構造は、以前に、遊離Fabについて記載した通り、Coot 0.8
.0およびAutobuster 2.11.5によりリファイニングした。
【0400】
結晶構造の目視観察は、Cootプログラム(Emsley et al., 2010, Acta Crystallog
r Sect D: Biol Crystallogr; 66:486-501)およびPyMOLプログラム(Molecu
lar Graphics System;DeLano Scientific:Pa
lo Alto、CA)を使用して実行した。最終的なリファイニングモデルの品質は、
CootプログラムおよびPROCHECK v3.3プログラム(Laskowski et al.,
1992, J Appl Crystallogr; 26:283-291)により評価した。抗TSLP Fab1への結
合時に、溶媒へのアクセスが低下するヒトTSLPの残基は、CCP4プログラムシリー
ズのAREAIMOLプログラム(Collaborative Computatio
nal Project、Number 4、1994年)により同定した。分子間接点
は、4.0Åのカットオフ距離を使用して規定し、CCP4のNCONTプログラムによ
り同定した。
【0401】
結果
抗TSLP Fab1の結晶構造
遊離抗TSLP Fab1およびヒトTSLPとのその複合体を、シッティングドロッ
プによる蒸気拡散法を介して、96ウェルプレート内、19℃で結晶化させた。興味深い
ことに、2つタンパク質試料は、同じ結晶化条件:0.17Mの(NHSO、8
5mMの酢酸ナトリウム、pH5.6、25.5%のPEG MME 2000、15%
のグリセロール下で結晶化した。結晶は、4~5週間後に現れ、数日以内に完全なサイズ
まで成長した。
【0402】
遊離Fabの結晶は、斜方晶系空間群P2内にあり、非対称単位1つ当たり
のFab分子1つを伴った。Fab-TSLP複合体の結晶は、空間群I222内にあり
、非対称単位当たり1つの複合体を伴った(表3)。いずれの結晶も、高解像度まで回折
され、品質が良好で冗長性が大きな、完全な回折データセットを、それらの各々から収集
することができた(表3)。
【0403】
分子置換法による構造決定は、既に決定したヒトTSLP構造を使用して実施した。A
utobusterによるリファインメントは、良好なリファインメント統計および全体
の形状をもたらした(表3)。遊離Fabの構造では、2つの抗体残基である、Asp5
0LおよびAsp152Lが、ラマチャンドランプロットの異常値であった。Fab-T
SLP複合体の構造では、これらの2つの残基に加えて、第3の抗体残基であるTyr1
03Hもまた、ラマチャンドランプロットの異常値であった。これらの3つ残基は、十分
に規定された電子密度を有したので、純粋に形状上の異常値である。Asp50Lおよび
Tyr103Hが、下記で記載される、TSLPへの結合に関与するCDR残基であるこ
とは、注目に値する。
【0404】
抗TSLP Fab1の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を、図1Aおよび1Bに提示し
、CDRに下線を付し(Kabat, 1991, Sequences of proteins of immunological intere
st, NIH Publication No. 91-3242により規定される通りに)、抗体-抗原間界面に位置
する残基を、*で表示する。
【0405】
【表3】
【0406】
ヒトTSLPと複合した抗TSLP Fab1の結晶構造
本実施例で使用される組換えヒトTSLPのアミノ酸配列(配列番号38)を、図2
提示する。成熟ヒトTSLPは、Tyr29から始まった。本実施例で使用される構築物
は、N末端のヘキサヒスチジンタグ(配列番号40)(残基15~20)に続き、HRV
-3Cプロテアーゼ(PreScission)認識部位(残基21~28)、およびク
ローニングから生じる残基11~14を有した。Asn64およびAsn119は、潜在
的なN結合型グリコシル化部位であり;残基127~130は、潜在的なフリン切断部位
(RRKR、配列番号39)を構成した。二次構造エレメントを、アミノ酸配列の下方に
示す:ボックスは、αヘリックスA、B、C、およびDを表し、太線は、ループ領域を表
す。
【0407】
TSLPは、サイトカインのIL-2スーパーファミリーの他のメンバーとの、著明な
アミノ酸配列類似性を提示しない。しかし、TSLPは、IL-2、IL-7および他の
多くのサイトカインと同様に、上-上-下-下のトポロジーを伴う、4ヘリックスバンド
ルとしてフォールディングした(図7)。ヘリックスαは、Thr46の周囲の、その
中心近傍に、強いキンクを保有した。ヘリックスαおよびαは、各々、3つのターン
だけを伴うやや短いヘリックスであったが、C末端のヘリックスαは、5つのターンを
伴う長いヘリックスであった(図7)。3つのジスルフィド(Cys34-Cys110
、Cys69-Cys75、Cys90-Cys137)は、この短鎖の4ヘリックスバ
ンドルを安定化させた。しかし、αおよびα、ならびにαおよびαの、2つのク
ロスオーバー接続は、大部分が無秩序であり、この結晶構造内では見られなかった。α
-αループに由来する3つのアミノ酸、および最後の5つのカルボキシル末端残基もま
た、最終的なリファイニング構造では逸失していた。潜在的なフリン切断部位およびN-
グリコシル化部位は、逸失する接続部内に位置した。
【0408】
Fab-TSLP複合体の三次元構造の全体図を、図7に示す。
【0409】
抗TSLP Fab1は、一方の側では、H-CDR1およびH-CDR2により裏打
ちされ、他方の側では、H-CDR3およびL-CDR3により裏打ちされた、浅いグル
ーブを通る、TSLPのヘリックスαに主に結合した。ヘリックスαの顕著なキンク
は、グルーブの中心部分を占めた。隣接するヘリックスαおよびαと、α-α
ープの最初の4つの残基は、抗体へのさらなる接点に寄与した。
【0410】
Fab-TSLP複合体の形成によって、溶媒にアクセス可能な表面が合わせて約17
00Åにわたり埋め込まれることから、Fabの25のアミノ酸残基およびTSLPの
25のアミノ酸残基は、複合体の形成時に、それらの溶媒にアクセス可能な表面の低減を
経る。4.0Åの距離カットオフを使用したところ、これらのうちで、Fabの20の残
基およびTSLPの16の残基(表4を参照されたい)は、直接的な分子間接点に関与し
た。形状/相補性統計であるSc(Lawrence and Colman, 1993, J Mol Biol; 234:946-5
0)は、0.72に等しく、抗体-タンパク質複合体としては、比較的高値であった(Sun
dberg and Mariuzza, 2003, Adv Protein Chem; 61:119-60)。抗TSLP Fab1の
6つのCDR全ては、TSLPへの結合に寄与した。さらに、十分に規定された6つの水
であって、抗体-抗原間界面に位置する水も、結合相互作用を媒介する。
【0411】
【表4】
【0412】
結合界面に位置するTSLP残基は、(i)4.0Å未満の水素以外の原子の間の分子
