(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】発泡壁紙用原反及び発泡壁紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20220405BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B5/18
(21)【出願番号】P 2016162049
(22)【出願日】2016-08-22
【審査請求日】2019-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-347611(JP,A)
【文献】国際公開第2003/018306(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024592(WO,A1)
【文献】特開2009-056787(JP,A)
【文献】特開2009-235635(JP,A)
【文献】特開2000-297170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00- 7/06
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に積層された発泡剤含有樹脂層と、を備え、
前記発泡剤含有樹脂層は、
重合した状態にある樹脂と、アゾ系発泡剤と、亜鉛系発泡助剤と、
樹脂の重合時、もしくは熱・光・紫外線・電子線の外部エネルギーを通じて
前記樹脂と反応する
捕捉剤である反応性ラジカル捕捉剤と、
前記反応性ラジカル捕捉剤とは種類が異なる捕捉剤であって、反応性官能基を有さない非反応性ラジカル捕捉剤と、フェノール系酸化防止剤と、を少なくとも含み、
前記フェノール系酸化防止剤の含有量は、前記反応性ラジカル捕捉剤の含有量よりも少な
く、
前記樹脂は、ポリエチレンであり、
前記反応性ラジカル捕捉剤は、プロバンジオイックアシッド[[4-メトキシフェニル]メチレン]-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)エステル、及び1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレートの少なくとも1種を含むことを特徴とする発泡壁紙用原反。
【請求項2】
前記反応性ラジカル捕捉剤は、紫外線により反応するラジカル捕捉剤であることを特徴とする請求項1に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項3】
前記反応性ラジカル捕捉剤は、融点が前記アゾ系発泡剤の分解温度以下である低融点のラジカル捕捉剤であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項4】
前記低融点のラジカル捕捉剤の融点は、85℃以上130℃以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項5】
前記非反応性ラジカル捕捉剤は、融点が前記アゾ系発泡剤の分解温度以下である低融点のラジカル捕捉剤であることを特徴とする請求項
1から請求項4のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項6】
前記非反応性ラジカル捕捉剤の融点は、85℃以上130℃以下であることを特徴とする請求項
5に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項7】
前記フェノール系酸化防止剤の含有量は、前記非反応性ラジカル捕捉剤の含有量よりも少なく、
前記非反応性ラジカル捕捉剤の含有量は、前記反応性ラジカル捕捉剤の含有量よりも少ないことを特徴とする請求項
1から請求項
6のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項8】
前記非反応性ラジカル捕捉剤として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、及び2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシジベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項
1から請求項
7のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項9】
前記フェノール系酸化防止剤は、融点が105℃以下である低融点フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1から請求項
8のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項10】
前記低融点フェノール系酸化防止剤の融点は、51℃以上54℃以下の範囲内であることを特徴とする請求項
9に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項11】
前記フェノール系酸化防止剤は、融点が105℃を超える高融点フェノール系酸化防止剤であることを特徴とする請求項1から請求項
8のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項12】
