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特許7052119加飾用積層体、加飾用積層体の製造方法および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】加飾用積層体、加飾用積層体の製造方法および車両
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220404BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220404BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20220404BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20220404BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 A
B05D1/36 Z
B05D7/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021063714
(22)【出願日】2021-04-02
【審査請求日】2021-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷 高和
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-187828(JP,A)
【文献】特開平11-010065(JP,A)
【文献】特開平11-099598(JP,A)
【文献】特開平11-099597(JP,A)
【文献】特開平09-150487(JP,A)
【文献】特開2003-253160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に隣接して、
カバーフィルムと、
クリヤー層と、
意匠層と、
基材フィルムと、
接着層と、を含み、
前記カバーフィルムが、前記クリヤー層に熱ラミネートされており、
前記意匠層が、意匠層用塗料の塗膜であり、
前記クリヤー層が、クリヤー層用塗料の塗膜であり、
前記クリヤー層用塗料がアクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、20~100℃である、加飾用積層体。
【請求項2】
前記クリヤー層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値と前記意匠層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値との差の絶対値が、0.10以上である、請求項に記載の加飾用積層体。
【請求項3】
前記カバーフィルムを除去した場合の前記クリヤー層の表面のウェーブスキャンにおけるショートウェーブが1.0~30.0、かつロングウェーブが1.0~20.0である、請求項1または2に記載の加飾用積層体。
【請求項4】
順に隣接して、カバーフィルムと、クリヤー層と、意匠層と、基材フィルムと、接着層とを含む、加飾用積層体の製造方法であって、
前記基材フィルムの一面に意匠層用塗料を塗布して意匠層を形成する工程(A)と、
前記意匠層の表面にクリヤー層用塗料を塗布してクリヤー層を形成する工程(B)と、
前記クリヤー層の表面にカバーフィルムを熱ラミネートする工程(C)と、
前記基材フィルムの意匠層を形成する面とは反対側の面に接着層を形成する工程(D)と、
を含み、
前記クリヤー層用塗料が、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、20~100℃である、加飾用積層体の製造方法。
【請求項5】
前記工程(C)の前記熱ラミネートの温度が、30~100℃である、請求項に記載の加飾用積層体の製造方法。
【請求項6】
前記クリヤー層用塗料の25℃での粘度が、300~2,000mPa・sであり、
前記意匠層用塗料の25℃での粘度が、300~4,000mPa・sである、請求項4または5に記載の加飾用積層体の製造方法。
【請求項7】
前記クリヤー層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値と前記意匠層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値との差の絶対値が、0.10以上である、請求項4~6のいずれか一項に記載の加飾用積層体の製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の加飾用積層体から前記カバーフィルムを除去した積層体Lを車両表面に有し、
前記接着層が車両に接着している、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾用積層体、加飾用積層体の製造方法および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の表面の意匠性を高めるために、物品表面に貼り付ける加飾シートが用いられている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の加飾シートは、順に剥離フィルムと意匠層とウレタン樹脂を含有する塗膜とを有し、特許文献1の実施例では、順に剥離フィルムと、意匠層(クリアコート層と着色層とPVCフィルムとからなる)と、ウレタン層と、粘着層と、PETフィルムからなる加飾シートを作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-110960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の加飾シートは、対象物に加飾シートを貼り付け後、剥離フィルムを剥離して意匠層を露出することで対象物に意匠性を付与するが、剥離フィルムを剥離した後の意匠層(クリアコート層)の表面の平滑性が不十分であった。剥離フィルムを剥離した後の最も観察者側の層の表面平滑性が低い、すなわち、当該層の表面の凹凸の高さおよび周期が大きい場合、その凹凸が観察者に認識され、加飾シートの意匠性が低下してしまう。
【0005】
また、特許文献1の加飾シートでは、クリアコート層と着色層が混相することがあった。クリアコート層と着色層が混相すると、観察者に視認される着色層の意匠の鮮映性が低下し、加飾シートの意匠性が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、カバーフィルムを除去した後のクリヤー層の表面平滑性に優れ、かつ、意匠層の意匠の鮮映性に優れる加飾用積層体を提供することを目的とする。また、本発明は、当該加飾用積層体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、優れた意匠性を有する積層体を有する車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加飾用積層体は、
順に隣接して、
カバーフィルムと、
クリヤー層と、
意匠層と、
基材フィルムと、
接着層と、を含み、
前記カバーフィルムが、前記クリヤー層に熱ラミネートされており、
前記意匠層が、意匠層用塗料の塗膜であり、
前記クリヤー層が、クリヤー層用塗料の塗膜である、加飾用積層体である。これによって、カバーフィルムを除去した後のクリヤー層の表面平滑性に優れ、かつ、意匠層の意匠の鮮映性に優れる。
【0008】
本発明に係る加飾用積層体の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料がアクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、20~100℃である。
【0009】
本発明に係る加飾用積層体の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値と前記意匠層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値との差の絶対値が、0.10以上である。
【0010】
