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特許7052137化成処理剤、表面処理金属、及び表面処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】化成処理剤、表面処理金属、及び表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/34 20060101AFI20220404BHJP
【FI】
C23C22/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021204975
(22)【出願日】2021-12-17
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021060174
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315006377
【氏名又は名称】日本ペイント・サーフケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】上野 峻之
(72)【発明者】
【氏名】小金澤 雄
【審査官】坂口 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-302026(JP,A)
【文献】特開2004-218074(JP,A)
【文献】特開2005-336550(JP,A)
【文献】特開2008-261035(JP,A)
【文献】特開2009-234010(JP,A)
【文献】特開2010-163640(JP,A)
【文献】特開2019-081940(JP,A)
【文献】特開2020-090625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 26/04
C23C 18/00 - 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分(A)と、フッ素(B)と、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)と、を含み、
前記金属成分(A)の含有量は、化成処理剤の全質量に対し、金属元素換算で10~10000質量ppmであり、
前記アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)における、ジアリルアミンに由来するジアリルアミンセグメントの含有比率は、アリルアミンに由来するアリルアミンセグメントと、前記ジアリルアミンセグメントの合計に対し、52モル%以上、98モル%以下であり、
前記アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の重量平均分子量は、500~500000であり、含有量は、化成処理剤の全質量に対し、樹脂固形分濃度で、25~5000質量ppmである、化成処理剤。
【請求項2】
アルミニウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分を更に含む、請求項1に記載の化成処理剤。
【請求項3】
pHが2.0~6.0である、請求項1又は2に記載の化成処理剤。
【請求項4】
前記アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)は、アニオン性対イオンを有する酸付加塩であり、
前記酸付加塩を形成する酸のpKaは-3.7~4.8の範囲内である、請求項1~3のいずれかに記載の化成処理剤。
【請求項5】
前記フッ素(B)の濃度は、化成処理剤の全質量に対し、フッ素元素換算で10~12500質量ppmである、請求項1~4のいずれかに記載の化成処理剤。
【請求項6】
シランカップリング剤を更に含む、請求項1~5のいずれかに記載の化成処理剤。
【請求項7】
被塗物の表面を請求項1~6のいずれかに記載の化成処理剤により処理することで化成皮膜を形成する化成皮膜形成工程を有する、表面処理方法。
【請求項8】
前記化成皮膜が形成された被塗物を電着塗装することで電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程を更に含む、請求項に記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成処理剤、表面処理金属、及び表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属基材表面にカチオン電着塗装や粉体塗装を施す場合、耐食性、塗膜密着性等を向上させる目的で、金属基材表面に事前に化成処理が施される。近年では、クロムを含有しないリン酸亜鉛による化成処理が広く行われている。
【0003】
