(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】計時部品を製造するための方法およびこの方法によって得られる部品
(51)【国際特許分類】
C25D 1/00 20060101AFI20220404BHJP
G04B 15/14 20060101ALI20220404BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20220404BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
C25D1/00 381
G04B15/14 A
G04B15/14 B
B81C1/00
B81B1/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020187764
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2020-11-11
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
(72)【発明者】
【氏名】アレクス・ガンデルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ミュジー
(72)【発明者】
【氏名】クラール・ゴルフィエ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-025711(JP,A)
【文献】特開平09-260258(JP,A)
【文献】特開2006-161138(JP,A)
【文献】特開2016-138876(JP,A)
【文献】特表2012-529377(JP,A)
【文献】W. Bacher et al.,The LIGA Technique and Its Potential for Microsystems-A Survey,IEEE TRANSACTIONS ON INDUSTRIAL ELECTRONICS,1995年09月,VOL. 42, NO. 5,p.431-441,DOI:10.1109/41.464604
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/00
G04B 15/14
B81C 1/00
B81B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの計時部品を製造する方法であって、
a)基板(1)を準備して、その上に第1の導電層(2)を堆積させるとともに、感光性樹脂層(3)を塗布するステップと、
b)前記
感光性樹脂層(3)を成形するとともに前記部品の第1段を
画定する少なくとも1つの凹部を形成するために、
前記感光性樹脂層を保持するように
凸型インプリントを有するバッファ(5)を前記基板(1)から予め規定された距離までプレスすることにより、前記バッファ(5)を介して前記
感光性樹脂層(3)のホットスタンピングを実施するステップと、
c)成形された前記
感光性樹脂層(3)を、前記部品の少なくとも第1段を画定するマスク(4)を通して露光し、さらに、前記第1の導電層(2)を所々で露出させて、第1段および第2段を含むモールドを形成するために、前記感光性樹脂層(3)の未露光ゾーン(3b)を溶解させるステップと、
d)前記部品を形成するために、前記モールド内で前記第1の導電層(2)から電鋳することにより、
前記ホットスタンピングが実施された前記感光性樹脂層(3)の上面に概ね達する金属層(6)を堆積させるステップと、
e)前記部品を解放するために、前記基板、前記第1の導電層、および前記
感光性樹脂を次々に外すステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ステップb)は、真空中で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)では、前記
感光性樹脂層(3)を70℃~150℃の間で加熱することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記インプリントの少なくとも一部は、前記ステップb)において、前記基板の表面に近接してプレスされるように構成されている、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バッファ(5)の前記インプリントは、前記部品の少なくとも第1段を画定することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
当該方法は、前記
感光性樹脂層(3)の露光ゾーン(3a)に第2の導電層を局所的に堆積させることからなるオプションのステップを、前記ステップc)とd)の間に含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の導電層は、ステンシルマスクを通して堆積させることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の導電層は、インクまたは導電性樹脂の印刷によって堆積させることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記導電層(2)は、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、Pd系のものであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板(1)は、シリコンで構成されていることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記基板(1)は、透明材料で構成されていることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