本発明に係る加飾用積層体の一実施形態では、前記カバーフィルムを除去した場合の前記クリヤー層の表面のウェーブスキャンにおけるショートウェーブが1.0~30.0、かつロングウェーブが1.0~20.0である。
【0011】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法は、順に隣接して、カバーフィルムと、クリヤー層と、意匠層と、基材フィルムと、接着層とを含む、加飾用積層体の製造方法であって、
前記基材フィルムの一面に意匠層用塗料を塗布して意匠層を形成する工程(A)と、
前記意匠層の表面にクリヤー層用塗料を塗布してクリヤー層を形成する工程(B)と、
前記クリヤー層の表面にカバーフィルムを熱ラミネートする工程(C)と、
前記基材フィルムの意匠層を形成する面とは反対側の面に接着層を形成する工程(D)と、
を含む、加飾用積層体の製造方法である。これによって、カバーフィルムを除去した後のクリヤー層の表面平滑性に優れ、かつ、意匠層の意匠の鮮映性に優れる加飾用積層体を製造することができる。
【0012】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記工程(C)の前記熱ラミネートの温度が、30~100℃である。
【0013】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料が、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、20~100℃である。
【0014】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料の25℃での粘度が、300~2,000mPa・sであり、
前記意匠層用塗料の25℃での粘度が、300~4,000mPa・sである。
【0015】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値と前記意匠層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値との差の絶対値が、0.10以上である。
【0016】
本発明に係る車両は、上記いずれかの加飾用積層体から前記カバーフィルムを除去した積層体Lを車両表面に有し、
前記接着層が車両に接着している、車両である。これによって、車両は、優れた意匠性を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カバーフィルムを除去した後のクリヤー層の表面平滑性に優れ、かつ、意匠層の意匠の鮮映性に優れる加飾用積層体を提供することができる。また、本発明によれば、当該加飾用積層体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、優れた意匠性を有する積層体を有する車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る加飾用積層体の層構成の一例を示した模式図である。
図2図2は、本発明に係る加飾用積層体の層構成の別の一例を示した模式図である。
図3図3は、積層体Lを車両表面に有する本発明に係る車両の一例を示した模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0020】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0021】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
【0022】
数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、20~100℃は、20℃以上100℃以下の範囲を意味する。
【0023】
添付の図面は、本発明の理解を容易にすることを優先した模式図であるため、図中の各要素の縮尺は正確ではない。
【0024】
本発明において、第1、第2、(A)、(B)、(C)、(D)などの符号は、ある要素を他の要素と区別するための符号に過ぎず、位置または順序を限定するための符号ではない。
【0025】
本発明において、樹脂成分のガラス転移温度(Tg)は、実施例に記載の方法により測定する。
【0026】
本発明において、樹脂成分の重量平均分子量Mwは、特開2015-145103号公報の段落[0065]の記載の装置および条件で測定する。
【0027】
本発明において、溶解性パラメータ(SP)値は、K.W.Suh,D.H.Clarke J.Polymer.Sci.,A-1,5,1671(1967)に記載の方法により求める。
【0028】
本発明において、クリヤー層の表面のショートウェーブおよびロングウェーブは、実施例に記載の方法により測定する。
【0029】
本発明において、クリヤー層用塗料および意匠層用塗料の粘度は、別段の記載がない限り、25℃での粘度を指す。クリヤー層用塗料および意匠層用塗料の粘度は、実施例に記載の方法により測定する。
【0030】
(加飾用積層体)
本発明に係る加飾用積層体は、
順に隣接して、
カバーフィルムと、
クリヤー層と、
意匠層と、
基材フィルムと、
接着層と、を含み、
前記カバーフィルムが、前記クリヤー層に熱ラミネートされており、
前記意匠層が、意匠層用塗料の塗膜であり、
前記クリヤー層が、クリヤー層用塗料の塗膜である、加飾用積層体である。
【0031】
図1は、本発明に係る加飾用積層体の層構成の一例を示した模式図である。図1の加飾用積層体1は、順に隣接して、カバーフィルム2と、クリヤー層3と、意匠層4と、基材フィルム5と、接着層6とからなる。
【0032】
図2は、本発明に係る加飾用積層体の層構成の別の一例を示した模式図である。図2の加飾用積層体1は、図1の加飾用積層体1の接着層6の外側に第2のカバーフィルム7を有する。
【0033】
以下、本発明に係る加飾用積層体の必須要素であるカバーフィルム、クリヤー層、意匠層、基材フィルムおよび接着層について説明する。
【0034】
・カバーフィルム
カバーフィルムは、使用時まで加飾用積層体のクリヤー層および意匠層を保護する働きを有する。本発明に係る加飾用積層体のカバーフィルムは、後述するクリヤー層に熱ラミネートされている。カバーフィルムがクリヤー層に熱ラミネートされていることによって、熱ラミネートの熱がクリヤー層の樹脂成分を変形させ、クリヤー層のカバーフィルム側の表面を平滑化し、カバーフィルムを除去した後でも当該表面の平滑性が良好となる。
【0035】
カバーフィルムとしては、従来公知の加飾用積層体のカバーフィルムおよび保護フィルムを用いることができる。
【0036】
カバーフィルムとしては、例えば、ポリオレフィンフィルム、変性ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリウレタンフィルム、ウレタンナイロンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、アクリルフィルムなどが挙げられる。
【0037】
ポリオレフィンフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)が挙げられる。
【0038】
ポリエステルフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、無延伸ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ乳酸などが挙げられる。
【0039】
ポリスチレン系樹脂フィルムとしては、例えば、ポリスチレンフィルム、AS樹脂フィルム、ABS樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0040】
カバーフィルムの厚さは、適宜調節すればよく、例えば、10~200μmであり、25~100μmが好ましい。
【0041】
カバーフィルムは、表面、例えば、クリヤー層側の表面およびクリヤー層側とは反対側の表面の一方または両方に、離型剤が塗布されていてもよい。カバーフィルムは、コロナ処理、低温プラズマ処理などの表面改質処理がされたものでもよい。また、カバーフィルムは、帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0042】