リン酸亜鉛による化成処理は、処理剤の反応性の高さから排水処理が困難であり、スラッジが発生すると共に環境負荷が大きい問題がある。そこで、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種、フッ素、並びに水溶性樹脂からなる化成処理剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-218074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術は、鉄、亜鉛、アルミニウム等の金属に対して良好な化成処理を行うことができる。しかし、カチオン電着塗装や粉体塗装等の塗装後に得られる耐食性として、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、塗装後の好ましい耐食性が得られる化成処理を可能とする化成処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分(A)と、フッ素(B)と、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)と、を含み、前記金属成分(A)の含有量は、化成処理剤の全質量に対し、金属元素換算で10~10000質量ppmであり、前記アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)における、ジアリルアミンに由来するジアリルアミンセグメントの含有比率は、アリルアミンに由来するアリルアミンセグメントと、前記ジアリルアミンセグメントの合計に対し、52モル%以上、98モル%以下であり、前記アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の重量平均分子量は、500~500000であり、含有量は、化成処理剤の全質量に対し、樹脂固形分濃度で、25~5000質量ppmである、化成処理剤に関する。
【0008】
(2) アルミニウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分を更に含む、(1)に記載の化成処理剤。
【0009】
(3) pHが2.0~6.0である、(1)又は(2)に記載の化成処理剤。
【0010】
(4) 前記アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)は、アニオン性対イオンを有する酸付加塩であり、前記酸付加塩を形成する酸のpKaは-3.7~4.8の範囲内である、(1)~(3)のいずれかに記載の化成処理剤。
【0011】
(5) 前記フッ素(B)の濃度は、化成処理剤の全質量に対し、フッ素元素換算で10~12500質量ppmである、(1)~(4)のいずれかに記載の化成処理剤。
【0012】
(6) シランカップリング剤を更に含む、(1)~(5)のいずれかに記載の化成処理剤。
【0013】
(7) (1)~(6)のいずれかに記載の化成処理剤により表面に化成皮膜が形成されてなる、表面処理金属。
【0014】
(8) 前記化成皮膜における前記金属成分(A)の含有量は、金属元素換算で5~500mg/mである、(7)に記載の表面処理金属。
【0015】
(9) 被塗物の表面を(1)~(6)のいずれかに記載の化成処理剤により処理することで化成皮膜を形成する化成皮膜形成工程を有する、表面処理方法。
【0016】
(10) 前記化成皮膜が形成された被塗物を電着塗装することで電着塗膜を形成する電着塗膜形成工程を更に含む、(9)に記載の表面処理方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、塗装後の好ましい耐食性が得られる化成処理を可能とする化成処理剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明は以下の実施形態の記載に限定されない。
【0019】
<化成処理剤>
本実施形態に係る化成処理剤は、金属基材の表面上に、塗装後の好ましい耐食性が得られる化成皮膜を形成できる。上記化成皮膜の形成及び塗装が行われた金属基材は、特に制限されないが、例えば、自動車車体や自動車部品等、種々の用途に用いることができる。上記塗装としては、カチオン電着塗装、粉体塗装、水性塗装、溶剤塗装等が挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る化成処理剤は、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分(A)と、フッ素(B)と、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)と、を含む。
【0021】
(金属成分(A))
金属成分(A)は、化成皮膜形成成分であり、金属基材にジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分(A)を含む化成皮膜が形成されることで、金属基材の耐食性、耐摩耗性を向上でき、かつ、電着塗膜等の塗膜との密着性を向上できる。
【0022】
上記ジルコニウムの供給源としては、特に限定されないが、例えば、K2ZrF6等のアルカリ金属フルオロジルコネート、ジルコンフッ化水素酸(H2ZrF6)、六フッ化ジルコニウム酸アンモニウム((NH4)2ZrF6)、炭酸ジルコニウムアンモニウム((NH4)2ZrO(CO3)2)、テトラアルキルアンモニウム変性ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0023】
上記チタンの供給源としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属フルオロチタネート、(NH4)2TiF6等のフルオロチタネート、H2TiF6等のフルオロチタネート酸等の可溶性フルオロチタネート、フッ化チタン、酸化チタン等が挙げられる。
【0024】
上記ハフニウムの供給源としては、特に限定されないが、例えば、H2HfF6等のフルオロハフネート酸、フッ化ハフニウム等が挙げられる。
【0025】
