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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】構築装置、構築方法及び、構築物
(51)【国際特許分類】
   E04G 11/22 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
E04G11/22 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017082606
(22)【出願日】2017-04-19
(65)【公開番号】P2018178622
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100171619
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 顕雄
(74)【代理人】
【識別番号】110002550
【氏名又は名称】AT特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 将希
(72)【発明者】
【氏名】末宗 利隆
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-119425(JP,A)
【文献】特開昭52-142714(JP,A)
【文献】特開2001-227159(JP,A)
【文献】特公昭48-027014(JP,B1)
【文献】実開平04-130653(JP,U)
【文献】特開平05-263525(JP,A)
【文献】米国特許第04372733(US,A)
【文献】中国実用新案第201809983(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 11/22
E04G 21/02
B28B 1/00-23/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート又はモルタルを吹き付け可能な吹付ノズルと、
屈折可能なアーム部材及び、該アーム部材に支持されると共に、前記吹付ノズルと対向する打設面が前記アーム部材の屈折に追従して変形可能な無端ベルトを含む裏当手段と、を備える
ことを特徴とする構築装置。
【請求項2】
前記裏当手段が、前記アーム部材の両端部にそれぞれ回転可能に設けられた一対のローラをさらに備え、前記無端ベルトが、前記一対のローラ間に張架されて回動可能である
請求項1に記載の構築装置。
【請求項3】
前記ローラの外周面に周方向に延びる環状のガイド溝が凹設され、前記無端ベルトの裏面に周方向に延びると共に前記ガイド溝に挿入される環状のガイド突起が凸設された
請求項2に記載の構築装置。
【請求項4】
前記アーム部材が、固定アームと、該固定アームの両端にそれぞれヒンジ結合された一対の揺動アームとを含み、前記ローラが前記揺動アームの各先端部にそれぞれ設けられ、前記固定アームと前記揺動アームとの各ヒンジ結合部に前記ガイド突起と係合可能な係合手段が設けられ、前記揺動アームが前記固定アームに対して屈折すると前記無端ベルトの少なくとも前記打設面が曲面状に変形される
請求項3に記載の構築装置。
【請求項5】
前記無端ベルトの外表面に付着した付着物を除去するベルト清掃手段をさらに備える
請求項2から4の何れか一項に記載の構築装置。
【請求項6】
前記吹付ノズル及び前記裏当手段を一体的に移動させる移動手段をさらに備える
請求項1から5の何れか一項に記載の構築装置。
【請求項7】
前記吹付ノズルが、伸縮ブーム及び又は回動可能な第1リンクアームを介して前記移動手段に連結保持され、前記伸縮ブームの伸縮作動及び又は前記第1リンクアームの回動作動により前記吹付ノズルの前記裏当手段に対する相対位置が調整される
請求項6に記載の構築装置。
【請求項8】
前記裏当手段が、回動可能な第2リンクアームを介して前記移動手段に連結保持され、前記第2リンクアームの回動作動により前記裏当手段の前記吹付ノズルに対する相対位置が調整される
請求項6又は7に記載の構築装置。
【請求項9】
前記移動手段が地表に立設された支柱に回転昇降可能に設けられ、前記移動手段が前記支柱を回転しながら上昇すると、前記吹付ノズル及び前記裏当手段が前記支柱を中心に螺旋状に上昇される
請求項6から8の何れか一項に記載の構築装置。
【請求項10】
前記移動手段により前記吹付ノズル及び前記裏当手段を一体的に移動させながら、前記吹付ノズルから前記打設面にコンクリート又はモルタルを連続的に打設して壁体を構築する
