(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】Ag合金微粉末
(51)【国際特許分類】
C22C 5/06 20060101AFI20220405BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220405BHJP
B22F 9/08 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C22C5/06 Z
B22F1/00 K
B22F9/08 A
(21)【出願番号】P 2017125098
(22)【出願日】2017-06-27
【審査請求日】2020-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】沼 達也
(72)【発明者】
【氏名】中川 将
(72)【発明者】
【氏名】林 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅之
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/072894(WO,A1)
【文献】特開2015-190038(JP,A)
【文献】特開昭61-190031(JP,A)
【文献】特開2017-119913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 5/06
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加元素として、Inを20質量%以上50質量%未満の範囲内、あるいはSnおよびInをそれぞれ0.5質量%以上、合計で15質量%以下の範囲内にて含み、残りの金属成分がAgおよび不可避不純物からなる組成を有し、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下の範囲内にあることを特徴とする導電性銀ペースト用のAg合金微粉末。
【請求項2】
添加元素
として、Inを20質量%以上50質量%未満の範囲内にて含み、さらに酸素を、0.040質量%以上0.1質量%以下の範囲内にて含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性銀ペースト用のAg合金微粉末。
【請求項3】
添加元素
として、SnおよびInをそれぞれ0.5質量%以上、合計で15質量%以下の範囲内にて含み、さらに酸素を、0.015質量%以上0.1質量%以下の範囲内にて含有することを特徴とする請求項1に記載の導電性銀ペースト用のAg合金微粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ag合金微粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
Agは特有の外観(光沢)を有することから、指輪やネックレスなどのアクセサリーの材料として利用されている。特に、Ag微粉末は比較的低温での加熱によって焼結させることができ、焼結性に優れていることから、Ag微粉末を含む銀粘土を所定の形状に成形した後、焼成することによって銀製アクセサリーを製造することが行なわれている。また、Agは高い導電性を有していることから、導電材としても利用されている。例えば、Ag微粉末を含む導電性銀ペーストを所定のパターンで塗布した後、焼成することにより、所定の形状を有する銀電極や配線を製造することが行なわれている。
【0003】
一方、Agは化学変化しやすく、空気中の硫黄化合物と反応(硫化)して、表面に硫化物(Ag2S)が生成することが知られている。Agの表面に硫化物が生成すると、その表面が黒色となり見栄えが悪くなるだけでなく、導電性を低下させる要因となるおそれがある。
【0004】
特許文献1には、耐硫化性Ag合金として、AgとPtとを主成分として含み、Pd、Au、Zn、In、Sn、Ir、Mg、Ga、Ru、Cuを1種もしくは2種以上を添加元素として含む合金が開示されている。但し、この特許文献1には耐硫化性Ag合金のサイズに関する一般的な記載はなく、実施例で製造されている耐硫化性Ag合金は、3mm厚の板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銀粘土や導電性銀ペーストに用いられるAgは、一般に平均粒子径が50μm以下の微粉末である。そこで、Agが有する外観と、高い焼結性とを有し、かつ耐硫化性に優れたAg合金微粉末が望まれている。
しかしながら、前記特許文献1に記載されている組成の耐硫化性Ag合金は、平均粒子径が50μm以下の微粉末にすると、耐硫化性が低下してしまうことがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、Agが有する外観と、高い焼結性とを有し、かつ耐硫化性に優れたAg合金微粉末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のAg合金微粉末は、添加元素として、Inを20質量%以上50質量%未満の範囲内、あるいはSnおよびInをそれぞれ0.5質量%以上、合計で15質量%以下の範囲内にて含み、残りの金属成分がAgおよび不可避不純物からなる組成を有し、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下の範囲内にあり導電性銀ペースト用であることを特徴としている。