上記金属成分(A)の含有量は、化成処理剤の全質量に対し、金属元素換算で10~10000質量ppmである。金属成分(A)の含有量が10ppm未満である場合、得られる化成皮膜の十分な性能が得られない。金属成分(A)の含有量が10000質量ppmを超えた場合、それ以上の効果が得られず経済的に不利である。上記の観点から、上記金属成分(A)の含有量は、金属元素換算で50~2000質量ppmであることが好ましく、50~800ppmであることがさらに好ましい。
【0026】
(フッ素(B))
フッ素(B)は、金属基材の表面をエッチングする機能を有する。上記フッ素の供給源としては、特に限定されないが、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩が挙げられ、具体例としては、ケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等が挙げられる。また、上記金属成分(A)の供給源として例示したアルカリ金属フルオロジルコネート等のフッ素含有化合物は、金属成分(A)の供給源であるとともに、フッ素(B)の供給源にもなり得る。
【0027】
フッ素(B)の濃度は、化成処理剤の全質量に対し、フッ素元素換算で10~12500質量ppmであることが好ましい。フッ素(B)の濃度が10質量ppm未満である場合、エッチングが不充分となり良好な化成皮膜が得られない。12500質量ppmを超える場合、エッチング過剰となり充分に化成皮膜を形成することができない。上記の観点から、フッ素(B)の濃度は、62.5~2500質量ppmであることがより好ましい。フッ素(B)の濃度を測定する方法としては、例えば、イオンクロマトグラフィーにより定量分析を行うことで測定する方法が挙げられる。
【0028】
(アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C))
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)は、アリルアミンに由来するセグメント、及びジアリルアミンに由来するセグメント(以下、「アリルアミンセグメント」、「ジアリルアミンセグメント」と記載する場合がある)の両方を少なくとも構造単位として有する。上記各セグメントは、それぞれ独立して、第4級化物の状態であってもよい。また、上記各セグメントは、それぞれ独立して、対イオンを有していてもよい。
【0029】
本実施形態におけるアリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)における、ジアリルアミンセグメント含有比率は、52モル%以上、98モル%以下である。上記ジアリルアミンセグメント含有比率は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)における、アリルアミンセグメントと、ジアリルアミンセグメントの合計に対する、ジアリルアミンセグメントのモル%として定義される。ジアリルアミンセグメント含有比率が52モル%未満である場合には、塗装後の十分な耐食性が得られない。ジアリルアミンセグメント含有比率が98モル%を超える場合には、化成皮膜の塗膜に対する密着性が低下する。また、上記観点から、ジアリルアミンセグメント含有比率は、55モル%以上、98モル%以下が好ましく、80モル%以上、98モル%以下であることがさらに好ましい。上記ジアリルアミンセグメントとしては、例えば、以下一般式(1a)及び(1b)で示される、複素環式構造が挙げられる。上記複素環式構造は、飽和複素環式構造であってもよい。
【0030】
【化1】
(上式中、R1は、水素原子、アルキル基又はアラルキル基を示す。)
【0031】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)における、アリルアミンセグメントとしては、例えば、以下一般式(2)で示される。
【0032】
【化2】
【0033】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)は、アンモニウムカチオンに対してアニオン性対イオンを有する酸付加塩であることが好ましい。上記酸付加塩を形成する酸の解離定数pKaは、-3.7~4.8の範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において、上記酸の解離定数pKaは、溶媒が水であり、温度25℃における数値を意味する。上記酸付加塩であるアリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を構成するジアリルアミンセグメントとしては、例えば以下一般式(1c)及び(1d)で示される。
【化3】
(式中、R2及びR3は水素原子、アルキル基又はアラルキル基、D-は1価のアニオンを示す。)
【0034】
上記アニオン性対イオンとしては、特に限定されないが、例えば1価の陰イオンであり、ギ酸イオン、酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン、塩化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。酸付加塩を形成する酸としては、ギ酸、酢酸、安息香酸等の有機酸、及び塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
