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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】バンドクランプ
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/08 20060101AFI20220404BHJP
   F16L 3/137 20060101ALI20220404BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
F16B2/08 S
F16B2/08 U
F16L3/137
H02G3/32
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020563237
(86)(22)【出願日】2019-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2019050290
(87)【国際公開番号】W WO2020137943
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2018248001
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 光
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-132508(JP,U)
【文献】特開平11-198961(JP,A)
【文献】特開2017-095159(JP,A)
【文献】特開2016-095007(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198965(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
F16L 3/137
H02G 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック部と、該ロック部から延出したバンド部とを有し、
前記ロック部は、前記バンド部が挿通される挿通路と、該挿通路の内部に撓み可能に形成された係止片とを有し、
前記バンド部は、少なくとも片面から突出形成された複数の係止歯を有し、
前記係止片は、前記バンド部が前記挿通路に挿入されるとき、前記係止歯に係止する係止爪を有し、
各係止歯は、前記バンド部の延出方向の先端側に位置する突出量が最小の裾部と、前記バンド部の延出方向の基端側に位置する突出量が最大の頂部とを有しており、
前記複数の係止歯のうち、前記バンド部の延出方向の最も先端側に位置する最先端係止歯の、前記裾部から前記頂部までの、前記バンド部の延出方向に沿った長さをAとし、
前記複数の係止歯のうち、前記最先端係止歯に対して、前記バンド部の延出方向の基端側に隣接した係止歯の、前記裾部から前記頂部までの、前記バンド部の延出方向に沿った長さをBとしたとき、前記Aが前記Bよりも大きくなるように形成されており、
前記最先端係止歯は、前記裾部から前記頂部までの間に、断続的な斜面をなして突出するように設けられており、前記バンド部の延出方向の先端側に位置する第1斜面と、該第1斜面よりも前記バンド部の延出方向の基端側に位置する第2斜面と、前記第1斜面と前記第2斜面との間に設けられた棚面とを有していることを特徴とするバンドクランプ。
【請求項2】
前記棚面は、前記バンド部の片面からの突出量が一定とされている請求項1記載のバンドクランプ。
【請求項3】
前記最先端係止歯は、その頂部が、前記バンド部の片面からの突出量が一定となるように形成されているか、又は、前記最先端係止歯の頂部から前記バンド部の延出方向の先端側に向けて傾斜する傾斜部が形成されており、
前記棚面の、前記バンド部の延出方向に沿った長さをCとし、
前記バンド部の片面からの突出量が一定に形成された前記頂部、又は、前記傾斜部の、前記バンド部の延出方向に沿った長さをDとしたとき、前記Cは前記Dよりも大きくなるように形成されている請求項1又は2記載のバンドクランプ。
【請求項4】
前記ロック部の前記挿通路の内部には、一対の突状支持部が設けられており、