間接点と、(ii)複合体形成時における、溶媒にアクセス可能な表面の低減とを計算す
ることにより、結晶構造解析座標から同定した。結果を、図8のグラフに示し、抗体から
見たTSLPエピトープを、図9に示した。これらの2つの図から見られうる通り、ヘリ
ックスαは、α-αループの最初の4つ残基と併せてエピトープのコアを形成し、
TSLP上の、分子間接点の総数および埋め込まれた、溶媒にアクセス可能な表面のうち
の82%に寄与した。さらに、鍵となるエピトープ残基の大半の部分:Lys49、Il
e52、Gly57、およびLys59が、この領域内で見出された。これと比較して、
ヘリックスαおよびαは、極めて少数のエピトープ残基:Lys101(α)、G
ln145、およびArg149(α)に寄与した。
【0413】
抗原への結合時における、それらの溶媒にアクセス可能な表面の低減、および直接的な
分子間接点に対するそれらの寄与により証拠立てられる通り、抗TSLP Fab1の6
つの相補性決定領域(CDR)の全ては、結合界面に寄与した(図10Aおよび10B)
。加えて、軽鎖の第3のフレームワーク領域(L-FR3)のAsn65Lもまた、抗原
結合性界面に位置したが、TSLPのLys59に対する、弱い(3.6Å)H結合型相
互作用をもたらすに過ぎなかった。
【0414】
H-CDR3ループは、特に重要な役割を果たした。Glu101Hは、TSLPのL
ys49、ならびにループの先端部に位置する3つの連続チロシンである、Tyr103
H、Tyr104H、およびTyr105Hとの、極めて重要な塩架橋相互作用をもたら
し、併せて、全重鎖によりもたらされる接点のうちの58%に寄与した。H-CDR1の
Trp33H、およびH-CDR2のAsp56Hもまた、重要なパラトープ残基であり
、それぞれ、TSLPのLys49およびLys101への結合に寄与した。
【0415】
Trp92Lは、抗原との直接的な接点をもたらす、唯一のL-CDR3残基であった
。この残基は、L-CDR3の先端部に位置し、遊離抗TSLP Fab1の結晶構造内
で規定されたコンフォメーションを採らなかった。しかし、TSLP複合体内では、側鎖
が十分に規定された電子密度を有し、α-αループへの広範な接点をもたらし、その
寄与は、全軽鎖によるもたらされる接点のうちの42%に達した。L-CDR2のAsp
50LおよびL-CDR1のTyr31Lは、軽鎖によりもたらされる、他の2つ重要な
パラトープ残基であった。前者は、TSLPのLys59との、極めて射程の短い(2.
8Å)静電相互作用をもたらした。後者は、TSLPのIle52、Lys59、および
Gln145との結合相互作用に寄与し、また、Tyr103HおよびTyr104Hと
のπ-π相互作用を介して、H-CDR3ループの結合型コンフォメーションも安定化さ
せた。
【0416】
抗TSLP Fab1の作用方式
TSLPシグナル伝達は、TSLP、コグネイトのTSLPR鎖、および共有されるI
L-7Rα鎖を含む、三元複合体のアセンブリーを要求する。TSLP-TSLPR二元
複合体の形成は、IL-7Rα鎖の動員のための前提である。全てのTSLPCα原子に
基づき、ヒトTSLP-Fab1複合体を、マウスTSLP-TSLPR-IL-7Rα
三元複合体へと重ね合わせた。構造的重複は、抗TSLP Fab1が、TSLPの、T
SLPRおよびIL-7Rαの両方への結合を遮断することを裏付けた。TSLPのヘリ
ックスαは、抗TSLP Fab1エピトープの中心的エレメント(図11B)であり
、このヘリックスはまた、TSLPRおよびIL-7Rαのいずれへの結合においても、
中心的役割も果たした(図11A)。加えて、ヘリックスαは、IL-7Rαへの結合
に関与し、ヘリックスαは、TSLPR結合界面の一部であった。これらの2つヘリッ
クスはまた、抗TSLP Fab1エピトープにも寄与したので、抗TSLP Fab1
と、2つ受容体鎖との間の立体障害は、広範であった。抗体の軽鎖が、TSLPRのD2
ドメインと広範に重なり合ったのに対し、重鎖は、IL-7RαのD2ドメインと重なり
合い、また、D1ドメインのループに結合するサイトカインの一部とも重なり合った(図
11C)。データは、サイトカインをスカベンジングし、TSLPR受容体へのその結合
を防止し、こうして、IL-7Rαとの、高アフィニティーのシグナル伝達複合体の形成
を遮断することにより、TSLP Fab1が、TSLPを中和することを裏付けた。
【0417】
まとめると、遊離状態にあるか、またはリフォールディングした組換えヒトTSLPと
複合した、高解像度の抗TSLP Fab1の結晶構造を決定した。抗TSLP Fab
1は主に、ヒトTSLPのヘリックスαA(アミノ酸残基Lys38~Thr53)に結
合し、ヘリックスαC(Lys101)およびαD(Gln145、Arg149)、な
らびにαA-αループ(アミノ酸残基Ser56~Lys59)からの寄与は、重要で
あるが少数であることが見出された。抗TSLP Fab1と複合したヒトTSLPの、
公表されているIL-7RAおよびTSLPR細胞外ドメインとのマウスTSLP複合体
への構造的重複は、抗TSLP Fab1が、TSLPへの結合について、IL-7RA
およびTSLPRの両方と競合することを示した。抗TSLP Fab1に結合したTS
LPは、TSLPRに結合することができず、IL7Rα受容体の動員もまた、Fabと
、IL-7α受容体との間の広範な立体障害に起因して阻害される。
【0418】
[実施例10]
抗TSLP Fab1の噴霧乾燥工程および製剤化
噴霧乾燥装置および操作
特注の噴霧乾燥器を使用して、原料を噴霧乾燥させた。噴霧乾燥器の構成は、単一のノ
ズル、二連の流体アトマイザー、乾燥チャンバー、サイクロン、アダプター、単離バルブ
、および温度制御型ジャケット内の、1リットルの回収器を含む。本明細書で記載される
実施形態では、噴霧乾燥工程は、アトマイゼーション工程、乾燥工程、および粒子回収工
程を含みうる。
【0419】
例示的なアトマイゼーション工程は、以下のステップ:(A1)製剤化された原料流体
を、蠕動ポンプ(Watson Marlow)を通して、制御された流量で、噴霧乾燥
器内にマウントされた、単一ノズルの空気支援型アトマイザーへとフィードしうるステッ
プと;(A2)制御された流量の圧縮乾燥空気を、同心円状の収束型ガスノズルへとフィ
ードするステップと;(A3)ノズル先端部における空気の膨張により、原料流を、微細
な液滴噴霧へとアトマイズするステップとを含みうる。
【0420】
乾燥工程は、以下のステップ:(B1)電気ヒーターにより加熱された乾燥空気を、設
定温度および制御流量で、乾燥チャンバーへとフィードするステップと;(B2)高温の
乾燥空気が、ステップA3による微細な液滴噴霧と相互作用するステップであって、液滴
中の溶媒(水)が蒸発する結果として、固体粒子をもたらすステップと;(B3)粒子お
よび溶媒蒸気/空気が、規定の温度の乾燥チャンバーから放出されるステップとを含みう
る。
【0421】
粒子回収工程は、以下のステップ:(C1)ステップB3による、粒子および溶媒以外
の蒸気/空気が、高接線速度で、サイクロンに進入するステップと;(C2)粒子を、遠
