(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】内視鏡装置及び内視鏡ならびに内視鏡装置の作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20220404BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220404BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20220404BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
A61B1/045 613
A61B1/045 615
A61B1/045 640
A61B1/00 682
H04N5/225 500
H04N7/18 M
(21)【出願番号】P 2020517023
(86)(22)【出願日】2019-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2019007105
(87)【国際公開番号】W WO2019211938
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2018088334
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 伸介
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123825(JP,A)
【文献】特開2007-329946(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111292(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311777(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
H04N 5/225
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像して画像データを生成する撮像部と、
圧縮後のデータ量を規定する値である圧縮パラメータを用いて前記画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮処理を行う圧縮処理制御部と、
前記画像データと前記圧縮データを記憶する記憶部と、
前記圧縮データに基づいて前記圧縮パラメータを設定するパラメータ設定部と、
前記画像データに対応する表示画像を表示する表示部と、
前記画像データに含まれる前記被写体の情報量を検出する情報量検出部と、
前記情報量に対応する判定値が所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行う判定部とを備え、
前記被写体の撮像と前記画像データの生成は、連続的に複数回行われ、
前記判定処理は、前記画像データが生成されるたびに行われ、
前記記憶部は、前記判定処理の結果を記憶し、
前記圧縮パラメータと前記表示画像は、前記判定処理の結果に基づいて決定され、
前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像であり、
前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値未満のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像、または、前回の前記判定処理の結果に基づいて決定された画像であることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記圧縮処理制御部は、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、前記圧縮処理において用いられる前記圧縮パラメータを、前記パラメータ設定部で設定された前記圧縮パラメータである設定パラメータで更新し、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値未満のときには、前記圧縮処理において用いられる前記圧縮パラメータを更新しないことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記パラメータ設定部は、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する前記圧縮データに基づいて生成された前記圧縮パラメータを前記設定パラメータとして設定し、前記判定処理において前記判定値が前記所定の未満のときには、前記圧縮パラメータを生成する処理を行わないことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記パラメータ設定部において前記圧縮パラメータが生成されるたびに、生成された前記圧縮パラメータを記憶し、
前記パラメータ設定部は、前記判定処理において前記判定値が前記所定の未満のときには、前記記憶部に記憶された前記圧縮パラメータを前記設定パラメータとして設定することを特徴とする請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記情報量は、前記画像データに含まれる色情報に基づいて規定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記情報量は、前記画像データの解像度に基づいて規定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記情報量は、前記圧縮データのデータ量に基づいて規定されることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記判定値は、今回の前記判定処理を行う際に検出された前記情報量と前回の前記判定処理を行う際に検出された前記情報量との差であることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
更に、前記圧縮データを伸長して前記画像データを生成すると共に、伸長した前記画像データを前記表示部に出力する画像処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記パラメータ設定部は、前記画像データを伝送する伝送経路における転送可能なデータ量を転送可能データ量としたときに、前記圧縮データのデータ量と対応関係を有する算出データ量が前記転送可能データ量に基づいて規定される第1の目標データ量以下になるように圧縮するための圧縮パラメータを算出する第1の演算を含む生成処理によって、前記圧縮パラメータを生成することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記圧縮処理制御部は、前記圧縮パラメータを用いて前記画像データに対して複数の単位領域毎に前記圧縮処理を行い、前記圧縮データとして、1つの前記画像データから複数の圧縮部分を生成し、
前記記憶部は、所定の大きさの記憶容量を有し前記複数の圧縮部分の各々を順次記憶する圧縮データ記憶部を含み、
前記生成処理は、更に、
前記複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値が前記記憶容量に基づいて規定される第2の目標データ量以下になるように圧縮するための圧縮パラメータを算出する第2の演算と、
前記第1の演算によって算出された前記圧縮パラメータと、前記第2の演算によって算出された前記圧縮パラメータとを比較して、圧縮後のデータ量がより小さくなるパラメータを選択する処理とを含むことを特徴とする請求項10に記載の内視鏡装置。
【請求項12】
更に、前記記憶部に記憶された前記圧縮データを送信する第1の無線通信部と、
送信された前記圧縮データを受信する第2の無線通信部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項13】
更に、内視鏡と、
前記内視鏡に対して物理的に分離されたプロセッサとを備え、
前記撮像部、前記圧縮処理制御部、前記パラメータ設定部、前記情報量検出部、前記判定部および前記第1の無線通信部と、前記記憶部の少なくとも一部は、前記内視鏡に設けられ、
前記第2の無線通信部は、前記プロセッサに設けられ、
前記表示部は、前記プロセッサに接続されていることを特徴とする請求項12に記載の内視鏡装置。
【請求項14】
更に、内視鏡と、
前記内視鏡に対して物理的に分離されたプロセッサとを備え、
前記撮像部、前記圧縮処理制御部および前記第1の無線通信部と、前記記憶部の一部は、前記内視鏡に設けられ、
前記パラメータ設定部、前記情報量検出部、前記判定部および前記第2の無線通信部と、前記記憶部の他の一部は、前記プロセッサに設けられ、
前記表示部は、前記プロセッサに接続され
前記第2の無線通信部は、前記パラメータ設定部で設定された前記圧縮パラメータである設定パラメータを送信し、
前記第1の無線通信部は、送信された前記設定パラメータを受信することを特徴とする請求項12に記載の内視鏡装置。
【請求項15】
被写体を撮像して画像データを生成する撮像部と、
圧縮後のデータ量を規定する値である圧縮パラメータを用いて前記画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮処理を行う圧縮処理制御部と、
前記画像データと前記圧縮データを記憶する記憶部と、
前記圧縮データに基づいて前記圧縮パラメータを設定するパラメータ設定部と、
前記画像データに含まれる前記被写体の情報量を検出する情報量検出部と、
前記情報量に対応する判定値が所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行う判定部と、
前記記憶部に記憶された前記圧縮データを送信する無線通信部とを備え、
前記無線通信部は、前記画像データに対応する表示画像を表示する表示部が接続されたプロセッサに対して前記圧縮データを送信し、
前記被写体の撮像と前記画像データの生成は、連続的に複数回行われ、
前記判定処理は、前記画像データが生成されるたびに行われ、
前記記憶部は、前記判定処理の結果を記憶し、
前記圧縮パラメータと前記表示画像は、前記判定処理の結果に基づいて決定され、
前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像であり、
前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値未満のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像、または、前回の前記判定処理の結果に基づいて決定された画像であることを特徴とする内視鏡。
【請求項16】
内視鏡の撮像部で取得した画像データから表示画像を生成する
内視鏡装置の作動方法であって、
前記内視鏡装置は、
圧縮後のデータ量を規定する値である圧縮パラメータを用いて前記画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮処理を行
い、
前記画像データと前記圧縮データを記憶
し、
前記圧縮データに基づいて前記圧縮パラメータを設定
し、
前記画像データに含まれる被写体の情報量を検出
し、
前記情報量に対応する判定値が所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行い、
前記判定処理の結果を記憶
し、
前記内視鏡装置による前記被写体の撮像と前記画像データの生成は、連続的に複数回行われ、
前記判定処理は、前記画像データが生成されるたびに行われ、
前記圧縮パラメータと前記表示画像は、前記判定処理の結果に基づいて決定され、
前記
内視鏡装置は、更に、
前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像を前記表示画像として表示部に表示
し、