前記バンド部の、延出方向に直交する幅方向の両側部には、前記一対の突状支持部に支持される一対のリブが設けられており、これらの一対のリブの間に、前記最先端係止歯が配置されている請求項1~3のいずれか1つに記載のバンドクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ケーブルや電線等の被結束部材に巻き付けて、これらを結束するバンドクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の内部や外部には、複数のケーブルや電線、パイプ、チューブ等(被結束部材)が配設されているが、これらはバンドクランプ(結束バンド等ともいう)によって結束されることが多い。
【0003】
このようなものとして、下記特許文献1には、本願明細書に添付した図10に示すような結束バンドが記載されている。この結束バンド1は、片面に複数の係止歯3が形成されたバンド部2と、バンド部2の基端に形成されたロック部5とを備え、ロック部5は、バンド部2が挿通される挿通路6と、一端が連結部7aを介して挿通路内に連結された、撓み可能な係止片7とを有している。また、係止片7の他端側には、バンド部2の係止歯3に係止する一対の係止爪8,9が形成されている。
【0004】
そして、バンド部2を、先端側からロック部5の挿通路6内に挿入していくと、まず、バンド部2の最先端側に位置する係止歯3が、係止片7の連結部7a寄りの係止爪8に当接して、係止片7を押圧して撓み変形させつつ、同係止歯3が係止爪8を乗り越えることで、係止歯3が係止爪8に係止する。更にバンド部2を挿入すると、最先端の係止歯3よりもバンド基端側の複数の係止歯3が、係止片7の係止爪8,9を順次乗り越えて、同係止爪8,9に断続的に係止して、被結束部材が締付け保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-31116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1の結束バンドでは、本願明細書に添付した図10に示すように、バンド部2の最先端側に位置する係止歯3の頂部3aが、係止爪8の裾部8aを押圧して、係止片7を撓ませるようになっている。しかし、係止片7の撓み変形時の支点(係止片7の連結部7a)と、係止爪8の押圧力が付与される作用点(裾部8a)との距離Lが短いので、係止片7を撓ませにくく、バンド部2に大きな挿入力を付与する必要があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ロック部の挿通路に対する、バンド部の挿入力を低くすることができる、バンドクランプを提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のバンドクランプは、ロック部と、該ロック部から延出したバンド部とを有し、前記ロック部は、前記バンド部が挿通される挿通路と、該挿通路の内部に撓み可能に形成された係止片とを有し、前記バンド部は、少なくとも片面から突出形成された複数の係止歯を有し、前記係止片は、前記バンド部が前記挿通路に挿入されるとき、前記係止歯に係止する係止爪を有し、各係止歯は、前記バンド部の延出方向の先端側に位置する突出量が最小の裾部と、前記バンド部の延出方向の基端側に位置する突出量が最大の頂部とを有しており、前記複数の係止歯のうち、前記バンド部の延出方向の最も先端側に位置する最先端係止歯の、前記裾部から前記頂部までの、前記バンド部の延出方向に沿った長さをAとし、前記複数の係止歯のうち、前記最先端係止歯に対して、前記バンド部の延出方向の基端側に隣接した係止歯の、前記裾部から前記頂部までの、前記バンド部の延出方向に沿った長さをBとしたとき、前記Aが前記Bよりも大きくなるように形成されており、前記最先端係止歯は、前記裾部から前記頂部までの間に、断続的又は連続的な斜面をなして突出するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バンド部に設けた最先端係止歯は、裾部から頂部までの間に、断続的又は連続的な斜面をなして突出するように設けられているので、ロック部とバンド部との間に、ケーブルや電線等の被結束部材を配置した後、バンド部の先端部をロック部の挿通路に挿入して、係止片の係止爪にバンド部の係止歯を係止させていく際に、最先端係止歯が、係止爪を押圧して係止片を撓ませるため、係止片の撓み変形時の支点と、係止爪の、最先端係止歯からの押圧力が付与される作用点との距離をなるべく長く確保して、係止片を撓ませやすくすることができ、ロック部の挿通路にバンド部を低い挿入力で挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るバンドクランプの一実施形態を示す斜視図である。
