(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】計時器テンプ
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20220404BHJP
G04B 18/02 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
G04B17/06 A
G04B18/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020202441
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2020-12-07
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス-ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】イバン・エルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・キュザン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】スイス国特許出願公開第00711766(CH,A3)
【文献】スイス国特許発明第00227189(CH,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 17/06, 17/22
G04B 17/00,18/00
G04B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測時器ムーブメントのためのテンプ(1)であって、前記テンプ(1)は、前記テンプ(1)の枢動軸(D)を画定するハブ(2)、少なくとも1つの外縁区分(3)、及び前記少なくとも1つの外縁区分(3)を前記ハブ(2)に接続する少なくとも1つの腕部(4)から構成した剛性部品を備え、慣性ブロック(6)を受け、所定の位置に把持する少なくとも1つの細
溝(7)を含み、前記少なくとも1つの細
溝(7)は、
弾性腕部が形成する筐体(10)に開口し、前記筐体(10)は、一方で、前記テンプ(1)の剛性部品(8)によって境界を定め、もう一方で、弾性腕部(5)によって境界を定め、前記弾性腕部(5)は、前記テンプ(1)の外縁と一体である第1の端部(5B)と、前記ハブ(2)、前記腕部(4)及び前記外縁区分(3)に対して自由である
自由遠位端部(5A)とを含む、テンプ(1)において、
前記弾性腕部(5)は、フック形本体(5C)を備え、前記フックの
前記自由遠位端部(5A)は、前記弾性腕部(5)の剛性以上の剛性を有する前記テンプの
前記剛性部品の一部に平行であることを特徴とする、テンプ(1)。
【請求項2】
前記弾性腕部(5)の前記自由遠位端部(5A)は、平坦区分(50)を有し、前記平坦区分(50)は、前記弾性腕部(5)の剛性以上の剛性を有する前記テンプの一部の反対側に配設することを特徴とする、請求項1に記載のテンプ(1)。
【請求項3】
前記弾性腕部(5)は、
前記筐体内の中心Cを有する円の中心に対して、240°を超える角度αにわたり一定曲率の内表面(S1)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のテンプ(1)。
【請求項4】
前記弾性腕部(5)は、中心Cを有する円の中心に対して、150°を超える角度βにわたり一定断面を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のテンプ(1)。
【請求項5】
前記平坦区分(50)は、中心Cを有する円の中心に対して、20°から50°の間に含まれる角度γにわたり延在することを特徴とする、
請求項2または請求項2を引用する請求項3もしくは4のいずれか一項に記載のテンプ(1)。
【請求項6】
前記細
溝(7)は、前記枢動軸(D)
を中心とする円の半径(R)に平行に延在することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のテンプ(1)。
【請求項7】
前記弾性腕部(5)は、前記慣性ブロックの棒を置く際に、前記弾性腕部(5)が前記テンプの前記
剛性部品(8)に対して
、前記自由遠位端部で、0.3%の塑性変形閾値より下に留まるように成形することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のテンプ(1)。
【請求項8】
前記筐体(10)は、中心(C)及び半径(R1)を有する円形状を
