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特許7052143拡張かつ折畳み可能な入口領域を有する血管内ポンプおよびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-01
(45)【発行日】2022-04-11
(54)【発明の名称】拡張かつ折畳み可能な入口領域を有する血管内ポンプおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/178 20210101AFI20220404BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20220404BHJP
   A61M 60/411 20210101ALI20220404BHJP
   A61M 60/806 20210101ALI20220404BHJP
   A61M 60/855 20210101ALI20220404BHJP
【FI】
A61M60/178
A61M60/237
A61M60/411
A61M60/806
A61M60/855
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021505336
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019044066
(87)【国際公開番号】W WO2020028318
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-09
(31)【優先権主張番号】62/711,870
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/524,592
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508132034
【氏名又は名称】カーディオバスキュラー システムズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CARDIOVASCULAR SYSTEMS, INC.
【住所又は居所原語表記】1225 Old Highway 8 NW St. Paul MN 55112 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス,ジョセフ・ピィ
(72)【発明者】
【氏名】ティルストラ,マシュー・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】ハセルマン,ベンジャミン・ディ
(72)【発明者】
【氏名】カンブロンヌ,マシュー・ディ
(72)【発明者】
【氏名】バン・デ・ムールテレ,トリスタン
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/162618(WO,A1)
【文献】特表2016-524937(JP,A)
【文献】特表2012-531975(JP,A)
【文献】特表2007-501644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0049946(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0178986(US,A1)
【文献】特表2015-500666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプであって、
内径を有する拡張不能なインペラアセンブリと、
前記拡張不能なインペラアセンブリに対して遠位方向に、かつ前記拡張不能なインペラアセンブリと流体接続して配設された折畳みかつ拡張可能な領域とを備え、前記折畳みかつ拡張可能な領域は、
それ自体を通過するルーメンを画成する折畳みかつ拡張可能な筐体を含み、
外径および内径を有する近位端と、
外径および内径を有する遠位端とを画成し、前記血液ポンプはさらに、
拡張不能な入口領域を備え、前記拡張不能な入口領域は、前記拡張不能な入口領域の近位端と遠位端との間に複数の入口アパーチャを画成し、前記複数の入口アパーチャは、前記折畳みかつ拡張可能な領域と流体接続状態で、前記折畳みかつ拡張可能な領域の遠位に配置され、
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、拡張構成に拡張するように適合され、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記遠位端の前記内径は、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記近位端の前記内径よりも大きい、血液ポンプ。
【請求項2】
前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記遠位端の前記外径は、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記近位端の前記外径よりも大きい、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項3】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記遠位端から前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記近位端まで減少する内径を有する1つの領域を含む、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項4】