前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値未満のときには、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像、または、前回の前記判定処理の結果に基づいて決定された画像を前記表示画像として前記表示部に表示す
ることを特徴とする
内視鏡装置の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを圧縮する圧縮処理制御部と画像データに対応する表示画像を表示する表示部とを備えた内視鏡装置および内視鏡ならびに内視鏡装置の作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡装置は、医療分野および工業用分野において広く用いられている。特に、医療分野において用いられる内視鏡は、体腔内の臓器の観察、処置具を用いた治療措置、内視鏡観察下における外科手術等に、広く用いられている。
【0003】
また、近年、半導体技術の進歩や、照明用光源としてLEDを用いることによる省電力化によって、充電式のバッテリを搭載したバッテリ駆動型の内視鏡が実用化され始めている。バッテリ駆動型の内視鏡は、プロセッサとの間で無線通信を行う無線通信部を内蔵し、撮像素子によって撮像した画像データを無線で伝送するように構成されている。
【0004】
無線通信によって転送可能なデータ量(以下、転送可能データ量とも記す。)は、無線通信の仕様で規定されている。バッテリ駆動型の内視鏡を備えた内視鏡装置では、無線伝送する画像データのデータ量が転送可能データ量以下になるように、画像データを圧縮して伝送している。
【0005】
画像データの圧縮率を大きくして、画像データのデータ量を少なくすると、画像データを安定して無線伝送することができると共に、内視鏡の消費電力を低減することができる。しかし、画像データの圧縮率を大きくすると、画像データの画質が劣化してしまう。従って、高画質の画像データが求められる場合には、圧縮率を小さくする等、必要に応じて圧縮率を制御することが望ましい。
【0006】
日本国特許第6192882号公報には、術者が内視鏡手技を行おうとするシーンの状態に基づいて、画像データの圧縮率を制御する内視鏡システムが記載されている。日本国特許第6253600号公報には、撮像素子の撮像特性や被写体の分光特性によって決定される画素値の分布特性に基づいて、画像データの圧縮率を制御する内視鏡システムが記載されている。
【0007】
ところで、被写体の撮像と画像データの生成を連続的に行うと、被写体を正常に撮像することができずに、例えば白飛びのような、被写体の情報が十分に含まれていない画像データが生成されることがある。
【0008】
また、圧縮率を制御する方法としては、例えば、日本国特許第6192882号公報に記載された内視鏡システムのように、前フレームの圧縮率を、前フレームの圧縮データのデータ量と、目標とする圧縮データのデータ量との差に応じて補正して、次フレームの圧縮率を算出する方法がある。
【0009】
一般的に、被写体の情報が十分に含まれていない画像データを圧縮して圧縮データを生成すると、正常に撮像された画像データに比べて、圧縮データのデータ量は小さくなる。そのため、上記の圧縮率制御方法では、次フレームにおいて被写体の情報が十分に含まれる場合には、圧縮率を算出する際の補正が大きくなり、次フレームの圧縮率は小さくなる。その結果、次フレームの圧縮データのデータ量は大きくなる。もし、圧縮データのデータ量が転送可能データ量よりも大きくなると、画像データの伝送が途絶してしまう。また、上記の圧縮率制御方法では、圧縮データのデータ量が転送可能データ量以下になるような圧縮率が設定されるまで、ある程度のフレーム数が必要である。そのため、上記の圧縮率制御方法では、画像データの伝送が途絶した状態が続き、その結果、表示部に被写体の画像が表示されない状態が続くという問題が発生する。
【0010】
日本国特許第6192882号公報および日本国特許第6253600号公報のいずれにおいても、画像データに含まれる被写体の情報量が少なくなり、圧縮データのデータ量が転送可能データ量よりも大きくなることについては考慮されていない。そのため、日本国特許第6192882号公報および日本国特許第6253600号公報では、上記の問題が発生することを防止することができない。
【0011】
なお、上記の問題は、画像データを無線で伝送する場合に限らず、画像データを有線で伝送する場合にも当てはまる。
【0012】
そこで、本発明は、表示部に被写体の画像が表示されない状態が続くことを防止することができる内視鏡装置および内視鏡ならびに内視鏡装置の作動方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の内視鏡装置は、被写体を撮像して画像データを生成する撮像部と、圧縮後のデータ量を規定する値である圧縮パラメータを用いて前記画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮処理を行う圧縮処理制御部と、前記画像データと前記圧縮データを記憶する記憶部と、前記圧縮データに基づいて前記圧縮パラメータを設定するパラメータ設定部と、前記画像データに対応する表示画像を表示する表示部と、前記画像データに含まれる前記被写体の情報量を検出する情報量検出部と、前記情報量に対応する判定値が所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行う判定部とを備え、前記被写体の撮像と前記画像データの生成は、連続的に複数回行われ、前記判定処理は、前記画像データが生成されるたびに行われ、前記記憶部は、前記判定処理の結果を記憶し、前記圧縮パラメータと前記表示画像は、前記判定処理の結果に基づいて決定され、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像であり、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値未満のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像、または、前回の前記判定処理の結果に基づいて決定された画像である。
本発明の一態様の内視鏡は、被写体を撮像して画像データを生成する撮像部と、圧縮後のデータ量を規定する値である圧縮パラメータを用いて前記画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮処理を行う圧縮処理制御部と、前記画像データと前記圧縮データを記憶する記憶部と、前記圧縮データに基づいて前記圧縮パラメータを設定するパラメータ設定部と、前記画像データに含まれる前記被写体の情報量を検出する情報量検出部と、前記情報量に対応する判定値が所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行う判定部と、前記記憶部に記憶された前記圧縮データを送信する無線通信部とを備え、前記無線通信部は、前記画像データに対応する表示画像を表示する表示部が接続されたプロセッサに対して前記圧縮データを送信し、前記被写体の撮像と前記画像データの生成は、連続的に複数回行われ、前記判定処理は、前記画像データが生成されるたびに行われ、前記記憶部は、前記判定処理の結果を記憶し、前記圧縮パラメータと前記表示画像は、前記判定処理の結果に基づいて決定され、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像であり、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値未満のときには、前記表示画像は、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像、または、前回の前記判定処理の結果に基づいて決定された画像である。
本発明の一態様の内視鏡装置の作動方法は、内視鏡の撮像部で取得した画像データから表示画像を生成する内視鏡装置の作動方法であって、前記内視鏡装置は、圧縮後のデータ量を規定する値である圧縮パラメータを用いて前記画像データを圧縮して圧縮データを生成する圧縮処理を行い、前記画像データと前記圧縮データを記憶し、前記圧縮データに基づいて前記圧縮パラメータを設定し、前記画像データに含まれる被写体の情報量を検出し、前記情報量に対応する判定値が所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行い、前記判定処理の結果を記憶し、前記内視鏡装置による前記被写体の撮像と前記画像データの生成は、連続的に複数回行われ、前記判定処理は、前記画像データが生成されるたびに行われ、前記圧縮パラメータと前記表示画像は、前記判定処理の結果に基づいて決定され、前記内視鏡装置は、更に、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値以上のときには、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像を前記表示画像として表示部に表示し、前記判定処理において前記判定値が前記所定の閾値未満のときには、今回の前記判定処理が行われる際に生成された前記画像データに対応する画像、または、前回の前記判定処理の結果に基づいて決定された画像を前記表示画像として前記表示部に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の全体構成を示す説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の内視鏡およびプロセッサの構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態における信号処理部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図2に示した内視鏡における画像データ処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図2に示したプロセッサにおける画像データ処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施の形態における第1の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の第1の実施の形態における第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】比較例の内視鏡装置における入力画像、表示画像および圧縮データのデータ量を模式的に示す説明図である。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置における入力画像、表示画像および圧縮データのデータ量を模式的に示す説明図である。
【
図10】
図2に示した内視鏡における画像データ処理手順の変形例を示すフローチャートである。
【
図11】
図2に示したプロセッサにおける画像データ処理手順の変形例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に係わる内視鏡装置の内視鏡およびプロセッサの構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態における信号処理部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図12に示した内視鏡における画像データ処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図12に示したプロセッサにおける画像データ処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
(内視鏡装置の構成)
始めに、本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡装置の概略の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係わる内視鏡装置1の全体構成を示す説明図である。本実施の形態に係わる内視鏡装置1は、バッテリ駆動型の携帯型内視鏡であるワイヤレス内視鏡2を備えたワイヤレス内視鏡装置である。以下、ワイヤレス内視鏡2を単に内視鏡2と記す。