有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のテンプ(1)。
【請求項9】
前記弾性腕部は、前記慣性ブロックを組み付けた際に少なくとも0.7Nの保持力をもたらすことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のテンプ(1)。
【請求項10】
前記剛性部品(8)は、前記慣性ブロックを配置させる切欠き(11)を備え、前記開口の幅は、前記慣性ブロックの棒の直径よりも小さいことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のテンプ(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの弾性腕部(5)は、前記テンプ(1)と一体に作製することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のテンプ。
【請求項12】
前記テンプ(1)は、いくつかの弾性腕部(5)を備え、前記弾性腕部は、中心対称で配設し、前記中心対称は、前記テンプの中心対称を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のテンプ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのテンプ(1)を含む測時器ムーブメント。
【請求項14】
請求項13に記載の少なくとも1つのムーブメントを含む計時器において、前記計時器は、時計であることを特徴とする、計時器。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載のテンプ(1)上に慣性ブロック(6)を組み付ける方法であって、前記組み付け方法は、
a)支持体上に前記テンプ(1)を置き、前記テンプ(1)を所定の位置に保持するステップと、
b)脚部(65)が筐体内に載置されるように、前記筐体(10)に前記慣性ブロック(6)を置くステップであって、前記脚部(65)は、前記細
溝(7)と一列に配置する、ステップと、
c)前記脚部を
前記慣性ブロックを配置させる切欠き(11)内に収容するため、直線方向で前記細
溝(7)の方に前記慣性ブロック(6)を変位させるステップと
を含み、前記慣性ブロックの前記脚部は、前記慣性ブロック(6)を変位させる間、前記弾性腕部(5)を広げる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測時器ムーブメントのためのテンプに関し、テンプは、テンプの枢動軸を画定するハブ、外縁及び外縁をハブに接続する少なくとも1つの腕部から構成した剛性部品と、少なくとも1つの保持部位とを含み、少なくとも1つの保持部位は、慣性ブロックの棒を受け、所定の位置に把持する。
【0002】
本発明は、測時器発振器の分野に関し、より詳細には、慣性調節及び/又は均衡化手段を含むテンプの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
慣性調節及び/又は均衡化手段を有するテンプに関し、多数の実施形態が公知である。特に、慣性ブロックをテンプ外縁に螺入又は打ち込み、埋め込んだテンプが公知である。いくつかの成果物は、把持による慣性ブロックの保持を試みている。慣性ブロックの棒を受け、所定の位置に把持する少なくとも1つの細穴を含むテンプを開示している文献スイス国特許発明第705238号明細書が公知であり、細穴は、一方で、テンプの前記剛性部品によって境界を定められ、もう一方で、弾性腕部によって境界を定められ、弾性腕部は、慣性ブロックを保持するように、前記細穴の境界を定める前記テンプの前記剛性部品の方に永続的に戻されている。
【0004】
慣性ブロックを挿入する際、弾性腕部は、弾性腕部が広がるため、著しい塑性変形を受ける。この場合、こうした塑性変形は、亀裂等の欠陥を材料に生じさせることがある。したがって、このことは、慣性ブロックが弾性腕部によってもはや正確に保持できず、外れているため、テンプの信頼性に悪影響を及ぼすか又は更にはテンプを損傷することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に、これら公知の技法の様々な欠点を克服することである。
【0007】
より詳細には、本発明の目的は、弾性腕部により、慣性ブロックに対するより良好な保持を得ることを可能にするテンプを提供することであり、弾性腕部は、弾性限度を超えない応力レベル内に留めることができ、このようにして欠陥の危険性を最小化する。