前記高融点フェノール系酸化防止剤の融点は、110℃以上130℃以下の範囲内であることを特徴とする請求項1
1に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項13】
前記基材は、繊維質の基材であることを特徴とする請求項1から請求項1
2のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項14】
前記基材と前記発泡剤含有樹脂層との間に形成された易接着処理層、をさらに備え、
前記易接着処理層は、アクリル-ブチル共重合体、またはイソシアネートとポリオールとで構成されたポリウレタンで形成されていることを特徴とする請求項1から請求項1
3のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反。
【請求項15】
基材と、前記基材上に積層された発泡剤含有樹脂層と、を備え、
前記発泡剤含有樹脂層は、
ポリエチレンと、アゾ系発泡剤と、亜鉛系発泡助剤と
、熱・光・紫外線・電子線の外部エネルギーを通じて
前記ポリエチレンと反応する
捕捉剤である反応性ラジカル捕捉剤と、
前記反応性ラジカル捕捉剤とは種類が異なる捕捉剤であって、反応性官能基を有さない非反応性ラジカル捕捉剤と、フェノール系酸化防止剤と、を少なくとも含み、
前記フェノール系酸化防止剤の含有量は、前記反応性ラジカル捕捉剤の含有量よりも少な
く、かつ前記非反応性ラジカル捕捉剤の含有量よりも少なく、
前記非反応性ラジカル捕捉剤の含有量は、前記反応性ラジカル捕捉剤の含有量よりも少なく、
前記反応性ラジカル捕捉剤は、プロバンジオイックアシッド[[4-メトキシフェニル]メチレン]-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)エステル、及び1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルメタクリレートの少なくとも1種を含み、
前記非反応性ラジカル捕捉剤として、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β’,β’-テトラメチル-3,9-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)-ジエタノールとの縮合物、及び2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシジベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)の少なくとも1種を含むことを特徴とする発泡壁紙用原反。
【請求項16】
請求項1から請求項1
5のうちいずれか1項に記載した発泡壁紙用原反を加熱発泡させて製造することを特徴とする発泡壁紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡壁紙用原反及び発泡壁紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡壁紙としては、紙基材に塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層を形成したものが知られている。
近年、環境に配慮し、発泡樹脂層にエチレン-酢酸ビニル共重合樹脂のような、ハロゲンを含有しない樹脂が用いられてきている(たとえば、特許文献1、2を参照)。
その中で、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂やポリエチレン樹脂を、Tダイ押出機で、発泡剤の分解温度以下で押出製膜した後、紙基材に貼り合わせて壁紙用原反を作製する方法が、生産性の高さから好適に用いられている(たとえば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3625069号公報
【文献】特開2000-255011号公報
【文献】特許第4629188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した各特許文献に開示されている技術では、ブリードアウトが発生して、壁紙としての耐久性を低下させてしまうという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上記耐久性を向上させることが可能な発泡壁紙用原反と、その発泡壁紙用原反を用いた発泡壁紙の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、発泡壁紙用原反が、基材と、基材上に積層された発泡剤含有樹脂層を備える。また、発泡剤含有樹脂層が、アゾ系発泡剤と亜鉛系発泡助剤と反応性ラジカル捕捉剤を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、基材上に積層された発泡剤含有樹脂層が反応性ラジカル捕捉剤を含むため、ブリードアウトを抑制することが可能となり、耐久性を向上させることが可能な発泡壁紙用原反と、発泡壁紙の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る発泡壁紙用原反の構成を表す断面図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る発泡壁紙の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で表す場合がある。また、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以降の説明における「融点」とは、大気圧下における数値である。