前記拡張不能なインペラアセンブリの前記内径は、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記近位端の前記内径と同じである、請求項3に記載の血液ポンプ。
【請求項5】
フレア輪郭を含む前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記遠位端をさらに備える、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項6】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は形状記憶材料を含む、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項7】
前記形状記憶材料は金属および/またはポリマーを含む、請求項6に記載の血液ポンプ。
【請求項8】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は拡張するように付勢される、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項9】
前記折畳みかつ拡張可能な領域の少なくとも一部は、円柱形状、楕円形状、円錐形状、フレア形状、および釣り鐘形状からなる群の外側輪郭形状のうち少なくとも1つを呈する、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項10】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、ステント構造およびポリマーのうち少なくとも1つを含む支持構造を含む、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項11】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、少なくとも1つのステントセルパターンを有する拡張可能なステントを含む、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項12】
前記拡張可能なステントは、第1の前記ステントセルパターンと異なる少なくとも1つの第2のステントセルパターンを含む、請求項11に記載の血液ポンプ。
【請求項13】
血液ポンプであって、
内径を有する拡張不能なインペラアセンブリと、
前記拡張不能なインペラアセンブリに対して遠位方向に、かつ前記拡張不能なインペラアセンブリと流体接続して配設された折畳みかつ拡張可能な領域とを備え、前記折畳みかつ拡張可能な領域は、
それ自体を通過するルーメンを画成する折畳みかつ拡張可能な筐体を含み、
外径および内径を有する近位端と、
外径および内径を有する遠位端と、
前記拡張不能なインペラアセンブリに対して移動して減少する内径を有し、前記拡張不能なインペラアセンブリに対して遠位方向に、かつ前記拡張不能なインペラアセンブリと流体接続して配設された第1の領域と、
一定の内径を有し、前記第1の領域に対して位方向に、かつ前記第1の領域と流体接続して配設された第2の領域とを画成し、
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、拡張構成に拡張するように適合され、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記遠位端の前記内径は、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記近位端の前記内径よりも大きく、前記血液ポンプはさらに、
拡張不能な入口領域を備え、前記拡張不能な入口領域は、前記拡張不能な入口領域の近位端と遠位端との間に複数の入口アパーチャを画成し、前記複数の入口アパーチャは、前記折畳みかつ拡張可能な領域と流体接続状態で、前記折畳みかつ拡張可能な領域に対して遠位に配置される、血液ポンプ。
【請求項14】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は形状記憶材料を含む、請求項13に記載の血液ポンプ。
【請求項15】
前記形状記憶材料は金属および/またはポリマーを含む、請求項14に記載の血液ポンプ。
【請求項16】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は拡張するように付勢される、請求項13に記載の血液ポンプ。
【請求項17】
前記折畳みかつ拡張可能な領域の少なくとも一部は、円柱形状、楕円形状、円錐形状、フレア形状、および釣り鐘形状からなる群の外側輪郭形状のうち少なくとも1つを呈する、請求項13に記載の血液ポンプ。
【請求項18】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、ステント構造およびポリマーのうち少なくとも1つを含む支持構造を含む、請求項13に記載の血液ポンプ。
【請求項19】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、少なくとも1つのステントセルパターンを有する拡張可能なステントを含む、請求項13に記載の血液ポンプ。
【請求項20】
前記拡張可能なステントは、第1の前記ステントセルパターンと異なる少なくとも1つの第2のステントセルパターンを含む、請求項19に記載の血液ポンプ。