ことを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載の構築装置を用いた構築方法。
【請求項11】
前記移動手段により前記吹付ノズル及び前記裏当手段を一体的に螺旋状に上昇移動させながら、前記吹付ノズルから前記打設面にコンクリート又はモルタルを連続的に打設して壁体を螺旋状に構築する
ことを特徴とする請求項9に記載の構築装置を用いた構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築装置、構築方法及び、構築物に関し、特に、コンクリート構造物やモルタル構造物の構築装置、構築方法及び、構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンクリート構造物の構築には、現場で組み立てた型枠内にコンクリートを打設する現場打ち工法や、プレキャスト成形体を現場に搬送して組み立てるプレキャスト工法等が広く採用されている。現場打ち工法においては、型枠の組み立て、解体撤去等が必要となり、工期の長期化や工費の上昇等を招く課題がある。一方、プレキャスト工法においては、プレキャスト成形体の現場への搬送や、プレキャスト成形体を楊重する大型の揚重装置等が必要となり、工費の上昇等を招く課題がある。
【0003】
これら型枠やプレキャスト成形体を用いることなくコンクリート構造物を構築する工法として、例えば、特許文献1には、コンクリート壁面に沿ってスライド移動可能なパネルと、該パネルと連動する吹付ノズルとを備え、パネルをスライド移動させながら吹付ノズルからショットクリートを吹き付けてコンクリート打設を連続的に行うようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-25669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1記載の技術では、吹付ノズルからコンクリートを打設するパネルが単なる矩形状の平板部材で形成されている。このため、当該技術では、パネルをスライド移動させながらコンクリートを連続的に打設しても、壁面形状が平面状のコンクリート壁しか構築することができず、例えば、壁面形状が曲面状となる筒状又は搭状のコンクリート構造物の構築には適応できない課題がある。
【0006】
本開示の技術は、壁面形状が曲面状又は平面状の何れの構造物の構築にも適宜に対応することができる構築装置及び、構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の構築装置は、コンクリート又はモルタルを吹き付け可能な吹付ノズルと、屈折可能なアーム部材及び、該アーム部材に支持されると共に、前記吹付ノズルと対向する打設面が前記アーム部材の屈折に伴い変形可能な裏当部材を含む裏当手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記裏当手段が、前記アーム部材の両端部にそれぞれ回転可能に設けられた一対のローラをさらに備え、前記裏当部材が、前記一対のローラ間に張架されて回動可能な無端ベルトであってもよい。
【0009】
また、前記ローラの外周面に周方向に延びる環状のガイド溝が凹設され、前記無端ベルトの裏面に周方向に延びると共に前記ガイド溝に挿入される環状のガイド突起が凸設されることが好ましい。
【0010】
また、前記アーム部材が、固定アームと、該固定アームの両端にそれぞれヒンジ結合された一対の揺動アームとを含み、前記ローラが前記揺動アームの各先端部にそれぞれ設けられ、前記固定アームと前記揺動アームとの各ヒンジ結合部に前記ガイド突起と係合可能な係合手段が設けられ、前記揺動アームが前記固定アームに対して屈折すると前記無端ベルトの少なくとも前記打設面が曲面状に変形されることが好ましい。
【0011】
また、前記無端ベルトの外表面に付着した付着物を除去するベルト清掃手段をさらに備えることが好ましい。
【0012】
また、前記吹付ノズル及び前記裏当手段を一体的に移動させる移動手段をさらに備えることが好ましい。
【0013】
また、前記吹付ノズルが、伸縮ブーム及び又は回動可能な第1リンクアームを介して前記移動手段に連結保持され、前記伸縮ブームの伸縮作動及び又は前記第1リンクアームの回動作動により前記吹付ノズルの前記裏当部材に対する相対位置が調整されることが好ましい。
【0014】
また、前記裏当手段が、回動可能な第2リンクアームを介して前記移動手段に連結保持され、前記第2リンクアームの回動作動により前記裏当部材の前記吹付ノズルに対する相対位置が調整されることが好ましい。