【0017】
内視鏡装置1は、更に、内視鏡2に対して物理的に分離されたプロセッサ3と、プロセッサ3に接続された表示部としてのモニタ4とを備えている。プロセッサ3は、内視鏡2とは無線によって接続され、後述する所定の画像処理を行う。モニタ4は、画像処理の結果、具体的には内視鏡2によって撮像された画像等を表示する。
【0018】
なお、
図1に示したように、手術室では、カート6上に、プロセッサ3とモニタ4と各種医療機器が載置される。カート6上に載置される医療機器としては、例えば、電気メス装置、気腹装置およびビデオレコーダ等の装置類や、二酸化炭素を充填したガスボンベ等がある。
【0019】
内視鏡2は、体腔内に挿入される細長の挿入部2Aと、挿入部2Aの基端部に設けられた操作部2Bと、被写体を撮像して画像データを生成する撮像部21とを有している。撮像部21は、挿入部2Aの先端部に設けられたCCDまたはCMOS等の図示しない撮像素子を含んでいる。
【0020】
次に、
図2を参照して、内視鏡2およびプロセッサ3の構成について詳しく説明する。
図2は、内視鏡2およびプロセッサ3の構成を示す機能ブロック図である。
【0021】
(内視鏡の構成)
始めに、内視鏡2の構成について説明する。
図2に示したように、内視鏡2は、前記撮像部21と、内視鏡制御部22と、圧縮処理制御部23と、記憶部24と、第1の無線通信部25と、アンテナ26と、信号処理部27と、バッテリ28と、光源部29とを有している。
【0022】
バッテリ28は、操作部2B(
図1参照)に装着することができるように構成されている。また、バッテリ28は、操作部2Bに装着された後は、電源部として、撮像部21、内視鏡制御部22、圧縮処理制御部23、記憶部24、第1の無線通信部25、信号処理部27および光源部29に対して電力を供給することができるように構成されている。
【0023】
内視鏡制御部22は、内視鏡2内の各回路部を制御すると共に、バッテリ28を制御して内視鏡2内の各部に電力を供給させる。内視鏡制御部22は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUと記す。)またはデジタルシグナルプロセッサ(以下、DSPと記す。)によって構成されている。
【0024】
光源部29は、操作部2B(
図1参照)に設けられた発光ダイオード等の図示しない発光素子によって構成され、体腔内を照明する照明光を発生する。この照明光は、図示しないライトガイドによって挿入部2A(
図1参照)の先端に導かれ、挿入部2Aの先端に設けられた図示しないレンズを介して被写体に照射される。被写体は、例えば、被検体内の患部等の部位である。
【0025】
撮像部21の撮像素子の撮像面には、上記の照明光による被写体からの戻り光が結像する。撮像部21は、光電変換によって被写体光学像に基づく画像データを生成し、この画像データを圧縮処理制御部23と後述する情報量検出部に出力する。
【0026】
圧縮処理制御部23は、撮像部21が生成した画像データに対して所定の圧縮処理を行って圧縮データを生成する圧縮処理を行う。記憶部24は、圧縮データを記憶するための所定の大きさの記憶容量を有する圧縮データ記憶部24Aを含んでいる。本実施の形態では、記憶容量は一定である。圧縮処理制御部23は、例えば、CPUまたはDSPによって構成されている。記憶部24は、内視鏡2に設けられた、RAM等の書き換え可能な記憶素子の少なくとも一部によって構成されている。圧縮処理の内容については、後で説明する。
【0027】
第1の無線通信部25は、無線で送信する信号を生成する図示しない無線送信回路と、無線で受信した信号を復調する図示しない無線受信回路とを含み、アンテナ26を介して、プロセッサ3との間で無線を用いて所定の信号を送受信する。上記所定の信号には、圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データと、後述する転送可能データ量が含まれる。なお、第1の無線通信部25は、複数の帯域、例えば、60GHz帯と5GHz帯を用いて無線通信ができるように構成されていてもよい。60GHz帯は、例えば圧縮データを送受信するために用いられる。5GHz帯は、例えば圧縮データ以外の情報を送受信するために用いられる。
【0028】
(信号処理部の構成)
ここで、
図3を参照して、信号処理部27の構成について説明する。
図3は、信号処理部27の構成を示す機能ブロック図である。信号処理部27は、例えば、CPUまたはDSPによって構成されている。本実施の形態では、信号処理部27は、情報量検出部27Aと、判定部27Bと、パラメータ設定部27Cとを含んでいる。なお、信号処理部27は内視鏡2の一部であることから、内視鏡2に情報量検出部27A、判定部27Bおよびパラメータ設定部27Cが設けられているとも言える。
【0029】
情報量検出部27Aには、撮像部21が撮像した画像データが入力される。情報量検出部27Aは、画像データに含まれる被写体の情報量を検出すると共に、被写体の情報量を判定部27Bに出力する。判定部27Bは、被写体の情報量に基づいて、所定の判定処理を行うと共に、判定結果を記憶部24とパラメータ設定部27Cに出力する。記憶部24は、判定結果を記憶する。情報量の検出方法と、判定処理については、後で詳しく説明する。
【0030】
パラメータ設定部27Cは、判定部27Bの判定結果と圧縮データ記憶部24A(
図2参照)に記憶された圧縮データに基づいて、圧縮処理制御部23において用いられる圧縮パラメータを設定する。パラメータ設定部27Cは、第1の圧縮パラメータ生成部27C1と、第2の圧縮パラメータ生成部27C2と、圧縮パラメータ判断部27C3とを含んでいる。
【0031】
第1の圧縮パラメータ生成部27C1と第2の圧縮パラメータ生成部27C2は、それぞれ、圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データのデータ量を取得することができるように構成されている。第1の圧縮パラメータ生成部27C1は、第1の暫定圧縮パラメータQ1を生成すると共に、第1の暫定圧縮パラメータQ1を圧縮パラメータ判断部27C3に出力する。第2の圧縮パラメータ生成部27C2は、第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成すると共に、第2の暫定圧縮パラメータQ2を圧縮パラメータ判断部27C3に出力する。
【0032】
圧縮パラメータ判断部27C3は、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2を比較して、これらのうちのいずれか一方を、圧縮処理において用いられる圧縮パラメータとして選択し、選択した圧縮パラメータを設定パラメータQ3として設定する。圧縮パラメータ判断部27C3は、設定パラメータQ3を圧縮処理制御部23に出力し、選択された圧縮パラメータを記憶部24に出力する。記憶部24は、選択された圧縮パラメータを記憶する。設定パラメータQ3の設定方法については、後で説明する。
(プロセッサの構成)
次に、プロセッサ3の構成について説明する。
図2に示したように、プロセッサ3は、プロセッサ制御部31と、無線受信機32と、画像処理部33と、ビデオ出力部34と、ユーザインタフェース部(以下、ユーザIF部と記す。)35と、記憶部36と、転送可能データ量算出部37とを有している。
【0033】
無線受信機32は、プロセッサ3に内蔵されていてもよいし、プロセッサ3の本体とは別体に構成されていてもよい。後者の場合には、無線受信機32は、図示しないコネクタによってプロセッサ3の本体に接続されるように構成される。
図1には、無線受信機32がプロセッサ3の本体とは別体に構成された例を示している。
【0034】
無線受信機32は、第2の無線通信部32Aと、アンテナ32Bとを含んでいる。なお、無線受信機32はプロセッサ3の一部であることから、プロセッサ3に第2の無線通信部32Aが設けられているとも言える。
【0035】
第2の無線通信部32Aは、無線で送信する信号を生成する図示しない無線送信回路と、無線で受信した信号を復調する図示しない無線受信回路とを含み、アンテナ32Bを介して、内視鏡2との間で無線を用いて所定の信号を送受信する。上記所定の信号には、第1の無線通信部25が送信した圧縮データと、後述する転送可能データ量が含まれる。なお、第2の無線通信部32Aは、第1の無線通信部25と同様に、複数の帯域、例えば、60GHz帯と5GHz帯を用いて無線通信ができるように構成されていてもよい。
【0036】
記憶部36は、所定の大きさの記憶容量を有し、第2の無線通信部32Aが受信した圧縮データと、後述する伸長された画像データを記憶する。記憶部36は、プロセッサ3に設けられた、RAM等の書き換え可能な記憶素子の少なくとも一部によって構成されている。
【0037】
画像処理部33は、記憶部36から圧縮データを読み出して、圧縮データに対して所定の画像処理を行う。具体的には、画像処理部33は、圧縮データを伸長して画像データを生成する。以下、画像処理部33によって生成される圧縮されていない画像データを、伸長された画像データと言う。
【0038】
画像処理部33は、伸長された画像データを、ビデオ出力部34を介してモニタ4に出力する。ビデオ出力部34は、伸長された画像データをモニタ4において表示可能なフォーマットに変換する。モニタ4は、伸長された画像データに対応する表示画像を表示する。
【0039】
また、画像処理部33は、伸長された画像データを、記憶部36に出力してもよい。この場合、記憶部36は、伸長された画像データを記憶する。
【0040】
ユーザIF部35は、ユーザ操作を受け付けるインタフェースである。具体的には、ユーザIF部35は、例えば、フロントパネルおよび制御系の各種ボタン等によって構成され、ユーザ操作に基づく操作信号をプロセッサ制御部31に対して出力する。ユーザ操作としては、例えば、内視鏡2の観察モードの指定や、画像表示に関する設定や、後述する圧縮パラメータの初期値の設定がある。なお、内視鏡2の観察モードは、内視鏡2にユーザIF部を設け、プロセッサ3のユーザIF部35と内視鏡2のユーザIF部の少なくとも一方において指定できるように構成されていてもよい。
【0041】
プロセッサ制御部31は、プロセッサ3内の各回路部を制御すると共に、図示しない電源部を制御して、プロセッサ3内の各部に電源を供給させる。また、プロセッサ制御部31は、ユーザIF部35から入力される操作信号に基づいて、内視鏡2とプロセッサ3との間の無線通信を介して、内視鏡2に設けられた内視鏡制御部22に対して各種指示を与えることが可能である。
【0042】
転送可能データ量算出部37は、画像データを伝送する伝送経路における転送可能なデータ量である転送可能データ量を逐次的に算出し、算出した転送可能データ量を、内視鏡2とプロセッサ3との間の無線通信を介して、内視鏡2の記憶部24に出力する。記憶部24は、転送可能データ量を記憶する。
【0043】
転送可能データ量は、例えば、1フレーム分の画像データを送信する時間の間に転送することができるデータ量で規定される。本実施の形態では、伝送経路は、アンテナ26とアンテナ32Bの間に形成される無線による伝送経路を含んでいる。
【0044】
無線通信における転送可能データ量は、無線通信の仕様で規定される他に、無線通信の環境に依存して変化する。本実施の形態では、転送可能データ量算出部37は、無線通信の環境に基づいて、転送可能データ量を算出する。具体的には、例えば、内視鏡2とプロセッサ3との間で、データ量を変化させながら算出用データを送受信させ、送受信に成功した算出用データのデータ量から、転送可能データ量を算出してもよい。なお、算出用データは、撮像部21が生成した画像データであってもよい。この場合、画像処理部33と転送可能データ量算出部37は、画像処理部33によって伸長された画像データのデータ量が、転送可能データ量算出部37に出力されるように構成される。