【0035】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)は、必要に応じて、アリルアミンに由来するセグメント、ジアリルアミンセグメント以外のセグメントを有していてもよい。例えば、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びその塩又は第4級化物、N,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド及びその塩又は第4級化物、ビニルイミダゾール及びその塩又は第4級化物、ビニルピリジン及びその塩又は第4級化物、N-アルキルアリルアミン及びその塩、N,N-ジアルキルアリルアミン及びその塩、N-アルキルジアリルアミン及びその塩又は第4級化物等に由来するセグメントが挙げられる。
【0036】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)は、必要に応じて更に、上記以外のセグメントを有していてもよい。例えば、二酸化硫黄、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等のヒドロキシ基を有する不飽和化合物、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル、不飽和酸、(メタ)アクリルアミド等に由来するセグメントを有していてもよい。
【0037】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)におけるアリルアミンに由来するセグメント、ジアリルアミンセグメント以外のセグメントの含有比率は20%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、0%であることが最も好ましい。上記アリルアミンおよびジアリルアミンセグメントのいずれにも由来しないセグメント含有比率は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)における、すべてのセグメントの合計に対する、アリルアミンセグメントとジアリルアミンセグメントのいずれにも該当しないセグメントのモル%として定義される。
【0038】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の含有量は、化成処理剤の全質量に対し、樹脂固形分濃度で25~5000質量ppmである。含有量が25質量ppm未満である場合、化成皮膜の十分な密着性が得られない。5000質量ppmを超える場合、化成皮膜の形成が阻害される恐れがある。上記の観点から、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の含有量は、樹脂固形分濃度で50~1500質量ppmであることが好ましく、50~600質量ppmであることがさらに好ましい。
【0039】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の重量平均分子量は、500~500000である。重量平均分子量が500未満である場合、化成皮膜の十分な密着性が得られない。重量平均分子量が500000を超える場合、化成皮膜の形成が阻害される恐れがある。上記の観点から、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の重量平均分子量は、5000~100000であることが好ましい。
【0040】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の重量平均分子量は、例えばゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。測定機器としては、例えば、日立L-6000型高速液体クロマトグラフを使用し、溶離液流路ポンプは日立L-6000、検出器はショーデックスRI SE-61示差屈折率検出器、カラムはアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS-220HQ(排除限界分子量3,000)とGS-620HQ(排除限界分子量200万)とをダブルに接続したものを用いることができる。以下にGPCの測定方法の例を示す。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調整し、20μlを用いる。溶離液には、0.4mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を使用する。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施する。標準サンプルとして分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求める。上記較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求める。
【0041】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)は、本発明の目的を損なわない範囲で変更が加えられていてもよい。例えば、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)のアミノ基の一部がアセチル化等の方法で修飾されていてもよいし、溶解性に影響を与えない程度に架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0042】
アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、及び、必要に応じて他の成分を混合させたモノマーの混合物を、ラジカル重合開始剤の存在下で、適切な溶媒中でラジカル重合させる方法が挙げられる。重合条件については、当業者にとって公知の条件を適宜選択することができる。
【0043】
(その他の高分子)
本実施形態に係る化成処理剤は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)以外の高分子を含んでいてよい。アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)以外の高分子としては、ポリアリルアミン樹脂、ポリビニルアミン樹脂、ポリジアリルアミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、キチン・キトサン誘導体やセルロース誘導体などの天然高分子誘導体などの高分子成分が挙げられる。本実施形態にかかる化成処理剤がアリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)以外の高分子を含む場合、全高分子の固形分の合計質量に対するアリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の固形分質量は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。
【0044】
(その他の成分)
本実施形態に係る化成処理剤は、シランカップリング剤を更に含むことが好ましい。化成処理剤にシランカップリング剤が含まれることで、化成皮膜の塗膜密着性を更に向上できる。シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アミノ基含有シランカップリング剤、エポキシ基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物、エポキシ基含有シランカップリング剤の加水分解物、アミノ基含有シランカップリング剤の重合物及びエポキシ基含有シランカップリング剤の重合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上のシランカップリング剤であることが好ましい。
【0045】
上記アミノ基含有シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス〔3-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等の公知のシランカップリング剤等を挙げることができる。市販されているアミノ基含有シランカップリング剤であるKBM-602、KBM-603、KBE-603、KBM-903、KBE-9103、KBM-573(以上、信越化学工業株式会社製)等も使用することができる。
【0046】
上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物は、従来公知の方法、例えば、上記アミノ基含有シランカップリング剤をイオン交換水に溶解し、任意の酸で酸性に調整する方法等により製造することができる。上記アミノ基含有シランカップリング剤の加水分解物としては、KBP-90(信越化学工業株式会社製:有効成分32%)等の市販の製品を使用することもできる。
【0047】
上記エポキシ基含有シランカップリング剤としては特に限定されず、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン等を挙げることができる。市販されている、「KBM-403」、「KBE-403」、「KBE-402」、「KBM-303」(以上、信越化学工業株式会社製)等も使用することができる。
【0048】
本実施形態に係る化成処理剤は、上記以外の成分を含んでいてもよい。例えば、化成皮膜形成成分として、アルミニウム及び亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分を更に含むことが好ましい。これにより、化成皮膜が形成された金属基材の耐食性を更に向上できる。化成皮膜形成成分としては、上記以外に、マグネシウム、カルシウム、ガリウム、インジウム、及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分が含まれていてもよい。また、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、クロムの金属成分が含まれていてもよい。上記皮膜形成成分の供給源としては、特に限定されず、各金属の酸化物、水酸化物、フッ化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、有機酸塩等が挙げられる。上記皮膜形成成分の金属成分は、化成処理浴において、化成処理される金属基材からの溶出成分として化成処理剤に含有せしめてもよい。
【0049】
