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特許7052076加圧軽水炉型原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法
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  • 特許-加圧軽水炉型原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】加圧軽水炉型原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
G21F9/30 535A
G21F9/30 531E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020557149
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 KR2019004659
(87)【国際公開番号】W WO2019203576
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0044579
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518442000
【氏名又は名称】コリア ハイドロ アンド ニュークリアー パワー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ソク-ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ソン-フン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミ-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョン-ウ
【審査官】関口 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-158297(JP,A)
【文献】実開昭61-017696(JP,U)
【文献】特開昭59-023298(JP,A)
【文献】特開平08-194097(JP,A)
【文献】特開2005-083923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉を取り囲む生体保護コンクリートに設置された中性子検知位置調節器を解体して、前記生体保護コンクリートに複数の貫通部を形成する段階と、
前記複数の貫通部に切断装置の一部を投入する段階と、
前記切断装置を用いて、前記生体保護コンクリートを複数のサブコンクリートに分解する段階と
を含み、
前記生体保護コンクリートは、円筒形の内壁面と六面体形の外壁面とを有し、前記貫通部は、前記円筒形の内壁面から前記六面体形の外壁面にまで延びる、原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法。
【請求項2】
前記生体保護コンクリートの内部に原子炉解体装置を投入して前記原子炉を解体する段階をさらに含む、請求項1に記載の原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法。
【請求項3】
前記貫通部は、前記円筒形の内壁から前記六面体形の外壁へと進むほど直径が小さくなる、請求項に記載の原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法。
【請求項4】
前記中性子検知位置調節器は、
前記原子炉に隣接する中性子検知器と、
前記中性子検知器を移動させる外部調節器と、
前記中性子検知器と前記外部調節器とを互いに連結させ、前記生体保護コンクリートを貫通する連結部材とを含み、
前記生体保護コンクリートに設置された中性子検知位置調節器を解体する段階は、
前記外部調節器を用いて、前記中性子検知器を前記生体保護コンクリートの内壁に密着させる段階と、
前記外部調節器と前記連結部材との間を切断する段階と、
前記連結部材を前記生体保護コンクリートから分離して、前記生体保護コンクリートに前記貫通部を形成する段階と
を含む、請求項1に記載の原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法。
【請求項5】
前記中性子検知位置調節器は、前記中性子検知器の下部に設けられた移送部をさらに含み、
前記移送部を用いて、前記中性子検知器を前記生体保護コンクリートの内壁面にまで移動させる、請求項に記載の原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法。
【請求項6】
前記切断装置は、ワイヤソーを含む、請求項1に記載の原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原子力発電所の生体保護コンクリート(コンクリート製生体遮蔽体)の解体方法に関し、より詳しくは、加圧軽水炉型原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的に化石エネルギーが枯渇するにつれ、主なエネルギー源として原子力発電を使用している。このような原子力発電において一般に使用される加圧軽水炉型(Pressurized Water Reactor、PWR)原子力発電所は、原子炉を循環する1次系統と、蒸気発生器を循環する2次系統と、復水器を循環する3次系統とから構成される。具体的には、1次系統では、原子炉中に入っている冷却材に圧力を加えて150気圧300℃程度を維持し、2次系統では、この冷却材が蒸気発生器細管を通過しながら、蒸気発生器側の水を沸かして水蒸気にしてタービンを回す。そして、3次系統では、タービンを回した後の蒸気は復水器を通過しながら再度水になり、蒸気発生器に送られる。
【0003】
このような加圧軽水炉型原子力発電所の原子炉は、外部の圧力容器と、圧力容器より小さい直径に形成されて圧力容器の中心に設けられる炉心バレルとから構成される原子炉容器を含む。炉心バレルの内部には核燃料棒が装入される炉心(Core)が位置し、炉心バレルと圧力容器との間には直径の差による環状の空間である降水部が形成される。そして、圧力容器に連結されて冷却水の循環通路となる複数の低温管と、低温管を通して流入して降水部と炉心を通りながら加熱された冷却水が蒸気発生器側に流れるように、炉心バレルに連結される高温管(Hot Leg)とを含む。
【0004】