透明材料で構成された前記基板(1)は、透明導電層と、その面の1つにマスクを形成するためにメタライズされたゾーンと、を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記導電層(2)は、50nm~500nmの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LIGA技術によって複雑な多段金属構造体を製造する方法に関する。本発明は、さらに、この方法によって得られる、かかる金属構造体である特に計時部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記の規定に相当する方法は既に知られている。特に、Journal of Microelectromechanical systems(Vol.2,No.2,1993年6月)に掲載された、A.B.Frazier等による「Metallic Microstructures Fabricated Using Photosensitive Polyimide Electroplating molds」と題する論文は、感光性樹脂層のフォトリソグラフィによって生成されるポリイミドモールド内でのガルバニック成長により、多段金属構造体を製造する方法について記載している。この方法は、以下のステップを含む。
- 後のガルバニック成長ステップのために、基板上に犠牲金属層および下地層を生成するステップ、
- 感光性ポリイミド層を塗布するステップ、
- 得るべき構造体の一段の輪郭に対応したマスクを通して、ポリイミド層を紫外線で露光するステップ、
- ポリイミドモールドを得るために、未露光部分を溶解させることにより、ポリイミド層を現像するステップ、
- ガルバニック成長により、モールドにその高さまでニッケルを充填して、略平坦な上面を得るステップ、
- 真空蒸着により、上面全体にクロム薄層を堆積させるステップ、
- クロム層の上に、新たな感光性樹脂層を堆積させるステップ、
- 得るべき構造体の次の段の輪郭に対応した新たなマスクを通して、樹脂層を露光するステップ、
- 新たなモールドを得るために、ポリイミド層を現像するステップ、
- ガルバニック成長により、新たなモールドにその高さまでニッケルを充填するステップ、
- 多段構造体およびポリイミドモールドを、犠牲層および基板から分離するステップ、
- 多段構造体をポリイミドモールドから分離するステップ。
【0003】
上記の方法は、原理的には、3層以上の金属構造体を得るために反復的に実施できることは理解されるであろう。
【0004】
特許文献1は、得るべき最終部品に対応した完全なフォトレジストモールドを、モールド内への部品の金属のガルバニック堆積ステップよりも前に形成することによる、多段部品の製造について記載している。この方法を用いて、段の突起が相互に入り込んだ多段部品のみを製造することができる。
【0005】
また、特許文献2では、少なくとも2段のフォトレジストモールドが知られており、基板に形成される段は、垂直かつ平滑なフランクを有するもののみである。
【0006】
これらの方法では、基本的なジオメトリが円柱状である部品の製造のみが可能であり、ベベル状またはチャンファ状のような複雑なジオメトリを有する部品の製造は不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/020515号
【文献】欧州特許出願公開第2405301号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ホットスタンピングステップをLIGA技術と組み合わせることにより、計時用の多段金属部品を製造する方法を提供することによって、上記の欠点ならびに他の欠点を解消することであり、多段部品の場合に信頼性の高いガルバニック成長を可能とするように、各段において導電層が樹脂層に結び付けられる。
【0009】
本発明の目的は、さらに、LIGA技術によって通常は実現不可能である複雑なジオメトリを有する計時器の製造を、可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明は、計時部品を製造する方法に関し、この方法は、以下のステップを含む。
a)基板を準備して、その上に第1の導電層を堆積させるとともに、第1の感光性樹脂層を塗布するステップ、
b)第1の樹脂層を成形するとともに計時部品の第1段を画定するために、樹脂層を保持するようにバッファを基板から予め規定された距離までプレスすることにより、バッファを介して第1の樹脂層のホットスタンピングを実施するステップ、
c)成形された第1の樹脂層を、部品の第1段を画定するマスクを通して露光し、さらに、第1の導電層を所々で露出させて、第1段および第2段を含むモールドを形成するために、感光性樹脂層の未露光ゾーンを溶解させるステップ、
d)部品を形成するために、モールド内で第1の導電層から電鋳することにより、第2の感光性樹脂層の上面に概ね達する金属層を堆積させるステップ、および、
e)部品を解放するために、基板、第1の導電層、および樹脂を次々に外すステップ。
【0011】
従って、この方法により、多段部品の製造が可能となる。
【0012】
本発明のさらなる効果的な代替実施形態によれば、
- ステップb)は真空中で実施する;
- ステップb)では、樹脂層を70℃~150℃の間で加熱する;