【0015】
また、前記移動手段が地表に立設された支柱に回転昇降可能に設けられ、前記移動手段が前記支柱を回転しながら上昇すると、前記吹付ノズル及び前記裏当手段が前記支柱を中心に螺旋状に上昇されることが好ましい。
【0016】
本開示の構築方法は、前記移動手段により前記吹付ノズル及び前記裏当手段を一体的に移動させながら、前記吹付ノズルから前記打設面にコンクリート又はモルタルを連続的に打設して壁体を構築することを特徴とする。
【0017】
また、前記移動手段により前記吹付ノズル及び前記裏当手段を一体的に螺旋状に上昇移動させながら、前記吹付ノズルから前記打設面にコンクリート又はモルタルを連続的に打設して壁体を螺旋状に構築してもよい。
【0018】
本開示の構築物は、本開示の構築方法により構築された構築物であって、前記壁体が螺旋状に連続して上方に巻き重ねられて積層されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術によれば、壁面形状が曲面状又は平面状の何れの構造物の構築にも適宜に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係る構築装置を示す模式的な斜視図である。
図2】第一実施形態に係るノズルリンク機構により、(A)は吹付ノズルを水平方向に移動させる状態を説明する模式的な側面図、(B)は吹付ノズルを上下方向に移動させる状態を説明する模式的な側面図、(C)は吹付ノズルを上下/水平方向に回動させる状態を説明する模式的な側面図である。
図3】第一実施形態に係る裏当リンク機構を説明する模式的な側面図である。
図4】第一実施形態に係る裏当機構の(A)は無端ベルトが曲面状に変形された状態を示す模式的な斜視図、(B)は無端ベルトが平面状にされた状態を示す模式的な斜視図である。
図5】第一実施形態に係る裏当機構の(A)は第1ローラ機構を示す模式的な縦断面図、(B)は第2ローラ機構を示す模式的な縦断面図である。
図6】第一実施形態に係る構築装置を用いた構築方法を説明する模式図である。
図7】第一実施形態に係る構築装置を用いた構築方法により構築された構築物を示す模式図である。
図8】第二実施形態に係る構築装置を示す模式的な斜視図である。
図9】無端ベルトを変形させる他の例を説明する模式的な斜視図である。
図10】他の実施形態に係るノズルリンク機構及び裏当リンク機構を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態に係る構築装置、構築方法及び、構築物を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る構築装置10を示す模式的な斜視図である。構築装置10は、図示しない地表に立設された支柱4に相対回転可能且つ相対昇降可能に設けられた移動機構20(移動手段)と、コンクリートを吹き付け可能な吹付ノズル11と、吹付ノズル11を移動機構20に連結保持するノズルリンク機構30と、吹付ノズル11からコンクリートが吹き付けられる裏当機構40(裏当手段)と、裏当機構40を移動機構20に連結保持する裏当リンク機構80とを備えている。なお、図中において、符号2は構築物のコンクリート壁、符号3はコンクリート壁2に適宜間隔で埋設された複数本の鉄筋、符号12は吹付ノズル11と図示しないコンクリート供給源とを接続する供給ホースをそれぞれ示している。
【0023】
[移動機構]
移動機構20は、支柱4に相対移動自在に挿入された中間円筒体21と、中間円筒体21の下端部に設けられた下部円筒体22と、中間円筒体21の上端部に設けられた上部円筒体23とを備えている。移動機構20は、例えば、上部円筒体23に固定されたワイヤーWを介してクレーン等に吊り下げられており、図示しないマニュピレータ等の遠隔操作装置の操作又は自動制御装置からの指令に応じて支柱4に対して回転昇降されるようになっている。移動機構20が回転しながら上昇すると、移動機構20に各リンク機構30,80を介して連結保持された吹付ノズル11及び裏当機構40が、支柱4を中心に螺旋状に上昇される。なお、移動機構20を作動させる手段はクレーン等に限定されず、例えば、移動機構20を支柱4に沿って自昇しながら回転する自昇回転式として構成してもよい。
【0024】
[ノズルリンク機構]