【0010】
(構成)
図1を参照して、発泡壁紙用原反1の構成について説明する。
図1中に表すように、発泡壁紙用原反1は、基材2と、発泡剤含有樹脂層4を備える。
【0011】
(基材2)
基材2の材料としては、壁紙用の裏打紙等、紙基材として通常使用されている材料であれば、特に限定されずに使用可能である。
したがって、基材2の材料としては、水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙や、無機質剤を混抄した無機質紙等を用いることが可能である。難燃紙や無機質紙の秤量は、例えば、50[g/m2]以上300[g/m2]以下の範囲内が好ましく、60[g/m2]以上160[g/m2]以下の範囲内がより好ましい。
【0012】
水溶性難燃剤としては、例えば、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等を用いることが可能である。
無機質剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を用いることが可能である。
基材2の表面のうち、発泡剤含有樹脂層4を積層する側の面(
図1中において、基材2の上側の面)には、易接着処理を施してもよく、また、易接着処理層を設けてもよい。
易接着処理として、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等を用いることが可能である。
【0013】
易接着処理層は、例えば、アクリル-ブチル共重合体や、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン等から形成する。
第一実施形態では、基材2の材料として、例えば、繊維質の材料を用いる。
したがって、第一実施形態では、基材2を、繊維質の基材とした場合について説明する。
【0014】
(発泡剤含有樹脂層4)
発泡剤含有樹脂層4は、基材2上に積層されている。なお、「基材2上」とは、
図1中において、基材2の上側の面を表す。
また、発泡剤含有樹脂層4は、樹脂成分と、充填剤と、アゾ系発泡剤と、亜鉛系発泡助剤と、反応性ラジカル捕捉剤と、非反応性ラジカル捕捉剤と、フェノール系酸化防止剤を含んで形成されている。なお、発泡剤含有樹脂層4は、アゾ系発泡剤と、亜鉛系発泡助剤と、反応性ラジカル捕捉剤とを少なくとも含むものであれば、本願の課題を解決し得る。
また、発泡剤含有樹脂層4の基材2とは反対側の面は、均一な面に形成されている。
【0015】
ここで、発泡剤含有樹脂層4の加熱発泡により、
図2中に表すように、基材2上に積層した発泡樹脂層6が形成される。
すなわち、第一実施形態の発泡樹脂層6は、基材2上で発泡した発泡剤含有樹脂層4で形成されている。
したがって、発泡壁紙用原反1を用いて製造する発泡壁紙8は、発泡壁紙用原反1を加熱発泡させて製造する。
【0016】
以下、発泡剤含有樹脂層4が含む、樹脂成分と、充填剤と、アゾ系発泡剤と、亜鉛系発泡助剤と、反応性ラジカル捕捉剤と、非反応性ラジカル捕捉剤と、フェノール系酸化防止剤について説明する。
【0017】
(樹脂成分)
樹脂成分としては、例えば、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレン等を用いることが可能である。
第一実施形態では、一例として、発泡剤含有樹脂層4が含む樹脂成分が、低密度ポリエチレンと超低密度ポリエチレンである場合を説明する。
低密度ポリエチレンは、例えば、密度0.91[g/cm3]以上0.94[g/cm3]以下の範囲内にあるものが挙げられる。
低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、密度0.91[g/cm3]以上0.93[g/cm3]以下の範囲内であり、より好ましくは、密度0.915[g/cm3]以上0.93[g/cm3]以下の範囲内である。
【0018】
低密度ポリエチレンの分子量、融点、メルトフローレート(MFR)等については、特に制限されないが、融点については、50[℃]以上125[℃]以下の範囲内が好ましく、60[℃]以上110[℃]以下の範囲内がより好ましい。これは、低密度ポリエチレンの融点が125[℃]以下であれば、樹脂を溶融して成型する際に、より高温で溶融する必要がなく、発泡剤が成型中に分解してしまうという可能性が少ないためである。また、低密度ポリエチレンの融点が50[℃]以上であれば、実使用上の熱耐久性が十分に得られるためである。
【0019】
低密度ポリエチレンのMFRについては、3以上150以下の範囲内のものが好ましく、4以上100以下の範囲内のものがより好ましい。これは、低密度ポリエチレンのMFRが3以上であれば、成型時に生じるせん断発熱を抑えることが可能であるため、加工温度の制御が容易になり、成型中に発泡剤が分解してしまうという可能性が少ないためである。また、低密度ポリエチレンのMFRが150以下であれば、製造された発泡壁紙用原反1の機械強度が保たれて、施工性及び耐久性に優れるためである。