【0045】
プロセッサ制御部31、画像処理部33および転送可能データ量算出部37は、それぞれ、例えばCPUまたはDSPによって構成されている。
【0046】
(内視鏡における画像データ処理)
次に、
図2ないし
図4を参照して、内視鏡2における画像データ処理手順について説明する。
図4は、内視鏡2における画像データ処理手順を示すフローチャートである。内視鏡2における画像データ処理は、圧縮処理制御部23おける圧縮処理と、情報量検出部27Aにおける被写体の情報量の検出処理と、判定部27Bにおける判定処理と、パラメータ設定部27Cにおけるパラメータ設定処理を含んでいる。
【0047】
内視鏡2における画像データ処理は、内視鏡制御部22、圧縮処理制御部23および信号処理部27によって実行される。また、内視鏡2における画像データ処理は、撮像処理の開始を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されることによって開始され、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されるまでの間、
図4に示した一連の処理が繰り返し実行される。本実施の形態では、撮像部21によって1つの画像データが生成されるたびに、上記一連の処理が1回実行される。なお、操作信号は、例えば、内視鏡2に設けられた図示しないユーザIF部またはプロセッサ3に設けられたユーザIF部35から出力される。
【0048】
内視鏡2における画像データ処理では、まず、内視鏡制御部22は、内視鏡2とプロセッサ3との間において無線通信の接続を確立する(ステップS11)。なお、N回目(Nは2以上の整数)に実行される画像データ処理では、無線通信の接続を確立する処理の代わりに、無線通信の接続が維持されているかを確認し、無線通信の接続が維持されていない場合には、無線通信の接続を確立する処理を実行してもよい。無線通信の接続が維持されている場合には、無線通信の接続を確立する処理を省略してもよい。
【0049】
次に、圧縮処理制御部23は、後で実行されるステップS19A,S19Bによって設定された設定パラメータQ3を取得する(ステップS12)。設定パラメータQ3は、パラメータ設定部27Cから直接取得してもよいし、記憶部24から取得してもよい。なお、1回目に実行される画像データ処理では、圧縮処理制御部23は、設定パラメータQ3の代わりに、圧縮パラメータの初期値Qiを取得する。初期値Qiは、ユーザIF部35に入力された設定値を用いてもよいし、記憶部24に記憶された設定値を用いてもよい。
【0050】
次に、内視鏡制御部22は、撮像部21を制御して、バッテリ28から供給された電力を電源として、被写体を撮像し画像データを生成する(ステップS13,S14)。画像データは、圧縮処理制御部23と情報量検出部27Aに出力される。画像データは、例えばRAWデータであってもよい。
【0051】
次に、圧縮処理制御部23は、画像データを圧縮して圧縮データを生成する画像圧縮処理を行う(ステップS15)。圧縮処理制御部23は、生成した圧縮データを圧縮データ記憶部24Aに出力する。圧縮データ記憶部24Aは、圧縮データを記憶する。次に、内視鏡制御部22は、第1の無線通信部25を制御して、プロセッサ3に対して、圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データを送信する(ステップS16)。ステップS15,S16の処理については、後で詳しく説明する。
【0052】
次に、信号処理部27の情報量検出部27Aは、画像データに含まれる被写体の情報量の検出処理を行う(ステップS17)。情報量検出部27Aは、検出した情報量を記憶部24に出力してもよい。記憶部24は、検出した情報量を記憶する。
【0053】
ここで、被写体の情報量について詳しく説明する。被写体の情報量とは、画像データに含まれる正常に撮像された被写体の画像情報の量であり、正常に撮像された被写体以外の画像情報の量が多くなるに従って少なくなる。被写体の情報量は、例えば、被検体の患部(被写体)が全く撮像されなかった場合を0とし、被検体の患部の全体が正常に撮像された場合を1とし、0以上1以下の値で表してもよい。正常に撮像された被写体以外の画像情報としては、例えば、白飛び等が生じて被写体を撮像することができなかった画像情報や、液体や煙等が生じたりピントが外れたりすることで被写体がぼやけて撮像された画像情報がある。
【0054】
本実施の形態では、被写体の情報量を、画像データに含まれる色情報、画像データの解像度および圧縮データのデータ量のうちの少なくとも1つに基づいて規定している。画像データに含まれる色情報とは、例えば、画像の彩度やコントラスト等の情報である。白飛び等が生じることによって被写体を撮像することができなかった画像情報は、彩度やコントラストが失われた画像情報である。従って、彩度やコントラスト等の色情報によって、被写体の情報量と、正常に撮像された被写体以外の情報量を推定することができる。被写体の情報量を画像データに含まれる色情報に基づいて規定する場合、情報量検出部27Aは、数値化した色情報と対応関係を有する値を、被写体の情報量として検出する。
【0055】
また、画像データの解像度とは、画像データの緻密さを表す指標である。画像データの解像度は、例えばエッジ量で表すことができる。エッジ量とは、画像の明るさが不連続に変化する部分の量である。被写体がぼやけて撮像された画像情報では、エッジ量は減少し、解像度も低下する。従って、解像度によって、被写体の情報量と、正常に撮像された被写体以外の情報量を推定することができる。被写体の情報量を画像データの解像度に基づいて規定する場合、情報量検出部27Aは、解像度と対応関係を有する値を、被写体の情報量として検出する。
【0056】
また、被写体を撮像することができなかった画像や、被写体がぼやけて撮像された画像は、正常に撮像された画像に比べて単調になる。このように被写体の情報量が少ない画像データを圧縮して圧縮データを生成すると、圧縮データのデータ量は、正常に撮像された画像データを圧縮して生成した圧縮データのデータ量に比べて小さくなる。従って、圧縮データのデータ量によって、被写体の情報量と、正常に撮像された被写体以外の情報量を推定することができる。被写体の情報量を圧縮データのデータ量に基づいて規定する場合、情報量検出部27Aは、圧縮データのデータ量と対応関係を有する値を、被写体の情報量として検出する。
【0057】
ところで、圧縮パラメータは、圧縮データのデータ量と対応関係を有している。被写体を正常に撮像することができなかった画像データに基づいて圧縮パラメータを生成する、すなわち少ないデータ量の圧縮データに基づいて圧縮パラメータを生成すると、圧縮パラメータの値は小さくなる。言い換えると、圧縮パラメータの値が著しく小さい場合や、前回の圧縮パラメータに比べて今回の圧縮パラメータの値が著しく小さくなる場合には、画像データに含まれる被写体の情報量が少ない、すなわち被写体を正常に撮像することができなかった場合であると推定することができる。従って、被写体の情報量を圧縮データのデータ量に基づいて規定する場合、情報量検出部27Aは、後述する圧縮パラメータの生成処理と同様の方法によって圧縮パラメータを生成し、この圧縮パラメータと対応関係を有する値を、被写体の情報量として検出してもよい。
【0058】
なお、前回の圧縮データのデータ量が転送可能データ量よりも大きい場合には、今回の圧縮パラメータの値は、被写体を正常に撮像することができたとしても、前回の圧縮パラメータよりも小さくなる。例えば、前回の圧縮データのデータ量が著しく大きい場合には、前回の圧縮パラメータと今回の圧縮パラメータとの差も著しく大きくなる。従って、前回の圧縮パラメータと今回の圧縮パラメータとを比較して被写体の情報量を検出する場合、前回の圧縮データのデータ量が著しく大きい場合には、例外的に、前回の圧縮パラメータと今回の圧縮パラメータとを比較して被写体の情報量を検出しないようにする。
【0059】
なお、画像データに含まれる色情報と画像データの解像度は、情報量検出部27Aが画像データを解析することによって取得することができる。また、圧縮データのデータ量は、情報量検出部27Aが圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データのデータ量を読み出すことによって取得することができる。被写体の情報量を圧縮データのデータ量に基づいて規定する場合、情報量検出部27Aと圧縮データ記憶部24Aは、圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データのデータ量を取得することができるように構成される。
【0060】
内視鏡2における画像データ処理では、次に、信号処理部27の判定部27Bは、情報量検出部27Aによって検出された被写体の情報量と対応関係を有する判定値が、所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行う(ステップS18)。判定値は、情報量そのものであってもよいし、今回の判定処理(N回目に実行される判定処理)を行う際に検出された情報量と前回の判定処理(N-1回目に実行される判定処理)を行う際に検出された情報量との差であってもよい。後者の場合、判定部27Bは、記憶部24から前回の判定処理を行う際に生成された情報量を読み出して、判定値を生成する。また、後者の場合、1回目に実行される判定処理では、前回の判定処理を行う際に生成された情報量の代わりに、記憶部24に記憶された所定の値を用いる。判定部27Bは、判定結果を、記憶部24とパラメータ設定部27Cに出力する。
【0061】
判定処理において、判定値が所定の閾値以上のとき(YES)には、被写体の情報量が十分である、すなわち被写体を正常に撮像することができたと判定することができる。一方、判定処理において、判定値が所定の閾値未満のとき(NO)には、被写体の情報量が不十分である、すなわち被写体を正常に撮像することができなかったと判定することができる。
【0062】
次に、信号処理部27のパラメータ設定部27Cは、判定部27Bの判定結果に基づいて、パラメータ設定処理を行う。判定値が所定の閾値以上のとき(YES)には、パラメータ設定部27Cは、第1の設定処理を行い(ステップS19A)、判定値が所定の閾値未満のとき(NO)には、パラメータ設定部27Cは、第2の設定処理を行う(ステップS19B)。
【0063】
第1の設定処理では、パラメータ設定部27Cは、今回の判定処理(N回目に実行される判定処理)を行う際に生成された画像データに対応する圧縮データに基づいて圧縮パラメータを生成し、生成された圧縮パラメータを設定パラメータQ3として設定する。本実施の形態では、圧縮パラメータ判断部27C3によって選択された圧縮パラメータが、上記の生成された圧縮パラメータに対応する。パラメータ設定部27Cは、生成された圧縮パラメータを記憶部24に出力する。記憶部24は、圧縮パラメータが生成されるたびに、生成された圧縮パラメータを記憶する。圧縮パラメータの生成処理については、後で説明する。
【0064】
第2の設定処理では、パラメータ設定部27Cは、前回の判定処理(N-1回目に実行された判定処理)の結果に基づいて、圧縮パラメータを記憶部24から読み出して、読み出した圧縮パラメータを、設定パラメータQ3として設定する。なお、1回目の判定処理において判定値が所定の閾値未満のときには、第2の設定処理では、パラメータ設定部27Cは、記憶部24に記憶された所定の設定値を読み出して、この設定値を設定パラメータQ3として設定する。設定値は、初期値Qiと同じであってもよいし、異なっていてもよい。パラメータ設定部27Cは、判定値が所定の閾値未満のときには、圧縮パラメータを生成する処理を行わない。
【0065】