カバーフィルムは、市販品を用いてもよい。カバーフィルムの市販品としては、例えばユニチカ社製の商品名「ユニピール(登録商標)」、東レ社製の商品名「ルミラー(登録商標)S-10」、帝人フィルムソリューション社製の商品名「ピューレックスA54」、ニッパ社製の商品名「PETセパレーターTF-535」、藤森工業社製の商品名「フィルムバイナ(登録商標)NT-2」、東レフィルム加工社製の商品名「セラピールWZS」、東洋クロス社製の商品名「SP4030」、「SP4035」、アイム社製の商品名「RF1・CS006」、日本マタイ社製の商品名「PET238」などが挙げられる。
【0043】
・クリヤー層
クリヤー層は、クリヤー層用塗料の塗膜であり、上記カバーフィルムを除去した後の使用時に加飾用積層体の意匠層を保護する働きを有する。クリヤー層としては、従来公知の自動車の上塗り塗膜のクリヤー層、加飾積層体のクリヤー層を用いることができる。
【0044】
クリヤー層を形成するクリヤー層用塗料は、従来公知のクリヤー層用塗料を用いることができる。クリヤー層用塗料は、例えば、樹脂成分と溶媒とを含む。
【0045】
クリヤー層用塗料の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、樹脂成分として、例えば、特開2020-100783号公報に記載の水酸基含有アクリル樹脂(c-1)、非水分散型アクリル樹脂(c-2)、ジオール樹脂(c-3)、ポリイソシアネート化合物(c-4)などを用いてもよい。また、樹脂成分として、例えば、特開2015-145103号公報に記載のポリウレタンアクリレート(B1)、特開2017-007109号公報に記載のウレタン樹脂(D1)などを用いてもよい。
【0046】
一実施形態では、クリヤー層用塗料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂を含む。別の実施形態では、クリヤー層用塗料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂を含む。さらに別の実施形態では、クリヤー層用塗料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂のみである。
【0047】
クリヤー層用塗料の樹脂成分としてはアクリル樹脂が好ましい。また、クリヤー層用塗料には樹脂成分とイソシアネート化合物の混合物を用いることが好ましい。このような混合物であれば、室温付近では粘着性を発現しないが、クリヤー層への加熱によって樹脂成分の可塑性が大きくなり、樹脂成分が変形しやすく、かつ、一定程度の粘着性を発現する。
【0048】
クリヤー層用塗料のアクリル樹脂の重量平均分子量は、例えば、1,000~200,000であり、3,000~100,000が好ましい。
【0049】
クリヤー層用塗料のアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、20~100℃であり、30~80℃が好ましい。一実施形態では、クリヤー層用塗料のアクリル樹脂のTgは、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上または70℃以上である。別の実施形態では、クリヤー層用塗料のアクリル樹脂のTgは、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下または30℃以下である。
【0050】
クリヤー層用塗料におけるアクリル樹脂の割合は、例えば、50質量%以上であり、60~99質量%が好ましい。一実施形態では、クリヤー層用塗料におけるアクリル樹脂の割合は、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上または90質量%以上である。別の実施形態では、クリヤー層用塗料におけるアクリル樹脂の割合は、99質量%以下、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下または65質量%以下である。
【0051】
クリヤー層用塗料中のアクリル樹脂のSP値は、例えば、8.00~11.00であり、9.00~10.50が好ましい。一実施形態では、クリヤー層用塗料中のアクリル樹脂のSP値は、8.00以上、8.10以上、8.20以上、8.30以上、8.40以上、8.50以上、8.60以上、8.70以上、8.80以上、8.90以上、9.00以上、9.10以上、9.20以上、9.30以上、9.40以上、9.50以上、9.60以上、9.70以上、9.80以上、9.90以上、10.00以上、10.10以上、10.20以上、10.30以上、10.40以上、10.50以上、10.60以上、10.70以上、10.80以上または10.90以上である。別の実施形態では、クリヤー層用塗料中のアクリル樹脂のSP値は、11.00以下、10.90以下、10.80以下、10.70以下、10.60以下、10.50以下、10.40以下、10.30以下、10.20以下、10.10以下、10.00以下、9.90以下、9.80以下、9.70以下、9.60以下、9.50以下、9.40以下、9.30以下、9.20以下、9.10以下、9.00以下、8.90以下、8.80以下、8.70以下、8.60以下、8.50以下、8.40以下、8.30以下、8.20以下または8.10以下である。複数のアクリル樹脂を混合して用いる場合は、個々のアクリル樹脂のSP値と配合比率に基づいて加重平均で求めたSP値を指す。
【0052】
本発明に係る加飾用積層体の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料がアクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、20~100℃である。
【0053】
クリヤー層用塗料に用いるイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を1個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、イソシアネート基を1個有するモノイソシアネート、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートなどの公知のイソシアネートまたはイソシアネート系硬化剤を用いることができる。
【0054】
モノイソシアネートとしては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリレンイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネートなどの芳香族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート;その単量体及びそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプなどの多量体などが挙げられる。なかでも硬化後の延伸性確保の観点から、HDIヌレートタイプ、アロファネートタイプを用いることが好ましい。
【0056】
市販品としては、R-271(日本ペイント・オートモーティブコーティングス)、クロスネートUV(大日精化工業)、D-178N(三井化学)、スミジュールN-3400(住友バイエルウレタン)などが挙げられる。
【0057】
イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を封止剤でブロックしたブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。これにより、イソシアネートの反応性を抑制し、貯蔵安定性が良好となり、また反応過程における取り扱いを容易にすることができる。
【0058】
封止剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの1価のアルキルアルコール類および芳香族アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類などが挙げられる。
【0059】
ブロックイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、旭化成社製の商品名「デュラネート 17B-60PX」、「TPA-B80E」などが挙げられる。