- バッファは凸型インプリントを有し、インプリントの少なくとも一部は、ステップb)において、基板の表面に近接してプレスされるように構成されている;
- バッファのインプリントは、部品の少なくとも第1段を画定する;
- 本方法は、樹脂層の露光ゾーンに第2の導電層を局所的に堆積させることからなるオプションのステップを、ステップc)とd)の間に含む;
- 第2の導電層は、ステンシルマスクを通して堆積させる;
- 第2の導電層は、インクまたは導電性樹脂の印刷によって堆積させる;
- その導電層は、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、Pd系のもの、またはこれらの材料のうちの少なくとも2つのスタックである;
- 基板はシリコンで構成されている;
- 基板は透明材料で構成されている;
- 透明材料で構成された基板は、その面の1つに、マスクを形成するためにメタライズされたゾーンを含む;
- 導電層は、50nm~500nmの間の厚さを有する。
【0013】
最後に、本発明は、例えば、アンクルアセンブリまたはガンギ車のような、本発明による方法により得られる計時部品に関する。
【0014】
従って、本発明による方法は、計時器用部品の製造に特に効果的な応用を見出すものと理解される。
【0015】
本発明のさらなる特徴および効果は、添付の図面を参照して、単なる非限定的な例として提示される本発明による方法の例示的な実施形態についての以下の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、計時部品を製造することを目的とした、本発明の一実施形態の方法ステップを示している。
【
図2】
図2は、計時部品を製造することを目的とした、本発明の一実施形態の方法ステップを示している。
【
図3】
図3は、計時部品を製造することを目的とした、本発明の一実施形態の方法ステップを示している。
【
図4】
図4は、計時部品を製造することを目的とした、本発明の一実施形態の方法ステップを示している。
【
図5】
図5は、計時部品を製造することを目的とした、本発明の一実施形態の方法ステップを示している。
【
図6】
図6は、計時部品を製造することを目的とした、本発明の一実施形態の方法ステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、少なくとも1つの計時部品を製造する方法に関するものである。
【0018】
第1のステップa)は、基板1を準備して、その上に導電層2と感光性樹脂層3を次々に堆積させることからなる。
【0019】
本発明による方法のステップa)で使用する基板1は、例えば、シリコン基板で形成される。この方法の第1のステップa)では、導電層2、すなわち、ガルバニック金属堆積を開始させることが可能な層を、例えば物理気相成長(PVD)によって堆積させる。典型的には、導電層2は、Au、Ti、Pt、Ag、Cr、もしくはPd系のもの(
図1)、またはこれらの材料のうちの少なくとも2つのスタックであり、50nm~500nmの間の厚さを有する。例えば、導電層2は、金または銅の層で被覆されたクロムまたはチタンのサブ層で形成することができる。
【0020】
この方法で用いる感光性樹脂3は、好ましくは、紫外線の作用で重合するように設計された参照記号SU-8で入手可能な8官能性のエポキシ系ネガ型樹脂である。
【0021】
本発明の具体的な一実施形態によれば、樹脂は、ドライフィルムの形態を呈し、この場合、樹脂は、基板1上にロールオンすることにより塗布される。
【0022】
あるいは、感光性樹脂は、紫外線の作用で分解するように設計されたポジ型フォトレジストとすることができる。なお、本発明は、何らかの特定のタイプの感光性樹脂に限定されないことは理解されるであろう。当業者であれば、紫外線フォトリソグラフィに適合したあらゆる周知の樹脂から、自身の要求に適した感光性樹脂をいかに選択すべきか分かるであろう。
【0023】
樹脂層3は、任意の適切な手段によって、遠心コーティング、スピンコーティング、または吹き付けによって、所望の厚さまで、基板1上に堆積させる。典型的には、樹脂の厚さは、10μm~1000μmの間であり、好ましくは50μm~300μmの間である。所望の厚さおよび用いる堆積法に応じて、第1の樹脂層3は、1回以上のパスで堆積される。
【0024】
次に、溶媒を除去するために、樹脂層3を、典型的には、90~120℃の間で、堆積された厚さに依存する時間にわたって加熱する(プリベークステップ)。この加熱によって、樹脂は、乾燥および硬化する。
【0025】
図2に示す次のステップb)は、第1の樹脂層を成形するとともに計時部品の第1段を画定するために、第1の樹脂層3のホットスタンピングを実施することからなる。第1のフェーズでは、樹脂を70℃~150℃の間の温度に加熱し、この場合、樹脂は、これにバッファ5を押し当てることにより圧縮して、その成形が可能となるように粘性となる。このステップは、樹脂層3をプレスする際の気泡の形成を防ぐために、真空中で実施する。本発明によれば、基板1上に樹脂層を保持するように、バッファ5を、基板1から予め規定された距離までプレスすることができる。
【0026】
効果的には、バッファ5は、様々な高さのバリエーションを呈することができる凸型インプリントを有し、これにより、部品の少なくとも第1段を画定することが可能となり、この少なくとも第1段は、この場合、従来のLIGA法では得ることができない複雑な3次元ジオメトリを有する。
【0027】
また、得るべき部品の完全なジオメトリを生成するために、バッファによって2段以上を形成することも想定できる。
【0028】
図3に示す次のステップc)は、形成すべき部品の第1段すなわち光重合ゾーン3aおよび未光重合ゾーン3bを画定するマスク4を通して、第1の樹脂層3を紫外線によって露光することからなる。