なお、前回の判定処理(N-1回目に実行された判定処理)において判定値が所定の閾値以上の場合には、N-1回目に生成された画像データに含まれる被写体の情報量が十分である、すなわちN-1回目には被写体を正常に撮像することができたと判定することができる。この場合、パラメータ設定部27Cは、前回の判定処理を行う際に生成された画像データに対応する圧縮データに基づいて生成された圧縮パラメータを、設定パラメータQ3として設定する。前回の判定処理において判定値が所定の閾値未満の場合には、N-1回目に生成された画像データに含まれる被写体の情報量が不十分である、すなわちN-1回目には被写体を正常に撮像することができなかったと判定することができる。この場合、パラメータ設定部27Cは、前回以前の判定処理であって、判定値が所定の閾値以上となる判定処理を行う際に生成された画像データに対応する圧縮パラメータを、設定パラメータQ3として設定する。
【0066】
内視鏡2における画像データ処理では、ステップS19AまたはステップS19Bの後、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されていない場合には、ステップS11に戻り、上記操作信号が内視鏡制御部22に入力された場合には、内視鏡2における画像データ処理を終了する。
【0067】
なお、ここまでは、圧縮処理制御部23おける圧縮処理と、情報量検出部27Aにおける被写体の情報量の検出処理と、判定部27Bにおける判定処理と、パラメータ設定部27Cにおけるパラメータ設定処理を一連の処理として実行する例について説明してきた。しかし、内視鏡2における画像データ処理の手順は、
図4に示した例に限られない。例えば、ステップS11からステップS16までの一連の処理と、ステップS17からステップS19AまたはステップS19Bまでの一連の処理を、別々に実行してもよい。この場合、ステップS17からステップS19AまたはステップS19Bまでの一連の処理は、撮像部21が画像データを生成するたびに1回実行される。
【0068】
また、内視鏡2における画像データ処理手順における各ステップの実行順序は、
図4に示した例に限られない。例えば、無線通信の接続を確立する処理(ステップS11)と、設定パラメータQ3を取得する処理(ステップS12)は、被写体を撮像し画像データを生成する処理(ステップS13,S14)の後に実行されてもよい。この場合、設定パラメータQ3を取得する処理の後に、画像圧縮処理(ステップS15)が実行される。
【0069】
(圧縮処理および送信処理)
ここで、ステップS15,S16における一連の処理について詳しく説明する。本実施の形態では、圧縮処理制御部23は、画像データに対して複数の単位領域毎に圧縮処理を行い、圧縮データとして、1つの画像データから複数の圧縮部分を生成する。1つの画像データは、1フレーム分の画像に対応する。
【0070】
図4に示した一連の処理がN回実行される場合、圧縮処理もN回実行される。N回目に実行される圧縮処理では、圧縮処理制御部23は、まず、圧縮パラメータQを、ステップS12において取得した設定パラメータQ3で更新する。言い換えると、圧縮処理制御部23は、設定パラメータQ3を、新たな圧縮パラメータQとする。なお、1回目に実行される圧縮処理では、圧縮処理制御部23は、初期値Qiを圧縮パラメータQとする。
【0071】
なお、N回目に実行される判定処理(ステップS18)において、判定値が所定の閾値未満のときには、N+1回目に実行されるステップS12では、圧縮処理制御部23は、N+1回目以前に実行されたステップS12において取得した設定パラメータQ3と同じ値の設定パラメータQ3を取得する。この場合、圧縮処理制御部23は、圧縮パラメータQを更新する処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。いずれの場合においても、実質的に、圧縮パラメータQは更新されない。言い換えると、圧縮処理制御部23は、判定値が所定の閾値以上のときには、圧縮パラメータQを設定パラメータQ3で更新し、判定値が所定の閾値未満のときには、圧縮パラメータQを更新しない。
【0072】
ステップS15,S16における一連の処理では、次に、圧縮処理制御部23は、画像データを複数の領域に分割する。画像データを複数の領域に分割する方法としては、例えば、画像データに対してラスタスキャンを行う方法がある。次に、圧縮処理制御部23は、圧縮パラメータQを用いて、画像データに対して単位領域毎に圧縮処理を行い、1つの画像データから、圧縮データとして、複数の圧縮部分を生成する。
【0073】
圧縮パラメータQは、圧縮後のデータ量を規定する値である。圧縮フォーマットとしては、任意の画像圧縮フォーマットを使用することができる。圧縮パラメータQは、圧縮フォーマットにおける圧縮率を規定するパラメータと対応関係を有している。本実施の形態では、圧縮パラメータQの値が大きくなるに従って圧縮率が大きくなる、すなわち圧縮パラメータQの値が大きくなるに従って圧縮後のデータ量が小さくなるように規定されている。
【0074】
なお、圧縮後のデータ量は、圧縮パラメータQの値だけではなく、単位領域に含まれる画像情報に違いによって変化する。すなわち、圧縮パラメータQの値が同じであり且つ単位領域のデータ量が同じであっても、単位領域に含まれる画像情報が互いに異なる場合には、複数の圧縮部分の各々のデータ量は互いに異なる。
【0075】
ステップS15,S16における一連の処理では、次に、複数の圧縮部分の各々を圧縮データ記憶部24Aに一時保存する。具体的には、圧縮処理制御部23は、圧縮データ記憶部24Aに対して、複数の圧縮部分を順次出力し、圧縮データ記憶部24Aは、出力された複数の圧縮部分の各々を順次記憶する。次に、内視鏡制御部22は、第1の無線通信部25を制御して、圧縮データ記憶部24Aに記憶された複数の圧縮部分の各々を順次読み出して送信する。
【0076】
上述のように、圧縮データ記憶部24Aは、圧縮データ(複数の圧縮部分)を一時的に保存するメモリとして用いられる。なお、第1の無線通信部25は、1つの圧縮部分に対して、複数の単位パケット毎に読み出し処理と送信処理を行う。すなわち、圧縮部分を送信する場合には、まず、第1の無線通信部25は、圧縮データ記憶部24Aから圧縮部分の一部を読み出して無線信号を生成し、この無線信号を送信する。以下、第1の無線通信部25は、圧縮部分の他の複数の部分に対して、順次、同様の処理を行う。
【0077】
(プロセッサにおける画像データ処理)
次に、
図2および
図5を参照して、プロセッサ3における画像データ処理手順について説明する。
図5は、プロセッサ3における画像データ処理手順を示すフローチャートである。
【0078】
プロセッサ3における画像データ処理は、プロセッサ制御部31および画像処理部33によって実行される。また、プロセッサ3における画像データ処理は、内視鏡2における画像データ処理と同様に、撮像処理の開始を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されることによって開始され、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されるまでの間、
図5に示した一連の処理が繰り返し実行される。本実施の形態では、撮像部21によって1つの画像データが生成されるたびに、上記一連の処理が1回実行される。
【0079】
プロセッサ3における画像データ処理では、まず、プロセッサ制御部31は、内視鏡2とプロセッサ3との間において無線通信の接続を確立する(ステップS21)。なお、N回目(Nは2以上の整数)に実行される画像データ処理では、無線通信の接続を確立する処理の代わりに、無線通信の接続が維持されているかを確認し、無線通信の接続が維持されていない場合には、無線通信の接続を確立する処理を実行してもよい。無線通信の接続が維持されている場合には、無線通信の接続を確立する処理を省略してもよい。
【0080】
次に、プロセッサ制御部31は、第2の無線通信部32Aを制御して、第1の無線通信部25によって送信された圧縮データすなわち複数の圧縮部分を受信する(ステップS22)。受信した複数の圧縮部分(圧縮データ)は、記憶部36に記憶される。
【0081】
次に、画像処理部33は、記憶部36から圧縮データを読み出して、圧縮データに所定の画像処理を行う(ステップS23)。具体的には、画像処理部33は、複数の圧縮部分の各々に対して伸長処理を行い、伸長されたデータを結合することによって、圧縮されていない画像データ(伸長された画像データ)を生成する。
【0082】
次に、画像処理部33は、伸長された画像データを、モニタ4に出力する(ステップS24)。なお、画像処理部33は、伸長された画像データを、記憶部36に出力してもよい。この場合、記憶部36は、伸長された画像データを記憶する。
【0083】
次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されていない場合には、ステップS21に戻り、上記操作信号がプロセッサ制御部31に入力された場合には、プロセッサ3における画像データ処理を終了する。
【0084】
(圧縮パラメータの生成処理)
次に、圧縮パラメータの生成処理について説明する。本実施の形態では、圧縮パラメータの生成処理は、第1の暫定圧縮パラメータの生成処理と、第2の暫定圧縮パラメータの生成処理と、圧縮パラメータの選択処理とを含んでいる。第1の暫定圧縮パラメータ生成処理と第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の実行順序は、任意である。圧縮パラメータの選択処理は、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理と第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の療法が実行された後に実行される。
【0085】
(第1の暫定圧縮パラメータ生成処理)
始めに、
図2、
図3および
図6を参照して、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理について説明する。
図6は、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。第1の暫定圧縮パラメータ生成処理は、第1の圧縮パラメータ生成部27C1によって実行される。第1の暫定圧縮パラメータ生成処理では、まず、第1の圧縮パラメータ生成部27C1は、圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データのデータ量を取得する(ステップS31)。圧縮データのデータ量は、複数の圧縮部分の各々のデータ量の総和である。
【0086】
次に、第1の圧縮パラメータ生成部27C1は、圧縮データのデータ量と対応関係を有する算出データ量V1を算出する(ステップS32)。本実施の形態では、圧縮データのデータ量を、算出データ量V1とする。
【0087】
次に、第1の圧縮パラメータ生成部27C1は、記憶部24から転送可能データ量を取得し、この転送可能データ量に基づいて、第1の目標データ量T1を規定する(ステップS33)。第1の目標データ量T1は、例えば、転送可能データ量から所定の値を減じたり、転送可能データ量に1未満の所定の係数を掛けたりすることによって、転送可能データ量よりも小さくなるように規定される。なお、第1の目標データ量T1は、転送可能データ量に加えて、画像データの各色信号の画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに基づいて規定されてもよい。画素値の分布特性は、撮像素子の撮像特性や被写体の分光特性によって決定される。
【0088】
次に、第1の圧縮パラメータ生成部27C1は、算出データ量V1が第1の目標データ量T1以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータを算出する第1の演算によって、第1の暫定圧縮パラメータQ1を生成する(ステップS34)。第1の演算は、例えば下記の式(1)で表される。
【0089】
Q1(n)=Q3(n-1)+A1*(V1-T1)/T1 …(1)
なお、式(1)において、Q1(n)は、