【請求項21】
血液ポンプであって、
拡張不能なインペラアセンブリと、
前記拡張不能なインペラアセンブリに対して遠位方向に、かつ前記拡張不能なインペラアセンブリと流体接続して配設された折畳みかつ拡張可能な領域とを備え、前記折畳みかつ拡張可能な領域は、
それ自体を通ってルーメンを画成する折畳みかつ拡張可能な筐体を含み、
外径および内径を有する近位端と、
外径および内径を有する遠位端と、
前記拡張不能なインペラアセンブリに対して移動して減少する内径を有し、前記拡張不能なインペラアセンブリに対して遠位方向に、かつ前記拡張不能なインペラアセンブリと流体接続して配設された第1の領域と、
一定の内径を有し、前記第1の領域に対して遠位方向に、かつ前記第1の領域と流体接続して配設された第2の領域と、
近位方向に移動して減少する内径を有し、前記第2の領域に対して遠位方向に、かつ前記第2の領域と流体接続して配設された第3の領域とを画成し、前記第3の領域の最遠位端は前記折畳みかつ拡張可能な領域の最遠位端を含み、
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、拡張構成に拡張されるように適合され、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記第3の領域の前記最遠位端の前記内径は、前記折畳みかつ拡張可能な領域の最大内径を規定し、
前記折り畳みかつ拡張可能な領域は入口を画成し、前記入口は前記折り畳み且つ拡張可能な領域の前記最遠位端によって画成される、血液ポンプ。
【請求項22】
フレア輪郭を含む前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記遠位端をさらに備える、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項23】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は形状記憶材料を含む、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項24】
前記形状記憶材料は金属および/またはポリマーを含む、請求項23に記載の血液ポンプ。
【請求項25】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、拡張するように付勢される、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項26】
前記折畳みかつ拡張可能な領域の少なくとも一部は、円柱形状、楕円形状、円錐形状、フレア形状、および釣り鐘形状からなる群の外側輪郭形状のうち少なくとも1つを呈する、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項27】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、ステント構造およびポリマーのうち少なくとも1つを含む支持構造を含む、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項28】
前記折畳みかつ拡張可能な領域は、少なくとも1つのステントセルパターンを有する拡張可能なステントを含む、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項29】
前記拡張可能なステントは、第1の前記ステントセルパターンと異なる少なくとも1つの第2のステントセルパターンを含む、請求項28に記載の血液ポンプ。
【請求項30】
拡張不能な入口領域をさらに備え、前記拡張不能な入口領域は、前記拡張不能な入口領域の近位端と遠位端との間に複数の入口アパーチャを画成し、前記複数の入口アパーチャは、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記第3の領域と流体接続状態で、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記第3の領域の遠位に配置される、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項31】
前記拡張不能なインペラアセンブリの遠位かつ前記折り畳みかつ拡張可能な領域の前記第1の領域の近位に位置決めされる拡張不能な領域をさらに備え、前記拡張不能な領域は、前記拡張不能なインペラアセンブリおよび前記折り畳み且つ拡張可能な領域の前記第1の領域と流体接続状態にある、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項32】
前記拡張不能なインペラアセンブリの前記内径は、前記折畳みかつ拡張可能な領域の前記第1の領域の前記近位端の前記内径と同じである、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項33】
前記折り畳みかつ拡張可能な領域の前記第3の領域の前記遠位端の前記外径は、前記折り畳みかつ拡張可能な領域の前記第1の領域の前記近位端の前記外径よりも大きい、請求項21に記載の血液ポンプ。
【請求項34】
前記入口は少なくとも1つのアパーチャである、請求項21に記載の血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
ヒギンス,ジョセフ・ピィ(Joseph P. Higgins)、米国市民、ミネソタ州(MN)、ミネトンカ(Minnetonka)在住