【0009】
本発明のAg合金微粉末によれば、添加元素として、Inを20質量%以上、あるいはSnおよびInの両方をそれぞれ0.5質量%以上含むので、Ag合金微粉末の耐硫化性が向上する。これは、Ag合金微粉末の表面にSnまたはInの一方あるいはSnおよびInの両方を含む酸化物の被膜が形成されることによって、Agと硫黄化合物とが接触しにくくなるためであると考えられる。
【0010】
また、本発明のAg合金微粉末は、Inを含有する場合はその含有量が50質量%未満の範囲内、あるいはSnおよびInを含有する場合はその含有量が合計で15質量%以下と制限されているので、Agと同等の外観と、高い焼結性とを有するものとなる。
【0011】
ここで、本発明のAg合金微粉末においては、添加元素として、Inを20質量%以上50質量%未満の範囲内にて含む場合は、さらに酸素を、0.040質量%以上0.1質量%以下の範囲内にて含有することが好ましい。
この場合は、酸素を0.040質量%以上含有するので、Inを含む酸化物の被膜が確実に形成される。従って、Ag合金微粉末の耐硫化性を確実に向上させることができる。また、酸素の含有量が、0.1質量%以下とされているので、過剰な酸化物の被膜の形成が抑えられ、高い焼結性を有するものとなる。
【0012】
また、本発明のAg合金微粉末においては、添加元素として、SnおよびInをそれぞれ0.5質量%以上、合計で15質量%以下の範囲内にて含む場合は、さらに酸素を、0.015質量%以上0.1質量%以下の範囲内にて含有することが好ましい。
この場合は、酸素を0.015質量%以上含有するので、SnおよびInを含む酸化物の被膜が確実に形成される。従って、Ag合金微粉末の耐硫化性を確実に向上させることができる。また、酸素の含有量が、0.1質量%以下とされているので、過剰な酸化物の被膜の形成が抑えられ、高い焼結性を有するものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、Agが有する外観と、高い焼結性とを有し、かつ耐硫化性に優れたAg合金微粉末を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のAg合金微粉末は、添加元素として、SnまたはInの一方を20質量%以上50質量%未満の範囲内、あるいはSnおよびInの両方をそれぞれ0.5質量%以上、合計で50質量%未満の範囲内にて含み、残りの金属成分がAgおよび不可避不純物からなる組成を有し、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下の範囲内にある。また、添加元素が、SnまたはInの一方である場合は、さらに酸素を0.040質量%以上1.0質量%以下の範囲内にて含有する。一方、添加元素が、SnおよびInの両方である場合は、さらに酸素を0.015質量%以上0.1質量%以下の範囲内にて含有する。
以下に、Ag合金微粉末の組成および平均粒子径を上述のように規定した理由について説明する。
【0015】
<添加元素がSnまたはInの一方であるAg合金粉末>
(SnまたはInの含有量:20質量%以上50質量%未満)
SnまたはInはそれぞれ酸素と結合して、Ag合金微粉末の表面にSnまたはInの一方を含む酸化物の被膜を形成する作用効果を有する。この被膜により、Ag合金微粉末の耐硫化性が向上することになる。
ここで、SnまたはInの含有量が20質量%未満の場合は、上述の作用効果を奏功せしめることができないおそれがある。一方、SnまたはInの含有量が50質量%を超えると、Ag合金微粉末の表面が黒色化して外観が損なわれるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、添加元素がSnまたはInの一方である場合には、SnまたはInの含有量を20質量%以上50質量%未満の範囲内に設定している。
【0016】
(酸素含有量:0.040質量%以上0.1質量%以下)
酸素は、SnまたはInと結合して、Ag合金微粉末の表面にSnまたはInの一方を含む酸化物の被膜を形成する作用効果を有する。
ここで、酸素の含有量が0.040質量%未満の場合は、上述の作用効果を奏功せしめることができないおそれがある。一方、酸素の含有量が1.0質量%を超えると、Ag合金微粉末のAg表面に形成されるSnまたはInの一方を含む酸化物の量が多くなり、また、Agの一部が酸化されるため、Ag合金粉末が焼結しにくくなり、焼結性が低下するおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、添加元素がSnまたはInの一方である場合には、酸素の含有量を0.040質量%以上1.0質量%以下の範囲内に設定している。
【0017】
<添加元素がSnおよびInの両方であるAg合金粉末>