図4に示した第1の設定処理(ステップS19A)がn回(nは1以上の整数)実行される場合に、n回目に算出される第1の暫定圧縮パラメータQ1を表している。また、Q3(n-1)は、n-1回目に設定された設定パラメータQ3を表している。Q3(n-1)は、n-1回目に算出された第1の暫定圧縮パラメータQ1またはn-1回目に算出された第2の暫定圧縮パラメータQ2に対応する。第1の圧縮パラメータ生成部27C1は、記憶部24からQ3(n-1)を読み出して、Q1(n)を算出する。また、A1は、正の定数である。
【0090】
なお、1回目に算出される第1の暫定圧縮パラメータQ1(1)は、式(1)におけるQ3(n-1)の代わりに、所定の定数を用いて算出される。所定の定数は、初期値Qiであってもよい。
【0091】
式(1)を用いて算出した第1の暫定圧縮パラメータQ1を用いると、算出データ量V1が第1の目標データ量T1以下になるように圧縮処理を行うことが可能になる理由は、以下の通りである。すなわち、算出データ量V1は、Q3(n-1)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量に相当する。式(1)から理解されるように、算出データ量V1が第1の目標データ量T1よりも大きい場合には、Q1(n)はQ3(n-1)よりも大きくなり、その結果、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量は小さくなる。ここで、A1の値を適切に選択すると、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量を第1の目標データ量T1以下にすることが可能である。本実施の形態では、このようにして、算出データ量V1が第1の目標データ量T1以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータである第1の暫定圧縮パラメータQ1を生成する。
【0092】
なお、式(1)から理解されるように、算出データ量V1が第1の目標データ量T1よりも小さい場合には、Q1(n)はQ3(n-1)よりも小さくなり、その結果、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量は大きくなる。A1の値は、Q1(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の算出データ量が大きくなりすぎないような値が選択される。また、式(1)から理解されるように、算出データ量V1が第1の目標データ量T1と等しい場合には、Q1(n)はQ3(n-1)と等しくなる。
【0093】
第1の暫定圧縮パラメータ生成処理では、次に、第1の圧縮パラメータ生成部27C1は、圧縮パラメータ判断部27C3に対して、第1の暫定圧縮パラメータQ1を出力する(ステップS35)。これにより、第1の暫定圧縮パラメータ生成処理が終了する。
【0094】
なお、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出する方法は、式(1)に示した例に限られない。例えば、式(1)におけるA1の代わりに、画素値の分布特性、内視鏡シーンおよび無線環境のうちの少なくとも1つに依存して変化するパラメータを用いて、第1の暫定圧縮パラメータQ1を算出してもよい。また、算出データ量V1として、圧縮データのデータ量の代わりに、複数の圧縮部分の各々のデータ量の平均値を用いてもよい。
【0095】
(第2の暫定圧縮パラメータ生成処理)
次に、
図2、
図3および
図7を参照して、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理について説明する。
図7は、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理の手順を示すフローチャートである。第2の暫定圧縮パラメータ生成処理は、第2の圧縮パラメータ生成部27C2によって実行される。第2の暫定圧縮パラメータ生成処理では、まず、第2の圧縮パラメータ生成部27C2は、圧縮データ記憶部24Aに記憶された、1つの画像データから生成された複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値V2を取得する(ステップS41)。
【0096】
次に、第2の圧縮パラメータ生成部27C2は、圧縮データ記憶部24Aの記憶容量に基づいて、第2の目標データ量T2を規定する(ステップS42)。第2の目標データ量T2は、例えば、圧縮データ記憶部24Aの記憶容量から所定の値を減じたり、圧縮データ記憶部24Aの記憶容量に1未満の所定の係数を掛けたりすることによって、圧縮データ記憶部24Aの記憶容量よりも小さくなるように規定される。
【0097】
次に、第2の圧縮パラメータ生成部27C2は、最大値V2が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータを算出する第2の演算によって、第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成する(ステップS43)。第2の演算は、例えば下記の式(2)で表される。
【0098】
Q2(n)=Q3(n-1)+A2*(V2-T2)/T2 …(2)
なお、式(2)において、Q2(n)は、
図4に示した第1の設定処理(ステップS19A)がn回(nは1以上の整数)実行される場合に、n回目に算出される第2の暫定圧縮パラメータQ2を表している。また、前述のように、Q3(n-1)は、n-1回目に設定された設定パラメータQ3を表している。第2の圧縮パラメータ生成部27C2は、記憶部24からQ3(n-1)を読み出して、Q2(n)を算出する。また、A2は、正の定数である。
【0099】
なお、1回目に算出される第2の暫定圧縮パラメータQ2(1)は、式(2)におけるQ3(n-1)の代わりに、所定の定数を用いて算出される。所定の定数は、初期値Qiであってもよい。
【0100】
式(2)を用いて算出した第2の暫定圧縮パラメータQ2を用いると、最大値V2が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理を行うことが可能になる理由は、以下の通りである。すなわち、最大値V2は、Q3(n-1)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値に相当する。式(2)から理解されるように、最大値V2が第2の目標データ量T2よりも大きい場合には、Q2(n)はQ3(n-1)よりも大きくなり、その結果、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値は小さくなる。ここで、A2の値を適切に選択すると、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値を第2の目標データ量T2以下にすることが可能である。本実施の形態では、このようにして、最大値V2が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理するための圧縮パラメータである第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成する。
【0101】
なお、式(2)から理解されるように、最大値V2が第2の目標データ量T2よりも小さい場合には、Q2(n)はQ3(n-1)よりも小さくなり、その結果、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値は大きくなる。A2の値は、Q2(n)を圧縮パラメータとして用いた場合の、複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値が大きくなりすぎないような値が選択される。また、式(2)から理解されるように、最大値V2が第2の目標データ量T2と等しい場合には、Q2(n)はQ3(n-1)と等しくなる。
【0102】
第2の暫定圧縮パラメータ生成処理では、次に、第2の圧縮パラメータ生成部27C2は、圧縮パラメータ判断部27C3に対して、第2の暫定圧縮パラメータQ2を出力する(ステップS44)。これにより、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理が終了する。
【0103】
なお、
図7には、第2の暫定圧縮パラメータ生成処理を実行するたびに、第2の目標データ量T2を規定する例を示している。本実施の形態では、第2の目標データ量T2を規定する圧縮データ記憶部24Aの記憶容量は一定である。そのため、本実施の形態では、第2の目標データ量T2を規定する処理(ステップS42)を省略してもよい。
【0104】
(圧縮パラメータの選択処理)
次に、
図3を参照して、圧縮パラメータの選択処理について説明する。圧縮パラメータの選択処理は、圧縮パラメータ判断部27C3によって実行される。圧縮パラメータの選択処理では、まず、圧縮パラメータ判断部27C3は、第1の圧縮パラメータ生成部27C1によって生成された第1の暫定圧縮パラメータQ1と、第2の圧縮パラメータ生成部27C2によって生成された第2の暫定圧縮パラメータQ2を比較する。次に、圧縮パラメータ判断部27C3は、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2のうち、圧縮後のデータ量がより小さくなるパラメータを選択し、選択したパラメータを設定パラメータQ3として設定する。これにより、圧縮パラメータの選択処理が終了する。
【0105】
前述のように、本実施の形態では、圧縮パラメータQは、その値が大きくなるに従って圧縮後のデータ量が小さくなるように規定されている。従って、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2の各々の値が大きくなるに従って、圧縮後のデータ量は小さくなる。そのため、本実施の形態では、圧縮パラメータ判断部27C3における比較は、第1の暫定圧縮パラメータQ1の値と第2の暫定圧縮パラメータQ2の値を比較することによって行われる。また、本実施の形態では、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2のうち、値が大きい方のパラメータが設定パラメータQ3として選択される。
【0106】
なお、ここまでは、圧縮パラメータの生成処理が、第1の暫定圧縮パラメータの生成処理、第2の暫定圧縮パラメータの生成処理および圧縮パラメータの選択処理を含む例について説明してきた。しかし、本実施の形態における圧縮パラメータの生成処理は、上記の例に限られない。例えば、圧縮パラメータの生成処理は、第1の暫定圧縮パラメータの生成処理と同様の処理のみを含んでいてもよい。この場合、パラメータ設定部27Cは、第1の暫定圧縮パラメータQ1と同様の方法によって生成された圧縮パラメータを、設定パラメータQ3として設定する。
【0107】
(作用および効果)
次に、本実施の形態に係わる内視鏡装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態では、被写体の撮像と画像データの生成は、連続的に複数回行われ、判定処理(
図4のステップS18)は、画像データが生成されるたびに行われる。圧縮パラメータは、判定処理の結果に基づいて決定される。これにより、本実施の形態によれば、モニタ4に被写体の画像が表示されない状態が続くことを防止することができる。以下、この効果について、比較例の内視鏡装置と比較しながら説明する。
【0108】
比較例の内視鏡装置では、本実施の形態における情報量検出部27Aと判定部27Bが設けられていない。比較例では、撮像部21が画像データを生成するたびに、この画像データに対応する圧縮データのみに基づいて、設定パラメータQ3が設定される。また、圧縮処理制御部23において用いられる圧縮パラメータは、設定パラメータQ3が設定されるたびに、設定パラメータQ3で更新される。比較例の内視鏡装置のその他の構成は、本実施の形態に係わる内視鏡装置1と同様である。
【0109】
図8は、比較例の内視鏡装置における、パラメータ設定部27Cに入力される圧縮データに対応する画像(