ティルストラ,マシュー・ダブリュ(Matthew W. Tilstra)、米国市民、ミネソタ州(MN)、ロジャーズ(Rogers)在住
ハセルマン,ベンジャミン・ディ(Benjamin D. Haselman)、米国市民、ミネソタ州(MN)、セント・ポール(St. Paul)在住
カンブロンヌ,マシュー・ディ(Matthew D. Cambronne)、米国市民、ミネソタ州(MN)、ノース・オークス(North Oaks)在住
バン・デ・ムールテレ,トリスタン・エイ(Tristan A. Van de Moortele)、米国市民、ミネソタ州(MN)、ミネアポリス(Minneapolis)在住
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月29日に出願された「拡張かつ折畳み可能な入口領域を有する血管内ポンプおよびその方法(INTRAVASCULAR PUMP WITH EXPANDABLE AND COLLAPSIBLE INLET REGION AND METHODS THEREOF)」と題された米国非仮特許出願第16/524592号の優先権を主張し、さらに、2018年7月30日に出願された「拡張可能な領域を有する血管内ポンプおよびその輪郭(INTRAVASCULAR PUMP WITH EXPANDABLE REGION AND PROFILES FOR SAME)」と題された米国仮特許出願第62/711,870号の優先権を主張する。当該各出願の内容全体はここに引用により援用される。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
該当なし
【背景技術】
【0003】
発明の背景
発明の分野
本発明は、拡張かつ折畳み可能な入口領域を有する血管内血液ポンプに関する。
【0004】
関連技術の説明
図1を参照すると、ヒトの心臓は、4つの部屋と、心臓を通過する順方向(順行性)の血流を補助する4つの心臓弁とを含む。部屋は、左心房、左心室、右心房および右心室を含む。4つの心臓弁は、僧帽弁、三尖弁、大動脈弁および肺動脈弁を含む。
【0005】
僧帽弁は、左心房と左心室との間に位置し、左心房への逆流を防ぐために一方通行の弁としての機能を果たすことによって、左心房から左心室への血流を制御するのを助ける。同様に、三尖弁は、右心房と右心室との間に位置する一方で、大動脈弁および肺動脈弁は、心臓から離れるように血液を流す動脈内に位置する半月弁である。これらの弁はすべて、順方向(順行性)の血流を可能にするように開口した尖頭を有する一方通行の弁である。通常は機能している弁尖頭は、逆方向の血液によって加えられる圧力を受けて閉じて、血液の逆流(逆行)を防止する。
【0006】
そのため、図示するように、通常の血流は体から戻る脱酸素化血液を含み、そこで血流は上大静脈および下大静脈を介して右心房によって受け取られ、次に右心室に送込まれるが、これは三尖弁によって制御されるプロセスである。右心室は、脱酸素化血液を肺動脈を介して肺に送るように機能し、そこで血液は再酸素化され、肺静脈を介して左心房に戻される。
【0007】
心臓疾患は、死亡率が高い健康問題である。手術中に短期間の緊急の支援を提供するため、または、患者が危機を乗り切るのを助けるように一時的なつなぎの支援として、一時的な機械式血液ポンプ装置がますます頻繁に用いられている。これらの一時的な血液ポンプは、数年にわたって開発され進化して、心臓のポンプ作用を短期的に補い左心室または右心室補助装置として血流を補っており、左心室補助装置(「LVAD」)が現在最も一般に使用されている装置である。
【0008】
公知の一時的なLVAD装置は通常、経皮的に、たとえば大腿動脈を通って送達されて、装置の本体が大動脈弁にまたがって配設されている状態で、患者の左心室にLVAD入口を、および、患者の上行大動脈に出口を設ける、または位置決めする。当業者であれば理解するように、患者の大腿動脈へのアクセスを可能にするために、患者の鼠径部下方に切れ目を入れてもよい。医師であれば、上行大動脈に到達するまで大腿動脈および下行大動脈を通ってガイドワイヤを平行移動させ、その後カテーテルまたは送達シースを平行移動させるであろう。その後、回転ドライブシャフトが取付けられたLVADを、送達カテーテルまたはシースルーメンを通って平行移動させて、ドライブシャフトの近位端を患者の外側で露出させ、電気モータなどの原動機、またはドライブシャフトおよび関連するLVADインペラを回転させそれらの回転速度を制御するための等価物と連結されたままにすることが可能である。
【0009】
一時的な軸流血液ポンプは一般に、(1)ポンプのインペラと接続された装置に一体化されたモータによって動力が供給されるポンプ(米国特許第5,147,388号および第5,275,580号を参照)、ならびに(2)ポンプのインペラに接続されたドライブシャフトに回転トルクを供給する外部モータによって動力が供給されるポンプ(本明細書においてその全体が援用によって引用される、Wamplerの米国特許第4,625,712号およびSummersの米国特許第5,112,349号を参照)の2種類からなる。
【0010】
LVADおよびRVAD(右心補助装置)を含む公知の一時的な心室補助装置(「VAD」)は通常、一体化モータを有しているものであろうと外部モータを有しているものであろうと、流入端部から流出端部への順番で列挙される、筐体内に搭載された以下の要素を含む。これらの要素は、流入アパーチャ(複数可)、整流器としても知られる固定インデューサ、回転インペラ、ならびに固定ディフューザおよび/または流出構造、ならびに例示的な従来技術のポンプおよび/またはインペラアセンブリの図2の断面切断図に示される流出アパーチャ(複数可)である。