図2】同バンドクランプの拡大断面図である。
図3】同バンドクランプを構成するバンド部を示しており、(a)はその平面図、(b)は断面図である。
図4】同バンドクランプにおいて、ロック部の挿通路にバンド部を挿入する際の状態を示しており、(a)はその第1工程を示す拡大断面図、(b)は第2工程を示す拡大断面図である。
図5】同バンドクランプにおいて、ロック部の挿通路にバンド部を挿入する際の状態を示しており、(a)はその第3工程を示す拡大断面図、(b)は第4工程を示す拡大断面図である。
図6】同バンドクランプにおいて、ロック部の挿通路にバンド部を挿入する際の状態を示しており、その第5工程を示す拡大断面図である。
図7】同バンドクランプの拡大正面図である。
図8】同バンドクランプを用いて、被結束部材を結束した状態の断面説明図である。
図9】同バンドクランプを構成するバンド部の、他形状を示す断面図である。
図10】従来の結束バンドの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係るバンドクランプの、一実施形態について説明する。
【0012】
図8に示すように、このバンドクランプ10は、例えば、車両の内部に配設される、複数の電線やケーブル、チューブ、パイプ等の被結束部材Hを結束するためのものである。そして、図1図2に示すように、このバンドクランプ10は、ロック部20と、該ロック部20から延出したバンド部40とを有している。また、図1に示すように、バンド部40の片面45からは、複数の係止歯49,51が突出して形成されている。
【0013】
まず、ロック部20について詳述する。図1及び図2に示すように、この実施形態のロック部20は、底壁21と、該底壁21の幅方向両側の周縁部から立設した一対の側壁22,22と、これらの一対の側壁22,22の立設方向先端部どうしを連結する天井壁23とからなり、略四角枠状をなしている。また、ロック部20の内部には、複数の壁部で囲まれることによって、バンド部40が挿通される挿通路25が形成されている。この挿通路25の一端側開口が、バンド部40が挿入されるバンド部入口25aをなし、他端側開口が、バンド部40が挿出されるバンド部出口25bをなしている。
【0014】
また、図7に示すように、挿通路25の内部には、一対の突状支持部27,27が設けられている。この実施形態では、挿通路25を画成する底壁21と一対の側壁22,22との内側角部に、バンド部40の挿入方向に沿って延びる、一対の突状支持部27,27が突設されている。
【0015】
上記挿通路25の内部には、係止片30が撓み可能に形成されており、この係止片30は、バンド部40が挿通路25に挿入されるとき、係止歯49,51に係止する係止爪31,32を有している。この実施形態における係止片30は、前記一対の突状支持部27,27の間に所定隙間を介して撓み可能に形成されたものであって(図7参照)、図2に示すように、その基端30aが前記底壁21に連結されており、先端30bがバンド部出口25b側へ向けて延出している。なお、係止片30は、その基端30aとロック部20の底壁21との連結部分を撓み支点P1(図4(a)参照)として、撓み変形するようになっている。また、係止片30の天井壁23に向く面から、バンド部40の係止歯49,51に係止する、係止爪31,32が突出して設けられている。この実施形態では、係止片30の基端30a側に係止爪31が配置されており、係止片30の先端30b側に係止爪32が配置されている。
【0016】
また、各係止爪31,32の天井壁23側の面には、バンド部出口25b側に向かって次第に突出高さが高くなるテーパ面31a,32aが形成されている。更に各係止爪31,32の、係止片30の天井壁側の面からの突出量が最も大きい部分が、頂部31b,32bをなしている。また、各係止爪31,32の、係止片30の天井壁側の面からの突出量が最も小さい部分が、裾部31c,32cをなしている。更に、各係止爪31,32の、頂部31b,32bよりも係止片先端側には、バンド部40の係止歯49,51に係止する、係止部31d,32dが設けられている(図2及び図5(a)参照)。なお、係止片に設けた係止爪は2つではなく、1つとしてもよいし、3つ以上であってもよい。