上記の特性を有する低密度ポリエチレンとしては、例えば、日本ポリエチレン(株)製:「ノバテックLD LJ802A」等、市販品を用いることが可能である。
【0020】
超低密度ポリエチレンとしては、例えば、密度0.86[g/cm3]以上0.91[g/cm3]未満の範囲内にあるものを用いることが可能である。
超低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは、密度0.87[g/cm3]以上0.90[g/cm3]以下の範囲内であり、より好ましくは、密度0.87[g/cm3]以上0.885[g/cm3]以下の範囲内である。
超低密度ポリエチレンの分子量、融点、MFR等については、特に制限されないが、融点については、50[℃]以上100[℃]以下の範囲内が好ましく、50[℃]以上90[℃]以下の範囲内がより好ましい。これは、超低密度ポリエチレンの融点が100[℃]以下であれば、樹脂を溶融して成型する際に、より高温で溶融する必要がなく、発泡剤が成型中に分解してしまうという可能性が少ないためである。また、超低密度ポリエチレンの融点が50[℃]以上であれば、実使用上の熱耐久性が十分に得られるためである。
【0021】
超低密度ポリエチレンのMFRについては、3以上150以下の範囲内のものが好ましく、4以上100以下の範囲内のものがより好ましい。これは、超低密度ポリエチレンのMFRが3以上であれば、成型時に生じるせん断発熱を抑えることが可能となるため、加工温度の制御が容易になり、成型中に発泡剤が分解してしまうという可能性が少ないためである。また、超低密度ポリエチレンのMFRが150以下であれば、製造された発泡壁紙用原反1の機械強度が保たれ、施工性及び耐久性に優れるためである。
上記の特性を有する超低密度ポリエチレンとしては、例えば、日本ポリエチレン(株)製:「カーネル KJ-640T」等、市販品を用いることが可能である。
【0022】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、無機充填剤や有機充填剤を用いることが可能である。また、無機充填剤や有機充填剤は、一種を単独で用いることも、二種類以上を併用して用いることも可能である。
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、二酸化チタン等を用いることが可能である。
有機充填剤としては、例えば、メラミンシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、木粉、セルロース及びその誘導体を用いることが可能である。
充填剤の含有量は、特に制限されないが、その合計量が、樹脂組成物全量を基準として、10[%]以上60[%]以下の範囲内の質量であることが好ましい。
【0023】
樹脂組成物に充填剤を添加する理由は、発泡壁紙用原反1(発泡壁紙8)の隠蔽性の確保、単位面積当たりの燃焼カロリーの低減、嵩増しによる製造コストの低減等がある。
また、充填剤(特に、無機充填剤)の含有量が、樹脂組成物全量を基準として20[%]以上40[%]以下の範囲内の質量%であると、良好な隠蔽性を確保することが可能であるとともに燃焼カロリーが低い発泡壁紙用原反1(発泡壁紙8)を、低製造コストで製造することが可能となる。
上記の特性を有する無機充填剤(炭酸カルシウム)としては、例えば、備北粉化(株)製:「ソフトン1000」等、市販品を用いることが可能である。
上記の特性を有する有機充填剤(二酸化チタン)としては、例えば、石原産業(株)製:「タイペークCR-60-2」等、市販品を用いることが可能である。
【0024】
(アゾ系発泡剤)
アゾ系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン等を用いることが可能である。
また、アゾジカルボンアミド系発泡剤(ADCA発泡剤)としては、例えば、永和化成(株)製:「ビニホール AC#3C-K2」等、市販品を用いることが可能である。
ADCA発泡剤は、毒性が少なく、発泡開始温度の調節が容易で適用範囲が広いため、好適である。
【0025】
(亜鉛系発泡助剤)
亜鉛系発泡助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛(例えば、日東化成工業(株)製:「Zn-St」)を用いることが可能である。亜鉛金属により、ADCA発泡剤の分解温度が低下し、加熱発泡時の温度条件を抑えることができるため、裏打紙の焼けを防止することが可能になる。
【0026】
(反応性ラジカル捕捉剤)
反応性ラジカル捕捉剤としては、例えばクラリアントケミカルズ社の「ホスタビン PR-31」や株式会社ADEKA社の「アデカスタブ LA-82」、同「アデカスタブ LA-87」などを使用することができる。これらは重合時、もしくは熱・光・紫外線・電子線等の外部エネルギーを通じて樹脂と反応するので、分子量は非常に大きくなる。それゆえ、ブリードアウトの危険性はなく、長期間に渡って良好な状態を保持し続ける。
特に、クラリアントケミカルズ社の「ホスタビン PR-31」は、紫外線のエネルギーを使って反応させることができるため、初期の紫外線吸収剤としての効果も併せ持つ。また、蛍光灯や太陽光の紫外線で反応させることができるため、特段の取扱ノウハウを有することなく、他の添加剤と同じ様に添加するだけでよい。
【0027】
(非反応性ラジカル捕捉剤)