【0008】
本発明の別の目的は、弾性腕部を有するテンプを提供することであり、弾性腕部は、十分な剛性形状を有し、十分な支承力を可能にし、時計が受ける衝撃の種類にかかわらず慣性ブロックを所定の位置に保持することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的、及び以下でより明らかになる他の目的は、請求項1に記載の測時器ムーブメントのためのテンプによって、本発明に従って達成される。
【0010】
本発明の他の有利な変形形態によれば、
-弾性腕部の自由遠位端部は、平坦区分を有し、平坦区分は、弾性腕部の剛性以上の剛性を有するテンプの一部の反対側に配設され、
-弾性腕部は、中心Cを有する円の中心に対して、240°を超える角度αにわたり一定曲率の内表面を備え、
-弾性腕部は、中心Cを有する円の中心に対して、150°を超える角度βにわたり一定断面を備え、
-平坦区分は、中心Cを有する円の中心に対して、20°から50°の間に含まれる角度γにわたり延在し、
-細穴は、前記枢動軸から半径に平行に延在し、
-弾性腕部は、慣性ブロックの棒を置くために弾性腕部がテンプの剛性部品に対して実質的に垂直上昇する間、筐体の底部で、0.3%の塑性変形閾値より下に留まるように成形し、
-筐体は、細穴によって画定される入口と底部とを有する円形状を有し、筐体の底部は、筐体の入口よりも大きい寸法を有し、
-弾性腕部は、少なくとも0.7Nの保持力をもたらし、
-剛性部品は、慣性ブロックを配置させる切欠きを備え、開口の幅は、慣性ブロックの棒の直径よりも小さく、
-弾性腕部は、外縁と一体であり、
-弾性腕部は、ハブと一体であり、
-少なくとも1つの弾性腕部は、テンプと一体に作製し、
-テンプは、中心対称で配設したいくつかの弾性腕部を備え、中心対称は、テンプの中心対称を有する。
【0011】
本発明は、本発明によるテンプ-ぜんまい発振器システムを備える測時器ムーブメントにも関する。
【0012】
本発明は、本発明による測時器ムーブメントを備える計時器にも関する。
【0013】
本発明は、本発明によるテンプ上に慣性ブロックを組み付ける方法にも関する。
【0014】
したがって、本発明の目的は、上記したその様々な機能的、構造的態様によって、特に、弾性腕部の内表面に沿った表面上への引張り応力が消失するため、より強固なテンプを得ることを可能にし、このことにより、脆弱領域の形成を制限可能にする。
【0015】
本発明の他の特徴及び利点は、単なる例示的、非限定的な例として与える本発明の特定の実施形態に対する以下の説明、及び添付の図面を読めばより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態による、本発明によるテンプの上面図である。
【
図2】第1の実施形態による、本発明によるテンプの弾性締め付け部位の上面図である。
【
図3】第2の実施形態による、本発明によるテンプの上面図である。
【
図4a】本発明によるテンプに備えることができる慣性ブロックの図である。
【
図4b】本発明によるテンプに備えることができる慣性ブロックの図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、例示的実施形態によるテンプを、
図1、
図2、
図3、
図4a及び
図4bを一緒に参照しながら説明する。
【0018】
本発明は、測時器ムーブメントのためのテンプ1に関する。テンプは、中心がテンプ1の枢動軸Aを画定するハブ2、外縁3及び外縁3をハブ2に接続する少なくとも1つの腕部4から構成される剛性部品を備える。
【0019】
当業者の必要に応じて、テンプは、銅、又は洋銀等の銅合金から作製される。テンプ車は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン又はチタン合金、金又は金合金、白金又は白金合金から作製することもできる。
【0020】
テンプ1は、少なくとも1つの弾性腕部5も備え、少なくとも1つの弾性腕部5は、テンプ1の外縁と一体である第1の端部5Bと、ハブ2、腕部4及び外縁区分3に対して自由である第2の遠位端部5Aとを備え、自由端部5Aは、外縁の平面内で変形させ、テンプ上に慣性ブロック6を留めることができる。テンプは、慣性ブロック6を受けることができる細穴7も有し、細穴7は、一方で、弾性腕部の自由端部5Aによって境界を定められ、もう一方で、外縁及びハブと一体である剛性部品8によって境界を定められる。細穴7は、開口9を有し、弾性腕部の端部5Aを腕部4に対して直交に変位させ、慣性ブロック6と接触させることを可能にし、慣性ブロック6が細穴内に置かれた際に慣性ブロック6を腕部4に対して留めるようにする。