本実施形態に係る化成処理剤は、酸化剤を含んでいてもよい。例えば、化成皮膜形成成分として、硝酸及び亜硝酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸化剤をさらに含むことが好ましい。これにより、化成皮膜の形成を促進し金属基材の耐食性をさらに向上できる。酸化剤としては、無機酸又はその塩は、酸化剤として化成皮膜の形成反応を促進させると考えられる。無機酸としては、硝酸、亜硝酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnOおよびHVO等を挙げることができる。なお、金属表面処理用組成物には、酸化剤として、スルホン酸基含有化合物又はこれらの塩が含まれるようにしてもよい。無機酸又はその塩は、酸化剤として化成皮膜の形成反応を促進させると考えられる。無機酸としては、硝酸、亜硝酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnOおよびHVO等を挙げることができる。なお、金属表面処理用組成物には、酸化剤として、スルホン酸基含有化合物又はこれらの塩が含まれるようにしてもよい。無機酸又はその塩が挙げられる。無機酸としては、硝酸、亜硝酸、塩酸、臭素酸、塩素酸、過酸化水素、HMnOおよびHVO等を挙げることができる。なお、金属表面処理用組成物には、酸化剤として、スルホン酸基含有化合物又はこれらの塩が含まれるようにしてもよい。
【0050】
本実施形態に係る化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含有しないものであることが好ましい。本明細書中において、実質的にリン酸イオンを含有しない、とは、リン酸イオンが化成処理剤中の成分として作用する程度含有しないことを意味する。本実施形態に係る化成処理剤は、実質的にリン酸イオンを含有しないことから、環境負荷の原因となるリンを実質的に使用することがない。また、リン酸亜鉛処理剤を使用する場合に発生するリン酸鉄、リン酸亜鉛等のようなスラッジの発生を抑制することができる。
【0051】
(pH)
上記化成処理剤は、pHが2.0~6.0であることが好ましい。pHが2.0未満である場合、エッチング過剰となり充分に化成皮膜を形成することができない。pHが6.0を超える場合、エッチングが不充分となり良好な化成皮膜が得られない。上記の観点から、pHは2.0~5.5であることがより好ましく、pHは3.0~4.5であることが更に好ましい。上記化成処理剤のpHを調整するために、硝酸、硫酸等の酸性化合物、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用することができる。
【0052】
<表面処理金属>
本実施形態に係る化成処理剤により、被塗物である金属基材の表面に化成皮膜が形成されることで、表面処理金属が生成される。本実施形態に係る表面処理金属は、化成皮膜上に更に電着塗膜等の塗膜を形成した際に、塗膜と金属との密着性及び耐食性に優れる。上記金属基材としては、特に限定されないが、例えば、鉄系基材、アルミニウム系基材、及び、亜鉛系基材等が挙げられる。ここで、鉄系基材、アルミニウム系基材、及び、亜鉛系基材とは、それぞれ、基材が鉄及び/又はその合金からなる鉄系基材、基材がアルミニウム及び/又はその合金からなるアルミニウム基材、基材が亜鉛及び/又はその合金からなる亜鉛系基材を意味する。金属基材は、鉄系基材、アルミニウム系基材、及び、亜鉛系基材のうち、複数の金属基材からなるものであってもよい。
【0053】
本実施形態に係る化成処理剤は、従来の化成処理剤において十分な塗膜密着性を有することが困難である鉄系基材に対しても、十分な塗膜密着性を付与することができる。上記鉄系基材としては、特に限定されないが、例えば、冷間圧延鋼板、熱延鋼板、軟鋼板、高張力鋼板等が挙げられる。本実施形態に係る化成処理剤は、厚い酸化皮膜を有する高張力鋼板に対しても、酸化皮膜が薄い冷間圧延鋼板等に対しても、好ましい耐食性及び密着性を付与することができる。
【0054】
上記アルミニウム系基材としては特に限定されず、例えば、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金等が挙げられる。上記亜鉛系基材としては特に限定されず、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛-ニッケルめっき鋼板、亜鉛-鉄めっき鋼板、亜鉛-クロムめっき鋼板、亜鉛-アルミニウムめっき鋼板、亜鉛-チタンめっき鋼板、亜鉛-マグネシウムめっき鋼板、亜鉛-マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛又は亜鉛系合金めっき鋼板等が挙げられる。
【0055】
本実施形態に係る表面処理金属は、化成処理剤により形成される化成皮膜において、金属成分(A)の含有量が金属元素換算で5~500mg/mであることが好ましい。金属成分(A)の上記含有量が5mg/m未満である場合、均一な化成皮膜が得られない。金属成分(A)の上記含有量が500mg/mを超える場合、それ以上の効果は得られず、経済的に不利である。上記金属成分(A)の含有量は、5~200mg/mであることがより好ましい。また、化成処理剤により形成される化成皮膜において、金属成分(A)の含有量に対する、炭素の含有量の割合である、C/Aが、10~27%であることが好ましい。
【0056】
<表面処理方法>
本実施形態に係る化成処理剤を用いて、金属基材を表面処理する表面処理方法は、化成皮膜形成工程と、電着塗膜形成工程と、を含んでいてもよい。
【0057】
(化成皮膜形成工程)
化成皮膜形成工程は、上記金属基材の表面に化成皮膜を形成し、表面処理金属を生成する工程である。化成皮膜形成工程は、上記化成処理剤と金属基材の表面とを接触させることで行われる。上記接触させる方法としては特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法等が挙げられる。上記化成皮膜形成工程における処理温度は、15~70℃の範囲内とすることができ、30~50℃の範囲内とすることが好ましい。上記化成皮膜形成工程における処理時間は、5~1200秒の範囲内とすることができ、30~120秒の範囲内とすることが好ましい。