【0011】
図2では、心室において流入する血流が流入アパーチャ(複数可)(図示せず)を通って装置筐体に入り、周囲の筐体14によって画成されたものを通過して流れ、最終的にインペラ/ポンプアセンブリ4に入るように、公知の装置2が流入端(遠位端)が図面の左側にあり流出端(近位)が右側にある状態で向けられている。そこで、流入する血液は、回転するインペラ8によって前方に付勢される前に、固定インデューサ6に向かい合う。その後血流は、固定ディフューザによって変更されることがあり、流出して筐体の流出アパーチャ(複数可)10を介して大動脈内に流入する。
【0012】
公知のVADまたはLVAD装置はさらに、送達構成および機能または動作構成を備え、とりわけ送達シースを通る非外傷性の送達を容易にするために、送達構成は機能または動作構成よりも薄く直径が小さい。別の言い方をすれば、さまざまな手段によって、VADもしくはLVADの筐体、および/またはインペラのブレードは、機能または動作構成を実現するために拡張されてもよく、送達構成を実現するために折畳まれてもよい。しかしながら、公知の装置はインペラブレードおよび/または筐体の折畳みならびに拡張を行い、拡張または動作構成の間の移動を可能にし、および/またはインペラに近接する一体化モータを必要とするために、折畳みかつ拡張可能な筐体が、インペラの少なくとも一部を取囲む。たとえば、米国特許第7,027,875号、第7,927,068号、および第8,992,163号を参照。
【0013】
公知のLVAD装置は典型的には、大動脈弓を収容するために角度の付いた筐体を備え、その角度または湾曲は一般に135°の範囲である。
【0014】
筐体内に一体化モータを有するLVAD装置は、非外傷性の血管内の平行移動および心臓内での位置決めを可能にするために十分小さいものでなければならない。装置の一部を折畳むためにさまざまな手段が知られているが、筐体および/またはインペラもしくはブレードなどの部品を含むカテーテルまたは送達シース内で、折畳まれた装置のサイズは一体化モータによって制限される場合がある。
【0015】
さらに、公知のLVAD装置は送達構成を含み、この構成では、筐体および/またはインペラ、たとえばインペラ上のブレードの直径が小さくなる場合があり、送達カテーテルまたはシースから遠位方向に送達されると、折畳まれた要素が拡張可能になる。これらの装置は、いくつかの点で制限がある。第一に、折畳みおよび拡張は、インペラが占める筐体の少なくとも一部を含む。第二に、筐体の流入領域、すなわち、回転インペラおよび固定インデューサまたは整流器に対して遠位方向の領域は、カニューレまたは筐体を通って血流を最適化するチャンスの領域を含む。公知のLVADまたはVAD装置は、このチャンスを利用しない。第三に、公知のLVADまたはVAD装置は、ポンプ内へ流入すると血液に向かい合う固定インデューサまたは整流器を含むが、これは、とりわけ血栓症および/または溶血の一因となり得る。第4に、VADまたはLVAD装置の断面輪郭を小さくすることは、本明細書で説明する理由、つまり、装置の筐体にわたってまたはこれに沿って導線を延在する必要があるためさらに困難になる設計上の要求から重要であり、導線は、たとえば、モータもしくはセンサ(複数可)もしくは他の動作動力要素で動力を供給する、および/またはこれと通信するために用いられ得る。これに関連して、導線は断面輪郭、ならびに、隣接する導線間の絶縁および/もしくは間隔をそのような絶縁および/もしくは間隔が必要であるまたは所望される場合に可能な限り低く保つために、輪郭を小さくする必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のさまざまな実施形態が特にこれらの問題に取り組んでいる。
図面および以下の詳細な説明は、発明のこれらおよび他の実施形態をより詳細に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ヒトの心臓の切断図である。
図2】従来技術の装置の断面図である。
図3】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図4】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図5】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図6】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図7】本発明の一実施形態の切断側面図である。
図8】本発明の一実施形態の切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明のさまざまな実施形態は一般に、患者において血液をポンプで送込むための機械的な補助装置に向けられる。経皮的かつ経脈管的に送達される、改良された一時的なLVADまたはVAD血液ポンプについて本明細書で説明する。
【0019】