図2に示すように、ノズルリンク機構30は、伸縮ブーム31と、ノズルリンク用固定アーム32と、ノズルリンク用第1揺動アーム33と、ノズルリンク用第2揺動アーム34と、自在継手37と、ノズルリンク用第1油圧シリンダ35と、ノズルリンク用第2油圧シリンダ36とを備えている。各揺動アーム33,34は、本発明の第1リンクアームの一例として好ましい。
【0025】
伸縮ブーム31は、下部円筒体22の外周から径方向に突出して設けられており、その先端部には、上方に延びるノズルリンク用固定アーム32の下端部が固定されている。ノズルリンク用固定アーム32の上端部には、ノズルリンク用第1揺動アーム33の基端部が回動可能にヒンジ結合され、ノズルリンク用第1揺動アーム33の先端部には、ノズルリンク用第2揺動アーム34の基端部が回動可能にヒンジ結合されている。さらに、ノズルリンク用第2揺動アーム34の先端部には、自在継手37を介して吹付ノズル11が回転自在に取り付けられている。
【0026】
ノズルリンク用第1油圧シリンダ35は、ノズルリンク用固定アーム32とノズルリンク用第1揺動アーム33との間に亘って架設されている。ノズルリンク用第2油圧シリンダ36は、ノズルリンク用第1揺動アーム33とノズルリンク用第2揺動アーム34との間に亘って架設されている。伸縮ブーム31、各油圧シリンダ35,36の伸縮作動及び、自在継手37の回転作動は、遠隔操作装置又は自動制御装置からの指令に応じて制御されるようになっている。
【0027】
具体的には、図2(A)に示すように、遠隔操作装置又は自動制御装置からの指令に応じて伸縮ブーム31が伸縮作動すると、吹付ノズル11は、各アーム32~34と一体に水平方向(下部円筒体22の径方向)に移動する。これにより、吹付ノズル11が裏当機構40に近接又は裏当機構40から離反することで、吹付ノズル11の裏当機構40に対する水平方向の相対位置が適宜調整されるようになる。
【0028】
一方、図2(B)に示すように、遠隔操作装置又は自動制御装置からの指令に応じてノズルリンク用第1油圧シリンダ35及び/又はノズルリンク用第2油圧シリンダ36が伸縮作動すると、ノズルリンク用第1揺動アーム33及び/又はノズルリンク用第2揺動アーム34が回動することで、吹付ノズル11は上下方向に移動する。これにより、吹付ノズル11の裏当機構40に対する上下方向の相対位置が適宜調整されるようになる。
【0029】
さらに、図2(C)に示すように、遠隔操作装置又は自動制御装置からの指令に応じて自在継手37の図示しないアクチェータ等が駆動すると、自在継手37が回転作動することで、吹付ノズル11は上下/水平方向に回動される。なお、吹付ノズル11の回動方向は上下/水平に限定されず、例えば、ノズルリンク用第2揺動アーム34と自在継手37との接続部、又は、自在継手37と吹付ノズル11との接続部に回動機構(不図示)を介装し、該回動機構の回転作動と自在継手37の回転作動とを複合させることにより、吹付ノズル11を斜め方向にも首振り可能に構成してもよい。
【0030】
[裏当リンク機構]
図3に示すように、裏当リンク機構80は、裏当リンク用固定アーム81と、裏当リンク用第1揺動アーム82と、裏当リンク用第2揺動アーム83と、裏当リンク用第3揺動アーム84と、裏当リンク用第1油圧シリンダ85と、裏当リンク用第2油圧シリンダ86と、裏当リンク用第3油圧シリンダ87と、裏当リンク用第4油圧シリンダ88とを備えている。各揺動アーム82~84は、本発明の第2リンクアームの一例として好ましい。
【0031】
裏当リンク用固定アーム81は、その下端部を下部円筒体22の上部に固定されると共に、その上端側(又は、略中間位置)を上部円筒体23に固定支持されており、中間円筒体21の外周に沿うように略上下方向に延設されている。また、裏当リンク用固定アーム81の上端部には、裏当リンク用第1揺動アーム82の基端部が回動可能にヒンジ結合されている。裏当リンク用固定アーム81の長さ(高さ)は、好ましくは、コンクリート壁2の施工進捗に伴い順次継ぎ足される鉄筋3(図1参照)よりも長く形成されており、裏当リンク用第1揺動アーム82と鉄筋3との干渉が効果的に防止されるようになっている。
【0032】
裏当リンク用第1揺動アーム82の先端部には、裏当リンク用第2揺動アーム83の基端部が回動可能にヒンジ結合され、裏当リンク用第2揺動アーム83の先端部には、裏当リンク用第3揺動アーム84の基端部が回動可能にヒンジ結合されている。さらに、裏当リンク用第3揺動アーム84の先端部には、裏当機構40が回動可能にヒンジ結合されている。
【0033】