【0058】
(電着塗膜形成工程)
電着塗膜形成工程は、上記化成皮膜形成工程によって生成された表面処理金属を電着塗装し、表面に電着塗膜を形成する工程である。電着塗装としては、特に限定されないが、例えばカチオン電着塗装とすることができる。カチオン電着塗装に用いるカチオン電着塗料としては、特に限定されず、アミノ化エポキシ樹脂、アミノ化アクリル樹脂、スルホニウム化エポキシ樹脂等からなる従来公知のカチオン電着塗料を用いることができる。上記電着塗料を用いた電着塗装方法としては、特に限定されず、公知の電着塗装方法を適用できる。
【0059】
(その他の工程)
本実施形態に係る表面処理方法は、上記化成皮膜形成工程の前に脱脂処理工程、及び脱脂後水洗処理工程を有していてもよい。また、上記化成皮膜形成工程後、電着塗膜形成工程前に化成後水洗処理工程を有していてもよい。
【0060】
脱脂処理工程は、無リン・無窒素脱脂洗浄液等の脱脂剤により、例えば30~55℃において数分間程度の浸漬処理を行うことでなされる。脱脂処理工程の前に、予備脱脂処理を行ってもよい。
【0061】
脱脂後水洗処理工程は、脱脂処理後の脱脂剤を水洗する工程であり、多量の水洗水により1回又は複数回のスプレー処理を行うことでなされる。
【0062】
化成後水洗処理工程は、塗装後の密着性及び耐食性等に影響を及ぼさない範囲内で、1回又は複数回のスプレー処理又は浸漬水洗を行うことでなされる。最後の上記水洗処理は、イオン交換水又は純水で行われることが好ましい。化成後水洗処理工程の後に、必要に応じて表面処理金属を乾燥させる工程を設けてもよい。
【0063】
上記実施形態において、金属基材を表面処理する表面処理方法は、電着塗膜形成工程を含むものとして説明した。本発明の表面処理方法は、電着塗膜形成工程に代えて、化成皮膜が形成された被塗物に対して、粉体塗装、水性塗装、溶剤塗装を行う工程を含んでいてもよい。粉体塗装、水性塗装、溶剤塗装を行う工程は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。本実施形態に係る化成処理剤は、粉体塗装、水性塗装、溶剤塗装により形成される塗膜に対しても、電着塗膜に対して付与される耐食性と同等の耐食性を付与できる。
【実施例
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明の内容を更に詳細に説明する。本発明の内容は以下の実施例の記載に限定されない。
【0065】
(実施例1)
市販の冷間圧延鋼板(SPCC-SD、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を金属基材として、以下の条件で表面処理を施した。
【0066】
脱脂処理工程として、2質量%「サーフクリーナー53」(日本ペイント・サーフケミカルズ社製脱脂剤)で40℃、2分間浸漬処理した。脱脂後水洗処理工程として、水道水で30秒間スプレー処理した。化成処理工程として、ジルコンフッ化水素酸、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(アリルアミンセグメント:40モル%、ジアリルアミンセグメント:60モル%、分子量100000、酢酸(pKa4.8)塩)を用い、表1に示すように、Zrの含有量が金属元素換算で50質量ppm、フッ素濃度が62.5質量ppm、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体の含有量が樹脂固形分濃度で600質量ppmとなるように化成処理剤を調製した。pHは、水酸化ナトリウムを用いて4に調整した。化成処理剤の温度を40℃に調整し、金属基材を120秒間浸漬処理した。
【0067】
化成後水洗処理工程として、水道水で30秒間スプレー処理した。更にイオン交換水で30秒間スプレー処理した。その後乾燥処理として、電気乾燥炉を用いて80℃で5分間乾燥した。「ZSX PrimusII」(株式会社リガク製 X線分析装置)を用いて、化成処理皮膜中における金属成分(A)であるZrの含有量(mg/m)及びアリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の含有量(mg/m)を測定し、表1に示した。
【0068】
電着塗膜形成工程として、「パワーニクス310」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製カチオン電着塗料)を用いて乾燥膜厚20μmになるように電着塗装し、水洗後、170℃で20分間加熱して焼き付け、実施例1の試験板を作成した。表1及び表2における「Zr皮膜量」は、化成皮膜中の金属成分(A)としてのジルコニウムの含有量を示し、「C皮膜量」は、化成皮膜中の炭素の含有量を示す。
【0069】
(実施例2~25、比較例1~13)
化成処理工程における化成処理剤の構成を表1及び表2に示すものとしたこと、及び、実施例24と実施例25において化成処理剤の温度を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様として、上記実施例及び比較例の試験板を作成した。上記実施例及び比較例の化成処理剤の詳細な構成は以下に示す通りである。