このような加圧軽水炉型原子力発電所には、原子炉を支持し中性子を遮蔽して作業者の放射線被爆を防御するための鉄筋コンクリート構造物として、生体保護コンクリートが設置される。
【0005】
生体保護コンクリートは、複数の層を積層して形成された大型の円筒形の鉄筋コンクリート構造物であって、生体保護コンクリートは放射性物質でもって最も激しく汚染されるので、寿命が満了して永久に停止した加圧軽水炉型(PWR)原子力発電所の解体時、作業者が被爆しやすい。解体装置を生体保護コンクリートに投入するために生体保護コンクリートにホール(hole; 孔)を形成する場合に、放射性粉塵が発生するので、放射性被爆および放射性粉塵の移動の恐れがある。また、生体保護コンクリートにホールを形成する工程が追加されるので、解体工程時間が増加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施例は、解体工程時間を短縮し、作業者の被爆を最小化できる原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法は、原子炉を取り囲む生体保護コンクリートに設置された中性子検知位置調節器を解体して前記生体保護コンクリートに複数の貫通部を形成する段階と、前記複数の貫通部に切断装置の一部を投入する段階と、前記切断装置を用いて前記生体保護コンクリートを複数のサブコンクリートに分解する段階とを含むことができる。
【0008】
前記生体保護コンクリートの内部に原子炉解体装置を投入して前記原子炉を解体する段階をさらに含むことができる。
【0009】
前記生体保護コンクリートは、円筒形の内壁(面)と六面体(直方体)形の外壁(面)とを有し、前記貫通部は、前記円筒形の内壁(面)から前記六面体形の外壁(面)にまで延びるのでありうる。
【0010】
前記貫通部は、前記円筒形の内壁(面)から前記六面体形の外壁(面)へと進むほど直径が小さくなりうる。
【0011】
前記中性子検知位置調節器は、前記原子炉に隣接する中性子検知器と、前記中性子検知器を移動させる外部調節器と、前記中性子検知器と前記外部調節器とを互いに連結させ、前記生体保護コンクリートを貫通する連結部材とを含み、前記生体保護コンクリートに設けられた中性子検知位置調節器を解体する段階は、前記外部調節器を用いて前記中性子検知器を前記生体保護コンクリートの内壁に密着させる段階と、前記外部調節器と前記連結部材との間を切断する段階と、前記連結部材を前記生体保護コンクリートから分離して前記生体保護コンクリートに前記貫通部を形成する段階とを含むことができる。
【0012】
前記中性子検知位置調節器は、前記中性子検知器の下部に設けられた移送部をさらに含み、前記移送部を用いて前記中性子検知器を前記生体保護コンクリートの内壁まで移動させることができる。
【0013】
前記切断装置は、ワイヤソーを含むことができる。
【発明の効果】
【0014】
一実施例によれば、生体保護コンクリートへの追加のコアリング作業なしに、生体保護コンクリートの内部に設けられた中性子検知位置調節器の貫通部に解体装置を投入して切断および解体工程を進行させることによって、別途のコアリング作業がなくてもよいので、解体工程時間を短縮させることができる。
【0015】
また、別途のコアリング作業がないので、放射性粉塵の発生を最小化させることが可能で、作業者の被爆を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法のフローチャートである。
図2】一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法の一段階として、原子炉を解体する段階を示す図である。
図3図2のA部分の拡大図である。
図4図2の平面図である。
図5図2の次の段階として、中性子検知位置調節器を生体保護コンクリートから分解して生体保護コンクリートに貫通部を形成する段階を示す図である。
図6図5の次の段階として、生体保護コンクリートの貫通部に切断装置を投入して切断する段階を示す図である。
図7】一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法により分解された生体保護コンクリートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の様々な実施例について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0018】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付す。
【0019】
また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは説明の便宜のために任意に示したので、本発明が必ずしも図示のものに限定されない。
【0020】
図面において、様々な層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示した。そして、図面において、説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して示した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする時、これは他の部分の「直上に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0021】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。さらに、明細書全体において、「~上に」というのは、対象部分の上または下に位置することを意味するものであり、必ずしも重力方向を基準として上側に位置することを意味するものではない。
【0022】
図1は、一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法のフローチャートであり、図2は、一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法の一段階として、原子炉を解体する段階を示す図である。
【0023】
図1および図2に示すように、一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法は、まず、生体保護コンクリート200の内部に原子炉解体装置を投入して原子炉100を解体する(S10)。
【0024】