裏当リンク用第1油圧シリンダ85は、裏当リンク用固定アーム81と裏当リンク用第1揺動アーム82との間に亘って架設されている。裏当リンク用第2油圧シリンダ86は、裏当リンク用第1揺動アーム82と裏当リンク用第2揺動アーム83との間に亘って架設されている。裏当リンク用第3油圧シリンダ87は、裏当リンク用第2揺動アーム83と裏当リンク用第3揺動アーム84との間に亘って架設されている。裏当リンク用第4油圧シリンダ88は、裏当リンク用第3揺動アーム84と裏当機構40との間に亘って架設されている。これら各油圧シリンダ85~88の伸縮作動は、遠隔操作装置又は自動制御装置からの指令に応じて制御されるようになっている。
【0034】
具体的には、遠隔操作装置又は自動制御装置からの指令に応じて各油圧シリンダ85~87が伸縮作動すると、各揺動アーム82~84が回動することで、裏当機構40は上下方向に移動する。これにより、裏当機構40の吹付ノズル11に対する上下方向の相対位置が適宜調整されるようになる。また、遠隔操作装置又は自動制御装置からの指令に応じて裏当リンク用第4油圧シリンダ88が伸縮作動すると、裏当機構40が裏当リンク用第3揺動アーム84に対してチルトすることで、裏当機構40の吹付ノズル11に対する傾斜角度が適宜調整されるようになる。
【0035】
[裏当機構]
次に、図4,5に基づいて、裏当機構40の詳細について説明する。
【0036】
図4に示すように、裏当機構40は、裏当リンク用第3揺動アーム84に連結された回動支持部41と、回動支持部41の両端から延びる一対の長尺状の裏当用固定アーム42(アーム部材の一例)と、各裏当用固定アーム42の先端部にヒンジ結合された一対の長尺状の裏当用揺動アーム43(アーム部材の一例)と、各裏当用揺動アーム43の先端部から略鉛直方向に垂下された一対の第1ローラ機構50と、各アーム42,43のヒンジ結合部から略鉛直方向に垂下された一対の第2ローラ機構60と、各第1ローラ機構50間に張架された無端ベルト70(裏当部材)と、各裏当用揺動アーム43の先端部に突設された一対のベルト清掃機構(ベルト清掃手段)75と、裏当用揺動アーム43を裏当用固定アーム42に対して回動させる回動機構46とを備えている。
【0037】
なお、便宜上、以下の説明では、無端ベルト70の外表面のうち、吹付ノズル11からコンクリートが吹き付けられる側の面を打設面Aと称し、該打設面Aとは反対側の面をリターン面Bと称する。
【0038】
回動支持部41は、略円柱状の中心ボス部41Aと、中心ボス部41Aの外周に回動可能に嵌挿された円筒状の筒部41Bと、中心ボス部41Aの上部に突設された固定部41Cとを備えている。固定部41Cには、裏当リンク用第3揺動アーム84の先端部がヒンジ結合されている。回動支持部41は、図示しないアクチュエータ等の駆動源を備えており、遠隔操作装置の操作又は自動制御装置からの指令によりアクチュエータを駆動させると、筒部41Bが各アーム42,43と一体に中心ボス部41Aに対して相対回転することで、各アーム42,43に支持された各ローラ機構50,60及び、無端ベルト70の水平方向に対する傾斜角度が適宜調節されるようになっている。
【0039】
各裏当用固定アーム42は、その長手方向が回動支持部41を挟んで同一直線上となるように、筒部41Bの両側面から略水平方向に延設されている。なお、各裏当用固定アーム42は、別体に形成される必要はなく、これらを一本のアーム部材として一体的に形成してもよい。
【0040】
各裏当用固定アーム42の先端部及び、各裏当用揺動アーム43の基端部には、これらを回動可能にヒンジ結合する第2支持軸61がそれぞれ挿入されている。また、各裏当用揺動アーム43の先端部には、第1支持軸51が回転自在に設けられている。
【0041】
図5(A)に示すように、第1ローラ機構50は、裏当用揺動アーム43の先端部に回転可能に挿入された第1支持軸51と、第1支持軸51に一体回転可能に設けられて無端ベルト70の裏面を支持するローラ本体52とを備えている。ローラ本体52には、その外周面から所定の深さで窪む上下一対のガイド溝53が周方向に環状に設けられている。
【0042】
無端ベルト70のうち、各ガイド溝53に対応する部位には、ベルト本体部71の裏面から突出する上下一対のガイド突起72が設けられている。各ガイド突起72は、その縦断面形状を先端部72Aが基端部72Bよりも拡張された略T字状に形成されており、好ましくは、ベルト本体部71の裏面に周方向に連続する環状に延設されている。すなわち、無端ベルト70の回動に伴い、各ガイド突起72が無端ベルト70の折り返し部にて各ガイド溝53にそれぞれ嵌り込んで係合することで、無端ベルト70の上下方向への変位が規制されるようになっている。