【0060】
クリヤー層用塗料の樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
クリヤー層用塗料の樹脂成分の量は、適宜調節すればよく、例えば、溶剤などを含むクリヤー層用塗料の全質量に対して、10~80質量%であり、好ましくは20~60質量%である。
【0062】
クリヤー層用塗料の溶剤としては、例えば、水、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3-オクチレングリコールなどのグリコール類;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ミネラルスピリット、灯油などの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメチレンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられる。溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
クリヤー層用塗料は、水性塗料でもよいし、溶剤系塗料でもよい。本発明では、塗料中の含有量が最も多い分散媒が、水であるものを水性塗料といい、一方、塗料中の含有量が最も多い分散媒が、溶剤であるものを溶剤系塗料という。
【0064】
クリヤー層用塗料には、樹脂成分と溶剤に加えて、クリヤー層用塗料で用いられている従来公知の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、架橋剤、硬化剤、顔料、表面調整剤、消泡剤、導電性充填剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、触媒などが挙げられる。
【0065】
クリヤー層用塗料の粘度は、適宜調節すればよく、例えば、100~5,000mPa・sであり、好ましくは300~2,000mPa・sである。一実施形態では、クリヤー層用塗料の粘度は、300mPa・s以上、400mPa・s以上、500mPa・s以上、1,000mPa・s以上または1,500mPa・s以上である。別の実施形態では、クリヤー層用塗料の粘度は、2,000mPa・s以下、1,500mPa・s以下、1,000mPa・s以下、500mPa・s以下または400mPa・s以下である。
【0066】
クリヤー層の厚さは、適宜調節すればよく、例えば、10~60μmであり、20~50μmが好ましい。
【0067】
カバーフィルムを除去した後のクリヤー層のカバーフィルム側の表面は、上述したように、熱ラミネートによって表面平滑性が良好である。塗膜表面の凹凸の高さと周期が小さいほど、表面平滑性は良好であり、加飾用積層体の意匠性が高まる。一方、塗膜表面の凹凸の高さと周期が大きいほど、表面平滑性は低く、加飾用積層体の意匠性が低下する。
【0068】
塗膜の表面平滑性の指標として、例えば、BYK-Gardner社製の商品名「Wave scan」を用いて得られるショートウェーブ(SW)とロングウェーブ(LW)が挙げられる。SWは、塗膜表面のいわゆる、ゆず肌と呼ばれる、高さと周期がやや大きい凹凸の程度を評価する指標である。ある塗膜表面のSWが30.0以下であれば、その表面はゆず肌ではなく、すなわち、表面平滑性が良い。また、LWは、塗膜表面のいわゆる、ラウンドと呼ばれる、ゆず肌よりも高さと周期が大きい凹凸の程度を評価する指標である。ある塗膜表面のLWが20.0以下であれば、その表面はラウンドではなく、すなわち、表面平滑性が良い。また、SWとLWのそれぞれにおいて、1.0は、表面平滑性が最大であり、塗膜表面が鏡面であることを意味する。
【0069】
本発明に係る加飾用積層体の一実施形態では、前記カバーフィルムを除去した場合の前記クリヤー層の表面のウェーブスキャンにおけるショートウェーブが1.0~30.0、かつロングウェーブが1.0~20.0である。別の実施形態では、前記カバーフィルムを除去した場合の前記クリヤー層の表面のウェーブスキャンにおけるショートウェーブが1.0~10.0、かつロングウェーブが1.0~8.0である。
【0070】
・意匠層
意匠層は、意匠層用塗料の塗膜であり、加飾用積層体の主な意匠性を担う層である。意匠層としては、従来公知の自動車の上塗り塗膜のベース層、加飾積層体の意匠層または着色層を用いることができる。
【0071】
意匠層を形成する意匠層用塗料は、従来公知の意匠層用塗料、ベース塗膜用塗料を用いることができる。意匠層用塗料は、例えば、樹脂成分と顔料と溶媒とを含む。
【0072】
意匠層用塗料の樹脂成分としては、例えば、上記クリヤー層用塗料で例示した樹脂成分などが挙げられる。
【0073】
一実施形態では、意匠層用塗料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂を含む。別の実施形態では、意匠層用塗料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂を含む。さらに別の実施形態では、意匠層用塗料の樹脂成分は、熱硬化性樹脂のみである。
【0074】
意匠層用塗料の樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
意匠層用塗料の樹脂成分とクリヤー層用塗料の樹脂成分は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。意匠層とクリヤー層の混相を抑え、観察者に視認される意匠層の意匠の鮮映性を高める観点から、意匠層用塗料の樹脂成分とクリヤー層用塗料の樹脂成分は、異なることが好ましく、意匠層の樹脂成分がウレタン樹脂であることがより好ましい。
【0076】
本発明に係る加飾用積層体の一実施形態では、前記意匠層用塗料が、ウレタン樹脂を含むことが好ましい。
【0077】
意匠層用塗料が含むウレタン樹脂としては、特に限定されないが、ウレタン樹脂のMwが10,000~200,000であることが好ましく、30,000~150,000であることがより好ましい。Mwが10,000以上であると、意匠層の柔軟性が高まり、Mwが200,000以下であると、意匠層用塗料の製造と基材フィルムへの塗工性が高まる。
【0078】
ウレタン樹脂のTgは、-30~30℃であることが好ましい。ウレタン樹脂のTgが-30℃以上であると、塗工後および乾燥後の塗膜タック性(ブロッキング)が高まり、30℃以下であると、塗膜硬度が低減し、成形性が高まり、製品としての低温での物性も高まる。
【0079】
意匠層用塗料が含む樹脂成分のSP値は、例えば、10.50~14.00であり、11.00~12.50が好ましい。一実施形態では、意匠層用塗料が含む樹脂成分のSP値は、10.50以上、10.60以上、10.70以上、10.80以上、10.90以上、11.00以上、11.10以上、11.20以上、11.30以上、11.40以上、11.50以上、11.60以上、11.70以上、11.80以上、11.90以上、12.00以上、12.10以上、12.20以上、12.30以上、12.40以上、12.50以上、12.60以上、12.70以上、12.80以上、12.90以上、13.00以上、13.10以上、13.20以上、13.30以上、13.40以上、13.50以上、13.60以上、13.70以上、13.80以上または13.90以上である。別の実施形態では、意匠層用塗料が含む樹脂成分のSP値は、14.00以下、13.90以下、13.80以下、13.70以下、13.60以下、13.50以下、13.40以下、13.30以下、13.20以下、13.10以下、13.00以下、12.90以下、12.80以下、12.70以下、12.60以下、12.50以下、12.40以下、12.30以下、12.20以下、12.10以下、12.00以下、11.90以下、11.80以下、11.70以下、11.60以下、11.50以下、11.40以下、11.30以下、11.20以下、11.10以下、11.00以下、10.90以下、10.80以下、10.70以下または10.60以下である。複数の樹脂を混合して用いる場合、樹脂成分のSP値は、個々の樹脂のSP値と配合比率に基づいて加重平均で求めたSP値を指す。
【0080】