非反応性ラジカル捕捉剤としては、例えば、非反応性低分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤(非反応性低分子量HALS)や、非反応性高分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤(非反応性高分子量HALS)を用いることが可能である。
なお、非反応性低分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤の分子量は1500未満とし、非反応性高分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤の分子量は1500以上とする。すなわち、非反応性高分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤とは、分子量が1500以上の非反応性ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤である。非反応性低分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤は添加剤の移動度が高いため、より高いラジカル捕捉効果を発揮するが、逆にブリードアウトが起き易い。非反応性高分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤の移動度は低いため、ラジカル捕捉能力は非反応性低分子量ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤より劣るが、ブリードアウトの懸念が少ない。そのため、適宜、低分子量成分(非反応性低分子量HALS)と高分子量成分(非反応性高分子量HALS)を併用して使用しても良い。
【0028】
また、反応性、非反応性問わず、ラジカル捕捉剤としては低融点なものを使用するのが望ましい。温度域としては、例えば、アゾ系発泡剤の分解温度以下であって、具体的には、85℃以上130℃以下がのぞましい。85℃以上であれば、ベタツキが抑えられ、130℃以下であれば、成型時の熱で溶融するので、樹脂中に均一に分散させることが可能になる。
【0029】
非反応性低分子量HALSとしては、例えば、BASF(株)製の「チヌビン144」(分子量:685、融点:146℃以上150℃以下の範囲内)や、BASF(株)製の「チヌビン770」(分子量:481、融点:81℃以上85℃以下の範囲内)を用いることが可能である。
非反応性高分子量HALSとしては、例えば、BASF(株)製の「キマソーブ2020」(分子量:2600以上3400以下の範囲内、融点:120℃以上150℃以下の範囲内)や、ADEKA(株)製の「アデカスタブLA-68」(分子量:約1900、融点:80℃以上110℃以下の範囲内)を用いることが可能である。
【0030】
第一実施形態では、非反応性ラジカル捕捉剤として、分子量が1500以上(約2000)であり、融点が85℃以上130℃以下の範囲内である、N-メチルタイプの高分子量且つ低融点ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を用いた場合について説明する。このようなラジカル捕捉剤としては、例えば、ADEKA(株)製の「アデカスタブLA-63P」を用いることが可能である。
ラジカル捕捉剤の添加量の上限は特に無いが、コストや他物性への影響などを考慮すると、樹脂成分に対して50000[ppm]以下が好適であり、樹脂成分に対して10000[ppm]以下がさらに好適である。また、樹脂成分に対して5000[ppm]以下であると、さらに好適である。
【0031】
ラジカル捕捉剤の添加量の下限は、性能との兼ね合いであるが、樹脂成分に対して100[ppm]以上が好適であり、樹脂成分に対して500[ppm]以上がさらに好適である。また、樹脂成分に対して1000[ppm]以上であると、さらに好適である。
N-メチルタイプのヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤は、さらに、炭素鎖長を長くしてアルキル基化し、塩基性をさらに低くすることも可能である。しかしながら、N-水素とN-メチルとの比較に比べると、塩基性への影響はあまり大きくなく、その代わりに1モルあたりの有効官能基数が減少する。このため、N-メチルタイプのヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤に対し、炭素鎖長を長くしてアルキル基化することは、費用対効果の観点で、N-メチルほど有効ではない。
【0032】
(フェノール系酸化防止剤)
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、高融点フェノール系酸化防止剤や、低融点フェノール系酸化防止剤を用いることが可能である。
なお、高融点フェノール系酸化防止剤の融点は105℃を超える温度とし、低融点フェノール系酸化防止剤の融点は105℃以下の温度とする。すなわち、低融点フェノール系酸化防止剤とは、融点が105℃以下のフェノール系酸化防止剤である。
【0033】
高融点フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ADEKA(株)製の「アデカスタブAO-60」(分子量:1178、融点:110℃以上130℃以下の範囲内)を用いることが可能である。