図8では入力画像と記す。)と、モニタ4に表示される表示画像と、圧縮データのデータ量Vcの変化を、模式的に示している。
図8において、破線は、転送可能データ量を示している。なお、
図8では、所定の間隔毎の入力画像と表示画像を示している。
図8では、入力画像と、その入力画像に対応する画像データに基づいて、
図4および
図5に示した画像データ処理と同様の画像データ処理が行われた際の表示画像が、
図8における上下方向に並ぶように配置している。
【0110】
図8において、左端の入力画像と出力画像は、被写体が正常に撮像され、且つ圧縮データのデータ量Vcが転送可能データ量以下である場合の画像を示している。また、左端から2番目の入力画像と表示画像は、被写体を正常に撮像することができなかった場合の画像を示している。
図8には、被写体を正常に撮像することができなかった場合の画像として、白飛び画像を示している。
【0111】
比較例では、被写体の情報量が少ない画像データを圧縮して圧縮データを生成すると、圧縮データのデータ量Vcは、正常に撮像された画像データに基づくデータ量Vcに比べて小さくなる。特に、白飛び画像のように、被写体を撮像することができなかった場合には、データ量Vcは、著しく小さくなる。その結果、このデータ量Vcに基づいて設定される設定パラメータQ3と、設定パラメータQ3で更新される圧縮パラメータは、著しく小さくなり、この圧縮パラメータを用いて生成される圧縮データのデータ量Vcは、転送可能データ量よりも大きくなってしまう。そのため、
図8の左端から3番目の入力画像と表示画像のように、被写体を正常に撮像することができる状態に復帰したとしても、圧縮データを送信することができずに、モニタ4に被写体の画像を表示することができなくなってしまう。
【0112】
また、比較例では、一度、設定パラメータQ3が著しく小さくなってしまうと、設定パラメータQ3が適切な値に戻るまでの時間が、ある程度必要である。そのため、
図8に示したように、データ量Vcが転送可能データ量以下になるまでの時間も、ある程度必要になる。このように、データ量Vcが転送可能データ量よりも大きい状態が続くと、モニタ4に被写体の画像が表示されない状態が続いてしまう。
【0113】
これに対し、本実施の形態では、圧縮パラメータQは、圧縮データのデータ量と判定部27Bの判定結果に基づいて決定される。本実施の形態では特に、圧縮パラメータQは、判定値が所定の閾値以上のときには、圧縮パラメータを設定パラメータQ3で更新し、判定値が所定の閾値未満のときには、圧縮パラメータを更新しない。すなわち、本実施の形態では、被写体の情報量が少ない画像データが生成された場合には、正常に撮像された画像データが生成されたときの圧縮パラメータを用いて、圧縮データを生成する。これにより、本実施の形態によれば、被写体の情報量が少ない画像データが生成された場合に、圧縮パラメータが著しく小さくなることを防止することができる。
【0114】
図9は、本実施の形態に係わる内視鏡装置1における、パラメータ設定部27Cに入力される圧縮データに対応する画像(
図9では入力画像と記す。)と、モニタ4に表示される表示画像と、圧縮データのデータ量Vcの変化を、模式的に示している。
図9において、破線は、転送可能データ量を示している。入力画像と表示画像の配置方法は、
図8と同じである。
【0115】
図9の左端から2番目の入力画像と表示画像のように、本実施の形態においても、被写体を正常に撮像することができなかった場合には、モニタ4には、被写体の画像が表示されなくなる。しかし、本実施の形態では、前述のように、被写体の情報量が少ない画像データが生成された場合には、正常に撮像された画像データが生成されたときの圧縮パラメータを用いて、圧縮データを生成する。これにより、本実施の形態によれば、データ量Vcが転送可能データ量よりも大きくなることを防止することができると共に、
図9の左端から3番目の入力画像と表示画像のように、被写体を正常に撮像することができる状態に復帰した場合には、モニタ4に被写体の画像を表示することができる。これにより、本実施の形態によれば、モニタ4に被写体の画像が表示されない状態が続くことを防止することができる。
【0116】
また、本実施の形態では、表示画像は、判定部27Bの判定処理の結果に基づいて決定され、判定処理において判定値が所定の閾値以上のときには、表示画像は、今回の判定処理が行われる際に生成された画像データに対応する画像である。本実施の形態では、前述のように圧縮パラメータを決定することによって、被写体を正常に撮像することができなかった場合であっても、その影響が、その後の表示画像に及ぶことを防止することができる。そのため、本実施の形態では、上述のように表示画像を決定することにより、被写体を正常に撮像することができる状態に復帰した場合には、モニタ4に被写体の画像を表示することができる。これにより、本実施の形態によれば、モニタ4に被写体の画像が表示されない状態が続くことを防止することができる。
【0117】
なお、本実施の形態では、被写体を正常に撮像することができなかった場合には、モニタ4には、被写体の画像が表示されなくなる。これにより、本実施の形態によれば、ユーザに、被写体を正常に撮像することができなくなったことを知らせることができる。なお、後で変形例として説明するように、被写体を正常に撮像することができなかった場合、圧縮パラメータと同様に、表示画像を、正常に撮像されたときの画像にすることも可能である。すなわち、判定処理において判定値が所定の閾値のときには、表示画像を、今回の判定処理が行われる際に生成された画像データに対応する画像としてもよいし、前回の判定処理の結果に基づいて決定された画像としてもよい。
【0118】
ところで、もし、情報量検出部27A、判定部27Bおよびパラメータ設定部27Cがプロセッサ3に設けられていると、例えば無線通信の環境が悪化して転送可能データ量が低下すると、画質が劣化して被写体の情報量の検出精度が低下したり、被写体の情報量を検出することができなくなったり、設定パラメータQ3を設定することができなくなったりすると言う問題が発生する。これに対し、本実施の形態では、情報量検出部27A、判定部27Bおよびパラメータ設定部27Cが内視鏡2に設けられている。これにより、本実施の形態によれば、上記の問題が発生することを防止することができる。
【0119】
また、本実施の形態では、圧縮データ記憶部24Aには、1つの画像データから生成された複数の圧縮部分が順次記憶される。もし、複数の圧縮部分のうちの1つ以上のデータ量が圧縮データ記憶部24Aの記憶容量よりも大きい場合には、圧縮データを送信することができなくなり、モニタ4に被写体の画像を表示することができなくなってしまう。これに対し、本実施の形態では、設定パラメータQ3を設定する際には、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成する。これにより、本実施の形態によれば、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2のいずれが設定パラメータQ3として設定された場合であっても、算出データ量V1(圧縮データ量)が第1の目標データ量T1以下になり、複数の圧縮部分の各々のデータ量の最大値V2が第2の目標データ量T2以下になるように圧縮処理することができる。その結果、本実施の形態によれば、圧縮データのデータ量が転送可能データ量以下になり、且つ複数の圧縮部分の各々のデータ量が記憶部24Aの記憶容量以下になるように圧縮処理をすることができる。これにより、本実施の形態によれば、圧縮データの伝送が途絶することを防止することができる。
【0120】
[変形例]
次に、内視鏡2における画像データ処理手順の変形例と、プロセッサ3における画像データ処理手順の変形例について説明する。
【0121】
始めに、
図2、
図3および
図10を参照して、内視鏡2における画像データ処理手順の変形例について説明する。
図10は、内視鏡2における画像データ処理手順の変形例を示すフローチャートである。変形例では、第1の設定処理を行う手順(ステップS19A)および第2の設定処理を行う手順(ステップS19B)までは、
図4に示した内視鏡2における画像データ処理手順と同じである。
【0122】
変形例では、次に、内視鏡制御部22は、第1の無線通信部25を制御して、プロセッサ3に対して、記憶部24に記憶された判定部27Bの判定結果を送信する(ステップS20)。次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されていない場合には、ステップS11に戻り、上記操作信号が内視鏡制御部22に入力された場合には、内視鏡2における画像データ処理を終了する。
【0123】
次に、
図2、
図3および
図11を参照して、プロセッサ3における画像データ処理手順の変形例について説明する。
図11は、プロセッサ3における画像データ処理手順の変形例を示すフローチャートである。
図11に示したように、送信された圧縮データを受信する処理(ステップS22)までは、
図5に示したプロセッサ3における画像データ処理手順と同じである。
【0124】
変形例では、次に、プロセッサ制御部31は、第2の無線通信部32Aを制御して、第1の無線通信部25によって送信された判定部27Bの判定結果を受信する(ステップS25)。受信した判定結果は、記憶部36に記憶される。
【0125】
次に、画像処理部33は、記憶部36から判定結果を読み出して、この判定結果に基づいて、表示画像を決定する決定処理を行う(ステップS26)。判定値が所定の閾値以上のとき(YES)には、被写体の情報量が十分である、すなわち被写体を正常に撮像することができたと判定することができる。この場合、画像処理部33は、この判定値を用いた判定処理(N回目に実行された判定処理)が行われる際に生成された画像データに対応する画像を、表示画像として決定する。
【0126】
判定値が所定の閾値未満のとき(NO)には、被写体の情報量が不十分である、すなわち被写体を正常に撮像することができなかったと判定することができる。この場合、画像処理部33は、この判定値を用いた判定処理の前の回の判定処理(N-1回目に実行された判定処理)の結果に基づいて決定された画像を、表示画像として決定する。前の回の判定処理において判定値が所定の閾値以上の場合には、画像処理部33は、前の回の判定処理が行われる際に生成された画像データに対応する画像を、表示画像として決定する。前の回の実行された判定処理において判定値が所定の閾値未満のときには、画像処理部33は、前の回以前に実行された判定処理であって、判定値が所定の閾値以上となる判定処理を行う際に生成された画像データに対応する画像を、表示画像として決定する。
【0127】
ステップS26において、判定値が所定の閾値以上のとき(YES)には、次に、画像処理部33は、
図5のステップS23と同様の画像処理によって、伸長された画像データを生成する(ステップS27A)。変形例では、画像処理部33は、伸長された画像データを、記憶部36に出力する。記憶部36は、伸長された画像データを記憶する。
【0128】
ステップS26において、判定値が所定の閾値未満のとき(NO)には、次に、画像処理部33は、記憶部36から、決定された表示画像に対応する画像データを読み出す(ステップS27B)。なお、画像処理部33は、画像データを読み出す代わりに、決定された表示画像に対応する画像データから生成された圧縮データを読み出して、この圧縮データに対して伸長処理を行って、伸長された画像データを生成してもよい。
【0129】
プロセッサ3における画像データ処理では、ステップS27AまたはステップS27Bの後、画像処理部33は、伸長された画像データまたは読み出した画像データを、モニタ4に出力する(ステップS28)。次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されていない場合には、ステップS21に戻り、上記操作信号がプロセッサ制御部31に入力された場合には、プロセッサ3における画像データ処理を終了する。
【0130】