本発明に係る加飾用積層体の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値と前記意匠層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値との差の絶対値が、0.10以上であり、別の実施形態では、当該絶対値が、0.10~5.00である。さらに別の施形態では、当該絶対値は、0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.80以上、0.90以上、1.00以上、1.10以上、1.20以上、1.30以上、1.40以上、1.50以上、1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、2.00以上、2.10以上、2.20以上、2.30以上、2.40以上、2.50以上、3.00以上、3.50以上、4.00以上または4.50以上である。さらに別の施形態では、当該絶対値は、5.00以下、4.50以下、4.00以下、3.50以下、3.00以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.10以下、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、1.40以下、1.30以下、1.20以下、1.10以下、1.00以下、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.30以下または0.20以下である。ここで前記クリヤー層用塗料の樹脂成分および前記意匠層用塗料の樹脂成分とは、各塗料に配合された樹脂のすべてを意味し、硬化剤は含まれない。各塗料の樹脂成分は、複数の樹脂の混合物であってよい。各塗料が複数の樹脂を含む場合、塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)は、個々の樹脂のSP値と配合比率に基づいて加重平均で求めたSP値を指す。
【0081】
意匠層用塗料の樹脂成分の量は、適宜調節すればよく、例えば、溶剤を含む意匠層用塗料の全質量に対して、10~60質量%であり、好ましくは20~50質量%である。
【0082】
意匠層用塗料の顔料としては、特に限定されず、公知の顔料を用いることができる。顔料としては、例えば、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウムなどの金属;これらの合金;干渉マイカ、ホワイトマイカ、グラファイト、ガラスフレーク、アルミナフレークなどの光輝顔料;これらの金属、合金、干渉マイカ、ホワイトマイカ、グラファイト、ガラスフレークまたはアルミナフレークが、金属酸化物(例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化鉄)もしくは金属(例えば、金、銀)で被覆された鱗片状光輝顔料が挙げられる。この他、例えば、特開2016-221473号公報に記載のアルミナフレーク顔料(a);金属基材またはガラスフレーク基材が金属酸化物もしくは金属で被覆された鱗片状光輝顔料;金属基材またはガラスフレーク基材の表面に着色顔料が化学吸着した鱗片状光輝顔料;アルミニウム基材の表面に酸化アルミニウム層を形成したアルミニウム顔料;アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料;干渉マイカ、グラファイトまたはシリカフレークの表面が二酸化チタンで被覆された鱗片状光輝顔料;板状酸化鉄顔料などが挙げられる。
【0083】
意匠層用塗料の顔料の量は、適宜調節すればよく、例えば、溶剤を含む意匠層用塗料の全質量に対して、1~70質量%であり、好ましくは3~60質量%である。
【0084】
意匠層用塗料の溶剤としては、例えば、上記クリヤー層用塗料で例示した溶剤などが挙げられる。溶剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
意匠層用塗料は、水性塗料でもよいし、溶剤系塗料でもよい。
【0086】
意匠層用塗料には、樹脂成分と溶剤に加えて、意匠層用塗料で用いられている従来公知の添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、例えば、上記クリヤー層用塗料で例示した添加剤などが挙げられる。
【0087】
意匠層用塗料の粘度は、適宜調節すればよく、例えば、100~7,000mPa・sであり、好ましくは300~4,000mPa・sである。
【0088】
一実施形態では、クリヤー層用塗料の粘度は、300~2,000mPa・sであり、意匠層用塗料の粘度は、300~4,000mPa・sである。
【0089】
意匠層の厚さは、適宜調節すればよく、例えば、5~30μmであり、10~25μmが好ましい。
【0090】
意匠層は、2層以上の意匠層から形成されていてもよい。例えば、樹脂成分、顔料などの塗料の材料、厚さなどが異なる第1の意匠層と第2の意匠層を組み合わせて意匠層としてもよい。意匠層が複数である場合、前記クリヤー層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値と前記クリヤー層に隣接する意匠層を形成する意匠層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値との差の絶対値が、0.10以上であることが好ましい。
【0091】
・基材フィルム
基材フィルムは、加飾用積層体の意匠層およびクリヤー層ならびに接着層の基材としての働きを有する部材である。
【0092】
基材フィルムとしては、特に限定されず、従来公知の基材フィルムを用いることができる。基材フィルムとしては、例えば、上記カバーフィルムで例示したフィルムなどが挙げられる。基材フィルムは、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルムが好ましい。
【0093】
基材フィルムは、市販品を用いてもよい。基材フィルムの市販品としては、例えば、上記カバーフィルムで例示したフィルムなどが挙げられる。
【0094】
基材フィルムの厚さは、適宜調節すればよく、例えば、25~300μmであり、50~200μmが好ましい。
【0095】
基材フィルムは、コロナ処理、低温プラズマ処理などの表面改質処理がされたものでもよい。また、基材フィルムは、帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0096】
・接着層
接着層は、加飾用積層体を加飾する対象物に接着する機能を有する。接着層としては、特に限定されず、従来公知の接着層、両面テープおよび接着剤を用いることができる。
【0097】
接着層を形成する接着剤としては、例えば、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0098】
接着層が対象物との密着性を確保し、かつ、必要に応じて剥離可能となるような剥離力を発現する観点から、接着層はアクリル樹脂およびイソシアネート化合物を含むことが好ましい。
【0099】
接着層が対象物との密着性を確保し、かつ、必要に応じて剥離可能となるような剥離力を発現する観点から、接着層の対象物に対する剥離力が、0.1~0.6kgf/cmであることが好ましい。
【0100】
接着層の厚さは、適宜調節すればよく、例えば、5~50μmであり、10~30μmが好ましい。
【0101】
接着層は、市販品を用いてもよい。接着層の市販品としては、例えば、綜研化学社製の商品名「SKダイン(登録商標)」、東洋紡社製の商品名「NS-S9T5」などが挙げられる。
【0102】
・第2のカバーフィルム
第2のカバーフィルムは、任意に加飾用積層体に設けられる部材であり、接着層を保護する機能ならびに加飾用積層体の製造、保管および運搬における取り扱いを容易にする機能を有する。
【0103】
第2のカバーフィルムとしては、特に限定されず、従来公知のカバーフィルムを用いることができる。カバーフィルムとしては、例えば、上記カバーフィルム(クリヤー層に隣接するカバーフィルム、以下「第1のカバーフィルム」ということがある)で例示したフィルムなどが挙げられる。第2のカバーフィルムと第1のカバーフィルムは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0104】