第一実施形態では、フェノール系酸化防止剤として、分子量が531であり、融点が51℃以上54℃以下の範囲内である、低融点フェノール系酸化防止剤を用いた場合について説明する。このようなフェノール系酸化防止剤としては、例えば、ADEKA(株)製:「アデカスタブAO-50」を用いることが可能である。
【0034】
なお、フェノール系酸化防止剤の種類や量によっては、他の含有物(二酸化チタンや窒素酸化物等)との作用により、発泡壁紙用原反1(発泡壁紙8)が変色を起こすことがある。このため、フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などは好適ではない。
また、フェノール系酸化防止剤の添加量は、樹脂成分に対して100[ppm]以上3000[ppm]以下の範囲内が好適である。これは、フェノール系酸化防止剤の添加量が樹脂成分に対して100[ppm]未満であると効果が限定的となり、フェノール系酸化防止剤の添加量が樹脂成分に対して3000[ppm]を超えると変色の懸念が増大するためである。
【0035】
(発泡壁紙の製造方法)
以下、
図1及び
図2を参照して、第一実施形態の発泡壁紙の製造方法を説明する。
発泡壁紙の製造方法は、第一工程と、第二工程を有する。
第一工程では、
図1中に表すように、発泡剤含有樹脂層(以下、「樹脂シート」ともいう)4を基材2上にラミネートして、発泡壁紙用原反(以下、「積層シート」ともいう)1を形成する。なお、樹脂シート4及び積層シート1の詳細な説明は、後述する。
第二工程では、第一工程で形成した積層シート1に対し、樹脂シート4が含有する発泡剤を発泡させることで発泡樹脂層6を形成し、発泡樹脂層6が基材2上に積層された発泡壁紙8を製造する(
図2参照)。
【0036】
発泡剤の発泡は、樹脂シート4を加熱することで行う。
樹脂シート4を加熱する条件としては、樹脂シート4を構成する成分によって適宜設定することが可能であり、特に制限は無い。具体的には、160[℃]以上280[℃]以下の範囲内で10秒~120秒の間で加熱することが好ましく、220[℃]以上240[℃]以下の範囲内で20秒~40秒の間で加熱することがより好ましく、220[℃]で40秒間加熱することが更に好ましい。
【0037】
(樹脂シート4の詳細な説明)
樹脂シート4は、樹脂成分と、充填剤と、アゾ系発泡剤と、亜鉛系発泡助剤と、反応性ラジカル捕捉剤と、非反応性ラジカル捕捉剤と、フェノール系酸化防止剤とを含んでいる。
第一実施形態では、樹脂シート4を押出製膜して形成した場合について説明する。
上記押出製膜の方法としては、例えば、Tダイ押出法、Tダイ押出同時ラミネーション法、Tダイ押出タンデムラミネーション法、円形ダイ押出法、円形ダイインフレーション押出法等の押出成形法を用いることが可能である。
【0038】
なお、樹脂シート4を形成する方法としては、押出成形以外に、例えば、射出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形等、公知の成形方法を用いることも可能である。
樹脂シート4を形成する樹脂組成物としては、各成分を押出機で溶融・混練・分散させた後に適宜ペレット化したものを用いることが可能である。
押出機は、単軸押出機でも二軸押出機でもよいが、生産性や品質への影響を考慮した場合、二軸押出機が望ましい。
【0039】
押出製膜の条件としては、押出温度が100[℃]以上160[℃]以下の範囲内、押出圧力が2[MPa]以上50[MPa]以下の範囲内が挙げられる。
なお、発泡剤の分解を抑制しつつ、樹脂成分であるポリエチレンの融点以上とする観点から、押出温度は、110[℃]以上150[℃]以下の範囲内、120[℃]以上140[℃]以下の範囲内がより好ましい。また、押出安定性の観点から、押出圧力は、3[MPa]以上40[MPa]以下の範囲内が好ましく、3[MPa]以上30[MPa]以下の範囲内がより好ましい。
【0040】
樹脂シート4の厚さは、用途に応じて適宜設定することが可能であるが、第一実施形態のように、発泡壁紙用原反1(発泡壁紙8)を製造する用途であれば、50[μm]以上200[μm]以下の範囲内とすることが好ましい。
第一実施形態では、樹脂シート4に含まれる樹脂成分の一部または全部に対し、架橋処理が施されていてもよい。以下、上記架橋処理の詳細について説明する。
架橋処理としては、例えば、電子線照射処理、過熱蒸気処理等の加熱処理を用いることが可能である。
ここで、上記電子線照射処理は、例えば、製膜した樹脂シート4の片面側、または、両面から電子線を照射し、樹脂シート4に架橋処理を施す処理である。
【0041】
電子線照射の条件としては、樹脂シート4の厚さにもよるが、加速電圧が150[kV]以上300[kV]以下の範囲内、照射線量が10[kGy]以上100[kGy]以下の範囲内が好ましい。これは、加速電圧が上記の範囲内であれば、電子線を樹脂シート4の厚さ方向深くまで十分に到達させることが可能であり、かつ、基材(裏打紙)2への電子線による劣化を抑制することが可能となるためである。また、照射線量が上記の範囲内であれば、樹脂シート4の黄変や機械物性の変化を抑制しつつ、樹脂シート4に所望の架橋処理を施すことが容易となるためである。
【0042】