【0043】
図5(B)に示すように、第2ローラ機構60は、各アーム42,43をヒンジ結合する第2支持軸61と、第2支持軸61の所定部位に各ガイド突起72を中心に上下に一対ずつ設けられたローラスタンド62,63と、各ローラスタンド62,63の先端部に回転自在に軸支された押さえローラ64,65とを備えている。
【0044】
各ローラスタンド62,63は、第2支持軸61から無端ベルト70の打設面A側に向けて突出すると共に、その先端側が第2支持軸61と略平行となるように各ガイド突起72に向けて折り曲げられた略L字状に屈曲形成されている。各押さえローラ64,65は、ベルト本体71の裏面とガイド突起72の先端部72Aとの間に嵌り込んで係合することで、無端ベルト70を第2支持軸61側に引き寄せるようになっている。ローラスタンド62,63及び、押さえローラ64,65は、本発明の係合手段の一例として好ましい。
【0045】
図4に戻り、ベルト清掃機構75は、各裏当用揺動アーム43の先端部に突出して設けられたステイ部材76と、ステイ部材76から垂下された摺接部材77とを備えて構成されている。摺接部材77は、好ましくは、弾性変形可能なヘラやブラシ等で形成されており、その先端部が無端ベルト70の回動に伴いベルト表面と摺接することで、ベルト表面の付着物(例えば、打設面Aに残存するコンクリート等)を削ぎ落すようになっている。なお、ベルト清掃機構75は、ヘラやブラシ等を備えるものに限定されず、付着物に水等を吹きかけて除去する放水手段を備えるものであってもよい。また、ベルト清掃機構75の配置位置や個数は、図示例に限定されず、無端ベルト70のリターン面B側に一個のみ設けるように構成されてもよい。
【0046】
回動機構46は、遠隔操作装置の操作又は自動制御装置からの指令に応じて伸縮作動する図示しない油圧シリンダ等を備えており、裏当用揺動アーム43を裏当用固定アーム42に対して相対回動させて屈折させることで、各ローラ機構50間に張架された無端ベルト70のベルト面を「平面状」から「曲面状」に変形させる。
【0047】
具体的には、図4(A)に示すように、裏当用揺動アーム43が裏当用固定アーム42に対して吹付ノズル11側に所定の角度で屈折されると、裏当用固定アーム42の先端部に設けられた第1ローラ機構50は無端ベルト70の折り返し端と一体に第2ローラ機構60よりも吹付ノズル11側に押し出される。この際、無端ベルト70のガイド突起72(図5(B)参照)は、第2ローラ機構60の押さえローラ64,65(図5(B)参照)によって第2支持軸61側に引き寄せられているので、無端ベルト70が各アーム42,43の屈折形状に沿うように曲面状に変形されることになる。
【0048】
一方、図4(B)に示すように、裏当用揺動アーム43が裏当用固定アーム42と同一直線上に配置されると、第1及び第2ローラ機構50,60が略直列に配置されることで、無端ベルト70のベルト面は平面状となる。すなわち、裏当用揺動アーム43と裏当用固定アーム42とのなす角度を適宜調節することで、無端ベルト70が「曲面状」又は「平面状」に選択的に変形されるようになり、曲面状や平面状等のあらゆる形状のコンクリート壁2の構築に適宜に対応できるようになっている。
【0049】
[構築方法及び構築物]
次に、図6,7に基づいて、本実施形態に係る構築装置10を用いた構築方法について説明する。本実施形態では、図7に示すような、地表に立設されて高さ方向に向かうに従い縮径する搭状構築物1の構築を事例とする。塔状構築物1は、例えば、その頂部に風力発電機5が揚重されて搭載される風力発電塔として用いることができる。なお、各図において、破線は裏当機構40が移動した軌跡を示している。
【0050】
図6(A)に示すように、塔状構築物1のコンクリート壁2のうち、施工対象となる最上端部のコンクリート壁2Aの背面に裏当機構40を配置し、ノズルリンク機構30により吹付ノズル11を上下水平方向に適宜移動させながら無端ベルト70の打設面Aに向けてコンクリートを打設する。そして、打設されたコンクリートが自立できる程度の所定硬度に達すると、移動機構20を回転上昇させることで、裏当機構40を吹付ノズル11と一体に支柱4を中心に螺旋状に上昇移動させる。
【0051】
このように、裏当機構40が移動すると、これに伴い無端ベルト70が回動することで、打設されたコンクリートはベルト面に引き摺られることなく無端ベルト70から滑らかに離反される。この際、ベルト清掃機構75が無端ベルト70に摺接するので、ベルト表面の付着物は順次削ぎ落されることになる。すなわち、パネルを単にスライド移動させる従来技術に比べ、無端ベルト70を回動させることで、コンクリートの引き摺りが効果的に抑止され、さらには、ベルト清掃機構75によりベルト表面の付着物を除去することで、打設されたコンクリート内の異物混入等が効果的に防止されるようになっている。