【0021】
本発明によれば、弾性腕部5は、フック形本体5Cを備え、フックの自由遠位端部5Aは、弾性腕部5の剛性以上の剛性を有するテンプの一部に平行であり、そのようなフック形状は、応力の良好な分散を可能にする一方で、外縁とハブとの間の自由空間内での密集を制限する。
【0022】
更に、そのようなフック形状は、弾性腕部5によって形成される筐体の底部、即ち内表面S1が圧縮を受けることを可能にし、従来技術では通例である張力をもはや受けない。上記の主な利点は、この弾性腕部5の領域は、形成され得る微細な亀裂等の欠陥を補償し、圧縮状態で働き、したがって、こうした欠陥を受けづらくなることである。
【0023】
図2からわかるように、弾性腕部5の自由遠位端部5Aは、弾性腕部5の剛性以上の剛性を有するテンプの一部の反対側に配設された平坦区分50を有し、剛性部品は、例えば、テンプの腕部4又は別の弾性腕部5とすることができる。
【0024】
弾性腕部5は、中心Cを有する円の中心に対して、240°を超える角度αにわたり一定曲率の内表面S1を備え、そのような構成により、腕部が内表面S1に沿って圧縮状態で働くことを可能にすることに留意されたい。
【0025】
弾性腕部5は、中心Cを有する円の中心に対して、150°を超える角度βにわたり一定断面も備え、そのような構成により、より多くの材料が応力下にあることを可能にする。
【0026】
平坦区分50は、中心Cを有する円の中心に対して、20°から50°の間に含まれる角度γにわたり延在する。
【0027】
有利には、細穴7は、前記枢動軸Dから半径Rに平行に延在し、筐体10に開口し、慣性ブロック6を正確に配置させる切欠き11を備え、切欠き11を所定の位置に保持する。開口9の幅は、慣性ブロック又は慣性ブロックの棒の直径よりも小さく設けられ、慣性ブロックを所定の位置に保持するようにする。
【0028】
慣性ブロック6は、調節外形部63を含む頭部61を含み、調節外形部63は、工具と協働するように構成される。慣性ブロック6は、この頭部61を延在する棒62を備えることができ、頭部61は、棒62の直径よりも大きい直径を有する。
【0029】
図示する例では、慣性ブロック6は脚部65を備え、棒62は頭部61に接続し、頭部61及び脚部65は共に、棒62の直径よりも大きい直径を有し、弾性腕部5において、枢動軸Dに平行な方向に慣性ブロック6が進行するのを制限するか、又は更には慣性ブロック6をこの方向で固定するようにする。
【0030】
棒62は、軸に沿って延在し、慣性ブロック6の中心を通過し、慣性ブロックは、弾性腕部5によって把持されると、器具により調節外形部63上でこの軸回りに角度的に向けることができる。慣性ブロック6は、
図2aからわかるように、この軸回りに不平衡を含み、この不均衡は、例えば、頭部61上に作製した平坦区分64に起因するものである。
【0031】
慣性ブロック6が開口9の切欠き11内に置かれると、弾性腕部5の自由端部5Aは、半径の全体方向に直交に変位し、剛性壁8に対して剛性腕部の取り付け部をハブ及び外縁に接続する。自由端部5Aは、切欠き11に対向する平坦面を有し、慣性ブロック6の棒に対して良好な保持をもたらす。
【0032】
慣性ブロック6は棒62を備え、棒62の最小直径は、自由状態では細穴7の幅よりも大きく、弾性腕部5が、細穴7の境界を定めるテンプ1の剛性部品8から広げられると、棒62の最大直径は、細穴7又は弾性部材5に加えられた、広げられる力の作用下、細穴7の幅よりも小さい。
【0033】
本発明によれば、弾性腕部5は、壁50によって境界を定められる筐体10を形成し、弾性腕部の本体5Cは、慣性ブロック6をテンプに組み付けた際に弾性的に変形するように構成され、弾性腕部5の自由端部5Aは、外縁の平面内で、腕部4に対して実質的に直交に変位させることができる。
【0034】
図3に示すように、筐体10は、内側半径R1及び外側半径R2に対して中心Cを有する円形状を有し、2つの半径R1及びR2の間の距離は、円弧部分の厚さを表す。
【0035】
有利には、弾性腕部5の本体5Cは、一定断面の円弧形状内に第1の部分を有する。円弧形状により、応力下で従来技術よりも大きな材料体積のために、一方で、応力分散表面の増大を可能にし、もう一方で、可能な限り多くの弾性エネルギーの保存を可能にする。本体5Cは、第1の部分の延在部において、第2の部分も備え、第2の部分は、前記腕部に平行である。
【0036】