【0017】
また、ロック部20には、図8に示すように、バンドクランプ10を、車両パネルや車体フレーム等の被取付部材100に取付けるための、係止脚35が連設されている。図7を併せて参照すると、この実施形態の係止脚35は、前記底壁21の外周から、天井壁23とは反対側に向けて、斜め外方に傘状に広がるフランジ部36と、底壁21の裏側から延出した柱部37と、この柱部37の延出方向先端から、前記フランジ部36に向けて斜め外方に延びる、撓み可能な一対の弾性係止片38,38とから構成されている。そして、被取付部材100の取付孔105の表側から係止脚35を挿入すると、取付孔105の表側周縁にフランジ部36が当接すると共に、取付孔105の裏側周縁に一対の弾性係止片38,38が係止して、被取付部材100の取付孔105に、係止脚35を介して、バンドクランプ10が取付けられるようになっている(図8参照)。なお、係止脚は、上記構造に限定されるものではなく、また、係止脚を設けなくともよい。
【0018】
次にバンド部40について詳述する。図1図2に示すように、この実施形態のバンド部40は、その基端41が前記ロック部20の天井壁23の、バンド部出口25bの近傍に連結されており、この連結部分から所定長さで帯状に延出している。なお、バンド部40の延出方向の先端43の幅方向(バンド部40の延出方向及び係止歯49,51の突出方向に直交する方向を意味する。以下の説明でも同様)の両側部は、次第に幅狭に形成されており、ロック部20の挿通路25のバンド部入口25aに挿入しやすくなっている。
【0019】
また、バンド部40の片面45(ロック部20の挿通路25にバンド部40を挿入したときに、係止片30の係止爪31,32に向く面)からは、複数の係止歯49,51が突出している。この実施形態では、図3(a)に示すように、バンド部40の延出方向の最先端から基端41側の所定範囲には、係止歯が突出していないが、この係止歯未突出部分に最も近い位置に、バンド部40の延出方向の最も先端側に位置する、最先端係止歯51が突出しており、この最先端係止歯51よりもバンド部40の延出方向の基端41側に向けて、複数の係止歯49が、所定間隔をあけて設けられている。
【0020】
なお、本発明における「係止歯」とは、図3(b)に示すように、バンド部40の所定の片面45と、この片面45に対してバンド部40の延出方向に隣接する他の片面45との間で、突出した一つのものを意味しており、例えば、二つ一組の係止歯や、三つ一組の係止歯等は含まない。
【0021】
また、図3(b)に示すように、各係止歯49,51は、バンド部40の延出方向の先端43側に、突出量が最小(バンド部40の片面45からの突出量が最も小さい)の裾部53と、この裾部53よりもバンド部40の延出方向の基端41側に、バンド部40の片面45からの突出量が最大(バンド部40の片面45からの突出量が最も大きい)の頂部54とを有している。更に、各係止歯49,51の、頂部54よりも、バンド部40の基端41側には、バンド部40の延出方向に対してほぼ直角な、係止部55が形成されている。
【0022】
更に、図3(a),(b)に示すように、バンド部40の幅方向両側であって、バンド部40の片面45からは、バンド部40の長手方向に沿って延びる、一対のリブ47,47が、所定高さで突出している。この実施形態におけるリブ47は、係止歯49,51と同一高さで突出している。また、これらのリブ47,47は、バンド部40がロック部20の挿通路25に挿入されたときに、前記一対の突状支持部27,27(図7参照)に当接して、バンド部40の片面45が、ロック部20の底壁21の内面から離反するように支持するものである。更に図3(a)に示すように、これらの一対のリブ47,47の間に、複数の係止歯49,51の幅方向両側部が配置されて一対のリブ47,47連結されている。
【0023】