心力により、空気混合物から分離し、温度制御型回収容器内のサイクロンの底部に回収す
るステップと;(C3)溶媒以外の排出蒸気/排気が、フィルターを通過し、アイソレー
ター内の雰囲気へと送気されるステップとを含みうる。
【0422】
抗TSLP Fab1の吸入可能粉末の工程および製剤化
この部分は、多様な賦形剤と共に製剤化された、抗TSLP Fab1の粒子を含む、
吸入可能粉末を調製するのに使用される、製剤化および噴霧乾燥工程を提示する。これは
、タンパク質(抗TSLP Fab1)と、主に、分散性増強剤(例えば、トリロイシン
)またはガラス形成剤(例えば、糖、緩衝塩)として機能する賦形剤とを含む、単相の水
性原料を噴霧乾燥させるステップを伴った。原料のpHは、標的pHをpH5.0~pH
5.5として、ヒスチジン-HCl緩衝液により制御した。粒子の加工原理を適用するこ
とにより、粗度の大きな粒子(各々が、ガラス状マトリックス中で安定化させたタンパク
質のコアを、改善された粉末の分散性を改善し、活性薬剤を保護する、疎水性賦形剤のシ
ェルで取り囲んだ粒子)を含む粉末を創出するように、賦形剤および組成物を選択した。
【0423】
【表5】
【0424】
図12は、賦形剤:タンパク質比の増大により、抗TSLP Fab1の物理化学的安
定性を改善し、抗TSLP Fab1の凝集速度を低減した製剤を示す。
【0425】
抗TSLP Fab1を含むPulmoSol製剤
この部分は、製造スループットを増大させ、シェルの形成を最適化するように、異なる
総固体濃度およびトリロイシン含量で製剤化された原料組成物を提示する。高固体濃度は
、粉末産生のスループットを増大させる。本実施例では、1つの製剤を例外として、TS
LP Fab1含量を50%で固定し、前出の実施例と比較した。
【0426】
【表6】
【0427】
抗TSLP Fab1および15%のトリロイシンを含む製剤
この部分は、トリロイシンの限定的な水溶性に対応しながら、原料および結果として得
られる粒子の許容可能なpHを維持するようにデザインされた、いくつかの製剤に焦点を
当てる。本実施例では、トリロイシンを、水性HCl中に溶解させ、原料溶液の標的pH
(pH5.0~pH5.5)を達するように、多様な塩基性培地を使用して逆滴定した。
トリロイシンを完全に溶解させるように、HClの、トリロイシンに対する約1:1モル
比が要求された。
【0428】
【表7】

【0429】
[実施例11]
溶液平衡滴定(SET)により決定される、抗TSLPFab1の、ヒトおよびカニクイ
ザルのTSLPタンパク質に対する結合アフィニティー
溶液平衡滴定(SET)の測定を実行して、抗TSLP Fab1の、ヒトおよびカニ
クイザルのTSLPタンパク質への結合アフィニティーを決定した。Fabを、一定の濃
度で、それぞれの抗原の系列希釈と共にインキュベートした。結合アフィニティーを、結
合しなかった抗体の濃度のリードアウトを、適用された抗原濃度に対してプロットするこ
とにより作成された競合曲線から抽出した。抗TSLP Fab1は、全てのヒトおよび
カニクイザルのTSLPタンパク質について、低ピコモル(pM)レベルの範囲の結合ア
フィニティーを示した。
【0430】
アッセイ手順
ヒトTSLP抗原(HEK細胞内で作製された)およびカニクイザルTSLP抗原の、
22の1.6倍系列希釈液を、試料緩衝液中で調製し、一定濃度のFab1を添加した
。ウェル1つ当たりの容量60μlの各抗原-Fabミックスを、二連で、ポリプロピレ
ン製の384ウェルマイクロ滴定プレート(MTP)へと分配した。試料緩衝液を、陰性
対照として用い、Fab1だけを含有する試料を、陽性対照とし用いた(Bmax)。プ
レートをシーリングし、シェーカー上、室温(RT)で、一晩にわたり(o/n、少なく
とも16時間)インキュベートした。
【0431】
384ウェルMSDアレイMTPを、PBS中、5μg/mlで希釈された、ウェル1
つ当たり30μlのTSLP(大腸菌(E. coli)内で産生された)により、4℃で一晩
にわたりコーティングし、次いで、ウェル1つ当たり70μlの洗浄緩衝液で3回にわた
り洗浄し、ウェル1つ当たり50μlのブロッキング緩衝液で、シェーカー上、RTで1
時間にわたりブロッキングした。洗浄の後、容量をウェル1つ当たり30μlとする、平
衡化させた抗原-Fabミックスを、ポリプロピレンMTPから、コーティングされたM
SDプレートへと移し、RTで20分間にわたりインキュベートした。
【0432】
さらなる洗浄ステップの後、試料緩衝液中、1.8μg/mlで希釈された、30μl
のsulfoタグ付け検出抗体を、各ウェルへと添加し、シェーカー上、RTで30分間
にわたりインキュベートした。MSDプレートを洗浄し、1倍濃度のMSDリード緩衝液
ウェル1つ当たり35μlを添加し、RTで5分間にわたりインキュベートした。ECL
シグナルを発生させ、MSD Sector Imager 6000で測定した。
【0433】
各抗原について、3つの独立の実験を実施し、安定的なアッセイ条件を裏付けた。これ
らの実験の、解離平衡定数Kの平均値および標準偏差は、下記で示す通りに計算した。
【0434】
【表8】
【0435】
[実施例12]
カニクイザルにおける、2週間にわたる、吸入用量範囲発見研究
この非GLP研究では、目的は、毎日1回14日間にわたる吸入経路を介して、または
1日目における単回投与のIV注射であって、13日間にわたる非投与期間および15日
目における単回の吸入投与を後続させる注射として、カニクイザルへと投与される場合の
、抗胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)Fabである、Fab1の潜在的な毒性を
決定することであった。加えて、Fab1の薬物動態/薬力学(PK/PD)プロファイ
ルおよび免疫原性(IG)も探索した。
【0436】
研究は、単一の研究の、2つの別個の構成要素として行った。
【0437】
吸入だけ:PulmoSol中に39.7%のFab1である、Fab1 Pulmo
Sol粉末を、吸入により、カニクイザルの3つの群(3匹の雄/群)へと、1日当たり
1kg当たりのFab1 1.0、10.0、および20.0mgの毎日の標的用量で投
与した。サル(2匹の雄)の別の群は、プラセボのPulmoSol粉末を施され、対照
として用いられた。さらに一匹の雄動物は、空気だけを施され、空気対照としての役目を
果たした。Fab1 PulmoSolエアゾールおよびプラセボPulmoSolエア
ゾールは、回転ブラシ型発生デバイス(RBG1000)を使用して発生させた。緊密に
適合する口鼻マスクを使用して、動物を、Fab1 PulmoSol粉末(群3~5)
またはプラセボPulmoSol粉末(群2)のエアゾールへと、毎日1回14日間、標
的の60分間にわたり曝露した。準備された同じ装置を使用して、群1の単一の雄動物を
、濾過された乾燥空気だけへと、同じ標的時間にわたり曝露した。投与されたFab1の
全体の平均値エアゾール濃度は、群3、4、および5について、それぞれ、0.036、
0.31、および0.66mg/Lであった。全体の平均値(推定総)送達用量は、群3
、4、および5について、それぞれ、1日当たり1kg当たりのFab1 1.1、9.