【0052】
次いで、移動機構20を回転上昇させながら、裏当機構40及び吹付ノズル11を螺旋状に移動させ、これらと並行して吹付ノズル11から無端ベルト70の打設面Aにコンクリートの打設を連続的に行う。この際、塔状構築物1は高さ方向に向かうに従い縮径されるので、裏当機構40の移動に伴い裏当リンク機構80を作動させて、裏当機構40と支柱4との相対距離を順次縮めていく。
【0053】
これら裏当機構40及び吹付ノズル11の螺旋移動と、吹付ノズル11によるコンクリートの打設とを繰り返すことで、図6(B)に示すように、螺旋状のコンクリート壁2Aが連続的に形成される。移動機構20の移動速度は、打設されたコンクリートの硬化時間に応じて適宜に設定すればよい。例えば、コンクリート壁2Aが螺旋状に一周して上下に積層される際に、当該積層部位の下方のコンクリート壁2Aを構成するコンクリートが確実に硬化(或は、崩れない程度に硬化)される時間を基準に移動速度を設定することが好ましい。
【0054】
これら図6(A),(B)に示す工程をコンクリート壁2が所望の高さに達するまで連続的に繰り返し行うことにより、最終的には図7に示すような搭状構築物1が構築される。本実施形態において、移動機構20により裏当機構40及び吹付ノズル11を水平回転させながら一定の高さ毎に上昇させることにより、打継面が水平な搭状構築物を構築することもできるが、上述のように裏当機構40及び吹付ノズル11を螺旋移動させて得られた搭状構築物1は、コンクリート壁2が周方向及び高さ方向に螺旋状に連続するため、積層された各コンクリート壁2間の打継面も螺旋状となり、打継面が水平な構築物よりも、地震時等に発生するせん断力に対する強度を効果的に確保することが可能になる。
【0055】
以上詳述したように、本実施形態によれば、コンクリートを吹き付け可能な吹付ノズル11と、無端ベルト70を有する裏当機構40とを一体的に螺旋状に移動させつつ、吹付ノズル11から無端ベルト70の打設面Aにコンクリートを連続的に打設することにより、螺旋状のコンクリート壁2が形成されるようになる。これにより、従前の型枠等を用いることなく、塔状又は筒状のコンクリート構造物を容易に構築することが可能となり、労力や工費を効果的に削減しつつ、工期を確実に短縮することができる。
【0056】
また、裏当用揺動アーム43を裏当用固定アーム42に対して屈折させることにより、これらアーム42,43にローラ機構50,60を介して支持された無端ベルト70のベルト面が平面状から曲面状に選択的に変形されるようになる。これにより、曲面状や平面状等のあらゆる壁面形状のコンクリート構造物の構築に適宜に対応することが可能になる。
【0057】
また、裏当機構40を移動させると、ローラ機構50に張架された無端ベルト70が回動することにより、打設面Aに打設されたコンクリートがベルト面から滑らかに離反されるようになる。これにより、従前のパネルを単にスライド移動させる工法に比べ、打設されたコンクリートの引き摺りを効果的に低減することが可能となり、コンクリート壁2の外壁面の仕上がり度合いを向上することができる。
【0058】
また、無端ベルト70の回動に伴い、ベルト清掃機構75の摺接部材76がベルト表面に摺接することにより、ベルト表面の付着物が効果的に除去されるようになっている。これにより、無端ベルト70の打設面Aを付着物のないクリーンな状態に維持することが可能となり、コンクリート内への異物の混入等を効果的に防止することができる。
【0059】
また、吹付ノズル11によるコンクリートの吹き付け、移動機構20やリンク機構30,80の各作動を遠隔操作装置でコントロール、或いは、自動制御装置で自動化することにより、施工に要する労力や人件費等が大幅に削減されるようになり、工費を効果的に抑えることが可能になる。
【0060】
[第二実施形態]
次に、図8に基づいて、第二実施形態に係る構築装置10を説明する。第二実施形態の構築装置10は、移動機構20の下部円筒体22下方に駆動輪24を有する支持ベース部28を設けると共に、支持ベース部28に支柱4を立設し、移動機構20を予め敷設された一対のレール25,26に沿って自走できるようにしたものである。
【0061】