そして、この実施形態のバンドクランプ10においては、図3(b)に示すように、最先端係止歯51は、裾部53から頂部54までの間に、断続的な斜面をなして突出するように設けられている。また、この最先端係止歯51は、バンド部40の延出方向の先端43側に位置する第1斜面59と、この第1斜面59よりもバンド部40の延出方向の基端41側に位置する第2斜面61と、第1斜面59と第2斜面61との間に設けられた棚面63とを有しており、最先端係止歯51の、バンド部40の延出方向の先端43側及びバンド部40の延出方向の基端41側に、第1斜面59及び第2斜面61を介して、段状に突出する部分が設けられている。すなわち、この実施形態における最先端係止歯51は、第1斜面59、及び、それよりもバンド部基端側に所定長さ離れた第2斜面61が、バンド部40の延出方向に沿って断続的に設けられており、これらの斜面59,61を介して、バンド部40の片面45から突出している。また、第1斜面59と第2斜面61との間に設けた棚面63は、バンド部40の片面45からの突出量が一定とされている。
【0024】
なお、本発明における最先端係止歯の「斜面」とは、バンド部40の片面45に対して、バンド部40の延出方向先端側が低く、バンド部40の延出方向基端側が高く突出するような斜面を意味しており、バンド部40の延出方向先端側が高く、バンド部40の延出方向基端側が低くなるような斜面は含まない。また、最先端係止歯の「段状に突出する部分」とは、この実施形態の場合、第1斜面59及び該第1斜面59に連設した棚面63の先端側からなる段状部分と、第2斜面61及び該第2斜面61に連設した頂部54からなる段状部分との、2つの段状部分から構成されている。
【0025】
より具体的に説明すると、この実施形態においては、図3(b)に示すように、最先端係止歯51の裾部53から前記第1斜面59が、バンド部40の基端側に向けて次第に高く突出するように傾斜して設けられており、この第1斜面59の頂点(最も高い部分)から前記棚面63が一定高さでバンド部基端側に向けて延出しており、更にこの棚面63の基端(バンド部40の基端側の端部)から、前記第2斜面61が、バンド部40の基端側に向けて次第に高く突出するように傾斜して設けられている。また、最先端係止歯51の頂部54は、第2斜面61の頂点(最も高い部分)からバンド部基端側に向けて、バンド部40の片面45からの突出量が一定となるように形成されている。
【0026】
なお、棚面63の、バンド部40の片面45からの突出量は、バンド部40の片面45からの最先端係止歯51の頂部54の突出量を1としたときに、1/4~3/4であることが好ましく、1/3~2/3であることがより好ましい。また、棚面は、バンド部40の片面45からの突出量が一定ではなくても、バンド部40の片面45に対して所定角度で傾斜した斜面であってもよい。
【0027】
そして、上記最先端係止歯51は、バンド部40の先端43側に、最先端係止歯51の頂部54よりも低く形成された部分(ここでは第1斜面59)を有していることにより、図4(a)に示すように、ロック部20の挿通路25にバンド部40を先端43側から挿入したときに、前記第1斜面59が、係止爪31の裾部31cには当接せずに、最初に係止爪31のテーパ面31aの所定位置(裾部31cから離れた位置)に当接して同係止爪31を押圧し、係止片30をバンド部40の片面45側から離れる方向に撓み変形させるようになっている。このとき、図4(a)に示すように、係止爪31のテーパ面31aには、最先端係止歯51の第1斜面59が面接触して、押圧力が付与されるようになっているが、係止爪31のテーパ面31aのうち、係止片30の基端30aに最も近い箇所を、最先端係止歯51からの押圧力が付与される作用点P2とする。
【0028】
また、図4(a)に示す状態からバンド部40が更に挿入されると、図4(b)に示すように、係止爪31が棚面63に乗り上がって、係止爪31のテーパ面31aに、最先端係止歯51の第2斜面61が当接し、その後、係止爪31の頂部31bが最先端係止歯51の頂部54を乗り越えると、係止片30が弾性復帰して、図5(a)に示すように、最先端係止歯51の係止部55と係止爪31の係止部31dとが互いに係止するようになっている。この図5(a)に示す状態からバンド部40が更に挿入されると、最先端係止歯51の第2斜面61が、係止爪31に対して基端30aから離れた位置にある、係止爪32のテーパ面32aの所定位置に当接して、係止片30をバンド部40の片面45側から離れる方向に撓み変形させる。
【0029】