6、および19.9mgであった。空気動力学質量中央径(MMAD)は、発生させたF
ab1エアゾールが、サルに吸入可能であり、許容可能な肺沈着量が、被験種について達
成されることを確認した。
【0438】
静脈内/吸入:Fab1を、3匹の雄動物の群(群6)へと、1日目に、伏在静脈を介
する単回の静脈内ボーラス注射を介して投与した。標的用量は、1kg当たりのFab1
1mgであった。次いで、動物に、13日間にわたる非投与期間を与えてから、15日
目に、吸入により、PulmoSol中に39.7%のFab1である、Fab1 Pu
lmoSol粉末を投与した。標的用量は、1kg当たりのFab1 20mgであった
。Fab1 PulmoSolエアゾールは、回転ブラシ型発生デバイス(RBG100
0)を使用して発生させた。緊密に適合する口鼻マスクを使用して、動物を、Fab1
PulmoSolのエアゾールへと、単一の機会に、標的の60分間にわたり曝露した。
次いで、動物を、6日間にわたり保持してから、21日目に、安楽死させた。投与された
Fab1の全体の平均値エアゾール濃度は、0.60mg/Lであった。全体の平均値推
定総送達用量は、1日当たり1kg当たりのFab1 16.3mgであった。空気動力
学質量中央径(MMAD)は、発生させたFab1エアゾールが、サルに吸入可能であり
、許容可能な肺沈着量が、被験種について達成されることを確認した。
【0439】
本研究では、以下のパラメータおよび評価項目:臨床徴候、体重、体重変化、臨床病理
学パラメータ(血液学、凝固、および臨床化学)、Fab1濃度およびTSLP濃度、な
らびにトキシコキネティクスパラメータ(血清、気管支肺胞洗浄液(BAL)、肺組織抽
出物)についてのバイオアナリシス、抗Fab1抗体(血清およびBAL液)、肉眼的部
検所見、臓器重量、ならびに組織病理学検査(群1~5だけ)について査定した。
【0440】
Fab1の、吸入投与を介する、14日間にわたる投与は、雄カニクイザルの、鼻腔内
の見かけの変化(呼吸器上皮内の粘膜細胞の増大)、肺の見かけの変化(瀰漫性肺胞マク
ロファージの蓄積、細気管支肺胞リンパ細胞充実性の増大、および混合型肺胞炎症性細胞
の浸潤)、および気管支リンパ節の見かけの変化(一般的な細胞充実性の増大)を結果と
してもたらした。これらの変化は、全ての処置群の動物間で明らかであった。所見の重症
度は、全ての症例において、最小限~軽度であり、観察は、有害と考えられなかった。
【0441】
Fab1への全体的な曝露は、Fab1で処置された全ての動物において、血清中、気
管支肺胞洗浄液(BAL)中、および肺抽出物中の濃度データに基づき裏付けられたが、
この場合、Fab1は、空気対照動物またはプラセボPulmoSol対照動物に由来す
る試料のうちのいずれにおいても検出されなかった。バイオアベイラビリティーは、15
日目の吸入投与後において、約0.2%であると計算された。投与前の1日目には、群4
の動物1匹だけの血清中に、抗Fab1抗体が検出され、14日目には、群5の動物1匹
だけの血清中にも、抗Fab1抗体が検出されたが、観察されるシグナルは、これらの動
物におけるFab1への曝露に対して、見かけの影響を及ぼさないと考えられた。研究で
は、Fab1の明白な全体的免疫原性は検出されなかった。試料の大部分における、血清
中、BAL中、または肺組織内では、第1の洗浄試料(BAL手順時に、3匹のFab1
処置動物から回収された)中で検出される、一部の極めて低度のシグナルを除き、総TS
LPは検出されなかった。
【0442】
結論として、Fab1の、3匹のカニクイザルへの、1日目における単一の静脈内ボー
ラス注射としての投与であって、13日間にわたる非投与期間、および15日目における
単回の吸入投与を後続させる投与は、有害作用を結果としてもたらさなかった。Fab1
の、カニクイザルへの、14日間にわたる吸入投与は、全ての処置群の動物の鼻腔内、肺
内、および気管支リンパ節内の見かけの変化と関連した。所見の重症度は、全ての症例に
おいて、最小限~軽度であり、観察は、有害と考えられなかった。Fab1を施される全
ての動物は、被験薬へと全身曝露された。
【0443】
[実施例13]
カニクイザルにおける、13週間にわたる吸入による毒性研究
本研究の目的は、吸入経路により、毎日1回ずつ、少なくとも連続92日間(13週間
)にわたり、カニクイザルへと施された場合の、Fab1である、抗胸腺間質性リンパ球
新生因子(TSLP)Fabの潜在的な毒性を決定し、42日間(6週間)にわたる回復
期間後における、任意の所見の潜在的な転導可能性について査定することであった。加え
て、Fab1のトキシコキネティクスおよび免疫原性特徴も決定した。
【0444】
Fab1 PulmoSol粉末を、吸入により、カニクイザルの3つの群(群1つ当
たり性別当たり3匹)へと、1日当たり1kg当たり3、10、および22mgの毎日の
標的用量で投与した。サル(性別当たり3匹)の別の群には、プラセボPulmoSol
粉末を施し、対照として用いた。プラセボ群内および1日当たり1kg当たり22mg群
内の、さらに2匹の動物(性別当たり2匹)を、6週間の回復期間にわたり、研究に維持
した。Fab1 PulmoSolエアゾールおよびプラセボPulmoSolエアゾー
ルは、回転ブラシ型発生デバイス(RBG1000)を使用して発生させた。緊密に適合
する口鼻マスクを使用して、動物を、Fab1 PulmoSol粉末(群2~4)また
はプラセボPulmoSol粉末(群1)のエアゾールへと、毎日1回少なくとも連続9
2日間、標的の60分間にわたり曝露した。
【0445】
以下のパラメータおよび評価項目:臨床徴候、体重、体重変化、眼科検査、神経学的検
査(呼吸数を含む)、心電図、臨床病理学パラメータ(血液学、凝固、臨床化学、および
尿検査)、末梢血リンパ球免疫表現型解析(フローサイトメトリー)、免疫機能(スカシ
ガイヘモシアニン(KLH)に対する、T細胞依存性抗体応答(TDAR))、Fab1
濃度およびトキシコキネティクスパラメータ(血清および肺組織抽出物)についてのバイ
オアナリシス、抗Fab1抗体(血清)、肉眼的部検所見、臓器重量、ならびに組織病理
学検査について査定した。
【0446】
投与されたFab1の全体の平均値エアゾール濃度は、群2、3、および4について、
それぞれ、0.10、0.33、および0.72mg/Lであった。全体の推定平均値総
送達用量(性別を組み合わせた)は、群2、3、および4について、それぞれ、1日当た
り1kg当たりのFab1 3.0、10.1、および22.2mgであった。空気動力
学質量中央径(MMAD)は、発生させたFab1エアゾールが、サルに吸入可能であり
、許容可能な肺曝露量が、被験種について達成されることを確認した。
【0447】
明白な被験薬関連作用であって、1日当たり1kg当たり3、10、または22mgの
用量で達成されるFab1の投与後における、心血管パラメータのうちのいずれかについ
て観察される作用は見られなかった。
【0448】
免疫機能(TDAR)の探索の結果は、達成された1日当たり1kg当たり≧10.1
mgの用量において、抗KLH IgG抗体レベルの低下への傾向を指し示した。最後の
サンプリング時点(研究78日目)では、達成された1日当たり1kg当たり≧3mgの
用量において、抗KLH IgG抗体および抗KLH IgM抗体のレベルの低下が留意