加飾用積層体の寸法および形状は、特に限定されず、所望の寸法および形状とすることができる。
【0105】
加飾用積層体の用途は、特に限定されず、任意の物品、構造物などに用いることができる。加飾用積層体の用途としては、例えば、自動車、鉄道車両などの車両の車体、航空機の機体、船舶の船体および上部構造物(艤装)、の内装および外装;建築物の内装、外装および屋根部;家具、建具;車両、航空機、船舶、建築物などの窓ガラス;ケース、容器、樹脂板、フィルム;ディスプレイ、モニター、冷蔵庫などの電化製品の筺体およびガラス部材;これらに塗装した塗膜;各種セメント、窯業建材、軽量発泡コンクリート、モルタル、スレート板、屋根、瓦、ALCなどの無機建材;木材;各種ガラス類;鋼板、アルミニウム、ステンレススチールなどの金属基材などが挙げられる。
【0106】
一実施形態では、加飾用積層体の用途は、自動車の車体および鉄道車両の車体からなる群より選択される少なくとも1種である。別の実施形態では、加飾用積層体の用途は、自動車の車体である。
【0107】
(加飾用積層体の製造方法)
本発明に係る加飾用積層体の製造方法は、順に隣接して、カバーフィルムと、クリヤー層と、意匠層と、基材フィルムと、接着層とを含む、加飾用積層体の製造方法であって、
前記基材フィルムの一面に意匠層用塗料を塗布して意匠層を形成する工程(A)と、
前記意匠層の表面にクリヤー層用塗料を塗布してクリヤー層を形成する工程(B)と、
前記クリヤー層の表面にカバーフィルムを熱ラミネートする工程(C)と、
前記基材フィルムの意匠層を形成する面とは反対側の面に接着層を形成する工程(D)と、
を含む、加飾用積層体の製造方法である。
【0108】
以下、本発明に係る加飾用積層体の製造方法の工程(A)~(D)について説明する。
【0109】
・工程(A)
工程(A)では、基材フィルムの一面に意匠層用塗料を塗布して意匠層を形成する。
【0110】
基材フィルムおよび意匠層用塗料は、加飾用積層体で説明したとおりである。
【0111】
意匠層とクリヤー層の混相を抑え、観察者に視認される意匠層の意匠の鮮映性を高める観点から、意匠層用塗料の樹脂成分とクリヤー層用塗料の樹脂成分は、異なることが好ましく、意匠層の樹脂成分がウレタン樹脂であることがより好ましい。
【0112】
一実施形態では、意匠層用塗料が、ウレタン樹脂を含む。
【0113】
意匠層用塗料が含む樹脂成分のSP値は、例えば、10.50~14.00であり、11.00~12.50が好ましい。一実施形態では、意匠層用塗料が含む樹脂成分のSP値は、10.50以上、10.60以上、10.70以上、10.80以上、10.90以上、11.00以上、11.10以上、11.20以上、11.30以上、11.40以上、11.50以上、11.60以上、11.70以上、11.80以上、11.90以上、12.00以上、12.10以上、12.20以上、12.30以上、12.40以上、12.50以上、12.60以上、12.70以上、12.80以上、12.90以上、13.00以上、13.10以上、13.20以上、13.30以上、13.40以上、13.50以上、13.60以上、13.70以上、13.80以上または13.90以上である。別の実施形態では、意匠層用塗料が含む樹脂成分のSP値は、14.00以下、13.90以下、13.80以下、13.70以下、13.60以下、13.50以下、13.40以下、13.30以下、13.20以下、13.10以下、13.00以下、12.90以下、12.80以下、12.70以下、12.60以下、12.50以下、12.40以下、12.30以下、12.20以下、12.10以下、12.00以下、11.90以下、11.80以下、11.70以下、11.60以下、11.50以下、11.40以下、11.30以下、11.20以下、11.10以下、11.00以下、10.90以下、10.80以下、10.70以下または10.60以下である。
【0114】
意匠層用塗料の粘度は、適宜調節すればよく、例えば、100~7,000mPa・sであり、好ましくは300~4000mPa・sである。
【0115】
意匠層用塗料の塗布方法は、特に限定されず、従来公知の塗布方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、スプレー、アプリケーター、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター、ローラー、はけ、へらなどが挙げられる。
【0116】
意匠層用塗料を塗布後、必要に応じて、加熱または常温での乾燥を行ってもよい。加熱する場合は、例えば、温度60~130℃で1~20分とすればよい。
【0117】
意匠層の厚さ(乾燥膜厚)は、適宜調節すればよく、例えば、5~30μmであり、10~25μmが好ましい。
【0118】
・工程(B)
工程(B)では、意匠層の表面にクリヤー層用塗料を塗布してクリヤー層を形成する。
【0119】
クリヤー層用塗料は、加飾用積層体で説明したとおりである。
【0120】
クリヤー層用塗料の樹脂成分としてはアクリル樹脂が好ましく、イソシアネート化合物と混合して用いることが好ましい。
【0121】
クリヤー層用塗料のアクリル樹脂の重量平均分子量は、例えば、1,000~200,000であり、3,000~100,000が好ましい。
【0122】
クリヤー層用塗料のアクリル樹脂のTgは、例えば、20~100℃であり、30~80℃が好ましい。
【0123】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料が、アクリル樹脂を含み、前記アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)が、20~100℃である。
【0124】
クリヤー層用塗料におけるアクリル樹脂の割合は、例えば、50質量%以上であり、60~99質量%が好ましい。
【0125】
クリヤー層用塗料中のアクリル樹脂のSP値は、例えば、8.00~11.00であり、9.00~10.50が好ましい。一実施形態では、クリヤー層用塗料中のアクリル樹脂のSP値は、8.00以上、8.10以上、8.20以上、8.30以上、8.40以上、8.50以上、8.60以上、8.70以上、8.80以上、8.90以上、9.00以上、9.10以上、9.20以上、9.30以上、9.40以上、9.50以上、9.60以上、9.70以上、9.80以上、9.90以上、10.00以上、10.10以上、10.20以上、10.30以上、10.40以上、10.50以上、10.60以上、10.70以上、10.80以上または10.90以上である。別の実施形態では、クリヤー層用塗料中のアクリル樹脂のSP値は、11.00以下、10.90以下、10.80以下、10.70以下、10.60以下、10.50以下、10.40以下、10.30以下、10.20以下、10.10以下、10.00以下、9.90以下、9.80以下、9.70以下、9.60以下、9.50以下、9.40以下、9.30以下、9.20以下、9.10以下、9.00以下、8.90以下、8.80以下、8.70以下、8.60以下、8.50以下、8.40以下、8.30以下、8.20以下または8.10以下である。
【0126】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値と前記意匠層用塗料の樹脂成分の溶解性パラメータ(SP)値との差の絶対値が、0.10以上である。別の実施形態では、当該絶対値が、0.10~5.00である。さらに別の施形態では、当該絶対値は、0.10以上、0.20以上、0.30以上、0.40以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、0.80以上、0.90以上、1.00以上、1.10以上、1.20以上、1.30以上、1.40以上、1.50以上、1.60以上、1.70以上、1.80以上、1.90以上、2.00以上、2.10以上、2.20以上、2.30以上、2.40以上、2.50以上、3.00以上、3.50以上、4.00以上または4.50以上である。さらに別の施形態では、当該絶対値は、5.00以下、4.50以下、4.00以下、3.50以下、3.00以下、2.50以下、2.40以下、2.30以下、2.20以下、2.10以下、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.70以下、1.60以下、1.50以下、1.40以下、1.30以下、1.20以下、1.10以下、1.00以下、0.90以下、0.80以下、0.70以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.30以下または0.20以下である。