また、図3(b)に示すように、最先端係止歯51の、裾部53から頂部54(バンド部40の基端側の端部)までの、バンド部40の延出方向に沿った長さをAとし、最先端係止歯51に対して、バンド部40の延出方向の基端41側に隣接した係止歯49の、裾部53から頂部54までの、バンド部40の延出方向に沿った長さをBとしたとき、前記Aは、前記Bよりも大きくなるように形成されている。このように形成することにより、最先端係止歯51の、断続的又は連続的な斜面をなして突出するような形状を設けやすくなり(A<Bだと、斜面を形成しにくい)、また、挿通路へのバンド部の挿入時に、係止片を、比較的長期に亘って、撓んだ状態に維持して、係止片に設けた係止爪が、係止歯の頂部を乗り越えやすくする(A<Bだと、挿通路へのバンド部挿入時に、係止片がすぐに弾性復帰して、係止爪が係止歯の頂部を乗り越えにくい)。
【0030】
更に、最先端係止歯51の頂部54が、係止爪32の頂部32bを乗り越えた状態では、図5(b)に示すように、バンド部先端側に位置する係止歯49の傾斜面65が、係止爪32のテーパ面32aに当接するが、この係止歯49に対してバンド部基端側に隣接する、別の係止歯49の傾斜面65は、係止爪31のテーパ面31aに対して所定隙間をあけて配置されるようになっており、常にバンド部先端側に位置する係止歯49の傾斜面65が、係止爪32のテーパ面32aに当接して、係止片30を撓み変形させるようになっている。すなわち、この実施形態においては、最先端係止歯51よりも、バンド部40の基端41側に位置する複数の係止歯49のうち、バンド部40の先端側に最も近い係止歯49が、ロック部20の挿通路25への挿入時に、係止片30に設けた複数の係止爪31,32のうち、係止片30の撓み支点P1から離れた係止爪32に当接して、係止片30を撓み変形させるように構成されている。
【0031】
そして、図3(b)に示すように、最先端係止歯51の棚面63の、バンド部40の延出方向に沿った長さをCとし、最先端係止歯51の頂部54の、バンド部40の延出方向に沿った長さをDとしたとき、前記Cは前記Dよりも大きくなるように形成されている。
【0032】
なお、この実施形態の最先端係止歯51は、裾部53から頂部54までの間に、棚面63を挟んで、断続的に設けた2つの斜面59,61をなして突出した形状となっているが、本発明における最先端係止歯としては、例えば、裾部から頂部までの間に、断続的に3つ以上の斜面をなして突出した形状としたり、一定高さで突出する棚面を複数形成したりしてもよい。
【0033】
また、この実施形態においては、図3(b)に示すように、係止歯49,51の頂部54は、バンド部40の片面45からの突出量が一定となるように形成されているが、図3(b)の部分拡大図の二点鎖線で示すように、係止歯49,51の頂部54を山状の一点とし、該頂部54からバンド部40の延出方向の先端43側に向けて傾斜するような、傾斜部54aが形成されていてもよい。なお、図3(b)の部分拡大図の二点鎖線で示すように、最先端係止歯51の頂部54からバンド部40の延出方向の先端43側に向けて傾斜する傾斜部54aが形成されている場合には、同傾斜部54aの、バンド部40の延出方向に沿った長さをDとし、前記Cは前記Dよりも大きくなるように形成されている。更に、各係止歯49,51の係止部55は、バンド部40の延出方向に対してほぼ直角ではなく、バンド部40の延出方向に対して所定角度で傾斜していてもよい。
【0034】
また、図9に示すように、最先端係止歯51は、裾部53から頂部54までの間に、連続的な斜面をなして突出する構造としてもよい。この場合の最先端係止歯51は、その裾部53から、バンド部40の基端側に向けて次第に高くなるように連続的に突出する、連続斜面67を有している。なお、最先端係止歯に、上記のような連続斜面を、複数設けてもよい(例えば、バンド部40の片面45に対して傾斜角度の異なる連続斜面を、バンド部40の延出方向に沿って複数連設したような形状としてもよい)。
【0035】
更に、複数の係止歯49は、その裾部53から傾斜面65が、バンド部40の基端側に向けて次第に高く突出するように傾斜して設けられていると共に、この傾斜面65の頂点から、バンド部40の片面45からの突出量が一定の頂部54が形成されている。
【0036】