変形例では、判定値が所定の閾値未満のときには、画像処理部33は、この判定値を用いた判定処理の前の回の判定処理の結果に基づいて決定された画像を、表示画像として決定する。すなわち、変形例では、被写体の情報量が少ない画像データが生成された場合には、正常に撮像されたときの画像データに対応する画像を表示画像とする。これにより、変形例では、モニタ4に、常に、被写体の画像を表示することができる。
【0131】
なお、変形例では、圧縮データを送信する処理(
図10のステップS16)は、第1の設定処理(
図10のステップS19A)と判定結果を送信する処理(
図10のステップS20)の間に行われてもよい。この場合、判定処理(
図10のステップS18)において判定値が所定の閾値未満のときには、圧縮データは送信されない。
【0132】
また、被写体の情報量が少ない画像データが生成された場合、被写体の情報量が少ない画像データに対応する画像を表示画像とするか、正常に撮像されたときの画像データに対応する画像を表示画像とするかを切り替えることができるように、内視鏡装置1を構成してもよい。
【0133】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係わる内視鏡装置について説明する。始めに、
図12を参照して、本実施の形態に係わる内視鏡装置1の構成が、第1の実施の形態と異なる点について説明する。
図12は、内視鏡2およびプロセッサ3の構成を示す機能ブロック図である。
【0134】
本実施の形態では、内視鏡2には、第1の実施の形態における信号処理部27が設けられていない。代わりに、プロセッサ3は、信号処理部38を有している。信号処理部38は、例えばCPUまたはDSPによって構成されている。
【0135】
図13は、信号処理部38の構成を示している。信号処理部38の構成は、第1の実施の形態における信号処理部27の構成と同様である。すなわち、信号処理部38は、情報量検出部38Aと、判定部38Bと、パラメータ設定部38Cとを含んでいる。パラメータ設定部38Cは、第1の圧縮パラメータ生成部38C1と、第2の圧縮パラメータ生成部38C2と、圧縮パラメータ判断部38C3とを含んでいる。
【0136】
情報量検出部38Aには、画像処理部33が生成した、伸長された画像データが入力される。情報量検出部38Aは、画像データに含まれる被写体の情報量を検出すると共に、被写体の情報量を判定部38Bに出力する。判定部38Bは、被写体の情報量に基づいて、所定の判定処理を行うと共に、判定結果を記憶部36とパラメータ設定部38Cに出力する。記憶部36は、判定結果を記憶する。情報量の検出方法と、判定処理の内容は、第1の実施の形態と同じである。
【0137】
パラメータ設定部38Cは、判定部38Bの判定結果と記憶部36に記憶された圧縮データに基づいて、圧縮処理制御部23において用いられる圧縮パラメータを設定する。第1の圧縮パラメータ生成部38C1と第2の圧縮パラメータ生成部38C2は、それぞれ、記憶部36に記憶された圧縮データのデータ量を取得することができるように構成されている。第1の圧縮パラメータ生成部38C1は、第1の暫定圧縮パラメータQ1を生成すると共に、第1の暫定圧縮パラメータQ1を圧縮パラメータ判断部38C3に出力する。第2の圧縮パラメータ生成部38C2は、第2の暫定圧縮パラメータQ2を生成すると共に、第2の暫定圧縮パラメータQ2を圧縮パラメータ判断部38C3に出力する。
【0138】
圧縮パラメータ判断部38C3は、第1の暫定圧縮パラメータQ1と第2の暫定圧縮パラメータQ2を比較して、これらのうちのいずれか一方を、圧縮処理において用いられる圧縮パラメータとして選択し、選択した圧縮パラメータを設定パラメータQ3として設定する。圧縮パラメータ判断部38C3は、設定パラメータQ3を、内視鏡2とプロセッサ3との間の無線通信を介して、内視鏡2の圧縮処理制御部23に出力し、選択された圧縮パラメータを記憶部36に出力する。記憶部36は、選択された圧縮パラメータを記憶する。設定パラメータQ3の設定方法は、第1の実施の形態と同じである。
【0139】
本実施の形態では、内視鏡2の第1の無線通信部25とプロセッサ3の無線受信機32の第2の無線通信部32Aが送受信する信号には、圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データと、記憶部36に記憶された設定パラメータQ3が含まれる。
【0140】
(内視鏡における画像データ処理)
次に、
図12および
図14を参照して、本実施の形態の内視鏡2における画像データ処理手順について説明する。
図14は、内視鏡2における画像データ処理手順を示すフローチャートである。本実施の形態の内視鏡2における画像データ処理は、圧縮処理制御部23おける圧縮処理を含んでいる。
【0141】
本実施の形態の内視鏡2における画像データ処理は、内視鏡制御部22および圧縮処理制御部23によって実行される。内視鏡2における画像データ処理の開始の条件と終了の条件は、第1の実施の形態と同じである。
【0142】
内視鏡2における画像データ処理では、まず、内視鏡制御部22は、内視鏡2とプロセッサ3との間において無線通信の接続を確立する(ステップS111)。ステップS111の内容は、第1の実施の形態における
図4のステップS11の内容と同じである。
【0143】
次に、設定パラメータQ3を取得する処理が行われる(ステップS112)。この処理では、まず、内視鏡制御部22は、第1の無線通信部25を制御して、第2の無線通信部32Aによって送信された設定パラメータQ3を受信する。受信した設定パラメータQ3は、記憶部24に記憶される。次に、圧縮処理制御部23は、記憶部24から設定パラメータQ3を読み出す。なお、1回目に実行される画像データ処理では、圧縮処理制御部23は、設定パラメータQ3の代わりに、圧縮パラメータの初期値Qiを取得する。初期値Qiは、ユーザIF部35に入力された設定値を用いてもよいし、記憶部24に記憶された設定値を用いてもよい。
【0144】
次に、内視鏡制御部22は、撮像部21を制御して、バッテリ28から供給された電力を電源として、被写体を撮像し画像データを生成する(ステップS113,S114)。次に、圧縮処理制御部23は、画像データを圧縮して圧縮データを生成する画像圧縮処理を行う(ステップS115)。圧縮データは、圧縮データ記憶部24Aに記憶される。次に、内視鏡制御部22は、第1の無線通信部25を制御して、プロセッサ3に対して、圧縮データ記憶部24Aに記憶された圧縮データを送信する(ステップS116)。ステップS113~S116の内容は、第1の実施の形態における
図4のステップS13~S16の内容と同じである。
【0145】
次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号が内視鏡制御部22に入力されていない場合には、ステップS111に戻り、上記操作信号が内視鏡制御部22に入力された場合には、内視鏡2における画像データ処理を終了する。
【0146】
(プロセッサにおける画像データ処理)
次に、
図12、
図13および
図15を参照して、本実施の形態のプロセッサ3における画像データ処理手順について説明する。
図15は、プロセッサ3における画像データ処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ3における画像データ処理は、情報量検出部38Aにおける被写体の情報量の検出処理と、判定部38Bにおける判定処理と、パラメータ設定部38Cにおけるパラメータ設定処理を含んでいる。
【0147】
本実施の形態のプロセッサ3における画像データ処理は、プロセッサ制御部31、画像処理部33および信号処理部38によって実行される。プロセッサ3における画像データ処理の開始の条件と終了の条件は、第1の実施の形態と同じである。
【0148】
プロセッサ3における画像データ処理では、まず、プロセッサ制御部31は、内視鏡2とプロセッサ3との間において無線通信の接続を確立する(ステップS121)。次に、プロセッサ制御部31は、第2の無線通信部32Aを制御して、第1の無線通信部25によって送信された圧縮データすなわち複数の圧縮部分を受信する(ステップS122)。次に、画像処理部33は、記憶部36から圧縮データを読み出して、圧縮データに所定の画像処理を行う(ステップS123)。ステップS121~S123の内容は、第1の実施の形態における
図5のステップS21~S23の内容と同じである。
【0149】
次に、画像処理部33は、伸長された画像データを、モニタ4と信号処理部38の情報量検出部38Aに出力する(ステップS124)。
【0150】
次に、信号処理部38の情報量検出部38Aは、伸長された画像データに含まれる被写体の情報量の検出処理を行う(ステップS125)。ステップS125の内容は、第1の実施の形態における
図4のステップS17の内容と同じである。
【0151】
次に、信号処理部38の判定部38Bは、情報量検出部38Aによって検出された被写体の情報量と対応関係を有する判定値が、所定の閾値未満か否かを判定する判定処理を行う(ステップS126)。判定部38Bは、判定結果を、記憶部36とパラメータ設定部38Cに出力する。第1の実施の形態で説明したように、判定値が所定の閾値以上のとき(YES)には、被写体の情報量が十分である、すなわち被写体を正常に撮像することができたと判定することができる。一方、判定処理において、判定値が所定の閾値未満のとき(NO)には、被写体の情報量が不十分である、すなわち被写体を正常に撮像することができなかったと判定することができる。
【0152】
次に、信号処理部38のパラメータ設定部38Cは、判定部38Bの判定結果に基づいて、パラメータ設定処理を行う。判定値が所定の閾値以上のとき(YES)には、パラメータ設定部38Cは、第1の設定処理を行い(ステップS127A)、判定値が所定の閾値未満のとき(NO)には、パラメータ設定部38Cは、第2の設定処理を行う(ステップS127B)。第1および第2の設定処理の内容は、第1の実施の形態と同じである。
【0153】
プロセッサ3における画像データ処理では、ステップS127AまたはステップS127Bの後、プロセッサ制御部31は、第2の無線通信部32Aを制御して、内視鏡2に対して、記憶部36に記憶された設定パラメータQ3を送信する(ステップS128)。次に、撮像処理の終了を指示するユーザ操作に基づく操作信号がプロセッサ制御部31に入力されていない場合には、ステップS121に戻り、上記操作信号がプロセッサ制御部31に入力された場合には、プロセッサ3における画像データ処理を終了する。
【0154】
(作用および効果)
本実施の形態では、内視鏡2に信号処理部27を設ける代わりに、プロセッサ3に信号処理部38を設けている。これにより、本実施の形態によれば、内視鏡2における演算処理を少なくして、内視鏡2の消費電力を低減することができる。
【0155】
なお、第1の実施の形態の変形例と同様に、判定処理における判定値が所定の閾値未満のときには、画像処理部33は、前回の判定処理の結果に基づいて決定された画像を、表示画像として決定してもよい。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0156】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。例えば、本発明の内視鏡装置は、内視鏡とプロセッサとがユニバーサルケーブルで接続された構成の内視鏡装置であってもよい。この構成の内視鏡装置では、画像データを伝送する伝送経路は、その全体が有線の伝送経路によって構成されており、無線による伝送経路を含まない。
【0157】
また、第1の実施の形態では、パラメータ設定部27Cがプロセッサ3に設けられていてもよい。これにより、パラメータ設定部27Cが内視鏡2に設けられている場合に比べて、内視鏡2における演算処理を少なくして、内視鏡2の消費電力を低減することができる。
【0158】
本出願は、2018年5月1日に日本国に出願された特願2018-88334号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲に引用されるものとする。