【0127】
クリヤー層用塗料物のイソシアネート化合物としては、クリヤー層用塗料で説明したイソシアネート化合物が挙げられる。
【0128】
クリヤー層用塗料の樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0129】
クリヤー層用塗料の樹脂成分の量は、適宜調節すればよく、例えば、溶剤を含むクリヤー層用塗料の全質量に対して、10~80質量%であり、好ましくは20~60質量%である。
【0130】
クリヤー層用塗料の粘度は、適宜調節すればよく、例えば、100~5,000mPa・sであり、好ましくは300~2,000mPa・sである。
【0131】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記クリヤー層用塗料の25℃での粘度が、300~2,000mPa・sであり、
前記意匠層用塗料の25℃での粘度が、300~4,000mPa・sである。
【0132】
クリヤー層用塗料の塗布方法は、特に限定されず、従来公知の塗布方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、上記工程(A)で例示した塗布方法などが挙げられる。
【0133】
クリヤー層用塗料を塗布後、必要に応じて、加熱または常温での乾燥を行ってもよい。
【0134】
また、工程(A)と工程(B)を同時に行ってもよい。すなわち、意匠層用塗料を塗布して未硬化の意匠層を形成し、さらに未硬化の意匠層上にクリヤー層用塗料を塗布して未硬化のクリヤー層を形成し、未硬化の意匠層と未硬化のクリヤー層を一緒に硬化させて意匠層およびクリヤー層を同時に形成してもよい。
【0135】
意匠層とクリヤー層の混相を抑え、観察者に視認される意匠層の意匠の鮮映性を高める観点から、工程(A)と工程(B)は同時ではなく、工程(A)の後に、工程(B)を行うことが好ましい。
【0136】
また、工程(B)と工程(C)を同時に行ってもよい。すなわち、クリヤー層用塗料を塗布して未硬化のクリヤー層を形成し、さらに未硬化のクリヤー層上にカバーフィルムを熱ラミネートし、その熱ラミネートによって未硬化のクリヤー層を硬化してクリヤー層を形成してもよい。
【0137】
クリヤー層用塗料を塗布後、必要に応じて、加熱または常温での乾燥を行ってもよい。加熱する場合は、例えば、温度60~130℃で1~20分とすればよい。
【0138】
クリヤー層の厚さ(乾燥膜厚)は、適宜調節すればよく、例えば、10~60μmであり、20~50μmが好ましい。
【0139】
・工程(C)
工程(C)では、クリヤー層の表面にカバーフィルムを熱ラミネートする。
【0140】
カバーフィルムは、加飾用積層体で説明したとおりである。
【0141】
熱ラミネートの温度としては、クリヤー層の樹脂成分の種類、Tgなどに応じて適宜調節すればよい。クリヤー層用塗料の樹脂成分としてTgが20~100℃のアクリル樹脂を用いる場合、熱ラミネートの温度としては、30~100℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。
【0142】
本発明に係る加飾用積層体の製造方法の一実施形態では、前記工程(C)の前記熱ラミネートの温度が、30~100℃である。
【0143】
熱ラミネートは、例えば、MCK社製の熱圧着フィルム用ラミネーター、商品名「MRK-650Y」などを用いて行うことができる。
【0144】
・工程(D)
工程(D)では、基材フィルムの意匠層を形成する面とは反対側の面に接着層を形成する。
【0145】
接着層は、加飾用積層体で説明したとおりである。
【0146】
基材フィルムの意匠層を形成する面とは反対側の面に、接着層を形成する接着剤を塗布して接着層を形成してもよいし、または両面テープなどを貼り付けて接着層を形成してもよい。
【0147】
接着層の厚さは、適宜調節すればよく、例えば、5~50μmであり、10~30μmが好ましい。
【0148】
工程(D)の順序は、工程(A)の後でもよいし、工程(A)の前でもよい。
【0149】
・その他の工程
加飾用積層体の製造方法では、工程(A)~工程(D)に加えて、任意に他の工程を含んでいてもよい。例えば、接着層の基材フィルムとは反対側の面に第2のカバーフィルムを貼り付ける工程;工程(A)の後に、意匠層の基材フィルムとは反対側の面に別のカバーフィルムを貼り付け巻き取る工程;工程(B)の前に巻き取りをほどく工程;工程(C)の後に、クリヤー層に紫外線などの光を照射してクリヤー層をさらに硬化させる工程;工程(C)の後に、積層体を巻き取り、30~50℃で3~7日保管してクリヤー層、意匠層の硬化を進める養生工程;工程(D)の前に巻き取りをほどく工程、長尺状の加飾用積層体を巻き取ってロール状の加飾用積層体を得る工程;長尺状の加飾用積層体を30~50℃で3~7日保管してクリヤー層、意匠層、接着層の硬化を進める養生工程;長尺状の加飾用積層体を裁断して毎葉状の加飾用積層体を得る工程などが挙げられる。
【0150】
(車両)
本発明に係る車両は、上記いずれかの加飾用積層体から前記カバーフィルムを除去した積層体Lを車両表面に有し、
前記接着層が車両に接着している、車両である。
【0151】
図3は、積層体Lを車両表面に有する車両の一例を示した模式断面図である。車両表面8に、積層体L9の接着層6側が接着している。すなわち、積層体L9のクリヤー層3が観察者側に位置して、車両表面8に積層体L9が配置されている。
【0152】
積層体Lは、上記加飾用積層体からカバーフィルムを除去することで形成される。加飾用積層体が図1に示す構成の場合、カバーフィルムは、加飾用積層体を車両表面に接着した後に除去してもよいし、加飾用積層体を車両表面に接着する前に除去してもよい。加飾用積層体が図2に示す構成の場合、第2のカバーフィルムを除去した加飾用積層体を車両表面に接着した後に第1のカバーフィルムを除去してもよいし、加飾用積層体から第1のカバーフィルムと第2のカバーフィルムを除去して得られた積層体Lを車両表面に接着してもよい。
【0153】
積層体Lのクリヤー層の表面(カバーフィルムと接していた表面)は、上述したように、加飾用積層体においてカバーフィルムがクリヤー層に熱ラミネートされていることによって、カバーフィルムを除去した後でも当該表面の平滑性が良好となる。
【0154】
一実施形態では、積層体Lのクリヤー層の表面(カバーフィルムと接していた表面)のウェーブスキャンにおけるショートウェーブが1.0~30.0、かつロングウェーブが1.0~20.0である。
【0155】
積層体Lを有する車両表面は、車両外板側の表面でもよいし、車両内装側の表面でもよいし、これらの組合せでもよい。車両表面は鋼板などの金属製品の表面であってよいし、プラスチック製品の表面であってよく、これらの組合せでもよい。金属製品の表面は、加工された表面または塗装された表面であってもよい。
【実施例
【0156】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0157】
実施例で用いたカバーフィルムの詳細は以下のとおりである。
カバーフィルム1:東レ社製の商品名「セラピール38WZ(S)」、PETフィルム、厚さ38μm
カバーフィルム2:ユニチカ社製の商品名「エンブレットPHH25」、ポリエステルフィルム、厚さ25μm
カバーフィルム3:中本パックス社製の商品名「NT200A」、PETフィルム、厚さ100μm
カバーフィルム4:三菱ケミカル社製の商品名「ノバクリアSG007」、PETフィルム、厚さ220μm
カバーフィルム5:王子エフテックス社製の商品名「アルファンPY-001」、PPフィルム、厚さ50μm
カバーフィルム6:東レ社製の商品名「ルミラーS-10」、PETフィルム、厚さ25μm
【0158】
実施例で用いたクリヤー層用塗料の各成分の詳細は以下のとおりである。