(SnおよびInの含有量:それぞれ0.5質量%以上、合計で50質量%未満)
SnおよびInは酸素と結合して、Ag合金微粉末の表面にSnとInを含む酸化物の被膜を形成する作用効果を有する。SnとInを含む酸化物の被膜は、SnまたはInの一方のみを含む酸化物の被膜と比較して、耐硫化性に優れたものとなる。
ここで、SnおよびInのそれぞれの含有量が0.5質量%未満の場合は、上述の作用効果を奏功せしめることができないおそれがある。一方、SnおよびInの合計含有量が50質量%を超えると、Ag合金微粉末の表面が黒色化して外観が損なわれるおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、添加元素がSnおよびInの両方である場合には、SnおよびInの含有量を、それぞれ0.5質量%以上、合計で50質量%未満の範囲内に設定している。
【0018】
(酸素含有量:0.015質量%以上0.1質量%以下)
酸素は、SnおよびInと結合して、Ag合金微粉末の表面にSnおよびInの両方を含む酸化物の被膜が形成する作用効果を有する。
ここで、酸素の含有量が0.015質量%未満の場合は、上述の作用効果を奏功せしめることができないおそれがある。一方、酸素の含有量が0.1質量%を超えると、Ag合金微粉末のAg表面に形成されるSnおよびInの両方を含む酸化物の量が多くなり、また、Agの一部が酸化されるため、Ag合金粉末が焼結しにくくなり、焼結性が低下するおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、添加元素がSnおよびInの両方である場合には、酸素の含有量を0.015質量%以上0.1質量%以下の範囲内に設定している。
【0019】
<平均粒子径:0.1μm以上50μm以下>
平均粒子径が小さくなりすぎると、すなわち表面積が広くなりすぎると、硫黄化合物との反応性が高くなり、耐硫化性が低下するおそれがある。一方、Ag合金微粉末の平均粒子径が大きくなりすぎると、すなわち表面積が狭くなりすぎると、粒子同士の接触面積が小さくなり、焼結性が低下するおそれがある。
このような理由から、本実施形態では、Ag合金微粉末の平均粒子径を0.1μm以上50μm以下の範囲内に設定している。
【0020】
<Ag合金微粉末の製造方法>
本実施形態のAg合金微粉末は、例えば、以下に述べるようなガスアトマイズ法によって製造することができる。
先ず、原料粉末としてAg粉末、Sn粉末、In粉末を用意する。用意した原料粉末を、AgとSnとInが所定の割合となるように秤量し、るつぼに入れて、ガスアトマイズ装置にセットする。ガスアトマイズ装置にて、原料粉末を加熱して溶融させ、生成した原料粉末の溶融物(溶湯)を、ノズルを用いて噴霧し、その噴霧した溶湯に不活性ガスを接触させてガスアトマイズ粉(Ag合金粉末)を作製する。原料粉末を溶融させるときの加熱条件は、例えば、不活性ガス雰囲気下、1200℃以上1500℃以下の温度である。また、不活性ガスとしては、窒素、アルゴンを用いることができる。不活性ガスの噴射ガス圧は、例えば、2MPa以上9MPa以下の範囲である。なお、原料として粉末以外にも、例えば、Agインゴット、Snインゴット、Inインゴットを用いることもできる。
【0021】
次いで、得られたガスアトマイズ粉を大気中にて放冷する。これによって、ガスアトマイズ粉の表面のSn、Inと大気中の酸素とが反応して酸化物の被膜が形成される。なお、大気中にて放冷するには、例えば、ガスアトマイズ装置を大気で置換するとよい。
そして、放冷後のガスアトマイズ粉を分級して平均粒子径が上記の範囲内にあるAg合金微粉末を得る。本実施形態では、分級は目開き50μmの篩によって行った。
【0022】
以上のような構成とされた本実施形態であるAg合金粉末は、添加元素として、SnまたはInの一方を20質量%以上、あるいはSnおよびInの両方をそれぞれ0.5質量%以上含むので、Ag合金微粉末の表面にSnまたはInあるいはSnおよびInの両方を含む酸化物の被膜が形成され、耐硫化性が向上する。
【0023】
さらに、SnまたはInの一方を含有する場合はその含有量が50質量%未満の範囲内、あるいはSnおよびInの両方の含有する場合はその含有量が合計で50質量%未満と制限されているので、Agと同等の外観と焼結性とを有する。
【0024】
また、本実施形態のAg合金微粉末においては、添加元素がSnまたはInの一方である場合は、さらに酸素を0.040質量%以上0.1質量%以下の範囲内にて含有するので、SnまたはInの一方を含む酸化物の被膜が確実に形成されると共に、過剰な酸化物の被膜の形成が抑えられるので、Agと同等の高い焼結性を有する。
【0025】
さらにまた、本実施形態のAg合金微粉末においては、添加元素がSnおよびInの両方である場合は、さらに酸素を0.015質量%以上0.1質量%以下の範囲内にて含有するので、SnおよびInの両方を含む酸化物の被膜が確実に形成されると共に、過剰な酸化物の被膜の形成が抑えられるので、Agと同等の高い焼結性を有する。
【0026】
さらに、本実施形態のAg合金微粉末においては、平均粒子径が0.1μm以上50μm以下の範囲内に設定されているので、耐硫化性に優れ、かつ焼結性が高くなる。