された。この効果は、雄では、全ての時点において極めて顕著であり、雌では78日目に
おいて極めて顕著であったが、他のサンプリング機会における雌では、それほど顕著では
なかった。抗KLH応答の減少への傾向は、有害とは考えられなかった。群4(1日当た
り1kg当たり22.2mg)の回復動物における、抗KLH IgG抗体および抗KL
H IgM抗体のレベルは、全ての機会において、同時的な対照(群1)の回復値と比較
して高レベルであったが、対照(群1)の主要な研究結果と同様であったことから、低下
した抗KLH抗体応答の回復が裏打ちされる。吸入投与を介する、少なくとも92日間に
わたるFab1の投与は、1日当たり1kg当たり3mgの達成された用量で、肺内のリ
ンパ組織の細胞充実性の増大を結果としてもたらした。所見の重症度は、全ての症例にお
いて、最小限~軽度であり、有害と考えられなかった。6週間にわたる回復期間の後、回
復動物4匹中2匹(50%)では、所見が見られなかったが、最小限の重症度である高用
量動物4匹中2匹(50%)では、所見が観察された。同じ所見はまた、1匹の対照の回
復雌においても存在した(軽度)ことから、この変化が、対照動物間でも散発的に見出さ
れうることが確認される。Fab1は、プラセボPulmoSol対照群(群1)動物に
由来する血清または肺組織試料のうちのいずれにおいても検出されなかった。全体的に、
Fab1への曝露は、Fab1で処置された動物において、投与期間を通して裏付けられ
、血清中および肺組織内のいずれにおいても、用量と関連する増大が見られた。血清中の
全身曝露はまた、92日目における最終回の投与後、最長で14~28日間にわたる回復
時にも裏付けられたが、肺組織濃度は、135日目(最終回投与の42日後)における剖
検時までに、全ての回復動物において検出不能であった。全ての投与群にわたり、研究1
日目~研究91日目の、毎日の投与を繰り返した後では、Fab1への血清曝露の顕著な
蓄積が認められた。見かけの性差に関連する曝露の差違は、観察されなかった。2匹のプ
ラセボPulmoSol対照動物では、投与前ベースラインおよび投与後時点のいずれに
おいても、低度であるが、検出可能な抗薬物抗体(ADA)シグナルが観察されたが、こ
れは、Fab1に特異的でない既存の抗体に起因する可能性が高い。他のいずれの対照動
物でも、ADAシグナルは、検出されなかった。全てのFab1処置動物は、早ければ、
研究28日目以降、投与後のADAシグナルを発生させた。3匹の動物における強いAD
Aシグナルは、明らかに、血清中のFab1への曝露の喪失と関連したが、これらの動物
では、剖検(最終回投与の約1~6時間後)時にも、肺におけるFab1への曝露が裏付
けられた。結論として、カニクイザルへの、Fab1の、13週間にわたる吸入投与は、
1日当たり1kg当たり最大で22.2mgの、達成された吸入可能な投与レベルで忍容
された。Fab1を施される全ての動物は、全身および肺内のいずれのFab1曝露も有
することが確認された。抗Fab1抗体は、早ければ、28日目以降、全ての処置動物に
おいて存在し、3匹の個体では、残りの処置動物と比較して、曝露のはるかな低下と関連
した。顕微鏡による査定は、全てのFab1処置動物の大部分について、肺リンパ組織の
細胞充実性の増大を確認したが、これは、6週間にわたる回復期間後の、高用量回復動物
のうちの50%において観察された。所見の重症度は、全ての症例において、最小限~軽
度であり、有害ではないと考えられた。
【0449】
[実施例14]
モノクローナル抗体断片の、単純な噴霧乾燥製剤の調製
本明細書で記載されるモノクローナル抗体断片であるFab1は、46.6kDaの分
子量を有する。喘息の処置における局所肺送達のための、乾燥粉末製剤について記載する
。この文脈では、「単純」という用語の使用は、医薬有効成分(Fab1)および緩衝剤
だけによる製剤を指す。
【0450】
89.5%の医薬有効成分と、10.5%のヒスチジン緩衝液とを含む、一連の単純抗
体製剤を、多様なエタノール/水溶媒組成を含む原料から製造した(表9)。エタノール
含量は、5%~20%w/wの間で変化させた。原料は、インレット温度を105℃、ア
ウトレット温度を70℃、乾燥ガス流量を595L/分、アトマイザーガス流量を20L
/分、液体フィード速度を8.0mL/分とし、ALRを2.5×10v/vとして、
NSD噴霧乾燥器上で噴霧乾燥させた。固体含量は、2%w/vで固定した。
【0451】
【表9】
【0452】
[実施例15]
抗体の単純な噴霧乾燥製剤の紛体工学特性
実施例14の噴霧乾燥抗体製剤の紛体工学特性を、表9に提示する。APIおよび緩衝
剤だけを含む単純製剤の全ては、滑らかな粒子表面(すなわち、表面コルゲーションを伴
わない)を伴う粒子をもたらした。少量のエタノールの、水性原料への添加は、粉末のバ
ルク密度およびタップ密度(インスリン製剤についてもまた観察される)を減少させた。
粒子はまた、それらの一次粒子サイズ分布(PPSD)の点でも、比較的大型であった。
【0453】
[実施例16]
抗体の単純噴霧乾燥製剤のエアゾール性能
実施例15で画定した粉末について決定したDDおよびTLDを、表10に提示する。
一次粒子は、空気動力学中央径であるDの計算値が、0.71~0.93μmの間であ
った(式:
【0454】
【数4】

を使用して、タップ密度および50回の測定から計算した)。
【0455】
概念1の乾燥粉末吸入器は、低抵抗のカプセルベースのデバイスである(R=0.07
cm HO)1/2/(L/分))。
【0456】
【表10】
【0457】
表10のデータからは、密度を低下させるだけでは、口腔-咽喉内の沈着を効果的に回
避する粒子の形成を可能とするのに不十分であることが明らかである。これを達成するた
めには、表面凹凸度(コルゲーション)を増大させるように粒子形状を改変しなければな
らず、一次粒子サイズの減少が所望されるであろう。
【0458】
ペプチドおよび小型のタンパク質は、シェル形成賦形剤の非存在下にある天然でも、コ
ルゲート形状を取るが、抗体の製剤は、コルゲート粒子の形成を可能とするように、シェ
ル形成賦形剤の添加を要求することに注目することは興味深い。この点で、シェル形成賦
形剤とエタノールの添加とは、噴霧乾燥粒子の壁の厚さおよび密度の改変において、同様
の機能を果たす。よって、シェル形成剤の存在下では、エタノールの添加の影響は小さい
【0459】
[実施例17]
抗体の、プラットフォームの噴霧乾燥製剤の調製および紛体工学特性
この一連の噴霧乾燥粉末では、噴霧乾燥条件を一定とし、シェル形成賦形剤(すなわち
、トリロイシン、0~15%w/w)の添加の影響を、抗体製剤について評価した。これ
らの製剤はまた、ガラス形成剤としてのトレハロース(トリロイシン含量に応じて、約2
9~44%w/w)およびヒスチジン緩衝液(5.9%w/w、pH5.0)も含有する
【0460】
粉末は、特注NSD噴霧乾燥器上で、インレット温度を105℃、アウトレット温度を
70℃、乾燥ガス流量を595L/分、アトマイザーガス流量を25L/分、液体フィー
ド速度を10.0mL/分とし、ALRを2.5×10v/vとして噴霧乾燥させた。
固体含量は、2%w/wで一定に保った。粉末の全ては、シェル形成剤の非存在下で噴霧