図3を参照すると、例示的なLVAD血液ポンプ100が図示され、図の左側に流入口12が位置し、装置の右側に流出口10が位置する。モータは、患者の体の外側の装置の近位端に設けられ、かつ、回転ドライブシャフトと接続されると図示されており、回転ドライブシャフトは、インペラまたはロータ8またはポンプアセンブリと接続される。しかしながら、技術においてよく知られているように、モータは、装置自体の筐体内に設けられてもよく、モータはロータ8またはインペラまたはポンプアセンブリの近位側に搭載されることが典型的である。これらの構成のいずれも、本明細書で説明するような本発明のさまざまな実施形態と共に用いることが可能である。
【0020】
外側筐体14の全長は、入口または流入アパーチャ12から出口または流出アパーチャ10まで、比較的一定の直径を含むと図示されている。ガイドワイヤ16が、入口アパーチャ12に到達するまで装置の外面に沿って位置し、入口アパーチャ12において、カニューレCのルーメンに入り、図示するようにそこから遠位方向に延在する。ガイドワイヤ16はそのため、インペラまたはロータ8またはポンプアセンブリを通過しない。図3に示す構成は、導入部または送達シースまたはカテーテル200内で圧縮された拡張可能な領域102を有する送達構成を含み得る。
【0021】
概して図面を参照すると、装置100は、インペラまたはロータまたはポンプアセンブリを取囲む筐体の直径が送達中または回転中に変化しないように、インペラまたはロータまたはポンプアセンブリに対して遠位方向に位置する場合もある拡張可能な領域102を含み得る。別の言い方をすると、拡張不能な近位領域122を設けてもよく、拡張不能な近位領域122は少なくとも、インペラまたはロータまたはポンプアセンブリを含み、このアセンブリを取囲む筐体は、感知できるほどに拡張または収縮しないが弾性でもよい。さらに、拡張不能な遠位領域124が、少なくとも入口アパーチャ12を含む入口領域を少なくとも含んで設けられてもよい。拡張可能な領域102はそのため、近位端と遠位端とを含む。拡張可能な領域102の近位端は拡張不能な近位領域122の遠位端に当接する、またはこれに隣接する一方で、拡張可能な領域102の遠位端は、拡張不能な遠位領域124の近位端に当接する、またはこれに隣接する。しかしながら、拡張不能な領域(複数可)122、124を取囲む筐体Hは弾性でも柔軟でもよいが、これらは付勢されて拡張するように配設されない。
【0022】
代替的に、図3の装置100の筐体Hは拡張不能でもよい。
図4は装置100の拡張可能な実施形態を示し、折畳まれ変形した拡張可能な領域への/からの例示的な拡張した変形していない拡張可能な領域への直径の変化を破線で示し、この拡張可能な領域は、インペラ、ロータおよび/またはポンプアセンブリの端に対して遠位方向の地点から中空のカニューレに沿って、入口アパーチャにまさに近位する点まで遠位方向に延在する。拡張可能な領域102は、12~20Fr、より好ましくは16~20Frの範囲の変形していない最大直径に拡張し得る。これとは対照的に、拡張されていない領域は、9~12Frの範囲の実質的に固定された直径にとどまる。
【0023】
続けて図3および図4ならびに残りの図を参照すると、装置100は通常、拡張構成に部分的にまたは完全に付勢され得る拡張可能な領域102を含んでもよく、そのため、拡張を容易にし付勢されて拡張可能な材料または構造を含む。拡張可能な領域102の例示的な構成は、外側材料、たとえば、技術において知られているような下地支持構造の拡張に対応するプラスチックもしくはポリマー材料で構成された外装または被覆またはスリーブで取り囲まれた支持構造130を含み得る。支持構造130は、形状記憶材料、たとえばニチノールまたはこれと類似の材料で形成されてもよい。他の材料は、金、タンタル、ステンレス鋼、金属合金、航空宇宙合金、ならびに/または比較的熱および冷気にさらされると拡張し収縮するポリマーを含むポリマーを含み得る。他の場合、拡張可能な領域102の少なくとも一部、たとえば以下で説明する拡張可能な中央部分104は、ポリマーのスリーブ、または拡張および折畳みを可能にするならびに/もしくは拡張および折畳みに対応するように構成された他の材料のスリーブを含んでもよく、支持構造130は省略されてもよい。図4は、インペラアセンブリと接続され、患者の体の外部に位置する電気モータなどの原動機と接続された回転ドライブシャフトを示す。しかしながら、本明細書で説明する本発明のさまざまな実施形態は、その内部で一体化されたモータを含む、すなわち、外部モータを含まない血液ポンプと組合わせて用いてもよい。上述のように、装置100はさらに、拡張可能な筐体Hもしくは領域102を含んでもよい、または、拡張不能でもよい。
【0024】
本明細書で説明される実施形態の多くでは、拡張可能な領域102は、近位移行部分、拡張可能な中央部分および/または遠位移行部分との間で区別する必要または理由はなく、1つの拡張可能な領域を含み得る。
【0025】
本発明の拡張可能な領域102は通常、拡張可能な領域102の拡張および折畳みに適合するポリマー被覆または外装によって取囲まれた支持構造130を含み得る。
【0026】
さらに、支持構造130は、相互作用するおよび/もしくは相互接続されたワイヤならびに/または支柱で形成された一連のセルで形成され、構造の折畳みおよび付勢された拡張を可能にする拡張可能なステント状の構造、たとえば、技術において知られているようなステントを含み得る。たとえば、本明細書においてその全体が援用によって引用される、Kanesakaの米国特許出願第5,776,183号、Pinchukの米国特許出願第5,019,090号、Towerの米国特許出願第5,161,547号、Savinの米国特許出願第4,950,227号、Fontaineの米国特許出願第5,314,472号、Wiktorの米国特許出願第4,886,062号および第4,969,458号、ならびにHillsteadの米国特許出願第4,856,516号を参照。