アクリル樹脂1:三菱レーヨン社製の商品名「LR2731」、Tg20℃、SP値10.5、Mw5,500、固形分70%
アクリル樹脂2:日立化成工業社製の商品名「BAR-010」、Tg60℃、SP値9.69、Mw14,000、固形分50%
アクリル樹脂3:三菱レーヨン社製の商品名「A205」、Tg40℃、SP値10.35、Mw8,000、固形分60%
硬化剤:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「H2550」、イソシアネート化合物
【0159】
実施例で用いた意匠層用塗料の各成分の詳細は以下のとおりである。
アクリル樹脂4:東レ社製の商品名「ACS2050-55」、Tg50℃、SP値10.1、Mw16,000、固形分55%
アクリル樹脂5:東レ社製の商品名「A200」、Tg-14℃、SP値10.6、Mw49,000、固形分60%
ウレタン樹脂1:三井化学社製の商品名「タケラックTE5430」、SP値10.958
ウレタン樹脂2:大日精化社製の商品名「Msk12M19N32」、SP値11~14
硬化剤:三井化学社製の商品名「タケネートD-178NL」、ポリイソシアネート
顔料:東洋アルミ社製の商品名「アルペースト93-0467」
【0160】
実施例で用いた基材フィルムの詳細は以下のとおりである。
基材フィルム:日本マタイ社製の商品名「エスマーPX98」、熱可塑性ポリウレタン樹脂フィルム、厚さ150μm、長さ500m
【0161】
実施例で用いた接着層用組成物の各成分の詳細は以下のとおりである。
アクリル樹脂:綜研化学社製の商品名「SKダイン1811L」、Tg-7℃、SP値10.5、Mw5,500、固形分70%
イソシアネート化合物:綜研化学社製の商品名「TD-75」
【0162】
実施例で用いたその他の材料および機器の詳細は以下のとおりである。
クリヤー層用塗料:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製 2液硬化型クリヤー塗料 商品名「R2550」
意匠層用塗料:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製 2液硬化型ベース塗料 商品名「R333」
ル鋼板:リン酸亜鉛処理したダル鋼板(長さ300mm、幅100mm、厚さ0.8mm)
示差走査熱量計:セイコー電子工業社製の商品名「SSC5200」
ウェーブスキャン:BYK-Gardner社製の商品名「Wavescan」
【0163】
樹脂成分のTgは、樹脂成分から溶剤を減圧留去した後、示差走査熱量計を用いて下記第1~第3工程を行い、第3工程の昇温時のチャートから得られる値をTgとした。
第1工程:20℃から150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)
第2工程:150℃から-50℃まで降温(降温速度10℃/分)
第3工程:-50℃から150℃まで昇温(昇温速度10℃/分)
【0164】
クリヤー層用塗料と意匠層用塗料の粘度は、B型粘度計を用いて、25℃の条件で測定した。
【0165】
クリヤー層用塗料のアクリル樹脂と意匠層用塗料のウレタン樹脂のSP値は、上述した方法で測定した。
【0166】
(クリヤー層用塗料の調製)
表1に示す配合(質量部)でアクリル樹脂および硬化剤を混合し、さらに必要に応じてメチルエチルケトンで希釈して粘度を調整して、クリヤー層用塗料1~5を調製した。
【0167】
(意匠層用塗料の調製)
表2に示す配合(質量部)でウレタン樹脂、アクリル樹脂、硬化剤および顔料を混合し、さらに必要に応じてメチルエチルケトンで希釈して粘度を調整して、意匠層用塗料1~5を調製した。
【0168】
(接着層用組成物の調製)
100質量部のSKダイン1811Lおよび0.2質量部のTD-75を混合し、接着層用組成物を調製した。
【0169】
(実施例1)
基材フィルムの一方の面に、意匠層用塗料1を乾燥膜厚20~25μmとなるようにコンマダイレクトコーターで塗布し、次いで温度90℃で5分間、その未硬化の意匠層を加熱し、意匠層を形成した。次いで、意匠層の表面にクリヤー層用塗料1を乾燥膜厚30~35μmとなるようにコンマダイレクトコーターで塗布し温度90℃で5分間加熱して硬化させクリヤー層を形成した。次いで、硬化したクリヤー層の表面にカバーフィルム1を温度30℃で熱ラミネートして、クリヤー層にカバーフィルムを熱ラミネートした。次いで、基材フィルムの意匠層を形成した面とは反対側の面に、接着層用組成物を塗布し、膜厚30μmの接着層を形成して、順に隣接して、接着層、基材フィルム、意匠層、クリヤー層およびカバーフィルムを有する長尺状の加飾用積層体を得た。
【0170】
(実施例2~6)
表3に示すように、カバーフィルムを変更したこと以外は、実施例1と同様に各工程を行い、長尺状の加飾用積層体を得た。
【0171】
(比較例1)
表3に示すように、カバーフィルムを使用せず熱ラミネートを行わなかったこと以外は、実施例1と同様に各工程を行い、長尺状の加飾用積層体を得た。
【0172】
(実施例7~16)
表4に示すように、クリヤー層用塗料、意匠層用塗料または熱ラミネート温度を変更したこと以外は、実施例1と同様に各工程を行い、長尺状の加飾用積層体を得た。
【0173】
各実施例および比較例の長尺状の加飾用積層体から長さ15cm幅7cmの加飾用積層体を切り出し、接着層を自動車の車体を想定したダル鋼板に接着した。次いで、カバーフィルムを除去して、クリヤー層を露出させ、ダル鋼板の表面に、ダル鋼板の表面側から順に隣接して、接着層、基材フィルム、意匠層およびクリヤー層を有する積層体Lを配置した。
【0174】
意匠性の評価
得られた積層体Lの意匠層の意匠の鮮映性と、クリヤー層の表面平滑性を以下のように評価した。
【0175】
・意匠層の意匠の鮮映性
積層体Lを目視で観察し、以下の基準で評価した。良ないし可が合格である。
良:細かな凹凸がなく、蛍光灯がはっきりみえる
可:細かな凹凸がほぼなく、蛍光灯がややはっきりみえる
不可:細かな凹凸がかなり見え、蛍光灯がぼやけてみえる
【0176】
・クリヤー層の表面平滑性
積層体Lのクリヤー層のSWおよびLWをウェーブスキャンで測定した。
SW合格:SW値が1.0~30.0の範囲内
SW不合格:SW値が30.0より大
LW合格:LW値が1.0~20.0の範囲内
LW不合格:LW値が20.0より大
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
【表3】
【0180】
【表4】
【0181】
表3~4に示すように、実施例では、クリヤー層の表面平滑性に優れ、かつ、意匠層の意匠の鮮映性に優れる加飾用積層体が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明によれば、カバーフィルムを除去した後のクリヤー層の表面平滑性に優れ、かつ、意匠層の意匠の鮮映性に優れる加飾用積層体を提供することができる。また、本発明によれば、当該加飾用積層体の積層体の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、優れた意匠性を有する積層体を有する車両を提供することができる。
【符号の説明】
【0183】
1:加飾用積層体
2:カバーフィルム
3:クリヤー層
4:意匠層
5:基材フィルム
6:接着層
7:第2のカバーフィルム
8:車両表面
9:積層体L
【要約】
【課題】カバーフィルムを除去した後のクリヤー層の表面平滑性に優れ、かつ、意匠層の意匠の鮮映性に優れる加飾用積層体を提供すること。加飾用積層体の製造方法を提供すること。
【解決手段】順に隣接して、カバーフィルムとクリヤー層と意匠層と基材フィルムと接着層とを含み、カバーフィルムが、クリヤー層に熱ラミネートされており、意匠層が、意匠層用塗料の塗膜であり、クリヤー層が、クリヤー層用塗料の塗膜である、加飾用積層体。基材フィルムの一面に意匠層用塗料を塗布して意匠層を形成する工程(A)と、意匠層の表面にクリヤー層用塗料を塗布してクリヤー層を形成する工程(B)と、クリヤー層の表面にカバーフィルムを熱ラミネートする工程(C)と、基材フィルムの意匠層を形成する面とは反対側の面に接着層を形成する工程(D)とを含む、加飾用積層体の製造方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3