【0027】
以上のとおり、本実施形態のAg合金粉末は、Agが有する外観と、高い焼結性とを有し、かつ耐硫化性に優れることから、例えば、銀粘土の原料、導電性銀ペーストの原料として好適に用いることができる。本実施形態のAg合金粉末を用いた銀粘土および導電性銀ペーストは、耐硫化性に優れることから長期間わたって安定して使用することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、Ag合金微粉末の製造方法としてガスアトマイズ法を用いた製造方法を説明したが、これに限定されることなく、油中分散法、湿式還元法、乾式還元法、プラズマ昇華法等を用いてAg合金微粉末を製造することができる。なお、いずれの製法においてもAg合金微粉末の作製後に、大気を用いて粉末表面を酸化させる必要がある。
【実施例】
【0029】
本発明に係るAg合金微粉末の作用効果について確認した確認実験の結果について説明する。
【0030】
[本発明例1~14、比較例1~14]
原料としてAgインゴット(純度:99.9質量%)、Snインゴット(純度:99.9質量%)、Inインゴット(純度:99.9質量%)をそれぞれ用意した。用意した各原料のインゴットを、所定の割合にてるつぼに入れて、ガスアトマイズ装置にセットした。ガスアトマイズ装置にて、原料を、アルゴン雰囲気下1300℃の温度で加熱して溶融させ、生成した溶湯を、ノズル(孔径:1.0mm)を用いて噴霧し、その噴霧した溶湯にアルゴンガス(噴射ガス圧:4MPa)を接触させて、ガスアトマイズ粉を作製した。作製したガスアトマイズ粉を、空気中で放冷した後、篩で分級して、下記の表1に示す金属成分と酸素含有量と平均粒子径を有するAg合金微粉末を製造した。ただし、本発明例1、2、7、9、11、12は参考例である。
【0031】
得られたAg合金微粉末について、次の方法により、金属成分(In、Sn)と酸素含有量と平均粒子径を測定し、外観、焼結性、耐硫化性を評価した。その結果を、下記の表1に示す。
【0032】
(金属成分の含有量)
Ag合金微粉末を酸で溶解した。得られた酸溶液中の金属成分の濃度を、ICP発光分光装置を用いて測定し、得られた濃度をAg合金微粉末中の金属成分量に換算した。
【0033】
(酸素含有量)
不活性ガス融解赤外線吸収装置(LECO社製:TC600)を用いて、Ag合金微粉末を約3000℃に加熱し、赤外線検出器を用いてAg合金機粉末から放出された酸素量を測定した。
【0034】
(平均粒子径)
レーザー回折散乱装置(日清エンジニアリング製:MT-3000)を用いて、弱酸性分散溶媒中にAg合金微粉末を分散させ、レーザー光を照射して、光の散乱強度からAg合金微粉末の粒子径を算出した。
【0035】
(外観)
目視にて、Ag合金微粉末の外観を観察し、白色のものを「〇」、灰色のものを「△」、黒色のものを「×」と評価した。
【0036】
(焼結性)
Ag合金微粉末と有機バインダー(アミノ系分散剤とカルボン酸系溶媒の混合物)とを、バインダー比率が30質量%となる割合で混練し、ペースト状にしたものを、シリカガラス上に厚さ50μmとなるように塗布し、200℃で60分間加熱して大気焼成した。得られた焼成体の比抵抗を4探針法により測定し、比抵抗が1×10-5cm・Ω以下であった場合を「○」、1×10-5cm・Ωを超えた場合を「×」と評価した。
【0037】
(耐硫化性)
Ag合金微粉末を1g秤量し、これをビーカー(100mL)に投入した。次いでそのビーカーに、濃度が0.01質量%の硫化ナトリウム水溶液50gを注液した後、マグネチックスターラーを用いて30分間静かに撹拌した。30分後、ろ過により、硫化ナトリウム水溶液からAg合金微粉末を回収し、水洗した後、乾燥した。乾燥後のAg合金粉末の色を目視で観察した。
乾燥後のAg合金微粉末において、色の変化がほとんどみられないものを「○」、色の変化がみられるものの完全な黒色とはなっていないものを「△」、ほぼ完全に黒色となったものを「×」と評価した。
【0038】
【0039】
SnおよびInのいずれも含有しないAg微粉末(比較例1)は、耐硫化性が低かった。
SnまたはInの一方の含有量が20質量%未満であったAg合金微粉末(比較例2~5)、SnおよびInの両方をそれぞれの添加量が0.5質量%未満であったAg合金微粉末(比較例6)は、耐硫化性が低かった。
SnおよびInの添加量が50質量%を超えたAg微粉末(比較例7、8)は、作製直後に既に表面が黒色化していた。また、酸素含有量が0.1質量%を超えており、焼結性が低下した。
さらに、平均粒径が0.1μm未満であったAg微粉末(比較例9~11)は、耐硫化性が低かった。一方、平均粒径が50μmを超えたAg微粉末(比較例12~14)は、焼結性が低下した。
【0040】
これに対して、本発明例1~14はいずれも、Agを50質量%以上含有するので、外観と焼結性についてはAg微粉末(比較例1)と同等のレベルを維持しながらも、耐硫化性は優れていた。
【0041】
以上のことから、本発明例によれば、Agと同様の外観と焼結性とを有し、かつ耐硫化性に優れるAg合金の微粉末を提供することが可能となることが確認された。