また、上記過熱蒸気処理とは、例えば、温度が130[℃]以上280[℃]以下の範囲内の環境下で、20秒から15分の間、過熱蒸気(過熱水蒸気ともいう)処理する方法等をいう。具体的には、過熱蒸気処理としては、例えば、過熱蒸気雰囲気下にシート状の物体を配置し、シート状の物体に過熱蒸気を接触させる方法が挙げられる。
また、その他の方法としては、水架橋させる方法が挙げられる。この水架橋させる方法とは、湿度が60[%]以上の環境下において、温度が40[℃]以上70[℃]以下の範囲内の温度域で、1日~1ヶ月の間、養生させて水架橋させる方法である。具体的には、温度が40[℃]であるとともに、湿度が90[%]の恒温恒湿槽の環境下で養生させて、水架橋させる方法が挙げられる。
【0043】
なお、樹脂シート4を構成する樹脂組成物がシラン架橋性樹脂を含む場合には、架橋処理として、例えば、過熱蒸気処理、水架橋処理を用いることが可能である。
また、樹脂シート4の架橋処理は、樹脂組成物を製膜したものに施してもよく、積層シート1に対して施してもよい。
【0044】
(積層シート1の詳細な説明)
積層シート1は、
図1中に表すように、基材2と、基材2上に設けられた樹脂シート4を備えており、例えば、樹脂シート4を基材2上にラミネートして形成されたものである。
樹脂シート4を基材2上にラミネートする方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂シート4と基材2とを、熱プレス機等を用いて熱圧着を行う方法や、過熱蒸気を用いて圧着を行う方法等を用いることが可能である。
【0045】
過熱蒸気を用いて圧着を行う方法によれば、過熱蒸気によって、樹脂シート4の表面の溶融状態を保ったまま、基材2上へラミネートすることが可能となる。このため、レベリング効果によって、密着させる基材2の表面の凹凸が、樹脂シート4に転写されることを抑制することが可能となる。また、樹脂シート4がシラン架橋性樹脂を含む場合は、過熱蒸気によって、シラン架橋性樹脂を効率良く架橋させることが可能となる。
なお、積層シート1の製造方法は、第一架橋工程、または、第二架橋工程を更に備えていてもよい。
【0046】
第一架橋工程は、基材2上にラミネートされる前、または、ラミネート中の樹脂シート4に含まれる樹脂成分の一部または全部を架橋処理する架橋工程である。
第二架橋工程は、積層シート1における樹脂シート4に含まれる樹脂成分の一部または全部を架橋処理する工程である。
第一架橋工程及び第二架橋工程における架橋処理については、樹脂シート4の製造方法で述べた方法と同様の処理を用いることが可能である。この場合、樹脂シート4がシラン架橋性樹脂を含む場合は、過熱蒸気によって、ラミネートとシラン架橋性樹脂の架橋処理とを同時に行うことが可能である。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0047】
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の発泡壁紙用原反1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)発泡剤含有樹脂層(樹脂シート)4が、アゾ系発泡剤と、亜鉛系発泡助剤と、反応性ラジカル捕捉剤とを少なくとも含む。
その結果、基材2上に積層された発泡剤含有樹脂層4が反応性ラジカル捕捉剤を含むため、ブリードアウトを抑制することが可能となり、耐久性を向上させることが可能な発泡壁紙用原反1を提供することが可能となる。
【0048】
(2)反応性ラジカル捕捉剤が、紫外線により反応するタイプである。
それゆえ、実使用環境化での太陽光や蛍光灯を通じて、ラジカル捕捉剤と樹脂との反応が進み、ブリードアウトがし難くなる。それにより、長期間に渡ってラジカル捕捉能力を発揮し続けることが可能になる。
【0049】
(3)反応性ラジカル捕捉剤が融点85℃以上130℃以下である。
その結果、発泡剤を含有し、低温成形が必須である発泡剤含有樹脂層4に対し、ラジカル捕捉剤が低温で溶融するため分散性が良好となり、ラジカル捕捉剤の性能を効果的に発揮させることが可能となる。
【0050】
(4)発泡剤含有樹脂層4が含む反応性ラジカル捕捉剤が、N-メチルタイプのヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤である。
その結果、N-メチルタイプの反応性ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を発泡剤含有樹脂層4に含ませることで、発泡剤含有樹脂層4が低塩基性となるため、発泡壁紙用原反1の耐候性能を向上させることが可能となる。
【0051】
(5)発泡剤含有樹脂層4が、反応性官能基を有さない非反応性のラジカル捕捉剤をさらに含む。
その結果、反応性ラジカル捕捉剤との相乗効果(移動度の最適化等)により、より高いラジカル捕捉能力を得ることができ、耐候性能を更に向上させる。
【0052】
(6)発泡剤含有樹脂層4が、非反応性のラジカル捕捉剤を更に含み、その融点が85℃以上130℃以下である。
その結果、発泡剤を含有し、低温成形が必須である発泡剤含有樹脂層4に対し、ラジカル捕捉剤が低温で溶融するため分散性が良好となり、ラジカル捕捉剤の性能を効果的に発揮させることが可能となる。
【0053】
(7)発泡剤含有樹脂層4が、フェノール系酸化防止剤をさらに含む。
その結果、発泡剤含有樹脂層4が、ラジカル捕捉の速度が速いフェノール系酸化防止剤を含むため、発泡剤含有樹脂層4が含むラジカル捕捉剤との相乗効果が得ることが可能となる。