【0027】
本明細書で説明する拡張可能な領域102は例示にすぎず、いかなる点でも制限的なものではない。そのため、血液ポンプ装置100のどのような拡張可能筐体Hも、血液ポンプ筐体内でまたはこれに沿って、導線もしくは導体Eの絶縁および/または間隔および/または輪郭の減少または一体化に関する本発明のさまざまな実施形態に容易に適合可能である。拡張可能な領域102は、拡張および折畳みが可能な1つの領域も含み得る。
【0028】
ここで図5を参照すると、拡張可能な領域102は、ポンプアセンブリ122に対して遠位方向の地点に配設され、それを通過するルーメンを含む。拡張可能な領域102は、3つの領域1、2、3を含み得る。領域1は、近位端で直径が小さく遠位端で直径が大きな円錐の断面を呈し、遠位端は、円錐断面の基部を形成または画成し得る。領域1に対して遠位方向に配設された領域2は、領域1の円錐の基部の直径と実質的に同じ直径を有する略円柱状の輪郭形状を呈する。代替的に、領域2は、領域1の円錐の基部の直径と一致する近位端の直径を含んでもよく、直径は緩やかに近位方向から遠位方向まで領域2を通って移動して増加する。領域3は、領域2に対して遠位方向に配設され、装置100の入口でもある遠位端において最大直径まで増加する直径を有する。図示するように、フレア形状または釣り鐘形状の遠位端または入口が流域3の遠位端を画成するが、フレア形状でない円錐形を領域3およびその遠位端に用いてもよい。また図示するように、拡張不能な領域122は、拡張可能な領域102の遠位端に対して近位方向に配設されてもよく、拡張不能な領域122は、インペラアセンブリ120と拡張可能な領域102との間に配設されてもよい。本明細書では、領域1、2および3はそれぞれ、第1の領域、第2の領域および第3の領域と呼ばれる場合もある。
【0029】
図6図5に類似しているが、図5の拡張可能な領域102よりも直径が小さなバージョンである。
【0030】
図7は、2つの領域を含む拡張可能な領域102を含み、領域1は図4および図5の領域と同様である。領域2は、領域1に対して遠位方向に位置し、その長さに沿って領域2の遠位端で画成された入口まで一定の直径を有する。領域2の直径は実質的に、領域1の遠位端の直径と同じである、すなわち、領域1の円錐の基部はその近位端の直径よりも小さい。したがって、拡張可能な領域102の遠位端の直径は、拡張可能な領域102の遠位端の直径よりも大きい。図5および図6と同様に、拡張不能な領域122が拡張可能な領域102の遠位端に対して近位方向に配設されてもよく、拡張不能な領域122は、インペラアセンブリ120と拡張可能な領域102との間に配設されてもよい。
【0031】
図8は、1つの領域を有する拡張可能な領域102を示す。そのため、領域3は、拡張不能な領域122から拡張可能な領域102の遠位端の出口まで離れるように近位方向から遠位方向に移動する、緩やかに増加する直径をもたらす。図示するように、領域3の直径は、近位方向から遠位方向に向かって増加する割合で増加して、釣り鐘形状またはフレア輪郭を形成する。代替的に、図5図7のように、図8の領域3は、円錐輪郭を呈し得る。最終的に、拡張不能な領域122は、拡張可能な領域102の遠位端に対して近位方向に配設されてもよく、拡張不能な領域122は、インペラアセンブリ120と拡張可能な領域102との間に配設されてもよい。
【0032】
図示されたすべての場合における拡張可能な領域102は、上述したような図示された動作構成に対して拡張を伴って降り畳まれてもよい。
【0033】
それゆえ、拡張された拡張可能な領域102の内径は、拡張された拡張可能な領域102によって画成されるルーメンをもたらす。そのため、拡張可能な領域102は遠位端において、近位端で拡張された拡張可能な領域102によって画成されるルーメンの内径および面積、ならびに拡張不能な領域122とインペラアセンブリ120との内径および面積と比較して、大きな内径および面積を有する。その結果、拡張可能な領域102のルーメンを通って、拡張不能な領域122とインペラアセンブリ120とを通って、そして最終的に出口アパーチャを通って、流量が最適化される。さらに、図面に示すように、拡張された拡張可能な領域102の遠位端の外径は、拡張した拡張可能な領域102の近位端の外径および拡張不能な領域122の外径よりも大きい。拡張可能な領域102、拡張不能な領域122およびインペラアセンブリ120は、入口に吸込まれた流体が拡張可能な領域102のルーメンを通って、拡張不能な領域122のルーメンを通ってインペラアセンブリ120内に移動されるように、互いに動作可能に接続されている、かつ、流体接続されていると示されている。
【0034】
本発明の説明および本明細書の上述の説明は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するように意図されたものではない。さまざまな実施形態の特徴を、本発明の意図する範囲内で他の実施形態と組み合わせることが可能である。本明細書を研究することにより、本明細書で開示された実施形態の変形形態および修正形態が可能となり、実施形態のさまざまな要素の実用的な代替物および同等物が、当業者によって理解されるであろう。本明細書で開示される実施形態のこれらおよび他の変形形態ならびに修正形態は、本発明の範囲および精神の範囲内で可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8