次に、上記構成からなるバンドクランプ10の使用方法及び作用効果について説明する。
【0037】
まず、バンド部40を、複数の係止歯49,51が外向きとなるように湾曲させて、電線やケーブル等の被結束部材Hに巻き付ける。そして、バンド部40の片面45側をロック部20の底壁21側に向けて、バンド部40の先端43側から、ロック部20の挿通路25のバンド部入口25aに挿入する。このとき、バンド部40の一対のリブ47,47が、ロック部20の一対の突状支持部27,27に支持されて、バンド部40がガイドされながら挿入される。
【0038】
すると、図4(a)に示すように、最先端係止歯51の第1斜面59が、係止爪31の裾部31cには当接せずに、係止爪31のテーパ面31aの、裾部31cから離れた所定位置に当接して押圧し、係止片30が、バンド部40の片面45から離れる方向に撓み変形していく。その後、係止爪31の頂部31bが棚面63に当接して棚面63上を摺接していき、図4(b)に示すように、最先端係止歯51の第2斜面61が、係止爪31のテーパ面31aに当接する。そして、係止爪31の頂部31bが最先端係止歯51の頂部54を乗り越えると、係止片30が弾性復帰して、図5(a)に示すように、最先端係止歯51の係止部55と係止爪31の係止部31dとが互いに係止して、ロック部20からバンド部40が抜け外れないように仮保持される。
【0039】
その後、バンド部40が更に挿入されると、最先端係止歯51の第2斜面61が、係止爪32のテーパ面32aの所定位置に当接して押圧し、係止片30を撓み変形させ、係止爪32の頂部32bが最先端係止歯51の頂部54を乗り越えると、係止片30が弾性復帰して、最先端係止歯51の係止部55と係止爪32の係止部32dとが互いに係止する。更にバンド部40が挿入されると、図5(b)に示すように、最先端係止歯51に隣接する係止歯49の傾斜面65が、係止爪32のテーパ面32aに当接して押圧し、係止片30を撓み変形させ、係止爪32の頂部32bが係止歯49の頂部54を乗り越えると、係止片30が弾性復帰して、図6に示すように、係止歯49の係止部55と係止爪32の係止部32dとが互いに係止する。
【0040】
以後、バンド部40を挿入していくと、バンド部先端側に位置する係止歯49の傾斜面65が、係止片先端側に位置する係止爪32のテーパ面32aに順次当接して、係止片30を撓み変形させて、係止歯49の係止部55と係止爪32の係止部32dとが断続的に係止して(図6参照)、バンド部40の仮保持状態が維持される。その後、所定の工具や人力等によって、バンド部40が被結束部材Hの外周を締め付けるまで引っ張ることで、図8に示すように、被結束部材Hをバンド部40で締め付け保持することができる。
【0041】
以上のように、このバンドクランプ10においては、最先端係止歯51の、裾部53から頂部54までの、バンド部40の延出方向に沿った長さAが、最先端係止歯51に対して、バンド部40の延出方向の基端41側に隣接した係止歯49の、裾部53から頂部54までの、バンド部40の延出方向に沿った長さBよりも大きくなるように形成されており、かつ、バンド部40に設けた最先端係止歯51は、裾部53から頂部54までの間に、断続的な斜面をなして突出するように設けられているので、ロック部20とバンド部40との間に被結束部材Hを配置した後、バンド部40の先端43をロック部20の挿通路25に挿入して、係止片30の係止爪31,32にバンド部40の係止歯49,51を係止させていく際に、最先端係止歯51が、係止爪31を押圧して係止片30を撓ませるようになっている。その結果、係止片30の、撓み変形時の支点P1と、係止爪31の、最先端係止歯51からの押圧力が付与される作用点P2との距離L(図4(a)参照)をなるべく長く確保して、係止片30を撓ませやすくすることができ、ロック部20の挿通路25にバンド部40を低い挿入力で挿入することができる。特に、ロック部20の挿通路25にバンド部40を挿入して、係止片30の係止爪31に、最先端係止歯51を係止させる際の、バンド部40の挿入力を低下することができる。
【0042】
また、最先端係止歯51が、係止爪31を押圧した状態から、更にバンド部40が挿入される際は、すでに係止片30が撓んでいる状態となっているので(図4(b)参照)、係止爪31が最先端係止歯51の頂部54を乗り越えやすくすることでき、バンド部40の挿入力の低下を図ることができる。