【0054】
(8)発泡剤含有樹脂層4が含む低融点フェノール系酸化防止剤の融点が、51℃以上54℃以下の範囲内である。
その結果、発泡剤を含有し、低温成形が必須である発泡剤含有樹脂層4に対し、フェノール系酸化防止剤が低温で溶融するため分散性が良好となり、フェノール系酸化防止剤の性能を効果的に発揮させることが可能となる。
【0055】
(9)基材2が、繊維質の基材である。
その結果、基材2の構成が発泡壁紙用原反1に適切な構成となるとともに、基材2を形成する材料の入手が容易となる。
また、第一実施形態の発泡壁紙の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
【0056】
(10)上述した構成を備える発泡壁紙用原反1を加熱発泡させて、発泡壁紙8を製造する。
その結果、基材2上に積層された発泡剤含有樹脂層4がラジカル捕捉剤を含むため、ブリードアウトを抑制することが可能となり、耐久性を向上させることが可能な発泡壁紙8の製造方法を提供することが可能となる。これにより、耐久性を向上させることが可能な発泡壁紙8を提供することが可能となる。
【0057】
(変形例)
第一実施形態では、発泡壁紙用原反1の構成を、基材2と、発泡剤含有樹脂層4を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、発泡壁紙用原反1の構成を、基材2と発泡剤含有樹脂層4に加え、模様層及び表面保護層を設けた構成としてもよい。
この場合、模様層及び表面保護層は、公知の材料を使用して適宜設けることが可能である。また、模様層及び表面保護層は、グラビアコーティング等、公知の印刷技術を用いて設けることが可能である。なお、模様層及び表面保護層は、発泡剤を発泡させる前に設けることが可能である。
【0058】
[実施例]
第一実施形態の
図1及び
図2を参照しつつ、以下に記載する実施例により、本実施例及び比較例の発泡壁紙について説明する。
【0059】
(発泡壁紙の製造)
まず、同方向噛み合い型二軸押出機を用いて、発泡剤が分解しないように樹脂温度を110[℃]に制御しながら、表1の実施例1及び3~7、及び比較例1~3中に表す配合で樹脂ペレットを作成した。なお、実施例7で用いたKOKANOX XJ-100Hは、HALSがポリエチレンの側鎖に予め重合した状態で存在しており、マスターバッチHALSの有効成分は4%である。
次に、作成した樹脂ペレットを、スクリュー径(D)が65[mm]、L/D=28の単軸押出機を用いて、厚さを100[μm]として製膜し、本実施例及び比較例の樹脂シートをそれぞれ形成した。
【0060】
実施例2については、エチレンモノマーを重合させる際に、アデカスタブ LA-87を予め添加して、共重合させた。それ以外は、実施例1と同じ方法を用いた。
さらに、本実施例及び比較例の樹脂シートに対し、それぞれ、走査型電子線照射装置(NHVコーポレーション(株)製)を用いて、加速電圧を200[kV]とし、吸収線量を70[kGy]として電子線を照射し、樹脂成分を架橋させた。
次に、重量が65[g/cm2]の裏打紙(KJ特殊紙(株)製:「WK-6651HT」)上に、本実施例及び比較例の樹脂シートを置き、温度が150[℃]で加熱した熱ロールで熱融着させ、積層シートを形成した。
【0061】
さらに、積層シートのうち、樹脂シート側の表面にコロナ処理を施した後、黄色:赤色=2:1の割合で調色した茶褐色の水性インキ(大日精化工業(株)製:「ハイドリックWP」)を、グラビア印刷機により1[g/m2]塗工した。さらに、艶消し表面コート剤(日信化学工業(株)製:「ビニブラン892-3M」)を、それぞれ、グラビアコーティングで2[g/m2]塗工した。
次に、本実施例及び比較例の積層シートを、温度を220[℃]に設定したオーブンで40秒間加熱し、発泡剤を発泡させて、本実施例及び比較例の発泡壁紙を製造した。
【0062】
【0063】
(発泡樹脂層の評価)
本実施例及び比較例の発泡壁紙に対し、それぞれ、紫外線フェードメータ(スガ試験機(株)製:「U48」)を用いて、ブラックパネルの温度を63[℃]として紫外線照射を行い、0、528、1008、1536、2016時間のそれぞれで表層の脆化を確認した。
脆化を確認するために、10円玉を使って、200[gf]から2000[gf]まで、200[gf]刻みの荷重をかけて、表層に対するコインスクラッチ試験を行なった。
【0064】
評価判定方法としては、コインスクラッチによって、裏打紙の一部、または、全部が表層に露出した荷重を、発泡壁紙の耐候性能を示す代替性能とした。それゆえ、荷重数値が大きいほど、耐候脆化性能が高い(脆化が進んでいない)と判断できる。
評価結果を表2中に表す。なお、表2中に表す単位は[gf]である。
【0065】
【0066】
(評価結果)
表2中に表されるように、本実施の発泡壁紙は、比較例の発泡壁紙と比較して、高い耐候脆化性能を有していることが確認された。
なお、表2中に表された比較例1の経過時間が1008時間、1536時間、2016時間の各欄、及び比較例3の経過時間が2016時間の欄における「0[gf]」は、コインスクラッチ試験を行なう前の段階で、発泡壁紙の脆化により裏打紙が露出したことを表す。
【符号の説明】
【0067】
1…発泡壁紙用原反(積層シート)、2…基材、4…発泡剤含有樹脂層(樹脂シート)、6…発泡樹脂層、8…発泡壁紙