【0070】
実施例14、15及び23、並びに比較例9及び10は、硝酸アルミニウム・九水和物及び硝酸亜鉛・六水和物をそれぞれ金属元素換算で表1に示す量含有させて化成処理剤を調製した。実施例16は、シランカップリング剤としてKBM-603(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製))を用い、実施例22と実施例25は、シランカップリング剤としてKBM-903(3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製))を用い、実施例23は、シランカップリング剤としてKBP-90(アミノ基含有シラン化合物の加水分解縮合物、信越化学工業株式会社製)を用いて化成処理剤を調製した。比較例2はアリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を用いずに化成処理剤を調製した。比較例4及び9は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を用いずに、ジアリルアミンセグメントの含有比率が0モル%であるアリルアミン重合体(C)を用いた。比較例7及び10は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を用いずに、ジアリルアミンセグメントの含有比率が100モル%であるジアリルアミン重合体(C)を用いた。比較例8は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を用いずに、ジアリルアミンセグメントの含有比率が100モル%であり、他に二酸化硫黄に由来するセグメントを有する共重合体(C)を用いた。比較例11は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を用いずに、ジアリルアミンセグメントの含有比率が0モル%であるアリルアミン重合体(C)(分子量3000、50質量ppm)と、ジアリルアミンセグメントの含有比率が100モル%であるジアリルアミン重合体(C)(分子量50000、500質量ppm)との混合物を用いた。比較例12は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を用いずに、ジアリルアミンセグメントの含有比率が100モル%であり、他にマレイン酸に由来するセグメントを有する共重合体(C)を用いた。比較例13は、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)を用いずに、ポリマレイン酸を用いた。また実施例及び比較例中、pKaが-3.7である付加酸としては塩酸を用いた。
【0071】
[液安定性評価]
脱脂液混入時の液安定性について、実施例及び比較例に係る化成処理剤を用いて、「サーフクリーナー53」2%脱脂液を外割りで1%混入させ全体を撹拌し、40℃で60分静置した後、化成処理剤の浴状態を目視観察した。以下の基準により評価を行い、3以上を合格とした。結果を表1及び表2に示した。
3:沈殿物 なし
2:沈殿物 少
1:沈殿物 多
【0072】
[二次密着性試験(SDT)]
実施例及び比較例の試験板に対し、素地まで達する縦平行カットを2本入れた後、5%NaCl水溶液中において50℃で480時間浸漬した。その後、カット部をテープ剥離し、塗料の剥離を観察した。以下の基準により評価を行い、2以上を合格とした。結果を表1及び表2に示した。
3:剥離なし
2:3mm未満剥離
1:剥離幅3mm以上
【0073】
[複合サイクル腐食試験(CCT)]
実施例及び比較例の試験板に対し、素地まで達するクロスカットを入れた後、複合サイクル腐食試験を行った。試験方法は、JASO M609-91の定めるところにより複合試験を100サイクル実施した。試験後、カット部からの両側最大膨れ幅を測定した。以下の基準により評価を行い、3以上を合格とした。結果を表1及び表2に示した。
4:4.0mm未満
3:4.0mm以上6.0mm未満
2:6.0mm以上8.0mm未満
1:8.0mm以上
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表1及び表2の結果から、各実施例に係る化成処理剤は、比較例に係る化成処理剤と比較して、液安定性に優れると共に、塗装後の好ましい耐食性が得られることが確認された。
【要約】
【課題】塗装後の好ましい耐食性が得られる化成処理を可能とする化成処理剤を提供すること。
【解決手段】ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分(A)と、フッ素(B)と、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)と、を含み、金属成分(A)の含有量は、化成処理剤の全質量に対し、金属元素換算で10~10000質量ppmであり、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)における、ジアリルアミンに由来するジアリルアミンセグメント含有比率は、アリルアミンに由来するアリルアミンセグメントと、ジアリルアミンセグメントの合計に対し、52モル%以上、98モル%以下であり、アリルアミン-ジアリルアミン共重合体(C)の重量平均分子量は、500~500000であり、含有量は、化成処理剤の全質量に対し、樹脂固形分濃度で、25~5000質量ppmである、化成処理剤。
【選択図】なし