【0043】
ところで、この実施形態においては、図5(b)に示すように、複数の係止歯49のうち、バンド部40の先端側に最も近い係止歯49が、ロック部20の挿通路25への挿入時に、係止片30の撓み支点P1から離れた係止爪32に当接して、係止片30を撓み変形させるように構成されている。そのため、係止片30の、撓み変形時の支点P1と、係止爪32の、最先端係止歯51からの押圧力が付与される作用点P3との距離Lを長く確保することができるので、係止片30を撓ませやすくすることができ、最先端係止歯51の通過後においても、バンド部40の挿入力を低くすることができる。
【0044】
なお、上記の効果は、図9に示すように、最先端係止歯51が、裾部53から頂部54までの間に、連続斜面67を有する場合であっても、同様に得ることができる。
【0045】
また、この実施形態においては、最先端係止歯51は、バンド部40の延出方向の先端43側に位置する第1斜面59と、この第1斜面59よりもバンド部40の延出方向の基端41側に位置する第2斜面61と、第1斜面59と第2斜面61との間に設けられた棚面63とを有しており、最先端係止歯51の、バンド部40の延出方向の先端43側及びバンド部40の延出方向の基端41側に、第1斜面59及び第2斜面61を介して、段状に突出する部分が設けられている。そのため、ロック部20の挿通路25にバンド部40を挿入する際、図4(b)に示すように、係止片30の係止爪31を、最先端係止歯51の第1斜面59と第2斜面61との間に係止させて(ここでは係止爪31の頂部31bを棚面63に係止させる)、バンド部40をロック部20の挿通路25に挿入した状態で仮保持することができる。すなわち、最先端係止歯51により押圧された係止片30は、初期形状(図4(a)参照)に弾性復帰しようとするので、係止爪31が棚面63に係止するようになっている。
【0046】
更に、この実施形態においては、図4(b)に示すように、第1斜面59と第2斜面61との間に設けた棚面63は、バンド部40の片面45からの突出量が一定とされているので、バンド部40の仮保持を安定して行うことができる。
【0047】
また、この実施形態においては、図3(b)に示すように、棚面63の、バンド部40の延出方向に沿った長さCが、最先端係止歯51の、バンド部40の片面45からの突出量が一定に形成された頂部54、又は、最先端係止歯51の頂部54からバンド部40の延出方向の先端43側に向けて傾斜する傾斜部54a(図3(b)の部分拡大図の二点鎖線参照)の、バンド部40の延出方向に沿った長さDよりも大きくなるように形成されているので、棚面63の長さCを長く確保することができ、バンド部40の仮保持を更に安定して行うことができる。
【0048】
更に、この実施形態においては、ロック部20の挿通路25の内部には、一対の突状支持部27,27が設けられており(図7参照)、バンド部40の、延出方向に直交する幅方向の両側部には、一対の突状支持部27,27に支持される、一対のリブ47,47が設けられており、これらの一対のリブ47,47の間に、最先端係止歯51が配置された構造となっている(図3(a)参照)。そのため、ロック部20の挿通路25にバンド部40を挿入すると、一対の突状支持部27,27に一対のリブ47,47が支持されて、バンド部40のガタ付きを抑えつつ、バンド部40を係止片30から離れる方向に位置合わせすることができ、最先端係止歯51の斜面を、係止片30の係止爪31の突出方向途中部分に当接させやすくすることができ(図4(a),(b)に示すように、最先端係止歯51の第1斜面59や第2斜面61を係止爪31のテーパ面31aに当接させやすくすることができる)、バンド部40の挿入力の低下をより適切に図ることができる。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
10 バンドクランプ
20 ロック部
25 挿通路
30 係止片
31,32 係止爪
35 係止脚
40 バンド部
41 基端
43 先端
45 片面
47,47 リブ
49 係止歯
51 最先端係止歯
53 裾部
54 頂部
54a 傾斜部
59 第1斜面
61 第2斜面
63 棚面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10