次に、原子炉100を取り囲む生体保護コンクリート200に設置された中性子検知位置調節器(Neutron Detector Positioning Device)300を解体して、生体保護コンクリート200に複数の貫通部210を形成する(S20)。
【0025】
以下、中性子検知位置調節器300の具体的な構造について詳しく説明する。
【0026】
図3は、図2のA部分の拡大図であり、図4は、図2の平面図である。
【0027】
図2図4に示すように、複数の中性子検知位置調節器300は、生体保護コンクリート200に設けられる。具体的には、六面体状の生体保護コンクリート200の4つの方向に沿って設けられる。
【0028】
中性子検知位置調節器300は、原子炉100に隣接する中性子検知器310と、中性子検知器310を移動させる外部調節器320と、中性子検知器310と外部調節器320とを互いに連結させ、生体保護コンクリート200を貫通する連結部材330と、中性子検知器310の下部に設けられた移送部340とを含む。
【0029】
中性子検知器310は、原子炉100の中性子を計測するためのものであって、原子炉100の中心部(Belt-Line)の位置に設置されうる。
【0030】
外部調節器320は、生体保護コンクリート200の外部から作業者が直接調節するか、無人動力を利用することができる。
【0031】
連結部材330は、線形に形成され、生体保護コンクリート200に形成される貫通部210の直径より小さいのでありうる。
【0032】
図5は、図2の次の段階として、中性子検知位置調節器を生体保護コンクリートから分離・分解して、生体保護コンクリートに貫通部を形成する段階を示す図である。
【0033】
生体保護コンクリート200は、円筒形の内壁(面)と六面体形の外壁(面)とを有することができる。
【0034】
このような、生体保護コンクリート200に設置された中性子検知位置調節器300を解体する段階は、具体的に以下の通りである。
【0035】
図5に示すように、外部調節器320を用いて、中性子検知器310を生体保護コンクリート200の内壁に密着させる。この際、移送部340を用いて、中性子検知器310を生体保護コンクリート200の内壁まで移動させることができる。
【0036】
そして、外部調節器320と連結部材330との間の連結部を切断する。切断される連結部は、生体保護コンクリート200の外部に位置しうる。切断する装置としては、多様な切断ツールが使用可能である。
【0037】
そして、連結部材330を生体保護コンクリート200から分離して、生体保護コンクリート200に貫通部210を形成する。この際、連結部材330に連結された中性子検知器310は、生体保護コンクリート200の内部(内側)から上部へと移動させて、生体保護コンクリート200から分離・解体することができる。
【0038】
したがって、貫通部210は、円筒形の内壁から六面体形の外壁まで延びるのでありうる。このような貫通部210は、円筒形の内壁から六面体形の外壁へといくほど直径が小さくなるのでありうる。本実施例では、貫通部が階段状に形成されているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、多様な形状に形成可能である。
【0039】
生体保護コンクリート200の内壁は放射性物質で激しく汚染されるので、生体保護コンクリート200の内壁を除染する工程が追加されうる。除染工程を進行させるための除染装置(図示せず)は、生体保護コンクリート200の内部に投入されうる。除染装置は、内壁ハンマリング(hammering)またはスキャブラ(scabbler;衝撃剥離機)を含むことができる。内壁ハンマリングは、生体保護コンクリート200の内壁を打撃して、生体保護コンクリート200の内壁から放射性廃棄物を除去する。そして、スキャブラは、生体保護コンクリート200の内壁を引っ掻いて、生体保護コンクリート200の内壁から放射性廃棄物を除去する。本実施例では、除染装置の例として内壁ハンマリングまたはスキャブラについて説明したが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、生体保護コンクリート200の内壁から、放射性廃棄物を除去するための装置であれば、多様な装置が可能である。
【0040】
除染工程が完了した後に、生体保護コンクリート200を、複数のサブコンクリートに分解することができる。
【0041】
図6は、図5の次の段階として、生体保護コンクリートの貫通部に切断装置を投入して切断する段階を示す図であり、図7は、一実施例による原子力発電所の生体保護コンクリートの解体方法により分解された生体保護コンクリートを示す図である。
【0042】
図6に示すように、複数の貫通部210に切断装置400の一部を投入する(S30)。このような切断装置400は、貫通部210に投入される切断部410と、切断部410の動作を調節するとともに切断部410に連結される切断調節部420とを含むことができる。貫通部210は、円筒形の内壁から六面体形の外壁へと進むほど直径が小さくなるので、切断部410は、より容易に貫通部210に投入できる。
【0043】
このような切断装置400は、ワイヤソー(wire saw)を含むことができる。本実施例では、切断装置の例としてワイヤソーについて説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、貫通部210に投入できる多様な装置が適用可能である。
【0044】
次に、図7に示すように、切断装置400を用いて、生体保護コンクリート200を複数のサブコンクリート20に分解する(S40)。生体保護コンクリート200は、切断線21によって複数のサブコンクリート20に分解される。
【0045】
このように、生体保護コンクリート200への追加のコアリング(coring; コア抜き、穴あけ)作業を行うことなしに、中性子検知位置調節器を解体して、生体保護コンクリート200の内部に形成された貫通部210に解体装置を投入して、切断および解体工程を進行させるということによって、別途のコアリング作業がなくてもよいので、解体工程時間を短縮させることができる。
【0046】
また、別途のコアリング作業がないので、放射性粉塵の発生を最小化させることが可能で、作業者の被爆を最小化することができる。
【0047】
本開示を、上述した通り、望ましい実施例により説明したが、本発明はこれに限定されず、以下に記載の特許請求範囲の範囲を逸脱しない限り、多様な修正および変形が可能であることについて、本発明の属する技術分野に従事する者は容易に理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7