乾燥させたロットであって、実施例16で観察した粒子と同様の滑らかな粒子をもたらし
た、ロット761-02-12を例外として、コルゲート形状を有した。結果を、表11
に示す。一部の実施形態では、本発明の乾燥粉末製剤は、シェル形成賦形剤と、API、
ガラス形成賦形剤、および緩衝剤を含むコアとを含み、本明細書ではまた、場合によって
、プラットフォーム製剤とも称する、コア-シェル粒子を含む。
【0461】
【表11】
【0462】
[実施例18]
トリロイシン含量を変化させる、抗体の「プラットフォーム」噴霧乾燥製剤のエアゾール
性能
実施例17に記載した粉末について決定したDDおよびTLDを、表12に提示する。
【0463】
【表12】
【0464】
コルゲート粒子形状を伴う抗体製剤には、DDおよびTLDの著明な改善が観察される
。本発明の実施形態では、所望のコルゲート形状は、粒子表面上のシェル形成賦形剤であ
るトリロイシンの存在から生じる。
【0465】
本発明の実施形態では、粒子表面上の材料の物理化学的特性は、粒子形状に影響を及ぼ
す。大型のタンパク質(20,000ダルトンを上回るある種のタンパク質など)には、
所望の形状を達成するように、トリロイシンなどのシェル形成賦形剤が好ましい。本発明
の実施形態では、製剤および組成物を形成する粒子は、粒子間の凝集力を低減して、凝集
物のサイズが、凝集物が吸入可能となる程度に十分に小さくなるように、コルゲート形状
を有する。
【0466】
エタノールを添加すると、エタノールは、(他の点では)コルゲート(である)粒子(
(otherwise) corrugated particle)の壁の厚さを減少させることにより、粒子密度を低
下させる。さらにこれは、タップ密度を低下させることから、所望の空気動力学的特性に
従う、小型の一次粒子を可能とする。一部の実施形態では、一次粒子および凝集物が吸入
可能となるように、粒子の密度を低下させるべきである。
【0467】
エタノール含量を、0%から10%w/wへと増大させると、対になっている製剤72
8-06-04および761-02-11および728-06-02および761-02
-10では、タップ密度の著明な低減が認められる。本実施例における特異的製剤では、
10%のエタノール単独の添加は、シェル形成賦形剤によりもたらされる改善を超える、
エアゾール性能の標的の改善を与えなかった。TLDは、優れている(DDの>80%)
が、大部分は、粒子が大型かつ稠密に過ぎるため、所望の標的である、DDの90%w/
wを下回る。コルゲート粒子では、一次空気動力学径であるDの計算値は、0.77~
1.38μmの範囲である。
【0468】
[実施例19]
工程パラメータ(固体含量および共溶媒添加)の改変の、プラットフォーム抗体製剤の紛
体工学特性に対する影響
製剤は、50.0%w/wのAPI、5.9%w/wのヒスチジン緩衝液(pH5.0
)、約14%w/wまたは29%w/wのトレハロース、および15%w/wまたは30
%w/wのトリロイシンを含む。粉末は、特注NSD噴霧乾燥器上で、インレット温度を
105℃、アウトレット温度を70℃、乾燥ガス流量を595L/分、アトマイザーガス
流量を30L/分、液体フィード速度を4.0mL/分とし、ALRを7.5×10
/vとして噴霧乾燥させた。固体含量は、1%w/wへと低減した。噴霧乾燥工程のこれ
らの改変は、一次粒子サイズを低減するようにデザインした。本発明の実施形態では、一
次粒子サイズ分布の有意な低減が観察された。
【0469】
【表13】
【0470】
[実施例20]
工程パラメータ(固体含量および共溶媒添加)の改変の、プラットフォーム抗体製剤のエ
アゾール性能に対する影響
固体含量の低減およびALRの増大の、プラットフォーム抗体製剤のエアゾール性能に
対する影響を、表14に提示する。一次粒子の空気動力学中央径の、実施例18の粒子と
比べて著明な低減が観察された。これは、DDの約94%~98%の間のTLD、すなわ
ち、所望であるか、好ましいか、または最適の標的範囲内の性能を意味する。
【0471】
【表14】
【0472】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示が
属する分野の当業者により通例理解される意味と同じ意味を有する。
【0473】
別段に指し示されない限り、具体的な詳細について記載されていない、全ての方法、ス
テップ、技法、および操作を実施することができ、当業者に明らかな通り、それ自体、公
知の方式で実施されている。例えば、ここでもまた、本明細書で言及される、標準的なハ
ンドブック、および一般的な背景技術、ならびにその中で引用されている、さらなる参考
文献が参照される。
【0474】
別段に指し示されない限り、本明細書で引用される参考文献の各々は、参照によりその
全体において組み込まれる。
【0475】
本発明に対する特許請求の範囲は、非限定的なものであり、下記に提示される。
【0476】
本明細書では、特定の態様および特許請求の範囲について、詳細に開示してきたが、これは、例示だけを目的とする例としてなされたものであり、付属の特許請求の範囲、または任意の、対応する、将来の適用についての、特許請求の範囲の対象物の範囲に関して、限定することを意図するものではない。特に、本発明者らは、特許請求の範囲により規定される、本開示の精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、本開示に対して、多様な代替、改変、および変更を施しうることを想定する。核酸の出発材料、対象のクローン、またはライブラリーの種類の選択は、本明細書で記載される態様について通じた当業者には、ルーチンの事柄であると考えられる。他の態様、利点、および変更も、以下の特許請求の範囲内にあると考えられる。当業者は、ルーチンの実験だけを使用して、本明細書で記載される、本発明の具体的な態様についての、多くの同等物を認識し、これらを確認することが可能であろう。このような同等物は、以下の特許請求の範囲により包摂されることが意図される。後日になされる、対応する出願における、特許請求の範囲の再起草は、多様な諸国の特許法による制限に起因する可能性があり、特許請求の範囲の対象物の放棄として解釈すべきではない。

本発明は、以下の態様を含む。
[1]
a)配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1);
配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2);
配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3);
配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1);
配列番号12のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2);および
配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)
を含む分子;
b)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1;
配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2;