このように構成された第二実施形態の構築装置10によれば、移動機構20をレール25,26の軌道に沿って走行させつつ、裏当機構40の各アーム42,43を直線状にして無端ベルト70の打設面Aを平面状とし、さらに、吹付ノズル11から打設面Aにコンクリートを連続的に打設することにより、壁面形状が平面状のコンクリート壁2を容易に構築することが可能になる。
【0062】
[その他]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態において、無端ベルト70を曲面状に変形させる際は、裏当用揺動アーム43を裏当用固定アーム42に対して吹付ノズル11側に屈折させるものとして説明したが、例えば、図9に示すように、裏当用揺動アーム43を裏当用固定アーム42に対して吹付ノズル11とは反対側に屈折させ、無端ベルト70を吹付ノズル11とは反対側に曲面状に凸となるように変形させてもよい。このように構成すれば、筒状壁体等を筒外から構築することができる。
【0064】
また、上記実施形態において、無端ベルト70は曲面状又は平面状に変形されるものとして説明したが、例えば、裏当用揺動アーム43を裏当用固定アーム42に対して略直角に屈折させて、無端ベルト70を断面略L字状に変形させてもよい。
【0065】
また、上記実施形態において、無端ベルト70を曲面状に変形させる裏当用揺動アーム43及び、第2ローラ機構60の個数はそれぞれ一対として説明したが、裏当用揺動アーム43及び、第2ローラ機構60をさらに増設し、無端ベルト70の曲率を大きく、或は、無端ベルト70をより滑らかな曲面状に設定できるように構成してもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、ノズルリンク機構30の各揺動アーム33,34及び、又は裏当リンク機構80の各揺動アーム82~84の本数は図示例に限定されず、例えば、図10に示すように、ノズルリンク機構30の各揺動アーム33,34及び、又は裏当リンク機構80の各揺動アーム82~84の一部(図示例では、裏当リンク用第3揺動アーム84)を省略してもよい。この場合、吹付ノズル11の裏当機構40に対する水平方向の相対位置は、伸縮ブーム31の伸縮作動により調整し、吹付ノズル11の裏当機構40に対する上下方向の相対位置は、各揺動アーム82~83の回動作動又は、該回動作動と移動機構20の上下作動との複合動作により調整すればよい。
【0067】
また、上記実施形態において、吹付ノズル11から無端ベルト70に打設される壁体材料はコンクリートとして説明したが、例えば、繊維補強コンクリート、モルタル、繊維補強モルタル等を打設し、コンクリート壁2を繊維補強コンクリート製、モルタル製、繊維補強モルタル製として構築してもよい。
【0068】
また、上記実施形態の適用範囲は、搭状や筒状のコンクリート構造物の構築に限定されず、トンネルのコンクリート内壁等、他の構造物の構築にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…搭状構築物、2…コンクリート壁、3…鉄筋、4…支柱、10…構築装置、11…吹付ノズル、20…移動装置(移動手段)、21…中間円筒体、22…下部円筒体、23…上部円筒体、30…ノズルリンク機構、31…伸縮ブーム、32…ノズルリンク用固定アーム、33…ノズルリンク用第1揺動アーム(第1リンクアーム)、34…ノズルリンク用第2揺動アーム(第1リンクアーム)、35…ノズルリンク用第1油圧シリンダ、36…ノズルリンク用第2油圧シリンダ、37…自在継手、40…裏当機構(裏当手段)、41…回動支持部、42…裏当用固定アーム(アーム部材)、43…裏当用揺動アーム(アーム部材)、46…回動機構、50…第1ローラ機構、51…第1支持軸、52…ローラ本体、53…ガイド溝、60…第2ローラ機構、61…第2支持軸、62,63…ローラスタンド(係合手段)、64,65…押さえローラ(係合手段)、70…無端ベルト、71…ベルト本体、72…ガイド突起、80…裏当リンク機構、81…裏当リンク用固定アーム、82…裏当リンク用第1揺動アーム(第2リンクアーム)、83…裏当リンク用第2揺動アーム(第2リンクアーム)、84…裏当リンク用第3揺動アーム(第2リンクアーム)、85…裏当リンク用第1油圧シリンダ、86…裏当リンク用第2油圧シリンダ、87…裏当リンク用第3油圧シリンダ、88…裏当リンク用第4油圧シリンダ
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8
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図10