【0029】
紫外線露光によって誘起される光重合を終えるために、樹脂層3のアニールステップ(ポストベークステップ)が必要となることがある。このアニールステップは、好ましくは、90℃~95℃の間で実施される。光重合ゾーン3aは、大部分の溶媒に対して反応しなくなる。一方、未光重合ゾーンは、後に溶媒によって溶解させることが可能である。
【0030】
次に、
図4のように基板1の導電層2を所々で露出させるために、感光性樹脂層3の未光重合ゾーン3bを溶解させる。この工程は、PGMEA(プロピレングリコールメチルエチルアセテート)のような適切な溶媒によって、未光重合ゾーン3bを溶解させることにより実施する。このようにして、部品の第1段および第2段を画定する光重合感光性樹脂モールド3aを生成する。
【0031】
本発明の効果的な一実施形態によれば、基板1は、基板の裏面を通して樹脂を露光することができるように、透明材料で構成される。
【0032】
ホウケイ酸ガラス(Pyrex(登録商標))、または150℃までの加熱に耐える他のいずれかの材料のような、透明基板を使用することができる。基板は、錫ドープ酸化インジウム(酸化インジウム錫、ITO)で形成された第1の透明導電層と、樹脂層において開口したゾーンと垂直方向にアラインされた、例えばチタン金合金(TiAu)で構成された金属パターンと、を含む。ITO層は、重合すべきゾーンを重合させるための光を他面側に透過させつつ、表面全体の導電性を確保することにより、開口と垂直方向にアラインされたチタン金合金で構成された金属パターンをつなぐように機能する。
【0033】
図5に示す次のステップd)は、電鋳またはガルバニック堆積の場合、その後の機械加工時に優れた機械的強度を実現する、モールドの高さよりも低い高さに選択的に達するブロックが形成されるまで、導電層2から金属層6をモールド内に堆積させることからなる。この文脈における金属という用語は、明らかに金属合金を含む。典型的には、金属は、ニッケル、銅、金、または銀、および合金として、金-銅、ニッケル-コバルト、ニッケル-鉄、ニッケル-リン、またはニッケル-タングステン、を含む群から選択される。概して、多層金属構造体は、全体が同じ合金または金属で構成される。しかしながら、異なるタイプの少なくとも2つの層を含む金属構造体を得るために、ガルバニック堆積ステップでは、金属または合金を変更することも可能である。
【0034】
電鋳条件である特に浴組成、システムのジオメトリ、電圧および電流密度は、電鋳の分野で周知の技術によって電着させるべき金属または合金ごとに、選択される。
【0035】
金属層7は、製造されるべき部品の厚さによって予め規定された厚さを得るために、機械的方法を用いて機械加工することができる。
【0036】
ステップc)とd)の間に実施されるオプションのステップにより、ホットスタンピングによって成形されたいくつかの光重合ゾーン3aに、第2の導電層を局所的に堆積させる。この第2の導電層は、第1の導電層2と同じ特性を有することができる。
【0037】
第1の代替実施形態によれば、光学アライメントによって位置決めされるステンシルマスクを使用する。そのような装置によって、マスクと基板上の光重合ゾーン3aのジオメトリとの適切なアライメントを確保することが可能となり、これにより、マスクが可能な限り基板1に近接して維持されるので、選択された光重合ゾーン3aの上面のみへの堆積を確保することが可能となる。
【0038】
さらなる代替実施形態によれば、第2の導電層は、第2の導電層を堆積させるための3D印刷によって実現される。
【0039】
このようなソリューションによって、第2の導電層の選択的かつより精密な堆積が可能となることで、ステップd)でのガルバニック成長をより良好に制御する助けとなる。
【0040】
図6に示すステップe)は、一連のウェットエッチングステップまたはドライエッチングステップによって、基板、導電層、または樹脂層を外すことにより、部品を解放することからなり、当業者にはよく知られた工程である。例えば、ウェットエッチングによって第1の導電層2および基板1を外し、これにより、部品を損傷することなく基板1から解放することが可能となる。当然のことながら、シリコン基板は、水酸化カリウム(KOH)系溶液でエッチングすることができる。
【0041】
この第1の手順の後には、樹脂層に嵌め込まれた部品が得られ、導電層2は所々に依然として残っている。
【0042】
第2の手順は、O2プラズマエッチング工程によって樹脂層3を外すことからなり、中間金属層のウェットエッチング工程が時々挟み込まれる。
【0043】
このステップに続いて、得られた部品を洗浄することができ、さらにオプションとして、機械加工工程または化粧仕上げを実施するために、工作機械で再加工することができる。この段階で、部品は、直接使用することができ、または、典型的には物理的堆積もしくは化学的堆積である様々な装飾処理および/もしくは機能的処理を施すことができる。
【0044】
本発明による方法は、バネ、アンクルアセンブリ、歯車、アップリケなどのような、計時器用の部品の製造に特に効果的に応用される。この方法によって、従来のフォトリソグラフィ工程によって得られるものよりも、多様な形状および複雑なジオメトリの部品を製造することが可能である。また、このような方法によって、ジオメトリに関して良好な信頼性を示す頑強な部品を得ることも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 基板
2 導電層
3 感光性樹脂層
3a 露光ゾーン(光重合ゾーン)
3b 未露光ゾーン(未光重合ゾーン)
4 マスク
5 バッファ
6 金属層