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3;
配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR1;
配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR2;および
配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む分子;
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む分子;
d)配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号25のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む分子;
e)配列番号9のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号19のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む分子;
f)以下の残基:配列番号22の重鎖配列のThr28、Asp31、Tyr32、Trp33、Asp56、Glu101、Ile102、Tyr103、Tyr104、Tyr105、または配列番号25の軽鎖配列のGly28、Ser29、Lys30、Tyr31、Tyr48、Asp50、Asn51、Glu52、Asn65、およびTrp92のうちの少なくとも1つを含むパラトープを含む分子;
g)ヒトTSLPに結合し、
配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1;
配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2;
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3;
配列番号11のアミノ酸配列を含むLCDR1;
配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR2;および
配列番号13のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む抗体断片;
ならびに
h)ヒトTSLPに結合し、
配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1;
配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2;
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3;
配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR1;
配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR2;および
配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む抗体断片
のうちのいずれか1つから選択される、ヒト胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)に特異的に結合する分子。
[2]
ヒトTSLP内のエピトープに特異的に結合する分子であって、前記エピトープが、以下の残基:配列番号38のLys38、Ala41、Leu44、Ser45、Thr46、Ser48、Lys49、Ile52、Thr53、Ser56、Gly57、Thr58、Lys59、Lys101、Gln145、およびArg149のうちの少なくとも1つを含む、分子。
[3]
前記エピトープが、配列番号38の残基の以下のセット:
(a)Lys49およびIle52、
(b)Gly57およびLys59、
(c)Lys101、
(d)Gln145およびArg149
のうちの少なくとも1つを含む、[2]に記載の分子。
[4]
モノクローナル抗体である、[1]から[3]のいずれかに記載の分子。
[5]
Fab、Fab’、F(ab’) 2 、scFv、ミニボディ、またはダイアボディから選択される抗体断片である、[1]から[3]のいずれかに記載の分子。
[6]
Fabである、[1]から[3]のいずれかに記載の分子。
[7]
ヒトまたはヒト化Fabである、[6]に記載の分子。
[8]
ヒト免疫グロブリンである、[1]から[4]のいずれかに記載の分子。
[9]
100pM未満の解離定数(K D )で、ヒトTSLPに結合する、[1]から[8]のいずれかに記載の分子。
[10]
10pM未満の解離定数(K D )で、ヒトTSLPに結合する、[1]から[8]のいずれかに記載の分子。
[11]
[1]から[10]のいずれかに記載の分子と、少なくとも1つの、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
[12]
前記分子が、前記組成物のうちの約5%~約95%、または約10%~約90%、または約15%~約85%、または約20%~約80%、または約25%~約75%、または約30%~約70%、または約40%~約60%、または約40~50%(w/w)である、[11]に記載の医薬組成物。
[13]
シェル形成剤を含む、[11]に記載の医薬組成物。
[14]
前記シェル形成剤が、トリロイシンまたはロイシンである、[13]に記載の医薬組成物。
[15]
前記トリロイシンまたはロイシンが、前記組成物のうちの約10~75%(w/w)である、[14]に記載の医薬組成物。
[16]
前記トリロイシンが、前記組成物のうちの約10~30%(w/w)であるか、または前記ロイシンが、前記組成物のうちの約50~75%(w/w)である、[15]に記載の医薬組成物。
[17]
少なくとも1つのガラス形成賦形剤を含む、[11]に記載の医薬組成物。
[18]
前記少なくとも1つのガラス形成賦形剤が、ヒスチジン、トレハロース、マンニトール、スクロース、またはクエン酸ナトリウムから選択される、[17]に記載の医薬組成物。
[19]
前記少なくとも1つのガラス形成賦形剤が、トレハロースまたはトレハロースとマンニトールとの混合物から選択される、[18]に記載の医薬組成物。
[20]
前記ガラス形成賦形剤が、前記組成物のうちの約15~35%(w/w)である、[17]に記載の医薬組成物。
[21]
緩衝剤を含む、[11]に記載の医薬組成物。
[22]
前記緩衝剤が、ヒスチジン緩衝液、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、またはリン酸緩衝液から選択される、[21]に記載の医薬組成物。
[23]
前記緩衝剤が、前記組成物のうちの約5~13%である、[21]に記載の医薬組成物。
[24]
乾燥粉末製剤として製剤化される、[11]に記載の医薬組成物。
[25]
吸入に適する乾燥粉末製剤として製剤化される、[24]に記載の医薬組成物。
[26]
シェルおよびコアを含み、前記シェルが、トリロイシンまたはロイシンを含み、前記コアが、
i)前記分子、トレハロース、マンニトール、および緩衝剤;または
ii)前記分子、トレハロース、緩衝剤、およびHCl