図2からわかるように、腕部の第1の部分は、第2の部分と比較してより大きな厚さを有する。そのような構成により、応力下、より多くの材料を有する、したがって、より多くのエネルギーを保存することが可能になり、こうして慣性ブロック6上に良好な保持力を復元する。本ケースでは、第1の円弧形状部分は、非常にわずかな塑性変形しか受けない一方で、慣性ブロックに非常に良好な保持をもたらす。
【0037】
剛性部品8に平行に配設された腕部の第2の部分は、第1の部分と比較すると、より小さな厚さを有する。弾性腕部の第2の部分は、屈曲を受ける非一定断面の埋め込み梁とみなすことができ、したがって、本体5Cは、非常にわずかな塑性変形しか受けない。
【0038】
本発明者等が実行した試験によれば、弾性腕部5は、円弧部分の壁に沿って0.3%の塑性変形しか受けない一方で、従来技術で使用される解決策は、2%の塑性変形を受ける。したがって、使用する解決策により、慣性ブロック6を置く際に弾性腕部5が受ける応力の低減を可能にする。そのような形状により、弾性腕部5の円弧部分の内側壁が圧縮を受け、外側壁が張力を受けることを可能にする。そのような構成により、経時的な慣性ブロックの良好な保持には有害である微細な亀裂等の脆弱領域の形成を制限、又は更にはなくすことを可能にする。
【0039】
弾性腕部5の寸法及び形状は、慣性ブロックを保持するのに最小の所望の力を得るように決定され、弾性腕部によって得られる保持力は、少なくとも0.7Nである。
【0040】
同様に、弾性腕部5の円弧形状の長さ及び幅は、塑性変形を回避するため、応力レベルより下で保持されるように決定される。弾性腕部5の寸法は、腕部の変形に起因するかなりの弾性エネルギーの保持を可能にし、変形エネルギーは、弾性腕部5によって留められる慣性ブロックの棒上で、保持力の形態で復元され、これにより、切欠き11内に保持する弾性腕部5の力及びトルクを保証する。
【0041】
弾性腕部5が形成する筐体10は、湾曲部の底部に比較的大きな半径を有し、この特定形状は、慣性ブロック6を組み付ける間、応力の良好な分散が得られるように決定され、応力は、従来技術と比較して、より大きな表面にわたって分配され、このことにより、円弧が形成する湾曲部に沿って構造体が脆弱化しないようにすることにも留意されたい。実際、従来技術では、保持部位の湾曲部の底部の半径は、かなり小さく、このことは、応力の分散がかなり局所的であり、この場所に微細な亀裂が形成され、したがって、経時的に保持力が漸減することを示唆する。
【0042】
本発明により、弾性腕部5の特定形状を通じて、申し分のない慣性ブロック保持力が得られ、腕部を変位させて慣性ブロック6を置く際に脆弱領域の形成をなくすことを可能にする。応力下の材料の量は、慣性ブロック上への申し分のない保持力の印加の決定に影響を与えると思われる(クラペイロンの式によれば、材料本体内に保存される弾性エネルギーは、全ての印加される力の仕事量に等しい、即ち、
【0043】
【0044】
である)。
【0045】
したがって、理想的な解決策は、弾性腕部がより大きな保持力を復元するように、可能な限り、応力下での材料の量を増大させることである。しかし、そのようなオプションは、弾性腕部のサイズがより大きいことを示唆し、テンプの慣性を著しく変更し、テンプの組み付け、特に、天真へのピン留めを複雑にする。
【0046】
図1及び
図3に示す実施形態によれば、テンプは、2又は4つの弾性腕部5を備えることができる。
【0047】
本発明は、上記のテンプ上に慣性ブロックを組み付ける方法にも関する。本発明による組み立て方法は、
a)支持体上にテンプ1を置き、テンプ1を所定の位置に保持するステップと、
b)外縁の平面内で、腕部4に対して直交に弾性腕部5の自由端部5Aを変位させるステップと、
c)脚部65が切欠き11の位置と一致するように、切欠き11に慣性ブロック6を置くステップと、
d)脚部65を切欠き内に収容するため、直線方向で切欠き11の方に慣性ブロック6を変位させるステップと
を含む。
【0048】
方法は、ステップc)の後、任意のステップを含むことができ、このステップの間、慣性ブロック6は、慣性ブロックの頭部が腕部5の上側面及び剛性壁8の上側面と接触するように微細に配置される。
【0049】
本発明は、複数の保持部位5を含むテンプ1にも関し、複数の保持部位5はそれぞれ、少なくとも1つの慣性ブロック6を受けるように構成される。
【0050】
本発明は、上記した少なくとも1つのそのようなテンプ1を含む測時器ムーブメントにも関する。
【0051】
本発明は、少なくとも1つのそのようなムーブメントを含む計時器にも関し、計時器は、好ましくは時計である。
【符号の説明】
【0052】
1 テンプ
2 ハブ
3 外縁区分
4 腕部
5 弾性腕部
6 慣性ブロック
7 細穴
10 筐体