を含む、噴霧乾燥粒子を含む、[11]に記載の医薬組成物。
[27]
前記緩衝剤が、ヒスチジン緩衝液、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、またはリン酸緩衝液から選択される、[26]に記載の医薬組成物。
[28]
i)トレハロース、マンニトール、ヒスチジン、およびTSLP結合性分子を含むコア、またはトレハロース、ヒスチジン、HCl、およびTSLP結合性分子を含むコアであって、前記TSLP結合性分子が、
a)配列番号4のアミノ酸配列を含むHCDR1
配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3
配列番号11のアミノ酸配列を含むLCDR1
配列番号12のアミノ酸配列を含むLCDR2、および
配列番号13のアミノ酸配列を含むLCDR3、または
b)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1
配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2
配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3
配列番号14のアミノ酸配列を含むLCDR1
配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR2、および
配列番号16のアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、抗体のFab断片である、コアと;
ii)トリロイシンまたはロイシンを含むシェルと
を含む噴霧乾燥粒子を含む医薬組成物。
[29]
a)40%(w/w)のTSLP結合性分子、25%(w/w)のトリロイシン、合わせた重量を30%(w/w)とするトレハロースおよびマンニトール、ならびに5%(w/w)のヒスチジン;
b)50%(w/w)のTSLP結合性分子、15%(w/w)のトリロイシン、2.6%(w/w)のHCl、5.6%(w/w)のヒスチジン、ならびに合わせた重量を26.8%(w/w)とするトレハロースおよび塩基;または
c)50%(w/w)のTSLP結合性分子、15%(w/w)のトリロイシン、19.4%(w/w)のトレハロース、13.04%(w/w)のヒスチジン、および2.56%(w/w)のHCl
を含む、[28]に記載の医薬組成物。
[30]
[1]に記載の分子または[11]に記載の医薬組成物と、前記分子または医薬組成物を、対象に送達するためのデバイスとを含むキット。
[31]
前記デバイスが、前記分子または医薬組成物を、エアゾール化形態で送達する、[30]に記載のキット。
[32]
前記デバイスが、乾燥粉末吸入器である、[30]に記載のキット。
[33]
それを必要とする対象におけるTSLP関連状態を処置する方法であって、前記対象に、治療有効量の、[1]から[10]のいずれかに記載の分子または[11]から[29]のいずれかに記載の医薬組成物を投与するステップを含む方法。
[34]
それを必要とする対象におけるTSLP関連状態の処置における使用のための、[1]から[10]のいずれかに記載の分子または[11]から[29]のいずれかに記載の医薬組成物。
[35]
それを必要とする対象におけるTSLP関連状態を処置するための、[1]から[10]のいずれかに記載の分子または[11]から[29]のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
[36]
それを必要とする対象におけるTSLP関連状態の処置における使用のための、医薬の製造における、[1]から[10]のいずれかに記載の分子の使用。
[37]
前記TSLP関連炎症性状態が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性鼻炎、アレルギー性鼻副鼻腔炎、アレルギー性結膜炎、好酸球性食道炎、およびアトピー性皮膚炎から選択される、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[38]
前記TSLP関連炎症性状態が、喘息である、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[39]
前記分子が、吸入に適する乾燥粉末製剤として製剤化される、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[40]
前記分子が、前記対象に、経口投与または鼻腔内投与される、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[41]
前記分子が、前記対象に、エアゾール化形態で投与される、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[42]
前記分子が、前記対象に、乾燥粉末吸入器により投与される、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[43]
前記対象が、ヒトである、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[44]
第2の薬剤を、前記対象に投与するステップをさらに含む、[33]に記載の方法、[34]に記載の分子、または[35]もしくは[36]に記載の使用。
[45]
前記第2の薬剤が、コルチコステロイド、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、およびPDE-4阻害剤からなる群から選択される、[44]に記載の方法、分子、または使用。
[46]
[1]から[10]のいずれかに記載の分子をコードする核酸。
[47]
[46]に記載の核酸を含むベクター。
[48]
[46]に記載の核酸または[47]に記載のベクターを含む宿主細胞。
[49]
[1]から[10]のいずれかに記載の分子を作製する方法であって、
前記分子をコードする核酸を発現する宿主細胞を培養するステップと;
前記分子を、培養培地から回収するステップと
を含む方法。
[50]
[1]から[10]のいずれかに記載の分子を含む乾燥粉末製剤を作製するための方法であって、
(a)[1]から[10]のいずれかに記載の分子、トリロイシンまたはロイシン、ガラス形成賦形剤、および緩衝剤を含む水溶液を用意するステップと;
(b)ステップ(a)の水溶液を、約120℃~約200℃の間(インレット)の範囲および55℃~約75℃(アウトレット)の範囲の温度で噴霧乾燥させて、乾燥粉末粒子を作製するステップと;
(c)前記乾燥粉末粒子を回収するステップと
を含む方法。
[51]
前記緩衝剤が、ヒスチジン緩衝液、グリシン緩衝液、酢酸緩衝液、またはリン酸緩衝液から選択される、[50]に記載の方法。
[52]
前記ガラス形成賦形剤が、ヒスチジン、ヒスチジンHCl、トレハロース、マンニトール、スクロース、またはクエン酸ナトリウムから選択される、[50]に記載の方法。
[53]
前記賦形剤:分子の質量比が、0.5を超える、[11]に記載の医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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